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○技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する基本方針

(平成二十九年四月七日)

(/法務省/厚生労働省/告示第一号)

外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成二十八年法律第八十九号)第七条第一項の規定に基づき、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する基本方針を次のとおり定めたので、同条第五項の規定に基づき公表する。

技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する基本方針

法務大臣及び厚生労働大臣は、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成二十八年法律第八十九号。以下「技能実習法」という。)第七条第一項の規定に基づき、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を策定する。

基本方針は、技能実習法に基づき政府全体で取り組む技能実習制度の見直しの趣旨を明らかにするとともに、技能実習の適正な実施と技能実習生の保護を達成するための基本的な考え方を示すものである。

第一 技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する基本的事項

一 技能実習制度の見直しの経緯

技能実習制度は、我が国で培われた技能、技術又は知識(以下「技能等」という。)の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として創設された制度である。

平成五年の制度創設以後、平成二十八年末までに延べ約百六十万人の開発途上地域等の外国人を受け入れ、我が国の国際貢献の制度として重要な役割を果たしてきた。同年末現在では、全国に約二十三万人の技能実習生が在留している。

平成二十二年七月一日に施行された出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律(平成二十一年法律第七十九号)において、新たな在留資格「技能実習」が創設され、在留の一年目から雇用関係の下、労働関係法令が適用されることとなるなど、技能実習生の法的保護及びその法的地位の安定化を図るための措置が講じられてきた。しかしながら依然として入管法令や労働関係法令の違反が発生し、技能実習制度には厳しい批判が寄せられてきた。一方で、技能実習制度の活用を促進するため、技能実習制度の拡充を図ることも求められている状況にあった。

こうした状況に鑑み、「『日本再興戦略』改訂二〇一四」(平成二十六年六月二十四日閣議決定)において、国際貢献を目的とする趣旨を徹底するため、制度の適正化を図るとともに、実習期間の延長等の技能実習制度の抜本的な見直しを行うとの方針が示され、平成二十七年度中の新制度への移行を目指す等のスケジュールも示された。

法務省及び厚生労働省は、「技能実習制度の見直しに関する法務省・厚生労働省合同有識者懇談会」を平成二十六年十一月に設置し、同懇談会は平成二十七年一月に報告書を取りまとめた。

この報告書を踏まえ、法務省及び厚生労働省は技能実習法案を平成二十七年三月に国会に提出し、技能実習法案は、衆議院で一部修正された上、平成二十八年十一月十八日に成立し、同月二十八日に公布された。今後、衆参両法務委員会における附帯決議の内容にも留意しながら、技能実習法を円滑に施行するとともに、対象職種の拡大等の法律事項でない施策についても着実に実行していかなければならない。

二 技能実習法の概要

技能実習法は、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図るため、技能実習計画の認定、監理団体の許可等の制度を設け、これらに関する事務を行う外国人技能実習機構(以下「機構」という。)を設ける等の所要の措置を講ずるものである。その規定事項の概要は次のとおりである。

(一) 技能実習制度の適正化

① 技能実習の基本理念及び関係者の責務を定めるとともに、技能実習に関し基本方針を策定すべきこと。

② 技能実習生ごとに作成する技能実習計画について、認定制とし、技能実習生が修得等をした技能等に係る評価を行うことなどの認定の基準や認定の欠格事由等を定めるほか、主務大臣の報告徴収、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣の改善命令、認定の取消し等の権限を規定すること。

③ 実習実施者について、届出制とすること。

④ 監理団体について、許可制とし、許可の基準や許可の欠格事由等を定めるほか、遵守事項、主務大臣の報告徴収、改善命令、許可の取消し等の権限を規定すること。

⑤ 技能実習生の保護に関する措置として、技能実習生に対する人権侵害行為等について、禁止規定を設け、違反に対する罰則を規定するとともに、技能実習生に対する相談対応や情報提供、技能実習生の転籍の連絡調整等を行うこと。

