カルボスルファン、カルボフラン、フラチオカルブ及びベンフラカルブ試験法(農産物)

1.分析対象化合物
農薬等の成分である物質 分析対象化合物
カルボスルファン カルボスルファン
カルボフラン
2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-3-ヒドロキシ-7-ベンゾフラニル -メチルカルバマート(以下「3OH-カルボフラン」という)
3OH-カルボフラン配糖体
カルボフラン カルボフラン
3OH-カルボフラン
3OH-カルボフラン配糖体
フラチオカルブ フラチオカルブ
カルボフラン
3OH-カルボフラン
3OH-カルボフラン配糖体
ベンフラカルブ ベンフラカルブ
カルボフラン
3OH-カルボフラン
3OH-カルボフラン配糖体

2.装置
 アルカリ熱イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(GC-FTD)又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ(GC-NPD)
 ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC/MS)

3.試薬、試液
 次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。
 5%含水シリカゲル カラムクロマトグラフィー用シリカゲル(粒径63〜200μm)を130℃で12時間以上加熱した後、デシケーター中で放冷する。これに5%含水となるよう水を加える。
 グラファイトカーボンミニカラム(500 mg) 内径12〜13 mmのポリエチレン製のカラムに、 グラファイトカーボン500 mgを充てんしたもの又はこれと同等の分離特性を有するもの。
 リン酸緩衝液(pH8) 1/15 mol/Lのリン酸緩衝液(pH8)
 カルボスルファン標準品 本品はカルボスルファン99%以上を含む。
 カルボフラン標準品 本品はカルボフラン99%以上を含み、融点は153〜154℃である。
 フラチオカルブ標準品 本品はフラチオカルブ99%以上を含む。
 ベンフラカルブ標準品 本品はベンフラカルブ99%以上を含む。
 3OH-カルボフラン標準品 本品は3OH−カルボフラン99%以上を含む。

4.試験溶液の調製
1)カルボスルファン、カルボフラン、フラチオカルブ及びベンフラカルブ試験溶液
(1) 抽出
a.穀類、豆類及び種実類の場合
 試料10.0gを量り採り、0.1 mol/L硝酸銀溶液2mL及びリン酸緩衝液(pH8)20 mLを加え、2時間放置する。
 これにアセトン100 mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、アセトン50 mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。ろ液を合わせ、アセトンを加えて正確に200 mLとする。この100 mLを採り、40℃以下で約20 mLに濃縮する。これに10%塩化ナトリウム溶液100 mLを加え、酢酸エチル及び-ヘキサン(1:1)混液100 mL及び50 mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。
  この残留物に-ヘキサン50 mLを加え、-ヘキサン飽和アセトニトリル50 mLずつで2回振とう抽出する。抽出液を合わせ、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物に酢酸エチル及び-ヘキサン(1:1)混液5mLを加えて溶かす。

b.果実、野菜、ハーブ、茶及びホップの場合
 果実、野菜及びハーブの場合は、検体約1kgを精密に量り、リン酸緩衝液(pH8)1,000 mLを加え、細切均一化する。検体20.0gに相当する量を量り採る。
 茶及びホップの場合は、試料5.00gを量り採り、リン酸緩衝液(pH8)20 mLを加え、2時間放置する。
 これに0.1 mol/L硝酸銀溶液2mL及びアセトン100 mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、アセトン50 mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過を行う。ろ液を合わせ、アセトンを加えて正確に200 mLとする。この100 mLを採り、40℃以下で約20 mLに濃縮する。これに10%塩化ナトリウム溶液100 mLを加え、酢酸エチル及び-ヘキサン(1:1)混液100 mL及び50 mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物に酢酸エチル及び-ヘキサン(1:1)混液5mLを加えて溶かす。

(2) 精製
a.グラファイトカーボンカラムクロマトグラフィー
 グラファイトカーボンミニカラム(500 mg)に酢酸エチル及び-ヘキサン(1:1)混液10 mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに(1)で得られた溶液を注入し、さらに、酢酸エチル及び-ヘキサン(1:1)混液15 mLを注入し、全溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物に酢酸エチル及び-ヘキサン(3:7)混液5mLを加えて溶かす。

b.アミノプロピルシリル化シルカゲルカラムクロマトグラフィー
 アミノプロピルシリル化シルカゲルミニカラム(360 mg)に酢酸エチル及び-ヘキサン(3:7)混液10 mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに a.で得られた溶液を注入し、さらに、酢酸エチル及び-ヘキサン(3:7)混液10 mLを注入し、全溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトンに溶解し、正確に2mL(穀類、豆類及び種実類の場合は1mL)としたものを試験溶液とする。

