母子家庭の自立支援

厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課
母子家庭等自立支援室長


母子家庭の現状

(母子世帯数)

母子世帯は約123万世帯(平成15年)。うち離婚は約8割、死別は約1割。
※昭和58年では離婚約5割、死別約4割。

(年齢の状況)

低年齢で離婚が増えていることから、約3割が20歳台で母子世帯に。

(世帯の状況)

母子のみの世帯は平成15年段階で63%と平成10年(71%)より減少(同居世帯増加)。

(就労の状況)

母子家庭の約8割が就労。就労家庭のうち常用雇用は約4割、臨時・パートは約5割。

(収入の状況)

母子家庭の平均年収は233万円、全世帯の平均年収は580万円(平成17年国民生活基礎調査)。
生活保護を受給している世帯は約1割。

(養育費の取得状況)

離婚母子家庭のうち、
養育費の取り決めをしている : 約34%
  養育費を現在も受給している : 約18%

母子家庭の自立支援策の概要

平成14年に母子及び寡婦福祉法、児童扶養手当法等を改正し、「児童扶養手当中心の支援」から「就業・自立に向けた総合的な支援」へと、転換したところ。
具体的には、「子育て・生活支援策」、「就業支援策」、「養育費の確保策」、「経済的支援策」の4本柱により施策を推進中。
特に平成19年度は、「母子家庭の母の就業の支援に関する特別措置法」が最終年度を迎えることを踏まえ、集中的に就業支援対策を講じることとしている。

母子家庭及び寡婦自立促進計画(地方自治体が国の基本方針を踏まえて策定)

子育てと生活支援
保育所の優先入所の法定化
ヘルパーの派遣などによる子育て、生活支援策の実施
サテライト型施設の設置など母子生活支援施設の機能の拡充
就業支援
母子家庭等就業・自立支援センター事業の推進
個々の実情に応じた、ハローワーク等との連携による母子自立支援プログラムの策定等
準備講習付き職業訓練の実施
母子家庭の能力開発等のための給付金の支給
養育費の確保
養育費支払い努力義務の法定化
養育費相談・支援センターの創設
「養育費の手引き」やリーフレットの配布
民事執行制度の改正による履行確保の促進
経済的支援
自立を支援する観点から母子寡婦福祉貸付の充実
児童扶養手当の支給

母子家庭の就業支援対策の現状と課題

○母子家庭約123万世帯のうち、不就業は約20万世帯(約15%)と少ない。
  ⇒ 諸外国と異なり、働くことに意欲的な日本の母子家庭。

○  他方、臨時・パート等が約55万世帯(約45%)と常用雇用(約48万世帯:約40%)と比較して多いことから、就労支援施策の課題は、「就職先のあっせん」だけではなく、賃金水準の改善に向けて、「常用雇用への転換」等が重要。

○  母子家庭と一口に言っても、学歴・職歴等きわめて多様であり、一般の労働施策の充実で対応可能な者から、生活支援をはじめとしてきめ細かな福祉的支援を要する者まで存在。

○  平成14年の法改正により、「児童扶養手当中心の支援」から「就業・自立に向けた総合的な支援」へと転換し、就業支援対策に力を入れているところ。

○  就業支援施策のメニューは揃っている。また、近年、実績も急速に伸びてきている(例:ハローワークによる就職件数は54,000件(H16年度)から66,000件(H17年度)へ)。しかし、就業支援施策はスタートしたばかりであり、
(1) 未実施の自治体がみられるほか、
(2) 実績を上げる余地が大きい


母子家庭の母に対する就業支援

母子家庭の母の就業状況

就業支援メニュー

(就業相談等による支援)

○母子家庭等就業・自立支援センター事業

○母子自立支援プログラム策定事業等

○ハローワークによる支援

(職業能力開発に必要な支援)

○母子家庭の母等の職業的自立促進事業

(準備講習付き職業訓練)

○介護労働者能力開発事業

○自立支援教育訓練給付金

○高等技能訓練促進費

(常用雇用に向けた支援)

○特定求職者雇用開発助成金

○試行(トライアル)雇用奨励金

○常用雇用転換奨励金


母子家庭の母に対する主な就業支援

就業相談等による支援

○母子家庭等就業・自立支援センター事業

・一貫した就業支援サービス(就業相談・就業支援講習会・就業情報の提供等

・生活支援サービス(養育費の相談等)の実施

○母子自立支援プログラム策定事業等

・福祉事務所等に母子自立支援プログラム策定員を設置し、自立が見込まれる児童扶養手当受給者等を対象にした自立支援プログラムの策定によるきめ細やかな就業支援を行う。(生活保護受給者についても、自立支援プログラムを策定して、同様の支援を実施)