⑥ 出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣の事業所管大臣に対する協力要請等について規定するとともに、地域ごとに関係行政機関等による地域協議会を設置できるものとすること。

⑦ 機構を認可法人として新設し、技能実習計画の認定、実習実施者・監理団体へ報告を求め実地に検査する事務、実習実施者の届出の受理、監理団体の許可に関する調査等のほか、技能実習生に対する相談対応・援助等を行わせること。

(二) 技能実習制度の拡充

優良な実習実施者・監理団体に限定して、第三号技能実習生の受入れ(四年目及び五年目の技能実習の実施)を可能とすること。

(三) その他

技能実習の在留資格を規定する出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)の改正を行うほか、所要の改正を行うこと。

三 技能実習の基本理念及び技能実習関係者の責務

開発途上地域等への技能等の移転による国際協力の推進という制度の趣旨・目的(以下単に「制度の趣旨・目的」という。)に反して、技能実習制度が国内の人手不足を補う安価な労働力の確保策として使われることのないよう、技能実習法は、基本理念として、技能実習が、①技能等の適正な修得、習熟又は熟達(以下「修得等」という。)のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行われなければならないこと、②労働力の需給の調整の手段として行われてはならないことを定めている。

この技能実習法の基本理念を国、地方公共団体、実習実施者、監理団体、技能実習生等の技能実習の全ての関係者が共有し、その上で、それぞれ技能実習法に規定された責務を全うすることが必要である。

第二 技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図るための施策に関する事項

一 技能実習計画

(一) 認定制の趣旨

制度の趣旨・目的に従って技能等の移転を図るためには、実習実施者において行われる技能実習が、技能実習生が適切に技能等を修得等することができるものである必要がある。

このため、技能実習法は、実習実施者に、技能実習生ごと、かつ、技能実習の段階ごとに、技能実習計画を作成させ、その目標、内容等が適切なものであるかについて認定を行う制度を設け、技能実習は、この認定された技能実習計画に基づいて行われなければならないものとしている。

(二) 技能実習計画に関し留意すべき事項

技能実習計画の記載事項や認定基準等については技能実習法及びその下位法令等で定められているが、技能実習計画を認定制とした趣旨から、特に次の事項について留意する必要がある。

① 効果的な技能実習計画の策定

技能実習計画は、技能実習生が効果的に技能等の修得等を行うための要であることから、その策定に当たっては、講習の内容、従事させる業務の内容、時間、指導体制等についての検討を行い、技能実習の目標を確実に達成することのできる計画を策定する必要がある。

② 技能実習生への技能実習計画の説明

実習実施者は、効果的な技能等の修得等を図る観点から、技能実習生に対して技能実習計画を説明し、技能実習生が行う実習の内容と修得等をすべき技能等との関係についての理解を促しながら技能実習を行わせることが求められる。

③ 技能実習計画の進捗管理

実習実施者には、認定を受けた技能実習計画に従って技能実習を行わせることが求められており、技能実習計画どおりに技能実習が進んでいるかを常に確認しながら技能実習を行わせる必要がある。

もとより、実習実施者や監理団体が技能実習計画の範囲外の業務を技能実習生に行わせるようなことがあってはならない。

④ 技能実習計画の終期までの実施

実習実施者には認定を受けた技能実習計画に定める実習期間の終期まで技能実習を行わせる義務があり、団体監理型技能実習における監理団体には当該義務が適切に履行されるよう監理する義務がある。したがって、倒産等のやむを得ない場合を除いては、実習実施者や監理団体の一方的な都合により、技能実習生が実習期間の途中でその意に反して帰国させられることはあってはならない。万一、技能実習生が実習期間の途中で技能実習を中止して帰国せざるを得なくなった場合には、遅滞なく、原則として帰国前に、企業単独型技能実習にあっては、実習実施者は出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に対し技能実習を行わせることが困難となった場合の届出をしなければならず、団体監理型技能実習にあっては、実習実施者は監理団体に対し技能実習を行わせることが困難となった場合の通知を、監理団体は出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に対し技能実習の実施が困難となった場合の届出をしなければならない。

