アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○医療提供体制の確保に関する基本方針

(平成十九年三月三十日)

(厚生労働省告示第七十号)

医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第三十条の三第一項の規定に基づき、医療提供体制の確保に関する基本方針を次のように定め、平成十九年四月一日から適用する。

医療提供体制の確保に関する基本方針

この基本方針は、我が国の医療提供体制に対する国民の安心、信頼の確保に向けて、医療計画制度の中で医療機能の分化・連携を推進し、地域において切れ目のない医療の提供を実現することにより、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保(以下「医療提供体制の確保」という。)を図るための基本的な事項を示すものである。

都道府県においては、この方針に即して、かつ、それぞれの地域の実情に応じて、当該都道府県における医療提供体制の確保を図るための計画(以下「医療計画」という。)を定めるものとする。

第一 医療提供体制の確保のため講じようとする施策の基本となるべき事項

一 医療提供体制の確保のため講じようとする施策の基本的考え方

医療は、我が国社会の重要かつ不可欠な資産であり、医療提供体制は、国民の健康を確保するための重要な基盤となっている。

また、医療は、患者と医療提供者との信頼関係を基本として成り立つものである。患者や国民に対して医療サービスの選択に必要な情報が提供されるとともに、診療の際には、インフォームドコンセント(医師・歯科医師等が医療を提供するに当たり適切な説明を行い、患者が理解し同意すること)の理念に基づき、医療を受ける主体である患者本人が求める医療サービスを提供していく、という患者本位の医療を実現していくことが重要である。安全で質が高く、効率的な医療の実現に向けて、患者や国民が、その利用者として、また、費用負担者として、これに関心を持ち、医療提供者のみに任せるのではなく、自らも積極的かつ主体的に医療に参加していくことが望ましく、そうした仕組みづくりが求められる。

さらに、医療は、周産期医療、小児医療(小児救急医療を含む。以下同じ。)から始まり、人生の最終段階における医療まで、人生の全ての過程に関わるものであり、傷病の治療だけではなく、健康づくり等を通じた予防や、慢性の症状を持ちながらの継続した介護サービスの利用等様々な領域と関わるものである。また、医療の提供に際しては、医療分野や福祉分野の専門職種、ボランティア、家族その他様々な人が関わってくることから、医療提供者は、患者本位の医療という理念を踏まえつつ、医師・歯科医師とその他の医療従事者がそれぞれの専門性を発揮しながら協力してチーム医療を推進していくことはもとより、地域において、患者の視点に立った医療提供施設(医療法(昭和二十三年法律第二百五号。以下「法」という。)第一条の二第二項に規定する医療提供施設をいう。以下同じ。)相互間の機能の分担及び業務の連携を確保するための体制(以下「医療連携体制」という。)の構築にも積極的に協力していくことが求められる。

国及び都道府県は、このような理念に基づき、少子高齢化の進展や医療技術の進歩、国民の意識の変化等も踏まえながら、安全で質が高く、効率的な医療を提供するため、情報通信技術の活用や、医療分野のデジタル化の推進を含む施策に積極的に取り組むことが重要である。

医療に対する患者や住民の意識、また、医療提供体制の現状は、都道府県により、あるいは各都道府県内においても都市部とそれ以外の地域とでは、大きな違いがあることから、具体的な施策を講ずるに当たっては、それぞれの地域の状況やニーズに十分配慮していかなければならない。

また、人口の急速な高齢化や社会構造の多様化・複雑化が進む中で、疾病の構造が変化し、がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病等の生活習慣病や精神疾患が増加している中、生活の質の向上を実現するため、特に、がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病及び精神疾患に対応した医療連携体制の早急な構築を図ること、地域における医療提供体制の確保において重要な課題となる救急医療、災害時における医療、そのまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号。以下「感染症法」という。)第六条第七項に規定する新型インフルエンザ等感染症、同条第八項に規定する指定感染症及び同条第九項に規定する新感染症をいい、以下「新興感染症」という。)がまん延し、又はそのおそれがあるときにおける医療(以下「新興感染症発生・まん延時における医療」という。)、へき地の医療、周産期医療及び小児医療並びに居宅等における医療(以下「在宅医療」という。)に対応した医療連携体制の早急な構築を図ること、さらには人口の減少及び高齢化に伴って医療需要の変化が見込まれる中、地域における病床の機能の分化及び連携並びに在宅医療を推進し、将来の医療需要に対応した適切な医療提供体制の早急な構築を図ることが必要である。

また、生産年齢人口の減少に対応する医療従事者の確保や医師の働き方改革に伴う対応など、医療提供体制を取り巻く環境の変化にも留意することが必要である。特に、医師の働き方改革については、医師が健康に働き続けることのできる環境を整備することは、医師個人はもとより、患者や国民にとっても、医療の質及び安全の確保や、持続可能な医療提供体制の維持の観点から重要であり、地域医療提供体制の改革や、各職種の専門性を活かして患者により質の高い医療を提供するタスク・シフト/シェアの推進と併せて取り組む必要がある。

さらに、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、我が国の医療提供体制に多大な影響が生じ、救急医療をはじめ、地域医療の様々な課題が浮き彫りとなったことを踏まえ、地域における入院・外来・在宅にわたる医療機能の分化・強化、連携等の重要性や、地域医療全体を視野に入れた適切な役割分担の下での必要な医療提供の重要性にも留意が必要である。

二 医療提供体制の確保に関する国と都道府県の役割

安全で質が高く、効率的な医療提供体制を確保するためには、都道府県が中心となって、その医療計画に基づき自らの創意工夫で施策を企画立案及び実行し、国は都道府県の取組を支援することが必要である。

第二 医療提供体制の確保に関する調査及び研究に関する基本的な事項

一 調査及び研究に関する基本的考え方

医療提供体制の確保に関する調査(以下「医療機能調査」という。)及び研究については、次の観点に配慮して実施する必要がある。

1 医療を提供する側の視点だけでなく、医療を受ける主体である患者の視点も踏まえる。

2 医療提供体制の量的な整備という観点だけでなく、医療連携体制の構築等質的な向上に資する観点も重視する。

3 患者や住民に対する医療機能に関する情報提供を推進するため、個別の医療提供施設の医療機能に限らず、地域の医療機能全体の概要を明らかにすることに資するものとする。

4 地域の医療機能全体を明らかにする際には、全ての都道府県で共通した指標を用いることなどにより、地域の医療提供体制の現状を客観的に把握し、都道府県間でそれを比較することを可能とする。

二 調査及び研究に関する国と都道府県の役割

1 具体的な調査及び研究については、国と都道府県とがそれぞれ次のとおり行うこととする。

(一) 国は、がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病及び精神疾患の五疾病並びに救急医療、災害時における医療、新興感染症発生・まん延時における医療、へき地の医療、周産期医療及び小児医療の六事業(以下「五疾病・六事業」という。)並びに在宅医療について調査及び研究を行い、五疾病・六事業及び在宅医療のそれぞれに求められる医療機能を明らかにする。

