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○難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針
(平成二十七年九月十五日)
(厚生労働省告示第三百七十五号)
難病の患者に対する医療等に関する法律(平成二十六年法律第五十号)第四条第一項の規定に基づき、難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針を次のように策定したので、同条第五項の規定により告示する。
難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針
我が国の難病に関する施策は、昭和四十七年の「難病対策要綱」の策定を機に本格的に推進されるようになり、難病の実態把握や治療方法の開発、医療水準の向上、療養環境の改善及び難病に関する社会的認知の促進に一定の成果を挙げてきた。しかし、医療の進歩や、難病の患者及びその家族のニーズの多様化、社会及び経済状況の変化の中で、類似の疾病であっても、研究事業や医療費助成事業の対象とならないものが存在していたこと、医療費助成について都道府県の超過負担が続きその解消が強く求められていたこと、難病に対する国民の理解が必ずしも十分でないこと、難病の患者が長期にわたり療養しながら暮らしを続けていくための総合的な対策が求められていることなど様々な課題に直面していた。
こうした課題を解決するため、難病の患者に対する医療等に関する法律(平成二十六年法律第五十号。以下「法」という。)が平成二十七年一月一日に施行された。
本方針は、法第四条第一項に基づき、国及び地方公共団体等が取り組むべき方向性を示すことにより、難病(法第一条に規定する難病をいう。以下同じ。)の患者に対する良質かつ適切な医療の確保及び難病の患者の療養生活の質の維持向上などを図ることを目的とする。
第一 難病の患者に対する医療等の推進の基本的な方向
(1) 難病の患者に対する医療等の施策の方向性について
法の基本理念にのっとり、難病の患者に対する医療等の施策(以下「難病対策」という。)は、以下の基本的な考え方に基づき、計画的に実施するものとする。
ア 難病は、一定の割合で発症することが避けられず、その確率は低いものの、国民の誰もが発症する可能性があり、難病の患者及びその家族を社会が包含し、支援していくことがふさわしいとの認識を基本として、広く国民の理解を得ながら難病対策を推進することが必要である。
イ 難病対策は、難病の克服を目指し、難病の患者が長期にわたり療養生活を送りながらも社会参加への機会が確保され、地域社会において尊厳を持って生きることができるよう、共生社会の実現に向けて、難病の特性に応じて、社会福祉その他の関連施策との有機的な連携に配慮しつつ、総合的に実施されることが必要である。また、国及び地方公共団体のほか、難病の患者、その家族、医療従事者、事業主、大学その他の研究機関、難病に関連する各学会、福祉サービス又は就労支援を提供する者など、広く国民が参画し実施されることが適当である。
ウ 国及び都道府県等(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項に規定する指定都市を含む。以下同じ。)が講ずる難病対策は、小児慢性特定疾病児童等(児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六条の二第二項に規定する小児慢性特定疾病児童等をいう。以下同じ。)が成人後も必要な医療等を切れ目なく受けられるようにするため、小児慢性特定疾病児童等の健全な育成に係る施策との連携を図る観点から、小児慢性特定疾病その他の疾病にかかっていることにより長期にわたり療養を必要とする児童等の健全な育成に係る施策の推進を図るための基本的な方針(平成二十七年厚生労働省告示第四百三十一号)を踏まえつつ、実施されることが必要である。
(2) 本方針の見直しについて
本方針は、社会の状況変化等に的確に対応するため、難病対策の実施状況等を踏まえ、少なくとも五年ごとに再検討を加え、必要があると認めるときは見直しを行う。
第二 難病の患者に対する医療費助成制度に関する事項
(1) 基本的な考え方について
難病の患者に対する医療費助成制度は、法に基づいて適切に運用することとし、医学の進歩等の難病を取り巻く環境に合わせ適宜その運用を見直すとともに、本制度が難病に関する調査及び研究の推進に資するという目的を踏まえ、難病の患者等の同意を得た同意指定難病関連情報(法第二十七条第五項に規定する同意指定難病関連情報をいう。以下同じ。)を適切に収集する。
(2) 今後の取組の方向性について
