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(4)老人保健事業等の推進

ア 老人保健事業におけるC型肝炎ウイルス検診について

 我が国のC型肝炎の持続感染者は、100万人から200万人存在すると推定されているが、自分自身が感染していることを自覚していない者が多く、感染者の中から肝硬変や肝がんへと移行するものがあり、重大な課題となっている。 そのため、厚生労働省として、平成13年3月の「肝炎対策に関する有識者会議」の報告書を踏まえ、C型肝炎緊急総合対策として、
 (1) 国民に対する普及啓発・相談指導の充実
 (2) 現行の健康診査体制を活用した肝炎ウイルス検査等の実施
 (3) 治療方法等の研究開発及び診療体制の整備
 (4) 予防、感染経路の遮断
などの施策を緊急に進めることとしたところである。

 老人保健事業においても、上記の趣旨等を踏まえて、基本健康診査の対象者に対し、平成14年度からの5か年事業として、

(1) 40歳から70歳までの老人保健事業の基本健康診査対象者に対し、節目検診(40、45、50、55、60、65、70の5歳ごと)として、C型肝炎ウイルス検査の実施。

(2) 上記(1)以外の老人保健事業の健康診査の対象者のうち、過去に肝機能異常を指摘されたことのある者及び要指導(GPT値)とされた者について、C型肝炎ウイルス検査の実施。

(3) C型肝炎ウイルス検査に併せてHBs抗原検査の実施。

(4) 肝炎ウイルス等に関する健康相談や健康教育の実施。
を行うこととしているので、各都道府県においては、平成14年度当初から速やかに検査が実施できるよう、管下市町村に対し、遺漏の無いよう周知並びに準備方をお願いしたい。

 なお、市町村における具体的な検査方法(HCV抗体検査とHCV-RNA検査を組み合わせることにより、精度が高く効率的にキャリアを発見する方法)や実施方法等(健康教育、健康相談の具体的な実施内容等)については、実施要領等を別途お示ししていくこととしている。また、「肝がんの発生予防に資するC型肝炎検診の効果的な実施に関する研究」の中間報告書(平成13年12月 主任研究者:吉澤浩司広島大学医学部教授)も併せて参照されたい。

イ 保健事業第4次計画の推進について

(ア)6事業の推進について

 老人保健法に基づく医療等以外の保健事業については、平成12年度より5か年の保健事業第4次計画を策定し、(1)生活習慣改善等を通じた疾病予防対策の推進、(2)介護を要する状態となることを予防する対策等の推進、(3)健康度評価の実施、 (4)多様な主体の参画による健康づくり運動の展開、(5)計画的な保健事業の展開と基盤整備、(6)適切な保健事業の評価等を重点事項として、一層の充実を図ることとしている。
 保健事業第4次計画の中間年となる平成14年度においても、所要の予算を確保したところであり、各事業のより一層の推進が図られるよう、引き続き各市町村に対する支援等をお願いしたい。
 また、保健事業第4次計画の実施にあたって、市町村が地域の実態に即して円滑に各種事業を推進できるよう、平成12年12月に老人保健事業推進・評価委員会を設置し、必要な検討を行ってきたところであるが、昨年11月に行われた当委員会において「老人保健事業評価マニュアル(第4次計画版)」等について検討し、検討内容等については、都道府県や市町村等に情報提供を行ったところである。

(1) 健康手帳について

 保健事業第4次計画においては、市町村が創意工夫を図ることができるよう、手帳の大きさ等に関する規定が廃止されたほか、生活習慣改善等を通じた疾病予防対策の推進を図るために、「生活習慣行動等の把握に係るページ」が設けられている。 また、介護保険制度における要介護認定を受けた者及び要支援認定を受けた者(以下「要介護者等」という)についても必要に応じて交付し活用することとしている。これらの点を踏まえ、地域住民の自らの健康管理と適切な医療の確保のために有効に活用されるよう、市町村等への周知をお願いしたい。

