05/11/02 平成17年11月2日(北海道小樽市)「食品に関するリスクコミュニケー      ション(輸入食品の安全確保及び残留農薬等のポジティブリスト制度の導入      についての意見交換会)」 食品に関するリスクコミュニケーション (輸入食品の安全確保及び残留農薬等のポジティブリスト 制度の導入についての意見交換会:小樽市) 平成17年11月2日(水) 1 開 会 ●司会(森田厚生労働省食品安全部企画情報課情報管理専門官) 本日は、皆様ご多忙の中、ご参加いただきまして、ありがとうございます。 ただいまから、食品に関するリスクコミュニケーションを開催いたします。 私、本日、司会を務めさせていただきます、厚生労働省食品安全部企画情報課、森田 と申します。よろしくお願いいたします。 初めに、配布資料の確認をさせていただきます。 議事次第を見ていただくと、配布資料につきましては、下のところに記述がございま す。 配布資料として、資料1から資料4の4種類、参考資料といたしまして、8種類のも のがございます。特に一番下の「食事バランスガイド」は、非常に小さい携帯型の資料 になっておりますので、封筒の中に紛れ込んでいるかもしれませんので、ご注意くださ い。もし配布資料がないという方がいらっしゃいましたら、手を挙げていただいて、ス タッフがおりますので、お申しつけいただければと思います。 続きまして、簡単に本日の議事進行につきまして、ご紹介いたします。 議事次第を確認いただきたいんですが、まず、北海道厚生局長、足利聖治よりご挨拶 申し上げた後、リスクコミュニケーションについてということで、10分程度ご説明さ せていただきます。 そして、本日のテーマである、輸入食品の安全確保についてと、 残留農薬等のポジティブリスト制度の導入についてということで、それぞれ35分間程 度説明をいたします。2つのテーマの間には、5分程度休憩をさせていただきたいとい うふうに思います。 そして、その2つのテーマの説明終了予定時刻を2時半ということにしております。 テーマ説明の後、10分程度休憩をとらせていただきまして、パネルディスカッショ ン及び意見交換会をさせていただきたいと思っております。 終了の時刻といたしましては、4時半を予定しております。よろしくお願いいたしま す。 2 挨 拶 ●司会 それでは、足利北海道厚生局長から、開会のご挨拶をさせていただきます。 ●足利北海道厚生局長 ただいまご紹介をいただきました北海道厚生局長の足利と申 します。今日は皆様ご苦労さまでございます。 北海道厚生局、厚生労働省の北海道における出先といたしまして、このような食品衛 生の問題、健康づくりの問題、福祉の関係、社会保険の関係等、幅広く厚生労働省の北 海道における出先機関として仕事をさせていただいております。今回、厚生局の方で、 このリスクコミュニケーションについても、いろいろな方が担当をさせていただいてお ります。 本日は、食品に関するリスクコミュニケーションということで、このリスクコミュニ ケーション、平成15年度から、食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省が中心とな って、全国で開催されておると。開催回数は既に100回を超えておりまして、道内に おきましても、今回で12回目になるという回数を重ねておりますが、皆様も、いろい ろな場面で見たり聞いたりされていると思いますが、なかなかリスクコミュニケーショ ンという言葉は、聞き慣れない言葉でないかと思います。詳しくは、この後、担当の方 からご説明がございますが、いわば消費者の方、事業者の方、行政担当者の方、関係者 の間で情報や意見をお互いに交換をし、理解を深めて考えていこうと、そういう趣旨の 会議ということでございます。 本日は、輸入食品の安全性の確保と、それから残留農薬等のボジティブリスト制度の 導入、そういう2つのテーマとなってございます。 現在、日本の食料の自給率は大変下がってきておりまして、カロリーベースでいいま すと、6割もの食料が海外からの輸入に依存をしていると。こういった輸入食品に関し て、日本の農薬等の基準に反するという例もたびたび報道されております。北海道にお きましては、国内における重要な食料供給基地の役割を担っているわけでございますが、 こういった問題の輸入食品も数多く出回るということで、安全対策、残留農薬の規制な どについても、道民の皆さんに大変関心の高いテーマではないかというふうに思います。 この後、それぞれのテーマについて、現状報告、それからパネルディスカッションと、 意見交換の場を用意をしていただいております。意見交換を通じまして、様々な立場の 方々のご意見を理解して、信頼関係が築かれて、社会的な合意形成の道筋を図ると、こ ういうリスクコミュニケーションの目的が果たせれば、開催に携わる者として、大変幸 いに存じます。 活発な意見交換がなされることを期待申し上げ、また、当地小樽での開催にご協力い ただきました関係の皆様方にも御礼を申し上げ、簡単でございますけれども、挨拶とさ せていただきます。ありがとうございました。(拍手) 3 リスクコミュニケーションについての説明 ●司会 続きまして、厚生労働省企画情報課、広瀬課長補佐から、リスクコミュニケ ーションについてご説明いたします。 ●広瀬厚生労働省食品安全部企画情報課長補佐 ご紹介いただきました広瀬と申しま す。よろしくお願いいたします。 スクリーンの方、ちょっと低いというか、位置が少し下なので、後ろの方は見づらい ところがあるかと思いますが、一応今からするお話については、白黒で恐縮ですけれど も、お手元の資料の方に同じものを入れておりますので、見にくいところがありました ら、そちらを見ながらお願いしたいと思います。 まず、リスクコミュニケーションについてということで、背景の方から説明していき たいと思いますが、食品安全行政を取り巻く動向といたしまして、いろいろ状況が変わ ってきているということがございます。 最初に、食品をめぐる環境の変化ということですが、飢餓から飽食の時代へというこ とで、昔はそもそも食料を確保するということ自体が大変だったわけですけれども、一 応一通りが確保され、先進国においては、むしろ多いというか、必要とされている量よ りも、多くのものが流通できるような状況になっているということがあります。 それから、新しい食の問題というのもいろいろ起きてきておりますし、貿易自体が国 際化していること、それから大量生産・大量流通、長距離輸送の普遍化などということ で、遠くの国から、たくさんのものが運ばれてきているというようなことが起きてきて いるわけです。 また、食品の安全という点では、少し系統が違うものになるかと思いますけれども、 海外旅行というのも、前は一部の方がされていたものかと思いますが、最近はかなり一 般化されてきておりまして、海外に行かれて、その地域において起きている、例えば食 の問題に遭遇するとか、要するに、日本と同じ感覚で物を食べてしまった場合に、不衛 生なものを摂取して、何か起きてしまったりというようなこともあるわけです。 食の安全を守るための国際的な考え方としては、大きく2つが重要だというふうに言 われております。 1つは、フード・チェーンアプローチというもので、生産から消費に至るフード・チ ェーン全段階で安全を確保するということが重要なのではないかということです。これ までの傾向では、生産段階、流通加工段階もそうなんですが、それは置いておいて、最 後の商品になったところで検査をして安全であれば、大丈夫でないかというような考え 方もあったわけなんですが、最終製品の管理ではなくて、生産段階からきちんと安全な 作物、生産物をつくるための管理というのが重要になってきているわけでございます。 それから、もう1つは、リスクアナリシスということで、これはリスク分析とも言わ れているんですが、事故の対応というよりは予防に重点ということで、何か起きてから いろいろやるのではなくて、あらかじめ考えられる範囲で、いろいろリスクを予測しな がら対策をとっていこうということでございます。 その仕組みの1つとして、安全性評価と管理については、きちんと機能的に分けて、 科学的にはどうなのかということと、それを踏まえた、安全の管理というのはどうある べきかということを、きちんと透明性を持ってやっていきましょうというようなことが ございます。 それから、利害関係者間の情報や意見の交換の促進、これはまさにこれからお話する リスクコミュニケーションの部分ですが、結局、食については、生産者や事業者の方も そうですし、流通加工の方もそうですし、消費者の方、行政、皆さん何らかの形で関わ っておりますので、そういう関係のある人たちの間で情報とか意見を、もっと交換して いきましょうというようなことでございます。 続きまして、リスクアナリシスのところを、もう少し詳しく説明していきたいと思い ますが、リスク分析、リスクアナリシスというのは、国民の健康の保護を目的として、 国民がある危害、何か悪いことになる可能性がある場合に、事故の後始末ではなくて、 可能な範囲で事故を未然に防ぎ、リスクを最小限にするためのプロセスということであ ります。これは分析という言葉がついていますので、何か危険性のところを分析すると、 それで終わりみたいなイメージを持たれてしまうかもしれませんが、そういう危険性を 分析して終わりではなくて、リスクを下げていくというような、管理をするためのプロ セスまで全部含めた考え方でございます。 ここにありますように、事故を完全に未然に防ぐというのはなかなか難しくて、そこ にはまだ莫大なコストもかかるというようなこともございますので、実生活の中で可能 な範囲という形で、こういった事故が起こらないようなことをしていきましょうという 考え方でございます。 まず、リスク評価とリスク管理、これは我が国の場合は、リスク評価を行う機関とし て、食品安全委員会が内閣府の方に設けられております。それからリスク管理を行う機 関、厚生労働省、農林水産省が、これまでは、新しいリスク分析という考え方が導入さ れるまでは、リスク評価も含めて行っていたわけですけれども、科学的にどうなのかと いうようなことの透明性が余りよくなかったというようなこともありまして、公正・中 立・科学的に評価する機関として、食品安全委員会が独立して設けられているというこ とでございます。 リスク評価については、健康に悪影響を及ぼすおそれのある物質が食品中に含まれて いる場合、どのくらいの確率で、どの程度の悪影響があるのかというようなことを評価 していただくことになっております。 それから、リスクコミュニケーションの部分は、全体に係る部分でありまして、評価 に関すること、管理に関すること、それぞれ全てのプロセスにおいて、このリスクコミ ュニケーションというのは重要だということでございます。