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○食品の製造過程の管理の高度化に関する基本方針

(平成二十五年十二月二十日)

(/厚生労働省/農林水産省/告示第二号)

食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法(平成十年法律第五十九号)第三条第一項の規定に基づき、食品の製造過程の管理の高度化に関する基本方針を次のように定めたので、同条第三項の規定に基づき、公表する。なお、食品の製造過程の管理の高度化に関する基本方針(平成十年/厚生省/農林水産省/告示第一号)は、廃止する。

食品の製造過程の管理の高度化に関する基本方針

第1 製造過程の管理の高度化の基本的な方向

1 食品の安全性の向上と品質管理の徹底に対する社会的要請を踏まえ、食品に起因する衛生上の危害の発生の防止と適正な品質の確保を図るため、食品の製造過程の管理の高度化を図ることが急務となっている。

2 HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:危害要因分析・重要管理点)は、1960年代の米国のアポロ計画の中で宇宙食の安全性を高度に保証するものとして考案された製造過程を管理するシステムである。このシステムは、食品規格に関する政府間機関であるコーデックス委員会(国連食糧農業機関/世界保健機関合同食品規格委員会)において採択された「危害要因分析・重要管理点方式とその適用に関するガイドライン」(以下「コーデックスガイドライン」という。)において文書化され、その採用が、各国に推奨されている。

コーデックスガイドラインにおいては、HACCPの食品の安全性に対する適用について考察されているが、この考え方は食品の品質管理にも適用できるものと記述されている。

現在では、欧米諸国を始めとする各国において、その有効性が認識され、HACCPの義務化が国際的に進んでおり、我が国においても、食品衛生法等の一部を改正する法律(平成30年法律第46号)により、HACCPに沿った衛生管理が制度化された。

3 こうした中で、食品の輸出に当たっては、輸出先の国又は地域が求める衛生基準に的確に対応していくことが必要となっている。そのためには、コーデックスガイドラインに沿ったHACCPによる衛生管理及びHACCPの考え方を適用した品質管理のための体制を構築し、食品の安全性及び品質を向上させることが有効である。

4 これらを踏まえ、国は、我が国の食品の安全性及び品質を向上させることが輸出の促進に資するとの観点も考慮し、コーデックスガイドラインの7原則12手順に沿ったHACCPによる衛生管理及びHACCPの考え方を適用した品質管理による食品の製造過程の管理の高度化(以下「HACCPシステムの導入」という。)を図ることとし、これに即した施設の整備について、金融上の支援措置を講ずることとする。

5 また、中小規模の事業者の中には、HACCPシステムの導入前の段階で取り組むべき衛生管理及び品質管理の基盤となる施設及び体制の整備に十分に対応できていないため、HACCPシステムの導入が困難となっている者も多い。

このため、HACCPシステムの導入に段階的に取り組む場合についても支援することとし、高度化基盤整備(食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法(平成10年法律第59号。以下「法」という。)第2条第3項に規定する高度化基盤整備をいう。以下同じ。)のみに取り組む場合も支援措置の対象とすることとする。

6 なお、支援に当たっては、食品の製造過程の管理の高度化又は高度化基盤整備に取り組む事業者において、その自主的な判断の下、食品の製造・流通の実態や経営実態に応じた取組が行われるよう配慮することとする。また、事業者において、その取組が維持されるよう配慮するものとする。

第2 高度化基盤整備に関する基本的な事項

1 高度化基盤整備は、HACCPシステムの導入の前にその基盤となる施設及び体制を整備するものであることから、その内容は食品の製造又は加工を行う事業者が食品を提供するに当たり、重要となる以下の取組が確実に実施できるものとする。

(1) 食品を安全に保つ衛生水準及び事業者が目標とする一定の品質水準を確保するための取組

(2) 消費者の信頼を確保するための取組

なお、これらの取組の中には、食品衛生法(昭和22年法律第233号)を始めとする食品衛生に係る関連規定等を遵守するために事業者が実施すべき事項と実施することが望ましい事項が含まれる。

