7月 月例労働経済報告


 概況

(1)  一般経済の概況
 景気は、弱さを脱する動きがみられ、緩やかに回復している。

  ・ 企業収益は改善し、設備投資は緩やかに増加している。
  ・ 個人消費は、持ち直している。
  ・ 雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善に広がりがみられる。
  ・ 輸出、生産は横ばいとなっている。

 先行きについては、企業部門の好調さが持続する中で、家計部門も改善しており、世界経済の着実な回復に伴って、景気回復は底堅く推移すると見込まれる。一方、情報化関連分野でみられる在庫調整の動きや原油価格の動向等には留意する必要がある。

(2)  労働経済の概況
 労働経済面をみると、完全失業率が高水準ながらも、低下傾向で推移し、賃金も緩やかに増加するなど(第1図)、雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善に広がりがみられる。

  ・ 就業者数は季節調整値で2か月連続で増加した。雇用者数は季節調整値で3か月連続で増加している。
  ・ 完全失業率は、4.4%と高水準ながらも低下傾向で推移している。
  ・ 有効求人倍率は、上昇傾向となっている。
  ・ 新規求人数は、横ばいとなっている。
  ・ 製造業の所定外労働時間は、緩やかに減少している。
  ・ 定期給与は緩やかに増加している。


 一般経済

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、横ばいとなっている。
 5月の鉱工業生産(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、2.3%減と2か月ぶりに減少となった(第2図)。
 業種別にみると、5月は輸送機械工業、情報通信機械工業、電子部品・デバイス工業等が低下し、化学工業(除.医薬品)、金属製品工業、精密機械工業が上昇した。出荷は2.7%減と3ヶ月ぶりに低下し、在庫は、前月比横ばいとなり、全体としては低水準で推移している。
 今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は6月1.7%増の後、7月は1.2%減となっている。

(2)  最終需要の動向をみると、

   (1)  個人消費は、持ち直している。
 全世帯の実質消費支出(速報、以下同じ)は4月季節調整済前月比1.0%増の後、5月は同0.8%増となった。勤労者世帯では4月季節調整済前月比3.6%増の後、5月は同1.4%減となった(前年同月比2.0%減)。勤労者世帯の消費支出を財(商品)・サービス別にみると、5月の財(商品)は実質で前年同月比4.6%減、サービスは同1.0%増となった。勤労者世帯の平均消費性向は4月季節調整値71.2%の後、5月同75.3%となった(第3図)。
 消費者態度指数の推移をみると、2005年4〜6月期は季節調整済前期差0.2ポイント低下し、45.4となった。なお、6月は前月差(原数値)1.7ポイント低下し、46.6となった。
 5月の小売業販売額(速報)は季節調整済前月比1.5%減、大型小売店販売額は同0.2%減となった。
 乗用車(軽を含む)の新車登録台数は、5月前年同月比7.9%増の後、6月同8.3%増となった。

   (2)  設備投資は、緩やかに増加している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、2004年10〜12月期季節調整済前期比2.9%減の後、2005年1〜3月期同5.3%増(うち製造業同3.1%増、非製造業同6.5%増)となっており、製造業は3四半期連続で増加、非製造業では3四半期ぶりに増加している。
 今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(6月調査)をみると、全規模の2005年度の設備投資計画(前年度比)は、全産業で5.4%増、製造業は11.0増と3年連続の増加となっている。非製造業は2.9%増となっている(第4表)。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で4月は1.0%減の後、5月は6.7%減となっている。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、4月は季節調整済前月比1.4%増の後、5月は同14.7%増となっている。
 先行きについては、企業収益の改善が続いていることから増加傾向で推移するものと見込まれる。

   (3)  住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
 新設住宅着工総戸数をみると、4月季節調整済前月比2.4%減の後、5月は同5.9%増の10.0万戸(年率121万戸)と4ヶ月ぶりに増加した。(第5図)。
 新設住宅着工床面積は、5月季節調整済前月比8.9%増となった。
 先行きについては、雇用情勢が改善していることに加え、家計の所得環境などが回復していけば、住宅着工は底堅く推移していくことが期待される。

   (4)  公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で、3月40.5%増の後、4月3.3%減となった。また、公共工事請負金額(保証事業会社協会「公共工事前払金保証統計」)をみると、4月前年同月比11.3%減の後、5月同0.4%減となっている。