(二) 都道府県は、国の調査等に加え、法第六条の三第一項及び医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第八条の二第一項の規定により医療提供施設の医療機能に関する情報を把握するほか、必要に応じて、患者や住民のニーズに沿った情報を把握するために独自の調査を行う。

なお、都道府県は、必要に応じて、法第三十条の五の規定に基づき、医療提供施設の開設者等に対し、必要な情報の提供を求めることができる。

2 国及び都道府県は、医療機能調査により把握した情報を公表することを通じて、医療連携体制及び地域の医療機能についての住民の理解を促進することが必要である。

第三 医療提供体制の確保に係る目標に関する事項

一 目標設定に関する基本的考え方

医療提供体制の確保に係る目標については、次の観点に配慮して定めることが必要である。

1 患者本位の、かつ、安全で質が高く、効率的な医療の提供を実現する。

2 医療連携体制の構築に資する医療機能の明確化を目指す。

3 医療機能調査を通じて把握した地域の医療提供体制の現状を基に課題を抽出し、その解決に資する目標とする。

二 目標設定に関する国と都道府県の役割

1 五疾病・六事業に係る目標設定

都道府県は、本基本方針に基づく医療計画の見直し後六年間を目途に、五疾病・六事業及び当該都道府県における疾病の発生の状況等に照らして特に必要と認める医療について、地域の実情に応じた数値目標を定める。

その際には、「第十一 その他医療提供体制の確保に関する重要事項」に掲げる方針等に定められる目標等を十分勘案するものとし、ロジックモデル等のツールの活用も検討するものとする。

都道府県は、数値目標の達成状況について、六年ごとに調査、分析及び評価を行い、必要があるときは、その医療計画を変更するものとする。

国は、都道府県に対して、医療提供体制の確保に向けた実効性ある施策が図られるよう支援するものとする。

2 在宅医療に係る目標設定

都道府県は、在宅医療に係る目標については、本基本方針に基づく医療計画の見直し後六年間を目途に、五疾病・六事業に係る目標の設定と同様の考え方に基づき、数値目標の設定並びに数値目標の達成状況の調査、分析及び評価等を行うものとする。

また、在宅医療及び介護の連携の観点から、医療計画と介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第百十八条第一項に規定する都道府県介護保険事業支援計画(以下単に「都道府県介護保険事業支援計画」という。)及び同法第百十七条第一項に規定する市町村介護保険事業計画(以下単に「市町村介護保険事業計画」という。)との整合性を図るため、医療計画の計画期間の中間年となる三年目においても、数値目標の設定並びに数値目標の達成状況の調査、分析及び評価等を行うものとする。

3 地域医療構想に係る目標設定

都道府県は、将来における地域の医療提供体制の確保のため、地域医療構想(法第三十条の四第二項第七号に規定する将来の医療提供体制に関する構想をいう。以下同じ。)の実現に向けた取組を着実に進めることが重要であることから、診療に関する学識経験者の団体その他の医療関係者、医療保険者その他の関係者(第六及び第七において「関係者」という。)との協議の場(以下「地域医療構想調整会議」という。)における協議の結果を踏まえ、当該構想区域(同号に規定する区域をいう。第五の一において同じ。)において担うべき医療機関としての役割及び当該医療機関が有するべき医療機能ごとの病床数を含む今後の対応方針(以下「対応方針」という。)の策定率等の目標について、毎年度、当該目標の達成状況の分析及び評価等を行うものとする。

第四 医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携並びに医療を受ける者に対する医療機能に関する情報の提供の推進に関する基本的な事項

一 医療連携体制の基本的考え方

医療連携体制の構築は、患者が可能な限り早期に居宅等での生活に復帰し、退院後においても継続的に適切な医療を受けることを可能にすることで、生活の質の向上を目指すものであることを踏まえ、さらに、次の点に留意することが求められる。

診療所における医療の提供に関しては、例えば、在宅医療を支える入院医療の提供も可能である有床診療所の特性など、各診療所の地域における役割を考慮することが重要である。その上で、身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談といったかかりつけ医の機能の向上を図りつつ、診療所相互間又は診療所と病院との業務の連携によって、診療時間外においても患者又はその家族等からの連絡に対し、往診等必要な対応を行うことができる体制の構築が求められる。

病院における医療の提供に関しては、質の高い入院医療が二十四時間提供されるよう、医師、歯科医師、薬剤師、看護師を始めとした医療従事者の適切な人員配置を通じた勤務環境の改善が行われることが求められる。

これらの役割が、患者の視点に立って的確に果たされるよう、地域の診療に携わる医師・歯科医師等の団体の積極的な取組が期待される。

二 五疾病・六事業の医療連携体制の在り方

五疾病・六事業に係る医療連携体制については、それぞれ次に掲げる機能に即して、地域の医療提供施設の医療機能を医療計画に明示することにより、患者や住民に対し、分かりやすい情報提供の推進を図る必要がある。

1 五疾病・六事業に明示する機能

(一) がん

がん登録等の推進に関する法律(平成二十五年法律第百十一号)第二条第二項に規定するがん登録の活用等を通じたがんの現状把握、がんの予防及び早期発見をする機能、手術療法、放射線療法、薬物療法及びこれらを組み合わせた集学的治療を提供する機能、がんと診断された時から緩和ケアを提供する機能並びに患者とその家族等への相談支援や情報提供をする機能(医療機能に着目したがん診療連携拠点病院等の診療実施施設等)

(二) 脳卒中

救急医療の機能、身体機能を回復させるリハビリテーションを提供する機能及び日常生活に復帰させるリハビリテーションを提供する機能(発症から入院を経て居宅等に復帰するまでの医療の流れ、医療機能に着目した診療実施施設(急性期・回復期・居宅等の機能ごとの医療機関)等)

(三) 心筋梗塞等の心血管疾患

救急医療の機能及び身体機能を回復させるリハビリテーションを提供する機能(発症から入院を経て居宅等に復帰するまでの医療の流れ、医療機能に着目した診療実施施設(急性期・回復期・居宅等の機能ごとの医療機関)等)

(四) 糖尿病

糖尿病を予防するための生活指導を行う機能、糖尿病の重症化を予防するための治療を行う機能及び糖尿病による合併症の治療を行う機能(発症から居宅等で継続して治療するまでの医療の流れ、医療機能に着目した診療実施施設等)

(五) 精神疾患

統合失調症、うつ病・躁うつ病、認知症、児童・思春期精神疾患、依存症などの多様な精神疾患ごとに患者に応じた質の高い精神医療を提供する機能及び他の医療提供施設や福祉・介護事業所との地域連携を推進する機能

