08/01/29 「食品に関するリスクコミュニケーション(輸入食品等の安全確保に関する意見交換会)」について (平成20年1月29日東京都新宿区、平成20年1月30日大阪府大阪市) 食品に関するリスクコミュニケーション〜輸入食品等の安全確保について〜 議事録       平成20年1月29日(火)13:00〜17:00        於:日本青年館中ホール(東京都新宿区) ○司会(吉川) 本日は、皆様ご多忙の中、ご参加をいただきありがとうございます。  ただいまから食品に関するリスクコミュニケーションを開催したいと思います。私は 本日司会を務めます厚生労働省食品安全部企画情報課吉川と申します。よろしくお願い いたします。  本日の食品に関するリスクコミュニケーションは、テーマに関する説明や基調講演、 パネルディスカッション、意見交換を通じて、輸入食品等の安全確保についての理解を 深め、関係者間の認識を共有することを目的として開催するものです。  まず、配布資料の確認をさせていただきます。議事次第に配布資料一覧がございます ので、そちらに沿ってご確認をお願いいたします。  本日の資料1−1といたしまして「平成20年度輸入食品監視指導計画(案)」、資料 1−2といたしまして、「輸入食品の安全確保について」、資料2といたしまして「陶 磁器等及び乳幼児玩具の鉛等の規格基準の改正について」、資料3といたしまして「中 国における食品安全管理体制(残留農薬検査を中心として)」、資料4といたしまして 「日本生協連の輸入食品の安全確保の取組み」、参考資料といたしましてパンフレット 「食品の安全確保に関する取組」というものをお配りをしております。  もし不足の資料がございましたら、挙手をいただきまして、スタッフにお知らせくだ さい。担当の者がお伺いいたします。もし途中でお気づきになりましたら、お声をかけ ていただければと思います。  それから、アンケート用紙を1枚同封させていただいております。これは今後の意見 交換会をよりよいものとできるよう、皆様のご意見をお伺いするものですので、ご協力 をよろしくお願いいたします。記入いただきましたアンケートは意見交換会の終了後に 出口の付近でお受けをする予定です。  続きまして、簡単に本日の議事進行を紹介させていただきます。  議事次第をごらんいただきたいのですが、最初に政府インターネットテレビにおいて 配信しております輸入食品の監視について、8分ほどの動画をごらんいただきます。  次にテーマに関する説明として「平成20年度輸入食品監視指導計画(案)について」、 厚生労働省食品安全部輸入食品安全対策室長の道野から。  続きまして、輸入食品との関連もありますので、「陶磁器等及び乳幼児玩具の鉛等の 規格基準の改正について」、厚生労働省食品安全部基準審査課課長補佐の光岡から説明 をいたします。  その後、基調講演といたしまして、株式会社アジア食品安全研究センターの佐藤技術 顧問より、「中国における食品安全管理体制について」。  続きまして、日本生活協同組合連合会品質保証本部の和田商品検査センター長より「 日本生協連の輸入食品の安全確保の取組み」についてご講演をいただきます。  基調講演の終了めどは午後3時15分頃を予定しております。  基調講演終了後、10分間程度の休憩をとらせていただき、3時25分からパネルディス カッション、意見交換を行い午後5時の終了を予定しております。  本日はたくさんの参加者においでいただきまして、お席のほう大変狭い状況でござい ますけれども、5時までよろしくおつき合いいただければと思います。  それでは、動画「輸入食品の安全を守れ!〜輸入食品の監視〜」をごらんください。 2「輸入食品の安全を守れ!〜輸入食品の監視〜」(映写) 3 テーマについての説明 ○司会 それでは、輸入食品安全対策室長 道野より「平成20年度輸入食品監視指導計 画(案)について」、説明をいたします。 ○道野 厚生労働省食品安全部輸入食品安全対策室長の道野と申します。よろしくお願 いいたします。 (パワーポイント映写)  それではプログラムにありますとおり、これから30分ほどで、「輸入食品の安全性の 確保について」ということで、資料に基づいてご説明を申し上げます。内容的には、前 半は今、ビデオに流れましたけれども、輸入食品の安全確保対策の現状とか、基本的な 仕組みについて前半少し説明をさせていただいて、後半で20年度の計画の案、ただいま ちょうどパブリックコメント中でもございますので、その内容についてお話ししたいと 思います。ただ、大きく変更があるということではないので、全体の話を聞いていただ いて、また、後のパネルディスカッションとか、意見交換で議論いただければというふ うに思います。 ◇ 食品等の輸入届出件数・重量推移  食品衛生法では、皆さんご承知だと思いますが、営業とか販売の目的で輸入される食 品について届出を義務づけています。それは食品衛生法自体が営業規制の法律というこ とでありますので、そういった営業販売目的のものについて届出義務を課して、輸入時 に安全性のチェックをしましょうという基本的な仕組みになっています。かなりメリハ リのない表ですけれども、ずっと過去から見ていただきますと、件数がかなり伸びてき ていて、昨年度で186万件、重量が3,410万トン、そんなに大きく上がってきていませ ん。  我々のほうとして見ているのは、従来、原料を輸入して国内で加工・製造するという ような形態が多かったのが、加工食品の輸入が増えてきている、もしくは半製品の状態 での輸入が増えてきているということがあるのではないか。  それから、あと冷凍品から付加価値の高い生鮮品の輸入なども増えてきているので、 そういった届出件数がかなり重量に比べて増えているということの原因になっているの かなというふうに考えています。 ◇ 食品等の輸入の状況(平成18年)  これは重量ベースですが、重量で見ますと、今申し上げたような傾向はあるものの農 産食品というのは重量的には重い。例えばコンスターチの原料のトウモロコシ、大豆、 小麦といったものの輸入は激減しているわけではありませんので、基本的な原材料は相 変わらず量としては一定量入ってきているということがあって、重量的にはそこが一番 大きいということになっています。年間の大体輸入重量は3,400万トンの内訳はこうい ったものであるとご理解いただければいいのではないかと思います。 ◇ 輸入食品監視指導計画  きょうご説明しようとする輸入食品の監視指導計画でありますが、食品衛生法の第23 条に、毎年度、国が行う監視指導の実施に関する計画を定めるということで、こういっ た3つの内容について書くということにしています。計画を定め、変更した場合には遅 滞なく公表するということで、もちろん19年度(今年度)のものも官報に掲載するとい う形で公表して、厚生労働省のホームページにも載せています。あと計画の実施状況に ついて公表するということで、この監視結果についても18年度のものは既に公表してい ますし、後でお話ししますが、19年度の上半期の状況についても公表しているというよ うなことになっています。こういったそういう法律に基づいて計画をつくることになっ ています。  これはもともとは保健衛生行政全体としては、国内に関していうと、国がいろいろな 法律とかを定めて、地方公共団体が実施するという形態になっていて、地域保健法など も国が、まず基本指針をつくって、個別の事務については個別自治体で計画をつくる。  食品衛生法もその形式になっているわけですが、輸入時の検査については国が自ら行 っているということがあって、都道府県は都道府県でそれぞれ監視指導計画をつくって いるわけですけれども、私どものほうも輸入に関してのみは国のほうでこういった計画 をつくっているということになっています。 ◇ 輸入食品の監視体制等の概要  輸入食品の安全確保ということでいえば、食品衛生法の体系でいうと、後ろの資料の 参考にも載せてありますが、食品衛生法の考え方としては、一義的には事業者の方に食 品衛生法はきちんと守ってもらうということがまず基本でして、国なり都道府県なり公 共機関はチェックをしっかりやっていくと。事業者の方が食品衛生法をきちんと守れた かどうかということの監視をやっていく、そういう役割分担になっています。その役割 分担を前提にして、我々の監視体制としてどういったことを考えているかというのがこ の絵に集約されているかと思います。  1つは、3つの段階に分けるということで「輸出国」の段階、それから、今ビデオで もありましたが「輸入時」の検査・監視ということ、それから輸入通関した後に「国内」 に流通する。この場合、先ほど申し上げたような都道府県の監視指導計画に基づいて都 道府県のほうで監視をされるというような仕組みになっています。  この具体的な内容については、後でまたご説明申し上げますが、輸出国における衛生 対策ということに関しては、農産物であれば、こういった農薬等の使用管理、政府によ る証明書の発給。日本向けのそういった基準に合っていますとか、輸出国の法律でと畜 検査に合格したものですとか、このフグは、日本の政府が定めている海域で捕れたもの ですとか、そういった政府機関から発行される証明書があります。それから、輸出前の 検査などをやっている国もある。特に問題が起きた場合、二国間で協議をして、こうい った日本のルールを守ってくださいねというようなこと。輸出国でのプログラムができ れば、現地調査などもやっています。  輸入時の検査は、先ほどのビデオのとおりですので省略します。  国内に関しては、国内で収去されるわけですが、違反の発見の場合は通報ということ で、フィードバックしてもらって、その後の輸入時の検査体制に反映していくというこ とにしています。年間で都道府県から違反品が見つかりましたよというのは、大体30〜 50件ぐらい情報提供があります。  最後、場所はあまりよくないのですが、海外でのいろんな事故があったとか、食品の 安全性に関する研究報告が学術雑誌に出たとか、そういったことについては2つの機関 が、公的機関では情報収集やっていまして、1つは厚生労働省の国立医薬品食品衛生研 究所、もう一つは食品安全委員会事務局ということで、この2カ所から入ってくる情報 を私どものほうで活用して輸入時のこういった検査に反映をしています。 ◇ 食品等輸入届出窓口配置状況  輸入食品の届出窓口設置状況ということで、31カ所の窓口があります。何もこれは、 例えば北海道だったら小樽と千歳に来たものだけ検査するということではなくて、また、 そういった管轄の区域が分かれていて、千歳空港に来たものは千歳空港で、小樽のほう、 道内に輸入されたものについての検査は対応していくというふうになっています。ほか の地域についても同じです。   ◇ 検疫所の食品衛生監視員年度推移  輸入食品の検査というときに、やはり問題提起として、従来からずっと言われている のが食品衛生監視員の数が足りないということでありまして、ただ、一方で小さな政府 といいますか、国家公務員の定員を減らせというのが全体の流れでもあります。そうい った中で、私は役所へ入った頃に比べると4倍ぐらいの一応増員は果たしてきていると いうことでありまして、この中で、特に検査機能で、先ほど横浜の検査センターの絵が 出ていましたけれども、横浜、神戸の検査センターなどで、そういった検査機能の強化 ということとと、それから件数増に対する書類審査の充実ということもやってきていま す。  一方で、手続がコンピュータでできるようになったということで、電子情報での届出 がされますので、ある程度そこについては、省力化という観点から、今度はシステムに よる事業審査ということも進めてきているというようなことで対応してきております。 ◇ 食品等の輸入届出  食品等の輸入届出ということで、先ほど申し上げたとおり、そういった営業目的で食 品等を輸入する者は届出をしなければならない。こんな届出事項の代表的な例を出して います。どういうところを見るかといいますと、もちろん添加物、日本で規制がかかっ ている添加物だと加工食品の場合には、原材料、製造、加工方法というようなこと。そ れから、組換え食品に関しては、そのものがどういう表示を輸入後されるかということ に留意しているということもあって、非組換えのものとの分別をしているか、してない かということ。添加物製剤の成分。器具、容器、おもちゃの場合は材質によって適用さ れる基準が違うということで、こういった食品衛生法にまず書面上適合しているのかど うか。検査が必要なのかどうかということについて判断するための基本的な情報があり ますし、足りない場合には、さらに照会をして、輸入者のほうから情報を提出していた だくということもやっています。 ◇ 輸入時の検査体制の概要  検査体制の概要ということで、ここも概念的な絵なのですが、違反の蓋然性というの は上に行けば行くほど検査のカテゴリーを見ていただくとわかるのですけれども、高く なる。そうすると検査率も当然上がっていくというような仕組みにしています。ベース ラインにあるのはモニタリング検査ということで、輸入届出に直すと年間で5万8,000 件+4万8,000件、これは指導検査が一部入っていますけれども、そういった数字にな ります。  モニタリングの検査のやり方、計画のつくり方については、後ほど説明しますが、基 本的には輸入した食品をランダムに検査した、違反が見つかったら、それについて検査 を強化していく、そういう監視の基本になる検査であると見ていただければいいと思い ます。  モニタリング検査の強化ということで、そこで違反が見つかった場合に検査率を特定 の品目について上げて、問題があるのかどうかということをさらにチェックする。モニ タリング検査を強化してやはり問題あるということになれば検査命令ということになり ます。  それから検査命令でもうまくコントロールできないというようなものについては包括 的な輸入禁止ということです。  こうして見ていただくと、こういったことで、検査の合計が20万ということになるわ けですけれども、よく1割しか検査してないといった指摘がありますけれども、まずそ ういった情報についての審査はすべてについてやっている。それを前提としてモニタリ ング検査、指導検査というのは、初回輸入時、あと定期的に事業者の方に自らの負担で 検査してもらいましょう、確認してもらいましょうというのが指導検査です。こういっ たベースになるところの検査というのがあるわけです。  検査命令は、こういった結果によって強化されたり、数が増えたり減ったりするもの ですから、我々のほうで計画的に検査している部分というのがこのモニタリング検査。 検査命令の9万3,000件というのは、実は結果的には9万3,000件になっているという ものだというふうに理解していただければいいのではないかと思います。 ◇ 輸入時における検査制度  具体的にこの3つのカテゴリーの検査について簡単に説明しますと、輸入者の自主的 な管理の一環ということで、初回輸入時等に行政指導で検査をしてもらうというのが指 導検査です。  モニタリング検査というのは、食品衛生法上の状況について幅広く監視し、必要に応 じて輸入時検査を強化する等の対策を講じることを目的とするということです。  国が費用を負担しています。検査の結果が出るまでの間、輸入をストップするという ことはこの場合にはしていません。これは輸入者のほうの任意ということになります。  検査命令に関しては、こういったモニタリング検査、自主検査、国内の都道府県のい ろんなこういった検査関係の情報等を踏まえて、違反の可能性が高いと見込まれる食品 について、輸入の都度、検査をする。これについては、事前に輸出国や品目を公表して いますので、なおかつそれで検査命令を受けても検査したいという方については、費用 負担は自らしていただいて検査をしていただく。結果の判明まで、輸入については認め ないというような仕組みになっています。 ◇ モニタリング検査件数の算出方法(1)  モニタリング検査の件数の算出方法ということで、輸入食品全体を124の食品に分け る。それぞれについて、検査項目としては、残留農薬から始めて、最近検査をし出した わけですけれども、照射も含めて、検査項目を当てはめていくわけです。何件検査をや ればいいのだというのはなかなか難しいところで、これに関しましては、CODEX、 母数にかかわらず一定の標本数について無作為抽出して検査をして、数が増えて問題が なければ、想定される違反率はどんどん下がっていくわけです。そういう統計学的な手 法を用いていまして、例えばこの表を見ていただくと、違反率が1%以下ということを 保証するためには、299件連続して検査に合格する。これを各124群、検査項目ごとに 設定していくわけです。基本はこういった数字を使っています。 ◇ モニタリング検査件数の算出方法(2)  算出方法(2)ということで、これは今申し上げたようなことで具体的なものですけれど も、例えば、これは米穀に関していえば、農薬の検査については、基本は299ですが、 1ランク高いものを設定しています。こういったものは想定されないので0。それから、 あと、組換え、カビ毒、そういったものについてもこういった数字を設定してやってい ます。この検体数の付加というのは、さっきのスライドにちょっと出ていたのですが、 輸入量や過去の違反率、違反内容の危害度などで決めています。 ◇ 厚生労働大臣による検査命令  検査命令のほうですけれども、これは検査命令をする場合のアプローチなのですが、 残留農薬や動物用医薬品に関しては、1回目の違反が出るとモニタリングの検査率はア ップするというふうにしています。現状実態的には3割ぐらいしています。それでもう 一回、違反が出れば検査命令に移行すると。要するに1件目というのは偶発事例ではな いかということもあるので、そこは2件違反が出た場合に検査命令というふうにしてい ます。ただ、健康危害の発生だとか、そのおそれがあるケース、容易にそういうことが 想定される。食品衛生法の条文で言うと、6条というのがありまして、有毒有害物質を 含んでいるとか、それから病原微生物に汚染されているとか、そういった食品衛生法の 基本的な条文なので、そういう健康被害の発生とか、そのおそれが直接想定されるよう なものについては、1回目の違反で一応検査命令というような仕組みにしています。  それから、検査命令の解除については、基本的には輸出国サイドでのそういった対策 を評価するということ。それから、もう一つは、実際に輸入時の検査実績、検査命令な どの結果を見て判断をしていくことにしています。 ◇ 国別検査命令対象品目(平成19年12月現在抜粋)  これは実際に検査命令の対象になったものということで、これは例示ですけれども、 例えば輸出国を問わずに、フグだとか、キャッサバなどもそうですけれども、およそど この国でも一定のそういった衛生上の問題があるケースというものについては全輸出国 ということで規制をしています。  それから、あとは国ごとにそれぞれのモニタリング検査の結果や海外情報に基づいて 検査が強化されているということになります。ここに「条件等」と書いてありますけれ ども、輸出国での対策がある程度進んでいるものについて、それからもしくは想定され ているような食品ではないというものについては除くというようなことをしています。   ◇ モニタリング検査と検査命令  こうして見ていただくと、モニタリング検査というのは、要するにランダムチェック で検査頻度としては、年間計画に基づいて出してくるということで、すべてのものを対 象にしているわけではない。その中から無作為抽出をして、さらにそれを分析するため のサンプルをつくるというプロセスを経ているわけです。  それから、検査命令に関してはそれぞれの輸入ロット、輸入届出について検査をして いくわけですけれども、これについてもやはり抽出検査であり、その中からまた検体を 調整していくということでやっているわけでして、絵で見ていただいてもわかるように、 それぞれ一定の見逃しの危険性はあるわけでして、そういったことを前提にして食品は 検査されているということは参考までに頭に入れておいていただければと思います。も ちろんそういった見逃しがないように、もしくは検査の内容について齟齬がないように ということで、いろいろなサンプリングの管理だとかラボの管理だとか、そういったこ ともやっていますし、サンプリングのランダム性について確保するということも、我々 としてはできるだけの対応はしています。 ◇ 残留農薬等のポジティブリスト制度  輸入食品の問題ということになりますと、近年はポジティブリスト制度の導入という 話と、アメリカ産牛肉の問題というのがありますので、ちょっと各論的に少し触れさせ ていただきますと、ポジティブリスト制度については、ここに書いていますとおり、基 準設定がない農薬等について、一定量を超えて残留する食品の販売等を原則輸入も含め て禁止ということであります。一定量というのは0.01ppmということになっているわけ です。   ◇ ポジティブリスト制度を踏まえた検査体制の整備 ポジティブリスト制度の導入を踏まえた検査体制の整備ということで、監視員の増員 であるとか、検査機器の増設であるとか、それと並行してこういった検査項目を増やし てきています。残念ながら平成20年のまだ数字が入っていないのですけれども、これは まだちょっと検討中でして、ここの場に間に合わなかったということでご容赦いただき たいと思います。 ◇ 残留農薬等モニタリング検査項目の選定方法  検査項目の選定方法ということで、どういう農薬について検査すればいいのかという ことになるわけですが、やはり毒性が高いものは優先的にモニタリング検査の項目に入 れていこうと。それからよく検出されるものということで、国内外で基準値が設定され る農産物の品目数が多いとか、それから実際に使用されたデータもありますので、公表 されている国については使用されたデータも参考にしています。あとは検出頻度という ことで過去の輸入検査、検査命令の対象項目になっているもの、諸外国において同じよ うにモニタリング検査ということでやっていますので、検出頻度が高いものということ も考慮しています。一斉分析法によって測定可能な農薬をなるたけ省力的にやるという ことからいえば、こういったことも勘案してやるということになります。  例えば野菜の農薬検査項目の選定ということで言えば、まずADIで順位つけておい て、諸外国で設定されている品目数の多いものを順位つけておいて順番を決めていくと。 さらにそれに上に書いてあるような内容を考慮して優先順位をつけているというような ことで優先順位を決めています。ただ、現場ではこれをまた実際に検査するに当たって は技術的な検討はかなりしなければならないので、これはあくまで選定の方法であって、 現実には今度ラボ(検査センター)のほうで技術的な分析技術というのをしていくこと になります。   ◇ 米国産牛肉等の対応経緯  米国産牛肉については、皆さんご承知の方多いかと思いますけれども、15年の12月に 輸入を禁止して、食品安全委員会の評価結果を踏まえて、17年12月に再開をしています。 その後、せき柱付きの子牛肉が1カ月ちょっとたってきまして、一時的に輸入手続停止 したのですが、18年7月に再開ということになっています。その後は大きな問題は発生 していませんけれども、細かな米国側の対日輸出基準の遵守に問題があったという事例 がいくつか出てきています。   ◇ 米国産牛肉の対日輸出プログラムの遵守体制  輸出国の体制、これは典型的な例ですけれども、これは農務省の2つの局があるわけ ですけど、この2つの局が対日輸出施設についてチェックをやったり認証をやったりし ています。そういったことをもって対日輸出条件を遵守している。もちろん日本の食品 衛生法とと蓄情報も含めて同等の衛生管理を求めているわけですけれども、そういった ことについてこういった形で担保をしているということになります。 ◇ 米国産牛肉の混載事例の概要  混載事例ということで、いずれも事故的といいますか、構造的な問題とはちょっと思 えないような事例が6件、直近の事例では月齢の条件が20ケ月齢以下となっているので すけれども、21ケ月齢のものが混じってしまったという事例がありました。これにつき ましては、去年の11月以降に輸入されたものについて該当のものがはっきりしています ので、それについて回収命令をかけています。 ◇ 19年度輸入食品監視指導計画監視結果(中間報告)  19年度の監視指導計画の結果ということで、これは上半期のものですけれども、おし なべて、大体去年18年度の半分ということで、そんなに大きな事情変更はありません。 ただ、現時点では、違反件数が、年間で18年は1,500件あったのですけれども、619とい うことで少し少なめということになっています。 ◇ 届出重量上位5カ国の検査実績  届出上位5カ国もそんなに大きく変わっていません。去年の上半期に関して、中国は かなりいろんな報道があったりして大きく落ち込んでいるかというとそうでもないです。 18年間で500万件で500万トンの輸入があったわけで、これは本当に有意に減っているか どうかというのはよくわからないです。その程度のものです。  それから、違反の状況につきましても大きく変わってないですけれども、全体の数は 減っています。個別には、中身まで精査していませんけれども、6条違反などが少し減 っているという状況にあるようです。 ◇ ポジティブリスト制度に基づく違反状況  ポジティブリスト制度に基づく違反状況ということで、制度が入る前の17年と18年の 比較でいうと、これはいろんなところで話題に出ていますけれども、トータルで違反は 7倍ぐらいになっています。19年度で見ると、18年とこれは比較しているだけですが、 1カ月当たりのはあたりの違反数が7.3倍になったのですけれども、18年と19年を比べ ると0.7ということで減ってきているということで、輸入業者の方、輸出国サイドのか なり努力や効果が出てきているのではないかと思います。 ◇ 輸入者の営業の禁停止処分  それから、規制法ですので、こういった行政処分ということもやっています。これは 後でゆっくり見ていただければといいと思いますけれども、このまま営業を継続される とまだ違反なり問題を起こす可能性があるという方に対しては、営業の禁停止というよ うな処分ができるということになっています。それまでに行くプロセスとして違反率の 高い人について行政指導するとか、そんなことをしています。  指導実績は、18年が45社、19年が34社となっています。   ◇ 輸出国における現地調査の実施事例(平成18年・19年)  我々のほうで、港での検査だけではなくて、輸出国での現地調査ということもこんな 感じで、それぞれ問題起きたものについてやっていますし、これをはるかに上回る数の 政府間での協議ということも重ねてきています。輸入時の検査でチェックするというの は、先ほどもご紹介したとおり、非常に限界がありますので、やはり輸出国での対策と いうのは非常に需要ではないかというふうに考えています。   平成20年度 輸入食品監視指導計画(案) ◇ 輸入時に重点的に監視指導を実施すべき項目  大きく3つの項目というふうに先ほど申し上げましたけれども、1つ目が重点的に監 視指導すべき項目ということで、ここは去年のものとそんなに大きくは変わっていませ ん。当たり前のことがずっと書いてあります。要するに審査をしっかりやるということ。 モニタリング検査の実施、検査命令の実施ということです。 ◇ 海外情報に基づく緊急対応  海外情報による緊急対応ということで、時々報道等もされていますけれども、国内で 既に入っているものに関しては、流通状況の調査なり、回収なりというようなことも都 道府県と連携してやっています。   ◇ 輸出国における衛生対策の推進  これは先ほどと同じような話、輸出国の衛生対策の推進ということで、まず日本の規 制がどうなっているかということについて、これはなかなかいろんな国の言葉というの は難しいのですけれども、英語版で日本の基準であるとか、監視指導計画、そういった ことについての情報提供していますし、基準などが改正される場合には、在京大使館、 輸入者、もちろんWTO通報とか、そういったいろんな枠組みで情報提供しています。  それから、輸出国への技術協力ということで、分析技術などについては、国際協力機 構を通じて、20年度は中国にもやっていこうということで、今準備をしています。   ◇ 輸入者に対する基本的指導事項  輸入者に対する基本的指導事項と書いていますけれども、これは国内の事業者と同じ ような内容について整理をしているものでして、これは具体的なものはそれぞれで関係 のものがある方はごらんいただければと思います。 ◇ 輸入者への自主的な衛生管理の実施に係る指導  それから、自主的な衛生管理の実施に係る指導ということで、これも輸入食品という か、輸入に限らず食品の安全確保ということについては、制度上一義的に事業者の方に 義務があるということで、そういったものをサポートする、もしくはそういった責任を 果たしていただくための義務についてきちんと発信していこうということであります。   ◇ 違反が判明した場合の対応  違反が判明した場合の対応ということも、これは通常の手続が書いていまして、最終 的には公表というようなところまで持っていこうということです。   ◇ 平成20年度輸入食品監視指導計画のおもな改正点(1)  主な改正点ですけれども、モニタリング検査を若干増やすとか、検査項目を充実する とか、あと検査命令になっている品目で、輸出国での残留農薬の管理がしっかりされて ない可能性もあるということで、その検証を目的としたモニタリングを強化する。  それから、去年もいくつかあったのですけれども、継続的に輸入されているもので、 特に器具、容器包装、おもちゃなどですけれども、材料が途中で変わっていたというよ うな事案がいくつかありましたので、そういったものの検査もやっていこうと考えてい ます。  そのほかに、輸入者の方でもやはり違反の多い方もあるので、そういった切り口での 検査というようなこと。それから、BSE問題への対応というようなことです。 ◇ 平成20年度輸入食品監視指導計画のおもな改正点(2)  あと輸入者サイドに対して、これは基本的なそれぞれ事項ですけれども、こういった 内容について、もう一度指導を徹底していこうということで考えています。特に去年の 夏に、全国13カ所の検疫所で一斉に同じ内容の講習会をやったのですが、それも今年度 も続けていこうというふうに考えています。    あとは参考資料ですので、また、後の質疑だとか、そういったところでご説明できる 機会があればご説明をしたいと思います。  ちょっと最後、急いでしまいましたけど、以上で私のほうの説明を終わらせていただ きます。どうもありがとうございました。   ○司会 ありがとうございました。  続きまして、基準審査課課長補佐の光岡より「陶磁器等及び乳幼児玩具の鉛等の規格 基準の改正について」、説明いたします。よろしくお願いします。 ○光岡 厚生労働省の基準審査課の光岡でございます。本日は「陶磁器等及び乳幼児玩 具の鉛等の規格基準の改正」ということについてお話しをさせていただければと思って ございます。 (パワーポイント映写) ◇ 陶磁器等及び乳幼児玩具の鉛等の規格基準の改正について  鉛等の規格基準の改正についてですが、昨年でしたか、中国製の土鍋で鉛とかカドミ ウムが溶出されたものが札幌市内で流通をしていたとか、それから、おもちゃで、鉛が アメリカのほうで禁止されたということで回収事例になった騒ぎが相次いだことは皆さ んも記憶に新しいところだろうと思います。  一方で、実は我が国においても、陶磁器等とか乳幼児玩具については、鉛とかカドミ ウムの規格基準というものを設けてございまして、主にそれは我々のほうでは、これは 溶出試験の規格という形で鉛の上限値というのを定めてございます。しかしながら、先 ほど申し上げましたような、そうした事例では食品衛生法上で検査をいたしますと、合 格をしてしまうということで、そうした不良品についての輸入時の検査が十分に行えな いということが問題になったわけでございます。  そうしたこともございますし、また、我が国の国際的なおもちゃとか、こうした陶磁 器等については、我が国から直接輸出するというよりも、むしろ国内に流通しているも のは、ほとんどのものが輸入品が多くなってきているわけでございまして、こういった ときに、そうした現状の鉛等の規制がこのままでいいのかということがございましたの で、鉛等の規制について規制強化を行うということで緊急に措置をとらせていただいた ものでございます。 ◇ 鉛の毒性と摂取量削減  鉛の毒性を先に挙げさせていただいてございますけれども、鉛は、ヒトに対しては生 殖毒性でありましたり、神経発生毒性を有しておりまして、特に乳幼児・子どもさんに 対しては一定レベル以上の血中濃度を超えますと知能や神経の発達に有害な影響を与え るという可能性かあるわけでございまして、そうしたこともございまして、CODEX (FAO/WHO合同食品規格委員会)では、2004年に行動規範というのを定めてござ いまして、各国がこれは鉛の摂取量削減に取り組むように推奨しているわけでございま す。 ◇ 鉛の規制強化の背景  一方で鉛は非常に広く環境中に存在してございまして、例えば、食品などからも通常 鉛がある程度含有されているわけでございまして、あとは大気でありましたり、水であ りましたりとか、こういったところからも摂取をされる可能性があるわけでございます。  日本人1人当たりの鉛の曝露量を計算をしますと、PTWI、週間耐容摂取量と言わ れるものでございますけれども、これのおおよそ今のところ15%程度、小児に関しては 23%程度でございまして、陶磁器とかいわゆるおもちゃなどからの溶出は全体量として どれぐらい占めるのかというのは非常に計算しにいものでございまして、これは溶出の 条件によって鉛の溶出量は変わってきますので、実際にどれぐらい溶出されているのか ということは非常に計算しにくいのですが、実際には食品から摂取されるのと比べると かなり低いのではないかと考えてございます。  しかしながら、こうした中国製の、先ほど申し上げましたように、土鍋、おもちゃか ら相次いで鉛が検出されて、これが水際で防ぎきれないという形になると、これは問題 になってくるわけでございます。   ◇ 陶磁器等の鉛、カドミウムの規制  食品衛生法では、陶磁器等という容器包装の一部ですが、特に陶磁器等になぜ鉛やカ ドミウムが含まれるかと申しますと、陶磁器ですと釉薬、これはガラス質の鉛を含有さ せることによって溶融温度を下げる働きが鉛にあるわけでございまして、昔はこれを非 常に多く含んだ陶磁器等が日本の歴史を通じて大変つくられてきたわけでございます。 これは当然中国でありましたり、ほかのこうした陶磁器等をつくっている国もそれぞれ 一緒でございますけれども、近年はこうした伝統的な陶磁器等についてもだんだん鉛を 使わない方向にあるわけでございまして、諸外国のほうで、EUや米国でありましても 鉛の含有量の規制値をかなり厳しく規制をしてきているわけでございます。  いずれも先ほど申し上げましたように、ケイ酸塩を含む無機化合物を原料としており ますので、この中に鉛が入ってくるわけでございます。 ◇ ガラス、陶磁器、ホウロウ引き製品の現行の規格基準  現状、私どもの食品衛生法の規格基準ですが、現在はこうしたカドミウムの限度値と 鉛の限度値を、これは溶出試験で確認をするわけですけれども、4%酢酸で常温で(15 〜25℃)24時間放置と書いてあります。重金属というのはいわゆる酸で溶出させますと 大変よく溶出してまいります。一方で、水で溶出をさせますと、多少温度が高くてもほ とんど溶出してこないものです。しかしながら、実際にはこうした試験をする際には、 過酷な条件で試験をしないと鉛を測定できないわけでございまして、国際的にも溶出試 験の基準、溶出試験というのは、おおよそ4%酢酸を使って溶出をさせて試験をすると いうことでございまして、私ども現在の食品衛生法の規格基準についても、当時のIS O規格(国際標準化機構)で定められた規格値をもとに、これを食品衛生法上の中に取 り込んで現行の規格になっているわけでございます。   ◇ 陶磁器等に関わるISO規格制定の経緯  このISO規格の制定の実はこの経緯をひもといてみますと、これはもともと1976 年、WHO(世界保健機構)はセラミック製食器からの鉛、カドミウムの溶出を大変危 惧しておりまして、ISOという国際標準化機構に規格の策定を要請したわけでござい まして、そこのISOの中に設けられてございます専門家委員会というのがございます。 これはTC166というところはアドホックに設けられたものですが、食品と接触する陶 磁器製品、ガラスセラミック、ガラス製の食器についての規格基準の検討を行うところ でございまして、その中で検討を行ってきたわけでございます。  それで1981年ISO6486というのがつくられたわけです。このISO6486というの は、いわゆる食品の接触の陶磁器、ガラスセラミック、ガラス食器についての規格基準 を定めているものでございまして、1982年、翌年にISO7086について、つまりガラス 製中空容器についても規格を策定したわけでございまして、我が国ではISO6486とI SO7086をもとにして1986年に規格を制定したものでございます。 ◇ 陶磁器等のISO規格の変更  ところが、ISO規格のほうは、その後、我が国で規格基準を定めて以降、見直しが 行われてございまして、86年にWHOから鉛の曝露量低減の勧告が出され、これを受け てISOのほうで検討が行われたものでございます。  1998年にISO4531、ホウロウ製品の規格が新規に設定されたわけですが、これを皮 切りにいたしまして、99年にはISO6486の改正、2000年にISO7086が改正された わけでございまして、このISO6486、ISO7086というものの中で、鉛とかカドミウ ムの溶出量の規制が従来の規制より厳しくなったわけでございます。   新ISO規格と食衛法規格の改定  私どものほうとしては、こうしたISO規格を「新ISO規格」と呼んでいますけれ ども、この新ISO規格に合わせて食品衛生法の陶磁器等の規格基準の改正を行うべき 検討をいたしまして、国際的に統一された規格設定を我が国に導入するということを基 本的に考えまして、それに合わせてISO規格と食品衛生法の規格、一部矛盾する部分 がございましたけれども、そうした導入に際しての生じる可能性の問題点について検討 した上で、これを新たに規格基準の中に取り込んだという経緯のものでございます。   ◇ 陶磁器の現行規格と改正案の比較  これが実は現行の規格と改正案の比較でございまして、上の段の部分、これは再掲を しておりますけれども、今までの規格でございまして、下の段が新ISO規格に合わせ た形の改正案になってございます。変更のないところは当然ございますが、カドミウム の限度値でこういったところは変更ございませんが、一般に黄色の部分でありますとか、 赤色の部分を見ていただくとわかりますように、基準値を従来のものよりもはるかに厳 しく設定をしているものでございまして、こうした形で現行の規格基準の改正を行うと いうものでございます。  これが今までの陶磁器等の改正の概要でございます。 ◇ おもちゃの規制  これからおもちゃの規制の内容でございますけれども、おもちゃの規制も鉛のほうの 溶出事例で、米国等で回収事例が相次いだというふうに、先ほど申し上げましたように、 今回も食衛法の中でのおもちゃの規制も厳しくするという内容でございます。  現行のおもちゃの規制については、食品衛生法の第62条、この食品衛生法の62条の 規定というのはおもちゃについての準用規定を定めている条文でございます。この中で、 乳幼児が接触することにより、その健康を損なうおそれがあるおもちゃとして厚生労働 大臣が指定するもの、これについて、食品衛生法の規格基準でありましたり、有毒・有 害な物質の規制でありましたり、こういったものの規制がかけられるような仕組みにな ってございます。   ◇ 指定おもちゃの範囲の改正  今回はおもちゃの範囲の改正を行うものと、それから、先ほど申し上げましたように、 鉛の規格基準の改正を行うという2点でございます。指定おもちゃの範囲の改正は、先 ほど申し上げましたように、指定おもちゃの範囲になっていませんと、食品衛生法上の 規制の外になってしまいますので、指定おもちゃの範囲を従来のおもちゃでいいのかど うかということを再度点検いたしました。  これまでの材質によるおもちゃの食品衛生法の規制は、材質による規制が実はござい まして、これは昭和47年に実は指定おもちゃが制定されたわけでございますが、それが その当時から比べますと、30年以上の月日が流れているわけでして、こうした今までの こうしたおもちゃの種類は非常に多様化をしてきているわけでございまして、この多様 化に合わせまして、今まで材質による前提を廃止いたしたものです。  