ア 指定難病(法第五条第一項に規定する指定難病をいう。以下同じ。)については、定められた要件を満たす疾病を対象とするよう、国は、疾病について情報収集を広く行い、それぞれの疾病が置かれた状況を踏まえつつ、指定難病の要件の適合性について適宜判断を行う。併せて、国際的な状況も含めた医学の進歩に応じ、診断基準や重症度分類等についても随時見直しを行う。
イ 法に基づく医療費助成制度の目的が、難病の患者に対する経済的支援を行うとともに、難病に関する調査及び研究の推進に資することであることに鑑み、国は、同意指定難病関連情報の収集を行い、難病に関する調査及び研究の推進等に活用するため、医療費助成の対象とならない指定難病の患者の情報を含む同意指定難病関連情報に係るデータベース(以下「指定難病患者データベース」という。以下同じ。)から抽出したデータを加工した匿名指定難病関連情報(法第二十七条の二第一項に規定する匿名指定難病関連情報をいう。以下同じ。)について、個人情報の保護等に万全を期することを最優先とした上で、第三者への提供を行う。また、都道府県等は、同意指定難病関連情報を国へ提供する。難病の患者等は、必要なデータの提供に協力し、指定医(法第六条第一項に規定する指定医をいう。以下同じ。)は、正確な指定難病の患者の診断基準や重症度分類等に係る臨床情報等の登録に努める。
第三 難病の患者に対する医療を提供する体制の確保に関する事項
(1) 基本的な考え方について
難病は、発症してから確定診断までに時間を要する場合が多いことから、できる限り早期に正しい診断ができる体制を構築するとともに、診断後はより身近な医療機関で適切な医療を受けることができる体制を確保する。その際、難病の診断及び治療には、多くの医療機関や診療科等が関係することを踏まえ、それぞれの連携を強化するよう努める。
(2) 今後の取組の方向性について
ア 難病については、できる限り早期に正しい診断ができ、より身近な医療機関で適切な外来、在宅及び入院医療等を受けることのできる体制が肝要である。このため、国は、難病の各疾病や領域ごとの特性に応じて、また、各地域の実情を踏まえた取組が可能となるよう、既存の施策を発展させつつ、難病の診断及び治療の実態を把握し、医療機関や診療科間及び他分野との連携の在り方等について検討を行い、具体的なモデルケースを示す。
イ 都道府県は、難病の患者への支援策等、地域の実情に応じた難病に関する医療を提供する体制の確保に向けて必要な事項を医療計画(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第三十条の四第一項に規定する医療計画をいう。)に盛り込むなどの措置を講じるとともに、それらの措置の実施、評価及び改善を通じて、必要な医療提供体制の構築に努める。
ウ 医療機関は、難病の患者に適切な医療を提供するよう努め、地方公共団体や他の医療機関と共に、地域における難病の診断及び治療に係る医療提供体制の構築に協力する。また、指定医その他の医療従事者は、国や都道府県の示す方針に即し、難病の患者ができる限り早期に正しい診断を受け、より身近な医療機関で適切な医療を受けることができるよう、関係する医療機関や医療従事者と顔の見える関係を構築し相互に紹介を行う等、連携の強化に努める。
エ 国立高度専門医療研究センター、難病の研究班、各分野の学会等が、相互に連携して、全国の大学病院や地域で難病の医療の中心となる医療機関と、より専門的な機能を持つ施設をつなぐ難病医療支援ネットワークの構築に努められるよう、国は、これらの体制の整備について支援を行う。
オ 国は、小児慢性特定疾病児童等が、必要な医療等を切れ目なく受けられるようにするため、「都道府県における小児慢性特定疾病の患者に対する移行期医療支援体制の構築に係るガイド」(平成二十九年十月二十五日付け健難発一〇二五第一号厚生労働省健康局難病対策課長通知別紙)を周知する。都道府県は、小児期及び成人期をそれぞれ担当する医療従事者間の連携等の支援体制の整備や、自身の疾病等の理解を深める等の自律支援及び自立支援等を目的とした移行期医療の体制を整備する事業の実施に努める。また、難病対策地域協議会(法第三十二条第一項に規定する難病対策地域協議会をいう。以下同じ。)が置かれた都道府県、保健所を設置する市及び特別区の区域において、小児慢性特定疾病対策地域協議会(児童福祉法第十九条の二十三第一項に規定する小児慢性特定疾病対策地域協議会をいう。以下同じ。)が置かれている場合には、難病対策地域協議会及び小児慢性特定疾病対策地域協議会は、相互に連携を図るよう努めるものとする。
カ 国は、新たな技術の進歩を踏まえつつ、難病についてできる限り早期に正しい診断が可能となるよう研究を推進するとともに、遺伝子診断等の特殊な検査について、遺伝カウンセリングを実施すること等の倫理的な観点も踏まえつつ幅広く実施できる体制づくりに努める。
