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○行動計画策定指針

(平成二十六年十一月二十八日)

(内閣府、国家公安委員会、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省告示第一号)

次世代育成支援対策推進法(平成十五年法律第百二十号)第七条第一項の規定に基づき、行動計画策定指針を次のように定めたので、同条第五項の規定により告示し、平成二十七年四月一日より適用する。

なお、行動計画策定指針(平成二十一年/国家公安委員会、文部科学省、/厚生労働省、農林水産省、/経済産業省、国土交通省、/環境省/告示第一号)は、平成二十七年三月三十一日限り廃止する。

行動計画策定指針

目次

一 背景及び趣旨

二 次世代育成支援対策の実施に関する基本的な事項

三 市町村行動計画及び都道府県行動計画の策定に関する基本的な事項

四 市町村行動計画及び都道府県行動計画の内容に関する事項

五 一般事業主行動計画の策定に関する基本的な事項

六 一般事業主行動計画の内容に関する事項

七 特定事業主行動計画の策定に関する基本的な事項

八 特定事業主行動計画の内容に関する事項

一 背景及び趣旨

1 背景

次世代育成支援対策においては、国民が、希望どおりに働き、また、結婚、出産、子育ての希望を実現することができる環境を整え、人々の意識を変えていくことにより、少子化と人口減少を克服することを目指す総合的な政策の推進が重要である。

次世代育成支援を迅速かつ重点的に推進するため、平成十五年七月に次世代育成支援対策推進法(平成十五年法律第百二十号。以下「法」という。)が制定され、地方公共団体及び事業主が行動計画を策定することを通じて、次世代育成支援対策の推進を図ってきたところである。

また、法とほぼ同時に制定された少子化対策基本法(平成十五年法律第百三十三号)に基づき、総合的かつ長期的な少子化に対処するための施策の大綱として、平成十六年六月には「少子化社会対策大綱」が、またその後、平成二十二年一月には「子ども・子育てビジョン」(以下「ビジョン」という。)が閣議決定され、各般の取組が実施されてきた。ビジョンでは、子どもと子育てを応援する社会の実現に向けて、経済面の支援と保育サービス等の基盤整備とのバランスのとれた総合的な子育て支援を推進する一環として、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)のための働き方の改革についても、平成二十二年度から平成二十六年度までの五年間を目途として目指すべき施策内容と数値目標を定め、目標の達成に向けて取り組むこととされた。

また、平成十九年十二月に策定された「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」(以下「憲章」という。)及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(以下「行動指針」という。)については、平成二十二年六月、その後の施策の進捗や経済情勢の変化を踏まえて新たな視点や取組を盛り込んだ内容に改定され、これらを踏まえ、健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会や、多様な働き方・生き方が選択できる社会などの実現に向けた取組が進められてきている。

その後、特に子ども・子育て支援の分野については、質の高い幼児期の学校教育・保育の総合的な提供、保育の量的拡大及び確保並びに地域における子ども・子育て支援の充実等を図るため、子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号。以下「支援法」という。)の制定のほか、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律(平成二十四年法律第六十六号)及び児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)の改正を含めた子ども・子育て支援法及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成二十四年法律第六十七号。3において「整備法」という。)が成立し、子ども・子育て支援の新たな制度(以下「子ども・子育て支援制度」という。)が創設された。

さらに、これらの三つの法律と同時に成立した社会保障制度改革推進法(平成二十四年法律第六十四号)に基づき平成二十四年十一月に設置された社会保障制度改革国民会議において平成二十五年八月に取りまとめられた報告書では、社会保障四分野の一つの少子化対策分野の改革として、「妊娠・出産・子育ての切れ目ない支援」、「出産・子育てと就業継続の二者択一状況の解決」の必要性や、「子ども・子育て支援新制度」と「ワーク・ライフ・バランス」を車の両輪として進めることや子どもの貧困対策への取組の必要性等の認識の下、子ども・子育て支援制度に基づいた施策の着実な実施や、放課後児童対策の充実、妊娠期から育児期にかけての有機的で連続的な支援、育児休業期間中の経済的支援の強化、中高年世代の地域での子ども・子育て支援における活躍、社会的養護の一層の取組等の必要性が示された。

また、平成二十五年六月には、「少子化危機突破のための緊急対策」(以下「緊急対策」という。)が少子化社会対策会議決定され、子育て支援、働き方改革の一層の強化とともに、結婚・妊娠・出産・育児の「切れ目ない支援」や、多子世帯への支援、「産後ケア」の強化等を進めていくこととされたところである。

こうした中、国、地方公共団体、企業の各々が法に基づく十年間の計画的・集中的な次世代育成支援対策の取組を実施することにより、例えば合計特殊出生率については、平成十七年に一・二六と過去最低を記録したのに対し、平成二十九年には一・四三となり、仕事と子育てが両立できる雇用環境の整備等が進むなどの効果が見られたところである。しかしながら、現在、依然として少子化の流れが変わり、子どもが健やかに生まれ育成される社会が実現したとまでは言えず、次世代育成支援対策の取組を更に充実していく必要がある。

このため、法の有効期限の十年間の延長、認定制度の充実等の内容を盛り込んだ、次代の社会を担う子どもの健全な育成を図るための次世代育成支援対策推進法等の一部を改正する法律(平成二十六年法律第二十八号。以下この1において「改正法」という。)により、法の一部改正が行われたところである。

今後は改正法による改正後の法に基づき、認定制度の積極的な活用を促すための認知度向上の取組を図りつつ、更なる次世代育成支援対策を推進していくとともに、法の施行状況等について検証を行い、必要に応じて、適時、より実効性のある次世代育成支援対策を推進していくことが重要である。

また、少子化社会対策基本法に基づき、「少子化社会対策大綱」(平成二十七年三月二十日閣議決定)の中で定められた政策目標も踏まえ、その達成に向けた取組を含めて、仕事と生活の調和の推進に向けた具体的な取組を進めていくことが重要である。

2 法の趣旨

法においては、次世代育成支援対策に関し、市町村にあっては法第八条第一項の市町村行動計画(以下「市町村行動計画」という。)を策定することができることとされ、都道府県にあっては法第九条第一項の都道府県行動計画(以下「都道府県行動計画」という。)を策定することができることとされている。また、国及び地方公共団体以外の事業主(以下「一般事業主」という。)であって常時雇用する労働者の数が百人を超えるものにあっては法第十二条第一項の一般事業主行動計画(以下「一般事業主行動計画」という。)を策定し、厚生労働大臣にその旨を届け出ることとされ、常時雇用する労働者の数が百人以下の一般事業主にあっては一般事業主行動計画を策定し、厚生労働大臣にその旨を届け出るよう努めることとされている。さらに、国及び地方公共団体の機関等(以下「特定事業主」という。)にあっては、法第十九条第一項の特定事業主行動計画(以下「特定事業主行動計画」という。)を策定することとされている。

このため、主務大臣は、これらの行動計画の策定に関する指針(以下「行動計画策定指針」という。)を定めることとされている。

この行動計画策定指針は、市町村行動計画、都道府県行動計画、一般事業主行動計画及び特定事業主行動計画の指針となるべき、①次世代育成支援対策の実施に関する基本的な事項、②次世代育成支援対策の内容に関する事項、③その他次世代育成支援対策の実施に関する重要事項を定めるものである。

3 支援法との関係

法は、地方公共団体及び事業主に対し、行動計画の策定を求め、十年間の集中的・計画的な取組を進める時限立法であるのに対し、支援法は、社会保障と税の一体改革の一環として、消費税財源の投入を前提に子ども・子育て支援の充実を図る恒久法である。

次世代育成支援対策の中核となる保育サービスや各種の子育て支援事業については、従来、国が行動計画策定指針の中で定めた参酌すべき標準に基づき、市町村行動計画において目標事業量を定めることとされていた。しかしながら、支援法の制定に伴い、これらのサービス及び事業に関する定量的な整備目標は、支援法第六十一条第一項に規定する市町村子ども・子育て支援事業計画(以下「市町村子ども・子育て支援事業計画」という。)に記載されることとなったことを踏まえ、整備法により法が改正され、参酌すべき標準に係る規定が削除されるとともに、市町村行動計画及び都道府県行動計画(以下「市町村行動計画等」と総称する。)の策定義務が任意化されるなど所要の改正が行われている。

すなわち、従来保育サービスや各種の子育て支援事業の推進について法が果たしてきた役割及び機能は、恒久法たる支援法に引き継がれたのであり、今後は、これら二つの法律が相まって、市町村行動計画等並びに一般事業主行動計画及び特定事業主行動計画と、市町村子ども・子育て支援事業計画及び支援法第六十二条第一項に規定する都道府県子ども・子育て支援事業支援計画(四の2において「都道府県子ども・子育て支援事業支援計画」という。)(以下「子ども・子育て支援事業計画」と総称する。)により、より手厚い次世代育成支援対策が推進されることになる。

なお、策定が任意化された市町村行動計画等については、各地域の実情に応じ、必要な特定の事項のみの作成とすることも差し支えない。

また、市町村行動計画等については、子ども・子育て支援事業計画と一体のものとして策定して差し支えなく、これらの計画の策定手続についても、一体的に処理して差し支えない。さらに、市町村行動計画等と子ども・子育て支援事業計画を別のものとして策定する場合における、内容において重複する部分の記載については、子ども・子育て支援事業計画に基づき支援法第十四条第一項に規定する教育・保育(二の1及び四の2の(1)のオにおいて「教育・保育」という。)及び支援法第五十九条に規定する地域子ども・子育て支援事業(二の1及び四の2の(1)のオにおいて「地域子ども・子育て支援事業」という。)を実施する旨記載することとして差し支えない。

二 次世代育成支援対策の実施に関する基本的な事項

1 基本理念

次世代育成支援対策は、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、家庭、職場その他の場において、子育ての意義についての理解が深められ、かつ、子育てに伴う喜びが実感されるように配慮して行われなければならない。

また、次世代育成支援対策の実施に当たっては、教育・保育及び地域子ども・子育て支援事業の提供体制の整備並びに子ども・子育て支援給付及び地域子ども・子育て支援事業の円滑な実施を確保するための基本的な指針(平成二十六年内閣府告示第百五十九号。三の4において「基本指針」という。)の「第一 子ども・子育て支援の意義に関する事項」に記載された内容を踏まえることが重要である。

2 行動計画の策定の目的

地方公共団体及び事業主(特定事業主を含む。)は、本指針に即して次世代育成支援対策のための十年間の集中的・計画的な取組を推進するため、それぞれ行動計画を策定し、次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標、実施しようとする次世代育成支援対策の内容及びその実施時期等を定めるものとする。

3 次世代育成支援対策の推進に当たっての関係者の連携・協働

次世代育成支援対策は、児童福祉、母子保健、商工労働、教育、住宅等の各分野にまたがるものであり、関係部局が連携して部局横断的に取り組む総合的な庁内の推進体制を整備することが重要である。その上で、国及び地方公共団体の間、市町村及び都道府県の間、市町村間並びに国及び地方公共団体と一般事業主の間の連携等を図り、総合的な体制の下に推進されることが望ましい。

このため、行動計画には、それぞれの次世代育成支援対策の推進に当たっての関係者の連携の在り方について定めることが重要である。

(1) 市町村内及び都道府県内の関係部局間の連携

市町村及び都道府県は、次世代育成支援対策の総合的かつ効果的な推進を図るため、例えば、首長を本部長又は責任者として少子化対策推進本部等を設置するなど全庁的な体制の下に、行動計画の策定やこれに基づく措置の実施を図ることが重要である。

(2) 国及び地方公共団体の連携

法第四条では、国及び地方公共団体は、相互に連携を図りながら、次世代育成支援対策を総合的かつ効果的に推進するよう努めなければならないこととされている。

次世代育成支援対策は、「働き方の改革による仕事と生活の調和の実現」と「包括的な次世代育成支援の枠組みの構築」を「車の両輪」として取り組むことが必要であることに鑑み、国及び地方公共団体は、「次世代育成支援対策地域協議会」等の活用により、恒常的な意見交換を行い、連携・協力して地域の実情に応じた次世代育成支援対策の推進を図ることが必要である。

(3) 市町村及び都道府県の間並びに市町村間の連携

法第十条第一項では、都道府県は、市町村に対し、市町村行動計画の策定上の技術的事項について必要な助言その他の援助の実施に努めることとされており、小規模市町村への配慮を含め、適切に対応することが求められる。

また、市町村及び都道府県は、行動計画の策定に当たって、相互にその整合性が図られるよう、互いに密接な連携を図ることが必要である。

さらに、市町村行動計画の策定に当たっては、必要に応じて広域的なサービス提供体制の整備等、近隣市町村間での連携・協力の在り方について検討することが重要である。

(4) 国、地方公共団体等と一般事業主との連携

法第五条では、事業主は、国又は地方公共団体が講ずる次世代育成支援対策に協力しなければならないこととされている。

また、一般事業主は、一般事業主行動計画の策定やこれに基づく措置の実施に関する援助業務を行う次世代育成支援対策推進センターによる相談その他の援助を活用することなどにより、適切な一般事業主行動計画の策定やこれに基づく措置の実施に努めることが望ましい。

さらに、地方公共団体及びその区域内に事業所を有する一般事業主は、行動計画の策定に当たって、地域における次世代育成支援対策が効果的に実施されるよう、必要に応じて情報交換・意見交換を行う等密接な連携を図ることが重要である。

(5) 地域の事業主や民間団体等との協働

仕事と生活の調和の実現に向けた働き方の改革を始め、次世代育成支援対策は、それぞれの地域の企業、子育て支援を行う団体等が相互に密接に連携し、協力し合いながら、地域の実情に応じた取組を進めていくことが重要である。

4 次世代育成支援対策地域協議会の活用

法第二十一条第一項では、地方公共団体、事業主、住民その他の次世代育成支援対策の推進を図るための活動を行う者は、地域における次世代育成支援対策の推進に関し必要となるべき措置について協議するため、次世代育成支援対策地域協議会(以下「地域協議会」という。)を組織することができるとされており、地方公共団体及び一般事業主は、行動計画の策定やこれに基づく措置の実施に当たっては、必要に応じて、地域協議会を十分に活用するとともに、密接な連携を図ることが望ましい。