さらに知育がん具、人形と組み合わせて遊ぶようなものとか、乗物がん具と組み合わ せて遊ぶようなもの、こうした組み合わせがん具と呼ばれるようなものも含めて追加を 指定したこと。  それから、がん具アクセサリーというものがございますが、これはアメリカのほうで 鉛中毒による死亡事故が実は報告されてございまして、これも指定おもちゃの範囲に含 めるということの改正を行うものです。   ◇ 指定おもちゃの範囲(現行)  これが現行の指定おもちゃの範囲でございまして、先ほど申し上げましたように、こ れは乳幼児が口に接触することをその本質するおもちゃ、いわゆるラッパであるとか、 歯形面のようなものであるとか、乳幼児が直接口に接触するということを考えているお もちゃでございますけれども、これについては、こうした紙、木、ゴムとかというふう に材質規制があるわけです。  一方で、最近は布製のこうした知育がん具のようなものであるとか、布製であります と、この中から漏れ出てしまうわけでございまして、そうすると食品衛生法の規制の外 という形になってしまっているものです。  それから、これは直接口に接触することを本質するおもちゃではないんだけれども、 口に接触する可能性があるようなおもちゃについても従来は規制しているわけですが、 この乗物がん具などを見ていただくとおわかりと思いますが、(ぜんまい式及び電動式 のものを除く)とわざわざかなり限定をされた形での指定の仕方をされています。これ はぜんまい式とか電動式のものは近くに大人がいて、その大人が注意していただくだろ うということで、あえてこれを除いているのだろうと思います。最近そうはいっても、 チョロQのような、子どもが直接自分だけで遊ぶような、そうした乗物がん具が増えて ございますし、こういったものが乳幼児が口に接触すると、直接口の中に持っていくと いうことも考えられますので、こうした限定を今回は改正をして取り払おうというもの でございます。   ◇ 指定おもちゃの範囲(改正案)  これが改正案で、先ほど要点を説明したものですが、ここで材質を全部限定を取り払 いましたので、単純にこうした乳幼児が口に接触することをその本質とするおもちゃと いう改正案になるわけでございますし、先ほどうつし絵であるとか、起き上がりのよう なものは材質規制を取り払った関係で、こちらのほうの限定を列挙するほうのおもちゃ の中に含めることが可能になったものです。  先ほど申し上げましたように、米国での中毒事件があった、こうしたアクセサリーの ようなものであるとか、知育がん具という最近いろんなおもちゃの種類が増えてきてご ざいますので、こうした知育がん具もこの中に入れると。それから組み合わせをするお もちゃも、例えばハウスのようなものであるとか、電車のレールみたいなもの、こうい った付属品も含めて全部規制してしまおうということです。  この範囲については、私どものほうも、日本がん具協会から提出させていただいたリ ストをもとに、乳幼児が直接使うようなおもちゃが漏れ出ていないかどうかということ についてもチェックをさせていただいたときには、現段階ではこのおもちゃの範囲を逸 脱しているものは今のところはないだろうと考えてございまして、今後もしかしたら、 こうした指定の中で読み込めないものが出てきましたら、順次にこれに加えていくとい う作業を行うわけでございます。   ◇ 規格基準の改正(1)  先ほどは指定おもちゃの範囲の拡大をすると申し上げました。しかしながら、一方で 食品衛生法は個別のおもちゃの規格基準を設定することが可能になってございまして、 ここで鉛の規格基準の設定をしようと考えてございました。鉛は、先ほど陶磁器等では こうした釉薬というふうに申し上げましたけれども、おもちゃの場合には塗料に多く含 まれる傾向にございまして、基本的には塗料の規制を行うことが重要になってくるわけ です。  従来ですと、実は塩化ビニール樹脂塗料というものしかおもちゃの規制の中には規格 基準が定められておりませんでした。なぜかと申しますと、これは昭和47年当時、塩化 ビニールを中心としたおもちゃしかなかったからです。その後、いろいろな合成樹脂の おもちゃが増えてまいりましたし、また、そうした材質も変わってきたということで、 それに加える塗料の種類も非常に多種多様になってきたわけです。したがって、すべて の塗料を対象とする規制にしないと、おもちゃの鉛の規制が十分にできないということ から、すべての塗料を対象とするおもちゃに拡大をしたものでございます。  また、おもちゃは現在大部分が輸入されている状況です。国内製造のものは極めてわ ずかでございまして、ほとんどのものが主に中国などから輸入されてきているという現 状にありまして、そういたしますと、実際の現在の試験対象となっているのは、塗料そ のものを規制対象としていたわけですが、この塗料そのものですと、実は原料の塗料ま で戻らないといけなくなってしまいますので、そこで塗料を試験対象とするのでなくて おもちゃそのものの塗装部分を試験対象とする。これによって輸入時の検査の対応をよ りスムーズにするといった改正を行ったわけでございます。 ◇ 規格基準の改正(2)  先ほど申し上げましたように、やや試験項目が古く、国際規格がおもちゃの規格基準 の中にISO規格というのがございますけれども、このISO規格に基づいて規格を新 たに設定をさせていただくというものです。  重金属試験法というのは、今までは実は比色法で測定をしたわけですが、これですと やはり精度の問題であったりいろんな面で問題が出てきますので、これをより精度の高 い原子吸光光度法であるとか、そうした機器分析法に変えた上でより精度の高い、より 簡便な方法で試験ができるような形に進めたわけでございます。 ◇ 規格基準の改正(3)  それから、乳幼児が飲み込む可能性のある大きさのがん具アクセサリーについても、 鉛の規格を設定したというのが今回の改正内容になってございます。 ◇ 鉛等の規格  これが、具体的にはこうした改正をしたというものでございまして、従来は、これは 重金属とカドミウム(Cd)、砒素(As)という形になってございますけれども、重金属で 比色法ではかれますのは、主に鉛とかでございますので、基本的には鉛をはかっている のとほぼ同じ意味なのですが、1μg/mlという形になってございまして、かなり厳しい ように見えるわけですが、実際はそうではございませんで、この溶出は40℃の水30分で 放置をするという形になるわけでございまして、これですと実をいうと、先ほど申し上 げましたように重金属はほとんど溶出してまいりません。したがって、非常に基準値と しては厳しいように見えるのだけれども、実際に測定をしてみると鉛はほとんど溶出で きないというような試験法になってございます。 なぜ40℃30分放置をしているかという形でございますけど、これは多分に想像ですけ れども、乳幼児がなめると。口の唾液の温度が少し高めに設定して40℃ぐらいだという ふうに設定をされたのだろうと思います。  一方、これは国際規格に合わせますと、塩酸で無理やり強制溶出をさせて鉛を測定す る方法でございまして、重金属、鉛とかほかの金属を溶出させる方法が、実は国際的に は、これが一般的になってございまして、そのかわり値としては非常に大きくなってい るというものでございます。  こちらのほうは、試験溶液の中の濃度という形で基準が設定されてございますが、こ れはいわゆる塗料、塗装の部分の材質1kg当たりどれぐらいの鉛が溶出しているかとい う規格になってございまして、いちがいに直接的には比較がこの値を見てもどちらが厳 しいのかということがちょっとわかりにくい状況ではございますけど、一般論として考 えれば非常に厳しい条件の中で強制溶出させるほうが鉛の規制強化という形では適当だ ろうと判断したものでございます。  かつ、こちらのほうは原子吸光光度法、誘導結合プラズマ発光強度法という方法で精 密にはかるというものです。   ◇ 調理器具・容器に使用される金属の鉛含有量規格  これはおもちゃの鉛の話からちょっと離れてございますが、今回は縦軸に容器包装等 の鉛の規制を強化しようという一環として、調理器具、そうした食器等に使用される金 属、鉛の含有量の食品衛生法の規格基準がございまして、今回はその規格も大幅に規制 強化をするというものでございまして、1番目は食器や調理器具などの金属に使われて いる、そうした鉛の含有量の規格を、従来は10%未満であったものを、実態に合わせる という形になるのですけれども、鉛の含有量0.1%以下という形で規制強化をするもの です。  現実問題として、10%未満、10%前後で流通しているという食器や調理器具は世の中 には実際は存在はしておりません。実は10%とか非常に甘い基準のものは、これは正直 申し上げますと古い基準でございまして、明治時代につくられた基準がそのまままだ生 きていたというものでございまして、現在はこうした金属に使われているJIS規格と いうものがございますけれども、そのJIS規格であったり、諸外国の材質規格、これ それぞれ金属の材質規格は大体これぐらいの濃度で規制がされているものでございまし て、そういった点からもこうした調理器具や容器に使われる金属、メッキ用のスズやハ ンダの鉛含有量の規格を強化したというのが今回の規制強化の内容になってございます。  多少、時間が過ぎましたけど、ここで終わらせていただきたいと思います。 ○司会 ありがとうございました。 4 基調講演 ○司会 続きまして、基調講演に入らせていただきます。まず初めに、株式会社アジア 食品安全研究センター技術顧問、佐藤様より、「中国における食品安全管理体制(残留 農薬検査を中心にして)」につきましてご講演をいただきます。  ここで簡単に講師の経歴をご紹介させていただきます。佐藤様は東京農工大学大学院 農学研究科農薬化学専攻修士課程を修了され、その後、昭和電工株式会社に入社をされ、 残留農薬分析法開発研究、農薬の分解・代謝研究、農薬技術普及業務などに従事をされ ました。退職された後は、財団法人雑賀技術研究所、和歌山大学客員教授、南京農業大 学理学院客座教授などを経まして、現在株式会社アジア食品安全研究センター及び青島 中検誠誉食品検測有限公司技術顧問及び瀋陽農業大学食品学院兼職教授をお務めでいら っしゃいます。  それではよろしくお願いいたします。 ○佐藤 皆様こんにちは、佐藤と申します。どうぞよろしくお願いします。また、過分 なご紹介いただきましてありがとうございます。 (パワーポイント映写) ◇ 中国における食品安全管理体制(残留農薬検査を中心にして)  きょうの私に与えられましたテーマが、ここにありますように「中国における食品安 全管理体制(残留農薬検査を中心にして)」ということなんですが、実はこのテーマで あちこちで話をしておりまして、ああ、あの話聞いたことあるよという方が何人かいら っしゃるかと思います。その方はどうぞ眠っていてくださって結構でございます。ただ し、いびきかかないでください。 ◇ 青島市内  青島の観光案内でございますが、これは日曜日の青島の商業地域の風景でございまし て、日曜日の朝ですので交通が少のうございます。ここがマイカルというスーパーとい うか、ショッピングセンター、これがクラウンプラザという青島では一番高い、高さも 高いんですけれども、料金も高いホテル。この向こう側にジャスコが出ております。そ してこのあたりでしょうか、カルフールがございまして、いろいろショッピングにはと ても便利なところでございます。ごらんいただきますように、片側3車線、そしてここ にバス路線があって歩道があるということで非常に広い道でございまして、夜中の2時、 3時でも安心して歩けるし、街灯がずっとついていまして、新聞も読めるような明るさ でございます。  今度はウィークデーのラッシュ時間になりますと、片側3車線のところに、車が横一 線に4台、5台と入りまして、お互いにクラクション鳴らしながら先を争って進むと。 そして、中国へ行かれた方はご存じだと思いますが、横断歩道も信号もろくにありませ んから、横断する人は車の間を、まさに決死状況で車の前へ出てくる。車はしようがな いからスピードを緩めると、そうすると先へ進むということで、ここにちょっと人が映 っていると思うんですが、ちょうど中央線当たりに横一線に人がずらっと並んでしまう。 そして、対向車の様子を見ながら、またそろりそろりと渡るという状況になってしまい ます。  これはホテルから見たところなのですが、レンガ造りの平屋建ての民間の住居が最近 外国人の目にとまるところはほとんど撤去されてしまいまして、こういう高層なマンシ ョンに移住させられておりまして、どんどん建っていきまして、これはまだ建設中でご ざいましょうか、この裏側にクレーンもまだありますというような状況でどんどん、ど んどん景色が変わります。  実は先週中国へ行っていまして、土曜日の夜帰ってきたのですけれども、空港に迎え に来てくれた車がいつもと違う道を通る。えっ、こんな道できたの?みたいな話でどん どん変わっていくというのが中国でございます。   ◇ 生鮮野菜の輸入量の推移  本題のほうに移りますけれども、まず日本の生鮮食品の輸入でございますが、約100 万トンあります。そのうちの59万トン、約60%が中国からでございます。 ◇ 中国側から見ますと、ちょっとデータは古いのですけれども、2004年の段階で、農 産品の輸出については、日本が33%、EU、韓国、アメリカ、香港、ASEAN、この 辺がそれぞれ10%ずつということで、日本にとって生鮮食品の輸入元は中国であり、中 国の輸出先は日本であるというような日本と中国との関係でございます。 ◇ 中国産冷凍ほうれん草の残留農薬問題の経緯  これは忘れやすい日本人ですから、大分記憶が薄れているかもしれませんが、2002年 のあの冷凍ほうれん草のクロルピリホス事件の経緯でございます。結論だけ申し上げま すと、いろいろありましたけれども、中国では日本向けの冷凍食品を輸出する企業を登 録制にしまして、そして、そこの条件として、20ヘクタール以上の農地を管理すること。 それから、その農地の管理については、農薬の専門家が必ず一人いること。そして自社 あるいは自分の団体、組織でもって残留農薬の検査がきちんとできること。そして検査 の記録をきちんと保管することという条件をつけまして、当局の立入調査がございまし て、それで合格になったものだけ日本向けに輸出を認めるということになりまして、日 本もそれならば違法のものが入ってこないだろうということで現在に至っているという 状況でございます。   ◇ 中国の食品安全関連行政組織  これは中国の国内なのですけれども、食品の安全に関するいろいろな組織がございま すが、一番上の中国質量監督検験検疫総局(質検総局)、あるいは「国家質検総局」と 言っていますが、ここだけが、例えば青島の検疫所の職員も国家公務員でございます。 そのほかのところは、北京政府に国家公務員がおりまして、あとは省や市は、そこの省 の政府、あるいは市の政府がそれぞれ意向を受けてやっているということでございまし て、この質検総局だけが全国的に強大な権力を持っているというところでございます。 中国国内の安全対策 ◇ 中国の残留基準値設定農薬抜粋  中国の国内で、1998年ぐらいでしょうか、上海だとか香港でいわゆる毒菜事件として 中国の国内でも問題になったようですけれども、残留農薬によって食中毒事件が実際に 起きたということが言われております。これは実際に防除のためにまいた農薬ではなく て、どうも生産者が出荷してから、さらに病害虫が蔓延する、あるいは幼虫がどんどん 大きくなって商品価値が落ちるのを嫌って出荷直前に農薬散布をしたり、あるいは農薬 の薬液にどぶっと漬けたものを出荷しちゃったということで、通常では考えられないよ うな付着量であったということのようですが、そんなことがあったということで、中国 政府でいろいろと基準値をつくりまして、特に中国の方々はほとんど炒めて食べますか ら、油については検出してはならないという農薬。あるいは非常に低濃度でしか検出を 認めないというようなことで、かなり厳しい基準値を設けております。 ◇ 無公害食品行動計画  無公害食品行動計画、無公害は当たり前ではないかと我々は思うんですが、そんなも のがやたらに蔓延したので、要するに安全な食品をつくろうよということで、国務院が 2001年4月に制定しまして、実施部隊として農業部、日本でいう農林水産省を指定して 始めた行動でございまして、18種類の農薬について使用禁止とする。9種類の農薬につ いては使用を制限するとか、それからいろいろな安全に関する監視・監督の強化をする。 それから、政策的にいろいろな支援をしよう。北京、天津、上海、深せん、ここにモデ ル地域をつくって、政府が主体的にここにてこ入れをして、そして、あれいいなという ことで、周辺に無公害食品行動計画を広げていこうということで、これはかなり進行し ているようでございます。   ◇ 無公害食品白菜蔬菜基準  これはそのときの白菜の基準値でございます。    無公害食品があって、緑色食品、これは減農薬栽培と言ったらいいでしょうか、そし て日本でもおなじみの有機食品というようなランクがございます。中国の大型のスーパ ーへ行きますと、緑色食品コーナーなんていうのがありまして、富裕層・お金持ちの方 々がここへ集まって買っていると、かなり値段も高いです。   ◇ 高毒性有機リン農薬の三段階規制  さらに、毒性の強い有機リン剤については三段階規制をしようということで、これは 2004年ですが、メタミドホス、パラチオン、パラチオンメチル、モノクロトホス、フォ スファミド、これについては、2004年1月の登録を取り下げると。そして2005年1月 には、水稲、とうもろこし、小麦、綿花、これだけに限定すると。2007年1月からは全 面使用禁止であるというような措置を講じております。   ◇ 中華人民共和国農産品質安全法  そして農産物品質安全法が一昨年の11月1日に施行されました。ここで、初めて、「 初級農産品」と書いてありますが、農作物そのものについての安全法ができまして、こ れは罰則を伴っているとか、いろいろな汚染指定地域で栽培してはいけないとか、いろ いろなことが書かれておりまして、さらに罰金が2,000元から2万元と。  ちょっと古い話なのですが、中国で「万元戸」、年間所得1万元、日本でいうと16〜 17万円でしょうか、これは裕福な農家ですが、万元戸というのは2万元ですから、2年 分の収入が罰金で取られちゃうというようなかなり厳しい法律ができております。  また、観光案内ですけれども、これはたしか上海の市場ですけれども、これが白菜、 これがカリフラワー、巨大なカリフラワーですね。このキュウリなんか、花がそのまま ついています。こんなものが売られております。  これは果物屋さんでございまして、イチゴ、この辺は竜眼でしょうか、こんなものが あります。  これは青島の街で見かけたものですが、大道で売られている魚屋さんですが、エアポ ンプから空気を送り込んで生かしたものを売っているという状況です。   対日輸出対策 ◇ 日本のポジティブリスト制への対応  先ほどの話にもちらっとありましたけれども、ポジティブリスト制度。  これに対して、中国の農産品の輸出相手国、日本が33%ということでダントツでござ いますので、非常に神経質になっております。日本は日本で2002年の冷凍ほうれん草の ような事件をまた起こしてほしくないということもございまして、主に日本から出かけ て行ったようですけれども、あるいはこの中の先生方の中で出かけられた方いらっしゃ るかもしれませんが、10回以上中国へ出かけて行って政府間の交流、説明会をやりまし た。  民間でもいろんな方が行ってやっておりまして、ここにあるのは私が行ったものだけ なのですが、2005年12月には、中国の商務部だとか質検総局、北京から偉い人が大勢 来られて、当初400〜500人と言われていたのが、実際に1,300人集まったそうでござい まして、通路も後ろも廊下の外まで人でいっぱいというような状況でポジティブリスト の説明会をやりました。国外とありますのは、日本から私、それから韓国からの大学の 教授が一人来ていらっしゃいました。  そして、その後、これは山東省でやはり同じような話をせいということで、このとき は、青島と煙台でやりました。これはどちらも日本向けの青果物の輸出港です。  