06/05/23 食品に関するリスクコミュニケーション残留農薬等のポジティブリスト制度の 導入に際しての生産から消費までの食品の安全確保の取組みに関する意見交換 会(福岡市) 食品に関するリスクコミュニケーション ――残留農薬等のポジティブリスト制度の導入に際しての生産から消費までの 食品の安全確保の取り組みに関する意見交換会:福岡市―― 平成18年5月23日(火) 於:都久志会館 ホール    開 会 【司会(吉田厚生労働省食品安全部企画情報課長補佐)】  本日は、皆様、ご多忙の 中ご参加をいただきありがとうございます。ただいまから食品に関するリスクコミュニ ケーションを開催したいと思います。  私は、本日、司会を務めさせていただきます、厚生労働省食品安全部企画情報課の吉 田佳督と申します。よろしくお願いいたします。  ポジティブリスト制度につきましては、昨年度、制度の内容等を知っていただくこと を目的といたしまして、意見交換会等を全国で行ってまいりました。本日の意見交換会 は、今月29日の施行を控え、生産から消費までのフードチェーンの各段階の方々から、 残留農薬等のポジティブリスト制度に関する取り組みの紹介をいただき、それを踏まえ て関係者間でまず問題意識の共有と、それから相互理解を図ることを目的として開催す るものであります。消費者、生産者、事業者などさまざまなお立場の方と情報を共有し、 意見を出し、考えることで、社会的な合意形成の道を探りたいと考えております。ご理 解をお願いいたします。  初めに、配付資料の確認をさせていただきます。まず配付資料でございますが、資料 1といたしまして「残留農薬等のポジティブリスト制度の導入について」、それから資 料2としまして「食品中に残留する農薬等の基準に係るポジティブリスト制度の導入に ついて」、資料3といたしましては、「生産農家の皆様へ 安全・安心な農作物の生産を 徹底しましょう」、資料4といたしまして「『食品中に残留する農薬等のポジティブリス ト制度』に関する留意事項」、資料5といたしまして「ポジティブリスト制度施行でス ーパーマーケットがするべきこと」、資料6としまして「ポジティブリスト制度導入の これまでとこれから」という資料でございます。  それ以外にも参考資料も添えてございますのでご確認をお願いします。参考資料とし ましては、「食品に残留する農薬等に関する新しい制度(ポジティブリスト制度)につ いて」という資料と、それから「農薬散布に気をつけましょう」、そして「残留農薬等 のポジティブリスト制度導入における食品安全委員会の役割」の資料でございます。  不足の資料がございますでしょうか。挙手いただきましたら担当の者がお伺いいたし ます。  また、アンケート用紙を同封しております。これは、今後の意見交換会をよりよいも のにするために皆様のご意見を伺うものです。ご記入いただきましたアンケートは、意 見交換会終了後に、出口付近に回収箱を設けておきますので、そちらのほうに提出して いただきますようお願いいたします。ご協力をよろしくお願いいたします。  続きまして、本日の議事進行を説明いたします。議事次第をごらんください。  まず、残留農薬等のポジティブリスト制度の導入につきまして、厚生労働省と農林水 産省から簡単に概要を説明いたします。そして、続きまして、生産から消費までの各段 階の関係者の方からポジティブリスト制度に関する取り組みのご紹介をいただきます。 各関係者の方からのご説明は全体で1時間程度を予定しています。その後、10分間程 度の休憩をとらせていただきます。そして、パネルディスカッション及び、意見交換会 を行い、3時30分をめどに終了を予定しております。  それでは、残留農薬等のポジティブリスト制度の導入につきまして、厚生労働省食品 安全部基準審査課の伏見課長、それから農林水産省消費・安全局農産安全管理課農薬対 策室の横田室長から続けてご説明をお願いいたします。 説 明 【伏見厚生労働省食品安全部基準審査課長】  それでは説明をさせていただきます。 私は、厚生労働省の食品安全部基準審査課の伏見と申します。およそ10分ぐらいをめ どに、ごく簡単にポジティブリスト制度の概要についてご説明をさせていただきます。  ここに、タイトルにございますように「残留農薬等のポジティブリスト制度の導入に ついて」、これは食品衛生法で食品中の残留農薬の基準値、あるいは残留する動物用医 薬品の基準値等がございますので、それに関して規制のあり方を今回変更させていただ くということでございます。 (スライド)  ポジティブリストという言葉でございますけれども、言葉自身がわかりにくいという ご指摘も時々いただくんですけれども、公式な食品衛生法の基準なり告示等ではポジテ ィブリストという言葉は出てまいりません。一般的にはどういう意味で使われているか ということなんですけれども、ポジティブリストの反対がネガティブリストでございま して、原則規制がない状態で規制がかかるものについてリスト化したもの、これがネガ ティブリストですね。要するに規制をするもの、ネガティブなものだけをリスト化して いるということでネガティブリストと言っています。ポジティブリストというのは、一 般に原則禁止、規制されている状態で使用してもいいものだけをリスト化するもの、こ れがポジティブリストということでございます。  例えば、食品の関係で言いますと、食品添加物というのがございますけれども、あれ は厚生労働大臣が指定したものしか使ってはいけないということですので、あれは原則 禁止されていて指定したものだけ使われるというものでポジティブリストということで すね。食品中の残留農薬に関しましても、今回ポジティブリストに変えるということで す。 (スライド)  食品中の残留農薬のポジティブリスト制度でございますけれども、基準が設定されて いない農薬が一定量を超えて残留する食品の販売等を原則禁止する制度ということでご ざいます。どうしてこういう制度をつくったかということでございますけれども、さか のぼりますと、平成7年にも食品衛生法が一度改正されたことがございますが、そのと きに衆議院、参議院の厚生委員会で、附帯決議と言っておりますけれども、決議をいた だきまして、食品中の残留農薬の規制に関してポジティブリスト制度の導入を検討する ということを決議していただいています。これは、国会から行政等に対する宿題であっ たとも考えられるわけでございますけれども、そういったことがございます。  その背景としては、輸入食品の増大でありますとかいろいろな食品の事件、その後も 幾つかございましたし、そういったことに対する国民の方の関心が非常に高かった。特 に、後でどなたかお話しになるかもしれませんけれども、平成11年以降食品衛生法の 改正を求める請願、署名というのが、ポジティブリスト制度の導入も含めた請願、署名 というのが1,300万筆以上全国で集まったというふうなこともございます。そうい った動きを受けてだと理解しておりますけれども、平成15年の国会で食品衛生法の改 正がなされまして、そのときにこのポジティブリスト制度が導入されたということでご ざいます。概要はここに書いてあるとおりです。  原則禁止するというのがポジティブリスト制度ですから、本来基準が設定されている 農薬は、その範囲内で残留は認められます。ほんとうはポジティブリスト制度の原則か らいうとそのほかは残留してはいけないんですけれども、ただ、非常に微量で人の健康 影響に何も問題のない農薬もあるわけでございますので、すべてゼロにする必要も必ず しもないということで、一定量を超えて残留するものの一定量というのを別途定める。 これは0.01ppmとなるわけでございますけれども、それを超えて残留する食品の 販売等を原則禁止する制度ということでございます。これが概要でございます。 (スライド)  これが現行の仕組みでございまして、現行の仕組みはどうなっておるかといいますと、 今日本の食品衛生法で残留基準が設けられている農薬は250、動物用医薬品が33ご ざいまして、合わせて283ございます。これらに関しましては、もしその基準値を超 えて農薬等が残留している食品が見つかれば、それは販売できないということになるわ けでございますが、他方、この真っ白の部分、例えば輸入されている食品にはいろいろ な農薬が使われていますけれども250以外の農薬だってあるわけでございます。仮に それがどの程度あるかわからないし、仮に見つかったとしても、実はそこにはよほどの 場合でない限り規制がかからないという状態になっております。まさにネガティブリス トの状態ですね。この部分だけに規制がかかる、現状がこういうことでございます。 (スライド)  これを改めまして、全体に規制の網をかけたということになるわけでございますけれ ども、まず一定量を超えて農薬等が残留する食品を禁止する。さっきは真っ白だったの がここがやや若干クリーム色になっていますけれども、ここに全体として規制がかかっ てくる。これは、おおよそ日本で流通する食品に使われている農薬というのがこの全体 とみなしていただければよろしいわけですけれども、ただ、その一定量というのは人の 健康を損なうおそれがない量として厚生労働大臣が定める量ということで、これは0. 01ppmと先ほど申し上げましたけれども、化学物質の許容摂取量に関する海外の知 見も含めて、それと日本国民の食品の摂取量のデータから0.01ppmという数字を 置いたわけですが、それを超えた場合は禁止する。ただし、基準が超えているものに関 しては、その基準値で管理をするということでございまして、先ほどは283しか基準 がなかったわけですけれども、今回の制度でここが799の農薬と動物用医薬品に関し て残留基準値が置かれたことになります。  したがいまして、おおよそ日本国内で使われる農薬や、あるいは海外から輸入される 食品に使われているであろう農薬に関しては基準値が設けられていると考えていただい ていいと思います。したがって、原則禁止だけれども使えるものに関しては使えるとい うか、残留が認められるものに関しては、その基準値の中で管理をしていただくという ことになります。  それから、あと例外的なものがございまして、ある程度といいますか、食品に残留し ても人の健康を損なうおそれがないだろうと考えられるものとして、ビタミンでありま すとかアミノ酸でありますとか、そういったものがございますけれども、そういったも のはポジティブリスト制度の対象外ということで、これは65物質を指定しております。 こういったものが制度の概要でございます。  重要なことは、ポジティブリスト制度になったからといって、まず現行の、さっき言 いました283ございましたけれども、今現在日本で使われている農薬に関しての残留 基準値というのは、実は変更しておりません。したがいまして、これまで国内の農薬を 使っておられる方、日本国内で生産に従事されている方はこれまでどおり、例えば農薬 であれば農薬取締法の使用基準、それから動物用医薬品であれば薬事法に定められた用 法、用量とかがございますけれども、そういったものに準拠して使っていただく限りに おいては、生産された作物が食品衛生法上の残留基準値を超えるということはないとな っておりますので、そこは大きなご心配は要らないんじゃないかと考えております。  それから、もう一つ重要なことは、この制度というのは、要するに残留農薬の分析、 検査を実施してくださいとか、あるいはその結果の提出というのを義務づけている制度 ではございません。そもそもすべての農薬を検査しないといけないであるとか、799 全部やらないといけないであるとか、各ロットごとに都度都度検査、分析をやらないと いけないとかいうことはございません。そもそも検査だけで食品の安全を担保するとい うのは限界がある話ですので、従前同様でございますけれども、生産段階で適切な農薬 の使用でありますとか管理をしていただく、あるいは生産段階におきましてはそういっ たことを確認していただくといったことが引き続き重要であろうと考えております。  それから、最後のページでございます。 (スライド)  ポジティブリスト制度に関する情報、今日はほんとうに駆け足でご説明させていただ きました。今日、資料の中に、これは最後のスライドですけれども、あと十数枚スライ ドがついていますし、あとパンフレットも入れさせていただいておりますが、さらに詳 しい情報というのは、これは厚生労働省のホームページでございますが、そこにも出て おります。  実は厚生労働省だけじゃなくて農水省のホームページ、あるいはほかのいろいろな団 体のホームページにも有益な情報がたくさん出ております。これはたまたま厚生省だけ でございますけれども、こういったところへアクセスしていただきますと、本日は資料 に入っておりませんけれども、Q&Aでございますとか、あるいは本日お配りしている パンフレットも現在ここのホームページからダウンロードできるようになっております ので、適宜ご参考にしていただき、活用していただければと考えております。  簡単ではございますけれども、私からの説明は以上でございます。よろしくお願いい たします。ありがとうございました。 【横田農林水産省消費・安全局農産安全管理課農薬対策室長】  続きまして、農林水 産省の農薬対策室の横田です。よろしくお願いします。  今日は、特に食品中に残留する農薬の基準に係るポジティブリスト制度の導入という ことで、農薬問題についてお話をしたいと思います。 (スライド)  もう皆さん方はご存じのとおりで、植物にも当然ながら病気とか虫はつきます。これ はトマトの病気なんですけれども、収量が低下というよりも収穫皆無の状態ですね。こ ういうもの、これはリンゴに入っている虫なんですけれども、リンゴを割ったら中から 虫が出てきたと。そうなりますと当然ながらクレームが来る。きちんと虫とか病気がつ かないように防除はしなきゃいけないということになると思います。 (スライド)  これは、東京近郊の農家の方に協力していただいてつくったんですけれども、一般的 に病害虫防除をやる場合と病害虫防除をやらなかった場合、一応キャベツにはなってい ますけれども、こういうものを食べたいなと思う方はおそらくいらっしゃらないと思い ます。 (スライド)  実は、農薬につきましては、ここにあるとおり4段階で安全性の担保というのが行わ れております。一つが登録制度、さらに無登録農薬の取り締まり、農薬の正しい使用、 さらには農作物中の残留農薬の監視という4ステップで成り立っております。 (スライド)  一時期、この700から800ぐらいの農薬について基準ができると言われたときに、 私どものほうによく相談がありましたのが、そうなると使える農薬が増えてしまう、農 薬の使用量が増えるので怖い、大変だという問い合わせとかがよくあったんですけれど も、これは間違っています。日本国内で使える農薬については、これは農薬取締法に基 づいて登録された農薬だけが製造、輸入、販売、使用ができます。登録をとるためには、 当然ながらこういう毒性試験ですとか、植物とか動物の中で代謝がどうなっている、環 境影響はどうなる、農作物の残留はどうなる、このあたりの試験を全部行う形になりま す。  大体農薬というのは、開発しようとしてから登録になるまで十数年、数十億円かかり ます。最近は特に環境問題なんかも厳しくなっておりますので、従来は環境影響なんか でも、例えばコイとかフナがどの程度死ぬかみたいな試験だったんですけれども、最近 はミジンコの泳ぎ方がおかしければだめですよと、かなり厳しい基準になっています。 (スライド)  実際に、今度は基準がいろいろつくられていきますけれども、今使える農薬について、 登録されている農薬について関係を申し上げれば、病害虫に効果があって、さらにその 作物にまいても薬害が出ない、それで残留もクリアできるという形で、例えばこういう 希釈倍数なり使用回数を決めて実際に収穫前日まで使ったとしても、実際出るのは0. 1ちょっと。例えば、残留基準は0.5ppmとかなり余裕のある関係で使用方法をい うのを定めています。法律違反にはなってしまうんですけれども、例えば希釈倍数、ち ょっと効きが悪いので2,000倍でやっちゃおうかと、使用回数3回だけれども4回 やっちゃおうかといってもすぐに基準値を超えないような形になっておりますけれども、 当然いいかげんなことをやっていれば基準値を超える可能性がありますから、使用方法 というのは守っていただく必要があります。  基準値を超えた農作物が出ました、違反がありました、さあ大変だというのが時々新 聞等々で書かれます。最後のほうに厚生労働省なり農林水産省の見解なり、また都道府 県の見解で、すぐに健康影響が出るものではありませんというお答えなんかが入ってお るんですけれども、たとえ基準値を超えたとしても、実際には人の1日当たりの許容摂 取量というのは農薬ごとに決まっておりますので、それを超えなければまず心配はあり ません。そういう面では、一部の作物でたまたま使い方を間違って基準をオーバーしち ゃったということがあったとしても、それを食べてすぐに健康影響が出るということは ありません。ただし、全ての作物で何百倍も何千倍も残留農薬の基準を超えている、そ れを、毎日食べ続ける、この場合には健康影響が出る可能性がありますが、おおよそそ ういうことはまず考えられないと思います。 (スライド)  農薬取締法につきましては、三、四年ぐらい前に無登録農薬の使用の問題が出てまい りました。従来は、農薬というのはきちんと登録した農薬しか売っちゃいけませんよと いう形の取り締まりを行っておったんですが、最近のインターネットの普及によって、 個人の方がぽんと海外にお願いして、個人輸入して使っちゃう。こういうことが三、四 年前の物事の発端でした。  そこで今は、平成14年12月に農薬取締法を改正いたしまして、農薬登録をとらな ければ勝手に製造したり輸入したり販売したり使用しちゃだめですと、あらゆる段階に 網をかけております。例えば登録のない農薬を売っちゃった、輸入しちゃった、使用し ちゃった、これは、農薬取締法違反で罰せられることになります。 (スライド)  さらに農薬の使用方法、生産者の方々からすれば非常に大変になったというお声もた くさんあるんですけれども、従来はできるだけ使用方法を守ってくださいと。努力しま しょうという基準にしておったんですけれども、同じように法律を改正いたしました。 必ず農薬はボトルにいろいろなことが書いてあります。平成15年3月から施行されて おる新しい農薬取締法におきましては、そこに書いてある作物を守りなさい、時期を守 りなさい、回数を守りなさい、使用量とか希釈倍数を守りなさい、これを守らなければ 罰金刑なり懲役刑がかかるという形になります。  そういう面では、農薬というのはがんじがらめの世界で登録が行われ、さらにがんじ がらめの世界で使用が行われるという形になっています。 (スライド)  今回、ポジティブリスト制度が施行されるわけですけれども、基本的には従来と同じ ように農薬の使用基準、さっき言った適用作物とか使用時期とか使用回数とか、そうい うのをきちんと守ってくださいというのが一番大きなポイントになります。  ただ、農薬をまくときには、当然まいている最中にさっと風が吹くことがあります。 横の農作物にかかることがあります。そういう面で、今、パンフレットとかマニュアル 等をつくって、配って、特に各県、市町村、JAの皆さんにも現場のほうの指導を行っ ていただいております。 (スライド)  もう基本的には、風が強いときにまくのをやめましょうとか、できるだけ作物の近く からまきましょうとか、圃場の端であんまりじゃぶじゃぶまくのをやめましょうと。基 本的なこういう病害虫防除、農薬散布の基本技術を励行してほしいという形で行ってお ります。 (スライド)  ただ、それだけでドリフトというのは全部防ぐことはできません。当然風がないとき にまいていると思ってもふっと風が吹くことがあります。万が一そういう、ドリフトと 言いますけれども、農薬の飛散が起こったときに基準をオーバーすることがないように、 私どものほうでも先ほどのマニュアル等を配るとともに、できるだけ周辺作物にも注意 をしましょうと。  例えば横の作物が野菜で、植えてすぐ、定植してすぐにかかっても収穫されるまでに は2カ月、3カ月とかかっていきます。そうなれば、当然ながらその植物体の中で農薬 というのは分解されていきます。ただ、収穫直前ですと、例えば先ほどの0.01pp mみたいな基準が該当しますと基準を超える可能性も出てきます。そういう意味で、周 辺の作物にもできるだけ登録がある、登録がなくても基準がある、そういう農薬を選び ましょうと。横の作物にまいている作物と同じような基準があれば、万が一農薬の飛散 が起こったとしても基準を超えるおそれというのは非常に低くなります。ただ、リスク というのはゼロになりませんので、そういう面では注意をするということが一番重要だ と思います。  さらに、私どものほうでもQ&A、できた段階からどんどん返していくようにしてお りますし、またきめ細かな指導というのをお願いしております。農薬につきましては、 従来から使用方法というのは定まっております。それを守って、かつ今散布しているの をもう少し注意をしてやりましょう。それでかなりの部分のリスクを減らすことができ ます。また、ちょっと農薬のほうが基準を超えている。食べて、わー、大変だというこ とも、まずは可能性としては低いものでありますので、ぜひ冷静な対応をよろしくお願 いしたいと思っております。  一つ加えておきたいのは、すぐに安全保証書とか、分析を求めるという事例が多々 我々の耳にも入ってきます。分析だけですべてを保証することはできません。なぜなら ば、私が食べようとするこのトマト、キュウリ、これは大丈夫ですかと言ったら、全量 検査をする必要があります。全量をつぶしたら食うものがありません。  また、先ほどのように、できるだけ農業生産現場でも使った農薬、いつ、どの作物に どういうふうにまいたのか、それを記帳してください、それを求められれば提出するよ うにしましょうという形でやっています。例えば、それでも心配だから分析をやれとい ったときに、5点から10点、圃場の真ん中とか端からとって分析しましょうと。20 0農薬、300農薬やってくれと。例えば1点やるのに10万、20万かかったとして、 5点、10点やればそれは100万、200万です。10アール当たりどれだけ所得が あるのかというと100万、200万です。そうしますと、農業生産をやめたほうがい いんですね。そういう面では、分析をやれやれというのであれば、もう日本国内で農業 生産をやめましょうと言っているのに等しいんだと。  ただ、念のために、検証のために1点ぐらい、JAさんなんかでよくおやりになって いますので、そういうことはあってもいいかと思うんですけれども、分析ですべての安 全性を保証するというのは非常に難しい面がありますので、ぜひ農業生産現場の方々は 記帳して情報を提供する。あと、流通なり食品関係の皆さん、消費者の皆さんも、じゃ、 どういう農薬を使っているかを確認できるという形で冷静な対応というのをお願いした いと思います。  以上で、極めて簡単ですけれども終わらせてもらいます。 【司会】  続きまして、生産から消費までの各段階の関係者の方から、ポジティブリ スト制度に関する取り組みなどについてご紹介いただきます。  まず最初に、JA全農ふくれん営農部技術顧問の木原繁幸様から「生産現場における 安全・安心な農作物づくりとポジティブリスト制度について」です。よろしくお願いい たします。 【木原氏】  ただいま紹介いただきました全農ふくれんの木原と申します。私の話は、 資料で進めたいと思います。まず資料3と、参考資料の中に含まれていると思います 「農薬散布に気をつけましょう」この資料でございます。今日は、本家本元の厚労省、 農水省が来ておられますので、私は特にその行政指導を受けて生産側としての安全な農 作物の取り組み、それと今後のポジティブ制度対応についてご説明したいと思っており ます。  私ども生産者側としまして、当然安全な農作物づくりについては日々努力いたしてお りまして、特に農薬の代替技術の導入につきましては、昨今、かなりの広範囲の技術を 導入しております。IPMでの、総合的病害虫防除管理、耕種的防除管理とか、抵抗性 品種であるとか圃場衛生管理、防虫ネット、天敵、忌避等とかフェロモン、その他のい ろいろな諸技術を導入しているわけですけれども、これらの防除につきましてはすべて が防除できるわけではありません。やはり農薬の必要性というのは当然出てくる。また、 効率的、経済的防除といった点から、農薬は非常に重要であると、私ども生産側として は受け取っております。  資料3のほうを見ていただきますと、そこに、先ほどからもお話がありましたように、 農薬の適正使用、安全使用基準の遵守ということにつきましては、まず安全な農作物を つくるための大前提ということで、生産者のほうに徹底して指導を行っております。そ の中で、今回のポジティブ制度ということでありますけれども、このポジティブにつき ましては、この目的とする作物に散布すべきところを、風、その他要因等から、他の作 物に飛散するというところが主たる生産側での問題点ではないかなと考えております。  そういったことから、農薬は適正に使えば問題ないと。先ほど横田室長からもござい ましたけれども、では、適正に今までどおり使っていればすべて問題ないのかというと、 今回のポジティブ制度ではその注意が必要です。私どもも生産者に対して、この制度に ついての説明とかいうことで研修会等をかなりやりました。農家のほうに詳細に説明す る中で、農家のほうから「農薬を使うなということか」と、「農作物をつくるなという ことか」と言った過激な反論をされる農家もあります。  ただ、これにはいろいろ言い分があると思いますし、その回避方法もいろいろあると 思います。そういうふうに、この一律基準につきましては、ふわっと微量かかったとい うことでいろいろ想定しますと、先ほどのほんとうに安全、いわゆる健康被害を即生じ るものなのかと。残留基準と一律基準については、多少内容が異なるのかなと思うんで すけれども、基準がある以上、いずれの基準、一律基準もこれは絶対オーバーしてはな らないという事で生産対応を図っております。  資料3の中ほどに、まずは農薬のドリフト防止で、農薬散布にはこれまで以上に注意 することで、項目だけを起こしておりますが、別途チラシも準備しております。ここに、 気象的要因とか散布機具、あるいは農薬の種類、特に直売所等では、小面積で多品目栽 培ということもありますので、先ほども適用範囲の広い農薬をとの説明がありましたけ れども、こういったものであるとかいろいろな、ドリフト軽減の剤の選定、あるいは対 象作物の広い農薬の種類の選定とか、あるいは剤型の選定など、散布上のドリフト防止 にかかわることで注意を促しております。  また、次に農薬の使用周辺等、立地条件の確認と対策ということで、これは栽培面の 回避ということになると思います。作物の種類、それと収穫時期。当然、農薬は減衰、 分解することから、特に収穫間際の作物についての注意を、この一律基準対応について は特に注意が必要であると考えます。  それともう一つは生産履歴記帳、いわゆる防除日誌の記帳ということですね。特に誤 った使い方をされていないかとか、いろいろなことを含めて検証する意味でぜひこの防 除日誌、あるいは生産履歴記帳運動ということで展開しております。項目はそこに書い ておるとおりでございます。  また、それ以外に、そちらの資料には載せていませんが、農薬散布でのチェックリス トというものを生産農家のほうに配っております。別途資料、こちらのほうの裏にもチ ェックリストを載せているのですけれども、また、それとは違って別に散布日までのチ ェックで、農薬のラベルの確認、周辺作物へのチェック項目を設けています。生産農家 は、正組合員数11万7,000ですが、県下に13万部配布してその徹底を図ってお ります。  それと、先ほどの参考資料の中に、「農薬散布に気をつけましょう」というこの資料 でございます。これは、生産農家に具体的にどういったことなのか、どういったことに 注意すればいいのかということを浸透させるために、これもやはり県下農家に13万部 配布いたしております。  この中では、具体的に農家がどういうふうな注意をすれば良いのかを、図解をしてお りまして、特に今回で一番問題なのは、やはり風がドリフトに関しては非常に大きな要 因であるとのことから、回避策として風のないとき、あるいは少ないときを選ぶである とか、特に散布ノズル、散布の位置とか方向に注意する。あるいはスピードスプレーヤ とか散布機具においての風圧とか風量の調整、あるいは適正な薬量、そして現実的なの は適切なノズル、いわゆる軽減ノズルなるものが開発されておりますので、できるだけ そういったものを使う。