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老いを娘の介護で生きる パーキンソン病と闘って |
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「母さん、大きく口を開けて。アーンして」。午後3時のおやつの時間。戸田市の鈴木明子さん(59)は自宅2階のベッドに横たわる実母の三澤静さん(86)に優しく声を掛けながら小さなスプーンでゆっくりとお茶を飲ませる。お茶には飲みやすいように、とろみがつけてある。静さんは30年前に夫を亡くして以来、鈴木さん夫婦と同居している。![]() ![]() 静さんが、一人娘の明子さんの介護を受けるようになったのは四年前から。それまでは焼き物が好きで、毎週1回、電車で30分の東京・池袋のデパートで開かれる陶芸教室に通っていた。湯飲み茶わんや皿、小鉢などの作品は「素人離れの腕前」と仲間の評判もよかった。 ところが、82歳になった平成10年5月、突然病魔が襲った。足がふらつくようになり、転倒を繰り返した。医者に診てもらうと、パーキンソン病と診断された。 ![]() |
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明子さんは「子供もいないし、健康が許す限り、在宅で母の面倒をみよう」と決心した。父親が早く亡くなっただけに、親子のきずなは人一倍強い。静さんはベッド暮らしとなり、立ち上がること、洗顔や衣類を着ること、排せつの始末、入浴などが明子さんの助けをかりなければできなくなっていた。しかし、意識ははっきりとしていて、視力も支障がなく言葉も理解できるので、食事の時だけは明子さんがベッドから車イスに移し、リビングで会話をしながら家族3人揃って食べるようにしている。 「母はウナギが好物で、おかゆと一緒にみじんぎりにして口に運んでやると喜んで食べてくれます」と目を細める。 そんな明子さんにも悩みがあった。「介護に拘束されて息抜きもできずストレスがたまる。この苦労は経験した人でないと理解できない」。そんな折り、介護保険がスタートした。 ![]() ![]() 明子さんは「介護サービスを利用しよう」と戸田市に申請した。静さんの要介護度は5段階のうち「要介護4」。「毎日、全面的な介助あるいは特別な配慮や見守りが必要」と認定された。 以来、明子さんは1か月のうち2週間は近くの特別養護老人ホームにショートステイで静さんを預けて介護サービスをうけるようになった。それとともに、週2回の入浴のために日帰りのデイサービスとデイケアを利用するようになった。 また月に1度は掛かり付けの病院の看護婦が訪問看護をしてくれるようになり、健康状態のチェックや床ずれの世話、介護のアドバイスをしてくれる。「おかげでリフレッシュできるし、介護の負担が緩和されて本当に助かっています。母も外部の人から声を掛けられるので、明るさを取り戻しました」と明子さんは一安心、笑顔を見せる。 ![]() ![]() しかし、明子さん自身にも将来についての大きな不安がある。「親の面倒を見るだけでなく、そろそろ自分たちのことも考えなければならないんですからね」と。そのためには、老後の安心をみんなで支える制度として、介護保険制度をさらに充実させてほしいと心から願っている。 |