それから、おまえ、中国へ来たんなら北京まで来いということで、北京の農業部の蔬 菜研究所に呼ばれまして、ここでもやはりポジティブリストの話をしまして、ここでも 百数十名来ていました。  それから、これは一昨年の11月1日、農産品質量安全法が施行された日ですけれども、 江西省南昌市で中国の農学会がございまして、ここでやはりいろんなポジティブリスト の説明を私がしてまいりました。    こんなことで、これは煙台のときの風景ですけれども、かなり若い方が大勢非常に熱 心で、ずっとメモもとって、誰も眠る人がいなかったということで、私はちょっと感動 して帰ってきましたけれども、そんな状況ですね。   ◇ 対日主要蔬菜重点検査19項目  そして、このポジティブリスト制度、肯定列表制度というんですね。肯定列表制度の 対策の緊急通知というのが質検総局から出ていまして、日本向けの蔬菜類について、19 種類の農薬について、23種類の作物群について、こういうような農薬をそれぞれ指定し て、日本の検疫所でひっかかるといけないから事前に検査しろという緊急通知が出てお ります。   ◇ 日本向け茶葉重点検査10項目  これは上海のCIQのデータだと思いますが、日本向けのお茶については、こんな項 目を検査しなさいというような指示が出ております。 ◇ 山東出入境検験検疫局(CIQ)の対応  これは質検総局の指示を受けまして、これは山東省のCIQなんですが、日本のポジ ティブリスト及びEUが日本より1年前に、やはりポジティブリスト制度に入りました ので、EUのポジティブリスト制度について積極的に対応するのだということで、どう いうことを要求されているのか、その実態を把握しろと。それから、中国の農産品の輸 出に影響が出るだろうけれども、それを冷静に分析して対処しろと。そして輸出品につ いての、どういうことを要求されているか、あるいは中国でどういう農薬、どういう肥 料を使って、どういう状況で、どのくらい残っているかということを調べて報告せいと。 そして、中国企業(輸出企業)の自社管理体制、それから、CIQの職員の管理体制、 こういうものを向上させるのだということでいろいろ出ていますが、一番最後、4番目 に「計測技術水準を日本の技術に合わせる」と、こういうことが言われております。 ◇ 農薬別農産食品違反事例  これは皆さんあちこちでごらんになっていると思いますが、中国向けの違反事例です が、やはりクロルピリホス、これは従来の残留基準値違反としてクロルピリホスがこん なものから出ていると。  それから、新しくポジティブリスト制度になって基準値が設けられた。これに触れた ものがこんなものです。  そして一律基準値、いわゆる基準値が設けられていないものについては0.01ppmと。 これにひっかかったもの、これは毒性とは関係がないと言うと怒られますけれども、直 接毒性とは関係なく、ふだん使われないはずの農薬である。この農作物にこの農薬はふ だんは使われないはずだというものについては、残留基準でなくて一律基準になってい ると。えいやというとそんな感じですけれども、こんなふうになっていまして、ポジテ ィブリスト制度が導入されてから、中国からの輸入農作物の違反が増えたというような 書き方をどこかの週刊誌でしているのを見たことがあるんですが、確かに増えたといえ ば増えたのですが、従来の基準値の違反は14%、新しく設けられた基準の違反は31%、 そして一律基準値、これが55%ということで、大部分は一律基準違反であったというこ とでございます。 ◇ 平成18年度輸入食品監視指導結果抜粋  これもここにありますように、これはホームページから私が勝手に拾いだしたもので すけれども、残留農薬の違反というのは中国が173件、そしてこんなふうになっていま す。  それから、微生物、中国のは115件。  添加物:105件で、ここへアメリカが出てまいりますが、動物用薬品、ベトナムのほう が多くなっています。  有害・有毒物質、これはカビ毒:アフラトキシンなどですけれども、穀物関係は圧倒 的にアメリカから日本に入ってきていますから、当然アメリカのほうの違反が増えてい るというような状況にございます。 ◇ 主要国別違反率(平成18年)  この違反を、やはり勝手に私が拾いだしたのですけれども、届出件数57万8,524件、 違反が530件。9万1,264件の検査をして違反がこれだけあったと。検査に対する違反 率は0.6%。アメリカのものは19万6,858件ということで、実際に検査をしたのが1万 8,172件、違反が239件、違反率は1%ということで、一般に中国のものは汚い、危な い、汚れていると思いがちなのですが、こうして見ますと、違反率はむしろ中国のほう がアメリカのものより低いです。 中国の食品安全対策(2007年)  ことし中国は北京オリンピックです。国じゅうが沸き返っています。冒頭に写真をお 見せしましたように、今オリンピックに向けて中国国内は物すごく発展をしております。 私はバブルじゃないかと思って非常に心配をしておるんですけれども、非常に発展をし ております。そういう中で、今までは外貨獲得のため、あるいは農業技術を高めて農民 の収入を上げるために輸出食品に力を入れていた。  その輸出食品にいろいろ力を入れていたのですけれども、今度は好むと好まざるとに かかわらず外国人がどんどん中国に入ってきて、中国の食材を食べちゃうのです。これ はえらいことなんです。仮に選手村で食中毒が起こって選手が競技に参加できなかった なんていうことになると、中国が国際的に恥をかくということになるわけですから、昨 年から食品安全対策を猛烈な勢いで打ち出し始めました。   ◇ 中国政府の食の安全に対する取り組み(2007年度)1/5  昨年のもの、私の知っているのでは5つあるのですけれども、そのうちの1つが、3 月1日に出たものですが、残留農薬の検査方法を国家標準として正式に採用するという 中で、これが日本のポジティブリスト制度の分析方法とそっくりでございます。そして、 こんなものがありまして、皆さんご存じのある都市の検疫所へ私は2001年ぐらいに行っ たことがあるんですが、ECDのガスクロ(GC)しかない。そういう中で膨大な数を 検査しているとおっしゃるのですが、「大変ですね」と言いながら「うそこけ」なんて 思って帰ってきたことあるのですけれども、今はGC/MSやLC/MS/MSをどん どん入れまして、日本のポジティブリスト制度と同じ分析方法でやれということが、昨 年の3月1日に指令が出まして、しかも各省、あるいはCIQの事情によって分析方法 が違うというのはだめだと。全部統一しろと。EUあるいはアメリカ、日本の検査にお ける検出限界、これを満たすようにしろと。同じ技術でやれという指示が出ております。 ◇ 中国政府の食の安全に対する取り組み(2007年度)2/5  これが2つ目でございますが、「輸出食品の検査済み標識貼付に関する告示」という ことで、いわゆるCIQマークというのでしょうか、「CIQシール」を貼れと。輸出 食品につては検疫所で検査して合格したという証拠のシールを貼らないと、通関のとき にはねるぞと。要するにそれが貼ってないと通関を認めないということでございまして、 その間のいろいろなデータも保存しろということでトレーサビリティーをかなり徹底し てきております。 ◇ 中国政府の食の安全に対する取り組み(2007年度)3/5  そして7月10日でしょうか、ここで国家食品薬品安全第11次5カ年計画というもの です。ここでいろいろな食品、薬品、外食衛生などの監視作業を増強する。それから5 カ年計画ですから、5年後には国内で流通する食品の検査率を90%、国内で流通するも のはみんな検査をすると。もし何か食中毒事件などがあったときには100%きちんと対 処するというような計画をつくっております。 ◇ 中国政府の食の安全に対する取り組み(2007年度)4/5  これが4つ目ですが、これは国務院の特別規定、食品等の生産物の安全監視管理強化 に関する国務院特別規定ということでございまして、これは技術ではなくて、むしろ管 理監督する側を取り締まるというか、そういうような国務院の特別規定でございます。 食品衛生法、農産物品質安全法、いろいろな法律があるわけですが、どうしても法律と 法律との間に谷間がある。そういうようなものも全部これでひっくるめてしまえという ことで、これまで法律による規定がなかったものを全部がこれの対象になるということ でございまして、当然法律違反の原材料を使ってはいけません。あるいは検査済の証明 書、あるいはそのコピーがないものの販売を禁止するとか、いろいろございまして、違 反した場合に、その違反することによって得た利益は当然没収する。そして、その違反 の食品をつくったその製造装置も没収する。そして、その生産した金額の10倍から20 倍の罰金にする。当然製造免許、販売免許を取り消す。そして、もしそれが何らかの法 律に触れているのであれば、当然刑事責任を問う。  最後、すごいのはこれだと思いますが、先ほど中央政府と地方とかなり違っているよ うな話をちょっとしましたけれども、地方の政府担当者が監視・管理を怠ったというこ とがバレた場合、その人の名前を公表してしまう。もうそれ以上、あなたは昇進できま せんよ。はい、それまでということになるよと。もっとひどければ、降格ですよ。もっ とひどければ、免職になる。さらにこれが何らかの法律に違反していれば刑事責任を問 うということで、管理・監督、監視するお役人がさぼっていたら、そのお役人が処分さ れるというようなことになりまして、一昨年の暮れでしたか、たしか落花生だったと思 いますが、日本になかなか輸入できなくて困っているのだと。あんたのところ、中国で 検査しているそうだけど、あんたのところを通したらうまくいかないかというような相 談を受けたことがあるんですけれども、当時まだ全部のCIQにLC/MS/MS、あ るいはGC/MSが普及していなかったために、日本の要求するところまできちんと分 析できないということになると、担当官が判こを押してしまうと、誰がこの判こをつい たのだということになって責任問われるので、びびって、最初から輸出させないという ようなことで日本で品薄になったということがあったそうですけれども、確認したわけ ではないのですが、そんなことが起こっておりました。 ◇ 中国政府の食の安全に対する取り組み(2007年度)5/5  これが5つ目でございまして、暮れぎりぎり12月26日に全国人民大会の常務委員会 で、「中華人民共和国食品安全法」というのが審議されたそうです。11項目の禁止とい うことで、当然禁止命令物質を有する食品の製造販売禁止であるとか、原因不明で死ん だり、病気で死んだりした動物の肉を加工、販売してはいけないとか、いろんなことが ずっと11項目書いてございますが、こんなことになっているようでございます。 ◇ 中国政府の輸出対応  中国政府の輸出対応ということで、モニタリング検査の強化、通常20%だそうですが、 1回違反があると50%にすると。もう一回違反があると100%検査をする。それから、 もし仮に日本に輸出して、日本の検疫所でひっかかったとすると、中国政府はその情報 を得て、その違反企業の輸出停止処分、企業名を公表するということをすると。CIQ シールを貼ると。   ◇ 日本の対応  日本はどうしているかというと、ここで関係者の先生方大勢いらっしゃるのでちょっ と言いにくいのですが、要するに結論だけ言いますと、中国でいろいろな対策をしてい らっしゃるでしょうけれども、我が日本としては、従来どおり淡々とCIQシールが貼 ってあろうとなかろうと、どういう法律ができようと、従来どおりきちんと検査します よというのが日本の立場でございます。CIQシールが貼ってあれば、絶対大丈夫とい うような実績が、何年か知りませんけど、積み重ねられたときには考えるかもしれませ んが、今は中国政府がどういう対応をとっていても、日本は従来どおりきちんと検査を しますというのが日本の立場ですよね。ここであまり変なことを言うと怒られます。    ここは、実は宣伝でございますが、これは私がにやけて映っているのですが、こんな 建物で、日本の企業20社から出資をしていただきまして、それから、中国の政府系の組 織から20%出資して、日中合作の日本向けの食品の分析、現在のところはそうです。い ずれ中国国内、あるいはヨーロッパ、アメリカ向けにも検査をしようとしておりますが、 もちろん山東省のCIQの検査の下請もさせていただいております。   ◇ 検出農薬上位20種類(2007年1月〜12月)  これは私どものこの研究所で検出された農薬のベスト20でございます。これは違反と いうことではありません。こんな農薬が、こんな順番でこの程度検出されているという ことで、もし、これから中国から何か輸入するときに何を検査したらいいかというとき には、これを見ていただくと、違反かどうかは別としてこんな農薬がよく出てくるとい うことでご参考になるかと思いまして載せました。  私どもで大体年間1万件弱検査しておりまして、何らかの農薬が出てくるのが約1割。 そして違反は作物によって変動するのですけれども、大体1〜2%でございます。検査 した農薬の延べ数から言いますと、0.05%ぐらいの率で違反が出ています。これは当然 違反ですので日本向けには出荷されておりません。 ◇ まとめ  早口で何を言っているのかわからないでしょうけれども、まとめでございますが、農 産物の輸出入というのは、日中双方の非常に重要な課題でございます。そして中国の人 たちも今どんどん安全意識が高まっております。そして、あの不幸な文化大革命でいろ いろなものが否定されましたけれども、その後、黒い猫でも白い猫でも、ネズミを捕る 猫はいい猫だということで結果主義。それがややもすると拝金主義に走ってしまってい るということで、今その思想をまた先進国並みに変えていこうということで、今いろい ろな努力をしています。  そして日本の、あるいはEUのポジティブリスト制度ができた。そして北京オリンピ ックが始まる。2010年には上海万博があるぞ。外国人がどんどん来るぞということで中 国人の意識改革をいろいろと今図っております。  そしていろいろな制度、法令も整備をしております。何よりも強いのは共産党の一党 独裁の国家でございますので非常に強い指導力、発言権がございます。行動力がござい ます。そして中国は物すごい勢いで今変化しています。ちょうど今の中国が、日本の昭 和38〜39年から41〜42年ぐらいの状況かなと。ダイオキシンの問題にしても、モラル にしても、いろんなことがそうではないかと思いますが、中国遅れていると言っていて 本当にいいのでしょうか。もうこの北京オリンピックが終わったら、遅くとも上海万博 が終わったときには、今の日本並みに、少なくとも制度、法律その他は変わってきてい ると思います。うっかりするとすぐ抜かれてしまいます。「あああそこのは……」なん て言っていてはいけないのではないか。もっと気をつけなければいけないのではないか と思っております。  そして、そのために、中国の農作物は、汚いとか、農薬汚染じゃないかとか言ってい る時代ではもうないのです。もっともっと我々のおいしい安全なきれいな、こういうも のをもっと輸出する方向に、もっと守りから攻めに転じなければいけないのではないか と、こんなふうに思います。  それから、最後ですけれども、昨年のあの中国バッシングみたいないろいろなマスコ ミ報道、あれはちょっと異常ではないか。私はあえて「お化け屋敷効果?」と。うちの 新聞見てごらん、怖いこと書いてあるよ。うちのテレビジョンもっと怖いこと報道する よということで人を集めている。果たしてそんなことでいいのか。皆さんこういう報道 には踊らされないでください。  以上です。どうもありがとうございました。   ○司会 ありがとうございました。  続きまして、基調講演2番目でございます。食品の流通販売をされている事業者でも ありますとともに、消費者運動にも積極的に取り組んでいらっしゃるということで、本 日は、日本生活協同組合連合会品質保証本部商品検査センター長の和田様にお越しいた だきまして「日本生協連の輸入食品の安全確保の取組み」についてご講演をいただきま す。それでは、どうぞよろしくお願いいたします。 ○和田 日本生協連商品検査センターの和田と申します。どうぞよろしくお願いいたし ます。それでは、スライドをつくり過ぎたきらいがございますので、どんどんとまいり たいと思います。 (パワーポイント映写) ◇ 日本生協連と会員生協  これは日本生協連と会員生協、日本生協連が連合会となって各地に地域生協、職域生 協、大学生協、学校生協ということで、おおむね地域生協のところで1,700万人ぐらい の組合員さんがいるということでございます。 ◇ 組合員数推移  組合員数の推移を年度ごとに見ますと、今、2,400万人ぐらい全体で加入なさってい るということです。 ◇ 日本生協連の主な事業と活動についての活動  日本生協連の主な事業と活動についてのご紹介ですが、(1)、(2)、(3)と簡単に書いてご ざいますけれども、大きく商品事業、こちらには共済、福祉ということも含まれており ますけれども、共済のところは生協法の改正によっていずれ日本生協連の中に共済事業 というのがございましたけれども、そちらを分離するという方向にございます。  (2)策提言・社会的課題の活動ということで、こちらも食品の安全を守る取り組みとい うことで行政、さまざまなところに働きかけたり、消費者問題への取り組みももちろん でございますが、環境保全、食育などに取り組んでおります。  くらしの助け合い・福祉の活動ということで(3)、こちらも私ども生協の特徴的な活動 の1つかと存じます。  (1)事業のところですが、コープ商品は約7,000品目、食品が約5,500品目、年によっ てある程度品目数は変わってまいりますが、今のところ大体このような推移とご理解い ただければと思います。 ◇ 日本生協連の考え方と取り組み  基本的な食品の安全・安心についての考え方をこちらにお示ししております。  「安全」、私どもの考え方としては、科学的な安全を追及する取り組みなんですが、 科学的な水準というのは年々と上がってくるということを基本に考えますと、新たな知 見がどんどんと出てくる。それによって評価、私ども食品添加物やそういった化学物質 について評価をしている機関もございますけれども、そちらの評価結果が変わることも ある。あるいは私どもが評価していなくても、社会全体で変わってくることもあるとい うことで、そんな中で仕組みをつくり上げていくというのが私ども安全の基本的な考え 方でございます。  「安心」については、「一人一人が感じる評価」と書いてございますが、いくら安全 ということでも不安とか不信が先に立つ。昨年度のような出来事、今も起こっておりま すけれども、ああいったことがございますと、信頼していいというようなことにはなら ないだろうなというふうに思っております。組合員・消費者の信頼を得るためには、し っかりと情報提供、これも迅速なことが必要だというふうに感じておりますけれども、 組合員・消費者としっかりと信頼関係を築き上げることは安心につながるというふうに 考えております。 ◇ 「食品の安全」の課題  食品の安全の課題として、私ども3つのメインの課題がございます。消費者運動と事 業活動の両面からということで、先ほども申し上げておりますが、(1)から(3)のところま で、調査・研究の推進、社会的な取り組みの推進、そして、安全・品質・安心を追求し たコープ商品を開発していくと。事業面での貢献といったことが3つの課題として挙げ られます。   ◇(1)食品の安全・品質の調査・研究  最初に挙げた1番目の食品の安全・品質の調査・研究といったところにつきましては、 私ども独自で自主的な日本生協連の食品添加物や家庭用品や自主基準をつくっておりま すけれども、あるいは行政のほうに政策を立案したり、あるいは内部的な政策を立案し ていくといったようなことをつかさどる部門、そういった仕事もしておりますし、組合 員からのご意見、商品苦情の受け付けもいたします。あるいは品質管理活動、それから、 いろいろなところに出かけて行って情報を入手して、それを自分たちの仕事に生かして いくと調査・研究の部分、それから、検査を行うと、独自の検査センターを持っている ということでございます。  