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今後のケアハウスの整備の在り方等について

 厚生労働省においては、規制改革推進3か年計画(H13.3.30閣議決定)等に沿って、ケアハウスの民間参入の促進について検討を行ってきたところであるが、平成14年度概算要求において、民間企業等にもケアハウスの設置・運営の途を開き(社会福祉法上の都道府県知事許可が必要)、PFI法に基づく選定を受けた事業者が公設民営型ケアハウスの運営を行う場合に、新たにその施設整備費について国庫補助の対象とすることを盛り込んだところである。

* 実施主体である地方自治体の負担分については、起債等の地方財政措置が講じられるよう別途総務省に要望中。

 ついては、上記のようなPFI制度等を利用したケアハウスの設置促進の枠組みに関し、現時点での検討状況は次のとおりであるので、御了知いただくとともに、PFI事業の実施主体となる各市区町村及び、必要に応じて、参入を検討している民間事業者等に対する周知方お願いしたい。(なお、以下にお示しするのはあくまでも現時点での検討状況であり、今後の検討結果によっては変更の可能性があることについて御留意願いたい。)

1 今回検討している枠組みの概略(詳細は後述)

(1)ケアハウス経営への参入を希望する民間企業等については、社会福祉法第62条第2項に基づき都道府県知事の許可を受けた上で参入することを可能とする。

* 社会福祉法第62条第2項:
「国、都道府県、市町村及び社会福祉法人以外の者は、社会福祉施設を設置して、第1種社会福祉事業を経営しようとするときは、その事業の開始前に、その施設を設置しようとする地の都道府県知事の許可を受けなければならない。」

(2)上記(1)の許可を受けた民間企業等については、現行の枠組みに沿って運営費補助を受けつつケアハウスの経営を行うことを可能とする。

(3)上記(2)に加え、入居者の負担を抑制しつつ、民間企業等によるケアハウス経営を促進するために、PFI制度を利用してBTO方式により施設の整備等を実施する自治体に対する施設整備費補助を支弁することとする。

(4)その他、BTO方式以外のPFI制度を利用してケアハウスの整備を行う場合の支援策等についても別途検討する。

2 社会福祉法第62条第2項に基づく都道府県知事の許可の条件等について

(1)社会福祉法第62条第2項に定めるとおり、社会福祉法人以外がケアハウスを経営しようとする場合には、都道府県知事の許可を得る必要があるが、許可の際の条件については、現時点においては検討状況は別添のとおりである。今後更に検討を重ねた上で、技術的助言として別途通知によりお知らせする予定である。

第1号 事業を経営するために必要な経済的基礎があること。

○ 民間企業(株式会社等)の場合、純資産及び利益が次のとおりであること。

(1) 純資産:直前期末で3億円以上、単体でプラス
(2) 利 益:最近1年間において1億円以上

* 上記は、大阪証券取引所及び名古屋証券取引所第2部上場基準を参考としているものである。

* 「必要な経済的基礎」とは各地域において一定の違いがあると考えら れることにかんがみ、上記のような基準のみではなく、国内の証券取引 所(東京、大阪、名古屋、札幌、福岡)のうちいずれかに上場(1部又 は2部)している場合には上記と同様の基準を満たすこととするかどう か検討しているところ。

* 下記第4号の規定に基づき子会社を設置してケアハウスを経営しよう とする場合には、親会社における連結ベースで上記の基準を満たすこと で足りるものとする予定。

○ 医療法人その他の非営利法人の場合には、それぞれの法人類型に対応して策定されている会計基準に基づき適正に会計処理が行われていること又は外部監査を受けていること若しくは青色申告法人と同等の記帳及び帳簿書類の保存が行われていること、及び原則として1億円以上に相当する資産(現金、預金、確実な有価証券又は不動産に限る。)を基本財産として有していること。

* 上記については、非営利ではあるが公的な関与が社会福祉法人と比較 して弱い類型の法人であることにかんがみ、社会福祉施設を経営しない (一般的には事業継続を可能とする財政基盤を別途有することが必要で ある)社会福祉法人については原則として1億円以上の資産を基本財産 として有しなければならないとされていることを参考として定めたものである。

→ なお、社会福祉法第62条第2項の都道府県知事の許可は、各都道府県の老人保健福祉計画と整合的であることが原則である。

* ケアハウスを運営する場合には、低所得者に係る事務費(職員の人件費等)の軽減分に対する運営費補助が、予算の範囲内で行われることとなるが、各都道府県の老人保健福祉計画において圏域ごとに見込まれた整備量を超えた整備の分については、都道府県において運営費補助を行うことが予算の範囲を越え、運営費補助が払われない事態が想定される。その場合においては、運営費補助に依存せずに低所得者に係る事務費軽減を行いつつ安定的に施設の運営が可能であることが明らかである場合を除き、「必要な経済的基礎がある」とは言えず、許可を行うことができないこととなる。

第2号 事業の経営者が社会的信望を有すること。

○ 事業の経営者(民間企業については代表権を持った取締役(第4号の規 定に基づき子会社を設置してケアハウスを経営する場合には、親会社の代 表権を持った取締役及び子会社の代表権を持った取締役)、医療法人その 他の非営利法人については代表権を持った役員を想定。いずれの場合にお いても、複数の者が代表権を持っている場合には、全員について対象とな る。)について、これまでの社会福祉事業への関与等の実績やボランティ ア活動の経験、これまでの事業活動の実績、または過去の賞罰等の状況を 総合的に勘案し、社会的信望を有していると認められること。