   (5)  輸出は、横ばいとなっている。
 通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で4月2.1%減の後、5月は3.0%増となっており、四半期別では、10〜12月期1.7%減の後、1〜3月期1.0%減となった(第6図)。
 地域別には、アジア向け輸出は横ばいとなっており、アメリカ向け輸出は緩やかに増加しており、EU向け輸出は弱含みとなっている。
 輸入は、横ばいとなっている。
 通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で4月0.4%減の後、5月は1.2%減となっており、四半期別では、10〜12月期0.7%増の後、1〜3月期0.5%増となった(第6図)。
 地域別には、アジアからの輸入は横ばい、アメリカからの輸入は横ばいとなっており、EUからの輸入は横ばいとなっている。

(3)  国内企業物価は、素材価格の上昇によりこのところ上昇している。消費者物価は、横ばいとなっている。
 5月の国内企業物価(速報)は、前月比0.1%下落(前年同月比1.8%上昇)となり、輸出物価は同1.3%下落(同1.3%下落)、輸入物価は同0.5%下落(同8.8%上昇)となった。
 5月の消費者物価は、総合が前年同月比0.2%上昇(前月比0.3%上昇)、生鮮食品を除く総合が同横ばい(同0.2%上昇)となった(第7図)。

(4)  企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、緩やかに持ち直している。倒産件数は、減少している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、前年同期比は、2004年10〜12月期全産業17.6%増の後、2005年1〜3月期全産業15.8%増(製造業19.0%増、非製造業14.0%増)、季節調整値で2004年10〜12月期前期比2.1%減の後、2005年1〜3月期同3.6%増(製造業4.1%増、非製造業3.3%増)となった。
 また、日本銀行「企業短期経済観測調査」(6月調査)によれば、企業の全規模の2005年度の経常利益計画(前年比)は、2005年度通期では全産業2.7%の増益、製造業2.7%の増益、非製造業2.8%の増益と、製造業、非製造業とも4年連続の増益を見込んでいる。なお、2005年度上期では、全産業6.7%の減益、製造業7.2%の減益、非製造業6.4%の減益の後、下期では全産業11.4%の増益、製造業11.9%の増益、非製造業10.9%の増益が見込まれている(第8表)。
 企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「企業短期経済観測調査」(6月調査)をみると、全規模で全産業1ポイント(3ポイント改善)、製造業8ポイント(2ポイント改善)、非製造業-3ポイント(3ポイント改善)となっており、製造業、非製造業ともに改善となっている(第9表)。
 倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、5月1,072件(前年同月比1.5%減)となっている。1,100件を下回り、5月としては1991年以来の低い水準となっている。

(5)  2005年1〜3月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比1.2%(年率4.9%)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は1.3%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は▲0.1%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.6%増となった(第10図)。


 雇用・失業

(1) (1)  5月の就業者数(季節調整値)は、2ヶ月連続で前月比で増加した。
 就業者数(季節調整値)は、4月前月差41万人増、5月同42万人増となり、6395万人(原数値は6435万人、前年同月差46万人増)となった。男女別には、5月は男性が3728万人(前月差11万人増)、女性が2666万人(同31万人増)となった。
 5月の雇用者数(季節調整値)は、3ヶ月連続で前月比で増加した。
 雇用者数(季節調整値)は、4月前月差44万人増の後、5月同27万人増となり、5428万人(原数値は5447万人、前年同月差41万人増)となった。男女別には、5月は男性が3166万人(前月差3万人減)、女性が2262万人(前月差29万人増)となった(第11表)。雇用形態別(原数値)には、5月は常雇が4678万人(前年同月差14万人増)、臨時雇が649万人(同26万人増)、日雇が121万人(同3万人増)となっている。
 5月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済指数)をみると前月比0.1%増となった。また、一般、パート別にみると、一般労働者は前月比0.2%増、パートタイム労働者は前月と同水準となった。

(2)  5月の完全失業率(季節調整値)は前月と同率の4.4%となった。
 男女別には、男性が4.6%(前月差0.1%ポイント上昇)、女性が4.2%(前月差0.1%ポイント低下)となった。
 5月の完全失業者(季節調整値)は、前月差3万人増の296万人(原数値は307万人、前年同月差12万人減)となった。
 男女別には、男性が180万人(前月差3万人増)、女性が116万人(同1万人減)となった。
 なお、求職理由別(原数値)にみると、5月は非自発的理由による離職者は104万人(前年同月差8万人減)、自発的理由による離職者は112万人(同5万人増)、その他の理由による失業者は70万人(同3万人減)となった(第11表)。

