06/12/15 平成18年12月15日(奈良県奈良市)食品に関するリスクコミュニケー      ション 〜健康食品の正しい理解のために〜 食品に関するリスクコミュニケーション 平成18年12月15日(金) 於:奈良商工会議所会館 大ホール 議事録 【司会(森田厚生労働省食品安全部企画情報課情報管理専門官)】  それでは、時間 になりましたので始めさせていただきます。  本日は皆様、ご多忙の中ご参加を頂きましてありがとうございます。ただいまから 「食品に関するリスクコミュニケーション」を開催いたします。私、本日司会を勤めさ せていただきます厚生労働省食品安全部企画情報課、森田と申します。よろしくお願い いたします。  本日の「食品に関するリスクコミュニケーション」については、健康食品というもの に関する行政や業界団体、関係者の取り組みのご説明、それから消費者、事業者等、関 係の皆様とのパネルディスカッション、意見交換を通じまして、健康食品というものの 安全性や効果の表示などについて正しい理解を促進するということ、それから、関係者 間の認識を共有するということを目的として開催するものでございます。  まず最初に、奈良県竹村健康安全局長から開催のごあいさつを申し上げます。 【竹村奈良県健康安全局長】  ご紹介いただきました、奈良県の健康安全局の竹村で す。  本日は「食品に関するリスクコミュニケーション」に県内外から、また、幅広い各分 野からご参加いただきましてどうもありがとうございます。また、パネルディスカッシ ョンのコーディネータを務めていただきます梅垣先生をはじめ、パネリストの皆様にも お礼を申し上げます。後ほどのパネルディスカッション、よろしくお願いします。  近年、国民の健康志向が高まっている、また、食に関する関心も高まっております。 ただ、食は健康の基本ではありますけれども、この「食と健康」ということは、情報と いいますか、正しく結びついていないという面が多々あります。1点は、生活習慣病で すね。食べ過ぎですとか、何をどう食べるか、ここら辺がちゃんとできなくて内臓肥満、 いわゆるメタボリックシンドロームから生活習慣病へ至るという問題。ちなみに、奈良 県は野菜の摂取量が全国で下から4番目、それから脂肪の摂取量が全国一ということで す。さらに言うと、食に関するほかの問題として、児童たちの朝食の欠食率、朝ごはん を食べないという比率が全国平均より高いという問題があります。こういうことに対処 するために、奈良県では、全国的にもそうですけれども食育推進計画、これを今年度中 に策定して対処していこうとしております。  もう1点は本日のテーマになっております、健康食品かと思います。いろんな情報が 乱れ飛んでおります。国の垣根を越えて情報が乱れ飛び、また無許可の医薬品なども健 康食品として流通するというようなことがありまして、健康被害も発生していると、そ ういう問題があります。奈良県では、奈良食の安全安心確保の推進基本方針を策定しま して、事業をいろいろやっておりますけれども、その中で、奈良県食品安全・安心懇話 会、これは業者の方ですとか、消費者の方ですとか、いろいろ入っていただいて意見を 交換し合う、情報を共有するという、こういうことを行っておりますし、ホームページ などでもいろいろ情報を提供しております。  このリスクコミュニケーションなども、食品の安全に関する知識を得られる機会だと 思っております。本日の意見交換会を通じまして、ご来場の皆様が正しい食品の安全性 に関する知識を得ていただくとともに、関係者相互の理解が深まることを期待しまして、 開催県としてのあいさつとさせていただきます。きょうは、よろしくお願いいたします。 (拍手) 【司会】  それでは、議事次第の説明をさせていただきます。  お手元の封筒の中に議事次第というものが1枚入っているかと思います。これに基づ きましてご説明させていただきます。  まずは本日配付している資料でございます。この議事次第の下のところに配付資料、 参考資料というふうに書いてございます。配付資料といたしまして、資料1から資料4 の番号が入っているもの。それから参考資料といたしまして9種類、封筒の中に入って おります。その題名は、書いてあるとおりでございます。もし不足等がございましたら 担当のほうに、スタッフがおりますので、スタッフの方にお申し出いただければお渡し できると思っています。  それから本日はこの資料、配付参考資料に入っていない資料も入り口のところに、机 の上に積ませていただいておりますので、もし必要でありましたら、それも適宜とって いただければというふうに思います。  それから本日の議事進行でございます。この議事次第のほうの3番でございます。ま ず、テーマについての説明というものをさせていただきます。健康食品の賢い使い方に ついて、ということで独立行政法人国立健康・栄養研究所情報センター、健康食品情報 プロジェクトリーダーの梅垣敬三様から30分程度、続きまして、安全な健康食品の普 及のための取り組みといたしまして、財団法人日本健康・栄養食品協会理事長の林裕造 様から10分程度、続きまして、食育における健康食品の役割ということで、キッコー マン株式会社バイオケミカル事業部機能性食品グループ長の有井雅幸様から20分程度、 説明をいただきます。  その後、10分程度休憩を挟みましてパネルディスカッション、意見交換ということ で、終了の時刻といたしましては午後3時半ということを考えております。よろしくお 願いいたします。  それでは早速でございますけれども、独立行政法人国立健康・栄養研究所情報センタ ー、健康食品情報プロジェクトリーダーの梅垣敬三様から、健康食品の賢い使い方につ いて、ご説明をお願いいたします。             テーマについての説明 【梅垣 国立健康・栄養研究所情報センター健康食品情報プロジェクトリーダー】   皆さんこんにちは。ただいまご紹介いただきました梅垣と申します。  きょうは健康食品の賢い使い方ということで、国の制度とか概略的なことをご紹介し たいと思います。それではパワーポイントを使ってご紹介します。 (パワーポイント資料スライド2枚目)  きょうお話するのは、この5項目です。まず、情報のはんらん、科学的根拠の重要性 ということです。健康食品の問題で一番問題になるのは、やはり科学的な根拠がない情 報がいろんなところから出ているという問題があります。その問題についてご紹介した いと思います。  2番目に、健康食品はあくまでもやはり食品の1つなんですね。だれでも使ってしま うというところがあります。そういうことを考えて、やはり安全性が一番重要であると いうことで、安全性についてのお話をしたいと思います。  それから3番目に、いろんな健康食品というか、健康にいい効果があるという食品が 出回っていますけれども、その中で、国が保健機能食品制度というのをつくっています。 これについてお話をしたいと思います。  それから4番目に、健康食品の安全性・有効性情報ということですが、ちまたにはい ろんな情報が出ていて、何が正しいか、何が間違っているかわからないということで、 私どもの研究所では、ある程度公平な、科学的根拠のある情報を出そうというふうに今 対応していますので、そのことについてお話します。  それから5番目に、じゃ、実際にどうやって私たちは健康食品とつき合えばいいか、 選択・利用時の留意点について、私どもの考えをご紹介したいと思います。 (パワーポイント3,4)  健康食品っていろいろ言うんですけども、まず、医薬品と食品の区別をやはりしっか りしておいたほうがいいと思います。これは医薬品と食品のおおまかな分類で、こちら が医薬品、医薬部外品も含んでいる。私たちが口に入れるもので、医薬品以外のものは、 すべて食品になっているんですね。食品に含まれるのは、いろんなものがあります。そ の中で、一般食品と言われるものの中に、いわゆる健康食品があります。「いわゆる」 というのは、ちまたで言っているということで、これは実は行政的な用語なんですね。 こういう一般食品には、効能や機能の表示をしてはいけないということになっています。 これは薬事法でだめだということになっているんですけど、じゃ、なぜかと考えると、 こういう食品に効能や機能の表示をしてしまうと、一般の方が医薬品と勘違いしてしま うんですね。だから、それはやっぱり問題というので、ここには効能や機能の表示はし てはいけないということになっています。  でも例外があるんですね。これがかなり大きく書いてあるんですけれども、厚生労働 省が認めている食品の分類です。特別用途食品というのは、アレルギー用とか乳児用と か、特別の用途の表示ができるというもので、これは厚生労働省が審査をして、このマ ークが必ずついている。それから、保健機能食品というのがありまして、ここに特定保 健用食品、特保と呼ばれるものと、栄養機能食品というこの2つがあります。特定保健 用食品は個別許可型、商品ごとの個別に審査して許可されるもので、これに保健の機能 表示ができるようになっています。これも国が審査をしているわけで、このマークがつ いています。  もう1つの栄養機能食品というのは、栄養成分の機能表示ができるということで、限 定されたビタミン、ミネラルだけです。でこれは表示ができる。ただし、これはマーク がないんですね。なぜかというと、これは国の審査はないんです。ある規格に当てはま っていれば売っていいということになっています。でも、やはり科学的根拠がしっかり しているビタミン、ミネラルだけなんですね。こういうものがあるわけです。  そして、このマークが非常に重要な意味を持っています。いろんな言葉で書いてあっ ても、私たちはわかりにくいんですけども、このマークを見ていただくと、どこまで国 が関与しているかというのがわかりやすいと思います。こういうものは、ある程度限ら れた範囲で効能とか機能の表示をしてもいいんですけれども、それ以外のものは、効能、 機能の表示をしてはいけないということになっています。  それで、健康食品という言葉、ものすごくいい言葉なんですけども、非常に問題があ る言葉にもなっているわけで、今は、健康食品というのは何かというと、国が認めてい る保健機能食品、それから、いわゆる健康食品、国が表示を認めていないという、この 2つを足して健康食品と呼んでいるということです。 (パワーポイント5)  ここでやはり重要なことは、医薬品と食品の違いをはっきりしておくことだと思いま す。医薬品というのは錠剤とかカプセル剤になって、5ミリグラム、10ミリグラムと か、有効成分が明確になっている、それから、安全に製造されています。有害物質が入 っているようなものはないということですね。それで医師の方が処方して薬剤師が患者 さんに渡す、ダブルチェックをかけて有害な影響、副作用があるんだけれども、それが 出ないような環境で使うという、そういう状況で運用されているわけです。  一方、最近、食品で錠剤・カプセル、医薬品と同じような形態をしたようなものがあ ります。これの有効成分が何かというのが明確になっていないものもあります。それか ら、含有成分の量と、不純物が入っていないという、そういう確証がないものも結構あ るわけですね。一般の方は、食品は副作用がない、医薬品は副作用がある、だから食品 は安全だから利用しようと思われていますけれども、実はそうではなくて、こういう錠 剤、カプセル剤を使ったような健康食品って、過剰摂取するとやはり害が出る可能性が あるんですね。でもそれを試験していないんです、実は、正確には、ちゃんと試験はし ていないということです。それで、いろんな方がスーパーなどで買って自由に摂取でき るという状況になっています。  健康食品は基本的に、だれでも自由に自己判断で利用できるもの、商品の選択は消費 者にゆだねられているということで、消費者の方はやはりもっと積極的に、健康食品に は多様なものがあるということを理解していただくことが重要です。そして特徴をよく 理解し、安易な利用は避ける。効果を求める前に、まず安全性を考えてほしい。食品は だれでも使うものですから、やはり安全性が一番重要。こういうことが重要だと思いま す。医薬品と食品の違いというのは、安全に使える利用環境、それから、中の成分とか 商品の安全性のところが問題になるわけです。 (パワーポイント6)  いろんな情報が出ているんですれけど、科学的と思われている食品情報は3つに分け られます。まず、専門家という人がテレビなどで話す、それから学会の発表、また、し っかりした学術論文といって、研究している人がこういう論文に投稿する場合です。テ レビなどで出るのは非常にインパクトが強いんですけれども、実は、これは娯楽番組と してつくられているんですね。おもしろおかしくつくられていますから、これが科学的 だと思ってそれを実践してしまうと、健康被害を起こす可能性がありますから、注意し たほうがいいということです。  あと学会発表というのは、これはあくまでも研究した人が予備的に発表するもので、 確立されたものではないです。間違っている場合もあるということです。研究している 人が最終的に、こういう論文に出して情報を世の中に出していくわけですが、この時に 重要なのは、この論文に出すときに専門家の人が見ているんですね。それで結果の問題、 それと方法が間違っていたら、これは雑誌には掲載されないですね。例えば研究してい る人が100の論文を出したとしたら、例えば20とか30しか載らないんです。あと は載らない。なぜかというと、いろんな問題があるからということです。私たちが信頼 できるのは、やはりここの情報だというふうに思っていいわけですね。 (パワーポイント7)  じゃ、論文になった情報がみんな正しいか、私たちが使えるかというと、そうではな いんですね。実は、食品の研究というと、試験管内の実験、それから動物実験、ヒトの 実験、この3つに分けることができます。それで一番多く出てくるのはこの試験管内と か動物実験なんですけども、これは問題があります。どういうことかというと、人が実 際にどれだけの量を、どのように利用していいかというのがわからないんです。動物の 実験データを元にそれを実践しようとしたら、毎日バケツ1杯食べないとその効果は出 ないという場合もあるわけです。  最終的にはやはり私たちが実際いろんなものを食べていて、その中でどういう成分を とって、ほんとうに効果があるかどうかというのを科学的に証明しないといけないわけ ですね。それが、ヒトの試験なんです。いろんな情報が世の中に出ていますけども、信 頼できるのはヒト試験の情報です。これは論文の情報です。ヒトの論文情報を調査すれ ば、試験管内実験、動物の実験の中で、しっかりした研究結果が引用されているわけで す。安易に試験管内とか動物でこういう効果があるからというふうに、例えばある商品 に表示してあっても、それは話半分くらいに聞いておくのが一番いいと思います。 (パワーポイント8)  科学的根拠が存在するのは通常は素材の情報です。例えばキノコとかイチョウの葉っ ぱとか、こういうのが最近研究されるようになってきて、いろんな論文情報が出てきま す。でも、この情報が、私たちが例えば薬局などで見るこういう健康食品の情報に当て はまるかというと、そうではないんですね。なぜかというと、こういう実験的に使うの は、不純物を含んだようなものは使えません。きれいなものを使って実験するわけです ね。それと同じものがその商品の中に入っているかどうかというのは、わからないんで す。  大体、こういう商品って3つも4つもいろんな成分が入っています。そうすると、3 つ、4つ入ったときに、例えば相互作用によって有害な影響が出る場合もありますし、 全く効果がない場合もあります。よくわからないんですね。私たちは、例えばイチョウ 葉の情報が出ると、これは信頼できると思いがちですけれどそうではなくて、やはり最 終的には、商品情報が重要だということを理解しなければいけないと思います。  実は、この情報はメーカーさんにしかわからないんですね。どうやってつくっている かというのがわからないと、本当に安全か、有害物質が入ってないかというのはわから ないわけです。ですから、例えば、これにはこういう効果がある、だからこの商品には 効果があるということを考えると、間違ってしまうということです。 (パワーポイント9)  情報の問題ですけども、提供者の目的を理解していただきたいと思います。