3月 月例労働経済報告



1 概況

(1)  一般経済の概況
 景気は、一部に弱い動きが続いており、回復が緩やかになっている。

  ・ 企業収益は改善し、設備投資は緩やかに増加している。
  ・ 個人消費は、おおむね横ばいとなっている。
  ・ 雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善している。
  ・ 輸出は弱含み、生産は横ばいとなっている。

 先行きについては、企業部門の好調さが持続しており、世界経済の着実な回復に伴って、景気回復は底堅く推移すると見込まれる。一方、情報化関連分野でみられる在庫調整の動きや原油価格の動向等には留意する必要がある。


(2)  労働経済の概況
 労働経済面をみると、完全失業率が高水準ながらも、低下傾向で推移するなど(第1図)、雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善している。

  ・ 完全失業率は、1月は前月と同水準の4.5%となった。
  ・ 就業者数は2ヶ月連続で増加した。
  ・ 雇用者数はこのところ伸び悩んでいるが、1月は増加した。
  ・ 新規求人数は、増加傾向となっている。
  ・ 有効求人倍率は、上昇傾向となっている。
  ・ 製造業の残業時間は、横ばいとなっている。


2 一般経済

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、横ばいとなっている。
 1月の鉱工業生産(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、2.5%増と2か月ぶりに増加となった(第2図)。資本財の持ち直しや情報化関連生産財における生産調整の進捗を受けて、横ばいとなっている。
 業種別にみると、1月は、化学工業、輸送機械工業等で減少した。出荷は2.2%増と3か月連続で増加し、在庫は1.8%増と2か月ぶりに増加した。
 今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は2月0.5%減の後、3月は1.0%減となっている。

(2)  最終需要の動向をみると、

(1)  個人消費は、おおむね横ばいとなっている。

 全世帯の実質消費支出(速報、以下同じ)は12月季節調整済前月比1.6%減の後、1月は同4.3%増となった。勤労者世帯では12月季節調整済前月比2.1%減の後、1月は同8.2%増となった(前年同月比2.6%増)。勤労者世帯の消費支出を財(商品)・サービス別にみると、1月の財(商品)は実質で前年同月比3.0%増、サービスは同3.0%増となった。勤労者世帯の平均消費性向は12月季節調整値77.4%の後、1月同74.8%となった(第3図)。
 消費者態度指数の推移をみると、平成16年10〜12月期は季節調整済前期比0.2ポイント低下し、45.6となった。なお、2月は前月比(原数値)0.2ポイント上昇し、47.6となった。
 1月の小売業販売額(確報)は季節調整済前月比4.6%増、大型小売店販売額(確報)は同4.4%増となった。
 乗用車(軽を含む)の新車登録台数(速報)は、1月前年同月比1.1%減の後、2月同0.4%減となった。

(2)  設備投資は、緩やかに増加している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、7〜9月期季節調整済前期比1.2%増の後、10〜12月期同2.8%減(うち製造業同1.5%増、非製造業同4.8%減)となっており、製造業は2四半期連続で増加、非製造業では2四半期連続で減少している(第4表)。
 今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)をみると、全規模の16年度の設備投資計画(前年度比)は、全産業で6.2%増、製造業は20.8%増、非製造業は0.4%増とそれぞれ2年連続の増加となっている。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で1月は2.2%減と2か月連続で減少した。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、12月は季節調整済前月比2.7%増の後、1月は同33.9%増となっている。
 先行きについては、企業収益の改善が続いていることから増加傾向で推移するものと見込まれる。
(3)  住宅建設は、このところ増加している。
 新設住宅着工総戸数をみると、12月季節調整済前月比2.9%増の後、1月は同9.9%増の10.9万戸(年率130万戸)と2か月連続で増加した(第5図)。
新設住宅着工床面積は、1月季節調整済前月比11.7%増となった。
 先行きについては、雇用情勢が改善していることに加え、家計の所得環境などが回復していけば、住宅着工は底堅く推移していくことが期待される。
(4)  公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で12月17.0%減、1月19.9%減と25か月連続で減少が続いている。また、公共工事請負金額(保証事業会社協会「公共工事前払金保証統計」)をみると、12月前年同月比14.6%減のあと、1月同12.6%減となっている。
(5)  輸出は、弱含みとなっている。
 通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で12月1.3%減の後、1月は1.7%減となっており、四半期別では、7〜9月期2.4%減の後、10〜12月期0.3%減となった(第6図)。
 地域別には、アジア向け輸出は横ばいとなっており、アメリカ向け輸出は横ばいとなっており、EU向け輸出は弱含みとなっている。
 輸入は、横ばいとなっている。
通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で12月5.0%減の後、1月は4.4%増となっており、四半期別では、7〜9月期0.5%減の後、10〜12月期1.3%増となった(第6図)。
 地域別には、アジアからの輸入はやや増加しており、アメリカからの輸入はやや増加しており、EUからの輸入はおおむね横ばいとなっている。