地域協議会の形態としては、例えば、次に掲げるものが考えられる。

(1) 市町村及び都道府県の行動計画の策定やこれに基づく措置の実施に関し、意見交換等を行うため、地方公共団体、事業主、労働者、子育てに関する活動を行う地域活動団体、保健・福祉関係者、教育関係者、都道府県労働局等の幅広い関係者で構成されるもの

(2) 一般事業主行動計画の策定やこれに基づく措置の実施に関し、情報交換等を行うため、地域の事業主やその団体等で構成されるもの

(3) 地域における子育て支援サービスの在り方等について検討を行うため、地域の子育て支援事業の関係者等で構成されるもの

(4) 家庭教育への支援等について検討を行うため、教育関係者等で構成されるもの

なお、地域協議会と、支援法第七十七条第一項及び第四項に規定する審議会その他の合議制の機関について、両者に必要な構成員を確保した上で一つの会議体に両者の機能を担わせることは差し支えない。

三 市町村行動計画及び都道府県行動計画の策定に関する基本的な事項

1 市町村行動計画及び都道府県行動計画の策定に当たっての基本的な視点

(1) 子どもの視点

我が国は、児童の権利に関する条約の締約国としても、子どもに関わる種々の権利が擁護されるように施策を推進することが要請されている。このような中で、子育て支援サービス等により影響を受けるのは多くは子ども自身であることから、次世代育成支援対策の推進においては、子どもの幸せを第一に考え、子どもの利益が最大限に尊重されるよう配慮することが必要であり、特に、子育ては男女が協力して行うべきものとの視点に立った取組が重要である。

(2) 次代の親の育成という視点

子どもは次代の親となるものとの認識の下に、豊かな人間性を形成し、自立して家庭を持つことができるよう、長期的な視野に立った子どもの健全育成のための取組を進めることが必要である。

(3) サービス利用者の視点

核家族化や都市化の進行等の社会環境の変化や国民の価値観の多様化に伴い、子育て家庭の生活実態や子育て支援に係る利用者のニーズも多様化しており、また、農林水産業等の個々の業種ごとの家庭の特性を踏まえることも重要であることから、次世代育成支援対策の推進においては、このような多様な個別のニーズに柔軟に対応できるように、利用者の視点に立った柔軟かつ総合的な取組が重要である。

(4) 社会全体による支援の視点

次世代育成支援対策は、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、国及び地方公共団体はもとより、企業や地域社会を含めた社会全体で協力して取り組むべき課題であることから、様々な担い手の協働の下に対策を進めていくことが必要である。

(5) 仕事と生活の調和の実現の視点

憲章においては、仕事と生活の調和が実現した社会とは、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」とされている。

働き方の見直しを進め、仕事と生活の調和を実現することは、国民の結婚や子育てに関する希望を実現するための取組の一つとして、少子化対策の観点からも重要であり、憲章においても、社会全体の運動として進めていくこととされている。こうした取組については、地域においても、国及び地方公共団体や企業を始めとする関係者が連携して進め、自らの創意工夫の下に、地域の実情に応じた展開を図ることが重要である。

(6) 結婚・妊娠・出産・育児の切れ目ない支援の視点

緊急対策においては、多くの若者が将来家庭を持つことを望み、希望する子どもの数は平均二人以上となっているが、晩婚化・未婚化が進み、合計特殊出生率も低い水準にとどまっており、結婚や妊娠、出産に対する国民の希望が叶えられていないとされている。

このため、「子育て支援」と「働き方改革」の一層の強化に加え、新たに「結婚・妊娠・出産支援」を対策の柱として打ち出し、結婚・妊娠・出産・育児の切れ目ない支援を推進することが、それらに関する国民の希望を実現していくためにも重要である。

また、少子化の状況は地域によって異なっていることから、地域の創意工夫の下、地域の実情に応じた結婚・妊娠・出産・育児の切れ目ない支援の展開を図ることが重要である。

(7) 全ての子どもと家庭への支援の視点

次世代育成支援は、保育士を始めとする専門的知識及び技術を持つ担い手ばかりでなく、様々な地域の担い手や社会資源によって担われるものである。

また、次世代育成支援対策は、子育てと仕事の両立支援のみならず、子育ての孤立化等の問題を踏まえ、広く全ての子どもと家庭への支援という観点から推進することが必要である。

その際には、社会的養護を必要とする子どもの増加や虐待等の子どもの抱える背景の多様化等の状況に十分対応できるよう、社会的養護体制について質・量ともに整備を進めることとし、家庭的な養護の推進、自立支援策の強化という観点も十分踏まえて取組を進めることが重要である。

(8) 地域の担い手や社会資源の効果的な活用の視点

地域においては、子育てに関する活動を行うNPO、子育てサークル、母親クラブ、子ども会、自治会を始めとする様々な地域活動団体、社会福祉協議会やベビーシッター等の様々な民間事業者、児童委員・主任児童委員等が活動するとともに、高齢者、障害者等に対するサービスを提供する民間事業者等もあるほか、子育て支援等を通じた地域への貢献を希望する高齢者や育児経験豊かな主婦その他の地域人材も多く、加えて森林等の豊かな自然環境や地域に受け継がれる伝統文化等もあることから、こうした様々な地域の担い手や社会資源を十分かつ効果的に活用することが必要である。その際には、地域と学校が連携・協働し、地域全体で子どもの成長を支えていくという視点が重要である。

(9) サービスの質の視点

利用者が安心してサービスを利用できる環境を整備するためには、サービス供給量を適切に確保するとともに、サービスの質を確保することが重要である。このため、次世代育成支援対策においては、サービスの質を評価し、向上させていくといった視点から、人材の資質の向上を図るとともに、情報公開やサービス評価等の取組を進めることが重要である。

(10) 地域特性の視点

都市部と農山漁村の間の相違を始め、人口構造や産業構造、更には社会資源の状況等地域の特性は様々であり、利用者のニーズ及び必要とされる支援策も異なることから、次世代育成支援対策においては、各地方公共団体が各々の特性を踏まえて主体的な取組を進めていくことが必要である。

2 市町村行動計画及び都道府県行動計画の策定に当たって必要とされる手続

(1) 現状の分析

市町村行動計画等の策定に当たっては、4及び5に基づき行ってきた市町村行動計画等に基づく措置の実施状況の点検・評価の結果を十分に踏まえることが重要である。

(2) 多様な主体の参画と情報公開

市町村行動計画等を策定し、又は変更しようとするときは、法第八条第三項及び第九条第三項に基づき、あらかじめ、住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、法第八条第四項及び第九条第四項に基づき、あらかじめ、事業主、労働者、その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めることが必要である。

なお、事業主、労働者、その他の関係者が主体となって、利用者の視点に立った評価指標を考える仕組みを誘導するなど、行動計画の策定段階からの多様な主体の参画を促進することも重要である。

加えて、市町村及び都道府県が、市町村行動計画等を策定し、又は変更したときは、法第八条第五項及び第九条第五項に基づき、遅滞なく公表するよう努めることが必要である。

3 市町村行動計画及び都道府県行動計画策定の時期等

市町村行動計画等は五年ごとに、五年を一期として策定するものとされている。一回目に策定される市町村行動計画等(前期計画)については、平成二十七年度から令和元年度までを計画期間として策定することが望ましい。

また、二回目に策定する市町村行動計画等(後期計画)については、前期計画に係る必要な見直しを令和元年度までに行った上で、令和二年度から令和六年度までを後期計画の期間として策定することが望ましい。

4 利用者の視点に立った点検・評価のための指標の導入

基本指針第三の六の3における達成状況の点検・評価と連携して、個別事業の進捗状況(アウトプット)に加え、個別事業を束ねた施策や計画全体の成果(アウトカム)についても点検・評価することが重要である。

次世代育成支援対策の推進においては、利用者の視点に立った柔軟かつ総合的な取組が重要であり、このような取組を評価するため、利用者の視点に立った指標を設定し、点検・評価を行い、施策の改善につなげていくことが望まれる。

5 市町村行動計画及び都道府県行動計画の実施状況の点検・評価及び推進体制

法第八条第七項及び第九条第七項では、市町村及び都道府県は、定期的に、市町村行動計画等に基づく措置の実施の状況に関する評価を行い、市町村行動計画等に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更することその他の必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとされていることから、各種施策が利用者の直面している問題や課題の解消に役立ったか、満足できるものであったか等、利用者側の視点に立った点検・評価を実施し、その結果を毎年度の予算編成や事業実施に反映させる、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)のサイクル(PDCAサイクル)を確立することが重要である。

この際、これら一連の過程を開かれたものとするため、地域における子育て支援事業の関係者や子育てに関する活動を行うNPO等が参画する場を設けることも考えられる。その際、地域協議会などを活用することも考えられる。

また、法第八条第六項及び第九条第六項では、市町村及び都道府県は、おおむね一年に一回、市町村行動計画等に基づく措置の実施の状況を公表するよう努めることとされており、この計画の実施状況等に係る情報の広報誌やホームページへの掲載等により、住民に分かりやすく周知を図るとともに、住民の意見等を聴取しつつ、その後の対策の実施や計画の見直し等に反映させるよう努めることが必要である。

6 他の計画との関係

市町村行動計画等は、地域福祉計画(社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第百七条第一項に規定する市町村地域福祉計画及び同法第百八条第二項に規定する都道府県地域福祉支援計画をいう。)、自立促進計画(母子及び父子並びに寡婦福祉法(昭和三十九年法律第百二十九号)第十一条第二項第三号に規定する自立促進計画をいう。以下同じ。)、障害者計画(障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第十一条第二項に規定する都道府県障害者計画及び同条第三項に規定する市町村障害者計画をいう。)、子ども・子育て支援事業計画、子どもの貧困対策計画(子どもの貧困対策の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十四号)第九条第一項に規定する都道府県計画及び同条第二項に規定する市町村計画をいう。)その他の法律の規定により市町村又は都道府県が策定する計画であって、次世代育成支援に関する事項を定めるものとの間の調和が保たれたものとすることが必要である。

なお、市町村行動計画等と盛り込む内容が重複する他の法律の規定により市町村又は都道府県が策定する計画については、市町村行動計画等と一体のものとして策定して差し支えない。また、子ども・子育て支援事業計画との関係については、一の3の記載のとおり。

四 市町村行動計画及び都道府県行動計画の内容に関する事項

1 市町村行動計画

市町村は、住民に最も身近な地方公共団体としての役割を踏まえ、次世代育成支援対策を総合的に、かつ、きめ細かく行えるよう、子どもと子育て家庭への支援に関連する施策及び事業を市町村行動計画に体系的に盛り込むことが必要である。

市町村行動計画に盛り込むべき事項としては、法第八条第一項において、①地域における子育ての支援、②母性並びに乳児及び幼児の健康の確保及び増進、③子どもの心身の健やかな成長に資する教育環境の整備、④子どもを育成する家庭に適した良質な住宅及び良好な居住環境の確保、⑤職業生活と家庭生活との両立の推進、⑥その他の次世代育成支援対策の実施が掲げられており、こうした施策の領域を踏まえ、計画の策定に当たるものとする。

計画の策定に当たっては、次に掲げる次世代育成支援対策として重要な施策を踏まえつつ、各市町村の実情に応じた施策をその内容に盛り込むことが必要である。

なお、指定都市、中核市及び児童相談所設置市にあっては、行動計画策定指針において都道府県行動計画に盛り込まれている内容のうち、指定都市、中核市及び児童相談所設置市が処理することとされているものについては、適切に市町村行動計画に盛り込むことが必要である。

(1) 地域における子育ての支援

ア 地域における子育て支援サービスの充実

専業主婦家庭や母子家庭等を含めた全ての子育て家庭への支援を行う観点から、市町村子ども・子育て支援事業計画に従い、地域における様々な子育て支援サービスの充実を図ることが重要である。

また、これらの取組に際しては、親が障害を持つ家庭等についても適切に子育て支援サービスが提供されるよう、きめ細かな配慮が求められる。

イ 保育サービスの充実

市町村子ども・子育て支援事業計画に従い、必要な措置の実施に努めることが重要である。

ウ 子育て支援のネットワークづくり

子育て家庭に対して、きめ細かな子育て支援サービス・保育サービスを効果的・効率的に提供するとともに、サービスの質の向上を図る観点から、地域における子育て支援サービス等のネットワークの形成を促進し、また、各種の子育て支援サービス等が、利用者に十分周知されるよう、子育てマップや子育てガイドブックの作成・配布等による情報提供を行うことが必要である。

また、地域住民の多くが子育てへの関心・理解を高め、地域全体で子育て家庭を支えることができるよう、子育てに関する意識啓発等を進めることが望ましい。

エ 子どもの健全育成

(ア) 児童館や青少年教育施設等を活用した地域の協力による子どもの健全育成

地域社会における子どもの数の減少は、遊びを通じての仲間関係の形成や子どもの社会性の発達と規範意識の形成に大きな影響があると考えられるため、全ての子どもを対象として放課後や週末等に、地域の方々の協力を得て、地域において子どもが自主的に参加し、自由に遊べ、学習や様々な体験活動、地域住民との交流活動等を行うことができる安全・安心な居場所づくりの推進が重要である。

また、子どもの健全育成を図る上で、児童館、公民館、青少年教育施設、学校等の社会資源及び児童委員、主任児童委員、子育てに関する活動を行うNPO、地域ボランティア、子ども会、自治会等を活用した取組を進めることが効果的である。とりわけ、子どもの健全育成の拠点施設の一つである児童館は、中学生、高校生も含めた地域の全ての子どもの遊び、活動の拠点や居場所として、積極的な活用を図ることが重要である。また、子どもとその保護者が自由に交流できる場を提供し、交流を促進するよう配慮するなど、保護者に対する子育て支援を積極的に実施することも重要である。青少年教育施設は、地域における青少年の活動拠点として、自然体験活動を始めとする多様な体験活動の機会の提供を行っており、積極的な活用を図ることが重要である。学校においては、学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)等の活用、教育委員会による一元的な管理運営、業務委託や指定管理者制度による民間事業者等も活用した官民連携等の工夫により、管理事務における学校や教職員の負担軽減を図りつつ、学校施設の開放等を一層推進することが望ましい。