2 このことを踏まえ、高度化基盤整備の具体的な内容は、次の項目により整理することとする。

(1) 組織の運営に関する項目

(2) 衛生・品質水準を確保する項目

(3) 消費者の信頼を確保するための項目

第3 高度化基準の作成に関する基本的な事項

1 法第4条第1項に基づく高度化基準は、法第13条の指定を受けた法人(以下「指定認定機関」という。)の自主的な取組を基本に、その指定に係る食品の種類ごとに製造又は加工の実態に応じて作成されるべきものである。

指定認定機関は、高度化基準の作成に当たって、指定に係る食品の製造過程の管理の高度化について専門的な知識を有する者を交え、当該食品の一般的な製造過程を想定し、その食品について、使用する原材料、製造又は加工の工程の特性等の実態を踏まえて十分な検討を行う等の必要がある。

これにより、高度化基準が食品の種類ごとの製造又は加工の実態が十分反映され、かつ、食品の安全性の向上と品質管理の徹底を求める社会的要請に十分対応できるものとなるようにする必要がある。

2 高度化基準においては、次に掲げる事項が具体的かつ明らかにされているものとする。

(1) 製造過程の管理の高度化の目標

「製造過程の管理の高度化の目標」においては、対象となる食品の種類とその製造過程を明らかにし、当該食品の製造過程の管理の高度化を図ることが目標であることが明らかにされていること。

この場合において、製造過程の管理の高度化は、コーデックスガイドラインに沿ったHACCPによる衛生管理及びHACCPの考え方を適用した品質管理によるものでなければならず、これに対応した体制及び施設の整備を行うものであることが明らかにされていること。

また、高度化基盤整備のみを行う場合は、高度化基盤整備の目標として、将来的にHACCPシステムの導入に取り組むこと又はこれを検討することが明らかにされていること。

(2) 製造過程の管理の高度化の内容に関する基準

「製造過程の管理の高度化の内容に関する基準」においては、次に掲げる事項が明らかにされていること。

なお、製造過程の管理の高度化の内容のうち、高度化基盤整備に関する事項については、「3 高度化基盤整備の内容に関する基準」に記載すること。

ア 製造過程の管理の高度化を図るための体制の整備の基準

体制の整備の基準においては、食品の製造又は加工の実態に即したHACCPシステムの導入を図るため、次に掲げる要件が記載されていること。

(ア) 当該食品についての知識及び専門的な技術に基づいてHACCPシステムの導入及びその運用を行うチームが編成されていること。

(イ) 当該食品についての安全性に関する事項を含む製品情報が明確にされていること。

(ウ) 当該食品について意図する用途が明確にされていること。

(エ) 原材料の受入れから最終製品の出荷までに至る当該食品の一連の製造工程の流れを記載した製造工程一覧図が作成されていること。

(オ) (エ)の製造工程一覧図の内容が実際の状況と相違しないか確認し、相違点があれば修正することとされていること。

(カ) (エ)の製造工程一覧図に従って、製造工程ごとに予測できる危害要因がリスト化され、安全な食品を製造するために管理が必要な危害要因を特定し、その管理措置を定めリストに記載すること。

(キ) 危害の発生を防止するため、特に重点的に管理すべき工程が重要管理点として定められていること。

(ク) 全ての重要管理点に対し、管理基準が設定されていること。

(ケ) 全ての重要管理点に対し、連続的に又は十分な頻度で監視する方法が設定されていること。

(コ) (ケ)の監視の結果、管理基準からの逸脱が判明した場合に管理状況を正常に戻すための改善措置の方法及び逸脱により影響を受けた製品の適切な処分の方法が定められていること。

(サ) HACCPのシステムが正しく機能しているか否かについての検証方法が定められていること。

(シ) 危害要因分析、重要管理点の特定、管理基準の設定等についての手順が文書化され、また、重要管理点の監視結果、改善措置、実施された検証手順及びその結果等についての記録をし、保存するための体制が定められていること。