○ハローワークによる支援

・再就職を希望する母子家庭の母等の就職支援を実施。特に、マザーズハローワークでは子育て中の女性等に対する再就職支援を実施。

職業能力開発に必要な支援

○母子家庭の母等の職業的自立促進事業(準備講習付き職業訓練)

・就職前の準備段階としての準備講習と、実際の就職に必要な技能・知識を取得させるための職業訓練をセットで実施。

○介護労働者能力開発事業

・女性の就業が期待できる介護分野への就職促進を図るため、訪問介護員(ホームヘルパー)養成研修2級課程等を実施。

○自立支援教育訓練給付金の支給

・教育訓練講座の受講に要した費用の一部を支給。

○高等技能訓練促進費の支給

・看護師等の経済的な自立を図る上で効果的な資格を取得するための受講期間中、生活費の負担の軽減を図り、当該資格の取得を支援。

 

常用雇用に向けた支援

○特定求職者雇用開発助成金の支給

・母子家庭の母等の就職困難者を一定期間継続して雇用した場合に、賃金相当額の一部を助成。

○試行(トライアル)雇用奨励金の支給

・母子家庭の母を試行的に雇用し、業務遂行に当たっての適性や能力などを見極め、その後の常用雇用への移行や雇用のきっかけを作りを図る。

○常用雇用転換奨励金の支給

・パートタイム等で雇用している母子家庭の母を、OJT実施後、常用雇用に転換した事業主を対象に奨励金を支給。


母子家庭の母の就業支援施策の実績について

1.就労相談による支援

○公共職業安定所(ハローワーク)による職業紹介

・母子家庭の母

  H14年度 H15年度 H16年度 H17年度
紹介件数 183,205件 198,104件 200,126件 271,571件
就職件数 46,334件 52,145件 54,286件 66,266件
(1.5倍)
(1.4倍)
マザーズハローワークの設置 12カ所(H18年度)
マザーズサロンの設置 36カ所(H19年度予定)
  ※マザーズハローワークの就職件数実績は、H18年4月〜12月で約10,000件
○母子家庭等就業・自立支援センター(H15年度創設)
地方自治体実施率 61.1%(H15年度) → 89.9%(H18年度)
就業相談を利用された方の事業実績(各年4月〜12月分) 相談件数 9,435件(H15年) → 34,583件(H17年)
就職件数  765件(H15年) → 3,431件(H17年)

2.職業能力開発の状況

○自立支援教育訓練給付金事業(H15年度創設)

・地方自治体実施率 21.0%(H15年度) → 72.7%(H18年度)

事業実績(各年4月〜12月分) 支給件数
就職件数
62件(H15年)
31件(H15年)
→ 2,295件(H17年)
→ 1,087件(H17年)
○高等技能訓練促進費事業(H15年度創設)
地方自治体実施率 16.9%(H15年度) 58.0%(H18年度)
就職件数 128件(H15年度) 379件(H16年度)

3.常用雇用に向けた支援

○常用就職を促進するための特定求職者雇用開発助成金

・支給件数 19,944件(H14年度) → 22,171件(H17年度)

○常用雇用転換奨励金(H15年度創設)

・事業実績(各年4月〜12月分)常用雇用転換数 3件(H15年)→ 25件(H17年)


母子家庭の就業支援関係事業の実施状況等(平成18年10月1日現在)

(1)母子家庭等就業・自立支援センター事業

母子家庭の母等に対して、就業相談や就業支援講習会の実施、就業情報の提供など一貫した就業支援サービスや養育費の相談など生活支援サービスを提供する。

(2)自立支援教育訓練給付金事業

地方公共団体が指定する教育訓練講座を受講した母子家庭の母に対して、講座終了後に受講料の一部を支給する。
○受講料の4割相当額(上限20万円、下限8千円)

