第1 趣旨
このガイドラインは、在宅ワークを安心して行うことができる
ようにし、かつ、後に紛争が起こることを未然に防止するため、
在宅ワークの契約条件の文書明示や契約条件の適正化などについ
て必要な事項を示すものである。在宅ワークの仕事を注文する
者は、契約を締結する際には、在宅ワーカーと協議した上で契約
の内容を決定するとともに、第3に示す内容を守っていくことが
求められる。
第2 定義
このガイドラインにおける以下の用語の意味は、それぞれに定
めるところによる。
(1) 在宅ワーク
情報通信機器を活用して請負契約に基づきサービスの提供等
を行う在宅形態での就労のうち、主として他の者が代わって行う
ことが容易なものをいい、例えば文章入力、テープ 起こし、デー
タ入力、ホームページ作成などの作業を行うものがこれに該当す
る場合が多い。ただし、法人形態により行っている場合や他人を
使用している場合などを除く。
(2) 在宅ワーカー
在宅ワークを行う者をいう。
(3) 注文者
在宅ワークの仕事を在宅ワーカーに注文する者をいう。
第3 注文者が守っていくべき事項
(1) 契約条件の文書明示及びその保存
イ 契約条件の文書明示
注文者は、在宅ワーカーと在宅ワークの契約を締結するときに
は、在宅ワーカーと協議の上、在宅ワーカーに対して、次の か
ら の事項を明らかにした文書を交付すること。
ただし、契約期間が一定期間継続し、受発注が繰り返されるよ
うな場合、各回の受発注に共通する事項を包括的な契約とし、納
期等各回の個別の事項をその都度の契約内容として、それぞれ明
示することも可能であること。
注文者の氏名、所在地、連絡先
注文年月日
注文した仕事の内容
報酬額、報酬の支払期日、支払い方法
注文した仕事にかかる諸経費の取扱い
成果物の納期、納品先、納品方法
成果物が不完全であった場合やその納入が遅れた場合の取
扱い(補修が求められる場合の取扱いなど)
なお、文書を交付する際には、別紙のモデル契約様式の活用が
望ましい。
ロ 契約条件の文書保存
注文者は、在宅ワーカーとの契約条件をめぐる紛争を防止す
るため、上記イの事項を記載した文書を3年間保存すること。
ハ 電子メールによる明示
上記イの から の事項は、文書の交付に代えて電子メール
により明示してもよい。ただし、その場合でも、在宅ワーカー
から文書の交付を求められたときは、速やかに文書をその在宅
ワーカーに交付すること。
(2) 契約条件の適正化
イ 報酬の支払
報酬の支払期日
報酬の支払期日については、注文者が在宅ワーカーから成
果物を受け取った日から起算して30日以内とし、長くても
60日以内とすること。
報酬の額
報酬の額については、同一又は類似の業務に従事する在宅
ワーカーの報酬、注文した仕事の難易度、納期の長短、在宅
ワーカーの能力等を考慮することにより、在宅ワーカーの適
正な利益の確保が可能となるように決定すること。
なお、報酬の額については、最低賃金を参考にすることも
考えられる。
ロ 納期
納期については、在宅ワーカーの作業時間が長時間に及ばな
いように設定すること。その際には、通常の労働者の1日の労
働時間(8時間)を目安とすること。
ハ 継続的な注文の打切りの場合における事前予告
同じ在宅ワーカーに、例えば6月を超えて毎月1回以上在宅
ワークの仕事を注文しているなど継続的な取引関係にある注文
者は、在宅ワーカーへの注文を打ち切ろうとするときは、速や
かに、その旨及びその理由を予告すること。
ニ その他
成果物が不完全であったことやその納入が遅れたことにより
損害が生じた場合に、上記(1)のイに基づきあらかじめ契約書
において在宅ワーカーが負担すると決めている範囲を超えて責
任を負わせないようにすること。
(3) その他
イ 個人情報の保護
注文者は、業務上知り得た在宅ワーカーの個人情報について、
本人の同意なく無断で、目的外の使用、第三者への提供その他
漏洩行為を行わないこと。
ロ 健康確保措置
VDT作業(注)の適正な実施方法、腰痛防止策などの健康
を確保するための手法について、注文者が在宅ワーカーに情報
提供することが望ましいこと。
ハ 能力開発機会の付与
注文者は、在宅ワーカーの能力の維持向上を図ることを目的
として必要な能力開発機会を付与することが望ましいこと。
ニ 担当者の明確化
注文者は、あらかじめ、在宅ワーカーから問い合わせや苦情
等があった場合にそれを受け付ける担当者を明らかにすること
が望ましいこと。
(注)VDT作業とは、ディスプレイ、キーボード等により構成され
るVDT機器を使用して、データ入力・検索・照合等、文章・画
像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業
をいう(平成14年4月厚生労働省「VDT作業のための労働衛生
管理のためのガイドライン」)。
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* 情報通信機器を活用して在宅形態で自営的に行われる働き方
のうち、請負的にサービスの提供を行うもの等を「在宅ワーク」
といいます。
在宅ワークには多種多様なものがありますが、ガイドラインの
適用対象となる在宅ワークとは、その中でも保護の必要性の高い
と考えられる、事業者性が弱く従属性の強いもの、すなわち、
「情報通信機器を活用して請負契約に基づきサービスの提供等を
行う在宅形態での就労のうち、主として他の者が代わって行うこ
とが容易なもの」です。
これは、在宅ワーカーによって提供される 成果物の内容や価値