第四 難病の患者に対する医療に関する人材の養成に関する事項
(1) 基本的な考え方について
難病はその患者数が少ないために、難病に関する知識を持った人材が乏しいことから、正しい知識を持った人材を養成することを通じて、地域において適切な医療を提供する体制を整備する。また、関係学会と連携し、医療関係者等への難病対策の周知を図る。
(2) 今後の取組の方向性について
ア 国及び都道府県等は、難病に携わる医療従事者の養成に努める。特に、指定医の質の向上を図るため、難病に関する医学の進歩を踏まえ、関係学会の協力を得て、多種多様な疾患を理解するために有用なeラーニング教材を活用する等、指定医の研修テキストの充実や最新の難病の診療に関する情報提供の仕組みの検討を行う。また、国は、小児期から成人期への移行期医療の体制の整備を進めるため、移行期医療に従事する者等に対する研修を実施する。
イ 医療従事者は、難病の患者の不安や悩みを理解しつつ、各々の職種ごとの役割に応じて相互に連携しながら、難病の患者のニーズに適切に応えられるよう、難病に関する知識の習得や自己研鑽に努めることとし、難病に関連する各学会等は、これらの医療従事者が学習する機会を積極的に提供するよう努める。
ウ 国及び都道府県等は、在宅で療養する難病の患者の家族等の介護負担等を軽減するため、喀痰吸引等に対応する事業者及び介護職員等の育成に努める。
第五 難病に関する調査及び研究に関する事項
(1) 基本的な考え方について
難病対策のために必要な情報収集を行うとともに難病の医療水準の向上を図るため、指定難病に限定することなく、難病の患者の実態及び難病の各疾病の実態や自然経過等を把握し、疾病概念の整理、診断基準や重症度分類等の作成や改訂等に資する調査及び研究を実施する。
(2) 今後の取組の方向性について
ア 国は、難病対策の検討において必要となる難病の患者についての情報収集を行うとともに、難病の患者の医療、生活実態及び生活上のニーズ等を把握するための調査及び研究を行う。
イ 国は、難病の各疾病に関する現状の把握、疾病概念の整理、診断基準の作成や改訂、適切な診療のためのガイドラインの作成を推進するための政策的な研究事業を実施し、第三の(2)のエに規定する難病医療支援ネットワークの構築を支援すること等により、積極的な症例の収集を通じた研究を推進する体制を支援する。
ウ 国は、指定難病患者データベースから抽出したデータを加工した匿名指定難病関連情報について、難病に関する調査及び研究の推進等に資するため、個人情報の保護等に万全を期することを最優先とした上で、難病患者に対する医療の確保や、療養生活の質の維持向上に資する研究を行う大学その他の研究機関、難病患者に対する医療又は福祉分野の研究開発に資する分析等を行う民間事業者等への提供を進める。また、国は、小児慢性特定疾病児童等データベース(小児慢性特定疾病その他の疾病にかかっていることにより長期にわたり療養を必要とする児童等の健全な育成に係る施策の推進を図るための基本的な方針第二の二に規定する小児慢性特定疾病児童等データベースをいう。)その他の公的データベース等と連結できる形での提供を進める。
エ 国は、難病の研究により得られた成果について、直接国民に研究を報告する機会の提供やウェブサイトへの情報掲載等を通じて国民に対して広く情報提供する。
第六 難病の患者に対する医療のための医薬品、医療機器及び再生医療等製品に関する研究開発の推進に関する事項
(1) 基本的な考え方について
難病の治療方法が確立され、根治すること、すなわち難病の克服が難病の患者の願いであることを踏まえ、難病の病因や病態を解明し、難病の患者を早期に正しく診断し、効果的な治療が行えるよう研究開発を推進する。特に、難病は疾患群が複数にまたがる一方で症例数が少ないという制約の中で病態解明や治療法の開発を行うという特性を踏まえ、開発が進みにくい医薬品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第一項に規定する医薬品をいう。以下同じ。)、医療機器(同条第四項に規定する医療機器をいう。以下同じ。)及び再生医療等製品(同条第九項に規定する再生医療等製品をいう。以下同じ。)の研究開発等を、患者の協力を得ながら積極的に支援する。
(2) 今後の取組の方向性について
ア 国は、難病の病因や病態の解明、医薬品、医療機器及び再生医療等製品の開発を推進するための実用的な研究事業を実施し、第五の(2)のイに規定する政策的な研究事業との連携を推進する。
イ 国は、希少疾病用の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発を促進するための取組を推進する。また、医療上の必要性が高い未承認又は適応外の医薬品、医療機器及び再生医療等製品に係る要望について、引き続き、適切な検討及び開発要請等を実施する。
