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マレイン酸ヒドラジド試験法

 マレイン酸ヒドラジドの分析値には、試験法1注1)ではマレイン酸ヒドラジド、マレイン酸ヒドラジドグリコシド及びヒドラジンが含まれ、試験法2注2)ではマレイン酸ヒドラジド及びマレイン酸ヒドラジドグリコシドが含まれる。
 また、試験法1については、平成16年9月1日以前に告示で規定していた方法であり、試験法2については、文献を参考とした方法である。
 したがって、マレイン酸ヒドラジドの分析については、これまでの試験検査機関における試験実績を踏まえ、試験法1を優先して用いることとし、感度が得られない等、必要な場合に試験法2を用いること。

注1) 試験法1:平成4年厚生省告示第239号「マレイン酸ヒドラジド試験法」
注2) 試験法2:平成16年2月25日付け厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知「マレイン酸ヒドラジド試験法」


試験法1

1. 分析対象化合物
マレイン酸ヒドラジド、マレイン酸ヒドラジドグリコシド、ヒドラジン

2. 装置
 可視分光光度計及びヒドラジン蒸留装置を用いる。ヒドラジン蒸留装置はホウケイ酸ガラス製で,その概略は,次の図による。
A:水溜
B:窒素流入口
C:グラスウールテープ
D:温度計
E:温度測定管
F:蒸留フラスコ
G:冷却管
H:受器
I:ガラス製冷却浴
図

3. 試薬、試液
次に示すもの以外は, 総則の3に示すものを用いる。
発色試薬 p−ジメチルアミノベンズアルデヒド2gを1mol/l硫酸100mlに溶かす。

4. 標準品
マレイン酸ヒドラジド マレイン酸ヒドラジド(特級)を水で3回再結晶する。用時調製する。
分解点 本品の分解点は260°である。

5. 試験溶液の調製
検体約1kgを精密に量り,必要に応じ適量の水を量つて加え,細切均一化した後,検体5.00gに相当する量を300mlの蒸留フラスコに量り採り,シリコーン油1ml,水酸化ナトリウム50g及び水40mlを加える。温度測定管に,大豆油又は沸点の高い油1mlを入れ,温度計を入れる。上記の蒸留フラスコを加熱し,20秒ごとに揺り動かしながら水酸化ナトリウムを溶かす。水酸化ナトリウムを加えてから温度が160°に達するまでの時間が11〜15分となるように加熱を調整し,温度が160°に達した時点で加熱を中止し,放冷する。温度が140°になつた時点で上記の蒸留フラスコの接合部を乾いた布で拭き取り,乾燥させ,亜鉛5g及び塩化第一鉄0.5gを加え,直ちに接合部にグリースを薄く塗り,これをヒドラジン蒸留装置に取り付ける。50mlの受器に発色試薬4mlを入れ,冷却管の先端を受器の液中に浸し,受器を氷水で冷却する。窒素の流量を受器に毎秒3気泡が発生するように調整する。冷却管は氷水を流す。
上記の蒸留フラスコを加熱し,沸騰が始まり泡立つてきたら,泡が上記の蒸留フラスコの3分の2以上に沸き上がらないように加熱を調整する。
温度が173°に達した時点で,水をゆつくり滴下し,168°になつた時点で滴下を中止する。この操作を繰り返しながら蒸留を行い,留液35mlを採る。塩化第一鉄を加えてからこの操作を終了するまでの時間が15〜20分となるように一連の操作及び加熱を調整する。留液に濁りが生ずる場合には硫酸を2滴加え,振り混ぜる。この留液に水を加え,正確に40mlとして,これを試験溶液とし,10分以内に6.定量試験により定量する。

6. 定量試験
発色試薬4mlに水を加えて40mlとしたものを対照液として,試験溶液について波長430,460及び490nmにおける吸光度を測定し,次式により補正吸光度を求め,7.の検量線によつてマレイン酸ヒドラジドの含量を求める。
補正吸光度=B−((A+C)/2)
A:430nmにおける吸光度
B:460nmにおける吸光度
C:490nmにおける吸光度