要するに、管理機関側だけ でやればいいとか、評価機関側だけでやればいいということではなくて、食品の安全に 関する情報、評価に関することも、管理に関することも、全て情報の共有と相互の意見 交換ということでいくと。 それから、もう1つ、リスクコミュニケーションの意味合いには、消費者とか事業者 とか関係者の意見について、施策に反映していきましょうというような考え方も盛り込 まれています。 少し具体的に話を進めていきますが、まず、食品のリスクというのは何なのかという ことなんですけれども、ここにありますように、ちょっと言葉としては難しいんですけ れども、食品中に何か悪影響をもたらす可能性のある物質があった場合に、それによっ て生じる悪影響の確率とその程度の関数であると言われています。リスクというのは、 イコール危険ということではなくて、これはもともと日本語にはなかった概念で、なか なか日本語にするのが難しいんですけれども、リスクイコール危険ではない。リスクと いうのは、どの程度危険なのかとどのくらいの確率で起こるのかが混じり合っているも のです。必ず起きることをリスクとは言いません。これは起きるか起こらないか分から ないけれども、何か危ないかもしれないというような、そんなちょっと曖昧なものでご ざいます。 リスクの概念に一番近い言葉と言われているのが、ヤバイという言葉です。ヤバさと いうのが、まさにリスクに比較的概念としては近いらしいんですが、例えば国でリスク 評価をする場合に、この食品はこのくらいヤバイです、みたいな評価がなかなかできな いものですから、これをリスクという言葉で、ちょっと分かりにくい概念ですが、公式 には使わせていただいているという状況でございます。 次に、絶対に安全な食品というのはあるのだろうかということなんですが、食品とい いますか、あるものが危険かどうかというのは、その物質の性質だけで決まるものでは なくて、物質が持っている有害性と摂取量で決まってくるということでございます。有 害なものであっても、ごくわずかな摂取量であれば生体影響が起きない、要するに健康 被害が起きないわけです。逆に、安全性の高いものであっても、多量に摂取すると危険 なことが起きてくることがあります。どんな物質とか食品でも、摂取量によっては、健 康に悪影響を及ぼす可能性があって、リスクゼロというのは実際あり得ないと言われて います。ですから、健康に良い食品でも、食べ過ぎれば体を壊すというような、本来の 目的とは合致しないものになってしまうことがありますので、気をつけていただければ と思います。 まさに、本題のリスクコミュニケーションについてのお話、先ほど厚生局長からも、 一部お話をいただきましたけれども、リスクに関係する人々の間で、関係する情報とか 意見を相互に交換するという、簡単に申し上げれば、そういうことでございます。 具体的に言いますと、有害性がどうだとか、どのくらいの確率が考えられるのかとか、 どの程度であれば、それは受け入れ可能なのかというようなことまで、みんなで考え合 えるというようなところまでいけるといいんですけれども、要するに、関係者の間で理 解を深めて考えていきましょうという取り組みでございます。 リスクコミュニケーションについて、これを落ち着いて澄んだ気持ちで行うことを難 しくしている原因となるものが幾つかあって、それがここにありますように、まず1つ は、リスクの認知ギャップということと、それから食品の安全性についての思い込みと いうのがあって、なかなか静かな穏やかな気持ちでリスクコミュニケーションができな いというようなことになっているわけでございます。 それぞれについて細かく説明させていただきますが、実際のリスクと人々が感じるリ スク、この認知リスクには差があるというふうに言われています。リスク自体がかなり 抽象的な概念ですので、実際のリスクというのは、科学的にこれは決まるはずなんです が、ただ、それは皆さん1人1人の受け取り方が違うというようなことでございます。 これは何も専門家と素人だけではなくて、専門家の間でも、きちんと集まって会議をし て、このリスクはどうなのかということを話し合わないと、それぞれ考えていたリスク というものには、ばらつきはあるわけでございます。 まず、リスクの認知ギャップですが、これは個別の具体的な例というよりは、一般的 に言われている中身でございますけれども、上にあるのは、実際のリスクよりも人々が 大きいと感じられがちなもの。下は、小さいというふうに感じられがちなものというよ うなことでございます。未知のものとか情報が少ないもの、それからよく理解できない ものというのは、リスクを大きく感じがちだと言われております。また、自分でコント ロールできないもの、そういったものも大きく感じられがち。それとは逆に、便利さと か利益が明らかなものとか、自分でコントロールできるものは、リスクは小さいという ふうに思われがちであります。 事例として、まさに農薬のようなものとか、添加物とか、更には遺伝子組換え食品の ようなものもありますが、農薬は、実際、農作物をスーパーで並んでいるのを見ていて も、その中に何か入っているのかいないのか、自分の目で見て確認することはできない し、必ずしも情報があるわけではない。しかも農薬がついている、ついていないという のは、自分でコントロールできないようなものですから、そういうものについて、何か 怖いとか、そういうイメージが持たれがちだということ。それから農薬に関して言えば、 過去に問題となる事例というのが実際起きているというようなことも、非常にリスクが 大きく感じられる原因にはなっているのかなというようなことがあります。 一方で、リスクが小さく感じられるものの例ですが、これは食品そのものではないん ですけれども、例えば自動車のようなもの、非常に移動手段として、また生活をしてい く上で便利であり、また必要であったり、利益というのが明らかに認識できる。しかも 自分で運転していれば、気をつけていれば事故は防げるのではないかというようなこと で、実際のリスクはかなり小さく感じられておりますが、年間で死亡されている方の数 を見ますと、交通事故も一時期に比べれば大分少なくなっておりますが、7,000人 から8,000人の方が、まだ毎年事故が原因で、24時間以内にお亡くなりになって いるというようなことがございます。 それからもう1つ、安全性についての思い込みというのがありますが、何となく自然 由来のものというのは安全というイメージがあって、合成のものは危険だというような イメージがどうしても持たれがちですが、例えばキノコとか、それから動物性の毒とい うと、フグなどもそうなんですが、春でいえば山菜などを採りにいって、秋になるとキ ノコでよく被害に遭われる方がいらっしゃいますけれども、自然物でも危ないものとい うのは幾らでもあるわけですし、この間も、天然の添加物であったアカネ色素というも のの発がん性が科学的に確認をされて、使用禁止されたというようなこともあります。 要するに、自然だから安全だということは全くなくて、安全かどうかというのは、科学 的なデータをもとに、客観的に評価されて初めて言えることなんですが、何となくこれ まで使ってきたものだからみたいな部分はあるのかもしれません。 それから、有害なものがほんの少しでも入っていたら危険。これは先ほども少しお話 をいたしましたが、物が有害かどうかというのは、性質だけではなくて、どのくらいそ れを摂取するかで決まってくるということでございます。有害なものでも、ごく微量で あれば、健康影響が起きないということもあるわけです。 それから、この一番下、賞味期限を1日でも過ぎていれば危険と。一般的にはそうい うふうに思っている方が多いと思うんですけれども、賞味期限については、ある一定の 保存の仕方で保存した場合に、どのくらい保存できるのかというのを検証した上で設定 するようにということになっておりますので、そういうふうに決められているわけなん ですが、ですから、その設定する際にも、ぎりぎりに設定されるというケースは少なく て、多少余裕を持って設定されているようです。ですから、賞味期限を1日過ぎたら、 例えば11時59分の59秒過ぎたら、もう次の瞬間から安全な食品が危険な食品にな ってしまうということではないのですけれども、一般的には期限が切れてしまうと危険 だというふうに思われていると。 それから、賞味期限というのは、当然ある一定の保存方法で適切に保存した場合にと いうのが条件になっていますので、保存方法が悪くて、例えば夏の暑い時期にお豆腐を 買ってきて、暑いところ、テーブルの上かなんかに1日ぐらい、買ってきてからですか ら、半日ぐらいなのかもしれませんけれども、置いてしまったようなケースだと、余り 適切な保存状態ではないので、細菌が増えてしまうというようなケースもあるわけです。 ですから、賞味期限が切れていないから安全とか、切れていたから危険というよりは、 適切に保存をしていれば、賞味期限が切れていても、多少過ぎてでも食べられる場合も ありますし、きちんと管理していないと、期限内であっても腐ってしまうということも あるということをご理解いただきたいと思います。 今日、ここでこういう説明をさせていただいたのは、期限切れの食品を薦めているわ けではございませんので、そこはご理解をいただきたいと思います。 それで、今日、皆様にお配りしている資料の中に、意見交換会に参加いただいた皆様 へというA4のカラー刷りのものがございます。リスクコミュニケーションとはどうい うことかということを、この紙にも、簡単にですが、まとめさせていただいております。 ここで申し上げたいのは、本日の意見交換会の目的でございますが、今日の目的とい うのは、このテーマであります輸入食品の安全対策の現状とか、それから農薬のポジテ ィブリスト制度、非常に難しい制度でございますが、これについて、これから参事官が 説明しますが、そういうようなことで、まず、ここに参加いただいた皆様で情報を共有 しようということと、それから様々な立場から意見交換を行って、この問題について認 識を深めていきましょうということが目的でございますので、よろしくお願いいたしま す。 以上でございます。ありがとうございました。(拍手) 4 テーマについての説明 〇輸入食品の安全確保について ●司会 続きまして、1つ目のテーマである「輸入食品の安全確保について」、厚生 労働省大臣官房・藤井参事官からご説明をさせていただきます。 ●藤井厚生労働省大臣官房参事官 本日、一応ご案内をさせていただいていますよう に、輸入食品と残留農薬について、意見交換会のテーマとして上げさせていただいてお ります。 これは、消費者の方に、食品の安全について、何が一番関心があるんでしょうかとい うご質問をしたときに、輸入食品、農薬、食品添加物というのが御三家として上がって まいります。