これを主につかさどっていますのは、2007年度から設けられました品質保証本部とい うところ、4つの部署がございまして、くらしと商品研究室、安全政策推進室、商品検 査センター、名前的にはそのものズバリで見ていただければ、何をやっているのかとい うのは大体おわかりになっていただけるかと思います。 ◇ 安全・品質の専門分野と連携  こちらはおわかりいただけるというふうに申し上げて、詳細をここに示しております が、後でごらんになっていただければと思います。全員で今、正規職員で98名、全部働 いているものを含めますと、130名ぐらいで本部を構成しております。 ◇ 安全・品質・表示に関する業務  写真も少し載せようかと思いまして、こちらに検査の風景、微生物検査と残留農薬検 査のところですが、品質保証部が工場点検に行っているところ。くらしと商品研究室の ところで表示点検、あるいは商品テストを行っているところを載せてみました。   ◇ (2)社会的発信・運動の分野  2番目に社会的発信・運動の分野ということで、行政へ働きかけていくということが こちらにございますけれども、もちろん海外の生協に私どもの活動を紹介したり、海外 の生協の取り組みを一緒に交流する。それから国際動向も調査しながら、日本でどうい った施策が必要なのかというようなことも調査し交流をしております。 ◇ (3)コープ商品の開発・改善・供給  3番目にコープ商品の開発・改善・供給ということで、事業関係の部署、こちらが日 本生協連の商品事業の3つの基本と5つの付加価値とちょっと小さいのですけれども、 これらの考え方に基づいて商品政策を実行していくと。その中に原材料使用管理やアレ ルゲンだとかGMOの情報を管理していく。膨大な量になりますけれども、取引先の協 力を得ながら書類等を提示いただきながら、自分たちのデータベースを構築して商品の 管理をいたしております。 ◇ 「食品の安全」のフレーム −取り組みの3つの分野−  今まで申し上げました3つの安全の分野について図でまとめますとこのような形にな りますということです。お互いにかかわり合って、それぞれ各地の生協、あるいは社会 的に貢献しようとすると、社会の皆様からいろいろなご意見をいただく、いろいろ働き かける。そして私どもの活動に対してご意見、政策などが出てくるというようなことで、 そのまたシステムをこういったものがばらばらに働かないで、しっかりシステマティッ クに働くためにマネジメントシステム、商品基準・表示基準、原料管理・仕様管理とい ったようなことでISO9001の規定の中でマネジメントシステムを運用しながら、これ らをしっかり有機的に働かせようというのが私どものシステムであります。   ◇ 食品の輸入量増加の背景  輸入食品のお話に入る前に、輸入量の増加の背景について、こちらにお示ししました。 もちろんこれは皆様ご存じかと思いますけれども、価格差なんていうのも非常に大きい のかなと思いますけれども、大体皆さんがご存じのところかと思います。 ◇ 中国からの野菜輸入量の推移  中国からの野菜輸入量の推移ということで、先ほど佐藤さんのところでもご紹介があ ったかと思うんですけれども、年々増えている。ただ、2002年のところは、これは輸入 ほうれん草問題で若干落ちているようなところがありますが、ならしてみますとだんだ んと増えてきているということでございます。 ◇ 食品をお店で購入するときに見るパッケージ表示  私どもで食の安全に関するアンケートを実施しておりまして、毎年実施しております。 これは2007年の秋に実施したアンケートの結果でございます。まずは、食品をお店で購 入するときに表示がございます。大体裏面にございます。表にも強調コンセプトの表示 があったりしますけれども、どこどこ産で採れたとか、それについてどこをごらんにな るかということなんですけれども、「原材料の原産国」、ここの矢印のところ、それか ら「製品の原産国」について、赤の棒グラフは、「改善してほしい」あるいは「必ず見 る」、「確認する」というところが多くなっております。「改善してほしい」というと ころは一番多いのが原産国にかかわるところ。 ◇ 加工食品購入時重視する点  そして加工食品を購入時重視する点ですけれども、この矢印は2005年から3年間でか なり伸びているなといったところを見やすく、見やすくというか、強調したものですけ れども、やはりここでも「安心できる原産国であるかどうか」といったところが非常に 伸びているし、かなり重視されている。 ◇ 生鮮食品購入時重視する点  生鮮品についてもまた同じようなことがいえます。見てとれます。   ◇ 「食品に関する安心感・不安感」  これは農水省で、平成18年、一昨年になりますけれども、消費モニター第1回定期調 査ということでやられたのですが、上半分は国産関係、下半分は外国産関係ということ で、色が全然違うということでございます。「不安に感じる」あるいは「どちらかとい うと不安に感じる」というのが外国産ということで、消費者にとって輸入品、外国産と いうのは非常に興味があるし、必ずパッケージを見るというようなところもあるしとい うことで消費行動にあらわれているのかということであります。   ◇ 食品の安全・品質管理の重点  これは一般的なというよりは、日本生協連で食品の安全・品質管理の重点というふう に考えているところですが、もうこれはきょうお集まりの皆さんの中にもよくご存じの 方いらっしゃるかと思います。食品に使用される原材料・資材の由来、その使用方法、 これをしっかり把握するというのが非常に大事かと思います。  それから、製造ライン、工場、ここがどんな雰囲気なのか、どんなライン、業務ライ ンというのもありますね。工場のラインもありますけれども、業務のライン、あるいは 工場長さんと働いている方がどんな関係なのか、非常にいろいろと複雑な状況もあるか もしれせんが、統率がとれてしっかりみんな意思統一しながら動いておられるのか。教 育はなされているのかといったことも非常に大事かと思います。原料品や中間品のトレ ーサビリティー、これは先頃かなり言われていることですし、過去の製造履歴はどうだ ったか。以前問題がなかったかというようなことも私ども重視をしております。それか ら、何かあったときにしっかりと振り返ることができるかということも非常に重視して いる点でございます。そして自分たちでの検査、工場を点検する。それから商品にかか わるお取引先やおつくりになった、私ども商品がすべてOEMでございますから、商品 にかかわる情報を組合員から寄せられたものを非常に有効な情報源となります。  こちらに書かれてあることは、例えば原料管理のガイドラインを私どもで持ちまして、 お取引先の皆様に原料管理はどうされているか。中間製品をどうされているか。工程管 理はどうされているかというのは、アンケートを行ったりもいたしますけれども、私ど ものほうから、この点についてよく教えてくださいということで、工場へ伺わせていた だくということもままございます。 ◇ 日生協コープ商品のライフサイクルと開発工程  これは日生協のコープ商品のことについてですが、商品、開発からリニューアル、廃 版までをライフサイクルと見立てて開発工程がいろいろございますけれども、その都度 いろんな段階で、いろんな活動を、いろんな部署がやっているというようなことをあら わしたところでございます。開発の意思決定に際して商品を決めていくに当たっては、 取引先を選定させていただく商品をどういうふうにつくるか指針を決めさせていただく。 それから、工場について、初めての工場であれば必ずですけれども、どのような工場で つくっていただけるか。どんな管理をされているかというのを点検させていただいてか ら工場を選定させていただきます。これは国内も海外も一緒です。実際にその製造工程 でつくられた試作品を検査にかけながら、もちろんこの事前の原料の段階でも、どのよ うな原料を使うかの検査もさせていただきますけれども、そして初回生産で3ロットの 成分の検査を行いながら、安定した生産が行われているかどうかを確認しながら、これ がずっと供給中の商品の定期的な検査ということでぐるぐる回っております。 ◇ 日生協における商品の安全・品質確認、検証の流れ  これは検査を主体に、真ん中のほうに持ってきて、ちょっとわかりやすく書いてみよ うかなと思ったのですけれども、後でごらんいただければと思います。 ◇ 検査対象  私どもの検査対象については、新規開発品あるいは改善品、開発検査というふうに呼 んでおりますけれども、基本的にはコンセプトとか、こういう品質でつくっていただく といって決められた内容について、設計品質をしっかりと点検するというようなことが 主体になります。それから、供給中の日生協コープ商品、これは主には製造品質を確認 するということになります。  市販品は日本生協連の取扱商品でも何でもないんですけれども、世の中の実態、日本 生協連の商品の実力を知るという言い方になりますけれども、そういった意味でモニタ リングを行っているものでございます。 ◇ 検査による安全・品質の確保  こちらが検査の機関に私どもなっております。  検査部門におりますので、検査による安全・品質の確保を事例をもって紹介させてい ただきたいと思いますが、残留農薬と動物用医薬品、食品添加物とございますが、その ほかにも微生物、食品の包材、家庭用品の検査も行っておりますし、アレルゲンの検査、 それから最近始めたばかりですが、肉種の検査といったようなところでいろいろなバラ エティに富んだ検査を行っておりますが、今回は事例紹介として、この2つをご紹介い たします。 ◇ 残留農薬、動物用医薬品の検査  残留農薬、動物用医薬品の検査については、基本的に発売前の原料検査と、それから 定期的な検査が主になります。ポジティブリスト制がしかれて、これは基準が厳しくな ったというふうにとらえていいかと思うのですけれども、私どもが取り扱っている商品 で違反の可能性があるものを重点的にチェックしようということで、後でご紹介いたし ますけれども、重点管理品目、大体約100といっためどでやっておりますけれども、2006 年度は88ぐらい。そこで重点調査、重点的にこの産地を調査しようという品目、ここは ちょっと少ないのですけれども、16ぐらい。2006年度は中国を重点的に調査をしており ます。 残留農薬、動物医薬品の検査  ポジティブリスト制に対して基本的にどう見ているかということですが、ちゃんと使 っていれば、食品衛生法違反は発生しない。ただ、国と国との間でいろいろ使い方、法 的な規制、違っているというところから、この辺の差があるところに注意が必要だとい うことです。それから、国内で特に問題になるかと思いますけれども、飛散対策が不可 欠である。そして農場だけでなくて、いろんな場面でポジティブリスト制にかかわるよ うな化学物質、いろいろと問題になるような場面はあるかと思いますので、こういった ところは非常に注意して見ていかなければいけない。 ◇ コープ商品におけるポジティブリスト制度への対応  先ほどの重点管理品目、重点調査品目、コープ商品におけるポジティブリスト制度へ の重点的な対応ということで、原料産地・生産者を限定したコープ商品、私どもに販売 責任のあるコープ商品についてしっかりと見ていきましょうと。定期的に検査もします が、これは毎年定期的に検査を行う。収穫されるたびに原材料を検査しますよと。  それから、重点調査品目、2006年度は中国だと申し上げましたけれども、社会的に関 心が高くて、実態把握が必要なコープ商品についてということで、これもコープ商品に ついて、すべての対象品目について毎年検査を行います。  そして、私どもが通常開発商品の検査だとか定期的な検査で年間、今1,200〜1,300 になるかと思うのですけれども、これは経過的に、あるいは開発されるたびに検査を行 っていくという検査の体系になっております。   ◇ 日本生協連における最近の残留農薬検査から  日生協で、これはいろんなところでご紹介しておりますけれども、最近の残留農薬検 査からということで、2007年度はまだ集計中でございますが、だんだん数字が少なくな っていると。パーセンテージが減っているというふうにはあまり見ておりませんが、私 どもはたったの1,000検体やっているだけですので、これは農薬についてです。最近の 検出事例としては、輸入品3つと国産2つ挙げておりますが、06年に2004年産、2005 年産、こちらはまだ原料としてお使いになっているところがあったということで、この 原料を使う前に検査をしてみたところ、こういった農薬が出てきたと。一律基準だった のは枝豆だけなんですけれども、こちら上のほうは、残留基準から暫定基準だったので すが、それぞれ基準値を超えたということで、輸入のねぎを使う予定でしたが、国産原 料に切り替えたり、いちごのジャムの原料だったのですけれども、当該のロットを撤去 させていただくと。原料ロットをもう使わなくしたということですね。使う予定のもの を使わないことにした。それから、にらについても、同じ国内だけれども、別の産地に 切り替えた。みつばは、これは国産のものですけれども、栽培されていた圃場を特定で きましたので、こちらの圃場は一たん除外させていただいて、その後、追跡調査をして 大丈夫であれば、また使うというような対応にしております。  こちらは市販品ですので、随分たってから検査したら、あららということで、0.6ppm ぐらいプロチオホスが出てきたというものでした。   ◇ 農薬等に関する輸入品違反件数の増加  こちらは、先ほどからいろいろとご紹介がありますので割愛をいたします。   ◇ 国別の主な違反内容(2006年)  2006年の主な違反内容についても、これは昨年もご紹介があったものですので飛ばさ せていただきます。 ◇ 残留農薬検査の国別実施状況  日本生協連での検査についてですが、国別にはこういった感じで、国産が大体4割強、 中国が大体4分の1弱ぐらい、続いて米国、タイというふうになってきておりますが、 結構中国産の原料を使う、あるいは中国でつくっているという商品が多いものですから、 こうやって国産の次に中国がきているものと。今の世情を反映しているかと思います。 ◇ 中国産サンプルからの検出農薬  これは特に意味はありませんが、中国産からよく検出される農薬として挙げさせてい ただいたものです。ただ、最近になって、またほかの農薬が使われ出だしているという ようなこともありますし、私どもの農薬の検査は大体400項目ぐらいですので、カバー できてない面もあるかと思います。もう少し項目も拡大していかなければいけない。   ◇ 残留農薬等の検査の際に重視する点  残留農薬等の検査の際に重視する点ということで、私どもが検査する際には、世界各 国で生産される原料を使用しているのだと。だから、これらの状況に対応するにはでき るだけ多くの対象物質、農薬も動物用医薬品も同じようにいえるかと思うのですが、検 査していくことは必要だと思っています。   ◇ 残留農薬等の検査の際に重視する点  対象原料を選択したり、検査をするのに何をやったらいいのか、あるいは項目を選択 する際にこういったことを、先ほども厚労省のほうでご紹介がありまして、何かかぶる 面があるなと思って見ていたのですけれども、いろいろ出荷量だとか問題になっている 事例、毒性なども含めて調査しながら優先順位を決めて検査項目を選定する。あるいは 原料の検査、どこの何をやったらいいだろうといったのを選定していっていると。その キャパシティ1,200、〜1,300と申し上げましたが、その中で検査を行っているというこ とでございます。 ◇ 食品添加物の検査  続きまして食品添加物の検査ですが、こちらについても、いわゆる原料についても、 漂白がなされているか、なされてないか、そういったところでの検査、あるいは試作品、 初回生産品でももちろん検査をしております。  日本生協連としましても、食品添加物について独特の区分を持っておりますが、不使 用にしているもの、管理添加物の中で留意使用としているもの、これらを安全性評価に 基づいて運用を決定しています。そして55あるのですけれども、保留添加物としている のは、現時点では安全性評価が未了であって、基本的に使用を避けようといっているも のです。   ◇ 食品添加物管理・基準の運用  基本的には、食品添加物については安全性評価を評価している私どもの内部の機関も ございますので、そちらの評価を第一義としていくということです。もちろん国際評価 なども参考にしてまいりますが、できるだけ内部でも評価をしてまいると。それから、 必要最低限度において使用する。科学はどんどん進歩しますし、そういった知見によっ て再評価、見直しを不断に継続する。 ◇ 管理添加物と保留添加物  それから、管理添加物と保留添加物について細かく少し考え方はこういうものですと いうのを書いてありますけれども、こちらはお読み取りをいただければというふうに思 います。   ◇ 食品添加物(各国の規制の違い、登録の有無 例)  私どもが検査をする際に、食品添加物ですが、酸化防止剤で言いますと、各国あるい は機関、ヨーロッパ、アメリカ、CODEXによって登録が違います。基準がある、な い、登録状況が違っているということで、世界各国からいろんな原料が入ってくる、食 品が入ってくるとなりますと、そうするとこれらを網羅するような検査を1つ1つやっ ていては大変ですので、網羅するような検査をできないかということで、今自分たちで やっているところでございます。   ◇ 食品添加物(日本生協連の検査結果1/2)  この辺の物質は一緒にやっちゃうとか、これにあと10物質ぐらい足してやっているわ けですが、2002年〜2006年にかけて、括弧内は検出した数を書いてあります。安息香酸 は非常に多く出ているなというふうなところが見受けられるかと思いますけれども、こ れは天然に含有されるものの、それがちょっと嵩上げしているというふうにご理解いた だければと思います。   ◇ 食品添加物(日本生協連の検査結果2/2)  こちらは単一の方法で、単項目で検査をしている、非常に面倒くさいのですけれども、 3つでございますが、大体このぐらいの数。それから甘味料については、今一斉で分析 をやっておりますので、主に海外で使われているかなというような甘味料もあれば、日 本生協連で留意の添加物としているようなものについても検査数を増やしてきておりま す。   ◇ 日本生協連における検査の役割  日本生協連において検査の役割、こちらは検査というのは、商品の品質保証、安全・ 安心ということで言いますと、そういった中の手段の1つであるということです。検査 で全部解決するわけではないですよと私どもの検査センターにことしは一昨年の3倍ぐ らいお客様いらっしゃっていますけれども、皆さんにご説明するのはそういったことで す。  それから、実態をモニタリングすることによって商品の安全性、品質にかかわる知見 を積み重ねていって、モニタリングを積み重ねることによっていろんな情報が得られま すが、そして、コープブランド、私どものプライベートブランドの品質保証に貢献した いと考えております。そして分析して解析した結果が、最終的には、予知、予防につな がればといった願望というか、そういったことでありたいと考えております。  それから、生産・製造現場での管理状況、法制度などいろいろと変化しますけれども、 そういったことをちゃんと把握して、検査のデータも社会的な働きかけ、こういったと ころへ発信できるような形にその一助になればいいなというふうに考えております。   日生協の安全、品質確保・検証の取り組み  こちらは、日生協の商品の安全性・品質の維持向上というふうに書いて書いてござい ますけれども、品質確保、検証の取り組みの基本的な考え方として、今、これから強化 しようとしているところでございます。商品の使用管理、リスク評価をしっかりしなけ ればいけない。これはどういうふうにしていかなければいけないだろう。そうするとパ ートナーとしてのお取引先がどのような経営をなさっているのかとか、どういった工場 の管理をなさっているのか。どういった商品を出しておられるのかというようなところ も非常に密接にかかわってきます。コンプライアンス面も私どももそうですが、お取引 先についてもかかっているかと思いますけれども、こういった面でのしっかりといろい ろ考えをまとめながらやっていかなければいけませんけれども、リスク評価、商品基準 や表示基準の体系見直しを強化するとか、あるいは商品設計や表示の点検、こういった ところも品質保証本部として内部でしっかりサポートしなければいけないと考えており ます。   ◇ 日生協の安全、品質質確保・検証の取り組み  それから、組合員、会員、社会への信頼づくりとして、もう一方のほうの取り組みと して、顧客情報を活用しながら、自分たちのマネジメントシステムを充実させて、社会 的提言機能、広報活動という面でもしっかりと発言をしていく、政策を考えていくとい うことが大事だと思っています。そういった上で、迅速で正確な情報を組合員、消費者 に提供する。そしてリスクコミュニケーションができていくのかなというふうに思って おります。 ◇ 食品の安全性、品質確保の取り組み  食品の安全性、品質確保の取り組みということでお話してまいりましたけれども、フ ードチェーンにおけるアプローチということで、生産から製造、消費者の手にわたるま で、そこまでしっかりとどういうふうに有機的に連動させながら私たちの活動を結実さ せていくことができるかということが非常に大事なことだと思っております。  そして、先ほども申し上げましたけれども、消費者からの強い信頼感を得るリスクコ ミュニケーションは非常に大事なことだと思いますが、私わたちのシステム自体も検査 だけではなくても、総合的な取り組みとして強化していく必要があると考えております。    少々時間をオーバーして申し訳ありませんでしたが、これで終わらせていただきます。 ありがとうございました。 ○司会 ありがとうございました。  それでは、ここで10分程度休憩を設けさせていただきたいと思います。パネルディス カッション及び意見交換は3時30分から開始したいと思いますので、それまでにお席の ほうにお戻りいただきますようによろしくお願いいたします。 5 休 憩 6 パネルディスカッション ○司会 それでは時間となりましたので、これからパネルディスカッション及び意見交 換を行います。  私のほうから、まず初めにパネリストのご紹介をさせていただきます。壇上、皆様か ら向かって左側の2番目の方から順に右手に向かってご紹介いたします。  まず初めに、食のコミュニケーション円卓会議代表・市川まりこ様です。  続きまして、サントリー株式会社品質保証部課長・芝弘孝様でございます。  続きまして、輸入冷凍野菜品質安全協議会事務局長・丹野修様です。  続きまして、先ほど講演いただきました日本生活協同組合連合会品質保証本部商品検 査センター長・和田伊知朗様です。  続きまして、同じく講演いただきましたアジア食品安全研究センター技術顧問・佐藤 元昭様です。  続きまして、厚生労働省食品安全部輸入食品安全対策室長・道野でございます。  続きまして、厚生労働省食品安全部基準審査課課長補佐・光岡でございます。  最後に、本日のコーディネーターを務めます、皆様から向かって一番左側となります けれども、厚生労働省大臣官房参事官・牛尾でございます。  以降のパネルディスカッション・意見交換の議事進行につきましては、牛尾のほうに お願いをしたいと思います。それではよろしくお願いいたします。 ○牛尾 それでは早速ですが、進めてまいりたいと思います。壇上に7名の方にお上が りいただいておりますが、そのうちの4名の方には、既に講演ないしご説明をいただき ましたので、フロアから聞いていただいておりましたそのほかの3名の方に、日頃のご 活動から感じていることなど、少しお聞きしたいと思っております。順番に市川さん、 芝さん、丹野さん、それぞれのお立場で1〜2分程度、きょうの講演をお聞きになって 感じられたこと、あるいはご質問等があれば、よろしくお願いします。 ○市川 皆様、こんにちは。食のコミュニケーション円卓会議の代表をしております市 川まりこです。  この円卓会議は、大学の公開講座を母体にしてできた市民団体です。食にまつわるさ まざまな問題についていろいろな立場の人たちが円卓を囲むように行う学びや対話の中 から得られたものを、身近な人たちや社会に向けて伝えていきたいという思いで活動を しております。きょうはこのような場で発言の機会をいただきましたことを大変うれし く思っております。  輸入食品について感じていることと言われますと、まあ無条件に出てくるものは、先 ほども何回も出てきますけれども、不安だとか危ない、あるいは毒とか、基準値違反と か、回収とか、そのようなネガティブな言葉が次々にイメージとしては浮かんでまいり ます。ただ、言うまでもなく、私たちが住んでいるこの日本というのは、食料の大半を 輸入に依存しているという現実もあります。私たちが住んでいるこの日本は、世界から 見ると、健康で長寿な国と言われておりますし、またおいしいものを安全に食べられる 国ではないかとも言われています。それなのに、なぜこのようなネガティブなイメージ だけが浮かんでくるのかなと思っております。これは私だけがそう思っているのではな くて、いろいろな調査、データなどを調べてみると、輸入食品に関しては約9割の人た ちが何らかの不安を持っていると答えています。つまり、日本の輸入食品の安全性のこ とについて、消費者の安心につながっていないという現状があると私は感じております。  きょうはどうぞよろしくお願いいたします。 ○牛尾 ありがとうございました。それでは次に芝さんお願いします。 ○芝 サントリーの品質保証推進部の芝と申します。本日は事業者を代表して参りまし た。私は日本輸入食品安全推進協会の運営委員も兼ねておりまして、この辺も含めてき ょうはお話しができればと思っております。  先ほどから食の、特に輸入食品の安全とか安心の話がいっぱい出てきましたが、今も 市川さんから不安という言葉が出てきましたけれども、私どももこれについては非常に 重要な問題だと思っておりまして、事業者として輸入品の安全・安心をどうやって確保 するかということに日夜努力しているところでございます。  その中で、去年中国の問題で結構騒動がありまして、私どもの会社にも中国食品の安 全は大丈夫かというお問い合わせを多数いただきました。このときの事例として思いま したのは、安全については我々サイエンスで確保できますが、これだけではだめで、お 客様の安心のために、当社がしっかりやっているということを説明してあげなければい けないということだと思いました。例えば、私の会社の商品でしたらウーロン茶という ものをペットボトルとか缶で売っているのですけれども、これの中国でつくっている茶 葉について、残留農薬、これは先ほどの資料にもありましたけれども、中国の違反品の 第4番目にリストアップされています。これはマスコミでも報道されてしまいました。  そのようなウーロン茶葉なのですが、我々が日本に入れているものについてはすべて 安全を確保したものであります。これはもちろん中国の製造現場の農家に至るまでにし っかりと指導を行うということもやっていますし、それから、当社では3〜4年前から 上海に分析センターを立ち上げまして、そこですべてのロットを分析して日本に持って くる前に安全確保を確認しています。こういうような活動を地道にやってきたことでう まくやっているのですよということを、お客様に対して1つ1つ地道にお答えしてきま した。さらにホームページに出して訴えたということで安心していただけたと思います。 だから、こういう活動が大事であると考えております。  以上です。 ○牛尾 ありがとうございました。それでは、続きまして丹野さんお願いします。 ○丹野 輸入冷凍野菜品質安全協議会の丹野と申します。普通は略称で「凍菜協」と言 っております。凍菜協は、国内で冷凍野菜を輸入している食品メーカーの集まりの任意 の団体です。今は19社で構成をされております。現在、専ら中国の民間団体と民間レベ ルで中国産の凍菜の安全の確保の活動を行っています。  本年は、日中でもって協力をして、輸入されている枝豆の安全品質についてもっと踏 み込んで安全の管理基準を作成して、圃場から加工、輸出、そこまでの残留農薬管理を 徹底しようというのと、もう一つ、昨年も実施しましたが、共通資料を中国の凍菜のメ ーカーのラボが参加して、いわゆるクロスチェックを行いました。そうしますと、総じ て中国のパッカーのラボにはレベルが少し開きがあるということもわかりましたので、 ことしはそのクロスチェックをもう少し継続をするということと、もう一歩踏み込んだ、 いわゆる検査技術の指導、機器類のメンテナンスの問題、それから試液、試薬の管理と いったところまで踏み込んだ支援の活動を行っていこうというふうに考えております。  以上です。よろしくお願いいたします。 ○牛尾 ありがとうございました。皆さんもご案内かもしれませんが、今週の月曜日に 非常に興味深い新聞記事がございました。ちょっと持ってきたのでごらんいただければ と思いますけれども、「食の安全・不安83%」という非常に大きな見出しで、昨年の偽 装問題を背景にしまして、食品に対しての不安を、国民の多くの方々持っておられると 書かれています。その中で、特に何が不安かというと、輸入食品が増えているというの が57%の比率。それから、毎回この種のアンケートをとると、特段根拠はあまりないの ですが、残留農薬と添加物というのが常に不安の要素として挙がってくるんですね。  今、3人の方からコメントをいただきましたが、共通した問題として、私は2つある のではないかと思います。1つは、輸入食品の問題に関して技術的な問題を高めるとい うことと同時に、その技術的な問題を背景にした安全性と安心というものがつながって ないという問題、この2つ大きな問題があるのではないかと思うんですね。  まず最初に、安全でなければならないという技術的な問題にご努力されているのが多 くのメーカーであり、会社であると思うんですけれども、佐藤さん、何かその辺につき まして、特に中国野菜の問題が昨年は焦点が当たりましたから、安全を確保するために 技術的に、もうご説明いただきましたが、さらに何かできることはございますでしょう か。 ○佐藤 制度的にはかなり世界最先端の情報をもちろん中国に手に入るものですから、 いろいろな制度を整えております。先ほどちょっとご指摘がありましたけれども、クロ スチェックをすると結果に開きがあると。これも事実だろうと思います。数年前、中国 に行ったときにはまだECDのGC程度でMSを持っている公の機関はあまりありませ んでした。ここのところ急速に入ってきています。  そういう意味で、技術的には若干現時点では開きがあるかもしれませんが、先ほども 申し上げたように、あの国の物すごい意気込み、力がございますので、もうすぐ追いつ いてくるのではないか。現時点では若干の差はあるのは確かかと思います。 ○牛尾 ありがとうございました。それでは、同じ問題ですので、和田さん何か生協と して、さらに何か安全性確保ということについてできること、あるいはやらなければな らないことは何かありますか。 ○和田 お話の中で申し上げたとおりなんですけれども、かなり回らなければいけない 工場はしっかりと選定していかなければいけないなというふうなことを考えています。 私は検査の現場におりますけれども、検査と現地の点検、それからお取引先からの情報、 これがしっかりと一致するように、一致するようにというか、思い浮かべられるように というんですか、そういったことが必要ではないかなと、そういう取り組みを積み重ね てもっと商品をよくしていけるというふうにつながると思います。 ○牛尾 それではもう一点の問題でございますが、安全と安心の乖離という問題、なか なかこれを接近させるのは非常に難しいかもしれませんが、これをどのように接近させ ていくのかというのが大きな課題だろうと思っておりますが、どなたかご意見があれば いただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。 ○市川 安全と安心の乖離のところで、まず私たち消費者が思うことは、企業がうそを つかないでほしいということなんですね。まず、その大前提のところの信頼関係ができ ていないと、先ほども出ましたが、いくら安全ですと言われてもそれが信頼できない、 不安につながるということが1つあります。  あともう一つは、私たち普通情報というものを新聞やテレビなどから受け取るわけで すけれども、そこから流される情報が適切なものでないと私たちはそれを本当に真に受 けてうのみにしている状況というものがあります。これは昨年の夏の中国報道でも、私 たち消費者というのは大変不安な思いにさせられました記憶があります。伝える情報の 何が大切かというと、危険だという情報はすぐに私たちも察知するのですけれども、じ ゃどのくらい危険なんですか、どれぐらいのリスクがあるんですかという、そういう丁 寧な情報の出し方がされ方がなかったということがまず問題だと思います。  あともう一つは、基準を外れて違反だから回収をしますという件。これは国で定めた 食品衛生法に基準したから当たり前といえば当たり前なんです。その違反を問うという ことは、私はそれは当たり前でいいと思うんですが、要はその後の対応までをきちんと 考えておかなければいけないのではないかなと思っています。どこまで公表するのかと か、あるいは違反があったものを本当に回収して廃棄させるのかとか、そういうものま で含めた総合的な判断を厚生労働省とかできちんと示してほしいなと思っています。  それはなぜかといいますと、私たちこの頃、食料廃棄ということをとても気にしてい ます。安全性に問題はないけれども、ちょっとだけ基準を超えているというようなもの が無条件に廃棄をされている。あるいはもう積み戻しをされているというようなことに 心を痛めている消費者は多いんです。勿論多様な意見、多様な考え方を持っている消費 者の方もいらっしゃいますけれども。 ○佐藤 ただいまのご発言で、蛇足ですけれども、2002年の冷凍ほうれん草のクロルピ リホスの事件、あれも同じことだと思うんですね。基準値の70倍出た、80倍出た、あ るいは30倍出たということでしょっちゅう報道されて、クロルピリホスの残留している 冷凍ほうれん草を食べると、あたかも農薬中毒になるかのような錯覚を国民に与えてし まったと思うんです。ところが実態は、たまたまほうれん草にクロルピリホスが登録が とれていなかった。したがって使ってはいけない農薬であった。使ってはいけないんだ から残留するはずがない。したがって、残留基準値は検出できるぎりぎりの0.01ppmで ある。  ところが当時の小松菜やキャベツの残留基準値というのはその100倍、200倍の1ppm とか2ppmなんです。そして中国からの冷凍ほうれん草のクロルピリホスが0.7ppm出た ら基準値の70倍出たという報道になるんです。ところが小松菜やキャベツの基準値より はるかに下なんです。毒性とは全く関係ない。しかし、これを全部廃棄あるいはシップ バックということになっているということを、国民というか、一般消費者にほとんど知 らされてない。この辺のところが私の言う「お化け屋敷効果」をねらっている一部マス コミの、何ていうんでしょうか、煽りではないかと勝手に思っております。 ○牛尾 知らされてないというのは、マスコミの擁護をするわけではないんですけれど も、正しく伝えられてないという面もあるのでしょうか、どうでしょうか、道野室長、 非常に厳しい質問かもしれませんが。 ○道野 いえ、どんどん聞いていただければいいんですが。1つは安全と安心の関係と いうことで言いますと、いろんなこういう場でお話しをするときに、常にこういうこと が問題になるわけなんですけれども、行政側としてはもちろん正確でわかりやすい情報 提供をしろと常に言われるわけですけれども、なかなかこれが難しいわけですね。正確 に言おうとすると難しくなると。簡単に言うとやっぱり全部説明がちゃんとできてない のではないか、そういう狭間の中で、我々も皆さんによく理解してもらうようにという ことの努力を常にし続けなければならないわけですけれども、今の問題、食品衛生法違 反のものについて、我々としてどういうような情報提供、どういう考え方でやっている かということなんですけれども、1つは、こういった理解を推進という意味で情報公開 はまず基本だと思っていますので、違反情報についてはすべて厚労省のホームページで 公開をしています。これは品名、輸出者、輸出国、輸入者の名前、内容についても公表 をしています。  先ほども、私の話の中で出てきましたけれども、検査命令に移行する場合に、これは プレスリリースということでマスコミ各社に、厚生労働省の記者クラブに所属している ところですけれども、メジャーなマスコミがみんな入っています。そこに資料提供をし ます。これはもちろんホームページでもごらんいただけまして、その中で違反となった 品目の残留濃度がどれぐらいあって、ADIと比較するとどれぐらいのものですという ことについてはきちんと説明を記載するというふうにしています。もちろん行政の説明 責任ということもあると思いますし、リスクコミュニケーションという観点からも、そ ういった健康影響についてきちんと書いていくということは重要だなというふうに考え ています。  廃棄問題でありますけれども、もちろん回収廃棄に関しては、行政命令で行われる場 合と、事業者のほうの自主的な判断で行われる場合、2通りあるわけです。もちろん輸 入食品に関して申し上げれば、検疫所で違反が見つかれば、その時点で輸入できなくな ると、そういうことになるわけです。  食品衛生法の11条というのは、輸入してはならん、販売してはならんといった規定に なっているわけです。その規定に基づいて行政としては処分をするということになりま すので、違反だったものについて流通を認めるというわけにいかないし、輸入を認める というわけにはいかないわけです。ただ、港で廃棄するのがいいのか、シップバックし て、その食品が国によっては流通可能なところに行けば、それはそれで1つの解決だと 思いますし、それは現行法制下でも可能な対応だと思います。  ちなみに大体2割ぐらい、今、正確な数字ではないですけれども、2割程度はそうい うシップバック、積み戻しというような対応もされているようですので、そういった面 の取り組みというのも少しあるということをご認識いただければと思います。 ○牛尾 ありがとうございます。市川さんのほうから、食料廃棄の問題が取り上げられ ました。これは輸入食品の問題だけでなくて、国内における賞味期限、消費期限に伴う 問題としても、心ある人は非常に心を痛めている問題だろうと思います。ただ、これに ついて議論しますととても時間がなくなってしまいますので、もう一つの問題で非常に 厳しいご指摘をされましたのが、企業がうそをつかないということを言われましたが、 いかがでしょう、芝さん、最近その辺のコンプライアンスといいますか、企業の態度は 大分変わってきているのではないかと思うのですが。 ○芝 おっしゃるとおりでして、もちろん昔から、うそをついたりとかしているわけで はないんですけれども、去年あるいは数年前からですけれども、いろいろと不祥事とし て出てきた場合、大体マスコミ対応等でおかしな対応をしているんですね。やったこと はやったことで、隠さないで出されなければいけない。ただ、出すにしてもそれが事実 であることを出さないと、そのときにたまたま自分たちの会社の中でわかった情報をそ のまま何も整理をしないで出してしまうとかえって混乱を呼んでしまい、それが尾を引 いて、うそがうそを呼ぶというふうに、かえって悪循環になっちゃったりしますね。  だから、我々が考えているのは、何か起こったときは、それに対しどういう事実に基 づいて、どういうことを訴えていくか、あるいはお客様に示してあげるかということを、 もちろんおわびも当然です。第一番はおわびからですけれども、そういうことをきっち りポジションペーパーをつくって、それに基づいてマスコミ対応していく、それが一番 重要ではないかと思います。そうすることによって、お客様も安心してその情報に対し て触れることができるし、マスコミも妙に騒ぎ立てたりしなくなるのではないか、そう いうふうに思っております。 ○牛尾 ありがとうございます。和田さんと丹野さん、同じ問題につきまして、もしコ メントがあれば手短に。 ○丹野 いわゆるコンプライアンスというのは、情報の開示をなるべく、なるべくとい う意味でなくて、正確に言っていくことしかないんだろうなと、それの積み重ねが信頼 になっていって、先ほどの安心に結びついてくれるといいなと思います。 ○牛尾 和田さん、よろしゅうございますか。 ○和田 昨年、偽装の問題とか、私ども経験したわけでございますけれども、起こった こととして、あとどのように対処するかというのは非常に消費者・組合員のところも注 目をしているわけですし、期待もしているというふうに感じなければいけないなとは思 ったんですけど、先ほど芝さんがおっしゃったように、まずはおわびということがござ いますけれども、いかに迅速に正しく情報を提供することができるか。これがこの間の 経験としては、私ども連合会として会員生協、加入なさっている組合員ということで、 流す情報、流すというんですか、ご提示する情報をどのようにちゃんと提供できるか、 それが1つ大きな課題だなというふうに今でもとらえているところです。 ○牛尾 ありがとうございました。もっと議論を続けたいところでございますが、次の 意見交換のほうに移らなければなりません。大きな問題としては、安心と安全の乖離の 問題、食料廃棄の問題、それから広報のあり方等々が提起されました。結論はむしろ丹 野さんが言われました、そういった努力を積み重ねるということしかないのではないか と私は思っております。  一たん、ここでパネルディスカッションを終わりまして、意見交換会のほうに移りた いと思っております。  それで、今回、この会場にお越しいただきます申し込みの際に、事前にご質問とご意 見をちょうだいしております。まずそれにつきまして、ご回答させていただきたいと思 っています。その後、会場からもご意見をいただくという方向で進めたいと思っており ます。  まず最初に、「横浜の検疫センターを見学したとき、遺伝子組換え及び放射線照射の 設備を導入していたが、今後これらの検査を強化していく計画があるのか」ということ で、放射性食品、あるいは遺伝子組換え食品について関心を持っておられる方がいらっ しゃいます。これにつきましては、道野さんのほうからよろしくお願いいたします。 ○道野 遺伝子組換え食品についても、照射したかどうかということの見地に関しても、 20年度の輸入食品監視指導計画の中に含めて計画的なモニタリング検査ということは 継続していきます。それともう一つは、違反が発見された場合には、それについて強化 ということで、現状でも、例えば中国の米の加工品に関しましては、既に検査強化も図 られているところですけれども、今後ともそういったことで検査を継続していくという ふうに考えています。  また、照射食品の検知法に関しましては、現在のところ、一部の香辛料について検査 ができるようになっているところですけれども、これに関しても検査可能な品目を増や していくということで、厚生労働科学研究のほうで対応しているところです。 ○牛尾 やはり中国の問題に対する関心が高いのか、「中国において問題となった物質、 メラミン、ジエチレングリコール等について、業界での対応と現状について聞きたい」 というご質問がございました。これはどちらがよろしいんですか。道野さんのほうでよ ろしいですか。 ○道野 業界での対応でというふうになっていますけれども、現状について簡単に申し 上げると、確かにメラミンについてもジエチレングリコールについても、直接食品で問 題になったということではなかったというふうに記憶をしています。メラミンについて は飼料で、ジエチレングリコールについてはたしか医薬品の原料としての話だったと思 います。  私どもとしても類似食品、例えばメラミンでも問題になったのは小麦のグルテンと言 って、穀物のたんぱく成分は非常に少ないのですけれども、そういう飼料用のものだっ たわけですけど、そういったもので一部食品目的のものがあるかと思いますので、そう いったものについては、輸入があれば検査の対象にすると。ジエチレングリコールに関 しましても、これはたしかシロップの原料に使われていたというようなこともありまし たので、そういったものの検査については対応するということにしていたわけですけど、 多分輸入実態がそもそもほとんどなかったのではないかと思います。輸入があれば、対 応するということで、私どもとしては対応しているということです。 ○牛尾 ありがとうございます。そのほか、中国問題に関しまして、CIQのシールの 問題とか、それから中国における検査体制の問題等からもご質問いただいていますが、 大体講演の中でカバーしていただいたのではないかと思いますので、回答をこの場では 省略させていただきまして、会場からのご質問に移りたいと思います。もしどうしても 聞きたいということであれば、同じ質問をしていただいても結構でございます。  それでは会場からのご質問を受けたいと思いますが、コメントいただく際でございま すけれども、挙手をお願いしたいと思います。私のほうで指名をさせていただきます。 マイク持った係員が伺いますので、もし差し支えなければ、お名前と所属をいただいて からご発言をいただければと思います。できるだけ多くの方にご発言をいただきたいと 思っていますものですから、長くても約2分程度でまとめていただければと思っており ます。本日、多くの議題があるわけなんですが、メインになりますのは輸入食品の安全 性確保という問題でございますので、まず輸入食品の安全性確保全般につきまして、何 かご質問、ご意見があればお願いいたします。それではどうぞよろしくお願いいたしま す。 ○参加者1 流通の食品に携わっている南波と申します。どうぞよろしくお願いします。 中国の残留農薬のことをお話された佐藤さんの講演の中で、2007年度の3月1日より、 中国の北京オリンピックを開催するに当たっていろんな取り組みが5つほどあったとい うことなんですけれども、それをやったことによって中国の中でどのように変わってい っていたのかなという結果がもしもありましたら教えていただきたいと思います。よろ しくお願いします。 ○佐藤 結果を教えろということなんですが、昨年の施策でございまして、まだ、結果 は確認をしておりません。しかし食品の結果については明確ではありませんが、少なく とも街は非常にきれいになっております。それから笑い話みたいですけれども、毎月11 日は、1、1だから行列をしてバスに乗ろうみたいに、入口にわあっとたからないで、 ちゃんと順番に乗るんだよみたいなことがいろいろ言われていまして、それから、昨年、 もっと前ですか、2000年ぐらいからずっと私、中国へほぼ毎月行っているんですけれど も、昔はホテルから研究所へ行くのに車で30〜40分行った。その間、必ず交通事故の現 場を見ながら通った。あるいはまだ手足がヒクヒクして「あの人、生きているよ」なん て言いながら脇を通り抜けるということがしょっちゅうあったんですが、最近はほとん ど交通事故の現場に出くわすこともなくなってまいりました。  そういうことで、この法整備で食品だけでなくて、ありとあらゆる社会的なものすべ てが向上しているのではないかと私は感じております。ちょっと答えがずれましたけど、 そんな感じでございます。 ○牛尾 よろしゅうございますか。 ○参加者1 ごめんなさい。輸入の面で、日本に輸出する面でどのように変化したのか なという、質問だったんですけど。 ○佐藤 輸入食品という面では、例えばCIQシールを徹底しているかどうかは別とし てそういうもの、あるいは登録企業でなければ輸出検査そのものが受けられないという ようなことで、中国側が日本に対して非常に神経使っています。2002年のようなああい うトラブルは二度と起こしたくないという決意はありありとわかりますし、最後に私ど もの研究所のデータもちょっとお見せしましたけれども、違反しているものが非常に少 のうございます。そういう意味では、中国国内の法整備、あるいは日本の検疫がしっか りしているということがかなり効いてきているのではないかなというふうに感じます。 ○参加者1 ありがとうございました。 ○牛尾 どうしても輸入食品となりますと、中国の問題に皆さんご関心があるようです が、できましたら輸入食品全般についてのご質問をまずいただければと思います。もち ろん中国問題でも結構でございますが、ほか、いらっしゃいますでしょうか。 ○参加者2 阿部と申します。流通業の関係の仕事をしております。モニタリング検査 件数の算出方法というのをご説明いただいたのですけれども、こちらはCODEXガイ ドラインに基づき95%の信頼度で違反率1%以下の違反を検出可能な検査数というこ となんですが、日本ではこれを採用されているということですけれども、EUとか諸外 国ではこういう算出は実際にどのようにしているのかというのを、もしご存じでしたら お聞きしたいのですが。 ○牛尾 同じ種類の質問はございませんか。モニタリングの方法についてのご質問でご ざいましたが、それで取り急ぎその問題につきまして。 ○道野 私も最近の情報について、1つ1つの国についてフォローしているわけではな いので、詳しく説明できる部分だけお話ししますと、例えば米国農務省のFSISと言 いまして、食肉関係の検査や食品安全対策する部門があるわけですけれども、そこでは こういった年度ごとにモニタリング計画を立てています。これはレージジープログラム と言って残留物質のコントロールの計画だということなんですが、その中ではもうきめ 細かいですけれども、畜種ごとに抗生物質だとか、その他の動物用医薬品について、こ ういった考え方でされている。これはCODEXで出てくる前から、多分80年代の後半 ぐらいからは少なくてもやっていたのではないかと思いますけれども、同じような考え 方でやっているというのは、以前これを始めたのも今から10年以上前ですけれども、ニ ュージーランドの同じような食品検査やっているところからも、そういうような説明聞 いたりということもあって、こういう考え方で進めていくというのが1つの解決策では ないかということで始めたのがこのきっかけではあります。 ○牛尾 よろしゅうございますか。 ○参加者2 ありがとうございました。 ○牛尾 ほかにございますでしょうか。後ろのほうでたしか手を挙げられた方がいらっ しゃいましたが、よろしいですか。どうぞ。 ○参加者3 山梨消団連の田草川と申します。1月13日に新聞に載っていたのですけれ ども、去年の11月からアメリカの輸入牛肉の中で、条件違反になったものが日本に入っ ていて、半分以上は市場に流通してしまったという記事を見たんですけれども、流通し てしまったものについてはどのように処理されたのか、また、11月からですから随分前 の話なんですけれども、アメリカが会社のコンピュータのプログラムを日本向けの条件 でないものに間違えたというようなことがあったんですけど、そういうことは日本では あらかじめどのくらいの時点でわかるのかということを伺いたいと思います。 ○牛尾 わかりますか、よろしいですか。 ○道野 本件につきましては、先ほどの私のほうの説明の資料で言いますと、11ページ の上側の米国産牛肉の混載事例の概要ということで、その一番下のところの21ケ月齢由 来牛肉の混載ということです。これの事実関係が確認できたのは、農務省が対日輸出施 設について査察を当然やっているわけですけれども、1月の査察で発見をしたというの が経緯です。アメリカ側で査察をして発見をして、調査結果について日本に通報をして きたということです。対応、どのように措置したかということにつきましては、輸入者 が2カ所ございまして、それぞれの所管する自治体のほうで回収ということで措置をし ています。  現状としまして、その時点でおおむね1つの輸入者が5割程度在庫で持っていて、も う一つのほうが、たしか3割在庫で持っている。それから流通品についての回収状況に ついてはその後、随時こちらにも情報が来ていますけれども、かなりロットによって相 当量回収できるものもあれば、そうでないものもあって、まだ数字については最終的な 確定というところまではきていません。  以上です。 ○牛尾 よろしゅうございますか。  それでは、また戻ってもいいのですが、ほかの課題もございますので、ちょっとそち らのほうに移りたいと思っております。光岡補佐のほうから、陶磁器及び乳幼児玩具の 鉛の規格基準の改正につきましてご説明をさせていただいたわけでございますけれども、 この規格基準の改定につきまして、大分詳しくご説明をいただいたわけでございますけ れども、何かご意見等ありましたらよろしくお願いいたします。特にございませんか。  特にないようでしたら、きょうあまり詳しくはご説明しておりませんが、平成20年度 輸入食品監視指導計画というのを資料の中にもお渡ししているかと思いますが、この件 に関しまして、何かご意見等ございますでしょうか。  では最後に何でも結構ですから、ご質問、ご意見があればいただければと思いますが。 ○市川 よろしいですか。 ○牛尾 どうぞ。 ○市川 この監視計画案について、とても素朴な質問をさせていただいてもよろしいで しょうか。輸入時の監視強化という「強化」という言葉についてなんですけれども、こ れは監視計画制度のようなことが動き出してから使われない年、「強化」という言葉を 使わない年が今までにあったのでしょうかということと、「強化」というのを使われる 本当の意味はどこにあるのかというのを教えてください。 ○道野 若干私の説明のところでも触れたのですけれども、輸入食品の監視指導計画と いうもの自体は、平成15年の食品衛生法の改正のときに毎年こういった監視指導計画を つくりましょうということで、たしか16年度から作成をしてきています。強化というの は、まず内容としては簡単に言えば検査率をアップする、検査命令を発動する品目を増 やすという意味で使っていて、もちろん輸入時に輸入者に対していろんな情報について の提出を求めるとか、そういったものも含めた意味合いだというふうに考えていただい て結構です。さらにモニタリングについても、通常の率から30%ぐらい上げていく、こ れも監視強化と。そういった要するに検疫所サイドでのそういう輸入時のいろいろな検 査、審査、そういったものの内容について厳格化するという意味合いで使っています。  私どものホームページ見ていただいてもわかると思うんですが、年間1,500件ぐらい 違反が確認されていまして、その中には新たに起きた問題もあれば、継続して出てきて いる問題もあるし、逆に統計の中にも出てこない、要は問題がある程度解決して違反が 出てこなくなったものといろいろなものが含まれているわけです。私どものホームペー ジを見ていただくとわかると思うんですけれども、検査強化というのは毎週ではないで すけれども、大体毎月数件ぐらいの割合で、例えば検査命令の対象品を増やしたりとい うこともしていますし、時によっては、それを今度は解除する、緩和する、一部やめる ということもやっていますので、かなりそういうものは個別の事案に応じてやっていま すので、1年間でそういった強化をしなかったとか、もしくは1年間通してずっと強化 ばっかりやっているということはないわけですね。要するにこういった個別問題につい て積み上げみたいなものが、実際のこういう監視指導の内容というふうになってきます ので、そういった意味で言うと、これはずっと今のシステムが続く限りは続くのだろう と思います。  ただ、強化の話ばっかり出てくるのですけれども、緩和の話も出ていますので、どう いう条件で緩和していくのかということについても、考え方としてどう判断していくか ということも含めて記載していますので、そういったのもごらんいただければと思いま す。 ○牛尾 よろしいですか。ほかに何かこの輸入食品監視指導計画についてご質問等ござ いますでしょうか。それではせっかくの機会でございますので、壇上におられる方で何 か言い残したこと、あるいはもう少し発言したいことがもしあれば、追加の発言をいた だければと思うんですが、いかがでしょうか。特にございませんか。 ○市川 先ほど基準値違反の後の対応のことを少しお話をしたんですけれども、私たち は食料を海外に依存しているので、海外でつくられた食料というのが、多分今の段階で 世界共通のいろいろなルールにのっとってつくられているわけではないという現状があ ると思っています。そういう状況の中で、日本というのはいろんな国から食料を輸入し なければ、私たちの食卓は成り立っていないという現実を、私はもう少し重く受けとめ て、今は私たち十分に安全で豊かな食生活をしていますけれども、いろんな意味で、こ れがいつまでも続かないのではないかという、そういうお話はいろんなところで聞いた りしております。そういう私たち消費者の不安というのは醸成されつつあると思うんで すね。そのあたりをなるべくその不安が大きくならないうちにやはり手だてを考えてほ しいと思うわけです。  そのためには、各国の基準が違うことによってはじかれてしまう、そういうものをど うするか。それはもちろん安全性に問題があれば文句なく、それははじいてもらなくて は困ります。しかし、そうではないもの、例えば日本でまだ認められていないという、 ただそれだけはじいてしまうようなものの問題、それで結局私たちの食卓まで届かない ものとかがあるとすれば、そういう問題をいつまでもほっておいてほしくないなと私は 思っております。 ○牛尾 ありがとうございます。市川さんのご発言に対して何かご意見ある方いらっし ゃいますでしょうか。フロアからでも結構ですし、パネリストでも結構でございますが。 ○芝 市川さんのご発言の内容、私も本当に同感いたします。今、我々事業者として原 材料、加工食品等を輸入するに当たって、とにかくどんどん物価が上昇している。それ からエネルギー問題との関係もあって手に入らないものも出てきている。そういった状 態で、昔であれば、お金を払えば売ってくれたようなものが、お金を払っても安全なも のを確保できない、あるいは売ってくれないという状況が目前に迫っているのではない かなと思っています。  ですから日本にとって重要な食料資源をどうやって確保するか、本当に国あるいは消 費者すべての問題なので、国全体でコンセンサスを得られるような、そういう活動をこ れからしっかりしていかなければいけないのではないかと思っております。 ○牛尾 フロアから何かございませんか。 ○道野 私ども、基準をつくったり、それを運用しているという立場で申し上げますと、 今のWHO協定下では、日本が恣意的に基準をつくったりということはできないですね、 自らの判断だけでは。これは国際ルールにのっとってWHO通報といいまして、基準を つくるときにはきちんとWHOを通じて通報して各国の意見を聞いて設定するというふ うにしているわけでして、そういう意味で、輸出サイドも知らないわけではないという ことがあります。  もう一つは、輸入食品、さっきの安全と安心の話につながるかもしれませんけれども、 どれぐらいの違反があるか。届出件数に対してみると0.1%なんですね。だから背景の 問題というのは本当に食品安全基準の話でやっているのか、例示になっているのかとい うのはちょっと我々もどういうふうに解釈していいのかなというふうに思っているわけ です。むしろ価格の問題とか、食品安全基準以外でもそういったいろんな条件もあるで しょうし、そういったものトータルで見ていかなければならないのではないか。少なく とも行政サイドとしては、そういったルールにのっとって我々としては基準もつくって おり、法律に基づいた対応をしているわけなので、その辺については、安全問題だけの 話なのかなというところは我々もどう認識していいのか、ちょっと戸惑っているという のが実際のところです。 ○市川 多分、今そこの基準と、あとルールとしてきちんと対応する。もちろんそこま では必要なことだと私もそう思います。その後だと思うんですね。その後のことは、多 分国だけが頑張ってもだめだし、事業者だけも頑張れないし、消費者だけが主張しても できないと思うんですね。もちろんそれは学者の人たちが言うだけでもだめかもしれま せん。そういうところで多分いろんな人たちが話をしっかりして合意形成をするための 場を、どこまでだったら折り合えるんですか、違反したものでも、例えばどこまでのリ スクだったら受け入れられますかみたいな話をできるような、そういう場をそろそろつ くる必要があるのかなと私は思っております。 ○牛尾 佐藤さん、うなずいておられますけれども、何かご意見ございます? ○佐藤 今の関連なんですが、一律基準値0.01ppmというやつですけれども、これは多 分行政としては非常に難しいんだと思うんですね。安全性と、食べていいかどうかとい うことと基準値の話なのですが、残留基準値のないもの、あるいは使う可能性のほとん どないものについては0.01ppmとするというのがあります。これについて、例えばアメ リカなんかですと、0.01ではなくてもう少し幅が広い、ここからここまでということで、 ある程度ADIその他安全性をかんがみて処分するかどうか決めるというようなちょっ と広い取り組みをしている。  