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4.介護サービスの質の向上への取組について

(1) 介護サービスの情報開示の標準化(第三者評価)
   介護保険制度は、介護サービスを利用者が選択・決定する仕組みであり、利用者がより良いサービス(事業者)を適切に選択することを通じて介護サービス全体の質の向上が図られていくことが期待されている。しかしながら現状においては、利用者が選択をする上で必要な客観的で適切な情報が十分提供されているとは言い難い状況にある。
 このような状況の中、「規制改革推進3か年計画(再改定)」(平成15年3月28日)において、介護サービス事業者の情報公開及び第三者評価の推進を政府として取り組むことが閣議決定された。また、「高齢者介護研究会報告」(平成15年6月26日)においても同様の指摘がなされているところである。
 このようなことから、介護保険の基本理念である「利用者本位」、「高齢者の自立支援」、「利用者による選択(自己決定)」を現実のサービス利用において保障するため、利用者が介護サービス事業者を選択するに当たっての判断に資する適切な情報を開示するための制度的な枠組み等について検討を進めているところである。
 なお、国においては、上記に係る事務、事業を担当する「介護サービス評価推進専門官」を平成16年度に設置することとしている。

 
 調査研究の状況
   現在、老人保健健康増進等事業により、(社)シルバーサービス振興会に設置された「介護保険サービスの質の評価に関する調査研究委員会」(委員長:大森 彌 千葉大学法経学部教授)において、利用者が介護サービス事業者を選択するに当たっての判断に資する「情報開示の標準化」について、その実施方法、評価基準等の検討が行われており、今年度末を目途に報告書が取りまとめられる予定である。
 調査研究委員会においては、現在も鋭意検討が進められており、調査研究の具体的内容については今後の検討を待つ必要があるが、今般、(社)シルバーサービス振興会より、次のとおり検討の過程における一定の情報提供がなされたところである。
 これによると、現在検討されている情報開示の標準化は、介護サービス事業者が現に行っている事柄(事実)を前提として開示すべき情報を標準化し、これについて第三者が客観的事実に基づき調査し、その結果を開示するものとされている。従って、従来から行われている(1)サービスの最低水準を保障するため指定基準等の遵守状況を確認する行政指導監査や、(2)サービスの質の向上を促すため一定の水準を定めた評価基準に対する達成度合いを専門的に評価・格付けし、質の向上に関するアドバイスを行うといった従来の第三者評価とは異なるものと整理されているので了知されたい。

 介護サービスの情報開示の標準化(第三者評価)モデル事業の実施
   平成16年度においては、今年度に調査研究した評価基準や調査員要件等の検証、全都道府県において情報開示の標準化を進める上での課題の洗い出し等を行うため、調査研究の成果を踏まえて、訪問介護、介護老人福祉施設等の7サービスを対象とするモデル事業を実施することとしている。
 モデル事業については、評価基準や調査員要件等の検証を主眼とする1次モデル事業として、(社)シルバーサービス振興会が実施主体となり、地域性を踏まえた全国7ブロックにおいて、7サービス毎に2事業所を対象とするモデル評価を実施することとしている。なお、1次モデル事業における、調査員候補者及び被評価事業所を選定するに当たっての情報提供等をお願いすることとしているのでご協力願いたい。
 また、1次モデル事業の検証が済み次第、1次モデル事業の検証結果をさらに検証するとともに、全都道府県において情報開示の標準化を進める上での課題の洗い出し等を目的とする2次モデル事業を実施することとしている。2次モデル事業は、全都道府県において7サービス毎に4事業所を対象とするモデル評価を行い、実施上の問題点等を報告いただくもので、その報告を踏まえてモデル事業全体の検証を行うものである。なお、調査員の養成については、(社)シルバーサービス振興会が行うこととしているので、2次モデル事業に係わる調査員候補者の派遣等特段の配意をお願いしたい。
 実施要綱については、調査研究委員会報告書を踏まえて通知することとなるが、以下に2次モデル事業の実施要綱の骨子(案)をお示しするので、各都道府県におかれては、その実施の準備方よろしくお願いしたい。

 
   
介護サービスの情報開示の標準化(第三者評価)
2次モデル事業実施要綱(骨子案)
 目的
   利用者が介護サービス事業者を選択するに当たっての判断に資する情報開示に向 けて、各都道府県において1次モデル事業の検証結果をさらに検証するとともに、 各都道府県における調査員の確保等、実施体制に係る課題等の検証等を行うもので ある。
 実施主体  都道府県(一定の要件を満たす法人への委託可)
 事業内容
 
