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○移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進を図るための基本的な方針

(平成二十六年一月十五日)

(厚生労働省告示第七号)

移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律(平成二十四年法律第九十号)第九条第一項の規定に基づき、移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進を図るための基本的な方針を次のように策定したので、同条第三項の規定により告示する。

移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進を図るための基本的な方針

第一 移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する基本的な方向

一 現状

造血幹細胞とは、骨髄、さい帯血等に多く含まれている血液のもととなる細胞であり、造血幹細胞移植は、血液のがんと言われる白血病等に有効な治療法である。これにより、通常の抗がん剤投与よりも強力な治療が可能になるほか、造血機能の回復、免疫系異常や代謝異常の改善等の治療効果が期待される。

代表的な血液がんである白血病及び悪性リンパ腫の患者数をみると、それぞれ約七千人、約一万三千人(平成二十三年厚生労働省患者調査)となっている。これらの患者に対しては、化学療法、放射線療法等が行われ、一部の患者については造血幹細胞移植が行われる。

こうした中、高齢化に伴う骨髄異形成症候群等の患者の増加や、骨髄非破壊的前処置の進歩による移植年齢の上限の引上げ等を受けて、高齢者を中心に造血幹細胞移植の実施件数は増加している。一方で、分子標的治療薬等の新薬開発等により、造血幹細胞移植の実施件数が減少している疾患も存在している。

平成二十四年度における非血縁者間での造血幹細胞移植の件数を移植細胞ソース別にみると、骨髄移植が千三百二十三件、末しよう血幹細胞移植が十五件(公益財団法人日本骨髄バンク(以下「日本骨髄バンク」という。)調べ)、臍帯血移植が千百九十九件(日本さい帯血バンクネットワーク調べ)となっている。また、造血幹細胞の提供に係る医療機関の状況をみると、骨髄については、非血縁者間骨髄採取認定施設が百七十二施設、非血縁者間骨髄移植認定施設が百七十二施設(平成二十五年十月末日現在。日本骨髄バンク調べ)、末梢血幹細胞については、非血縁者間末梢血幹細胞採取認定施設が六十七施設、非血縁者間末梢血幹細胞移植認定施設が六十七施設(平成二十五年十月末日現在。日本骨髄バンク調べ)、臍帯血については、臍帯血採取認定施設が九十四施設、臍帯血移植認定施設が二百九施設(平成二十五年十月末日現在。日本さい帯血バンクネットワーク調べ)となっている。世界的には、非血縁者間での造血幹細胞移植において末梢血幹細胞移植が最も大きな割合を占めているが、我が国ではその割合は小さい。

造血幹細胞移植は、「患者」と「医療機関」だけでは成立せず、任意・善意の下での「ドナー」があって初めて成り立つという特徴を有しており、国民の理解が不可欠なものである。骨髄、末梢血幹細胞のドナー登録者数や臍帯血の公開数は増加しており、造血幹細胞の提供に関する国民の理解は着実に広がってきている。

また、国民の理解を得て、広く造血幹細胞移植が実施されるためには、造血幹細胞の提供に当たっての公平性を担保するための「あっせん機関」が必要であり、これまで、日本骨髄バンクが中心となって骨髄、末梢血幹細胞のドナーのあっせんを、さい帯血バンクが臍帯血の保存、供給等を行ってきた。

日本骨髄バンクは、骨髄バンク事業の中心として、平成四年から骨髄移植のためのコーディネート業務を実施し、加えて、平成二十二年からは末梢血幹細胞移植のコーディネートも開始し、これまでに合わせて一万五千件を超える移植のコーディネートを行ってきた。ドナーコーディネート開始から骨髄提供までの期間(中央値。日本骨髄バンク調べ)をみると、平成十五年には百四十七日を要していたものが、平成二十四年には百二十二日となっており、短縮してきているものの、欧米と比較すると依然としてコーディネートに時間を要しているとの指摘がされている。

骨髄、末梢血幹細胞のドナー登録者数については、平成二十五年十月末日現在で四十三万人を超えており、骨髄移植、末梢血幹細胞移植を必要とする患者にヒト白血球抗原(HLA)型が血清レベルで六抗原適合するドナーが九十五%の確率で一人以上見つかっているが、遺伝子レベルでみるとHLA型が適合する確率は低下する。また、HLA型が適合したドナーとの間で、移植に向けたコーディネートを開始しても、ドナーの都合がつかない、ドナーに連絡がとれない、ドナーの健康上の理由、ドナーの家族の同意が得られない等の理由により、骨髄、末梢血幹細胞の提供につながらない事例が相当数存在している。