その中から、今回は2つ取り上げさせていただきました。 2つお断りなんですが、上に看板があるために、スライドが見えにくくなっておりま す。ただ、スライドと全く同じものを、お手元の資料に入れさせていただいております。 まず輸入食品について最初にご説明いたしますが、それは資料2になっておりますので、 前の方はスライドをご覧いただいていいと思いますが、ちょっと見えにくい方は、具体 的には、スライドの何番を説明するということを申し上げますので、大変恐縮ですが、 資料2の方をご覧いただければと思います。 それから、資料2、資料3、輸入食品、残留農薬両方についてなんですが、本日は消 費者の方、生産者の方、事業者の方、そして行政の方、非常にいろんな方のご参加をい ただいております。そういう方々全てにご満足をいただけるような内容というのは大変 難しいものですから、今日ご説明をする内容自体は、基本的なことプラス、そこに必要 な若干の専門的なことをベースにご説明をさせていただくということを、最初にお断り をさせていただきたいと思います。 それでは、最初に、輸入食品について、資料2をご覧いただきながらお聞きをいただ けたらと思います。 まず、輸入食品の安全確保についてということのバックグラウンドとして、現在、我 が国の輸入食品の状況はどんなふうになっているのかを、最初に簡単にご説明をしたい と思います。 1ページ目でいうと、下側の一番右下のところに、小さく2とありますが、その2を まずご説明したいと思います。 先ほど厚生局長のご挨拶の中にもありましたように、現在、我が国の食料の自給率、 グラフでいうと、一番左側をご覧いただきますと、大体カロリーベースで40%となっ ております。その左側に緑色の線でありますのが、昭和45年、今からいいますと、約 30年ぐらい前でありますが、そのとき我が国は60%ぐらいでした。この30年間に、 食料自給率が60%から40%に落ちています。それに比べて、多くの先進諸国という のは、食料自給率が上がっております。フランスは基本的に農業国、そしてアメリカ合 衆国も農業がかなり盛んな国でありますので、アメリカ合衆国はこの図の中には出して おりませんが、自給率は100%を超える状況になっているということであります。 そして、次の2ページの上のグラフをご覧いただきますと、食品等の輸入の状況でご ざいます。180万件と書いておりますのが、食品についての輸入の届出件数になって おります。3,400万トン余りというのが、食品の輸入重量。輸入重量というのは、 微増で増えてきてはおりますけれども、件数がそれに比べて非常に最近増えてきている というのがお分かりいただけるかと思います。なぜかいうことは、なかなか難しいんで すが、輸入をされるものが少量多品種になってきたというのが、一番大きな原因ではな かろうかと思っております。 次、その下の円グラフをご覧いただきますと、食品等の輸入の状況ということで、重 量ベースで書いております。約4分の3が農産物及びその加工品ということになってい るのがお分かりいただけると思います。個々の食品の中で、一番重量が多いものの上位 3つというのが、小麦、大豆、トウモロコシということになっております。 このような状況を踏まえまして、次の3ページの上のスライドでありますが、輸入食 品に対する安全確保の基本的な考え方をご説明します。 まず、上に書いてありますように、国の内外における食品供給行程の各段階において 適切な措置を講じることにより行う。法律ですから、非常に分かりづらい書き方になっ ておりますが、全ての食品の生産、流通、その各々の段階において、適切な対応をとる ということでございます。それを輸入食品ということに当てはめますと、その下にあり ますように、3段階での対応が中心になっております。輸出国段階における対応、輸入 するものが日本に入ってくる段階での対応、輸入されたものが国内で流通する段階での 対応ということであります。 その下を見ていただきますと、最初が輸出国における対応でございます。多くの場合、 輸出国、相手国に対しましては、我が国にいろいろ食品衛生上のどんな基準があるのか という情報を幅広に行っておりますが、それに加えまして、水際での対策でありますと か、国内で輸入食品をチェックしたときに問題が出てきたときに、その問題点について 原因の究明でありますとか、再発の防止を相手国に要請しております。場合によっては、 2国間協議によって監視体制等の充実を図っていく。そして、必要に応じて日本の専門 家を相手国の現場に派遣をしまして、安全対策の確認を行うということをやっておりま す。 基本的には、次の4ページの上にありますが、輸入食品というのは、全て届出をする 必要がございます。その届出先といいますのが、厚生労働省が設置をする検疫所で、3 1の全国の検疫所で受付を行っております。ご当地小樽の検疫所においても、輸入届出 の窓口が設置をされております。そして、輸入食品の検査を実施するということも大き な役割になってきますが、それについては6ヵ所でやっておりまして、特に複雑な残留 農薬の検査等については、東日本では横浜、西日本では、神戸にある検査センターで一 括して実施をしているということでございます。 その主な作業、チェックというのを、食品衛生監視員という資格の方がやっておりま して、全てその検疫所の中で、一番直近では、300人の食品衛生監視員が輸入食品等 の対応に従事をしております。 この4ページの下のグラフで何が言いたいかといいますと、ここ15年ぐらいで、食 品衛生、食の安全というものの問題がクローズアップされた関係から、食品衛生監視員 を3倍以上増員をしております。全ての公務員が削減をされるという中で、食の安全と いうことを考慮して、食品衛生監視員については、増員をしているということでござい ます。 5ページの上のところにまいりますが、輸入時に何を重点的に監視をしているのかと いうことをお示ししております。輸入届けが出されることになりますので、法律違反の 有無をチェックする。そして必要なものについては検査をする。輸入業者の方への指導 等々をやっております。 そして、5ページの下のところでありますが、食品等の輸入の届出について、少し説 明をしております。法律に基づいて、食品を輸入しようとする者は厚生労働大臣に届出 なければならない。この窓口が、先ほど申し上げましたように、31の検疫所というこ とになっております。届出事項は、その四角の中にお示しをしておりますように、輸入 者の氏名、住所でありますとか、どういう食品をどれだけ輸入するのか。添加物であり ますとか、加工食品の場合には、原材料、製造加工方法、そういうものについて届出を していただくようになっております。 次の6ページの上の図でありますが、輸入は、輸入業者さんがするということになり ますので、輸入業者さんが、とりわけ衛生管理、安全管理について、十分な認識を持っ ていただく必要があるということであります。それは法律の上でも、そこにお示しをし ておりますように、営業者は食品の安全性の確保について、第一義的責任を有するとい うことになっております。これは輸入業者さんだけに限った規定ではありませんで、こ の営業者という中には、輸入をされる方、販売をする方、流通を担う方、そういう方々 が営業者という位置づけになっております。全ての食品販売、流通等に関わる業者さん については、食品の安全性確保について、まず責任を持っていただく必要があるという ことが法律で規定をされているということでございます。特に輸入業者さんにつきまし ては、そういう法律の条項を踏まえまして、幾つかの検疫所になってしまいますが、輸 入をする前に相談を行うとか、新しいものを輸入される業者さんについては、自主的な 検査を指導するということをやっております。 それから、水際での対策ということになりますと、検査というのが、もう1つ大きな 役割になってまいります。6ページの下の、輸入時における検査制度というところであ りますが、国が自ら計画に基づいてやる検査がモニタリング検査という検査であります。 モニタリング検査、今年度は7万7,000件を実施する予定になっております。これ は全輸入の届出件数の割合でいいますと、恐らく4%と5%の間ぐらいになるのではな いかと思います。このモニタリング検査というのは、国の費用で実施をする、いわば抜 き取りというんでしょうか、スクリーニング検査になります。このモニタリング検査に 該当した食品については、試験結果の判定を待たずに輸入が可能になります。しかし、 一旦問題が出ますと、回収等をしていただいたりする必要も出てきますので、生鮮食品 等の特殊なもの以外は、多くの場合は、業者さんの方でモニタリング検査に当たったら、 倉庫の方に保管をして、結果が出るまで輸入をストップするというようなことをやって おられることが多いと思います。 次の命令検査ですが、モニタリング検査で違反が何度も確認をされるなど、非常に衛 生上、問題が多いと想定される食品については、国が業者に検査をすることを命令いた します。それを命令検査と申します。命令検査につきましては、業者さん、輸入者さん の方が費用を負担する。そして結果が分かるまでは、輸入ができないということになっ ております。 一番下の自主検査というのが、日本に今まで入ってきたことがないようなものを輸入 をしようとされるような業者さんについては、国の方で、安全性をチェックしてから輸 入をしてくださいという指導等をして、業者の費用で検査が実施をされております。 その次の7ページの上の方でありますが、もう一度同じようなものをお示ししており ますが、食品衛生上、問題が少ないものを下の方に、上へ行くほど問題があって、強い 措置、対応がとられるものという図になっております。一番下の方で、スクリーニング 的に実施するモニタリング検査に問題がありますと、モニタリングの強化ということで、 抜き取りの頻度を上げて検査をすることになります。そこでまた違反が出ますと、全て 検査をしろという命令を出して検査をしていただくということになります。それでもか なりの頻度で違反が出るというような場合については、最後の手段として、輸入禁止と いう措置もとれるようになっております。 その一番右の方に、179万件分の19万件と書いておりますが、水際で検査をされ るのが、総届出件数の、これでいいますと、10%強ぐらいが検査をされているという ことでございます。 次に、7ページの下ですが、国がやっているモニタリング検査、どんなことをやって いるのかということを具体的にお示ししております。これは横浜検疫所の例を少しとっ たものでありますが、横浜検疫所では、通常2人1組になりまして、年間計画に従いま して、検査のための食品のサンプル採取を実施しております。