  都道府県 指定都市 中核市 合計
平成15年度 39か所
( 83.0% )
8か所
( 61.5% )
11か所
( 31.4% )
58か所
( 61.1% )
平成16年度 47か所
( 100.0% )
12か所
( 92.3% )
21か所
( 60.0% )
80か所
( 84.2% )
平成17年度 47か所
( 100.0% )
13か所
( 92.9% )
23か所
( 62.2% )
83か所
( 84.7% )
平成18年度
(予定)
47か所
( 100.0% )
15か所
( 100.0% )
27か所
( 73.0% )
89か所
( 89.9% )
  都道府県 指定都市 中核市 一般市等 合計
平成15年度 35か所
( 74.5% )
1か所
( 7.7% )
6か所
( 17.1% )
116か所
( 17.6% )
158か所
( 21.0% )
平成16年度 45か所
( 95.7% )
7か所
( 53.8% )
24か所
( 68.6% )
251か所
( 36.0% )
327か所
( 41.2% )
平成17年度 47か所
( 100.0% )
14か所
( 100.0% )
32か所
( 86.5% )
346か所
( 44.3% )
439か所
( 49.9% )
平成18年度
(予定)
47か所
( 100.0% )
15か所
( 100.0% )
33か所
( 89.2% )
528か所
( 69.7% )
623か所
( 72.7% )

(3)高等技能訓練促進費事業

介護福祉士等の経済的自立に効果的な資格を取得するために2年以上養成機関等で修学する場合で、就業(育児)と修業の両立が困難な場合に、生活費の負担軽減のため、高等技能訓練促進費を支給する。
○修学期間の最後の1/3の期間(12ヶ月を限度)
○月額10万3千円

(4)常用雇用転換奨励金事業

パートタイム等として雇用している母子家庭の母を、OJT実施後、常用雇用労働者に雇用転換した事業主に対して奨励金を支給する。
○1人あたり30万円

  都道府県 指定都市 中核市 一般市等 合計
平成15年度 29か所
( 61.7% )
1か所
( 7.7% )
6か所
( 17.1% )
91か所
( 13.8% )
127か所
( 16.9% )
平成16年度 37か所
( 78.7% )
5か所
( 38.5% )
24か所
( 68.6% )
186か所
( 26.6% )
252か所
( 31.8% )
平成17年度 40か所
( 85.1% )
11か所
( 78.6% )
29か所
( 78.4% )
265か所
( 33.9% )
345か所
( 39.2% )
平成18年度
(予定)
43か所
( 91.5% )
14か所
( 93.3% )
29か所
( 78.4% )
411か所
( 54.2% )
497か所
( 58.0% )
  都道府県 指定都市 中核市 一般市等 合計
平成15年度 19か所
( 40.4% )
1か所
( 7.7% )
2か所
( 5.7% )
56か所
( 8.5% )
78か所
( 10.4% )
平成16年度 29か所
( 61.7% )
3か所
( 23.1% )
11か所
( 31.4% )
125か所
( 17.9% )
168か所
( 21.2% )
平成17年度 29か所
( 61.7% )
5か所
( 35.7% )
12か所
( 32.4% )
150か所
( 19.2% )
196か所
( 22.3% )
平成18年度
(予定)
30か所
( 63.8% )
6か所
( 40.0% )
14か所
( 37.8% )
180か所
( 23.7% )
230か所
( 26.8% )

(5)母子自立支援プログラム策定事業

個々の児童扶養手当受給者の状況・ニーズに応じ、自立支援計画書を策定し、ハローワーク等と連携のうえ、きめ細かな自立・就労支援を実施することを目的として、母子自立支援プログラム策定員を福祉事務所等に設置する。
※平成18年度より本格実施

  都道府県 指定都市 中核市 一般市等 合計
平成18年度
(予定)
27か所
( 57.4% )
14か所
( 93.3% )
8か所
( 21.6% )
126か所
( 16.6% )
175か所
( 20.4% )
 

母子家庭等就業・自立支援センターにおける就業支援の好事例

就業相談

○巡回職業相談を実施

県域が広範囲に及ぶことから、利用者のアクセスを容易にするため、巡回相談を実施。職業紹介の許可を取得しており、相談会場での求職者登録が可能となっている。(福島県、島根県)

○求人開拓を民間派遣会社に委託して実施

ミスマッチを解消するため、求職者が希望する仕事の求人開拓を、民間派遣会社に委託して実施。就職率のアップにつながっている。(新潟県、静岡県ほか)

就業支援講習会

○講習会を週末に実施するとともに、託児室を確保

就業支援講習会を土日に開催し、仕事などで平日では都合がつかない受講者に配慮。また、会場に、託児室を設置し、乳幼児連れの受講者に配慮。(山梨県)