商品を販 売している企業の情報は商品の販売が目的ですから、いいことしか書いていないですね、 悪いことを書けば売れないですから。そういう状況で、情報は流されています。それか ら、マスメディアというのは、流されている情報に強い印象を与えるようになっていま す。例えば、ものすごく危ないか、ものすごくいいかどっちかです。そういうことをし ないと、私たちがそういう情報を見ないんですね。両極端な情報が出ている。ですから、 こういう情報の流し手、情報を提供している側の目的を理解して、私たちは冷静に、そ の情報を判断していくということが重要だと思います。 (パワーポイント10)  健康食品の虚偽、誇大な広告の例とここに書いてあります。こういうのはいろんなと ころ、日本だけじゃなくて海外でも、自然とか天然とか、そういうのでアピールしたり、 「脅威の」とか「奇跡の」とか、こういう文言でアピールしている商品が世界中にある ということです。だからこういうのはまず注意していただきたいと思います。これの詳 細については、私どもの研究所のホームページにQ&Aというところがありますので、 そちらで見ていただきたいと思います。 (パワーポイント12)  次は、安全性が最も重要というお話をします。健康食品というのは、それほど健康被 害は出ていないんですね。特定の条件で、どうも出ている。ではなぜかというと、もと もとの成分には有害なものはなくても、それを修飾するような因子があるわけです。例 えば利用方法の問題で、長期間、大量に利用してしまうと健康被害が出る、それから利 用者側の要因として、例えば高齢者とか病気の人が利用すると健康被害は起きてしまう 場合があります。それから、品質の問題で、例えばイチョウ葉だと、ものすごくきれい なものだったらいいんですけど、そこに有害物質が入っている、品質が悪いものだと健 康被害が起こる。  それから、最近よくわかってきたのは、医薬品と食品の相互作用ですね。医薬品を飲 んでいる人が健康食品を利用すると、害が起きてくるという事例がだんだんわかってき ました。でも、わからない部分が非常に多いというのが現状です。  そして不確かな情報というのがありまして、効きもしないのに、病気の人に効くとか いって情報が流れると、そういう人が利用して健康被害が起きる。こういうパターンに なっています。 (パワーポイント13)  安全性でやはり一番重要なことは、食品の持っている特徴ですね。それを理解するこ とが重要だと思います。食物の形態というのは、非常に重要な特徴を持っています。ど ういうことかというと、摂取できる量が限られています。ボリュームがありますし、そ れから味、香り、においというのがあって、私たちは、好きでも同じものばかりは食べ ないですね。そういうことから、過剰摂取しにくいような条件に、もともとなっている わけです。  でも、こういうサプリメント、錠剤、カプセル剤にしてしまいますと、味とか香りと かボリュームがなくなります。濃縮物になっていますから、容易に摂取できるというメ リットはあるんですけども、デメリットとして、過剰に摂取してしまうという場合があ ります。例えばレバーだと、ビタミンAが非常に多いです。でも、レバーを毎日食べる 人は多分いないと思いますね、嫌になってしまいます。ということは、量が限られる。 ところが、これを濃縮してしまうと過剰に摂取してしまって、ビタミンAの過剰症を起 こす場合があるわけです。  ですから、私たちは、こういう食材からとるというのが基本です。でも、どうしても 食べられない人がいますね、量的に。その人がこういうサプリメントとして利用するの は1つの選択肢ですけども、基本はあくまでも食材の形態から採るということが重要だ と思います。 (パワーポイント14)  これは、横軸が摂取量、縦軸が生体影響です。ビタミンAの場合でも、ある程度は私 たちにとって必要ですから、いいんですよね。そして有効性のカーブを見ると、こうい うふうになってきます。ところが、あるところから有効性のカーブが下がってくるんで すね。それは、有害な影響が出る。例えば、ビタミンAであるとビタミンAの過剰症、 吐き気がしたり、例えば、妊娠初期の人がビタミンAを過剰摂取すると胎児に奇形を起 こすという場合もあります。  それで、なぜ食品が安全かというと、先ほど言いました、通常の食材として摂取でき るのは、味とかボリューム、それから匂いがあります。せいぜい、摂取してもここら辺 なんですね。だから安全なんです。ところが、錠剤とかカプセル剤に濃縮して、摂取す ると、こういうふうに毒性が出る領域になるということを理解していかなければいけな い。  それから、幾らよいいといっても過剰摂取は問題、単一の成分や単一の効果のみに注 目するとバランスを崩す。例えば、牛乳は悪いということを言ってる人がいます。それ は、例えば牛乳を飲むと鉄欠乏を起こすと。牛乳は、もともと鉄分は少ないんですよね。 でも、牛乳イコール、カルシウムで、ものすごくいいんだと言って、1日に1リットル、 2リットルも飲む人がいたら、お腹がいっぱいになりますから、鉄分の補給ができない んですよね。それは単一の効果とか単一の成分のみ、これだけに着目して、食事のバラ ンスが崩れてくるから変なことが起こるわけです。ですから、普通の食材をバランスよ く食べれば安全な摂取ができるし、必要なものをバランスよくとれるということが、こ れからわかると思います。 (パワーポイント15)  いろんなものがありますけども、同じ名称の製品でも品質が全く異なるものがありま す。例えば、何かを製造するときは原材料があります。それから、中間製品があって、 最終製品があって、こういうものができてきます。このときに、原材料にもともと有害 なものがあれば、最終製品は危ないですね。それから、つくるときに例えば不純物が入 ってきたら、最終製品は問題になる。だから、こういうところを全部チェックしてある のはいいんですけども、チェックしていないのはやっぱり問題です。厚生労働省は、錠 剤、カプセル剤をつくるときのガイドラインをつくっていますけども、それは、こうい うところでもチェックしようということで、メーカーさんにガイドラインを出している というところがあります。 (パワーポイント17)  保健機能食品について、ちょっと駆け足ですけどお話しします。  特定保健用食品というのがありますけども、これはこういうマークがついているもの、 食品の3次機能に着目したものです。食品には3つの機能がありまして、1つ目は栄養 機能、2つ目は味覚、そして3次機能として体調調節。ここが非常に注目されるんです けれども、やはり重要なのは1次機能、2次機能、こういう味覚とか味とかですね、栄 養とか。ここが重要で、ここが満たされて初めて、3次機能に着目できるというふうに 解釈すべきだと思います。 (パワーポイント18)  ちまたにはいろんな食品があるんですけども、健康にいいという食品の集合体がある としますと、例えばいわゆる健康食品とか機能性食品があると、その中の1点が特定保 健用食品なんですね。どこが違うかというと、特定保健用食品は保健作用に科学的な根 拠があります。それから、人で安全性・有効性の評価がされています。それから当該食 品でも、評価されているということですね。それから摂取量の目安がある。どれだけ私 たちが摂取すれば表示してある効果が期待できるか、こういうのを審査しているんです ね。言いかえたら、特定保健用食品というのは製品の情報なんです。先ほどのところで、 いろんな素材の情報と製品の情報は違いますよとお話ししましたけども、特定保健用食 品は製品の情報として出ているというふうに解釈して利用されると、間違いはないとい うことです。 (パワーポイント19)  もう1つ、国が認めている保健機能食品の中の栄養機能食品というのがあります。こ れは、目的が非常に重要です。身体の健全な成長、発達、健康の維持に必要な栄養成分 の補給・補完。ここです。サプリメントという言葉がありますけども、あれはもともと サプリメンテーションで、補給・補完という意味で使うわけです。栄養機能食品の場合 は、ビタミンの12種類とミネラルの5種類のみ、今は認められています。なぜかとい うと、私たちが場合によっては不足する可能性があるというものだからですね。これは 人における安全性・有効性の科学的根拠が非常に多いということから、成分のみで判断 できる。  それから、日本人の食事摂取基準というので、私たちは1日にどれだけのビタミン、 ミネラルをとればいいかという基準があるんですね。基準があるから、じゃ、どれだけ 補えばいいかというのがわかるわけです。そういうので動いているのが栄養機能食品で す。 (パワーポイント20)  補給・補完ということを今説明しましたが、ビタミンCって、幾らとってもそんなに 害はなくて、下痢するぐらいなんです。これ横軸は摂取量です。縦軸は血漿中の濃度、 体の中にどれくらい取り込まれるかという指標ですね。そうすると、どんどんとってい くと、1日200ミリグラムくらいとると、体の中の量が飽和するんですよ。なぜかと いうと、消化管からの吸収率がものすごく下がります。それから、体の中に入っても、 すぐに尿中に出てしまうんですよね。  ということは、言いかえたら、補給・補完で使うというのは、こういうところの人な んです。私たちが商品を選ぶときに何ミリグラム入っているかと、多いものを選ぼうと しますけれども、実は、とればとるほど、体の中に入るわけではない。とればとるほど 入るのは、このレベルの人なんですね。1日に200ミリグラム以上とっている人がと っても、これはむだな摂取ということになってしまうということです。 (パワーポイント21)  あと、日本人の食事摂取基準というのがありまして、この意味が非常に重要です。2 005年から2010年までの5年間使うんですけども、食事摂取基準で、ビタミン、 ミネラルの1日の所要量、必要量が出ているんですね。これを見て、1日にこれが足り ないか、判断されているんですけど、実は、これは1日当たりで出してあるんですけど も、習慣的な摂取量を1日当たりに換算したものなんですね。  だから例えば昼、この食事をしたら、きょうはビタミンのB1が足らないとか、Dが 足らないとか思われますけども、それは、その日は足りなくても、次の日にちゃんと多 いものを食べればいいわけですね。ところが、これは毎日摂取しなきゃいけないと勘違 いしてしまうと、変なことが起こります。そうすると、サプリメントで使うしかないん ですね。だから、毎日その値を必ず満たさなければならないという意味ではありません。 平均して満たされていればオーケー。だから、きょう足りないものは、あした補う、ま た明後日でもいいわけです。  習慣的っていうのは明確な定義はないんですけど、1カ月程度というふうには言われ ています。そういう値で出てきているということを理解していただきたいと思います。 そうすると、必要なものは日常の食事から摂取すること、これが基本だということがわ かると思います。 (パワーポイント22)  健康食品の安全性、有効性情報ということをお話しします。健康食品のいろんな問題 がありますけども、何が問題かというと、これは雨後の筍というように私たちは言って いるんですけども、不確かな情報が雨のようにどっと降り注ぎます。土壌には、食生活 の乱れや運動不足などの生活習慣の問題があります。私たちはわかっていても、やはり なかなか生活習慣を改善できないというところがあるわけですね。この2つのファクタ ーがあって、私たちが持っている不安を癒すために健康食品が出ているというように考 えてもいい場合があります。  いろんな問題があるんですけども、行政ができるのは、変な健康食品を摘発、公表と いうふうにしていくわけです。でも、根本的な問題、情報が不確かであって、こういう 生活習慣の問題がある。ここが改善できないと、いつまでたってもエンドレスで、変な 筍、つまり健康食品が出てくるということですね。ここの両方を対応すればいいものだ けが残るという環境ができるというので、私たちは健康食品の安全性・有効性情報ネッ トというのを研究所でつくり始めました。 (パワーポイント24)  基本的な考え方は、健康栄養研究所にデータベースをつくりまして、現場の専門職、 栄養士、薬剤師、それから医師とか医療関係、保健医療の関係の人に情報を渡して、そ の人たちから消費者の方に適宜、情報を渡していただく。これは非常に情報が正しく伝 わります。それから、消費者が求めている情報を専門職の人から我々にフィードバック していただければ、消費者が求めている情報を私たちはつくることができるわけですね。 この基本ライン、ただこれは時間がかかりますから、研究所のホームページを介して消 費者も見れるような情報を伝えるという対応をしています。 (パワーポイント25)  ホームページで提供している情報はこの4つの項目で、健康食品の基礎知識、国の制 度とかです。国の制度ってだれのためにつくっているかというと、これは消費者のため につくっているわけですね。消費者に理解していただかないと、幾らいい制度でも何の 意味もないということになりますので、そういうところをちゃんと伝えたい。  それから安全性情報・被害情報。国内外に、いろんな健康食品に有害情報が出ていま す。この部分は、厚生労働省の新開発食品保健対策室と連携しまして、1週間か2週間 に1回は出しています。新しい情報、国内外の情報を出しているところです。それから、 話題の成分に関する情報といって、特定保健用食品の情報、ビタミン、ミネラルの情報 を出しています。  それから、健康食品の素材情報データベースというので、いろんな健康食品の素材が ありますけども、科学的にどこまでわかっているかというのは、やはり知っておく必要 があると思います。全然根拠のないものも、いっぱい世の中に出回っていますので、ど こまでわかっているかというのを、有効性についてはヒトのデータを中心にして出して います。動物実験のデータというのは、参考程度というふうにしております。それから、 安全性については、これはヒトだけではできませんから動物とか、いろんな情報を取り 上げています。  それから、医薬品との相互作用の情報を出しています。この安全情報というのは、健 康食品の場合、安全性というのは、すべての人に問題が起こるというものでもないわけ ですね。特定の人で起こる、じゃ、どういう状況で起こるのか。だれが何をいつ、どれ だけ摂取したか、こういうところを見ていただければ、自分がそれに該当しなければ安 心して健康食品、望んでいる健康食品を使う環境ができるということです。こういう情 報を提供しているところです。 (パワーポイント26)  これが実際のページの概要です。 (パワーポイント28)  最後に、非常に駆け足で申しわけないんですけども選択・利用の留意点ということで お話します。ちまたには健康食品と呼ばれる、保健効果を期待させる食品があるんです けども、大きく3つに分けられます。  まず国が審査している、こういうマークがついたものです。これは、国がお金をかけ てやっているわけですから、これを使わない手はないと思います。必要なものがここに あれば、ここを選択してもらう、でも、ここにないものも世の中にはあるわけですよね。 欲しいと思われるときは、食品は品質、規格が一定でないと安全性が確保できませんか ら、品質規格が一定のものを利用するというのが基本だと思います。  それには今現時点では、後で林先生からお話がありますけど、日本健康・栄養食品協 会がこういうJHFAマークをつけて、出している商品があります。こういうマークの ついているのは品質が一定であるということで、それなりに信頼できる。  それから、もう1つは、日本健康食品規格協会が最近GMPマークというのをつくっ ています。錠剤、カプセル剤のものはいろんなつくり方によって濃縮されていますから、 危ないこともあるし不純物が入ってくることもある。そういうのをちゃんとチェックし たものに、こういうマークをつけてある。  これは、あとはよくわかりません。今のところは、分けられないというのが現状です。 将来だれかがきっちり規格をつくっていけば、分けられるかもしれません。だから消費 者が選ばれるときには、まず選択順位としては1番ですね。ここにないものは2番、そ れで3番はお勧めはできないと、何とも言えないという現状です。 (パワーポイント29)  保健機能食品っていろんなものがあるんですけども、市場に存在する多様な製品を選 択するときの選択肢を示したものです。