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3 介護サービスの質の向上への取組みについて

(1)訪問介護員(ホームヘルパー)の養成及び資質の向上について

ア 「訪問介護員資質向上等推進事業」の実施について

 訪問介護員の質・量両面にわたる人材確保が、在宅での自立支援という制度趣旨に沿ったサービスを提供していくためにも重要な課題であることから、地域の実情に応じた総合的な人材の確保、資質向上への取組みを支援できるよう、平成14年度より既存の研修事業に新規の事業を追加してメニュー事業として実施することとしている。各都道府県においては、当該事業への積極的な取組みをお願いする。

(ア)事業全体(研修メニュー)

・訪問介護適正実施研修事業
・テーマ別技術向上研修事業(新規)
・訪問介護計画作成・展開研修事業(新規)
・離島等における訪問介護員養成事業
・訪問介護員資質向上事業(3級→2級ステップアップ研修)
・訪問介護員養成研修円滑化事業

 なお、メニュー化に伴い、実施要綱(既存事業を含む。)をお示しする予定であるが、その骨子は以下のとおりであるので参考とされたい。

○実施主体: 都道府県とする。ただし、地域の実情に応じて、市区町村、訪問
介護サービスに関する地域の関係団体、養成研修事業における指
定研修事業者等への委託方式も認める。
○開催形態: 地域での研修開催の活性化を図る観点から、研修日程は1日程度
の集中実施からコース設定などの継続実施まで幅広く認める。
○受講者負担: 一定の範囲について実施する方針。
○修了証交付: 発行する。
また、留意事項として、「修了者登録名簿」の活用促進、「現任研修カリキュラム検討委員会の設置」、「講師養成」などについても、積極的に取り組んでいただく旨の記載等を盛り込む予定。

(イ)テーマ別技術向上研修事業(新規)

 現任の2級訪問介護員等を対象とし、日々の業務において直面する個別の問題に対応したテーマ別の研修として、新規に創設したものである。事業の詳細については、改めて実施要綱でお示しする予定であるが、その骨子は以下のとおりであるので参考とされたい。

○研修対象者: 原則として現任の2級以上の訪問介護員とする。
○講師の選定: 関係者の意見等を踏まえ、研修目的に沿った研修が行えるよ
う、必要な講師を選定すること。
○研修資料: 研修内容に沿った資料を選定又は作成すること。また、併せて
研修実施マニュアル」等の作成についても検討すること。
○カリキュラム: 以下を参考に、十分な検討を踏まえ設定・選定すること。

○ 養成研修カリキュラムをベースにしつつ、現場の実態に応じた踏み込んだ内容を取り上げ、基本の再確認と実践への応用を図るもの。
(例) 「痴呆介護の展開」
痴呆性高齢者の基本理解、痴呆介護の基本と行動障害への対応、家族とのかかわり、権利擁護策の利用などを含む痴呆介護に関する具体的かつ実践的な知識及び技術の習得など。
「住宅改修・福祉用具」
福祉用具や住宅改修に関する最新の基礎知識等の業務上必要な知識の習得、在宅介護継続のための福祉用具や住宅改修の活用方法などの具体的かつ実践的な知識及び技術の習得など。
「障害者への対応」
身体障害・知的障害・精神障害の各障害に対する施策等の業務上必要な知識の習得、各障害に応じた介護技術やアプローチなどの具体的かつ実践的な知識及び技術の習得など。
「感染疾患者への対応」
MRSA、疥癬などの感染症に対する基礎知識等の業務上必要な知識の習得、医療機関等との連携・情報の共有化・対策マニュアルづくりや感染症の利用者へのサービス提供方法などの具体的かつ実践的な知識及び技術の習得など。
「食事に配慮を必要とする人への対応」
高齢者の疾病に応じた食事献立など業務上必要な知識の習得、管理栄養士等との連携などを含む食事に配慮を必要とする人への対応など具体的かつ実践的な知識及び技術の習得など。
「対人援助コミュニケーション」
ホームヘルプ活動で不可欠な対人コミュニケーションの基礎、対人援助における応対の習得など。
「生活全般を活性化するホームヘルプ」
ホームヘルプ活動の中で高齢者の生活全般を活性化していく方法、リハビリテーション・介護予防的視点を組み込んだ業務の積極的な展開の習得など。

○ 現場の実態を踏まえ、援助困難事例などに応じられる専門的なテーマを取り上げるもの。
(例) 「難病の基礎知識と援助」
難病に対する施策等の業務上必要な知識の習得、難病に関する介護技術などの具体的かつ実践的な知識及び技術の習得など。
「引きこもり傾向の人への援助」
引きこもりがちな人で、サービス提供を受け入れたがらない人、うつ傾向の人などの援助方法及び技術の習得など。

○ 介護保険制度下でのチームアプローチの手法を習得すること等を目的としたもの。
(例) 「居宅介護支援・介護支援専門員(ケアマネジャー)との連携」
「訪問看護と訪問介護の連携」
「居宅療養管理指導と訪問介護の連携」
「訪問リハビリテーション等と訪問介護の連携」
「社会資源と訪問介護の役割」
市町村行政施策やインフォーマルサービス等の地域における高齢者の支援体制に関する知識等の業務上必要な知識の習得、地域のサービス資源の活用・開発など具体的かつ実践的な知識及び技術の習得など。