さらに、児童委員・主任児童委員が、地域における子育て支援や子どもの健全育成を通じた虐待の防止の取組等子どもと子育て家庭への支援を住民と一体となって進めることが必要である。

あわせて、性の逸脱行動の問題点等について、教育・啓発を推進することが重要である。また、いじめ問題への対応や少年非行等の問題を抱える子どもの立ち直り支援、保護者の子育て支援並びに引きこもり及び不登校への対応においては、児童相談所、学校、保護司、警察、地域ボランティア等が連携して地域社会全体で対処することが重要であり、地域ぐるみの支援ネットワークの整備や個別的・具体的な問題に対して関係機関による専門チームを編成し、対応するための参加・協力体制を整備することが望ましい。

(イ) 新・放課後子ども総合プラン

仕事と子育ての両立を支援するため、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学生の遊び及び生活の場を確保するとともに、次代を担う人材を育成する観点から、全ての小学生が放課後等を安心かつ安全に過ごし、多様な体験及び活動を行うことができるよう、平成三十年九月十四日に公表した新・放課後子ども総合プラン(以下「新・放課後プラン」という。)を着実に推進することが重要である。特に、小学校の余裕教室等を活用し、放課後児童健全育成事業(児童福祉法第六条の三第二項に規定する事業をいう。以下同じ。)及び地域住民等の参画を得て放課後等に全ての子どもたちを対象として学習や体験・交流活動等を行う事業(以下「放課後子供教室」という。)を可能な限り一体的に実施することが望ましい。

このため、市町村は、放課後児童健全育成事業の令和五年度に達成されるべき目標事業量並びに放課後児童健全育成事業及び放課後子供教室の一体的な実施に係る令和五年度に達成されるべき目標事業量(箇所数)を設定するとともに、放課後児童健全育成事業及び放課後子供教室の一体的な、又は連携による実施に関する具体的な方策、小学校の余裕教室等における放課後児童健全育成事業及び放課後子供教室の実施に係る教育委員会と福祉部局の具体的な連携に関する方策、特別な配慮を必要とする児童への対応に関する方策等について検討し、市町村行動計画に盛り込むことが重要である。

なお、新たに放課後児童健全育成事業及び放課後子供教室を実施する場合にあっては小学校の余裕教室等でこれらの事業を一体的に実施することを基本とすることにより、既に小学校の余裕教室等でこれらの事業を実施している場合にあっては放課後児童健全育成事業の対象となる小学生も放課後子供教室の活動に参加することが促進されるようプログラムを充実すること、これらの事業に従事する者等の連携を確保すること等により、これらの事業の一体的な実施を推進していくことが重要である。

また、放課後児童健全育成事業の実施に当たっては、必要に応じ、希望する幼稚園や総合型地域スポーツクラブ等の地域の社会資源の活用を検討するとともに、その運営に当たっては、開所時間の延長に係る取組や高齢者等の地域の人材の活用等、地域の実情に応じた効果的・効率的な取組を推進することが重要である。

放課後子供教室については、地域学校協働活動を全国的に推進するため、平成二十九年三月に社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)が改正、同年四月に施行され、市町村の教育委員会は、放課後子供教室を含む地域学校協働活動の機会を提供する事業を実施するに当たっては、地域住民等と学校との連携協力体制の整備、普及啓発その他必要な措置を講ずること、また、地域学校協働活動の円滑かつ効果的な実施を図るため地域学校協働活動推進員を委嘱できることとされた。このため、市町村は地域学校協働活動の実施計画と新・放課後プランの事業計画との整合性の確保に十分に留意することが重要である。

オ 地域における人材養成

子ども・子育て支援制度では、保育所や幼稚園における子育て支援のみならず、地域のニーズに応じた子育て支援を充実するため、支援の担い手となる人材の確保が重要である。そこで、高齢者や育児経験豊かな主婦その他の地域人材を中心とした養成と、それらの人材を効果的に活用することが重要である。

カ その他

アからオまでに掲げる施策を実施するに当たっては、地域の高齢者の参画を得る等、世代間交流の推進を図ることが必要である。また、幼稚園の園庭・園舎を開放し、子育て相談や未就園児の親子登園等を推進することや各種の子育て支援サービスの場として学校の余裕教室等公共施設の余裕空間や商店街の空き店舗を活用することが望ましい。

(2) 母性並びに乳児及び幼児等の健康の確保及び増進

母性並びに乳児及び幼児等の健康の確保及び増進を図る観点から、保健、医療、福祉及び教育の分野間の連携を図りつつ、地域における母子保健施策等の充実が図られる必要がある。

また、計画の策定に当たっては、二十一世紀における母子保健の国民運動計画である「健やか親子二十一(第二次)」の趣旨を十分踏まえたものとするとともに、母子保健推進員、愛育班等の地域に根ざした住民活動との連携等についても留意することが望ましい。

さらに、市町村において母子保健サービスと子育て支援サービスを一体的に提供する母子健康包括支援センター(母子保健法(昭和四十年法律第百四十一号)第二十二条第一項に規定する母子健康包括支援センターをいう。以下同じ。)を設置し、母子保健事業の推進に必要な保健師、助産師、看護師、ソーシャルワーカー、管理栄養士等の人材が確保されることが重要である。

ア 切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策

母子健康包括支援センターを設置し、妊娠期から育児期までにわたる切れ目ない支援を提供することが必要である。

また、妊娠期、出産期、新生児期及び乳幼児期を通じて母子の健康が確保されるよう、妊婦健診、産婦健診、産後ケア、乳幼児健診、新生児聴覚検査、新生児訪問、両親学級、予防接種等の母子保健における健康診査、訪問指導、保健指導等の充実が必要である。

特に、親の育児不安の解消等を図るため、産後ケア、乳幼児健診等の場を活用し、親への相談指導等を実施するとともに、児童虐待の発生予防の観点を含め、妊娠期からの継続した支援体制の整備を図ることが重要である。

また、こうした乳幼児健診等の場を通じて、誤飲、転落・転倒、やけど等の子どもの事故の予防のための啓発等の取組を進めることが望ましい。

さらに、妊娠や出産についての満足の程度が、産後のメンタルヘルスや育児の状況にも関わることから、妊娠・出産・育児期の環境整備の充実が求められる。妊婦やその家族に対する出産準備教育や相談の場の提供等を行うことはもとより、出産体験の振り返りの機会の提供や産前・産後・育児期の支援の充実が必要である。

イ 学童期・思春期から成人期に向けた保健対策の充実

十代の自殺や性、不健康やせ等の思春期における課題は、次世代の子どもの心身の健康に関する重要な課題であり、その重要性を認識し保健対策の充実等を進めることが重要である。

十代の自殺死亡率の減少に向け、保健・福祉関係者、教育関係者、地域活動団体等の幅広い関係者が、児童生徒の問題行動の未然防止や自殺の兆候の早期発見、原因の早期解消等に取り組むほか、児童生徒の心のケアを進める相談体制の充実が重要である。

十代の人工妊娠中絶、性感染症等の問題に対応するため、性に関する健全な意識のかん養と併せて、性や性感染症予防に関する正しい知識の普及を図ることが重要である。また、妊娠前から妊娠・出産・育児に関する正しい知識を得られるなどの健康行動が求められるとともに、思春期の子どもの身体的・心理的状況を理解し子どもの行動を受け止めるなど地域づくりが重要である。

さらに、喫煙や薬物等に関する教育、学童期・思春期における心の問題に係る専門家の養成及び地域における相談体制の充実等を進めることが重要である。

ウ 「食育」の推進

朝食欠食等の食習慣の乱れや思春期やせに見られるような心と身体の健康問題が子どもたちに生じている現状に鑑み、乳幼児期からの正しい食事の摂り方や望ましい食習慣の定着及び食を通じた豊かな人間性の形成・家族関係づくりによる心身の健全育成を図るため、保健分野や教育分野を始めとする様々な分野が連携しつつ、乳幼児期から思春期まで発達段階に応じた食に関する学習の機会や情報提供を進めるとともに、保育所の調理室等を活用した食事づくり等の体験活動や子ども参加型の取組を進めることが重要である。

また、低出生体重児の増加等を踏まえ、母性の健康の確保を図る必要があることから、妊娠前からの適切な食生活の重要性を含め、妊産婦等を対象とした食に関する学習の機会や情報提供を進めることが重要である。

エ 子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり

親が安心して子どもを生み育て、子どもが将来に夢を持って健やかに育つ環境を築くためには、国や地方公共団体による子育て支援策の拡充に加え、地域、学校、企業等が協調しながらネットワークを作り、親子を温かく見守り支える機運を社会全体で高めていくことが重要である。

母子保健に携わる者は、日常の様々な活動を通じて、関連機関の連携を有機的なものとするとともに、地域におけるネットワークの構築と成熟のための努力が重要である。

オ 小児医療の充実

小児医療体制は、安心して子どもを生み、健やかに育てることができる環境の基盤となるものであることから、小児医療の充実・確保に取り組むこと、特に小児救急医療について、都道府県、近隣の市町村及び関係機関との連携の下、積極的に取り組むことが望ましい。

(3) 子どもの心身の健やかな成長に資する教育環境の整備

ア 次代の親の育成

男女が協力して家庭を築くこと及び子どもを生み育てることの意義に関する教育・広報・啓発について、各分野が連携しつつ効果的な取組を推進することが必要である。

また、家庭を築き、子どもを生み育てたいと思う男女が、その希望を実現することができるようにするため、地域社会の環境整備を進めることが必要である。

特に、中学生、高校生等が、子どもを生み育てることの意義を理解し、子どもや家庭の大切さを理解できるようにするため、保育所、幼稚園、児童館、乳幼児健診の場等を活用し、乳幼児と触れ合う機会を広げるための取組を推進することが必要である。

イ 子どもの生きる力の育成に向けた学校の教育環境等の整備

次代の担い手である子どもが個性豊かに生きる力を伸長することができるよう、次のような取組により、学校の教育環境等の整備に努めることが必要である。

(ア) 確かな学力の向上

子どもが社会の変化の中で主体的に生きていくことができるよう、基礎的・基本的な知識・技能と思考力・判断力・表現力等、主体的に学習に取り組む態度などの確かな学力を身につけさせるため、教育内容・方法の一層の充実を図ることが重要である。そのため、子ども、学校及び地域の実態を踏まえて創意工夫し、子ども一人一人に応じたきめ細かな指導の充実や外部人材の協力による学校の活性化等の取組を推進することが望ましい。

全国学力・学習状況調査の結果から、児童生徒の学力、学力と学習状況の関係等を分析・検証し、課題がみられる学校の改善に向けた取組への支援を行うことが重要である。

(イ) 豊かな心の育成

豊かな心を育むため、道徳教育の指導方法や指導体制の工夫改善等を進め、特別の教科である道徳を要とする道徳教育の充実を図るとともに、地域と学校との連携・協力により、農山漁村における長期宿泊体験活動を始めとした多様な体験活動や子どもの読書活動を推進するなどの取組の充実が重要である。

また、いじめ、暴力行為、不登校、児童虐待等に対応するために、専門家による相談体制の強化、学校、家庭、地域及び関係機関との間のネットワークづくり等も重要である。

(ウ) 健やかな体の育成

子どもの体力は、水準の高かった昭和五十年から昭和六十年頃までと比べると依然低い水準にあり、生活習慣の乱れや肥満の増加等の現代的課題が指摘されている現状を踏まえ、子どもが生涯にわたって積極的にスポーツに親しむ習慣、意欲及び能力を育成するため、優れた指導者の育成及び確保、指導方法の工夫及び改善等を進め、体育の授業を充実させるとともに、子どもが自主的に様々なスポーツに親しむことができる運動部活動についても、外部指導者の活用や地域との連携の推進等により改善し、また充実させるなど、学校におけるスポーツ環境の充実を図ることが重要である。また、子どもに生涯にわたる心身の健康の保持増進に必要な知識や適切な生活習慣等を身に付けさせるための健康教育を推進することが重要である。

(エ) 信頼される学校づくり

学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)の活用等により、保護者や地域住民等の参画を得ながら学校運営の改善や、学校と地域学校協働本部等との連携協力体制の充実を図り、社会総がかりで子どもを育む「地域とともにある学校づくり」を進めることが重要である。

また、指導が不適切な教員に対する人事管理を公正かつ適正に行うとともに、教員一人一人の能力や実績等を適正に評価し、それを配置、処遇、研修等に適切に結び付けることも重要である。

さらに、子どもに安全で豊かな学校環境を提供するために、学校施設の整備を適切に行っていくことも必要である。

あわせて、学校においては、児童生徒が安心して教育を受けることができるよう、各学校が、家庭や地域の関係機関・関係団体とも連携しながら、地域全体で子どもの安全を見守る環境を整備することが重要である。

(オ) 幼児教育の充実

市町村子ども・子育て支援事業計画に従い、必要な措置の実施に努めることが重要である。

ウ 学校・家庭・地域の連携・協働による教育力の向上

学校・家庭・地域がそれぞれの役割・責任を自覚し、連携・協働し、地域社会全体で子どもを育てる観点から、家庭や地域の教育力を総合的に高め、社会全体の教育力の向上を目指すことが重要である。

(ア) 家庭の教育力の向上

妊娠期から学齢期以降までの育児期にわたる切れ目ない支援の実現に向けて、地域における子育て支援と家庭教育支援の連携体制を構築し、教育委員会と関係部局の間、関係機関や関係者の間で支援が必要な子どもや家庭に関する情報の共有化や協働の促進を図りつつ、家庭教育支援を充実させることが重要である。また、様々な課題を抱えながらも地域から孤立し、自ら相談の場にアクセスすることが困難な家庭やその親子に対する支援を強化することも重要である。