だから、特定保健用食品と出していても、国は これをとってくださいと言っているわけではないわけですね。いろんなものがある、例 えばこれは特保、ヨーグルトでも特保のヨーグルト、栄養機能食品のヨーグルト、普通 のヨーグルトがある。こういうふうな特徴を理解してほしい。食品の基本って、やっぱ り安全でおいしいものだと私は思うんですね。そうすると、価格も参考にして自分はこ れを選ぶんだ、国がそれなりに個別に、商品ごとに評価しているからこれを選ぼう。で もちょっと高いんだったら私はこれでいいとかですね、こういう感じで考えるのが妥当 だと思います。 (パワーポイント30)  特定保健用食品を国が認めているから使うという人もいますけど、それだけだと、ち ょっと不十分なんですね。これは特定保健用食品の中で、血糖値が高目の人にいいとい う特定保健用食品で、難消化性デキストリンというのが入っている飲料です。  これは科学的なデータなんですけども、炭水化物を摂取した後の血糖値の上がり方を 見ています。横軸が時間、縦軸が血糖値です。そうすると、これが対象の人で、こちら が飲料を飲んだ人、確かに血糖値の上がり方が抑えられている。これから、この商品が 特保の許可をとっているわけです。  もう1つ、じゃ、炭水化物を摂取しないときにどうだろうと調べたのがこちらなんで すけども、全然変わらないんですね。ということは、空腹時にこの飲料を飲んでも、普 通のお茶を飲んでも、水を飲んでも全く同じということですね。ということはこの場合、 一番重要なのは、この利用方法として、血糖値が高目の人が炭水化物とともに摂取した ときに効果が期待できるということですね。  もう1つ重要なのは、その前提で、基本事項。これですけれども、こういうふうに見 ると、効く人と効かない人がこの中にいるわけです。でも、ある人が20%の炭水化物 の摂取を制限した、これはみんなに効くんですよね。基本事項として、やはりちゃんと 食事を見直して、できるだけ糖質制限する。糖分の摂取を制限、それでもってこの特保 を利用すれば、ものすごく効果的に利用できる。効果的な利用方法もあるんだというこ とを理解していただきたいと思います。 (パワーポイント31)  特定保健用食品の賢い利用法というのを書きましたけども、まず、正しい食生活を考 え、基本事項を実践する、今の話ですよね。糖分の摂取を抑える、これがみんなに効き ます。これは確実に効くことは、明らかです。それからもう1つ、それを実践して次に 効果的な利用法として、表示されている効果が期待できるような利用方法をする。この 2つをやれば、非常に効果的に特保を利用することができます。基本的に、特定保健用 食品は現在の食生活を改善するきっかけとして利用すると効果的です。何かをやるとき に、私たちはきっかけがいるわけですよね。そのきっかけとして特保をもし利用するな らば、これは非常に有効に使えるようになるというふうに思います。 (パワーポイント32)  市場にはいろんなサプリメントがあるんですけども、サプリメントっていうのはビタ ミン、ミネラル、ハーブ、アミノ酸など、要するに錠剤、カプセル剤のものなんですね。 でも、サプリメントって全部一緒じゃないんです。これは2つに分けられます。まず、 栄養機能食品と呼ばれるもの、これは国が基準をつくっているもの、それから、私たち がどれだけ必要かという量的なことがわかっているものです。それ以外のものは、よく わかっていません。これは大まかに分類しておりますが、個々の例外はあるんですけど も、大まかに見ると、こういうことです。 (パワーポイント33)  こちらは、人における必要量、有効性・安全性の根拠、科学的な根拠があるんです。 こちらはよくわからないということなので、もしサプリメントというのを利用されると きは、栄養機能食品と表示されているものを使うのがやっぱり一番安全で安心であろう というふうに思います。ポイントとして、栄養機能食品をうまく活用する。これは必要 最小限の利用が一番効果的です。むだな利用をする必要はないんですよね。例えば、ビ タミンも毎日摂取する必要はないんです。忘れたころに摂取するくらいでもいいかもし れません。そういう感じで利用していただければ、むだに利用をしないし、効果的な利 用ができるということです。  いろんなものを考えるときに、ゼロリスクというのはないです。いろんなものは、特 定の人にはリスクはあります。そういうことを考えると、健康食品の場合、バランスを 考える、リスクとベネフィットの関係を考える。こちらはベネフィットで、こちらはリ スクですね。そうすると、健康食品を利用して、例えば自分がいい効果を体感できてい るという人はいいでしょうけども、私は全く効果を体感できていないという人は、残る は、このリスクですね。健康被害を受けるだけではなくて、多大な出費をしてしまう、 そういうリスクがあるわけです。これは消費者自身が考えるべきものです。こういうこ とを考えていただきたいと思います。 (パワーポイント34)  健康被害っていろんなものが出てくるんですけども、消費者が保健所を介して厚生労 働省へ上げて、それが、もし関連が疑われる場合は、国が公表するという体制ができて いるわけですね。だから、ここはあまりよく知られていないと思うんですけども、もし 自分が使っていておかしいと思ったら保健所に連絡して、そういうのを国のほうに上げ ていただければ、悪い情報というか、必要な情報はみんなで共有できるという体制にな るというふうに思います。ここのところをよろしくお願いします。 (パワーポイント35)  これは最後のスライドですけども、健康の保持、増進って、健康食品の話ばかりしま したけども、食品だけでは絶対に対応できません。例えば病院のベッドで寝ていて、ち ゃんとした食事だけしても絶対健康にならないですよね。やはり運動もしなければいけ ないし、疲れていたら、やはり休養にまさるようなものってないですね。そういうこと を考えると、この3つのバランスですね。健全な食生活、適度の運動、適度の休養、こ のバランスがやっぱり一番大事なんですね。こういう全体像を理解して、もし自分に合 うような健康食品があるんだったら、品質をよく確かめて利用されるのがいいことだと いうふうに思います。  以上です。ちょっと長くなりましたけど、ご静聴ありがとうございました。(拍手) 【司会】  ありがとうございました。  続きまして、財団法人日本健康栄養食品協会、林裕造様から、安全な健康食品の普及 のための取り組みについてです。  では林先生、よろしくお願いいたします。 【林財団法人日本健康栄養食品協会理事長】  ただいまご紹介いただきました林でご ざいます。  私が依頼を受けましたテーマは、安全な健康食品の普及のための取り組みということ です。  私たちは常に、心の中では、もっと健康になりたいというような期待感から健康食品 を食べたいと思います。一方では、私たちの外部では、健康食品による被害が報道され ています。したがって、安全な健康食品の普及のための取り組みというのは、別の言い 方をしますと、消費者がそれぞれの健康目的に応じて、有用な健康食品を正しく選択し、 適切に使用できるためにはどんなことをすればいいかという取り組みであると思います。 いろいろな取り組みがありますけれども、ここではそのポイントだけを8分間、お話さ せていただきたいと思います。 (パワーポイント2)  まず最初は、企業が安全な健康食品をマーケットに提供する過程を支援する、あるい は理解するための取り組みということです。実は、企業を支援するということも大事で すけど、企業を理解するということは、企業に対する一番大事な支援だと私は思います ので、その点は十分ご理解をいただきたいと思います。  その中の第1番目は、やはり科学的根拠に基づいて、安全性が担保された健康食品を 企業が研究し、開発する過程を支援し、理解することです。研究開発に当たって、その 食品のリスクがあるかどうか、安全であるかどうかを調べるためのリスク・アセスメン トを徹底してやっていただくと。それが一番大事だと思います。  リスク・アセスメントを徹底してやっていていただく際に大事なことは、やはり問題 点があるんですね。それは、国際的に容認されて、実施可能な安全性評価法がまだ健康 食品についてはつくられていないということ。もちろん、食品添加物とか医薬品につい てはありますので、それを準用しているということですけども、やはり健康食品に特化 したものを、後で申しますけど、これをみんなで考えていかなければならないというこ とが1つございます。  第2番目は、ここでしっかりした安全な健康食品がつくられたとしましても、同じ規 格のものを、安定的に供給するというような体制がなければならないと。そのためには ここでGMPという1つの方法があるんですけども、これに従ってしっかりとした生産 の体制をとっていただくということ。それをまた支援する、それを理解するということ が大事だと思います。 (パワーポイント3)  次は、消費者が適切な健康食品を選択し、それを正しく使用していただくための取り 組みです。どういう使用をすれば正しいのか、安全なのかというような摂取基準をどう したらいいかということについての取り組みです。従来は、企業の方、あるいは有識者 の方が使用基準を決めて、行政がそれに手直しを加えるという方式がとられていますが、 それよりも、消費者、企業、行政、有識者の合意による科学的に妥当な使用基準を設定 するということ、これを消費者の方々に徹底するということが一番大事だと思います。 そういうことで、そのためには、やはりリスク・コミュニケーションを徹底的に行うと いうことが必要だと思います。  こういう場合に、健康食品にはいろいろな種類があるものですから、こういう方法で やれば安全が担保されるよというような1つの基準とか方法はないとしますと、やはり 大事なことは、これまでのいろんな健康食品、あるいは特定保健用食品を含みますけれ ども、そういうものについての摂取基準に関するデータベースをつくり、それらを根拠 にして、摂取基準の設定の科学的根拠を明らかにすること、言い換えるとデータベース と知識ベースをつくることが大事だと思います。  先ほど、梅垣先生のところでは、こういうこともこれからきちっとやろうとされてお りますので、そのうちに、こういうデータベースが外に流れてくると思いますので、期 待しております。 (パワーポイント4)  それから、消費者が正しく理解をすることが一番大事なので、そのための取り組みが 重要です。その取り組みというのは、どういうことを理解していただくかということで すが、まず第1番目は、健康の保持・増進における健康食品の一般的な役割について理 解していただくということ、これは一般論ですね。それから、もう1つは、消費者がそ れぞれの目的に応じて健康食品を正しく選択するために必要な、個々の製品の特性につ いての情報、これを理解していただくということです。それから、もう1つは、選択し た健康食品を適切に使用していただくための摂取条件を正しく理解していただくことで す。  こういう情報を消費者はどこから得るかというとですが、やはりマスメディアからが 多いと思います。もう1つは、医療機関とか保健所とかもあります。マスメディア、医 療関係者、保健所、薬局薬剤師、店頭での食品保健指導士、こういう方へ正しく、わか りやすい情報を提供するということが一番大事だと思いますし、同時に、医療機関と企 業との協力体制をつくるということも私は大事だろうと思います。  もう1つ大事なことは、先ほど梅垣先生もおっしゃったんですけれども、食品には表 示についての規制があることです。現状の表示の規制で、ほんとうに消費者が必要とす る情報の提供が可能かどうかということですね。それをもう少し考えるということ、こ れにも、やはり消費者も企業の方もまじえた議論が必要ではないかと考えます。 (パワーポイント5)  最後に、安全な健康食品を正しく社会に普及をさせるために、他にも解決しなきゃな らない問題が残されています。安全性の評価指針もまだはっきりしないし、GMP指針、 健康食品についての指針もまだでき上がっていません。そうしますと、いろいろなもの があるわけです。そうすると、問題解決のための対策については、やはり企業、消費者、 学識経験者による健康食品の安全性と有用性に関する定期的な情報交換が重要であると 思います。今回の、こういう情報交換も、その1つであると思います。  それから、もう1つ、従来私たちは食品については、その安全性にしろ、有用性にし ろ、何か問題があると、問題解決を行政に求めていたわけですね。行政にこういうよう な規制をつくってほしいとか、こういう措置をしてほしいとかいうことを求めていたわ けですけれども、食品というのはいろいろな種類があるということで、国際的には、す べてを行政に求めるということはないと思います。  やはり、企業、企業団体、消費者、学識経験者が、まず問題解決について検討し、そ の結論を行政に確認してもらう、あるいは訂正していただくという方式ですね。これが 国際的にはとられておりますし、それが多種多様な健康食品を普及させるためには、よ り現実的な方法ではないかと考えます。  最後に一言申し上げたいのは、健康食品というのは国内の問題でもありますけれども、 健康食品は国際的な商品であるということですから、やはり、そのためには国内の情報、 国際的な情報、特に国際食品規格委員会、コーデックス・アリメンタリウスの情報を重 視して、それを取り入れて安全対策を考えるということ、これも1つの重要なポイント ではないかと考えます。  簡単ですが、以上であります。(拍手) 【司会】  ありがとうございました。  続きまして、キッコーマン株式会社バイオケミカル事業部機能性食品グループ長、有 井雅幸様から、食育における健康食品の役割についてです。  よろしくお願いいたします。 【有井キッコーマン株式会社バイオケミカル事業部機能性食品グループ長】  キッコ ーマンの有井と申します。よろしくお願いいたします。  きょうは、食育における健康食品の役割ということでお話をさせていただきますが、 実は、私どもの会社の会長が現在、食育推進会議の委員をやらせてもらっていることも ございまして、今、全社を挙げて食育ということに取り組んでおります。  その中で、健康食品というのをどう位置づけして、その役割をどう定義するかという のが重要ではないかというふうに考えております。 (パワーポイント2)  前半部は、ごくごく簡単ですが、食育の話をさせていただきますが、食育基本法とい うのが、食に関する問題点と、それに応じた基本的な施策ということで制定されており ます。その中で、例えば、3番の地域における食生活改善活動であるとか、6番目の食 に関する調査研究、情報提供ということが非常に重要ではないかなというふうに考えて いる次第でございます。 (パワーポイント3)  2000年に、3省合同で食生活指針というのが出されました。海外でも同じような 指針がございますけれども、この10項目は食生活の上において非常に重要であると。 特に、例えば、この3番の、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを、御飯など の穀類をしっかりとるというのが重要ではないかというふうに思います。 (パワーポイント5)  キッコーマンの食育のお話を少しだけさせていただきますが、健やかで楽しい食生活 を送るために役立つ、食にかかわる情報・知識・体験を提供することというふうに定義 をしておりまして、3つの願いということで取り組んでおります。1つは、食で体を大 切にと。食は、予防医学の面で非常に重要でございまして、その中でも、御飯主体の食 生活の長所を再認識した、新しい日本型食生活を提案・発信するということが重要であ るということ。  それから、単に栄養というだけではなくて、食で心をいっぱいにすると。心身の健康 維持・増進には、食は大切であるということをあらわしております。  それから、私ども、幸いに、おしょうゆについては、アメリカをはじめとして海外に たくさん輸出したり、販売させていただいておりますが、逆に、海外の食を日本に紹介 するということも積極的にやっておりまして、食で地球のみんなを幸せにということも 重要であると思っております。 (パワーポイント6)  そこで、統一のスローガンとして、おいしい記憶をつくりたいと。味による記憶と、 食べる環境による記憶があるということです。