ウ 研究者及び製薬企業等は、指定難病患者データベースから抽出したデータを加工した匿名指定難病関連情報等を活用しつつ、医薬品、医療機器及び再生医療等製品に関する研究開発、副作用等の安全性情報収集に積極的に取り組む。
第七 難病の患者の療養生活の環境整備に関する事項
(1) 基本的な考え方について
難病は患者数が少なく、その多様性のために他者からの理解が得にくいほか、療養が長期に及ぶこと等により、難病の患者の生活上の不安が大きいことを踏まえ、難病の患者が住み慣れた地域において安心して暮らすことができるよう、難病の患者を多方面から支えるネットワークの構築を図る。
(2) 今後の取組の方向性について
ア 国は、難病相談支援センター(法第二十九条第一項に規定する難病相談支援センターをいう。以下同じ。)が、難病の患者の療養生活に関する各般の問題につき、難病の患者等に対する相談・支援、地域交流活動の促進及び就労支援などを行う拠点施設としての機能を十分に発揮できるよう、運営に係る支援や技術的支援を行う。特に、各難病相談支援センターが福祉や雇用などの支援の案内に活用できる資料のひな形等を作成する等、難病相談支援センター間のネットワークの運営を支援するほか、福祉や雇用等に係る支援を行う地域の様々な支援機関と連携して難病の患者に対する支援を展開している等の先駆的な取組を行う難病相談支援センターに関する調査及び研究を行い、全国へ普及を図る。
イ 都道府県等は、国の施策と連携して、難病相談支援センターの機能が十分に発揮できるよう、当該センターの職員のスキルアップのための研修や情報交換の機会の提供等を行うとともに、難病の患者が相互に思いや不安を共有し、明日への希望を繋ぐことができるような患者会の活動等についてサポートを行うよう努める。
ウ 難病相談支援センターは、難病の患者及びその家族等の課題の解決に資するため、当該センターの職員が十分に活躍できるよう環境を整えるとともに、職員のスキルアップ及びピアサポーターの活用に努める。また、福祉や雇用等に係る支援を行う地域の様々な支援機関との積極的な連携に努め、療養及び就労に困難を抱える患者等への支援を行う。
エ 国及び都道府県等は、難病の患者及びその家族等がピア・サポートを実施できるよう、ピア・サポートに係る基礎的な知識及び能力を有する人材の育成を支援する。
オ 国は、難病の患者、その家族、医療従事者、福祉サービスを提供する者、教育関係者及び就労サービス従事者などにより構成される難病対策地域協議会の地域の実情に応じた活用方策について検討する。都道府県、保健所を設置する市及び特別区は、難病の患者への支援体制の整備を図るため、早期に難病対策地域協議会を設置するとともに、当該区域において小児慢性特定疾病対策地域協議会が設置されている場合には、相互に連携を図るよう努める。
カ 都道府県等は、難病の患者に対する保健医療サービス若しくは福祉サービスを提供する者又はこれらの者に対し必要な指導を行う者を育成する事業を実施し、訪問看護が必要と認められる難病の患者が適切なサービスを利用できるよう、他のサービスとの連携に配慮しつつ、訪問看護事業を推進するよう努め、国はこれらの事業を推進する。
キ 国及び都道府県は、在宅で療養する難病の患者の家族等のレスパイトケアのために必要な入院等ができる受け入れ先の確保に努める。
第八 難病の患者に対する医療等と難病の患者に対する福祉サービスに関する施策、就労の支援に関する施策その他の関連する施策との連携に関する事項
(1) 基本的な考え方について
難病の患者が地域で安心して療養しながら暮らしを続けていくことができるよう、医療との連携を基本としつつ福祉サービスの充実などを図るとともに、難病の患者が難病であることを安心して開示し、治療と就労を両立できる環境を整備する。
(2) 今後の取組の方向性について
ア 国は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号。以下「障害者総合支援法」という。)に基づき障害福祉サービス等の対象となる特殊の疾病について、指定難病の検討を踏まえて見直しを適宜検討する。
イ 国は、全国の市町村において難病等の特性に配慮した障害支援区分(障害者総合支援法第四条第四項に規定する障害支援区分をいう。)の認定調査や市町村審査会(障害者総合支援法第十五条に規定する市町村審査会をいう。)における審査判定が円滑に行えるようマニュアルを整備するとともに、市町村は難病等の特性に配慮した認定調査等に努める。
ウ 福祉サービスを提供する者は、人工呼吸器を装着する等の医療ケアが必要な難病の患者の特性を踏まえ、訪問診療、訪問看護等の医療系サービスと連携しつつ、難病の患者のニーズに合ったサービスの提供に積極的に努めるとともに、国は、医療と福祉が連携した先駆的なサービスについて把握し、普及に努める。