一番左の方は、冷凍にな ってきている肉か魚のようなものを採取している。右側の上の方は、オレンジを採取し ている。右の下の方については、小麦、小豆、大豆、そういう類いのものを採取してい るということであります。横浜検疫所の例で言いますと、輸入品を収納している倉庫が 非常に広範囲に立地をしておりますので、このサンプル採取をするだけで、1日仕事と いうことになってしまいます。 次の8ページの上の方をご覧いただきますと、検体の採取というのが1日仕事になっ てしまいますので、翌日の朝、検査センターの方に検体を搬送いたします。冷凍になっ ているものは、きちんと温度管理がなされるような形で搬送をして、検査センターの方 では、検査に必要な重量が確保されているかどうかということも含めまして、受付をす るということであります。 その下、理化学検査の流れというところであありますが、例えば検査というのは、残 留農薬にしましても、その他必要な添加物などの検査にいたしましても、サンプルを取 ってきて、それを機械に入れればすぐ結果が出るというものではありませんで、まず、 一番左の上の方にありますように、非常に細かく砕いて均一にいたします。そして検査 の妨げになるようないろいろなものを除くという作業をして、初めて検査にかけること ができるということであります。粉砕・均一化、抽出・精製とありますが、非常にここ の部分で時間がかかって、なかなか最後の検査にかけられないという状況であります。 それでも横浜の検査センターの場合は、大体3日から3日半以内に全ての結果を出せる という体制で検査を実施しております。この検査の結果によりましては、例えば輸入禁 止措置的なことまでやるわけでありますから、正確性というものが非常に要求をされま して、大変気を遣う検査になっております。 次の9ページ上でありますが、輸入食品は、我が国だけが輸入をしているわけではあ りません。世界の各国が輸入食品を扱っているということから、常に海外と情報を交換 しております。海外における情報の積極的な収集というところでは、日本大使館を通じ て、または国立医薬品食品衛生研究所、そして食品安全委員会事務局、そういうところ が国際機関でありますとか各国の情報というものをいち早く入手して、問題がないかと いうことを分析するという体制になっております。現に問題の食品が我が国に輸入をさ れて、慌てて検査をしたり回収をしたというケースが、そこの下にありますように、サ ルモネラに汚染をされていたという情報があったアメリカ産のアーモンドでありますと か、使用してはいけない添加物が使われていた中国産はるさめ、そういうものが最近で は海外情報に基づいて対応をとったものになっております。 そして、通常は抜き取りサンプリングということでモニタリング検査をやりますが、 業者さんに国が検査することを命令する検査があるということは、先ほど申し上げたと おりです。厚生労働大臣による検査命令でありますが、9ページの下のところでありま す。検査命令、これも担当者が勝手に検査命令を業者さんにするということでは決して ございません。9ページの下の図の真ん中のところにありますが、残留農薬等、このモ ニタリング等で1回目違反が出たときには、モニタリングの頻度を2件に1件上げます。 それでも違反が出たということになりますと、違反が極めて高い確率で起こるというこ とを判断して検査命令をかけるということが、1つの要件になっております。 そして、上の方でありますが、本当に緊急避難的に、例えばということでO−157 のことが書いておりますが、輸入食品からO−157が出て健康被害が広範に出そうだ とか、出たということになりますと、直ちに検査命令を発動するということになります。 一番下のところに、検査命令解除についてです。大臣が検査命令を発動いたしますの で、簡単に解除するというわけにはまいりません。再発防止策が確認をされるまでは、 解除ができないということになっております。 次、10ページの上のところでありますが、今ご説明をしてきたのが、輸入食品の監 視体制の中で、輸出国段階での対応、輸入時、水際での検疫所における対応ということ をご説明をしてきました。輸入食品が国内に入りましてからは、各都道府県、保健所す る設置する市というものが、日常検査の中でチェックをしていくということになってお ります。主に輸出国段階、輸入時の段階が国の役割、そして国内での監視体制は、都道 府県等の役割ということで、役割分担が決まっております。 10ページの下のところでありますが、どんな違反事例が多いのかというところでご 覧をいただきますと、上から4つ目のところ、構成比としましては、65.5%となっ ている、規格基準に違反する食品等の販売等の禁止というところがあります。主な違反 内容というものが一番右に書いておりますが、中でも多いのが、冷凍食品の微生物基準 違反、大腸菌群が基準よりも多かったというところが最も多くなっております。そのほ か、我が国で使用が認められていない添加物が検査で引っかかった、かび毒であります が、アフラトキシンの汚染が見つかったというようなものがあります。大体平成16年 でいきますと、1,000件ちょっとが検疫所等の段階で見つかっております。それは 検査をした中でいいますと、割合でいきますと、問題があったのは、0.1%ぐらいと いうのが実情でございます。 次、11ページ上の方でありますが、そういう違反がもし判明をした場合ということ になりますと、販売流通の禁止措置というものがとられます。違反食品が国内に流通を しているということが分かった場合には、都道府県等が回収をするということになりま す。都道府県等が逆に検査をして、輸入食品に問題があるということを発見した場合に は、ほかの都道府県の方にも、輸入食品ですから、流通をしている可能性があるので連 絡をする。国の方にも連絡をいただいて、検疫所の段階で、その食については更にチェ ックを強化するということをいたします。違反のあった業者の方については、原因究明 を要請する。そして、同一製品を再輸入をしようとするときには、まず、サンプル品を 持ってきて検査をしていただいて、それで問題がないということが分かったものだけに 輸入を認めていくということをしております。 こういう輸入食品の違反情報は、インターネットアクセスできない方は大変恐縮なん ですが、厚生労働省のホームページの中で非常に詳細に公表しております。具体的に、 その一番最後のところで、そのホームページのアドレスも書いておりますので、ご興味 がある方については、ご参照をいただけたらありがたいと思います。 前半の輸入食品については、これで説明を終わらせていただきたいと思います。 ●司会 それでは、ここで5分間休憩を設けさせていただきたいと思います。 私の時計で今2時2分でございます。2時7分になりましたら再開したいと思います ので、お時間になりましたら、席にお戻りください。 休 憩 (14:02 〜14:07) 〇残留農薬等のポジティブリスト制度の導入について ●司会 それでは、時間になりましたので、「残留農薬等のポジティブリスト制度の 導入について」をご説明いたします。 ●藤井参事官 同じように、スライドが見にくいものですから、お手元の資料3をご 覧いただきたいと思います。 まず、残留農薬等のポジティブリスト制度ということの前に、現在、農薬がどのよう に使用されるに至るのか。そして、農薬の食品中の残留基準というものが、どのように なっているのかというのを簡単にご説明したいと思います。 1ページの下の図でありますけれども、農薬というのは、どんなものでも勝手に使っ ていいというわけではありません。農薬として使えるのは、安全性が確認をされたもの だけということになっております。使うだけではありませんで、製造、輸入、販売とい うものもきちんと安全性が確認をされ、農薬として、法律によって登録をされたものだ けが可能になるということであります。 安全性、逆に言うと毒性ということになるんですが、どういう試験をするかというの を下にお示ししております。これは最初の方は、動物による実験ということになります。 1番が動物による毒性の試験。2番目が環境中でどの程度分解をするのか。残留がある のかどうかという環境影響試験を実施した上で、安全性が確認をされたものが農薬とし て登録されるということであります。 このように、農薬として使おうとするときには、安全性がチェックをされるわけです が、それとは別に、食品の中に、残留する農薬に対しても規制がかけられております。 2ページの下の図になりますけれども、食品の安全性確保のために、先ほど申しまし たように、残留農薬の規制が厚生労働省の方で決められております。その基本的な考え 方といいますのは、毎日の食事を通じて取ることになる農薬等の量が、健康に影響を与 えない量を超えないようにすること。ここではADIということを書いておりますが、 ADIについては、その次から説明をいたします。簡単に言いますと、健康に影響を与 えない量を超えないようにすることというのが基本的な考え方になります。 3ページの上のところでありますが、ADIというのは一体何かといいますと、日本 語では許容一日摂取量。ADIというのは、もともと外国語でありましたから、Acc eptable Daily Intakeという、おのおのの頭文字をとってADI、 日本語では、許容一日摂取量と言っております。これは、人が生涯にわたり、その物質 を取り続けたとしても、健康に悪影響があらわれないと考えられる一日当たりの量とい うことであります。人には子供もいますし、大人もいます。太った方、やせた方もおら れますので、その量をあらわすのには、体重1キログラム当たりの、通常はミリグラム であらわされます。 3ページの下でありますが、ADIというのは、そもそもどうやって決めるかという のをお示ししております。先ほどご説明しましたように、一生涯取り続けても、健康に 有害な影響を与えない量ということなので、この値を求めるときに、いいかげんな決め 方をするということはできません。それで、一番上のところに書いてありますように、 GLPと言いまして、安全性試験の適正実施に関する基準で、一応どういう試験を、ど ういう方式でするかということが決まっております。それに基づいたデータによって評 価がなされます。評価も厚生労働省が勝手にするのではなく、内閣府にある食品安全委 員会で評価がなされるということになっております。 下に、どんな試験をするのかというのが書いてありますが、これも人に実験をするわ けにはいきませんから、基本的には、ネズミなどの動物を使った実験ということになり ます。