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○介護予防・日常生活支援総合事業の適切かつ有効な実施を図るための指針

(平成二十七年三月三十一日)

(厚生労働省告示第百九十六号)

介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第百十五条の四十五の二第一項の規定に基づき、介護予防・日常生活支援総合事業の適切かつ有効な実施を図るための指針を次のように定め、平成二十七年四月一日から適用することとしたので、同項の規定により公表する。なお、介護予防事業の円滑な実施を図るための指針(平成十八年厚生労働省告示第三百十六号)及び介護予防・日常生活支援総合事業の円滑な実施を図るための指針(平成二十四年厚生労働省告示第八十六号)は、平成二十七年三月三十一日限り廃止する。

介護予防・日常生活支援総合事業の適切かつ有効な実施を図るための指針

団塊の世代が75歳以上となる令和7(2025)年に向け、単身高齢者世帯や高齢者夫婦のみ世帯、認知症高齢者の増加が予想されるなか、介護が必要な状態になっても住み慣れた地域で暮らし続けることができるようにするため、市町村が中心となって、介護だけではなく、医療や予防、生活支援、住まいが包括的に確保される地域包括ケアシステムの構築が重要な政策課題となっている。

介護保険法(以下「法」という。)第115条の45第1項に規定する介護予防・日常生活支援総合事業(以下「総合事業」という。)は、市町村が中心となって、地域の実情に応じて、住民等の多様な主体が参画し、多様なサービスを充実することにより、地域の支え合いの体制づくりを推進し、要支援者等(居宅要支援被保険者等(同項第1号に規定する居宅要支援被保険者等をいう。以下同じ。)又は法第9条第1号に規定する第1号被保険者をいう。以下同じ。)に対する効果的かつ効率的な支援等を可能とすることを目指すものである。

要支援者等については、掃除や買い物などの生活行為の一部が難しくなっているが、排せつ、食事摂取などの身の回りの生活行為は自立している者が多い。このような要支援者等の状態を踏まえると、支援する側と支援される側という画一的な関係性ではなく、地域とのつながりを維持しながら、有する能力に応じた柔軟な支援を受けていくことで、自立意欲の向上につなげていくことが期待される。

そのため、要支援者等の多様な生活支援ニーズについて、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第83号)第5条による改正前の法(以下「旧法」という。)において全国一律のものとして提供されていた介護予防訪問介護及び介護予防通所介護(以下「旧介護予防訪問介護等」という。)を、市町村の実施する総合事業に移行し、要支援者等の能力を最大限活かしつつ、旧介護予防訪問介護等と住民等が参画する多様なサービスを総合的に提供可能な仕組みに見直すこととした。

また、総合事業の実施に当たっては、ボランティア活動との有機的な連携を図る等、地域の人材を活用していくことが重要である。60歳代、70歳代をはじめとした高齢者の多くは、要介護状態や要支援状態に至っていないことから、こうした高齢者が地域で社会参加できる機会を増やしていくことが、高齢者の介護予防にもつながることとなる。併せて、できる限り多くの高齢者が、地域で支援を必要とする高齢者の支え手となっていくことで、より良い地域づくりにつながることとなる。

このため、総合事業の実施主体である市町村は、法第115条の45第2項第5号に規定する事業(以下「生活支援体制整備事業」という。)を活用しながら、地域において、NPOやボランティア、地縁組織等の活動を支援し、これを総合事業と一体的かつ総合的に企画し、実施することが望ましい。

この指針は、市町村が、総合事業を適切かつ有効に実施するための基本的な事項を示すものである。

第1 総合事業の実施に関する総則的な事項

1 目的

総合事業は、市町村が中心となって、地域の実情に応じて、住民等の多様な主体が参画し、多様なサービスを充実することにより、地域の支え合いの体制づくりを推進し、要支援者等に対する効果的かつ効率的な支援等を可能とすることを目的としている。