(六) 救急医療

医療機関の受診や救急用自動車の要請の相談に対応する機能、病院前救護を提供する機能、休日夜間急患センターや二十四時間対応する診療所等で初期の救急医療を提供する機能、緊急手術や入院を必要とする救急患者に医療を提供する機能、生命にかかわる重篤な救急患者に救命医療を提供する機能及び救命後の医療を提供する機能(都道府県内のブロックごとの救急医療機関の役割(産科合併症以外の合併症を有する母体に対して救急医療を提供する医療機関の役割を含む。)、在宅当番医制又は休日夜間急患センター・入院を要する救急医療に対応する医療機関・救命救急センターに実際に搬送される患者の状態、自動体外式除細動器(AED)等病院前救護体制や消防機関との連携(病院間搬送を含む。)、救命後の医療を提供する医療機関との連携等)

(七) 災害時における医療

災害時に被災地へ出動して迅速に救命医療を提供する機能、その後避難所等において診療活動を行う機能及び被災しても医療提供を引き続き維持し被災地での医療提供の拠点となる機能(都道府県内外での災害発生時の医療の対応(災害派遣医療チーム(DMAT)及び災害派遣精神医療チーム(DPAT)の整備状況及び活用計画(日本医師会災害医療チーム(JMAT)、全日本病院医療支援班(AMAT)、日本災害歯科支援チーム(JDAT)等の保健医療活動チームとの連携を含む。)を含む。)、広域医療搬送の方法(航空搬送拠点及び航空搬送拠点臨時医療施設の確保を含む。)、後方医療施設の確保、派遣調整本部や地域医療対策会議によるコーディネート機能を担う体制整備(大規模災害の発生時における保健医療福祉調整本部の設置並びに当該本部と保健所、災害時健康危機管理支援チーム(DHEAT)及びその他保健医療活動チームとの連絡及び情報連携を行うための連絡窓口の設置を含む。)、消防・警察等関係機関との連携、広域災害・救急医療情報システム(EMIS)の状況、災害時に拠点となる病院の耐震化・非常用自家発電機の整備・止水対策を含む浸水対策の実施・燃料や医薬品等の備蓄状況、災害に対応した業務継続計画(BCP)・訓練計画等)

(八) 新興感染症発生・まん延時における医療

新興感染症がまん延し、又はそのおそれがあるとき(以下「新興感染症発生・まん延時」という。)に新興感染症患者(重症患者、疑似症患者等及び精神疾患を有する患者、障害者、小児、妊婦、透析患者等の特に配慮を要する患者を含む。)を入院させ、必要な医療を提供する機能(入院機能)、新興感染症の疑似症患者等の診療を行う機能(外来診療機能)、居宅又は高齢者施設等で療養する新興感染症患者(以下「自宅療養者等」という。)に対し医療を提供する機能(自宅療養者等への医療の提供機能)、新興感染症患者以外の患者に対し医療を提供する機能(後方支援機能)、新興感染症に対応する医療従事者を確保し、医療機関その他の機関に派遣する機能(医療人材派遣機能)

(九) へき地の医療

へき地の医療を提供する機能及び継続的にへき地の医療を支援できる機能(へき地診療所等の整備、搬送、巡回診療、医師・歯科医師確保等へき地の支援方法等による連携体制等)

(十) 周産期医療

妊婦健診や産前・産後のケアを扱う機能、正常な分娩を扱う機能(日常の生活・保健指導及び新生児の医療相談の機能を含む。)及び高度な診療を要するリスクの高い分娩を扱う機能(妊産婦の状態に応じ、居宅等に戻るまでの医療の流れ、病態・医療機能に着目した診療実施施設、総合周産期母子医療センターと地域の周産期医療の医療連携体制(搬送体制を含む。)、地域の実情に応じた周産期医療に関する医療資源の集約化・重点化等)

(十一) 小児医療

小児の健康状態の相談を行う機能、地域における一般小児医療を提供する機能(医療と保健、福祉及び教育との連携の促進の役割・機能を含む。)、在宅当番医制、休日夜間急患センターや二十四時間対応する診療所等初期の小児救急医療を提供する機能、地域の小児医療機関間での連携により小児専門医療を提供する機能、緊急手術や入院を必要とする小児救急患者に医療を提供する機能、広域の小児医療機関間での連携により高度な小児専門医療を提供する機能及び生命にかかわる重篤な小児救急患者に救命医療を提供する機能(発症から外来での通院や入院を経て居宅等に戻るまでの医療の流れ、病態・医療機能に着目した診療実施施設、小児救急医療の提供体制(在宅当番医制又は休日夜間急患センター・入院を要する救急医療に対応する医療機関・救命救急センター・病院間搬送・電話相談事業等)の状況、地域の実情に応じた小児医療に関する医療資源の集約化・重点化等)

2 事業ごとに配慮すべき事項

(一) 救急医療については、増加する高齢者の救急搬送や、特に配慮を要する救急患者の受入れのために、地域における救急医療機関の役割を明確化することが必要である。特に、来院可能な患者への夜間及び休日における外来診療、高齢者をはじめとする地域の救急患者の初期診療及び入院治療並びに重篤な患者や他の医療機関では治療の継続が困難な救急患者に対する高度かつ専門的な医療について役割分担を図ることが重要である。また、生命にかかわる重篤な救急患者に救命医療を提供する機能を有する医療機関のうち高度救命救急センターを医療計画に明示する場合には、広範囲熱傷、急性中毒等の特殊疾病のうち、特に当該センターが対応体制を整備しているものについて記載する必要がある。なお、この場合においては、当該都道府県内のセンターに限らず、広域的に対応する隣接都道府県のセンターを記載することも可能である。

また、都道府県において策定した地域の搬送・受入れに関する実施基準に基づき、円滑な患者の搬送が実施されることが必要である。一連の救急搬送と救急医療の連携の確保に当たっては、いわゆるメディカルコントロール体制の一層の充実・強化を図ることが重要である。さらに、救命医療後に安定した救急患者については、救命救急センター等の高次の医療機関からの転院のために必要な搬送を行う体制を構築することが必要である。

精神疾患を有する患者、障害者、小児、妊婦、透析患者等の特に配慮を要する患者に対応できる体制の構築についても、あらかじめ検討しておく必要がある。

精神科救急医療については、輪番制による緊急時における適切な医療及び保護の機会を確保するための機能並びに重度の症状を呈する精神科急性期患者に対応する中核的なセンター機能を強化することが求められる。また、精神科救急医療と一般救急医療との連携体制を確保することが重要である。

産科合併症以外の合併症を有する母体に対する救急医療については、総合周産期母子医療センター等による周産期医療と救命救急センター等による救急医療との連携体制を確保することが重要である。