例えば農薬ということを例にとりますと、1回の農薬の投与により、急性の影響 があるか調べる急性試験でありますとか、反復投与をして、慢性的な影響があるかとい うのを見る慢性の試験でありますとか、発がん性のものがあるかという発がん性の試験、 子供に奇形を生じさせる作用があるかという催奇形性の試験、妊娠出産に影響があるか ということを調べる繁殖の試験、各種のこういう試験を実施いたします。これらの各種 の安全性試験、毒性試験、この全ての試験について、有害な作用の認められない量とい うものを、そこにお示しをしておりますように、無毒性量と呼んでおります。 そして、この試験というのは、基本的に動物実験であります。人にも子供、大人、太 っている人、やせている人、男性、女性という差があるということを考慮しまして、A DI(許容一日摂取量)というのは、無毒性量の100分の1、安全係数を100とし て、100分の1を掛けた量を許容一日摂取量(ADI)と決めております。これは、 日本で勝手に安全係数100と決めているというのではありませんで、世界的に通常は 100分の1にするという考え方になっておりますので、日本もそういうものをとって いるということであります。 次の4ページの上を見ていただきますと、これを図示したものであります。例えば農 薬を例にとりますと、農薬の量を横軸に、そして、その農薬の人への影響を縦軸と考え ますと、常識的に考えますと、農薬の量が増えると、比例して健康影響も大きくなると いうことが予想されます。それがちょうど原点から右方向に点線で図をお示ししており ますが、通常、こういう具合に影響が出るのかなということを予想されるのかも分かり ません。しかし、実際のところは、ある量まで農薬が増えても、健康に対する影響とい うものは出ません。そして、その健康に影響が出ないところの最大の量というのが、無 毒性量と書いてあるところになります。そこの時点を過ぎますと、急に健康影響があら われる。ただし、そこから直線的にあらわれるのではなくて、通常はS字状のカーブに なっておりますが、S字状のカーブのように、健康影響があらわれるということが知ら れております。 そこにADIというのをお示ししておりますが、無毒性量に安全係数を掛け、つまり 無毒性量の100分の1をADI(許容一日摂取量)と決めております。後に出てまい りますが、実際に例えば農薬ですと、残留するようなレベルというのは、もっともっと そこよりも下のレベルということになります。残留農薬の基準がオーバーした食品が流 通をしたというような報道がされることがあります。しかし、そういう報道の中でも、 一度ぐらいそういうものを食べても、健康に大きな影響はないでしょうということがつ け加えられることが多いと思います。これがこの図でお分かりをいただけるのではない かと思います。実際の使用レベルは非常に少ないので、たとえADIを超えたとしまし ても、人に影響が出るというところよりは、かなり低いレベルでの値であるということ であります。 今までは、残留基準を決める一番基礎になるADI(許容一日摂取量)というものに ついてご説明をしたんですが、次からは、農薬の在留基準についてご説明をしたいと思 います。 4ページの下にもありますように、残留農薬基準というのは、農作物に残っていても、 健康への影響という点からは、許容できる農薬の量ということが、簡単に言うと言える のではないかと思います。 次の5ページの上にまいりますと、残留農薬基準というのは、どのように決められて いるのかということであります。一言で言いますと、上にありますように、日本人が平 均的に食べる食事中に含まれる農薬の量というものを推計して、全ての食品中の農薬の 合計が、その農薬の許容一日摂取量、先ほどのADIを下回るように基準を設定すると いうことであります。その際、留意をされているようなことが、その下に書いてありま す。まず、農作物以外、水等の環境中からも、場合によっては農薬が体内に入ってくる かもしれないということで、許容一日摂取量の8割を下回るように基準が設定をされて いるということが1点であります。 それから、1つ飛ばしていただいて、下から2つ目の丸でありますが、国民平均とい う平均的な人を考えるだけではなくて、子供さん、お年寄り、妊婦さんも考慮して基準 を決めているということであります。 そして、一番最後のところ、農作物といっても、例えばキュウリとパセリでは、食べ る量が明らかに違ってくると思います。そういう食べる量等が違うことから、基準とい うものは、農作物ごとに設定するということをしております。 そういう基準を設定した上で、上から3つ目の丸のところでありますが、農薬の使用 基準というものが、この残留農薬基準を超えないように設定されるということでありま す。 非常に簡単に申し上げますと、5ページの下のところでありますが、農薬というのは、 非常に厳密な安全性評価のもとに認められ、そして、そもそも残留基準を超えないよう に使用基準というものがセットされます。したがいまして、使用基準を守れば、決して 残留基準というものを超えることがない。通常の食品の食べ方をしておりましたら、決 して許容一日摂取量を超えることがないと、こういう図式になっております。 現実に、食品中の農薬の残留の実態というのはどうなっているのかというのが、次の 話でありますが、6ページの下から見ていただきますと、これは、食品中の残留農薬を、 1日どれぐらい取っているのかということを調べたものであります。説明にもあります ように、平成3年から実施をしており、平成14年、このスライドでいいますと、一番 新しいデータによりますと、健康に影響を与えることがない量、許容一日摂取量(AD I)というものを説明いたしましたが、それに対する割合というものが、ここに示され ております。それからいいますと、平成14年は21農薬を調べて、全て2%以下でし た。ここまでは取っても安全ですよというものの、まだ、50分の1以下であったとい うことであります。 次の17ページの上をご覧いただきますと、これは、加工食品についての残留農薬調 査であります。対象食品を毎年変えて実施をしております。これも14年度ということ で見てみますと、調査対象食品全てに農薬が検出されたわけではなくて、むしろ農薬が 検出をされた加工食品の方が少なかったということが、これでお分かりになると思いま す。農薬が検出をされた0.2%のものについても、農薬自体の量は非常にわずかであ ったということが、この結果でございます。 7ページ下は、農作物そのものに、どれだけ農薬が残留をしているのかということを 調査した結果になっております。これも下側の平成13年度というところで見ていただ きますと、農薬が検出をされたのは0.5%である。そして、基準を残念ながら超えて いたものが0.01%ありました。この0.01%を多いと見るのか、わずかであると 見るのか、それは評価が様々でありましょうが、全体的にいうと、比較的農作物中の残 留農薬というのは、適正に管理をされている状態にあるのではないかと思います。 次、8ページを見ていただきますと、上の方でありますが、科学的にデータ上、問題 がないといっても、それでも不安だと思われる方があるかも分かりません。その方々の ために、加工調理をすることによって、かなり農薬か減らせるということが、科学的に も証明をされております。特に水溶性の農薬などの場合は、よく流水で洗うと、9割以 上の農薬が落ちるということのようでもあります。 そういう状況の中で、今回、国の方がポジティブリスト制度というのを、農薬の残留 基準に導入しようということを考えております。一体ポジティブリスト制度というのは 何かというのをご説明したいと思います。 9ページの上の図であります。 ポジティブというものの対をなすものがネガティブということでありますので、まず、 ネガティブリストというのは、そこにもありますように、規制をするものだけをリスト 化するということであります。健康に関する分野で、ネガティブリストの例を1つ挙げ ますと、化粧品などがそうではないかと思います。化粧品というのは、使える物質とい うのが原則自由であります。そして、使用してならないものだけがリスト化をされてい る。そういう意味で、ネガティブリストということになります。 片やポジティブリストというのは、原則禁止をされた状態で、使用を認めるものだけ をリストアップするというものであります。これは、食品の分野でいいますと、食品添 加物がその典型になっております。食品添加物は、ご存じのように、国が認めたものし か製造、輸入、販売、使用等ができないということになっております。 現在、農薬の規制というのは、このどちらに当たるのかというと、いわゆるネガティ ブリストという中に入ることになります。残留農薬基準というのは、現在、食品衛生法 上、約250しか設定をされておりません。その設定をされたものについては規制が可 能ですが、基準を設定していないものについては、基本的には規制することができない という状況にあります。特に輸入食品が非常に多く入っているということを前半に申し 上げましたが、日本では認められていないような農薬が海外で使用されたとしても、よ ほどの健康被害が直接あるような場合を除いて、日本の法律では規制ができないという ことになっております。そこで、残留農薬規制の問題につきまして、ネガティブリスト 制度からポジティブリスト制度へ変更をしようということになったわけであります。 9ページの下の方をご覧いただきますと、残留農薬のポジティブリスト制度とはどん なものかというのをご説明しております。基準が設定されていない農薬等が一定量を超 えて残留する食品の販売等を禁止する制度ということであります。ここでは、基準が設 定されていない農薬等が一定量を超えてということを書いてありますが、基準が設定さ れていない農薬については、検出をされたら、全て禁止にすればいいのではないかとい うことをおっしゃる方もおられます。ただ、それは農薬をいろいろと検査をするときに、 器械の検出限界というものもあります。それから、環境中にいろんな理由で農薬成分等 が出て、そういうものから、意図しない段階で汚染をされる可能性もあるということも ありまして、一応ここでは検出されないことというのではなく、一定量を超えて残留す る場合は禁止するという制度になっております。 次に、10ページの上のところでありますが、一定量というのは何かということであ ります。人の健康を損なうおそれがない量というのを一定量と呼んでおります。そして、 一定量としては、0.01ppmを設定することにしております。0.01ppmとい うのは、どれぐらいのイメージなのかということを大まかに申し上げますと、ppmと いいますのは、100万分の1になります。したがいまして、0.01ppmというの は、1億分の1です。日本の人口が1億2,000〜3,000万ですから、非常に大 まかに言いますと、日本人全体の中で1人ぐらいいるかいないかと、そういう頻度とい うんでしょうか、それが0.01ppmのイメージでございます。