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都道府県知事 政令市長 特別区長 |
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公衆浴場法第3条第2項並びに旅館業法第4条第2項及び同法施行令第1条に基づく条例等にレジオネラ症発生防止対策を追加する際の指針について |
近年、公衆浴場を発生源とするレジオネラ症の事故が度々起きており、公衆浴場等の安全性に対する社会的な関心が高まりつつあることを背景に、一部の自治体では、標記条例及びこれに基づく規則(以下「条例等」という。)にレジオネラ症発生防止対策を盛り込むことを検討していると承知している。
当職としては、これまでの集団発生事例に鑑み、条例等へのレジオネラ症発生防止対策の追加は、営業許可に際してレジオネラ症発生防止の観点から十分に審査し得ること、さらに、営業の停止及び許可の取消といった行政処分及び行政指導を行う際にも、明確な根拠をもって対応できることから、有用と判断している。
そこで、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項に基づく技術的助言として、別紙のとおり、公衆浴場法(昭和23年法律第139号)第3条第2項に基づく入浴者の衛生に必要な措置の基準並びに旅館業法(昭和23年法律第138号)第4条第2項に基づく宿泊者の衛生に必要な措置の基準及び同法施行令(昭和32年政令第152号)第1条に基づく構造設備の基準に係る条例等に、レジオネラ症発生防止対策を盛り込むに当たっての指針を作成したので参考にされたい。
なお、公衆浴場業及び旅館業以外の施設を含めた包括的なレジオネラ症発生防止対策に関する条例等を制定することについて、妨げるものではないことを念のため申し添える。
公衆浴場法3条第2項並びに旅館業法第4条第2項及び同法施行令第1条に基づく条例等にレジオネラ症発生防止対策を追加する際の指針 |
1 | 本指針の性格 本指針は、公衆浴場法(昭和23年法律第139号)第3条第2項に基づく入浴者の衛生に必要な措置の基準並びに旅館業法(昭和23年法律第138号)第4条第2項に基づく宿泊者の衛生に必要な措置の基準及び同法施行令(昭和32年政令第152号)第1条に基づく構造設備の基準に係る条例及びこれに基づく規則(以下「条例等」という。)に、レジオネラ症発生防止対策を盛り込むことを想定して、考え方及び条例等の例文を示したものであり、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項に基づく技術的助言である。 また、この指針は、指針に記載した措置以外に独自の事項を条例等に追加することについて妨げるものではない(例えば、条例においてレジオネラ属菌の自主検査結果の公表を営業者に義務付ける措置等)。 なお、条例等の制定後、当該条例等の条項に違反し、入浴者や宿泊者の衛生等に必要な措置を講じず、かつ、レジオネラ症発生の危険性のある営業者に対しては、営業の停止等の措置を講じることができ、このような行政上の命令に違反したり、必要な報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は行政庁の検査を拒み、妨害等の行為を行った営業者には、公衆浴場法及び旅館業法に基づく罰則の対象ともなり得ることを念のため申し添える。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2 | 入浴施設におけるレジオネラ症発生防止対策の基本的考え方 近年、入浴施設では、湯水の節約を行うため、レジオネラ属菌の供給源となりやすいろ過装置を中心とする設備、湯水を再利用するため一時的に貯留する槽(タンク)及びそれらの設備をつなぐ配管を伴い、複雑な循環系を構成することが多くなっている。また、昨今の温泉による健康づくりを背景として、温泉水を利用する設備もますます増加し、浴室内では湯を豊富に見せるための演出や露天風呂、ジャグジーや打たせ湯の設置など様々な工夫により、入浴者を楽しませる設備が附帯されるようになってきた。 これらの入浴施設は、衛生管理及び構造設備上の配慮が欠けていると、レジオネラ属菌の繁殖の原因になりやすく、また、循環水の微粒子(エアロゾル)を通じてレジオネラ属菌感染の原因ともなりやすい。これまでのレジオネラ症の発生事例を踏まえると、
レジオネラ属菌は、自然環境中に生息する細菌であるため、入浴者の体表に付着したり、土ぼこり及び露天風呂等から浴槽水を汚染しやすいと考えられる。また、温泉水等を利用する施設で一時的に湯を貯留する設備を設けると、それが微生物に汚染されやすい。これらの設備は土ぼこりが入りにくくし、清掃や消毒を十分行われなければならない。 循環系では、入浴者の体表から各種の有機質が常に浴槽水に補給され、これらを栄養源として、ろ過器のろ材表面(ろ材が多孔性の場合にはその内部を貫通するトンネル内)とろ過器の内壁面はもちろん、浴槽や循環配管の内壁、配管の継ぎ手等に定着して微生物が定着・増殖する。その菌体表面に生産された大量の多糖類は膜(生物膜)を作り、微生物はその中に埋もれて増殖する。レジオネラ属菌などの病原微生物はこの生物膜の内部で増殖し、しかも外界からの不利な条件(塩素剤等の殺菌剤)から保護されている。また、遊離残留塩素は、人間のあか等の汚染物、ろ過器や循環配管に定着する生物膜と接触することにより消費されるため、ろ過器や配管内の壁面が汚れている場合は、塩素剤による衛生管理が困難となる。そのため、レジオネラ属菌を制御するには単に浴槽水に塩素剤等を加えれば良いというものではなく、常にその支持体となっている生物膜の発生を防止するための措置を行うこと、さらに生物膜を念頭に置き、生物膜の形成を認めたならば直ちにそれを除去することが必須である。この点から、ろ過器の前に消毒剤を入れなかったり、多孔質のろ材(多孔質のろ材砕石を「砂」と称して使用することも含む。)でろ過器に微生物を繁殖させて湯水を浄化する方式(いわゆる生物浄化方式)の循環式浴槽は、好ましくない。 浴室においては、エアロゾルの発生をできるだけ抑え、汚染された湯水による感染の機会を減らすことも重要である。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3 | 入浴施設におけるレジオネラ症防止対策にかかる条例等の例文 条例等の構成は、各自治体により異なるので、何を条例に盛り込むか、何を細則又は通知等に盛り込むかは、各自治体で考慮すべきである。本例文は、用語の定義、衛生に必要な措置及び構造設備上の措置を条例に、水質基準等を規則に盛り込む場合を想定したものである。 また、本例文は、旅館業法の法体系に配慮し、便宜上、衛生に必要な措置及び構造設備の基準に分けている。公衆浴場法に基づく場合には、特に、構造設備の基準に関し、同法第2条第2項にいう「構造設備が、公衆衛生上不適当である」か否かの判断の基準たる表現ぶりにする必要がある。 (1)用語の定義
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