また、患者が可能な限り救急外来を受診せずに済むよう、引き続き、地域におけるかかりつけ医の機能の向上を図りつつ、医療機関の受診や救急用自動車の要請に迷う場合に地域住民が利用するための電話等による相談体制の整備を推進することが必要である。

さらに、新興感染症の発生・まん延時に適切な医療を提供できるよう、必要な感染対策を講じることができる人材を平時から育成するとともに、第二次救急医療機関、第三次救急医療機関及び地域全体において必要な体制を構築することが重要である。

(二) 災害時における医療については、災害時に円滑な連携体制の構築を可能とするため、保健医療福祉調整本部の下、様々な保健医療活動チームとともに訓練を実施し、災害時においてそれぞれに必要な役割を確認するとともに、保健医療提供体制を効率的に調整するために災害医療コーディネーターの適切な整備を推進することが重要である。

また、精神疾患を有する患者、障害者、小児、妊婦、透析患者等の特に災害時においても配慮を要する被災者に対応できる体制の構築について、平時から検討しておく必要がある。

災害発生時に診療を継続するため、各医療機関において、平時からBCPを策定する必要があるが、地域防災計画等他の計画との整合性を図り、実効性の高いものとなるよう支援を行うことが必要である。また、災害時に拠点となる病院以外の病院においても、災害時にその機能や地域における役割に応じた診療を継続するために必要な防災対策を講じることが重要である。

これらの取組を推進するため、都道府県は、防災会議等への災害医療関係者の参画を促進することが重要である。

(三) 救急医療や災害時における医療については、患者の緊急度、重症度等に応じた適切な対応が求められる。救急搬送については、救急用自動車はもとより、ドクターカー(必要な機器等を装備し、医師等が同乗することにより救命医療が可能な救急搬送車両をいう。)、消防防災ヘリコプターを含む救急患者搬送用のヘリコプター等の搬送手段を活用することにより救急医療の確保を図ることが重要である。その際、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法(平成十九年法律第百三号)を踏まえ、地域の実情に応じ、同法第二条に規定する救急医療用ヘリコプター(以下単に「救急医療用ヘリコプター」という。)を用いることが考えられる。この場合、都道府県は、医療計画に救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保について定めるときは、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療を提供する病院に関する事項を定めることが求められるとともに、都道府県において達成すべき救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に係る目標に関する事項並びに救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の提供が行われる地域ごとに、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療を提供する病院の医師、消防機関、都道府県及び市町村の職員、診療に関する学識経験者その他の関係者の連携に関する事項を定めるよう努めることとされている。また、救急医療用ヘリコプターを効率的に活用できるよう、隣接都道府県と協議し、広域連携体制を構築することが必要である。さらに、災害時において、消防機関等の依頼又は通報に基づかない出動を想定した、救急医療用ヘリコプターの運航体制を整備することが必要である。

(四) 新興感染症発生・まん延時における医療については、当該感染症の発生・まん延時に、速やかに、感染症医療以外の通常医療との両立を図りつつ、機動的に入院、外来診療、自宅療養者等への医療の提供等の体制が確保できるよう、平時から都道府県と医療機関(この(四)において病院、診療所、薬局及び訪問看護事業者をいう。)との間で、地域において必要な医療機関の機能及び役割を広く確認し、各医療機関の機能及び役割に応じた内容の感染症法第三十六条の三第一項に規定する医療措置協定(以下単に「医療措置協定」という。)を締結すること等を通じて、都道府県及び医療機関は地域における役割分担及び医療提供体制の確保を図ることが適当である。また、特に、当該医療機関が自宅療養者等への医療の提供等を行う場合は、必要に応じ当該医療機関の間で連携し、当該医療の提供を行うことが重要である。

その際、体制の確保に当たり対象とする感染症は新興感染症を基本とし、医療計画等の策定に当たっては、感染症に関する国内外の最新の知見を踏まえつつ、一定の想定を置くこととするが、新型コロナウイルス感染症への対応から得た教訓を踏まえ、当該対応を念頭に、まずは当該対応での最大規模の体制を目指すこととし、医療措置協定のほか、感染症法第三十六条の九第一項に規定する流行初期医療確保措置(以下単に「流行初期医療確保措置」という。)や公的医療機関等に対する医療提供の義務に係る通知、医療措置協定の締結の協議に係る都道府県医療審議会等への意見聴取等により、平時から対応の準備を進めることで実効性を確保していくことが重要である。

新興感染症の発生時からの対応として、まずは、感染症法第六条第十三項に規定する特定感染症指定医療機関、同条第十四項に規定する第一種感染症指定医療機関及び同条第十五項に規定する第二種感染症指定医療機関(以下単に「特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関及び第二種感染症指定医療機関」という。)の感染症病床を中心に対応する体制を構築し、国は、その対応により得られた知見を含む国内外の最新の知見等について、随時、収集及び医療機関等への周知を行いながら、対応を行うことが重要である。

感染症法第十六条第二項に規定する新型インフルエンザ等感染症等に係る発生等の公表(以下「新興感染症の発生等の公表」という。)が行われた後の流行初期の一定期間(三箇月を基本とした必要最小限の期間であって、新興感染症の発生等の公表が行われた日の属する月から感染症法第三十六条の九第一項に規定する政令で定める期間をいう。)には、特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関及び第二種感染症指定医療機関が流行初期医療確保措置の対象となる医療措置協定に基づく対応も含め、引き続き対応を行うとともに、各都道府県知事による判断に基づき当該感染症指定医療機関以外の流行初期医療確保措置の対象となる医療措置協定を締結した医療機関も中心に対応していく体制を構築する。その際、国は特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関及び第二種感染症指定医療機関の対応に基づく対応の方法も含めた国内外の最新の知見等を、随時、収集、更新及び周知するとともに、感染症法第五十三条の十六第一項に規定する感染症対策物資等(以下単に「感染症対策物資等」という。)の確保に努めることが重要である。

当該一定期間の経過後は、流行初期医療確保措置の対象となる医療措置協定を締結した医療機関等の新興感染症の発生等の公表以降対応している医療機関に加え、当該医療機関以外の医療措置協定を締結した医療機関のうち、公的医療機関等(公的医療機関等以外の医療機関のうち新興感染症に対応することができる医療機関を含む。)も中心となった対応とし、その後三箇月程度を目途に、順次速やかに、医療措置協定を締結した全ての医療機関で対応していく体制を構築する。

新興感染症の特性や当該感染症への対応方法を含めた最新の知見の収集状況、感染症対策物資等の確保の状況等が事前の想定とは大きく異なる場合は、国において当該場合に該当する旨及びその程度その他当該感染症に関係する状況の判断を行い、国の判断を踏まえ、機動的に当該感染症への対応を行うことが重要である。

医療措置協定の締結状況や履行状況等について、患者による医療に関する適切な選択に資することにも留意し、都道府県は国に対する報告を行い、国及び都道府県は公表及び周知を行うことが重要である。

