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365日・24時間の安心を提供する施設機能は、在宅の高齢者にとっても有用な資源。
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特別養護老人ホームは、これまでも、通所介護事業所等を併設する、地域交流スペースを設けて、介護教室を開催するなど、その機能を入所者以外の人々にも提供してきた。
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今後は、施設の人的・物的資源を地域に展開し、在宅サービスの拠点を施設外に設け、地域の高齢者を支援していくことが求められる。
例: |
サテライト方式による通所介護拠点の設置、逆ディサービスの実施 |
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将来的には、サテライト方式の通所介護拠点を強化し、利用者のニーズに応じて訪問・宿泊・居住機能を備えることが考えられる。
→ 特別養護老人ホームによる小規模・多機能サービス拠点の展開
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こうした拠点の整備により、仮に施設への入所が必要になったとしても、地域での在宅サービス利用を経ての入所となるので、これまで利用してきた在宅サービスとの連続性や入所前の地域とのつながりを維持した生活を継続することが可能となる。
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○ |
施設のバックアップを受けた地域の多機能サービス拠点は、在宅での生活と施設での生活との間に断絶が生じないよう、その隙間を埋めるものとして大きな役割を果たすことが期待される。 |
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ユニットケアの普及−施設においても個別ケアを実現する |
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施設においても、入所者一人一人の個性と生活のリズムを尊重した介護(個別ケア)が求められる。
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ユニットケアは、個別ケアを実現するための手法。これを取り入れる特別養護老人ホームが増えつつあり、制度化もされている。また、老人保健施設や介護療養型医療施設でも、ユニットケアを実施する施設が現れてきている。
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ユニットケアは、痴呆性高齢者グループホームが痴呆性高齢者ケアに効果を発揮している状況をみた施設職員等により、施設での個別ケアへの試みとして産み出されたもの。
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一人一人の個性や生活のリズムに沿い、また、他人との人間関係を築きながら日常生活を営める介護を行う手法。このため、個性や生活のリズムを保つための個室と、互いの人間関係を築くための共同生活室というハードウエアが必要であり、同時に、グループごとに配置されたスタッフによる個性と生活のリズムに沿ったケアの提供(生活単位と介護単位の一致)というソフトウエアが必要。ユニットケアは、ソフトウエアとハードウエアが相まって効果を発揮する。
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現時点では、特別養護老人ホームのほとんどは従来型のハード(4人部屋主体)であるが、これらの施設においても、個別ケアに向けた努力が行われてきている。このような動きについても積極的な支援が行われるべき。
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既存施設がユニットケアを導入する場合に、1ユニット分の定員を本体建物から減らし、その分サテライト方式による小規模・多機能サービス拠点を整備することも考えられる。
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○ |
小規模・多機能サービス拠点を推進していく観点から、サテライト方式によるサービス拠点と本体施設を1つの施設として運営可能とすることを検討すべき。
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介護保険3施設の機能の再整理−共通の課題とそれぞれの役割 |
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○ |
在宅ケアの充実に伴い、施設入所者の重度化は進行していく。今後の介護保険施設は、より重度の要介護者を受け入れ、適切なケアを提供するという機能が求められる。
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○ |
他方、介護保険3施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設)の機能分担については、かねてより議論があり、また、それぞれの果たすべき機能と実態とが合っていないとの指摘もある。
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○ |
3施設の担うべき機能は、大きく分けると以下の3点。
(1) |
日常生活の中で、自立した生活を支援する機能 |
(2) |
在宅生活への復帰を目指してリハビリを行う機能 |
(3) |
長期にわたる療養の必要性が高い重度の要介護者に対してケアを提供する機能3施設がそれぞれの機能を生かし、どのようなサービスを提供するのかが、今後の検討課題。 |
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○ |
特別養護老人ホームは、既にユニットケアが制度化されており、一人一人の個性や心身の状態に対応した生活支援を行う施設。
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○ |
老人保健施設、介護療養型医療施設でも生活環境・療養環境の改善は目指すべき方向。ユニットケアを導入している事例もある。
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○ |
老人保健施設は、リハビリ施設であり、在宅復帰を支援する機能が求められるが、自宅に復帰する退所者は半数以下であり、リハビリ機能・在宅復帰支援機能を適切に評価する仕組みを導入することも検討すべきである。
