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テプラロキシジム試験法


1. 分析対象化合物
テプラロキシジム、5-OH-DP 〔2[1−(3−クロロプロプ−2−(E)−エン−1−イル)オキシイミノプロピル] −3,5−ジヒドロキシ−5−(テトラヒドロピラン−4−イル)シクロヘキス−2−エン−1−オン〕、DMP 〔ジメチル 3−(3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)グルタレート〕、OH−DMP 〔ジメチル 3−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)グルタレート〕

2. 装置
ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC/MS)
還流冷却器
ホットプレート付スターラー

3. 試薬、試液
次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。
過酸化水素水 過酸化水素水(30%、特級)
水酸化カルシウム 水酸化カルシウム(特級)
活性炭 化学分析用活性炭
DMP標準品 本品は、DMP 96%以上を含む。
OH-DMP標準品 本品は、OH-DMP 96%以上を含む。

4. 試験溶液調製法
1)抽出
 豆類及び種実類の場合は、試料10.0 gに水20 mLを加え、2時間放置する。野菜の場合は、試料20.0 gを量り採る。
 これに水・メタノール混液(1:4)150 mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に水・メタノール混液(1:4)150 mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過を行う。得られたろ液を合わせて、40℃以下で約30 mLまで濃縮する。これに水70 mLを加えた後、イソプロパノールを加えて300 mLとする。この150 mLに水酸化カルシウム5 gを加えて緩やかに振り混ぜた後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物をイソプロパノール・水混液(4:1)20 mLで洗い、洗液をろ液に合わせる。
2)酸化
 ろ液に水酸化カリウム1 gを加え、還流冷却管を装着し、ホットプレート付スターラー上で撹拌しつつ、加熱還流する。沸騰後、還流冷却管の上部から過酸化水素水3 mLを加え、10分間隔で過酸化水素水3 mLを加える操作をさらに3回繰り返した後、さらに30分間加熱還流する。
3)活性炭への吸着
 反応液を放冷後、塩化ナトリウム25 gを加え10分間撹拌する。飽和塩化ナトリウム溶液20 mLを加え、水層を分取する。イソプロパノール層に飽和塩化ナトリウム溶液50 mLを加え、5分間激しく振り混ぜた後、静置し、水層を分取する。水層を合わせ、塩酸5 mLを加えて50〜60℃で減圧濃縮し、イソプロパノールを除去する。
 析出した塩化ナトリウムが溶解するまで水を加えた後、活性炭2.5 gを加え、10分間激しく振り混ぜた後、吸引ろ過する。水200 mLでろ紙上の活性炭を洗った後、5分間吸引する。次いでn−ヘキサン100 mLでろ紙上の活性炭を洗った後、5分間吸引する。
4)メチルエステル化
 ろ紙及びろ紙上の活性炭を5 mm角に切断した後に、メタノール100 mL、硫酸20 mL、オルトギ酸トリメチル25 mL、ペルオキソ二硫酸カリウム2 gを加え、還流冷却管を装着し、ホットプレート付スターラー上で撹拌しつつ、加熱還流する。1時間沸騰後、速やかに吸引ろ過する。次いで、メタノール50 mLを用いてろ紙上の残留物を洗う。さらに、ギ酸・メタノール混液(1:9)50 mLずつを用いてろ紙上の残留物を2回洗う。これらのろ液、洗液を合わせ、水300 mLを加え、ジクロロメタン150 mLずつで2回振とう抽出する。この抽出液に飽和炭酸水素ナトリウム溶液50 mLを加え振とうし、水層は捨てる。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトン1 mLに溶かし、ヘキサン19 mLを加える。
5)精製
(1) 合成ケイ酸マグネシウムカラムクロマトグラフィー
 クロマトグラフ管(内径15 mm)にカラムクロマトグラフィー用合成ケイ酸マグネシウム10 gをn−ヘキサンに懸濁させて充てんし、上に無水硫酸ナトリウム約5 gを積層する。このカラムに4)で得られた溶液を注入し、流出液は捨てる。さらに、アセトン・n−ヘキサン混液(1:19)40 mLを注入し、流出液は捨てる。次いで、アセトン・n−ヘキサン混液(1:4)100 mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物を酢酸エチル1 mLに溶かし、n−ヘキサン19 mLを加える。
(2) シリカゲルカラムクロマトグラフィー
 シリカゲルミニカラム(1,000 mg)にn−ヘキサン5 mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに(1)で得られた溶液を注入し、流出液は捨てる。さらに、酢酸エチル・n−ヘキサン混液(3:17)10 mLを注入し、流出液は捨てる。次いで、酢酸エチル・n−ヘキサン混液(3:7)25 mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をエーテル1 mLに溶かし、n−ヘキサン19 mLを加える。
(3) アミノプロピルシリル化シリカゲルカラムクロマトグラフィー
 アミノプロピルシリル化シリカゲルミニカラム(1,000 mg)にn−ヘキサン5 mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに(2)で得られた溶液を注入し、流出液は捨てる。次いで、酢酸エチル・n−ヘキサン混液(3:7)10 mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトンに溶解し、豆類及び種実類の場合は正確に3 mL、野菜の場合は正確に6 mLとしたものを試験溶液とする。

