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(3)痴呆性高齢者ケアマネジメント推進モデル事業(仮称)について

   昨年6月の「高齢者介護研究会」の報告書にもあるように、これからの高齢者介護においては、身体ケアのみでなく、痴呆性高齢者に対応したケアを標準として位置づけていくことが求められている。
 そのためには、痴呆性高齢者の居場所や提供されるサービス、あるいは痴呆の初期からターミナルまでといったように、痴呆性高齢者の置かれる環境や状態に対して一貫したケアマネジメントを行っていく必要がある。
 しかしながら、現状は、事業所ごと、あるいは利用者の居場所によって、アセスメントやケアの考え方、ツールに統一性がないなどの課題が指摘されており、痴呆性高齢者のその人らしさを支えるケアの実現に資するものとなり得ていない。
 このため、現在、全国3か所の高齢者痴呆介護研究・研修センターにおいて、痴呆性高齢者に対応した新たなケアマネジメント手法として「センター方式03版痴呆性高齢者ケアマネジメントシート」(以下「センター方式03版」という。)の開発を行っているところである。
 この「センター方式03版」は、高齢者の尊厳を支えるために、痴呆の初期からターミナル期まで継続的なケアを実践していくことを目指し、関係者が新しい痴呆ケアの共通の考え方を基盤として、ケアマネジメントを継続的に展開していく方法である。
 平成16年度は、さらに実効性を高めるために、全国に10〜15か所程度のモデル地域を設定し、別紙のとおり「痴呆性高齢者ケアマネジメント推進モデル事業(仮称)」を実施する予定である。



(別紙)

痴呆性高齢者ケアマネジメントの推進に関する調査研究事業(案)

1 調査研究の目的及び趣旨
 2015年の高齢者介護のあるべき姿について検討するため、厚生労働省老健局に設置された高齢者介護研究会では、「高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて」を主題として、高齢者ケアをめぐる今後の課題と実現すべき方策が提言されている。

 報告書では、最近の要介護認定のデータと将来の見通しをもとに、現在、要介護高齢者の約半数に、とりわけ施設入所者の8割に痴呆の影響が認められると述べられている。そうした中で、今後は身体的障害に対するケアだけでなく、痴呆性高齢者に対応したケアを標準として位置づけていくことが必要であり、痴呆性高齢者ケアの普遍化が求められている。

 痴呆性高齢者は、記憶障害が進行していく一方で、感情やプライドは残存しているため、外界に対して強い不安を抱くと同時に、周りの対応によっては焦燥感、喪失感、怒り等を覚えることもある。徘徊、せん妄、攻撃的言動など痴呆の行動障害の多くは、こうした不安、失望、怒り等から惹き起こされるものであり、こうした痴呆性高齢者の特性を良く理解して、本人の人格を尊重し、その人らしさを支えることが痴呆性高齢者のケアには必要である。

 そうしたケアを実現するためには、痴呆性高齢者本人のそれまでの生活や個性を尊重しつつ、高齢者自身のペースでゆったりと安心して過ごしながら、心身の力を最大限に発揮して充実した暮らしを送ってもらうことができるよう、生活そのものをケアとして組み立てていくことが重要である。

 しかしながら、現在利用されているケアマネジメント手法は、以下の課題が指摘されており、痴呆性高齢者のその人らしさを支えるケアの実現に資するものとなり得ていない。

 
(1) 事業所ごと、あるいは利用者がどこに行くか(居場所ごと)によって、アセスメントやケアの考え方やツールに統一性がない。
(2) 事業者ごとでのアセスメントツールやシート等の共有、情報伝達、連携が不十分なために、利用者も家族もケア提供者側も混乱、無駄が生じやすい。
(3) 痴呆の人の多面的で複雑に絡み合った障害やその要因を見極めるための全体的な視点や分析枠がつかめない。
(4) 総合的なアセスメントだと量が多すぎ、また、人によって、時期によって課題の焦点が違うので網羅的だとポイントが見えにくい。
(5) 機能や障害別のアセスメントになりがちで、本人の暮らしの流れや暮らしの継続性を見極めるためのアセスメントとケアプランになりにくい。
(6) 本人と家族の個別性、希望と自己決定が、ケアプランに十分に反映されにくい。
(7) 本人の個別特性に関する情報はなかなか一度に把握できない、また、把握していても記録やその継続がされにくい。