(1) 介護サービス提供事業所への調査員による調査の実施
 
 対象サービス
   訪問介護、訪問入浴介護、福祉用具貸与、通所介護、特定施設入所者生活介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設
 実施箇所数
   対象サービス毎に4箇所
 被評価事業所の選定
   別に定める選定基準により選定し、事業所の同意を得て決定
 実施方法
 
(ア) 調査体制
 
1事業所当たり調査員2名1組で実施
1組当たり2事業所を調査
(イ) 調査日数
 
1調査当たり訪問調査日数は概ね2日間
 評価基準
   別に定める対象サービス毎の評価基準により実施するものとする。
(2)  都道府県検証委員会の開催
 
 内容
   調査結果及び課題を集約、整理し、事業の実施体制、評価基準、調査員要件等の検証を実施
 構成
   都道府県職員、事業受託法人職員、調査員、利用者等で構成
 報告書の作成等
   報告書を作成し、厚生労働省を通じて(社)シルバーサービス振興会へ提出
 調査員
 
(1)  要件
   別に定める基準に基づき都道府県が推薦した調査員候補者であって、(社)シルバーサービス振興会が開催する調査員養成研修を修了した者
(2)  調査員養成研修会への派遣
   都道府県は、調査員候補者を選定し、調査員養成研修会へ派遣するものとす る。なお、派遣費用は都道府県の負担とする。
 その他
 
(1)  被評価事業所が特定される形での調査結果の公表は行わない。
(2)  被評価事業所から調査費用は徴収しない。
(3)  本事業の関係者は、正当な理由なしに本事業に関して知り得た秘密を漏らして はならない。
 

(注)1県当たりの国庫補助額は平均5,700千円程度を予定
   (総事業費平均11,400千円程度を予定、国庫補助率1/2)



「介護保険サービスの質の評価」に関する調査研究委員会 
の検討状況について(情報提供)

平成16年2月
社団法人シルバーサービス振興会



 当会においては、現在、老人保健健康増進等事業(国庫補助事業)により「介護保険サービスの質の評価に関する調査研究委員会」(委員長:大森 彌 千葉大学法経学部教授)を設置し、利用者による介護サービス事業者の適切な選択に資する情報提供及び介護サービス全体の質の向上を図るための介護保険サービスの質の評価に関して調査研究を行っているところです。  
 本調査研究委員会においては、平成15年度末までに報告書を取りまとめることとして現在も検討が行われておりますが、検討の過程において一定の情報提供を行うことが必要と考えられる事項について整理したので、情報提供を行います。

 基本的な考え方について
   介護保険の基本理念である「利用者本位」、「高齢者の自立支援」、「利用者による選択(自己決定)」を、現実のサービス利用において保障するための制度的枠組みの構築を目指すものであること。

 
(1)  利用者が介護サービス事業者を選択するに当たっての判断に資する情報開示の標準化
    (介護サービス事業者の格付けや画一化につながるものではない)

(2)  第三者評価のプロセスを通じて、介護サービス事業者自身による介護サービスの質の向上への取組みを促進


 情報開示の標準化の概要について
   利用者による介護サービス事業者の選択に資するため、事業者が現に行っている事柄(事実)を前提として開示すべき情報を標準化し、これについて第三者が客観的事実に基づき調査し、その結果を開示する。

 
 事業者選択に資する情報として必要となる評価項目と評価項目に応じた判定基準、ファクトシートなどを標準化

 適切な事業者選択に資するため、その地域の全ての事業所に関する情報が開示されるとともに、評価項目の全てが開示されることが必要


 
(資料1)  「介護保険サービスの質の評価」の位置付けの整理
(資料2)  情報開示の標準化の概念図
(資料3)  評価基準のイメージについて
(資料4)  「介護保険サービスの質の評価に関する調査研究事業」の概要について



(資料1)

「介護保険サービスの質の評価」の位置付けの整理
「介護保険サービスの質の評価」の位置付けの整理の図
(注1)  本資料における「情報開示」とは、利用者の請求に基づくものではなく、公表することを表している。
(注2)  位置づけを明確にするため「一義的な受益者」を整理しているが、「第三者評価」についても利用者が、「情報開示の標準化」についても事業者が、それぞれ受益者となり得るものである。



(資料2)

情報開示の標準化の概念図
情報開示の標準化の概念図



(資料3)

評価基準のイメージについて

評価基準のイメージについて

※事実情報であって公表だけで足りるものは「ファクトシート」の項目として別途公表する。



(資料4)

「介護保険サービスの質の評価に関する調査研究事業」の概要について

1. 趣旨・目的
   利用者による介護サービス事業者の適切な選択に資する情報提供及び介護サービス全体の質の向上を図るための介護サービスの質の評価に関する調査研究を行う。