さらに、社会全体で子どもの生活リズムの向上を図るため、「早寝早起き朝ごはん」国民運動の継続的な推進等を通じ、子どもの基本的な生活習慣の確立や生活リズムの向上につながる活動を展開することが重要である。

(イ) 地域の教育力の向上

子どもが、自分で課題を見つけ、自ら学び主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する力や、他人を思いやる心や感動する心等の豊かな人間性、たくましく生きるための健康や体力を備えた生きる力を、学校、家庭及び地域が相互に連携しつつ社会全体で育んでいくことが重要である。

このため、学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)を活用した幅広い地域住民等の参画による地域学校協働活動の推進、森林等の豊かな自然環境等、地域の資源を活用した農林漁業体験や自然体験等の多様な体験活動や子どもの読書活動の機会の積極的な提供、世代間交流の推進及び学校施設の地域開放、総合型地域スポーツクラブの整備、スポーツ指導者の育成等子どもの多様なスポーツニーズに応える地域のスポーツ環境の整備を図ること等により、地域の教育力を向上させ、活力ある地域づくりにもつなげることが重要である。

さらに、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学生の遊び及び生活の場を確保するとともに、次代を担う人材を育成する観点から、新・放課後プランに基づき、放課後児童健全育成事業及び放課後子供教室を着実に推進することが重要である。

エ 子どもを取り巻く有害環境対策の推進

街中の一般書店やコンビニエンスストア等で、性や暴力等に関する過激な情報を内容とする雑誌、ビデオ、コンピューターソフト等が販売されていることに加え、テレビ、インターネット等のメディア上の性や暴力等の有害情報やインターネット上のいじめについては、子どもに対する悪影響が懸念される状況であることから、関係機関・団体やPTA、ボランティア等の地域住民と連携・協力をして、関係業界に対する自主的措置を働きかけることが重要である。

また、スマートフォン等の情報機器の普及とともに、SNS等に起因する子どもの性被害等が問題となっていることを踏まえ、青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成二十年法律第七十九号)等に基づき、地域住民や関係機関・団体との連携協力体制を整備し、青少年がインターネットを安全・安心に利用できるようにするため、保護者及び青少年に対するフィルタリングの普及啓発を推進することが重要である。

さらに、各種メディアへの過度な依存による弊害について啓発するとともに、子どもたちが有害情報等に巻き込まれないよう、地域、学校及び家庭における情報モラル教育を推進することが重要である。

(4) 子育てを支援する生活環境の整備

ア 良質な住宅の確保

住生活基本計画(平成二十八年三月十八日閣議決定)に基づき、深刻な少子化の状況を踏まえ、子育て世帯を支援していく観点から、結婚、出産を希望する若年世帯、子育て世帯が必要とする質や広さの住宅(民間賃貸、公的賃貸、持家)に、収入等の世帯の状況に応じて居住できるよう支援を実施することが望ましい。

具体的には、民間賃貸住宅を子育て世帯向けにリフォームすることを促進すること等により民間賃貸住宅を活用すること、子育て世帯等を対象とした公営住宅への優先入居、UR賃貸住宅等の家賃低廉化等により公的賃貸住宅への入居を支援すること、子育て世帯等が必要とする良質で魅力的な既存住宅の流通の促進等により持家の取得を支援することが望ましい。

イ 良好な居住環境の確保

住生活基本計画に基づき、子育て世帯が、地域において安全・安心で快適な住生活を営むことができるよう、住まいの近くへの子育て支援施設の立地誘導等により、地域ぐるみで子どもを育む環境の整備に取り組むこと、公的賃貸住宅団地の建替え等の適切な実施と、その機会を捉えた子育て世帯の支援に資する施設等の地域の拠点の形成による居住環境の再生の推進を図ることが望ましい。

さらに、世代間で助け合いながら子どもを育てることができる三世代同居・近居の促進を図ることが望ましい。

加えて、清浄な空気環境を保つため、内装材等からの化学物質の発生防止、換気等について、適正な水準を確保することが必要である。

ウ 安全な道路交通環境の整備

高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成十八年法律第九十一号)に基づき、駅、官公庁施設、病院等を相互に連絡する道路について、移動等の円滑化を推進することが望ましい。

また、生活道路等において、車両速度の抑制、通過交通の進入抑制を図る物理的デバイスの設置及び歩道等の整備等の対策をビッグデータを活用して進め、歩車が共存する安全で安心な道路空間を創出すること等が望ましい。

また、未就学児を中心に子どもが日常的に集団で移動する経路等において、歩道等の整備等、安全・安心な歩行空間の創出を推進することが望ましい。

さらに、歩行者、自転車、自動車が適切に分離された安全で快適な自転車利用環境の創出を推進することが望ましい。

加えて、妊婦等に配慮した道路上の駐停車場所の確保等を図ることが望ましい。

エ 安心して外出できる環境の整備

(ア) 公共施設、公共交通機関、建築物等のバリアフリー化

妊産婦、乳幼児連れ等全ての人が安心して外出できるよう、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に基づく基本構想等を踏まえ、道路、公園、公共交通機関、公的建築物等において、段差の解消等のバリアフリー化の推進に努めることが必要である。あわせて、妊産婦への配慮、ベビーカーの安全な使用や使用者への配慮等への理解を深める「心のバリアフリー」のための取組等を行うことにより、ハード・ソフトの両面から一体的なバリアフリー化を進めていくことが望ましい。

(イ) 子育て世帯にやさしいトイレ等の整備

公共施設等において、子どもサイズの便器・手洗い器、ベビーベッド、ベビーチェア、ゆったりした化粧室、授乳室の設置などの子育て世帯が安心して利用できるトイレの整備や商店街の空き店舖等を活用した託児施設等の場の整備を推進することが望ましい。

(ウ) 子育て世帯への情報提供

「子育てバリアフリー」マップの作成・配布や、各種のバリアフリー施設の整備状況等、子育て世帯へのバリアフリー情報の提供を推進することが望ましい。

オ 安全・安心まちづくりの推進等

子どもが犯罪等の被害に遭わないようなまちづくりを進めるため、道路、公園等の公共施設や住居の構造、設備、配置等について、犯罪等の防止に配慮した環境設計を行うことが重要である。

また、侵入による犯罪の防止を図るため、関係機関・団体と連携して、防犯性能の高いドア、窓、シャッター等の建物部品や優良防犯機器の普及促進を図ることが重要である。

(5) 職業生活と家庭生活との両立の推進等

ア 仕事と生活の調和の実現のための働き方の見直し(長時間労働の抑制に取り組む労使に対する支援等を含む。)

仕事と生活の調和の実現については、憲章及び行動指針において、労使を始め国民が積極的に取り組むこと、国や地方公共団体が支援すること等により、社会全体の運動として広げていく必要があるとされている。

このため、地域の実情に応じ、自らの創意工夫の下に、次のような施策を進めることが望ましい。その際、都道府県、地域の企業、経済団体、労働者団体、次世代育成支援対策推進センター、都道府県労働局、仕事と生活の調和の実現のための働き方の見直しや子ども・子育て支援に取り組む民間団体等と相互に密接に連携し、協力し合いながら、地域の実情に応じた取組を進めることが重要である。

(ア) 仕事と生活の調和の実現に向けた労働者、事業主、地域住民の理解や合意形成を促進するための広報・啓発

(イ) 法その他の関係法律、一般事業主行動計画、認定制度及び特例認定制度に関する労働者、事業主、地域住民への広報・啓発

(ウ) 仕事と生活の調和の実現のための働き方の見直しや次世代育成支援対策に取り組む企業や民間団体の好事例の情報の収集提供等

(エ) 企業における仕事と生活の調和に関する研修やコンサルタント・アドバイザーの派遣

(オ) 仕事と生活の調和の実現に積極的に取り組む企業に付与される認定マーク(くるみん、くるみんプラス、トライくるみん及びトライくるみんプラス)及び特例認定マーク(プラチナくるみん及びプラチナくるみんプラス)の周知、表彰制度等仕事と生活の調和を実現している企業を社会的に評価することの促進

(カ) 融資制度や優遇金利の設定、公共調達における優遇措置等による、仕事と生活の調和の実現に積極的に取り組む企業における取組の推進

イ 仕事と子育ての両立のための基盤整備

保育サービス及び放課後児童健全育成事業の充実、ファミリー・サポート・センターの設置促進等多様な働き方に対応した子育て支援を展開することが重要である。

(6) 結婚・妊娠・出産・育児の切れ目ない支援の推進

住民の結婚や妊娠・出産に関する希望を実現するため、結婚・妊娠・出産・育児の切れ目ない支援の推進が重要である。

このため、母子健康包括支援センターの設置等、妊産婦等の地域の実情に応じたニーズに対応し、ライフステージの各段階に応じたきめ細かい支援を行うことが望ましい。

(7) 子どもの安全の確保

ア 子どもの交通安全を確保するための活動の推進

未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策(令和元年六月十八日昨今の事故情勢を踏まえた交通安全対策に関する関係閣僚会議決定)を踏まえ、子どもを交通事故から守るため、警察、道路管理者、保育所、学校、児童館、関係民間団体等との連携・協力体制の強化を図り、総合的な交通事故防止対策を推進することが必要である。

(ア) 交通安全教育の推進

子ども及び子育てを行う親等を対象とした参加・体験・実践型の交通安全教育を交通安全教育指針(平成十年国家公安委員会告示第十五号)に基づき段階的かつ体系的に行うとともに、地域の実情に即した交通安全教育を推進するため、交通安全教育に当たる職員の指導力の向上及び地域における民間の指導者の育成が重要である。

(イ) チャイルドシートの正しい使用の徹底

チャイルドシートの正しい使用の徹底を図るため、チャイルドシートの使用効果及び正しい使用方法について普及啓発活動を積極的に展開するとともに、正しい使用を指導する指導員を養成することにより、幼児の保護者等に対する指導・助言、情報提供等の充実を図るほか、チャイルドシートの貸出制度、助成制度等を積極的に実施・拡充することにより、チャイルドシートを利用しやすい環境づくりを進めることが重要である。

(ウ) 自転車の安全利用の推進

子どもの自転車乗車時の乗車用ヘルメットの着用及び幼児同乗用自転車の幼児用座席におけるシートベルトの着用を推進するとともに、少子化対策や子育て支援の観点から幼児二人同乗用自転車の普及が促進されるよう、貸出制度、助成制度等の導入や拡充、安全利用に係る情報提供等について推進することが重要である。

イ 子どもを犯罪等の被害から守るための活動の推進

登下校防犯プラン(平成三十年六月二十二日登下校時の子供の安全確保に関する関係閣僚会議決定)を踏まえ、子どもを犯罪等の被害から守るため、次の施策を講ずることが重要である。

(ア) 住民の自主防犯行動を促進するための犯罪等に関する情報の提供の推進

(イ) 子どもを犯罪等の被害から守るための関係機関・団体との情報交換の実施

(ウ) 学校付近や通学路等におけるPTA等の学校関係者や防犯ボランティア、少年警察ボランティア等の関係機関・団体、事業者等の多様な担い手と連携したパトロール活動等の安全対策の推進及び学校と警察との橋渡し役としてのスクールサポーターの活用の推進

(エ) 子どもが犯罪の被害に遭わないようにするための被害防止教育の推進

(オ) 子どもの安全確保等のために活動する防犯ボランティア等に対する支援

ウ 被害に遭った子どもの保護の推進

いじめ、児童虐待、犯罪等により被害を受けた少年の精神的ダメージを軽減し、立ち直りを支援するため、子どもに対するカウンセリング、保護者に対する助言等学校や児童相談所等の関係機関と連携したきめ細かな支援を実施することが必要である。

(8) 要保護児童への対応等きめ細かな取組の推進

ア 児童虐待防止対策の充実

児童虐待の早期発見、早期対応のため、身近な場所における継続的な支援を行い、児童及び妊産婦の福祉に関し、実情の把握、情報の提供、相談、調査、指導、関係機関との連絡調整その他の必要な支援を行う子ども家庭総合支援拠点(児童福祉法第十条の二に規定する拠点をいう。以下同じ。)、母子健康包括支援センター、利用者支援事業(支援法第五十九条第一号に規定する事業をいう。以下同じ。)等により、地域における切れ目ない子育て支援を活用して虐待を予防するほか、児童相談所の権限や専門性を要する場合には、遅滞なく児童相談所へ事案を送致することや必要な助言を求めることが重要であり、このための関係機関との連携強化が望まれる。

(ア) 子どもの権利擁護

体罰によらない子育て等を推進するため、体罰や暴力が子どもに及ぼす悪影響や体罰によらない子育てに関する理解が社会で広まるよう、母子健康包括支援センターや乳幼児健診の場、地域子育て支援拠点事業(児童福祉法第六条の三第六項に規定する事業をいう。以下同じ。)、保育所、学校等を活用して普及啓発活動を行う。また、保護者として監護を著しく怠ることは、ネグレクト(児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号)第二条第三号に規定する行為をいう。)に該当することを踏まえ、子どもを自宅や車内に放置してはならないことを母子手帳や乳幼児健診の機会等を活用し、周知することが望ましい。

(イ) 児童虐待の発生予防、早期発見

市町村における児童虐待の発生予防、早期発見のため、産後の初期段階における支援等、支援を必要とする子どもや妊産婦への支援を行うべきである。あわせて、乳幼児健診未受診者、未就園、不就学等の子どもに関する定期的な安全確認や、乳児家庭全戸訪問事業の実施等を通じて、妊娠、出産及び育児期に養育支援を必要とする子どもや妊婦の家庭を早期に把握し、特に支援を必要とする場合には、養育支援訪問事業等の適切な支援につなげることが重要である。

また、市町村において児童福祉担当部局と母子保健担当部局が緊密な連携を図り、地域における相談窓口や地域子育て支援拠点事業を促進し、相談窓口の周知・徹底を含めた相談・支援につながりやすい仕組みづくりに努めるとともに、支援を要する妊婦、子ども等を発見した医療機関や学校、福祉関係者等と市町村が効果的に情報の提供及び共有を行うための連携体制の構築を図ることが望ましい。