2 背景及び基本的な考え方

総合事業は、1を目的として、住民主体の多様なサービスの充実を図り、要支援者等の選択できるサービスを充実し、在宅生活の安心確保を図るとともに、住民主体のサービス利用の拡充による低廉な単価のサービスの充実・利用普及、高齢者の社会参加の促進や要支援状態となることを予防する事業の充実による要介護・要支援認定に至らない高齢者の増加、効果的な介護予防ケアマネジメントと自立支援に向けたサービス展開による要支援状態からの自立の促進や重度化予防の推進等により、結果として費用の効率化が図られることを目指すものであり、その背景及び基本的な考え方は以下のとおりである。

(1) 多様な生活支援の充実

住民主体の多様なサービスを支援の対象とするとともに、NPO、ボランティア等によるサービスの開発を進める。併せて、サービスにアクセスしやすい環境の整備を進める。

(2) 高齢者の社会参加と地域における支え合いの体制づくり

高齢者の社会参加のニーズは高く、高齢者の地域の社会的な活動への参加は、活動を行う高齢者自身の生きがいや介護予防等ともなるため、積極的な取組を推進する。

(3) 介護予防の推進

介護予防の推進に当たっては、リハビリテーションの理念を踏まえて、「心身機能」「活動」「参加」のそれぞれの要素にバランスよく働きかけることが重要である。そのため、リハビリテーション専門職等を活かした自立支援に資する取組を推進する。

(4) 市町村、住民等の関係者間における意識の共有と自立支援に向けたサービス等の展開

市町村、住民等の地域の関係者間で、自立支援・介護予防といった理念、高齢者自らが介護予防に取り組むといった基本的な考え方、地域づくりの方向性等を共有するとともに、多職種によるケアマネジメント支援を行う。

(5) 認知症施策の推進

ボランティア活動に参加する高齢者等に対して認知症の理解に関する研修を実施するなど、認知症の人に対して適切な支援が行われるようにするとともに、認知症サポーターの養成等により、認知症にやさしいまちづくりに積極的に取り組む。

(6) 共生社会の推進

住民主体の支援等を実施するに当たっては、地域のニーズが要支援者等のみに限定されるものではなく、また、多様な人との関わりが高齢者の支援にも有効であることから、要支援者等以外の障害者、児童等がともに集える環境づくりを心がけることが重要である。

3 総合事業の全体像

総合事業は、旧介護予防訪問介護等から移行し、居宅要支援被保険者等に対して必要な支援を行う法第115条の45第1項第1号に規定する事業(以下「サービス事業」という。)と、第1号被保険者に対して体操教室等の介護予防を行う法第115条の45第1項第2号に規定する事業(以下「一般介護予防事業」という。)からなる。

また、総合事業では、旧介護予防訪問介護等に相当する専門的なサービスに加え、住民主体の支援等の多様なサービス、一般介護予防事業の充実を図り、市町村の独自施策や市場において民間企業により提供される生活支援サービスも含め、総合的なサービス提供が行われ、要支援者等の状態等にあったふさわしいサービスが選択できるようにすることが重要である。その際、新たに総合事業によるサービスを利用する要支援者等については、住民主体の支援等の多様なサービスの利用促進を図っていくことが重要である。

4 市町村による効果的・効率的な事業実施

総合事業の実施に当たっては、市町村は効率的な事業実施につなげていくことが求められる。そのため、市町村は以下のような取組により、効率的な事業実施に努め、結果として費用の効率化が図られることを目指す。その際、市町村、地域包括支援センター、事業者、利用者、住民等、関係者間で意識の共有が図られることが重要である。

・ 住民主体の多様なサービスの充実を図り、要支援者等の選択できるサービス・支援を充実し、状態等に応じた住民主体のサービス利用の促進(サービス内容に応じた単価や利用料の設定。結果として、低廉な単価のサービスの利用普及)

・ 高齢者の社会参加の促進(支援を必要とする高齢者への支援の担い手としての参加等)や要支援状態となることを予防する事業(身近な地域における体操の集いの普及、短期集中予防サービス、地域リハビリテーション活動支援事業の活用等)の充実による認定に至らない高齢者の増加