最近問題になっている個食だとか、そう ではなくて、家族団らんで食事をするというのは、単に栄養だけではなくて、心にもそ の栄養を運んでくれるというのが私どもの食育でございます。 (パワーポイント7)  ちょっと話を展開いたしますが、最初にご紹介した食生活指針というのを少し発展さ せた形で、長寿のための食生活5カ条というのも出されております。いろいろ書かれて おりますが、4番の、主食は御飯がよいと。食べ過ぎにはご用心ということです。 (パワーポイント8)  それから、大阪市立大学の皮膚科の小林先生のスライドをちょっとお借りしましたけ ども、肌によい食生活とは何だということで、ここでも主食は米というふうに言ってい ただいておりますけれども、実は和食がいいんだということです。 (パワーポイント9)  健康な肌を維持するための食生活としては、伝統的な日本食を中心とした食生活がい いんだけれども、ただ、これは肌だけではなくて、肥満や生活習慣病にも役立つんだと いうふうにお考えになっているようです。ただ、最近の環境の悪化やストレスの増加な ど、伝統的な日本食を基本としつつも、海外のすぐれた食材を積極的に取り入れるとと もに、不足する栄養素や有用成分を健康食品、例えば栄養機能食品であるとか、特定保 健用食品、サプリメント等で補充する、21世紀の日本型食生活を構築することが重要 ではないかというふうに考えております。 (パワーポイント10)  じゃ、実際、どういう栄養素が足らないのか、具体的にどういう食生活をすればいい のかということで、先ほどからございましたように、食事摂取基準とともに、食事バラ ンスガイドというのが設けられております。主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物と、 こういったものをバランスよく摂取するということと、上のほうに人がくるくる回って おりますが、運動も重要であって、休養もしなさいと。先ほど梅垣先生のおっしゃって いることが、このコマの図であらわされております。 (パワーポイント11)  そこで、野菜の力を見直そうということで、これは東京都の栄養士会が発行している 冊子で一部ご紹介をいたします。監修は、東京にあります女子栄養大学の吉田先生でご ざいます。 (パワーポイント12)  ここでは、1つホウレンソウを取り上げておりまして、実は、ホウレンソウに含まれ る栄養素、さまざまなございますが、ここではビタミンCとβカロテン、特にビタミン Cに注目しておられます。ホウレンソウもいろいろな品種があるということで、含まれ ているビタミンCの量もがさまざまでございます。  それから、しゅんの野菜というのは非常にいいということですが、実は、ホウレンソ ウは冬の野菜でございまして、下のグラフにございますように、産地によっていろいろ とばらつきはございますけれども、たくさんビタミンCは含まれる。一方、夏に収穫す るホウレンソウは、それのほぼ3分の1から4分の1であると。しゅんの野菜がいかに いいかということをあらわしている1つの情報ではないかと思います。  それから、産地、市場、小売店と、流通するごとに少しずつビタミンCは壊れていく ということもわかっているようです。 (パワーポイント13)  それから、この辺は有名ですけれども、ビタミンCというのは実は熱に弱くて、一番 下の、ホウレンソウをゆがくと、1分、2分、3分、4分とゆがいていくごとに、ビタ ミンCが約6割ぐらい壊れます。したがって、ホウレンソウをビタミンCを摂取する食 品というふうにとらえた場合、しゅんのホウレンソウをさっとゆがいて食べるというの が一番いいと。元来、ホウレンソウのおひたしなんていうのは、そういうふうに料理す るのが一番いいと言われてきたのではないでしょうか。ただ、こういうふうにうまく食 べられればいいですが、もしかしたら、人によってはビタミンCの摂取が足らないかも しれないということをあらわしております。 (パワーポイント14)  さて話を健康食品へ展開いたしますが、実は2004年に厚生労働省が主体になって、 医師会、薬剤師会、栄養士会、それから消費者団体、業界等が集まって、健康食品にか かわる今後の制度のあり方という提言がございました。心身の健康維持にはバランスの とれた食生活が重要であると。ただ、現在の状況、食生活の乱れ、生活習慣病の増加、 高齢化の進行などに対して、健康食品の役割が期待されると。したがって、食育を通じ てさまざまな食品の機能を十分に――ここは消費者だとか、国民というのが入りますが ――理解して、選択できることが重要で、正確で十分な情報提供が必要であるというこ とです。  ただし、検討課題としては、健康食品の有効性・安全性などに関する科学的根拠の解 明と、それから、それをいかに国民へ普及・啓蒙するかが重要である、課題であるとい うふうに提言されました。  この提言を受けて、特定保健用食品の制度の基準の見直しということで、先ほど来あ りました条件つき特保なんかが制度化されたということと、それから、健康食品で、特 に錠剤、カプセル状食品の製造基準、GMPのガイドラインと、原材料の安全性のガイ ドラインというのがつくられております。したがって、企業としては、今、このガイド ラインに即して健康食品を製造しているということになります。 (パワーポイント15)  健康食品の科学的根拠というのをどういうふうに考えればよいのか、エビデンスとい う言葉も最近はやっておりますけれども、こういった5項目ぐらいが重要ではないかと いうふうに考えております。  1つは、食品として安全であること。食品の場合は、食経験というものがございます ので、それをよくよく考えた上で、さまざまな動物だとかヒトを対象にした安全性の試 験をやらなければいけない場合もございます。それから、食品として、異物や毒物の混 入がない、もしくは基準値以下であること。最近、残留農薬だとか、残留抗生物質が話 題になっておりますが、その他、有機水銀などの重金属、環境ホルモン、マイコトキシ ン、それから、BSEだとか、鳥インフルエンザなどの感染源の混入等々を配慮する必 要がございます。  それから、有効性が明らかであること。動物実験だけではなくて、ヒトにおける有効 性の試験をやって、有効性を示す推奨摂取量を決めるということが重要です。  それから、有効成分が分析可能であること。食品の場合は、有効成分が医薬品のよう に単一の化学物質であるということは、なかなかありませんで、複数の成分がある一定 の比率でまざっていることが多いです。しかしながら、サプリメントの賞味期限を決め る場合は、味とかにおいとか、色だけではなくて、その有効成分の安定性、例えば2年 間だったら、2年間の安定性で保証するということがありますから、ある程度分析がで きなければいけないということを言っております。  それから、作用メカニズムだとか、吸収・代謝などが明らかであることと。こういっ たことがわかると、例えば最適な利用法であるとか、それから、他の食品成分、医薬品 との相互作用、薬物代謝酵素系への影響とか、生体利用率、それから、体内蓄積性など の安全面の評価ができるというふうに思います。  私の口から言うのは、甚だ遺憾でございますけれども、理想的であるがハードルが高 い研究課題でございまして、こういったところを目指して、日々企業は努力していると いうふうにご理解いただきたいと思います。 (パワーポイント16)  最後に、私どもの研究の一端をご紹介して終わりたいと思います。フレンチ・パラド ックスという言葉を聞かれたことがございますでしょうか。日本でも数年前、赤ワイン のブームになりました。実は、ここに書いてあります幾つかの学術論文で、フランス人 の赤ワインの摂取と病気の発生率、もしくは死亡率を見たものでして、そこから出てき た言葉です。フランスの逆説ということで、非常に脂肪分が多い、こってりとしたフラ ンス料理を食べるにもかかわらず、フランス人においては心臓病による死亡率が他のヨ ーロッパの国に比べて少ない。それは、どうやら赤ワインをたくさん飲んでいるからだ というような研究成果です。  ただし、単に赤ワインを飲めば健康になるというわけではなくて、その前提条件とし て、脂肪分が多い食事をしているというリスクにおいて、赤ワインを飲むことがいいと いうふうに理解していただければと思います。梅垣先生がおられる国立健康・栄養研究 所の報告ですが、どうやら、その中に含まれているポリフェノールの一種で、プロアン トシアニジンというのが有効成分ではないかということが言われております。 (パワーポイント17)  プロアントシアニジンというのは、ちょっと化学構造が難しくて恐縮ですが、お茶で ご存じのカテキンが縦にずらずらっとつながった、化学的に言うと、縮合型タンニンと いう化合物ですが、ブドウの中でも皮とか種にたくさん含まれておりまして、市販され ている赤ワインでいいますと、通常、グラス1杯を150ミリリットルとすると、その 中に45ミリぐらい含まれているということで、赤ワインを飲むと、このプロアントシ アニジンを私どもは摂取しているということになります。  果たして、ほんとうにこのプロアントシアニジンにそういう効果があるのかどうかと いうのを私どもは研究しているわけです。 (パワーポイント18)  ここからは、プロアントシアニジンの供給源として、ブドウの種から成分を分離した もので研究しているという、1つの研究例としてお話をさせていただきます。  プロアントシアニジンの化学構造を決めて、その分析法を決めました。それから、安 全性という観点から、いろいろな研究をしております。 (パワーポイント19)  それから、プロアントシアニジンを食べて、どうやら体の中に吸収されそうだという こと。  それから、ネズミの研究ですけれども、食べたプロアントシアニジンというものが、 どうやら体の中のさまざまな組織だとか臓器に分布して、1日から2日ぐらいで体の外 に排泄されるだろうということがわかってきております。 (パワーポイント20)  さまざまな組織、臓器に到達するということですから、体の中のさまざまな組織、臓 器に何らかの影響があるだろうということで、消化管だとか、血液、血管、皮膚、目、 脳、筋肉、乳、肺、免疫、その他、前立腺に及ぶまで、さまざまな動物実験だとか、ヒ トの研究をやっております。今、ヒトでの安全性の試験をやっておりまして、例えば、 大体赤ワインで1日に摂取するぐらいの10倍の量を1カ月間とり続けても、特に健康 に悪い影響はなさそうだと。それから、通常の赤ワインの一日摂取量の2倍ぐらいの量 を1年間継続して食べても、どうやら安全性には問題がないだろうといったところまで わかってきております。  最後は、私どもの研究の一端をご紹介いたしましたけれども、食品安全委員会でも健 康食品の安全性の考え方というのが提示されておりまして、現在、企業においては、先 ほどご紹介しました厚生労働省から出されているGMPだとか、原材料の安全性のガイ ドライン、それから、食品安全委員会の安全性の考え方にのっとって、健康食品を製 造・販売しているというふうにご理解いただきたいと思います。  ちょっと早口でしたが、どうもありがとうございました。(拍手) 【司会】  ありがとうございました。  それでは、ここで10分程度、休憩をさせていただきたいと思います。  パネルディスカッション及び意見交換は、この時計で2時20分から始めたいと思い ますので、よろしくお願いいたします。            パネルディスカッション・意見交換 【司会】  それでは時間となりましたので、これからパネルディスカッション及び意 見交換を行います。  まず、パネリストのご紹介をさせていただきます。  壇上、皆様から向かって右側のほうから左手に向かってご紹介いたします。  日本健康・栄養食品協会理事長、林裕造様です。(拍手)  キッコーマン株式会社バイオケミカル事業部機能性食品グループ長、有井雅幸様です。 (拍手)  市民生活協同組合ならコープ理事、中野素子様です。(拍手)  奈良県食品・生活相談センター消費生活ネットワーク運営委員、小島節子様です。 (拍手)  厚生労働省、中林圭一大臣官房参事官です。(拍手)  それから、本日のコーディネーターですけれども、予定していた方が所用ができまし て、急にご参加いただけなくなったということから、やむを得ず、科学者の立場からパ ネリストとしてご参加いただく予定でありました、梅垣先生にコーディネーター役をお 願いすることになりました。改めまして、よろしくお願いいたします。(拍手)  それでは、以降の議事進行につきましては、梅垣先生のほうでよろしくお願いいたし ます。 【梅垣氏】  それでは、パネルディスカッションを始めたいと思います。  最初に、意見交換の進め方についてご案内します。  まず、3つの講演がありましたけれども、これについてわかりにくいところなどのう 質問、ご意見を求めたいと思います。ディスカッションをする内容については、その後 で、会場からも求めたいと思います。  それでは、先ほどの講演、私の講演も含めて、パネリストの方で何か質問がありまし たら、お願いします。 【中野氏】  先ほど紹介にあずかりました、ならコープ組合理事の中野と申します。 よろしくお願いいたします。  私のほうからは、有井さんに質問なんですけれども、先ほど、食育における健康食品 の役割ということでお話をいただいたんですけれども、どういったところが結局、健康 食品の役割やったのかが、ちょっとわかりにくかったので、できれば、ご解説いただけ ればと思います。 【有井氏】  ちょっとわかりにくかったと思います。どうも、申しわけございません。  補足を含めてお話をさせていただきますが、食育基本法の中に、食に関する調査研究、 情報提供というのが基本的な施策としてございます。この食というのは、通常、皆さん だとか私が食べている食をあらわしておりますけれども、そういったものが健康にどう いうふうな影響を与えているのかということを調査するというのが、まず重要ではない かというふうに思います。  既に、国の機関だとか、大学だとかで、さまざまな形で調査研究をされていて、その 情報が提供されているわけですけれども、梅垣先生がおつくりになっているデータベー スのように、それを統一して、一般の方々にわかるように提供するというのが、1つは 食育ということの重要なところではないかと。極端に言うと、子供でもわかるという情 報が一番重要ではないかというふうに思います。  そういったときに、健康食品というのを翻ってみると、ある特定の食品成分のみが含 まれる健康食品が特定の健康効果を示すことがわかると、その成分を含む食品にも同じ ような健康効果が期待されることを理解する手助けになるのではないかというふうなこ とが、まず役割の1点目です。  それから、実際に食育という、食から健康の維持・増進を考える場合は、先ほども申 しましたように、一般の食事からなかなかとれない、とれていると思っていても、実は そうではない成分も、一人一人、個人個人で見ればあるのではないかと。したがって、 そういったものがわかるようになっていけば、例えば、ビタミンCでも、食品に含まれ ているビタミンCの量ではなくて、梅垣先生からお話があった、血液中のビタミンCの 濃度を調べていくようなことが万人に行われるようになれば、実際、不足するビタミン Cの量はどれぐらいかというのがだんだんわかってきます。そうなると、一般の 食事の工夫で摂取する場合もございますけれども、サプリメント等で補充するという場 面も出てくるかというふうに思います。  その2点から、食育の中で健康食品を位置づけ、その役割ということでお話をしたか ったということでございます。 【中野氏】  ありがとうございます。 【梅垣氏】  ほかにご質問はありませんか。  そうしたら、会場の方で、長くならない程度で、もし講演に関する質問があれば受け たいと思います。コメントをいただく場合は、挙手をお願いいたします。それから、私 がご指名しますので、係の人がマイクを持っていったら、差し支えなければ、お名前と ご所属をいただいてから、発言をお願いいたします。簡潔にお願いしたいと思います。  ございますか。  特にないようでしたら、じゃ、次に、ディスカッションに移っていきたいと思います。  消費者の立場から、健康食品についての意見とか、認識というのをいただきたいと思 います。まず、市民生活協同組合理事の中野先生からお願いいたします。 【中野氏】  先生と言われると、ちょっと戸惑うんですけれども、ただ、ただ一般の 消費者です。  