⑤ 技能等の修得等の確認

技能実習の第一号から第三号までのいずれの段階についても、実習実施者は、技能実習生が当該段階において修得等をした技能等の評価を技能検定又は技能実習評価試験等により行うことで、指導内容、方法、体制等に改善すべき点がないか点検すべきである。

また、第二号技能実習(第二号企業単独型技能実習及び第二号団体監理型技能実習をいう。以下同じ。)又は第三号技能実習(第三号企業単独型技能実習及び第三号団体監理型技能実習をいう。以下同じ。)へ移行する技能実習生は、それぞれ、第一号技能実習(第一号企業単独型技能実習及び第一号団体監理型技能実習をいう。以下同じ。)又は第二号技能実習において技能等の修得又は習熟を遂げ、目標として定めた技能検定又は技能実習評価試験に合格していることが前提となるので、実習実施者は技能実習生に効果的に技能等の修得等を行わせるほか、技能検定又は技能実習評価試験の受検が技能実習計画の認定の申請に間に合うように計画を立てる必要がある。

二 実習実施者

(一) 実施の届出

出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣が、全国に多数ある実習実施者を確実に把握するため、実習実施者が技能実習を開始したときは、遅滞なく届出を行うこととされている。

(二) 実習実施者が留意すべき事項

実習実施者には、技能実習を行わせる者としての責任のほか、技能実習生を雇用する者及び技能実習生の日本での生活を支援する者としての責任がある。実習実施者は、技能実習法のほか、入管法その他の出入国に関する法令及び労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)その他の労働に関する法令等の関係法令を遵守する必要があることは当然であるが、特に次の事項について留意すべきである。

① 募集時の技能実習を行わせる条件の明示

技能実習生の募集に当たっては、自ら又は監理団体若しくは送出機関等を通して、技能実習生になろうとする者に対し、技能実習制度に係る関係法令について必要な説明を行うとともに、当該技能実習生になろうとする者の母国語によって作成した文書をもって、予定されている技能実習の内容、技能実習を行わせる期間における労働条件並びに第二号技能実習又は第三号技能実習への移行に当たり受検することが必要な技能検定又は技能実習評価試験及びこれまでの合格実績を明示するものとする。

特に、募集時に示した労働条件等と入国後の実態に齟齬そごが生じるとトラブルの原因になることから、賃金の決定、計算等の方法、食費・居住費等の賃金からの一部控除の取扱い、渡航費用の負担の有無等に関する条件の詳細についてあらかじめ明示することが必要である。

また、第二号技能実習又は第三号技能実習への移行を予定しない場合にはその旨を、第二号技能実習又は第三号技能実習への移行を予定する場合には、いずれも目標として定めた技能検定又は技能実習評価試験に合格しなければ、第二号技能実習又は第三号技能実習への移行が認められず、帰国しなければならない旨を、明記するものとする。

② 適正な雇用契約の締結

実習実施者は、技能実習生との雇用契約を技能実習生の入国前に締結する必要がある。団体監理型技能実習の雇用契約の始期については、講習の終了後とすることが原則である。実習実施者は、技能実習生が雇用契約の内容を十分に理解できるようにするため、技能実習生の母国語によって作成した文書による雇用契約の締結その他必要な措置を講ずるものとする。

技能実習生に支払う報酬については、日本人が従事する場合に支払われる報酬と同等額以上の報酬を支払う必要があり、技能実習計画の認定申請に際してはこの点についての説明をしなければならない。これに加え、第二号技能実習及び第三号技能実習の賃金が前段階の技能実習よりも上回るなど技能等の習熟度に応じた賃金の格付けを行う等、技能実習生が技能等の修得等をしようとする意欲の向上に資するようにすることが必要である。また、休日、休暇、宿泊施設等の技能実習生の待遇についても、日本人と不当に差別されることのないようにするなど、技能実習生の権利が確実に保護され適正な技能実習が行われるよう配慮する必要がある。

