全国福祉事務所長会議
退院促進支援事業の実践

社会福祉法人 巣立ち会
田尾有樹子

巣立ち会周辺地図


巣立ち会の通所施設

名称

利用者

体験利用者

合計

巣立ち風

36 12 48
巣立ち工房

36 7 43
こひつじ舎

51 10 61
合計

123 29 152

巣立ち会の居住施設

名称 利用者 定員(居室数)
巣立ちホーム 5 6
巣立ちホーム三鷹第2 14 15
巣立ちホーム調布 5 5
巣立ちホーム調布第2 5 6
巣立ちホーム調布第3 6 6
巣立ちホーム調布第4 8 10
巣立ちホーム調布第5 7 7
巣立ちホーム調布第6 6 6
居住支援 21 27
合計 77 88

グループホームなど新築物件5件の状況

  巣立ちホーム 巣立ちホーム調布 巣立ちホーム調布第2 巣立ちホーム調布第3 巣立ちホーム調布第5
建築年 H16.2 H17.9 H10.6 H15.1 H18.3
居室数 6 5 6 8 13
家賃 52万円 42万円 53万円 58万円 102万円
居室の家賃 65,000 63,000 65,000 60,000 69,000
家主 地域の地主 元郵便局長
地域の地主
以前、職親の経験あり。民生委員の経験あり 地域の地主。農家。 地元で事業をしている。民生委員。
建ててもらう経緯 利用者が建設中のアパートの不動産屋と交渉したことがきっかけ。 東京都の用地買収の人を通しての情報。 以前、職親を依頼したことがある。 第2の家主の親戚。 東京都の用地買収の人を通しての情報。

巣立ち会 居住提供制度の概要


巣立ち会 居住提供の概要

[1]利用者は巣立ち会の小規模授産施設や作業所などに3ヶ月週4日通える実績をつくってもらいます。

[2]利用者、家族、病院スタッフ、巣立ち会スタッフでカンファレンスを開き、地域生活を行うにあたっての契約を結びます。(通院、服薬、通所など)

[3]巣立ち会がアパートやグループホームを探し、紹介する、又は巣立ち会がアパートを借りて利用者に貸すという契約をします。

[4]入居後は巣立ち会が指定する保険に加入してもらいます。

[5]巣立ち会は不動産会社(大家)に対し、病気、事故など入居後にトラブルが生じた場合、支援を行う約束をします。緊急時の連絡先などもお伝えします。

住居支援に力を入れた理由

・  住居がなければ退院できない
退院できる目安が付けば人は変わる
家族も地域に支援者がいれば退院を受け入れる
利用者が孤独にならない仕組みが作れる
共同で住む事でピアの力が引き出せる
病院も支援付き住居があれば退院を勧める
通所と組み合わせることでより安定した継続的な地域支援が可能になる

退院促進支援の流れ


[1]アウトリーチ〜その1〜 出張講演
退院を経て、現在地域生活をしている巣立ち会のメンバーおよびスタッフが病院の病棟に出向き、入院患者さんと病棟の職員さんに対して自己の体験談や具体的な情報についてお話します。

ピアサポートの意味

当事者がエンパワメントされる
主体的に生きることで潜在的な可能性が引き出され、自信がつく
同じ経験をしたものが相談・支援に効果的である
支援される側から支援者へと支援の輪が広がる
担い手の数が増える
共通の課題を有する人たちの定期交流の場・仲間つくりとなる

[1]アウトリーチ〜その2〜 啓発活動
 病院と退院促進の理念や目標を共有し、事業への理解と協力を得るために、当会職員の訪問による事業説明および協力依頼を積極的におこなっております。
 また、この活動では病院内に一人、また一人と退院促進の支持者を増やしていくと共に、組織内のあらゆる方々に退院促進支援事業の周知と理解を得ることを目指しています。

[2] インテーク
 まずは病院職員の方よりご連絡を頂き、そして対象者の方、病院職員の方と当会職員で今後の具体的な計画や支援方法について相談を致します。
 退院へのお気持ちがある患者さんには、今までの生活を振り返って頂き、これからどう生きたいか、夢や希望などを共に確認致します。そしてそのご希望に対して、私たちがどんなお手伝いができるのかを提示し、お互いの同意の元に契約を致します。

このプログラムで退院して生活できる基準

服薬自己管理がある程度確立している人
  現実には退院すると服薬が出来なくなる人もかなりいる
通所施設に通えること、集団に馴染めること
  ピアの支援が受けられる
職員との信頼関係が築けること
ADLについては現在模索中
     どのくらいの人まで地域生活が出来るのか
年齢制限等は設けていない

[3] 退院訓練
 面接を経て、退院促進事業の対象となられた方には、地域への第1歩として病院から当会の通所施設(巣立ち工房・巣立ち風・こひつじ舎)のいずれかに通って頂きます。
 通所先も通所開始日も、ご本人のご希望で決めて頂けます。また通所日数、時間などについてもご相談に応じます。
 安定して通所し、そこで仲間を得ることで、自立生活への自信をつけて頂きます。

[4] 住居支援
 通所も安定し、具体的に退院の予定が出てくると住居探しに入ります。ご本人、ご家族、病院関係者の方々と相談しながら、場所や入居時期等を考慮し、その方に合ったグループホームや住まいを探していきます。また、ショートステイを利用した外泊訓練などもはじめて頂き、退院への準備を始めます。