これを一律基準とい うことで呼んでおります。基準が設定されていないような農薬の場合につきましては、 この0.01ppmを超えると違反ということであります。 10ページの下のところの、ポジティブリスト制度を採用している他の国の一定量に ついての考え方でありますが、この中で、一番最近改正があったのが、EUであります。 EUについては、0.01ppmという値を設定しております。EUの中のドイツは、 その前から0.01ppm、アメリカは、いろいろと物によるんですが、小さい方は0. 01ppmとなっています。ニュージーランドが0.1ppmということになっており ますが、諸外国の状況を見て、ニュージーランドは少し高いのではないかということで、 改正をする検討に入っているようであります。 このポジティブリスト制度は何を対象にするかというのが、11ページの上のところ に書いてあります。これは農薬が一番数が多くて主なものになるんですが、農薬だけで はありませんで、動物用医薬品と飼料添加物も対象になります。対象食品については、 加工食品も含めての全ての食品ということになっております。 ただ、11ページの下の方をご覧いただきますと、全ての農薬等が規制の対象になる のかといいますと、ならないものがございます。下の※印のところに書いておりますけ れども、人の健康を損なうおそれがないことが明らかなものとして厚生労働大臣が定め たもの、こういうものについては、ポジティブリスト制度の対象から外れます。具体的 に幾つかの例をそこに挙げておりますけれども、オレイン酸、レシチン、これはアミノ 酸でありますが、食品添加物として使用が認められているものが、農薬としては、殺虫 剤として使われているものです。よく食品などにも使われる重曹、これも農薬として使 われている。こういうものについては、人の健康を損なうおそれがないことが明らかと いうことで、規制の対象からは外されております。 次、12ページでありますが、この規制がいつから実施されるかということは、来年 の5月までに実施するということであります。上の図の下の方に、ちょっと小さな字で 書いてありますが、法律の改正が平成15年5月30日にあって、それから3年を超え ない範囲ということでありますから、来年の5月29日というのが、デッドラインとい うことになります。ですから、それまでに実施をすることになります。 ポジティブリスト制度について、概略を断片的にお話したんですが、改めてポジティ ブリスト制度が導入されると、どういうふうに変わるのかというのを、もう一度簡単に ご説明したいと思います。 12ページの下の図であります。これは、現行の農薬等の残留規制であります。残留 基準が定められているもの、農薬が249、そして動物用医薬品等が33あります。そ れらに関しては、現在、残留基準を超えたものについては、販売等が禁止されておりま す。12ページの図の中の下の方にありますが、基準が設定されていないものについて は、農薬がたとえ残留していたとしても、販売禁止等の規制がかけられないというのが 現状であります。 ポジティブリスト制度が導入されると、どういうふうに変わるのかというのが、13 ページの上の図であります。一番左の方にありますように、基準があるものについては、 基準を超えたならば販売流通等が禁止される。これは現在と同じであります。 真ん中のところに、基準が定められていないものについては、健康を損なうおそれが ない量、これを一律基準と言っております。値としては、0.01ppmということで ありますが、その値を超えて、農薬等が残留する食品の販売流通が禁止になる。ここが 大きく変わる点であります。現行では、ここの部分というのが、規制をすることができ なかった。それがポジティブリスト制度を導入することによって、一定量以上、認めら れていないものが含まれているものは全部禁止ですということに、大きく制度が変わり ます。 また、一番右のところには、人の健康を損なうおそれがないことが明らかな食品添加 物でありますとか、料理に使われているような重曹でありますとか、そういうものにつ いては、制度の対象外であるということであります。 もう一度、一番左のところに戻っていただきますと、現在の基準というのは、農薬で いいますと249、しかしながら、世界的に農薬というのは700余り使われておりま す。現行の基準だけで規制をしてしまいますと、700マイナス250で、約450の 農薬については、全く日本では基準が設定されていないので使えないことになってしま います。ただ、6割も輸入食品に頼っているに日本において、そういうものを全て禁止 をしてしまうということが、現実問題ではないということもありまして、一番左の四角 の中に書いてありますように、世界で使用されている農薬に関しては、国際的な基準等 を参考にして、通称暫定基準と申しておりますが、暫定的な基準を定めるということに なっております。 その暫定基準でありますが、14ページの上のところをご覧いただきますと、暫定基 準をご説明する前提として、我が国の残留農薬基準の設定状況、これは今年の4月現在 の数字になっておりますが、これを簡単にご説明いたします。 右上のところに、食品衛生法による残留農薬基準設定農薬数246とあります。そし て、一番上には、国際的に使用が認められている農薬というのが約700ある。その差 が、先ほど申し上げましたように、450ぐらいある。 片や、左側のところを見ていただきますと、農林水産省で、法律により、国内で使用 できる農薬数というのが350、そのうち食品衛生法で残留農薬の基準が決まっている というのが、145プラス54で約200。ですから、日本で使われている農薬の中で、 残留基準がないものが、現在でも150ぐらいあるということになります。このままポ ジティブリスト制度というものが導入をされると、現実問題として、その150の農薬 すら使えなくなってしまうということにもなってしまいます。 こういうことから、14ページの下のところでありますが、国民の健康の保護とポジ ティブリスト制度の円滑な導入、この2つの目的で、暫定基準というものを設定しよう ということをしております。先ほども申し上げましたように、国内で使われている農薬 すら使えなくなる。今まで輸入をされていた農作物の、かなりのものが止まってしまう というのも現実的でないですし、かといって、いいかげんなことでそれを認めてしまう ということも問題がありますので、あくまでも科学的な根拠に基づいたデータによる暫 定的な基準を設定しようとしたわけであります。 そして、そういうものについては、具体的な現在基準がないものですから、15ペー ジの上でありますが、科学的な根拠に基づいて設定された基準というものを参考にする ことにいたしました。 一番上が国際基準、国際的に合意をされた基準であります。2つ目が、一番最初のこ ろに説明をいたしましたように、農薬を登録するときには、安全性の試験を実施します。 その試験に基づいたデータであります。3つ目が、このポジティブリスト制度を我が国 に導入しようというときに、外国の方から、科学的なデータを出して協力をしてくれる と申し出があった5つの国と地域、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、 EUの基準、この3つを参考にして決めることにしました。 具体的な決め方でありますが、15ページの下のところでありますが、まず、我が国 も参加をして国際基準を決めておりますので、最初は国際基準である、通称コーデック ス基準と呼んでおりますが、それを優先する。次に国内の農薬を登録するときに、いろ いろ安全性のデータを出したデータを参考にする。両方がない場合には、外国の基準を 参考にするということでやっております。 具体的な暫定基準をどのように設定するかについては、16ページの上のところをご 覧いただきますと、1つの例として、農薬Bというものが、現在、我が国では小麦にし か基準が設定されていないとします。しかし、国の内外でほかの作物、みかん、そのほ か牛の飼料にも使われているとした場合に、暫定基準をどのように設定するかというの は、みかんの場合ですと、我が国の農薬を登録することきに求めた基準なりデータを参 考にする。そして、飼料から牛肉とかミルクの中に残っている農薬については、まず、 牛肉については国際基準、ミルクについては海外の基準、こういうものを参考にする。 しかし、お茶に対しては、現行もない、そして農薬を登録したときの安全性のデータも ない、国際基準もない、海外のデータもないということになりますと、暫定基準という ものが設定をされずに、ここは一律基準、つまり0.01ppmというものが設定され てしまうということになります。 今回、ポジティブリスト制度は、加工食品を含む全ての食品に適用されるということ を申し上げました。16ページの下のところでありますけれども、加工食品について、 国際基準が設定をされているものについては、その基準を持ってきて暫定基準を設定す るということになっております。 加工食品について、国際基準が設定されているといいますのは、例えば小麦粉とかラ イ麦粉とか植物油とか乾燥の果物、トマトジュースとかリンゴジュース等々、それほど 多くのものではございません。 それでは、それ以外のものについては、どういう考え方でするのかというのが、その 下に書いております。基本的には、残留基準に適合した原材料を用いて製造又は加工さ れたものは、販売が可能なものと考えるということであります。 次の17ページの上のところでありますが、暫定的に設定をした基準というものにつ いては、2つの考え方で見直しをすることにしております。1つが、まず下の方であり ますが、我が国の国民がどういう食物をどれだけ食べているのか。その中に残留農薬は どの程度あるのかということを調査して、その結果に基づいて見直しの優先順位づけを する。又は、国際機関が新たなデータによって非常に危険かも分からないと、問題があ るかも分からないといったものについては、早急に見直しをするというのが下の方であ ります。それ以外のものについては、現時点での考え方は、暫定基準というのは、諸外 国、国際基準を参考にしましたので、それらの変更に応じて見直すというものでありま す。 今後どういう予定で進むかということが最後でございますけれども、もう11月であ りますが、11月末までに関係の法令等々の公布・告示、それに基づいて通知をすると いうことを考えております。約6ケ月間の周知期間を設けて、来年の5月29日までに 法の施行をするという運びになる予定であります。 以上であります。 ●司会 それでは、ここで10分程度休憩をさせていただきたいと思います。 今、私の時計は14時58分ですので、15時8分から開始したいと思います。 