○就労意欲を引き出すための講演会を企画・実施

・ 就労に対する意欲を引き出すため、現在のみならず、5年後、10年後に必要となるマネープラン(ライフプラン)に関する講演会を実施。(船橋市)

・ 適職発見セミナーを、県、指定都市、中核市で共同開催し、効率的な事業を実施。(神奈川県等)

○ヘルパー講習会を社会福祉法人等に委託

・ ホームヘルパー講習会の実施を委託した施設から、実習態度が良好な受講生を採用したいという申し出があった。講習会が知識や技能を身につける場所だけでなく、優れた人材を発掘できる場所にもなっている。(青森県、熊本県、宮崎市)

・ ホームヘルパー講習会を母子家庭の母の自立に理解のある社会福祉法人に委託することで、高い就職率を実現。(横浜市)

その他

○求人企業の実地見学の実施

(1)フォークリフト乗務作業など危険な作業を伴う求人については、紹介前に必要に応じて作業の実際や安全確認を行うため、実地見学を実施。こうした取り組みにより、相談者に対して、自分の目で確かめた情報に基づく、適切な職業紹介が可能となっている。(大阪府)

(2)事業所内に医師が常駐するなど求人票に記載されていない福利厚生面の充実など紹介に当たって参考となる情報が収集できる。こうした情報が、求職者にとって応募してみようという動機付けになっている。(大阪府)

○助成金制度を紹介し更なる雇用意欲を誘因

求人を受理した時、求人開拓のため事業所を訪問した時に、特定求職者雇用開発助成金制度を紹介することで、事業主の雇用意欲を引き出している。(大阪府)


平成18年度母子自立支援プログラム策定実績(4月〜12月)

都道府県 指定都市 中核市
番号 都道府県 管内市等 番号 都道府県 管内市等
1 北海道 4 4 25 滋賀県 0 0 48 札幌市 9 63 旭川市 0 87 和歌山市 0
2 青森県 24 0 26 京都府 0 5 49 仙台市 56 64 函館市 0 88 岡山市 2
3 岩手県 16 0 27 大阪府 0 203 50 さいたま市 32 65 青森市 0 89 倉敷市 0
4 宮城県 0 0 28 兵庫県 0 16 51 千葉市 14 66 秋田市 0 90 福山市 0
5 秋田県 0 0 29 奈良県 59 62 52 横浜市 160 67 郡山市 0 91 下関市 27
6 山形県 4 5 30 和歌山県 0 0 53 川崎市 58 68 いわき市 0 92 高松市 0
7 福島県 53 5 31 鳥取県 8 0 54 静岡市 12 69 宇都宮市 43 93 松山市 0
8 茨城県 0 0 32 島根県 22 0 55 名古屋市 5 70 川越市 0 94 高知市 0
9 栃木県 40 126 33 岡山県 4 0 56 京都市 48 71 船橋市 0 95 長崎市 0
10 群馬県 9 2 34 広島県 0 1 57 大阪市 359 72 横須賀市 0 96 熊本市 0
11 埼玉県 3 0 35 山口県 4 2 58 堺市 21 73 相模原市 4 97 大分市 6
12 千葉県 0 0 36 徳島県 50 0 59 神戸市 41 74 新潟市 3 98 宮崎市 0
13 東京都 0 147 37 香川県 0 0 60 広島市 3 75 富山市 0 99 鹿児島市 0
14 神奈川県 0 0 38 愛媛県 0 0 61 北九州市 53 76 金沢市 0 小計 91
15 新潟県 0 0 39 高知県 0 0 62 福岡市 0 77 長野市 0      
16 富山県 2 7 40 福岡県 17 0 小計 871 78 岐阜市 0      
17 石川県 23 26 41 佐賀県 61 2       79 浜松市 2      
18 福井県 3 0 42 長崎県 89 3       80 豊橋市 0      
19 山梨県 31 19 43 熊本県 0 0       81 豊田市 0      
20 長野県 0 0 44 大分県 6 0       82 岡崎市 0      
21 岐阜県 0 0 45 宮崎県 0 0       83 高槻市 0      
22 静岡県 0 2 46 鹿児島県 0 0       84 東大阪市 0      
23 愛知県 4 5 47 沖縄県 31 0       85 姫路市 2      
24 三重県 0 0 小計 567 642       86 奈良市 2      
合計 2,171


