社援発第0330007号

平成19年3月30日

各都道府県知事     


 
各指定都市市長 殿
各中核市市長  

厚生労働省社会・援護局長

 生活保護受給中の中国帰国者等への
地域生活支援プログラムについて

中国帰国者等への支援については、これまで永住帰国者の受入れ及び帰国者等の定着自立促進を目指し、種々の対策を講じているところであるが、生活保護受給者が半数を超えているという現実がある。本年1月には内閣総理大臣よりきめ細やかな自立支援の取組を推進するよう指示がなされ、また中国帰国者等が置かれた特殊な事情を踏まえ、中国帰国者等の地域における社会的自立を進め、安心して生活を営むことができるよう支援を推進していくこととした。

こうした取組の一環として、生活保護制度の自立支援プログラムのひとつとして「生活保護受給中の中国帰国者等への地域生活支援プログラム実施要領」を別紙のとおり定め、平成19年4月1日より適用することとしたので、本事業の適正かつ円滑な実施を図られたく通知する。

なお、貴管内の保護の実施機関に対して、貴職からこの旨周知されるようお願いする。


(別紙)

生活保護受給中の中国帰国者等への
地域生活支援プログラム実施要領

1 趣旨及び目的

中国帰国者等に対しては、中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律に基づき、自立の支援のため、日本語教育や就労支援等を行ってきているところであるが、なお現実問題として、日本語習得が不十分であること、高齢化に伴い就労が困難となってきていることに加え、自立を望むものの地域社会にとけ込めず引きこもりになりがちな傾向が見られるなど社会的な自立が困難な者も少なくない状況にあり、生活保護受給者が半数を超えているという現実がある。また、二世等を取り巻く就労環境にも厳しいものがある。

このため、生活保護を受給している中国帰国者等及び二世等(以下「中国帰国者等」という。)に対し、個々の実状とニーズを踏まえつつ、福祉事務所及び都道府県援護担当課(以下「援護担当課」という。)等が連携して、「地域生活支援プログラム」を実施し、日本語学習等の支援や生活支援等を行うことにより、社会的・経済的自立の助長を図ることを目的とする。

2 事業の実施体制

(1) 都道府県地域生活支援プログラム連絡協議会の設置

各都道府県に、各都道府県、政令指定都市、中核市の生活保護担当課長、各都道府県の援護担当課長等から構成される都道府県地域生活支援プログラム連絡協議会(以下「都道府県連絡協議会」という。)を設置する(別添1「都道府県地域生活支援プログラム連絡協議会設置要領」参照)。都道府県連絡協議会は、関係機関の連携を図り、プログラムの実施手順等の調整及び自立指導員や福祉事務所職員に対する研修の企画・実施等によりプログラム実施に向けて、共通認識を形成するものとする。

(2) 地域生活支援プログラム支援チーム(以下「支援チーム」という。)の設置

地域生活支援プログラム担当責任者(以下「プログラム担当責任者」という。)、都道府県知事が選任した自立指導員(以下「自立指導員」という。)及び福祉事務所職員で構成される支援チーム(別添2「地域生活支援プログラム支援チーム設置要領」参照)を設置し、中国帰国者等のニーズの把握を行いつつ、支援を行う。

なお、必要に応じ、支援チームは、プログラム担当責任者以外の援護担当課の職員、身元引受人、就労相談員、その他適当と認められる者に協力を求めることができることとする。

(3) プログラム担当責任者の役割

各都道府県援護担当課に、援護担当課の職員をプログラム担当責任者として設置し、自立指導員との連携を図り、当該援護担当課内における支援状況の把握を行うとともに、支援の円滑な実施を図る。

(4) 自立指導員の役割
ア 職務

自立指導員は、本実施要領4に規定する事項のうち自立指導員が行うこととしている業務を、福祉事務所との密接な連携を図りながら、実施する。

(ア) 自立指導員は、福祉事務所職員と同行の上、中国帰国者等の家庭訪問等を行い、家庭訪問等終了後は中国帰国者等の生活状況や希望する支援内容をプログラム担当責任者に報告する(報告様式:参考例1)。

(イ) 自立指導員は、福祉事務所職員と協力し中国帰国者等が日常生活上抱えている問題を踏まえ、中国帰国者等に最も適した支援について助言する。

(ウ) 自立指導員は、プログラム担当責任者及び福祉事務所職員に意見を述べることができ、プログラム担当責任者及び福祉事務所職員は自立指導員の意見を尊重する。

(エ) 自立指導員は、中国帰国者等を少なくとも年2回訪問する。

(オ) 自立指導員は、本事業の実施にあたっては支援・交流センター及びハローワーク等各種関係機関と連携を図る。

(カ) 自立指導員は一つ又は複数の福祉事務所の管轄区域を担当するものとし、その範囲は、都道府県連絡協議会で調整するものとする。

イ 研修の受講

自立指導員は、援護担当課の実施する援護事業に関する相談・指導方法及び帰国者支援法、地域生活支援プログラムに係る事業や当該地域における中国帰国者等の状況など、職務を遂行するための必要な知識等を得るために、積極的に研修を受講するものとする。また、生活保護制度に係る必要な知識等を得ることに努めるものとする。

