06/02/24 平成18年2月24日(鹿児島県鹿児島市)「食品に関するリスクコミュニ ケーション(輸入食品の安全確保及び残留農薬等のポジティブリスト制度の 導入についての意見交換会)」 食品に関するリスクコミュニケーション(輸入食品の安全確保及び残留農薬等の ポジティブリスト制度の導入についての意見交換会:鹿児島県鹿児島市) 平成18年2月24日(金) 於:サンエールかごしま講堂 開 会 【司会(山本厚生労働省食品安全部監視安全課化学物質係長)】  本日は、皆様ご多 忙の中、ご参加をいただきましてありがとうございます。ただいまから食品に関するリ スクコミュニケーションを開催したいと思います。  私は、本日司会を務めさせていただきます、厚生労働省食品安全部監視安全課の山本 といいます。どうぞよろしくお願いいたします。  本日の輸入食品の安全確保及び残留農薬等のポジティブリスト制度の導入についての 意見交換会ですけれども、こちらは厚生労働省の企画するリスクコミュニケーションの 今年度の基本テーマとして全国各地で開催しております。今回で7回目ということにな ります。  初めに、配付資料の確認をさせていただきます。お手元に議事次第がございます。議 事次第でございますけれども、下のところですが、配付資料というところがございます。 資料1「リスクコミュニケーションとは」、資料2「輸入食品の安全確保について」、資 料3「残留農薬等のポジティブリスト制度の導入について」、資料4「食品に関するリ スクコミュニケーションにおける事前意見・質問について」、参考資料といたしまして 「意見交換会に参加いただいた皆様へ」、「食品中に残留する農薬等のポジティブリスト 制度(補足資料)」でございます。「食品の安全確保に関する取り組み」、「食品安全エク スプレス」、「安心を食べてほしいから。見守っています、食の安全。」、「食事バランス ガイド」、配付資料は以上でございます。不足の資料等がございますでしょうか。挙手 いただきましたら、担当者がお伺いいたします。途中でお気づきになられましたら、そ のときはスタッフにお声をかけていただければいいかと思います。よろしくお願いいた します。  また、アンケート用紙を同封させていただいております。これは今後の意見交換をよ りよいものにできるよう、皆様のご意見を伺うものでございます。ご協力をよろしくお 願いいたします。ご記入いただきましたアンケートは、意見の交換終了後に出口付近で お受けする予定でございます。  続きまして、本日の議事進行を簡単に紹介させていただきます。再度、議事次第をご らんいただきたいと思います。  まず、2番目でございますが、「リスクコミュニケーションについての説明」という ことでございまして、厚生労働省食品安全部企画情報課の広瀬誠課長補佐から15分程 度、続きまして、本日のテーマの一つである「輸入食品の安全確保について」を45分 ほどご説明させていただきます。その後、約5分間の休憩をとらせていただきまして、 その後、厚生労働省食品安全部基準審査課の伏見環課長から、2つ目のテーマでありま す「残留農薬等のポジティブリスト制度の導入について」につきまして、約45分程度 でご説明をさせていただきたいと思います。これらの説明終了後に10分間程度の休憩 をとらせていただきまして、3時からパネルディスカッション、意見交換を行いまして、 午後4時30分ごろの終了を予定しております。よろしくお願いいたします。  では、まず「リスクコミュニケーションについて」と「輸入食品の安全確保につい て」のご説明をさせていただきたいと思います。 説 明 【広瀬厚生労働省食品安全部企画情報課長補佐】  厚生労働省医薬食品局食品安全部 企画情報課の広瀬と申します。よろしくお願いいたします。 (スライド)  まず、「リスクコミュニケーションについて」ということで、これは横文字で、横文 字というよりも片仮名なんですけれども、まだ新しくてわかりにくいといわれています ので、最初にリスクコミュニケーションについての説明をさせていただきます。 (スライド)  まず、最初のスライドからになりますが、なぜリスクコミュニケーションということ が言われるようになってきたかというと、このように、食品を取り巻く動向が大きく変 わってきています。先進国においては、一応、食料が足りないという時代からは満ち足 りた時代になってきたということとか、新しい食の問題がいろいろ起きてきているとい うこと、それから貿易が国際化していて、いろいろな国から、遠くの国からもそうです けれども、長距離で運ばれてくるようなことが普通になってきたということとか、しか も大量につくられて、大量に流通しているということなどがあります。また、海外旅行 の一般化みたいなこともありまして、これは普通の食の安全の問題というよりは、行っ た先の国で食の安全の問題に遭遇する機会もあるというようなことでございます。  こうした中で、食品の安全を確保するために国際的にはどういうふうに考えられてい るかということいいますと、一つはフード・チェーンアプローチ。要するに食品がつく られて、最後の段階で検査して安全かどうかということを確認してオーケーだったらい いということでなくて、一番最初の段階、生産から消費に至るフード・チェーンの全部 の段階できちんと安全を確保していくことが重要だと考えられているわけでございます。  それからもう一つは、リスクアナリシスということで、何か起きない限りは安全だと いう立場に立つのではなくて、事故が起きてからの対応というよりは予防に重点を置く ということがございます。それから、安全性の評価、これは科学的に行われる部分です ので、そういう科学的に行われる部分と、いわゆる政策的に行われる管理の部分につい ては機能的にきちんと分けていきましょうということですとか、食品に関係するいろい ろな関係者、消費者の方、事業者の方、生産者の方、流通の方、いろいろな方がいらっ しゃいますので、そういう人々の間で情報や意見の交換を促進していきましょうという ことが言われてます。これがリスクアナリシスの考え方で、ここの意見や情報の交換の 部分というのが、まさに今日お話しするリスクコミュニケーションのところになるわけ でございます。 (スライド)  リスクアナリシス、このリスク分析について、もう少し詳しくお話をさせていただき ますが、このリスク分析というものは国民の健康の保護を目的といたしまして、国民が 何か健康被害などに遭遇するような可能性がある場合について、事故の後始末ではなく て、可能な範囲で事故を未然に防ぎ、リスクを最小限にするためのプロセスといわれて います。  リスク分析、分析とついていると、何か分析をして終わりみたいなイメージをお持ち になるかもしれませんが、実は分析して終わりではなくて、いろいろリスクを管理して、 なるべくリスクを最小限にするという、取り組み全体を含んだ仕組みがこのリスクアナ リシスというものでございます。  リスク評価の部分とリスク管理の部分が我が国の場合には明確に分けられておりまし て、食品安全委員会というところがリスク評価をしております。具体的にはどんなこと をしているのかということなんですが、健康に悪影響を及ぼすおそれがある、そういう 物質が食品中に含まれている場合に、どのくらいの確率で、どの程度の悪影響が起きる かというようなことを評価いただいているわけでございます。  また、ここで評価されました結果に基づきまして、厚生労働省、それから農林水産省 がリスクの管理ということをしていくわけでございます。具体的には、厚生労働省では 食品中の含有量について基準を決めたりとか、表示の基準を決めたりとか、決めた基準 や表示が守られているかどうかの監視なんかを食品衛生法に基づいてやっていると。農 林水産省も、例えば農薬の使用基準、これは農薬の食品中の基準が決まったときに、じ ゃあ、ふだんその基準を超えないように生産していくためにはどういう使い方をすれば いいのか。例えば、この農薬は収穫までに2回までまくことができますとか、それから 収穫1週間前まで使うことができますとか、農薬の使用の基準を決めていたりとか、そ れからえさとか肥料の中に含まれる物質の量などについて基準を設定したりとか、そう いうことを農林水産省で行っています。  少し見にくいかもしれないんですけれども、リスクコミュニケーションは全体の枠に かかっておりまして、要するに評価の部分だけやればいいとか、管理の部分だけやれば いいということではなくて、評価から管理に至るプロセス全体においてこのリスクコミ ュニケーションというのが非常に重要であると言われています。  このリスクコミュニケーションの目的になりますけれども、食品の安全に関して、関 係者の間で情報を共有するということと相互に意見交換を行うというようなことでござ います。それから、もう一つ意味がございまして、消費者とか関係者の方の意見という のを施策の中に反映していきましょうということも含めまして、今、我々としては実施 させていただいてます。 (スライド)  具体的なお話を少しさせていただきたいと思いますが、まず食品のリスクというのは 何なのか。リスクというのは日本語にはなかった概念でございまして、実はリスクイコ ール危険ではありません。危険かどうかというのは、これは必ず起きるかどうかはわか らない、可能性としてはあるけれども、必ず起きるというものはリスクとは言わないと いうことでございます。定義自体がちょっと難しいんですが、食品の中に何か健康に悪 影響があるような可能性のある物質というのがあった場合に、それによってどういう悪 影響が起きるのかということと、その確率と程度、そういうことの関数みたいなものだ ということでございます。  このリスクというのは、何か目で見えるとかというものとはちょっと違いますので、 なかなか概念的に理解するのが難しいものになっております。日本語で比較的近い言葉 としては、いわゆる「やばさ」みたいなものがリスクに比較的近い日本語ではあるんで すけれども、食品がどのくらいやばいかというようなことを国として評価をするという のはなかなか難しい、そういう言葉を使うのは難しいので、リスク評価というような片 仮名の言葉でそのまま用いております。 (スライド)  次に、絶対に安全な食品があるかどうかということでございます。食品もそうなんで すが、ある物質があったときに、それが健康に悪影響を及ぼすかどうかというのは、単 にその物質によってこれが毒だとか毒じゃないとかと決まるものではなくて、実は有害 性と摂取量で決まってくるわけです。ただ、そうは言っても、我々が生活していく中で、 通常食べられるような量で危ないものは一般的には毒と、そうではないものは毒じゃな いと整理されているわけですが、厳密には、有害なものであったとしても、摂取量が非 常に少なければ害は起きないということがあります。これはまた後ほど農薬の説明の中 でも、生体に対する影響と、それから摂取量の関係についてのお話が出てくるかと思い ます。  逆にどんな物質、食品も摂取量によっては健康に悪影響を及ぼす可能性があって、こ れは体に必要な食品であっても、食べ過ぎると何か健康被害が起きるということがあり ます。ですから、例えば健康食品なんかで、通常の食品の形態であれば食べ過ぎるとい う可能性は少ないのかもしれないんですけれども、濃縮されていたりとかする場合に、 それを多量にとってしまうと、健康被害が起きることもあるので注意が必要ということ です。食べ物自体にも、食べ過ぎると害が出るので、そもそもリスクゼロというのはあ り得ないということがあります。 (スライド)  ここでまた、リスクコミュニケーションというのはどういうことなのかということで すが、ちょっと繰り返しになるかもしれませんけれども、リスクに関係する人々の間で 食品のリスクに関する情報とか意見を相互に交換するということです。究極の目的とし ては、有害性とか、それによって起こる確率がどの程度ならば受け入れ可能で、そのレ ベルまでリスクを下げる、管理するためにはどうしたらよいのかということを、関係者 の間で理解を深めてともに考えていこう、こういうことができると良いのですが、現在 そういうレベルまではなかなかいけてなくて、お互いの考え方をいろいろご紹介するよ うなことで終わってしまうこともあるかと思います。  ただ、いろいろな考え方、いろいろな人がいるというのをまず理解することから、じ ゃ、どうしていったらいいのかということが始まってきますので、まずその出発点では あると言えると思います。 (スライド)  リスクコミュニケーションを難しくしているものの中に幾つかの要因がございます。 一つはリスクの認知ギャップというものと、それから食品の安全性についての思いこみ というものがあって、リスク自体が概念的なものですので、科学的にその物が持ってい る実際のリスクと、それを伝え聞いたときに人々が感じるリスク、認知リスクという言 い方がされているんですが、その間には実際に差が出てきてしまいます。この認知リス クというのは、それぞれ人々によって、個人個人でまた認知が変わってきますので、非 常に危ないと思う人もいれば、一方ではそれほどではないと考える人、いろいろな人が いるということかと思います。  それぞれについてもう少し細かく説明をさせていただきます。  リスクの認知ギャップについてなんですが、実際のリスクよりも大きく感じられるも のと、それから実際あるリスクよりも小さく感じがちなものというこの二通りのものが あって、やはり未知のもの、よくわからないものとか情報が少ないもの、こういうもの とか理解できないものなんかについて、本来のリスクよりはそれを恐ろしいと考えがち だという傾向があることがわかっています。また、自分でコントロールできないものと いうのもこちらに入ります。  一方で、実際のリスクよりも小さく感じがちなものとしては、まさに物についての便 利さとか利益というものが自分で明らかに実感できるもの、それから自分でコントロー ルできるものというのは、それは自分が気をつけていれば、ひょっとしたら避けられる のではないかということで、本来持っているリスクよりも小さく感じられると言われて おります。 (スライド)  やはり農薬とか遺伝子組換え食品みたいなものは新しいものだったりとか、理解でき なかったりするので、そういう意味ではこちらの実際のリスクよりもちょっと大きく感 じられがちな傾向もありますし、こちらのケースでいうと、ちょっと例えとしてあまり よくないのかもしれないんですが、自動車とかそういうもので実際に年間七、八千人の 方が亡くなられているわけですけれども、皆さんふだんそういうものを利用している中 で、それほどリスクがあるとは感じられていらっしゃらないんじゃないかと思います。 (スライド)  あと、もう一つ食品の安全性についての思いこみの部分ですが、やはり自然由来のも のというのは安全というイメージがあって、合成化学品は危険だというイメージがある んですけれども、本来安全かどうかというのは、きちんと動物なり何なりで試験をして みて、生体に対に対する影響というものがどういうものなのかというのを確認して初め て実は判断できるものなので、自然だから必ず安全とか、合成品だから必ず危険という ことではないんです。ただ、一般に何となく自然のほうが安全のようなイメージがあっ て、どうしてもそうなってしまうと。実は自然由来でもキノコの毒とかふぐの毒とか、 最近、添加物の中でもアカネ色素というものの発がん性が明らかになって使用を禁止さ れましたけれども、自然由来だからといって必ず安全だということはありません。  それから、先ほども少しお話しましたが、有害なものというのがほんの少しでも入っ ていたら危険とどうして思ってしまいがちですが、実はある程度の量以下であれば、人 の健康には影響しないという量があるわけでございます。  それから、よく賞味期限を1日でも過ぎていると危険と思われがちですけれども、実 際はある賞味期限の零時零分零秒を境に、安全なものが急に危険になるということでは なくて、食品の変化というのは経時変化的に起きています。通常、賞味期限というのは、 メーカーさんのほうでも、ある想定される保存のための方法なんかをきちんと踏まえた 上で、何日もつのかという科学的な根拠に基づいて、例えば3日までもつものであれば、 とりあえず3日とか4日とかもつというものを確認した上で、多分2日ぐらいの賞味期 限を設定されておられるかと思いますので、1秒でも過ぎたらすぐ危険になってしまう というものではないと思います。  ただ、行政の立場として、賞味期限の切れたものを売りましょうとか、食べましょう とは言えませんが、科学的には1秒過ぎたら危険ということではなく、ただ、そういう ふうに一般的に思われているということが実際あるかと思います。  以上でございます。  それで、今日の意見交換会の目的につきましては、皆様にお配りした資料の中に縦の 1枚紙のカラー刷りで「意見交換会に参加いただいた皆様へ」というものがあると思い ます。特にこの場で申し上げたいのは、本日のこの意見交換会の目的ですけれども、こ の場で何かを皆さんと合意して決めようというものではございませんで、テーマとなっ ております輸入食品の安全対策の現状とか、それから農薬のポジティブリスト制度につ いて、関係者の間でまず理解を深めましょうということ。それから、いろいろな立場の 方から意見を出していただいて、その方たちとの意見交換、意見を聞くということを通 じて、この問題についての認識を深めていくことを目的としておりますので、どうかよ ろしくお願いいたします。  リスクコミュニケーションについては以上でございます。ありがとうございました。 【広瀬補佐】  続きまして、「輸入食品の安全確保について」のお話に入らせていた だきます。話が長くなってしまいましたので、少し急いでいきたいと思います。 (スライド)  まず、先進国の総合的な食糧自給率でございますが、このようにイギリスとかドイツ とかフランスについては、昭和45年と平成14年で比べると、このように自給率は少 しずつ伸びているんですが、日本では逆に減っていて、今は40%ぐらい。逆に言うと、 6割を輸入に依存しているという状況があります。 (スライド)  こうした中で、輸入食品の届け出の件数というのは、このように非常に伸びているわ けでございます。重量自体は比較的なだらかに伸びているんですが、件数が非常に急激 に伸びていて、要するに1届け出当たりのサイズが小さくなっているということ、少量 多品種ということになるんだと思うんですが、当然、種類が増え、件数が増えてくれば、 それに必要な検査というのも増えてくるということがあるわけでございます。 (スライド)  食品等の輸入の状況でございますが、やはり農産品とか農産加工食品とかというのが 大部分を占めていて、あとは水産食品なんか、あとおもちゃとか、そういったものが少 しずつあるということでございます。 (スライド)  輸入食品の安全確保の基本的な考え方なんですが、国の内外における食品供給行程の 各段階において適切な措置を講じることにより行うと。先ほどもお話ししましたように、 生産から消費に至るまでの各段階での安全管理というのがやっぱり重要なので、そうい う考え方に基づいて食品供給行程、ちょっと難しい言葉を使っておりますけれども、そ れぞれの段階ごとにきちんとした管理を行っていくことが重要だということでございま す。  特に輸入食品について言えば、まず輸出国における対策、要するにここがいいかげん で、水際できちんととめればいいというのではなくて、やはりここからきちんとやって いく必要があるということでございます。  この3つの段階があって、1つは輸出国における対策と、ここがかなりなポイントに なってくるんですが、水際、輸入時での対策、検査などになります。それから、実際に 国内に流通した後でも、これは国内流通時での対策ということで、この輸入時の水際対 策というのは国の検疫所において行っておりますが、国内流通時での対策というのは各 都道府県とか地方公共団体のほうで適宜、国内流通品の安全管理と一緒に行っていただ いているということがございます。 (スライド)  これは輸入時に特に重点的に監視指導を実施すべき項目として挙げておりますが、輸 入届け出時において法違反の有無をチェックする。物が合法的なものかどうかというこ とをやるわけでございます。