6月 月例労働経済報告


 概況

(1)  一般経済の概況
 景気は、回復している。

  ・ 企業収益は改善し、設備投資は増加している。
  ・ 個人消費は、緩やかに増加している。
  ・ 雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善に広がりがみられる。
  ・ 輸出、生産は緩やかに増加している。

 先行きについては、企業部門の好調さが家計部門へ波及しており、国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれる。一方、原油価格の動向が内外経済に与える影響等には留意する必要がある。

(2)  労働経済の概況
 労働経済面をみると、完全失業率が高水準ながらも、低下傾向で推移し、賃金も緩やかに増加するなど(第1図)、雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善に広がりがみられる。

  ・ 完全失業率は、4月は前月と同水準の4.1%となった。
  ・ 有効求人倍率は、上昇している。
  ・ 新規求人数は、増加している。
  ・ 就業者数は季節調整値で2ヶ月連続で減少した。雇用者数は季節調整値で2ヶ月連続で減少した。
  ・ 製造業の残業時間は、増加傾向となっている。
  ・ 定期給与は緩やかな増加傾向で推移している。

 一般経済

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、緩やかに増加している。
 4月の鉱工業生産(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、1.5%増と2ヶ月連続で増加した(第2図)。
 業種別にみると、4月は電子部品・デバイス工業、パルプ・紙・紙加工品工業、鉄鋼業等が低下し、一般機械工業、輸送機械工業、金属製品工業等が上昇した。出荷は2.6%増と2ヶ月連続で増加した。在庫は0.1%減となり、6ヶ月ぶりに減少した。
 今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は5月0.2%増の後、6月は1.3%増となっている。

(2) 最終需要の動向をみると、

(1)  個人消費は、緩やかに増加している。
 全世帯の実質消費支出(速報、以下同じ)は3月季節調整済前月比0.2%減の後、4月は同0.0%となった。勤労者世帯では3月季節調整済前月比3.2%減の後、4月は同0.8%増となった(前年同月比4.1%減)。勤労者世帯の平均消費性向は3月季節調整値75.1%の後、4月は同70.7%となった(第3図)。
 消費者態度指数の推移をみると、2006年1〜3月期は季節調整済前期差0.3ポイント上昇し、48.2となった。なお、4月は前月差(原数値)2.1ポイント上昇し、50.0となった。
 4月の小売業販売額(速報)は季節調整済前月比0.1%増、大型小売店販売額は同0.3%増となった。また、乗用車(軽を含む)の新車登録台数は、4月前年同月比5.0%減の後、5月同6.4%減となった。

(2)  設備投資は、増加している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、2005年10〜12月期季節調整済前期比0.1%減の後、2006年1〜3月期同6.2%増(うち製造業同6.5%増、非製造業同6.1%増)となっており、製造業は7四半期連続で増加、非製造業では2四半期ぶりで増加している。
 今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(3月調査)をみると、全規模の2006年度の設備投資計画(前年度比)は、全産業で1.3%減、製造業は0.1%増、非製造業1.9%減となっている(第4表)。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で3月は5.2%減の後、4月は10.8%増となっている。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、3月は季節調整済前月比9.6%増の後、4月は同1.0%増となっている。
 先行きについては、企業収益の改善が続いていることから、増加傾向で推移するものと見込まれる。

(3)  住宅建設は、このところ増加している。
 新設住宅着工総戸数をみると、3月季節調整済前月比8.2%減の後、4月は同9.1%増の11.1万戸(年率133.5万戸)と2ヶ月ぶりに増加した。(第5図)。
 新設住宅着工床面積は、4月季節調整済前月比3.1%増となった。
 先行きについては、雇用情勢が改善していることに加え、家計の所得環境などの回復が続いていけば、住宅着工は底堅く推移していくことが期待される。

(4)  公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で、2月17.5%減の後、3月34.4%減となった。また、公共工事請負金額(保証事業会社協会「公共工事前払金保証統計」)をみると、3月前年同月比15.4%減の後、4月同17.3%減となっている。

(5)  輸出は、緩やかに増加している。
 通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で3月0.1%減の後、4月は3.8%減となっており、四半期別では、10〜12月期2.5%増の後、1〜3月期4.3%増となった(第6図)。
 地域別には、アジア向け輸出は全体として緩やかに増加、アメリカ向け輸出は全体として緩やかに増加、EU向け輸出は横ばいとなっている。
 輸入は、増加している。
 通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で3月2.9%増の後、4月は4.0%増となっており、四半期別では、10〜12月期1.4%減の後、1〜3月期4.1%増となった(第6図)。
 地域別には、アジアからの輸入は増加、アメリカからの輸入は減少、EUからの輸入は横ばいとなっている。