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○ |
介護療養型医療施設は、他の施設と比較して、重介護・重医療の高齢者を対象としており、より多くの医療的ケアが提供されているが、在院患者の平均在院日数は長期間にわたっており、療養環境の向上が求められる。 |
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○ |
在宅に比べ、施設には割安感がある。これが特別養護老人ホームの入所申込者が多いことの要因の一つとなっている。
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○ |
在宅に365日・24時間の安心が提供され、施設で個別ケアが行われれば、在宅と施設で同じ内容の介護を受けられるようになる。
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○ |
介護の内容が同様であれば、低所得者に配慮しながら、自己負担の考え方も同じとする方向で考えていく必要がある。
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○ |
ユニットケアを行う特別養護老人ホームでは、居住費用は自己負担となっている。他の施設についても、在宅との均衡に配慮した見直しを行っていくべきである。 |
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○ |
精神上の障害による要介護状態についての取組は、遅れていると言わざるを得ない。
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○ |
課題は痴呆性高齢者ケアの確立。痴呆性高齢者ケアの推進は、高齢者のケアモデル全体を新たな次元へと進展させることになる。
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○ |
要介護高齢者のほぼ半数は痴呆の影響が認められ(痴呆性老人自立度がII以上)、施設の入所者については8割が痴呆の影響が認められる(詳細は補論3を参照)。これからの高齢者介護においては、痴呆性高齢者対応が行われていない施策は、施策としての存在意義が大きく損なわれているものと言わざるを得ない。 |
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○ |
痴呆性高齢者が地域の一員として生活を送ることは容易でない。
(1) |
系統的・組織的なケアへの挑戦がようやく痴呆性高齢者グループホームという形で始まったばかりである。 |
(2) |
不安や混乱のため、家族等との人間関係を保つことが困難なことが少なくない。また、サービスの利用を断られる場合すらある。 |
(3) |
家族の痴呆に関する知識と理解は十分とは言えず、相当重度になるまで治療や介護の必要性に気づかない、あるいは目をそむけたり、放置してしまいがちである。 |
(4) |
専門職も含め、地域の人々の痴呆に対する認識が十分に浸透していない。 |
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○ |
痴呆性高齢者は、記憶障害が進行していく一方で、感情やプライドは残存しているため、周りの対応によっては、焦燥感、喪失感、怒り等を覚えることもある。
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○ |
また、自分の人格が周囲から認められなくなっていくというつらい思いをしているのは、本人自身である。
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○ |
こうしたことを踏まえれば、痴呆性高齢者こそ、その人の人格を尊重し、その人らしさを支えることが必要であり、「尊厳の保持」をケアの基本としなければならない。
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○ |
また、痴呆性高齢者が環境の変化に適応することがことさら難しいことに配慮し、生活の継続性が尊重されるよう、日常の生活圏域を基本としたサービス体系を整備していく必要がある。
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○ |
さらに、痴呆の症状や進行の状況に対応できる個別サービスのあり方等を明らかにし、本人の不安を取り除き、生活の安定と家族の負担の軽減を図っていかなければならない。 |
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○ |
痴呆性高齢者ケアに求められる、環境を重視しながら、徹底して本人主体のアプローチを追及することは、すべての高齢者のケアに通じるもの。
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○ |
痴呆性高齢者グループホームにおける「小規模な居住空間、なじみの人間関係、家庭的な雰囲気の中で、住み慣れた地域での生活を継続しながら、ひとりひとりの生活のあり方を支援していく」という方法論は、痴呆性高齢者グループホーム以外でも展開されるべき。
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○ |
今後、痴呆性高齢者がますます多数を占めることを考えれば、身体ケアのみではなく、痴呆性高齢者に対応したケアを標準として位置付けていくことが必要。
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○ |
「小規模・多機能サービス拠点」、「施設機能の地域展開」、「ユニットケアの普及」、は、痴呆性高齢者に対応したケアを求める観点から産み出されてきたもの。これらの方策の前進がさらに求められるゆえんは、痴呆性高齢者ケアの確立が必要であるからである。< |
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○ |
早期発見も重要。早期に発見し、適切な診断とサービスの利用により、行動障害の緩和が可能な場合が多い。地域での早期発見と専門家に気軽に相談しやすい体制が重要となる。
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○ |
そのためには、かかりつけ医等専門職だけでなく、地域住民全体に痴呆に関する正しい知識と理解が浸透することが必要。
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○ |