それから、輸入者への指導ですとか、輸入時の検査の実施、 海外情報等に基づく緊急対応ということで、この海外情報というのは、我々としても別 途、集めていたりとか、検査のときにどんな違反があったとか、そういう過去に得られ ている情報などを総合的に判断して対応していくということがあるわけでございます。 (スライド)  検疫所の配置状況ですが、輸入届け出窓口としては全国に31の検疫所がこのように 分かれています。それで、特に6検疫所、この二重丸のところは検査課というものが一 緒についていると。それから、高度な検査をするものについては、輸入食品・検疫検査 センターというものがありまして、これは神戸と横浜と2カ所にあります。ですから、 ほかの検疫所のところでは、そういう高度な検査が必要なものについては、収去してき たものをこちらのセンターのほうに送って、分析するということになっております。監 視員は300名ぐらいいるということになっています。 (スライド)  今もちょっとお話しましたが、検疫所の食品衛生監視員の年度推移ですけれども、平 成元年のときは89名でした。輸入食品の件数が非常に増えているということもあり、 小さな政府を目指すというのが政府全体の方向ではありますが、そういう厳しい折でも、 こういう安全管理のための人員というのは、わずかですけれども、増えているというこ とがございます。平成元年に比べれば3倍ぐらいの数にはなっています。 (スライド)  食品を輸入する際には、必ず検疫所で届け出というものをしていただくわけですが、 この届け出が必要なものとしては、どういう食品かということとか、それから添加物と か器具、容器包装、乳幼児を対象とするおもちゃもこの届け出が必要なものと位置づけ られております。 (スライド)  具体的な届け出事項としましては、例えば輸入した人の氏名、住所とか、それがどの くらいの数量でどのくらいの重さがあるのかとか、その食品に使用されている添加物は どんなものがありますかとか、加工食品の原材料がどんなものか、製造とか加工の方法 がどうだとか、また、食品衛生法の規格基準に適合しているのかどうかというようなこ とを届け出いただくことになっております。  また、食品の種類によって必要になってくる書類というのがありまして、食肉とか食 肉製品については、輸出国政府の機関の衛生証明書というものが必要になっています。 また、フグについては、輸出国公的機関の衛生証明書というのが必要になってくるとい うことがございます。 (スライド)  次は、輸入者への指導という観点からお話をさせていただきます。  輸入者への実質的な衛生管理の実施に関する指導ということで、これは食品安全基本 法の中に、そもそも営業者というのは食品の安全衛生の確保について、第一義的な責任 を有するということになっています。したがって、事業者においてまずきちんと安全を 確保していただくというのが大前提であります。そのために、輸入前の相談ということ で事業者の方から、例えば検疫所の窓口に今度こういうものを輸入するんだけれどもと いうことであらかじめ相談いただくとか、その際に、例えば自主検査をしてくださいと いうようなことをお願いしたりとか、実際に輸入業者の方が扱っている物についての記 録の保存などをきちんとやっていただくというようなことをお願いしているわけでござ います。 (スライド)  これも衛生管理の実施に関する指導でございますけれども、基本的な指導事項という のがあるわけなんですが、特に初めて輸入する食品の場合とか、それから過去に違反事 例があるような食品については、特にお願いをしているということ。それから、輸入前 の指導によって違反が発見された場合には、改善の指導とか輸入の見合わせなんかをし ていただくということがございます。  あと、先ほどお話ししたような自主検査とか記録の保存とかということもありますし、 もう一つの取り組みとしては、輸入者とか通関業者、倉庫業者の方に、食品衛生のそも そもの知識について普及啓発を行っているというようなことがあります。 (スライド)  こちらのほうに対する基本的な指導事項ということで整理させていただいております が、これが輸入時における危害要因、あとは事前の確認事項とか定期的確認事項とか、 いろいろ場合を分けてやっています。それから、食品一般に関するもの、それから農産 物、加工品に関するもの、畜産物、加工品に関するものと、それぞれ状況がやはり違い ますので、項目を分けてやっているということでございます。 (スライド)  次に、輸入時の検査の実施ということについてお話をします。  輸入時における検査制度ですが、一つはモニタリング検査というものがあります。こ れは年間計画に基づいてやっておりまして、平成17年度の実績では7万7,000件 の検査をしていると。このモニタリング検査というのは、荷物の流れ自体はとめずに、 国の予算の中でやっていて、検査結果が出なくても輸入は可能です。その場合、ただ検 査の過程で違反が見つかってくれば、さかのぼって回収をしたりとか、そういう措置を とることになります。  もう一つ、命令検査というのがありまして、これは違反の蓋然性が高いもの、食品衛 生法違反とか不適格の可能性が高い食品等について、これは輸入業者の方に命令という 形で検査をしていただくというものでございます。こちらのほうは、業者のほうで費用 負担をしていただくということと、それから試験の結果が判明するまでは物は動かせな いで、とめおいていただくことになります。  あとは自主検査、これは先ほどもちょっと出てきましたけれども、検査命令とかモニ タリングとは別に、いろいろ自主検査をお願いしている部分のものがあります。 (スライド)  輸入時の検査体制の概要なんですけれども、こちらのほうが違反としての蓋然性は低 いもの、それから高いもの、それぞれについて、だんだん段階というものがあります。 まず通常の物というのはモニタリング指導検査等、そういうものとか、自主検査などを お願いしているものというのがあるわけなんですが、その中で、例えば違反が見つかっ てきたりすると、モニタリングの強化というのがまず1段階あります。さらに違反が見 つかってくれば、この検査命令、要するにここまでは物は動かしながら検査をすること になりますが、ここは、検査の結果が出るまでは、もう物を動かすことはできないとい う措置です。  平成16年度の実績ということになるんだと思いますけれども、179万件の届け出 に対して、検査命令のところまで合わせた数字で19万件の検査が行われております。 さらに、ここで違反品が続出するなど違反の蓋然性が高いような物については、これは 一々検査をするのではなくて、包括的にその国からその特定の品目に対しての輸入を禁 止してしまうという措置がとれるようになっております。 (スライド)  ここからは実際の検査に至るまでの行程を写真で示したものでございますが、このよ うに検疫所の職員が輸入者の倉庫のところに出かけていって、サンプリング、採取をし てくるわけでございます。こちらのほうは柑橘の一種ですけれども、採取しているとこ ろ。こちらは、多分豆なのか穀類なのか、粒状のものを袋から採取しているところです。 こちらは見づらいかもしれないんですけれども、ハンマーとのみでカンカンとやってい ますが、多分冷凍の肉とか魚とか、そういったものを採取しているところです。これも 一つの箱を恣意的に集めてくるのではなくて、要するにどういうやり方で物を採取して くるかというきちんと定められた方法がございますので、そういう方法に従って、ある 特定の物に偏らないように、いろいろばらついたところからきちんとサンプリングをし て集めてくるということになります。 (スライド)  次に、検体の受付になりますが、先ほどご説明いたしましたように、高度な食品の検 査というものは横浜と神戸でいたしますので、そういうところにサンプルを送るために、 このような箱で、しかも温度計をつけて温度管理の記録などもとっております。特に細 菌性のものなんかであれば、輸送中の温度管理がきちんとできていないと、運んでいる 段階で細菌が増えてしまうということがありますので、そうすると、もともとの食品が 汚染されていたのか、運び方が悪くて汚染されてしまったのかが判断できなくなります から、そういうことがないように、運ぶ過程でもきちんと管理をしていくということで す。  こちらのほうは検体の受付でございますけれども、このようにいろいろな物が送られ てきて、受付処理をすると。 (スライド)  次に、理化学検査の流れですけれども、実はこうやって送られてきた食品をいきなり こういう機械の中に入れて、すぐにデータが出ればあまり手間はかからないのですが、 農薬とか動物用医薬品とか飼料添加物とか、そういう化学物質であるとか、そういうも のをきちんとはかるためには、まず来た食品をきちんと細かくして、溶媒で抽出をして、 それをさらに濃縮したりとか、さらにきちんときれいに検査のために妨害になるような 物質を取り除いて、初めて機器検査ができるということでございます。  実は、ここまでの、きれいにして機械に打ち込むサンプルをつくるまでに相当な手間 がかかります。この機械にかけてからは、データは機械がどんどん出してくれますので、 比較的すぐにできるわけなんですが、ここのところに相当な人手がかかっているという ことでございます。 (スライド)  次に、もう少し具体的にそれぞれのものについての説明です。  先ほど検査命令という言葉がたびたび出てきたかと思いますが、この検査命令の発動 要件ですけれども、健康被害の発生とか、健康被害の発生するおそれがある物、こうい った物については、何か違反が見つかった場合には、これは直ちに検査命令になります。 どういうものかというと、同一の製造者または加工業者からの同一の輸入食品というも のに対して、これは物についてきちんと検査をして結果を出してオーケーだったら輸入 できますという仕組みになります。  ただ、そのほかに残留農薬とか動物用医薬品については、これは1回見つかったらす ぐ検査命令ということでなくて、1回目に違反が見つかったら、モニタリング率のアッ プ、どのくらいの確率でモニタリングをするか、何件に1件かというのを、もう少し網 を細かくして検査をします。さらにまた違反が見つかるようであれば、やはり違反の蓋 然性が高いということで、ここでは検査命令の違反になります。  検査命令の解除される要件というのは、例えば輸出国において再発防止策ができると か、違反食品が輸出されることがないということが確認されれば、初めて検査命令とい うのは解除されることになります。 (スライド)  例えばどんな物が検査命令になっていたかというものですけれども、ここにある品目 名、フグについては例えば魚種を鑑別しなさいとか、すじこについては亜硝酸銀のたぐ いがどうだとか、落花生とかその加工品とか、この辺はアフラトキシンというのが多い んですけれども、こういうナッツ類のところにはカビの一つでありますものが生えやす くて、それによってアフラトキシンという毒性物質がまじることがございますので、そ ういったものを検査していただくということがございます。その他、シアン化合物とか、 そのようなものもいろいろあるということでございます。 (スライド)  実際の届け出、検査、違反状況についてですけれども、こちらは平成16年度4月か ら9月までの実績で、届け出件数が88万4,000件ぐらいですか、それに対してこ のうちの大体1割強だと思いますけれども、9万件ぐらいを検査していて、そのうちの 違反件数というのは484件、割合は0.05%とかということでございます。昨年の 4月から9月分までについての値ですけれども、大体似たような割合になっているとい うことがございます。 (スライド)  どんな違反事例が多いかということなんですが、ここに構成比で68.8%とありま すけれども、やはり規格基準に違反している食品が多く出ております。例えば農薬とか 添加物だとか、それから冷凍食品の微生物の基準違反だとかというのが多いということ でございます。あとは、指定外添加物のものとか、それから有毒・有害物質等がまじっ ていたもの。これもこういうナッツ類のところとかにアフラトキシンなんかが多かった りとか、魚で有毒のものがまじっていたりとか、そういうものなんかがあるというもの が多いという状況です。 (スライド)  次は海外情報に基づく緊急対応という事例について紹介をさせていただきます。  海外における食品安全情報については、我々もいろいろなチャンネルで情報を収集し ておりまして、一つは在外の日本大使館からの情報、もう一つは国立医薬品食品衛生研 究所に安全情報部というところがありますので、ここがいろいろ諸外国の論文とか衛生 情報を集めて分析しております。それから、食品安全委員会事務局の中にも情報・緊急 時対応課というところがありまして、ここでも海外情報などを積極的に集めているとい うことがございます。  こういうところで何か問題のある事例がわかったとき、そういう問題の食品というの が我が国に輸入されている場合には、直ちに実際に流通しているのかというようなこと を調べて、もし必要があれば回収とか輸入時の検査をしたりすることになるわけです。 具体的には、米国産アーモンドとか中国産はるさめで、例えば検査命令をかけたりとい うことが、情報に基づいて行われていたます。 (スライド)  次に、安全確保の基本的な考え方の輸出国における対策の部分を少しお話ししたいと 思います。  輸出国における衛生対策の推進ということでは、JICA等が実施する海外途上国の 食品衛生担当者の研修というのがありますので、こういったものをやっていたりとか、 検査命令が実施されている輸入食品等について、その輸出国政府に対して原因究明とか 再発防止策の確立を要請したりとか、それから現地調査を行ったりとか二国間協議、こ ういうことをして、いろいろ輸出国における衛生対策というのを推進していくというこ と。特に生産段階での必要な場合については、専門家を派遣したりということも行って います。 (スライド)  いろいろ行った強化の事例ですけれども、このようなものがございます。ちょっと時 間の関係もございますので、ご紹介だけさせていただければと思います。 (スライド)  次に、国内流通時での対策の部分についてお話をします。  冒頭に申しましたように、輸出国における衛生対策、それから輸入時の検査、国内の 検査となっておりますが、いろいろ検疫所の検査を経て国内に入った物については、各 都道府県とかの監視指導結果に基づいて、国内品とともに収去検査されていきます。こ こが消費者に行く前の段階での最後のとりでみたいなものになるわけですが、そこで違 反品というものが見つかってくれば、当然この情報がフィードバックされて、それぞれ 輸入時の検査に反映されたりとか、場合によって、先ほどの二国間協議とか現地調査と いう手段に発展していくわけでございます。 (スライド)  違反が判明した場合の対応ですけれども、違反品がもう国内に流通してしまった場合 には、関係の都道府県とかと連携して回収をしたりするようなことがあります。  先ほどもちょっとお話ししましたが、県の段階で違反が見つかったということであれ ば、その情報に基づいて輸入時の検査を強化したりということもあるということです。 それから、違反のあった輸入業者に対する措置ですけれども、これは原因究明の調査を してくださいとか、再発防止の対策を立ててくださいとか、また、同じ製品を再度輸入 する場合には、例えばサンプル品の検査とか、そういうことがちゃんと改善されている かどうかということでの確認をしたりとか。あと、あまりにも違反を繰り返す輸入者に 対しては、これは営業の禁・停止がかけられるという法のスキームもあります。 (スライド)  それから、輸入食品の違反情報については、これはホームページの中に随時公開して おります。これは厚生労働省のホームページのトップページから食品という分野別の情 報の中を開いていただくと、食品安全情報というページがあります。ここの中にいろい ろ緊急的な情報ですとか、この下に随時更新情報みたいなものがありまして、例えばこ ういう食品で今度検査命令になりましたとかという情報は随時提供させていただいてお ります。 (スライド)  あと、こちらの輸入食品監視業務ホームページのところも、この分野別施策というの がこの下のところに幾つか枠がありまして、その中に輸入食品のページがあって、これ をクリックしていただくと、先ほどのこのページが出てきます。この中にも、さらに詳 細にいろいろ輸入食品の違反情報であるとか、そういうものも提供させていただいてお ります。 (スライド)  あと一つ、海外情報のところを先ほどお話しさせていただきましたけれども、これは 国立医薬品食品衛生研究所の中で食品に関する情報というページを安全情報部でつくっ ていただいております。この中のトピックスの下のところ、ちょっと見えづらいかもし れないんですけれども、いろいろ諸外国の、各国の農薬の基準とか動物用医薬品の基準 とか、そういったものとか、残留モニタリング報告書なんかのリンク集というのをこの 辺に張っておりますので、海外情報を調べたいというときにはご活用いただければと思 っています。  以上で輸入食品のほうの説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございま した。 【司会】  どうもありがとうございました。  それでは、ここで5分間の休憩を設けさせていただきたいと思います。お時間になり ましたら席に戻っていただくようお願いいたしますが、議事次第のほうでは14時5分 という時間になっておりましたが、5分間でご休憩をお願いしたいと思いますので、1 時55分ごろより次のテーマをお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ( 休  憩 ) 【司会】  それでは、食品に関するリスクコミュニケーションを再開させていただき たいと思います。  本日の2つ目のテーマでございます「残留農薬等のポジティブリスト制度の導入につ いて」につきまして、約45分間程度で厚生労働省食品安全部基準審査課の伏見課長に お願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。 【伏見食品安全部基準審査課長】  それでは、次のお話をさせていただきます。お疲 れのところ恐縮ですが、もう一つこのポジティブリスト制度につきまして、お聞きいた だければと思います。  私は今ご紹介のありましたように、厚生労働省の医薬食品局食品安全部の基準審査課 の伏見と申します。ポジティブリスト制度の基準づくりのこれまでの作業を担当してき た課の人間でございます。本日はポジティブリスト制度の概要につきまして、限られた 時間でございますけれども、簡単に説明させていただきたいと思います。 (スライド)  ポジティブリスト制度というのは、また後でその説明は出てまいりますけれども、食 品中に残留する農薬の規制のあり方を大幅に変更するということなんですが、ポジティ ブリスト制度そのもののご説明をさせていただく前に、今、現行の制度で農薬がどう規 制されていて、どういう考え方で食品中の残留が規制されているかというようなところ から入らせていただきたいと思っております。  それで、資料はパワーポイントをプリントした資料が資料3としてございます。それ から、もう一つポジティブリスト制度のもう少し詳し目の話が別途参考資料としても入 っておりますので、これはまたお時間のあるときにお目通しいただければと思います。 今日のお話は主にこの資料3のほうを中心にさせていただきたいと思っております。  ここの図に出ておりますのは、我が国で使用されている農薬に限っての場合でござい ますけれども、農薬の場合は、農薬取締法というのがございまして、そこで登録されて いなければ農薬としては使用できないというふうになっておるわけでございます。  この農薬登録のためにどういうことが行われるか。ここは農林水産省さんが中心にや っておられる部分でございますけれども、実はいろいろな動物を使った毒性試験、それ からその農薬が動物あるいは植物の体内で分解するかどうか、あるいは分解した後どう いうものに変わっていくかということ、あるいはそれが土壌に出た場合にどうなってい くかという環境への影響、それから農作物にどの程度残留するのかという農作物残留試 験でございますが、特に毒性試験も長期の小動物を使った実験ですけれども、慢性毒性 試験なんかも含めてやっていただいて、それを提出していただくということになってお ります。  