さい帯血バンクの取組は、平成七年以降広がりを見せ、各地でさい帯血バンクが設立された。平成十一年には公的さい帯血バンク事業が開始され、日本さい帯血バンクネットワークが設立された。平成二十五年十月末日現在で全国に八つのさい帯血バンクが存在しており、年間約千件を超える臍帯血移植がさい帯血バンクを介して実施され、これまでの累計は一万件に達している。

さい帯血バンクが保存している臍帯血は、順次増加してきており、現在では約二万個の臍帯血が移植用に公開されているが、実際に移植に用いられている臍帯血をみると、総細胞数の多いものの利用率が高くなっている。

日本赤十字社は、骨髄バンク事業において日本骨髄バンクと協力して骨髄、末梢血幹細胞のドナー登録業務を行っており、臍帯血に関しては、自らさい帯血バンクを運営するほか、日本さい帯血バンクネットワークの事務局を担っており、造血幹細胞の提供において、重要な役割を果たしている。

関係学会では、これまで二十年以上にわたり造血幹細胞移植の成績等についてのデータベースの構築及びデータ解析に取り組んでおり、これにより得られた知見を活用して、治療成績は向上している。平成十八年からは、関係学会を中心に造血幹細胞移植の成績等を一元的に登録する仕組みが構築され、現在は一般社団法人日本造血細胞移植データセンターにより運用されている。しかしながら、造血幹細胞移植に先立って一元的に患者登録を行う仕組みが整備されていないため、造血幹細胞移植を必要とする患者の全体像の把握が難しい状況にある。

造血幹細胞の提供においては、ボランティア等が大きな役割を果たしてきており、骨髄、末梢血幹細胞のドナー登録の推進や採取施設とさい帯血バンクの間の臍帯血の搬送、患者相談の取組等において活躍している。

二 基本的な方向性

移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律(平成二十四年法律第九十号。以下「法」という。)においては、基本理念として次の事項が掲げられている。

1 移植に用いる造血幹細胞については、造血幹細胞移植を必要とする者が造血幹細胞移植を受ける機会が十分に確保されることを旨として、その提供の促進が図られなければならない。

2 移植に用いる造血幹細胞の提供は、任意にされたものでなければならない。

3 移植に用いる造血幹細胞の提供については、造血幹細胞移植を必要とする者が造血幹細胞移植を受ける機会が公平に与えられるよう配慮されなければならない。

4 移植に用いる造血幹細胞の提供については、移植に用いる造血幹細胞が人に由来するものであることに鑑み、その安全性が確保されなければならない。

5 移植に用いる骨髄及び移植に用いる末梢血幹細胞の提供については、その採取に身体的負担を伴うことに鑑み、移植に用いる骨髄又は移植に用いる末梢血幹細胞を提供する者の健康の保護が十分に図られなければならない。

6 移植に用いる臍帯血の提供については、移植に用いる臍帯血の特性及びその提供に調製、保存等の過程を伴うことに鑑み、その安全性その他の品質の確保が図られなければならない。

また、法に基づき、造血幹細胞移植に関わる者には、次のような責務が課されている。

1 国は、基本理念にのっとり、移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との適切な役割分担を踏まえて、移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。

3 骨髄・末梢血幹細胞提供あっせん事業者、臍帯血供給事業者、造血幹細胞提供支援機関は、移植に用いる造血幹細胞の提供において中核的な役割を果たすべきことに鑑み、移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に積極的に寄与するよう努めなければならない。

4 医療関係者は、国及び地方公共団体が講ずる移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する施策に協力するよう努めなければならない。

造血幹細胞移植に関わる者が、法に基づき課せられた責務を果たすとともに、法に掲げられた基本理念の実現に向けた取組を進めることを通じて、造血幹細胞移植を希望する患者にとって、病気の種類や病状にあった最適な造血幹細胞移植が行われるとともに、患者の生活の質の改善が図られることを目指す。

第二 移植に用いる造血幹細胞の提供の目標その他移植に用いる造血幹細胞の提供の促進に関する事項

一 造血幹細胞の需要について

移植適応は時代によって変化するため、移植に用いる造血幹細胞の総需要の予測は難しいが、高齢者に対する移植技術の進歩等もあり、基本的には、高齢者の増加に比例して、当面、造血幹細胞移植を必要とする患者は増加すると考えられる。