ウ 秘密保持義務

自立指導員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはいけない。

エ その他

この要領に定めるもののほかに、自立指導員に関し必要な事項は、別途定めるものとする。

(5) 福祉事務所職員の役割

福祉事務所職員(査察指導員、ケースワーカー等)は、支援チームの構成員として自立指導員と同行し中国帰国者等の家庭訪問等や支援メニューの利用について助言を行うほか、必要に応じ援護担当課等との連絡調整、当該福祉事務所の中国帰国者等に対する支援状況の把握を行う。

(6) 自立支援通訳の役割

自立支援通訳は、地域生活支援プログラム実施中、中国帰国者等と関係機関等との面談や手続きにおいて、通訳が必要と判断される場合に、援護担当課を通じて派遣され、支援の円滑な実施を図る。

3 支援対象者

支援対象者は、中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律(以下「法」という。)第2条第1項に規定する者及び中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律施行規則(平成6年厚生労働省令第63号。以下「省令」という。)第10条に規定する親族等で、法第2条第3項に規定する目的により永住帰国した者のうち、現在生活保護を受給している者とする。

4 支援の手順

中国帰国者等に対する支援は、自立指導員と福祉事務所職員が中心となり、当該中国帰国者等の生活状況等を把握の上、本人の希望に沿って、以下の要領で行うものとする。

(1) 自立指導員及び福祉事務所職員は家庭訪問等の日程調整後速やかに当該中国帰国者等に対する家庭訪問等を実施することとする。

(2) 家庭訪問等においては、中国帰国者等の個別のニーズを把握し、中国帰国者等の希望に沿った以下のような支援につなげるほか、日常生活の相談・支援を行う。

(個別支援メニューの例)

【 [1] 中国帰国者支援・交流センター等(以下、「センター等」という。)が行う日本語等各種の学習への支援又は交流事業等への支援(中国帰国者等のうち一世については、他に「友愛電話」「友愛訪問」による支援)】

日本語等各種学習、交流事業等への参加を希望する者に対し、センタ ー等で行われている日本語学習等各種講座、交流事業及び生活相談の紹介とあっせんを行い、通所(学)に必要な交通費及び教材費の支給を行 う。また、中国帰国者等のうち一世については、中国帰国者支援・交流 センターで行われている「友愛電話」、「友愛訪問」の紹介とあっせんを行う。

【 [2] 訪中支援 (原則中国帰国者等のうち一世) 】

親族訪問等のため一定期間中国等に渡航する場合については、その渡 航期間中は生活扶助費を継続支給するとともに渡航費用は収入として認 定しない取り扱いとする。

【 [3] 自学自習者に対する適切な教材等の紹介 】

自学自習のための適切な情報の提供を希望する者に対し、個々の自学自習に適した教材の相談や適時のアドバイスを行い、学習に必要な教材費の支給を行う。

【 [4] 就労に役立つ日本語等の資格取得支援 】

就労に役立つ日本語等の資格取得を希望する者に対し、個々人の希望に添った各種学校法人等を紹介し、学費等及び資格取得のための受験料を支給する。

(参考)
就労に役立つ日本語等の資格取得のための教育訓練給付金事業実施要領
(平成19年3月30日社援発第0330008号)

【 [5] 地域生きがい支援(中国帰国者等のうち一世) 】

原則60歳以上の健康で働く意欲があり、シルバー人材センターで提供される仕事に理解と熱意を持って就くことができ、かつ、地域社会への参加意欲のある者に対し、シルバー人材センターへの案内を行う。

【 [6] 「生活保護受給者等就労支援事業」の活用(中国帰国者等のうち二・三世)】

就労による自立を目指す者に対し、福祉事務所と公共職業安定所とが連携し、個々の対象者の態様、ニーズ等に応じた就労支援を行う「生活保護受給者等就労支援事業」を活用する。

(参考)
「生活保護受給者等就労支援事業」活用プログラム実施要綱について
(平成17年3月31日雇児発第0331019号・社援発第0331011号)
「生活保護受給者等就労支援事業について」
(平成18年3月31日職発第0331009号)

