11/01/28 食品に関するリスクコミュニケーション −輸入食品の安全性確保に関する意見交換会−       開催日: 平成23年1月28日(金)       場 所: 星陵会館 ホール ○司会(大井) 皆様、お待たせいたしました。ただいまから食品に関するリスクコミ ュニケーション〜輸入食品の安全性確保に関する意見交換会〜を開催いたします。  本日は、お忙しい中、御参加いただきありがとうございます。  私は、本日司会役を務めさせていただきます、厚生労働省医薬食品局食品安全部企画 情報課の大井と申します。よろしくお願いいたします。  厚生労働省では毎年度、輸入食品監視指導計画を定め、重点的・効率的かつ効果的な 監視指導に取り組んでいるところですが、本日の意見交換会は輸入食品の安全性確保に 関する情報提供、各関係者からの講演と、会場の皆様を交えた意見交換を通じて、輸入 食品の安全性確保について理解を深めていただき、関係者の間での認識を共有していた だければと考えております。  それでは、まず、皆様にお配りしております配付資料の確認をお願いいたします。  資料1−1「平成23年度輸入食品監視指導計画(案)の概要」。  資料1−2「平成23年度輸入食品監視指導計画(案)」。  資料1−3「輸入食品の安全性確保について(厚生労働省)」  資料2「輸入食品の安全性確保〜課題と私たちの取り組み〜」  資料3「味の素グループの品質保証の取組(味の素株式会社)」  最後に、参考資料としまして「食品の安全確保に関する取組」のパンフレットを同封 しております。  また、今後の参考にさせていただくために、アンケート用紙を同封しております。御 協力をお願いいたします。お帰りの際に、受付で回収しております。  皆様、不足の資料はございませんでしょうか。もしありましたら、挙手をお願いいた します。担当の者が交換に参ります。また、会議中にお気付きになりましたら、その都 度担当の者にお知らせください。  そのほか、マイクの音量や部屋の暑い寒いがございましたら、担当スタッフまでお知 らせください。  続きまして、本日の進行について御紹介します。次第をごらんください。まず最初に、 輸入食品の安全性確保について、厚生労働省食品安全部から説明いたします。続きまし て、全国消費者団体連絡会事務局長、阿南様から輸入食品の安全性確保について、味の 素株式会社品質保証部品質保証推進グループ、谷本様から味の素グループの品質保証の 取り組みについて御講演いただきます。  講演終了後10分程度の休憩をとりまして、3時ぐらいから意見交換を行い、終了は午 後4時を予定しております。御協力のほど、よろしくお願いいたします。  それでは、講演を開始したいと思います。まず、1つ目の講演、厚生労働省食品安全 部監視安全課輸入食品安全対策室、道野室長から「輸入食品の安全性確保について」情 報提供いたします。 ○道野輸入食品安全対策室長 皆様こんにちは。今、紹介がありました、厚生労働省の 食品安全部輸入食品安全対策室長の道野と申します。よろしくお願いいたします。  お配りしている資料とパワーポイントはほとんど同じですので、その内容に沿って私 から輸入食品の安全性確保について、厚生労働省で講じている施策や最近の状況等につ いて御説明させていただきたいと思います。よろしくお願いします。 (PP)  食品輸入の現状から入りたいと思います。食品衛生法では、輸入食品に関して営業や 販売の目的で輸入されるものについて届出を輸入者に義務付けているわけです。これは 非常に長い期間のトレンドを示しているわけですが、昨年平成21年度の輸入実績、届出 実績から言いますと、全体で182万件、3,060万トンという数字になっています。  輸入の届出件数を簡単に補足しておきますと、輸入者ごとに輸入する食品ごと、製造 者ごと、アイテムごとに届けを出していただいています。届出については食品名や製造 者、製造者の所在地、原材料や製法といったかなり詳しい情報を輸入者から出していた だいているわけです。  一方で、この3,060万トンという数字については、そういった届出の合計ということ になりますけれども、申し上げたとおり、営業や販売を目的したものの輸入についての 規制ですので、個人使用やキャリーオンで持ってこられるようなものに関しては、食品 衛生法の規制の対象外ということになっているわけです。  件数は非常に多くなってきていて、重量は1.5倍ぐらいしか増えていないという傾向 にありますけれども、全般としては加工食品の割合が増えてきていて、もともと原材料 でバルクで輸入していたようなものが、だんだんと加工・半加工された食品もしくは製 品となったものとして輸入されるケースが増えてきていたり、それから、冷凍品という ことで持ってきたものについて高付加価値ということで生鮮品として、例えば、船で運 んでいたものが航空機に小分けして生鮮物として非常に高い価値のあるものとして輸入 されるというようなことで、件数が増えてきていると私どもは理解しております。  とにかく高齢化社会ということで、そんなに日本人の胃袋はどんどん広がっているわ けではなく、むしろ縮小傾向にあるわけですから、そういった意味で言うと、全体の重 量は長期的に見ると、このままの水準を今後も維持することは余りないのかなとは思い ますが、重量自体はそんなに大きく変わってきていないというトレンドだということが 御理解いただければと思います。 (PP)  輸入の状況ということで、どんなものが輸入されているかですが、やはり農産食品と いうことでトウモロコシや小麦、大豆、カノーラといったものが重量が大きいというこ とで、2,000万トン、全体の3分の2がそういった食品になっています。あとの残り3分 の1が、畜水産品、加工食品、飲料。あとは食品衛生法では食品に直接接触する器具や 容器・包装、器具というのは割烹具や食品の製造機械といったものがカテゴリーとして ありますし、容器・包装というのは食品を直接包んで受け渡しするようなものの分類に なるんですが、そういう食品を通じた衛生上の危害の発生防止ということで、そういっ たものが対象になっているわけです。  あと、おもちゃに関しては乳幼児の口への接触による健康被害を防止するという観点 から、乳幼児用のおもちゃについての規制も併せて、これは食品衛生法では準用という 形になっているんですけれども、規制しています。 (PP)  ここからが私どもの施策の内容となってくるわけですが、実施主体で分けたと言えば それまでかもしれないですが、大きく分けて輸出国の段階と輸入時、水際での対策、そ れから、勿論、国内に流通してからの対策という3つに分けて安全性のチェックなり、 確保なりをしていこうと対応しています。  1つは輸出国ということになるわけですけれども、従来国内のいろいろな御批判など も輸入時対策をしっかりしろということはかなり強く言われてきたわけですが、特に米 国産牛肉の問題であるとか、残留農薬の問題であるとか、基本的には輸入時というより は輸出国でないと食品の生産・製造・加工段階でないとチェックできないこともありま すし、担保できない安全性もあるわけです。そういった部分は非常に重要視されてきて いるということもございまして、輸出国段階での対策ということについて今から少し御 説明しようと思います。  輸出国における対策として、相手が政府ということになりますので、どうしても政府 中心になってくるわけです。1つは、生産・製造・加工段階での政府の規制もあります し、個別の事業者サイドの安全対策もあります。それから、政府間で証明書の発給とチ ェックもやっていまして、例えば、食肉加工品、食肉製品につきましては、日本の基準 に沿った処理をしていますよ、安全管理をしていますよという輸出国政府機関の発行す る衛生証明書がなければ、日本には輸入できないという制度になっています。そのほか に、フグなども種類や海域によって毒性が違いますので、そういったものの証明も輸出 国政府に求めています。  それから、国によってかなりさまざまですけれども、輸出側での輸出前の検査も行わ れています。  こういった内容について、日本側から働きかけて強化をしてもらう、適切な対応をし てもらおうということをやっていこうということです。そのツールとして、やはり二国 間での協議や、平成21年度から始めたんですけれども、輸出国のいろいろな関係制度の 調査もやっています。それから、二国間協議や制度調査のプロセスの中で相手国に行っ て、現地調査も併せてやるというような対応をしてきています。 (PP)  具体的な例を簡単に御説明しますと、平成21年度にアメリカ、カナダ、中国を対象に 調査したんですが、これはアメリカの例です。特にアメリカの農産食品の製造調査とい うことで、関係法令の邦訳が的確かどうかは別にして、食品関係のFDC Act(連邦食 品・医薬品・化粧品法)、そのほかに農薬規制関係の法律、日本で言うと畜場法に該当す るFederal Meat Inspection Actを和訳すると連邦食用獣肉検査法と書いてあります が、そういうものです。それから、家禽に関しては日本の食鳥検査法に該当するような もの。アメリカには別に卵の検査法もあります。  調査の対象機関は、こういった食品に関してはアメリカでも幾つかの役所が関係して います。農薬関係についてはEPA、食肉以外の食品についてはFDA、これは食品医 薬品局と書いてありますが保健省、日本で言う厚生労働省に該当するところです。それ から、農務省は販売促進局というところが、アメリカの基準プラス輸出のための証明を しようという、輸出のための上乗せ規制を担当している機関ですが、AMS。あと、農 務省の海外農務局、これ要は国際部みたいなところです。そういったところに対して調 査を行いました。あと、関係の業界団体。カリフォルニア州で調査をしたので、チェリ ーやストロベリーということになっています。  概要については、対日輸出食品の残留農薬に係る安全管理については、連邦政府、州 政府、関係事業者間で我が国の規制値・違反情報等について情報の共有が図られている と。これは、おおむねの話ですけれども。また、日本での残留基準違反に関して、米国 政府が関連する業界団体へ情報提供を行う仕組みが存在しています。これは日米協議の 中でこういう議論をしてできているんですけれども、これらの情報を活用することによ り、対日輸出農産物の安全管理を行っているということで、結論的に言うと、そんなに 日本と違った仕組みがあるわけではなくて、やはり農薬の使用規制と残留規制を基本的 に国がつくって、関係機関が個別の検査をやっていくという仕組みというのは変わりま せん。  ただ、そういった意味で、アメリカの残留農薬規制というのは日本と似通ったレベル であり、内容であると受け取めています。勿論、個別の基準で違うものはあります。ア メリカの方が緩いものもあれば、日本が緩いものもありますし、それはそれぞれの国内 事情があって、農薬というのはそれなりの効果、殺虫なり除草なりいろいろな効果を狙 って使うわけですから、それぞれ国の事情によって異なってくる場合は当然あるわけで すので、基準については必ずしも日米で同じではないわけです。 (PP)  それから、問題発生時、それぞれ個別問題に関係して原調査をやったり、二国間協議 をやったりといった実績です。カナダ、アメリカ、オーストラリア、この辺は食肉関係 です。特に、カナダ、アメリカについては過去5年間にわたって、アメリカ側の対日輸 出基準の遵守状況について、日本側からオーディットという形で現地調査をやっていま す。  タイに関しては、残留農薬の個別の食品で違反がある程度多いということで、タイ側 が対策を講じてきているものですから、その関係の評価ということでやっています。 (PP)  ベトナムに関しては、関係の業界の方はよく御承知だと思いますが、やはり残留医薬 品の問題はかなり長期的に続いているということもあって、この辺は丁寧に我々として もフォローしていきたいということで、ベトナムに関しても調査なり協議を行っていま す。  あと、大物の中国に関しては、もともと輸入量が非常に多いということもあって、こ ういった個別問題というのは実際に存在しています。年に2回、日本側が向こうに出か けていく場合と、東京に向こうが来る場合と、協議などもやっていますし、調査も実施 しています。 (PP)  次が輸入時の対策ですけれども、輸入時対策についてはかなり御承知の方も多いと思 いますので、少し簡単にやらせていただきます。厚生労働省の施設機関である検疫所は 全国に31か所窓口があるんですけれども、輸入の届出の審査をやっています。それぞれ の食品の違反の蓋然性といいますか、食品衛生法に違反する可能性が高いもの、低いも のと、それぞれの蓋然性に応じて検査をするということで対応してきているところです。  先ほど御紹介したとおり、届け出られた食品については一通り安全性にかかわる情報 ということで、製造者、原材料、製造加工法といったのものチェックは、すべての届出 について行っているわけです。 (PP)  検疫所の食品衛生監視員の推移ということで、これも従前からかなり厳しい御批判を いただいている輸入食品の検査体制が不十分ではないかといった声があったことが非常 に大きかったと思うんですけれども、こうやって毎年増員を図ることができています。 平成23年度の予算も非常に厳しいところではあるんですが、393名ということで、一応 10名増と。これは定員削減を含んだ数字ですので、定員削減をした上で10名増という ことなので、そういった意味で実質的な増員が何とか平成23年度予算案の中に含めるこ とができています。  ただ、なかなか財政事情が厳しいということもあって、勿論、民主党のマニフェスト の中でも輸入食品対策は強化していくということで出されているわけですが、こういっ た事情の中で何とか強化してきているという状況にあります。 (PP)  検査の考え方ですけれども、食品衛生法で、例えば国内の事業者さんに対する規制と いうのは、34のリスクが高いと判断される営業に関しては知事等の事前許可が必要です。 それ以外の食品は原則フリーで、事後の検査という仕組みになっています。  輸入品については、すべて届出ということになっていて、国内産の食品でも例えば販 売前に検査をしなければならないものはないわけですけれども、輸入品についても届出 を受け付けて、内外の規制のバランスをとっているわけです。輸入の場合は、届出の情 報に基づいて勿論、過去の違反といったものも含めてですけれども、輸入される食品の 違反の蓋然性を判断して、勿論、高いものについては検査率を上げていくというような 仕組みでやっています。  例えば、モニタリング検査というのはランダムチェックで怪しい食品を探しましょう と。怪しいということになれば検査命令ということで、これは事業者負担で検査をやっ ていただくと。原則こういった検査命令の場合は対象食品は全ロット検査ということに なるわけです。勿論、検査命令でもコントロールできないものに関しては、輸入禁止も 法律に基づいてとることできます。  こういったカテゴリーの違う食品の検査の実績を足し上げると、全部で23万件と。そ れから、説明し忘れましたけれども、一番下にその指導検査ということで、例えば、初 めて輸入される食品などについては、事業者の方が自ら安全性について確認してくださ いということで自主的な検査を指導しているわけですが、そういったことも含めてトー タルで23万件の検査が行われているわけです。全体から言うと、分母が182万件です。 検査率の問題というのはかなり従前から議論されているところですけれども、我々とし てはそれぞれの蓋然性に応じた検査をやっているわけですので、トータルの検査率はあ くまで結果ととらえていて、むしろ個別の食品についてしっかりチェックしていくとい うスタンスでやっていると申し上げております。 (PP)  検査命令に関しては、モニタリングで検査で違反が出た場合に検査命令にどう移行し ていくか、検査を強化していくかですが、健康被害の発生がある、そのおそれがあるも のについては直ちに検査命令。残留農薬や動物用医薬品のように、継続的に摂取するこ とによって健康被害が想定されるようなものに関しては、偶発事案ではないかというこ とも含めてチェックをして、モニタリング検査を強化して、検査命令にするかどうかを 判断していきます。勿論、違反に関する再発防止策が輸出国でとられたという場合には、 こういった検査命令については解除して、元のモニタリングの対象にしていくという仕 組みになっています。 (PP)  代表的な検査命令の対象品目ということで、国別というのは中国から下です。それか ら、全輸出国に対してということで、どこから来るものでも違反の蓋然性の高いものに ついては検査命令ということになっているわけです。そういった意味では、食品の性質 に依存しているものが全輸出国になっていて、国ごとの検査強化の例というのは、むし ろ輸出国のそういった規制や検査水準といったことも含めて判断するものということに なっています。 (PP)  結果として見つかっている違反というのは、トータルで言うと届出ベースで言えば 1,559件というのが平成21年度の結果で、これは大きく年度によって変わることはあり ません。大体これぐらいの水準です。  違反の内容としては、6条というのは有毒・有害物質だとか腐敗・変敗といった関係 で、ラッカセイやハトムギ、トウモロコシというものに出ています。9条は先ほど御紹 介した、食肉に政府機関が発行した証明書がついていない場合。10条は、添加物規制、 日本で認めらていない添加物を使った食品。11条が、残留農薬や動物用医薬品、大腸菌 群の基準といった食品の基準違反です。18条が器具・容器。62条がおもちゃとなってい ます。 (PP)  平成23年度の監視指導計画の変更点ですけれども、主な変更点ということで、大きな もの、小さなものまぜこぜで書いていますが、モニタリング検査の件数を増やすという ことと、アフラトキシンの規制が変更になるということで、モニタリング検査を拡充し ようと考えています。それから、先ほど申し上げたような、輸出国の制度調査の結果を 踏まえて件数を見直していくということ。あとは事務的なものです。 (PP)  アフラトキシンの指標が今度変わります。従来はB1を指標としてやっていたんです けれども、アフラトキシンは実は4つの成分から成っています。内容としてはB1、B2、 G1、G2という4つの成分があるんですけれども、今まではB1を指標としてやってい たんですね。ただ、国際的な基準や食品によって若干成分比が違うということもあるの で、総アフラトキシンで規制していきましょうというふうに今後変わります。そういっ たことで、汚染の疑われる食品について、それぞれの食品のカテゴリーを少し幅広くチ ェックしていこうと考えています。 (PP)  これは水際の話でしたが、あとは輸入者に関しても食品衛生法の前回の改正のときに、 違反を繰り返す輸入業者に対しての行政処分も新たな制度として盛り込まれています。 そういったことで輸入者に対しても、私どもでいろいろな行政指導をやっています。  行政指導の対象になる輸入者の方は、法違反の確定時における直近60件の検査の違反 率が5%以上とか、要するに頻回違反が出るということ。それから、そういった方を対 象にして、まずは安全管理について見直しをしていただくと。それでも効果が認められ ない、繰り返し違反があるというようなケースの場合に営業禁停止処分をしましょうと いうことにしています。  このほかにも、営業の禁停止処分ということでいうと、悪質犯というのが実はありま して、これは食品じゃないよ、魚の釣りえさだよと言って輸入し、実際は中華街で売っ ていたみたいな、それについては告発と行政処分と両方かけています。  ここはそういったものではなくて、繰り返し違反の話でして、東京まで来てもらって いろいろと御指導差し上げるわけですけれども、平成20年、平成21年、平成22年の実 績は30社、36社、41社という感じでやっています。 (PP)  結果として、再警告を受けた方というのは177社のうちの12社でした。12社の中で 2回というのは9社、あとの3社が3回、4回というようなことになっています。ただ、 12社の違反内容に関して言うと、添加物とか微生物とか割と下の方というのは改善がし やすい。添加物などは使わなければいいわけですから割と簡単です。農薬、動物用医薬 品になると、ちょっとさかのぼって管理しなければならないので少し難しくなっていく ということです。カビ毒などは熱帯・亜熱帯では一般的にカビの胞子、アフラトキシン の元になるアスペルギルス・フラバスといったカビの胞子がかなり一般的に存在してい て、食品の成分、湿度、温度によって発生することがあるので、なかなかコントロール するのは難しいこともあって、やはりカビ毒に関しては違反の内容としては多くなって きています。対策をとっても対処しにくい部分というのがあると思います。 (PP)  ここまでが総論的な内容でして、個別課題ということですけれども、米国産牛肉の問 題は再開してから5年以上経ったわけですが、アメリカ側からは対日輸出基準の見直し を要請されています。去年9月に日米間の技術的な会合ということで、米国側のBSE の管理措置や日本側の管理措置等々についての情報交換、協議を行いました。 (PP)  バックグラウンドだけ御紹介しますと、要は、各国のBSEの検査体制というのは5 年前から随分変わってきています。特にEUに関して見ていただきますと、当時は一部 の国が24か月齢以上の牛については、と畜される牛は全部検査していたと。原則は30 か月。それが現在は48か月でして、イギリスのように公式発見でBSE牛が18万頭、 実際には200万頭ぐらいいたんじゃないかと言われていますが、現在は48か月齢を超え る牛についての検査にしています。それはどうしてかというと、科学的に評価して、も う飼料規制の効果が出てきていて、昔生まれた牛しかBSEに感染していることはない だろうということがちゃんと科学的に証明されているということです。そういった見直 しをEUは継続的にやってきています。  一方で、アメリカの言い分というのはOIE基準に整合しろということですね。これ はWTO協定で国際基準が原則と。科学的な正当性がある場合には、それよりも厳しい 規制をとることができるわけです。日本は食品安全委員会の科学的評価、リスク評価を やっているので、それに基づいて措置をとっていますから、WTO協定上問題ないじゃ ないかというのが日本の言い分ですけれども、ただ、科学的な知見というのはだんだん 増えてきている。それから、皆さんも御承知のように、飼料規制をとればBSEのリス クは下がってくるわけですから、現時点でのアメリカのリスクに対して日本の今の輸入 条件、20か月齢以下でSRMの全部除去というものですけれども、それが本当に科学的 に正当性があるのかどうかが議論になってくるわけです。 (PP)  SRMについてもそうですけれども、日本は平成13年にSRMの範囲を決めたわけで すが、その後、平成16年の食品安全委員会の評価のときも科学的に十分わかっていない ところがあるということで、見直しは先送りになっています。当時ヨーロッパでやられ た大規模な感染実験が実際には論文になっていて、EUなどもせき柱の月齢要件を12 から24、24から30と見直してきているということで、こういったリスクを評価して、 安全規制というのは科学的に根拠のあるものということで見直しをやってきています。 そういった意味で、日本に関しては今のところ5年前の評価が根拠になっているという ところが、アメリカの見直し要請だとか、EUに関しては牛肉に関してBSE発生国か らの輸入をまだ禁止しているんですね。そういうことで、日本はきちんと見直すべきで はないかというのが欧米の御主張ということです。 (PP)  あと、ポジティブリストに関してですけれども、一番下の段をごらんいただくと、平 成18年に施行した時点では、トータルでの違反が施行前の7倍あったんですね。その後、 半分になって横ばいという状況になってきていて、ようやくポジティブリスト制度につ いてもだんだんと落ち着いてきているのかなという状況になっています。 (PP)  それから、中国の問題ですけれども、中国に関しては輸入検査は主要輸出国の中では 一番多い。重量については3位ぐらいです。重量で多いのはアメリカやオーストラリア、 カナダなんですけれども、件数で言うとやはり中国ということになります。 (PP)  昨年5月31日に日中食品安全推進イニシアチブということで、両国で協力して食品の 安全性を高めていきましょうということでお約束事をしました。内容については、閣僚 級の会合を年1回やって、両国の取り組みについてしっかりレビューしましょうと。行 動計画をつくって、協議や調査、情報交換をやっていこうという約束事になっています。  以上、最後急ぎ足になりましたけれども、こういったことで私どもの輸入食品の安全 性対策をやっているわけでして、最近の状況も含めて情報提供をさせていただきました。  以上です。どうもありがとうございました。(拍手) ○司会(大井) 続きまして、全国消費者団体連絡会事務局長、阿南様から「輸入食品 の安全性確保〜課題と私たちの取り組み〜」について御講演いただきます。よろしくお 願いいたします。 ○阿南氏 皆様こんにちは。全国消団連の阿南と申します。よろしくお願いいたします。  輸入食品の安全性確保のために国が監視指導計画を決めたのが2003年で、それ以来、 対策が随分と充実して進んできているわけですけれども、私たち消費者団体は、こうし た仕組みが十分に機能しているかをチェックするということも重要な活動の柱だと考え ておりまして、今日はこうしたことについて、報告させていただきたいと思っておりま す。仕組みができても動かしていくのは人です。行政の役割、あるいは事業者の役割、 消費者の責任と役割を決めても、それらがうまく協力しながら進まないと、実質的な安 全性確保はできないと考えております。  ではまず最初に、全国消団連の最近の取り組みについてお話をさせていただきたいと 思います。 (PP)  2009年9月に消費者庁が創設されました。消費者の権利を守り、消費者が権利行使の 主役としての力をつける、その自立の支援をしていくという消費者基本法の理念を最高 の理念として消費者庁がつくられたわけですけれども、その消費者庁を実効的に働かせ ていくという立場から、課題を共有し、消費者行政の充実を図っていくのかという立場 で、検討をしております。  また、学習会やシンポジウムなどもやっておりますけれども、最近の学習では「ホン トのこと知りたい学習シリーズ」とて、食のリスクについて考える学習会、それから、 メディアからさまざまな食情報が出されますけれども、それに惑わされないで正確に消 費者としてとらえていくためにはどうしたらいいのかという学習会などをやっておりま す。 (PP)  また、ロビー活動や意見書提出や、世論形成の取り組みもやっております。とりわけ 地方の消費者組織での講演活動なども非常に多くて、各地で食の安全に取り組む消費者 団体がたくさんありますで、そういう活動をつなげて広げていく立場での講演活動もや っております。  また、事業者の皆さんや、事業者団体のセミナーなどにも呼ばれる機会が大変多くな っております。 (PP)  食分野の取り組みについて少し御紹介させていただきたいと思います。ちょっと古い ものもありますけれども、輸入食品との関係から取り出してみました。これは日清製粉 の鶴見工場の見学会の写真です。2008年は皆さん御存じのように、穀物価格が大変高騰 して食料不足のために、アフリカの一部の国では暴動が起きました。そのときに一体、 小麦の輸入や加工みついて学習するために見学に参りました。この鶴見工場は、埠頭が あって、輸入された小麦を積んだ船が直接ここに着いて、、日清製粉の隣にある政府の大 きなサイロに、船で運ばれてきた小麦が移されるわけなんです。勿論そこでは行政の検 査も行われています。そこから日清製粉が買って、製粉して全国に小麦粉として配送、 販売していくということなんですね。日清製粉の工場は大変近代的な工場で、ISOの 取得もされていて、ハサップを導入し安全管理がしっかりとなされた工場でした。 (PP)  次は、2009年8月に中国の食品工場に行ったときの写真です。御存じのように2007 年12月から2008年の初めにかけて、中国製の冷凍餃子の問題がありました。中国製の 食品は食べたくないという大問題になったわけですけれども、一体中国ではどのように して日本向けの食品が製造されているのかということを見学に参りました。  右側の写真が日本向けの輸出用ピーマンを栽培している畑です。その隣に農薬の配送 センターがあります。農家の人たちは農薬をそこで買うわけですが、そこには、日本の ポジティブリストが大変大きく壁に張り出されていまして、これ以外の農薬は使っては いけないと。基準値もちゃんと書かれていました。買った農家には、政府から農薬の使 い方について指導するという説明を受けました。指導される以外は使えないということ だそうです。  下の写真は、山東省の副知事さんとお話ししたときの写真ですけれども、日本の消費 者が中国からの食品について大変不安に思っている日本の消費者に私たちの努力を伝え てほしいと話されていました。 (PP)  下の写真が3月にニチレイさんの青島の工場に行った時の写真です。中国の人たちを 労働者として雇って、このような人海戦術で加工食品、冷凍食品をつくっているわけで す。このときにも日本向けの加工ラインが大変小さくなっていました。やはりなかなか 売れないということでした。  上の写真は検疫局に行った時のものですが、こんな形で検査体制が大変強化されてい るということでした。検査機器が段ボールに入ったまま、積まれているという状況でし た。  その隣の写真がモニタールームですけれども、ウナギの養殖場ですとか、輸出向けの 加工食品の工場等に監視カメラがついているのですが、それらの各地の監視カメラの映 像が全部ここでまとめて見ることができるような仕組みになっていました。こんなとこ ろも見させていただきました。 (PP)  次は昨年8月の末に、アメリカ穀物協会さんの取り組みに参加させていただいて、ア メリカの穀物の生産現場を訪問したときの写真です。トウモロコシと大豆を輪作でつく っていわけですが、その生産現地、本当に広大な農場を見学してきました。  下の写真がトウモロコシです。右端が枝豆です。ここでは遺伝子組換え技術を使って 栽培・生産しているということでした。その説明も伺ってきました。  左側の写真は、コンバインから直接トラックにトウモロコシが積まれているところの 写真です。トウモロコシはそのトラックでミシシッピー川まで運ばれて、船に積まれて ニューオリンズまで下ります。そこから日本向けに船で輸出されてくるということです。 日本のアメリカからのトウモロコシの輸入量は1,600万トンで、そのうち飼料用が1,200 万トンです。こういうふうにしてつくられているということがよくわかりました。  昨年はアメリカの方も雨が多くて、生産者の方々はトウモロコシのカビが心配だとお っしゃっていました。  上の左側の写真は、遺伝子組換えでないトウモロコシを生産する大学の実験農場に行 ったときのものです。真ん中にありますのは草刈り機です。これも非常に大きな草刈り 機でしたけれども、要するに、オーガニックのトウモロコシを栽培するために、除草が 最大のテーマになっていて、そのための努力について説明を聞くことができました。  今回の訪問は大変勉強になりました。このようにしてわかったことを情報提供してい くというのが、私たちの役目であると考えております。 (PP)  最初に申し上げましたけれども、食品の安全を確保するための様々な仕組みを多くの 消費者の参加でつくってきたわけですが、改めて確認しておきたいことを挙げてみまし た。  大きな成果としてあげられるのは、2003年の食品安全基本法の制定です。このときに、 新しい考え方と言われていますリスク分析という手法が初めて導入されて、リスク分析 の重要な要素であるリスク評価の専門機関として食品安全委員会が初めてこのときに設 置されました。  それと同時に、食品の安全性確保のためのさまざまな法整備が行われました。農水省 関係の法律についても、肥料取締法や農薬取締法、薬事法、家畜伝染病予防法などが整 備されましたし、飼料の安全性に関わる法律の一部も改正されています。  そして、牛のトレーサビリティ法。  それから、厚労省と共管になりますが、ハサップ臨時措置法というものもここで制定 されております。  また、農林水産省においても厚生労働省においても機構改革があり、このときに農水 省では消費・安全局が設置されました。食糧庁が廃止されて、地方農政局へ消費安全部 と地方農政事務所が設置されたました。食品の安全の歴史から言いますと、非常に大き な転換点になったわけで、生産者保護優先の農政から、消費者重視の農政へ大きく転換 された年になりました。  同時に、厚労省関係で言いますと、食品衛生法の抜本改正がありました。これは、1999 年からの私たち消費者運動の成果でした。1999年から食品衛生法の抜本的改正を求めて 生協の組織が中心になり全国で運動を展開しました。その結果1,370万筆の署名が寄せ られ、全都道府県から意見書が上げられ、国会でもオーケになりましたけれども、どう いうわけかそのとき厚労省は拒否しました。  ですが、2001年に御存じのとおりBSE問題が起こり、やはり必要だということにな り、食品安全基本法の制定と同時に食品衛生法の抜本改正が行われたわけです。そこに 初めて国民の健康の保護が明記され、そして、残留農薬のポジティブリスト制がここで 導入されました。そしてさらに、輸入食品の安全監視強化のtめに、監視指導計画を国 が、そして、地方は食品衛生監視指導計画をつくりますということを決めたわけです。 リスクコミュニケーション重視の観点から道野さんがいらっしゃる医薬食品局食品安全 部も、このときに改組されてできました。  こうした仕組みは、消費者自身が求めて運動してつくってきたものですから、私たち 運動した消費者団体にも大きな責任があるわけです。ですから、その後この法律の施行 がどのようにうまく働いているのかということをきちんと把握して、チェックしていく というのも私たちの重要な役割だと考えております。  (PP)  次に消費者意識の変化と課題ということで、この8月に食品安全委員会が食品安全モ ニターさんたちを対象にして調査をいたしましたがその結果を紹介します。日常生活を 取り巻く分野別不安の程度についてのグラフです。四角で囲んであるところが「食品安 全」についてです。平成20年度のインターネット調査が一番下ので、真ん中が平成21 年度、今回の調査が一番上になりますけれども、少しずつ落ち着いていることがわかり ます。平成20年は、中国の冷凍餃子の問題がありましたので、当然の結果と思いますが、 その後関心が薄れているという面もあると思いますが、落ち着いてきていると思ってお ります。  その代わりに、重症感染症や環境問題に対する不安感が非常に大きくなっていること がわかります。 (PP)  これは、食品の安全性の観点から感じている不安について取り出してみました。やは り農薬や食品添加物は減ってはいますけれども、相対的に見ますと相変わらず多いです。 家畜用の抗生物質や器具・容器、そして、有害微生物、細菌・ウイルスによる食中毒に ついても非常に不安要素が高まっている状況でした。 (PP)  次は、不安か不安でないか、安全性について科学的な根拠がいろいろと示されるわけ ですけれども、その科学的な根拠に疑問があるので自分は不安だというのと、納得した のでそれは不安ではないというのを比較しているグラフです。例えば、左側の食品添加 物は安全性についての科学的な根拠がちゃんと示されていて、納得して不安ではないと 考えている方たちが51.9%、疑問なので不安だと思っている人が33.3%いらっしゃると いうように見てください。遺伝子組換え食品から体細胞クローンの家畜由来食品につい ては、不安のほうが多くなっています。科学的な根拠が示されても疑問を持っていると いうことだということです。  飼料と肥料についても結構不安の方が高いですね。健康食品も高いですよね。こんな 状況でした。 (PP)  これは行政による規制が不十分か十分かで、不安か不安でないかと比較したものです が、ここは不安でないほうがみんなそれぞれ高めになっていますけれども、健康食品の 場合は不安でないというものもちょっと低い数字ですね。遺伝子組換え食品についても このような状況ですので、行政による規制という点では、もっと説明が必要なのかもし れないと思いました。 (PP)  これは事業者の法令遵守、衛生管理が十分か不十分かということで比較した表になっ ていますが、ここは不安の方が多いです。ですから、事業者さんの法令遵守はまだまだ 疑問だと思っているのか、衛生管理も疑問だと思っているのか、ここは正面から受け止 めて考えていく必要があると思います。こうした問題に関するコミュニケーションの場 も必要だと思います。 (PP)  次は、ちょっと細かくて見にくいのですけれども、食品の安全性に関する情報をどこ から入手しているのかということと、その信頼度についてのグラフです。一番左が情報 入手先は新聞(インターネットのニュースサイトを含む)で入手先としては最も多いで すが、信頼度は半分くらいで、低くなっています。隣が食品安全委員会です。食品安全 委員会のモニターさんたちですので、情報も十分に届いていて信頼度も結構高くはなっ ているのは当然かもしれません。ですが、右の丸で囲んだ生産者さん、食品メーカーさ んなどから得られる情報の入手先というところはかなり低いですし、信頼度もいまいち だと思いました。  それからショックでしたのは、NPO・消費者団体は、情報の入手先としても低いし、 信頼度も低くかったことです。消費者団体ももっときちんとやらないといけないなと思 いました。 (PP)  さらに、スーパーさん等の販売事業者さんたちも、信頼度も低ければ入手先としても 低いという状況になっていました。こうした状況をどうやって打開していくのかが課題 ですが、行政や事業者、私たち消費者団体等との協働の取り組みが必要ではないかと思 いました。食品流通はますますこれからグローバルになっていきます。食品の安全性確 保のためには、消費者と行政と事業者のフードチェーン全体が情報を共有して、それぞ れの役割を果たしていきたいものだと思います。それをつなぐのは何なのかといいます と、やはりコミュニケーションを図っていくこと、お互いを理解していくということだ と思います。 (PP)  これは昨年3月に策定されました「消費者基本計画」から、食品の安全・安心の確保 に関わる施策をら抜き出したものです。やはりリスクコミュニケーションの推進を非常 に重視しています。食品安全庁の検討ということも挙げられていますけれども、農業生 産工程管理(GAP)の基盤づくり、ハサップ手法の導入、促進、輸入食品についての 取り組みもこのようにあります。 (PP)  さらに食品流通への毒物混入事件に対する連携と被害の拡大防止、輸入食品の検査・ 監視体制の強化、二国間協議、現地調査、これらは厚生労働省から出された基本計画で すが、こういうことが盛り込まれています。この基本計画を政府一体となって推進して いくということですので、消費者自身も理解していく、リスクコミュニケーションの輪 の中に積極的に参加していくということが重要ではないかと思います。 (PP)  消費者の権利は皆様御存じのとおり、安全であるという権利を始め8つありますけれ ども、同時に、権利を行使していく主役としての消費者の役割も基本法の中には規定さ れています。 (PP)  事業者の責務については第5条に述べられています。消費者の安全と取引の公正、情 報提供などが責務として述べられていますし、消費者団体の役割も第8条に述べられて います。 (PP)  第7条が消費者の役割で、必要な知識を習得して、必要な情報を収集しながら、自主 的で合理的に行動するようにするとされていますし、第8条には、消費者団体は情報の 収集と提供と意見の表明、消費者に対する啓発と教育、消費者被害の防止、救済のため の活動などが規定されています。 (PP)  最後にこれからのリスクコミュニケーションですが、やはり市場の主役である消費者 と商品提供する企業や流通との協力連携関係をもっと強めていく必要があるのではない かと思います。そのためにも直接的コミュニケーションが重要ではないでしょうか。そ して、こうしたそうした仕組みを回していくのが消費者庁の役割になったわけですけれ ども、消費者庁はできたばかりでまだまだ体制も十分ではなりません。是非、事業者の 皆さんともネットワークを作って、コミュニケーションを回していければと考えており ます。  ありがとうございました。(拍手) ○司会(大井) 続きまして、味の素株式会社品質保証部品質保証推進グループ、谷本 様から、味の素グループの品質保証の取り組みについて御講演いただきます。よろしく お願いします。 ○谷本氏 皆さん、こんにちは。味の素品質保証部の谷本と申します。よろしくお願い します。  本日は、味の素グループ全体の品質保証の取り組みについて説明させていただきます。 その中で、具体的な取り組み事例として2つ紹介したいと思います。1点目が、輸入食 品の安全性確保ということで、グループ企業の中に味の素冷凍食品がありますが、味の 素冷凍食品の取り組みとして、冷凍野菜の管理について説明します。また、もう一つは、 先ほど阿南さんの講演にもありましたけれども、お客様への情報発信の取り組みという ことで、安心・信頼を得る取り組みについて、簡単になりますが紹介させていただきた いと思います。 (PP)  まず、グループの概要を説明させていただきます。味の素は創業1909年で、一昨年に 創業100周年を迎えました。2008年度の連結ベースですけれども、売上げは1兆1,904 億円ということになっております。事業別の売上げを書いてありますが、国内食品が 55%、海外食品が12%、アミノ酸関係が21%、医薬が7%という形になっております。 地域の売上げですけれども、日本国内が71%、アジアが13%、北南米が9%、欧州が7% という構成になっております。 (PP)  主な製品を書いてありますが、食品としましては商品・味の素。それと、ほんだしや マヨネーズ類、今日紹介します冷凍食品があります。アミノ酸関係については、アスパ ルテームという甘味料の素材も扱っております。 (PP)  これは、グループの事業をこういった形で表したものですけれども、食品事業、アミ ノ酸事業、医薬の事業ということで多岐にわたっているのですが、その原点は一番下に 書いてあります、商品・味の素ということになっておりまして、創業100周年ですので、 この商品は100年間売れている商品という形になります。 (PP)  海外にも積極的に展開しております。現在、世界22か国で事業を展開しております。 生産工場ですけれども、14か国にありまして、全部合わせると102の工場があると。国 内、海外の割合を示しますと、国内が48、海外が54ですので、海外の方が既に多くな っているという状況になっております。これらの多岐にわたっている事業を統括的に支 える品質保証のシステムが必要になるわけです。 (PP)  続きまして、これからは味の素グループの品質保証システム、これを我々はASQU A(アスカ)と呼んでいるのですが、そういうものを構築しておりますので、そのAS QUAについて説明させていただきます。 (PP)  これは、ASQUA導入の経緯と書いてありますが、我々グループの品質保証システ ムがどういった形で進化していったかを示してあるものです。我々のグループの品質保 証システムは、1975年ごろに工場の品質管理からスタートしております。1997年には仕 組みとして品質保証規定を定めておりまして、これを1999年ごろから各グループ会社に 同じ考え方でやっていこうということで適用を進めてきております。  2000年に、グループの品質方針を策定しております。品質方針については後で紹介し ます。これによってグループ全体における品質保証の方針を明確にしたということで、 取り組むべき基本スタンスを明らかにしたということです。  2000年7月ごろから、その当時、食品企業が安全・安心を乱すといいますか、安全・ 安心にかかわる事件が続いたということに伴って、よりよい品質保証を強化する目的で 全組織でISO9001を取得すること、あと、全食品工場でハサップを導入することを目 標に、3か年の計画を立てております。その計画が2002年からスタートしておりまして、 そこに味の素グループ品質保証システムASQUAと書いてあります。  2005年からは、世界トップレベルの品質保証を目指すということで、また、企業経営 に関しましても、先ほどお見せましたように、どんどんグローバル化が進んできており ますので、グループ企業へASQUAを徹底することを進めてきております。 (PP)  これが先ほど紹介した味の素グループの品質方針です。理念としては、私たちは安全 で高品質な商品・サービスを通して、世界のお客様のよりよい生活に貢献しますという ことを掲げております。  方針としては5つあるのですが、1点目としては、当然ですが、お客様第一、お客様 の要望に真摯に耳を傾け、お客様に満足いただける商品・サービスをお届けしますとい うことです。2番目は、お客様へ積極的に情報提供して信頼に応えるということで、こ れは後で一部紹介します。3番目、安全については飽くなき追及を行いますと。妥協す ることなくと書いてありますが、それと法令をしっかり遵守しますということで一定品 質の商品・サービスを提供しますと書いてあります。4番目は、ASQUAというシス テムで品質保証を行いますということで、後で紹介しますが、ASQUAはISO9001 の考え方がべースになっております。5番目が、経営のリーダーシップのもと、すべて の社員が安全で高品質な商品・サービスの提供に最善を尽くすということで、これはか なり前につくったものですけれども、今でも十分通用する内容になっているという形で す。  なお、ASQUAの説明をしていなかったのですが、味の素品質保証システムは Ajinomoto System of Quality Assuranceということなので、それを縮めてASQU Aと呼んでおります。 (PP)  これは、我々がよく社内・社外で発表する場合に使っている資料なのですが、我々の 品質保証の考え方を表したものです。「Quality」を「品質」と過去に訳されたのですが、 それは誤訳だということは皆さんよく御存じだと思います。Qualityというのは品質では なくて質ですので、単に商品の質を表すのではないということですので、Quality  Assuranceというものは、単に商品の質を保証するシステムではないと考えております。  実際、お客様、社会に教えているのはどんどん変化しておりまして、単に企業の製品 やサービスの質だけを見ているのではなく、業務の質や従業員の質、そして、経営の質 を見ていらっしゃるということです。例えば、最近CSR活動とか、環境に対する活動 とか、しっかり法令を遵守しているのかということをお客様は見ていますので、それに 応える、お客様の信頼・満足を得るためには、質の高い経営、質の高い経営技術・人材、 質の高い製品、それぞれのトータルのクオリティがそろって初めてお客様の信頼に応え ることができると考えている、そういうことを目指しているという形になります。 (PP)  先ほど2000年ごろに中期品質計画を立てたとお話ししましたが、そのときの取り組み が今までのポイントだったと言われております。2002年に中期品質計画を立てたのです が、それより前の世間の状況はどうだったかといいますと、食品の安心・安全に関する 問題がいろいろあって、消費者の信頼を裏切っていたということです。そのときに、食 品企業にそこに書いてある課題があると言われていたそうです。当然、味の素の中でも そういった問題があったということで、例えば、責任体制が明確でないとか、経営トッ プの品質に対する認識が甘いとか、従業員の意識もそもそも甘い、更に、日常的に教育 訓練がされていないというような食品企業の問題があったということで、そこで作成し た中期品質計画では、各部門に品質保証責任者を任命して責任体制を明確にするとか、 グループ各社にしっかり品質監査を行う。当然グループだけではなくて、単体の味の素 の中でもしっかり監査を行うということと、後で紹介しますが、ASQUAでいろいろ 基準類を整備しているのですけれども、そういったものと一緒にASQUAを整備する ことと、ISO9001及びハサップの導入を推進するといった点を中期品質計画に盛り込 んで推進してきたという形になります。 (PP)  これはASQUAの基本コンセプトですけれども、先ほどから出ておりますように、 ASQUAというのは、ISO9001とハサップをベースに、味の素独自の要求事項を加 えた品質保証システムということになっておりまして、味の素グループの商品・サービ スに関して、原料から製品開発、製造販売、お客様への情報発信、フィードバックに至 るすべてのサイクルにわたってこれが適用されるという形になっています。 (PP)  これはASQUAの文書体系図になっておりまして、一番上に先ほどいいました味の 素グループ全体にかかわる部分としての品質方針があると。その下に、ISO9001の要 求事項をベースにして、「What to Do」と書いてありますが、何を行うかを定めた品 質保証規則があります。その下に「How to Do」と書いてありますが、実際にどのよ うにどこまで取り組むかを詳しく定めた共通基準類があります。それを「ASQUA基 準」と呼んでおりますが、更に、それらの基準を元に、各法人や部門ごとにルールを決 めて運営されております。ということで、品質方針から各法人、部門ごとのルールがし っかり連動するような仕組みになっているという形でございます。 (PP)  これが先ほど言いました品質保証規則の目次ですけれども、要求事項の目次というこ とで、皆さんISO9001のことはよく御存じだと思いますのでわかると思いますが、項 目名がすべてISO9001と同一になっております。 (PP)  品質保証規則の要求事項の例を示していますけれども、ISO9001の要求事項を更に 具体化して、味の素独自の要求事項、番号ごとにAと書いてありますが、我々は「A条 項」と呼んでいるのですけれども、ISO9001の要求事項に味の素独自の要求事項を加 えてあることが特徴になっています。それぞれAという番号で、より具体的に味の素と してはどういうことをやるかの要求事項をISO9001の要求事項に加えてあるという 形になります。  全部紹介する時間もないので、2番目にマネジメントレビューとありますが、ISO 9001の要求事項では、これに関しては定められた期間内に行うとされているのですけれ ども、品質保証規則におきましては、年2回行うこと、トップが参加する品質会議もし くは品質会議に準ずる会議を開催し、マネジメントレビューを実施するということを具 体的に決めているという形になります。 (PP)  ASQUAの基準類です。これは実際に品質保証をどのように、どこまで実施するか を規定した基準類になっております。こういったものがありまして、教育訓練の基準か ら、各種品質規格だったり、包材規格だったり、それを選定する基準、原材料や包材の 管理基準、GMPやハサップの基準等が規定されています。また、特殊なところでは、 宗教対応のHalalとかKosherの管理基準等もあります。  中に原材料の品質管理基準というのがあるのですが、これは当然、輸入原材料にも適 用されておりまして、原材料のサプライヤーさんに味の素としてこういう要求をします よということが基準として書いてあります。そこには、当然ですが法令遵守や安全性を 確保するためにこういうことをいろいろやってくださいねということが規定されている ということでございます。  また、リストには重要なものが漏れていまして、更新していなくて申し訳ないのです けれども、フードディフェンス基準というものも新たに設けております。これにつきま して、味の素内でフードディフェンスについて体制をしっかり構築するということと、 これにつきましては、サプライヤーさんにもフードディフェンスの体制を構築してねと いうことを我々はお願いしているという状況になります。 (PP)  これは当たり前のことが書いてありまして、ASQUAで重要なことにつきましては、 品質保証の取り組みを継続的な改善につなげていくということですので、PDCA(Plan  Do Check Action)のサイクルをしっかり回していくということで、「Plan」のところ でグループの年度中期計画の方針・目標を品質保証会議で立案して、トップに承認して もらうということから、「Do」で各品質保証自主組織において方針・目標に対応した品 質マネジメントとしても構築して運用すると。「Check」で、また品質保証会議でそれぞ れの数のレビューを実施しまして、トップからここを改善しなさい等のアクションの指 示を受けて、また、「Action」でその改善措置等を実行すると。それを回すということで、 継続的な改善を行っていくことがASQUAの元になる考えとなっております。 (PP)  品質保証システムの紹介をしましたが、それでは具体的な取り組みということで、中 国から輸入しております味の素冷凍食品の冷凍野菜の管理について説明させていただき ます。  これは、冷凍野菜の管理方法の概要を示しているのですが、冷凍野菜は主に自主管理 農場において栽培しております。現地に管理会社を設立しまして、そこへ日本から駐在 員を派遣しまして、種まきから製品化まで一元管理できる体制を整えております。  農場から冷凍野菜の製造工程まで、おのおの各プロセスがあると思うのですが、各プ ロセスごとに管理基準を定めて、それに沿って管理しているということです。その各プ ロセスごとで分析によるチェックで確認を行っているということで、プロセス管理を重 視するということで、残留農薬等の分析も行うのですが、それは単なる確認という形で 行っております。 (PP)  それぞれポイントの部分だけ紹介します。  まず、畑の検定と書いてありますが、畑を選ぶ必要があるのですけれども、まず、産 地周辺環境を調査して、他の農場が隣接して農薬のドリフトが起こりやすいようなとこ ろは避けるとか、当然、工場が近くにあるところは避けるということで、周辺環境の調 査をします。いいところがあれば、そこの土壌分析をします。農薬が残っていたり、重 金属が残っているようなところは当然採用できないということで、こういったところを 採用する基準がありまして、基準に合致しない農場は採用しないということです。  それから、水は重要ですので水質分析も行います。これにつきましても、当社基準に 合致しない農場は採用しないということで、これらの周辺環境の調査、土壌分析、また は水質分析を選定後も定期的に実施することで、しっかり圃場の畑の管理を行っている という状況です。 (PP)  次に、種まきから収穫までの管理の話ですが、種まきから収穫まですべて味の素冷凍 食品の指定の栽培管理法を用いてしっかり栽培を管理している形になっております。  また、農薬の管理が重要になってきますが、これも農薬ガイドラインという基準、こ れはポジティブリストに対応したガイドラインになっていますが、それに沿って作物ご とに使用する農薬を規定しています。リストにない農薬は絶対に使わないという形にな ります。また、使用する農薬についても農場で買うのではなくて、管理会社で一括購入、 一括在庫管理を行って、指定以外の農薬が使用されないように厳重に管理されていると いう状況です。  また、使用農薬の安全期もしっかり確認しまして、収穫前の数日間は農薬の散布を禁 止します。収穫前の残留農薬の検査を行って、パスした場合のみ収穫の許可が下りると いうことで、収穫許可書の作成と書いてありますが、その許可書がなければ収穫できな いという形になっています。  このように、基準を満たした野菜だけが収穫されると。残留農薬もしっかり管理がで きているという状況になっております。当然、農薬の使用は最小限にとどめております。 現地にコンサルタントといいますか、フィールドマンとして農業のプロの方がいらっし ゃいまして、その方が農薬を使う種類や、まく時期、使う量すべてその方の指導のもと に行っているという状況になっています。 (PP)  これは、先ほど出てきました実際の栽培管理表です。私は実際見たことはないのです が、こういうものを使っているということなんですけれども、農薬の種類や使用量、安 全期、散布回数、散布時期等をすべてこの管理表でチェックしているということで、日 本の基準に適合しているかどうかが、これで確認できるという状況になっています。 (PP)  今度は収穫後の話ですが、トレーサビリティの確立部分ですが、畑の区画の部分にロ ット番号をつけて、すべてそのロットごとに畑の区画ごとに行うということで、その区 画ごとに栽培利益がとれて、その区画ごとに工場に納品されると。工場に納品される場 合には、先ほどの収穫許可書が確認されて初めて納品されるということで、ほかの場所 のものと混ざらないようにしているということでございます。  ロットごとに工程がすべて管理されているということで、冷凍野菜の工場では受け入 れられた原料野菜をすべてロットごとに加工・製品化しますと。できた製品もロットご とに保管します。製品のパッケージにそのロットナンバーが載るということなので、パ ッケージを見れば、いつどの区画でとれたものかがわかるようになっているという状況 です。こういうことでトレーサビリティも確保されるという形になっています。  以上が、中国から輸入している冷凍野菜の管理についてのお話でした。 (PP)  最後に、簡単に品質方針にもありました、お客様との情報の共有についても触れてみ たいと思います。これは、お客様の安心・満足を得るという活動になると思います。  お客様との窓口として、お客様相談センターを設置しています。お客様相談センター の役割は2つありまして、問い合わせに対応してお客様への情報を提供するという役割 と、お客様からの情報を分析して、それを商品開発や改善につなげるという役割でござ います。昨年の実績は、年間4万件の問い合わせがあります。 (PP)  これがお客様相談センターの風景なのですけれども、お客様の質問や御提起、御要望 に的確に対応できるように、訓練された担当者が当たっているということです。 (PP)  これは、お客様の声を事業に反映する仕組みということですが、お客様から届いた声 をお客様の声読み込み会議というのがあるのですが、それで課題を抽出して、その後、 お客様の声活用会議という、これは商品の事業部門や開発部門、工場と一緒にやる会議 なのですが、お客様の声を改善部門に提案して、改善につなげるという仕組みになって いるものです。 (PP)  改善事例としてたくさんのものがあるのですが、次のケースがあります。これは、ほ んだしですけれども、最近、高齢の男性から料理の基本についてわからないから教えて くださいという声が多いということで、そういう声に合わせて、料理をつくるときに、 ほんだしをどういうタイミングで入れていいかをわかりやすくパッケージに記載したと いう例です。 (PP)  お客様の質問が多い項目にアレルギー物質がありますが、商品に使用しているアレル ギー物質についてはホームページ上で検索できる仕組みを設けておりまして、どういう 商品でどういったものが入っているかを検索することができるようになっています。結 果は、このような形で出るという状況です。 (PP)  最後ですけれども、商品で使用している原材料の原産地もお客様からの問い合わせが 多い項目ですので、商品の主要な原材料の原産地につきましてはホームページ上で公開 しております。これは味の素冷凍食品のホームページですけれども、このように原料・ 原産地を公開している形になっております。  あと、味の素冷凍食品のホームページでは、商品の賞味期限等を入れると、その商品 についてどういった検査を行ったか。例えば、農薬の検査はどういうふうに行って、ど ういう結果であったか、分析結果もわかるような形になっています。  このように、お客様への情報提供、お客様の要望に応える活動を積極的に展開して、 お客様の信頼・安心を得る活動を行っているという状況になっています。  以上で、味の素グループの品質保証の取り組みについての紹介を終了させていただき ます。どうもありがとうございました。(拍手) ○司会(大井) ありがとうございました。  それでは、ここで10分間の休憩となります。ただいま15時ですので、再開は15時10 分にさせていただきます。15時10分までにお席にお戻りください。 (休 憩) ○司会(大井) それでは、10分になりましたので、再開いたします。  まず、本日の意見交換会のコーディネーター及びパネリストを御紹介します。皆様か らごらんになって一番左がコーディネーターをお願いしております、日経BPコンサル ティングプロデューサーの中野栄子様です。  