2. 実施主体
   社団法人シルバーサービス振興会

3. 研究体制
 
(1)  調査研究委員会
   社団法人シルバーサービス振興会に、「介護保険サービスの質の評価に関する調査研究委員会」を置く。

(2)  部会
   調査研究委員会の下に、次の部会を置く。
 
(1)  訪問介護・訪問入浴介護部会
(2)  福祉用具貸与部会
(3)  通所介護部会
(4)  特定施設入所者生活介護部会
(5)  介護老人福祉施設部会
(6)  介護老人保健施設部会
(7)  評価者養成部会

4. 調査研究内容
 
(1)  調査研究委員会
 
(1)  評価の実施方法
(2)  評価の実施体制
(3)  評価基準(評価項目、判定基準)
(4)  費用負担のあり方
(5)  評価結果の公表
(6)  人材の養成

(2)  部会
   部会長会議での調整等を踏まえ、下記内容についての調査研究を行う。
 
(1)  各サービスの評価基準(評価項目、判定基準)案について 
(2)  評価者養成研修カリキュラム等案について

5. スケジュール
   平成16年3月末までに報告書を取りまとめる。



介護保険サービスの質の評価に関する調査研究委員会

(50音順、敬称略)

  天本 宏  医療法人天翁会理事長
  岩渕 勝好  産経新聞論説委員
大森 彌  千葉大学法経学部教授
  梶原 洋  東京都福祉局総務部計画調整課課長
  川越 雅弘  日本医師会総合政策研究機構主席研究員
  岸上 善徳  愛知県高浜市福祉部長
  木間 昭子  国民生活センター研修生活研究部主任研究員
  白澤 政和  大阪市立大学大学院教授
  菅原 弘子  福祉自治体ユニット事務局長
  高橋 紘士  立教大学コミュニティ福祉学部コミュニティ福祉学科教授
  田中 滋  慶應義塾大学大学院教授
  栃本 一三郎  上智大学文学部教授
  永田 久美子  高齢者痴呆介護研究・研修東京センターサービス評価推進室室長
  中原 登世子  日本能率協会審査登録センター(JMQA)専任審査員
  新津 ふみ子  特定非営利活動法人メイアイヘルプユー代表
  橋本 廸生  横浜市立大学医学部教授
樋口 恵子  高齢社会をよくする女性の会代表
  本田 純一  中央大学法科大学院(開設準備室)教授
  増田 時枝  全国老人クラブ連合会評議員

  ※ ◎ 印は委員長  ○印は副委員長



介護サービスの情報開示の標準化
(第三者評価)モデル事業

 
創設年  平成16年度
補助根拠  予算補助
補助率
(負担割合)
1次モデル事業及び2次モデル事業
(〔社〕シルバーサービス振興会分)
国10/10
2次モデル事業(都道府県分)
国1/2、都道府県1/2


1. 目的
   利用者による良質なサービスの選択を支援するとともに、介護サービスの質の向上を促すため、第三者による介護サービスの質の評価等をモデル的に実施。

2. 事業内容
   16年度においては、訪問介護、訪問入浴介護、通所介護、福祉用具貸与、特定施設入所者生活介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設 の7サービスについて、各都道府県において第三者評価モデル事業を実施する。

 
(1)  1次モデル事業
 
15年度の調査研究内容(評価基準、調査員養成カリキュラム等)の検証等を行う調査研究事業
(老人保健健康増進等事業で実施)
 
モデル評価のための調査員の養成研修
1次モデル評価の実施・検証(全国98事業所)

(2)  2次モデル事業
 
(1) 都道府県におけるモデル評価の実施・検証等   
(介護予防・地域支え合い事業に計上)
 
調査員養成研修への参加者派遣
2次モデル評価の実施・検証・報告
(2) 都道府県におけるモデル事業の検証等を行う調査研究事業
(老人保健健康増進等事業で実施)
 
調査員指導者、調査員の養成研修
2次モデル評価全体の検証

3. 実施主体
 
(1)  1次モデル事業:(社)シルバーサービス振興会
(2)  2次モデル事業:都道府県、(社)シルバーサービス振興会



介護サービスの情報開示の標準化
(第三者評価)モデル事業のイメージ

平成15年度

 
検討の実施(老人保健健康増進等事業)


  検討の実施(老人保健健康増進等事業)の図

平成16年度

 
1次モデル事業(老人保健健康増進等事業)


  1次モデル事業(老人保健健康増進等事業)の図
 
 都道府県は、(社)シルバーサービス振興会が調査員候補者、評価受審事業者を選定するに当たっての情報提供等を実施。


 
2次モデル事業(「介護予防・地域支え合い事業」及び「老人保健健康増進等事業」)


  2次モデル事業(「介護予防・地域支え合い事業」及び「老人保健健康増進等事業」)の図


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