骨髄、末梢血幹細胞、臍帯血の三つの移植細胞ソースごとの需要予測は、医学的な見地からも困難であるが、骨髄及び末梢血幹細胞については、両者を合わせて、造血幹細胞移植の実施数における骨髄移植及び末梢血幹細胞移植の現在のシェアに相当する需要は見込む必要があると考えられ、それに対応したドナーが必要である。

また、臍帯血については、造血幹細胞移植の実施数における臍帯血移植の現在のシェアに相当する需要は見込む必要があり、それに加え、骨髄又は末梢血幹細胞の移植を予定していたものの、何らかの理由でドナーからの提供が急遽困難となった状況等において、緊急に移植に用いる場合の需要も見込む必要がある。

二 造血幹細胞の提供について

移植に用いる造血幹細胞の提供の前提として、患者の状況に応じて適切な移植細胞ソースを用いた造血幹細胞移植を選択できるようにすることが必要であり、造血幹細胞移植の実施に先立って一元的に患者登録を行う仕組みを整備するとともに、造血幹細胞移植を受けた患者の移植後の健康状況等を把握し、そのデータの分析を行う取組が必要である。

骨髄、末梢血幹細胞については、引き続きドナー登録者を維持・増加させる取組が必要である。また、電子メール等を活用したドナー登録者への継続的な働きかけやドナー休暇制度の普及、さらにはドナーの家族に骨髄移植等について理解してもらうための働きかけ等に取り組み、実際に骨髄、末梢血幹細胞の提供に応諾するドナー登録者を増加させる必要がある。

これまでドナー登録が可能な年齢を拡大しながら、広くドナー登録を呼びかける中でドナー登録に対する理解が進み、多くの患者への移植につながってきたことを踏まえると、登録可能年齢の上限の引下げは行わないことが適当であるが、ドナー登録を広く受け付けつつも、ドナーとなる意思を持つ者にできるだけ長い期間ドナー登録をしてもらうという観点から、若年層への重点的・積極的なドナーリクルートに取り組むことが必要である。

移植に用いる臍帯血については、現状、需要を上回る数量を確保できているが、今後、造血幹細胞移植を必要とする高齢者が増加すると見込まれる中で、細胞数の多い良質な臍帯血に重点を置いて、効果的・効率的に確保することが必要である。そのため、臍帯血供給事業者の営業時間の拡充による臍帯血の受入数の増加と併せ、臍帯血を安定的・定期的に採取してもらえる医療機関を中心に協力を依頼しつつ、臍帯血の採取技術の向上を図ることにより、細胞数の多い良質な臍帯血の確保に取り組むことが必要である。

三 造血幹細胞の提供までの期間の短縮について

骨髄移植については、骨髄採取を行う医療機関の手術室の確保やドナーの仕事の都合の調整等に時間を要し、骨髄の採取行程がコーディネート期間の相当部分を占めていることから、その短縮を図るための取組が必要である。そのため、骨髄採取を行う医療機関において、骨髄採取のために定期的に手術室の枠を確保すること等により、早期に骨髄移植を行うことが必要な患者が早期に骨髄移植を受けることができる体制を整備することが必要である。また、ドナー休暇制度の普及に取り組むとともに、早期の骨髄採取の実現のためにドナーに対し、検査や採取のために比較的遠方の病院まで移動してもらう等一層の協力を依頼することが必要である。

末梢血幹細胞移植については、末梢血幹細胞の採取に当たって、全身麻酔の実施や手術室の確保が不要であり、骨髄移植と比較してコーディネート期間が短いことから、造血幹細胞の提供までの期間の短縮の観点からも更なる普及に取り組む必要がある。しかしながら、非血縁者間末梢血幹細胞採取認定施設及び非血縁者間末梢血幹細胞移植認定施設は骨髄と比較して少なく、現状では採取認定施設が存在しない県も存在しており、また、ドナー保護の観点から、ドナーは末梢血幹細胞採取認定施設に短時間に通える場所に居住していなければならないとする制限があること等により、末梢血幹細胞移植は普及していない。そのため、非血縁者間末梢血幹細胞採取認定施設及び非血縁者間末梢血幹細胞移植認定施設の増加を図るとともに、末梢血幹細胞の提供に当たってのドナーの居住地の制限の緩和を検討する必要がある。