どうしても防除を要して、どうも隣の作物にかかりそうだとい う場合には、遮へいシート、あるいはネット、あるいはビニールとかでかからないよう に保護するであるとか、また右のほうには、より飛散しにくい剤型、あるいは多くの作 物に登録がある農薬、また発生予察に基づく適期防除、ひいては防除回数の低減という ことになるだろうとも考えられます。それと、先ほども出てきます農薬の適正使用、安 全使用基準の遵守ということであります。あるいは機械の洗浄等の不良から残留すると いうこともございます。  このようなことから、まず散布薬剤の見直し、リスクを減らすこと。地域内でお互い に連絡をとりあって、隣接する作物で収穫間際の作物においては特に注意が必要である ことなどについて、県下、これも生産農家に徹底する意味で、この啓発資料を配布して おります。  なお、県下の生産部会、農家に対しては、県、あるいは私どもJAグループとしまし ても、この制度の浸透ということでかなり研修会等を開催してきております。農家の非 常に厳しい意見等もあります。そういった中でもやはりこの一律基準、非常に厳しい基 準でありますけれども、これらは消費者に対しても厳しい、イコール毒が強いというふ うに単純に受けとめられるかもしれません。このことから、やはり私どもはもう少し消 費者の方々に対しても農薬についての安全性の評価と、先ほど横田室長等も安全につい てもいろいろ説明がありましたけれども、やはり安全性評価について、いろいろ情報を 発信すべきではないかなと思っております。  生産者側としては、以上、報告を終わります。 【司会】  ありがとうございました。  次に、財団法人食品産業センター技術部長の塩谷茂様から「『食品中に残留する農薬 等のポジティブリスト制度』に関する留意事項」です。よろしくお願いします。 【塩谷氏】  今、ご紹介にあずかりました食品産業センターの塩谷でございます。よ ろしくお願いいたします。 (スライド)  まず、財団法人の食品産業センターの会員の構成でございますけれども、団体会員、 企業、そして個人、そして地方食品産業協議会、都道府県ということで400弱の会員 で成り立っております。このポジティブリスト制度の円滑な導入のために、当センター はいろいろな勉強会、そして意見交換会を実施してまいりました。ただし、食品産業界 としてはこのような400弱じゃありませんで、大多数が中小企業の皆さん方が食品産 業に携わっているわけであります。 (スライド)  今月の29日からこの制度が運用されるわけでありますけれども、その適正な運用の 留意事項としてまとめさせていただきました。厚生労働省からもQ&Aが約140、そ して農林水産省からも20ありますけれども、その両省のご指導のもとにこの制度の運 用事項、そしてポイントというものをまとめさせていただきましたので、それをご説明 申し上げます。 (スライド)  この制度は、リストに記載されているすべての農薬等について検査、分析を義務づけ るものではないということであります。これは先ほどからも説明があったと思いますけ れども、この義務づけるものではないということは、日本国内では農薬取締法等に基づ いて遵守、管理されていれば、残留農薬を超えることはありませんということが1点で ありますし、諸外国においても基本的には農薬の使用については何らかの規制があると いうことであります。  また、国内に流通する食品については都道府県で、そして輸入食品については検疫所 で残留農薬のモニタリングが実施されます。そして、その実施された結果の違反事例が あった場合には、その結果が公表されるということでありますので、すべての農薬につ いての検査、分析を義務づけないということがまず1点であります。 (スライド)  このポジティブリスト制度について、先ほども説明がありましたように、農薬の数が 799、そして一律基準があるということで数が増えるということから、このように本 制度の施行によって農薬等の使用範囲が広がるのではないか、規制緩和があるんじゃな いかというような受け取り方をされている方もいらっしゃいますけれども、それは決し てないということでありまして、国内においてはこれまでどおりの農薬取締法で決めら れた農薬しか使用できないということが農薬の使用に当たってのポイントであります。 (スライド)  そして、原材料の安全性を確保するということに努めるというのがまず一番でありま して、どのように努めるかということでありますけれども、国や都道府県のモニタリン グ結果を踏まえて、原材料の農薬等の使用実態や管理状況を調べて、適切に生産管理さ れているという農畜産物を調達するということが1点であります。  また、検査、分析は、先ほど述べましたように、義務づけることではありませんので、 そのシステムがきちっと動いているかどうかということをモニタリングするために行う ということになると思います。  食品製造業、流通業者は、このような趣旨をよく理解して、原材料や生産工程に関す る適正な情報入手に努めるということにおいて、原材料の安全性を確保するということ になろうかと思います。 (スライド)  制度対応の手順であります。 (スライド)  まず、「はじめに」ということで書かせていただきましたが、この制度は、農薬等は 適正に使用が管理されていれば基準を超えることはないということでありますし、その 第一義的には生産者が安全性を担保するという義務があります。しかしながら、製造、 加工に当たって、食品衛生法に適合した原材料を使用するということは食品衛生法で決 められておりますので、製造、加工業者においては各自法令の遵守に努めてくださいと いうお願いであります。 (スライド)  次は、原材料生産地における使用実態の情報収集ということであります。厚生労働省 や都道府県が公表される違反事例があります。あと、主な生産流通段階での農薬等の使 用実態等の情報もあります。これらの二つの情報等によって、残留の可能性のある農薬 の掌握に努めていただきたいということであります。 (スライド)  もし検査、分析ということで使用農薬の実態を掌握した上で、念のために原材料等に おける残留状況を把握したい場合には、先ほど述べましたような情報収集を掌握した農 薬、すべての農薬は分析できませんので、それらの農薬について検査を行うということ であります。 (スライド)  このデシジョンツリーは、資料4の一番最後にプリントアウトしたものがつけてあり ますけれども、残留農薬を分析した場合に、もしAという農薬が出た場合にどのような ことを考えたらいいかということで、頭の整理のためにこれをつくらせていただきまし た。特に注1、注2というところにご注意ください。 (スライド)  最後になりますけれども、義務づけることではない、そして情報を収集するというこ とでありますが、やはりコミュニケーションということが一番大切になっているという ことであります。このコミュニケーションについては、外部コミュニケーションと内部 コミュニケーションがあります。  まず、外部コミュニケーションについてお話しいたしますが、卸、そして小売業者、 あるいは消費者に対して原材料が適正に管理されている。そして、農薬等の使用基準が 従前と変わるものではないということをまず理解を促すということであります。従前と 変わることではないということです。  それと納入業者に対しては、食品衛生法に適合した原材料を使用しているということ で、常に情報の共有化を図っていただきたいということであります。いろいろな質問等 がありますけれども、品質保証書は云々ということがありますが、まずその外部コミュ ニケーションで、やはり2方向のコミュニケーション、お互いのコミュニケーションを 図ってください。一方で、出せ、出さないということではないということであります。 (スライド)  次、内部コミュニケーションであります。これは会社の中とかそういうことでありま すが、会社の中で本制度の趣旨をよく周知徹底していただきたいということであります し、工場、製造現場をお持ちのところもあると思いますが、倉庫等での消毒を定期的に 実施されているところもあると思います。あと防虫等も実施されていると思いますが、 それらの交差汚染、そしてふき取り、洗浄等についてもやはりこの本制度にかかわる問 題でありますので、その相互理解、周知徹底を図っていただきたいということでありま す。  それと製造部門や物流部門、特に製造委託業者等には、やはりこの本制度の趣旨をよ く理解するというコミュニケーションをとっていただきたいということであります。 (スライド)  これが最後でありますが、先ほどからの情報収集ということでありますが、これは先 ほど述べましたように厚生労働省からもポジティブリスト制度のQ&Aが出ております し、農林水産省からもあります。それと、食品産業センターからもこの留意事項につい てこういうようなホームページを開いておりますし、都道府県のほうもホームページが ありますので、それらの情報をよく収集して、その中身を掌握するということがポイン トになると思います。  以上でございます。どうもありがとうございます。 【司会】  ありがとうございました。  次に、社団法人日本セルフサービス協会客員研究員の山口廣治様から「ポジティブリ スト制度でスーパーマーケットがするべきこと」です。よろしくお願いします。 【山口氏】  社団法人日本セルフサービス協会の山口です。まず、社団法人の説明か らさせていただいき、それからお話を聞いていただきたいと思います。 (スライド)  社団法人日本セルフサービス協会は、スーパーマーケットを正会員、メーカーさん等 を賛助会員とした協会で現在約700社の食品関連企業が加盟しております。経済産業 省の外郭団体という位置づけになっています。  本日は、スーパーマーケットという立場で皆さんにお話をしていきたいと思います。 ここで認識してもらいたいことは、スーパーマーケットは消費者に一番近いところで日 夜食品を販売していることです。その点では、スーパーマーケットで働く人たちは、消 費者の食生活を預かっているという責任と自負、そのような気持ちで仕事に従事してい ます。 (スライド)  主な活動内容ですが、会員企業であるスーパーマーケット対象のさまざまなセミナー の開催や検定制度等の導入があります。この検定制度には「食品表示管理士認定制度」 があり、今年も数百名の方の受験が予定されています。スーパーマーケット自らが主導 的な立場でお客様に正しく食品の表示を行っていくという活動です。  また、ふるさと食品と呼ばれる食品を製造している地域の食品メーカーさん、それに かかわる事業体の方たちと食品を通して地域の活性化を目指した活動も行っています。  そのような中、今回のポジティブリスト制度に関しては早い企業さんのところでは2 年程前から勉強会を開いてきました。お客様との関係性を大事にするために、積極的に 学び、正しい法制度にのっとって小売業としての役割を果たそうと考えたからです。 (スライド)  では、ポジティブリスト制度に対してスーパーマーケットは具体的にどうしたらいい か? 第一に、この制度をきちんと理解することがあります。ここ数年、食品にまつわるさま ざまな問題が後を絶ちません。BSE問題、遺伝子組換え食品表示の問題、食品アレル ギー表示の問題等です。そして、すべてに共通する大切なことは、きちんと制度を理解 した上で対応することです。  そういう意味で、このポジティブリスト制度も協会として勉強会や情報交換等を行っ てきました。しかし、商品ごとの取引内容が多岐に渡っているので、生産情報の整理が 同時にできるかというとなかなか難しい。従って、具体的には優先順位を決めて対応し ているというのが現実です。  ポジティブリスト制度の対応について、積極的に努力している企業もあればそうでは ない企業も見受けられます。ただ単に販売しているだけであくまでも生産者やメーカー、 もしくは輸入者の問題であると認識しているのかもしれません。スーパーマーケット間 の認識の差は否めませんが、協会としては時間をかけて理解を求めていきたいと考えて います。 (スライド)  1番目は、ポジティブリスト制度の仕組みについて、事業者に対して情報交換を行っ てきました。意識の高いスーパーマーケットでは、ポジティブリスト制度についての勉 強会を何度も繰り返し行うこともあります。  2番目は、食品衛生法、JAS法、景表法等、食品にまつわるさまざまな法制度に違 反する内容を調べますと同じ原因が繰り返されています。輸入食品では同じ農薬類が摘 発されています。  スーパーマーケットとの勉強会では、違反内容を整理し、傾向を分析すると問題の所 在がわかってきます。違反をした業者は、そのほとんどが知らないでやっているケース だと思いますが、表示違反も含め違反は違反としてさまざまなリスクを背負うわけです。 これは販売するスーパーマーケットだけの問題ではなく、生産する人、輸入する人、製 造する人、みんなの問題です。  分析についてですが、結局分析には限界があるということ。例えば食品アレルギー除 去のレトルトカレーを3,000食つくったとします。前後の洗浄、ふき取り検査、分 析キッドでの分析、製品のサンプリング等を徹底して行っても3,000食全てのアレ ルゲン残留を100%保証することはできません。極端な例ですが3,000食全てを 開封・分析してもアレルゲンたんぱくの解明はできないと思います。つまり、分析は絶 対ではないということですね。  このようなことから、今回の制度とはかかわらず、通常の取引上、分析が前提では限 界があるので、まずは情報の確認が大切にしようと。重要な点は信頼関係というものが あって商取引があるということ。信頼関係には、相手様に変なものは提供しませんとい う前提があります。そういう前提で取引をしていく。分析は、人間のやることですから 時には間違いもあるでしょう。分析は、あくまでも指標、参考として見るという程度で 捉えましょうとスーパーマーケットの勉強会では話し合っています。 (スライド)  あるスーパーマーケットでは、ポジティブリスト制度施行を前提に20人近い内部ス タッフによりすでに専門チーム化し、情報を整備して対応しているところも既にありま す。  それから取引先とのチームも有効です。取引先の商社、メーカーと合同で認識を統一 しようというものです。これはすごく重要なことですね。メーカーだけの話ですと小売 店から残留農薬分析表や安全保証書等の提出を求められることがあるようです。