(ウ) 児童虐待発生時の迅速・的確な対応

① 市町村における相談支援体制の強化

児童虐待防止対策体制総合強化プラン(平成三十年十二月十八日児童虐待防止対策に関する関係省庁連絡会議決定。以下「新プラン」という。)に基づき、子ども等に対する相談支援を行う子ども家庭総合支援拠点の整備を行うことが重要である。

② 関係機関との連携強化

児童虐待に迅速かつ的確に対応するためには、地域の関係機関が情報の収集及び共有により支援の内容を協議する要保護児童対策地域協議会(以下「協議会」という。)の取組の強化が重要である。

具体的には、協議会に、市町村の児童福祉、母子保健等の担当部局、児童相談所、保健センター、保健所、福祉事務所、児童委員、民生委員、保育所、認定こども園及び児童家庭支援センターその他の児童福祉施設、学校、教育委員会、警察、医療機関、医師会、歯科医師会、婦人相談所、婦人相談員、配偶者暴力相談支援センター、性犯罪・性暴力被害者支援のためのワンストップ支援センター、NPO、ボランティア等の民間団体並びに生活困窮者自立支援制度等の庁内関係部局等幅広い関係者の参加を得ることが望ましい。

協議会においては、子どもの置かれた状況を含めた個別ケースに関し、その状況やアセスメントの情報を共有し、関係機関で役割分担の下、支援を行うとともに、その状況を定期的に確認する。こうした進行管理は、要保護児童対策調整機関(以下「調整機関」という。)が適切に行うべきである。

このため、調整機関及び子ども家庭総合支援拠点に専門的な知識及び技術を有する職員の計画的な人材確保、育成や、都道府県等が実施する研修・講習会等への参加を通じた市町村の体制の強化及び資質の向上を図り、協議会の効果的な運営並びに市町村の虐待相談対応における組織的な対応及び適切なアセスメントを確保することが重要である。

また、孤立した子育てによって虐待につながることのないよう、利用者支援事業、地域子育て支援拠点事業等の利用を促進するなど、子育て支援サービス等の地域資源の充実を図る。

さらに、転居ケース等における転居後の情報共有や引継ぎを含め、児童相談所及び市町村の情報共有をより効率的かつ効果的に行うため、情報通信技術(以下「ICT」という。)の活用による情報共有を進めるべきである。

市町村は、一時保護等の実施が適当と判断した場合等、児童相談所の専門性や権限を要する場合には、遅滞なく児童相談所への事案送致や必要な助言を求めるべきである。さらに、都道府県と相互に協力して、児童虐待による死亡事例等の重大事例の検証を行うべきである。

(エ) 社会的養護施策との連携

市町村が次世代育成支援対策を推進するに際しては、子育て短期支援事業等が着実に実施されるよう、必要な措置の実施に努めるとともに、本事業を実施する児童養護施設等との連携、市町村の求めに応じて技術的助言等を行う児童家庭支援センターの活用等、社会的養護の地域資源を地域の子ども・子育て支援に活用するための連携が重要である。他方で、地域の里親や地域分散化を進める児童養護施設等において子どもが健やかに成長するためには、市町村、学校、民間団体等の地域の関係機関の理解と協力のほか、里親の開拓や里親支援につながる広報・啓発等における都道府県との連携により、地域の中で社会的養護が行えるような支援体制の整備をすることが重要である。また、母子生活支援施設については、母子が一緒に生活しつつ母と子の関係に着目した支援を受けることができることから、福祉事務所、児童相談所、婦人相談所等の関係機関と連携し、その積極的な活用、支援機能の充実、広域利用の推進を図ることが重要である。

イ 母子家庭及び父子家庭の自立支援の推進

母子及び父子並びに寡婦福祉法第六条第五項に規定する母子家庭等(以下「母子家庭等」という。)が増加している中で、母子家庭等の子どもの健全な育成を図るためには、母子及び父子並びに寡婦福祉法等の規定を踏まえて、きめ細かな福祉サービスの展開と自立・就業の支援に主眼を置き、子育て・生活支援策、就業支援策、養育費の確保策、面会交流の促進及び経済的支援策について、地域の母子家庭等の現状を把握しつつ、総合的な対策を適切に実施していくよう努めることが重要である。

具体的には、子育て短期支援事業、母子家庭日常生活支援事業及び父子家庭日常生活支援事業、保育所の入所及び放課後児童健全育成事業等の利用に際しての配慮等の各種支援策を推進するとともに、市及び福祉事務所を設置する町村においては、国の基本方針に則して、自立促進計画を策定する等により母子家庭等就業・自立支援事業や母子家庭等自立支援給付金事業等を総合的・計画的に進め、母子家庭等に対する支援を充実させるとともに、就業支援の実施に当たっては、就業支援専門員を配置しワンストップでの支援を提供するとともに、公共職業安定所等と十分に連携し、効果的な実施に努めることが重要である。

また、母子家庭の母及び父子家庭の父の就業を促進するため、民間事業者に対する協力の要請や母子・父子福祉団体等の受注機会の増大への努力等、必要な施策を講ずるように努めることも必要である。

さらに、住民に身近な地方公共団体として、母子家庭等に対する相談体制の充実や施策・取組についての情報提供を行うよう努めることが重要である。

ウ 障害児施策の充実等

障害の原因となる疾病及び事故の予防、早期発見並びに治療の推進を図るため、妊婦及び乳幼児に対する健康診査並びに学校における健康診断等を推進することが重要である。

また、障害児等特別な支援が必要な子どもの健全な発達を支援し、身近な地域で安心して生活できるようにする観点から、自立支援医療(育成医療)の給付のほか、年齢や障害等に応じた専門的な医療や療育の提供が重要である。また、保健、医療、福祉、教育等の各種施策の円滑な連携により、在宅支援の充実、就学支援を含めた教育支援体制の整備等の一貫した総合的な取組を推進するとともに、児童発達支援センター等による地域支援・専門的支援の強化や保育所等訪問支援の活用を通して地域の障害児等特別な支援が必要な子どもとその家族等に対する支援の充実に努めることが重要である。

人工呼吸器を装着している障害児その他の日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児(以下「医療的ケア児」という。)が身近な地域で必要な支援を受けられるよう、総合的な支援体制の構築に向け、関連分野の支援を調整するコーディネーターとして養成された相談支援専門員等の配置を推進することが重要である。

また、自閉症、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)等の発達障害を含む障害のある子どもについては、障害の状態に応じて、その可能性を最大限に伸ばし、当該子どもが自立し、社会参加をするために必要な力を培うため、教員、保育士等の資質や専門性の向上を図るとともに、専門家等の協力も得ながら一人一人の教育的ニーズに応じた適切な支援等を行うことが重要である。

そのためには、乳幼児期を含め早期からの教育相談や就学相談を行うことにより、本人や保護者に十分な情報を提供するとともに、認定こども園、幼稚園、保育所、小学校、特別支援学校等において、保護者を含めた関係者が教育上必要な支援等について共通理解を深めることにより、保護者の障害受容及びその後の円滑な支援につなげていくことが重要である。また、本人及び保護者と市町村、教育委員会、学校等とが、教育上必要な支援等について合意形成を図ることが望まれる。

特に発達障害については、社会的な理解が十分になされていないことから、適切な情報の周知も重要であり、さらに家族が適切な子育てを行えるよう家族への支援を行うなど、発達障害者支援センターとの連携を密にしながら、支援体制整備を行うことが重要である。

支援法第二十七条第一項に規定する特定教育・保育施設、支援法第二十九条第一項に規定する特定地域型保育事業者、放課後児童健全育成事業を行う者等は、障害児等特別な支援が必要な子どもの受入れを推進するとともに、受入れに当たっては、各関係機関との連携を図ることが重要である。

2 都道府県行動計画

都道府県は、次に掲げる都道府県が実施する施策と併せて、各市町村の計画的な施策の実施を支援するための措置を含めて、子どもと子育て家庭への支援に関連する施策及び事業を都道府県行動計画に体系的に盛り込むことが必要である。

都道府県行動計画に盛り込むべき事項としては、法第九条第一項において、①地域における子育ての支援、②保護を要する子どもの養育環境の整備、③母性並びに乳児及び幼児の健康の確保及び増進、④子どもの心身の健やかな成長に資する教育環境の整備、⑤子どもを育成する家庭に適した良質な住宅及び良好な居住環境の確保、⑥職業生活と家庭生活との両立の推進、⑦その他の次世代育成支援対策の実施が掲げられており、こうした施策の領域を踏まえ、計画策定に当たるものとする。

計画の策定に当たっては、次に掲げる次世代育成支援対策として重要な施策を踏まえつつ、各都道府県の実情に応じた施策をその内容に盛り込むことが必要である。

(1) 地域における子育ての支援

ア 地域における子育て支援サービスの充実

子育て支援に関するシンポジウムやセミナーの開催等により、地域全体で子育ての在り方を考えるための気運づくりや、子育て支援や子どもの健全育成に資するための子どもの視点に立った人材の確保・養成及び質の向上に努めることが重要である。

また、特定の市町村において、単独では実施することが困難なサービスがある場合には、広域的な観点から、市町村間の調整を行うことが望ましい。

イ 保育サービスの充実

都道府県子ども・子育て支援事業支援計画に従い、必要な措置の実施に努めることが重要である。

ウ 子育て支援のネットワークづくり

子育て支援サービス等の質の向上等を図る観点から、子育て支援サービスの都道府県の区域におけるネットワークの形成を促進するとともに、子育て支援サービス等に関する市町村やNPO等の先進的な取組事例を収集し、情報提供する等の支援を行うことが望ましい。

エ 子どもの健全育成

(ア) 児童館や青少年教育施設等を活用した地域の協力による子どもの健全育成

子どもの健全育成の拠点施設である児童館が、中学生、高校生も含めた地域の全ての子どもの遊び、活動の拠点や居場所として、また、子育て家庭の自由な交流の場として役割を果たすことができるよう、計画的な施設の整備、体系的な研修や人材の養成、効果的な広報活動及び関係機関等の間の連携・協力体制の構築を図ることが重要である。また、青少年教育施設は、地域における青少年の活動の拠点として、自然体験活動を始めとする多様な体験活動の機会と場の提供を行っており、積極的な活用を図ることが重要である。

また、性の逸脱行動の問題点等について、教育・啓発を推進することが重要である。さらに、いじめ問題への対応や少年非行等の問題を抱える子どもの立ち直り支援、保護者の子育て支援並びに引きこもり及び不登校への対応においては、児童相談所、学校、保護司、警察、地域ボランティア等が連携して地域社会全体で対処することが重要であり、地域ぐるみの支援ネットワークの整備や個別的・具体的な問題に対して関係機関による専門チームを編成し、対応するための参加・協力体制を整備することが望ましい。

(イ) 新・放課後プラン

市町村が新・放課後プランに基づく取組を円滑に進め、放課後児童健全育成事業及び放課後子供教室(以下この(イ)において「両事業」という。)の整備を促進していくため、都道府県は、放課後児童健全育成事業に従事する者及び放課後子供教室に参画する者の確保及び資質の向上を図るとともに、教育委員会と福祉部局との連携を図ることが重要である。このため、都道府県は、地域の実情に応じた両事業に係る研修の実施回数を含む実施方法等、両事業の実施に係る教育委員会と福祉部局との具体的な連携に関する方策、特別な配慮を必要とする児童への対応に関する方策等について検討し、都道府県行動計画に盛り込むことが重要である。研修については、放課後児童支援員となるための研修のほか、放課後児童健全育成事業に従事する者及び放課後子供教室に参画する者(地域学校協働活動推進員や地域ボランティア等)(以下この(イ)において「両事業の従事者等」と総称する。)の資質の向上を図るとともに、両事業の従事者等と小学校の教職員等との間での情報の共有等を行う観点から、両事業に係る人材の養成等のための合同の研修を実施することが望ましい。

また、放課後子供教室については、地域学校協働活動を全国的に推進するため、平成二十九年三月に社会教育法が改正、同年四月に施行され、都道府県の教育委員会は、放課後子供教室を含む地域学校協働活動の機会を提供する事業を実施するに当たっては、地域住民等と学校との連携協力体制の整備、普及啓発その他必要な措置を講じることや、地域学校協働活動の円滑かつ効果的な実施を図るため、地域学校協働活動推進員を委嘱できることとされた。このため、都道府県は地域学校協働活動の実施計画と新・放課後プランの事業計画との整合性の確保に十分に留意することが重要である。

オ 地域における人材養成

子ども・子育て支援制度では、教育・保育を行う者及び地域子ども・子育て支援事業に従事する者の確保並びに資質の向上については、都道府県の責務とされている。

子ども・子育て支援制度では、保育所や幼稚園だけでなく、地域のニーズに応じた子育て支援を充実させるため、保育士等の確保だけでなく、保育士等以外の担い手となる人材の確保が必要である。そこで、高齢者や育児経験豊かな主婦その他の地域人材を中心とした養成とそれらの人材を効果的に活用することが重要である。

(2) 母性並びに乳児及び幼児等の健康の確保及び増進

母性並びに乳児及び幼児等の健康の確保及び増進を図る観点から、保健、医療、福祉及び教育の分野間の連携を図りつつ、都道府県内における母子保健施策等の充実が図られる必要がある。

また、計画の策定に当たっては、二十一世紀における母子保健の国民運動計画である「健やか親子二十一(第二次)」の趣旨を十分踏まえたものとすることが望ましい。

さらに、保健所等都道府県において地域保健における広域的、専門的かつ技術的拠点となるべき基盤が適切に整備され、母子保健事業の推進に必要な協力・支援等を実施するための保健師、管理栄養士等の人材が確保されることが重要である。

ア 切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策

安心して子どもを生み、健やかに育てることができる環境づくりの一環として、周産期医療を必要とする新生児及び妊産婦に対応するため、周産期救急情報システムの整備を図る等周産期医療体制の整備を進めることが重要である。

市町村において、母子保健サービスと子育て支援サービスを一体的に提供する母子健康包括支援センターを設置し、妊娠期から育児期までにわたる切れ目ない支援を提供することができるよう、設置の促進や充実強化を図るための取組を充実させることが重要である。