さらに、実習実施者又は監理団体が負担すべき費用を監理費等の名目で技能実習生の報酬から控除することはできないことはもとより、食費、居住費等を報酬から控除する場合についても、労働関係法令にのっとった労使協定の締結が必要であり、実費を勘案して不当な額が報酬から控除されることにより技能実習生の生活に支障が生じることはあってはならない。

なお、このように技能実習生と雇用契約を締結するものであることから、あらかじめ、技能実習を行わせる事業場の労働組合等と技能実習生の受入れについて協議を行うことが望ましい。

③ 技能実習を行わせる環境の整備

技能実習を行わせる環境を確保するため、技能実習生については、適正に労働時間の管理を行う必要がある。技能実習の一環としてやむを得ず時間外労働や休日労働を技能実習生に行わせる場合には、労使協定の締結、割増賃金の支払等の労働関係法令で定める手続にのっとって行い、違反が行われることがないようにする必要がある。この場合においても、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護の観点から、恒常的な長時間労働とならないようにすべきである。

また、実習実施者は、技能実習を行わせる事業所における技能実習生の安全と健康を確保するために、安全衛生教育の実施、就業制限規定の遵守及び健康診断の実施等、労働安全衛生法に基づく必要な措置を講ずる必要がある。団体監理型技能実習にあっては、監理団体と連携して、技能実習生の安全と健康の確保に取り組むものとする。

さらに、実習実施者は、技能実習生が健康で快適な実習生活を送れるようにするため、快適な住環境を確保するとともに、食生活、医療等についての適切な助言及び援助を行うことができる体制を整備する必要がある。このため、技能実習指導員及び生活指導員に対してその能力育成に資するものとして主務大臣に認められた講習を受講させることが望ましい。また、団体監理型技能実習にあっては、監理団体と連携して、当該体制の整備に取り組むものとする。

なお、技能実習生が限られた実習期間の中で、効率的・効果的に技能等を修得等できるようにするため、実習実施者は、技能実習生を指導する立場にある技能実習指導員や技能実習計画の策定に携わる者の職業能力の更なる向上を図るべく、これらの者について技能検定その他の試験の受検等を積極的に推奨していくことが望ましい。

④ 目標として定めた技能検定又は技能実習評価試験の適正な受検

技能実習の第一号から第三号までのいずれの段階についても、実習実施者は、技能実習生が当該段階において修得等をした技能等の評価を技能検定又は技能実習評価試験等により行うことが必要である。技能検定又は技能実習評価試験の合格に係る目標を定めた場合にはその適正な受検が必要であり、その受検費用については、実習実施者又は監理団体が負担する必要がある。

また、実習実施者が受け入れている技能実習生の確実な受検を図る観点から、実習実施者は、受検日時、受検会場、受検に必要な機材の確保等に関して技能検定又は技能実習評価試験の実施者から求めがあった場合には、必要な協力をしていくことが望ましい。

三 監理団体

(一) 許可制の趣旨

監理団体は、団体監理型技能実習において、団体監理型実習実施者と団体監理型技能実習生との間の雇用関係の成立のあっせんを行い、その後の団体監理型技能実習の実施に関する監理を担う存在であり、団体監理型実習実施者や団体監理型技能実習生へ強い影響力を有している。

そこで、技能実習法では、技能実習の適正な実施を図るため、監理事業を行おうとする者は、あらかじめ許可を受けなければならないこととされ、許可を受けた適正な監理団体のみが団体監理型技能実習に関与できる制度とされている。

(二) 監理団体が留意すべき事項

技能実習法においては、制度の趣旨・目的を踏まえ、監理団体は、営利を目的としない法人とされており、営利を目的として監理事業を行うことは認められない。このため、監理事業に通常必要となる経費等を勘案して外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則(平成二十八年法務省・厚生労働省令第三号。以下「施行規則」という。)で定められた適正な種類及び額の監理費以外の金銭を受けることは認められていない。こうした技能実習法及びその下位法令等で定められている事項のほか、監理団体は、特に次の事項について留意すべきである。