続きまして、パネリストとして全国消費者団体連絡会事務局長、阿南様でございます。  続きまして、味の素株式会社品質保証部品質保証推進グループ、谷本様です。  最後に、厚生労働省食品安全部監視安全課輸入食品安全対策室長、道野でございます。  それでは、意見交換を行うに当たりまして、皆様に諸事項の注意事項を申し上げます。 意見交換会では後半に参加者の皆様から御質問をいただく機会がございます。その際に お願いしたい注意事項でございますが、まず、御発言される方は挙手をお願いいたしま す。係りの者がマイクをお持ちしますので、発言に先立ち差し支えなければ、お名前と 御所属をお願いいたします。多くの方に御発言いただきたいので、御発言につきまして はなるべく簡潔にお願いいたします。  それでは、意見交換会の司会につきまして、中野様にお譲りいたします。お願いいた します。 ○中野氏 皆さん、こんにちは。日経BPコンサルティングの中野と申します。今日は よろしくお願いいたします。  日経BPコンサルティングというのは日経BP社の子会社で、その日経BP社は日本 経済新聞社の子会社の出版社でございます。私は、そこに長くおりまして記者をしてい たんですが、去年から日経BPコンサルティングに移り、引き続きメディア活動をして おります。2003年から、食の安全をテーマに取材活動を続けております。2003年という のは先ほど阿南さんからも御紹介があったように、今日のテーマでもあります輸入食品 の監視指導計画がつくられた年。もっと言えば、食品安全基本法が制定された年でござ いまして、「食の安全元年」などと言われた、そんな年から食の安全を多方面から取材さ せていただいて、そういった経験をこういったところで生かすことができればと思い、 来させていただきました。  取材経験の中から気がついたことなんですけれども、食の安全というのは科学的バッ クグラウンドを必要としないと、なかなか理解が難しい。それから、食のリスクの程度 を理解しないと、正確に食の安全を把握することができない、こんな難しさから、なか なか理解が進まないと日々感じております。その理解が進まない問題を解決する一つの 場が、こういったリスクコミュニケーションだと思います。こうして皆さん多くの方に お集まりいただきましたので、今日はまた一段と理解を深めていっていただけたらと思 います。  今日の意見交換に先立ちまして、御出席の皆様の中から事前に御質問をちょうだいし ております。それをまず先に御紹介する形で議論を進め、後でフロアから個別に御意見・ 御質問をちょうだいしながら進めていきたいと思います。  どんな質問をちょうだいしたかといいますかと、まず、この東京会場で最初に御紹介 したいと思いますのは、食品関係事業者の方からいただいている質問でございます。「輸 出元とどのように日本の食品関係法規を確認し合えばよいのだろうか。違反事例から原 因と対策はどのようになされているのでしょうか」といった御質問です。冒頭の道野さ んの御講演にもありましたように、日本の食品関連法規に一つ一つ照らし合わせ、しっ かり勉強していくしかないんですけれども、具体的にどうやっていけばいいのかという 疑問は、皆さん日々お感じになることだと思います。特に、中小規模の事業者さんは余 り相談するような相手もいなくてお困りなのかなと思いますので、そういった事業者さ んを意識しながら、いま一度復習の形になりますが、道野さんからこの辺を御説明いた だければと思います。 ○道野輸入食品安全対策室長 では、お答えさせていただきます。  非常に一般的な御質問なので、なかなかスペシフィックな答えというのは難しいんで すけれども、輸出側と日本側で実際に具体的に食品を輸入する場合、それを検討する場 合にはいろいろとやりとりがあるんだと思いますが、私どもとしてお願いしたいのは、 できるだけ現地に行って、どういう状況で製造なり、加工なり、原料の調達なりをして いるかということを是非、業者の方が見にいっていただきたいなと。これは勿論、規制 上そうしなければならんということではないんですけれども、やはり現場をよく確認し ていただきたいと思います。  前提としては、日本の国内規制をよく理解していただきたいということと、相手側に も理解していただく必要がありますから、そういった意味で、英文にした日本の規制な どもホームページなりでとれますので、そういったものを活用していただいて、相手側 にもしっかり伝えていただくことが大事かと思います。ただ、実際に個別の品目につい て、日本の食品衛生法への適合性についての確認というのは、結局相手任せというわけ には当然いかないわけなので、個別に内容について当たっていただくことは避けがたい と思います。  あとは、違反事例からということがありますけれども、過去の違反品に関しては、一 応データが厚生労働省のホームページからエクセルのファイルでダウンロードできるよ うになっていますので、3年でも5年でも結構なので、類似の食品を調べていただいて、 どういった違反があるのかと。主には、ある程度検査で確認できるものが多いと思いま すので、自主的に事前にそういった確認のための検査をしていただくということも必要 かと思います。  特に、添加物など、要するに工場の製造加工工程でチェックできるもの、何とかなる ものは比較的コントロールしやすいですけれども、生産段階に使われる農薬や動物用医 薬品、原料由来の添加物、TBHQなどは、原料の油に少量入っていたものが検査の感 度がいいということもあって、検出されて違反になるというケースも多々ありますので、 そういった原材料に使われた添加物にも御配慮いただければと思います。  ただ、やはり事業者の方だけでそれをチェックするというのは難しい部分もあると思 いますので、検疫所には、特に関東・関西の大きな港や名古屋には、そういった相談を する窓口があります。専任の職員もおりますので、そういったところにお出かけいただ いて具体的に内容について相談していただいて、どういったところを確認したらいいの か、その食品自体は日本で流通できるのかについて相談していただくということもでき ますので、その辺も活用していただければと思います。  以上です。 ○中野氏 ありがとうございました。今週月曜日に大阪の方でも同じ意見交換会をやっ たんですけれども、そのときにたしか、横浜と大阪の検疫センターで1年に1回見学会 を無料で開いてくださるということでしたが、そうした機会に見学に行かれると、より 一層理解が深まるのではないかと思います。  この件で、例えば、事業者として谷本さんのところでは、何か法令的にいろいろ迷っ たりとか、お困りになったときに、こうしていますよということがあれば御紹介いただ けますか。 ○谷本氏 輸出元とどういった感じでやっているかというお話をさせてほしいんですが、 先ほどもありましたように、現地・現場に行って確認することをやっております。先ほ ど紹介したんですが、ASQUAの基準の中に原材料の品質管理基準がありまして、そ こでメーカーさんにこういったことを要求しますということがありまして、それは御提 出しますし、我々はチェックリストを持っておりまして、それを基に1対1でそれぞれ 確認するということをやっております。反対にそういう確認がとれなければ、お付き合 いはなかなかできないという形で、また、トラブルがあったときも現地に行きまして、 こういったことを改善してくださいという形で、日本の法令をちゃんと守っていただく という感じで行っております。 ○中野氏 ありがとうございました。  阿南さんは、先ほどの御発表の中で、自ら中国に見学に行ったり、去年はアメリカに も現場を見に行かれたということでした。事業者の方は多少費用と時間と手間はかかっ ても、やはり現地を見ることが大切だという冒頭お二方からのお話でしたけれども、や はり事業者の方にそうしてもらうと、消費者の立場としてはより安心なさるということ でしょうか。 ○阿南氏 本当にそのとおりで、事業者の方、味の素さんは中国にも工場を持っていら してつくっていらっしゃる。だから、そこは現地の状況などもよくわかるし、日本の法 規制もちゃんと知っていらっしゃって、その中で管理されてつくられているので、そう いうことを聞くととても安心ですよね。中国に行ったときも、さっきはニチレイさんで したけれども、カトキチさんの工場にも行かせていただいたのですが、そこも徹底的に 日本の基準を従業員にちゃんと教育して、特に、衛生管理は大変な取り組みをされてつ くられているということがわかりました。そういうことを見ると、とても安心します。 ○中野氏 ありがとうございます。  実は、示し合わせたわけではないんですけれども、私も2008年に御縁がございまして、 味の素さんの廈門の工場と枝豆の畑を見学させていただきました。実際に行ってみると、 一つの作業をする場所に、日本の工場よりも多くの作業者の方がいらっしゃっって、と ても丁寧にやっているということを目の当たりにし、やはり現地に行って見ないとわか らないことが多々あると感じました。皆さんも、もし可能であれば、これから輸入しよ うという相手国の状況を実際に見学に行ったりするのは、後々の信頼感構築にもつなが ると思いました。  この御質問をくださった方は、恐らくこの会場にいらっしゃっていると思うんですけ れども、このようなお答えで御満足されましたでしょうか。もし、まだこの答えでは足 りないよということがあればおっしゃっていただければと思います。また講師の先生方 にもうちょっと深く聞いてみたいんですけれども、いかがでしょうか。大丈夫でしょう か。私が質問を書きましたと名乗り出るのは、恥ずかしくてなかなか手が挙がらないの かもしれませんけれども。  あと、この質問を事前に出された方ではなく、ほかの方でもこの問題に際してもう少 しこういうことを聞いてみたいということがあればフロアからも受け付けますけれども、 いかがでしょうか。次の質問にいってよろしいですか。  それでは、事前にいただいた2つ目の質問でございます。これは生産者の方からいた だいております。「諸外国の食品関連法規制が変わり、日本へ輸入食品に影響が出る場合 に、厚生労働省はどのように情報を把握していますか。関連内容は国内に発信させてい ますか」といった御質問でございます。今やグローバル時代で日本一国だけでは成り立 たないのは御承知のとおりなんですけれども、世界各国からいろいろ輸入して、日本は 食料自給率40%ということで6割を海外に頼っているわけです。そうしますと、外国の 食品関連法律が変わると、輸入に関しても大きく状況が変わってくるわけで、それを国 としてはどう把握しているんですかということですね。その結果、それを日本の国民に 対してどう情報発信しているのでしょうかという御質問でございます。恐らくWTO通 報などを経て国際的な共通認識になって、それを国としては把握していくんでしょうけ れども、具体的にどのようになっているのかという御質問だと思います。  それから、外国の法規制が変わった場合というのが今の御質問ですけれども、加えて もう一つこれも併せてお聞きしたらいいと思うんですけれども、外国で食品関連の事件 や事故が起こった場合、例えば、今年1月5日でしたか、ドイツで豚肉、鶏肉のダイオ キシン汚染のニュースが入ったんですが、それに対して、外国のことだけれども日本と してはどうなのかと、関係の皆様は多分御心配なさったのかなと思います。その対応な ど具体的なことも含めて、道野さんに御解説をお願いできればと思います。よろしくお 願いいたします。 ○道野輸入食品安全対策室長 それでは、まず、フロアからいただいている諸外国の食 品関連法規制が変更になったときということで、日本への輸入食品に影響というのは具 体的にどういう影響を言っていらっしゃるのかはわからないところもあるので、簡単に 情報収集のやり方についてお話しします。多分、食品の安全基準の変更というのは、検 討自体が国際機関でマルチでやられている国際基準の変更というのもありますし、各国 個別に基準を強化していくということもあると思います。日本の場合も、コーデックス 基準の横並びということでの改正というプロセスもあれば、独自に基準について検討し て改正していくというプロセスもあるわけです。