分析行 為は取引条件にすべきではないこと等を合同チームで話し合うことができます。 (スライド)  品目別の生産履歴をつくり、できるところから少しずつ整理していくことから始めま す。実際には、ポジティブリスト制度にのっとった栽培履歴のフォーマットで情報をデ ータベース化し管理することが大事です。取引先様からのご質問については、「私ども の製品は、専用フォーマットで生産履歴をきちんと確認してから仕入れています。」と 答えるためにデータベース化を図っています。 (スライド)  あとは農薬の勉強会があります。スーパーマーケットは、今まで農薬についての情報 までなかなか行き届かなかったと思われます。ただし、今回のポジティブリスト制度施 行以後はそれではいけないので、2年程前から農薬についても消費者に責任があります のでお答えできるように情報交換をしてきました。  セルフサービス協会では全国の会員に月刊誌「セルフサービス」を毎月提供していま すが「食の安心・安全」というテーマの連載をしていて、そこではポジティブリスト制 度についての情報も積極的に提供してきました。 (スライド)  個別管理のためのデータ化の推進ですが、スーパーマーケットが取り扱う食品には、 生鮮食品の中の農産物、畜産物、水産物があります。加工食品には国産品と輸入品があ ります。  仕入れ先といいますと、皆さんのイメージでは、単純にメーカーから商品を買ってき て並べるだけかもしれませんが、そういう仕入れだけではありません。むしろ協会に加 盟しているスーパーマーケットは、自社での製造工場を持っているところが多いのでは と思いますし、全国的にメーカー兼小売業という業態が増えていると思います。  新しいタイプのスーパーマーケットは自社工場を持ってPB製品を製造していること からメーカーでもあるわけです。つまり、ポジティブリスト制度に準じた情報管理をす る必要があるということです。NB商品に関しては、専門メーカーの製品なので、取引 関係の中で情報を共有化していけば良い。  このようにカテゴリー別に商品の情報を整理する目的は、消費者との信頼関係を維持 するために、消費者からの問い合わせに関していつでも答えられるようにするための情 報管理体制づくりと考えています。  以上、これで終わります。 【司会】  ありがとうございました。  それでは最後になりますが、北九州市消費者団体連絡会、江口瑞枝様から「ポジティ ブリスト制度導入のこれまでとこれから」です。よろしくお願いします。 【江口氏】  皆様、こんにちは。ただいまご紹介をいただきました北九州市消費者団 体連絡会の江口と申します。どうぞよろしくお願いいたします。ポジティブリスト制度 導入のこれまでとこれからについて少しお話をさせていただきます。 (スライド)  北九州市消費者団体連絡会、ちょっと長いので略しまして北九州市消団連と言ってお りますけれども、1979年、ちょうど国際児童年の年に誕生しました。暮らしと健康 を守ることを目的に、北九州市内13の団体が集まった市民連絡会の組織で、約25年 の歴史があります。北九州の中で最も幅が広い共同の場であると私は思っています。残 念ながらまだ福岡県・福岡市にはできていませんが、消費者の権利を確立していける消 費者自身のための組織です。地元ということもありますけれども、カネミ油症の問題、 それからそれにまつわる食品公害、学校給食、税の問題、平和や環境の問題、時代に対 応した暮らしにかかわるさまざまな問題に取り組んでいます。  食の安全についても多くの取り組みを、食の安全部会というのをつくって、そこを中 心に行っております。地方行政の食の安全にかかわる取り組みの内容について、それか ら方針や予算、検査をする人たちの人数などを調べたり、地域の食の安全にかかわる部 署の方々と交流をしながら学習を進め、実際検査をするところを訪問したり、それから 講演会なども開催をしております。 (スライド)  ポジティブリスト制度導入に向けた消費者団体のこれまでの働きかけは、1995年、 食品衛生法改正時からスタートをしております。今月にこの制度は導入されますけれど も、足かけ10年近くかけて私たちの思いが実現した制度になっています。私たち消費 者団体としては、この制度が導入されることをとてもうれしく思っています。 (スライド)  1995年、食品衛生法改正のときに、全国消費者団体連絡会で8項目の要望を出し ました。その中で、「農薬については残留農薬を取り締まる根拠を法に明文化し、あわ せて農薬の残留する食品について原則流通を禁止し、国が設定した残留農薬基準に適合 したもののみ流通を認めるようにすること」という要望を出しました。そして、ポジテ ィブリスト制度の導入をここで要望したわけです。  結果は、食品衛生法の改正には反映をされませんでしたけれども、衆参両院厚生委員 会のところで、将来的にはポジティブリスト制度の導入を検討するという附付帯決議が なされました。そのとき、私たち消費者団体が持っていた問題意識の中の一つは、農薬 を使うときの規制、農薬取締法と、それから私たちが食べるときにかかわる残留農薬の 規制、食品衛生法との連携が不十分だったことでした。そして、その当時、輸入農産物 が急激に増えてきて残留農薬の規制対応が追いついていないと感じていました。 (スライド)  そして、2000年、5年後の見直しのときに全国の消費者団体と、それから生協、 エフコープもそうですけれども、北九州市消団連も食品衛生法の改正を求める国会請願 と、北九州に対しては食品の安全に関する行政の充実、強化を求める署名活動をスター トしました。私たち、安心して食べたいということをスローガンに、食品の安全性を確 保するための社会的な仕組みを強めることの必要性を訴えて、食の安全署名10万人キ ャンペーンを行いました。街頭でアピールをしました。そして、大学生協も私たちの加 盟団体ですので、大学食堂で若い世代の方たちにもアピールしながら、話しながら署名 をもらいました。  国に対しての請願項目のひとつに「農薬、動物用医薬品の残留基準の設定を計画的に 進め、残留基準の決められていない食品の流通、販売ができないようにすること」を掲 げました。  北九州市に対しては、検査、監視、指導、研究の体制強化を求めました。このスライ ドは署名用紙の裏側に、署名をするときに、お話をするときにわかりやすいように、そ して学習の資料としても使えるように、このように図入りでわかりやすいものをつくっ て皆さんに応援を求めたり、それから理解を求めたりということに使いました。  当時は約300種類の農薬などの基準が設定されていましたけれども、食品そのもの や使われる農薬の増加に対応しきれてはいませんでした。残留基準値があるものは、そ の値を上回って検出された場合、販売禁止にはできましたけれども、基準値のない農薬 が残留していたとしても、それは規制をすることができませんでした。言葉をかえれば、 きつい言い方かもしれませんけれども、私たちは野放し状態になっているねと感じてい ました。 (スライド)  大型紙芝居、これはかなり大きい紙芝居、かわいいのをつくって、学習の機会をたく さん持ちました。そして、署名用紙を市議会に持ち込んで、請願を行いました。 (スライド)  その結果です。2001年、約6万8,000筆を集めて北九州市議会に請願を出し ました。結果は継続審議でした。継続審議というと継続して審議をしていただけるもの なのかなと思っていましたが、内容については継続して審議をしないということでした。 そのときの市議の皆さんの任期が切れたときに自然消滅してしまうという、そういう継 続審議という判断をいただきました。  全国の生協そしてエフコープと連携して、国会請願を行いました。福岡県では29万 筆、先ほどもご紹介がありましたが、全国では約1,372万筆を集めました。全国で これだけ大きな署名を集めたということは、とても大きな運動でしたし、画期的なこと でした。その当時、こういうようなことはあまり見かけられなかったと思います。  2001年12月ですけれども、衆参両院でこの請願が採択され、2003年の食品 衛生法の抜本的改正につながりました。消費者を巻き込んだ食品の安全にかかわるいろ いろな問題が起きていた時期ですが、時代は消費者の健康保護を重視する、そういう流 れに変わってきていました。改正では、農薬について残留規制の強化がうたわれました。 そして、3年以内にポジティブリスト制度の導入が決まりました。  このように、ポジティブリスト制度の導入は、私たち消費者が求め、願ったことであ るというがご理解をいただけたのではないかと思います。 (スライド)  ポジティブリスト制度で進むこととして幾つか挙げています。これまで規制の網にか からなかった部分をすべてカバーできるようになりました。基準の対象となる農薬など が大幅に増えました。そして、この制度が円滑に運用されれば、農薬が適切に管理をさ れることになります。そのためにも、そして法令を遵守するために、生産者の皆様や、 そして事業者の方々はさまざまな努力をされることになりますけれども、そのことにつ いて私たちは心から感謝をしております。ポジティブリスト制度の導入ということは、 消費者がより安心できる商品、食品を購入するということにつながっていっています。 (スライド)  しかし一方で、不安に思うこともあります。一律基準が0.01ppmという低い値 です。検査がきちんと、こんなに低い値ができるんだろうか、それから、一律基準が設 定される農薬は悪い農薬と考えてしまわれるんじゃないだろうか。厳しい基準イコール 悪という思いが強まってしまうのではないかという不安があります。生協でも行ってい ますけれども、消費者対象のアンケート、食品について不安に思うことはなに?と聞き ますと、1位はBSE。2位、3位のところに必ず農薬が挙がっています。やっぱり農 薬は悪であるというイメージが拡大するのではないかという心配があります。  そしてもう一つは、先ほどから出ているドリフトの問題です。使用した農薬が目的と した農産物以外にかかってしまう。飛散をしてしまう。それから、前に使った農薬が土 に残っていた、そんなことが起こり得ると思います。生産現場では大きな心配事になっ ています。私の友人ですけれども、田んぼを転作して野菜をつくっていますが、カメム シが来たらどうしようとほんとうに心配な顔をしていました。日本は、狭い土地で小規 模農家の方が農業を営んでいらっしゃいます。いろいろな野菜を混植して、少量多種多 品目をつくっている農家の方にとっては、このドリフトの問題というのはとても大きな ことだと思っています。  先ほどもいろいろ説明がありましたけれども、防止する方策というのはいろいろ提案 されていますが、リスクは非常に高く、農業の生産実態を十分に踏まえていないと感じ ています。そして、健康リスクがないのに、食べても大丈夫なのに違反が出たら、流通 を止められ、作物が廃棄されてしまいます。ルールだから仕方がないと片付けられない 問題です。  食料自給率、カロリーベースで40%と言われています。その自給率を上げるために も担い手を増やさなければいけないのですが、農家が抱える問題、リスクの高さ、それ から先ほど言ったような廃棄の問題などで、このことは後退するおそれがあると感じて います。そして、今は輸入に頼って食料を確保していますけれども、この先輸入ができ ない状況になったときに、この問題を考えていくのではもう遅過ぎるような気さえもし ています。そして、所沢で起きたダイオキシンの騒動、あれを思い出しますが、ある特 定の産地からある作物がこの基準オーバーになってしまったと報道されてしまうと、産 地全体が風評被害が起こる、そんな心配もしています。 (スライド)  このポジティブリスト制度というのは、消費者の要求からできた制度です。80年代 のポストハーベストの残留農薬の問題、それから2002年度、輸入の冷凍ホウレンソ ウの問題、食品にかかわる事件、事故というのがたくさんありましたけれども、食品中 の残留農薬の規制、法律がこのように実現することで、これまでの規制から大きく前進 するものと思っています。  この制度の導入で最も重要なことはひとつの農産物を検査することだけではなくて、 生産段階における農薬や動物用医薬品などの使い方を見直したり管理をすることだと思 います。つまり、検査結果よりも生産の履歴の確認のほうを重視していかなければいけ ないと思っています。  一律基準やドリフトの問題で、生産の現場は混乱があるのかもしれません。私たちは、 生産者の立場になってこのポジティブリスト制度の理解を深めていかなければいけない と思っています。私たち消費者のできる役割はここにあると思います。また、今後です けれども、地方自治体におけるポジティブリスト制度の導入にかかわる監視指導計画も しっかりと見ていかなければいけないと思います。私たちが正しい情報を知る、それか らいろいろな立場の方たちの意見を聞いて理解を進めるというリスクコミュニケーショ ンの場も、これからとても大事になってくると思っています。  ありがとうございます。 【司会】  ありがとうございました。  それでは、ここで10分程度の休憩を設けさせていただきます。午後2時5分からパ ネルディスカッション、意見交換を行います。お時間前になりましたら席にお戻りくだ さい。 意見交換 【司会】  それでは、お時間が参りましたので、これからパネルディスカッション及 び意見交換を行います。まず、パネルディスカッション、意見交換のコーディネーター 及びパネリストをご紹介いたします。  コーディネーターでございますが、皆様からごらんになって一番左側、順天堂大学医 学部公衆衛生学教室、堀口逸子先生です。  次に、パネリストの方でございますけれども、皆様からごらんになって中央右側から 左手に向かって順に、JA全農ふくれん営農部技術顧問の木原繁幸様です。  財団法人食品産業センター技術部長、塩谷茂様です。  社団法人日本セルフサービス協会客員研究員、山口廣治様です。  エフコープ理事、池崎冨美子様です。  北九州市消費者団体連絡会、江口瑞枝様です。  以上の5名の方がパネリストでございます。  続きまして、関係行政機関といたしまして、皆様からごらんになって一番右側、内閣 府食品安全委員会事務局勧告広報課の、齊藤リスクコミュニケーション専門官です。 【齊藤内閣府食品安全委員会事務局勧告広報課リスクコミュニケーション専門官】   齊藤です。