じゃ日本にすぐそれをやれというと、1つ1つの作物と1つ1つの農薬について、毒 性その他を勘案しながら判断をしていくその基準をつくらなければいけないとすると、 1年や2年でできることではないというのは私自身よくわかるんですけれども、その辺 のところも行政側からも少し幅を広げるということを努力をしていただければと思いま すし、それからもう一つもっと重要なのは、マスコミあるいは消費者の皆様方が、法律 違反、例えば残留基準値そのものが一生涯食べ続けて何らかの障害があるかもしれない というところが残留基準値になっているわけです。ですから1回や2回基準値超えたも のを食べてもおなか痛くも何ともならないと言ったら怒られますけれども、実態はそう なんですね。  その辺の残留基準値とは一たん何なんだということのご理解、そういうところで、消 費者も基準値超えたら、わあ、大変ということではなくて、もう少しゆったりとと言う とまたいけないのでしょうけれども、安全という観点をもう少しきちんとご理解いただ けると、これほど神経質にならないし、昨年のようなあんなばか騒ぎにもならないので はないかと思っております。ただ、すぐやれというとなかなか難しい。特に行政側で幅 をどうするのだと。作物ごとに農薬ごとに見直すというのは大変な作業、すぐにはでき ないのは十分承知はしておるのですが、そうなると今度は消費者の皆様方が、その辺の ところ、残留基準値というのはどうやって決められているの、どういうものなのという ことをもう一度思い返していただくと、基準値を超えたらすぐ中毒になるということで はないということをご理解いただけると思うので、そうするとこの問題、少し鎮静化す るかなと、こんなふうに勝手に思っております。 ○牛尾 どうでしょうか、フロアのほうから反論、あるいは共感、ご意見ございますで しょうか。 ○参加者4 流通業の関係で来ております近藤と申します。今の特にリスクコミュニケ ーションの部分については、ここで議論が高まってきたかなという感じを受けるんです けれども、私も、佐藤さんがおっしゃるように、マスコミの問題というのは非常に大き な影響力を持っていると思います。その中で、例えば今回のこういうリスクコミュニケ ーションの場でもマスコミの方が真剣に、聞く立場でここに来られるということはあま り見た記憶がないんですね。一時BSEなどのリスクコミュニケーションのときには、 取材としてマスコミの方が来られる姿はありましたけれども、食の安全の問題を正しく 報道するために、こういう理解する場に真摯に聞きに来るという姿勢はあまり感じたこ とないんです。  そういう意味では、今の消費者に対するいろいろな影響力はマスコミの力が大きいと いう中では、我々のこういう場に、またより正しく食品の安全性について理解してもら う当事者としてはマスコミの方々は欠かせない存在だと思うんです。どうしてもなかな か参加がないという状況であれば、逆に行政が主導で、少数な場でも結構ですから、円 卓みたいな形でマスコミ、消費者、事業者というような形での重要な意見交換の場です とか、また現在の食の安全に対する社会的な評価は今どうなんだろうかというようなこ とを論議いただける場を設けて、より正しい報道をしていただいて、より正しい理解が 消費者に広まる、そんなストーリーが描けないものかと思っているんです。何かしらす ぐには難しいかもしれませんけれども、そういう行政からの働きかけがほしいなという のが、私ども流通業者の思いです。 ○牛尾 ありがとうございました。実はこれに関連しまして、現在予算要求をしており ます。マスコミをつるし上げるということではないんですけれども、マスコミのあり方 も、ご指摘のように非常に大きな影響力があるものですから、特にリスクの考え方につ きまして、いわば我が国ではリスクがあったらだめかのような報道をされたのでは、い つまでたっても、お互いにとって不幸だろうと思うんですね。特に今日本が経済力があ るからこそ食料も輸入できるわけですけれども、そうではなくなるという危険性も考え ますと、何にでもリスクがあって、そのリスクをどう判断するかという正しい理解とい うものを多くの人に得ていただくためにはマスコミの協力も得なければいけないという ことで、実は春から、そういったマスコミ関係者も入った懇談会のようなものを我々の ほうで開始したいと思っておりますので、どの程度のものができるかわかりませんが、 期待していただければと思っております。ありがとうございました。  ほかにございますでしょうか。 ○参加者5 商社に務めております古里と申します。私ども、輸入食品をいろいろ扱っ ている中で、例えば残留農薬については、農薬を使わない、あるいは使用状況を調べる というようなことで防止することは一部可能なのですが、難しい問題としては、例えば アフラトキシンについてどうやって発生するのかということがよく分かりません。生産 するときに、あるいは船積みのときに調べてもやっぱり出てしまう。  先ほど市川さんおっしゃられたように、それはどうなるかというと、シップバックで あったり、あるいは一部飼料用に使われたりするのですけれども、例えば飼料用1つと りますと、アメリカですと20ppbまで人間も食べても大丈夫ということでやっているの に、日本では10 ppbなんですね。それを仮に20 ppbにしてもらえれば、私どもが取り 扱っているものの半分以上がセーフになる。ところが毒であるかどうかとなると非常に 疑わしい部分があるのに、そのために私どもで違反となったものの半分以上がそれで廃 棄になっている。あるいはココアは、表面にアフラトキシンがつくんですが、皮をとっ ちゃうんですね。結局皮ごと使うようなものであれば、確かに表面に出ていると問題か なというのがありますが。皮を取り除いて中のやつをしぼってチョコレートの原料にす ると、ご説明を私どもしているんですが、なかなかそれに対する反応は今のところない。  将来的にそういったことをやっていかないと、来るものが何度も何度もだめになる。 結局、産地によってはらちが明かなくなって、輸入するに当たっても検査するのでもの すごくお金がかかってきちゃうというふうなことがあるんですが、厚生労働省のほうで、 それについて何か対処できるようなことはないのかしらと思っております。 ○牛尾 かなり個別な話になりましたが、回答できますか。できなければ、また個別に ご相談させていただくことにしますが。゛ ○道野 一般的な一応考え方ということでお答えさせていただきます。ちょっと農薬と アフラトキシンの問題と性質が違うんですね。特に農薬については、当然ADIが設定 できるものについてということなんですけれども、アフラトキシンというのは一応発か ん性物質ということもあって、なかなか多分農薬のような考え方はとれないというのは 世界共通認識だと思います。ただ、規制値というか、実態的な規制のレベルというのは 欧米、日本それぞれそのレベルが違っているということは確かに事実ですし、そういっ たものについて、国際的な評価をどういうふうに見ていくかというのは今後の課題では ないかと思います。ただ、農薬と同一に扱うには、毒性の性質がちょっと違うのではな いかと思いますので。 ○参加者5 済みません、農薬というのでなくて、安全性の面とか、あるいはもったい ないといったらなんですけれども、基準を超えただけでシップバックするものの中で、 検査がしきれない、どうやったら防げるかわからないようなやつまであって、それをず っと何年にもわたってだめと言われて、特に去年の後半ぐらいから余計厳しくなって、 そういったものが出てくるということです。農薬と関係なく、市川さんが言われた、た だ単にそれを超えただけでシップバックなり廃棄になっちゃうと。それがもうちょっと 有効活用できないのかという中でアフラトキシンのことを申し上げた次第です。 ○牛尾 ほかにございますでしょうか。どうぞ。 ○参加者6 鈴木と申します。中国からの農産物の輸入に携わっております。庶民的な 質問なんですけれども、安全や安心を確保するためにはすごい労力とそしてお金がかか っているものだと思います。一事業者としても、そして消費者としても価格に影響があ るのではないかというのは感じるんですけれども、そのあたり実際に影響が出ているか どうか。そして、もし出ていないのなら、どうして出ないで実現ができるのか、そこを お聞きしたいなと思います。 ○牛尾 これはどなたかがいいですか、佐藤さんでよろしゅうございますか。 ○佐藤 私のわかる範囲でお答えをさせていただきます。価格については、先ほどもち ょっとお話の中でちょっと申し上げたのですけれども、ポジティブリスト制度、これは ある県でやはりこんな話をさせていただいたときに、生産者側のご意見として、ポジテ ィブリスト制度は非常にいい制度だと。おかげで中国から輸入してくる農作物が減って、 自分たちの生産物が値下げしないで済んでいる。あれはいい制度だと言われて、ちょっ と待ってくださいと、消費者はそう思っていない人もいらっしゃるんじゃないですか。 やはり安いほうがいいという方も大勢いらっしゃるはずだという反論をしたんですけれ ども、そういう意味で、価格というのはある程度影響はあるだろうと思いますし、逆に 安全はただではないよという認識を持っていかなければいけないのではないのか。  十数年前に、いずれ水が売られる時代が来るぞなんて言われたのですが、私の目の前 に売られた水がちゃんとございまして、これもポジティブリストの対象なんですけれど も、こういうようなものが売られるようになっていく。いわゆる安全なおいしい水はた だでは手に入らないという時代があと十数年で地球上の天然水でまともに飲めるものが ほとんどなくなるなんていう説もあるようですけれども、そういう意味で安全・安心は ある程度金を出して買っていかなければいけない時代になるのだという覚悟は必要かな と思います。 ○牛尾 和田さん何かございますか。 ○和田 昨年からかなりそういったご質問は、私どもも受けているんですけれども、ま ずはコープ商品についてどうなんだと、価格に転嫁するのではないかと、コストはどう するのだというお話があるんですが、これについては私どもは価格には基本的には転嫁 していかないと、原材料の高騰とかという話は別として、商品の検査だとかそういうと ころを強化していく上では、私どもは日本生協連として、生協の運動として食品の安全・ 安心ということでやってきていますので、もともとお金はかかるというふうに考えてお ります。毎年そのように予算がかかると思っています。  コストが検査が増えればということですけれども、その辺も全国で、日本生協連の商 品なり、事業連合なりで結集していただくことで吸収していくというふうなことでやっ ております。 ○牛尾 丹野さんいかがでしょう。 ○丹野 非常に悩ましい問題なんですけれども、中国の輸出企業については、野菜類で 言えば、収穫の前に検査を行って安全性を確かめて、それから加工に入って、途中も検 査して、それから出荷時も検査する。さらには輸出時も検査するということで、そうい った安全費用というものは確実に上がっています。併せて中国のいわゆる人件費も上が っています。それで凍菜協とすれば、品質保証の技術者の集まりですから、なるべくそ う言うと、話題のまな板には上げないようにはしていますが、いずれ中国側のほうも本 音で言ったらば、そろそろコストアップしないと「売ってあげないよ」みたいな気持ち になっているかもしれないなと思っています。 ○牛尾 よろしゅうございますか。 ○市川 今のお2人のお話に関連して、安全と安心のコストの問題というものを、さっ き生協の方は吸収して対応するとおっしゃいましたけれども、私は消費者の人たちには 安全と安心はこれからただで買えないということはやはりきちんと伝えていただきたい と思います。それはもちろん国に対しても申し上げたいと思います。いろいろな検査、 監視の業務で、私たちはおかげさまで安全な食生活を送れていますけれども、どこまで コストをかて、どれぐらいの対費用効果のあるものを行っているのかという、そのあた りまでのことまでもきちんと伝えてもらわないと、私たちだって、自分の家のリスクを 考えるときに、自分の家のお財布と相談しながら、じゃここにはこれだけのセキュリテ ィをかけようかというようなことを考えているわけですから、そのあたりの国のお金だ から、いや企業のお金だから、とりあえずどんな小さなリスクでも下げてくださいよと いうのは私はこれからは多分、ある意味、消費者の完全なゼロリスクを求めるような姿 勢は許されないだろう。そういうことを多分言えなくなってきちゃうのではないかと思 っております。  消費者が望むからと大事にしてくださるのはありがたいのですけれども、おかげさま でいろんな意味で過保護にされたような気持ちもしておりますが何でも解決してくださ る。高品質で要求すればいろいろなものを提供してくださるという状況もありがたくは 思っておりますが、やはり現実を少しずつきちんと知らせていただきたい。それなりの 覚悟をするにも、消費者は時間も多少かかりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思 います。 ○牛尾 ありがとうございました。 ○参加者7 大木と申します。食品の輸入の商社に勤めておりますけど、きょうは市川 さんに、私どもは日頃苦労していろいろ頭を抱えている問題をかなり代弁して、消費者 の立場から非常に心強いご意見をお聞かせいただいて大変ありがたいと思っています。 今お話が出ましたコストの問題というのは非常に大きな問題で、具体的に農薬で問題に なっている商品を、残留農薬の違反が出ないようにいろいろ取り組んでいる中で、農薬 を確実に出さない方法をいろいろ海外の業者と取り組んで今やっているのですけれども、 そうしますとどうしても3割ぐらい、今までの値段よりも3割ぐらいアップしないとで きないのですよね。それでも日本のお客様は、値段が高くてもその商品がないとどうし ても困るといって買ってくださるお客様もいらっしゃいますし、この値段では買えない というお客様もいらっしゃいます。  値段をそんなに上げないでくださいということを海外の輸出業者、生産者と交渉しま す。ポジティブ制度の施行は制度としてはよかった点もありますけれども、問題点もい ろいろ浮き彫りになって、一律基準に対する批判もあったり、改善が必要だと思います。 先ほど室長が、施行にあたっては、WHOに通報してきちんと伝えてあるとおっしゃい ましたけれども、もちろん米国等の先進国は了解していると思いますけれども、アフリ カとか南米とか多くの国々から私ども食品を頼っているわけで、それらの国のお役所の 人が承知していても、実際に農家の人たちというのは日本のポジティブリストの「ポ」 の字も知らないわけですね。その人たちにいろいろ、日本ではこういう制度ができて農 薬は使わないでくださいというようなことをポスターをつくったり、新聞で広告出した り、そういう活動をしていますけれども、日本の非常に厳しい制度に対して、生産者は 理解はしながらも、それでもほかの国はそんなこと言わないから、日本にはもう売らな くていいよという声が現実に出ています。  それから中国でもいろいろと国が一生懸命やっていますけれども、違反を出すと、免 許を取り消されるということで、それに困って日本には売らないという業者がたくさん います。それで日本でも今輸入が止まってしまったことで大変困っているんですね。で すから先ほど市川さんおっしゃったように、安全はもちろん確保しなくちゃいけません けれども、きちんと海外にも理解を得られるように、再度問題点を解決して、海外の生 産者にも理解をもう一度よく得られるような形にしていかないと、本当に日本には食糧 がなくなってしまうと思います。  芝さんもおっしゃったように、食品がエネルギーに使われるような時代になっていき ます。私どもの会社も、例えばとうもろこしを非常に大きく扱っていますけれども、エ タノールで売ればいっぱい儲かるのですけれども、そうしてしまいますと、食品あるい は飼料として供給できなくなってしまうわけですよね。ですから会社として、とうもろ こしは、エタノールには5%以上売ってはいけないという方針を決めて食品に供給して います。ですからそういうことも皆様によくご理解いただいて、日本の食品、いい製品 をつくるために海外の生産者と仲良くして理解を深めながら取り組んでいくことが必要 ではないかと思います。 ○牛尾 ありがとうございました。ご指摘のように、国と国との間での制度の周知とい うのは、行われても、発展途上国の第一線で働いていらっしゃる農家の方々までそうい った制度が周知されるというのは恐らく5年、10年という年限がかかるのではないかな と私も思います。そういう意味は、制度自体は我々としてはいいものだという自負はあ るわけなんですけれども、それを定着させるための努力は今後も続けなければいけない のだろうと思っています。  大体予定していた時刻に近づいてまいりました。この時刻を考えますと、もしなけれ ばこれで終わりにいたしますが、ぜひ発言したいという方がいらっしゃいましたら、あ とお一人ぐらいいただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。済みま せん、一番後ろの方。 ○参加者3 山梨県消団連の田草川と申します。2回目で済みません。今輸入食品の基 準違反とか、基準に満たないものについての廃棄をどうするとか、そういう問題につい て消費者サイドからも、そんなに厳しくしなければならないのかという時代が来るので はないかというようなことが言われていますけれども、今の日本の食品の実態は大部分 の人が一生懸命その基準をクリアしようとして努力をしているわけですよね。輸入をす る場合にもいろんな条件を考え、日本の食生活とか、日本の農業とか、そういうことを やりながら、そういう条件とか基準が決まってきているんだと思うんですね。そのこと がきっちり守られているということが、まず第一なのではないかなと思います。  そういう中で、今、こんなにたくさん輸入をしなくてはいけないとか、それから、輸 出国が日本には厳しい条件なら輸出しないというふうにおっしゃっていることがどうい うことなのかということをもうちょっと考えなくちゃいけないのではないかと思います。 先ほどからも出ているように、違反で回収されるというようなことが0.何%の値なん ですよね。そういう意味では一生懸命基準を守ってやっているという、そういうところ をきちんと評価をして、そして消費者もゼロリスクではないということは当たり前なこ とだということを認識して、私たち消費者が食の安全というのをどういうふうに要求を してきたかということをもう一回考えていく時代なのではないかなというふうに私は思 いますので、あまりに廃棄されるから条件緩和とか、外国が基準を緩和しないと日本に 輸出してくれないから条件緩和とかいう観点で、日本の食料問題を考えるべきではない なというふうに思います。  以上です。 ○牛尾 ありがとうございました。何でもバランスの問題だろうと思うんですね。極端 にならずに現実的な道を生み出していくというのが我々の知恵ではないだろうかと思っ ております。  大体予定した時間になりましたので、なかなかまとめはできませんが、これぐらいで 終了させていただきたいと思います。フロアからの参加をいただきましてありがとうご ざいました。  それから、壇上にいらっしゃるパネリストの皆さん方でございますけれども、的確に ご回答いただきましてありがとうございました。改めて壇上のパネリストに拍手をいた だきまして、この会場を終わりたいと思います。ありがとうございました。 ○司会 以上をもちまして、食品に関するリスクコミュニケーションを終了させていた だきます。本日は長時間にわたり、また貴重なご意見をいただきまして誠にありがとう ございました。出入口におきまして、アンケートの回収を行っております。今後のリス クコミュニケーションの参考とさせていただきますので、ご協力をよろしくお願いいた します。また、皆様のお近くでこうした意見交換会を開催することがございましたら、 ぜひともご参加をお願いしたいと思います。  それでは、皆様お気をつけてお帰りください。本日はありがとうございました。                      照会先:食品安全部企画情報課                          03-5253-1111(内2493,2452)