(3)  国内企業物価は、横ばいとなっている。消費者物価は、このところ小幅下落している。
 2月の国内企業物価(速報)は、前月比0.2%上昇(前年同月比1.3%上昇)となり、輸出物価は同1.5%上昇(同1.0%上昇)、輸入物価は同2.8%上昇(同7.6%上昇)となった。
 1月の消費者物価は、総合が前年同月比0.1%下落(前月比0.5%下落)、生鮮食品を除く総合が同0.3%下落(同0.8%下落)となった(第7図)。
った。

(4)  企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、改善に一服感がみられる。倒産件数は、減少している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、前年同期比は、7〜9月期全産業37.8%増の後、10〜12月期全産業17.6%増(製造業25.3%増、非製造業12.4%増)、季節調整値で7〜9月期前期比5.0%増の後、10〜12月期同2.4%減(製造業1.8%減、非製造業2.7%減)となった。(第8表)。
 また、日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)によれば、企業の全規模の16年度の経常利益計画(前年同期比)は、16年度通期では全産業15.3%の増益、製造業24.0%の増益、非製造業8.9%の増益と、製造業、非製造業とも3年連続の増益を見込んでいる。なお、16年度上期では、全産業32.2%の増益、製造業38.4%の増益、非製造業27.5%の増益の後、下期では全産業2.8%の増益、製造業12.7%の増益、非製造業4.2%の減益が見込まれている。
 企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)をみると、全規模で全産業1ポイント(1ポイント悪化)、製造業11ポイント(2ポイント悪化)、非製造業-7ポイント(横ばい)となっており、製造業は悪化、非製造業は横ばいとなっている(第9表)。
 倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、2月1,014件(前年同月比12.5%減)となっている。1,100件を下回り、2月としては1992年以来の低い水準となっている。

(5)  平成16年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.1%(年率0.5%)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.2%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は▲0.1%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.2%となった(第10図)。


3 雇用・失業

(1)
(1)  1月の就業者数(季節調整値)は、2か月連続で前月比で増加した。
 就業者数(季節調整値)は、12月前月差17万人増、1月同47万人増となり、6367万人(原数値は6261万人、前年同月差40万人増)となった。男女別には、1月は男性が3726万人(前月差7万人増)、女性が2642万人(同41万人増)となった。
 1月の雇用者数(季節調整値)は、前月比で増加した。
 雇用者数(季節調整値)は、12月前月差6万人減の後、1月は同14万人増となり、5352万人(原数値は5310万人、前年同月と同水準)となった。男女別には、1月は男性が3141万人(前月差10万人減)、女性が2211万人(前月差23万人増)となった(第11表)。雇用形態別(原数値)には、1月は常雇が4575万人(前年同月差6万人増)、臨時雇が619万人(同9万人減)、日雇が116万人(同3万人増)となっている。
 1月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、速報、季節調整済指数)をみると前月比0.2%増となった。また、一般、パート別にみると、一般労働者は前月比1.1%増、パートタイム労働者は同2.6%減となった。

(2)  1月の完全失業率(季節調整値)は前月と同率の4.5%となった。
 男女別には、男性が4.8%(前月差0.2ポイント上昇)、女性が4.1%(同0.1%ポイント低下)となった。
 1月の完全失業者(季節調整値)は、前月差7万人増の302万人(原数値は296万人、前年同月差27万人減)となった。
 男女別には、男性が188万人(前月差8万人増)、女性が113万人(同2万人減)となった。
 なお、求職理由別(原数値)にみると、1月は非自発的理由による離職者は102万人(前年同月差30万人減)、自発的理由による離職者は109万人(同8万人増)、その他の理由による失業者は69万人(同5万人減)となった(第11表)。また、失業期間1年以上の完全失業者数は、10〜12月期、109万人(前年同期差3万人減)となった。