2)3OH-カルボフラン試験溶液
(1) 抽出
 穀類、豆類、種実類、茶及びホップの場合は、試料 5.00gを量り採り、0.25 mol/L塩酸150 mLを加え、冷却管を取り付け、1時間加熱還流する。
 果実、野菜及びハーブの場合は、検体約1kgを精密に量り、リン酸緩衝液(pH8)1,000 mLを加え、細切均一化する。検体10.0gに相当する試料に0.32 mol/L塩酸150 mLを加え、冷却管を取り付け、1時間加熱還流する。
 放冷後、冷却管を少量の水で洗い、洗液を加熱分解液に合わせ、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物を0.25 mol/L塩酸50 mLで洗い、ろ液を合わせ、これに塩化ナトリウム60gを加え、酢酸エチル及び-ヘキサン(1:1)混液100 mL及び50 mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物に酢酸エチル及び-ヘキサン(2:3)混液10 mLを加えて溶かす。

(2) 精製
 クロマトグラフ管(内径15 mm)に5%含水シリカゲル10gを酢酸エチル及び-ヘキサン(2:3)混液に懸濁させて充てんし、無水硫酸ナトリウム約5gを積層する。このカラムに、(1)で得られた溶液を注入し、流出液は捨てる。さらに、酢酸エチル及び-ヘキサン(2:3)混液120 mLを注入し、流出液は捨てる。次いで、同混液200 mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトンに溶解し、正確に2mL(穀類、豆類及び種実類の場合は1mL、茶及びホップの場合は4mL)としたものを試験溶液とする。

5.検量線の作成
 カルボスルファン、カルボフラン、フラチオカルブ及びベンフラカルブ標準品については、それぞれのアセトン溶液を調製し、それらを同一の割合で混合した後、それぞれ0.05〜1mg/Lアセトン溶液を数点調製する。3OH-カルボフラン標準品については、0.05〜1mg/Lアセトン溶液を数点調製する。それぞれ2μLをGCに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量
 試験溶液2μLをGCに注入し、5の検量線でカルボスルファン、カルボフラン、フラチオカルブ、ベンフラカルブ及び3OH-カルボフランの含量を求め、カルボフランについては、次式(1)により、3OH-カルボフランを含むカルボフラン含量を求める。
 カルボスルファン、フラチオカルブ及びベンフラカルブが検出された場合は、それぞれ次式(2)〜(4)により、カルボフラン及び3OH-カルボフランを含むカルボスルファン、フラチオカルブ及びベンフラカルブ含量を求める。
(1) カルボフラン(代謝物を含む)の含量=カルボフランの含量+3OH-カルボフランの含量×0.93
(2) カルボスルファン(代謝物を含む)の含量=カルボスルファンの含量+カルボフランの含量×1.72+3OH-カルボフランの含量×1.60
(3) フラチオカルブ(代謝物を含む)の含量=フラチオカルブの含量+カルボフランの含量×1.73+3OH-カルボフランの含量×1.61
(4) ベンフラカルブ(代謝物を含む)の含量=ベンフラカルブの含量+カルボフランの含量×1.85+3OH-カルボフランの含量×1.73

7.確認試験
 GC/MSにより確認する。

8.測定条件
1)GC
(1) カルボスルファン、カルボフラン、フラチオカルブ及びベンフラカルブの試験
 検出器:FTD又はNPD
 カラム:50%フェニル−メチルシリコン、内径0.53 mm、長さ15m、膜厚1μm
 カラム温度:180℃(5分)−15℃/分−250℃(5分)
 注入口温度:260℃
 検出器温度:280℃
 保持時間の目安: カルボフラン 4.5分、カルボスルファン 10分、フラチオカルブ 11.5分、ベンフラカルブ 12.5分

(2) 3OH-カルボフランの試験
 検出器:FTD又はNPD
 カラム:50%フェニル−メチルシリコン、内径0.53 mm、長さ15m、膜厚1μm
 カラム温度:200℃
 注入口温度:260℃
 検出器温度:280℃
 保持時間の目安:4.5分

