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7.介護関連施設の整備及び運営について

(1)ユニットケアの普及について
   ユニットケアは、在宅に近い居住環境の下で、入居者一人一人の個性や生活のリズムを尊重し、また、入居者相互が人間関係を築きながら日常生活を営めるように介護を行うものである。
 しかしながら、ユニットケアに取り組み始めた施設の中には、建物の中を仕切ることや入居者を分けることで目的を果たしたと誤解し、実際には従来と変わらないケアを行っている事例もあると指摘されている。
 そこで、平成15年度から新たに研修事業を予算化するなど、ユニットケアの適切な普及のための施策を講じているので、各都道府県・指定都市におかれては、次の諸点にご留意願いたい。

 ユニットケア施設研修等事業
 
(1)  管理者研修
 本研修については、高齢者痴呆介護研究・研修東京センターが昨年6月から開始し、これまでの6回で計215名が受講している。
 しかしながら、その内訳を見ると、都道府県・指定都市の中には該当者の推薦が低調なところがある。
 ユニットケアを実施する上で管理者(施設長)の果たす役割は極めて大きいことから、各都道府県・指定都市におかれては、管内で「小規模生活単位型特別養護老人ホーム」の管理者に就任する者をはじめ、改修等により「一部小規模生活単位型特別養護老人ホーム」となる既存施設の管理者など、該当者が必ずこの研修を受けることができるよう配慮願いたい。
 また、本研修については、平成16年度以降においても、引き続き高齢者痴呆介護研究・研修東京センターが実施することとしているので、ご了知願いたい。

(2)  ユニットリーダー研修
 本研修については、高齢者痴呆介護研究・研修東京センターが昨年12月から全国9か所の実地研修施設の協力を得て開始し、これまでに計149名が受講している。
 ユニットケアを導入する上では、管理者とユニットリーダーが共通の理解に立ち、ともに牽引車の役割を果たしていくことが欠かせないことから、上記(1)で述べたような該当施設については、管理者のみならず、必ずユニットリーダーも研修を受けることができるよう配慮願いたい。
 平成16年度予算(案)には実地研修施設数を増やし、15か所とすることを盛り込んでいる。

(3)  管理者研修・ユニットリーダー研修共通事項
 
 ユニットケアでは居住環境が極めて重要な意味を持つことから、この点の理解が不十分なままで工事を始めたり、設計を完了させたりすることがないようにしなければならない。
 一方、これまでの受講者の中には「もっと早くこの研修を受けていたら、もっとユニットケアに適したハードにすることができたのに…」と残念がる声がある。
 したがって、これらの研修の受講は、できる限り早いタイミングで実現するようお取り計らい願いたい。

 全額自己負担で受講を希望する者についても、申込みの状況に照らして定員に余裕のある場合には、受講を認める取扱いとする。

(4)  情報提供事業
 ユニットケア施設研修等事業の一つである情報提供事業については、「小規模生活単位型」の新設や、既存施設の「一部小規模生活単位型」への改修を計画している法人等への指導に活用していただけるよう、現在、具体的なケアの実際や、施設整備上の留意点等を平易に紹介するビデオと小冊子の作成を進めているところである。

 都道府県等の担当職員を対象とした研修

   平成15年度に引き続き16年度においても、都道府県・指定都市・中核市の担当職員を対象とした研修を開催する予定である。(第1・四半期での開催を予定)
 ユニットケアでは居住環境が極めて重要な意味を持つことから、施設整備担当の職員にもユニットケアについて正しく理解していただいた上で、「小規模生活単位型」の新設や、既存施設の「一部小規模生活単位型」への改修を計画している法人への良き相談相手・助言者となっていただきたいと考えている。
 したがって、ユニットケア研修の担当職員はもとより、施設整備担当の職員、更には指導監査担当の職員にも、是非ともこの研修を受講していただきたいので、該当者の派遣につきよろしくご配慮願いたい。

 また、施設整備担当の職員への支援としては、昨年末に「留意事項」を取りまとめて送付したところである。(参考資料参照)
 これは、上記の管理者研修やユニットリーダー研修の現場から、ハードの設計段階でケアの面からの検討が足りず、残念な事例が見られるとの指摘があることを受けて、ウ及びエに記載した各種委員会での議論を参考にしながら取り急ぎ作成したものであるので、今回の16年度協議分から最大限ご活用いただきたい。