これらを含めて農薬登録の時点で評価をされて、農薬といっても食用作物に残留する 可能性がある農薬の場合でございますけれども、農薬の登録がなされているということ です。したがいまして、農薬として使用されているものに関しては、もちろんこういっ た安全性の確認がなされておるわけでございます。 (スライド)  今までは農薬として使用される場合の安全対策ということなんですけれども、農薬が 食べ物に、要するに農作物に使われる、あるいは例えば動物用医薬品が動物に使われて、 それが食肉となるようなケースも同じ考え方でございますけれども、食品に残留する場 合に、今度はここから厚生労働省がどういう規制をかけておるかという話でございます。 (スライド)  食品の安全確保のための残留農薬規制の仕組みということです。農薬を農作物に使い ますと、どうしてもある程度残留する、全くゼロにするということは非常に難しいわけ でございます。そういうことで、厚生労働省として食品中に残留する農薬、農作物が食 品となったときに残留している農薬をどう規制していくかということをこれからご説明 させていただきますけれども、基本的な考え方として、毎日の食事を通じて摂取する、 食品を経由して摂取する農薬の量がADIを超えないようにするというのが基本的な考 え方でございます。 (スライド)  ADIという言葉、これはいろいろなところで、特に食品の安全対策というところで はよく出てくる言葉だと思いますけれども、英語でAcceptable Daily Intakeとい うことで、日本語では許容1日摂取量、あるいは1日許容摂取量ということもございま すけれども、ある物質について、人が生涯その物質を毎日摂取し続けたとしても、健康 に対する有害な影響があらわれないと考えられる1日当たりの摂取量ということでござ います。これは、実は動物実験から導き出される数字なんでありますけれども、動物に 一生涯この農薬をかなりの量を摂取させて、そこから健康に影響が出ない量というのを 導き出すわけです。その次のスライドでそこは説明させていただきますけれども。  ただ、1日当たりの摂取量といっても人によって、大人もいれば子供もおられますし、 太った方もおられるわけで、そこで1日当たりの摂取量というのも、要するに1人当た りというのではなくて、体重1キロあたりの量で示す。だから、通常ミリグラム/キロ /dayといった形で示すことが普通でございます。 (スライド)  このADIというのはどうやって決められるかというのが次のスライドでございます。 さっきADIは動物実験に基づいて導き出すと申し上げましたけれども、ここにありま すように、この動物実験もGLPに従って作成された安全性試験のデータに基づいて、 食品安全委員会が評価するとございます。このGLPというのは何かといいますと、安 全性試験の適正実施に関する基準ということでございますけれども、これは農薬もそう ですし、例えば医薬品の承認のときのいろいろなデータもそうなんですが、以前データ の捏造という問題もありまして、データの信頼性を担保するために一つの基準がつくら れております。それをGLPというわけでございますけれども、具体的には、例えばこ ういった動物実験を行う施設の組織体制でありますとか、そういった施設の文書管理の 規定を、SOPをしっかりつくれでありますとか、あるいはそういった実験施設の中の 組織体制、例えば品質管理の専門の担当者を置くようにするとか、そういった動物実験 を実施する組織のソフトとか、あるいはハードについて規定したルールでございます。  これをGLPと言っておるわけでございますけれども、まずこれに従って作成された データということで、一定水準以上の信頼性があるということでございますが、そのデ ータに基づきまして、下にありますように、急性毒性、慢性毒性、発がん性、催奇形性、 繁殖などの各種安全性試験を実施しまして、急性毒性というのは比較的短期ですけれど も、慢性毒性というのは通常2年間、ラットなりマウスを使ってやります。発がん性も 大体その程度やります。それから、催奇形性というのは、妊娠中の動物に投与して、そ の生まれてくる子供に影響があるかどうかということを見るわけでございますけれども、 そういった試験をやるわけです。  そういった試験をしますと、それぞれ試験によってここまでの量だと悪影響が出ない、 ここから上だと悪影響が出るといった無毒性量というのが決まるわけでございますけれ ども、このいろいろな毒性試験の中で、無毒性量の一番小さな値を選び出します。それ が動物における無毒性量ということで、その値以下であれば動物に対しても悪影響は出 ないという数字でございますけれども、それをもとに人間のADIを決めるわけでござ いますが、もちろん動物から人間へ単純に当てはめるわけには当然いかないので、要す るにそこにあります安全係数というのを掛けるわけです。通常は人から動物へ、動物か ら人へ当てはめるわけですので、ここで安全係数10を掛けて、それから、人間でも子 供、感受性の高い方とそうでない方がいらっしゃいますし、いろいろな個体差がござい ますので、そういった個体差も係数として10を掛ける。通常10掛ける10で100 を掛けるわけです。100を掛けるというか、100で割るといいますか、動物の無毒 性量が例えば10ミリグラム/キログラムというのであれば、それを100で割るわけ ですから、0.1ミリグラム/キログラムというのが人での無毒性量といいますか、A DIということになるわけでございます。 (スライド)  これは人でも動物でもよろしいんですけれども、なかなか人では実験ができないので、 通常は化学物質の生体影響の実験というのは動物でやるわけでございますけれども、こ ちらが化学物質を暴露させる量をどんどん増やしていくわけです。そうすると、いろい ろな影響がありますけれども、生体影響が出るか出ないかということでございます。  さっき言いましたように、通常はこの暴露量が増えると、ある程度になると動物は死 んでしまう致死量があるわけですけれども、そこへ至る反応のカーブというのは、実は こういった正比例の関係じゃなくて、最初はある程度の量の化学物質を投与しても生体 側の反応は出ないと言われております。あるところから反応が起こって、こういうS字 曲線を描くんだと言われております。  先ほど申し上げました動物実験で無毒性量というのは、実はこの生体影響が出ないぎ りぎりのところということですから、ここが無毒性量になるわけです。それで、ADI というのは、実はそれの100分の1ということで、このグラフを見ると100分の1 には見えないんですけれども、実際は100分の1ということで、この辺の感じかもし れませんが、100分の1ということでございます。  食品中の残留農薬の管理、規制の考え方としては、食品中に使われる残留農薬の量、 あるいは食品を経由して摂取する農薬の量というのをこのADIよりも下のレベルに維 持しようというのが基本的な考え方でございます。 (スライド)  残留農薬基準とはということで、農産物ごとに許容できる農薬の残留量ということで ございます。例えば同じ農薬を使いましても、作物のいろいろな状態、形状もあります し、表面の状態もaありますけれども、作物によって残留しやすい作物とそうでない作 物がございます。そういったことで、同じ農薬でも作物ごとに残留する程度というのは 違いますので、そういったことも考慮して、農産物ごとに許容できる農薬の残留量とい うのを決めております。 (スライド)  残留農薬基準の決め方ということでございますけれども、実は先ほどのような形で、 ある農薬に関してADIが決められるわけでございますが、ADIが決まった後、次は 日本人が平均的に食べる1日当たりの農作物中に含まれる残留農薬を推定し、その合計 がADIを下回るように決定するということです。この日本人が平均的に食べる1日当 たりの農作物というデータが必要なわけでございますけれども、実は、ここは昔から厚 生労働省が国民栄養調査という調査をずっとやっておりまして、日本人平均あるいは日 本人の中で高齢者、子供さん、妊婦の方といういろいろな集団ごとに、野菜ならこうい った種類の野菜、お肉ならこういった種類の肉類を1日当たり大体平均して何グラムず つ食べるかというデータを毎年つくっております。  ある農薬が、例えば野菜だとニンジンと大根とお茶にしか使われないということであ ると、日本人がニンジンと大根とお茶を1日どれくらいずつとるかというデータはわか るわけですから、それぞれの作物ごとに残留する程度を決めまして、ニンジン、大根、 お茶のそれぞれの残留量の合計がADI以下になるように決定するということでござい ます。  ただ、ADI以下になるようにということですけれども、農薬といっても、作物から だけ来ることもありますが、理論的な可能性としては、例えば水とか環境中から体内に 取り込まれる可能性もありますので、そういったものが最大20%ぐらいはあり得るだ ろうということで、食品から摂取される農薬の量というのを、ADI以下と先ほど言い ましたけれども、ADIの80%以下におさめるように基準値を設定するとしておりま す。これが残留基準値の決め方でございます。 (スライド)  それで、先ほど申し上げるのを忘れましたけれども、ADIはどうやって決めるか。 ADIを決めるというところは、先ほど広瀬のほうからリスク分析というところで、リ スク評価というのは食品安全委員会がやると申し上げましたけれども、平成15年から 食品安全委員会という組織ができまして、ADIの評価、ここはまさに科学的データに 基づいて評価を行うわけでございますので、リスク評価という部分でございますけれど も、そこは食品安全委員会がされます。 (スライド)  その食品安全委員会がリスク評価をされてADIが決まりますと、それを受けまして、 ここの残留農薬基準の決め方でございますけれども、厚生労働省がこういった基準を決 める。この部分、リスク管理とも言っておりますけれども、そういうことで、リスクを 評価する部分と、その評価に基づいて対策をとる部分、要するに基準値を決める作業と いうのは、役所の中では今、分離されております。 (スライド)  今までの話をまとめますと、動物による毒性実験をして無毒性量が決まって、それに 安全係数を掛けてADIが決まります。ここまでは食品安全委員会さんがやっていただ く。そのあたりに、1日当たりの摂取量、国民栄養調査の結果、それから農産物中に大 体どれくらい農薬が残留するかというデータがありますので、それとそれとを合わせて、 農作物ごと、食品ごとの残留農薬基準を厚生労働省がつくります。  厚生労働省がここをつくるときに、こういった基準に適合するように農薬の使い方の ほうを、個々の作物の残留というのは農薬の使い方と密接にかかわりますので、こうい った農薬の食品中の残留基準が守られるような農薬の使用基準というのを実は農林水産 省のほうでつくっていただくことになります。ですから、逆に言いますと、この農薬の 使用基準を遵守してつくられた作物であれば、原則として残留基準に適合している、残 留基準を著しくオーバーするようなものは出てこないだろうと考えられます。 (スライド)  次でございますけれども、農薬の使用基準を守っていただくと、食品中の農薬の残留 基準はまず超えることはない。これは超えないということで、そういった食品を通常に 消費している食生活を行っている限りは、実は残留農薬がADIを超えることはないと いうことでございまして、こちらは生産現場の話ですし、こちらは食卓の話ですけれど も、こういうふうに実は密接にリンクしている、関連しているということになるわけで ございます。 (スライド)  ADIを超えないとしているわけですけれども、実態としてどの程度農薬が残ってお るのかということでございますけれども、下にマーケットバスケット方式による残留農 薬摂取量推計というのがございます。これも厚生労働省が平成3年度から実施しており まして、マーケットバスケットというのは買い物かごという意味でございますので、実 際に食品を買ってきて、通常に食べるのと同じように調理をしたものの中にどれだけ農 薬が残っているかというのを調べる調査でございます。今までは農薬の種類があまり多 くはない、21農薬程度ですけれども、平成13年、14年と調査をしてきておりまし て、この年は若干高めの数字が出ておりますが、それでもADIとの割合でいうとこの 程度であると。低いときで0.04%ぐらいだということで、ADIを下回るようにと 申し上げていますけれども、かなり下の方で推移しているということがうかがえると思 います。  この資料が平成13・14年で、ちょっと作業がおくれておりますけれども、15年 度も間もなく公にできると思っております。 (スライド)  次の加工食品中の残留農薬検査結果ということでございますけれども、フライドポテ ト、発泡酒、ビールとか、あるいは乾燥野菜、いろいろな加工食品がございまして、こ の中で残留農薬がどの程度残っておるかという検査をして、加工食品を幾つか毎年選び まして検査をしておりまして、そうしますと、総検体数のうちの0.2%でこの程度、 0.02から2.1ppm程度、その次の年だと若干数字が違いますけれども、こうい った形で検出されております。 (スライド)  それから、農薬の残留の実態ということで、次の資料でございますけれども、残留農 薬検査結果、これは主に都道府県あるいは保健所を置いておられる保健所設置市、ある いは東京都の特別区のようなところもございますが、そういったところで毎年調査をし ていただいております。検査をしていただいておりますけれども、それを集計したもの でございまして、大体40万から50万検体をはかって、農薬が検出されたものが0. 5から0.6%。その中で基準を超えているのは、さらにもうワンオーダー低い0.0 3%とか0.01%、こんな感じです。  したがいまして、もちろん若干基準を超えているものがなくはないんですけれども、 総じて言えば、ADIを下回るような残留基準を設定して、それをいろいろな関係者が 遵守していただいているという状況がうかがえると思います。 (スライド)  それで、実態としてそうなんですけれども、さらに気になる方もいらっしゃいますの で、残留農薬を減らす方法というこういったスライドもございます。一般に調理・加工 をしていただきますと、その過程で農薬はさらに減っていくということが知られており ます。  今までが現状の農薬の規制あるいは残留基準値の設定の考え方でございます。 (スライド)  ちょっと前置きというか、今まで長くなりましたけれども、これからポジティブリス ト制度のお話をさせていただきたいと思います。 (スライド)  まず、言葉ですけれども、ポジティブリスト制度ということでございますが、ポジテ ィブリストの反対はネガティブリストでございますけれども、原則規制がない状態で、 要するに規制をするものだけをリスト化するものをネガティブリストといいます。今の 食品中の残留農薬というのはまさにそういう状態で、残留基準値が設けられた農薬につ いてだけ規制がかかって、実はそれ以外の農薬には規制がかからないという状態になっ ています。  (2)のポジティブリストというのはその逆で、原則禁止ということです。だから、使っ てもよろしいものだけ、使用を許可したものだけをリスト化するということで、これは、 例えば食品の分野でいいますと、食品添加物がこういった考え方で今、動いております。 食品添加物は今、厚生労働大臣が指定したものにしか使えないという格好になっており ます。 (スライド)  これがポジとネガの話ですけれども、残留農薬のポジティブリスト制度とはどういう ことかということでございますが、基準が設定されていない農薬が一定量を超えて残留 する食品の販売を原則禁止する制度ということになります。そこに食品衛生法の一部を 改正する法律とありまして、平成15年5月30日公布ということになっています。こ の辺の法律の該当する部分の文章というのは、さっき申し上げました参考資料のほうに 載っておりますので、またお目通しいただければと思いますけれども。  さっき言いましたように、ポジティブリストというのは原則禁止ということですので、 使っていいものだけリスト化するということなので、今度は使っていいものの基準を設 定するわけです。だから、基準が設定されていない農薬等を原則禁止するわけですから、 一定量も何も基準が設定されていない農薬が残留する食品は認められないというのがほ んとうの原則なんですけれども、ただ、実は農薬の場合はいろいろな環境中といいます か、水とか空気を経由するとか、あるいは非意図的にどうしても微量混入する場合があ り得るということもありますし、ほんとうのゼロというのはなかなか難しいわけでござ いまして、そういったことで、一定量を超えて残留するという一定量を決めることにな るわけですけれども、一定量を超えて残留する食品の販売を原則禁止するという形にし ております。 (スライド)  どういった経緯でポジティブリスト制度を導入することになったかということでござ いますけれども、これはさっき言いましたように、要するに現行制度ですと、残留基準 が設定されていない農薬というのは、実は食品衛生法の規制がかからないわけでござい まして、そういった状態を改めるべきだというご意見が以前からございまして、特に平 成7年に食品衛生法を改正したことがございますけれども、そのときに参議院、衆議院、 それぞれで附帯決議というのをいただきまして、残留農薬のポジティブリスト制度の導 入を検討することというご意見をいただいておるわけでございます。  その後、ここには書いてございませんけれども、ここ数年の間に食品をめぐるいろい ろな大きな出来事もありましたけれども、特に食品の安全に関する国民の皆さんのご関 心が非常に高くなったということもありますし、特にポジティブリスト制度に関しては、 消費者団体の方を中心に1,000万人を超える署名を集められまして、ポジティブリ スト制度を導入すべきだというご意見が非常に大きなものになったということがござい ます。  そういったことも受けまして、平成15年5月30日の食品衛生法の改正のときに、 ポジティブリスト制度の規定が導入されたわけでございます。第11条第3項というの で、さっき言いました参考資料のほうにこの文書は載っておりますけれども、これは3 年以内に施行ということになっております。平成15年5月30日から3年以内という ことですので、おしりを切られておりますけれども、今年の5月29日までに施行しな いといけないということになっております。 (スライド)  そういうことで、平成15年5月に公布されまして、およそ2年半かかりましてポジ ティブリスト制度の告示案、いろいろな基準でありますとか、いろいろな制度の整備を 行ってきたわけでございます。これに当たりましては、薬食審というのがありますが、 これは厚生労働大臣の諮問機関で薬事食品衛生審議会といいますけれども、関係分野の 専門家を集めている会議でございます。そこで中心的に議論を行っていただいておりま して、途中、一次案、二次案、最終案というのをその都度公開いたしまして、意見募集 とありますけれども、実は日本国内のみならず海外からもご意見の募集をしております。 そういったことを踏まえて最終案を公表して、さらにWTO通報ということで、新たな 規制をつくるわけですので、国際貿易のルールの上で海外にも通報しないといけないと いうことがございます。そんな手続をずっとやってまいりました。最終的に11月29 日に関係の告示を出したということです。  その間、これは厚生労働省の話を中心に今はしましたけれども、食品安全委員会でも 平成17年4月と、それから11月にご審議をいただいております。そんなことで、い ろいろな方面のご意見も反映させた形で告示までたどり着けたのではないかなと考えて おります。 (スライド)  今度は中身に入ってまいりますけれども、規制の対象はということでございます。残 留農薬のポジティブリスト制度という言い方をいたしますけれども、実は残留農薬だけ ではなくて、動物用医薬品、例えばそれは食肉中に残留する場合がございますので、動 物用医薬品、それから飼料添加物、動物の飼料に添加するものでございます。これも動 物の食肉とかに残ることがございます。こういったものを食品中に残留する化学物質と いいますか、同じようなものとみなして規制をかけるということでございます。