2) GC/MS
(1) カルボスルファン、カルボフラン、フラチオカルブ及びベンフラカルブの試験
 カラム:5%フェニル−メチルシリコン、内径0.25 mm、長さ30m、膜厚0.25μm
 カラム温度:100℃(1分)−10℃/分−280℃(15分)
 注入口温度:250℃
 キャリヤーガス:ヘリウム
 イオン化モード(電圧):EI(70 eV)
 主なイオン(m/z):カルボフラン;221、164、149、カルボスルファン;323、160、118、フラチオカルブ;382、194、163、ベンフラカルブ;353、190、163
 注入量:1μL
 保持時間の目安:カルボフラン 11分、カルボスルファン 18分、フラチオカルブ 18.5分、ベンフラカルブ 19.5分

(2) 3OH-カルボフランの試験
 カラム:5%フェニル−メチルシリコン、内径0.25 mm、長さ30m、膜厚0.25μm
 カラム温度:100℃(1分)−10℃/分−280℃(15分)
 注入口温度:250℃
 キャリヤーガス:ヘリウム
 イオン化モード(電圧):EI(70 eV)
 主なイオン(m/z):180、147、137
 注入量:1μL
 保持時間の目安:8分

9.定量限界
 カルボスルファン、カルボフラン、フラチオカルブ、ベンフラカルブ、3OH-カルボフラン:各 0.01 mg/kg(茶及びホップの場合は、0.04 mg/kg)

10.留意事項
1) 試験法の概要
 本法はカルボスルファン等4農薬(カルボスルファン、カルボフラン、フラチオカルブ、ベンフラカルブ)及びそれらの共通の変化生成物である3OH-カルボフランを分析対象とした方法である。
 カルボスルファン等4農薬については、試料からアセトンで抽出し、酢酸エチル及び-ヘキサン混液に転溶する。果実、野菜、ハーブ、茶及びホップはそのまま、穀類、豆類及び種実類はアセトニトリル/ヘキサン分配で脱脂した後、グラファイトカーボンミニカラム及びアミノプロピルシリル化シリカゲルミニカラムにより精製し、GC-FTD又はGC-NPDで測定し、GC/MSで確認する方法である。
 3OH-カルボフランについては、作物中で配糖体として存在している可能性があるので、試料に塩酸を加えて加熱還流し、配糖体を3OH-カルボフランに加水分解する。酢酸エチル及び-ヘキサン混液に転溶した後、シリカゲルカラムにより精製し、GC-FTD又はGC-NPDで測定し、GC/MSで確認する方法である。

2)注意点
(1) カルボスルファン、フラチオカルブ及びベンフラカルブの各化合物は、加水分解を受けやすく、分析値も変動しやすいので、抽出から試験溶液の作成までを速やかに、かつ正確に行う必要がある。
(2) 各化合物は熱安定性が低いので、内径0.53 mmのカラムの使用が望ましい。
(3) カルボスルファン等4農薬の試験溶液の調製において、精製が不十分な場合は、シリカゲルカラム(5g)[試料溶液を負荷した後、酢酸エチル及び-ヘキサン(3:17)混液 80 mLで溶出]やオクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム (1,000 mg)[試料溶液を負荷した後、アセトニトリル及び水(3:7)混液10 mLで洗浄、アセトニトリル10 mLで溶出]による精製を追加するとよい。
(4) GC/MS測定では、食品の品目によっては感度が大幅に高まる場合がある。
(5) LC/MSを用いて測定する方法もあるので、概略を記す。抽出液の一部(0.2g相当)をリン酸緩衝液で希釈し、オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム(360 mg:メタノールで溶出)4)、グラファイトカーボンミニカラム(500 mg:アセトニトリル及びトルエン(3:1)混液で溶出)5)又はスチレンジビニルベンゼン共重合体ミニカラム(500 mg:テトラヒドロフランで溶出)6)で精製し、メタノール、アセトニトリル又はテトラヒドロフラン(2〜10 mL)に溶解し、試験溶液とする。

11.参考文献
)環境省告示第78号「カルボスルファン試験法」(昭和59年10月31日)
)環境省告示第45号「ベンフラカルブ試験法」(昭和61年10月28日)
)環境省告示第73号「フラチオカルブ試験法」(平成7年11月28日)
)東田ら、第29回日本農薬学会(2004年3月、神戸)
)東田、私信(2004年4月)
)藤田、私信(2004年5月)

12.類型
 C

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