5 休 憩(14:58 〜15:08) 6 パネルディスカッション及び意見交換 ●司会 それでは、時間になりましたので、ただいまからパネルディスカッション及 び意見交換を始めます。 パネルディスカッション及び意見交換の議事進行につきましては、コーディネーター の広瀬課長補佐にお願いしたいと思います。 それでは、よろしくお願いします。 ●コーディネーター(広瀬補佐) 意見交換のコーディネーターとして、進行の管理 をさせていただきます。 まず、パネリストのご紹介をさせていただきます。 真ん中の方からになりますが、小樽市消費者協会の成瀬慶祐会長でございます。 皆様の方から見て右のお隣になりますが、株式会社セイコーマート輸出入部の張嶢次 長でございます。 その右隣になりますが、内閣府食品安全委員会事務局評価課の島田和彦課長補佐にな ります。 そのお隣が、農林水産省消費安全局の引地和明消費者情報官でございます。 そしてまた、こちらの方になりますが、北海道保健福祉部食品衛生課食品安全グルー プの高橋俊幸主幹でございます。 その左の方になりますが、先ほどプレゼンをさせていただきました厚生労働省大臣官 房の藤井参事官でございます。 以上、6名で進めていきたいと思います。 パネルディスカッション、それから、意見交換の進め方について、まずご案内させて いただきたいと思いますが、こちらの方は、まずテーマごとに議論を進めさせていただ きます。 本日は、輸入食品の安全対策と、それから農薬のポジティブリスト、それぞれ2つの テーマがございますので、1つ1つ進めていきたいと思います。 また、時間が取れましたら、おしまいに、食品安全全般について自由に意見交換をい ただく時間というのを設けたいと考えております。 それでは、輸入食品の安全対策の方から始めたいと思いますが、本日は、輸入食品の 安全対策について、現在行われている取り組みというのを紹介させていただきました。 安全を確保するためには、どういうことをしているのかということを、冒頭紹介させて いただいたわけですが、それでも安全だと思えないとか、安心できないという方もいら っしゃると思います。 まず、この輸入食品の安全のことについて、安心できないということを解消するため には何が問題なのかとか、どうしたらいいのかということについて、まず、パネラーの 間で議論を進めていきたいと思います。 引き続き、パネラー間の方が一通り終わりましたら、会場の方にも、この問題につい ての意見を求めたいと思います。 それでは、消費者のお立場でということで、成瀬さんから、この輸入食品の安全対策 について、ご意見をいただきたいと思います。 ●成瀬氏 小樽消費者協会の成瀬と申します。 日ごろから消費者として、消費者の立場からいろいろ食品の安全ということに関して は、関心を持っております。今、輸入食品全体ということですけれども、31日に、た またま米国産牛肉の話がメディアでありまして、きちっとは決まらないけれども、プリ オンの食品安全委員会で、輸入を再開する方向へ持っていくというような話が新聞に載 っておりました。その点について、ちょっと偏りますけれども、お話させてください。 今日、ここにおいでになって方もいらっしゃいますけれども、前から、食品安全委員 会というのがございます。一昨日の発表でも、その食品安全委員会が輸入を再開すると いうことに決めているわけです。その食品安全委員会というものを、消費者側の立場か らちょっと申し上げてみたいと思います。 BSEが発生したのは、平成13年、4年ほど前なんです。9月10日か11日だっ たかと思います。ちょうどあのニューヨークの多発テロがあった日か、忘れましたけれ ども、本当のその前後なんですね。それから4年ほど経っております。その後、消費者 から非常に牛肉離れが進みました。焼肉屋さんとか、レストランさんとか、牛丼屋さん もそうですけれども、今、大変困っていらっしゃると思います。 輸入を早く再開してというような声も、そういう方からは多いわけですけれども、や はり安全を第一に考えるということがありまして、この安全委員会の役割が非常に大き かったと思います。 そもそも、この安全委員会というのができましたのは、このBSEが起きまして、そ のほかに偽装問題とか、輸入品の農薬が違反しているとか、いろいろありまして、それ で何とか食品の安全を、ここに書いてありますように、リスクを、被害が起きない前に 予防をしておこうということで、食品安全委員会というものができました。これは農水 相でも厚生労働省でもなくて、独立したもので、周りから影響されない、完全な科学的 あるいは合理的に判断するという組織ができたわけでございます。そのときに、私ども の消費者協会、特に北海道の消費者協会といたしまして、その委員の中に市民の代表を 入れてくださいという要請をいたしました。本当の委員は7人おいでなんだそうですけ れども、その方たちには入らなかったんですけれども、専門委員会の中に市民の代表が 入っておるそうでございます。そういうことで、非常に公平な立場でやっていらっしゃ ると思います。 今の米国の輸入再開にいたしましても、ちょうど2年かかっていますけれども、アメ リカのライス国務長官が、日本は非常に非科学的ですと、全頭検査なんていうのは、と ってもできるものじゃない、早く輸入を再開せというふうに圧力がかかりましたけれど も、そういうことにもめげず、きちっと対応されまして、今まで期間はかかりましたけ れども、恐らく輸入再開になるんだろうと思いますけれども、条件があるわけですね。 20ヵ月以内、それから、危ない部分、脳とか脊髄とかは必ず取るという約束のもとで、 輸入を再開するということらしいですけれども、そういうことで、食品の安全委員会と いうのを非常に私どもは評価しております。 そういうことで、ちょっと偏ったお話になりますけれども、よろしくお願いしたいと 思います。どうもありがとうございます。 ●コーディネーター ありがとうございました。 お話の中で、輸入が認められたというようなことがございましたけれども、一応、輸 入の措置自体をするしないのことは、厚生労働省、農林水産省の方でさせていただいて おりまして、その再開をするに当たってリスクが、国内産のものと米国産のものがどの くらい違うのか、同等と考えられるのかどうかの評価のところを、安全委員会の方でい ただいているというところでございます。 これは島田さんの方から、少し補足いただいてもよろしいですか。 ●島田食品安全委員会事務局評価課課長補佐 食品安全委員会でございます。 今、成瀬さんの方からコメントをいただきました関係、ちょっと補足でご説明させて いただきます。 先ほど、広瀬補佐の方からもありましたが、私ども食品安全委員会は、5月に農林水 産省と厚生労働省の方から、アメリカの牛肉の輸入及びカナダの牛肉の輸入に際しまし て、先ほど言われた条件で、20ヵ月以下の牛と、プリオンという病原体の溜まる特定 危険部位、SRMというふうに言われますけれども、この部分を削除する条件で日本に 牛肉を入れた場合に、現状の国内におけるリスクが高まるかどうか。いわゆるリスクが 同じぐらいの条件になるかというふうな諮問を受けました。それに対して、5月以降、 ずっと検討を図ってきたわけでございます。米国側から早く入れてほしいというふうな こともございましたけれども、私どもは、あくまで独立の機関でございまして、中立公 正な科学的な議論をさせていただいた結果、10月31日に、先ほどの条件で入れた場 合においては、リスクは特に上昇しないであろうという判断をさせていただいたという ことでございます。 本日も食品安全委員会の方で審議がされておりますので、この後、国民の方々のご意 見を聴くという手続きに入ることになり、約4週間ほど、国民の方々のご意見を伺う機 会がございます。その上で、私ども、その意見を踏まえた形で、食品安全委員会で、そ の答申を決定するということでございまして、答申がされれば、農林水産省、厚生労働 省の方で、輸入再開に関する手続に入るということでございます。 以上でございます。 ●コーディネーター ありがとうございました。 また、この問題については、別途説明会とかをされるんですよね。 ●島田補佐 まだ、はっきりは決まっておりませんが、北海道であれば、札幌を含め て、全国数箇所で、こういうリスクコミュニケーションの機会を設けさせていただく予 定でございます。 ●コーディネーター ありがとうございました。 それでは、セイコーマートの張さんからも、輸入食品の安全対策について、事業者の 立場からお願いしたいと思います。 ●張氏 毎日、実務で輸出輸入の業務を実施しております張と申します。 正直、感じた部分ですけれども、このポジティブリストを導入することによって、自 分の仕事が少し増えるんじゃないかなという気がしました。実際に、この導入について、 今から来年の5月までにということで、今実際にもう、自分の方もそうなんですが、輸 入者自身が、この内容についてまず、しっかりと勉強しなきゃいけないと。理解して、 それを理解した上で、輸入食品ですので、海外から食品を輸入する場合は、やっぱり製 造側、製造者をきちんと日本側のそういった体制とか、内容とかを理解しないといけな いですね。我々がしっかり理解して、正しく民間に情報を供与しないといけないですね。 その情報を供与する部分においては、すぐにファクス、電話、メール、それでできると いうことではなくて、結構時間がかかるんです。多岐多様に、今、国際的に食品を輸入 していますので、そうすると、前準備、正直言いますと、今から少しずつ前準備をやっ た方がいいのではないかなという気がすごくしました。 あと、情報供与の部分に関しては、やっぱりこういった規制が、来年5月から実施さ れるということで、やっぱり現地に行って各メーカーにしっかりと説明される方が、情 報供与の部分で、より徹底できるのではないかなという気がしました。 簡単ですけれども、以上です。 ●コーディネーター ありがとうございました。 輸入食品について、行政側からも、現在の取り組みをお話させていただきましたけれ ども、結局、適当にこれを輸入しようということで、何か持ってきて、検疫所で検査を して、通ったから輸入できる、そういう単純なものではなくて、やっぱり事業者さんも、 輸入するに当たって、現地の状況とか調べたりとか、それから、日本の規制にちゃんと 合っているかどうかの確認とか、現地の方も、単に聞くだけではなくて、実際に現地ま で行かれて、実際にその地でどういう管理がされているのかを調べたりとか、をされて いるということで、やはり単に水際だけの検査ではなくて、事業者の取り組み、輸出国 での状況の把握とか、水際での検査、それから国内に入っては、また、都道府県の方で の監視指導もあって、実際に保健所とかで食品を収去したりされていると思いますけれ ども、そういう多段階の中で、安全の確保の取り組みというのがなされているという現 状を、とりあえず皆様にご理解いただいて、更にそこでも、やはりこういう点が心配だ わとか、というのがあるかと思いますので、会場の方から、輸入食品の問題についてご 意見をいただきたいと思います。 