私のほうは、ならコープの一組合員として、組合員活動というものに携わるようにな って、約8年、理事ということになりましてからは1年半が過ぎました。その中で、多 くの方から食とか暮らしにかかわる声というものをお伺いをいたしました。  昨年になるんですけれども、食育基本法の成立を受けまして、私たちは暮らしとか食 の課題をどうやって解決していったらいいかということを考えたいので、実際、ならコ ープの組合員の食生活の現状ってどういったものなのかなということで、組合員さん1, 000人を対象としまして、食と食生活に関するアンケートというものを実施しました。  その中で、約650名の回答を得ることができたんですけれども、私どももちょっと 素人なもので、作業のほうをおぼつかないながら、まとめましたけれども、先ほど食育 の話もありましたけれども、バランスのとれた食事をとっていますかという質問に対し て、約90%近くの方が、そういうことに心がけているというふうに答えられていまし た。  でも、野菜摂取量について大体の目安をお伺いしましたら、奈良県の摂取量はすごく 低いということが言われていたんですけれども、それを示すとおり、国の目標の1日3 50グラムに対して、大体約6割強程度という結果でした。だから、バランスというこ とは心がけていても、なかなか、こと野菜に至っては、とりにくいものなんだなという ふうに思いました。  じゃ、私たちは一体どうしていったらいいのかなとは思うんですけれども、その中に、 今回のテーマでもある健康食品というものについては、あまりコメント自体はなかった ので、今回のパネリストとして意見を述べるということに関しては、何人かの方にアン ケートをお願いしたんですけれども、ここへ来まして、小島先生にお伺いしたら、かな り大規模なアンケートを実施されたということなので、それについては、ほぼ同じよう なコメントが入れられていたので、大きくは割愛させていただいきたいんですけれども、 大体、消費者の不安というのは、ふだんの食生活を我慢してということはないけれども、 高い健康食品を買うんですから、使っておられる方は当然ながら効果を期待されていま すし、リスクがないのも望まれているということは当然のことなんですけれども、わか りました。  一方、それを知る手段である食品の表示とか、それから法律とかに関しては、やっぱ り個人が調べるのは、表示は細かい字があって面倒というのか、関心については、何か、 そういう読み方についてはあまり高くありませんでした。  どこで買われたかというのをその中でお伺いしましたら、大体がドラッグストアとか 通信販売といったことが多かったです。私、実際にドラッグストアのチラシというのが どういうものか、ふだん、自分自身は使っていなかったので見ていなかったので、そう いうものを見たりとか、お店のほうへのぞきに行きました。そして、気になったことな んですけれども、以前、たまたま日本広告審査機構のほうからお話を伺いましたので、 多少、健康食品の広告、表示のチェックポイントということもわかってはいるはずだっ たんですけれども、何が適正なのか、ほんまは全部適正なのかもしらへんけど、ちょっ と、これは、どうなんやろうと思うのが、結構難しいものやなというふうに思いました。  そのJAROの方のお話で、例えば、よく膝の痛みにどうのこうのと書かれているも ので、節々の痛みにと書かれていたとしたら、節々が漢字やったら、だめで、それは何 でかというと、関節というのをイメージするからだそうですけど、片仮名とか平仮名と かで書いてあったら、それはいいんやというお話をお伺いしたりすることがあったりし て、そういうものが意外にあるのかなというふうに思いました。  その記事自体が適正かどうかは、素人の私が判断する必要はないかと思うんですけれ ども、そういったことに気を配っていただいているお店というのは、信頼できる購入先 なのかなというふうに思います。  あと、ドラッグストアの広告でもう1点、気になったのは、医薬品と健康食品が同じ 欄に掲載されているものがありました。例えば、「健康な体づくりをお手伝い」とか 「忘年会のシーズンに」といった表なんかをつくってあるんですけど、その中に医薬品 と健康食品が混在して掲載されていたり、店舗でも、同じ棚に陳列されていたりしまし た。そういったことを見ていると、どうしても健康食品も医薬品も同じように考えてし まうのと違うかなというふうに思いました。  それ以外に気になることとしては、私も小学校6年生の子供がいますので、子供がふ だん、どうしてもテレビとか雑誌を見ていて、健康食品に限らないですけど、自然と、 ずっと歌っているんですね。これって、ずっと歌っているうちに、これはとらんとあか んと思うようにならへんのかなと、ちょっと、いろいろ気になるところです。  あと、もう1点、ほかの方からも言われたんですけれども、健康食品の専門店で、ち ょっと催眠商法的なところで引っかかっておられる方が近所におられるんよという話も 聞いて、そういった商法の辺もちょっと気になっています。  以上です。 【梅垣氏】  ありがとうございました。  それでは、引き続き、奈良県生活相談センターの小島先生、お願いいたします。 【小島氏】  小島でございます。  私、ネットワークに属しておりまして、ネットワークは奈良県食品・生活相談センタ ーの中にある消費者団体でございます。私どもの活動は一月に1回講座を持ったり、そ れから、奈良県から委託を受けまして、毎年、奈良県の消費者約1,000名を対象に アンケートを行っています。今年度は「健康食品について」のアンケートを9月から1 0月に行い、現在、まとめている段階でございます。  その点から、健康食品についてちょっと述べさせていただきます。  健康食品という名称ですが、それは、あたかも、それを食べると健康になるという過 大な期待を持たせる言葉だと思いませんか? しかし、現在市販されている健康食品は、 有用性ばかりに注目されていますけど、リスクのある食品だと思うんです。  国は、安全性・有効性を認証したものを保健機能食品とし、特定保健用食品にはロゴ マークをつけました。しかし、私たちのアンケートでは、この制度も知らないし、ロゴ マークもわからないと言う人がかなりいました。もう少しPRしてほしいし、また、消 費者も学んでいきたいと思うんです。  国は健康食品、その他の健康食品を「いわゆる健康食品」という位置づけをして、一 般食品と同じ扱いにしました。それには、ちょっと疑問を感じます。本来、すべての健 康食品に安全性評価を義務づけられれば、安全性は増すと思うんです。しかし、「いわ ゆる健康食品」は一般食品扱いであるがゆえに、安全性評価はできないということです。  国は、特定保健用食品、トクホといいますが、トクホの拡大策として、条件つき特定 保健用食品の制度をつくりました。私が思うのに、「いわゆる健康食品」を条件つき特 定保健用食品に取り込むか、それとも、それに準じるような規制を設けて、消費者が安 心し、利用できるようにしてほしいと願っております。  だれもが健康でありたいと願っている、それは普通のことです。私たちの行ったアン ケートで、1に、健康維持、2に、栄養成分の補給、3に、疲労や体力の回復目的で、 健康食品を摂取している人が非常に多かったです。安易に健康食品に頼らずに、まずは バランスのよい食生活、適度な運動・休養が大切だと思います。毎日の食生活を見直し、 健康食品がほんとうに必要なのかをよく考え、それでも足らない栄養素があれば、補助 的に、安心な特定保健用食品をうまく利用すればよいと思います。  また、食育を通し、安全で安心な食事の基本を身につけたいと思っております。私た ちの講座でも、健全な食生活、あるいは食育を講座の中に取り入れ、これから啓発して いきたいと考えております。  また、健康になりたいために摂取した健康食品で、健康を損ねることもあります。ア ンケートでも、健康食品を摂取し、体の調子が悪くなったと、36人の報告がありまし た。現在マスメディアでは、健康食品に関する広告や情報であふれております。虚偽、 誇大広告が多く、とても魅力的な言葉で、飲めばすぐに効果が出るような錯覚に陥りや すいです。健康食品を摂取するときは過度な期待をせず、科学的な根拠のない広告に惑 わされず、成分などの表示、あるいは有効性・安全性の内容をよく確認する、成分の表 示がはっきりしないものは注意が必要だと思います。  また、安易に自己判断せずに、専門家に相談するのもよいかと思います。最終的には、 消費者の自己責任であることを知った上で、健康食品を上手に利用したいものだと思っ ています。消費者が健康食品を安全に利用するためには、行政は強制力のあるガイドラ インをつくる、市販品の成分が表示どおりか検査し、危険情報などをいち早く公表して ほしいものだと思っております。また、事業者には、安全性や品質管理を強化し、誤認 させるような広告をしないで、法令を遵守した商品づくりを願っております。  なお、ネットワークでは、来年2月21日にアンケートの発表会を行いますので、関 心をお持ちの方はぜひ傍聴しに来てください。以上です。 【梅垣氏】  ありがとうございました。  今のお二人の発言内容からすると、問題点は3つあると思いますね。1つは、健康食 品という言葉の定義と、その疑問ですね。健康食品って、非常に言葉がいいんですね。 とれば健康になるという思いを持ってしまうという、言葉の問題もあります。でも、そ の中で、国は特定保健用食品という制度を動かしていると、こういうところが十分理解 されていないという問題点があると思います。  それと、もう1つは、安全性の確保ですね。いろんな商品が出回っていますけれども、 どうやって安全性確保をしているかと。それは、製造物の責任がありますから、業者側 が第一義的な責任を持つということですけれども、それだけじゃなくて、やっぱりほか の問題もあるということだと思います。  それから、3番目に表示ですね。いろんな食品に表示されていますけれども、せっか く表示してあるんですけれども、消費者の人が理解しにくい、もしくは理解できないよ うな表示になっている可能性もありますし、ちゃんと表示が読めるような普及活動が十 分行われているかどうかという、そういう疑問、この3点が、今おっしゃられたことだ と思います。  とりあえず、この3つに関して、意見交換をしたいと思いますけれども、まず、健康 食品の定義、疑問ですね。先ほど、医薬品との違いとか、いろんな規制とかもあるでし ょうけど、もっと規制をしてほしいという意見もありましたけど、そういうところを厚 生労働省の中林先生にちょっとコメントをいただけますでしょうか。 【中林厚生労働省大臣官房参事官】  中林でございます。  まず、健康食品自体の定義、あるいは位置づけの話ということでございます。中野さ んの話もございますし、小島さんの話もございましたけれども、やはり、健康食品とい う言葉自体が非常に当たりがいいということもございまして、随分、その言葉自体で誤 解を与えていると、そういったものが現実にあるのかもしれないというふうに思ってお ります。  その中で、特に私どもが注意している事項が幾つかございます。まず、やはり医薬品 と食品との違いの話が当然ながら出てくるわけでありまして、食品衛生法という法律の 中で、食品についてのさまざまな規制はあるわけですけれども、その中で、大体、法律 というものは定義というものが最初にあるんですけれども、どう書かれているかと言い ますと、わかりやすく言えば、食べるものであって、医薬品を除くと。要するに、薬で ないもので、口から入る、そうしたものについては、基本的にそれは食品だという整理 になっています。裏返して言えば、まず、あるものが医薬品かどうかということを判断 した上で、その残りが食品となると、一応、法律的にはそういう形の整理になっている わけです。  しからば、じゃ、そもそも医薬品とは何かということになるわけなんですけれども、 これは幾つかの類型がありますけれども、一部正確さは欠きますけれども、わかりやす く申し上げますと、見分けるのには大きく分けて2つのファクターがあると。1つは、 もっぱら医薬品でしか使えない成分というのは当然ございます。いろんな病院でもらう お薬なんかは、そういうものが非常に多いわけですけれども、そうしたものは基本的に 食品には使えないということが決められていまして、それが仮に食べ物に入っておれば、 それは基本的に医薬品という範疇に属するという判断がなされます。  それが仮に医薬品とういことであれば、それは許可も受けていませんし、承認も受け てないということになりますので、これは薬事法違反という形になると。ですから、見 分ける1つのポイント、これは実際に消費者の方々が店頭で見るというのは無理なんで すけれども、それを実際に保健所へ持っていったりして検査してもらって、仮にそうし た医薬品成分が入っておれば、これはそもそも違反ですという話ができると。  それと、もう1つ。どんなものでも、そういう部分はあるんですけれども、表示と関 係してくる話になります。いろんな効能をうたう。これを飲めば、この病気が治るとか、 効能をうたったら、その段階で、これは薬事法違反という扱いになります。極端に言え ば、世の中に、どれだけ食べても安全だというものはありません。例えば、水を飲んで も――これは汚染物質が入っていない水ですけど――1日に何リットルも飲めば、ある 意味で、体を壊しちゃいますし、病気になっちゃいます。そうした意味で、物について はゼロリスクというものはないわけなんです。  そうした中で、リスクとの兼ね合いで、いろんな作用が出てくると。一般に、作用が 薄いものはリスクも少ない、作用が強くなればリスクも高くなると、これは一般原則に なっているわけなんです。そうした中で、仮に皆様方がいろんなお店の棚を見て、これ は何に効くということがあれば、それは、その時点で、おそらく薬事法違反になるとい う形で我々は判断しております。したがいまして、まず医薬品と食品の区分をすること が必要だと。  そうなった後で、それが食品となった場合には、それが健康食品であるか、あるいは、 そうでないかというようなことになってくるわけでございます。梅垣先生のお話にもご ざいましたけれども、特保という制度、あるいは栄養機能の表示をしている、そうした ものは厚生労働省できちんと審査をした上でなされているわけでございますけれども、 それ以外については、必ずしもそういう状況じゃないということがございます。  したがいまして、これは若干、表示とも絡んでくる話ではありますけれども、そうし たことを我々としても、わかりやすくお伝えしていくという努力は必要になってくるで あろうし、さまざまな方にも、そういった意味でのご尽力をいただきたいと、お互いに 協力し合って、これについてはこうだということがわかりやすく、健康食品は健康食品 でわかりやすく伝わるようにしたいということがあります。  それから、若干気になった話でございますけれども、中野さんからも、ドラッグスト アで医薬品と健康食品が一緒に並んでいて、非常にわかりにくいというような話もござ いましたけれども、そのあたりにつきましては、それ自体がどうのこうのということで はございませんけれども、いろいろ議論に思われる点がございましたら、保健所等に対 して、こういうことがあるんだけれども、法律ではどうなんでしょうかというような相 談をしていただくというのも1つの解決方法かなというふうに考えております。  あまりしゃべり過ぎても何ですから、とりあえず、このあたりにしたいと思います。 【梅垣氏】  ありがとうございます。  それでは、もし会場からご質問、健康食品は非常にいい名前過ぎて、この言葉を使う なという人も結構いらっしゃるんですけれども、この定義について、もし会場から何か ご意見がありましたら、いただきたいと思いますけれども。  ございますか。  ないようでしたら、また後で。 【小島氏】  済みません、その前にちょっと質問させていただいてよろしいでしょう か。 【梅垣氏】  どうぞ。 【小島氏】  今、テレビで、コエンザイムQ10とか、リポ酸というのがすごく人気 があるんですね。ある番組で、それを摂取すればこそ若返るとか、全身の細胞を活性化 させるとか、中年になったら、これは体内でできないから外から補充するのが望ましい とか。私の周りでも、飲んでいらっしゃる方が結構いるんですね。