(2) 健康教育について

 「個別健康教育」については、保健事業第4次計画において新たに導入され、平成16年度までに全市町村で実施されるようその目標を示して現在まで実施してきたところであり、徐々に定着しつつあると認識している。ついては、中間年である平成14年度においても市町村における実施体制等に留意しつつ、今まで以上の積極的な推進をお願いしたい。
 また、個別健康教育の従事者に対する研修の指導者を養成するための個別健康教育指導者養成研修については、平成14年度から「国立保健医療科学院(仮称)(国立公衆衛生院と国立医療・病院管理研究所の統合施設)」において引き続き実施することを予定しているので、研修参加者の派遣等については特段の配慮をお願いしたい。

(3) 健康相談について

 健康相談については、「重点健康相談」「介護家族健康相談」「総合健康相談」として実施することとしているが、地域住民が利用しやすい体制づくりを行うなど、引き続き相談事業の充実を図っていただきたい。

(4) 健康診査について

 保健事業第4次計画では、生活習慣病の予防、介護を要する状態等の予防を図る観点から、新たに「健康度評価」を導入し、実施してきたところであり、個別健康教育同様徐々に定着しつつあると認識している。ついては、中間年である平成14年度においても引き続き積極的な取組みをお願いしたい。
 健康度評価の実施にあたっては、「生活習慣・生活環境アセスメントマニュアル」を参考にし、市町村の特性を踏まえ、積極的に活用されるよう周知を図られたい。 なお、健康度評価として保健事業費等負担金の対象となるのは、基本健康診査の結果及び質問票の回答結果、その他の情報を総合的に評価し、保健サービスの提供に関する計画等を対象者に提示した場合に限られるので留意されたい。

(5) 機能訓練について

 介護保険制度の実施に伴い、機能訓練については、閉じこもりや転倒の予防、日常生活の自立の支援など、介護を要する状態となることの予防に重点を置いた事業としており、要介護者等については、原則として機能訓練の対象としないこととしている。介護保険サービスを十分確保することが困難な市町村については、当分の間に限り、要介護者等を機能訓練の対象者として差し支えないこととしているが、制度の趣旨を踏まえ、介護保険制度担当部局との調整を図るなど、適正に運用されるよう周知をお願いしたい。

(6) 訪問指導について

 訪問指導については、閉じこもりや転倒の予防、介護を要する状態になることの予防、生活習慣病の予防、あるいは保健・医療・福祉サービスの活用方法に関する相談・調整等に重点をおいて事業を展開することとしている。
 訪問指導の実施にあたっては、医療保険制度又は介護保険制度により訪問看護・訪問リハビリテーションを受けている者に対しては、訪問看護・訪問リハビリテーションと内容的に重複するサービスは行わないことを原則としているところであるが、介護保険の対象者等で、複数の健康問題により対応困難な者に対し、行政からのアプローチが必要な場合には、地域の実情を踏まえて訪問指導を積極的に活用することが望ましい。したがって、これらのサービスの提供者と十分に連携を図るなど、適正に運用されるよう、引き続き周知をお願いしたい。

(イ)健康診査受診者の適正化について

 健康診査等の対象者については、老人保健法第22条により、医療保険各法その他の法令に基づく事業のうち保健事業に相当するサービスを受けた場合又は受けることができる場合は、老人保健法の保健事業を行わないこととなっている。 昨年、この対象者の把握について、財務省が調査をおこなった結果、複数回の受診や、他の保健事業で健診を受けられるにもかかわらず、老人保健事業の基本健康診査を受診しているなどの実態が散見され、指摘を受けたところである。対象者の範囲については、厚生省公衆衛生局長通知「老人保健法による保健事業について」(昭和57年11月17日衛第927号)において示してきたところである。対象者の選定については、地域の実状に応じて調査や情報収集、広報などの活用をお願いする。健康診査等の実施にあたっては、その主旨を踏まえ、引き続き適正な実施を図られたい。

(ウ)老人保健事業評価マニュアル(第4次計画版)の活用

 老人保健事業第4次計画については、中間年である平成14年度において計画そのものを大きく見直すことは無いと考えているが、4次計画から導入した個別健康教育等の市町村等における具体的な事業実施に当たって、現状の評価や見直しは必要なことと考えている。
 そのため、市町村において自らの老人保健事業の内容について、その評価・見直しを行う観点から、「老人保健事業推進・評価委員会」で検討いただいた「老人保健事業評価マニュアル(第4次計画版)」を積極的に活用し、地域の実情に応じて内容等を加えるなどして、自らの事業内容の評価を行い、今後のより一層の老人保健事業取り組みをお願いしたい。