新型コロナウイルス感染症対応では、国から各都道府県に対し、感染状況に応じ段階的に対応する考え方を示したうえで、各都道府県それぞれで、感染状況に応じた対応の段階を設定し、当該段階ごとに必要な病床数等を確保する計画を立て、病床の確保等を行った。新興感染症対応においても、基本的に、新興感染症の発生等の公表後の流行初期の一定期間経過後から、新型コロナウイルス感染症対応と同様の考え方に沿って対応していくことが想定される。

また、感染症対応を行う人材の育成を進めることも重要であり、最新の科学的知見に基づいた適切な知識を医療従事者が取得することができるよう、医療機関向けの講習会等を実施する等の取組を通じて、感染症対応に係る能力の強化を図ることが適当である。

(五) 離島やへき地における医療については、医師・歯科医師等の個人の努力に依存するのではなく、へき地における医療の確保のための各般の施策による充実が必要である。公的医療機関や社会医療法人等の役割の明確化を通じ、医師・歯科医師等の継続的な派遣による支援体制の確立等に努めるとともに、へき地医療計画と医師確保計画を連動させることが必要である。また、効率的な救急搬送体制が確保されるよう努めることが必要である。さらに、オンライン診療を含む遠隔医療を活用したへき地医療の支援を進めることが重要である。

(六) 周産期医療については、周産期医療の質の向上と安全性の確保のため、NICU(新生児集中治療室)・MFICU(母体・胎児集中治療室)や専門人材について、基幹となる医療施設への集約化・重点化を進めることが必要である。その際、周産期医療に精通した医師や助産師等の地域の医療従事者を育成し、活用を図るとともに、ハイリスク分娩を取り扱う周産期母子医療センター等に負担を集中させないよう、医療機関間で役割を分担し、周産期医療及び母子保健を地域全体で支えることが重要である。さらに、周産期医療体制の整備を進める中で、周産期に関する救急搬送や災害時の周産期医療等において、近隣都道府県との連携体制を必要に応じて確保することや、産科合併症以外の合併症を有する母体に適切に対応するための救急医療や精神医療等との連携体制を確保することが重要である。また、NICU退院後の児に対する後方支援施設等における継続的な医療提供体制の構築が必要である。あわせて、医療と母子保健等との連携を推進する観点から、市町村が行っている保健・福祉等の支援策について情報共有を図り、母子に対する切れ目のない支援を推進することも重要である。

また、在宅ケアへの移行支援について、周産期医療関連施設による医療的ケア児の生活の場における療養・療育への円滑な移行支援及び地域の医療機関による在宅において療養・療育を行っている児の家族等に対するレスパイト等の実施の支援を推進することが重要である。

さらに、新興感染症の発生・まん延時においても、地域で周産期医療を確保するため、感染症のり患又はり患が疑われる妊婦に対して産科診療を実施する医療機関について、あらかじめ協議し、必要な体制を構築することが重要である。

(七) 小児医療については、小児科医師や看護師等による子ども医療電話相談事業(♯8000)等による救急医療機関の受診に関する相談を支援する機能及び退院後の患者を在宅医療等により地域で受け入れる機能を充実させるとともに、診療所が当番制等により初期の小児救急医療を二十四時間体制で担うことを通じて、拠点となる病院が重症の小児救急患者に重点的に対応することを可能とする体制を構築することが必要である。

医療的ケア児が入院する医療機関は、入院時より、転院又は退院後の療養生活を担う医療機関、訪問看護等との連絡及び調整、福祉サービスの導入に係る支援等を行う体制を整えることが重要である。さらに、退院後の医療的ケア児の緊急的な入院に対応できる体制や、レスパイトの受入れ体制等を整備することが重要である。

また、新興感染症の発生・まん延時においても、地域で小児医療を確保するため、感染症のり患又はり患が疑われる小児に対して小児診療を実施する医療機関について、あらかじめ協議し、必要な体制を構築することが重要である。

三 在宅医療に係る医療連携体制の在り方

外来患者数が令和七年頃にピークを迎える見込みである一方、在宅患者数は令和二十二年以降に最も多くなる見込みであることを踏まえ、適切な圏域を設定し、在宅医療において積極的な役割を担う医療機関、在宅医療に必要な連携を担う拠点等の機能も勘案し、地域での協議及び調整を通じて在宅医療の体制整備を進めることが重要である。また、次に掲げる機能に即して、地域の医療提供施設の医療機能を明示することにより、患者や住民に対し、分かりやすい情報提供の推進を図る必要がある。

1 明示する機能

在宅医療への円滑な移行に向けての退院支援機能、生活の場における療養支援機能並びに急変時の対応機能及び患者が望む場所での看取り機能(入院機関と在宅医療の受け皿になる関係機関との協働による退院支援の実施、関係職種の協働による患者・家族等の生活の視点に立った医療の提供、緩和ケアの提供、介護する家族等の支援、在宅療養中の患者が急変した場合に受け入れることのできる病床の確保、住み慣れた地域での看取りの実施等)

2 配慮すべき事項

圏域については、医療及び介護資源等の実情に応じて弾力的に設定し、当該圏域内に在宅医療において積極的な役割を担う医療機関及び在宅医療に必要な連携を担う拠点を位置づけることとする。

看取りの体制を含めた在宅医療については、在宅療養を希望する患者・家族等や、地域住民に対して、病院・診療所、訪問看護事業所、薬局等の機能分担と連携の状況を情報提供することが重要である。在宅医療における各職種の関わりについては、その機能や役割を明確化し、医師・歯科医師の定期的な診察と適切な評価に基づく指示による、在宅療養患者への医療・ケアの提供を進めることが必要である。また、在宅の患者ニーズに対応した医療と介護を包括的に提供する体制を整備するため、都道府県介護保険事業支援計画及び市町村介護保険事業計画の内容と整合性を図り、患者の療養生活の充実等に努めることが必要である。

四 救急医療等確保事業に関する公的医療機関及び社会医療法人の役割

公立病院等公的医療機関については、その役割として求められる救急医療等確保事業(法第三十条の四第二項第五号イからトまでに掲げる救急医療、災害時における医療、新興感染症発生・まん延時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療及び都道府県知事が当該都道府県における疾病の発生の状況等に照らして特に必要と認める医療)に係る業務の実施状況を病院ごとに明らかにするとともに、救急医療等確保事業に係る業務を担う社会医療法人の積極的活用を図り、その活用状況も併せて明らかにすることが重要である。また、新興感染症発生・まん延時における医療においては、感染症法に基づく、都道府県知事からの医療の提供の義務に係る通知も踏まえる必要がある。