7. 検量線の作成
マレイン酸ヒドラジド100mgを1,000mlのメスフラスコに量り採り,0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液を加えて1,000mlとする。
この液の0.2,0.4,0.6,0.8及び1.0mlを別々に量り採り,それぞれに0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液を加えて1.0mlとする。これらを,5.試験溶液の調製及び6.定量試験と同様に操作して,検量線を作製する。

8. 定量限界
0.2 mg/kg

9. 留意事項
なし

10. 参考文献
なし

11. 類型
A

試験法2

1. 分析対象化合物
マレイン酸ヒドラジド、マレイン酸ヒドラジドグリコシド(以下、配糖体という。)

2. 装置
 アルカリ熱イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(GC(FTD))又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ(GC(NPD))
 ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC/MS)

3. 試薬、試液
 次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。
 5%含水合成ケイ酸マグネシウム カラムクロマトグラフィー用に製造した合成ケイ酸マグネシウム(粒径150〜250μm)を130℃で4時間加熱した後、デシケーター中で放冷する。これに5%含水となるように水を加えて、密栓し、混合して24時間以上放置したもの。
 マレイン酸ヒドラジド標準品 本品はマレイン酸ヒドラジド99%以上を含む。

4. 試験溶液調製法
1)加水分解、メチル化
 試料2.0 gに2.4 mol/L塩酸20 mLを加え、冷却管を取り付け、沸騰水浴上で2時間加熱還流する。
 放冷後、これに10 mol/L水酸化ナトリウム溶液5 mLと硫酸ジメチル1mLを加え、発生するガスを時々抜きながら、室温で30分間振とうする。反応液を酢酸エチル50 mL及び30 mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトン・n−ヘキサン混液(1:4)1 mLを加えて溶かす。
2)精製
 クロマトグラフ管(内径15 mm)に5%含水合成ケイ酸マグネシウム10 gをn−ヘキサンに懸濁させて充てんし、上に無水硫酸ナトリウム約5 gを積層する。このカラムに、1)で得られた溶液を注入し、流出液は捨てる。さらに、アセトン・n−ヘキサン混液(1:4)50 mLを注入し、流出液は捨てる。次いで、アセトン・n−ヘキサン混液(1:4)70 mLを注入し、溶出液にキーパーとしてトルエン0.5 mLを加え、40℃以下で濃縮し、残留物をアセトンに溶解し、正確に1 mLとしたものを試験溶液とする。

5. 検量線の作成
 マレイン酸ヒドラジド標準品の1〜20 mg/L 0.1 mol/L塩酸溶液を数点調製し、それぞれ1 mLを採り、0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液25 mLと硫酸ジメチル1mLを加え、発生するガスを時々抜きながら、室温で30分間振とうする。反応液を酢酸エチル50 mL及び30 mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液にトルエン0.5 mLを加え、40℃以下で濃縮し、残留物をアセトンに溶解し、正確に1 mLとしたものを検量線用溶液とする。2 μLをGCに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6. 定量
試験溶液2 μLをGCに注入し、5の検量線でマレイン酸ヒドラジドの含量を求める。

7. 測定条件
GC
 検出器:FTD又はNPD
 カラム:50%フェニルーメチルシリコン 内径0.53 mm、長さ10 m、膜厚2.0 μm
 カラム温度:100℃−10℃/分−200℃
 注入口温度:200℃
 検出器温度:250℃
 キャリヤーガス:ヘリウム
 保持時間の目安:5分

8. 定量限界
0.5 mg/kg

9. 留意事項
1) 試験法の概要
 試料に塩酸を加えて加熱還流し、配糖体をマレイン酸ヒドラジドに加水分解する。マレイン酸ヒドラジドをアルカリ性下でメチル化した後、酢酸エチルで抽出する。5%含水合成ケイ酸マグネシウムカラムで精製し、GC(FTD)又はGC(NPD)で測定し、GC/MSで確認する方法である。
2) 注意点
(1) マレイン酸ヒドラジドジメチルの酢酸エチルによる抽出率は約30%である。そこでマレイン酸ヒドラジド標準品を試料と同様に操作したものを検量線用溶液として用いる。
(2) 本法の定量限界は0.5 mg/kgである。残留基準値がこれより低い作物においては、試料量を増やすことにより対応する。

10. 参考文献
なし

11. 類型
D(寺師朗子ら、食品衛生学雑誌、37、401-406(1996))


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