母子自立支援プログラム策定事業について(概要)

個々の児童扶養手当受給者の状況・ニーズに応じ、自立支援のためのプログラムを策定し、母子家庭等就業・自立支援センター事業や生活保護受給者等就労支援事業等を活用することにより、きめ細かな自立・就労支援を実施する。

対象者

児童扶養手当受給者(DV被害を受けた子を有する母等であって、かつ、将来において児童扶養手当の受給が見込まれる者を含む。)

策定員

ハローワークOB、人事担当部局経験者など就業相談の知識・経験がある者等(母子自立支援員や生活保護の就労支援員等との兼務も可能) ※母子家庭等就業・自立支援センターへの配置可

補助基準

プログラム策定1ごとに20,000円を国庫補助。

積極的な事業の推進

実効性が上がるような事業運営を推進。

○  プログラム策定数などの目標値の設定

○  (1)離婚直後等により生活が不安定であるために特に支援が必要な者、(2)児童扶養手当の一部支給停止措置が適用されることを前に新たに就職・転職を求めている者などを対象に重点的に実施

○  児童扶養手当の申請時や現況届提出時等のあらゆる機会を生かした事業の紹介


母子自立支援プログラムについて


母子自立支援プログラム策定事業の好事例について

相談員の配置

○  プログラム策定員を、児童扶養手当の窓口課に配置し、母子寡婦福祉貸付資金及び母子家庭自立支援給付金の窓口も兼ね、児童扶養手当の支給から、生活支援、就労支援まで一体的な支援に努めている。(小山市、貝塚市、泉南市、山陽小野田市)

○  母子家庭等就業・自立支援センターにプログラム策定員を設置し、センターから離れている地区には、毎月1回福祉事務所において巡回就業相談を行っている。(福井県、島根県、神戸市ほか)

対象者へのアプローチ

○  就業支援は児童扶養手当の支給開始直後から取り組むことが効果的であると考えられることから、手当の申請に訪れた機会を捉え、まず初回の相談(就労意欲の確認)を行い、約1か月後の認定の際に具体的な就労相談を行うなどの工夫を行っている。(貝塚市)

○  一方的な情報提供では、就労意欲の把握に一定の限界がみられることから、児童扶養手当現況届時における個人面談を通じ把握に務めている。(山梨県、那須烏山市)

○  児童扶養手当現況届受付期間内では、多数を相手に面接をすることが困難なので、本事業に関心を持つ者を対象に、就労支援セミナーを実施している。(横浜市)

○  本人から提出される事業利用希望届けと、プログラム策定員による面接等を経て支援を決定する体制を採用しており、就労意欲の高い対象者を集めることが可能となっている。(沖縄県)

○  児童扶養手当現況届で「求職活動中」と記載している受給者に対して、文書を送るとともに、ハローワーク、履歴書の書き方、面接の受け方等を盛り込んだ「自立支援のしおり」、「求職活動ガイドブック」を窓口で配付している。(四條畷市ほか)

相談援助面での工夫

○  策定員が、就業相談に加え、面接方法、履歴書記入方法等を援助するとともに、保育所担当課と調整し、求職活動中の保育所入所を可能とした。(栃木県小山市)

○  窓口でハローワークのインターネットサービスを活用した求人情報の提供を行うほか、定期的な情報提供や相談に当たっては、相談者の職歴・希望や本人の意向等を考慮した支援を行っている。(青森県、栃木県足利市)

○  毎週月曜日に新聞折込みの求人広告を取りまとめ窓口で閲覧ができるようにするとともに、街中で貼り出されている求人情報を収集し、情報提供している。(大阪府貝塚市)

○  平日夜間、土曜日に受講料無料の職業訓練講座(医療事務、簿記3級、パソコン)を開講している。プログラム策定員が、講座設定から、講師の招聘、会場予約、受講生募集、受講生のケアまで一連の作業を行っている。(大阪府)

ハローワークとの連携

○  自治体として、母子自立支援プログラム策定件数の目標値を設定するとともに、ハローワークにおいても就職目標を設定し、計画的な就労支援を進めている。(青森県)

○  事業開始時にハローワーク担当者と相互の業務内容について確認するとともに、母子家庭の母の就労の実情や管内の雇用・失業情勢について情報提供を行い理解を深めることで、連携しやすい環境作りを行った。あわせて、母子自立支援プログラム策定員がハローワークを積極的に訪ね、就職支援セミナーの開催情報や求人情報を積極的に把握し、相談場面で活用している。(青森県)


