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(1)介護サービス量等の見込み(6月値)

 介護サービス量等の見込み(6月値)に関する集計結果の概要については、8月末に公表するとともに、「介護保険最新情報」によって各都道府県あてお知らせしたところである。
 各都道府県には、本年6月以降も、広域的観点から施設サービスに係る圏域調整等の作業を行っていただいているところであり、この6月値は、あくまでも中間的・暫定的なものである。
 集計に当たって各都道府県から行ったヒアリングでも、計画策定委員会を未だ設置していない保険者が全体の13.2%に当たる373団体あるなど(7月22日現在)、市町村の中には、取組が遅れているところもみられた。
 今後、10月値の報告に向け、各都道府県、市町村における更なる計画の精査について、特段の御配慮をお願いする。


(2)介護サービス量等の見込み(10月値)に向けて

ア 基本的な考え方

 6月値については、7月下旬から8月上旬にかけて各都道府県からヒアリングを行ったところであるが、総じて言えば、介護保険制度の基本理念である「在宅重視」の観点からの取組みが十分でないと受け止めている。
 したがって、今後、10月値に向けては、施設サービス量の精査・見直しや、在宅サービスの充実についての更なる検討をお願いする。

(施設サービス量について精査すべき項目(例))

(ア) 平成15年度の利用者数見込みは、平成14年度末までの施設整備量と比べて過大なものになっていないか

(イ) 既に参酌標準を超えた施設整備状況となっている地域においては、参酌標準から更に乖離する計画になっていないか


(在宅サービスの充実についての参考例)

「ク 在宅サービスの充実のための施策」を参照

 なお、ヒアリングでは、参酌標準を参考にしていないとした都道府県があったが、かねてより申し上げているとおり、特別養護老人ホーム等の利用者数については、参酌標準を参考として、給付実績の分析や評価など総合的な観点を踏まえ、地域の実情に応じて適切に見込むことが必要であるので、重ねて御留意願いたい。

 また、介護サービス量の増加に伴い、保険料は上昇していくものであるが、被保険者の理解を得るためには、給付状況等に関する情報の公開や計画策定過程における住民参画、住民説明が極めて重要であるので、この点についても十分御留意願いたい。

イ 財政安定化基金の貸付金の償還期限の延長

 財政安定化基金による貸付金は、介護保険の国庫負担金の算定等に関する政令において、貸付のあった事業運営期間の次の事業運営期間の最終年度の末日までに償還することとされている(第7条第6項)。しかしながら、6月値集計では、一部の市町村において貸付金の償還分が次期保険料の高騰に大きな影響を及ぼしている状況がみられた。

 これに対して、各市町村において、過去に介護保険制度下における実績がない中で、サービス量の推計を行ったことにかんがみれば、財政安定化基金の貸付が大きくなることにも、やむを得ない場合があると考えられる。
 このため、現在、厚生労働省においては、算定政令を改正し、償還期限の延長を行うことを検討している。具体的には、以下の措置とする予定であるが、今後、関係省庁と協議の上、正式に政令改正を行う予定であるので、予めご了知願いたい。

(1) 償還期限の延長幅は、借入の規模や状況がさまざまであることにかんがみ、1又は2事業運営期間まで(平成20年度まで又は23年度まで)とする。

(2) 償還期限の延長は、無制限に行うべきではないと考えられることや、財政安定化基金は、都道府県費も交付される都道府県の基金であることから、償還によって保険料が著しく高騰する場合であって、都道府県が適当と認める場合に可能とする。

 この場合、償還期限の延長を行うか否かは、当該市町村における介護保険財政に影響を及ぼすことから、10月値集計においては可能な限り延長の有無を反映させた上でご報告いただきたいと考えている。
 また、今回の償還期限の延長は、「実績がない中で見込まざるを得なかった」という点に着目して認められるものであることから、第一期事業運営期間に限定された特例的な措置であり、今後、市町村において、財政安定化基金からの借入れを想定して、給付の実態よりも低い保険料額とすることがないよう、都道府県においても適切に助言・指導をお願いする。
 さらに、貸付を受けている市町村においては、今後、保険料の更なる高騰を招くことのないよう、地域の高齢者のニーズに即した適切なサービス水準としていくことが必要である。各都道府県におかれては、必要に応じ、当該市町村において今後の給付適正化方策の検討を求める等の措置も検討されたい。