臍帯血については、臍帯血供給事業者から即日出庫することにより迅速な対応が可能な場合もあり、早期に移植を実施するという観点から、骨髄又は末梢血幹細胞の移植が急遽困難となった緊急時の対応も含め、臍帯血移植の活用を進めていくことも必要である。

四 造血幹細胞の提供に係る医療提供体制の整備

造血幹細胞移植の基盤整備を目的とし、全国をブロックに分け、患者数やドナー登録者数等を勘案しつつ、造血幹細胞移植の推進のための拠点的な医療機関(以下「造血幹細胞移植推進拠点病院」という。)の整備を段階的に進める必要がある。

造血幹細胞移植推進拠点病院は、モデル的に次の事項にバランスよく取り組むものとする。

1 適切な診断に基づき、患者の状況に応じて適切な移植細胞ソースを用いた造血幹細胞移植を実施できる体制を確保すること。

2 地域における造血幹細胞移植に関わる医療従事者の研修・育成や地域の他の医療機関への診療支援を行うこと。

3 早期の骨髄移植を必要とする患者が早期に骨髄移植を受けることができるよう、骨髄の早期採取に積極的に取り組むこと。

特に、早期の骨髄採取の実現に向けて、造血幹細胞移植推進拠点病院は、骨髄採取のための手術室の定期的な枠を確保するほか、日本造血細胞移植学会認定の造血細胞移植コーディネーターを配置すること等により、早期の骨髄採取及び移植の実現に向けた体制を整備する必要がある。

なお、骨髄採取の早期化を目指すに当たっては、造血幹細胞移植推進拠点病院のみが積極的に骨髄採取を行うのではなく、現状では骨髄の採取件数が少ない医療機関での採取数を増やすこと等により、全体として骨髄の採取件数の増加及び骨髄採取の早期化を図ることが必要である。

また、非血縁者間末梢血幹細胞採取認定施設及び非血縁者間末梢血幹細胞移植認定施設については、地域間のバランス等を見ながら、引き続き施設数の増加に向けて取り組んでいくことが必要である。

五 造血幹細胞の提供に関する情報の一体的な提供

骨髄、末梢血幹細胞のドナー登録者の情報や臍帯血供給事業者が保存する臍帯血の情報が一元的に管理され、インターネットを通じて医師が患者に適合する造血幹細胞を一括して検索することができ、また、造血幹細胞の提供に向けたコーディネートの状況等を随時把握できる体制の整備が必要である。

患者やドナー、国民が知りたい情報を手軽に入手できる造血幹細胞移植に関するポータルサイトが必要であり、ポータルサイトで提供する情報については、これまでの患者相談の取組における相談内容を踏まえたものとすることが望ましい。併せて、患者が受け取った情報を整理・理解した上で、主体的に治療法を選択できるよう、必要に応じ、患者相談窓口を設けている団体等の支援を受けられるようにすることが必要である。

特に、造血幹細胞移植の治療成績については、患者や国民向けの基本的な情報に加え、医療機関、研究機関、患者相談窓口を設けている団体等に詳細な情報を提供できるようにする取組が必要である。

第三 移植に用いる造血幹細胞の安全性の確保に関する事項

造血幹細胞が人体に由来するものであることを踏まえ、移植に用いる造血幹細胞の提供に当たっては、感染症の伝播等に対する安全対策を講じる必要がある。

移植に用いる骨髄及び末梢血幹細胞については、これまで日本骨髄バンクが専門家の意見を踏まえて策定する骨髄採取マニュアル及び末梢血幹細胞採取マニュアルを遵守することにより、その安全性及び品質が確保されてきた。今後も、これらのマニュアルに準拠することにより、安全性及び品質の確保に取り組む必要がある。なお、より多くの造血幹細胞の患者への移植、ドナーへの倫理的配慮や骨髄、末梢血幹細胞の安全性の確保の観点から、当面、骨髄及び末梢血幹細胞は原則凍結保存を禁止し、緊急に造血幹細胞移植を実施する必要がある場合には、臍帯血の利用等により対応することが適当である。