・ 効果的な介護予防ケアマネジメントと自立支援に向けたサービス実施による要支援状態からの自立の促進や重度化予防の推進等

5 目標設定

総合事業と予防給付の費用の伸び率が、中長期的に、サービスを主に利用している75歳以上の高齢者数の伸び率程度となることを目安に努力する。

さらに、生活支援体制整備事業も活用して、市町村において速やかにサービス事業の体制整備を進めることなどにより、短期的に、より大きな費用の効率化も期待される。

6 事業の評価・検証と次期計画への反映

総合事業を効率的に実施していくためには、個々の事業評価と併せて、市町村による総合事業の結果等の評価・検証と市町村介護保険事業計画(法第117条第1項に規定する市町村介護保険事業計画をいう。以下同じ。)への取組の反映が重要である。

評価結果については、市町村、地域包括支援センターをはじめとする関係者で共有することで、以降のケアプラン作成におけるサービス選定やサービスの質の向上に活用することにもつながる。

さらに、評価の実施に当たっては、関係者間での議論が重要であることから、各市町村で開催している介護保険運営協議会や地域包括支援センター運営協議会等において議論することが重要である。

7 都道府県による市町村への支援

総合事業は、市町村が、その地域の実情に応じて取組を実施するものであり、多様なサービスの充実等による地域の支え合いの体制づくり、多様なサービスにおける単価や基準、利用者負担の設定等多岐にわたる事務が生じることとなる。

そのため、国において、指定事業者制度や国民健康保険団体連合会(以下「国保連合会」という。)による審査支払を可能とするなどの仕組みを設けるとともに、生活支援体制整備事業の創設、介護保険給付費における調整交付金と同様の仕組みを設けるなど、市町村が事業を円滑に実施することができるよう配慮している。

都道府県においても、市町村が総合事業を円滑に実施することができるよう、その実情に応じた市町村への支援に取り組むことが求められる。

8 他の計画等との関係

各年度における総合事業の量の見込みについては、市町村介護保険事業計画において定めることとされ、各年度における総合事業に要する費用及び総合事業の見込量の確保のための方策については、市町村介護保険事業計画において定めるよう努めることとされている。総合事業は、市町村介護保険事業計画に基づき計画的に事業を推進するものとし、その際、老人福祉法(昭和38年法律第133号)第20条の8第1項の規定による市町村老人福祉計画との一体性、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(平成元年法律第64号)第5条第1項に規定する市町村計画との整合性を十分に図るものとする。

第2 サービス事業

1 基本的な考え方

サービス事業は、居宅要支援被保険者等の多様な生活支援のニーズに対応するため、旧介護予防訪問介護等に相当する専門的なサービスに加え、住民主体の支援等も含め、多様なサービスを総合事業の対象として支援する。

2 サービス事業の構成

サービス事業は、訪問型サービス(第1号訪問事業)、通所型サービス(第1号通所事業)、その他生活支援サービス(第1号生活支援事業)及び介護予防ケアマネジメント(第1号介護予防支援事業)から構成される。

3 対象者

対象者は、要支援者に相当する者であるが、サービス事業においては、サービス利用に至る流れとして、要支援認定を受け、介護予防ケアマネジメントを受ける流れのほかに、基本チェックリストを用いた簡易な形でまず対象者を判断し、介護予防ケアマネジメントを通じて必要なサービスにつなげる流れも設ける。前者は要支援者、後者はサービス事業の対象者(以下「事業対象者」という。)として、サービス事業の対象とする。加えて、要介護認定による介護給付に係る居宅サービス、地域密着型サービス及び施設サービス並びにこれらに相当するサービス(以下「要介護認定によるサービス」という。)を受ける前から市町村の補助により実施されるサービス事業(以下「補助形式によるサービス事業」という。)を継続的に利用する居宅要介護被保険者についても、補助形式によるサービス事業の対象とすることができる。

要支援者及び事業対象者については、明らかに要介護認定が必要な場合や予防給付によるサービス(介護予防訪問看護、介護予防福祉用具貸与等)を希望している場合等は、要介護認定等の申請の手続につなぐが、サービス事業のサービスのみを利用する場合には、要支援認定等を受けず、基本チェックリストを用いた簡易な形で、事業対象者とすることが可能となる。

基本チェックリストの活用に当たっては、市町村又は地域包括支援センターにおいて、サービスの利用相談に来た第1号被保険者に対して、原則、対面で基本チェックリストを用い、相談を受け、基本チェックリストにより事業対象者に該当した者に対して、更に介護予防ケアマネジメントを行う。