ですから、コーデックス関係について は勿論日本も加盟国なわけですので、関係の国際基準の決定プロセスに参加しているわ けですので、その情報というのは入ってきますから、どこどこの国で実際に国内基準化 されたということについてもWTO通報等々で入ってきます。  それから、各国個別に基準改正をしていくというプロセスの中では、勿論WTO通報 という形で同じように入手もできますけれども、あと、具体的に細かな情報については、 在外公館を通じて情報の入手はできます。特に、例の餃子事件以降、主要な輸出国の大 使館には、食品安全担当官ということで置かれていますし、中国と来年度はカナダにも 実際にそういった技術者、食品安全関係の専門知識を持った人を中国については3年前 に置いたんですけれども、カナダについては来年度、大使館に配置することを予定して いるんですが、そういった担当官が情報を調査して、こちらにフィードバックしてくれ るということもあります。  ただ、全体として食品分野への影響ということから言うと、おおむね強化が多いので、 相手国の基準が変わったことによって危険な食品が入ってくるというケースは想定しに くいんですけれども、今思いつくものであるとすれば、農薬の基準などは、例えば、相 手国のいろいろな気象や農業の生産事情で基準が緩和されるということはあるわけです。 そういったことで主要な輸出国に関しては、国立医薬品食品衛生研究所で毎年、主要国 の残留基準の設定状況やモニタリング検査の結果、外国のそういった政府関係の情報に ついて収集してもらって、それをホームページで公開しています。私どものホームペー ジからリンクを張っていますので、そこで確認ができるようになっています。  あと、対応として、勿論日本の基準も変更してほしいという場合にはインポートトレ ランスという制度があって、作物の残留試験のデータを出してもらって、場合によって はADIの設定からやらなければいけない場合もありますけれども、日本の基準の変更 の検討要請もできるようにしているわけです。  そういったことで、一つ一つについて国内にプレスリリースという形ではお知らせし ていないですけれども、ホームページを通じて更新情報という形でお知らせしています。  それから、ドイツのダイオキシンの汚染問題ですが、これは基準が変わったというよ りも事故情報への対応という切り口かと思います。この事件に関しては、影響を受けた のは鶏と豚と一部牛もあったんですけれども、飼料がダイオキシンに汚染された。汚染 飼料がドイツで流通して、その飼料が採卵鶏や肉用鶏、繁殖用の方にも回ったみたいで すが、あと、豚や一部牛の試料に使われたことが原因です。  経緯としては、ドイツの配合飼料の会社の自主検査でダイオキシンがえらく高いもの が出てきたと。それで追いかけてみると、どうも原料に使った油脂に汚染があったと。 その原料の油脂をさかのぼっていくと、原料の油脂をつくる会社があって、そこが工業 用の油脂と飼料用の油脂と両方つくる会社だったということで、工業用の油脂が飼料用 の油脂として使用されたのが原因だということです。この汚染ロットは去年11月11日 につくられて出荷されたということなので、事の起こりはそこからということですから、 それ以降にと殺・解体されて、肉や製造加工された加工品に疑いがあるということにな るわけです。こういった事件処理の場合、いつからというのがわかっているときは非常 に対処しやすくて、そこから後ろで実際に輸入されてきたもの、過去に輸入されたもの で関係あるもの、ないものと一つ一つつぶしていけばわかるわけです。  勿論EUの場合は、御承知の方もあると思いますけれども、アラートという形で問題 食品があった場合には、加盟国や輸出先国に緊急通報する仕組みがあります。そういっ たことで輸出国側からの情報を入手しつつ、私どもも輸入業者の方を通じて確認する、 各国の大使館、EUの場合はEUからの情報と各国との対応とがあるので、それぞれか ら情報をとりながら、そういった幾つかの情報が一致するかどうかということで問題の 処理をしていくことになります。  結果としては、今のところドイツ側も、汚染されたというのはEUの場合はダイオキ シンの残留基準がありますから、その基準を超えたものは輸出されていないと説明して いますし、私どもも実際に輸入者や大使館を通じた調査の中でも該当するものは今まで 見つかっていないというのが現状です。  以上です。 ○中野氏 ありがとうございます。  では、阿南さん、お願いします。 ○阿南氏 先ほどの海外の規制が変わった場合という質問が出されていましたけれども、 私も先ほど紹介したように、中国の山東省の副知事さんとお会いしたときに、確かに日 本の基準は世界一厳しいとおっしゃっていました。ですから、中国の基準とは明らかに 違うのですよね、同じ食品であっても。そうした場合に、例えば、味の素さんやニッス イさんが現地に行って、日本の基準がよくわかっている人たちがつくる場合には安心で きますけれども、例えば、中国のメーカーさんがその辺をよく理解されないで、中国の 国内基準でつくったものを日本に輸出しようということも考えられるわけです。そうし たところのチェックについては厚生労働省さんはどのようにお考えになっていて、また 実際にそうしたことを把握できるのかということについて、どうなんでしょうか。 ○道野輸入食品安全対策室長 先ほど申し上げたとおり、主要輸出国に関しては、残留 農薬の基準や残留動物用医薬品の基準についての調査は毎年やっています。そのほかに、 特に農薬や動物用医薬品みたいに種類の多いものに関しては、あとは検査なんですね。 マルチチャンネルといいますか、要は、100以上の農薬を一遍に検査するといったモニ タリング検査でそういった試験方法も使いながら幅広く見ていくということで、勿論、 基準が定められたものについて余分に使うものもあれば、そうではなくて違う農薬を使 う場合もあるわけですから、そういったことも想定されるので、実際にモニタリング検 査で幅広く残留している農薬を見ていくということで、チェックもやっているわけです。 ○中野氏 ありがとうございました。いかがでしょうか。今の御説明で納得されました でしょうか。まだ甘いというようなことはありますか。 ○阿南氏 実際に、厚生労働省のお役人の方、しかもわかっている方が行って現地調査 をするということでしょうか。検査はわかるのですけれども。 ○道野輸入食品安全対策室長 基準自体は出かけていかなくても、勿論、基準というの は守ってもわらないといけないので各国公表もしていますし、今はインターネットでと れる時代なので、そういったものでとっていくことはできます。一部の国で全然わから ない国もあるんですが、基本的には先進国であればそういった形で情報にアクセスでき るので、特にそういった公表されているものを中心に情報収集しているというのが現状 です。  現地に行くという話は先ほども少し出ましたけれども、今2つそういった活動をやっ ていて、1つは、主要な輸出国の制度調査ということで、制度といっても食品安全対策 というのは非常に広いので、ある程度テーマを絞って調査しているわけですが、先ほど 例を挙げましたアメリカの農薬規制であるとか、カナダについてはGM関係を調査しま した。  また、中国はちょうど食品安全法が新しくできたということで、食品安全法の関連規 制、それから、もう少しさかのぼって農薬の使用規制、動物用医薬品の使用規制といっ たことも含めて平成21年度は調査しています。そういったものは当然出かけていって、 相手国の政府機関を訪問して情報収集したり、現場というのはケースとして限られます けれども、現場にも行って実際にどういう制度が運用されているかについても見てくる ということはしています。 ○中野氏 すみません、1つ教えていただきたいんですけれども、カナダはGMの検査 だとおっしゃったんですが、ほかにもGMの作物をつくっている国はあるんですが、そ の中でカナダがというのは違反が多かったとかそういうことなんでしょうか。 ○道野輸入食品安全対策室長 今、GM関係で食品衛生規制として我々として抱えてい る問題というのは、要するに未承認ものの混入問題なんですね。未承認ものの中にも、 要は日本で承認されていないけれども外国では承認されているとか、日本でも外国でも 承認されていないというものがあるわけですが、どうしてそういうものが混入するかと いうと、1つは、開発段階で途中でだめになったものが、開発段階というのもある程度 圃場での試験をやりますから、そういったものが広がっていったというケースと、輸出 国では承認はとったんだけれども、非常にたくさん承認はとるんだけれども、実際に商 業栽培するものはまた限られてくるわけです。商業栽培を実際にするようなものについ て日本でも安全性審査をやってくれと来ますから、そういうものはとれているんですが、 向こうでの安全性審査は終わったけれども、結局、商業栽培しないのでと放ってあった ものが、これも種子のコンタミネーションがあって、一部に種子として流通したものが 栽培されて日本に入ってくるケースがあります。そういった意味で言うと、IPハンド リングということよりもう一段前の話で、そういうGM作物の開発、種子管理といった ものについて、輸出国サイドでどういう対応がとられているのか、実際に問題も幾つか あるわけですが、そういった問題が起きた後どういう改善がされているのかといったこ とについて、日本側は問題意識を持っていますよということを向こう側にもきちんと伝 えなければいけないし、相手側の対策もこちらとしてはしっかり理解していかなければ いけないということで、今回カナダについてはGMということで調査をしました。 ○中野氏 ありがとうございました。これも今日、会場にいらしてくださっている中の どなたかからいただいた質問なんですけれども、このような回答で御納得いただけまし たでしょうか。出された方以外でも、これに関してもう少しこういうことを聞いてみた いとか、こういう意見だとおっしゃる方がいらっしゃいましたら、どうぞフロアからも 発言をお願いできればと思いますが、いかがですか。大丈夫ですか。   これは大阪会場の方から事前にいただいていた質問なんですけれども、併せて御紹 介したいと思います。「ウナギの蒲焼きの安全性についてと、輸入野菜、特に冷凍野菜の 安全性について教えてください」というご質問です。食品関連事業者の方からいただき ました。ウナギの蒲焼きというと、最近では産地偽装の問題が出ましたね。中国産、台 湾産であるのに、これは国産であるよということですごく高く値をつけて売ったという よう、それが問題として発覚したわけですけれども、ただ、産地偽装の場合というのは 食の安全に直接かかわる問題ではないんですが、その前にウナギの蒲焼きについてはマ ラカイトグリーンの問題でかなり議論もあったかと思います。多分そういった安全性の 問題と産地偽装が一緒くたになって、事業者や関係者に対する不信感が募ったのではな いかと思います。これも改めまして復習にはなるんですけれども、ウナギの安全性につ いて今どうなのかということをお聞きしたいと思います。  先ほど道野さんの御発表の中にも、昨年6月に中国に行って調査された中にウナギと いう項目もありましたので、それもお願いできればと思います。それから、輸入野菜、 冷凍食品については、先ほど味の素さんからかなり詳しい事業の御説明などもあったん ですけれども、それも踏まえまして改めてというところで、まず、道野さんからお願い できればと思います。 ○道野輸入食品安全対策室長 ウナギの主要輸出国というのは中国と台湾しかないので、 そこの話ということだと思います。やはりウナギの場合、どうしても従来から生産段階 で使用されている残留薬品の問題と、もう一つは環境汚染ということだと思いますけれ ども、農薬の残留問題、勿論、養殖池の管理のために使っているものもあるのかもしれ ないですが、そういった残留物質の問題というのは常に繰り返されてきたという経緯は あります。  古くは抗菌剤スルファジミジンといったものから始まって、テトラサイクリンだとか、 サルファ剤系から普通の抗生物質から、今おっしゃったようなマラカイトグリーンとい うのは色素剤系の抗菌物質なんですけれども、それぞれ対象になっている病気というの は違うのだと思いますが、そういったものの残留問題というのはここのところも同じと。 