イ 製造過程の管理の高度化を図るための施設の整備の基準

アの体制の整備に必要な施設(高度化基盤整備に必要な施設を除く。)の整備を行うことが記載されていること。その記載に当たっては、対象とする食品の種類やその製造過程を考慮すること。

(3) 高度化基盤整備の内容に関する基準

「高度化基盤整備の内容に関する基準」においては、食品の製造又は加工の実態に即して、高度化基盤整備を行うための取組として、次に掲げる事項が、事業者にとって取り組みやすいよう、食品の業種ごとに具体的に記載されていること。記載する事項については、食品の業種ごとに追加すべきもの又は追加することが望ましいものは追加すること。

また、法第6条第1項の高度化計画又は法第8条第1項の高度化基盤整備計画においては、次に掲げる事項のうち、事業者が改善又は実施するものを明示するとともに、そのために必要となる施設の整備の内容を記述することが記載されていること。

ア 組織の運営に関する項目

(ア) 経営者の姿勢に関する事項

(イ) 食品衛生責任者等に関する事項

(ウ) コンプライアンスに関する事項

(エ) 教育等に関する事項

(オ) 緊急時の対応に関する事項

(カ) その他食品の製造又は加工の実態に応じて必要な事項

イ 衛生・品質水準を確保する項目

(ア) 製造施設の周辺環境、仕様、管理等に関する事項

(イ) 食品取扱装置・設備の仕様、設置、管理等に関する事項

(ウ) 原材料の受入れ、要件等に関する事項

(エ) 食品取扱者の行動等に関する事項

(オ) 食品の取扱い方法に関する事項

(カ) 製造工程・製品の検査、検査施設に関する事項

(キ) その他食品の製造又は加工の実態に応じて必要な事項

ウ 消費者の信頼確保のための項目

(ア) 製品の情報の管理に関する事項

(イ) トレーサビリティに関する事項

(ウ) 取引先又は消費者との間での情報の収集及び提供に関する事項

(エ) その他食品の製造又は加工の実態に応じて必要な事項

3 高度化基準においては、次に掲げる事項についても記載されることが望ましい。

(1) 輸出先の国又は地域が輸入品に求める衛生管理又は品質管理に関する基準に対応するための取組に関する事項

(2) 高度化された製造過程の管理についての消費者等への情報提供のための取組に関する事項

第4 その他製造過程の管理の高度化に関する重要事項

1 輸出促進に資する取組

我が国の食品の輸出を促進するため、国は、国内の食品の安全性を向上させる取組を推進するとともに、輸出先の国又は地域が輸入品に求める衛生管理又は品質管理に関する基準等の情報収集及びその提供、指導並びに助言、当該基準等に適合していることの認定並びに事業者による従業員教育や施設整備に対する支援を行うこととする。

また、国際的に通用する民間認証を取得することは、海外バイヤーとの取引を円滑に進める上で有効であることを踏まえ、食品の輸出に向け製造過程の管理の高度化を図るための施設及び体制の整備を行った事業者が国際的な民間認証を取得する場合は、国は、これを支援することとする。

2 負担の軽減への配慮

指定認定機関は、高度化基準の作成に当たり、製造過程の管理の高度化を図るための施設の整備が過度の製造コストの増大につながることのないよう留意することが望ましい。

3 事業者への普及啓発と人材の育成の推進

製造過程の管理の高度化に関する普及啓発と専門的知識を有する人材の育成が重要であることから、指定認定機関による啓発用パンフレット作成や講習会の開催などを推進することとする。

4 技術開発等の推進

多品種少量生産を行う事業者や事業規模の小さい事業者等においても製造過程の管理の高度化に取り組めるよう、我が国の食品製造業の実情を踏まえて、技術開発及びその普及並びに情報収集及びその提供を推進することとする。

5 農林畜水産物の生産者との連携

製造過程の管理の高度化に当たっては、安全で良質な原料農林畜水産物の確保が重要であることから、原料農林畜水産物の生産者との連携に配慮しつつ、推進することとする。

改正文 (令和二年七月二二日/厚生労働省/農林水産省/告示第一号) 抄

公布の日から施行する。