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(2) 訪問介護員養成研修事業者の指定について
 ○  全国で指定取消等が行われた事例は、平成12年度7事業所、平成13年度30事業所、平成14年度90事業所と年々増えている(平成15年度も8月までに25事業所)。
 ○  これは都道府県の指導監査等による努力の結果とともに、不正をはたらく事業者がいかに多いかを示している。
 ○  これらはいずれも不正行為を犯していることを承知の悪質な事案であり、制度の信頼を著しく損なう看過し難い事例である。このような事例が後を絶たないことは誠に憂慮すべき事態である。
 ○  また、この他にも会計検査院による検査において、本来は減算して請求すべきものを通常の単位数をもって請求しているなど、不注意又は理解不足に起因する不適切な事例も指摘されているところである。
 ○  介護保険制度が施行されて以来の指定事業所・施設の指定取り消し(不正発覚に伴い自主的に廃止したものを含む。)処分を受けた事例は、別添資料のとおりである。ついては、今後の指定事業者・施設に対する指導に当たり、これまでの指定取消等事例から浮かび上がってきた次に掲げるようなことに留意の上、重点的な取り組みを進めていただき、適正なサービスと事業運営の確保に努めていただきたい。

ア 介護保険制度下における指導のあり方
   措置費制度下における指導内容は、使途制限のある委託費の執行状況を審査して事業運営の適否を判断する手法が主であったが、介護保険制度は介護報酬の使途が制限されているものではない。したがって、事業者指導においては、人員、設備及び運営に関する基準及びそれを前提とした介護報酬に関する基準を事業所が満たした上で、これらの取扱基準に則って適正に介護報酬の請求がなされているか否かという点が重要な審査事項となる。
 特に、介護報酬の加算・減算規定が設けられている事項に関しては、不正または過誤請求の可能性が高いものと考えられ、その基準要件を満たしていたか、満たしていなかった場合には規定にしたがって減算請求していたかについて重点的に検査する必要がある。

イ 迅速な指導監査と厳正な対応
   国から都道府県に対する技術的助言においては、居宅サービス事業所に関しては3年に1回、施設に関しては2年に1回を標準として実地指導等を行うようお願いしているところであるが、上記に掲げたような不正やその疑いがある事例に対応する場合は、技術的助言の頻度にこだわることなく、緊急を要する事案を優先して弾力的かつ重点的に取り組んでいただきたい。
 その際、状況に応じて、実地指導や監査に係る事前通告期間の短縮化(当日通知も含む。)もあり得るものである。
 なお、監査の結果、指定取消処分を行ったものについては、経済的損失補填のみならず告訴又は告発についても検討願いたい。

ウ 今後の指導監査における重点チェック事項
   別添資料の指定取消事例をみてみると、いくつかの型が浮かび上がってきていることから今後の実地指導や不正行為に関する情報への対応においては、次に掲げるような事項に留意し重点的にチェックしていただきたい。
 不正な手段により指定を受けていないか
 ・ 基準を満たしているか
 ・ 有資格者が実際に業務に従事しているか
 無資格者によるサービス提供が行われていないか
 ・ 有資格者によるサービス提供が行われ適正な介護報酬を請求しているか
 人員基準違反等の状況のもとサービス提供が行われていないか
 ・ 人員基準を満たさないため減算請求すべきものを適正に請求しているか
 ・ 定員を超過して利用者を受け入れている場合、減算して請求しているか
 架空、水増しにより不正な請求が行われていないか
 ・ 架空の請求をしていないか
 ・ 付け増しして請求をしていないか



 なお、このような事例が可能となるのは、サービス提供事業所と居宅介護支援事業所が結託していることによるものであり、多くは実質的経営者の指示によるものであることに留意する必要がある。


 書類の提出や質問に対して虚偽の報告を行っていないか
 ・ 書類の改ざん、ねつ造を行っていないか
 その他
 ・ 要介護認定にかかる委託に基づく調査を介護支援専門員が行っているか
 ・ 介護支援専門員実務研修受講試験の要件である実務経験証明書が適当か
 ・ サービス提供事業所から居宅介護支援事業所への金品の提供などがないか
 ・ 利用者から利用料の一部(1割)としての受領は適切に行われているか

エ 関係者間の連携強化
  ○  効果的な指導監査を実施していくためには、普段から管内の指定事業者・施設に関する情報を収集蓄積するように努め、かつ、基準違反や不正請求に関する情報の提供があった場合は迅速に対応する必要がある。
  ○  都道府県の他に市町村や国保連に寄せられる苦情やその他の情報提供をも有効に活用するため、それらの情報が都道府県の指導監査担当部門に集約される仕組みの構築に配慮願いたい。
  ○  一方、市町村においても、介護保険法第23条による調査を行った場合、その結果を都道府県に情報提供するなどの協力を行うことが望ましい。
 また、国保連においても苦情にかかる調査を実施した場合も同様である。
  ○  事実関係を確認するために必要な場合は、積極的に利用者・家族に対してもサービス利用状況調査を実施する必要がある。

オ 指導監査体制等の強化
   介護費用が増大している状況において、都道府県の指導監査体制が弱体であるため、不正事例が見過ごされることがあってはならないので、事業者数の動向等を勘案して、引き続き必要な体制整備や担当官の職務能力の向上に取り組んでいただきたい。

カ 自主返還の遡及期間
   今般、会計検査院から自主返還の遡及期間についての照会が厚生労働省にあり、その他数県からも同様の質問があったところである。その取扱いについては以下のとおりと考えているので、周知されたい。
  ○  自主返還については、平成12年度に実施した全国老人保健福祉関係指導監督等担当係長会議の会議資料で示した「指定介護サービス事業者等に対する指導及び監査における経済上の措置(介護給付費の返還)フロー(標準例)」において、個別指導により介護給付費の算定及び請求等に関し不当な事実を確認した時は「原則として指導月前1年について自主点検させ、(中略)変更すべき内容が確認されたときは、自主返還の指示を行う。」となっているが、この趣旨は自主点検をさせる期間をとりあえず1年として示しているものであり、点検の結果それ以前にも遡及すべきものがあればそれ以前についても点検させ自主返還を求めるべきものであること。


介護保険事業所及び施設の
都道府県別取消等件数

(平成15年 8月31日現在)

介護保険事業所及び施設の都道府県別取消等件数のグラフ

92件(30都道府県 87事業者 145事業所 7施設
 指定取消手続き中に廃止(辞退)届が提出された事例等を含む。)


介護保険事業所及び施設の指定取消等事例 (省略)


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