が在宅ワーカーごとに大きく異なることがない、仕事における裁
量性の余地が少ない在宅ワークを適用対象にする という趣旨です。
* 在宅ワークの具体例として文章入力、テープ起こし、データ入力、
ホームページ作成などの作業を行うものが該当する場合が多いこ
とを示しています。
<具体例>
文章入力……………手書き原稿等のワープロ入力等の作業
テープ起こし………講演、座談会等の録音テープの内容のワープロ
入力等の作業
データ入力…………各種調査票等の氏名、住所、調査
内容等の各種データ入力作業
ホームページ作成…HTML(ハイパーテキスト記述言語)を用い
てホームページを作成する作業
* 法人形態により行っている場合や他人を使用している場合などは、
専業性、独立性の高い自営業的な形態といえるので、ガイドライン
の適用対象とはなりません。
* なお、フロッピーディスク等の提供又は受渡しを受けて、原稿を当
該フロッピーディスク等に入力し、それを納入する場合、家内労働
法上の「家内労働」に該当しますので、このガイドラインの適用対
象とはなりません。
* 自らの仕事を注文する者だけでなく、他者から仕事を請け負い、
これを個々の在宅ワーカーに注文する者も当然含まれます。
* 契約後に疑義を生じ、トラブルが発生することのないよう、注文
者は在宅ワーカーと話し合ったうえで、左記 から の基本的な事
項について文書で明示しましょう。
* 注文者が特定でき、確実に連絡が取れるよう明確にしておきまし
ょう。
* 仕事の内容について、双方に思い違い、誤解があることが、報酬
の支払等へのトラブルにつながりがちですので、内容が明確に分か
るように注意しましょう。
* 報酬の支払等に関するトラブルが少なくないので、明確にしまし
ょう。
* 通信費、宅配料金等仕事にかかる経費において、注文者が負担す
る経費がある場合には、あらかじめその範囲を明確にしましょう。
* 報酬の支払期日は納品日から起算して○日以内とされる場合も多
いので、確実に成果物が納品されることが重要です。
* 成果物が不完全であった場合や在宅ワーカーの責任により納期が
遅れた場合の取扱いに ついて、在宅ワーカーの責任を含めあらか
じめ明確にしておきましょう。
* 契約条件の文書を交付する際には、左記 〜 の項目をモデル的
に契約文書の形で示したモデル契約様式を活用しましょう。
* 在宅ワークは情報通信機器を活用した働き方であり、電子メール
でのやり取りが一般的に行われていることから、電子メールによる
契約条件の明示も差し支えないとしたものですが、在宅ワーカーか
ら文書の交付を求められたときは、速やかに文書を交付する必要が
あります。
* 最低賃金とは、最低賃金法による最低賃金、つまり地域別最低賃
金及び産業別最低賃金を 意味します。
* 在宅ワーカーの報酬と最低賃金とを比較する際には、標準的な在
宅ワーカーの時間当たりの作業量から想定される時間当たりの報酬額
をもとに比較するという方法が考えられます。
* 「通常の労働者の1日の労働時間(8時間)を目安とする」とは、
仕事の納期を定めるに当たって、通常の雇用労働者の1日の所定内
労働時間の上限である8時間を在宅ワーカーの作業時間の上限の目
安とするという趣旨です。
8時間を目安として納期を設定する際には、標準的な在宅ワー
カーの時間当たりの作業量から想定される、発注した仕事に必要な
作業時間数をもとに設定するという方法が考えられます。
* 継続的に同一の注文者から仕事を得ている 在宅ワーカーにおいて
は、仕事が突然打ち切られると生活設計の変更を余儀なくされるこ
とがありますので、その影響をできるだけ小さくするため早めに予
告するという趣旨です。
* 打ち切る理由としては、例えば、注文者が 「業務量を縮小したた
め」や在宅ワーカーが 「納期を守らないため」、「仕事の出来具合
に問題があるため」などが考えられるでしょうが、いずれにしろ、
その理由を在宅ワーカーに明確にすることが必要です。
* 成果物が不完全であった場合や納期が遅れた場合の取扱いについて
は、このガイドラインにおいて文書明示すべき事項としていますが、
そのような場合で損害が生じたときに、あらかじめ契約に定められ
ている範囲を超えて在宅ワーカーに責任を負わせないようにしまし
ょう。
* 眼精疲労、腰痛等を感じる在宅ワーカーが多く、特にVDT作業対
策や腰痛の防止対策が重要です。注文者は、VDT作業の適正な実
施方法、腰痛防止対策などの健康を確保するための方法について情
報提供を行うことが望まれます。
* 注文者側から、仕事の出来具合の個人差が大きいという指摘があ
るものの、在宅ワーカーは能力開発を受ける機会が少ない状況にあ
ります。在宅ワークの健全な発展のためにも在宅ワーカーに対して
必要な能力開発の機会を付与することが望まれます。
* この「必要な能力開発機会を付与する」には、在宅ワーカーに必要
と思われる能力開発機会について情報提供をすることも含まれます。
* 在宅ワーカーが作業を進めているときに、問い合わせや苦情を申し
出たい場合が生じた際にすぐに連絡できるようにしておくことが、
問題の早期発見、トラブル防止に役立ちます。注文者は、それを受
け付ける窓口となる担当者の氏名、連絡先をあらかじめ、在宅ワー
カーに明らかにすることが望まれます。
* 厚生労働省では、平成14年4月に「VDT作業のための労働衛生管
理のためのガイドライン」を策定し、VDT作業における労働衛生
管理等に関する事業場での自主的対策を示しています。
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