テレビ放映後は、も う予約でいっぱいで、3カ月待ちとか言っていましたけど、もともと、これは医薬品な んですよね。医薬品のときには副作用提示なんかをしていましたけど、これが健康食品 に入るようになって、副作用提示が必要ない。その辺のところ、私、よくわからないん ですけれども。これは、含有率の違いなのでしょうか? 【梅垣氏】  中林先生、お願いできますか。 【中林参事官】  後ほど、林先生に補足していただいたほうがいいかもしれませんけ ど、まず、医薬品との関係なんですけれども、先ほどは非常に単純化して申し上げまし たけれども、実は、もう少しややっこしい話がございます。  コエンザイムQ10というのは、もともと、私も昔、患者さんを診ていたときに処方 していた記憶もあるんですけれども、ノイキノンという薬で出ていましたけれども、そ うしたもので、確かに、もともと医薬品で使われていました。ただ、医薬品で使われて いるものであっても、それが食品としても使えるという類型が1つございまして、まさ にコエンザイムQ10は、医薬品でもあるし、あるいは、それを食品として使うことも 可能だというような類型になっています。仮に、それが食品として使われるということ であれば、それは、当然ながら、その部分については薬事法の適用を受けませんので、 副作用報告等については特段の規定はございません。  ただ、それでほんとうにいいのかということが、やっぱり、これは考えなければなら ない話ということでございまして、これについては、実際には事業者に対して、それを 食したことによって、さまざまな問題が出た事例については、きちっと提出してくださ いというような話をしてございます。さらに林先生から追加していただければと思いま す。 【梅垣氏】  じゃ、林先生、お願いします。 【林氏】  コエンザイムQ10は、そういう点で、かなり複雑なんですね。これは確 かに医薬品だったんですけれども、医薬品としては、ちょっと複雑なことを言いますと、 これは細胞内でATPをつくるための電子伝達系というのがありますが、それの1つの 成分なんですね。そういう意味で、心不全の補助薬剤としては有用であろうということ で医薬品なんですね。  これが今食品として使われているのは、そういうことで使われているんじゃないんで すね。コエンザイムQ10というのは、体の中でつくられる1種の抗酸化剤なんですね。 その抗酸化作用を持っているということに着目して、今、健康食品として使われている ということなんですね。ですから、同じコエンザイムQ10なんですけど、目的が全然 違うということなんですね。  だから、ここで問題になるのは、抗酸化剤として使うほうが量が多いということなん ですね。ところが、実際問題として、医薬品としてATPの産生を高めるということで 使われているときには、ほとんど副作用はありません。抗酸化剤として使うときは、よ り多くを使いますが、医薬品ではそれほど大量を使った経験は日本ではなかったわけで すね。抗酸化を目的とした医薬品として日本では使っていないんですけれども、諸外国 では抗酸化剤に着目した医薬品としての検討が行われているんです。そのときは、日本 で使われている量の10倍から100倍ぐらい、3,000ミリぐらい使っているんで す。ただ、それは患者さんを対象としているということですけれども、ただ、患者さん の場合のコエンザイムQ10の体内での代謝と、正常な方とは違わないという知見があ るので、それも特に問題はないと考えます。確かに医薬品として使っているより大量が 食品として使ったということで、これは考えなきゃいけないということはあるんですけ れども、安全性という面では、一応問題点は確保されているというのが現状ですね。 【小島氏】  効能の面では、いかがでしょう。 【林氏】  効能の面は、今後の検討が必要です。 【梅垣氏】  効能は、薬ですから。 【林氏】  効能の面というのは、隣に有井さんがおられるんですけど、こういう抗酸 化剤の機能としては老化防止とか、動脈硬化症を抑えるとかですが、摂取としたことと、 効果がみられたことの間が、ブラックボックスになっています。だから、それについて の検討が十分じゃない。コエンザイムQ10についても、確かに長いことをやった人に はこういう効果があったらしいということはあるんですけれども、じゃ具体的に、体の どこの部分にどういう作用があるかということはブラックボックスになっているという ことで、実は、健康食品の中には、そういうブラックボックスがかなりあるということ が非常に問題を複雑化しているということで、ブラックボックスの検討、これは、私は 企業の研究所の方々にお願いしたいということです。 【梅垣氏】  コエンザイムQ10もαリポ酸も、私どもの研究所の健康食品の有効 性・安全性情報ページで、どこまでヒトでわかっているか、どういう問題があるかとい うのを出していますから、それについては個別に、機会があればごらんになっていただ きたいと思います。  もう1つ追加ですけれども、例えば、商品にコエンザイムQ10と表示してあっても、 みんな同じではないんですね。ある人が分析したら、全くおなかの中で溶けなかった、 吸収されなかったというものもありますし、コエンザイムQ10というふうに表示して あっても中身は全然違っていたというのも世の中にはあるわけです。そういう意味では、 私たち、消費者は名前だけで判断することがありますけれども、それだけでは判断でき ないものがあるということを気にとめていただければ、変なものを利用することは無く なるというふうに思います。  じゃ、次に、安全性の確保についての疑問とかがございましたら。先ほど、林先生の ほうから、それから有井先生のほうからも企業側としてのお話がありましたけど、それ についてパネラーの方から何か質問、ご意見ございましたら。 【中林参事官】  安全性の確保の話なんですけれども、特保とかは別といたしまして も、現実問題、健康食品については、なかなか全部チェックできないというのが実状で ございます。さはさりながら、じゃ、行政としてどうするんだということがございます。 そうした意味で、実は、私どもも基本的に、食品の安全、食べて大丈夫なものをつくる というのは、食品衛生法の3条にもございますけど、基本的にはつくっている側が一義 的には責任を負うというのは当たり前の話なんですけれども、そうした方々に対して、 梅垣先生のお話にもちょっとありましたけれども、つくり方の問題であるとか、あるい は、どういう原材料を使うということをきちんとして、その原材料についての安全性を 文献調査、あるいは必要があれば、それについても安全性を確認するためにさまざまな 実験をする、そのようなことを事業者に対してお願いをしています。  お願いをしていますと言ったら途端に、お願いしてもやらないところもあるんじゃな いかという話がおそらく出てくると思いますけれども、これは基本的に食品自体の性格 として、そうしたものだという一般的な考え方がございまして、あくまでもお願いをし て、それを守っていただくようにするというのが我々の基本的なやり方でございますし、 それについては理解を求めるというために我々も努力していると。  ただ、それだけでは、当然、まだまだ不十分なわけであります。そのときにどうする かということなんですけれども、実際、お願いしているんだけれども、現実にいろんな 問題が起こる場合がある。それは、先ほど小島さんからのお話もございましたけれども、 現実に食べて、何か調子が悪くなったとか、そういう話がございます。そうしたものに ついては、当然、私どもも対応しているわけでございまして、例えば、平成15年には アマメシバの話であるとか、最近はアガリクスとか、いろんな形で、実際に問題が出る ものについては私どもも調べて、それについては注意喚起、あるいは、それを販売しな いようにというようなことまでやっています。  ただ、それが機能するために何が一番大切かというと、実際に食べてぐあいが悪くな ったという情報をきちんと行政のほうにいただかなければ、なかなかその仕組みが動か ないという部分がございますので、もし何かを食べて調子が悪いんだというような話が あれば、迷うことなく、それぞれの地元の保健所のほうに、そういう話があるというこ とを伝えていただきたいと。それを受けまして私ども、実際には梅垣先生のところにも いろいろお願いすることになるんですけれども、そうした研究機関などできちんとそれ について調べるというようなことをやっております。  そうした、実際に事業者にお願いする話と、現実に、仮に何か問題があったときには、 その被害が拡大しないようにきちっと調べると。一応、現在のところ、そういう両面の やり方で、安全性を確保するということを私どもは考えてございます。もちろん、すべ てのものについて行政が検査して、それについて安全性を確認しろという話はございま すが、現実的に、それはなかなか難しい部分がございまして、今の健康食品でも、例え ばインターネットを見ても、あるいはいろいろな広告を見てもそうなんですけれども、 どんどん手を変え、品を変えと言ったら、ちょっと誤解があるかもしれませんけれども、 さまざまな形で新たな商品がどんどん生み出されているという中で、現実的には、なか なか行政として、すべて事前に対応することは難しいということについてもご理解いた だければというふうに思うわけでございます。  とりあえず、私からは以上でございます。 【小島氏】  済みません。それでも、よほど大きな健康被害ではない、それと健康食 品との関連性が立証されなきゃ公表はしない。私たちのサプリメント被害、小さなもの だと貧血ぎみになったとか、吐き気がした、めまいがした、体調が悪くなった、胃が痛 くて焼けそうになった、その程度の被害のときはどうすればいいんでしょう。 【中林参事官】  私の言い方に誤解があったのかもしれませんけれども、ちょっとめ まいがするとか、そういったものは軽いから私たちは取り合わないということでは決し てございません。仮に軽いもの、何かおなかの調子が悪いとか、そんなことでも結構で ございます。ごく些細なことであっても、それがその食品に由来するものであるという ことがわかれば、当然ながら、そうした食品は売ってはならないわけでございます。で すから、実際の症状の重さ、軽さにはかかわらず、我々は当然ながら調べます。 【梅垣氏】  今のお話、要は使っている方も、ほんとうに健康食品が原因かどうかと いうのは判断できないんです。ここが、健康食品の被害をとらえる難しさなんですね。 行政も、今までは因果関係がはっきりしないと公表できなかったんですけれども、疑わ しいというものは積極的に情報を出していくということをやっていますから、そういう ことを消費者の方が理解されるというのが、まず1つですね。  それから、もう1つは、何が原因かわからない。消費者の方がいつ、何をどれだけ摂 取したかというのは、やっぱり自分がご存じなんですね。だから、そういうことを考え ると、健康食品を利用する場合は、いつ、何をどれだけ利用したかというのをメモぐら い、私はとってもいいと思うんですよね。そうすると、あるときからおかしくなった、 それは健康食品をとり始めてからだ、そうすると、自分も、ひょっとしたらこの健康食 品が危ないかもしれないということがわかるわけですね。積極的に保健所とかに連絡で きるような体制ができてくると思います。だから、消費者自身も積極的に対応すること が必要でしょうし、行政側もやっぱりちゃんとしないといけない。  もう1つは、当然、事業者側は安全性を確保して、一義的には安全なものを流通させ なきゃいけないという責任もある。それぞれが役割を持っているというふうに思います ね。そういう意味で、頑張っていただければと思います。 【林氏】  実は、医薬品でも同じようなことがあったわけですね。そのときに、やは り医薬品で、これは副作用として入れていいのか、入れちゃいけないのかということが 問題になったとき、そういう場合は、医薬品の副作用調査会では、それを決定しないで 注目するというような1つのジャンルに入れるんですね。それでデータをだんだん蓄積 して、そして、それを副作用に入れていいのか、入れてはいけないのかというようなこ とをやっておりましたし、今でもやっていると思います。そういう手続というか、考え 方を、まだ始まったばかりですけれども、健康食品の場合にも入れられれば、これはサ イエンティフィックにもきちっと整理できるのではないかと考えます。 【梅垣氏】  ちょっと、私、聞きたいんですけど、会場の方で、健康食品で有害とい うか影響があったら保健所に連絡するということをご存じの方、挙手していただけます か。 (参加者挙手)  やっぱり少ないですね。それは、多分行政側の責任もあると思いますけれども。何か 問題があったら、保健所に連絡していただきたいと思います。私どものところにもよく 質問があって、こういう健康食品を利用して、おかしいんだけど、分析してくれないか というのが来るんですね。でも、分析するのって、ものすごくお金もかかりますし、そ の商品自体を証拠として持っていなきゃいけない、量もある程度必要なんですね。それ は、消費者の方に提供していただくことになります。自分では対応できないので、まず 保健所へ連絡されて、保健所で健康食品が原因かどうかというのはある程度想定されま すから、そこで、保健所から国の機関に行って、無料で分析できるようになっていると 思います。そうですね。 【中林参事官】  まあ、予算の関係もありますが。 【梅垣氏】  そういうことになっていますので、被害の報告は保健所が窓口になって いるということをご理解ください。  会場のほうから、何か、今の件についてご質問とか、ご意見ございますか。  どうぞ。 【参加者1】  今の質問に対して、いろいろコメントに関してですけど、結局は、消 費者というのは、そういうものを理解する能力というのはゼロなんです。それを国は、 規格基準型以外は全部審査をして、それ以外は消費者が勝手に理解しなさいということ になるわけですよ。そこら辺のところの、販売をするときの規制とか、何かを義務づけ るというのは、やはり、こういういろんな問題を予防するのには重要じゃないかなとい うふうに思うんですけど、その辺はどうでしょうか。義務化は難しくても、準義務化す るというような考え方は。 【梅垣氏】  厚生労働省のほうから、どうぞ。 【中林氏】  解決方法は、大きく分けて2つあるんじゃないかと、今、私は思ってい ます。1つは、既存のものに取り組む。先ほど少しご提言がございましたけれども、条 件つき特保という話もございましたけど、そうした既存のさまざまな、例えば検査デー タの提出とか、そうしたことを伴うような範疇に取り込んでいくと、それは1つの解決 方法。  ただ、この場合の隘路は2つございます。1つは、現実的に、例えば特保に取り込む とき、これは条件つきでもそうなんですけども、全くデータなしにというわけにはまい りません。それなりのデータというのが集まらないと、国としては当然、これについて はこうした機能があるということを言うことはできない、その問題が1つ。もう1つは、 やはり、そういうデータを提出することに関して、その食品を製造しているところはそ ういったコストもかかる、そうした隘路がおそらくあるんだろうなと。ただ、このあた りの現行の特保制度も含めた見直しについては、やはり、これから検討する大きな課題 だろうというふうに思っています。  それから、もう1つの解決方法なんですけれども、やはり、こうした健康食品につい ても、特保にしてもそうなんですけれども、ちょっと次の話にかかわってきますけれど も、それは表示と密接にリンクしている話なんだろうと。いわゆる健康食品であっても、 これはどういうふうに効くとか、何にいいとか、どういう作用があるとか、何もそこに 書かれなければ、それは健康食品になりませんし、全然問題のない、単なる食品という ことで、それにつられて消費者がそれを買うということはないわけであります。ですか ら、結局、健康食品の問題の本質は、1つにはそこにあるんだと。表示と実際、販売さ れているものとのギャップ、そこをどうするかと。  先ほど申しましたのは、中身の話だったんですけど、今度は逆に、表示として適正な 表示を求めるということに尽きると。そうした場合に、今、いろいろ規制があるわけな んですけれども、現実には、おそらくその規制をきちっと守っていない食品も現実には、 市場には相当あるんだろうなと。表示の仕方、あるいは広告の仕方ですね。