5. 検量線の作成
 DMP及びOH-DMP標準品のアセトン溶液を別々に調製し、1:1の割合で混合した後、0.1〜2 mg/Lアセトン溶液を数点調製し、それぞれ2 μLをGC/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6. 定量
 試験溶液2 μLをGC/MSに注入し、5の検量線でDMP及びOH-DMPの含量を求め、次式により、5-OH-DP及びその他の関連化合物を含むテプラロキシジムの含量を求める。
     テプラロキシジム(5-OH-DP及びその他の関連化合物を含む)の含量
   = DMPの含量×1.40+OH-DMPの含量×1.31

7. 測定条件
GC/MS
 カラム:35%フェニル−メチルシリコン内径0.25 mm、長さ30 m、膜厚0.25 μm
 カラム温度:100℃(2分)−3℃/分−200℃−30℃/分−280℃
 注入口温度:250℃
 検出器温度:280℃
 キャリヤーガス:ヘリウム
 イオン化電圧:70 eV
 主なイオン:DMP m/z 213、182、168 OH-DMP m/z 175、155、143
 保持時間の目安:DMP 29分 OH-DMP 32分

8. 定量限界
 0.05 mg/kg

9. 留意事項
1) 分析値
 テプラロキシジム及び5−OH−DPをDMP及びOH−DMPにそれぞれ変換した後、DMP及びOH−DMPについてそれぞれ定量を行い、それぞれの含量に係数を乗じてテプラロキシジムの含量に換算し、これを分析値とすること。
2) 試験法の概要
 テプラロキシジム、5−OH−DP及びその関連の変化生成物のうち、酸化及びメチルエステル化の操作によりDMP及びOH−DMPとなるものを分析対象とした方法である。水・メタノール混液でテプラロキシジム、5−OH−DP及び変化生成物を同時に抽出、水酸化カルシウムで凝固処理後、酸化反応でこれらを3−(3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)グルタール酸(GP)及び3−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)グルタール酸(OH−GP)に変換する。さらにメチルエステル化によりGPをDMPに、OH−GPをOH−DMPに変換、液々分配、合成ケイ酸マグネシウムカラム、シリカゲルミニカラム 及びアミノプロピルシリル化シリカゲルミニカラムにより精製し、GC/MSでDMP及びOH−DMPを同時に測定する方法である。
3) 注意点
(1) 酸化反応について
 環境省告示試験法に従い、水酸化カリウム1 gを加えた後、酸化剤として30%過酸化水素水を用いて加熱還流する方法で酸化を行う。
 小林らは、水酸化カリウム1 gを加え、30%過酸化水素水3 mLを10分間隔で4回加えた場合、最も酸化効率が高く、さらに30分間加熱還流を続けることで過剰の過酸化水素を分解できたと報告している。ただし、酸化反応後の溶液のpHが11〜13であれば反応は順調に進行するが、pHがそれより低い場合は酸化反応が進行していない可能性が高いので、酸化反応後の溶液を少量取り、pH試験紙でpHを確認する。pHが低い場合は水酸化カリウム及び30%過酸化水素水を加えて酸化反応を再度行う。
(2) 塩析後のイソプロパノールの留去について
 イソプロパノールが残存すると、活性炭への吸着率が低下するため、完全に留去させる。イソプロパノールが完全に留去されたことの判断は、減圧濃縮器の冷却管に水滴が付着すること、フラスコ内に塩化ナトリウムが析出すること及びイソプロパノール臭がしなくなることなどから行う。
(3) 活性炭への吸着について
 環境省告示試験法に従い、酸化反応後の溶液を塩析させた後の水層に活性炭を加えて振とうすることで、GP及びOH−GPを活性炭に吸着させ、これを吸引ろ過及び洗浄する。
 小林らは、GP及びOH−GPは水溶性が高く、一般の有機溶媒に転溶することが困難であったため、酸化反応後の溶液を塩析及び濃縮操作で有機溶媒を完全に留去させ、活性炭を加えることで、GP及びOH−GPを吸着することができたと報告している。
 なお、水分が残存するとメチルエステル化反応率が低下するため、ろ過後の活性炭は完全に乾燥させる必要がある。
(4) メチルエステル化について
 環境省告示試験法に従い、活性炭にメタノール100 mLを加えた後、ペルオキソ二硫酸カリウム2 g、オルトギ酸トリメチル25 mL及び濃硫酸20 mLを加え、1時間加熱還流してメチルエステル化を行う。
 小林らは、活性炭に吸着させたGP及びOH−GPのうち、GPについては定量的にDMPに変換されるが、OH−GPについては変換率が低かったため、ペルオキソ二硫酸カリウム及びオルトギ酸トリメチルを加えることでGP及びOH−GPを定量的にDMP及びOH−DMPに変換できたと報告している。
 メチルエステル化後、活性炭を除去するために沸騰させた反応液を速やかに吸引ろ過しているが、冷却してしまうとDMP及びOH−DMPの回収率が低下するため、温度が高いうちに手早くろ過を行う。
(5) 試験溶液調製の途中で操作を中断する場合は、活性炭に吸着させ、乾燥させた状態で1晩、メタノールに浸漬させた状態で2日間置くことができる。又は飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄後に置くことができる。

10. 参考文献
1)平成12年環境庁告示第32号「テプラロキシジム試験法」
2)小林ら、第23回農薬残留分析研究会講演資料集、p.40-47、2000年8月

11. 類型
C


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