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2015年の高齢者介護
〜高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて〜

課題
  介護保険施行後見えてきた課題


要介護認定者の増、在宅サービスの脆弱性、 痴呆性高齢者の顕在化、新たなサービスの動き等

  制度の持続可能性の確保(課題解決の前提)

目標

 高齢者の尊厳を支えるケアの確立
高齢者の尊厳を支えるケアの確立の図

実施期間
 早急に着手し、2015年までに着実に実施
 (戦後のベビーブーム世代が高齢期に達する2015年までに実現)


介護保険施行後見えてきた課題


要介護認定者の増加・軽度の者の増加
  ・  軽度の要介護者の出現率に大きな都道府県格差が存在。その要因について詳細な検証が必要。
  ・  要支援者への予防給付が、要介護状態の改善につながっていない。

在宅サービスの脆弱性
  ・  特別養護老人ホームの入所申込者の急増
  ・  重度の要介護認定者の半数は施設サービスを利用。在宅生活を希望する高齢者が在宅生活を続けられない状況にある。

居住型サービスの伸び
  ・  特定施設の利用が増加。居住型サービスへの関心が高まっている。

施設サービスでの個別ケアへの取組
  ・  ユニットケアの取組が進展。個人の生活、暮らし方を尊重した介護が広がりを見せている。

ケアマネジメントの現状
  ・  ケアマネジメントについては、アセスメントなど、当然行われるべき業務が必ずしも行われていない。

求められる痴呆性高齢者ケア
  ・  要介護高齢者のほぼ半数は痴呆の影響が認められる者であるにもかかわらず、痴呆性高齢者ケアは未だ発展途上、ケアの標準化、方法論の確立にはさらに時間が必要。

介護サービスの現状
  ・  事業者を選択するために必要な情報が十分に提供されていない。
  ・  サービスの質に関する苦情が多い。従事者の質の向上、人材育成が課題。
  ・  劣悪な事業者を市場から排除する効果的手段が不十分。


新しいケアモデルの確立−痴呆性高齢者のケア−


 現状
身体ケアと比べ、遅れている痴呆性高齢者ケア
要介護高齢者の相当部分が痴呆性高齢者
  : 要介護高齢者のほぼ半数、施設入所者の8割が、何らかの介護・支援を必要とする痴呆がある高齢者(痴呆性老人自立度II以上)
   身体ケアのみでなく、痴呆性高齢者に対応したケアを高齢者介護の標準とするべき
 痴呆性高齢者ケアの普遍化
痴呆性高齢者ケアの基本=「尊厳の保持」
痴呆性高齢者の特性
記憶障害の進行と感情等の残存
不安、焦燥感等→徘徊等行動障害
環境変化への適応困難
生活そのものをケアとして組み立てる
環境の変化を避け、生活の継続性を尊重
高齢者のペースでゆったりと安心して
心身の力を最大限に発揮した充実した暮らし

日常の生活圏域を基本としたサービス体系
小規模な居住空間
家庭的な雰囲気
なじみの人間関係
み慣れた地域での生活の継続
グループホーム
事業者・従事者の
専門性と資質の
確保・向上
小規模・多機能サービス拠点
施設機能の地域展開
ユニットケアの普及

ケアの標準化、方法論の確立
痴呆症状等に効果的に応えることのできる介護サービスに関し、
系統的なエビデンスの収集と評価
サービスのパッケージの開発

痴呆性高齢者と家族を支える地域の仕組み
家族や地域住民に対する痴呆についての正しい知識と理解の啓発
住民による主体的な健康づくりと痴呆介護予防活動
早期発見、相談機能の強化、専門的人材の育成
地域の関係者のネットワークによる支援

痴呆性高齢者ケアについて


要介護(要支援)認定者における痴呆性高齢者の推計

○ 所在と痴呆性老人自立度 単位 万人
  要介護
(要支援)
認定者
認定申請時の所在(再掲)
居宅 特別養護
老人ホーム
老人保健
施設
介護療養型
医療施設
その他の
施設
総数 314 210 32 25 12 34

自立度
II以上
149 73 27 20 10 19
自立度
III以上
79
(25)
28
(15)
20
(4)
13
(4)

(1)
11
(2)
(注) 2002年9月末についての推計。
「その他の施設」:医療機関、グループホーム、ケアハウス等。
カッコ内は、運動能力の低下していない痴呆性高齢者の再掲。(痴呆自立度「III」、「IV」又は「M」かつ、障害自立度「自立」、「J」又は「A」)。

○ 将来推計 単位 万人
西暦 2002 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045
痴呆性老人
自立度
 II以上
149