また、妊娠期、出産期、新生児期及び乳幼児期を通じて母子の健康が確保されることが重要である。妊婦健診、産婦健診、産後ケア、乳幼児健診、新生児聴覚検査、新生児訪問、両親学級、予防接種等の母子保健における健康診査、訪問指導、保健指導等の事業の多くは市町村により行われているが、都道府県としては、広域的かつ専門的な立場から課題の把握等を行い、市町村と連携しつつ、市町村間における格差の解消や課題の解決に向けた取組を充実させることが重要である。

また、様々な機会を通じて、誤飲、転落・転倒、やけど等の子どもの事故の予防のための啓発等の取組を進めることが望ましい。

さらに、妊娠や出産についての満足の程度が、産後のメンタルヘルスや育児の状況にも関わることから、市町村と連携を図りつつ、妊娠・出産・育児期の環境整備を充実させることが必要である。

イ 学童期・思春期から成人期に向けた保健対策の充実

十代の自殺や性、不健康やせ等の思春期における課題は、次世代の子どもの心身の健康に関する重要な課題であり、その重要性を認識し保健対策の充実等を進めることが重要である。

十代の自殺死亡率の減少に向け、保健・福祉関係者、教育関係者、地域活動団体等の幅広い関係者が、児童生徒の問題行動の未然防止や自殺の兆候の早期発見、原因の早期解消等に取り組むことのほか、児童生徒の心のケアを進める相談体制を充実させることが重要である。

性に関する健全な意識のかん養を図るため、専門的・広域的観点からの情報収集及び調査研究を進め、効果的な情報提供の体制の整備を図ることが重要である。また、妊娠前から、妊娠・出産・育児に関する正しい知識を得られるなどの健康行動が求められるとともに、思春期の子どもの身体的・心理的状況を理解し子どもの行動を受け止めるなど地域づくりが重要である。

さらに、喫煙や薬物等に関する教育、学童期・思春期における心の問題に係る専門家の養成及び地域における相談体制の充実等を進めることが重要である。

ウ 「食育」の推進

乳幼児期からの正しい食事の摂り方や望ましい食習慣の定着、食を通じた豊かな人間性の形成・家族関係づくりによる心身の健全育成を図るとともに、母性の健康の確保を図るため、「食育」について地域社会全体で推進することが重要であることから、保健分野や教育分野を始めとする様々な分野が連携しつつ、専門的・広域的観点からの情報収集及び調査研究を進め、効果的な情報提供の体制を整備するとともに、食に関する関係機関等のネットワークづくりを進めることが重要である。

エ 子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり

親が安心して子どもを生み育て、子どもが将来に夢を持って健やかに育つ環境を築くためには、国や地方公共団体による子育て支援策の拡充に加え、地域、学校、企業等が協調しながらネットワークを作り、親子を温かく見守り支える機運を社会全体で高めていくことが重要である。

母子保健に携わる者は、日常の様々な活動を通じて、関連機関の連携を有機的なものとするとともに、地域におけるネットワークの構築と成熟のための努力が重要である。

オ 小児医療の充実

子どもが地域において、いつでも安心して医療サービスを受けられるよう小児医療の充実を図ること、特に、休日・夜間における小児救急患者を受け入れる小児救急医療体制の整備並びに小児の症状等に関する相談体制の整備及び住民への普及啓発を推進することが重要である。

カ 小児慢性特定疾病対策の推進

子どもの健全育成の観点から、治療が長期間にわたり医療費の負担が高額となる小児慢性特定疾病児童等の保護者に対して、引き続き、医療費助成を実施することが必要である。

また、小児慢性特定疾病児童等については、その自立支援が重要であることから、小児慢性特定疾病児童等自立支援事業について任意事業も含め、着実に実施することが重要である。当該事業を実施する際には、慢性疾病児童等地域支援協議会等において、関係者の間で地域における小児慢性特定疾病対策に関する課題を共有するとともに、必要な支援策について、小児慢性特定疾病児童等や家族の意見等も踏まえつつ、検討していくことが必要である。

さらに、小児期から成人期への移行期にある小児慢性特定疾病児童等へ適切に医療を提供するため、地域における医療従事者間の連携等支援体制の整備や、小児慢性特定疾病児童等や家族の疾病等の理解を深めるなどの自立支援が必要である。

キ 不妊に悩む方に対する支援充実

子どもを持ちたいのに子どもができない場合に不妊治療を受けるケースが多くなっていることを踏まえ、不妊に関する医学的な相談や不妊による心の悩みの相談等を行う不妊専門相談センターの整備を図るとともに、医療保険が適用されず、高額の医療費がかかる配偶者間の不妊治療への経済的支援を行うことが望ましい。

(3) 子どもの心身の健やかな成長に資する教育環境の整備

ア 次代の親の育成

男女が協力して家庭を築くこと及び子どもを生み育てることの意義に関する教育・広報・啓発について、各分野が連携しつつ効果的な取組を推進することが必要である。

また、家庭を築き、子どもを生み育てたいと思う男女が、その希望を実現することができるようにするため、地域社会の環境整備を進めることが必要である。

特に、若年者が自立して家庭を持てるようにするため、若年者、特に不安定就労若年者(フリーター)等に対し、意識啓発や職業訓練等を積極的に行うことにより、若年者の能力開発を推進し、適職選択による安定就労及びキャリア形成を支援することが必要である。

イ 子どもの生きる力の育成に向けた学校の教育環境等の整備

次代の担い手である子どもが個性豊かに生きる力を伸長することができるよう、次のような取組により、学校の教育環境等の整備に努めることが重要である。

(ア) 確かな学力の向上

子どもが社会の変化の中で主体的に生きていくことができるよう、基礎的・基本的な知識・技能と思考力・判断力・表現力等、主体的に学習に取り組む態度などの確かな学力を身に付けさせるため、教育内容及び方法の一層の充実を図ることが重要である。そのため、子ども、学校及び地域の実態を踏まえて創意工夫し、子ども一人一人に応じたきめ細かな指導の充実や外部人材の協力による学校の活性化等の取組を推進することが望ましい。

また、高等学校においては、多様化する生徒の実情を踏まえつつ、高校生の学習成果を多面的・客観的に評価する取組を進めるとともに、その結果を高等学校の指導改善等に活用することなどを通じた教育の質の保証と向上を促すことが重要である。

(イ) 豊かな心の育成

豊かな心を育むため、道徳教育の指導方法や指導体制の工夫改善等を進め、特別の教科である道徳を要とする道徳教育の充実を図るとともに、地域と学校との連携・協力により、農山漁村における長期宿泊体験活動を始めとした多様な体験活動や子どもの読書活動を推進するなどの取組の充実が重要である。

また、いじめ、暴力行為、不登校、児童虐待等に対応するために、専門家等による相談体制の強化、学校、家庭、地域及び関係機関との間のネットワークづくり等も重要である。

(ウ) 健やかな体の育成

子どもの体力は、水準の高かった昭和五十年から昭和六十年頃までと比べると依然低い水準にあり、生活習慣の乱れや肥満の増加等の現代的課題が指摘されている現状を踏まえ、子どもが生涯にわたって積極的にスポーツに親しむ習慣、意欲及び能力を育成するため、優れた指導者の育成及び確保、指導方法の工夫及び改善等を進め、体育の授業を充実させるとともに、子どもが自主的に様々なスポーツに親しむことができる運動部活動についても、外部指導者の活用や地域との連携の推進等により改善し、また充実させるなど、学校におけるスポーツ環境の充実を図ることが必要である。また、子どもに生涯にわたる心身の健康の保持増進に必要な知識や適切な生活習慣等を身に付けさせるための健康教育を推進することが重要である。

(エ) 信頼される学校づくり

学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)の活用等により、保護者や地域住民の参画を得ながら学校運営の改善や、学校と地域学校協働本部等との連携協力体制の充実を図り、社会総がかりで子どもたちを育む「地域とともにある学校づくり」を進めることが重要である。

また、指導が不適切な教員に対する人事管理を公正かつ適切に行うとともに、教員一人一人の能力や実績等を適正に評価し、それを配置、処遇、研修等に適切に結び付けることも重要である。

さらに、子どもに安全で豊かな学校環境を提供するために、学校施設の整備を適切に行っていくことも必要である。

あわせて、学校においては、児童生徒が安心して教育を受けることができるよう、各学校が、家庭や地域の関係機関・関係団体とも連携しながら、地域全体で子どもの安全を見守る環境を整備することが重要である。

(オ) 幼児教育の充実

都道府県子ども・子育て支援事業支援計画に従い、必要な措置の実施に努めることが重要である。

ウ 学校・家庭・地域の連携・協働による教育力の向上

学校・家庭・地域がそれぞれの役割・責任を自覚し、連携・協働し、地域社会全体で子どもを育てる観点から、家庭や地域の教育力を総合的に高め、社会全体の教育力の向上を目指すことが必要である。

(ア) 家庭の教育力の向上

妊娠期から学齢期以降までの育児期にわたる切れ目ない支援の実現に向けて、地域における子育て支援と家庭教育支援の連携体制を構築し、教育委員会と関係部局の間、関係機関や関係者の間で支援が必要な子どもや家庭に関する情報の共有化や協働の促進を図りつつ、家庭教育支援を充実させることが重要である。また、様々な課題を抱えながらも地域から孤立し、自ら相談の場にアクセスすることが困難な家庭やその親子に対する支援を強化することも重要である。

さらに、社会全体で子どもの生活リズムの向上を図るため、「早寝早起き朝ごはん」国民運動の継続的な推進等を通じ、子どもの基本的な生活習慣の確立や生活リズムの向上につながる活動を展開することが重要である。

(イ) 地域の教育力の向上

子どもが、自分で課題を見つけ、自ら学び主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する力や、他人を思いやる心や感動する心等の豊かな人間性、たくましく生きるための健康や体力を備えた生きる力を、学校、家庭及び地域が相互に連携しつつ社会全体で育んでいくことが重要である。

このため、学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)を活用した幅広い地域住民等の参画による地域学校協働活動の推進、森林等の豊かな自然環境等、地域の資源を活用した農林漁業体験や自然体験等の多様な体験活動や子どもの読書活動の機会の積極的な提供、世代間交流の推進及び学校施設の地域開放、総合型地域スポーツクラブの整備、スポーツ指導者の育成等子どもの多様なスポーツニーズに応える地域のスポーツ環境の整備を図ること等により、地域の教育力を向上させ、活力ある地域づくりにもつなげることが重要である。

さらに、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学生の遊び及び生活の場を確保するとともに、次代を担う人材を育成する観点から、新・放課後プランに基づき、放課後児童健全育成事業及び放課後子供教室を着実に推進することが重要である。

エ 子どもを取り巻く有害環境対策の推進

街中の一般書店やコンビニエンスストア等で、性や暴力等に関する過激な情報を内容とする雑誌、ビデオ、コンピューターソフト等が販売されていることに加え、テレビ、インターネット等のメディア上の性や暴力等の有害情報やインターネット上のいじめについては、子どもに対する悪影響が懸念される状況であることから、関係機関・団体やPTA、ボランティア等の地域住民と連携・協力をして、関係業界に対する自主的措置を働きかけることが重要である。

また、スマートフォン等の情報機器の普及とともに、SNS等に起因する子どもの性被害等が問題となっていることを踏まえ、青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律等に基づき、地域住民や関係機関・団体との連携協力体制を整備し、青少年がインターネットを安全・安心に利用できるようにするため、保護者及び青少年に対するフィルタリングの普及啓発を推進することが重要である。

さらに、各種メディアへの過度な依存による弊害について啓発するとともに、子どもたちが有害情報等に巻き込まれないよう、地域、学校及び家庭における情報モラル教育を推進することが重要である。

(4) 子育てを支援する生活環境の整備

ア 良質な住宅の確保

住生活基本計画に基づき、深刻な少子化の状況を踏まえ、子育て世帯を支援していく観点から、結婚、出産を希望する若年世帯、子育て世帯が必要とする質や広さの住宅(民間賃貸、公的賃貸、持家)に、収入等の世帯の状況に応じて居住できるよう支援を実施することが望ましい。

具体的には、民間賃貸住宅を子育て世帯向けにリフォームすることを促進すること等により民間賃貸住宅を活用すること、子育て世帯等を対象とした公営住宅への優先入居、UR賃貸住宅等の家賃低廉化等により公的賃貸住宅への入居を支援すること、子育て世帯等が必要とする良質で魅力的な既存住宅の流通の促進等により持家の取得を支援することが望ましい。

イ 良好な居住環境の確保

住生活基本計画に基づき、子育て世帯が、地域において安全・安心で快適な住生活を営むことができるよう、住まいの近くへの子育て支援施設の立地誘導等により、地域ぐるみで子どもを育む環境の整備に取り組むこと、公的賃貸住宅団地の建替え等の適切な実施と、その機会を捉えた子育て世帯の支援に資する施設等の地域の拠点の形成による居住環境の再生の推進を図ることが望ましい。

さらに、世代間で助け合いながら子どもを育てることができる三世代同居・近居の促進を図ることが望ましい。

加えて、清浄な空気環境を保つため、内装材等からの化学物質の発生防止、換気等について、適正な水準を確保することが必要である。

ウ 安全な道路交通環境の整備

高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に基づき、駅、官公庁施設、病院等を相互に連絡する道路について、移動等の円滑化を推進することが必要である。

また、生活道路等において、都道府県公安委員会と道路管理者が連携し、信号機の新設・高度化、並びにビッグデータを活用した車両速度の抑制、通過交通の進入抑制を図る物理的デバイスの設置及び歩道等の整備等の対策を進めるほか、最高速度三十キロメートル毎時の区域規制や路側帯の設置・拡幅等の対策を行い、歩車が共存する安全で安心な道路空間を創出すること等が重要である。