(3)  国内企業物価は、素材価格の上昇により上昇している。消費者物価は、横ばいとなっている。
 5月の国内企業物価(速報)は、前月比0.7%上昇(前年同月比3.3%上昇)となり、輸出物価は同1.6%下落(同3.7%上昇)、輸入物価は同0.2%下落(同15.4%上昇)となった。
 4月の消費者物価は、総合が前年同月比0.4%上昇(前月比0.3%上昇)、生鮮食品を除く総合が同0.5%上昇(同0.3%上昇)となった(第7図)。

(4)  企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、一部に慎重さがみられるものの、緩やかに改善している。倒産件数は、おおむね横ばいとなっている。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、前年同期比は、2005年10〜12月期全産業11.1%増の後、2006年1〜3月期全産業4.1%増(製造業5.5%増、非製造業3.2%増)、季節調整値で2005年10〜12月期前期比0.6%増の後、2006年1〜3月期同1.2%減(製造業4.3%減、非製造業1.1%増)となった。
 また、日本銀行「企業短期経済観測調査」(3月調査)によれば、企業の全規模の2006年度の経常利益計画(前年度比)は、2006年度通期では全産業4.4%の増益、製造業3.5%の増益、非製造業5.1%の増益と、製造業、非製造業とも5年連続の増益を見込んでいる。なお、2006年度上期では、全産業1.5%の増益、製造業0.5%の減益、非製造業3.3%の増益の後、下期では全産業7.1%の増益、製造業7.5%の増益、非製造業6.7%の増益が見込まれている(第8表)。
 企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「企業短期経済観測調査」(3月調査)をみると、全規模で全産業5ポイント(横ばい)、製造業12ポイント(横ばい)、非製造業0ポイント(横ばい)となっており、全産業で横ばいとなっている(第9表)。
 倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、4月1,087件で、前年同月比14.9%増となった。

(5)  2006年1〜3月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.8%増(年率3.1%増)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.8%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は-0.1%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.4%となった(第10図)。

 雇用・失業

(1)
(1)  4月の就業者数(季節調整値)は、2ヶ月連続前月比で減少した。
 就業者数(季節調整値)は、3月に前月差23万人減となった後、4月は前月差5万人減の6364万人(原数値は6368万人、前年同月差16万人増)となった。男女別には、男性が3729万人(前月差11万人減)、女性が2635万人(同7万人増)となった。
 4月の雇用者数(季節調整値)は、2ヶ月連続前月比で減少した。
 雇用者数(季節調整値)は、3月前月差15万人減の後、4月同13万人減と減少し、5458万人(原数値は5459万人、前年同月差69万人増)となった。男女別には、男性が3193万人(前月差15万人減)、女性が2265万人(前月差1万人増)となった(第11表)。雇用形態別(原数値)にみると、常雇が4706万人(前年同月差67万人増)、臨時雇が43万人(同9万人増)、日雇が110万人(同7万人減)となった。(第13図
 4月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済指数)は、前月比0.2%増となった。また、一般、パート別にみると、一般労働者は前月比1.1増、パートタイム労働者は前月比1.6%減となった。

(2)  4月の完全失業率(季節調整値)は、前月と同水準となった。
 完全失業率(季節調整値)は、3月、4月ともに前月と同水準の4.1%(原数値は4.3%、前年同月と比べて0.4ポイント低下)となった。男女別には、男性が4.2%(前月差0.1%ポイント低下)、女性が3.8%(前月差0.1%ポイント低下)となった。
 4月の完全失業者数(季節調整値)は、3ヶ月連続前月比で減少した。
 完全失業者数(季節調整値)は、3月前月差2万人減の後、4月同5万人減と減少し、269万人(原数値は284万人、前年同月差26万人減)となった。男女別には、男性が164万人(前月差4万人減)、女性が105万人(前月差2万人減)となった。
 なお、求職理由別(原数値)にみると、4月は非自発的理由による離職失業者は95万人(前年同月差9万人減)、自発的理由による離職失業者は103万人(同8万人減)、学卒未就職者は22万人(同3万人減)、その他の理由による失業者は61万人(同5万人減)となった(第11表)。