(3)  1月の労働力人口(季節調整値)は、前月差50万人増の6668万人(原数値は6557万人、前年同月差12万人増)となった。
 非労働力人口(季節調整値)は、前月差48万人減の4321万人(原数値は4431万人、前年同月差8万人増)となった。男女別には、男性が1397万人(前月差19万人減)、女性が2923万人(同30万人減)となった。
 労働力率(原数値)は、1月は59.6%(前年同月と同水準)となった。男女別には、男性が72.7%(前年同月差0.2%ポイント低下)、女性が47.3%(同0.2%ポイント上昇)となった(第11表)。

(2)  有効求人(季節調整値)は、前月比1.0%増と2か月ぶりに増加し、有効求職者数(季節調整値)は同0.4%増と2か月ぶり増加となった。
 有効求人倍率(季節調整値)は、上昇傾向で推移しており、1月は0.91倍(前月差0.01ポイント上昇)となった。
 新規求人(季節調整値)は、前月比0.7%減と2か月連続で減少した。
 新規求職者数(季節調整値)は前月比3.0%減と2か月連続で減少した。
 新規求人倍率(季節調整値)は、1月は1.41倍と前月より0.03ポイント上昇した第12表)。
 新規求人(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、1月は一般は前月比2.1%減と2か月連続で減少し、パートについては前月比2.0%増と2か月ぶりに増加した。新規求職(季節調整値)は、一般は前月比3.4%減と2か月連続で減少し、パートについても同2.3%減と2か月連続で減少した。


(3)  産業別にみると1月の就業者数(原数値)は、医療,福祉は前年同月差30万人増、サービス業は同28万人増、教育,学習支援業は同9万人増、飲食店,宿泊業は同8万人増、情報通信業が同4万人増と増加したのに対し、建設業は同30万人減、製造業は同19万人減、運輸業は同15万人減、卸売・小売業は同7万人減と減少した。
 1月の新規求人(原数値)は、サービス業は前年同月比20.6%増、情報通信業は同11.4%増、教育,学習支援業は同10.7%増、医療,福祉は同10.4%増、飲食店,宿泊業は同9.2%増、建設業は同6.2%増、卸売・小売業は同3.3%増、製造業は同1.8%増、運輸業は同0.6%増で増加した。


(4)  雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、製造業の所定外労働時間(季節調整値)は、おおむね横ばいとなっている。所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数)は、製造業では12月(確報値)は前月比1.4%減の後、1月(速報値)は同1.1%増となり、調査産業計では12月は前月比1.0%増の後、1月についても同1.0%増となった。
 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(12月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では0%ポイント(9月調査より2%ポイント低下)となり低下傾向にある(第13図)。
 厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2004年10〜12月期に雇用調整を実施した事業所割合は15%となり7〜9月期と同水準となった(第14図)。また、2005年1〜3月期に実施予定の事業所割合は15%、2005年4〜6月期に実施予定の事業所割合は13%と低下が見込まれている。
 内閣府「景気ウォッチャー調査」による2月の2〜3か月先の景気の先行き判断DI・雇用関連は52.5で前月を0.7ポイント下回った。


4 賃金・労働時間

(1)  1月の現金給与総額(産業計、速報、以下同じ)は284,934円で、前年同月比0.4%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.5%増、パートタイム労働者は同横ばいとなった。
 内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.1%減(一般労働者同横ばい、パートタイム労働者同0.3%減)となったほか、所定外給与は同0.9%増、特別給与は同11.9%増となり、実質賃金は同0.4%増となった(第15図)。


(2)  1月の総実労働時間(産業計、速報、以下同じ)は140.5時間で、前年同月比 0.1%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.1%増、パートタイム労働者は同横ばいとなった。
 内訳をみると、所定内労働時間は130.4時間で前年同月比0.1%減(一般労働者同横ばい、パートタイム労働者同0.2%減)、所定外労働時間は10.1時間で同2.1%増となった。なお、月間出勤日数は18.2日で前年同月差は横ばいとなった。
 1月の製造業の所定外労働時間(速報)は14.4時間で、前年同月比横ばいとなった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比2.1%減、100〜499人規模で1.3%増、30〜99人規模で同0.7%増、5〜29人規模で同1.1%増となった(第16図)。


3月の主要変更点

月例労働経済報告参考表

データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表)

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表)


問合わせ先
政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係
電話 03(5253)1111 内線7732

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