母子自立支援プログラム策定事業の具体例について

<事例1>

対象者が抱える課題をハローワークと福祉事務所が一体となったケース会議で明らかにし、問題の解決に向け、行政と対象者が意欲的に取り組んだケース。
世帯構成  本人(48歳)と高校生の子どもの2人世帯。
本人の経歴  卸売業で10年近く事務職に従事したが、給与の遅配があるため転職を検討。
福祉事務所
とハローワー
クの支援
 福祉事務所で履歴書の書き方の指導等を実施。職業検索の要領がつかめないためハローワークへ支援要請。ハローワーク、福祉事務所、本人を交えたケース会議の結果を踏まえ、福祉事務所がパソコン基礎講座の受講勧奨し、ハローワークが積極的な求人情報の提供、求人検索の指導等、きめ細かな指導。
結 果  ケース会議の結果を踏まえ、本人がパソコン教室を受講するとともに、ハローワークの支援を受けつつ、積極的に求人検索を行うことにより、正社員として給与16万円、賞与60万円〜80万円の条件で再就職が決定。

<事例2>

ハローワークにおける指導により4ヶ月弱で正社員での就職が可能になったケース。
世帯構成  本人(38歳)と高校生と実母の3人世帯。
本人の経歴  内職からパート採用になり8年目だが、収入が低いため、土日はアルバイトもしている。住まいも市の最北部にあり、通勤には制約を伴う。
福祉事務所
とハローワー
クの支援
 正社員として安定した雇用条件の元で働きたいとの希望で、ハローワーク専任のスタッフによる本人の経歴、居住環境等を踏まえた、きめ細かな指導(ハローワークの利用方法、面接練習、希望勤務条件に即した求人開拓)
結 果  短期間で正社員での就職に結びつき、収入もパートの倍になった。

<事例3>

ハローワークの専任の支援スタッフが、対象者の意向や状態を踏まえたきめ細かな支援を行うとともに、子どもについても、福祉事務所において保育所への優先入所を確保した結果、正社員としての就職が可能となったケース。
世帯構成  本人(35歳)と子ども(4歳)の2人世帯
本人の経歴  高卒後10年のデパート勤務を経て結婚。5年の専業主婦生活を経て離婚。
パソコンスキルはテンキー入力程度。
福祉事務所
とハローワー
クの支援
 15年ぶりの就職活動に当たって、毎回、ハローワークの同じ専任スタッフが履歴書の書き方や面接時の対応について助言するとともに、ハローワークの求人自己検索機の使い方や、相談者の意向を踏まえた求人情報の提供、就職先の提案を行う。
 また、子どもについても、福祉事務所において保育所への優先入所を確保した。
結 果  当初は、近隣で勤務時間と休日重視のパート勤務を希望していたが、こうした相談支援を受ける経過の中で、勤務時間や休日の条件を譲歩。最初に福祉事務所に来所してから約40日で、営業事務の正社員として採用。

養育費相談・支援センターの設置について


平成19年度に実施を予定している養育費相談に関する取組例

相談員

○ 法律専門家(大学教授、家庭裁判所調停委員)(千葉県)
○ 母子自立支援員OB(石川県)
○ 弁護士(熊本県、大阪市)
○ 司法書士(高知市)
○ 女性相談員(宮崎市

事業PR

○ 市町村児童扶養手当事務及び戸籍事務等関係部署と連携し、窓口での相談や離婚届を配布・受理する際に、養育費のリーフレットの配布やセンターの養育費相談員の情報を紹介する。(群馬県、大阪府、鳥取県、秋田市、宮崎市)

○ 養育費相談・支援事業のPRとして、福祉事務所や関係機関のほか、公営住宅や公民館、スーパー等にチラシを設置してもらう。(千葉県)

○ ホームページ、携帯サイトなどによるPRを行う。(鳥取県)

研修

○ 養育費についての相談機能の充実のため、母子自立支援員や養育費相談員等に対して、養育費取り決めや履行確保に関する研修会を実施する。(群馬県、大阪府)

○ 母子自立支援員や婦人相談員等を対象とし、養育費に関する研修を実施する。(奈良県)

○ 家庭裁判所職員を講師とする養育費の取り決めや履行確保に関する研修会を、母子自立支援員を含めて実施する。(山口県)