例えば、イ ンターネットで私も見ることがありますけど、どう考えても、これは薬事法、あるいは 健康増進法違反だというのは現実にございます。もちろん、そうしたものについては、 見つければ行政は対応できるんですけれども、どうしても、そのあたりの体制自体の問 題もございまして、うまくいかないということもございます。  ですから、そうした表示の規制、あるいは表示の監督、そのあたりについて、何か 我々としてもう少し一歩踏み込んだ形でできるような仕組みが考えられないのか、その ために何か必要なツールが何かあるのか、そのあたりについて、そろそろ行政としても 検討していくべき時期には来ているというふうに考えております。  いずれにいたしましましても、健康食品自体についてさまざまな議論があることは承 知してございますし、我々がいただいている1つの大きな宿題だというふうに思ってお りますので、これから内部的にも、それから、いろんな方々のご意見も伺いながら、こ れについてどうしていくかということについての検討を進めていきたいというふうに思 っております。 【梅垣氏】  それと、先ほどの方、どうぞ。 【参加者2】  安東といいます。  大分のほうで薬業協同組合という、小さな薬屋さんの協同組合の理事長をやっており ますので、さっきお薬の販売という、販売する側、大きなドラッグストアじゃなくて、 小さな薬屋なもので、ちょっとあれが違うとは思うんですけれども、我々の感覚で言う、 先ほど中林さんがおっしゃった、法律で決まっているから薬なんだ、それ以外が食品な んだというのは、これはほんとうに、ある意味、非常にわかりやすいんですけれども、 一般の方にしてみると、今私が困っているものを治してくれりゃ、それが薬なんですね。 だから、法でいう薬と、皆さんの思う薬というのに、ものすごい乖離があるというか、 ギャップがある、それがこの問題のどこまで行っても解決のつかない問題なんですね。  私なんかは、ずっと長いこと、いや、それはおばちゃん、薬じゃねえけんというふう な言い方で店頭で話をするんですけれども、だけど、おばちゃんが持っている情報は、 全部私のこの症状にぴったり合う、いい薬じゃんというふうに思うわけですね。それの 行ったり来たりの繰り返しで、最終的には、こっちが折れてしまうみたいな形。  だから、これをどう解決していいのかというのは、毎日店頭で考えて、私なんかも答 えが出ないんですけれども、ここのところをうまいぐあいに解決策をみんなで見つけて いかないと、健康食品と健康被害というか、わけのわからんマーケットがどんとあって、 要するに、我々は少しでも患者さんを助けてあげようと思うんだけれども、やっぱり業 者さんの中には、まず利益が先にあって、もうかるためには何を売るんじゃというよう な格好をやっていく人たちも結構いらっしゃる。一般の人から見ると、その区別は全く つかない、この状況を何とか変えられんかなというふうに思っているのが、我々の毎日 の立場です。 【梅垣氏】  ありがとうございました。  なかなか難しいんですけれども、一番重要なのは、物を買う人の立場に立って商品を 販売する、そうしたら変な物は売らないはずなんですよね。それから、ほんとうに必要 な物をアドバイスして、渡すことができる。そういう基本的な考え方があるのか、ない のかというのは非常に重要だと思います。  先ほど中林先生がおっしゃったんですけど、インターネットの表示には、ものすごく ひどいものが中にはありますね。インターネットで購入する場合には、売る人の顔が見 えないですから、変な物を売りつけられて文句を言おうとしても、もうそのサイトがな くなって、お手上げなんですね。そういうことを考えると、売る相手の顔が見える状態 で買うというのが一般的な判断基準、安心して買える判断基準になり得るというふうに は思いますね。ちょっと、それはコメントです。  ほかに、会場でどなたか、ご意見ありますか。 【中野氏】  私も健康食品の勉強を3月にたまたますることがあって、それから、き ょうのパネリストになる前にレジュメもいただいたのに、やっぱりここへ来てお話を伺 うと、それなりに健康食品ってわかり得るものなのかなという可能性も感じました。や っぱり、確かに、文字になってしまうと頭に入りづらいものではあるんですけれども、 その間に介在する、先ほどの1対1でコミュニケーションしながら、情報を流しながら 売っておられるというのは、そうですし、それから、私たち、ならコープの組合員とい うものも、暮らしの課題を考えていっているところでもありますので、そういった情報 が欲しいと思っておられる方にこういった講演内容を学習会みたいなのでアレンジする とか、やっぱり、1回話を聞いて忘れても、2回聞いたら、ちょっとは覚えているかも しれへんというので、少しずつ頭に残っていけばなと思うんです。  それと、先ほど、成分の情報、ホームページのことを案内されていましたけども、私 もレジュメをいただいて、実際にのぞいてみたんですけれども、これはやっぱり難しい ですよね。かなり専門的なことが書かれていまして、字も細かいし、これをきっちりチ ェックする場合は、こういうのを見せていただくと参考になるかなとは思ったんですけ れども、もし自分が例えば何か使いたいな、困ってるなと思っても、大きなドラッグス トアではコミュニケーションをとりながら選ぶというのは、なかなか難しいことかもし れませんので、そういった成分を見たときに、これは何なんやろうと思ったら、一応お 店の方に聞くのも1つでしょうけど、そういったときに携帯電話からちょっと情報サイ トみたいな、簡単な言葉でのぞければ、それもまた誤解を招くかもしれないんですけれ ども、そんな可能性というのはどうなのかなとも思います。  やっぱり、細かい字になるとちょっと読みにくいのは、そうなので、できるだけ平易 な言葉で解説できるようなものが介在する、それが人であれ、本であれ、そういった本 もいろいろありますので、そういったものがあればなというふうに願っています。 【梅垣氏】  今の話ですけど、私のところのホームページは、基本的には専門職の人、 栄養士とか薬剤師、医師とか、保健所の人、そういう人に先ず情報を渡すというふうに 考えているんです。なぜかというと、情報をつくるときに平易な文章にすると、必要な 箇所が抜けてしまう場合があるんです。そうすると、拡大解釈される場合がありますか ら。  新聞でもそうですね、例えば、ネズミのおなかに注射して何かをやったらがん細胞が 消えたという情報が、「ネズミに何かを投与したらがん細胞がなくなった」と伝えると、 投与の仕方というのが抜けていますよね。腹腔内投与って、おなかの中に注射するなん て書いてもわからないから、それを削除してしまうことが、新聞なんかではあると思い ます。そうすると、私たちが口から摂取して効果があるかどうかって、わからなくなる わけですね。だから、情報を伝えるというのは非常に難しいんですね。  そのときに平易に書くというのは必要かもしれませんけれども、それで逆に、かえっ て誤解を招くということがありますから、基本は、やはり専門職の人が情報を伝えても らう。例えば、薬局だったら薬剤師の方に聞く、それから、何か商品を買ったら、その メーカーの方に聞いて、ちゃんと説明ができるんだったらいいし、説明ができないなら、 やっぱりおかしいんですね。健康食品は食品だから、安全だし大丈夫だと言っているこ とが実際に事例としてあるんですね。それは、やっぱりおかしいと私は思います。そう いうところを理解して、もし買うのだったら、積極的に販売者に聞くということをやれ ば、大分改善することはできるというふうには思います。 【中林参事官】  実は私も先生のところのホームページを見せていただいて、やはり ちょっと難しいですよね。おそらく、今先生お話しになったように、基本的に、あれは 専門家を対象にしているということであるわけで、当然ながら、間を介在する役割の人 が必要だろうというふうに思っています。その役割の人として、大きく分けて2つ考え てございまして、1つは、そうしたことでわからなければ、保健所のほうに専門職がい ますので、こんなことを書いてあったんだけど、どういうことでしょうかと。直ちに、 その場で電話でお答えできないこともあるかもしれませんけど、それは責任を持って、 行政機関としてお答えするというような形でできればと。  それから、もう1つ、きょう、こういうパンフレットが配られていると思うんですけ れども、これは林先生からご説明いただいたほうがいいかもしれませんけども、専門ア ドバイザリースタッフの養成というものもございまして、こうした形で仲立ちをしてく れるような人を行政としても支援していくということを考えてございますので、そうし た専門職。もちろん、先ほどアンドウさんからございましたけど、そうした薬局、ある いはドラッグストアにいらっしゃる方々にお聞きするというのは当然、身近で、大事な 話ではございますけれども、それ以外にいろんな仕組みもございますので、さまざまな チャンネルを通じて、自分なりにわかる情報に解釈してくれる人を身の回りに持つとい うことが大切かなというふうに思います。  もし、補足がございましたら。 【林氏】  食品保健指導士というような専門家が店頭で消費者の方々に、こういう健 康食品をお使いになったらいいのではないかということをご説明するということは、安 全な健康食品の普及には役立つと思いますね。ただ、食品保健指導士というのは、具体 的にどういう職種かというのがまだ決まっていないということがありますので、これを ほんとうに社会で定着させるためには、私たちも一生懸命やりますし、それから、同じ ことは梅垣先生のところでもやっておられるんですね。この場合でもサポートしていた だきたいと思います。もう1つは、消費者の方々に、食品保健指導士に、どういう情報 を期待しているかということを少しご意見をいただければ、私たちは参考にさせていた だきたいと思います。  今、私たちは年に4回ぐらいの食品保健指導士の講習会をやっておりますけれども、 ぜひ私あてに、こういうような情報を食品保健指導士に期待しているということをお手 紙いただければ参考になりますので、よろしくお願いいたします。 【梅垣氏】  会場の方で、今、食品保健指導士もそうですし、私どもの研究所でNR という栄養情報提供担当者というのを養成していますし、あと、臨床栄養協会がサプリ メントアドバイザーというのを養成していまして、この3つなんですけれども、会場の 方で、この資格をお持ちの方はだれかいらっしゃいますか。 (参加者挙手)  もし差し支えがなければ、どういう状況で、何か資格をとってメリットがあるとか、 デメリットはないでしょうけど、ちょっと状況とかをお話しいただけませんか。 【参加者3】  初めまして、瓜坂と申します。  薬剤師なんですけれども、会社は製造をやっておるもので、健康食品もつくっており ます。それで、正しく伝えるということで、NRのほうをとることにいたしました。そ れで、つくっておる側ですから、法規に関して知識を整理できてよかったなと思ってい ます。 【梅垣氏】  ありがとうございます。  こういう資格って、国家資格ではないんですけれども、いろんなところの人が頑張っ てとろうとしている。それは、やっぱり消費者にちゃんとした情報を渡さなきゃいけな いという責任を持ってとられるわけですね。そういう資格をとっても、受け側、情報を 渡す側の人が理解してくれていなければ、その資格が生かせないんですね。今はNRと 食品保健指導士、それからサプリメントアドバイザーという資格がありますから、身の 回りでそういう方がいらしたら、積極的に聞いていくと、そうすると、そういう人たち は知識を持っていますから、自分の知識を普及できるし、活躍する場が出てくるわけで すね。今、周りにそういう方がいらしたら、積極的に聞いて、そういう人の活躍の場を 広めていただければ、非常にいい環境になると思います。  もともと、NRとか食品保健指導士というのは、保健機能食品の中の栄養機能食品と いうのができていまして、単に制度だけをつくっても十分ではないということから、ち ゃんとアドバイスできる人を養成しなきゃいけない。それは国がやるんじゃなくて、民 間にやっていただこうというので始まったんですね。  だから、例えば、今、ビタミン、ミネラルが不足しているというふうに、いろんなマ スメディアから出ていますけれども、じゃ、自分はほんとうに不足しているかどうかと いうのを判断できる人って、多分いないと思うし、判断しないで、皆さん何か不安感が あるので、それを癒すために摂取されているところがあると思うんですね。そういうと ころに、ほんとうに必要かどうかというのをアドバイスしたり、相談することができれ ば、必要な人はちゃんと必要な量を摂取できるでしょうし、要らない人は摂取する必要 がないという判断ができますから、できるだけ、そういう人を評価してあげられるよう な環境にしていただきたいと思います。 【中野氏】  そういった方は、どこに埋もれているんでしょうか。実際に、どの程度 の人数の方がおられて、やっぱり名札をつけておいてもらわな、聞きにいかれへんので、 薬局とかでとられている方はおられるのかなと思うんですけど。 【梅垣氏】  今うちの研究所でやっていますNRは1,800人ぐらいの方がいらし て、ドラッグストアの人、それから、管理栄養士の人がいます。あと、保健所の職員の 方もとられています。だんだん増えてきています。サプリメントアドバイザーの人も、 健康食品を販売する側の人、先ほどの方もそうですけど、製造販売をする方もそういう 資格をとって、どういう法律的な制度のもとに、こういう健康食品が運用されているか ということもだんだん理解されているというところですね。 【小島氏】  それはよくわかるんですけど、ドラッグストアやとか、そういうところ は営利のほうが勝って、結局、適切にアドバイスしていただけるかどうかが問題。それ と、健康食品は病んでいる人が使う物じゃなくて、健康な人が使う物なんですよね。そ の辺のところ、いるんですよね、NRを持っている人で、退職後薬局へ勤めたり、ドラ ッグストアへ勤めたけど、結局、そのギャップ。自分は教えたいけれども、売らんがた めの成果を上げなきゃいけない、そういうところがあるので、それは信用できるのかど うかなという、人間性と、それから事業者の態度にもよると思うんですけれども。 【梅垣氏】  それは、そうですね。でも、先ほど私が言いましたように、基本的には 保健医療に関係する人というのは、その人の立場に立って考える。これは薬剤師でも栄 養士でも、医師でも、多分同じだと思うんですね。そういう気持ちを持てる、全部が持 てといったって、なかなか難しい状況もありますけど、基本的にはそういうものだと。  お互いに、例えば薬局だったら、その人に話して、1対1で話して、ちゃんと自分が 納得すれば、それはそれでいいと思うんですよ。納得しなければ、買わなければいいし。 そういう考え方を取り入れるということが必要だと思います。なかなかですけれども、 でも、そういう社会状況があって、ちゃんとしようとする人も世の中にはどんどん出て きているということを消費者の人が理解していただければ、世の中はどんどん変わって いくと思うんですね。 【小島氏】  変えなきゃいけないと思うし、消費者側も努力しなきゃいけないと思う んです。  それから、1点お聞きしたいことは、栄養機能食品について、実際のところ、日本人 にミネラル、ビタミン、足らないものはほとんどないと、カルシウムを除いては。ビタ ミンB1が少々不足しても、これは豚肉薄いのを1枚食べれば十分だとかお聞きするん ですけど、そういう中にあって、栄養機能食品ってほんとうに必要なのかなと。 【梅垣氏】  その調査は、実は、全体の平均的な摂取を言っているわけですね。だか ら、個々の人を見れば、足りない人も中にはいることも事実だと思います。物が食べら れない人とか。じゃ、だれが足りていて、だれが足りていないか、ここがやっぱり難し いんですよ。それは、やはり専門職の人が判断するかアドバイスするという、そこが必 要なんですね。それをやるのが、研究所が養成しているNRであり、食品保健指導士で あり、サプリメントアドバイザーになってくるというふうに思います。  だから、平均的な物の見方とか、言い方をしているのと、個々の人というのはやっぱ り違うんですね。例えば、食事摂取基準という値がありますけど、あれはほとんどの人、 でも、中には満たしていない人もいるしという考えもあるわけです。