よろしくお願いします 【司会】  農林水産省消費・安全局農産安全管理課農薬対策室の、横田室長です。 【横田室長】  よろしくお願いします。 【司会】  厚生労働省食品安全部基準審査課の、伏見課長です。 【伏見課長】  よろしくお願いします。 【司会】  それでは、パネルディスカッション、意見交換の議事進行につきましては、 コーディネーターにお願いいたします。 【コーディネーター(堀口氏)】  順天堂大学公衆衛生教室の堀口です。よろしくお 願いいたします。今日は、コーディネーターとして議事進行をさせていただきたいと思 います。  まず最初に、このパネルディスカッション、意見交換の進め方について、私のほうか ら少しお話をさせていただきます。このポジティブリスト制度については、その制度の 概要についての説明会を関係する省庁のほうで全国各地で行ってきたと聞いております。 それで今回のパネルディスカッション、意見交換は、それを踏まえまして、制度の概要 というよりは、生産者から消費者に至るそれぞれの過程において、それぞれの立場の方 が今いろいろな問題に立ち向かっていらっしゃるということで、それぞれの今置かれて いる現状を共有していくといったようなところを目的にして進めさせていただきたいと 思っております。  フロアのほうにも適宜私のほうから振らせていただきますが、その際はお名前を言う 必要はありませんけれども、どういう立場でご発言されるのか、加工業者の立場でご発 言されるのか、例えば流通業の立場でご発言されるのか、同じ加工業者であっても、例 えば消費者の立場でご発言されるのか、発言するときの立場をそれぞれ言っていただけ ればと思います。  それでは、早速ですが始めさせていただきます。  今回のパネルディスカッションには、先ほどの講演には上がっていらっしゃらなかっ たんですけれども、生協さん、エフコープさんのほうから池崎さんが参加してくださっ ておりますので、エフコープの取り組みないしは、または消費者としてのご意見などを 少しお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。 【池崎氏】  皆様、こんにちは。福岡県内で生協として42万人の組合員を持ってお りますエフコープ生活協同組合の組合理事をしております池崎と申します。今日はどう ぞよろしくお願いいたします。  このポジティブリスト制度の導入に当たりましての経過につきましては、先ほど江口 さんのほうからお話がありました。そこには、生協の組織というのが全国的に動いて、 一緒にこういう請願を出したという経過がございます。今回、ポジティブリスト制度が 導入されるということにつきましては、消費者団体としては、とても私たちも安心、安 全が一歩進んだということでうれしい反面、生産者の方たち、それから流通業の方たち、 いろいろな方がこれにはかかわってまいりますので、消費者として果たさなければなら ない役割もとても重要になってくるのではないかと考えております。  エフコープでは、消費者組織であると同時に事業者としても重要な責任があると感じ ております。42万人の組合員に向けて事業をやっておりますけれども、その中にはメ ーカーの方のご協力、それから生産者の方のご協力、そういったものがなければこの事 業が成り立ちませんので、ぜひ皆さん方と一緒に情報を共有しながら進めていきたいな と思っております。  それから、この制度が導入されるに当たりまして、エフコープ生協では行政やJAな ど、それから生産者組織同士のリスクコミュニケーションの重要性を考えまして、2月 と3月に2回リスクコミュニケーションの場を持っております。それから、内部では食 の安全懇話会というのがありまして、そこでもいろいろな関係の方に来ていただきまし て、農薬についても輸入農産物の安全性についてと、それから農薬についての食の安全 懇話会というところでテーマで取り上げて、それぞれの立場からの話をしております。 そういうものの重要性にあわせまして、一人一人の生産者、それから食品のメーカーさ んとの情報の共有化もこれから進めていくようになっております。  それから、もう一つは、独自の検査センターを持っております。この検査体制の充実 なども今準備を進めております。それから、もう一つは、一番大事なのが組合員に向け ての広報のあり方だと思います。生協の内部では、農業の現場に向けても親子農業体験 だとか、それからパートナーとして地域の中で食を一緒に考えるという立場でJAさん とも、それから独自の生産者の方ともいろいろな交流をさせていただいております。そ ういった中でポジティブリスト制度につきましても、お互いに理解がし合えるような取 り組みを進めていきたいと考えております。 【コーディネーター】  ありがとうございました。今、2月、3月に生協さんのほう でリスクコミュニケーションをされたり、あと懇話会をされたということなんですが、 そこではどんな質問というかご意見が出ていたのか、もしおわかりでしたら教えていた だきたいんですが。 【池崎氏】  まず、2月、3月のリスクコミュニケーションでは、行政の方、それか ら生産者団体の方に入っていただきました。そこでは、やはりポジティブリスト制度に ついてお互いがまだあまりよく理解し合えていないというか、立場が違いますので、そ れぞれが抱えている問題点を出し合っております。結論を出すという場ではなくて、お 互いが抱えている問題点を出し合うというところで、これからそれに向けてどういった 対策を考えていったらいいでしょうかという場ですので、一つの方向性を出すというふ うにはなっておりませんけれども、群馬県が取り組んでいるマスコミも巻き込んだ市民 に向けての情報の提供の仕方だとか、そういったところも含めてこれからもやっていき たいなと思っております。 【コーディネーター】  消費者からどんな質問が出たりとか……。 【池崎氏】  消費者はその場には、エフコープ生協の主催者になっておりますので、 一般の消費者の方は入っておりません。 【コーディネーター】  会員さんからの質問とかはどのような感じですか。 【池崎氏】  まだ会員に情報提供をする前の段階のところなので。 【コーディネーター】  前の段階で……。 【池崎氏】  はい、取りかかったばかりです。 【コーディネーター】  なるほど。  先ほど江口さんのほうから、ポジティブリスト制度の導入のこれまでとこれからとい うことだったんですけれども、実際、北九州市の消団連では、このポジティブリスト制 度について勉強会とかいろいろされているのではないかと思うんですが、どのようなこ とを消費者の中でされているのか、ちょっと紹介していただきたいと思います。 【江口氏】  制度について勉強会ということではなくて、農薬について勉強会、学習 会はしたりしています。先ほども言いましたように、アンケートをとるとやっぱり農薬 の怖さというのは上位に上がってきますので、ほんとうに農薬は怖いんだろうかという ところを知らせる、それから学ぶ、広めるというようなところ。私たち、農家の方々が 労力を軽減するにはやはり農薬って必要でしょうというような話も進めながらしていま す。  あと、実際に農産物、地場産のものを食べたいということがたくさん出てきています ので、そういうところで学ぶ場というのは広げてはいます。生産の現場で学ぶ機会を増 やし広げています。 【コーディネーター】  ありがとうございます。  木原さんにお尋ねしたいと思いますが、今、農薬の話で勉強会をしているというお話 がありましたが、消費者のほうから問い合わせ、この制度についてもそうですけれども、 何かあったりとかするものなのでしょうか。 【木原氏】  今、お話しいただきました消費側の方々は、農薬についてもかなり勉強 されているようで、よく理解されているように伺えます。  ただ、私の知人の中には、農薬について理解されていない人も多くて、先ほど農薬と いうのは、すべて悪であるというような考えの方がおられるということですね。私ども のほうにこれに関する問い合わせは、直接はあまりないんですけれども、JA・流通業 者を通じていろいろなお話は入ってきます。  私、ほんのつい最近ですが、農薬問題で、一般消費者のお友達に確認したら、今も生 産者は出荷する作物と自分のところの家で食べる作物は別に生産してあるのでしょう。 との言い方なんですね。生産の実態が全然わかっておられないということもつくづく感 じましたですね。  ですから、先ほど言いますように、やはり農薬に対して正しく理解していただくとい うことが非常に重要であると思います。決して恐れることはありませんよとか、いろい ろなことを言っても、結局には消費者がどう思われるか。人は情報のない無知なものに ついては非常に不安を抱くと思いますので、そういった意味では安全性の評価というの が、身近な物質、例えば医薬品であれ、日常の食品・生活資材等とのリスクの比較であ るとか、少し受け入れやすいような説明をすべきでないか。今までは、農薬の残留基準 についてはあまり消費者に対しては発信していませんでしたけれども、今後、ポジティ ブリスト制度下では、残留基準、ADIなど、最近は一般消費者も聞かれることになる と思うのですけれども。ことについての安全性評価ということについて、ご理解いただ く必要があるのではないかなと思っています。 【コーディネーター】  ありがとうございます。  江口さん、農薬について勉強会をされているということですけれども、消費者のほう から出てくる話というのはどういう話が多いんですか。 【江口氏】  今、木原さんが言われたように、やっぱり生産現場でのことがよくわか っていないというのが非常に多い。やっぱり怖いよね、化学物質は見えないから怖いよ ねというところにすぐご意見が集中してしまって、そうではなくてというふうにしても なかなかそれが伝わってこないというのがありますね。やっぱりまだ、今でも無農薬の 野菜のほうがいいでしょうって、私はそれしか買いませんという方々も多かったりもし ていますね。 【コーディネーター】  池崎さんのほうでは、組合員さんはどうですか。 【池崎氏】  生協という組織は、やはり消費者の生活の向上ということを目的として おりますので、農薬の学習だとかそういったことは積極的にいろいろな地域でやってお ります。学習した人たちは、そこから周りの人たちに、正しい知識を持てば選択すると きに正しい選択ができるのよということで広げています。特に私たちがかかわらない方 たち、情報が行き届いていない方たちのところでやはり、先ほど木原さんがおっしゃっ たように、農薬に対してとても悪いイメージを持っていらっしゃって、最初から拒否反 応があるという場面に幾つもなっております。きちんと学習をすれば、かける時期だと か、量をきちんと守れば、口に入るときにはそれは全部なくなっているんですよという ことをもっと一般のところに広げていかなければ、今回のこの制度がほんとうに理解さ れて、消費者のところも同じ立場に立って考えるというようなところにはなかなか行か ないのではないかなと思っております。 【コーディネーター】  消費者のほうに一番近い、品物を届けるというスーパーマー ケットがありますが、山口さんのところの会員さんなどで、消費者に向けた情報提供み たいなところの取り組みなどはどのように、今回のポジティブリスト制度、何かやって いるといったようなことでも、もしご存じでしたらお話をお聞きしたいんですけれども。 【山口氏】    ポジティブリスト制度を消費者がどれだけ認識しているのかというのを推しはかるの に、一つの例があります。例えば農薬と農産物の関係で言えば有機JAS規格と特別栽 培農産物制度の二つがあります。二種類の農産物はスーパーマーケットが仕入れて販売 するわけですが、定期的なスーパーさんとの情報交換では、有機農産物、また特別栽培 農産物の売り上げがなかなか伸びないと聞きます。私もJAS規格検討委員ですのでJ AS規格検討委員会の場でもそのような意見が出ていました。  実際に今の有機農産物の売り上げの伸び悩みというものを考えますと、もしかしたら 農産物と農薬の関係を消費者はそれほど意識していないのではないか?という見方も一 方ではできるかもしれませんね。  ただ、農産物と農薬の関係についての意識が低いからといってポジティブリスト制度 の情報をきちんと伝えないわけにはいきません。スーパーマーケットとしては店頭に、 ポジティブリスト制度への取り組み姿勢を掲示することが大切です。その際の情報は、 信頼できる生産者の栽培記録であり、基本的に栽培基準や輸入基準に合ったものを確認 し、仕入れていることです。 【コーディネーター】  ありがとうございます。  これまでこの制度の情報提供は厚生労働省のほうからされていたと思うんですが、消 費者に向けた情報提供は今後どのようにされていくのか。まず、伏見課長にお願いいた します。 【伏見課長】  この制度は、さっきも申し上げました15年の法改正でできて、以来 3年近くなるわけでありまして、その間途中でいろいろな形、中間段階の案をお示しし て、いろいろな方のご意見を伺う、あるいは会議なんかも全部公開でやってきていまし たので、もちろんご関心の高い方はずっと見守ってきていただいたんだろうと思うんで すが、すべての方が必ずしもそうじゃないということで、それでも特に去年、ここ1年 くらいはやっぱり各地の事業者の方はもちろんですけれども、消費者団体の方、各地の 消費者のグループの方が勉強会とかセミナーを開催されて、私どものほうから講師派遣 をさせていただいています。そういったのがこの1年、特に去年の夏以降やっぱり数と してものすごく増えてきております。最近はもうちょっと首が回らないぐらいの状態な んですけれども、それで私どもは、一応今施行前なので周知をしっかりしないといけな いというのはもちろんなんですが、例えばこれが5月29日施行になってしまえば、周 知が必要ないかというと必ずしもそうじゃないわけで、これは消費者の方に対してもそ うですし、生産者の方にしても農家の方にしても、いろいろな作物を作付されるのは、 別に5月29日以降も新たに作付されるものはあるわけですし、それから事業者、各食 品のメーカーの方も日々これからもつくり続けていかれるわけですから、周知というの はこれからも続けていかないといけないと思っています。  