① 団体監理型実習実施者及び送出機関との関係

監理団体は、団体監理型実習実施者や送出機関へ強い影響力を有していることを踏まえ、制度の趣旨・目的をこれらの者に周知し、技能実習生を安価な労働力と考え、労働力の需給の調整の手段として用いようとしている者の技能実習制度への参入を防ぐ責任を有している。無論、監理団体自らが、労働力不足解消につながるなどと広告して団体監理型実習実施者を募集する等の行為は絶対にあってはならない。

制度の趣旨・目的に沿った技能実習の実施のためには、技能実習制度を理解し、技能実習に対する意欲を持った団体監理型技能実習生を受け入れることが必要である。このため、監理団体自らが団体監理型技能実習生の受入れに実質的に関与することが必要であり、団体監理型実習実施者が事実上監理団体を関与させることなく送出機関から直接団体監理型技能実習生の受入れを行うようなことがあってはならない。団体監理型技能実習生の選抜方法、条件、受入れ方法等について、監理団体は、団体監理型実習実施者及び送出機関と綿密に連携することが求められる。

また、監理団体は、団体監理型実習実施者と団体監理型技能実習生との間の労使関係に介入することにならないように留意しつつも、団体監理型実習実施者と適正な関係を構築し、技能実習計画の作成の指導、その後の団体監理型技能実習の実施の監理等を通じて団体監理型実習実施者を適正に監理することが求められる。

特に定期的な監査に際しては、団体監理型実習実施者の担当者からの話だけでなく、通訳を同行させて団体監理型技能実習生から団体監理型技能実習の進捗状況や技能実習計画どおりに技能実習が行われているかを確認することが必要である。

② 取り扱う技能実習の職種及び作業の範囲

監理団体は、技能実習計画の作成の指導、その後の団体監理型技能実習の実施の監理等を担うことから、取り扱う技能実習の職種及び作業について高い知見を有している必要があり、技能実習計画の作成の指導や団体監理型技能実習の実施の監理を十分に行う能力を有しない職種及び作業については、取り扱うことができない。また、取り扱う技能実習の職種及び作業については、常日頃より研さんを深め、技能実習生が修得等をする技能等について高い知見を有し続ける必要がある。

四 優良な実習実施者及び監理団体

今般の技能実習制度の見直しによって、第三号技能実習の創設や受入れ人数枠の拡大がなされた。

この拡充については、高い水準を有するものとして定められた要件に適合した優良な実習実施者及び監理団体についてのみ認められたものである。

これは、技能実習生に技能等を修得等させる能力が高く、かつ、法令遵守や技能実習生の保護にも手厚く配慮している者のみが、長期・多数の技能実習を行わせる資格があるという趣旨であることから、この趣旨を踏まえて、制度の拡充部分の適用を受けようとする優良な実習実施者及び監理団体は、技能実習法や主務省令等で定められた認定基準や許可基準を充足することはもとより、その受け入れる全ての技能実習生が制度の趣旨・目的に沿って技能実習を行うことができるようにより高い水準を目指すべきものである。

また、制度の拡充部分の適用を受けない実習実施者や監理団体であっても、技能実習法や主務省令等で定められた認定基準や許可基準以上のものを目指し、制度の趣旨・目的に沿って技能実習に資するよう努めることが求められる。

五 技能実習生の保護

技能実習法においては、技能実習生の保護のため、技能実習関係者が技能実習の強制、違約金の設定、旅券又は在留カードの保管等を行うことを禁止し、罰則をもってこれを担保している。このほか、技能実習生の保護に資する施策として、出入国在留管理庁及び厚生労働省は、次の施策に機構と連携して取り組むこととする。

(一) 技能実習生からの通報・申告及び相談対応

技能実習法において、技能実習生は、実習実施者又は監理団体の技能実習法令違反があった場合には、当該事実を出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に通報・申告することができるものとされ、また、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣並びに機構は技能実習生からの相談に応じるものとされている。そこで、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣は、自ら又は機構によって技能実習生からの相談に応じる体制を整備する必要がある。技能実習生からの相談には、できる限り技能実習生の母国語で対応するものとする。