また、未就学児を中心に子どもが日常的に集団で移動する経路等において、歩道等の整備等、安全・安心な歩行空間の創出を推進することが望ましい。

さらに、歩行者、自転車、自動車が適切に分離された安全で快適な自転車利用環境の創出を推進することが望ましい。

加えて、妊婦等に配慮した道路上の駐停車場所の確保等について推進することが重要である。

エ 安心して外出できる環境の整備

(ア) 公共施設、公共交通機関、建築物等のバリアフリー化

妊産婦、乳幼児連れ等全ての人が安心して外出できるよう、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に基づく基本構想等を踏まえ、道路、公園、公共交通機関、公的建築物等において、段差の解消等のバリアフリー化の推進に努めることが必要である。あわせて、妊産婦への配慮、ベビーカーの安全な使用や使用者への配慮等への理解を深める「心のバリアフリー」のための取組等を行うことにより、ハード・ソフトの両面から一体的なバリアフリー化を進めていくことが望ましい。

(イ) 子育て世帯にやさしいトイレ等の整備

公共施設等において、子どもサイズの便器・手洗い器、ベビーベッド、ベビーチェア、ゆったりした化粧室、授乳室の設置などの子育て世帯が安心して利用できるトイレの整備や商店街の空き店舗等を活用した託児施設等の場の整備を推進することが望ましい。

(ウ) 子育て世帯への情報提供

各種のバリアフリー施設の整備状況等、子育て世帯へのバリアフリー情報の提供を推進することが望ましい。

オ 安全・安心まちづくりの推進等

子どもが犯罪等の被害に遭わないようなまちづくりを進めるため、道路、公園等の公共施設や住居の構造、設備、配置等について、犯罪等の防止に配慮した環境設計を行うことが重要である。

また、侵入による犯罪の防止を図るため、関係機関・団体と連携して、防犯性能の高いドア、窓、シャッター等の建物部品や優良防犯機器の普及促進を図ることが重要である。

(5) 職業生活と家庭生活との両立の推進等(長時間労働の抑制に取り組む労使に対する支援等を含む。)

ア 仕事と生活の調和の実現のための働き方の見直し

仕事と生活の調和の実現については、憲章及び行動指針において、労使を始め国民が積極的に取り組むこと、国や地方公共団体が支援すること等により、社会全体の運動として広げていくことが必要とされている。

このため、地域の実情に応じ、自らの創意工夫の下に、次のような施策を進めることが望ましい。その際、市町村、地域の企業、経済団体、労働者団体、次世代育成支援対策推進センター、都道府県労働局、仕事と生活の調和の実現のための働き方の見直しや子ども・子育て支援活動に取り組む民間団体等と相互に密接に連携し、協力し合いながら、地域の実情に応じた取組を進めることが重要である。

(ア) 仕事と生活の調和の実現に向けた労働者、事業主、地域住民の理解や合意形成を促進するための広報・啓発

(イ) 法その他の関係法律、一般事業主行動計画、認定制度及び特例認定制度に関する労働者、事業主、地域住民への広報・啓発

(ウ) 仕事と生活の調和の実現のための働き方の見直しや次世代育成支援対策に取り組む企業や民間団体の好事例の情報の収集提供等

(エ) 仕事と生活の調和に関する企業における研修やコンサルタント・アドバイザーの派遣

(オ) 仕事と生活の調和の実現に積極的に取り組む企業に付与される認定マーク(くるみん、くるみんプラス、トライくるみん及びトライくるみんプラス)及び特例認定マーク(プラチナくるみん及びプラチナくるみんプラス)の周知、表彰制度等仕事と生活の調和を実現している企業を社会的に評価することの促進

(カ) 融資制度や優遇金利の設定、公共調達における優遇措置等による、仕事と生活の調和の実現に積極的に取り組む企業における取組の支援

イ 仕事と子育ての両立のための基盤整備

市町村と連携を図りつつ、広域的な観点から保育サービスの充実等多様な働き方に対応した子育て支援を展開することが重要である。

(6) 結婚・妊娠・出産・育児の切れ目ない支援の推進

住民の結婚や妊娠・出産に関する希望を実現するため、結婚・妊娠・出産・育児の切れ目ない支援の推進が重要である。

このため、地域の実情に応じたニーズに対応し、ライフステージの各段階に応じたきめ細かい支援として、結婚支援、妊娠・出産等に関する正確な情報提供、結婚・妊娠・出産・育児をしやすい環境整備など切れ目ない支援を、自らの創意工夫の下で展開することが重要である。

(7) 子どもの安全の確保

ア 子どもの交通安全を確保するための活動の推進

未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策を踏まえ、子どもを交通事故から守るため、市町村、道路管理者、保育所、学校、児童館、関係民間団体等との連携・協力体制の強化を図り、総合的な交通事故防止対策を推進することが必要である。

(ア) 交通安全教育の推進

子ども及び子育てを行う親等を対象とした参加・体験・実践型の交通安全教育を交通安全教育指針に基づき段階的かつ体系的に行うことが必要である。

また、地域の実情に即した交通安全教育を推進するため、交通安全教育に当たる職員の指導力の向上及び地域における民間の指導者の育成を図るとともに、地域における交通事故を様々な角度から総合的・科学的に調査・分析し、事故の発生要因等に応じた効果的な事故防止対策を策定することが重要である。

(イ) チャイルドシートの正しい使用の徹底

チャイルドシートの正しい使用の徹底を図るため、チャイルドシートの使用効果及び正しい使用方法について普及啓発活動を積極的に展開するとともに、正しい使用を指導する指導員を養成することにより、幼児の保護者等に対する指導・助言、情報提供等の充実を図るほか、チャイルドシートの貸出制度、助成制度等を積極的に実施・拡充することにより、チャイルドシートを利用しやすい環境づくりを進めることが重要である。

(ウ) 自転車の安全利用の推進

子どもの自転車乗車時の乗車用ヘルメットの着用及び幼児同乗用自転車の幼児用座席におけるシートベルトの着用を推進するとともに、少子化対策や子育て支援の観点から幼児二人同乗用自転車の普及が促進されるよう、貸出制度、助成制度等の導入や拡充、安全利用に係る情報提供等について推進することが重要である。

イ 子どもを犯罪等の被害から守るための活動の推進

登下校防犯プランを踏まえ、子どもを犯罪等の被害から守るため、次の施策を講ずることが重要である。

(ア) 住民の自主防犯行動を促進するための犯罪等に関する情報の提供の推進

(イ) 子どもを犯罪等の被害から守るための関係機関・団体との情報交換の実施

(ウ) 学校付近や通学路等におけるPTA等の学校関係者や防犯ボランティア、少年警察ボランティア等の関係機関・団体、事業者等の多様な担い手と連携したパトロール活動等の安全対策の推進及び学校と警察との橋渡し役としてのスクールサポーターの活用の推進

(エ) 子どもが犯罪の被害に遭わないようにするための被害防止教育の推進

(オ) 子どもの安全確保等のために活動する防犯ボランティア等に対する支援

ウ 被害に遭った子どもの保護の推進

いじめ、児童虐待、犯罪等により被害を受けた少年の精神的ダメージを軽減し、立ち直りを支援するため、子どもに対するカウンセリング、保護者に対する助言等学校や児童相談所等の関係機関と連携したきめ細かな支援を実施することが必要である。

(8) 要保護児童への対応等きめ細かな取組の推進

ア 児童虐待防止対策の充実

児童虐待から子どもを守るためには、発生予防から早期発見、早期対応、子どもの保護及び支援、保護者への指導及び支援等の各段階での切れ目ない総合的な対策を講ずることが重要である。また、福祉、保健、医療、教育、警察等の関係機関が連携し、情報を共有して地域全体で子どもを守る体制の充実が重要であり、「「都道府県社会的養育推進計画」の策定について」(平成三十年七月六日付け子発〇七〇六第一号厚生労働省子ども家庭局長通知。以下「推進計画策定要領」という。)の規定するところのほか、以下の事項に沿って、市町村とも連携しつつ都道府県において計画を策定して推進することが望ましい。

(ア) 子どもの権利擁護

体罰によらない子育て等を推進するため、体罰や暴力が子どもに及ぼす悪影響や体罰によらない子育てに関する理解が社会で広まるよう、普及啓発活動を行う。また、子どもの権利擁護の観点から、子ども自身や関係機関が児童福祉審議会へ申立てができることについて、周知を行うなど、児童福祉審議会の活用を促進することが望ましい。

(イ) 児童虐待の発生予防、早期発見

都道府県は、妊娠等に関して悩みを抱える妊婦等に対する相談体制の整備等の支援を行うことが重要である。また、医療機関等と市町村との連携及び情報共有により、養育支援を必要とする子どもや妊婦の家庭を把握し、市町村等による必要な支援につなげるため、必要な環境整備や市町村等の取組への支援を行うことが重要である。

児童相談所と市町村その他の関係機関との適切な役割分担及び連携を図るため、児童相談所は、市町村の児童福祉、母子保健等の担当部局、保健センター、保健所、福祉事務所、児童委員、民生委員、保育所、認定こども園及び児童家庭支援センターその他の児童福祉施設、学校、教育委員会、警察、医師(産科医、小児科医、精神科医、法医学者等)、歯科医師、婦人相談所、婦人相談員、配偶者暴力相談支援センター、性犯罪・性暴力被害者支援のためのワンストップ支援センター、NPO、ボランティア等の民間団体並びに生活困窮者自立支援制度等の庁内関係部局の関係者との連携を強化することが望ましい。

また、都道府県は、対応が困難なケースには児童相談所が主体的に関与することを前提として、ケースに関する市町村との積極的な情報共有、支援方針の協議等の協働に努める。協議会における児童相談所の積極的な助言及び協議会関係者向けの研修の実施等により、協議会の機能強化や効果的運営を支援することが望ましい。

加えて、全国児童相談所共通ダイヤル「189(いちはやく)」の周知や、SNS等を活用した相談・支援につながりやすい仕組みづくりを進めるとともに、女性に対する暴力をなくす運動の機会を捉え、DVの特性や子どもへの影響等に係る啓発活動を推進することが重要である。

(ウ) 児童虐待発生時の迅速・的確な対応(児童相談所の体制強化等)

児童虐待防止対策の中心となる児童相談所の人員体制の強化及び専門性の向上が重要である。具体的には、新プランに基づき、ケースの組織的な管理及び対応、適切なアセスメント等を可能とするため、児童福祉司、児童心理司、保健師等を増員するなどの職員の適切な配置、法律関係業務について常時弁護士による指導又は助言の下で対応するための体制整備、医学的な専門性確保のための医師の配置等の児童相談所の体制を強化することが重要である。

また、研修等による職員の資質向上や保護者支援プログラムの推進により、保護者への指導及び支援を行うための専門性の確保を図ることが望ましい。

さらに、一時保護等の介入的対応を行う職員と保護者支援を行う職員を分けるなどの措置の実施や、第三者評価等児童相談所の業務に対する評価の実施や、児童相談所業務の外部委託等の推進等、児童相談所の業務の見直しを進めることが望ましい。一時保護所については、子どもの視点に立って、権利が保障され、一時保護を必要とする子どもを適切な環境において保護できるよう、一時保護委託も含めて、個別対応できる居室の確保等の環境整備等機能及び体制の充実が重要である。

加えて、児童虐待による死亡事例等の重大事例について検証を行い、その結果に基づき再発防止のための措置を講じるほか、市町村が行う検証を支援することが重要である。

イ 社会的養育の充実・強化

社会的養育の充実・強化については、平成二十八年の児童福祉法の改正において、子どもが権利の主体として位置付けられるとともに、家庭養育の優先について規定された。こうした理念を実現するため、推進計画策定要領の規定するところに沿って、都道府県において計画を策定して推進する。

ウ 母子家庭及び父子家庭の自立支援の推進

母子及び父子並びに寡婦福祉法等の規定を踏まえ、自立促進計画の策定等により、母子家庭等就業・自立支援事業や母子家庭等自立支援給付金事業等の母子家庭等施策を総合的・計画的に進めるとともに、市町村が実施する就業支援や生活支援が円滑に進むよう、市町村における自立促進計画の策定状況や各種施策の取組状況等についての情報提供を行うなど、広域的な観点から市町村に対する支援を行うよう努めることが重要である。また、就業支援の実施に当たっては、就業支援専門員を配置しワンストップでの支援を提供するとともに、公共職業安定所等と十分に連携し、効果的な実施に努めることが重要である。

さらに、母子家庭の母及び父子家庭の父の就業を促進するため、民間事業者に対する協力の要請や母子・父子福祉団体等の受注機会の増大への努力等、必要な施策を講ずるように努めることも必要である。

エ 障害児施策の充実等

障害児等特別な支援が必要な子どもに対して、市町村における保健、医療、福祉、教育等の各種施策が体系的かつ円滑に実施されるよう、専門的かつ広域的な観点からの支援を行うとともに、障害に応じた専門医療機関の確保等を通じ、適切な医療を提供するほか、教育支援体制の整備を図るなどの総合的な取組を進めることが重要である。

医療的ケア児が身近な地域で必要な支援を受けられるよう、支援体制の充実を図る必要がある。さらに、心身の状況に応じた保健、医療、障害福祉、保育、教育等の各関連分野の支援が受けられるよう、保健所、病院・診療所、訪問看護ステーション、障害児通所支援事業所、障害児入所施設、障害児相談支援事業所、保育所、学校等の関係者が連携を図るための協議の場を設けること等により、各関連分野が共通の理解に基づき協働する総合的な支援体制を構築することが重要である。

また、障害児入所施設については、小規模グループケアの推進、身近な地域での支援の提供、本体施設の専門機能強化を進めることが望ましい。

発達障害については、社会的な理解が十分なされていないことから適切な情報の周知も必要である。発達障害者支援センターについては、関係機関及び保護者に対する専門的情報の提供や支援手法の普及が必要になっていることから、職員の専門性を十分確保するとともに、専門的情報や支援手法の提供を推進することが重要である。また、特別支援学校については、特別支援学校教諭免許状保有率の向上を図る等専門性の向上に努めるとともに、在籍する子どもへの教育や指導に加えて、幼稚園、小中学校等の教員の資質向上策への支援及び協力、地域の保護者等への相談支援並びに幼稚園、小中学校等における障害のある子どもへの教育的支援を行うことが重要である。