 なお、償還期限の延長に伴い、各都道府県の財政安定化基金条例の改正が必要となるのでご留意願いたい。

ウ 保険料の算定に必要な諸係数

 次期保険料の算定にあたって必要となる諸係数及び留意点については、以下のとおり設定する予定である。
 これに伴う必要な省令等の改正については、準備が整い次第順次行っていく予定であるが、10月集計においては、ここでお示しする諸係数を基に集計していただくようお願いする。
 なお、国庫負担の算定対象となる審査支払手数料については、介護報酬の請求の電子化の状況等を踏まえ、年末の予算編成時に最終決定する予定である。
 また、保険料の推計ワークシートを利用している自治体においては、(2)、(4)、(5)について、係数の変更等が必要となるため、留意されたい。

(1)

第2号被保険者負担率
(介護保険の国庫負担金の算定等に関する政令(平成10年政令第413号。以下「算定政令」という。)第5条)

平成15年度から17年度までの第2号被保険者負担率 32%
(第1号被保険者の負担率は18%)

(2)

財政安定化基金拠出率
(介護保険の医療保険者の納付金の算定等に関する省令(平成11年厚生省令第43号。以下「納付金省令」という。)第4条)

平成15年度から17年度までの財政安定化基金拠出率 1000分の1

※ この拠出率を標準として、各都道府県で条例で定める率を決定の上、その率を基に各市町村で算定したものを10月値集計で報告していただくようお願いする。

(3)

保険料の収納下限率(納付金省令において新規に設定する予定。)

 保険料の収納下限率については、被保険者規模に応じて以下のとおり設定する予定である。なお、第一期事業運営期間においては、平成12年度から14年度直近(11月30日)までの収納状況により判断することとする予定である。

第一号被保険者数が一千人未満  94%
第一号被保険者数が一千人以上一万人未満  93%
第一号被保険者数が一万人以上  92%

※ この下限収納率は、財政安定化基金の交付事業等に影響があることから、財政安定化基金から既に貸付を受けている市町村、又は今後受ける可能性のある市町村においては、特に留意されたい。

(4)

基準所得金額
(介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号。)第143条)

 第4段階と第5段階の境界所得である基準所得金額は、第1段階と第2段階の軽減分と、第4段階と第5段階の増額分が、全国ベースで均衡するよう設定することとされている。今般、各自治体からいただいた報告を基にこれを算定したところ、以下のとおりになる予定である。

 平成15年度から17年度までの基準所得金額 200万円

※ この基準所得金額を基に、各所得段階別の人数割合を見込んだものを10月値集計で報告していただくようお願いする。

(5)

後期高齢者加入割合補正係数及び所得段階別加入割合補正係数に係る数値
(介護保険の調整交付金の交付額の算定に関する省令(平成12年厚生省令第26号)第5条及び第6条)

〈平成15年度から平成17年度までの全国平均の見込値〉

○ 後期高齢者加入割合補正係数

前期高齢者割合  0.566
後期高齢者割合  0.434
前期高齢者の補正要介護等発生率  0.042
後期高齢者の補正要介護等発生率  0.261

○ 所得段階別加入割合補正係数

第一段階  0.021
第二段階  0.336
第三段階  0.393
第四段階  0.126
第五段階  0.124

※ これらの係数は、将来推計人口や6月値集計等によって算定されたものであるが、仮置値からの修正においては、保険料の上昇要因と考えられるので、今後、計画の精査について一層ご留意願いたい。

エ 施設の「定員に対する利用率」

 第2期介護保険事業支援計画において施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設及び介護療養型医療施設)の整備量を見込むに当たっては、それぞれの都道府県の「定員に対する利用率」を勘案することが考えられるが、利用率の設定に当たっては、各都道府県において把握している直近の数値を用いた上で、実態に即した適切な設定を行うよう、御留意願いたい。
 なお、国として現在把握している数値(全国値:12年10月)は次のとおりであるので、参考としてお示しする。

特別養護老人ホーム  99.1%
老人保健施設  91.3%
介護療養型医療施設  88.1%

※ 上記の数値は、「平成12年介護サービス・施設事業所調査」(大臣官房統計情報部)における各施設の「在所者数」を「定員数」で割ったものである。なお、施設整備量の算定式は次のとおり。
[施設整備量(床)=利用者見込者数(人)÷定員に対する利用率(%)]