これまでは、特に国が中心となっていろいろなところへ講師を派遣したりということ をやってまいりましたし、今後ともご要請があって、こちらの人のやりくりがつけば対 応させていただきたいと思いますけれども、今回、いろいろな団体の方、あるいは地方 公共団体の方も含めて、いろいろな形でかなりの程度、ここ数カ月で周知が広まってい ると思いますので、今後のいろいろな勉強会とか、いろいろなところへ講師を派遣させ ていただくにしても、そういったところのリソースも活用していただけるんじゃないか なと思っております。私どもとしては、そういったところをさらにサポート、もちろん 我々自身もやりますし、そういった各地、各地での取り組みをサポートしていく上でい ろいろな情報の提供、例えば先ほどご紹介しましたホームページにしてもさらに充実さ せていきたいなと考えております。 【コーディネーター】  講師派遣もしていただけるということですので、会場におら れる消費者の方で、何か勉強会とかされるときにはご連絡をされてください。  農薬についての勉強会を中心にやっているということでしたけれども、農薬について 消費者に向けたインフォメーションみたいなものは、横田室長、どういうふうになされ ているのでしょうか。 【横田室長】  ポジティブリスト関係で厚生労働省と一緒にやっておるんですけれど も、それ以外に私どもは、農薬そのものについてリスクコミュニケーションを年に何回 かなんですけれども、私ども本省ベースでも行っておりまして、さらに農政局とかいろ いろな県レベル、そういうところでも農薬そのもの、農薬って何、なぜ必要なの、それ も生産者の方、消費者の方に入っていただいてリスクコミュニケーションをやっていき ますし、今後もそれは引き続きやっていこうと思っています。  特に、今回のポジティブリスト制度が入ることによって、食品衛生法と今度は農薬取 締法と、法律が二ついろいろと絡んできますので、なかなか現場のほうでも混乱してい る面があると思いますので、私どももいろいろな資料もつくっておりますのでぜひご活 用いただいて、食品衛生法で基準は定まるんですけれども、その前提として農薬取締法 があるんだ、きちんと使用基準を守るんだというところをさらに徹底していきたいと思 っております。 【コーディネーター】  ありがとうございます。  もしフロアにいらっしゃる生産者の方で、今困っていることとか、何かご意見などが ありましたらお伺いしたいと思うんですけれども、どなたかいらっしゃいませんでしょ うか。大丈夫ですかね。はい、どうぞ。立場はどういう立場で今ご発言されますか。 【参加者A】  生産者です。農産物や畜産物を数百種類の農薬で規制するということ なんですけれども、実際にどのように監視し、規制するのか。厳密に言うと、農薬一つ につき一つの分析をするわけじゃないですか。それで数百種類の農薬を規制するという ことは、数百種類の分析を行わないといけないんですけれども、実際にそういうことを やるんでしょうか。 【コーディネーター】  監視の立場で、じゃ、伏見課長、お願いいたします。 【伏見課長】  今回799の物質について基準を設けたわけですけれども、実は、例 えば国産のものに関して言えば、さっきも言いましたように日本国内で使われる農薬と いうのは今300幾つですね。だから、とても799全部を分析する必要はないんだろ うなと思っています。  具体的にどういうふうに監視するかということですけれども、輸入品であれば、それ は厚生労働省の検疫所が、全国に幾つだったか、大きな港にはございますので、そこで 検査をします。それから、国内流通しておりますものにつきましては、都道府県あるい は保健所を設置する政令市の食品衛生監視員の方が検査をされるということです。  ただ、その検査ももちろん、検疫所の例で言いますと、毎年どういった検査方法であ るかというのは監視指導計画というのが、輸入食品監視計画でしたか、毎年この時期に は出ておりまして、18年度分は出ております。そこにありまして、まずモニタリング といって、全部やるわけにはいかないので、主だった食品群ごとに今年は何検体サンプ リングしますというのをやるわけです。モニタリングをして、その中で違反が連続して 出るようなものにつきましては、検査命令とか、どんどん規制のステージを高くしてい くという形になります。  それで、あと具体的に農薬の数ですけれども、もちろん799全部やる必要がないと しても、具体的にどうしているかというお尋ねだと思いますが、1個1個分析をやるん じゃなくて、一斉分析法というのをこのポジティブリスト導入に合わせて開発いたしま した。大体1回の分析で100とか150とか一挙に分析できるような形になっており ますので、そういったもので、例えば農産物用の一斉分析法とか畜産物用の一斉分析法 とかいう形で、3種類か4種類ございます。多分、実際の監視指導の現場ではそういっ た分析法を使ってチェックをされて、さらにそこで何か異常値があればさらに詳しい分 析をして、ほんとうに違反かどうかというのを見きわめていかれるということになるん じゃないかと思っています。 【参加者A】  実際は、抜き打ちで一斉分析を行うというやり方でしょうか。 【伏見課長】  これは各県、あるいは市も、今どなたのお話にもご紹介がありました けれども、監視指導計画というのをつくられて、そういった計画で福岡市なら福岡市で やりますという形で、もうこの時期公表されていると思います。具体的には、多分抜き 打ちというのか、そういう計画にのっとってその中で、実際にマーケットならマーケッ トへ行かれてサンプリング商品を収去してという形になると思います。事前にどこどこ のお店で収去しますというようなことは多分公表されないでしょうから、そういった意 味では抜き打ちといえば抜き打ちになりますけれども、そういう形になると思います。 【コーディネーター】  今日はフロアのほうに九州、いろいろな県の行政機関の方も おみえになっていらっしゃるので、監視指導計画は都道府県や保健所設置市のレベルで 立てていると思うので、もしこのフロアにいらっしゃる行政の方で、その辺の考え方な どを少しご発言していただける方がいらっしゃいましたらご発言していただきたいので すが、挙手をお願いできますでしょうか。せっかく生産者の方が、監視指導計画をまだ 多分ごらんになっていらっしゃらないと思うので、どなたか考え方だけでもよろしいの ですがいらっしゃいませんか。 ・・・・(会場からは反応なし) 【コーディネーター】 残念ながら手が挙がらないので、済みません。多分各県の監視 指導計画の中に記載されているという伏見課長のお話でもありましたので、お住まいに なっていらっしゃるところのそれを見ていただければと思いますが。 【参加者A】  それはどこで見られるんでしょうか。監視指導計画というのは。 【コーディネーター】  ほんとうに行政の方が何人も来ていらっしゃるので、もしよ ければどこを見れば自分の県は出ているのかというようなことを教えていただけません でしょうか。 ・・・・・(会場からは反応なし) 【コーディネーター】  こちら、ちょっと勉強されているみたいなので、かわりに消 費者のほうからお知らせを。 【江口氏】  各都道府県、政令都市のホームページで食の安全から入ると見られます。 それから保健所、市役所などに置いてあります。今年度分は4月1日に作成されていま すのでそれをごらんになると今年度の予定として検体数などが載っています。 【参加者A】  ありがとうございました。 【コーディネーター】  ほんとうに皆さん、遠慮されずお話をしていただければと思 います。  今、生産者のほうからどういう検査をするのかというようなお話がありました。一方、 監視とは別の意味の制度管理の中で少し検査という話もありましたが、基本は検査あり きではないというお話を山口さんのほうからも塩谷さんのほうからもされたと思います。 もう一度その辺の確認をとりたいと思いますので、塩谷さんのほうからお願いできます でしょうか。 【塩谷氏】  この制度の適用には大きく二つに分類されると思うんです。私が話した のは、いわゆる加工食品についての考え方でありまして、もう一つはやはり加工度が低 い、いわゆる生鮮野菜とか、そういうものとの二つの分類になるかと。私が申し上げた のは、加工度の高いものについての話をいたしましたので、食品衛生法で定められてい る原材料を使用するというのは当然のことであります。当然といってもなかなか難しい んですけれども、それは当たり前のことをやるということでありますので、このポジテ ィブリスト制度が施行された後、じゃ、加工食品はどうなるんだろう、すべて分析する 必要があるんだろうかとか、そういう話はよく聞かれるわけですけれども、やはり生産 者の方の履歴等がまず一点でありますし、そこから出発した加工度、そしてその製造方 法等がありますので、それを勘案して、すべて分析するということではなくて、合理的 な理論づけした形でこのポジティブリスト制度に対応するということが、私が先ほどお 話しした考え方でございます。 【コーディネーター】  ありがとうございます。  山口さんのほうから補足がありますでしょうか。 【山口氏】    ポジティブリスト制度があるので分析に目を向けるのではなく、ネガティブリスト制 度下でも同じだということ。安全な食品を消費者に届けるという点では、食品添加物の 成分規格基準違反も含まれます。残留農薬やドリフト農薬のことだけが分析ありきの方 向になっているようですがこれはおかしいわけです。  そうであれば、指定添加物を基準内通り使用しているかどうかを一々分析しています か?そして今までそれを求めていましたか?ということです。これまでは、メーカーは 製造に関する品質規格保証書等で対応していたはずです。当然、その資料内容を確認し てから小売店は仕入れていました。しかし、ポジティブリストについては、農薬を基準 どおりに使いましたからこの農産物は大丈夫ですといっても「いや信用できません。と にかく分析してください。」というようなことが起こっているわけです。ポジティブリ スト制度が導入されるからといって、分析絶対のような風潮が見られますがよく考えて みるとおかしいですね。  スーパーマーケットはお客様に食品を提供する一番近い立場にあるという点で、特に 当制度にかかわらず今まで何も変わっていないわけです。取引の基本である、お互いの 信頼関係に基づいて決められた製造基準にのっとってつくられた加工品か?農薬基準に 準拠して生産された農産物なのか?養殖魚なのか?という基礎情報で判断していくとい う姿勢が重要と思っています。 【コーディネーター】  ありがとうございます。  今日は、フロアにはいろいろな方がお見えになっていらっしゃいますが、製造加工関 係の方が一番割合としては多くご出席されております。製造加工のメーカーの方で、今 現実困っていたり、何かご質問などがある方がいらっしゃれば挙手をお願いしたいと思 いますが、いらっしゃいますでしょうか。 【参加者B】  一次加工業者の団体の者です。  私のほうも3年ぐらい前から生産者団体の方には、残留農薬のことについてはいろい ろと安全性でよろしくということはお願いをした面はあります。私たちが今困っている のは、二次加工業者の方から、先ほどの検査等の証明がなければ取引しないよと、そう いうところまで言われてきておるものですから、どこからそういうところが強く言われ るものか。先ほどの生協さんたちの中からは、そういう話までは求めていないような気 がするものですから。それとこういう勉強会のほうにあらゆる人たちが参加して、幅広 く認識していけばそういうむちゃなことは要望されないとは思うんですけれども、どこ から出てきたのかなというのがちょっと疑問に思っているところです。 【コーディネーター】  ありがとうございます。  それでは塩谷さん、食産センターのほうには一次加工メーカーも二次の加工メーカー もいらっしゃると思うんですけれども、どのようでしたでしょうか。 【塩谷氏】  よく話は聞きますけれども、この制度ができるという初期の段階と、や はり話の内容は、皆さんがこの本制度の中身を理解していくにつれてだんだん変わって きたと思います。最初のころは何でもいいから証明書を出してください、分析をばんば んやってくれればいいんですよと。いや、どうも分析は全部できそうもないねというこ ともあるし、どうも分析ですべてを証明することができないという流れがありましたの で、多分今でもそういうことをおっしゃられるのであれば、こういうリスクコミュニケ ーションの中で相互に理解を深めるというところもありますので、ぜひこういうことが あったという話題にしていただいて、別に世の中すべてそういうことではないと、むし ろそういう方向ではなくて、先ほどスーパーさんのお話もあったように、これは食品衛 生法で定められた事項でありますので、当然品質保証書を従来から求められていると思 うんですけれども、ただそこの1項目がバージョンアップしたという考え方でいいんじ ゃないかと思います。 【コーディネーター】  ありがとうございます。  そしたら、伏見課長のほうから一言添えていただければと思うのですが。 【伏見課長】  結局制度の趣旨というのは、もうこれまでいろいろな方が申し上げら れているとおりでございまして、結局証明とか分析だけで安全というのは担保できるも のじゃないということですので、ちょっとなかなか実際の個々のケース、ケースについ て、当事者として大変難しい問題に当たっておられるんだろうと思いますけれども、私 が、役所の人間が言うのはどうしても抽象的な話になって申しわけない部分はあるんで すが、制度の趣旨を相手の方にも理解していただくということが必要なんじゃないかな と思いますし、具体的には、例えば塩谷さんなりがおっしゃったこと、あるいはいろい ろな団体の取り組みの事例を参考にしていただくというのが実際的なんじゃないのかな と思っております。  ちょっと直接お役に立てないかもしれませんけれども。 【コーディネーター】  また、生協さんのほうでは、今お話しされましたけれども、 消費者としては何かそこまで求めていないような気がするんだがというお話でしたが、 どのようにお考えでしょうか。池崎さん個人の考え方でも結構ですので。 【池崎氏】  生産履歴カードなどは、当然この制度が始まる前から、加工品につきま しても、それから農産品につきましても提出していただいて、その上できちんと契約し た中でつくっていただいているということになっております。だから、この制度が始ま ったからといって、そういうところまで及んでいるのかどうかというのはちょっと聞い てはおりませんけれども。 