第3号 実務を担当する幹部職員が社会福祉事業に関する経験、熱意及び能力を有すること。

○ 当該施設においてサービス提供に責任を持っている者が次のいずれかに該当していること。

(1) 社会福祉士又は介護福祉士の有資格者
(2) 特別養護老人ホーム等の社会福祉施設・事業で5年以上経験がある者
(3) その他上記に準ずる者

* 詳細については、今後さらに検討することとしている。

第4号 事業の経理が他の経理と分離できる等その性格が社会福祉法人に準ずるものであること。

○ 民間企業が行う場合には、当該企業が専らケアハウスを経営する会社と して許可を受けるか、または当該企業の子会社(設置元の会社の持ち株比 率が過半数であること。)が専らケアハウスを経営する会社として許可を 受けることにより、当該許可を受けた企業又は子会社がケアハウスの経営 を行うことを原則とする。

○ ケアハウス経営以外の社会福祉事業のうち民間企業でも実施可能なもの を実施する場合には、社会福祉法第62条第2項の許可申請の際に併せて 報告するか、許可を受けた後に事業を追加する場合には別途報告するもの とする。(後者については、同第6項に基づき義務づけるものとする。)

* 社会福祉事業以外の事業を行う場合については、今後詳細について検 討することとしている。

○ 民間企業が行う場合、医療法人その他の非営利法人が行う場合にかかわ らず、ケアハウス経営について区分経理を行うことを義務づける。

* 民間企業が経営する場合には企業会計基準により経理を行うことを認めることについては、別途関係通知を改正する予定。

第5号 脱税その他不正の目的で当該事業を経営しようとするものでないこと。

○ 脱税その他不正の目的でケアハウスを経営しようとするものでないこと は、過去の賞罰の状況等を勘案して確認するものとする。

(2)なお、社会福祉法第62条第6項において、都道府県知事は、社会福祉法第62条2項に基づく許可を与えるに当たって、当該事業の適正な運営を確保するために必要と認める条件を付することができるとされており、安易に撤退しないことを担保すること等の利用者を保護する観点から必要な条件や、上記第4号に係るもののように各号の条件の実効性を担保するための条件について、今後検討を進め、第6項に係るものとして上記(1)の通知に盛り込む予定である。

3 PFI制度を利用した施設整備費補助に係る現時点での検討状況について

(1)社会福祉法に基づく都道府県知事の許可を得た民間企業等についても、入居者負担を抑制する等の観点から、何らかの形で施設整備費補助を支弁することを検討してきたところであるが、最終的に、PFI制度を利用した上で、その中でもBTO方式(*)による場合には自治体に対する補助となる点に着目し、平成14年度概算要求において事項要求を行ったところである。

(*)BTO(Build-Transfer-Operation)方式:介護サービスの提供等に関 する事項を盛り込んだPFI協定の下、地方公共団体がPFI事業者の建 設した施設を買い取った上でこれを当該事業者に貸与し、運営させる方式。

(2)なお、今回の概算要求において、個室・ユニット型を特徴とする新型特別養護老人ホームの施設整備について新設し、今後その促進を図っていくこととしているところ、今後は、ケアハウスに係る施設整備費補助を行う場合にも、施設の設備基準として新型特養と同様の個室・ユニット型を整備することを原則とする等の設備基準の改正を行う方向で検討中である。また、それに付随して、将来的に入居者の要介護度が重度化した場合にも当該施設において責任を持って対応できるようにするために、十分な介護体制の確保に関し一定の義務づけを行うことも検討しているが、その詳細については今後詰める予定である。

(3)さらに、新たなスキームの導入に伴い必要な部分については、「軽費老人ホーム設置運営要綱」(昭和47年2月26日社老第17号により通知)の改訂を検討しているところであるので、御了知願いたい。

(例)普通財産としての施設用地の貸与を地方公共団体から受ける場合がでてくることにかんがみ、一定の範囲内で土地に係る費用も管理費に含めて入居者に転嫁することを可能とすること 等

4 その他について

(1)今回の概算要求においては、BTO方式により施設整備を行う際に施設整備費補助を行うこととしたものであるが、BOT方式等については、施設整備費補助の支弁はできないものの、各地方公共団体の判断において活用することを否定するものではないので、それらについても可能な限り支援策を検討していくこととしている。

(2)また、先進的な取り組みを行ってきた自治体等においてPFI事業の実施に関するマニュアル等が公表されているところであるが、今後、当省としても、PFI制度を活用したケアハウスの施設整備の具体的手続きに係る検討(ケアハウスPFI実施マニュアルの作成:PFI事業の実施方針や事業者との間で締結する協定の参考例等)を早急に開始することとしている。


PFI制度を活用した公設民営型ケアハウスの整備促進について

○ 介護基盤整備の一環として、都市部等で介護サービス提供体制を備えたケアハウスの設置が促進されるよう所要の方策を講ずる。

○ 具体的には、民間企業等にもケアハウスの設置・運営の途を開き(社会福祉法上の都道府県知事許可が必要)、PFI法に基づく選定を受けた事業者が公設民営型ケアハウスの運営を行う場合、新たにその施設整備費について国庫補助の対象とする。

[イメージ図]

イメージ図

 介護サービスの提供等に関する事項を盛り込んだPFI協定の下、地方自治体がPFI事業者の建設した施設を買い取った上でこれを当該事業者に貸与し、運営させる場合、その買取費用を新たに国庫補助の対象とするもの。


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