五 薬局の役割

薬局については、医療提供施設として、五疾病・六事業及び在宅医療のそれぞれの医療連携体制の中で、調剤を中心とした医薬品、医療・衛生材料等の提供の拠点としての役割に加え、医療機関等と連携して患者の服薬情報の一元的・継続的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導を行うこと、入退院時における医療機関等との連携、夜間・休日等の調剤や電話相談への対応等の役割を果たすことが求められる。また、都道府県において、薬局の医療機能を医療計画に明示することにより、患者や住民に対し、分かりやすい情報提供の推進を図ることが重要である。

六 医療機能に関する情報の提供の推進

患者や住民が医療の適切な選択や受診を行うことができるよう、都道府県は、法第六条の三第一項及び医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第八条の二第一項を通じて把握した医療提供施設の医療機能に関する情報について、患者や住民に分かりやすく明示することが必要である。

さらに、都道府県は、それぞれの地域の実情に応じて、任意の情報の把握の方法やより効果的な情報提供の在り方等を検討することが必要である。

七 医療の安全の確保

都道府県、保健所を設置する市及び特別区は、医療事故(法第六条の十第一項に規定する医療事故をいう。)が発生した場合の対応に関する取組等を含む医療提供施設が講じている医療の安全を確保するための取組の状況を把握し、医療の安全に関する情報の提供、研修の実施、意識の啓発等に関し、必要な措置を講ずるよう努めることが重要である。また、医療安全支援センターを設置し、住民の身近な地域において、患者又はその家族等からの医療に関する苦情又は相談に対応し、必要に応じて当該医療提供施設に対して、必要な助言を行う等の体制を構築するよう努めることが重要である。

第五 地域医療構想に関する基本的な事項

一 地域医療構想に関する基本的考え方

令和七年にいわゆる「団塊の世代」が全て七十五歳以上となる超高齢社会を迎え、医療需要が増加する中、患者に応じた質の高い医療を効率的に提供する体制を確保するため、地域における病床の機能の分化及び連携を推進し、各病床の機能の区分に応じて必要な医療資源を適切に投入し、患者の早期の居宅等への復帰を進めるとともに、退院後の生活を支える在宅医療及び介護サービスの充実を図ることが必要である。こうした観点から、地域医療構想は、地域における病床の機能の分化及び連携並びに在宅医療を推進するため、構想区域ごとの令和七年における病床数の必要量を含む医療提供体制に関する構想及び当該構想の達成に向けた病床の機能の分化及び連携の推進に関する事項として医療計画に定めるものである。

地域医療構想に定める令和七年における医療提供体制は、急性期から、回復期、慢性期、在宅医療・介護に至るまで切れ目なく、また過不足なく提供される体制の確保であり、地域医療全体を見据えた上で、医療計画に定める五疾病・六事業及び在宅医療に係る目標及び医療連携体制、医療従事者の確保等の事項も踏まえて定める必要がある。また、地域医療構想の中で示す医療提供体制の課題や目指すべき姿については、市町村が中心となって進める地域包括ケアシステム(地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(平成元年法律第六十四号。以下「医療介護総合確保法」という。)第二条第一項に規定する地域包括ケアシステムをいう。)の構築に資するよう、医療介護総合確保法第三条第一項に規定する総合確保方針(以下単に「総合確保方針」という。)を踏まえ、医療介護総合確保法第四条第一項に規定する都道府県計画(以下単に「都道府県計画」という。)並びに都道府県介護保険事業支援計画及び市町村介護保険事業計画との整合性にも留意しつつ、定める必要がある。

二 地域医療構想に関する国と都道府県の役割

都道府県は、策定した地域医療構想の達成に向けた取組を進めるに当たって、構想区域等(法第三十条の十四第一項に規定する構想区域等をいう。第六及び第七において同じ。)ごとに、地域医療構想調整会議を設け、当該会議での議論を通じて、地域における病床の機能の分化及び連携並びに在宅医療を推進していくことが必要である。これらの推進に当たり、都道府県は、地域医療構想調整会議における協議の実施状況を公表するものとする。

国は、必要な情報の整備や都道府県職員等に対する研修のほか、都道府県におけるデータの活用や医療介護総合確保法に基づく地域医療介護総合確保基金の活用に係る支援など、都道府県の地域医療構想の達成に向けた取組の支援を行うものとする。

第六 地域における病床の機能の分化及び連携並びに医療を受ける者に対する病床の機能に関する情報の提供の推進に関する基本的な事項

一 地域における病床の機能の分化及び連携の基本的考え方

地域における病床の機能の分化及び連携については、地域の医療機関の自主的な取組及び医療機関相互の協議により推進していくことが前提となる。このため、都道府県は、法第三十条の十三第一項の規定による報告(以下「病床機能報告」という。)の結果等により毎年度進捗を把握し、公表するとともに、構想区域等ごとに設置する地域医療構想調整会議において、関係者との連携を図りつつ、必要な事項について協議を行うことが必要である。その際、構想区域等における将来の医療提供体制を構築していくための方向性を共有するため、医療機関の役割を明確化することや将来的に病床機能の転換を予定している医療機関の役割を確認すること等が必要である。あわせて、地域医療構想調整会議における協議の結果を踏まえた対応方針の策定率を公表することとする。また、都道府県は、法第七十条の五第一項に規定する地域医療連携推進法人の認定、地域医療介護総合確保基金の活用等により、医療機関の自主的な機能分化及び連携に向けた取組を支援することが必要である。

さらに、都道府県は、地域医療構想調整会議における協議の実施状況や対応方針の策定率等を踏まえ、将来の病床数の必要量と病床機能報告により報告を受けた病床数に著しく差が生じている場合には、その要因について、当該構想区域等における医療提供体制を踏まえて分析及び評価を行い、その結果を公表するとともに、必要な対応について検討することとする。

国は、都道府県の地域医療構想の達成に向けた取組を支援するとともに、地域における病床の機能の分化及び連携を更に実効性あるものとするため、病床機能報告の在り方を検討して見直しを行い、地域の医療需要に円滑に対応できる人員配置等を調えることの検討を進めるものとする。

二 病床の機能に関する情報の提供の推進

患者や住民が医療の適切な選択や受診を行うことができるよう、都道府県は、病床機能報告を通じて把握した病院又は診療所であって一般病床又は療養病床を有するものの病床の機能の情報について、患者や住民に分かりやすく明示することが必要である。

さらに、都道府県は、それぞれの地域の実情に応じて、より効果的な情報提供の在り方等を検討することが必要である。

第七 外来医療に係る医療提供体制の確保に関する基本的な事項

一 外来医療に係る医療提供体制に関する基本的考え方

外来医療については、地域で中心的に外来医療を担う無床診療所の開設状況が都市部に偏っていること、夜間救急連携等の医療機関の連携の取組が個々の医療機関の自主的な取組に委ねられていること、地域包括ケアの構築に向けて地域で在宅医療提供体制を充実させる必要があること等を踏まえ、地域ごとの外来医療機能の偏在・不足等の情報を可視化し、診療所等の新規開設に当たっての有益な情報として提供することで、個々の外来医療を提供する者の行動変容を促し、偏在の是正につなげていくとともに、地域において充実が必要な外来医療機能や充足している外来医療機能に関する外来医療機能の機能分化・連携の方針等について、客観的データを踏まえながら地域ごとに協議を行い、方針決定することが必要である。