それか ら、対象食品でございますけれども、加工食品を含むすべての食品が対象になります。  現行の制度ですと、実は基準が設けられている農薬の数も限られていますけれども、 基準が置かれている農薬でも、例えばさっきのニンジンと大根とお茶だけに残留基準が 置かれていますと、そのほかの作物に関してはその農薬の残留規制というのはないわけ でございますが、今後ポジティブリスト制度になりますと、実はそういうすべての食品 に何らかの規制がかかるということになります。 (スライド)  いつから施行されるかということで、5月29日からということでございます。さっ き言いましたように、法律が平成15年5月にできて、3年以内に施行しないといけな いということで、この時期になったわけであります。5月29日施行ということになっ ております。 (スライド)  今まで申し上げたことをもう1回図にまとめておりますけれども、これは現行の規制 ということでございまして、実は今の食品衛生法ですと、250の農薬と33の動物用 医薬品に関して残留基準を置いております。この残留基準を超えて農薬等が残留する食 品は販売できないということになっておりますけれども、世界中にはおおよそ800ぐ らいの農薬が使われていると言われておりまして、先ほどの話にもありましたように、 ものすごい量の食品が輸入されているわけでございまして。だから、ここに基準が置か れていない農薬が使われた食品が入ってきていることは十分考えられるわけです。  それから、国内でも登録されている化学物質としての農薬が350程度ありますけれ ども、それらすべてのものに関しても実は食品中の基準がないということでございます。 こういった残留基準が置かれていない農薬が結構あるわけでございますけれども、そう いったものに対しては、農薬が残留していても実は規制がかからないという状態になっ ておるわけです。これが現状です。 (スライド)  ポジティブリスト制度になるとどうなるかというと、まずさっき言いましたように、 要するにまず基準が置かれます。基準が置かれていない農薬に関しては原則禁止になる わけですけれども、さっき言いましたように、なかなかゼロというのは難しいので、一 定量を超えて残留する場合には原則禁止するということで、これが周りに全部かかるわ けです。実はこちらに制度の対象外のものということがありまして、少々残留しても人 体への影響は考えられないと思われるものということで、例外物質が65ございますけ れども、これは例外ということで、基本的に基準が置かれたものとそうでないものとい うことで、基準が置かれたものはその基準の範囲内で使えますけれども、そうでないも のは一定量を超えると直ちに販売禁止の対象になるということでございます。 (スライド)  11月29日に厚生労働省告示ということで、3本告示が出ております。ちょっと告 示の名称は法令用語ですので、読みづらいかと思いますので、ここはスキップいたしま す。 (スライド)  先ほど言いましたように、人の健康を損なうおそれのない量として一定量を超えて農 薬等が残留する食品というのは、食品衛生法で原則流通を認めないとしているわけでご ざいますけれども、その一定量というのをどれくらいにするかということで、一律基準 とも言っていますけれども、0.01ppmと決めさせていただいております。どうし て0.01ppmかということなんですけれども、詳しいことは参考資料のほうの3ペ ージ目ぐらいに数字がございますけれども、およそどのような化学物質であっても、こ れは例えばアメリカのFDAとか、あるいはJECFAという国際的な農薬とか添加物 の毒性評価をする組織がございますが、そういったところで、先ほどのADIですけれ ども、1日許容量として1人当たり1.5マイクログラムを超えなければ、およそどの ような化学物質であっても安全性を担保できるんじゃないかという考え方がございます。 その1.5マイクログラムという数字から日本人の食品の摂取量等を勘案いたしますと、 大体0.01ppmの残留量を置けばその1.5マイクログラムを下回るという考え方 でございます。  ちょっと詳しいことははしょりますけれども、この辺の考え方は厚生労働省のホーム ページの資料なんかをごらんいただければ、もう少し詳し目に説明させていただいてお ります。これが一律基準0.01ppmということでございます。 (スライド)  これがやや厳しいんじゃないかというご意見もあろうかと承知しておりますけれども、 実はポジティブリスト制度は海外でも置かれておりまして、それぞれ一律基準があるわ けでございますが、EUは今年から施行されておりまして、0.01ppmということ になっております。それから、ドイツはEUに吸収されたわけですけれども、以前から 0.01ppmということ。アメリカも幅がありますけれども、ものによっては0.0 1という形で置いておる。それから、ニュージーランド、カナダというのは、以前は0. 1と置いていたわけですけれども、厳しい方向に見直すというふうに承知しております。 したがいまして、0.01というのは、国際的にもポジティブリストの一律基準として は、そういった方向に動いているのではないかなと考えております。 (スライド)  それから、規制対象とならないもの、いわゆる対象外物質ということでございますけ れども、農薬の中には、例えばオレイン酸とかレシチンとか、アスタキサンチンとか重 曹とか、農薬とか飼料添加物、こういったものがございます。ご案内のように、レシチ ンは大豆からとられているものですし、アスタキサンチンというのはカニの甲羅とかの 色素でございます。重曹というのは重曹そのものでございますので、こういったものは 農薬として使われて、たとえ作物中に一定量残留したとしても、人の健康を損なうおそ れはないと考えられるということで、制度の対象外としております。 (スライド)  それで、さっき言いました基準値を定めたわけでございますけれども、前半でお話し 申し上げましたように、食品中の残留農薬の基準を設けるに当たりましては、各農薬に ついて毒性試験をして、ADIを決めて、そのADIを上回らないように残留基準を決 めるというお話をしましたけれども、暫定基準と書きましたが、ポジティブリストの場 合は、さっき言いましたように、3年間で基準をつくらないといけないということがご ざいます。しかも、結果的に758の物質について基準を置いたわけでございますけれ ども、そのために、先ほど言いました毒性評価とかをきちっと、そういった手続を踏ま ずに、いわゆる暫定基準という形で今、置いております。  この暫定基準というのは、そもそも決していいかげんな基準という意味ではなくて、 時間的な余裕がないので暫定的に置いているという意味でございますけれども、これは どうしてかというと、ポジティブリスト制度を施行するに当たりまして、さっき言いま した基準値が置いてないものは0.01が適用されるわけです。そうすると、日本は6 0%を世界から輸入しているわけですけれども、その大部分が場合によってはストップ してしまうことも起こり得るということで、制度の円滑な施行という観点からも何か基 準を置かないといけない。それから、国民の健康保護でございますけれども、かといっ て、あんまりいいかげんな基準を置くわけにもいかないわけですので、国際機関であり ますとか、海外できちっと検討されて基準が置かれている国々の残留基準を参考にして、 それで科学的な根拠に基づいていると考えられるような基準を置くことにしております。 そういったことで、暫定基準というのを置いたわけでございます。 (スライド)  少し戻っていただきますと、さっき見ていただいた図でございますけれども、ここが 暫定基準の部分ですね。暫定基準があって、それから現行の基準がありますけれども、 要するに基準が置かれているもの、これが最終的に700以上の物質について基準が置 かれることになっております。 (スライド)  その七百幾つの物質について暫定基準というのを置いたわけでございます。 (スライド)  さっき言いましたように、暫定基準を置くに当たりましては、いろいろな外国の基準 を参考にさせていただいておりますけれども、国際コーデックスという食品に関する国 際機関、国連の専門機関が共同でつくった組織でございますけれども、コーデックスの 基準でありますとか、農薬取締法に基づく登録保留基準でありますとか、あるいはここ に書いてございますように、科学的な考え方で、日本と同じような考え方で残留農薬基 準をつくっている国々の基準といったものを参考に基準を置いております。これを暫定 基準と言っております。 (スライド)  暫定基準の設定の考え方ですけれども、国内基準があるものはそれを使って、国内基 準がないものに関してはコーデックス基準があるかどうか。コーデックス基準がある場 合は基本的にコーデックス基準を優先する。コーデックス基準がない場合は、国内の農 薬登録の基準を使う。そうでない場合は個々の諸外国の基準を使う。こんな基本的な考 え方で基準を作成してまいりました。 (スライド)  暫定基準ですけれども、例えばある農薬に関して、小麦の場合ですとコーデックスの 基準から引っ張ってきて0.5、ミカンの場合ですと現行の農薬取締法の基準を引っ張 ってきて0.1、牛だとコーデックス、それから牛の乳だと海外参照国、例えばアメリ カの基準を参考に0.02と置いた。そういった海外の基準も何もないようなものに関 しては、逆に言うと、これは世界的にも使用されている実態がないということですので、 一律基準0.01が置かれるということになります。大ざっぱに言いますと、こんな感 じでポジティブリストをつくっております。暫定基準をつくらせていただいております。 (スライド)  それから、あと加工食品でございますけれども、今回、コーデックスの中で加工食品 の基準が幾つか置かれておりますので、そういったものを使って暫定基準をつくってお ります。ただ、加工食品というのはほんとうに多様でございますので、暫定基準が設定 されていないほうがむしろ多いわけでございますけれども、そういったものは、残留基 準に適合した原材料を用いて製造または加工されたものは原則として販売を可能とする。 要するに適法とみなすということでございます。加工食品そのものの残留基準はないけ れども、加工食品に使っている原料がそれぞれ残留基準に適合しているものであれば、 最終的な加工製品も法律に適合しているとみなしますということです。  加工食品の場合は、例えば濃縮とかをされますから、もちろん判断するに当たりまし ては、乾燥等の加工を行った食品の監視指導では、水分含量をもとに試算した値により 原材料での違反の蓋然性を推定するなど、そういった判断の手順がございますけれども、 基本的には適合した原材料を使っておられる加工食品は適合するということでございま す。 (スライド)  そういうことで、最終的に5月29日から799の農薬について残留基準値が設定さ れるということになります。逆に言うと、この799以外の農薬に関しては一律基準が 適用されるということです。世界的に見て799以外のものというのはほとんど考えに くいとは思いますので、そんなに大きな混乱が起こることはないと思いますけれども、 ただ、基準値の数はこういった形で大きく増えることになります。 (スライド)  それで、施行後ですけれども、世界的に農薬といっても、ある国で現在使われていて もだんだん使われなくなる可能性もありますし、現在ある国で置かれていますから、今 回、暫定基準に引っ張ってきたところがありますけれども、そういった海外の状況とい うものも刻々と変わってきますでしょうから、そこは、海外で基準化をもうしなくなっ たりすればこちらの暫定基準も見直すとか、そういった定期的な見直し、5年ごとと書 いていますが、5年といわず定期的に、頻繁にやっていきたいと思っております。  それから、さっき言いましたように、通常の安全性評価を踏まえた形で基準値を設け ておりませんので、七百幾つ以上の物質があるわけでございますけれども、施行後は食 品安全委員会で順次リスク評価を、ADIの設定を行っていただいて、暫定基準の見直 しというのを行っていきたいと考えております。 (スライド)  それから、あと、最後は駆け足になりますけれども、799の化合物に関して基準値 ができるわけでございまして、それを分析する分析法の開発というのも重要なことでご ざいます。これにつきましても、平成15年度から、ここに出ておりますような厚生労 働省の研究所を中心に、いろいろな施設のご協力をいただいて開発をしてまいっており ます。可能な限り一斉分析法を開発するということでやってきております。 (スライド)  残念ながら、実はまだすべての化合物に関して、厚生労働省として分析法が整備され ているわけではございませんけれども、現在529、六十数%について分析法をお示し できております。これにつきましては、施行までにももう少し上乗せできると思います し、施行後もできるだけ早くやっていきたいと考えております。  大分、駆け足になりまして、必ずしもうまく説明できたとは思わないんですけれども、 お話の中で時々触れましたが、参考資料というのが別添でございますので、それもあわ せてごらんいただければと思いますし、先ほど輸入食品の最後のところで、厚生労働省 のホームページの紹介がございましたけれども、実はポジティブリスト制度につきまし ても、ホームページの中で少しセクションを設けまして、関連の情報を集約して提供さ せていただいておりますので、そちらのほうもごらんいただきまして、参考にしていた だければと思います。  ちょっと長くなりましたけれども、説明を終わらせていただきます。ありがとうござ いました。 【司会】  どうもありがとうございました。  それでは、議事のパネルディスカッション及び意見交換に入ります前に、ここで10 分程度の休憩の時間を設けさせていただきたいと思います。パネルディスカッション及 び意見交換は15時から開始したいと思います。  それでは、その時間までに席のほうにお戻りいただきますよう、よろしくお願い申し 上げます。 意見交換 【司会】  それでは、時間となりましたので、これからパネルディスカッション及び 意見交換会のほうを始めさせていただきたいと思います。  パネルディスカッション、意見交換につきましては、厚生労働省食品安全部企画情報 課の広瀬誠課長補佐にコーディネーターをお願いして、議事進行をお願いいたします。 それでは、よろしくお願いいたします。 【広瀬補佐】  ご紹介いただきました広瀬と申します。引き続きコーディネーターと して議事進行をさせていただきます。  今まで皆様のほうでお聞きいただいたのは前半の説明の部分になりますので、これか らが今日の意見交換会の本番の部分ということになります。前半の説明というのは国の 取り組みについて一方的にご紹介をしている中身ですので、中身自体も非常にかた苦し いところもあって、ずっと長い間聞いていただいた中では、ちょっと困難というか、退 屈をされた方がいらっしゃるかもしれませんが、これから意見交換をしていきますので、 よろしくお願いいたします。  それでは、まず前段に並んでいただいた方の、パネラーの紹介をさせていただきます。  まず、壇上の、皆様のほうから向かって右から4番目の方、鹿児島県食生活改善推進 員連絡協議会副会長の田淵信江様でございます。よろしくお願いします。  そのお隣が、生活協同組合コープかごしま商品支援本部統括の松薗孝夫様でございま す。よろしくお願いします。  そのお隣が、農林水産省消費・安全局消費者情報官の引地和明さんでございます。  そのお隣が、内閣府食品安全委員会事務局勧告広報課の専門官の芦原嘉宏さんでござ います。  また、中央のほうからになりますが、鹿児島県保健福祉部生活衛生課食品衛生専門監 の遠矢光孝様でございます。  私のお隣が、先ほどプレゼンをさせていただきました、厚生労働省食品安全部基準審 査課の伏見環課長でございます。  以上のメンバーでパネルを進めさせていただきます。  パネルディスカッション、意見交換の進め方について、最初にご案内させていただき ます。今後の意見交換については、テーマごとに議論を進めていきたいと思います。今 日は輸入食品の安全対策、それから残留農薬等、いわゆる動物用医薬品とか飼料添加物 も含めてなんですが、ポジティブリスト制度という二つのテーマがございますので、そ れを一つ一つしていきたいと思います。また、時間があれば、最後のところで食品安全 全般についてという時間を設けたいと思っています。そのところでは、特に今日のテー マに限らず、何かお聞きしたいこととか、自由に意見交換を行うという時間を設けたい と思います。  それでは、まず輸入食品の安全対策のほうから始めます。  まず輸入食品の安全対策について、前半の説明のところでは、安全確保のために現在 どのようなことが行われているのかということを紹介させていただきました。これをも って何か安全を強要しているということでなくて、これは国がどういう取り組みをして いるかということを、まず皆さんにご理解いただくという趣旨でございます。  それを聞いた個々の方々が、それで輸入食品が安全だと思えない、それから安心でき なという方もいらっしゃるかと思います。そういうことを解消していくためには、どう していったらいいのかというようなことを意見交換していきたいと思います。  せっかく皆さん、会場にいらしているので聞いてみたいと思うんですが、輸入食品っ て危ないと思われている方は、今、会場にいらしている方はどのくらいいらっしゃるん でしょうか。手を挙げていただければと思いますけれども。結構いらっしゃいますね。 もうちょっと経費があれば、ほんとうは数える人をきちんと配置して、正確な数を申し 上げるんですが、まあ、そこそこの方がいらっしゃると。  では、別に輸入食品ってそんなに危なくないというか、まあ、安心できるという方、 もしくは今日の説明を聞いて多少安心できたという方も含めて、安心できると思われた 方はちょっと手を挙げていただければと思いますこちらのほうはぱらぱらといった感じ ですね。どうもありがとうございました。  会場の方の印象としてはこんな感じなんですけれども、まずパネラーの方に、輸入食 品の安全対策はどうあるべきなのかとか、少し消費者代表の方、それから生協の方は消 費者の立場と、あと事業者の立場と両方あるかと思いますけれども、お二方からお願い してみたいと思います。  まず、田淵さん、いかがでしょうか。 【田淵氏】  ご紹介いただきました田淵でございます。  私は消費者団体の一員として、また鹿児島県食生活改善推進員といたしまして、日ご ろから地域住民の皆様方と、「私たちの健康は私たちの手で」ということをスローガン といたしまして、「食生活指針」、また「食事バランスガイド」などを使用しながら、健 康づくりの活動に取り組んでおります。  日常生活はもちろん、講習会などでも調理実習の機会が数多くございますので、常に 安心・安全を第一に考えながら食材の購入をいたしております。鹿児島県は農産物が豊 富にございますので、地産地消ということも考え、また、産地表示を見ながら、県内産、 その次は国内産を選んでおりますけれども、季節的にどうしてもこのお野菜が欲しいな と思うとき、食材が欲しいなと思うとき外国産に頼らざるを得ない場合が多々ございま す。そのときは、安心なのだろうかなと思いながら、一抹の不安を感じながらも、講習 会等で使う場合は、やはり購入しなきゃと思って購入しておりますけれども、まず、輸 入食品につきまして、私が日ごろそうして疑問に思っておりますことを幾つか、ちょう ど厚生労働省の方も見えていらっしゃいますので、質問をさせていただきたいと思いま す。  まず、実際に食品が輸入されるときは、どのくらいの期間を経て日本に届き、また、 輸送の段階での衛生及び品質管理はどのようにされているのでしょうか。さらに、日本 に到着した際の検疫所における検査、そして私たちの手元、スーパーとかお店、店頭に 並ぶまでの間の管理はどのようになっているのでしょうか。具体的に教えていただきた い。これが第1番目の質問でございます。  それから、先ほど申し上げましたように、私はほんとうに表示を見ながら、皆さんそ うなのですけれども、極力県内産、国内産にこだわりながら購入していても、外食をす る場合、どうしてもメニューに原産地表示がございません。