労働安全衛生法等の一部を改正する法律案要綱
第一  労働安全衛生法の一部改正
 事業者の行うべき調査等
(一)  事業者は、建設物、設備、作業等の危険性又は有害性等を調査し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるように努めなければならないものとすること。ただし、危険性又は有害性等のある化学物質等に係る調査以外の調査については、製造業等の業種に属する事業者に限るものとすること。(第二十八条の二第一項関係)
(二)  厚生労働大臣は、(一)の措置に関して、必要な指針を公表するものとすること。(第二十八条の二第二項関係)
(三)  厚生労働大臣は、(二)の指針に従い、事業者に指導、援助等を行うことができるものとすること。(第二十八条の二第三項関係)
 製造業等の元方事業者等の講ずべき措置
(一)  製造業等の事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、作業間の連絡及び調整その他必要な措置を講じなければならないものとすること。(第三十条の二第一項関係)
(二)  分割発注のため(一)の措置を講ずべき者が二以上あるときは、発注者等は、(一)の措置を講ずべき者として一人を指名しなければならないものとすること。(第三十条の二第二項関係)
 化学物質等を製造し、又は取り扱う設備の改造等の仕事の注文者の講ずべき措置
 化学物質等を製造し、又は取り扱う設備で政令で定めるものの改造その他の厚生労働省令で定める作業に係る仕事の注文者は、当該物について労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならないものとすること。(第三十一条の二関係)
 化学物質等に係る表示及び文書交付制度の改善
(一)  危険を生ずるおそれのある物で政令で定めるものを、その譲渡又は提供に際して容器又は包装に名称等を表示しなければならない物に追加するとともに、容器又は包装に表示しなければならないものとして、当該物を取り扱う労働者に注意を喚起するための標章で厚生労働大臣が定めるものを追加等すること。(第五十七条第一項関係)
(二)  危険を生ずるおそれのある物で政令で定めるものを、その譲渡又は提供に際して相手方にその名称等を文書の交付等の方法により通知しなければならない物に追加すること。(第五十七条の二第一項関係)
 健康診断実施後の措置等
(一)  労働安全衛生法第六十六条の四の規定による医師又は歯科医師の意見の衛生委員会等への報告を健康診断の実施後に講ずべき措置として明記すること。(第六十六条の五第一項関係)
(二)  特殊健康診断を受けた労働者に対するその結果の通知について、一般健康診断の結果の通知と同様にこれを行わなければならないものとすること。(第六十六条の六関係)
 面接指導等
(一)  事業者は、その労働時間の状況等が厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならないものとすること。(第六十六条の八第一項関係)
(二)  労働者は、(一)の面接指導を受けなければならないものとすること。ただし、事業者の指定した医師以外の医師が行う(一)の面接指導に相当する面接指導を受け、その結果を事業者に提出したときは、この限りでないものとすること。(第六十六条の八第二項関係)
(三)  事業者は、面接指導の結果の記録、面接指導の結果に基づく必要な措置についての医師の意見の聴取、その必要があると認める場合の作業等の変更、医師の意見の衛生委員会等への報告等の措置を講じなければならないものとすること。(第六十六条の八第三項から第五項まで関係)
(四)  面接指導の実施に従事した者は、知り得た労働者の秘密を漏らしてはならないものとすること。(第百四条関係)
(五)  事業者は、(一)の面接指導を行う労働者以外の労働者で健康への配慮が必要なものについて、必要な措置を講ずるように努めなければならないものとすること。(第六十六条の九関係)
 計画の届出の免除
 一の(一)に定める措置その他の厚生労働省令で定める措置を講じているものとして、労働基準監督署長が認定した事業者について、労働安全衛生法第八十八条第一項又は第二項の規定による建設物又は機械等の設置等の計画の届出義務を免除すること。(第八十八条第一項及び第二項関係)
 教習及び技能講習制度の見直し
 「地山の掘削作業主任者技能講習」と「土止め支保工作業主任者技能講習」との統合、「ボイラー据付け工事作業主任者技能講習」の廃止、「特定化学物質等作業主任者技能講習」から「石綿作業主任者技能講習」の分離等の見直しを行うこと。(別表第十七及び第十八関係)
 その他
(一)  罰則に関し所要の改正を行うこと。
(二)  その他所要の規定の整備を行うこと。
第二  労働者災害補償保険法の一部改正
 通勤災害保護制度における通勤の範囲の見直し
 就業の場所から他の就業の場所への移動及び住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)を通勤災害保護制度における通勤に含めるものとすること。(第七条第二項及び第三項関係)
第三  労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正
 有期事業に係るメリット制(事業場ごとの災害率による保険料の調整)の見直し
 事業場ごとの災害率による保険料の調整幅の最高限度を、有期事業について四十パーセント(現行三十五パーセント)に拡大すること。(第二十条第一項関係)