○ センター就業相談員、母子自立支援員等に対し、弁護士による養育費や離婚にかかわる研修を実施する。(大阪市)

○ 母子自立支援員や窓口業務に携わる職員に対して、養育費取り決め等に関する研修会を実施する。(宮崎市)

相談・支援の実施方法

○ センターに来所した相談者に、養育費確保までの手続き等の説明を実施し、場合によっては家庭裁判所へ同行するなど、必要な支援を行う。(群馬県、山口県、秋田市)

○ 離婚前のDV被害者で、離婚を希望しても離婚手続困難な者は、DV関係専門機関(婦人相談所やDV支援団体)につなぐ。(栃木県)

○ 就労している人でも相談を受けやすいように、土曜日または日曜日に開催する。(千葉県)

○ 養育費についての相談機能の充実のため、母子自立支援員や母子自立支援プログラム策定員等と情報交換を行うなど、連携を図る。(山梨県)

○ 静岡県においては、センターを静岡市、浜松市とともに共同で設置しており、本所と支所(3か所)で事業を実施しているが、養育費相談員は、本所に常駐させることとし、養育費相談及び支援を専門に行う予定。体制としては、本所において専任職員が電話、来所による相談を直接受け付けるとともに、支所においても一次的な電話、来所相談を受け、必要に応じて本所専任職員につないで対応する。専任職員は、相談、支援(役所等への同行、養育費相談・支援センターとの連携など)の他に養育費のリーフレット等の作成、配付など普及啓発活動も併せて実施する予定。(静岡県、静岡市、浜松市)

○ 養育費の相談は離婚前のタイミングが効果的なため、離婚前相談も実施する。(大阪府、宮崎市)

○ 休日にデパートなど人の集まりやすい場所で相談会開催。(鳥取県)

○ 県内巡回相談の実施回数を増やし、センター相談員が就業相談に加え、養育費相談も実施する。(山口県)

○ 直接窓口に来られない場合は、メールや電話での相談も受け付ける旨を県ホームページや新聞・広報誌で周知し、相談者が利用しやすい環境を整える。(宮崎県)

○ センターにおいて、生活相談を兼務する就業相談員(大阪市福祉職OBで児童相談所や福祉事務所で福祉行政の従事経験者)が、離婚後の養育費相談のみでなく、離婚前相談として養育費等相談も実施する。(大阪市)


児童扶養手当の一部支給停止について

○ 平成14年の母子及び寡婦福祉法等の改正の際に、児童扶養手当について、離婚後等の生活の激変を一定期間内で緩和し、自立を促進するという趣旨で見直す観点から、就労支援施策等の化を図ることとあわせて、平成20年4月から支給期間と手当額の関係を見直すこととされた。

児童扶養手当の一部支給停止について

○ 平成20年4月以降、受給期間が5年(支給事由発生から7年)を超える場合には、政令で定めるところにより、それまでの支給額の2分の1を超えない範囲で支給停止(減額)を行う。
給付額について、少なくとも2分の1は保障

○ ただし、自立が困難なケースが想定されることから、

・ 3歳未満の児童を育てている場合には、3歳までの期間は5年の受給期間に含めない取扱いとする。

8歳未満の児童を育てている場合は、一部支給停止の対象外

・ 障害を有する場合などは、一部支給停止の対象外

今後の検討

○ 今後、年末の予算編成に向けて、支給停止する額などについて、検討。その際、法改正時の附帯決議に基づき、就業支援の状況等を踏まえるとともに、母子福祉団体など幅広く関係者の意見を聞く予定。


児童扶養手当一部支給停止措置に関する今後のスケジュール(案)

  自治体
平成19年    
6月頃 ・就業実績等の国会報告(母子家庭白書)  
    ・現況届配布時などに児童扶養手当一部支給停止について
 受給者へ周知
8月頃 ・平成20年度予算概算要求 ・現況届受理
  ・全国母子世帯等調査等の結果  
12月 ・一部支給停止措置の内容決定  
20年    
1月   ・児童扶養手当支払いシステムの改修スタート
2月頃   ・受給者に一部支給停止措置の具体的内容を周知
    ・一部支給停止の対象外となる受給者の申請手続き・審査
4月   ・随時払いについて一部支給停止措置スタート
8月   ・一部支給停止措置適用後の最初の定時払い
    ・現況届提出

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