さらに、地域の関係者のネットワークによる支援と連携の仕組みを整備することで、本人や家族の安心を高めていくことが必要である。 |
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介護保険制度では、自分自身に適した介護サービスを自ら選択・決定することができ、また、在宅サービスについては、民間事業者やNPO法人もサービスを提供できる。
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このような仕組みの下では、事業者間の競争を通じたサービスの質の向上が期待されるが、そのためには、利用者がサービスを選択・決定するために必要な情報が十分にあることが必要である。 |
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介護サービスの「自立支援の効果」を評価する具体的な尺度は研究段階であるため、サービスの質に関する情報が十分に存在していない。
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質の高いサービスが選択され、事業者自身も質の向上のために自己努力することができるよう、自立支援の効果の評価手法の確立が求められる。
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具体的には、現在、痴呆性高齢者グループホームについて実施している外部評価の仕組みを他のサービスにも早期に導入することが必要である。 |
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利用者のサービスの選択を支え、適切なサービス利用を確保するためのケアマネジメントは、利用者の立場に立って公正に行われることが必要。
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適切なサービスが提供されるためには、利用者自らサービス内容等について意思表明を行うことも必要であるが、その個性や周辺の人との関係から意思表明しにくい状況にある者も少なくない。
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現在、市町村において利用者と事業者の間をつなぐ「介護相談員の派遣」が行われているが、今後は、ボランティア、地域住民を活用し、利用者の意思表明に対する支援を充実していくことが望まれる。
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また、成年後見制度など本人の意思決定を補完する仕組みを利用しやすくすることも必要である。特に、これらの仕組みを必要とする高齢者を把握しやすい市町村の取組の充実が求められる。 |
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「ケアの標準化」は、効果的なケアの提供・選択を可能にするなど、サービス水準の確保・向上に寄与するものであるが、現在は、「ケアの標準化」が十分になされていない。
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「ケアの標準化」のためにも、高齢者ケアを科学的アプローチにも耐えうる専門領域として確立していくことが求められる。 |
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営利・非営利を問わず、介護サービス事業者には、公益性の高い
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介護サービスは人間の尊厳や人権に関わるサービスである |
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介護保険は高齢者・現役世代・事業主・国・地方公共団体など、様々な主体が保険料や税という形で財源を支えている。 |
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「公的制度と公的財源によって支えられた市場」である介護サービス市場の特性にふさわしい事業者の行動規範、適切な事業経営のあり方、経営モデルの確立が強く求められる。 |
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利用者側にサービスに関する情報がないこともあり、劣悪なサービスが競争により淘汰されているとは言い難く、事実、劣悪な事業者による問題事例は後を絶たない。
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劣悪な事業者を放置することは、利用者である高齢者に回復不能のダメージを与えることとなりかねない。劣悪な事業者は、市場の競争による淘汰を待つまでもなく、迅速に市場から排除することが必要である。
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現在、都道府県による指定取消処分があるが、指定を取り消されても保険外の事業を行うことは可能である。また、市町村には不正請求の返還命令権限があるが、サービス面に関する関与(規制)を行うことは予定されていない。 |
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ユニットケアの普及など介護サービスに求められる質は高度化していく傾向にあり、これまで以上に、介護サービスを支える人材の資質の確保・向上は重要な課題。
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優秀な人材を確保、育成していくためには、介護現場に高い魅力を持たせること、適時適切な教育研修の体系化、スキル向上の仕組み、従業者としての要件化などを図るべきである。 |
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介護保険の給付対象は、専門的評価に基づいた「自立支援に必要なもの」でなければならない。
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他方、高齢者の生活様式や嗜好の多様化などにより、いわゆる贅沢なサービスや個人の嗜好に合わせたサービスへの需要は増えるものと考えられる。
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今後は、このような介護保険の対象とならないサービスを提供する市場やボランティアの助け合いの場の形成も求められることとなる。 |
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