 こうしたことから、現在、高齢者痴呆介護研究・研修東京センターをはじめ、仙台、大府の各センターにおいて、新たなケアマネジメント手法として「センター方式03版 痴呆性高齢者用ケアマネジメントシート」の開発に取り組んでいる。

 この「センター方式03版」は、高齢者の尊厳を支えるために、痴呆の初期からターミナル期まで継続的なケアを実践していくことを目指し、関係者が新しい痴呆ケアの共通の考え方を基盤として、ケアマネジメントを継続的に展開していく方法である。利用者や家族も含めて、ケア関係者個々が持つ情報や気づき、ケアの具体策を利用者中心に集約し継承しながら、より良質なケアを提供し、併せてそれを生み出すケアチームの成長を促すものとなっており、これまで指摘されてきた課題が克服されている。

 「センター方式03版」の開発に当たっては、これまでも在宅及び施設における検証を繰り返してきたが、実効性をさらに高めるためには、より多くの介護現場での試行、検証を経て完成度を高める必要がある。

 痴呆性高齢者の尊厳を支え、その人らしい暮らしを継続するという痴呆性高齢者ケアを標準化するためには、痴呆性高齢者の状態を適切に把握し、その状態に応じた適切なサービスが提供されることが必要である。そのためにも「センター方式03版」の完成度を高め、痴呆ケースに対する標準的なケアマネジメント手法として確立させるとともに、痴呆性高齢者に対応した新たなケアモデルを具体化するものとして全国の介護現場に普及させることを目的として本事業を実施する。


2 調査研究事業の内容
(1)  本研究調査における中央検討委員会の設置
   痴呆ケアの専門家等による10〜15人程度の検討会を設置する。
 大府センター・仙台センターからは、中央検討委員会委員として参画。
(2)  モデル地域の設定
   全国に10〜15か所のモデル地域を設定し、以下の要領により「センター方式03版」の検証を行う。
 
(1) モデル地域で、実際に「センター方式03版」を試行するために、学識経験者、行政関係者等による地区検討委員会(数名で構成)を設置し、研究協力事業者(施設及び居宅サービス数種類)を選定
(2) 地区検討委員会事務局説明会の開催及び研究協力事業者・モデル自治体への研修の実施
(3) 「センター方式03版」の試行
(4) 試行結果による実効性の検証、要改善点の整理
(5) 試行結果のまとめ、中央検討委員会への報告
(3)  モデル地域での試行結果報告に基づく実効性の検証
 モデル地域での試行結果報告で示された課題に基づき、実効性について検証を行い、必要に応じて「センター方式03版」の見直しを行う。
(4)  「センター方式03版」の普及策の検討
 「センター方式03版」を痴呆性高齢者に対する新たなケアマネジメント手法の標準とするための普及策の検討を行う。

3 調査研究事業の効果及び活用
 「センター方式03版」を痴呆性高齢者に適したケアマネジメント手法として確立し、普及させることにより、痴呆性高齢者に対する適切なケアの提供に大きな役割を果たすほか、介護支援専門員や介護従業者等の研修教材として使用することにより痴呆性高齢者ケアの一層の充実につなげる。

4 調査研究実施事務局
 高齢者痴呆介護研究・研修東京センター



痴呆性高齢者ケアマネジメント推進モデル事業(仮称)

痴呆性高齢者ケアマネジメント推進モデル事業(仮称)の図

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