オ 広域化等による保険者支援

 今般の概算要求においては、新たに広域化等保険者支援策を盛り込んだところである。その趣旨及び要求内容は、以下のとおりであり、今後、年末に向けて財政当局と協議していくこととなるので、予めご了知願いたい。

(1) 趣旨

 小規模市町村や離島等市町村は、財政基盤が脆弱であることから、介護保険料が著しく高くなる傾向にあるため、広域化を図る等の場合に介護保険財政の支援を行う。

(2) 内容

 具体的な要件は、今後精査することとなるが、以下のようなものを想定している。

(3) 要求額:1,952百万円

カ 保険料設定の弾力化

(1) 6段階設定の導入について

 多くの市町村においては、次期保険料額が引き上がることが予想されるが、こうした市町村においては、低所得者の理解を得るため、6段階方式を導入することは有効な方策であると考えられる。
 この方式は、法令上認められた方法であることから、主に低所得者への配慮を行うには、まずはこうした法令上認められた方法によることを検討すべきである。また、基準所得金額の変更(250万円→200万円)を契機に、地域の保険料段階のあり方を見直すことも考えられる。保険料のワークシートにおいても6段階方式を選択できるようにしているので、各自治体におかれては、同方式の実施可能性を最初から排除するのではなく、有力な選択肢として十分に検討されたい。

(2) その他の保険料設定の弾力化について

 6段階設定のほか、保険料の基準額に対する割合(0.5/0.75/1.25/1.5)を変更することも可能であるので、新たな事業運営期間を迎えるに当たり、1つの選択肢として検討することも考えられる。

キ 保険料の単独減免

 保険料の単独減免については、従来申し上げてきたとおり、

(1) 保険料の全額免除
(2) 収入のみに着目した一律の減免
(3) 保険料減免分に対する一般財源の繰入

については適当ではないので、新たな事業運営期間を迎えるに当たっても、引き続きこのいわゆる3原則の遵守に関し、市町村において適切に対応するよう努められたい。

ク 在宅サービスの充実のための施策

(1) 市町村特別給付、保健福祉事業

 

○ 市町村特別給付及び保健福祉事業について、本年4月の事務調査の結果に基づき調査を行い、回答があったものをまとめたものである。(市町村特別給付・保健福祉事業をを行っている保険者をすべて網羅しているものではない。)

○ いただいた回答のうち、代表的なものを巻末の資料編において紹介しているので参照されたい。

1) 市町村特別給付

<実施状況(今回回答のあったもの)>

実施サービス 実施保険者数
紙おむつの支給 37
移送サービス 12
通所入浴サービス
寝具乾燥サービス
配食サービス
訪問理美容サービス
その他 ※1
計 ※2 57

※1  「その他」の事例
 施設からの一時帰宅時の福祉用具貸与、通所宅老サービス等
※2  複数実施の保険者があるため合計が一致しない。
※3  緊急ショートステイなど、支給限度額の上乗せに分類されるものはここでは除外している。


<サービス実施の背景、経緯>

(主なもの(回答のうち多かった順))

(その他)


<サービス実施の効果>

(主なもの(回答のうち多かった順))

(その他)


<サービス実施後の課題>

(主なもの(回答のうち多かった順))

(抜粋)


2) 保健福祉事業

<実施状況(今回回答のあったもの)>

実施事業 実施保険者数
介護予防を目的とする事業 31
  うち 健康づくり事業 13
   介護予防教室 11
介護者支援を目的とする事業 10
  うち 介護者教室・相談
   家族リフレッシュ事業
直営介護事業
その他 ※1
計 ※2 49

※1  「その他」の事例
 未利用者への訪問・相談等
※2  複数実施の市町村があるため合計と一致しない。


<事業実施の背景・経緯>

(主なもの)


<事業実施の効果>

(主なもの(回答のうち多かった順))

予防効果(運動能力向上、痴呆防止、転倒防止等) 12
高齢者・地域の情報が把握できた
制度への理解が深まった
介護者・在宅介護への支援になった

(抜粋)


<事業実施後の課題>

(主なもの(回答のうち多かった順))