(エ)循環器疾患及び糖尿病の指導区分の変更

 この数年の間に国際的に高血圧の分類と糖尿病の診断基準が変更になったことに伴い、国内においても同様の変更が行われているところである。ついては、老人保健事業についての循環器疾患及び糖尿病の指導区分の目安についても変更する必要があり、昨年11月に開催した「老人保健事業推進・評価委員会」で報告したところである。具体的な内容については、下記の報告書を参照していただき、通知等においてもお示しすることとしているので、判定区分の目安として活用していただきたい。なお、老人保健事業における指導区分の判断については、数値だけで行うのではなく、総合的な見地から最終的には健康診査の従事する医師の判断によって行われるものであるので、十分留意願いたい。

<報告書>
 保健事業第4次計画推進のための技術的事項に関する調査研究事業
−循環器疾患の指導区分に関する検討−
保健事業第4次計画推進のための技術的事項に関する調査研究事業
−糖尿病の指導区分に関する検討−

(オ)保健事業推進にあたっての基盤づくり等

(1) 保健・医療・福祉の連携

 高齢者の健康保持を効果的に推進するためには、健康増進活動や生きがい対策を含む、保健・医療・福祉のサービスを一体的に提供できる体制を構築することが必要である。老人保健事業の実施にあたっては、「市町村・都道府県老人保健福祉計画」や「健康日本21地方計画」等を踏まえ、医療、福祉との連携を図りながら推進していただきたい。

(2) 保険者による保健事業との連携について

 各保険者による自主的な事業運営を尊重しつつ、老人保健事業と連携し、効果的に推進する観点から、都道府県に設置される地域・職域保健連絡協議会(11年度までは職域保健連絡協議会)は、地域住民の生涯を通じた保健活動、健康づくりからも重要であるので、より一層の活性化を図られたい。

(3) 健康診査管理指導等事業について

 本事業については、がん、心臓病等の成人病の動向を把握し、また、健康診査の精度管理など質的な面を担保する観点等から、保健事業を推進する上でその重要性は変わらないものであるので、「健康診査管理指導等事業実施のための指針の策定について」(平成10年3月31日老健第65号、最終改正:平成12年3月31日老健第67号)を参考として、本事業の適切な実施をお願いしたい。

ウ 「ヤングオールド作戦」の推進について

 「ゴールドプラン21」においては、高齢者ができる限り「若々しい高齢者(ヤング・オールド)」として、健康で生き生きとした生活を送れるようにするための施策を、「ヤングオールド作戦」として推進しているところであるが、介護予防対策、寝たきり予防対策の観点から、平成14年度においても引き続き以下の事業を展開していくこととしている。

(ア)地域リハビリテーション支援体制整備推進事業について

 高齢者や障害を持つ者が、たとえ介護を必要とするようになっても、住み慣れた地域で生活が続けられることを基本理念とした地域リハビリテーションは急性期から維持期にわたる適切なリハビリテーションの提供に加え、在宅ケアと施設ケア、さらに住民参加等も含めたものである。
 このため、広い視野に立ったリハビリテーション連携指針の作成や、中核となる施設の選定、保健・医療・福祉関係諸機関への普及・啓発、患者の会等の自主活動の支援等が総合的に推進されることが重要である。このような観点から、引き続き、積極的な推進をお願いしたい。

(イ)脳卒中情報システム事業について

 本事業は、寝たきり予防対策を効果的に進めること等を目的として、平成6年度から実施しているものである。
 本事業の実施に際しては、医療機関、介護保険施設、地域の医師会等の協力を得て、また、介護保険サービスの提供にも配慮して、効果的かつ円滑な事業運営が図られるよう努められたい。

エ その他

 平成14年度における保健事業費等負担金及び疾病予防対策事業費等補助金の交付基準単価については、今年度中に各都道府県へ連絡することとしているので了知願いたい。


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