(二) 技能実習継続のための支援

技能実習法において、機構の業務として、技能実習を行うことが困難となった技能実習生であって引き続き技能実習を行うことを希望する者が技能実習を行うことができるよう、技能実習生からの相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他の援助を行うとともに、実習実施者、監理団体その他関係者に対する必要な指導及び助言を行うこととされている。

そこで、機構は、技能実習制度の趣旨・目的を踏まえ、技能実習生が実習実施者から人権侵害行為等を受けた場合はもとより、実習先の変更を求めることについてやむを得ない事情があると認められる場合には、技能実習生からの相談に丁寧に応じるとともに、他の実習実施者又は監理団体の下で技能実習を行えるように調整する等の実習先変更支援を行う。

(三) 第三号技能実習への移行時における一時帰国及び実習先の選択

第三号技能実習を行う技能実習生については、母国の家族と離れている期間が長期化するという問題もあることから、第二号技能実習を終了した後又は第三号技能実習を開始してから一年以内に、原則一箇月以上帰国しなければならないものとする。

また、第二号技能実習から第三号技能実習に進む段階では、技能実習生本人に異なる実習先を選択する機会を与えるものとする。

(四) その他

(一)から(三)までのほか、出入国在留管理庁及び厚生労働省は機構と連携して、技能実習生に対し、日常生活を送る上で知っておくべき知識等を記載した技能実習生手帳の配布や、実習実施者及び監理団体へのメンタルヘルス上の問題等に係る助言・指導、技能実習生の労災保険制度の適用に係る相談等を行う。

六 国レベルでの取決め

技能実習制度の見直し前においては、技能実習生の送出しを希望する国との間で国レベルでの取決めがなされていない状況であった。この状況の中、保証金の徴収等をしている不適正な送出機関や、制度の趣旨・目的を理解せず、技能実習を単なる出稼ぎと捉えて来日する技能実習生の存在がかねてより指摘されてきた。

そこで、技能実習生の送出しを希望する国(地域を含む。以下この六において同じ。)との間で国レベルでの二国間取決めを順次作成し、それを公表することとする。この取決めを通じて、送出国政府と協力し、不適正な送出機関の排除や、制度の趣旨・目的を理解し真に技能等の修得等に努めようとしている技能実習生に絞った受入れを目指す。取決めをした国との間では、送出国政府から適正な送出機関として認定を受けた送出機関のみから技能実習生を受け入れることとし、二国間取決めに違反する行為が認められた場合は、当該送出機関に関して認定の取消し等厳格な対応を行うよう送出国政府に要請することとする。

第三 技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に際し配慮すべき事項

一 国の役割

国は、技能実習法の基本理念に従って、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図るために必要な施策を総合的かつ効果的に推進する責務を有する。技能実習法に基づく技能実習計画の認定制や監理団体の許可制を適正に運用すること、特に、技能実習生の生活に支障が生じることがないよう技能実習生の報酬及び報酬からの控除の実態把握に努めつつ、長時間労働に係る労働法令違反がないよう必要な措置を講ずるべく労働時間についても調査を行うとともに、違法な時間外労働、技能実習生の意に反した実習期間の途中での帰国等の不正事案に対しては、報告徴収、改善命令、認定・許可の取消し等の監督権限を適時適切に行使する必要がある。

二 機構の役割及び業務

技能実習法で定められた主務大臣並びに出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣の事務のうち、技能実習計画の認定、実習実施者・監理団体へ報告を求め実地に検査する事務、実習実施者の届出の受理については機構が出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣の委託を、監理団体の許可に関する調査等については機構が主務大臣の委託をそれぞれ受けて行うこととなる。

また、機構は、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣とあいまって技能実習生に対する相談対応・援助等を行うとされている。