これは平成18年のポジティブリスト化を契機にマラカイトグリーンの試験法が改善さ れたということもあって、それともう一つは、マラカイトグリーンというのはウナギの 体内で変化してロイコマラカイトグリーンという物質になるんですが、これは長く残留 すると言われていて、そういったものの検出ということで、かなりポジティブリスト制 度の導入前後は、稚魚のときに使用したようなものからも出るんじゃないかという話も あったりして、かなり中国側でも日本の現場でも混乱した問題だったと記憶しています。  ただ、中国側もそういったことで、やはり使用規制をかなり強化してきていまして、 ここのところ輸入時の検査で違反というのはそんなに出ていないという状況になってい ます。ただ、まだ中国側からは検査強化についての緩和要請というのは今のところ来て いませんけれども、特に蒲焼きなどは在庫もかなりあり得ることもあるので、当面は私 どももマラカイトグリーンの検査命令というのは続けていかなければいけないのかなと 思っています。ただ、現実に検査結果を見ると、ここ1〜2年で随分改善されてきてい るということは言えると思います。  さっきの中国の現地調査の項目に入ったのはどうしてかといいますと、そうはいって も少し違反事例がまだ出てきているということで、例の日中食品安全推進イニシアチブ という枠組みの中で、ウナギに関しては日本側でもかなり消費者の関心の高い食品でも あるわけですので、その対策について日本側として中国側の現状を十分把握しておきた いということで、日本側が提出したテーマの一つだったわけです。 ○中野氏 ありがとうございました。今最後に出ました、日中食品安全推進イニシアチ ブの覚書が昨年交わされたということなんですけれども、それは今度の監視指導計画案 の中にも盛り込まれていますね。その覚書に基づいて日中の相互協力であるとか、情報 共有であるとか交換を進めましょうということなんですが、それに関して消費者のお立 場から阿南さん、どうでしょうか。元が餃子事件から始まり、その結果としてそういっ たことが盛り込まれるようになったんですが、それに対して何か評価をするとか、まだ 甘いとかどうでしょうか。 ○阿南氏 先ほども現地に実際にお役人が行って調べるのはどうなっているかと聞いた こと重なるのですけれども、それまでは、いろいろな問題が起こったときに、外務省ル ートのところが交渉していたと。だからうまく現地が把握できなくて、二国間協議をし ますと言っても、お互いにちゃんと現場段階での情報交換を踏まえた上でのものである べきではないかと言ってきたのですけれども、今度はそうした現場での情報共有と協力 ができるようになったわけですよね。ですから、そこは今までとは違ってくるのじゃな いかと思いました。 ○中野氏 ありがとうございます。まさしくそうしたことでより安心に近づいたと言っ ていいのかなと思います。  事前にいただいた質問は一通り終わったんですけれども、このほかに今日いらしてい る皆さんから何か御意見・御質問があれば、せっかくの機会ですのでいただければと思 いますけれども、いかがでしょうか。何かございませんか。 ○質問者 貴重なお話ありがとうございました。三井物産のフルサトと申します。  私は、食品の違反関係を5年ぐらい見ているんですけれども、違反の中で今回もそう ですが8割以上を占めるのが、アフラトキシンとかカビあるいは残留農薬なんですが、 日本は輸入がカロリーベースで40%を切る、切らないという中で、先ほど阿南さんがお っしゃったように、日本が一番厳しい基準をとり過ぎているんじゃないかと。中国で使 っていいものは日本ではだめよと。では、中国人は食べてもいいのかと。あるいはアメ リカのアフラトキシンも20ppbか何かだと思うんですが、日本はその半分の10ppbだと か、あるいは残留農薬もコーデックスなどで決まっている基準よりも厳しいものが幾つ もございます。あるいはやり方もそうですね。また、ココア豆が殻付きで検査していた ものを殻むきだというような話は一部出ていますが、こういったもので今後とも海外に 輸入を頼らざるを得ない日本として厚生労働省さんとしては、緩くしろとは言いません が、厳し過ぎるであろうものを見直そうという動きはないんでしょうか。私自身はそれ をすべきだという立場で申し上げております。  以上です。 ○中野氏 では、道野さん、お願いいたします。 ○道野輸入食品安全対策室長 私の説明の中でも若干触れたんですけれども、WTO協 定下というのは原則国際基準なんです、各国がとる安全基準というのは。科学的に説明 ができる場合、正当性がある場合には、それよりも厳しい基準を設けることができるわ けです。だから、国際基準のあるものとないものの違いというのはまずあるんですけれ ども、例えば、アフラトキシンの問題に関しては、アメリカは国際基準より緩いという ところがあるわけなので、それに合わせるかどうかというのはいろいろ議論のあるとこ ろだと思います。今回のアフラトキシンの規制変更については、むしろ国際基準に近づ けるというようなことでやってきているわけです。  厳しくなる方ばかり言ってもしようがないので、緩くなる方の話もしなければいけな いんですが、緩くなるというのは非常に語弊があるので余り言葉として適当ではないか もしれませんが、例えば、ポジティブリストの基準違反というのは非常に多いというこ ともありますし、私の先ほどの説明の中でも、表には出ていたんですが直接は触れなか ったんですけれども、一律基準の違反が非常に多いということが現実にあります。この 原因はどういうところにあるかというと、もともとポジティブリスト制度というのは相 当な数の農薬のしっかりした基準がないと、要するに、基準のないものは0.01という一 律基準で規制されることになるので、やはり制度の設計としては相当数の残留基準、個 別基準が必要だというのが基本的な部分としてあります。実際に、日本のポジティブリ スト制度も平成15年に食品衛生法を改正して、その後3年間かけて準備をして、従来か らある基準もありますし、暫定基準といって、これは食品安全委員会にリスク評価、A DIの設定を求めずに、日本と類似の農薬規制をやっている主要先進国の基準を参考に して暫定基準と。これは計画的に見直していって本来の基準に直していくということを やる予定で、順次今やっているわけです。  そういう中で、そうはいっても世界いろいろなところから輸入してきているので、一 律基準に引っかかってしまう。主要先進国だとか日本か想定していなかったような農薬 の使い方なのか、それともドリフトなのかという残留の原因についてはいろいろあるの かもしれないですけれども、結果としては一律基準に引っかかってしまうものが出てい るということは事実です。  私どもとして、暫定基準、一律基準を含めて、基準に関しては勿論、最新の食品安全 委員会が設定したADIに基づいて、その範囲内で作物残留試験のデータが出てきたも のについては見直していくというのが一つあります。それから、先ほどちょっと触れま したけれども、インポートトレランスといって外国で専ら使用されている農薬、外国で 専ら特定の日本では想定されていない農作物に使用されている農薬に関しても、作物残 留試験のデータを出していただくことによって、インポートトレランスということで作 物向けの基準も設定できるような手続を設けて、要請があったものについては順次見直 しをやっています。ただ、勿論そうはいっても、検討の前提としては摂取量自体がAD Iを超えないように、安全性を確保しつつ、安全な範囲でということにはなりますが、 そういった形での見直しは取り組んでいるわけです。 ○質問者 ありがとうございました。 ○中野氏 よろしいですか。  そろそろ予定の時間も迫ってまいりましたけれども、ここはどうしても聞いておきた いと心残りの方ももしかしたらいらっしゃるかもしれませんが。いらっしゃいましたの で、お願いします。 ○質問者 貴重なお時間ありがとうございます。コウヨウ商会のヤマモトと申します。  ただいまの件に触発されたんですけれども、FTAですとかEPAなどの動きがある 中で、日本独自の規制とか承認制度がいわゆるノンタリフバリアーということになって しまうのではないかと。その辺のところは食品安全という意味からいくと、必ずしも推 進したいという希望を持っているわけではないんですが、世の中の流れ、世界の流れと 日本独自の規制及びいろいろな諸手続、その辺について厚労省さんから見解をいただけ るとありがたいと思います。 ○中野氏 お願いします。 ○道野輸入食品安全対策室長 まず、FTAとかEPAの件なんですけれども、現実に 日本はEPAを多くの国と結ぼうとする、もしくは既に結んでいるわけです。EPAの 交渉は、要するに貿易交渉の枠組みの中で、まずEPAをつくる前の段階からいろいろ と研究会から始まって、どんな条文をつくるかという協議をやるわけですけれども、そ の中で農産物の輸出国は、このEPAの枠組みの中で食品の安全問題も議論したいと希 望している国は結構たくさんあります。ただ、私どもとしては、経済問題と安全問題を 一緒くたにして議論するというのは適当ではないですし、世の中から誤解も受けること もあると思うので、EPAやFTAの場の中で協議の枠組みをつくるということについ ては反対をし、また、そういうようなEPAの枠組みは今のところありません。  ただ、そうはいっても、やはり二国間での相互理解も重要ですし、日本側の規制の意 図や相手側の実際の履行のフィージビリティだとか、先ほど申し上げたような日本側で の規制の見直しの仕組みといったことについて相互に政府間で情報を共有し、認識する ということも大事なわけです。そういったことで、一部のEPAの枠組みの中には、食 品の安全問題について何かを決めるというのではなくて、意見交換、情報交換をして相 互理解を進める、協力を進めましょうということで、話し合いの枠組みをつくるという のはやっています。現実にタイなどは毎年あって、私も11月に行ってきたんですけれど も、タイに関しては去年と今年と続けて、日本のいろいろな規制や検査のシステム、そ れから、タイ側がこういうところを改善したいけれども手伝ってくれといったことにつ いて情報交換なり協議をして、今後のタイ側の対応について日本が協力してあげるとか、 実際には検査技術の向上や研修生の受入れといったことも含めて対応しています。  だから、EPAそのものということではなてく、それは余りネガティブにとらえると 貿易交渉の中でという話になってしまうこともありますけれども、むしろ前向きとらえ て、そういった情報交換、相互理解が双方の利益につながるような形で生かしていけれ ばなと思っています。  いずれにしても、TPPも含めてそうですけれども、こういった安全性の協議の枠組 みというのはあくまでWTO協定が基本ですから、二国間とかもう少し大きい9か国、 10か国、TPPはそんな感じですが、そういうような枠組みの中で安全問題を決めたり するということはならないわけでして、引き続きルールとしてはWTO協定が基本にな ると御理解いただければといいと思います。 ○質問者 ありがとうございます。 ○中野氏 ありがとうございます。最後の方で大分盛り上がった感があり、ほっとして おります。今日はとてもよい議論ができたんじゃないかと思っています。これを機会に、 より一層の理解のためにお互いが努めていくことが必要なのかなと思います。  それでは、司会にマイクをお戻しいたします。 ○司会(大井) ありがとうございました。  本日は皆様からさまざまな御質問・御意見をいただきまして、また、長時間にわたり 意見交換会の円滑な運営に御協力いただきまして、誠にありがとうございます。なお、 平成23年度輸入食品監視指導計画案につきましては、1月21日より2月19日まで広く 国民の皆様から御意見・情報の募集を行っているところでございますので、是非御確認 をお願いいたします。  以上をもちまして、輸入食品の安全性確保に関する意見交換会を閉会いたします。本 日はどうもありがとうございました。                       照会先:食品安全部企画情報課                           03-5253-1111(内2493,2452)