エ 国は、難病の患者の就労に関する実態を踏まえるとともに、難病の患者が難病であることを安心して開示し、治療と就労を両立できる環境を整備する。具体的には、事業主に対し、雇用管理に資するマニュアルである「難病のある人の雇用管理マニュアル」(障害者職業総合センターが平成三十年三月に作成したものをいう。)等を活用し、雇用管理に係るノウハウを普及するとともに、難病であることをもって差別されない雇用機会の確保、合理的な配慮及び病気休暇等の普及促進に努める。また、「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」等を周知し、事業者、人事労務担当者及び産業医や保健師、看護師等の産業保健スタッフ等の関係者の連携のもとで、治療に対する配慮や周囲の理解の醸成等の環境づくりに努める。
オ 国は、ハローワークに配置された難病患者就職サポーターや事業主に対する助成措置の活用、ハローワークを中心とした地域の支援機関や難病相談支援センターとの連携等により、難病の患者の安定的な就職に向けた支援及び職場定着支援に取り組む。また、職場定着支援は、職場における産業医との連携も重要であることに留意する。
カ 小児慢性特定疾病児童等が社会性を身につけ将来の自立が促進されるよう、学習支援、療養生活の相談及び患者の相互交流などを通じ、成人後の自立に向けた支援を行うことは重要であり、国は、これらを実施する都道府県、地方自治法第二百五十二条の十九第一項に規定する指定都市、同法第二百五十二条の二十二第一項に規定する中核市及び児童福祉法第五十九条の四第一項に規定する児童相談所設置市(特別区を含む。)を支援する。
キ 国及び地方公共団体は、難病の患者の在宅における療養生活を支援するため、保健師、介護職員等の難病の患者及びその家族への保健医療サービス、福祉サービス等を提供する者に対し、難病に関する正しい知識の普及を図る。
ク 都道府県等は、指定難病の患者が、地域における自立した日常生活の支援のための施策を円滑に利用できるようにするため、指定難病にかかっていることを証明する事業を行うよう努める。
ケ 都道府県等は、庁内外の難病、保健、福祉、防災等の関係者との連携を図るとともに、難病患者等に関する情報について、災害時を想定して平時から市町村に共有する仕組みを構築することが重要である。
コ 災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第四十九条の十の規定に基づき、市町村長は、避難行動要支援者の把握に努めるとともに、避難行動要支援者名簿を作成することが義務とされていることに加え、同法第四十九条の十四の規定に基づき、個別避難計画を作成するよう努めなければならないこととされている。災害発生時に円滑かつ迅速な対応ができるよう、事前に庁内外の難病、保健、福祉、防災等の関係者との連携を図り、避難行動要支援者名簿及び個別避難計画の作成を行うことが重要である。このため、国は、災害時に速やかに避難支援等に当たることができるよう、避難行動要支援者名簿の更新やこれを活用した個別避難計画の作成の推進について、市町村及び都道府県に働きかける。
第九 その他難病の患者に対する医療等の推進に関する重要事項
(1) 基本的な考え方について
難病に対する正しい知識の普及啓発を図り、難病の患者が差別を受けることなく、地域で尊厳を持って生きることのできる社会の構築に努めるとともに、難病の患者が安心して療養しながら暮らしを続けていけるよう、保健医療サービス、福祉サービス等について、周知や利用手続の簡素化に努める。
(2) 今後の取組の方向性について
ア 難病については、患者団体等がその理解を進めるための活動を実施しているほか、一部の地方公共団体による難病の患者の雇用を積極的に受け入れている事業主に対する支援や、民間団体による「世界希少・難治性疾患の日」や「難病の日」のイベントの開催等の取組が行われている。引き続き、国、地方公共団体及び関係団体は、難病に対する正しい知識を広げ、難病の患者に対する必要な配慮等についての国民の理解が深まるよう、啓発活動に努める。
イ 国民及び事業主等は、難病は国民の誰にでも発症する可能性があるとの認識を持って、難病を正しく理解し、難病の患者が地域社会において尊厳を持って生きることができる共生社会の実現に寄与するよう努める。
ウ 国及び地方公共団体は、法に基づく医療費助成制度や保健医療サービス、福祉サービス等を難病の患者が円滑に利用できるよう、難病相談支援センター等を通じた周知や、各種手続及び添付書類の更なる簡素化などについて検討を行う。
改正文 (令和三年一二月二七日厚生労働省告示第四一四号) 抄
令和四年四月一日から適用する。
附 則 (令和六年三月二九日厚生労働省告示第一三六号)
この告示は、令和六年四月一日から適用する。