それで、選ぶことができな いまま食事をいたしておりますけれども、レストランなどのメニューに原産地の表示を 義務づけるということはできないものですかということを常に考えながら。そして、私 たちはレストランに毎日行くわけではございませんけれども、日常的に外食をされてい らっしゃる方々は、健康に不安はないのか、そういう面に不安はないのかなとちょっと 心配しているのでございますが。  今のところはそれだけでございます。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  それでは、松薗さんからもお願いいたします。 【松薗氏】  コープかごしまの松薗といいます。私は、先ほどありましたように、消 費者の立場と、それと小売販売の立場からの問題意識ということで話をさせていただき ます。  若干、生活協同組合コープかごしまも宣伝をしないといけませんので、私どもは現在 23万4,000人の県内の消費者、組合員で組織している生協でございますけれども、 やはり平和でよりよい暮らしづくりを実現していくということを基本にいろいろな取り 組み行っていますが、その中でも、今日のテーマ、食に関する取り組みについては、消 費者が自主的にさまざまな取り組みを行っているということで、特に輸入食品の問題で すとか、今回のポジティブリスト制度の導入に対応する問題ですとか、そのあたりを含 めて日ごろからいろいろ学習、取り組みを進めているという組織でございます。  そういういろいろなところで消費者、私どもの組合員のところの意見ですとか、要望 ですとかというのは当然、直接聞いておりますので、それも反映した形で少し意見を述 べたいと思います。  特に輸入食品の安全問題について先ほど説明がありましたけれども、冒頭に食糧自給 率のグラフを見て紹介があったと思います。要は6割を輸入に頼っていますよというの があったかと思います。その後でリスクの話があったかと思いますけれども、私自身は、 最大のリスクは食糧自給率が低いということだと思います。そういう意味では、国内の 農畜水産物を含めて自給率をやっぱり上げていくことが、最大のリスクを回避するもの だということでとらえております。それが第1点目の感想です。  それと、問題意識といいますか、この間も厚生労働省を含めて要望等をかなり以前か ら出していますけれども、最大のポイントはやっぱり輸入検疫の問題をかなり深刻にと らえております。というのは、先ほどの説明でもありましたけれども、現在31カ所の 検疫所を設けておりますが、今回のポジティブリスト制の導入に対応できるということ であれば、当然、残留農薬ですとか、抗生物質ですとか、このあたりの検査がどれだけ できるかということなんです。そうなると、先ほどの説明にあったように、横浜、神戸、 この2カ所しかその機能がないということになっていまして、監視員も300人という ことなので、基本的には書類審査が中心ということです。  特に輸入食品の場合には、書類審査で通った後の流通段階では、既に販売がされてい るわけですね。検査をして実際に判明したときには、もう流通は終わっているというの も結構多いわけです。そういう意味では、この水際のところをいかに体制強化して流通 させるかということを基本の課題として、厚生労働省のところは手だてをぜひ打ってい ただきたいと。これは従来からの要望になりますけれども、特に今回のポジティブリス ト制の導入に当たっては、そのあたりをぜひ強めていっていただきたいと思っておりま す。要望になりますけれども、それが1点です。  それともう1点は、今回の説明の中で、当然、輸入食品の仕組みですとか、これはま た後のテーマになりますけれども、後でありましたポジティブリストの問題も、要は制 度ですとか仕組みそのものはやっぱりあるわけですよね。それがどう運用されるかが問 題だと思っております。  その中で、特に現在いろいろ問題が発生しているBSEの問題も一緒だろうと思いま す。12月12日輸入再開をされておりますけれども、現在、再輸入停止という状況に 置かれております。これも実は輸出プログラムということを遵守した場合にという条件 で輸入再開になっているかと思いますけれども、実際は輸出プログラムそのものがうま く運用できていないという事実が当然あって、それによって背骨が入っていた、除去が 不十分だと。そういうのが混入したらいけないという状況認識が輸出施設、工場のほう の理解も不十分だということで、そういう意味では、輸入食品ですとか、制度そのもの の組み立てはあるんだけれども、それをきちっと運用する、実際に仕組みを日常的に管 理しながら進めるというあたりが少し不十分ではないかと思っておりますので、そのあ たりも、できたらもう少し具体的にいろいろな場で、学習なりを含めて消費者のほうに 理解を求めるということが必要じゃないかなと思います。  以上、とりあえず2点、ちょっと問題提起みたいになりましたけれども、よろしくお 願いします。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  それで、お二方から幾つか意見をいただいた中で、まず、田淵さんから輸入されるま でにどのくらいの期間があるのか、輸送時に品質をどう管理しているのかという話があ りましたけれども、これは物によって、また交通手段によって違ってくるわけですが、 例えば船便とかで穀物とか、また柑橘類なんかを大量に運んでくる場合、これは多分1 週間、2週間という期間がかかると思いますし、また、飛行機とかで肉や魚を運んでく る例なんかもありますが、その場合には多分1日とか2日で着くんだと思います。  当然、鮮度というのはある程度保っていかないといけないので、先ほど私どもの説明 の中でサンプリングをしているところの写真がありましたけれども、魚であれば凍って いたりとか冷凍で来るとか、そのような鮮度管理というのはきちんとされて来ていると 思います。ただ、柑橘類なんかを運ぶときには、当然、輸送中の傷みを少なくするとか ということもあって、防かび剤なんかを使っているということも聞いております。  それから、到着時の検疫所の検査については、ちょっと先ほどのスライドの中でいろ いろお示しさせていただきましたので、31カ所の検疫所の中で検査をしているという ことでございます。松薗様からのお話にもありましたけれども、書類審査というものが 中心になりますが、一応、横浜と神戸のところで農薬とか動物用医薬品は検査をしてい まして、それ以外の検査機関では検査できないということではなくて、一応ほかの検疫 所からは物をサンプリングして、横浜、神戸に送るというという体制になっていますの で、ほかのところでも書類審査だけではないということはちょっとつけ加えさせていた だきたいと思います。  そういう意味では、横浜、神戸の検査体制というのも強化していかなければいけない のかなとは思っています。この辺は、今日、監視安全課から山本さんが来ていますので、 後で少し説明をしていただきたいと思います。  あと、スーパーに並ぶまでのところなんですが、これは検疫を過ぎてからの部分もあ りますので、鹿児島県さん、いかがでしょうか。流通での、要するに国内に入ってから の食品衛生監視という観点でちょっとお答えいただければと思います。 【遠矢鹿児島県保健福祉部生活衛生課食品衛生専門監】  鹿児島県の保健福祉部の遠 矢と申します。  輸入食品については、先ほどスライド等で説明がありましたように、検疫所において 監視とか検査、そういう水際で不良食品の排除という措置がなされているわけですけれ ども、国内流通段階における対策というのは、鹿児島県では、輸入または国産の区別な く県内で流通する食品について、食品衛生法上の違反の食品が流通しないように、食品 関係施設に対する監視指導もしくは食品の検査を実施して、違反品が発見された場合に は、営業者に対して廃棄もしくは回収命令等の危害除去の措置を行っているところです。  具体的には、鹿児島県では食品の製造、流通などの状況とか、過去の違反食品の発生 状況、そして検疫所での輸入食品の違反状況等を参考にさせていただきながら、毎年、 食品衛生監視計画というものをつくりまして、それに基づいて監視指導をやっているわ けです。ちなみに、平成16年度におきましては、食品の検査については、1,863 検体の食品について、残留農薬とか動物用医薬品、食品添加物など1万3,300項目 の検査を実施してまいりました。そのうち輸入食品に当たる部分は76検体でありまし て、項目数では1体3,300項目ぐらいの検査をいたしました。  その結果、県内で製造されたお菓子に添加物の表示基準の違反が1件と、あと漬物で 添加物の表示がないものが2件ありました。それ以外に、監視指導とか他県からの通報 などによる違反食品というものが合わせて12件ございます。内容は異物混入とか不適 正な表示というものです。これについては、改善指導をして改善されているわけです。 一方、輸入食品については、違反となるようなものはございませんでした。  以上が本県の輸入食品を含む食品の安全対策の大まかな内容でございます。これから も国と連携して、輸入食品の安全対策というのには万全を期していきたいと考えており ます。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  それから、レストランなどのメニューでなるべく原産地表示をというお話もありまし たので、農林水産省の引地さんのほうから補足いただければと思います。 【引地農林水産省消費・安全局消費者情報官】  レストランなどの、いわゆる外食で の食材の原産地表示というお話だと思うんですけれども、ご案内のとおり、今レストラ ン等の外食での原産地表示は、昨年の7月からレストラン事業者が自主的に原産地表示 を行うという制度に、仕組みに変わりまして、業界のガイドラインという形で今、実施 されています。そういうことで、田淵さんがおっしゃったように、これは義務化されて おりません。  実際どんな感じで表示されているんだということで、ごらんになったことがあるかと 思うんですが、ステーキですと牛肉が主な食材でございますけれども、例えば牛肉は国 産を使用していますとか、あるいはランチタイムならば豪州産ですとかという原産地を 表示している例でございます。  これはなぜ義務化できないのかということですが、ご案内のとおり外食産業というの はホテルのレストランから大型レストラン、中華料理屋さんからラーメン屋さんまでた くさんのお店があるわけです。何万というお店があるので、一気にこれを制度化、義務 化とするのは事実上非常に難しいということと、制度化するということは、違反した場 合は、その外食産業の人は当然、罰則が科せられるわけでございます。JAS法に違反 しますと1年以下の懲役または100万円以下の罰金、法人の場合は1億円以下の罰金 となります。  そうしますと、一気にそういう罰金を科すまでの制度というまでにはなかなか持って いけないということで、今、農水省としては、このガイドラインをなるべく多くの事業 者の方に取り入れていただいて、表示していただきたいということで指導はしておりま すが、今後そういった普及の状況なり国民のニーズ、あるいは原産地表示ですから、原 料調達のいろいろな実際面での難しさというのがあるわけですね。日々原料調達の国が 変わることもあり得るわけですから、そういった実態で対応し得るのかどうかというこ とをよく踏まえてから、この義務化の問題については考えていかなくてはいけないと考 えております。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  それでは、先ほど松薗さんから質問をいただいた中の1点目で、ポジティブリストな んかの対応を踏まえて検疫の水際の体制の強化、このあたりの要望がありましたけれど も、山本さんのほうから説明いただきたいと思います。 【山本係長】  監視安全課の山本でございます。  輸入食品のほうの話の検査のことにつきまして、少しだけお話しさせていただきたい と思いますが、輸入食品につきましては、毎年度輸入食品の監視指導計画というものを 策定しておりまして、その計画に基づきまして食品に対する検査等をするということで ございます。輸入食品でございますので、検疫所での検査体制でありますとか、それ以 外にも登録検査機関というところがございまして、そこでも食品に対する基準でありま すとか、規格に関する検査ができるような体制をとっているところでございます。この ような機関につきましても、活用していこうと考えているところでございます。  それで、ポジティブリスト制度の導入があってということでございますけれども、そ れにつきましては、輸入食品の監視指導計画案の中におきましても、ポジティブリスト 制度の導入を踏まえまして、輸入時の検査項目の拡充を図るということとさせていただ いております。農薬等の生産段階での残留防止対策の確認のためには、必要に応じての 輸出国における調査を行うこと等もその中に盛り込まれているところでございます。こ のような形で輸入食品に対するポジティブリスト制度導入後の監視安全対策として取り 組んでいく予定でございます。  以上でございます。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  あと、それから2点目のほうで、制度とか仕組みの運用、これがやはり問題だと、特 にBSEの例を挙げてご意見をいただきましたけれども、今回、BSEの問題、アメリ カからの輸入された肉の中で、輸出証明プログラムに沿っていないというものが日本に 来てしまったということでございます。これについては、日本側も通常の検査体制より は検査を強化して、通常であれば何ロットかに一つを抽出して検査しているところ、当 面の強化策ということで全ロット、といっても全箱ではないんですが、各ロットごとに きちんと検査をしていくという体制を組んでいた中で、今回、農林水産省さんの動物検 疫所のほうで発見されたということでございます。  第一義的にはアメリカ側のきちんと輸出するという手続の中で、それがアメリカ側の 言っていたとおりにならなかったということでございまして、先週の金曜日だったかと 思いますけれども、正式にアメリカのほうから報告書が届いております。英文で約47 0ページぐらいの分厚いもので、実はその中身については、現在、詳細に把握をさせて いただいているという段階でございます。それを踏まえまして、これから対策を立てて いくことになりますので、現時点でどうするかというのはまだ明らかにはなっておりま せんが、こういうことが二度と起きないようにということで、対策に取り組んでいきた いと考えております。  あと、あまり言うと弁解がましくなるんですけれども、牛の骨の関係で若干誤解があ るみたいなので、少しつけ加えさせていただきたいと思いますが、今回なぜ問題だった かというと、脊柱の部分が入っていたというのが問題で、例えばあばら骨とか、いわゆ る足の骨とか、そういう部分であったならば、それは問題とはならなかったということ です。それはなぜかというと、脊柱のところに脊髄とか、それから背根神経節というの が入っていて、いわゆる神経組織系のものが、いわゆるプリオンに汚染される可能性が 高いということで、そういう汚染される可能性のあるものがついていたからということ で、今回、問題になったわけでございます。誤解がないようにしていただきたいのは、 脊柱がついていたからといって、その肉が実は必ず汚染されているということではなく て、背根神経節というのは脊柱の中に、何か骨の空洞の中に、骨から外に神経が伸びて いく過程の途中のところにちょっと膨らみのようなものがあって、そこが危険だと言わ れているので、ほんとうは脊柱をきちんと取ることができれば、肉自体が汚染されてい るということではありませんので、その辺はちょっと正確な理解をいただければと思い ます。ほんとうは脊柱の図をお示しして、ここが背根神経節ですとか、説明できればも うちょっとわかりやすかったのかもしれないんですが、ちょっと図を用意していません ので、そこは口頭だけにさせていただければと思います。  それでは、一応一通り対応させていただきましたので、まだ幾つかお話があるという ことでしたので、田淵さんのほうから、どうぞ。 【田淵氏】  私もアメリカ産の牛肉、BSE問題を取り上げておりましたけれども、 今ご説明いただきまして、その理由、脊柱のことなどもお話を伺いました。しかし、ま たマスメディアなどの情報では、何かアメリカから圧力で再開が急がれるのではないか ということもお聞きしておりますし、国会でも議論されているやに聞いておりますが、 今後どのようになっていくのだろうかと。そして、再開された後の安全をしっかり確保 していただきたいということを申し上げたいと思います。 【広瀬補佐】  わかりました。  松薗さんは何か追加とかございますか。 【松薗氏】  先ほど言った、今、関心が一番強いのは、田淵さんも言いましたけれど も、やっぱりBSEの問題で、先ほどの脊柱の問題は当然そういう理解なんですけれど も、要は輸出プログラム、先ほど言いましたが、仕組みとして、こういう条件でこうい う確認がとれたということを前提に輸入を、要するに認めますということなんですけれ ども、そのことが実態としては、安全を守るシステムそのものがうまく機能していない という事実。それと、今回、判明したのは、先ほど説明があったみたいに、要するに輸 入の強化月間ということで、3月末日までは全ロット検査と国のほうで決めているので、 それをやったことによってそういう問題が発見できたということになっているかと思い ます。  ただ、これが、当然そういう輸入再開に基づいて、月間から外れた場合に、部分のモ ニタリング検査を含めてやったときに、ほんとうにシステムがうまく回っているかどう かという、ちょっとしつこくなりますけれども、プロセスアプローチをきちっとどうと らえるかというところが、当然リスク管理者としてやっぱり責任を果たさないといけな い部分になってくるかと思うんですけれども、そのあたりが少し明確でないということ と。  先ほど約500ページぐらいの向こうからの報告を今、精査中だというふうになって いるみたいですけれども、輸入再開のときもそうだったんですが、要はこういう政策決 定事項のときに、輸入再開の段階では今日のようなリスクコミュニケーションそのもの がなかったと思うんですよね。これに対しては生協のほうとしても抗議文を出して、基 本的にそういう輸入再開という国の政策決定であれば、国民に対してきちっと理解を図 る、そういう意味ではリスクコミュニケーションをきちっとやってくださいということ が非常に大事になってくるので、今後そういう最終的に輸入再開ということであれば、 必然的に今日のようなリスクコミュニケーションをきちっと開いていただいて、消費者 の理解を前提に輸入再開ということで、ぜひお願いをしたいと思います。 【広瀬補佐】  わかりました。  再開に当たってどういう対策をとるかというのは、まさにこれから検討していくこと になりますので、リスクコミュニケーションをやるべきだという意見もいろいろなとこ ろから出されております。そういうことも含めて、国として検討していくことになると 思います。ただ、明確な今後の方向性をお示しするまでにはもう少し時間がかかるかと 思いますので、ちょっと不安なところはあるかもしれませんが、現実、アメリカからの 輸入自体はとまっておりますので、少しお待ちいただければというところでございます。  当初、強化月間という形で全ロット検査をしてきたわけですけれども、やはり新しく 仕組みが始まったので、それが動いているかを確認するためにも、当面はきちんと強化 したものが必要だということから、多分始められていたのではないかと私としては考え ております。  それでは、ほかに輸入食品の関係でパネラーの方、何か特にご意見がありますでしょ うか。よろしければ、会場の方からも意見を伺ってみたいと思います。  それでは、まず会場の方から意見を伺うに当たりまして、実は今回この意見交換会に 参加いただく前に、お申し込みの際に事前に意見とか質問のある方については提出いた だいております。それにつきましては、本日の資料4という縦の形で「事前質問・意見 一覧」というもので、左側に質問者と質問の内容があって右側に回答ということで、国 としての一応の回答をさせていただいております。