五 一般事業主行動計画の策定に関する基本的な事項

1 一般事業主行動計画の策定に当たっての基本的な視点

(1) 労働者の仕事と生活の調和の推進という視点

憲章においては、企業とそこで働く者は協調して生産性の向上に努めつつ、職場の意識や職場風土の改革と併せ、働き方の改革に自主的に取り組むこととされている。また、行動指針においては、社会全体の目標として、週労働時間六十時間以上の雇用者の割合、年次有給休暇取得率、男女の育児休業取得率及び第一子出産前後の女性の継続就業率等の数値目標が掲げられており、こうした目標を踏まえた取組が求められている。

その際、特に、男性が子育てを積極的に行うことが女性の継続就業につながり、仕事と子育ての二者択一を迫られるような状況の解消にも資するという観点から、男性の育児休業取得を始めとする子育てに関する諸制度の利用促進に係る取組を推進していくことが重要である。

また、依然として、週労働時間六十時間以上の雇用者の割合が六.九%(平成三十年)となっており、とりわけ育児期にある男性で当該割合が高くなっていることや年次有給休暇取得率が五割程度の水準で推移している現状に鑑み、より一層の時間外・休日労働の削減、年次有給休暇の取得の促進の取組等働き方・休み方の見直しに資する取組を推進していくことが重要である。

(2) 労働者の仕事と子育ての両立の推進という視点

子育てをする労働者が子育てに伴う喜びを実感しつつ、仕事と子育ての両立を図ることができるようにするという観点から、労働者のニーズを踏まえた次世代育成支援対策を実施することが必要であり、特に、子育ては男女が協力して行うべきものとの視点に立った取組が重要である。

(3) 企業全体で取り組むという視点

企業による次世代育成支援対策は、業務内容や業務体制の見直し等をも必要とするものであることから、企業全体での理解の下に取組を進めることが必要である。このため、経営者自らが、企業全体で次世代育成支援対策を積極的に実施するという基本的な考え方を明確にし、主導的に取り組んでいくことが必要である。

さらに、企業によっては全国に事業所が存在し、事業所における職種の違いや、その地域の実情により、仕事と子育ての両立支援策への具体的なニーズは様々であることが想定されることから、一般事業主行動計画を企業全体として策定した上で、必要に応じて事業所ごとの実情に応じた効果的な取組を自主的に進めることが期待される。

(4) 企業の実情を踏まえた取組の推進という視点

子育てを行う労働者の多少、企業の業種又は構成割合の高い労働者の職種、雇用形態等の違い等により、仕事と子育ての両立支援策への具体的なニーズは企業によって様々であることが想定されることから、関係法令を遵守した上で、企業がその実情を踏まえ、効果的な取組を自主的に決定し進めていくことにより、社会全体の取組を進めることが必要である。特に、昨今、非正規雇用の労働者が増加している現状に鑑み、改めて当該労働者が取組の対象であることを認識した上で、取組を進めていくことが重要である。

(5) 取組の効果という視点

次世代育成支援対策を推進することは、将来的な労働力の再生産に寄与し、我が国の経済社会の持続的な発展や企業の競争力の向上に資するものであることを踏まえつつ、また、個々の企業にとっても、当該企業のイメージアップや優秀な人材の確保、定着等の具体的なメリットが期待できることを理解し、主体的に取り組むことが必要である。

(6) 社会全体による支援の視点

次世代育成支援対策は、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、国及び地方公共団体はもとより、企業や地域社会を含めた社会全体で協力して取り組むべき課題であることから、様々な担い手の協働の下に対策を進めていくという視点が必要である。

(7) 地域における子育ての支援の視点

各企業に雇用される労働者は、同時に地域社会の構成員であり、その地域における子育て支援の取組に積極的に参加することが期待されていることや、地域において、子育てしやすい環境づくりを進める中で各企業にも期待されている役割を踏まえた取組を推進することが必要である。

2 一般事業主行動計画の計画期間

一般事業主行動計画は、経済社会環境の変化や労働者のニーズ等を踏まえて策定される必要があり、計画期間内において、一定の目標が達成されることが望ましい。したがって、計画期間については、各企業の実情に応じて、次世代育成支援対策を効果的かつ適切に実施することができる期間とすることが必要であり、平成二十七年度から令和六年度までの十年間をおおむね二年間から五年間までの範囲に区切り、計画を策定することが望ましい。

3 次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標

一般事業主行動計画においては、各企業の実情を踏まえつつ、より一層労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために必要な雇用環境の整備その他の次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標を定める必要がある。

目標については、育児休業の男女別取得率等の制度の利用状況に関するもの、仕事と子育ての両立が図られるようにするための制度の導入に関するもの等の幅広い分野から企業の実情に応じた目標を設定すべきものであるが、可能な限り定量的な目標とする等、その達成状況を客観的に判断できるものとすることが望ましい。

また、各企業における労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするための雇用環境の整備に関する取組の状況や課題を把握し、各企業の実情に応じ、必要な対策を実施していくことが重要であるが、この際、厚生労働省雇用環境・均等局長が定めた「両立指標に関する指針」を活用することも効果的であるとともに、「両立指標に関する指針」による評価の結果を目標として定めることも考えられる。

4 その他基本的事項

(1) 推進体制の整備

一般事業主行動計画の策定やこれに基づく措置の実施を実効あるものとするため、まず、管理職や人事労務管理担当者に対し、その趣旨を徹底することが必要であるとともに、子育てを行う労働者を含めた全ての関係労働者の理解を得ながら取り組んでいくことが重要である。

このため、各企業における次世代育成支援対策の推進体制の整備を図ることが必要であり、その方策として次のような措置を講ずることが望ましい。

ア 次世代育成支援対策を効果的に推進するため、人事労務担当者、労働者の代表等を構成員とした一般事業主行動計画の策定やこれに基づく措置の実施のための社内委員会の設置等

イ 次世代育成支援対策に関する管理職や労働者に対する研修・講習、情報提供等の実施

ウ 仕事と子育ての両立等についての相談・情報提供を行う窓口の設置及び当該相談・情報提供等を適切に実施するための担当者の配置

また、各企業が一般事業主行動計画を策定する際に、同一業種の企業及び事業主の団体等と連携することにより、より効果的な取組を進めることも考えられる。

(2) 労働者の意見の反映のための措置

仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備に対する労働者のニーズは様々であり、必要な雇用環境の整備を効果的に実施するためには、こうした労働者のニーズも踏まえることが重要である。このため、労働者や労働組合等に対するアンケート調査や意見聴取等の方法により、次世代育成支援対策に関する労働者の意見の反映について、企業の実情に応じて工夫することが必要である。

(3) 計画の公表及び周知

一般事業主行動計画の策定義務のある事業主は計画の公表及び労働者への周知が義務とされ、一般事業主行動計画の策定が努力義務とされている事業主は、計画の公表及び労働者への周知が努力義務とされている。

一般事業主行動計画の公表により、事業主が、他の企業における取組事例を知ることができること、国民が事業主の次世代育成支援の取組について知ることができるようになり、また、就労希望者の企業選択に資すること、都道府県及び市町村が地域における次世代育成支援の取組を進める際に、地域の事業主の取組を知ることができ、円滑な連携を図ることが可能となることなどの効果が期待される。

このため、策定し、又は変更した一般事業主行動計画については、「両立支援のひろば」が掲載されたサイトや自社のホームページなど適切な方法で公表するとともに、自社の様々な両立支援の取組やその実施状況を併せて公表する等その公表方法を工夫することが期待される。

また、策定し、又は変更した一般事業主行動計画に定めた目標の達成に向けて、企業全体で取り組むため、計画を企業内に周知し、企業全体で取組を推進することが重要である。

このため、策定し、又は変更した一般事業主行動計画については、全ての労働者が知り得るように書面の交付や電子メールによる送付など適切な方法で周知するとともに、啓発資料の作成・配布、研修・講習の実施等を併せて行うことが期待される。特に、次世代育成支援対策を企業全体で推進するという意識を浸透させるため、経営者の主導の下、管理職や人事労務管理担当者に対する周知を徹底することが期待される。

なお、一般事業主行動計画に基づき次世代育成支援対策を実施する場合、労働者の労働時間その他の労働条件の変更を伴うなど一定の場合には、就業規則、労働協約等に明記することが必要である。

(4) 計画の実施状況の点検

一般事業主行動計画の推進に当たっては、計画の実施状況の点検・評価を実施し、その結果をその後の対策や計画に反映させる、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)のサイクル(PDCAサイクル)を確立することが重要である。さらに、一般事業主自らがPDCAサイクルの中で、実効性のある対策の実施や計画の見直し等を行うことを通じて、認定や特例認定の取得に至ることが期待される。

(5) 一般事業主の認定

法第十三条の基準に適合する一般事業主の認定及び法第十四条第一項の表示の制度を活用することにより、子育て又は不妊治療をしながら働きやすい雇用環境の整備に取り組んでいることを外部に広く周知することが容易となり、その結果、企業イメージの向上及び優秀な人材の確保、定着等を通じ、企業経営にメリットを生じさせることが期待できる。したがって、一般事業主行動計画を実施し、当該計画に定めた目標を達成した場合等に、当該認定を申請することを念頭に置きつつ、計画の策定やこれに基づく措置の実施を行うことが望ましい。また、当該認定を受けることを希望する場合には、法第十三条の厚生労働省令で定める基準を踏まえた一般事業主行動計画を策定することが必要である。

また、法第十三条の認定を受けた一般事業主((6)において「認定一般事業主」という。)においては、他の企業の取組を促す観点からも、法第十四条第一項の認定を受けた旨の表示を積極的に活用することが期待される。

(6) 認定一般事業主の認定(特例認定)

認定一般事業主のうち、既に相当程度両立支援の制度の導入や利用が進み、高い水準の取組を行っている企業を評価しつつ、継続的な両立支援の取組を促進するため、法第十五条の二の基準に適合する認定一般事業主の認定(特例認定)の制度が創設されたところである。

特例認定及び法第十五条の四第一項の表示の制度を活用することにより、高水準かつ継続的に両立支援に取り組む企業としてのアピールが可能となり、社会的な評価の向上につながり、その結果、当該企業の取組が模範となり、他の企業の取組が促進されることが期待できる。

なお、特例認定を受けた場合には、法第十五条の三第一項及び第二項の規定により一般事業主行動計画の策定・届出に代えて、毎年少なくとも一回、次世代育成支援対策の実施の状況を公表することが必要である。

六 一般事業主行動計画の内容に関する事項

五の一般事業主行動計画の策定に関する基本的な事項を踏まえ、計画期間、次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標並びに実施しようとする次世代育成支援対策の内容及びその実施時期を記載した一般事業主行動計画を策定する。

計画の策定に当たっては、次世代育成支援対策として重要なものと考えられる次のような事項を踏まえ、各企業の実情に応じて、必要な事項をその内容に盛り込むことが望ましい。

1 雇用環境の整備に関する事項

(1) 妊娠中の労働者及び子育てを行う労働者等の職業生活と家庭生活との両立等を支援するための雇用環境の整備

ア 妊娠中及び出産後における配慮

母性保護及び母性健康管理を適切かつ有効に実施するため、妊娠中及び出産後の労働者に対して、制度を積極的に周知するとともに、情報の提供、相談体制の整備等を実施する。

イ 男性の子育て目的の休暇の取得促進

子育ての始まりの時期に親子の時間を大切にし、子どもを持つことに対する喜びを実感するとともに出産後の配偶者を支援するため、子どもが生まれて父親となる労働者について、例えば五日間程度の休暇を取得しやすい環境を整備する。具体的には、子どもが生まれる際に取得することができる企業独自の休暇制度や子育てを目的とした企業独自の休暇制度の創設、子どもが生まれる際や子育てを行う際の時間単位付与制度の活用も含めた年次有給休暇や、配偶者の産後八週間以内の期間における育児休業の取得促進を図る。

また、小学校就学前の子どもがいない労働者においては、小学校就学後の子どもや孫の子育てのための休暇制度を創設する。例えば、学校行事や通院等のための休暇制度や孫が生まれる際に取得することのできる休暇制度を創設する。

ウ より利用しやすい育児休業制度の実施

より利用しやすい育児休業制度とするため、その雇用する労働者のニーズに配慮して、その期間、回数等について、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号。以下「育児・介護休業法」という。)に規定する育児休業制度を上回る措置を実施する。

エ 育児休業を取得しやすく、職場復帰しやすい環境の整備

育児休業を取得しやすく、また、育児休業後の就業が円滑に行われるような環境を整備し、育児休業の取得を希望する労働者について、その円滑な取得を促進するため、例えば、次に掲げる措置を実施する。

(ア) 男性の育児休業の取得を促進するための措置

出生時育児休業及び「パパ・ママ育休プラス」の制度、専業主婦の夫でも育児休業を取得できることについての周知等、男性の育児休業の取得を促進するための措置を実施する。

(イ) 育児休業に関する規定の周知

育児休業に関する規定を整備し、労働者の育児休業中における待遇及び育児休業後における賃金、配置その他の労働条件に関する事項について、労働者に周知する。

また、労働者やその配偶者が妊娠・出産したこと等を事業主が知ったときに、当該労働者に対し当該事項を個別に知らせる。

(ウ) 育児休業期間中の代替要員の確保等

育児休業を取得する期間について当該労働者の業務を円滑に処理することができるよう、当該育児休業期間について当該業務を処理するための労働者の確保、業務内容や業務体制の見直し等を実施する。

(エ) 育児休業をしている労働者の職業能力の開発及び向上等

育児休業をしている労働者の希望に応じて、当該労働者の職業能力の開発及び向上等のための情報の提供、円滑な職場復帰のための講習、育児等に関する相談その他の援助を実施する。

(オ) 育児休業後における原職又は原職相当職への復帰

育児休業をした労働者について、当該育児休業後に原職又は原職相当職に復帰させるため、業務内容や業務体制の見直し等を実施する。

オ 子育てをしつつ活躍する女性労働者を増やすための環境の整備