二 外来医療の機能の分化及び連携の推進に関する基本的な事項

地域における外来医療に係る病院及び診療所の機能の分化及び連携の推進については、都道府県は、外来機能報告(法第三十条の十八の二第一項及び法第三十条の十八の三第一項の規定による報告をいう。)を通じて、医療従事者又は医療に関する物資を重点的に活用する外来医療の実施状況や当該医療の提供を担う基幹的な病院又は診療所としての役割を担う意向等を確認し、構想区域等その他の都道府県知事が適当と認める区域ごとに、関係者との協議の場を設け、当該協議の場における議論を通じて、地域における外来医療の機能の分化及び連携を進めていくことが必要である。特に、医療従事者又は医療に関する物資を重点的に活用する外来医療を提供する基幹的な病院又は診療所を紹介受診重点医療機関として明確化することにより、患者の流れを円滑化し、外来における待ち時間の短縮や医師の働き方の改善を図ることが重要である。あわせて、受診の流れと医療機関の機能及び役割について患者及び住民に分かりやすく周知することが必要である。

第八 医師の確保に関する基本的な事項

一 医師の確保に関する基本的考え方

医師については、将来の需給動向を見通しつつ養成を進め、適正な供給数を確保するとともに、地域間の偏在や診療科間の偏在への対応について、地域医療介護総合確保基金の活用を含め取組を進めることが必要である。その際、医師偏在対策に有効な客観的データの整備、都道府県が主体的・実効的に医師偏在対策を講じることができる体制の構築、医師養成過程を通じた医師確保対策の充実、医師の少ない地域での勤務を促す環境整備の推進が必要である。

特に地域の医療機関で医師を確保するためには、地域の医療機関による医師、看護師等の医療従事者の自主的な勤務環境を改善する活動を支援する取組や地域の医療機関に勤務する医師のキャリア形成に係る不安の解消に向けて、大学等の関係機関と緊密に連携しつつ、医師のキャリア形成支援と一体的に地域の医療機関の医師の確保を支援する取組が必要となる。そのため、都道府県においては、法第三十条の二十一の規定による勤務環境改善支援センターと法第三十条の二十五の規定による地域医療支援センターとの連携を推進するとともに、医師の確保に必要な施策等を盛り込んだ医師確保計画を医療計画の一部として策定し、地域医療対策協議会を通じて地域の医療関係者等と協議の上で取組を推進していくことが必要である。

また、令和六年四月より開始する医師に対する時間外・休日労働時間の上限規制を踏まえ、医師の働き方改革と地域医療提供体制を両立させることが重要であることから、各病院又は診療所における医師の働き方改革に関する取組を推進するだけでなく、地域医療構想に関する取組及び医師確保の取組を一体的に推進する必要がある。

二 医師の資質向上に関する基本的考え方

医師については、臨床研修を通じ、全ての医師が、医療従事者としての人格をかん養し、患者との良好な信頼関係の下に患者を全人的に診ることができるよう、基本的な診療能力を身につけることが求められる。

第九 歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者(医師を除く。以下同じ。)の確保に関する基本的な事項

一 医療従事者の確保に関する基本的考え方

歯科医師、薬剤師、看護師等の医療従事者については、将来の需給動向を見通しつつ養成を進め、適正な供給数を確保するとともに、地域的な偏在や診療科間の偏在への対応について、地域医療介護総合確保基金の活用を含め取組を進めることが必要である。

歯科医師等については、地域の歯科医療提供体制の状況や、歯科医師等の配置状況を把握した上で、病院の規模や種類に応じて地域の歯科医師等を病院において活用することや、病院と歯科診療所等の連携を推進することなど、地域の実情に応じて確保することが必要である。

薬剤師については、病院薬剤師及び薬局薬剤師それぞれの役割を明確にし、薬剤師の就労状況の把握及び地域の実情に応じた薬剤師の確保策を講じることが必要である。

看護師等については、都道府県ナースセンター等と連携し、都道府県及び二次医療圏(法第三十条の四第二項第十四号に規定する区域をいう。以下同じ。)ごとの看護師等確保に係る課題を把握し、養成、復職支援及び定着促進のための取組を推進する必要がある。

二 医療従事者の資質向上に関する基本的考え方

歯科医師については、臨床研修を通じ、全ての歯科医師が、医療従事者としての人格をかん養し、患者との良好な信頼関係の下に患者を全人的に診ることができるよう、基本的な診療能力を身につけることが求められる。

薬剤師については、医療の高度化と専門化に対応するため、より高度な知識と技術を有する薬剤師の養成強化を含め、継続的な資質向上に努めることが求められる。また、薬学教育において、医療機関や薬局の協力の下、充実した実務実習を行うこと等を通じて、臨床に係る実践的な能力を培うことが求められる。

看護師等については、看護基礎教育において、医療機関、訪問看護事業所、行政機関等の協力の下、充実した臨地実習を行うこと等を通じて、実践能力を培うことが求められる。また、医療の高度化と専門化に対応するため、より高度な知識と技術を有する看護師等の養成強化とともに、新卒者に対する研修を含め、継続的な資質の向上に努めることが求められる。

医師及び医療従事者の負担軽減に向け専門業務に可能な限り特化できるよう病院全体で適切に支援できる体制を整備するため、事務職員を含めた職員全体の資質の向上を図ることが重要である。

第十 医療計画の作成並びに医療計画における目標及び施策の達成状況の評価等に関する基本的な事項

一 医療計画の作成に関する基本的な事項

都道府県の医療計画の作成に当たっては、「第二 医療提供体制の確保に関する調査及び研究に関する基本的な事項」の観点を踏まえた医療機能調査を通じて把握される情報を基礎として行う必要がある。

また、この際には、医療計画と都道府県介護保険事業支援計画及び市町村介護保険事業計画との整合性を確保することができるよう、地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針(平成二十六年厚生労働省告示第三百五十四号)第2の二の1に規定する協議の場を設置し、より緊密な連携が図られるような体制整備を図っていくことが重要である。

加えて、特に新興感染症発生・まん延時における医療については、感染症法第十条第一項に規定する予防計画(以下単に「予防計画」という。)及び新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成二十四年法律第三十一号)第七条第一項に規定する都道府県行動計画(以下単に「都道府県行動計画」という。)との整合性を確保し、地域の実情に応じて、医療機関が地域の関係機関と連携して感染症への対応を行うことができるよう、必要に応じて感染症法第十条の二第一項に規定する連携協議会を活用することも重要である。