個別に見れば違う、 でも平均的に見ればこうだと。だから、そういう物の見方とか、考え方が、ただ言葉だ けでは判断できないですから、中身を理解する。基本的には、消費者の人がまず興味を 持っていただく。その先に、専門職がアドバイスをするというのがあるんじゃないかと いうふうに思います。 【小島氏】  わかりました。 【有井氏】  ちょっと話を変えさせていただいてもよろしいでしょうか。 【梅垣氏】  どうぞ。 【有井氏】  一応、私も企業側の人間として、業界を擁護する立場で少し発言をして おこうかなと思っておりますが、まず、日本の健康食品市場をどうとらえるかというの が1つあります。いろいろな市場調査資料があるんですが、売り上げ規模で、大体1 兆6,000億円の市場と。これは、年間に消費者の方々が購入されている金額ベース ですけれども、この1兆6,000億円というのがどのぐらいの規模なのかというと、 ドラッグストアだとか薬局、薬店で売られている、いわゆるOTCという、オーバー・ ザ・カウンターといって、薬局で医師の処方せんが必要ではない医薬品の市場規模は今、 たしか7,000億円ぐらいでしょうか。だから、それに比べると、もう2倍以上にな ったと。  ただ1兆6,000億円の中の、特保の市場が大体6,000億円と言われていますの で、残りの9,000億円がいわゆる健康食品ということです。ただ、この数字の中に は、こういう一般の食品の形態をして、ある種の成分を強化した、添加したような食品 は入ってございません。  医家向けの医薬品、処方せんが必要な市場規模というのは、今、6兆円ぐらいと言わ れていますから、ちょうど、健康食品はOTCを超えて、もしかしたら2010年、4 年後には、3兆2,000億円、倍増ぐらいする勢いで、去年までは伸びていたという ことですから、医薬品トータルの市場にどんどん肉迫しているような状況です。それは、 基本的には、健康に注目しておられるような消費者の方々が増えてきたということによ ると思います。  ただ、今年は、先ほどお話があったようなアガリクスだとか、幾つかの健康食品の安 全性の問題があって、多分、今年は対前年で、多分1割ぐらいの減になるのかなと。し たがって、今業界としては、いかに健康食品の安全性を確保するかということが非常に 大きな問題です。厚生労働省でも、大きな課題であるというところがありますし、それ から、日本健康栄養食品協会でも一番の課題というということですから、企業のほうと しても、どういうふうに対応するかというのは、非常に早急な課題となっています。  健康食品の安全性というのは基本的には2つあると思うんですね。1つは、製品の品 質というハードの問題、それから、それを売るときのソフトの問題、この2つがあると 思います。ハードのほうは、既に厚生労働省のほうから原材料の安全性のガイドライン と、それからGMPの製造のガイドラインが出ておりますから、企業としては、それに 準じて、しっかりと自社の責任で安全性を確保すると、これで、おおよそハードの問題 は解決する可能性があります。  ただ、ソフトのほうは、売らんがために、たくさんの商品をいっぱい食べさせるとい うようなこととか、それから、体調が悪い人だとか、体質に合わない人にまで売るとい うことになると、そこに健康被害が出てくる可能性が多くなると。したがって、言いた いのは、健康食品の安全性確保にはハードとソフトの二つの問題があるということ。こ のソフトところで、先ほどありましたサプリメントアドバイザーだとか、NRさんが活 躍していただけるんだと思うんですね。  業界としては、この辺の法律だとか、ルールだとか、安全性や有効性を一生懸命勉強 している企業もたくさんあるということをまず、ご理解いただきたいと思います。実は、 日本の業界には、事業者、私どもも事業者の1つですが、大中小、さまざまございまし て、おおよそ1万事業者ぐらいあるというふうに言われております。日本健康栄養食品 協会なんかの会員、私どもも会員ですが、そこに入っている会員が大体1万の中の1, 200社ぐらいですね。その他、業界団体、おおよそ6つぐらいありますが、それを全 部あわせても2,000に満たないんです。残りの8,000の事業者がしっかりと勉強 せずルールどおりにやっていないとは言えないんですけれども、できれば、どこかの業 界団体に入って、私どもと一緒に勉強しながら健康食品の安全性確保などをしていく方 向にまず、ありたいなと思います。  それから、もう1つは、例えば中国製の健康食品を個人レベルで並行輸入して買って、 食べること。日本の事業者ではそこまでコントロールするのは難しいので、そこは、ひ とえに消費者の方々の認識が重要になると思うんですね。私が一消費者として考えると、 何かわけのわからないメーカーの健康食品を、やせるというだけで信用して買う気に私 はなれないですね。それが、仮に安くともですね。したがって、消費者の皆様方は、や っぱり、特定保健用食品のマークだとか、日本健康栄養食品協会のJHFAマークだと か、しっかりした何かしらの規格でもってつくられている商品を優先的に選んで食べる というのが、いいんじゃないかというふうに思っています。  業界を擁護する立場で発言させていただきましたけれども、その辺、ご理解いただき たいと思っております。 【梅垣氏】  ちょっと、予定の時間が過ぎているんですけれども、活発なご意見をい ただいておりますので、15分ぐらい延長したいと思います。この後、予定がある方は 適宜退室していただいて差し支えございませんので、よろしくお願いいたします。  それでは、林先生、どうぞ。 【林氏】  私は業界の方々に、こういうことを考えていただきたいというお願いを一 言申します。先ほど、フロアの方が、消費者は理解力がゼロであるとおっしゃったんで すけど、ほんとうを言うと、日本人の理解力は決してゼロではない、国際的にいえば、 かなり高いほうだと思うんですね。ただ、理解力をゼロの状態においても、何も考えな くても、安全なものを私たちは食べられるというような状態にするのが望ましいわけな んですね。そのためには、やはり企業が高い信頼性を持つということが一番大事だと思 うんですね。それは一朝一夕にはできないんでしょうけれども、やっぱり着実に信頼性 を高めるという方法に持っていきたいと考えます。  そのために一番重要なことは、適切な情報を流すということですね。これは、前に、 梅垣先生と一緒に書いたことがありましたけども、やはり有効性・安全性と並行してき ちっと情報をまとめる。有効性はこうであり、安全性はこうである、だから、こういう 摂取量が大事なんだと、そういうことをきちっと書きさえすれば、それが積み重なって いけば、もっともっと理解力も高まるだろうということですね。  実際、有効性だけを強調した書き方ですと、少しでも危険だと思われるような情報が 流れると、そこから被害の懸念が起こってくるんですね。それが非常に拡大解釈されて しまうということにもなります。有効性・安全性の情報を並行してきちっと出すという ことは、やはり大事だと思います。 【梅垣氏】  ありがとうございました。  要するに、表示とか教育ですね。情報伝達のところが重要だということが明らかにな ってきたと思います。その点で、もし会場から何か。  【参加者4】  小城と申します。ちょっと、今の情報のところでお話ししたいんです が、例えば、健康食品中で、コラーゲンとかレシチン、セラミド、DNA、リポ酸、い ろいろございますよね。コラーゲンというのは牛からとっているたんぱくですから、肉 を食べるのと同じなんでしょうけど、それがほとんど無意味だということがわかるまで には、かなり教育が要ると思うんですね。日本では、小中高で病気とか、そういうもの に関する教科がないんですね。保健体育とか、家庭科、生物であるかもしれませんが、 その点で、ただ、よく言われるインフォームド・コンセントにしても、なかなか、これ は消費者のほうが知識を持つのは難しいです。  それから、先ほどありましたコエンザイムQ10にしても、試験管内での抗酸化作用 は証明されていますけども、動物とかヒトではないと思います。老化してくるのが減る というだけで、そうしたら、それは理由があって減っているわけで、それを外から加え て意味があるのか、それは僕は疑問だと思うんですね。それからリポ酸にしましても、 これは欠乏症のないビタミンです。非常に自由な働きをしていますけれども、これまで 人間で欠乏症が見られたことがないんですね。そうしたら、それを外からとる意味があ るのかといったことも、なかなか、そんなところまで普通の人がわかるかというと、非 常に難しい。  今の健康食品業界というのは、要するに、消費者が無知だから2兆円を売っていると いう、そういう側面がないわけではない。その辺のところを例えば食育ということをさ れて、どの程度までの教育をするのか。僕らも栄養のことを考えていて、気になるのは、 バランスのいい食事をとりましょうと言うけど、非常に難しいんです。バランスって、 何のバランスですかと言われたときに、例えば、野菜類といっても、キャベツ1枚食べ ても食べたことになるのか、もう少し深く考えると、なかなか専門家でも、バランスっ て何なのかということすら難しいんですね。それを小学生なり中学生にどういうふうに 伝えていくかというのは非常に難しい問題で、題材は非常に陳腐で、どこにでもある本 なんだけども、それを言葉で正しく表現するのは、なかなか難しい面があって、皆、だ れに聞いても、バランスのよいとは言われるんだけども、そのバランスについて適切に 言うのは難しいんじゃないかなという気がします。  その点で言うと、教育というのは、社会人の教育でもいいですし、保健所なんかの教 育でもいいとは思うんですけど、なかなか、それは難しいなというふうに感じています。 だから、結構、今言われている健康食品のジャンルで言われているものは表示の義務が あって、表示はされているけれども、表示した途端に、それは普通の人には多分わから ないだろうと思います。 【梅垣氏】  ありがとうございました。非常に専門的な見地からご意見をいただきま した。  若干、短いコメントを厚生労働省のほうからいただけますか。 【中林参事官】  なかなか厳しいご意見であるとともに、解釈が分かれるようなご意 見かもしれませんけど、確かに、個別の成分の話は別といたしましても、ちまたに、こ うした成分についての有効性が何かで言われたということで、わっとそれがはやるとい う社会現象は現実にあると思います。そうしたことについて、どのような形で、それに 関しての正確な情報を集め、それを伝達していくかというのは、やはり、これは行政機 関に与えられている大きな役割だと思いますし、そうした意味でも、ここにいらっしゃ るような専門の先生に、これからもいろいろお知恵を拝借しないといかんかなというふ うに思っております。  そうしたことをやるとともに、当然、消費者の方々、それから、実際に食品製造をし ておられる方々もいろいろデータを持っておられるわけですから、そうしたものを皆さ んが集まって、それはどうなのかと率直な意見交換を、特にサイエンティフィックな話 も含めて、きちんとした議論をする場を我々も持つ必要があるかなというふうに思って います。  そうしたことを実は、国の中では、これは行政機関の中のさまざまな審議会的なもの でやる場合もありますし、一方、さまざまな研究事業なんかもございますし、研究所で も、さまざまな形で研究をしております。要するに、我々が今、一番考えなければなら ないのは、いかにアンテナを高く上げて、いろんな情報を集めて、それを整理していく かというようなことだと思います。そうした意味で、こういった場も有効に活用したい と思いますし、さまざまな方々からどんどん意見を寄せていただきたいと。感想ではご ざいまして、お答えにはなっていないかもしれませんけれども、そういうふうに思いま した。 【梅垣氏】  時間がかなり迫っていますけれども、もし、今、パネリストの方で、ど うしても言っておきたいということがございましたら。  どうぞ、手短にお願いします。 【中野氏】  先ほど、初めのときに申しましたんですけれども、やはり先ほど、会場 からもありましたけれども、子供たちへの食育というのはすごく大切で、それは、これ からますますやっていかなければいけないことやなということは思います。そういった 場合に、例えば、こういう健康食品とか、そういったことに話題を向けたいときに、子 供にも理解しやすいようなツールとか、出前講師みたいなものをどこかにお願いできる ようなところは現実にありますでしょうか。 【梅垣氏】  私どもの研究所で、キッズページというのを今つくり始めているんです ね。そういうところで見ていただくというのも1つですけれども、ただ、一番重要なこ とは、私が話したところですけど、リスクとベネフィットの考え方。物にはゼロリスク はないんです。小児、子供とか妊婦さんが健康食品を積極的に利用することに対しては、 リスクのほうがかなり大きいんですね。だから、私は、それは積極的に利用すべきでは ないと思います。ちゃんとした食事からとる、それが食育にもつながっていくので、そ ういう対応をまず子供さんにはしていただきたいというふうには思っています。 【中野氏】  もちろん食生活は大事にすることが一番の基本ではあるんですけど、情 報としてどんどん入ってきてしまうものなので、そういったものの意味というのは、や っぱり小さいときから考えるくせというか、習慣というのは必要かなと思いまして、お 伺いしました。 【梅垣氏】  ありがとうございました。  それは、やっぱり全体的に、全体として対応すべき非常に重要な課題だと思いますね。  それでは、もう時間がないんですけれども、一応、今までのディスカッションをまと めますと、やっぱり安全に対する不安感というのは、皆さんお持ちだと思うんですね。 その中で、ちゃんとしたメーカーは、製品もちゃんとコントロールして、新しい情報も 取り入れて、それなりに健康被害が起きないような対応をされていると。そういうメー カーがあるということを理解していただきたいし、そういうところをやっぱり評価して あげない。褒められないと、人間って、なかなかいいことはできないですから、そうい うところを消費者の方が見ていただければ、いいほうに動いていくというふうに思いま す。  それから、表示への関心ということは非常に重要なんですけれども、表示が読めるよ うにしていただきたいし、行政側もちゃんとして、読めるような表示をする。それから、 もし表示をするのだったら、ちゃんと読めるような普及活動をするというのが重要な課 題になっているということがわかると思います。  それから、情報の問題は出なかったんですけれども、今マスメディアに出ているのは、 基本的には娯楽番組だと解釈されるほうが私はいいと思います。メディアに、こういう 情報は出してはいけないとか、規制なんていうのはやっぱりできないですから、情報を 受けとる側が変われば、情報を出す側も変わってきます。そういう判断で対応されるの が基本的な解釈だと思います。  それから、食育との関連、これは非常に重要ですから、これもみんなで考えていくも のだと思います。健康食品って、いろんな関与者がいますね、消費者、それから行政、 製造業者、それから医療関係者とか、いろんな人にそれぞれの役割がありますから、だ れの責任というのじゃなくて、それぞれに責任があるということを理解していただいて、 今後も、それぞれの立場の人がそういう考えを持ちながら健康食品に対応していただけ れば、いい健康食品は売れるし、悪いものは淘汰されていくような状況が出てくるとい うふうに思っています。  これが、一応、きょうのお話のまとめではないかなと思います。  それでは、予定の時間になりましたので、マイクを司会者の方にお返しします。どう もありがとうございました。 【司会】  本日は、長時間にわたりまして、また貴重なご意見をいただきまして、ま ことにありがとうございました。  以上をもちまして、食品に関するリスクコミュニケーションを終了させていただきま す。  出入り口におきまして、アンケートの回収を行っております。アンケート用紙が封筒 の中に入っているかと思いますけれども、ご協力をいただきたいというふうに思います。  それでは、皆様、お気をつけてお帰りください。  本日はどうもありがとうございました。(拍手) ―― 了 ――