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お互いを気遣うやさしさと信頼。 親子の絆を深める介護保険。 |
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北海道大学大学院理学研究科の教授である三宅敏恒さんが、奥さんを病気で亡くしたのは2年前のこと。以来、大学院での講義を続けながら、隣に住む義父福井敏夫さんの家事全般の面倒を見てきた。その後は、1年ほど有料の介護サービスを利用し、介護保険導入後は訪問介護サービスを利用している。福井さんの要介護度は1。現在は、毎日の昼・夕食の家事援助と週2回の入浴のための身体介護サービスを受けている。
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![]() ![]() それまでも、入退院を繰り返していた奥さんの面倒を見るために、家事を担当することの多かった三宅さん。しかし、本格的な在宅介護となると、何をどうすればいいのか見当もつかずに、おろおろすることが多かった。また、大学院で授業やゼミを持つ三宅さんにとって、常に時間的な制約が大きな問題として切り離せなかったという。そんな環境の中での介護は、いつしか三宅さんを肉体的にも精神的にも疲れさせていった。 「いつも時間のことが気にかかっていました。講義が終わったらすぐに帰らなきゃいけないって。それに、お義父(とう)さんにしても、例えばおふろなどは一人で入ってもらっていましたし、いろいろな面で不自由を感じていたでしょうね」 在宅介護を始めて約1年、民間のヘルパーに介護サービスを依頼することにした。 「肉体的に助かることはもちろん、今まで手がかかっていたことをヘルパーさんがやってくれるおかげで、精神的な余裕が生まれてきました」 また、昨年4月の介護保険の導入で、費用の問題が緩和され、現在の介護サービスにもようやく心身ともに慣れてきたと二人は口をそろえる。 ![]() ![]() 「ヘルパーさんのいない時には、どこかしらギクシャクした関係だったのかもしれませんね。忙しさのあまり、お互いにゆっくりと言葉を交わす機会なんてほとんどありませんでしたから」 思うように体を動かせない福井さんにとって、三宅さんとの会話は1日で最も有意義なひととき。おのずと病気についての話題になりがちだが、それがふたりの絆を深めていることは確かなようだ。月に1度の通院も、すべて息子が医者に説明してくれるから安心とうれしそうに語る福井さんの言葉には感謝の気持ちがあふれている。 「介護保険制度そのものには、検討すべき問題がまだあると思いますね。ただ、私たちの生活にとっては、すでに欠かすことのできないものであることは確かです」 介護保険が福井さん、三宅さんにもたらしたもの、それはお互いを気遣うやさしさと言っていいかもしれない。 |