五疾病・六事業に係る数値目標については、都道府県において、「第三 医療提供体制の確保に係る目標に関する事項」で示した方針に即して、かつ、評価可能な具体的なものとすることが必要である。

また、在宅医療に係る数値目標については、慢性期機能を担う病床との一体的な整備という視点に立ちつつ、五疾病・六事業と同様の考え方に基づくものとすることが必要である。

その際には、医療機能調査を通じて把握された情報に基づく地域の医療提供体制の課題を踏まえた数値目標とし、その数値目標を達成するために必要な施策も併せて盛り込むことが必要である。

五疾病・六事業に係る医療連携体制については、都道府県において、「第四 医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携並びに医療を受ける者に対する医療機能に関する情報の提供の推進に関する基本的な事項」で示した方針に即しており、かつ、患者や住民に分かりやすい具体的なものとすることが必要である。

また、在宅医療に係る医療連携体制については、五疾病・六事業と同様の考え方に基づくものとすることが必要である。

地域医療構想については、都道府県において、「第五 地域医療構想に関する基本的な事項」で示した考え方に即しており、かつ、患者や住民に分かりやすい具体的なものとすることが必要である。

地域における病床の機能の分化及び連携の推進については、「第六 地域における病床の機能の分化及び連携並びに医療を受ける者に対する病床の機能に関する情報の提供の推進に関する基本的な事項」に即しており、具体的な施策を明示することが重要である。

外来医療に係る医療提供体制の確保については、「第七 外来医療に係る医療提供体制の確保に関する基本的な事項」に即しており、具体的な施策を明示することが重要である。

医師の確保については、「第八 医師の確保に関する基本的な事項」に即しており、具体的な施策を明示することが重要である。

医療従事者の確保については、「第九 歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者(医師を除く。以下同じ。)の確保に関する基本的な事項」に即しており、具体的な施策を明示することが重要である。

一般病床及び療養病床に係る基準病床数の算定については、二次医療圏ごとに行うものであるが、五疾病・六事業及び在宅医療それぞれの医療提供体制の確保については、必ずしも一律に二次医療圏ごとの計画を作成するのではなく、必要に応じて、患者の受療動向等の地域の実情に応じた計画を作成することに留意する必要がある。その際、既存の医療提供施設の医療機能を明確に患者や住民に示すことに重点を置くことが重要である。

二 目標及び施策の達成状況の評価等に関する基本的な事項

施策の達成状況に関する評価については、都道府県は、設定した数値目標を基に、施策の達成状況を検証するとともに、その結果等を患者や住民に公表し、次の医療計画の見直しに反映させることが求められる。

また、数値目標及び施策の進捗状況等の評価については、評価を行う組織(都道府県医療審議会等)や時期(原則として一年ごと)を明らかにした上で定期的に評価を行うとともに、その結果等を患者や住民に公表し、六年間の計画期間内であっても、必要に応じて施策を見直すことが重要である。

第十一 その他医療提供体制の確保に関する重要事項

医療計画及びこれに基づく具体的な施策を定めるに当たっては、健康増進法(平成十四年法律第百三号)等医療関係各法等の規定及び次の方針等に配慮して定めるよう努めなければならない。また、総合確保方針及び都道府県計画並びに介護保険法第百十六条第一項に規定する基本指針、都道府県介護保険事業支援計画及び市町村介護保険事業計画並びに感染症法第九条第一項に規定する基本指針、予防計画及び都道府県行動計画との整合性の確保を図らなければならない。

1 健康増進法第七条第一項に規定する基本方針及び同法第八条第一項に規定する都道府県健康増進計画

2 高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第八条第一項に規定する医療費適正化基本方針及び同法第九条第一項に規定する都道府県医療費適正化計画

3 法第百五条に規定する指針

4 がん対策基本法(平成十八年法律第九十八号)第十条第一項に規定するがん対策推進基本計画及び同法第十二条第一項に規定する都道府県がん対策推進計画

5 健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(平成三十年法律第百五号)第九条第一項に規定する循環器病対策推進基本計画及び同法第十一条第一項に規定する都道府県循環器病対策推進計画

6 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)第四十一条第一項に規定する指針

7 肝炎対策基本法(平成二十一年法律第九十七号)第九条第一項に規定する肝炎対策基本指針

8 難病の患者に対する医療等に関する法律(平成二十六年法律第五十号)第四条第一項に規定する基本方針

9 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第二十一条の五第一項に規定する基本的な方針、同法第三十三条の十九第一項に規定する基本指針及び同法第三十三条の二十二第一項に規定する都道府県障害児福祉計画

10 アレルギー疾患対策基本法(平成二十六年法律第九十八号)第十一条第一項に規定するアレルギー疾患対策基本指針及び同法第十三条に規定する都道府県におけるアレルギー疾患対策の推進に関する計画

11 成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(平成三十年法律第百四号)第十一条第一項に規定する成育医療等基本方針

12 自殺対策基本法(平成十八年法律第八十五号)第十二条に規定する自殺総合対策大綱及び同法第十三条第一項に規定する都道府県自殺対策計画

13 アルコール健康障害対策基本法(平成二十五年法律第百九号)第十二条第一項に規定するアルコール健康障害対策推進基本計画及び同法第十四条第一項に規定する都道府県アルコール健康障害対策推進計画

14 歯科口腔保健の推進に関する法律(平成二十三年法律第九十五号)第十二条第一項に規定する基本的事項

15 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第八十七条第一項に規定する基本指針及び同法第八十九条第一項に規定する都道府県障害福祉計画

改正文 (平成一九年一一月六日厚生労働省告示第三七五号) 抄

平成十九年十一月六日から適用する。

改正文 (平成二二年一月二六日厚生労働省告示第二八号) 抄

平成二十二年一月二十六日から適用する。

改正文 (平成二四年三月二二日厚生労働省告示第一四六号) 抄

平成二十四年四月一日から適用する。

改正文 (平成二五年一月一八日厚生労働省告示第六号) 抄

平成二十五年四月一日から適用する。

改正文 (平成二六年一一月二一日厚生労働省告示第四三九号) 抄

薬事法等の一部を改正する法律の施行の日(平成二十六年十一月二十五日)から適用する。

改正文 (平成二七年三月三一日厚生労働省告示第一九八号) 抄

平成二十七年四月一日から適用する。

改正文 (平成二九年三月二八日厚生労働省告示第八八号) 抄

平成二十九年四月一日から適用する。

改正文 (平成三一年三月二五日厚生労働省告示第八九号) 抄

平成三十一年四月一日から適用する。

改正文 (令和五年三月三一日厚生労働省告示第一四九号) 抄

令和五年四月一日から適用する。

改正文 (令和五年五月二六日厚生労働省告示第二〇三号) 抄

令和六年四月一日から適用する。