 ユニットケア研修のカリキュラムとテキストの作成

   平成16年度以降のユニットケア施設研修等事業の充実を図る観点から、(財)医療経済研究機構に、カリキュラムとテキストの作成のための検討委員会を設置し、本年度末の取りまとめを予定しているところである。
 このテキストには、ユニットケアの理念、ハード(居住環境)面での工夫、具体的な施設運営やケアの実際に関する事項等が盛り込まれる予定であり、都道府県等の担当職員の業務の上でも活用していただきたい。
 また、本年3月末には同機構が「ユニットケアシンポジウム」を開催し、このカリキュラムとテキストの概要を発表することとしているので、シンポジウムへの積極的な参加をお願いしたい。

 既存施設におけるユニットケア導入の支援

   特別養護老人ホームは、これまでに約5千施設(約34万人分)が4人部屋主体の従来型で整備されており、選択の幅という意味で、従来型と「小規模生活単位型」が半分ずつになるまでは、国庫補助を受けて新設する施設はユニットケアを行う「小規模生活単位型」を基本としている。
 しかしながら、それだけでは2015年時点で「小規模生活単位型」の利用者は全体の3割に過ぎないとの試算もあり、既存施設においてもユニットケアの導入を図っていくことは重要な課題である。
 そこで、既存の特別養護老人ホームへの支援として、施設の一部を改修して部分的にユニットケアを導入する際に活用できる手引きを作成することとし、(社)医療福祉建築協会に調査研究委員会を設置して、検討を進めてきたところである。
 今般、改修によってユニットケアの構造設備基準を満たすことが比較的容易なケースについて、既存建物のパターン別の改修モデルや、留意すべき事項等が報告書としてとりまとめられたので、活用願いたい。(その内容は、改修に限らず、新設についても参考になるので、留意されたい。)
 なお、平成16年度においては、主に次の検討を行うこととしている。
 
 (1)  いわゆるサテライト方式の活用によって「小規模生活単位型」の構造設備基準を満たすユニットを造る場合の改修モデルの作成
 (2)  サテライト方式の活用が困難で、既存施設の構造設備や敷地の制約から、改修によって「小規模生活単位型」の構造設備基準を満たすユニットを造ることが難しい場合の居住環境改善のための改修モデルの作成



 既存の特別養護老人ホームを改修して部分的にユニットを造る場合の共同生活室の取扱いについて

(問)  図のような場合には、Aユニットの入居者が、Bユニットの空間Xを通過することなく、施設内の他の場所に移動することができるようになっていることから、小規模生活単位型の要件には反しないと考えてよいか。

(答)
 「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準について」(平成12年老発第214号老人保健福祉局長通知)においては、共同生活室が満たすべき要件の一つとして、「他のユニットの入居者が、当該共同生活室を通過することなく、施設内の他の場所に移動することができるようになっていること」を定めている。

 図のような場合、Aユニットの入居者は、施設内の他の場所に移動する際にBユニットを必ず通り抜ける構造となっていることから、一般的には小規模生活単位型の要件に反するものと考えられる。

 ただし、既存の特別養護老人ホーム(平成15年4月1日に現に存する特別養護老人ホーム(建築中のものを含み、同日以降に当該ユニットが改築されたものを除く。)をいう。)が、その建物を改修してユニットを造る場合にあっては、施設を新増築したり、改築したりする場合に比べて、現にある建物の構造や敷地などの面で、より大きな制約が想定されることから、Aユニットの入居者が通り抜ける部分Yが廊下幅の要件を満たしており、かつ、廊下部分Yを除いた空間Xが共同生活室の要件を満たしている場合は、小規模生活単位型の要件に反しないものとして取り扱って差し支えない。

 なお、ユニットは入居者の生活の場であることから、施設運営の上でも落ち着いた雰囲気が実現できるよう留意されたい。

 また、図のような場合に、空間Xと廊下部分Yを間仕切り等で区分することを求めているわけではないので、念のため申し添える。

(図)
既存の特別養護老人ホームを改修して部分的にユニットを造る場合の共同生活室の取扱いについての図

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