実施体制や地域との連携のあり方を見直す必要がある 15
利用者が少ない、または固定化している
これまでの取組を踏まえ、目的とする効果をより一層あげるために、新たな(別の)取組を行う必要がある(あった)

(抜粋)

(2) 市町村特別給付・保健福祉事業以外の独自の施策(事業)等

1) 都道府県が実施する「在宅介護サービスの充実に向けて取り組んでいる事業等」について

 本年8月の照会に対して回答いただいたもののうち、各都道府県において参考となると思われる事業等について紹介する。

<事例> ※ 個別の事業内容については、巻末の資料編を参照されたい。

○介護サービス事業支援推進事業  北海道
○高齢者相互援助ホーム支援事業  秋田県
○東京の介護保険を育むためのワーキング会議  東京都
○サービス評価制度普及事業費  神奈川県
○石川県在宅復帰支援事業  石川県
○ケアマネジャー情報化サポート事業  静岡県
○介護保険サービスの評価  兵庫県
○おたすけ介護ネットの整備によるケアマネジャーの支援  和歌山県
○居宅サービスサテライト事業所設置  広島県

<ポイント>

 都道府県が直接実施するものとしては、事業者の参入を促すもの、人材の確保を支援するもの、介護保険事業計画(特に在宅サービスの基盤整備等)について検討するもの、介護サービスの評価に関するもの、情報機器の活用について支援するものなどがある。
 また、市町村を実施主体とし、これを都道府県が財政支援するものとしては、高齢者の共同生活のための支援事業、在宅復帰のためのサービス利用費助成がある。

 都道府県は、広域的な観点等から、市町村の在宅サービスを充実させるための取り組みを積極的に支援していただきたい。


2)市町村が実施する「在宅介護サービスを充実させるための取り組み事例等」について

 本年8月の照会に対して回答いただいたもののうち、各市町村において参考となると思われる事業等について紹介する。

<事例> ※ 個別の事業内容については、巻末の資料編を参照されたい。

ア 特色あるサービス

○高齢者パワーリハビリテーション推進事業  川崎市(神奈川県)
○お試しホームヘルプサービス  相良町(静岡県)
○中間的ケアの実施  阿蘇町(熊本県)
○高齢者メールサービス  台東区(東京都)
○介護保険情報インターネット検索システム「かすがい・かいごねっと」  春日井市(愛知県)
○ささやまケアネット(ゆとりと安心のネットワーク)の開設  篠山市(兵庫県)
○町営有線テレビを利用した介護保険制度の啓発  滝野町(兵庫県)

イ 在宅サービスの質の向上

○介護サービスの質の向上  江戸川区(東京都)
○ケアプランのチェック  稲城市(東京都)
○KASAIケアマネ井戸端会  加西市(兵庫県)
○要介護・支援認定者に係る居宅介護サービス計画書の全件調査  多良見町(長崎県)
○同一法人のみの利用者のサービス評価(スーパーケアプラン作成援助)  富岡市(群馬県)
○栗山町ケア会議 栗山町サービス連絡調整会議  栗山町(北海道)
○地域ケア会議  高浜市(愛知県)
○介護サービスの第三者評価  神戸市(兵庫県)

ウ コミュニティづくり

○高齢者地域福祉推進リーダー事業  魚津市(富山県)
○錦町高齢者保健福祉計画等見直しに関わるワークショップ  錦町(熊本県)
○地域住民グループ支援事業  阿蘇町(熊本県)

エ 事業者連絡協議会等

○ケアマネジャーの質の向上に関する事業  武蔵野市(東京都)
○事業者連絡協議会事業等  塩山市(山梨県)
○介護サービス事業者振興事業  金沢市(石川県)
○居宅介護支援事業者連絡協議会設置事業  松浦市(長崎県)
○介護保険事業者ガイドブック作成・配布  津山市(岡山県)

<ポイント>

 上記の事例は、いずれも、当該事業を実施することになった具体的な理由が明確であり、また、期待される効果等も具体的に挙げられていることから、同様の課題を持つ他の市町村が今後の施策を検討する上で参考となる。

 市町村においては、現状における課題を明らかにするために、要介護者数や介護サービスの利用状況等の分析を十分に行うことが重要である。そして、その課題に対して、地理的特色その他の事情を踏まえ、地域に適した解決策を多角的に検討し、具体的な施策を立案することが求められる。



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