第四  労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部改正
 題名
 題名を「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」に改めること。(題名関係)
 目的
 法の目的を「我が国における労働時間等の現状及び動向にかんがみ、労働時間等設定改善指針を策定するとともに、事業主等による労働時間等の設定の改善に向けた自主的な努力を促進するための特別の措置を講ずることにより、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、もって労働者の健康で充実した生活の実現と国民経済の健全な発展に資すること」に改めること。(第一条関係)
 定義
 この法律において、「労働時間等」とは労働時間、休日及び年次有給休暇その他の休暇をいい、「労働時間等の設定」は労働時間、休日数、年次有給休暇を与える時季その他の労働時間等に関する事項を定めることをいうものとすること。(第一条の二関係)
 事業主等の責務
 一及び二の改正に伴い、事業主等の責務を次のように改めること。
(一)  事業主は、その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業の時刻の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならないものとすること。(第二条第一項関係)
(二)  事業主は、労働時間等の設定に当たっては、労働時間等に関する実情等に照らして、健康の保持に努める必要があると認められる労働者に対して、休暇の付与等に努めるほか、子の養育又は家族の介護を行う労働者、単身赴任者、自ら職業に関する教育訓練を受ける労働者等の特に配慮を必要とする労働者について、その事情を考慮する等その改善に努めなければならないこと等とすること。(第二条第二項関係)
(三)  事業主の団体は、その構成員である事業主の雇用する労働者の労働時間等の設定の改善に関し、必要な助言、協力その他の援助を行うように努めなければならないものとすること。(第二条第三項関係)
 労働時間等設定改善指針
(一)  国が策定するものとされていた労働時間短縮推進計画に代えて、厚生労働大臣が、四に定める事項に関し、事業主等が適切に対処するための指針(以下「労働時間等設定改善指針」という。)を定めるものとすること。(第四条第一項関係)
(二)  厚生労働大臣は、従前の労働時間短縮推進計画を策定する場合と同様に、労働時間等設定改善指針を定める場合には、関係行政機関の長と協議し、都道府県知事の意見を求めるとともに、労働政策審議会の意見を聴かなければならないものとすること。(第四条第二項関係)
 労働時間等の設定の改善の実施体制の整備
 事業主は、労働時間短縮の実施体制の整備に代えて、労働時間等の設定の改善に関する事項を調査審議し、事業主に意見を述べることを目的とする委員会を設置する等必要な体制の整備に努めなければならないものとすること。(第六条関係)
 労働時間等設定改善委員会の決議に係る労働基準法の適用の特例等
(一)  「労働時間短縮推進委員会」を「労働時間等設定改善委員会」に改め、労働時間等設定改善委員会における決議について、従前の労働時間短縮推進委員会における決議と同様に労使協定に代えることができること等とすること。(第七条第一項関係)
(二)  労働時間等設定改善委員会が設置されていない事業場において、事業主が労働者の過半数で組織する労働組合等との書面協定に基づき、一定の要件に適合する労働安全衛生法に規定する衛生委員会(同法に規定する安全衛生委員会を含む。以下同じ。)に、事業場における労働時間等の設定の改善に関する事項を調査審議させ、事業主に意見を述べさせることとしたときは、当該衛生委員会を労働時間等設定改善委員会とみなして、その決議を労使協定に代えることができること等とすること。(第七条第二項関係)
 労働時間等設定改善実施計画
 「労働時間短縮実施計画」を「労働時間等設定改善実施計画」に改め、従前の労働時間短縮実施計画と同様に、同一の業種に属する二以上の事業主は、共同して、労働時間等設定改善実施計画を作成し、厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣の承認を受けることができること等とすること。(第八条から第十一条まで関係)
 労働時間短縮支援センターの廃止
 指定法人である労働時間短縮支援センターを廃止すること。(現行第五章及び第六章関係)
 法の廃止期限の削除
 法を平成十八年三月三十一日までに廃止するものとする規定を削除すること。(現行附則第二条関係)
第五  その他
 施行期日
 この法律は、平成十八年四月一日から施行するものとすること。ただし、第一の四は平成十八年十二月一日から、第四の十は公布の日から施行するものとすること。(附則第一条関係)
 経過措置
(一)  平成二十年三月三十一日までの間における第一の六の適用については、労働安全衛生法第十三条第一項の政令で定める規模の事業場に限るものとすること。(附則第二条関係)
(二)  (一)に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置を定めること。(附則第三条から第十二条まで関係)
 関係法律の整備
 その他関係法律について、所要の規定の整備を行うこと。(附則第十四条及び第十五条関係)

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