機構は、このように、主務大臣並びに出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣から委託された権限を包括的に行使し、また、主務大臣並びに出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣とあいまって技能実習生の保護に当たる主体として位置付けられることを踏まえ、業務を行うに当たっては、効率的で一貫した事務の実施となるよう留意する必要がある。

機構は、技能実習制度の担い手が、民間主体である実習実施者や監理団体であるため、その性質に鑑み、民間主体が発起人となり自主的に設立するとともに、設立に当たって国が関与を行う認可法人とされている。主務大臣は、機構に対し、役員の任命又は認可、毎事業年度の予算や事業計画の認可等の権限、交付金の支出、一般的監督命令等を通じ統制を行うこととなっており、主務大臣による強いガバナンスの下、機構は業務を遂行することとなる。

三 事業所管大臣等との連携

技能実習は多種多様な職種や作業において行われるため、それぞれの業種において課題や修得等をすべき技能等は異なっている。このため、主務大臣並びに出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣が行う業種横断的な取組に加え、それぞれの職種や作業における特有の事情を勘案し、当該業種を所管する大臣(以下「事業所管大臣」という。)が中心となって、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に資する取組を行うことが求められている。

技能実習法においては、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣は、事業所管大臣へ必要な協力を要請することができるものとされており、事業所管大臣は業種ごとに必要に応じ事業協議会を組織し、関係者間で有用な情報を共有し連携の緊密化を図るとともに、その業種の実情を踏まえた取組について協議を行うこととされている。

四 地域協議会

技能実習法の施行後は、機構に加え、各地域において、出入国在留管理機関、労働基準監督機関、職業安定機関、事業所管省庁の出先機関を始めとした国の機関や地方公共団体等様々な機関が相互に関係し合いながら技能実習に関与することとなる。こうした関係機関同士の連携を図り、問題事案の情報共有等が円滑に行われる体制について、地域レベルで整備することが必要である。

このため、地域協議会を設立し、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に資する地域での取組の協議、技能実習の現状などのデータ・制度運用上の留意点などの把握・共有、制度の適正化等に向けた地方公共団体等との密接な連携の確保・強化といった業務を担わせることとする。

五 対象職種

技能実習の対象となる技能等は、技能実習法、その下位法令等で技能実習生の本国において修得等が困難なものであることを始めとした要件が定められている。また、第二号技能実習及び第三号技能実習の対象となる職種及び作業については、当該職種及び作業に係る技能検定又は技能実習評価試験が整備されている必要があることに留意する必要がある。

六 技能実習評価試験

技能実習評価試験の実施基準については、施行規則等で定められている。当該基準に適合するか否か、また、技能実習制度の対象職種としてふさわしいか否かについては、有識者により構成される「技能実習評価試験の整備等に関する専門家会議」において、確認されることとなる。この会議の開催に際しては、厚生労働大臣はそれぞれの職種や作業における特有の事情を勘案するために事業所管大臣の意見を聴くこととする。

七 特定の職種に係る技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図るための施策

制度の趣旨・目的を適切に達成するために、特定の職種においては、他の職種では求められないその職種の特性に応じた固有要件の設定などの適切な対応策をとる必要が生じることがある。

このような特定の職種に固有の付加的な要件については、当該職種の実情を良く把握している事業所管大臣が策定することが適当であり、その際には、主務大臣が事業所管大臣と協力して取り組むことが求められる。

また、このような固有の付加的な要件の設定を行う必要性について検討するに当たって、事業所管大臣は、前述の事業協議会を組織し、事業協議会で協議を行うなど主務大臣に必要な協力を行うことが重要である。

このように付加的な要件を定める職種として対象職種への追加が予定されている介護については、介護サービスの質を担保する等のため、①移転対象となる適切な業務内容・範囲の明確化、②必要なコミュニケーション能力の確保、③適切な評価システムの構築、④適切な実習実施機関の対象範囲の設定、⑤適切な実習体制の確保、⑥日本人との同等処遇の担保、⑦監理団体による監理の徹底などの事項について、事業所管大臣である厚生労働大臣が介護固有の要件を定めること等を通じて、適切な対応を行うことが必要である。

