GC/MSによる農薬等の一斉試験法(農産物)
1.分析対象化合物
別表参照
2.装置
ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC/MS)
3.試薬、試液
次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。
0.5 | mol/Lリン酸緩衝液(pH7.0) リン酸水素二カリウム(K2HPO4)52.7g及びリン酸二水素カリウム(K2HPO4)30.2gを量り採り、水約500 mLに溶解し、1mol/L水酸化ナトリウム又は1mol/L塩酸を用いてpHを7.0に調整した後、水を加えて1Lとする。 |
各 | 農薬等標準品 各農薬等の純度が明らかなもの。 |
4.試験溶液調製法
1)抽出
(1)穀類、豆類及び種実類の場合
試料10.0gに水20 mLを加え、15分間放置する。
これにアセトニトリル50 mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物にアセトニトリル20 mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。得られたろ液を合わせ、アセトニトリルを加えて正確に100 mLとする。
抽出液20 mLを採り、塩化ナトリウム10g及び0.5 mol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)20 mLを加え、10分間振とうする。静置した後、分離した水層を捨てる。
オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム(1,000 mg)にアセトニトリル10 mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに上記のアセトニトリル層を注入し、さらに、アセトニトリル2mLを注入して、全溶出液を採り、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。残留物にアセトニトリル及びトルエン(3:1)混液2mLを加えて溶かす。
(2)果実、野菜、ハーブ、茶及びホップの場合
果実、野菜及びハーブの場合は、試料20.0gを量り採る。茶及びホップの場合は、試料5.00gに水20 mLを加え、15分間放置する。
これにアセトニトリル50 mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物にアセトニトリル20 mL加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。得られたろ液を合わせ、アセトニトリルを加えて正確に100 mLとする。
抽出液20 mLを採り、塩化ナトリウム10g及び0.5 mol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)20 mLを加え、振とうする。静置した後、分離した水層を捨てる。アセトニトリル層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。残留物にアセトニトリル及びトルエン(3:1)混液2mLを加えて溶かす。
2)精製
グラファイトカーボン/アミノプロピルシリル化シリカゲル積層ミニカラム(500 mg/500 mg)に、アセトニトリル及びトルエン(3:1)混液10 mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに1)で得られた溶液を注入した後、アセトニトリル及びトルエン(3:1)混液20 mLを注入し、全溶出液を40℃以下で1mL以下に濃縮する。これにアセトン10 mLを加えて40℃以下で1mL以下に濃縮し、再度アセトン5mLを加えて濃縮し、溶媒を除去する。残留物をアセトン及びn-ヘキサン(1:1)混液に溶かして、正確に1mLとしたものを試験溶液とする。
5.検量線の作成
各農薬等の標準品について、それぞれのアセトン溶液を調製し、それらを混合した後、適切な濃度範囲の各農薬等を含むアセトン及びn-ヘキサン(1:1)混液溶液を数点調製する。それぞれ2μLをGC/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。
6.定量
試験溶液2μLをGC/MSに注入し、5の検量線で各農薬等の含量を求める。
7.確認試験
GC/MSにより確認する。
8.測定条件
GC/MS
カ | ラム:5%フェニル-メチルシリコン 内径 0.25 mm、長さ 30m、膜厚 0.25μm |
カ | ラム温度:50℃(1分)−25℃/分−125℃(0分)−10℃/分−300℃(10分) |
キャリヤーガス:ヘリウム
イオン化モード(電圧):EI(70 eV)
主なイオン(m/z):別表参照
保持時間の目安:別表参照
9.定量限界
別表参照
ただし、別表は測定限界(ng)の例を示したものである。
10.留意事項
1)試験法の概要
各農薬等を試料からアセトニトリルで抽出し、塩析で水を除いた後、果実、野菜等についてはそのまま、穀類、豆類及び種実類についてはオクタデシルシリル化シリカゲルミニカラムで精製後、いずれもグラファイトカーボン/アミノプロピルシリル化シリカゲル積層ミニカラムで精製し、GC/MSで測定及び確認する方法である。
2)注意点
(1) | 別表は本法を適用できる化合物を五十音順に示したものであるが、規制対象となる品目には本法を適用できない代謝物等の化合物が含まれる場合があるので留意すること。また、保持時間の異なる異性体は、化合物名欄に個別に示した。また、分析中に生成する分解物を測定している場合は、「分解物」と表記した。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(2) | 本試験法は別表に示した全ての化合物の同時分析を保証したものではない。化合物同士の相互作用による分解等及び測定への干渉等のおそれがあるため、分析対象とする化合物の組み合わせにおいてあらかじめこれらの点を検証する必要がある。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(3) | 装置にはガスクロマトグラフ・タンデム型質量分析計(GC/MS/MS)の使用も可能である。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(4) | リン酸緩衝液の調製には、ナトリウム塩を使用してもよい。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(5) | アセトニトリル抽出液に添加する塩化ナトリウム(10g)が多すぎる場合は、減らしてもよいが、十分に飽和する量を加える。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(6) | 濃縮し、溶媒を完全に除去する操作は、窒素気流を用いて穏やかに行う。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(7) | 正確な測定値を得るためには、マトリックス添加標準溶液又は標準添加法を用いることが必要な場合がある。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(8) | 定量限界は、使用する装置、試験溶液の濃縮倍率及び試験溶液注入量により異なるので、必要に応じて最適条件を検討する。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(9) | 抹茶以外の茶について、次の表の第1欄に掲げる農薬を試験する場合は、同表第2欄に掲げる個別試験法により分析すること。
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11.参考文献
1)Fillion, J.ら,J.AOAC Int,83,698〜713(2000)
12.類型
C