【 [7] その他、地方自治体等が中国帰国者等のニーズに応じ、独自に実施する事業】

(3) 中国帰国者等の誘導

自立指導員及び福祉事務所職員が中国帰国者等を家庭訪問等し、把握した個別のニーズや希望する支援内容をプログラム担当責任者に報告する(報告様式:参考例1)。

プログラム担当責任者は、支援内容が決定した中国帰国者等に対し支援開始日等の連絡をするとともに、支援を実施する関係機関に必要に応じ中国帰国者等の情報を連絡する。

(4) 自立指導員と福祉事務所職員は定期的に中国帰国者等を家庭訪問等し、支援内容について、何か支障はないか、その他意向等を聞くものとする。

5 支援対象者の把握等

(1) 援護担当課は、把握している中国帰国者等に対し文書等(参考例2)により、生活保護受給の該当性、地域生活支援プログラムの説明、中国帰国者等が希望する支援内容の把握等を行う。

一方、福祉事務所においては、生活保護を受給している中国帰国者等を整理し、援護担当課に連絡する。

(2) 援護担当課は、中国帰国者等が希望する支援メニュー等を把握した後速やかに担当自立指導員に対し、文書等(参考例2)の写しを送付し、併せて福祉事務所と当該中国帰国者等との家庭訪問等の日程調整を行うよう連絡する。

6 その他留意事項

事業の実施に当たっては、中国帰国者等のプライバシーの保護に特に配慮する。


(別添1)

都道府県地域生活支援プログラム連絡協議会設置要領

1 目的

生活保護受給中の中国帰国者への地域生活支援プログラム(以下「地域生活支援プログラム」という。)を実施するため、各都道府県において、援護担当課及び福祉事務所の担当者等を構成員として、関係機関の連携を図りつつ実施手順等を調整することを目的とし、都道府県地域生活支援プログラム連絡協議会(以下「都道府県連絡協議会」という。)を設置する。

2 構成員等

都道府県連絡協議会の構成員は、以下に揚げる者とする。

(1) 生活保護担当課

都道府県、政令指定都市及び中核市生活保護担当課長

(2) 援護担当課

都道府県援護主管課担当課長

(3) その他
[1]    自立指導員
[2] 中国帰国者自立研修センター長
[3] 中国帰国者支援・交流センター長
[4] 身元引受人
[5] 就労相談員
[6] その他必要と認める者

3 協議事項等

(1) 都道府県内の帰国者定着状況、生活保護施策の動向等の説明

援護担当課から管内の帰国者定着状況等に関する説明、福祉事務所から生活保護施策の動向等について説明する。

(2) 事業の実施に当たっての担当者の研修方法等の調整及び決定

必要に応じて、福祉事務所職員等に対して援護事業を、一方、援護担当課のプログラム担当責任者及び自立指導員に対して福祉行政の研修を行うための方法及び時期等を調整及び決定する。

(3) 事業実施スケジュール等の調整及び決定等

[1] 事業実施開始時期の決定及び年間計画の策定

[2] 支援チーム設置時期、構成員、構成員同士の連絡方法及び開催場所(福祉事務所)等の確認

(4) 実施状況の確認及び検証

定期的に事業の実施状況について確認及び検証を行う。

(5) その他必要な事項

その他事業に必要な事項について協議等を行う。

4 協議会の開催

必要に応じ開催するほか、翌年度については可能であれば前年度の3月に開催することとし、少なくとも毎年4月に開催する。

特に、平成19年度においては、管内の帰国者動向、生活保護施策の動向を説明し、また実施スケジュールの調整等を行うための連絡協議会を18年度中に開催し、各支援メニュー(特に訪中希望者や交通費等の支給対象者等)対象者の把握に努められたい。

5 秘密保持義務

都道府県連絡協議会の構成員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。

6 庶務

都道府県連絡協議会の庶務は、都道府県生活保護担当課の協力を得て、都道府県援護担当課が行う。


(別添2)

地域生活支援プログラム支援チーム設置要領

1 目的

援護担当課の職員及び自立指導員並びに福祉事務所職員が連携を図りつつ、地域生活支援プログラムを実施するため、支援チームを設置する。

2 構成員

支援チームの構成員は、プログラム担当責任者、自立指導員及び福祉事務所職員とする。

なお、支援チームは、必要に応じ、プログラム担当責任者以外の援護担当課の職員、身元引受人、就労相談員その他適当と思われる者に協力を求めることとする。

3 担当区域

支援チームは、当該支援チームの構成員である福祉事務所職員が担当する一人又は複数の中国帰国者等を担当するものとし、その範囲は、都道府県連絡協議会で決定するものとする。

4 職務

自立指導員と福祉事務所職員は中国帰国者等の家庭訪問等を行い、中国帰国者等の生活状況等を把握し、中国帰国者等の希望に沿った支援について助言する。

5 秘密保持義務

支援チームの構成員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。


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