 テーマは以上の例示に限定されるものではないので、各都道府県におかれては、地域における訪問介護サービスの状況を踏まえ、テーマ及びカリキュラムの検討を願いたい。

(ウ)訪問介護計画作成・展開研修事業(新規)

 訪問介護事業所のサービス提供責任者として活動できる人材を養成する観点から、サービス提供責任者の選任要件を満たす現任の訪問介護員等を対象とし、介護支援専門員や訪問看護婦など多職種合同での事例演習等を通じて、最適な訪問介護計画の作成・展開技術を身に付けるための研修として、新規創設したものである。事業の詳細については、改めて実施要綱でお示しする予定であるが、その骨子は以下のとおりであるので参考とされたい。

○研修対象者: 原則として、サービス提供責任者の職にない介護福祉士及び1級訪問介護員並びに経験年数3年以上の2級訪問介護員とする。
○講師の選定: 現任のサービス提供責任者である者を基本とするが、関係者の意見を踏まえ、研修目的に沿った研修が行えるよう、必要な講師を選定すること。
○研修資料: 研修内容に沿った資料を選定又は作成すること。また、併せて「研修実施マニュアル」等の作成についても検討すること。
○カリキュラム: 原則として、以下のカリキュラムによることとする。(全体として30時間程度の範囲内で、地域の実情に応じた弾力的な実施を認める方針)

「訪問介護計画の作成と展開の原則(講義)」
・介護保険制度とサービス提供責任者の業務理解
・訪問介護計画の作成と展開
・訪問介護サービスの内容に関する管理及び指導業務
「訪問介護計画の作成と展開・事例演習」
・上記の講義を踏まえた個別事例演習
「訪問介護計画の作成と展開・合同演習」
・模擬カンファレンスやロールプレイング等による、多職種との合同演習

(エ)その他の研修事業

 上記以外の既存事業(「訪問介護適正実施研修事業」、「離島等における訪問介護員養成事業」、「訪問介護員資質向上事業」、「訪問介護員養成研修円滑化事業」)についても、引き続き地域の実情に応じた取組みをお願いしたい。
 特に、「訪問介護適正実施研修事業」については、サービス提供責任者を対象とした、適切な訪問介護計画作成等の技術向上のための指導方法等についての研修として、「テーマ別技術向上研修」、「訪問介護計画作成・展開研修」等の現任者向け研修を適切に行う上での前提となるものであり、また、「離島等における訪問介護員養成事業」については、平成15年度からの第2期介護保険事業計画期間に向けて、対象地域の状況に応じた訪問介護サービスの確保を図る上で活用いただけるものであるので、それぞれ引き続き積極的な取組みをお願いしたい。

イ 地域の実情に応じた訪問介護員・現任研修体制の構築について

 介護保険制度の定着に伴いサービス提供現場からは、現任の訪問介護員に対する資質向上のための研修実施の要望が強まってきているので、各都道府県においても、以下のような観点も踏まえつつ、それぞれの地域の実情に応じた研修実施体制を構築するよう留意願いたい。

○ 現場の意見の反映
 現任の訪問介護員、居宅サービス事業者はもとより、市町村行政職員、学識経験者や、訪問介護サービスに関する地域の関係団体、また、実際の訪問介護員養成の担い手として養成研修事業を行っている指定研修事業者などの意見も踏まえつつ、内容の検討を行うこと。

○ 研修実施における役割分担
 研修実施に当たっては、都道府県、市区町村、事業者・施設、訪問介護サービスに関する地域の関係団体など、それぞれの持つ特性を活かしつつ、効果的に遂行できる研修体制を構築すべきであること。

○ 資格、経験年数等に応じた継続的な研修の実施
 個々の訪問介護員が、介護福祉士、1〜3級研修終了者、サービス提供責任者といった資格や職責の違い、所属機関、経験年数や業務習熟度等などに応じて、段階的かつ継続的な研修を受講できるシステムを構築し、資質向上が図られるよう努めること。

○ チームアプローチの推進のための研修
 訪問介護員は、様々な関係機関との連携の下、業務を遂行する必要があることから、介護支援専門員(ケアマネジャー)等他職種との合同研修会の実施など、「訪問介護」の領域にとどまらず、他サービスとのつながりを持てるような効果的な研修実施も検討すること。

ウ 訪問介護員養成研修事業者への適切な指導等について

 訪問介護員養成研修事業者の指定等については、「介護保険法施行令」(平成10年12 月24日政令412号)及び関係省令等に基づき行われているところであるが、今般、 大阪府において株式会社ベテル医療福祉専門学院に対し、指定の取消処分が行われた ところである。
 指定研修事業者の適正な運営の徹底を図るため、各都道府県においては、引き続き指定申請時の審査や指定後の指導に適正かつ厳正に対処いただくようお願いするとともに、複数都道府県間において指定を受けている指定研修事業者については、関係都道府県間において連携を緊密に図り、整合性のとれた指導等の実施を確保する観点から、指定取消等の行政処分の必要性が考えられる場合には、速やかに老健局振興課あてに連絡するようお願いしたい。


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