(6.3)
169

(6.7)
208

(7.2)
250

(7.6)
289

(8.4)
323

(9.3)
353

(10.2)
376

(10.7)
385

(10.6)
378

(10.4)
参考:
 III以上
79

(3.4)
90

(3.6)
111

(3.9)
135

(4.1)
157

(4.5)
176

(5.1)
192

(5.5)
205

(5.8)
212

(5.8)
208

(5.7)
(注) カッコ内は65歳以上人口比(%)。

「何らかの介護・支援を必要とする痴呆がある高齢者」(痴呆性老人自立度II以上)は、所在に関わらず、要介護(要支援)認定者の相当割合を占める。
介護・支援を要する痴呆性高齢者の今後の大幅な増加を見越した場合、介護保険サービスを含む地域の高齢者介護全体を、介護予防から終末期に至る全ステージで、痴呆性高齢者を標準とした仕様に転換していくことが、21世紀初頭の大きな課題。

痴呆ケアモデルの構築

痴呆ケアモデルの構築の図


痴呆ケアモデルの存立基盤

家族・地域住民の痴呆についての正しい知識と理解、痴呆性高齢者との適切な関わり
 →「時として痴呆性高齢者を追いつめてしまう存在」から「痴呆性高齢者を地域で支援する担い手」へ転換


介護サービス体系の見直し

介護サービス体系の見直しの図


生活の継続性を維持し、可能な限り在宅で暮らすことを目指す

生活の継続性を維持し、可能な限り在宅で暮らすことを目指すの図


特別養護老人ホームの新たな展開

特別養護老人ホームの新たな展開の図


地域包括ケアシステム

個々の高齢者の状況やその変化に応じて、介護サービスを中核とした様々な支援が継続的かつ包括的に提供される仕組み

地域包括ケアシステムの図

※ケアマネジメント: 高齢者の状態を踏まえた総合的な援助方針の下に必要なサービスを計画的に提供していく仕組み


サービスの質の向上:高齢者の選択による

選択の支援
選択のための情報
サービス提供体制の改善

ケアマネジメント
 ・  利用者の立場に立って
     公正に行われることが必要
ケアの標準化
   ・  効果的なケアの提供・選択を可能とする。
 ・  サービスの全体的な水準の確保・向上に寄与
人材育成
 ・  適時適切な教育研修の体系化
介護相談員
ボランティア・NPO等
 ・  利用者と事業者をつなぎ、利用者の意思・意見の表明をサポート
 ・  ボランティア・NPO等も活用し充実
サービスの質の評価
   ・  アウトカム評価の手法の確立等
 ・  質に関する客観的な情報提供・外部評価
行動規範
 ・  公益性の高い仕組みの一翼を担っているという自覚、行動規範の遵守
 ・  経営モデルの確立
成年後見制度
 ・  痴呆等意思決定能力が不足する場合の意思決定の補完
 ・  さらに利用しやすくすることが必要
根拠に基づくケア
   ・  科学的アプローチにも耐えうる専門領域として確立
劣悪なサービスの排除
 ・  利用者保護の観点から、迅速に市場から排除する仕組み(査察等)など制度的な対応




介護予防・リハビリテーションの充実

介護予防
リハビリテーション
視点と意義
 より自分らしく生きがいのある充実した人生を送ること
 高齢者自身が地域社会での助け合いの仕組みの主体となること
 過去の生活への復帰ではなく、将来に向かって新しい人生を創造していく
 潜在能力を引き出し、生活上の活動能力を高め、豊かな人生を可能とする
検証と対応
 介護予防を広い概念としてとらえ、社会参加・社会貢献・就労・生きがいづくり・健康づくりなどの活動を社会全体の取組として進める
 老人保健事業や介護予防事業におけるサービスの検証、真に予防に効果ががある新たなプログラムの開発
 要支援者に対する予防給付、医療保険・介護保険におけるリハビリの検証、真に予防に効果がある新たなプログラムの開発
 要介護度のステージ等に応じた要介護状態の悪化の防止・軽減のための施策の体系の構築
 急性期から回復期の医療分野と維持期での介護分野とが、川上・川下の関係で相互に連携しあう体制の構築
介護サービス提供における留意点
 高齢者自らが健康づくりや介護予防に取り組む
 高齢者相互の助け合いの仕組みを充実させていく
 心身機能や日常生活自立度を高めてから他の介護サービス等で補う「リハビリテーション前置」の考え方に立つ必要
 日常生活における活動の自立度向上を重視した個別プログラム
 施設のリハビリは自宅復帰の可能性を常に考えたものでなければならない


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