なお、利用相談に際しては、被保険者より相談の目的や希望するサービスを聴き取るほか、サービス事業、要介護認定等の申請、一般介護予防事業についての説明を行う。特にサービス事業に係る説明に際しては、サービス事業によるサービスのみを利用する場合は、基本チェックリストを用いた簡易な形で、迅速なサービスの利用が可能であること、事業対象者となった後やサービス事業によるサービスを利用し始めた後も、必要な時は要介護認定等の申請が可能であることの説明が必要である。

加えて、事業対象者は、要支援者に相当する状態等の者を想定しており、そのような状態等に該当しないケースについては、一般介護予防事業の利用等につなげていくことが重要である。

第2号被保険者については、がんや関節リウマチ等の特定疾病に起因して要介護状態等となることがサービスを受ける前提となるため、基本チェックリストを実施するのではなく、要介護認定等申請を行う。

4 各事業の内容

居宅要支援被保険者等の多様な生活支援のニーズに対して、総合事業により多様なサービスを提供していくためには、市町村が中心となって、その地域の実情に応じて、総合事業によるサービスを類型化し、それに合わせた基準や単価等を定めることが必要である。

そこで、地域における好事例を踏まえ、以下のとおり、多様なサービスの典型的な例を参考として示すので、市町村においては、これらを参考にしつつ、その地域の実情に応じて、サービス提供の在り方について検討する。

(1) 訪問型サービス

訪問型サービスは、旧法第8条の2第2項に規定する介護予防訪問介護(以下「旧介護予防訪問介護」という。)に相当するもの(訪問介護員等によるサービス)と、それ以外の多様なサービスからなる。

多様なサービスについては、主に以下のようなサービス類型が想定される。

・ 主に雇用されている労働者により提供される、旧介護予防訪問介護に係る基準よりも緩和した基準によるサービス(訪問型サービスA)

・ 有償・無償のボランティア等により提供される、住民主体による支援(訪問型サービスB)

・ 保健・医療の専門職により提供される支援で、3~6か月の短期間で行われるもの(訪問型サービスC)

・ サービス事業と一体的に行われる移動支援や移送前後の生活支援(訪問型サービスD)

(2) 通所型サービス

通所型サービスは、旧法第8条の2第7項に規定する介護予防通所介護(以下「旧介護予防通所介護」という。)に相当するもの(通所介護事業者の従事者によるサービス)とそれ以外の多様なサービスからなる。

多様なサービスについては、主に以下のようなサービス類型が想定される。

・ 主に雇用されている労働者により又は労働者とともにボランティアが補助的に加わった形により提供される、旧介護予防通所介護に係る基準よりも緩和した基準によるサービス(通所型サービスA)

・ 有償・無償のボランティア等により提供される、住民主体による支援(通所型サービスB)

・ 保健・医療の専門職により提供される支援で、3~6か月の短期間で行われるもの(通所型サービスC)

(3) その他生活支援サービス

その他生活支援サービスは、居宅要支援被保険者等の地域における自立した日常生活の支援のための事業であって、訪問型サービスや通所型サービスと一体的に行われる場合に効果があると認められるものとして、厚生労働省令において以下の3つのサービスを規定している。

・ 栄養の改善を目的として、居宅要支援被保険者等に対して配食を行う事業

・ 居宅要支援被保険者等が自立した日常生活を営むことができるよう支援することを目的として、居宅要支援被保険者等に対して、定期的な安否確認及び緊急時の対応を行う事業

・ 第1号訪問事業又は第1号通所事業に準じる事業であって、地域の実情に応じつつ、第1号訪問事業又は第1号通所事業と一体的に行われることにより、要介護状態等となることの予防又は要支援状態の軽減若しくは悪化の防止及び地域における自立した日常生活の支援に資する事業