移植に用いる臍帯血については、提供に当たって調製、保存等の過程を伴うことも踏まえ、安全性及び品質の確保を図る必要がある。今般、法に基づき、臍帯血の安全性その他の品質の確保のための基準を策定しており、臍帯血供給事業者は当該基準を遵守することが求められることとなる。これにより、移植に用いる臍帯血の安全性及び品質の確保を図っていく。また、臍帯血の安全性その他の品質の確保のための基準については、血液事業等関連する他の制度の基準との整合性や品質基準に関する国際的な動向を考慮するとともに、安全性とトレーサビリティの確保のための情報管理等に配慮して策定したものであるが、臍帯血の更なる品質向上に向け、段階的に改善を図っていく。

第四 その他移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関し必要な事項

一 関係者の連携

国、地方公共団体、骨髄・末梢血幹細胞提供あっせん事業者、臍帯血供給事業者、造血幹細胞提供支援機関及び医療関係者は、場合に応じてボランティア等の協力も得つつ、移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進を図るため、相互に連携を図りながら協力する。

二 造血幹細胞提供関係事業者及び造血幹細胞提供支援機関の安定的な事業運営の確保

移植に用いる造血幹細胞のあっせん等を行う骨髄・末梢血幹細胞提供あっせん事業者及び臍帯血供給事業者(以下「造血幹細胞提供関係事業者」という。)は、非血縁者間での造血幹細胞移植を実施する上で必要不可欠なものである。

また、造血幹細胞提供支援機関は、次の業務を担い、移植に用いる造血幹細胞の提供において重要な役割を果たすものである。

1 骨髄、末梢血幹細胞のドナー登録のほか、造血幹細胞提供関係事業者に必要な協力を行うこと。

2 造血幹細胞提供関係事業者の事業について必要な連絡調整を行うこと。

3 移植に用いる造血幹細胞に関する情報を一元的に管理し、造血幹細胞移植を行おうとする医師等に提供すること。

4 移植に用いる造血幹細胞の提供に関する普及啓発を行うこと。

造血幹細胞提供関係事業者及び造血幹細胞提供支援機関は、移植に用いる造血幹細胞の提供において中核的な役割を果たすものであり、造血幹細胞移植を必要とする者が造血幹細胞移植を受ける機会を十分に確保するためには、造血幹細胞提供関係事業者及び造血幹細胞提供支援機関の安定的な事業運営が必要であることから、国は法に基づき必要な措置を講じるほか、必要な助言、指導その他の援助を行う。

三 造血幹細胞のドナーの保護

移植に用いる骨髄及び移植に用いる末梢血幹細胞の採取に当たっては、ドナーの身体的な負担を伴うことから、ドナーの健康の保護のための措置が図られることが必要である。そのため、骨髄・末梢血幹細胞提供あっせん事業者は、骨髄、末梢血幹細胞の提供は任意によるものであることや骨髄、末梢血幹細胞の採取の意義、リスクについてドナーに対して十分に説明し、書面により最終的な同意を得る。また、採取前及び採取後に健康診断を実施する等ドナーの健康の保護のための措置を講じるとともに、万が一、骨髄又は末梢血幹細胞の採取に伴って健康被害が生じた場合における補償の措置を講ずる。

また、臍帯血供給事業者は、移植に用いる臍帯血の採取に当たって、提供する母体や新生児に影響が及ぶことがないよう必要な措置を講ずる。

四 造血幹細胞移植を受ける患者の経済的負担の軽減

造血幹細胞移植を必要とする者が造血幹細胞移植を受ける機会が十分に確保されるよう、国は、造血幹細胞提供関係事業者が行う低所得者に対する患者負担金の減免の取組を支援する。

五 研究開発の促進

国は、造血幹細胞移植の治療成績と安全性の向上のための研究やそのための基盤整備を促進するほか、臨床応用を念頭に置いた造血幹細胞の基礎研究や造血幹細胞移植の適応疾患について移植以外の治療の選択肢を広げるための研究開発を促進する。

臍帯血供給事業者は、臍帯血供給業務の遂行に支障のない範囲内において、採取した臍帯血を研究のために自ら利用し、又は提供できることとされており、これを通じた新たな医療技術等の研究開発の促進が期待される。

六 国際協力の推進

人道的な見地に立ち、国外で造血幹細胞移植を必要とする患者に対して造血幹細胞を提供できる体制及び国外から造血幹細胞の提供を受けることができる体制を整備する必要がある。

国は、臍帯血の品質確保のための基準等の国際的な調和に向けた関係学会等の取組に協力する。

七 見直し

本方針は、造血幹細胞移植を取り巻く状況の変化等に的確に対応する必要があることから、法の施行状況を勘案し、再検討を加え、必要があるときは、これを変更する。