項目も多いので、これのすべてをこ の場でご紹介するということは控えさせていただきたいと思います。この紙をもって回 答にかえさせていただければと思います。  ただ、自分で質問された方で、この回答を読んでいただいて、ここがもう少しわから ないとか、ちょっと趣旨が違うとか、もう少し聞きたいという方がいらっしゃれば、会 場からの意見を聞く際にお手を挙げていただければと思います。  それでは、意見、質問をいただく際に、会場の方へのお願いですけれども、手を挙げ ていただいた方を私のほうで指名させていただきます。ご発言いただく際に、係の者が マイクを持って伺いますので、差し支えなければお名前とご所属等を述べていただいて から発言をお願いします。  それで、やはり多くの方から意見をいただきたいと思っておりますので、大変申しわ けないんですが、ご質問、ご意見とも一人1回当たり2分以内でお願いしております。 これはほかの場所で意見交換したときの事例ですけれども、一人の方がかなり長く話さ れて、ほかの人がもっと意見を言いたかったのに時間がとれなかったという事例もござ いましたので、そういうことのないようにということで、2分と非常に短い時間で申し わけありませんが、お願いをしております。  1分30秒たちますと、時計係の人にベルを鳴らせていただきます。ちょっと1回鳴 らせていただいていいですか。2分たちますと、2回鳴らせますので、そこでまとめて いただければと思います。  いろいろな立場の方からいろいろなお考えを述べていただいて、それを皆さんで認識 するということからこの理解を深めることにつながると思っておりますので、つまらな いとか、こんなことを聞いたらと思わずに、ぜひ積極的にご発言いただければと思いま す。  それでは、会場の方、意見のある方、いかがでしょうか。それでは、早かったので前 の方ですね。 【参加者1】  食品事業者のマチダと申します。よろしくお願いします。  0.01ppmという基準がございますが、これは国産も海外品も輸入品もすべて一 律ということで認識してよろしいですよね。これがまず1点。  2点目は、799、約800種類程度の分析をされるとなっておりますが、これは、 1アイテムで時間的には何時間もしくは何日ぐらいでできるものなんですか。  三つ目、農薬散布から何日間経過すれば残留結果はどう変わっていくのか、実験デー タというのはあるんでしょうか。検査結果を受けてから販売するまで、随時データが推 移していくという可能性があるということを考えれば、実験データというのが貴重では ないかと思います。  以上です。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  後半のポジの話になってしまいましたので、どうしましょうかね。じゃ、一通りお答 えして、また輸入食品の点での質問を受けさせていただければと思います。  まず、一律基準について、国内と海外のものは一緒かということなんですが、これは 一緒ということでよろしいんですよね。 【伏見課長】  おっしゃるとおりです。一緒です。 【広瀬補佐】  799品目の分析にどのくらいかかるかということなんですが、この 辺はいかがなんでしょうか。 【伏見課長】  799を一挙にはかることはできないんですね。今、お示ししている のも、一斉分析法といっても30とか40ぐらいの農薬をずっと流してはかるような格 好です。したがいまして、ちょっと正確に何時間かかるというのは申し上げられません けれども、1回の一斉分析法というのは日単位ということはないと思います。何時間と いう問題だろうと思います。  ただ、あらゆる品目に関して、799の基準があるからすべて799の農薬をはから ないといけないかというと、必ずしもそういうことはないんだろうなと思っております。 実際にある作物があったときに、国産でもそうですし、輸入でもそうですし、これは現 行だってそうだろうと思いますけれども、例えば国産であればどういう農薬を使われた か、防除履歴のようなものがあればなおさらですが、大体そこは把握できるわけですし、 輸入品に関しても、例えば事業者の方ですと、先方の、海外の取引先といろいろな情報 をやりとりされる中で、どういうところでつくられて、どういう農薬を使っているかと いうのはおおよそ絞り込めるんじゃないかなと思いますので、そういったところを重点 的にはかっていただくというのが実際的なんじゃないかなと考えております。  2点目はそんなところです。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  それから、経過日数で農薬がどう減衰というか、なくなっていくのかという部分なん ですが、これは私の知る限りでは、市場に出てからお店に並ぶまでの間での減少という のは、あまりデータをとっていないと思います。畑で使われている場合については、ま いて直後とか、まいて何日、1週間、2週間と減っていくというデータが農水省さんの 農薬のホームページで、作物残留試験というか、農薬の減衰の経過みたいなのがたしか あったかと思うんですけれども、引地さん、その辺はいかがでしょうか。 【引地情報官】  それは使用基準の中に出荷前何日までと、示されていると思います けれども。 【広瀬補佐】  ですから、基本的にはまいた直後からであっても、農薬の中で1週間 前とか2週間前までとかと書いてあれば、その期間が経過していれば、当然、合法的な 値まで下がっているということでよろしいんですかね。 【引地情報官】  そういうことです。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。 【参加者1】  それは、いわゆる0.01の基準内ということですか。 【広瀬補佐】  それは多分0.01というのを、それは一律基準で今回、新しい制度 になりますので、例えば今まで大根に0.5というのが決まっていれば、当然、農水省 さんのほうでは0.5を満たすような農薬の使用方法というのを決めていますので、そ れはクリアできると思います。ただ、0.01というのがどうかというのは、また別の 問題ではないかと思います。  それでは、ほかに輸入食品の関係でどうでしょう。できれば、ポジティブリストの関 係は後半の方でまた扱いますので、そのときにしていただければと思いますが、そちら の方、輸入食品の関係でよろしいですか。今のと関連ですか。できれば次のポジティブ リストのときにお願いしたいと思います。  ほか、いかがでしょうか。あちらの列の前から3番目ぐらいの方。 【参加者2】  畜産並びに畜産加工食品メーカーのトリサトといいます。  輸入品について、検査と、それから検査結果の適合性の関連というのを確認させてい ただきたいんですが、先ほど監視員の方からの説明がありましたし、事前の調査結果に もあったんですが、検査項目を拡充します、検査方法を選定しますということになって いまして、当然ポジティブリスト制に伴った検査項目も拡充されると思うんですが、そ の時期的というものはいつごろから実施されるのかということ。  それが、例えば畜産物、農産物であれば、そのものが流通するものと、原材料として 使われるものがございますので、5月29日以降であれば、原材料としては事前に検査 が進んでいないと適合性を確認できないわけですよね。ですから、その検査、ポジティ ブにちなんだ検査がいつごろに実施されるのかということと。  畜産物、農産物、水産物もそうかもしれませんが、加工品であればそのまま流通しま すし、原料素材とすれば原材料として使われるわけですけれども、その公的検査、動検、 植物検疫所で検査されたその結果をもって適合原材料、適合品として品質担保していい ものか、その辺をちょっとお伺いさせていただきたいなと思います。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  項目の拡充の時期というのは、山本さん。 【山本係長】  時期なんですけれども、先ほどちょっとご紹介させていただきました が、平成18年度の輸入食品の監視指導計画の案でございますけれども、こちらの計画 案の適用期間は平成18年4月1日から19年3月31日までと年度でやっているわけ でございます。ただし、ポジティブリスト制度の施行が5月29日ということでござい ますので、その時期も勘案されることになろうかと思いますが、今現在この時期からと いうのはまだ明確にはなっておりません。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  それから、加工品についてなんですけれども、これはたしか告示の中に、実は皆さん お気づきになられていないかもしれないんですが、若干扱いが書いてあって、5月29 日までに製造された加工品については従前の例によるとなっておりますが、5月29日 以降というのか、30日からになるのか、ちょっと私、正確には今、断言できないんで すけれども、法律で定められた日から後については、基本的にポジティブリスト制度に 適合したものでないと加工品自体がアウトになると。製造した日が29日以前の場合は 従前の例によるとたしか書いてあったと思いますので、例えば流通している原材料を使 って5月30日につくりましたとなると、原材料については5月29日の時点では合法 であったものが30日の時点で合法かというと、必ずしもそれは保障できていない部分 だと思います。  ただ、そういうこともあるからこそ、逆に6カ月前ということで告示をされています ので、5月29日以降のところで製造されるものについては、原材料も十分吟味してい ただいて、製造していただく必要があるのではないかと思います。  検疫所とかを通関したものは、基本的に合法品と考えていいかということなんですが、 ただ、これは先ほど輸入食品の説明でもさせていただきましたけれども、輸出国対策と 水際検査のほかに自治体での検査というのもありまして、自治体の段階で違反が見つか るというケースも当然あります。というのは、すべての食品をそれぞれ分析しているわ けではありませんので、どうしても水際で見つけられる部分というのは限界があります ので、そういう意味では、輸入で検疫を通ったからといって、それが合法品だという保 証には多分ならないんじゃないかなと思います。  この辺、もし補足されるんであれば。補足は何かありますか。 【山本係長】  国内の関係の監視指導におきましては、もともと厚生労働省の食品衛 生法のところで食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針に基づいて、先ほどご紹 介させていただきました輸入食品の監視指導計画案というものが策定されております。 国内におきましては、このような形で各都道府県のほうでこのような監視指導の計画の ほうを策定されまして、それに基づいて検査がされているところでございまして、それ は農薬の使用実態でありますとか、その地域による作物でありますとか、いろいろな農 産物、その地域に応じた、内容に応じた計画指導の案が作成されるものかと思っており ますけれども、そのような形で国内のほうは対応していくことになろうかと思っており ます。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  それでは、ほかに輸入食品の関係でご意見のある方、いかがでしょうか。  特にいらっしゃらないようでしたら、では、またポジティブリストの話をさせていた だいて、最後、時間が余ったときにでも、また思い出したりしたら意見を出していただ ければと思います。  それでは、次にポジティブリスト制度の関係の意見交換のほうに入りたいと思います。 ポジティブリスト制度というのは、伏見課長から説明がありましたけれども、今まで原 則自由で、特に健康被害もなく流通していたものだと思うんですが、ネガティブリスト という制度のもとでは、決められた基準のものしか規制ができていなくて、いろいろな 国から作物なり畜産物が入ってくる中で、基準が決まっていないもの自体は全く規制で きないということでは非常に不安であるというのは、これは消費者の方からの声が大き かったんだと思いますが、そういったことで、基本的に原則禁止という制度に大きく変 わったわけでございます。  これは制度自体が180度、がらっと変わっていますので、これを円滑に進めていく というのは結構大変なことなんだと思います。このあたりについて、消費者の方、それ から事業者の立場でも、少しご意見を伺ってみたいと思います。  それでは、田淵さん、まずいかがでしょうか。 【田淵氏】  ポジティブリスト制度が導入によりましてより安全な食品の流通が行わ れるということは、私ども消費者にとりましては、安心して食事ができるということで、 ほんとうによいことだと思います。先ほどのスライドの説明で、ADI、一定の体重と か、そういう許容量の範囲内でとのことでございましたが、また、帰ってからもよく勉 強したいと思いますけれども、この範囲内ということも大体わかりました。  ですが、実際この制度によりまして業者の方々はどのような対策、検査を行われるの かということ、それから、保健所などではどのような対策、検査がなされるでしょうか。 また、その食品に残留農薬がどのくらいあるのか、その検査するのに要する日数なども 知りたいと思います。鹿児島ではどのくらいの項目が検査できるのでしょうか。  それから最後に、輸入品にもこの制度が適用されると思いますが、諸外国では日本で 使用されていないさまざまな農薬が使用されていると聞きます。その中には微量でも人 体への影響のある農薬もあると思いますが、この制度で規制ができるのかということを お伺いしたいと思います。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  それでは、松薗さんからいかがでしょうか。 【松薗氏】  私のほうからは、実はこのポジティブリスト制度導入に向けて、11月 29日告示直後に生産者、私どもの組合員、それからメーカーの方を含めて、要は関連 する方々を含めて学習会をとりあえず実施いたしました。というのは、先ほどありまし たように、5月29日施行ということになりますと、現実的には現在栽培が始まってい るわけですよね。そういう意味では、半年間の猶予というのはあるんですけれども、こ れは非常に短い期間です。今日の参加のところも、ほんとうは生産者のところがちょっ と多いかなと思ったんですけれども、生産者はかなり少ないとお見受けします。という のは、生産段階のところできちっと管理できれば、あとのところは、リスクとしてはだ んだん少なくなるんですけれども、最初の生産段階のところの認識が非常に大事だとい うことで、現在、農協さんを含めて、各地で普及所を含めていろいろな対策を打たれて いるという進捗におそらくなっているかと思います。  そういう意味では、私どものところもこの制度導入に向けて、制度は決まって、基準 値をオーバーしたら当然、流通はできませんということになるんですけれども、それを 考え方として何かチェックをかけて、検疫してこれはだめだと、それを目的化しないと 生協の内部では確認をしています。最大の理由はやっぱり生産者の方々のリスクという のはかなりでかいんですよね。そういう意味では、生産から販売までのそれぞれのプロ セスについて、どういう手だてを打ったらそういうことが発生しないかというほうに重 きを置いた制度であると理解をしております。  そういう意味で、2000年に全国的に署名活動をやって、その結果として食品衛生 法改正、その一つとしてポジティブリスト制度の導入ということになってきていますけ れども、要求事項としてはそういう中身です。要は切り捨てではなくて、そのプロセス をいかに管理していって、そういうことが起きないような予防的な原則に立って、お互 いに手だてを打っていくということを、まず考え方として話しておきたいと思います。  問題意識的にちょっと言いますと、先ほどの一律基準0.01ppmなんですけれど も、これは非常に小さい単位になっていまして、これをまともに検査するとおそらく出 てくるんですよ。そうしたときの責任はどこにあるかというのはまた難しい話なんです ね。先ほどありましたドリフトの問題を含めて見たときに、責任の所在がはっきりしな いということになるかと思います。  ただ、事業者としては、当然それを販売できないわけですから、販売リスクは当然あ ります。仕入れたけれども、調べたら基準値以上だったということで、それの流通はス トップということになりますから、そのあたりのリスクをどうしていくのかということ と、当然、生産者に対してもかなりリスクはでかい。そういう意味では、なるべく早く、 5年ごとに見直しとなっていますけれども、できれば、要するに暫定基準からなるべく 早くADIを含めた基準値の設定をぜひしていただきたいと思います。そうしないと、 産地のほうが大変だということです。  もう1点は、ドリフトの関係で今ちょっと悩んでおりますけれども、水田の周辺の圃 場についてかなり心配をしております。まだ航空防除を含めて地域的にはやられていま すので、しかも水稲の場合には、殺菌剤を含めて水稲にしか使えない農薬というのが結 構多いんですね。当然、隣接して園芸作物があると、そっちのほうにドリフトとして発 生した場合には、0.01ppmが適用されるということになると、当然かなり厳しい 基準になってくる。そういう意味では、地域としてそういうドリフト対策をどうしてい くのかということを、市町村を含めてきちっとしていかないと、生産者の自分の責任で できる部分と自分ではどうしようもない部分が当然、発生するわけですよね。そういう 意味では、地域としてどうドリフト対策を持つかというあたりが非常に大事になってく るかなということで、今、生協としても産地といろいろ協議しながら手だてを打つよう にしております。  ただ、ちょっと質問的になりますけれども、ドリフトを予防するために、例えば粉剤 から粒剤に変えるだとか、スプレーヤーの機器を予防策として新規に入れるだとかとい うことになってきますと、当然、農家のコストがかかるという話になるんですね。でき れば、そういうドリフト対策に対しての補助なり、財政的な支援というのがほんとうに できないのかどうかということをお聞きしたいというのが一つです。  それと、もう1点は、万が一発生した場合の対応の仕方、これは販売業者のところも おそらくわからないと思います。そういう意味では、要するに発生したときの手順みた いなものがもう少し明確にできないかなと思います。当然、公表の問題もあるかと思い ますので、そのあたりをどういう手続でどうしていくのか。それと、販売の再開の条件 がどういうものが必要なのかという、万が一に発生した場合の対応手順のというのがあ る一定示されないと、ちょっときついかなと感じております。  それと、もう1点は、特にこれも米が一番大きいですかね。例えば基準値をオーバー したときの対象産地というのをどうとらえればいいのかというのが少し質問をしたいこ とです。例えば水稲の場合には、大型の産地になると、カントリーエレベーターの中で いろいろな複数のものが入ってくると思いますけれども、例えばいろいろな地域のもの が入って、それが一つの商品になったときに、それを調べたら残留値以上でしたといっ た場合に、さかのぼってトレースバックしたときに、どこを見ればいいのかという規制 の仕方を含めて、そのあたりの回収エリアの問題、そのあたりが少しまだ理解できない ので、そのあたりをひとつ教えていただきたいと思います。  以上です。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。いろいろご質問、ご意見をいただいている かと思います。  まず最初に、田淵さんからいただいた意見の中で、業者の人がどのような対策とか検 査をされるのかのところの部分については、一部松薗さんから質問の中で、きちんと生 産段階からの管理を確認していくという中で、違反が発生しないかどうかというのを判 断していくということで、要するに検査での摘発だけを目的とはしないというお話もあ ったかと思います。  それから、農薬の分析にどのくらいかかるのかのところについては、先ほど伏見課長 が799の分析のところでも少しお答えさせていただいているかと思います。あと、鹿 児島でどのくらいの項目を検査できるのかという部分については、ちょっと鹿児島県の 方からお教えいただけますか。 