(4) 介護予防ケアマネジメント

総合事業による介護予防ケアマネジメントは、介護予防支援と同様、地域包括支援センターが居宅要支援被保険者等に対するアセスメントを行い、その状態や置かれている環境等に応じて、目標を設定し、その達成に向けて介護予防の取組を生活の中に取り入れ、自ら実施、評価できるよう支援する。また、高齢者自身が、地域で何らかの役割を果たせる活動を継続することにより、日常生活上の何らかの困りごとに対して、心身機能の改善だけではなく、地域の中で生きがいや役割を持って生活できるような居場所に通い続けるなど、「心身機能」「活動」「参加」の視点を踏まえた内容となるよう居宅要支援被保険者等の選択を支援していくことも重要である。

要支援者であって、予防給付によるサービスを利用するケースについては、予防給付の介護予防サービス計画費が支給される。要支援者及び事業対象者で、予防給付によるサービスの利用がないケースについては、介護予防ケアマネジメントが行われる。

ケースに応じ、以下のような類型の介護予防ケアマネジメントが想定される。

・ 主に、訪問型サービス又は通所型サービスにおいて、指定事業者のサービスを利用するケースや、訪問型サービスC、通所型サービスCを組み合わせた複数のサービスを利用するケース等、現行の介護予防支援に相当するもの(ケアマネジメントA)

・ 主に、ケアマネジメントの結果、補助形式によるサービス事業や配食などのその他生活支援サービス又は一般介護予防事業の利用につなげるケースであって、緩和した基準によるケアマネジメントとして、基本的にサービス利用開始時のみケアマネジメントを行うもの(ケアマネジメントC)

・ ケアマネジメントAやC以外のケースであって、緩和した基準によるケアマネジメントとして、サービス担当者会議などを省略したもの(ケアマネジメントB)

また、要介護認定によるサービスを受ける前から補助形式によるサービス事業を継続的に利用する居宅要介護被保険者が補助形式によるサービス事業を利用する場合については、介護給付の居宅介護サービス計画費が支給される。

5 実施方法

旧予防給付から市町村が実施する総合事業に移行するサービス事業については、そのサービス提供量が多いこと、委託契約の締結等の市町村の事務負担の軽減等を考慮し、市町村による直接実施や委託だけではなく、指定事業者制度及び国保連合会の審査支払の枠組み(市町村長があらかじめ指定した事業者からサービス提供を受けた場合にその提供に要した費用について、市町村が居宅要支援被保険者等に対して第1号事業支給費を支給することとし、それを指定事業者が代理受領する枠組み)が設けられている。総合事業は、市町村が地域の実情に応じて居宅要支援被保険者等に対する多様な支援の形を作っていくものであり、また、委託等による事業実施の一類型として指定の仕組みが位置付けられるものであること等から、総合事業における指定事業者制度では、市町村は、市町村の介護保険事業計画におけるサービス見込量等を踏まえ、圏域内の事業所の適切な配置に留意しつつ、計画的に指定を行うことが必要である。

サービス事業の実施に当たっては、市町村による直接実施や委託、指定事業者制度によるサービス提供のほか、NPO等住民主体の支援実施者に対する補助(助成)といった実施方法が可能であるが、介護予防ケアマネジメントについては、原則地域包括支援センターが実施するものであること等から、市町村による直接実施又は包括的支援事業を受託し地域包括支援センターを設置している法人への委託のいずれかの方法によることとなる。

また、サービス事業を提供する事業者に対する指導監督について、市町村においては、都道府県による指定居宅サービス事業者等(法第22条第3項に規定する指定居宅サービス事業者等をいう。以下同じ。)に対する指導監督において不適切な事例が見つかった場合に、都道府県と連携して指導監督を行うなど、効率的に適切な総合事業の実施に努めることが必要である。

特に、既存の指定居宅サービス事業者等については、引き続き、要介護者及び要支援者双方にサービス提供を行うことが想定されることから、都道府県においては、都道府県が指定した指定居宅サービス事業者等の指導監督において、不正請求や運営基準違反等が判明した場合には、法に基づき勧告・命令や指定の取消し等を行うとともに、必要な情報を市町村に提供し、共同で指導監督を行うなど、総合事業の指導監督が効果的・効率的に実施できるよう支援することが望ましい。

一方、指定居宅サービス事業者等以外の事業者に対する指導監督においては、そのサービスの内容等に応じた形で実施されることが望ましい。例えば、地域包括支援センターがケアマネジメントによりそのサービスの提供状況について一定程度把握していることから、その情報を端緒として必要な指導監督を行うことが考えられる。

