介護保険前には、区が提供していた通所介護サービスを週に2回だけ利用していた。制度の導入により、その回数を週3〜4回に増やした理由を娘の浩江さんは、「外出することで、父が人と接する機会を多く作りたかった。本人も楽しみが増え、良い刺激となっているようです」と語る。
この利用回数を増やせたことには、介護保険制度で決定されている支給限度基準額内であれば、保険適用で自由にサービスを組み合わせられるようになったことが大きく寄与している。以前はサービスを受けられる回数を、基本的に区が決定しており、松本さんの場合は週2回となっていた。それが今では週3〜4回、通所介護サービスを利用できるようになっている。
サービスの利用で笑顔が増えた
介護保険制度では回数だけでなく、サービス提供者や1回の所要時間も利用者が決められるようになった。
松本さんは以前には、送迎車で20分ほどかかるデイサービスセンターに赴き、1回実質4時間しかサービスを利用できなかった。それが今では、家族の希望で自宅近くのデイサービスセンターを1回6〜8時間にわたって利用できるようになっている。
「健康な時は無口だった父が、サービスを受けて自宅に戻ってくると、色々なことを話すようになりました。顔もニコニコしています」と、娘の浩江さんは語る。通所介護でカラオケをしたこと、介護職員と様々な話をしたことなど、話が弾むことがよくあるそうだ。自然と家族での会話が増え、なごやかな時間が生まれる。
松本さんが通所介護や短期入所サービスを多く利用できるようになったことで、同居する家族にもゆとりができたという。
浩江さん夫婦は共働きのため、自宅で松本さんの介助をするのは、主に奥さんだ。しかし、1年を通してほぼ1人で毎日世話をするのは、精神的にも肉体的にも難しい。その点、松本さんが通所介護などで自宅を留守にしているわずかな時間でも、奥さんの介助負担が軽減されている。
最近1年間でのこれら様々な経験を通して浩江さんは、「介護される側、介護する側の両方にとって、もっとゆとりや楽しみが増える制度になってほしい」と、介護保険の将来に大きな期待を寄せている。
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