【遠矢専門監】  それでは、鹿児島県のポジティブリスト制度導入後の検査体制とい いますか、その辺をどうするのかというところだろうと思いますので。  食品衛生監視指導計画というのに基づいてやるんですけれども、市場に流通している 本県で生産されるような農産物、もしくは県外の農産物、あわせて輸入の農産物を保健 所で収去して、県の検査機関であります環境保健センターで残留農薬の検査を従来から やってまいりました。  それで、平成16年度については、大体106検体、7,000項目、1検体につい て70項目ぐらいの農薬というのを検査してまいったわけですけれども、今年の5月2 9日からポジティブリスト制度が施行されることになるわけですので、それについては、 平成18年度の食品衛生監視指導計画というのを今、作成中なわけですが、その中で残 留農薬の検査計画というのも検討中でございます。  それで、ポジティブリスト制度が施行されるまでに、国で示されたような一斉分析法 について、農薬の回収率とか再現性などの試験法の検討と検査技術の習熟ということを、 検査機関であります環境保健センターのほうに今お願いしているところです。  そうは言いましても、先ほど言われるように799の農薬等の基準があるわけですか ら、そのすべてを検査するということは不可能だろうと考えています。人的な要因とい うのもありますし、あと予算、機器整備かれこれを考えますと、そういう検査をするの は不可能であろうと。そこで、鹿児島県では県内で主に使われる農薬、それと輸入食品 の場合については、検疫所の違反情報等を総合的に考えて、なるべく多くの農薬につい て検査できるような体制を今、目指しているところです。  それで、ちなみに平成14年から平成16年の間に残留農薬の検査を県でやってきた わけですけれども、その時点で残留基準が定められていない農薬が3検体から検出され ておりました。その時点では処分とか廃棄の処置はできなかったわけですけれども、そ ういう検出事例がございます。その残留値を今回のポジティブリストの基準値と比較し てみますと、いずれもその基準以下であるということを確認しております。  いずれにしましても、今年6月以降から保健所でいろいろなスーパー等からそういう 農産物等を収去して検査をする体制になると思うんですけれども、その検査結果を見て みないとはっきりしたことは言えないんですが、生産段階で農薬の適正使用、これはド リフト対策も含めた適正使用というのを今までどおり遵守していただければ、基準違反 の発生というのは低いんだろうと現時点では考えております。ただし、もし基準を超え る食品が見つかった場合には、そういう収去をした販売店に対して回収命令なり、そう いう行政処分をかけることになりますし、あわせてさかのぼり調査の結果、またそうい う再発防止対策がどのようにとられたのかという確認までは、我々の守備範囲であろう と考えておりますので、そういう措置をとることになろうと思います。  それと、検査に要する時間についてですけれども、先ほどのスライドでも説明があり ましたように、機械にかける段階まで持っていけば、あとは機械がすべて検査してくれ るわけですので、そこからあとの時間というのはさほどかからないでしょうけれども、 そこに持っていくまでの処理行程というのがかなりございますので、それと検査項目も 今後、増やそうという方向で動いておりますから、なるべく短期間で終わるようにした いとは思っております。ただし、残留基準値付近の残留が疑われるような場合は、どう しても確認検査というのをしないといけないと思っておりますので、さらにそういう期 間を要するんではないかと思っております。  以上です。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  それでは、田淵さんからの質問の中で、ポジティブリストが輸入品にも適用されると いうことからすると、使われていないような農薬が入ってくるおそれがあって、微量で も影響のあるものもあるというような中で、0.01ということで健康は守られるのか というご意見がありましたけれども、伏見課長のほうからお願いします。 【伏見課長】  まず、799の暫定基準をつくったわけで、もともと日本には283 の現行残留基準が農薬と動物用医薬品についてありますけれども、それが799に増え たわけでございます。だから、500以上の新しい化合物について基準を設けたという ことにもなるんですけれども、その500以上の化合物というのは、それぞれは、要す るにコーデックスといいますか、国際機関なり、あるいは先ほど出ていましたアメリカ、 カナダ、EU、オーストラリア等で基準が置かれているものということですから、そこ で農薬登録がなされているということですので、その時点で農薬登録ということは、先 ほどのスライドの説明でも言いましたように、その前段階としていろいろな毒性の評価 なりリスク評価は終わっているものだと思っております。だから、そもそもそんなに危 ないものは入ってきているとは考えてはいないんです。  それから、もう一つどういう配慮をしたかといいますと、国際的に農薬なりを評価す る国連の機関があって、JMPRとかJECFAとか略称で申し上げますけれども、そ ういうところで、ほんとうに微量でも危ないもの、要するに遺伝毒性の発がん性がある ものとか、そういうものがあってADIが設定できない、ADIが設定できるというの はある程度まで食べて大丈夫だということなので、ほんとうに微量でも危ないものはA DIが設定できないという扱いになるわけなんですけれども、そういったものに関して は、まず原則として暫定基準を設けないということにしています。  ただ、若干そういったADIが設けられるものでも今五つぐらいが、これまでも基準 が置かれていたとか、国際的に基準が置かれているというものがありましたので、そこ は5品目に基準が置かれておりますけれども、それにつきましては、安全委員会のほう にまず優先的にリスク評価をお願いするということで、安全委員会と今そういう話をさ せていただいております。  まず799のものというのはそういうことで、全く海のものとも山のものともわから ないものに基準を置いたということではなくて、それぞれきちっとした根拠があって海 外で基準が置かれているものを引っ張ってきているということです。  あと、ほんとうに799以外のそういった海外でも登録されていないような、あるい は非合法で使われているような農薬のたぐいがあるかもしれません。実は正直そこまで 捕捉できないんですけれども、ただ、そういったものが入っていたとしても、さっき言 いました一律基準、0.01という基準があれば健康上のリスクは生じないだろうと考 えております。それは今日のスライドではご説明できませんでしたけれども、全く素性 のわからない化合物でも、1日の摂取量が非常に微量、1人当たり1.5マイクログラ ム以下であれば健康上の影響は出ないんだという評価が、さっき言ったJECFAとか FDAでなされております。ですから、1.5マイクログラム以下の摂取におさまるた めにはどうすればいいかということで、いろいろな食品の摂取量を考えますと、0.0 1ppmという基準を置けば、1.5マイクログラムという値をオーバーしないという ことを確認しておりますので、何かとんでもない化合物が混入していて、大きな健康上 の問題が起こるということはまず考えにくいかなと思っております。 【広瀬補佐】  大体のものは0.01で管理していれば大丈夫だろうし、特別なもの があった場合には、それに応じてさらに厳しい不検出とかということを多分やっていく んだと思います。  それでは、松薗さんからいただいた中で、要望の前に、6カ月の周知期間が短いとい うお話もあったんですけれども、基本的には日本国内での農薬の登録というんですか、 登録保留基準などは考慮して今回、基準を決められていると思いますので、そういう意 味ではきちんと農薬の使用基準を守ったものであれば、現実でも合法になると考えてよ ろしいんでしょうか。 【伏見課長】  さっきスライドで暫定基準の決め方というフローチャートみたいなの があったと思います。資料3の16ページの下のスライドがありまして、そもそも現在 国内で基準が置かれているものはさわっておりません。現在、国内で基準が置かれてい ないもので、ここのフローチャートにありますように、コーデックス基準があるものは 原則コーデックス基準を採用していますけれども、そのときに、一番左ですが、国内登 録ありという場合は、国内の使用実態を勘案してコーデックス基準に少し考慮した値に しているということです。  それから、右のほうでコーデックス基準がない場合で国内登録がある場合は、原則的 に登録保留基準を使っているということでございます。したがいまして、登録保留基準 というのは、日本の農薬取締法で決められていまして、要するに農薬の使用基準に従っ て使っていれば、登録保留基準以下になるという値でございますので、それがあるもの は基本的に今回の暫定基準に取り込んでおりますので、日本国内に関して言えば、これ まで整備されてきた使用基準を遵守していただければ、残留基準を超えることは原則と してないはずだし、そうするとADIを超えることもないと。さっきスライドでお示し しましたけれども、そういう関係になるんじゃないのかなと思っております。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  それから、ドリフトの予防のところですが、やはりコストもかかるようなことがござ いますので、補助とかというものをぜひ何とかならないかということでしたが、農水省 さん、この辺はいかがでしょうか。厚生労働省的には何かその辺はなかなか手当てしに くい部分でございますので、お答えいただければ思います。 【引地情報官】  私は生産振興担当ではないので、そういう対策をどこまで考えてい るか、今ご紹介できないんですけれども、いずれにしてもコストがかからないようにす るのが一番いいんですが、かかることも想定されるということでの今の要請だと思いま すので、これは伝えさせていただきたいと思います。 【広瀬補佐】  それから、万が一発生した場合の対応、規制の手順とかが多分明確に なっていないということだと思いますけれども、ここの辺、実際は国の方針としてどう このポジティブリスト制度の監視をしていくかの部分については、監視安全課のほうで 検討をいただくことになると思います。今の時点での明確な方針というのは打ち出され ていないかと思うんですが、わかる範囲で……。 【山本係長】  農薬の使用という意味につきましては、この規制のほうの話にもあり ますように、使用法を規制しているという話ではないということだと思っておりますの で、監視指導のほうといたしましては、食品の一つ成分規格として定められたものが残 留基準と思っています。食品、加工食品も含めてですが、その食品を検査したりした場 合に、残留基準値を超えて出てきたものの販売等を禁止しますよということになります ので、その時点で違反という形の処分がなされるかと思います。  鹿児島県の方のお話がありましたが、そこから、どうしてそのようなことになったの かというところをさかのぼって調査する場合があり得るというお話もありましたが、そ の際に、生産者のほうにおいては、それを生産したことがあったとか、使ったとかとい うところが流通等の中の販売にも当たる可能性がありますし、流通等の中に当たる場合 もありますので、必ずしも販売者だけがという話ではなかろうかと思います。  そういったことから、生産の段階、それから流通の販売の段階、そのところでより緊 密な情報提供をしていただきながら、その辺をきちんとやっていただければ、特に監視 のほうから問題があるようなことにはならないだろうと思っております。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  十分にお答えできているかどうか、ちょっと自信がないところではございますけれど も、あと、基準値をオーバーした場合、ロットの考え方とかをどうするのかということ なんですが、これは多分基本的には今までも基準値で規制しているものがあって、それ で違反が見つかった場合と手順としては多分一緒なんだと思います。ただ、一律基準の 場合は、初めて今度経験することになるかと思いますので、その辺はひょっとしたら、 これは少し議論をする必要があるのかもしれません。ただ、通常の基準値レベルのもの であれば、これまでも違反品が見つかった場合の考え方と同一ということになるのでは ないかと思います。  それでは、時間が短くなってきてしまいましたので、パネラーの方、いかがでしょう か。できれば会場の方からも意見を聞きたいと思います。  それでは、先ほどポジティブリストのところでご意見があるとおっしゃっていた方。 【参加者1】  先ほどの質問に関連があるんですけれども、ある農薬で、ここにご出 席の皆さんでおわかりかどうかわかりませんけれども、キュウリ、ナス、稲、柿と例で 示していますけれども、キュウリなんかは散布して翌日出荷になっておるわけですね。 ところが、ナスは3日とか、稲では21日、柿では30日ということになっておるわけ です。ということは、柿だったら30日になると、いわゆる残留基準0.2ppm以下 になるから30日になっているんだと思うんです。ところが、キュウリが翌日出荷です。 この違いをどう説明しておられるのか。厚生労働省の基準審査の係の方とも、実は四、 五日前かな、もっと前かもしらん、大分議論したんですけれども、的確な回答を得られ ませんでしたし、農林水産省とも文通をやったけれどもはっきりしないんですが、翌日 と30日とか翌日と21日とか、そういう違いがどこで出てくるのか、どうお考えにな っているのかお聞きしたいと思っているんですけれども。 【広瀬補佐】  私の知る限りで思うところは、まず農薬の使い方というのは、必ずし も出荷の日までとにかく農薬を使い続ければいいということではなくて、当然、対象と なる病害虫とか菌とかもいると思いますので、出荷するためにつくるためにはこの時期 にこういう農薬をまくというのがあって、多分キュウリとかですと、まず実がなる形態 としては、例えば柿みたいに春に花をつけて、夏の間に育って、秋に収穫できるという 形ではなくて、キュウリというのは花をつけている隣でまた新しい実ができたりとかし ていますよね。そうすると、キュウリを栽培しているハウスの中できちんと病害虫の発 生を予防しようとすると、今日まいた後、実はもう既に実になっているものがあるかも しれない。これから実がつくかもしれない花のキュウリのためにも今、消毒はしなけれ ばいけないとか、多分そういう状況があるのだと思います。 【参加者1】  そうしますと、残留が0.2ppm以下ということにならないわけで すよ。 【広瀬補佐】  いや。ですから、そのときに、柿とキュウリの残留値が同じかどうか というのはまた議論のあるところだと思いますけれども。 【参加者1】  いや。キュウリの場合は0.2ppm以下なんですよね。柿も同じな んです。どうしてそれだけの残留が決まっているのに、キュウリだけ明くる日に出荷し ていいのか。1日で分解するんであればいいんです。ところが、メーカーに聞きまして も、数日から10日ぐらいは見てくれと。 【広瀬補佐】  いや。でも、そうすると、出荷した時点で基準値に合わないというこ とだとすると、それは問題だということになるのだと思いますけれども。 【参加者1】  農林水産省でも、それは翌日出荷でいいと言うんです。 【広瀬補佐】  それは翌日出荷のものとして、もう既に基準値を満たされているとい う前提に立っているのではないんですかね。 【参加者1】  いや。だから、その違いがどこで説明できるかということなんです。 【広瀬補佐】  引地さん、どうでしょうか。 【参加者1】  説明できんのだと思うんです。 【引地情報官】  私はよくわからないです。これは多分試験結果じゃないかと思うん です。 【参加者1】  いや、僕が聞きますと……。 【引地情報官】  ですから、試験結果を農水省に聞いたときに、農水省がその試験結 果がわからないということをおっしゃったんでしょうか。 【参加者1】  いや、そういうデータはないと言うんです。翌日に0.2ppmにな るデータはないと。送ってくれと言ったんですけれども、そういうデータはないと。 【引地情報官】  試験結果を農水省に聞いたときに、農水省がその試験結果がわから ないということをおっしゃったんでしょうか。 【参加者1】  いや、そういうデータはないと言うんです。翌日に0.2ppmにな るデータはないと。送ってくれと言ったんですけれども、そういうデータはないと。  ところが、テストをしたので、それに合致しているから認めたんだと言うんです。 【引地情報官】  ということは、結果があるということですよね。 【参加者1】  それで、その説明がつかないわけですよ。 【引地情報官】  蒸発するということではないでしょうか。 【参加者1】  いや。蒸発するというのは、キュウリだけじゃなくて、すべての作物 全部が蒸発するわけです。聞きましても、蒸発するとか、紫外線が当たるからとか、そ れからでこぼこがあるとか、いろいろ説明があるんです。 【広瀬補佐】  そうですね。 【参加者1】  だけど、全部はそれだけでは説明できないんです。そして、もう一つ 農林水産省から指摘されたのは、キュウリは生長が大きいと。ということで、それも僕 はテストしてみたんです。ところが、散布するのに、大体多くて4ppmぐらいの散布 がかかる。少なくても2ppmはかかっておるはずなんです。それが明くる日に0.2 ppmに落ちるというのは、かなり肥大をしないと、10倍以上肥大しないと説明がつ かないわけです。 【広瀬補佐】  わかりました。  ただ、本来の原則からいうと、作物残留試験というのを実施していく中で、きちんと 減るというデータをお示しいただいて初めて登録になるという仕組みのはずなので、ち ょっとその辺は私のほうでも理解しかねる部分かなと思います。  柿のケースについては、ひょっとしたら30日という日にちをとっているけれども、 実はもっと早くの段階で下がっているのかもしれない。ただ、前日に当然まく必要がな いからということで30日というデータをしているのかもしれません。その辺は若干の 違いがあるんだと思います。 【参加者1】  稲の場合が21日ですものね。 【広瀬補佐】  多分お米も収穫直前にはそんなに薬をまかないんだと思うんですけれ ども。 【参加者1】  21日置かないと出荷できないわけですから、まいたらいかんわけで す。 【広瀬補佐】  この辺、ちょっとクリアにはならなかったみたいですけれども、今い るメンバーでお答えできるのはこの範囲みたいですので、済みません、ご了解いただけ ればと思います。  ほかにはいかがでしょうか。  済みません。それと、ちょっとお時間のほうになってしまいましたので、もし、交通 機関のほうとかのご都合のある方は適宜退出いただいても結構です。済みません。時間 内に終わらなかったことについては、申しわけありません。おわび申し上げます。  意見のある方は、もう少し意見を伺ってみたいと思います。それでは、そちらの前の 列の方。 【参加者3】  済みません。輸入食品も取り扱っているんですけれども、まず、今回 のポジティブリストということで、人間が管理下で薬品を使うということでそれぞれの リストになってくると思うんですけれども、例えば管理していない天然素材のものにつ いて、たしかモニタリングなどをして仮に違反になった場合なんですけれども、これは ある意味コントロールがきかないので、我々としてもやっぱり事業性も、取り扱えない という怖さは含んでいるなと思っているので、この辺についてもちょっとご検討いただ きたいです。  あと、例えば日本国内の既にある法律、例えば飼料なんかのほうで飼料安全法という ことがありますし、あと畜産のほうで薬事法ということで、既に獣医さんの立ち会いの もとにワクチンプログラムということで、既にある法律で商品が流れていると思うんで すけれども、それについては、既に安全として過去に流通しているものなので、今回の ポジティブリストということだけで、流通するに当たって販売先のほうからかなり検査 を求められるという実態があるんですが、やっぱり販売する中で必要というなら検査は 必要ですが、非常にコストいうことで思い悩んでいるんですけれども、その辺のご意見 をいただければと思っています。 