【コーディネーター】  じゃ、江口さんのほう、今、お話をお聞きになって、何か証 明書みたいなものを求められると。消費者のほうはというお話がありましたが、消費者 の立場でどのようにお考えでしょうか。 【江口氏】  個人的に思うことですけれども、分析ありきの方向ではないということ ですね。この検査とか分析というのは、あくまで生産の現場で農薬を使用したり管理を していることが確実に行われているかというものの裏づけに過ぎないと思っています。 このポジティブリスト制度というのは、決められた農薬が決められた作物に適正に使っ ているかどうかの規制のためにつくられた法律だと理解をしていますし、適正に使われ たものをその状況の中でサンプリングをして、残留があればその使われ方を調べていく、 問題があったらそれを直していく、そんな法律だと解釈しています。  ですので、この分析とか検査とか、この基準があるということで、もちろん食品の安 全性を確実に評価するということではいい制度だと思っていますけれども、食品の残留 農薬の検査とか分析だけで食の安全を担うことはできない、担保できない。先ほど伏見 さんも言われましたけれども、そういうふうな理解を頭に中にいつも入れておかなきゃ いけないんじゃないかなと思っています。 【コーディネーター】  ありがとうございます。  ほかに、これに関連してもよろしいので、加工の立場の……。 【参加者C】  済みません。加工食品の製造の立場からということで、今のをもう少 し伺いたいなと思ったんですが、先ほど検査ありきではないとおっしゃられましたし、 保証書であるとか誓約書であるとかといったやつではないんだと、信頼関係なんだとお っしゃられましたけれども、実質上の流通は、そういう意味で言うと川上から風下に来 るわけですよね。上から、風上から求められているものですから、そういった意味では、 先ほどちょっと山口さんがおっしゃられたこともそうかなという気がもちろんいたしま すし、逆に検査ありきじゃないんだと塩谷さんがおっしゃられましたけれども、例えば 規格書の項目が一つ増えるんだとおっしゃられましたが、通常製品検査とかのデータを 出すということは、この業界では至極当然のことであって、逆に言うとそれを求められ るということも、もちろん私どもとしてもかなり対応に苦慮はしておりますけれども、 無理からぬ部分はあるんじゃないかと思われます。  加えて、先ほどから、例えば検査ありきではなくて、つくられる側のところで履歴管 理をきちんとしているかとおっしゃられているんですけれども、それはどうやって確認 するんですか。逆に我々の立場からすると。 【コーディネーター】  じゃ、塩谷さん、よろしいですか。 【塩谷氏】  今のお話で、どうやって保証してもらうかという書類の話ですか。  いわゆる規格があるものや規格については当然規格書が出されると思いますけれども、 このポジティブリスト制度について、特に加工食品についてはその規格がないわけです よね。ですから、きちっとした農薬を使われたものであるということの証明書……、ち ょっと言葉が難しいと思いますけれども、適正に使用した状況で生産したものであると いう一筆を書いてもらうしか最終的にはないと思います。  ただ、その中には、先ほどからお話にあるように、出したからいいだろうという話じ ゃなくて、お互いに食品衛生法の中で商売をしているわけなので、それの相互の信頼関 係が必要だと。ただ、信頼関係といってもすぐにはできる話じゃないので、このポジテ ィブリスト制度という部分をよく話し込んでいく必要があるかと思います。 【コーディネーター】  履歴の確認というところで、スーパーさん、山口さんのほう で、実際流通さんのほうはどのようにされているんでしょうか。 【山口氏】  今質問された方ですが、正直、どういう業種でどういうものを扱ってい て、どういう内容の資料で言われたかという具体的な例がわからないと、あまりにも漠 然とした質問なので的確な答えはできません。  あくまでも想像でお話しさせていただきますが、セルフサービス協会はスーパーマー ケットの協会ですので、2年程前からこのポジティブリスト制度については勉強会等で は情報交換をしてきています。2年程前は法制度の各論が見えなかったことから、厳し い法律のイメージが一般的だったですね。記憶に新しいことですが、最初のうちは、0. 01ppmがすべての基準みたいな情報がひとり歩きしました。輸入もできないし、国 内での生産もできなくなるかもしれない等、食品業界全体が不安になったことがありま す。  しかし法制度が整い、法律自体の中身が充実してくるときちんと理解をすれば対応で きると思うようになったのです。私が勉強会や情報交換に積極的なのは、残留農薬ゼロ の保証書を求めるような取引関係にしたくないということがあるからです。  基本的には、スーパーマーケットがきちんと消費者に説明できるかどうかの問題です。 そのためにはまず生産履歴を整備すること。仕入れている食品が、どういう人がどうい う方法で、だれがどこでつくったかということをきちんと把握するということです。野 菜については、原材料がきちんとクリアされていれば農産物加工品も問題ないというこ とです。基本的には原料の生産履歴が大事で、ポジティブリスト制度にのっとった情報 を読み取れる内容の履歴書をつくることがポイントと思います。 【コーディネーター】  ありがとうございます。よろしいですか、ご質問された方。 【参加者C】  山口さんのおっしゃられた趣旨はよくわかります。ただ、現実として は、先ほどおっしゃったように、この物を保証しなさい、保証するというふうにサイン をしろと言われると、実質上は検査をしないといけないというのがやっぱり求められて いるというのは事実です。そうであれば、当然おっしゃられたように、私どもが仕入れ ている原料についても、それは大丈夫ですかという同じ問いをせざるを得ないという部 分があることはご理解いただきたいと思います。ありがとうございました。 【コーディネーター】  という、今、現実が起こっていると。それを解決するために リスクコミュニケーションという話があったと思いますが、ほかに。はい、後ろの方。 【参加者D】  最終加工業者としての立場から話します。  法の内容をしっかり理解して、そのとおりに運用しようという立場で話を進めている んですけれども、やっぱりどうしても幾つかの壁に突き当たるわけですね。具体例があ ったほうがわかりやすいと思いますけれども、例えばピザを製造していると。ピザソー スのトマトの残留農薬の状況を知りたいと。知りたいのは消費者も我々も同じだし、今 回の法律の運用としては必要なことだと思います。で、ピザソースを買っているメーカ ーにピザのトマトはどこから仕入れていますかと言うと、大抵の場合は野菜のブローカ ーが仕入れていると。そのブローカーがどこから仕入れますかと言うと、市場で仕入れ ていると。JA大分とかJA何とかとか、何とか組合とか、そういうところまではわか る。もちろん毎日仕入先は変わると思います。毎日変わる仕入先からその団体まではと りあえずやったとしても、そこから先の生産農家の履歴を調べるとなると、これはまず 現状では不可能です。もちろんICタグなどもありませんし、ピザをつくっている我々 がトマトの履歴、生産農家がいつウドンコ病の薬をまいたか知りたいと。知りたいけれ ども、その履歴が見られないというのが今の質問の中身だったと思うんですよ。トレー サビリティーと検査が二本柱で、検査は主流ではない、トレーサビリティーだと。だけ ど、そのトレーサビリティーがない状況でこの法律があったとしても、あとはもう検査 しか残されていないわけで、話が複雑になるのはそういう事情だと思うんですね。トレ ーサビリティーの普及状況についてぜひご質問したいんですけれども、我々消費者がピ ザソースのトマトの履歴を知るということは今後可能になるんでしょうか。 【コーディネーター】  二つあると。今お話ししてくださったと思うんですが、最終 加工メーカーの方がどこまでさかのぼるかとうのが多分一つあって、今はピザソースの トマトまでさかのぼるという話をしていたと思います。そのトマトまでさかのぼったと きに壁にたくさんぶち当たるということで……。 【参加者D】  そうです。さかのぼれないので、トレーサビリティーの整備ができて いないので法律を運用することができないという悩みですね。 【コーディネーター】  ですよね。なので、トレーサビリティーの話とどこまでさか のぼるかという話が多分二つ入っていると思うので、塩谷さん、ちょっとお話をいただ き、あとトレーサビリティーについては、JAさんにまた伺いたいと思いますが。 【塩谷氏】  今のお話は、トマトまでさかのぼれるという前提で答えればよろしいで すか。  そうしますと、先ほどの話では、トマト1個1個を分析するわけにはいかないので、 ロットという考え方、産地という考え方がありますので、その産地のものであれば、出 荷をしているということは、このポジティブリスト制度をクリアしたものを出したとい う考え方で考えるということでいかがでしょうか。 【参加者D】  出荷しているものは安全であるという考え方ですかね。 【塩谷氏】  はい。 【コーディネーター】  それが一つと、トレーサビリティーについてですが、JAさ んのほうはどのようにお考えですか。 【木原氏】  トレーサビリティーにつきましては、すべてが取り組んでいるには至っ ておりません。ただ、生産現場での記帳運動、生産履歴記帳は、共同販売作物の90 数%は実施していると思います。ですから、どこの産地かとかがわからないとなると、 どこまでトレースできるかわかりませんが、入荷をどういうふうにされているかですね。 少なからず流通業者の方が、どこから入荷したのか産地指定できる範囲でないと、それ は無理じゃないでしょうか。一応産地が指定できれば、どういう生産対処をしているの か、あるいは記帳については見られるのではないかと思いますけれども。 【コーディネーター】  では、伏見課長、2点について、トマトの……。 【伏見課長】  多分、今農水省、JAの方を中心に農家、生産現場で履歴をしっかり とっていただく、あるいはポジティブリスト制度、ドリフト対策もきちっとやっていた だくという取り組みをされていますので、具体的な名前はあれですけれども、ここの地 区でとられたものであれば、そこの地域がしっかりそういった対策をとられているとこ ろであれば、それはある程度安心して使えるものだと考えていただくことはできるんじ ゃないのかと、ちょっと漠然とした言い方ですけれども、そういうことは考えられるん じゃないかなと思います。 【参加者E】  済みません。 【コーディネーター】  はい、どうぞ。 【参加者E】  産地が指定できれば安全だという話と、それとJAさんのほうで生産 の履歴の関係で記録を言われているという話ですけれども、私、トマトじゃなくてタマ ネギの話で、生産している人間として開帳しますと、昨日も今日は雨が降るということ でタマネギをとっておったところですけれども、まず産地で指定されてもばらばらです。 各生産農家でそのとおりやっているところは、一律にJAさんの言われるとおり、それ と役所の言われるとおりにやっているところは違います。それと、実際集荷場に集まっ たときには、みんな一緒くたでわかりません。そうすると、生産履歴を記帳してくださ いという話ですけれども、JAさんからそういうふうに言われたことは一度もありませ ん。以上です。 【木原氏】  どこの生産地ですか。 【コーディネーター】  ちょっと待ってくださいね。今、ご意見をいただきましたの で、現場の話をしてくださったと思います。第三者的に農林水産省の方はどう思われま すか。横田室長。 【横田室長】  実際に記帳していくときには、その記帳している内容を確認してきち んと、例えば農薬の使用規準を遵守している、それを一つ証明するのが一番大きいんで すね。もう一つは、万が一基準値オーバーで違反が出たといったときに、例えばどの畑 なのかというところまで特定できますから、そういう意味でここがきちんと記帳してお くというのは大きいんだと思います。  例えば、さっきおっしゃられたように、Aさん、Bさん、Cさん、使っている農薬が 違うからわからないではなくて、Aさん、Bさん、Cさん、きちんと記帳しておって、 それがちゃんと農薬取締法を遵守しているということであれば、それに基づいてこれは 大丈夫ですと言うことができるんじゃないでしょうか。そういう意味では、おそらく選 果施設なんかも、例えば新しい非破壊の選果施設なんかになりますとコンピューター管 理されているので、かなり個々の農家までびちっとわかるようになっていますね。少し 古い選果場になりますと、そこはそこまでできませんから結構ごちゃまぜになっていま すし、タマネギとかそういうものは、かなりごちゃまぜになっているという事実はある と思います。  ただ、個々できちんと記帳し、その記帳内容が法律を遵守しているというのが一番大 きな証明になるんだと思いますし、それに基づいて自分たちでチェックした上でやって いますというのは言えるのではないかと思います。 【コーディネーター】  ありがとうございます。 【参加者F】  私は加工食品のメーカーでございます。先ほどから一次産業の方、そ れからまた加工食品のトマトのお話、それを含んだところでいま一度質問したいと思い ます。  これは、私どもがいろいろなスーパー様ともお取引をしておるわけですけれども、今 日、今皆様がお話しいただきましたことは、私はよく理解できます。このような内容を もう少しマスコミの方が取り上げていただいて、ほんとうにポジティブリスト制度とい うのはこういうものなんだよと。極端に言うならば、私どももあるスーパー様の協会か ら詳しい検査リスト、保証書を出しなさいと。これが現実でございます。だから、私ど もは今お話をしていただいたようなことをしまして、回答書も書いて出しますけれども、 それでは納得されないと、これが現実ですよ。だから、スーパーさんも、山口さんもお 話をいただきましたけれども、であるならばその付近はもう少しぴしっと整理していた だいて、メーカーに無理難題を突きつけるなということを言っていただけませんでしょ うか。また、その辺のことをマスコミ様とか、それとか行政、官庁様もその辺はこうな んだよということを整理したところでお願いしたいと。これは切なる願いでございます。 以上でございます。 【コーディネーター】  ありがとうございます。  