第四 技能等の移転を図るべき分野その他技能等の移転の推進に関する事項

一 技能等の移転を図るべき分野

制度の趣旨・目的に従い、それぞれの開発途上地域等の経済発展の度合い等を踏まえ、開発途上地域等のニーズに沿った技能等を移転することができるよう、技能実習に関与する者は、開発途上地域等のニーズを把握するよう努めるものとする。

二 技能等の移転の推進に係る調査の実施

制度の趣旨・目的に従って技能実習により技能等の移転がなされているか確認するため、主務大臣は、定期的に、技能実習生が帰国後に技能実習で修得等をした技能等を適切に活用しているか等について、帰国後の技能実習生に対し追跡調査を行うものとする。この追跡調査には、実習実施者や監理団体のほか、二国間取決めを作成した送出国政府や送出機関も含めた関係者の協力を求めるものとする。

三 技能等の移転に係る好事例収集・分析の実施

制度の趣旨・目的に従って技能実習により技能等の移転がなされている好事例を主務大臣が収集・分析して広く公表することにより、実習実施者や監理団体が、好事例を参考として技能実習を行うことができるようにするものとする。

四 修得等をした技能等の見える化の実施

技能実習を修了した者が技能実習により修得等をした技能等を外国語で記載する文書のひな形を厚生労働省が作成しその活用を促進すること等により、技能実習により修得等をした技能等が送出国において理解され、評価されるような取組を推進するものとする。

第五 その他

一 技能実習生の我が国における適正な在留の確保

実習実施者及び監理団体は、技能実習生が我が国に適正に在留するよう、送出機関とも連携して制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者を選定し、入国後の講習等を通じて、入管法その他の出入国に関する法令に違反しないことはもとより、不法就労を行うなどした場合の入管法上の取扱いを技能実習生に教示すること等により、行方不明者を発生させないための取組を講ずる必要がある。

また、入管法その他の出入国に関する法令に違反する事実を発見した場合や、技能実習生が行方不明となった場合には、速やかに機構に届出(団体監理型実習実施者にあっては、監理団体を通じて機構に届出)をし、機構及び出入国在留管理機関からの指示を受ける必要がある。

二 地域社会との共生の推進

技能実習生は、技能実習が実施される地域に技能実習を行う期間中居住し、生活するものであることから、技能実習生がより円滑に我が国での生活環境に馴染めるようにすることは必要不可欠である。

こうした観点から、実習実施者や監理団体は、技能実習生と地域社会との共生のための取組に主体的に関与することが求められる。また、出入国在留管理庁及び厚生労働省は、こうした実習実施者や監理団体による取組について、好事例の収集や分析、その周知広報等を通じて、推進を図ることとする。

三 関係機関との連携

技能実習については、技能実習法による規制のほか、入管法令、労働関係法令等の様々な法令に基づき、出入国在留管理機関、労働基準監督機関、職業安定機関を始めとした国の機関が関与することとなり、外国人技能実習機構は、技能実習法を含め、入管法令又は労働関係法令に違反する事実を把握した場合には、これら国の機関に対し、通報、情報提供等を行うとともに、事案の重大性に応じ、告発を行うことも視野に、厳格な指導監督を行うこととなる。

また、多くの監理団体の法人としての許認可権限を有する者であること、技能実習生が地域住民として生活すること等の理由から、地方公共団体も技能実習に関与することとなる。

さらに、二国間取決めの作成については外務省、特定の職種については事業所管省庁の関与が必要である。

制度の安定的で円滑な運営に向けて、これらの関係機関が適時適切に連携していくことが求められている。

このため、国、地方公共団体及び機構は、技能実習が円滑に行われるよう、必要な情報交換を行い、相互の密接な連携の確保に努めることが求められる。

附 則

この告示は、技能実習法の施行の日(平成二十九年十一月一日)から適用する。

附 則 (平成三一年三月一五日/法務省/厚生労働省/告示第一号)

この告示は、平成三十一年四月一日から適用する。