アパート確保の困難さ

本当に保証人がいないという例は少ない
大家や不動産屋の心配は家賃の滞納だけでなく、あらゆる問題を含めたトラブルである
必要なのは単純なアパートではなく、ケアのシステムと何かあった時の対応の窓口である
  24時間対応できる窓口(携帯の連絡先)の設定

[5] 退院準備
 お部屋も決まり退院が具体的に決まった方は、退院への準備に入ります。
 まず重要なのが「服薬の自己管理」です。入院先の病院で服薬の自己管理が行えるように準備をして頂きます。
 そして継続した施設通所のために、通所目的や日程の確認を再度行います。また退院後の住居見学も行います。

[6] アフターケア
 退院し、地域での生活がスタートすると日常生活の中で様々な出来事が起こります。
 ゴミの分別や、食事の管理と、不慣れな点や不安なことについては、職員が随時ご相談にのり、快適な地域生活が送れるよう、サポートしていきます。

グループホームの世話人業務

1. 日常生活支援
対人関係・服薬支援・社会的手続き・夕食会・清掃・金銭の使途・年金・生活保護・就労支援・健康管理(成人病)などの相談
2. 連携
医療機関・他支援施設・職場・家族・地域住民との連携
3. 入退所の支援
支援計画の作成・入居目的の確認と契約・退去後の住居などの支援

病院との連携

病院の立場を理解する
  忙しさ、利用者への過小評価、地域に対する理解不足
病院に最初から多くを要求しない
こちらの出来ることを考える
出来るだけ、出前サービスを行う
中に入れてもらえる機会は逃さず出かける
なるべく利用者と一緒に行く
カンファレンスを頻繁に行う
成功事例を作る
訪問看護になるべく来てもらう
結果として病院職員にもエンパワしてもらう

家族に対して

20歳過ぎて退院時に家族に引取りを迫るのは酷
家族にも生活がある
家族に責任や負担を求めない
一旦家族の精神的負担を肩代わりする
再発入院時に必要なときの同意だけは担保する
本人が安定すれば自然に良い関係が必ず復活する

長期入院者の退院促進を
妨げている問題


巣立ち会の援助の特徴

法人全体で関わっている
チーム責任者が明確でいつでも連絡が取れ、指示が出せる状態にある
1人のケースに2名以上の担当者がいる
 関わっているスタッフは数名以上いる
ピアサポート体制も出来てきている
 当事者がこのプログラムの重要な支援者になっている
通所訓練期間が6ヶ月以上ある

巣立ち会の援助の特徴

病院へ出かける回数が多い(12月60回以上)
利用希望者に年齢や入院期間などで条件を付していない
24時間電話受付の窓口を設定している(緊急時に対応)15分以内に駆けつけられるスタッフが複数いる
地域の関係機関と密接な連絡が取り合える関係が出来ている

巣立ち会の援助の特徴

いつも住めるアパートを準備している(保証人がいなくても住居提供を行なう)
大家さんに障害を開示している
近所に仲間が住んでいる
夕食会を開いている
退院後も継続して支援をする
交番と連携をとっている
新しい利用者に対して受容的である

平成16・17・18年度の退院者の現状

  H16年度 H17年度 H18年度
退院者 7 17 24
中断者 1 9
平均年齢 47.1歳 48.8歳 50.9歳
男女比 2:5 13:4 16:6
平均入院期間 880日 4373日 3530日
退院までの期間 3.7ヶ月 7.8ヶ月 6.0ヶ月
       

外国における精神科病床・住居施設入居者数とわが国の比較(対1万人)

外国における精神科病床・住居施設入居者数とわが国の比較(対1万人)


精神科病床数の推移(OECD)

精神科病床数の推移(OECD)


   
・巣立ち会を使って退院した利用者
124名についての分析

利用開始時の年齢層

利用開始時の年齢層


総入院期間

総入院期間


退院者推移と居住施設開設時期

退院者推移と居住施設開設時期


対象者の現在の状況

対象者の現在の状況


15年間で起こったトラブル

・  火事  2回   1回は煙草の火の不始末
2回目は幻覚妄想状態での
自殺未遂
自殺 2例
痴漢・万引き行為で逮捕
飛び降り 1例
突然死 3例
ごみの出し方の注意
水道の蛇口の閉め忘れによる浸水
幻覚妄想状態などで一週間ほどの行方不明

長期入院者の退院に向けて

退院可能だということを具体的に示すこと
具体的に退院できる住居を示すこと
具体的にそこへ到達するための方法を示すこと
具体的なモデルとしてのピアの体験やサポートを示すこと

障害者自立支援法の中での展開

障害者自立支援法の一つのポイントは事業収入が出来高制になったこと
結果、社会資源が増えたのと同じ効果を持つ
多くの利用者に質の良いサービスを提供していく
その結果が経営的にもつながる
一番多くのサービスを必要としている人は病院にいる
病院に迎えにいくという姿勢
退院促進につながるのでは?

セーフティーネット支援対策事業
自立支援プログラム

就労促進事業
健康管理支援事業
退院促進個別援助事業
先駆的・試行的事業
その他

巣立ち会の
自立支援プログラムの提案

本会スタッフが市のケースワーカーと連携して生保受給者の入院患者をリストアップして病院を訪問する
退院促進支援プログラムの提案をして、近隣の病院への転院を調整する
本会退院促進プログラムに参加してもらう
アパート・グループホームへ退院する
退院後も本会の支援を継続する
研修会の企画、ノウハウの蓄積・整理、人材の訓練・育成

福祉事務所へのお願い

長期入院は著しい人権侵害である
早期に地域移行を行うためにあらゆる可能性の模索

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