6 単価

サービス事業のうち旧介護予防訪問介護等に相当するサービスに係る第1号事業支給費の額(サービス単価)は、市町村において、国が定める額(旧介護予防訪問介護及び旧介護予防通所介護に係る単価を踏まえた単価(以下「介護予防訪問介護等の単価を踏まえた単価」という。))を勘案して、サービス事業の費用の額を定めることとしており、市町村は、サービス単価を設定するに当たって、訪問介護員等による専門的サービスであること等を踏まえ、地域の実情に応じ、ふさわしい単価を定めることが必要である。

また訪問型サービスAや通所型サービスAのうち指定事業者によるサービスに係る第1号事業支給費の額については、市町村において、介護予防訪問介護等の単価を踏まえた単価を勘案して訪問型サービスA及び通所型サービスAそれぞれについてふさわしい単価を定めることとしており、市町村は、サービス内容や時間、基準等を踏まえ定めることが必要である。

7 利用者負担

サービス事業の内容は多様なものとなることから、訪問型サービス、通所型サービス及びその他生活支援サービスの利用者負担については、市町村が、サービス内容や時間、基準等を踏まえつつ定める。

住民主体の支援等の補助形式によるサービスは、当該支援の提供主体により自主的に実施されるものであることから、当該支援の提供主体が利用者負担について定めることも考えられる。

旧介護予防訪問介護等に相当する専門的なサービスについては、介護給付の利用者負担割合等を勘案し、市町村が定める。ただし、その下限は当該給付の利用者負担割合とする。

8 給付管理

要支援者が総合事業を利用する場合には、引き続き予防給付に係るサービスを利用しつつ、総合事業のサービスを利用するケースが想定されることなどから、予防給付の区分支給限度額の範囲内で、予防給付と総合事業を一体的に給付管理する一方、事業対象者については、市町村が給付管理の上限額を定めた上で、原則として指定事業者のサービスを利用する場合にのみ給付管理を行う。

上限額の設定及び給付管理に関しては、市町村が事業の実施要綱等において定めるべきものであるが、事業対象者については以下の点に留意すべきである。

・ 事業対象者について、給付管理を行う際は、予防給付の要支援1の区分支給限度額を目安として行うこと。

・ 介護予防ケアマネジメントにおいては、指定事業者によるサービス以外の多様なサービス等の利用状況も勘案してケアプランを作成することが適当であること。また、退院直後で集中的にサービスを利用することが自立支援につながると考えられるケース等、利用者の状態によっては、予防給付の要支援1の区分支給限度額を超えることも可能であること。

併せて、総合事業における給付管理については、国保連合会が実施することが可能な枠組みとしている。

9 住所地特例適用被保険者に係る財政調整

住所地特例適用被保険者(法第13条第3項に規定する住所地特例適用被保険者をいう。以下同じ。)は、引き続き保険者市町村の被保険者として、保険料も保険者市町村に納めていることから、住所地特例適用被保険者に対する総合事業の費用は、本来保険者市町村が負担することが適当であるから、市町村間の財政調整の観点から、当該費用については、政令により算定される額を保険者市町村が施設所在市町村に対して負担するものである。

そのため、政令において、総合事業に要する費用のうち、施設所在市町村の指定した指定事業者が提供するサービスと介護予防ケアマネジメントに要した費用額(総合事業により支出する分に限る。)を、保険者市町村が施設所在市町村に対して支払う旨規定している。

この際、指定事業者に対する費用の支払は、国保連合会経由で行うことを原則とするが、介護予防ケアマネジメントに要した費用は、国保連合会経由による支払ではなく、施設所在市町村が介護予防ケアマネジメントを行う地域包括支援センターに直接支払うこととなる。これについては、市町村の事務負担軽減の観点から、国保連合会において全国の市町村と一括して財政調整することができる仕組みを設けたところであり、市町村においては、財源調整を円滑に実施するため国保連合会と委託契約を締結することが必要である。