【広瀬補佐】  ありがとうございます。  伏見課長、いかがでしょうか。 【伏見課長】  済みません。前半のお話は、例えば農薬にしても、残留したものがそ もそも植物なり動物の体内にあるものと同じものの農薬として使った場合というお話で すか。 【参加者3】  人間の管理下で養殖だとか栽培だとか、肥育されているものでしたら 当然、必要に応じた薬品というのが明確で、それが残留のないことの確認ということは とれるものだと思うんですけれども、例えば水産物のように、ある海域のものをとって 凍結しただけで販売するという食品も現状でありますので、それについて、一業者では コントロールのきかないものなので、その辺についてどうすればいいかと。 【伏見課長】  そこの今の考え方は、明らかに検出されたものが、農作物の場合であ れば社会通念上の農薬とみなされるものとか、動物であれば動物薬とみなされるものが 出てくれば、このポジティブリスト制度というか、食品中の残留基準の適用になります けれども。ですから、おっしゃっているのは、例えばお魚が外洋でとれた魚だけれども、 何かポジティブリスト制度に乗っかっている動物薬と同じものがたまたま見つかったと いうケースですかね。 【参加者3】  やっぱり管理しているものだったら使っているのが明確なんですけれ ども、管理していないものについても、安全のために何かしらデータが欲しいという方 も実際にありますので、それってどの項目をどういう形でやればという案も出ないので、 ちょっと検査所へ依頼するに当たっても困ってしまうなと思って。 【伏見課長】  だから、おっしゃっているのは、例えば外洋でとってきた魚に何か化 合物が入っている。それに動物薬がまじっていたというケースですか。ではなくて、何 か全然農薬とも動物薬ともわからない、そもそも魚に本来含まれているようなものとい うことですか。ちょっとごめんなさい、理解ができなくて。 【参加者3】  結局、販売するのに、例えばトレーサビリティーみたいな流通の由来 のわかるものということで、必要に応じた資料というのは出せると思うんです。その結 果、今回ポジティブリストの検査によって、問題なく残留しなかったよと確認を出せれ ばお客さんのほうもご納得いただけると思うんですけれども、天然素材のような管理が できない、例えばこの海域でとれたとか、そういう部分は理解できるんですが、命令検 査なので、この海域は汚染ということで指定がない場合については、特にそれほど今ま でも問題なく流通していたんですけれども、それについても何かしら示してもらいたい というのが実際に販売する上であるんですが、どう示せばいいかというのがなかなか思 い悩むところなんですけれども。 【広瀬補佐】  多分、養殖のタイと天然のタイがいたときに、養殖のタイのほうは飼 料の履歴を出していただければいいんだと思いますけれども、おそらく天然のタイでそ こまでする必要はないんだと思うんですよね。ただ、ほんとうに天然のタイなのかとい う部分はちょっとあるかと思いますので、サケみたいにある程度育てて外に出している とか、サケはでも実際に戻ってきたりしますので、半分養殖で天然のところで飼ってい るみたいなものがあった場合に、ちょっとご注意いただければということはあるのかも しれません。純天然であれば、そもそも天然ですということなんだと思います。  あと、2番目のものが、これは動物用医薬品の薬事法とかワクチンとかだと、多分休 薬期間とかというのがあって、その期間をちゃんと守れば、本来検出されないという仕 組みになっていたのではないかと思うんですけれども、課長、その辺はちょっと解説を お願いします。 【伏見課長】  だから、今、動物薬なりの使用基準というか、用法、用量で休薬期間 を置いて検出限界以下にしてということ、おそらく抗生物質とか抗菌剤とかはそういう 扱いをしているんだろうと思います。ワクチンも基本的には残留しないと考えていいと 思います。  そういったものを検査で証明を求める、あるいは求められるというお話なんですけれ ども、これはちょっと一般論になってしまいますが、先ほども申し上げましたけれども、 例えば799の化合物をすべて検査しないといけないかというところにも通じるんだと 思いますが、結局あらゆるものを検査しても、どう言うんですか、すべてのものを検査 するということが必ずしもこの制度の目的ではなくて、要するに農薬にしても動物用医 薬品にしても、適正使用、適正管理というのを徹底していただくということが主眼にな るべきなんだろうなと思っております。  例えば動物薬にしてみれば、これだけ休薬期間を置いて使っているんだということを 確認できる、あるいはそれを証明できるようなことがあれば、それをもって一々検査の 裏づけがなくてもきちっと取引ができるような形になるのが一つのやり方かなと思うん ですけれども。  私どももいろいろな機会があるごとに、すべての品目に関してあらゆる物質を検査す るのがこの制度の目的じゃないんですよということはいろいろ申し上げていますし、 我々のホームページなんかでもそういうことを申し上げておるところなんですけれども、 まだそういったところがなかなか徹底していない、十分伝えきっていない部分があろう かと思いますので、そこは引き続きお伝えしていきたいと思っております。 【参加者3】  済みません。お願いなんですけれども、最低限確認するポイントとい うことで、何かしらガイドラインといいますか、先ほど生協様の言っていただいたとお りで、問題点が発生したときに、意図してやることは完全にないので、その点、どうい う手順を踏めばいいのか。その上で、やはり提供するものは提供する準備をしたいんで すが、欠けていたということのないようにするために、一定のガイドラインがあると非 常にありがたいんですけれども。 【広瀬補佐】  多分、実際には国でそれをお示しするのは難しくて、それさえやって おけばいいという状況というのはなかなかないんだと思います。検討とかはしてるんで すか。 【伏見課長】  結局、ポジティブリスト制度の説明をいろいろなところでさせていた だいていて申し上げているのは、生産のプロセスとか、製造のプロセスとかというのは、 いろいろな食品ごとによって違いますので、まさにそういったガイドラインというのは、 ほんとうは一つのこういった製品をつくられる業界ごと、あるいはこういった生産者団 体ごととか、それぞれの現場に即した形でつくっていただくのが、そういったことをつ くる過程でよりいろいろ理解も深めていただけるだろうし、現場に即したものがつくれ るんじゃないかなと思っております。  我々のほうとしては、なかなか舌足らずの面もありますけれども、ポジティブリスト 制度というのはこういうもので、基本的には適正使用、適正管理をやっていただくのだ というところを、いろいろなところでお話をさせていただくということをやっていくの かなと考えてはおるんですけれども。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  ほかの方はいかがでしょうか。それでは、結構手が挙がっていますので、どうしまし ょうかね、今確認できた限りでは四、五名の方が挙がっているので、ちょっと手を挙げ たままにしておいていただいていいですか。そうしたら、前のほうから前の方、次の方 といって……。済みません。私が今確認できているのは、一番前の左の方と、それから 前から3番目の方と、次に中段の列の真ん中の左の方と、あと後方の方、4名なんです。 ほかにいらっしゃらなければ、この4名で終わりにしたいと思います。では、前の方か ら順次。 【参加者4】  指宿農業改良普及センターのコウザキと申しますが、私としては、農 家を指導する立場、要するに指導員の立場から質問というよりもご要望を申し上げたい んですけれども、我々にもドリフト軽減対策のマニュアル本は配付されたんですが、先 ほど松薗さんのほうからも質問が出たんですけれども、具体的にドリフトが起きた場合 のいろいろな相談事は、国がつくったチラシによりますと、JAなり防除所なりに相談 してくださいということなんですけれども、初めてのことで、今までには想定されてい なかったことなので対応の仕方がないんですね。そういうことで、そういう場合はどう したらいいというマニュアル本ぜひともつくっていただきたい。これは質問というより 要望です。よろしくお願いします。 【広瀬補佐】  わかりました。ありがとうございました。  それでは、前から3列目の方、お願いします。 【参加者5】  食品メーカーのトリサトといいます。  食品添加物でちょっとご確認させていただきたいんですが、食品添加物でエトキシキ ンというのがあるんですが、酸化防止剤ですね。当然、暫定基準で家禽類、鳥であれば 0.3、豚が5ぐらい、ちょっと暫定基準の数値は正確じゃないんですが、暫定基準が 定まっているんですが、その根拠というのはFDAなのかEUなのかコーデックスなの か忘れましたけれども、飼料安全法の中でエトキシキンの残留基準というのがべらぼう な数字なんですね。えさですれば例えば100だの150ppmだのという数値なんで すね。それぞれ豚でも鶏でもいいんですけれども、飼料安全法に基づいて供給されたも のであれば、それは残留しないよという暫定基準の設定をされているんだろうと思うん ですが、例えば動薬みたいであれば、休薬期間というのは当然あるんですけれども、え さはずっと食べていますので、例えば出荷屠殺前に何時間えさ切りとかという短時間の 時間はあると思うんですが、ずっと食べていると想定するんですが、そのえさ、エトキ シキンの中で100ppmも150ppmのえさを食べて、1個体の摂取量というのは 限られていると思うんですけれども、飼料安全法を守っていれば、そのままに肉に対し ては暫定基準以内でおさまるという根拠のもとに暫定基準は設定されたのか、その辺を、 飼料安全法と飼料添加物の基準のところ関係を、もしおわかりになったら教えていただ きたいんですが。 【広瀬補佐】  ありがとうございます。  引地さん、これはおわかりになりますか。本来だとうちの残留基準を守るように飼料 安全規制をされているはずだと思うんですが。 【引地情報官】  飼料安全法上の基準をクリアしていれば、残留農薬についてはクリ アできると聞いております。 【参加者5】  飼料添加物も同様に……。 【引地情報官】  はい。 【伏見課長】  冒頭、食品添加物と聞こえたんですけれども、失礼しました。基本的 に今回ポジティブリストの暫定基準をつくるに当たりましては、農水省の関連のもちろ ん飼料をご担当されているところともご相談しながらつくってきていますので、おそら くそこの飼料安全法のところとの整合性は図られているんだろうなとは思います。ちょ っと100%そうですとは言えませんけれども、手続的にはそういうプロセスは踏んで きたような形ですので、そこは一度戻って確認いたします。 【広瀬補佐】  どうもありがとうございました。  それでは、真ん中の列の方。 【参加者6】  食肉関連事業のマツオといいます。今日は貴重なお話をありがとうご ざいました。  資料の中で、農薬使用基準を守れば残留基準を超えない、つまりADIも守られると。 この生産段階での農薬使用基準を生産者の方に守っていただくために、農水のほうでど のような、例えば立ち入り調査をしているとか、どのような形で守っているのを確約と いうか、していただいているのかをちょっとお尋ねしたいなと。  それと、消費者の方に行ったときに、基準を超えたのが見つかったというときに、も ちろんトレーサビリティーで生産段階まで行くと思うんですけれども、そのときに使用 の履歴とかは努力義務でない場合が多いということがあると思うんですが、そのあたり はどのようにお考えかお尋ねしたいと思います。 【広瀬補佐】  それでは、引地さん、お願いいたします。 【引地情報官】  まず肥料について、肥料安全法という法律が数年前に非常に厳しく なりまして、どんな農薬をいつ何回、どれぐらいの希釈倍率でどの作物にということで、 特に例の無登録農薬の問題が発生して以来、農家の方は肥料の施用を非常に厳しく管理 していると思います。  それで、今日も幾つかお話が出ました、今一番頭の痛い問題は、実はドリフトの問題 でございます。一般基準が0.01でございますから、先ほど松薗さんからありました ように、水田の隣でホウレンソウをつくったときとか、非常に心配になっているわけで ございます。農水省として、特にドリフト問題については、個々の農家だけでは限界が あると考えております。やはり地域として取り組んでいかないとなかなか難しい問題だ ろうと。地域としての取組、それから個々の農家の方のドリフトを防止するための対策 ということの二本立てで考えようとしています。  地域については、ちょっと時間がありませんので省略しますけれども、昨年末に、通 達を出して、まず組織化、ネットワーク化してくださいということで、市町村単位で地 域組織をつくっていただいて、それに普及所ですとか、農薬関係者ですとか、生産者団 体はもちろんのこと、まず地域の指導体制をつくりネットワーク化、特にとっても影響 が及びそうだな、危ないなというところについては、指導者の方が農家の方に重点的に コンサルティングしてくれとお願いしています。どういう肥料のやり方をしたらいいの かというあたりもきめ細かい対応をお願いしたい。ただ、年末に出した指導でございま すので、まだ末端までは十分行き着いていないと思いますが、もう時間もありませんの で、早急に対応したいと思っています。  それから、個々の生産者の方自身がやはり気をつけないといけません。隣の畑の持ち 主の方に、「私はこういう農薬を使う」ということをお知らせしないといけない。それ から、例えば農薬の素材をどういう素材のものを使ったらいいのか、あるいは噴霧器は どんな形がいいのか。それに、いざというときのためには、自分がどういうものをどう いうときにどんな形で使ったかという記録を残しておくということが、いざ何かあった ときの助けになるということで、そういう記帳運動も進めてくださいということで、J Aさんを中心に今お願いしているところでございます。  非常に難しい課題なんですけれども、一つ一つこれは乗り越えていかないと、待って いても何の解決にもなりませんので、今、農家の方あるいは指導者の方も含めて、いろ いろお願いしているところでございます。  以上でございます。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  それでは、お待たせいたしました。真ん中の方、よろしくお願いします。 【参加者7】  農家のほうなんですけれども、先ほどから大分お話があったんですが、 一応いろいろ農協さんのほうに聞いたり、ドリフト対策とか、あと日植防の防除マニュ アルとかいろいろ見ているんですけれども、その中にさっきから0.01というのが非 常に気になっております。どこに相談していっていいのかなというのが現状です。農協 さんに聞いてもまだよくわからない。県の例えば農水省管轄のところに聞きに行っても よくわからない。このポジティブリストは厚生労働省ですからということで、また違う 部署のほうにも聞いているんですけれども、なかなかはっきりとした対応がまたよくわ かりませんし。  また、先ほどから、今回790以上ですか、検査が始まるということで聞いているん ですけれども、先ほどからこれはすぐにはできませんよという見解、私が聞いた感じな んですが、検査機器がまだ今のところ整備されていないとか、鹿児島県の場合はこれか らですよとかという話ですなんですけれども、福岡とか都会のほうに出荷したときには、 それなりの検査機器があると思いますので、その辺の検査機器の状況が今どういう整備 なのか。  ほんとうに5月に施行されて、今、農家のほうは、先ほどから話があっていますよう に、飛散対策に追われております。これを一生懸命することでコストも上がっていきま す。これはやっぱり法律ですから守っていきますけれども、守るように努力をしていく のは当然ですが、これに対してポジティブリストを施行しますよと言われた後、検査体 制というか、その辺がどうなっているのかなというのが、先ほどから最初は700も調 べずに70ぐらいでいいんじゃないかとかという話も出たんですけれども、それやった ら昔の制度と同じかなと。0.01の飛散に対してそこまで真剣になる必要があるのか とちょっと疑問に思っていますので、よろしくお願いします。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  今日、いろいろスライドの中でADIの話とか、実際の使用レベルの話とか出てきた と思うんですが、それは規制という観点からはきちんとADIの中におさまるというこ とを担保するために、個々の農作物ごとに基準値を割り振っていきますけれども、個々 の基準値を超えたことが直接ADIを超えることにつながるかというと、実は必ずしも そうならないような、データの中でもADIの数%におさまっているというデータがあ りましたので、ほんとうに理解いただきたいのは、規制値を超えたからすぐ何か健康被 害が起きるという値で今、管理をしているということではないというのがまずあります。 実は0.01を超えることの意味が、0.01を超えたものがすぐ非常に危険なものだ とは思わないでいただければというのが一つございます。  ただ、そうは言いつつも、こういう形で規制が始まっていくわけですから、0.01 のところをどう考えていくのかというのはなかなか難しい問題だと思います。実際、基 準値、例えば1ppmとか2ppmとかというものであれば、きちんと使用基準を守っ ていただいて、ドリフトさえなければ守っていただけるんだと思うんですが、そういう 0.01とか低い数字のものについては、場合によってはほかから飛んできたものによ って出る可能性もあるという話はあちらこちらで聞いているところでございます。  相談窓口というのもなかなか難しいんですけれども、やっぱり生産現場でのご相談と いう点では、できれば農水省さんのほうに……。 【引地情報官】  指導者の方に言ってもよくわからないというのでは困るので、すべ てがそうじゃないとは思うんですけれども、新しい問題でございますので、改めて指導 体制を強化するように関係部局にはよく申し伝えたいと思います。そういう対応をして いきたいと思います。 【広瀬補佐】  実際にこれから、5月29日から物が動いていくわけですが、当然い ろいろ、どこまで分析できるのか、分析法の整備状況なんかもありますので、実際にで きる範囲での規制ということにならざるを得ないと。これは当然のことなのかもしれま せん。厚生労働省としても、なるだけ分析法の整備とかにも努めていきたいと思います し、自治体とも協力しながら、多くのものがなるべく分析できるような方策ということ は進めていきたいと考えております。  この辺で、課長、何か総括でちょっと締めくくっていただいて。 【伏見課長】  本日は長時間どうもありがとうございました。  ポジティブリスト制度も確かに分析法がまだ全部できていないとか、いろいろ今後の 課題もたくさんあろうかと思います。我々としても、足りないところは極力充足するよ うにしていきたいと思います。いずれにいたしましても、制度を動かす上で、生産者の 方、事業者の方、それぞれのお立場でのご理解、ご協力が必須でございますので、引き 続きよろしくお力添え、ご支援、ご理解をいただければと思います。  どうもありがとうございました。 【広瀬補佐】  ありがとうございました。  かなり予定を超えてしまいましたが、これで司会のほうにマイクをお返しします。ど うもありがとうございました。 閉 会 【司会】  本日は長時間にわたりまして熱心にご聴講いただきまして、また、熱心に ご意見等をいただきまして、まことにありがとうございました。パネリストの方々もど うもありがとうございました。  出口におきまして、アンケートの回収を行っておりますので、そちらのほうに置いて いっていただければと思います。また、近くでこういう機会がありましたら、ぜひこう いう場にも参加のほうをよろしくお願いいたしたいと思います。  では、以上をもちまして、本日の食品に関するリスクコミュニケーションを終了させ ていただきたいと思います。どうもありがとうございました。 ── 了 ──