今日、ここの壇上にはメディアの方はいらっしゃらないのですけれども、リスクコミ ュニケーションはメディアの人も入ってリスクコミュニケーションをするというのがW HOやFAOが出した報告書に書かれています。今日、メディアの方はフロアにはいら っしゃいますので、今、ぜひポジティブ制度についてきちんと報道していただきたいと いうお話があったと、周知徹底という意味においてもしていただきたいというお話があ ったと思うのですけれども、今日取材のカメラも入っているみたいですが、もしメディ アの方でコメントいただけるようでしたらコメントをしていただきたいのですけれども、 いらっしゃいますでしょうか。 ・ ・・・・・・・・(会場からは反応なし) 【コーディネーター】残念ながらいらっしゃいませんでしたが、ご意見は多分届いたと 思います。  それで、ほんとうに現実の話が出てきたと思うんですけれども、今のお話をお聞きに なって山口さんのほうからコメントをいただけますか、つらいとは思いますが。 【山口氏】   そういうスーパーさんがまだいらっしゃることは私も知っています。メーカーの品質 管理の方たちの勉強会をやりますと、今おっしゃった方のご意見にあった問題はよくで ます。だからこそスーパーマーケットの協会としては、メーカーや生産者と末永い取引 をするためにポジティブリスト制度の内容をきちんと見直し、検査や分析書絶対のよう な取引姿勢はやめましょう、と問いかけているわけです。  そこにもう一つ理由があります。商取引するうえで大変に大事なことだと思うのです が、最近は、リスクヘッジという意味で、「リスクはいらない利益だけ」という風潮が あるとすれば問題です。その傾向が何となく年々強まってきている感じがあります。私 は研究員として衛生管理や表示指導をしてきましたが、ポジティブリスト制度に関して、 残留農薬に関する保証書が取引の条件というのは個人的に大変に問題だと思っています。  今までの取引の条件は何がベースですか?と問いたいですね。やはり信頼関係でしょ う、皆さん。メーカーと小売店をつなぐものは信頼関係でしょう。残留農薬に関する保 証書を義務づける担当者もいるようですがそうじゃない担当者もいます。やはり商取引 は、単なる物の取り組みではなく、基本は人と取り組むということを忘れてはいけない と思います。  人と人との取引の基本を大切にしながらポジティブリスト制度を活用し、逆に質を上 げていくくらいの気持ちで情報交換をやってきました。しかし、私の力不足で不満もあ ろうことと思いますが、その辺はご容赦ください。協会として、今後もポジティブリス ト制度の適正な普及に努力していきたいと考えています。 【コーディネーター】  池崎さんのほうから、消費者の立場として、生協として。 【池崎氏】  検査ありきではないよ、分析ありきではないよということが今何度も言 われているんですけれども、実際現場のところでは、少し前にかけたものと出荷するも のとの間にもしかしたらドリフトがあるんじゃないかという心配とかが、これからはや はり現場のところでは出てくるのではないかなと思います。それはもうつくっている方 たちにとっては切実な心配なんではないでしょうか。  ということで、エフコープでは検査センターのところで、地元のJAとの協議会に検 査センターのメンバーが入りまして、検査の依頼だとか相談とかに乗っております。検 査は生産者を縛るためではなくて、一緒に安全な農産物をつくる一つの手段であると検 査センターのセンター長も言われているんですね。ですから、何か変に今のような、ま あ加工品についてはなかなか、トレーサビリティーの部分で難しい問題がたくさん出て くるのかなと思いますけれども、そこは少しずつ仕組みを整備しながら、みんなが共有 できるものにしていかないといけないと思いますが、農産物につきましては、できまし たらお近くのJAの検査場だとか、そんなところに相談されながら進めていってはどう かなと思います。 【コーディネーター】  ありがとうございます。  江口さん、今、フロアの方から現状を報告、ご意見をいただき、非常に苦労されてい る様子が見受けられましたが、消費者として現状をどのようにお感じになりましたか。 【江口氏】  そうですね、個人の考え方ですけれども、ピザのトマトソースのトマト、 その農薬の残留を私たちが知りたいと思ってはいません。先ほどもあったように出荷さ れていれば安全、農薬取締法をきちっと守っていれば安全だという意識を持っているか らだと思います。でも、現場でいつ、どこで、だれがどれぐらいこの農薬をまいたかと いうことを記帳していただくことで、私たちがわからないことがそこで何かのときには わかるというそんな仕組みだと思っています。  リスクコミュニケーションがすごく大事になりますよね。情報提供をする側、お互い のいろいろな立場の方々のというふうな、会場からもありましたけれども、この制度を 担っていくのは主に生産者と事業者の方だと思います。そこにぜひ消費者も参画をさせ ていただいて、一緒になって問題を解決、問題を知る、今起こっていること、これから 起こることを一生懸命お互いを知っていい方向に持っていく、そんなことがとても大事 だと思っています。 【コーディネーター】  ありがとうございます。  何か、今までの話とかかわらず。じゃ、そこの後ろの女性の方。 【参加者G】  分析ありきじゃないということでかなり言われているんですけれども、 済みません、私、分析をやっている人間です。実際お客様から一番声に上がるのが、ポ ジティブリストは原料に戻れということで、厚労省のほうが言っているということで依 頼のほうを受け付けています。ただ、そのときに契約農家とか、エフコープさんとかは 契約農家さんと契約されて、そこで条件を決めて出荷基準というのをされていると思う んですけれども、やはり実際に商社を通ってくるものというのは、間に何社も入ってい ることが多いので、実際トレーサビリティーはとりにくいと思うんですよね。日本は農 取法があって、実際その基準で農薬を使われているにもかかわらず、やはり日本の生産 の現場でもトレーサビリティーがとりにくいということが、ちょっと今のお話でわかっ たというのと、お客様からそういったお話があるというので知っているんですけれども、 ただ、それに加えて、スーパーなんかでは輸入食品というのを大変取り扱ってらっしゃ ると思うんですけれども、実際それが輸入食品にまでなってしまうと、世界各国から農 産物はやってきますし、実際その国でどういった農薬が使われているのかわからないと いう質問はかなり出ています。実際に輸入モニタリングは498項目、ポジティブリス トは799ということで、そこら辺に輸入品と実際に流通されているポジティブリスト のほうで300ぐらい誤差があるということ、その辺を踏まえてちょっと私のお客様へ の回答の参考にさせていただきたいんですけれども、まず山口様のほうに質問で、輸入 食品などのトレーサビリティーをどうされているかというのと、あとこちら、伏見様の ほうになんですけれども、実際に国内で使われている農薬だけじゃなくて、例えば中国 やタイやヨーロッパのほうでどういった農薬取締法みたいなものがあって、どういった 規制で農産物をつくられているかというのを、情報を取り入れるにはどこにどう聞けば いいかというのをお教えいただきたいです。お願いします。 【コーディネーター】  それでは、まず山口さんのほうから、輸入品に対するトレー サビリティーのところはどのようにご指導を。  【山口氏】  輸入食品についてですね。その前に分析についてお話しますが、スー パーマーケットが分析絶対という立場にいては混乱を招きやすいということです。あく までも信頼関係に基づいた上で、商品情報できちんと契約していくことが大切であると 考えています。  分析はあくまでも参考として見るべきで、ポジティブリスト制度とは関係なく、実際 には適正な肥料設計をするときに必要な土壌診断等です。そのようなことは皆さんもや ってきていますから当たり前のことで、そのような分析まで否定はしていません。つま り、当前分析すべきこと、押えるポイント等の分析は必要です。すべての分析を否定し ているととられているとしたら、それは誤解です。  輸入農産物については、各国の農薬の状況を調べます。例えば、コーヒー豆やトウモ ロコシ等の生産者、生産者団体、農業協同組合、相手国の農薬販売会社等から農薬の使 用実態、使用農薬の種類を調べます。分析は製品に対する保証ではなく、あくまでも確 認という意味で任意で行います。実際にその農薬がきちんと規定の量を使われているか という情報の確認です。国内は全農さんを含めてきちんと対応していると考えています。 国産品は情報がとりやすいですが、輸入品は国により情報がなかなかとりにくいという 問題があるようです。生産者だけでなく、その地域の農薬情報も収集する、確認として の分析も有効な場合もあります。  ご質問をされた方の答えにはなっていませんが、この場は時間の関係もあり難しいで す。各国によってそれぞれ違いますので一言で回答することはできません。ですが、ポ イントは、各国の農薬にまつわる情報を入手し、整理することだと思います。農薬情報、 散布実績、分析による確認等の基礎情報をつくっていくという地道な作業が必要と思い ます。 【コーディネーター】  ありがとうございます。  それでは、伏見課長のほうから、海外の制度とその情報の入手先について。 【伏見課長】  今回、ポジティブリストの基準を置くに当たって、国内の基準はその まま原則置いていますけれども、海外の基準を参考に大分置きました。それに当たって いろいろ海外のも調べたんですけれども、どこでとれるかというご質問なんですが、そ ういった個々のカウンターパートからとっていただくということ以外ということで考え ますと、我々のほうで今整備といいますか、まとめていますのが、先ほど厚生省のホー ムページを紹介しましたけれども、実はそこのホームページにリンクを張らないといけ ないと思っているんですが、我々厚生労働省の中に医薬品食品衛生研究所というのがご ざいまして、そこのホームページに各国の農薬の登録状況、あるいは残留値のMRL、 食品中の残留基準値のサイトがございます。  ちょっと直近の状況というのは私もチェックしていませんけれども、日本語にできる ものは日本語にしていたと思いますので、比較的それぞれの相手国のカウンターパート からとる以外に、網羅的に各国の状況ということであれば、そういったところが一つご 参考になるんじゃないかなと思います。これにつきましては、厚生省のポジティブリス トのホームページのところからリンクを張れるように近々改めたいと思っております。 【コーディネーター】  ありがとうございます。  横田室長のほうから、農薬に関して何か補足はありますか、海外の話で。 【横田室長】  私どものほうで細かく海外の情報を取っているわけじゃないんですけ れども、基本的に、特に先進諸国は日本と同じとか、そういう規制の状況を全部持って おりますので、先ほど伏見課長から言われたような情報をとることによって、そのあた りを見ることができると思います。  あとは比較的、契約栽培的に日本の農薬登録制度をまねるような形で、使用方法とか を合わせているような国々もありますので、そういう情報を得られればよろしいんじゃ ないかと思います。 【コーディネーター】  ありがとうございます。 【参加者G】  ありがとうございました。済みません、最後に。分析ありきじゃない と言われているんですが、何度も申しわけないんですけれども、でも実際に現場の方た ちはほんとうにパニック状態に陥ってらっしゃるというのを知っていただきたかったと 思います。ありがとうございました。 【コーディネーター】  ありがとうございました。  だんだん時間も迫ってきました。今日は、食品安全委員会の齊藤さんのほうから、今 回はリスクマネジメントの話がほとんどだったと思うんですが、今後のポジティブリス ト制度に向けてリスク評価の観点からお話をいただけるということですので、リスク評 価について少しお話をいただければと思います。よろしくお願いします。 【齊藤専門官】  ありがとうございます。  食品安全委員会では、今回のポジティブリスト制度施行に際しまして、リストに掲載 されている農薬等のうち758物質のADI等の設定、それから一律基準の設定、対象 外物質の指定について、リスク評価の作業に着手することとしております。特にADI 等の設定のための評価の進め方につきましては、農薬専門調査会の専門委員を増強する 等、体制の強化を図りまして、優先的に評価をする物質とそれ以外の物質に区分をして 行うことを考えております。  食品安全委員会では、これらの評価の進め方につきまして、6月9日まで国民の皆様 から意見、情報の募集を行っております。情報の提供の方法は電子メール、あるいはフ ァクス、郵送で受け付けております。また、食品安全委員会のホームページから直接お 寄せいただくこともできます。詳細につきましては、参考資料を添付しておりますけれ ども、そこにあります「残留農薬等のポジティブリスト制度導入における食品安全委員 会の役割」の5ページ目にプレスリリースという形で資料を添付させていただきました ので、こちらをごらんいただきまして、ぜひ多くの皆様方からご意見、情報をいただけ れば幸いと思っております。よろしくお願いいたします。  私からは以上でございます。  【コーディネーター】  ありがとうございます。番号が書いていない資料が一つあ りまして、それに関しまして、ポジティブリスト制度に新しく今後リスク評価をしてい くというところで、今、そのリスク評価についてのご意見の募集というお話でありまし た。  ということで、本日、フロアからもいろいろご意見をいただきまして、現状をご報告 いただきありがとうございました。このリスクコミュニケーション、福岡会場で終了と なります。どうもありがとうございました。  総合司会の吉田さんのほうにマイクを返したいと思います。 閉 会 【司会】  それでは、以上をもちまして、食品に関するリスクコミュニケーションを 終了させていただきたいと思います。  本日は長時間にわたり、また貴重なご意見をいただきましてまことにありがとうござ いました。  出入り口におきましてアンケートの回収を行っております。今後のリスクコミュニケ ーションの参考とさせていただきますので、ご協力をお願いいたします。  本日はどうもありがとうございました。 ── 了 ──