(3)  4月の労働力人口(季節調整値)は、2ヶ月連続前月比で減少した。
 労働力人口(季節調整値)は、3月前月差27万人減の後、4月同11万人減と減少し、6629万人(原数値は6652万人、前年同月差10万人減)となった。
 4月の非労働力人口(季節調整値)は、3ヶ月ぶりに前月比で減少した。
 非労働力人口(季節調整値)は、3月前月差37万人増の後、4月同5万人減と減少し、4374万人(原数値は4346万人、前年同月差25万人増)となった。男女別には、男性が1428万人(前月差5万人増)、女性が2947万人(同9万人減)となった。
 労働力人口比率(原数値)は、4月は60.5%(前年同月と比べて0.1%ポイント低下)となった。男女別には、男性が73.4%(前年同月と同水準)、女性が48.4%(前年同月差0.2%ポイント低下)となった(第11表)。
 就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合、原数値)は、4月は57.9%(前年同月より0.1%ポイント上昇)となった。

(2)  有効求人数(季節調整値)は、前月比2.0%増と2ヶ月ぶりに増加した。
 有効求職者数(季節調整値)は前月比1.3%減と3ヶ月ぶりに減少した。
 4月の有効求人倍率(季節調整値)は、1.04倍(前月より0.03ポイント上昇)となった。
 新規求人数(季節調整値)は、前月比5.1%増と2ヶ月ぶりに増加した。
 新規求職者数(季節調整値)は、前月比1.0%減と2ヶ月連続減少した。
 4月の新規求人倍率(季節調整値)は、1.54倍と前月より0.09ポイント上昇した第12表)。
 正社員の有効求人倍率は、0.58倍(前年同月差0.05ポイント増)となった。
 新規求人(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、4月は一般は前月比7.4%増と3か月ぶりに増加し、パートについては前月比2.0%減と2か月連続減少した。新規求職者数(季節調整値)は、一般は前月比2.3%減と2か月連続減少し、パートについては同6.9%増と3ヶ月連続増加した。

(3)  産業別にみると4月の就業者数(原数値)は、製造業は前年同月差42万人増、サービス業は同30万人増、医療、福祉は同10万人増、情報通信業は同6万人増、建設業は同1万人増と増加したのに対し、飲食店,宿泊業は同18万人減、卸売・小売業18万人減、運輸業は同7万人減、教育,学習支援業は同7万人減と減少した。
 4月の新規求人(原数値)についてみると、医療,福祉は前年同月比13.2%増、飲食店,宿泊業は同5.4%増、運輸業は同3.5%増、卸売・小売業は同3.3%増、サービス業は同2.2%増、情報通信業は同2.0%増、製造業は同1.1%増と増加したのに対し、建設業は同8.2%減、教育,学習支援業は同2.7%減と減少した。

(4)  雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、製造業の所定外労働時間(季節調整値)は、増加傾向となっている。所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数)は、製造業では3月は前月比0.3%減の後、4月は同0.3%増、調査産業計では3月は前月比0.3%減の後、4月は同2.7%増となった。
 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では-7%ポイント(12月調査より3%ポイント低下)となり低下傾向である(第14図)。
 厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2006年1〜3月期に雇用調整を実施した事業所割合は12%となり2005年10〜12月期と比べ1%ポイント上昇した。(第15図)。また、2006年4〜6月期に実施予定の事業所割合は12%、2006年7〜9月期に実施予定の事業所割合は10%となっている。

 賃金・労働時間

(1)  4月の現金給与総額(事業所規模5人以上、産業計、速報、以下同じ)は282,571円で、前年同月比0.3%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.2%増、パートタイム労働者は同0.3%増となった。
 内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.1%減(一般労働者同0.1%減、パートタイム労働者同0.4%増)となったほか、所定外給与は同1.6%増、特別給与は同6.8%増となった(第16図)。
 また、きまって支給する給与は前年同月比横ばい(一般労働者同0.1%増、パートタイム労働者同0.4%増)となった。

(2)  4月の総実労働時間(事業所規模5人以上、産業計、速報、以下同じ)は155.8時間で、前年同月比0.1%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比横ばい、パートタイム労働者は同0.4%減となった。
 内訳をみると、所定内労働時間は144.7時間で前年同月比0.3%減(一般労働者同0.3%減、パートタイム労働者同0.5%減)、所定外労働時間は11.1時間で同2.8%増となった。なお、月間出勤日数は20.1日で前年同月差は0.1%減となった。
 4月の製造業の所定外労働時間(速報)は16.8時間で、前年同月比4.3%増となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比4.3%増、100〜499人規模で同6.2%増、30〜99人規模で同1.9%増、5〜29人規模で4.6%増となった(第17図)。


6月の主要変更点

月例労働経済報告参考表


データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表)

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表)


 問い合わせ先
 政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係
 電話   03(5253)1111 内線 7732

トップへ