第3 一般介護予防事業

1 基本的な考え方

一般介護予防事業は、市町村の独自財源で行う事業や地域の互助、民間サービスとの役割分担を踏まえつつ、高齢者を年齢や心身の状況等によって分け隔てることなく、住民主体の通いの場を充実させ、人と人とのつながりを通じて、参加者や通いの場が継続的に拡大していくような地域づくりを推進するとともに、地域においてリハビリテーション専門職等を活かした自立支援に資する取組を推進し、要介護状態になっても生きがい・役割をもって生活できる地域を構築することにより、要介護状態等となることの予防等介護予防を推進することを目的とする。

2 事業の構成

一般介護予防事業は、介護予防把握事業、介護予防普及啓発事業、地域介護予防活動支援事業、一般介護予防事業評価事業及び地域リハビリテーション活動支援事業から構成される。

3 対象者

全ての第1号被保険者及びその支援のための活動に関わる者とする。

4 事業の実施

一般介護予防事業は、1の基本的な考え方を踏まえ、次のような内容の事業の実施が想定されるが、それぞれの地域の実情に応じた効果的・効率的な介護予防に資する事業が積極的に展開されることが期待される。

なお、市町村においては、それぞれの地域でどのような介護予防に資する活動がどのように実施されているのか、適宜その把握に努めるとともに、事業の実施に当たっては、地域住民の介護予防に関する理解を深め、地域において育成されたボランティアや地域活動組織を要支援者・要介護者の支援のために積極的に活用するなど、サービス事業との有機的な連携に努めることが必要である。

(1) 介護予防に資する体操等を行う住民主体の通いの場を充実するために、介護予防に関するボランティア等の人材を育成するための研修や介護予防に資する地域活動組織の育成及び支援を行う。

(2) 地域における介護予防の取組を機能強化するために、通所、訪問、地域ケア会議、住民運営の通いの場等へのリハビリテーション専門職等の関与を促進する。

(3) 地域の実情に応じて収集した情報等(例えば、民生委員等からの情報など)の活用により、閉じこもり等の何らかの支援を要する者を把握し、介護予防に資する活動へつなげる。

第4 総合事業の円滑な実施のための生活支援体制整備事業の活用

生活支援体制整備事業を活用した生活支援・介護予防サービス(以下「生活支援等サービス」という。)の体制整備にあたっては、市町村が中心となって、元気な高齢者をはじめ、住民が担い手として参加する住民主体の活動、NPO、社会福祉法人、社会福祉協議会、地縁組織、協同組合、民間企業、シルバー人材センター等の多様な主体による多様なサービスの提供体制を構築し、高齢者を支える地域の支え合いの体制づくりを推進していく必要がある。

その際、生活支援体制整備事業を活用した高齢者の生活支援等サービスの体制整備を推進していくことを目的とし、地域において、生活支援等サービスの提供体制の構築に向けたコーディネート機能(主に資源開発やネットワーク構築の機能)を果たす生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)を配置することや各地域における生活支援コーディネーターと生活支援等サービスの提供主体等が参画する、定期的な情報共有及び連携強化の場として協議体を設置すること等を通じて、互助を基本とした生活支援等サービスが創出されるよう取組を積極的に進める。

また、生活支援や介護予防の担い手となるボランティア等が要支援者等に対して適切な生活支援や介護予防を提供することができるよう、これらの者に対して、介護保険制度や高齢者の特徴、緊急対応等について、市町村が主体的に研修を行うことが望ましい。

さらに、地域ケア会議は、個別ケースについて、多職種、住民等の地域の関係者間で検討を重ねることにより、地域の共通課題を関係者で共有し、課題解決に向け、関係者間の調整、ネットワーク化、新たな資源開発、さらには施策化をボトムアップで図っていく仕組みであり、生活支援等サービスの充実を図っていく上で、生活支援コーディネーターや協議体と連携しながら、積極的に活用を図っていくことが望ましい。

附 則 (平成三〇年三月三〇日厚生労働省告示第一八〇号) 抄

1 この告示は、平成三十年四月一日から適用する。

改正文 (令和三年三月三一日厚生労働省告示第一二九号) 抄

介護保険法施行規則の一部を改正する省令(令和二年厚生労働省令第百七十六号)の施行の日(令和三年四月一日)から適用することとしたので、同項の規定により公表する。