(3)  5月の労働力人口(季節調整値)は、前月差46万人増の6689万人(原数値は6742万人、前年同月差34万人増)となった。
 非労働力人口(季節調整値)は、前月差36万人減の4311万人(原数値は4258万人、前年同月差19万人減)となった。男女別には、男性が1414万人(前月差8万人減)、女性が2897万人(同28万人減)となった。
 労働力率(原数値)は、5月は61.2%(前年同月と比べ0.2%ポイント上昇)となった。男女別には、男性が73.8%(前年同月差0.2%ポイント低下)、女性が49.5%(前年同月差0.7%ポイント上昇)となった(第11表)。

(2)  有効求人(季節調整値)は、前月比2.0%増と3か月連続で増加し、有効求職者数(季節調整値)は同2.0%増と2か月ぶりに増加となった。
 有効求人倍率(季節調整値)は、上昇傾向で推移しており、5月は0.94倍(前月と同水準)となった。
 新規求人(季節調整値)は、前月比1.3%増と3か月ぶりに増加した。
 新規求職者数(季節調整値)は前月比0.6%減と2か月連続で減少した。
 新規求人倍率(季節調整値)は、5月は1.45倍と前月より0.03ポイント上昇した第12表)。
 新規求人(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、5月は一般は前月比1.4%増と3か月ぶりに増加し、パートについては同0.8%増と2ヶ月ぶりに増加した。新規求職(季節調整値)は、一般は前月比0.9%増と2ヶ月ぶりに増加し、パートについては同8.9%減と3ヶ月ぶりに減少した。

(3)  産業別にみると5月の就業者数(原数値)は、医療,福祉は前年同月差41万人増、サービス業は同33万人増と増加したのに対し、卸売・小売業は同10万人減、製造業は同4万人減、情報通信業は同3万人減、建設業は同2万人減、教育,学習支援業は同2万人減、運輸業は同1万人減、飲食店,宿泊業は同1万人減と減少した。
 5月の新規求人(原数値)についてみると、建設業は前年同月比30.6%増、情報通信業は同27.1%増、医療,福祉は同20.6%増、サービス業は同17.4%増、飲食店,宿泊業は同16.2%増、卸売・小売業は同10.5%増、運輸業は同9.9%増、製造業は同6.8%増、教育,学習支援業は同0.0%増となった。

(4)  雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、製造業の所定外労働時間(季節調整値)は、緩やかに減少している。所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数)は、製造業では4月は前月比0.4%増の後、5月は同1.6%減となり、調査産業計では4月は前月比2.9%増の後、5月は同0.8%増となった。
 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(6月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では0%ポイント(3月調査より1%ポイント上昇)となったものの、低下傾向にある。(第13図)。
 厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2005年1〜3月期に雇用調整を実施した事業所割合は14%となり2004年10〜12月期と比べて1%ポイント低下した(第14図)。また、2005年4〜6月期に実施予定の事業所割合は13%、2005年7〜9月期に実施予定の事業所割合は11%と低下が見込まれている。
 内閣府「景気ウォッチャー調査」による6月の2〜3か月先の景気の先行き判断DI・雇用関連は57.4で前月を1.2ポイント上回った。


 賃金・労働時間

(1)  5月の現金給与総額(事業所規模5人以上、産業計、速報、以下同じ)は276,402円で、前年同月比0.4%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.1%増、パートタイム労働者は同0.6%増となった。
 内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.5%増(一般労働者同0.1%増、パートタイム労働者同0.4%増)となったほか、所定外給与は同1.4%増、特別給与は同2.9%減となり、実質賃金は同0.3%増となった(第15図)。
 また、決まって支給する給与は前年同月比0.6%増(一般労働者同0.2%増、パートタイム労働者同0.5%増)となった。

(2)  5月の総実労働時間(事業所規模5人以上、産業計、速報、以下同じ)は143.9時間で、前年同月比0.1%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.2%減、パートタイム労働者は同横ばいとなった。
 内訳をみると、所定内労働時間は133.8時間で前年同月比横ばい(一般労働者同0.3%減、パートタイム労働者同0.2%減)、所定外労働時間は10.1時間で同2.1%増となった。なお、月間出勤日数は18.6日で前年同月差は0.1日減となった。
 5月の製造業の所定外労働時間(速報)は14.7時間で、前年同月比3.3%減となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比1.5%減、100〜499人規模で同1.3%減、30〜99人規模で同7.3%減、5〜29人規模で4.0%減となった(第16図)。

7月の主要変更点

月例労働経済報告参考表


データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表)

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表)


問合わせ先
政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係
電話 03(5253)1111 内線7732

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