大変恐縮ですが、なるべく多くの方からご意見をい ただきたいと思いますので、お1人、1回当たり2分ぐらいでお願いしたいと思います。 大変申しわけないんですけれども、1分半のところで1回、2分のときに2回、ベル を鳴らさせていただきますので、次の方にお譲りいただけますようにお願いいたします。 ご発言いただく場合には、挙手をいただいて、私の方で指名させていただきます。そ れで、声が通らないといけないので、マイクをお持ちしますので、マイクを受け取って から、差し支えなければ、お名前とかご所属を述べていただいて、意見の方は、なるべ く簡潔にお願いしたいと思います。 それでは、会場の方でどなたか輸入食品の関係で、早く手が挙がったので、真ん中の 後ろの方の方です。 ●参加者1 輸入食品ではなくて、残留農薬の関係でちょっと伺いたいんですけれど も、よろしいでしょうかね。 ●コーディネーター できれば、それはこの後、すぐ予定していますので、よろしい ですか。 ●参加者1 では、そのときにまた……。 ●コーディネーター ほかに、輸入食品の関係で、どうでしょうか。できれば、ポジ ティブリストとの関係がある話であれば、次の方にお願いしたいと思いますが、 ●参加者2 私、コープさっぽろの谷本と申します。 先ほどの資料の7ページに、具体的にビジュアルな検査体制のお話が出ていたので、 この点について、質問させていただきます。 各検疫所でモニタリング調査をされるということなんですが、先ほどBSEのお話も ありまして、新聞報道等では、年内にも輸入がされるんではないかということですから、 近々にこういうことでの輸入が再開された場合に、具体的には、例えばモニタリング検 査というのは、どういうふうにイメージとして行われるのか。 実際、現物が入ってくるとすると、肉の塊で入ってくると思うんです。そうしますと、 今回の答申に出ている20ヵ月未満だとか、危険部位とかというようなことは、実際の モニタリングの現場段階での収集作業等の関係では、どんなふうなイメージになるか、 ちょっとお聞きしたいと思います。 ●コーディネーター 参事官の方からお願いします。 ●藤井参事官 牛肉について、もしも輸入が再開されるということになった場合には、 若干新しい枠組みでということになりますので、詳細にモニタリングでどのようにする かというところについては、現時点では、ちょっとお答えしづらいところがあります。 そもそもモニタリングといいますのは、一応、年間計画を決めてやられる検査になっ ておりますので、もしも今年度内に牛肉が輸入されるということになると、それとはち ょっと別の観点から検査体制をしいてということにならざるを得ないと思います。 従来から、食肉については、相手国の衛生証明、そういうものを確認するということ が、まず基本的な検疫所の輸入段階での審査ということになっておりますので、恐らく 今回も、輸入証明書というものがアメリカの方で発行されて、それが検疫所における輸 入届け出のときに明示をされる。基本的には、まずはそれで審査をすることになります。 それプラス、必要なものについては、どこまでどういう検査をするのかというのは、具 体的にはまだ決まってない部分がありますので、申し上げにくい部分がありますが、例 えば特定危険部位がきちんと除去されているかどうかということについても、当然、一 定の割合で検査をしていくことになるんだろうと考えています。 ●コーディネーター 皆さんもご存じかと思いますけれども、BSEの検査自体は、 いわゆる筋肉とかからでは測れなくて、屠殺の段階で頭を落としたときに、延髄の閂部 といいまして、脳の下あたり、延髄のところから取ってきて、それをサンプルにBSE の検査をしていますので、通常、肉の形で入ってきてしまうと、その段階でBSEの検 査をする方法というのは、多分ないというふうに考えています。 ですから、恐らく確認できるのは、何か間違ってSRMが入ってきてたりすることは ないかとか、物として正しいかということと、多分、衛生証明書の関係になるんではな いかと思いますが、農水相の引地さんからも、少し補足いただければと思います。 ●引地農林水産省消費・安全局消費者情報官 農水省の引地でございます。 今のお尋ねの件は、これからの仕事でございますが、1つ想定される輸入のルールと いうことについて、まず、通常牛肉を輸入する場合は、衛生条件というのが輸出国と輸 入国の間で結ばれます。 要するに、衛生的にしっかりした牛肉が入ってくる。そういう条件というのは、輸出 する側が責任をもって、そういうものを管理、証明しないといけない。一般的にはそう です。これは、オーストラリアから入ってくる牛肉も、ニュージーランドから入ってく る牛肉も同じです。 今回想定されるのは、条件が付いているわけですね。仮に輸入されるとしても、20 ヵ月未満の牛肉でないとだめですよという話が1つと、それと、特定危険部位というと ころが、入ってくるのは20ヵ月未満ですから、取り除かれているというようなことが、 ちゃんと行われた牛肉でないとだめだということですね。今、安全委員会からの諮問も そうなんです。想定されるのは、そういうルールとか、決め事がしっかり守られていま すよという証明書が新たに必要になってくる。それで、そういった証明書というのは、 アメリカの国が発行する。だから、従来の衛生条件というものと、プラス、そういう新 たな証明書が提示されて初めて入ってくるのではないかなというふうに想定しておりま す。以上でございます。 ●コーディネーター ありがとうございました。 それでは、ほかの方、いかがでしょうか。 パネラーの方でも、この関係で、輸入食品のことで、もう少し何かご発言したいこと とかございますか。特にはよろしいでしょうか。何かあれば、どうぞ。 ●成瀬氏 消費者の権利として、今言いました安全を確保する権利というのがありま すけれども、そのほかにいろいろありまして、情報を得る権利といいますか、もう1つ は、選択する権利というのがあるんですよ。その選択する権利、例えば輸入が再開され ると、牛肉の場合ですけれども、された場合に、例えばレストランや焼肉屋さんに行っ て、それがどこから入ってきた牛肉か分かるようでなきゃだめだと思う。いわゆる外食 産業の表示をぜひ、今、検討中だそうですけれども、その辺はできるだけ早く決めてい ただきたいと思います。その辺の見通しとしてはどうなんでしょうか。 ●コーディネーター ありがとうございました。 引地情報官、お願いします。 ●引地情報官 外食産業での恐らく原産地表示ということだと思うんですけれども、 例えば、牛肉のステーキというメニューを頼んだときに、そこに、今日使っている牛肉 はオーストラリア産牛肉ですというような表示をしてくださいということですよね。 その件につきましては、やはり生鮮物あるいは加工食品だけではなくて、レストラン とか、お肉屋さん、焼肉屋さんといった外食においてもそういうのを知りたいという消 費者のニーズがありますので、これを表示してゆくということに一歩踏み出しました。 そこで外食産業の方々に、そういった表示をしていただけるようなガイドラインとい うのを作っていただいて、これは業界の自主的な制度として、今年から実施してもらう ということになっております。消費者の方々からは、そういった自主的な制度ではなく て、むしろ、制度としてで強制的に力を持って全部そうしてくれというような要望もあ るのも、我々承知しておりますが、ご案内のとおり、外食産業というのは、大きなレス トランから小さなラーメン屋さんまで、物すごく幅広くあるということ、それから、使 われる食材が、いろいろな食材が使われますね。それにすべて対応できるかというと、 現実問題として非常に、まだ難しいということで、まずできるところからお願いしたい ということで、自主的なルールとして、原産地表示を行ってもらうことになっておりま す。 我々としては、なるべく多くの外食が、こういった原材料の原産地表示を行っていた だけるように、業界団体に対し指導をお願いを今しているところでございます。以上で ございます。 ●コーディネーター ありがとうございました。 後ろの方で手が挙がりましたので、あちらの方、マイクお願いします。 ●参加者3 輸入食品のところで、私の勘違いであればいいんですけれども、もう1 回確認したいんですけれども、6ページと7ページのところです。 まず、7ページのところで、16年度の速報値が179万件分の19万件で、10% ぐらいですよね。6ページのところで、17年度の計画が7万7,000件ということ で、4〜5%になるということで、よろしいんですよね。 ●コーディネーター これは、モニタリング検査の数になりますので、更にその命令 検査とか、7ページの上にありますけれども、そういうのを多分合わせると、もうちょ っと数としては多くなるというふうに思います。 ●参加者3 それが、どのぐらいの数が変わってくるのか分かりませんけれども、こ の資料をこのまま読んだら、16年度が10%なのに、単純に、17年度の計画がなぜ、 半減して4〜5%になってしまうのかと思っちゃったんですけれども、輸入量は増えて いるのに、どうしてこういう計画になるんでしょうか。 ●コーディネーター 参事官の方からお願いします。 ●藤井参事官 ちょっとその辺、舌足らずの説明で申しわけなかったんですが、17 年度の計画と16年度の計画と比べてみますと、17年度の計画の方が数が増えており ます。 16年度のモニタリングの件数は、ちょっとお待ちください。 担当の方が来られているようで、7万6,000件というのが、16年度の件数で、 17年度は1,000件、それに増加になっているということでございます。 そして、先ほど広瀬の方からも申し上げましたように、7ページの方の19万件とい うのは、16年度のモニタリング検査の7万6,000件のほかに、検査命令でありま すとか、検疫所が指導して、輸入業者さんの方で自主的に検査をされた、いわゆる水際 での件数、トータルが19万件ということであります。 よろしいでしょうか。 ●参加者3 17年度は、7万2,000件より増えて、16年度と同じくらいには なるということでいいんですか。 ●藤井参事官 16年度のモニタリングの検査の件数というのが、7万6,000件 になります。17年度は、それよりも1,000件増えて、7万7,000件の予定で す。 ●コーディネーター ということなので、トータルの件数としては、例えば命令検査 とか、指導検査とかも含めると、19万件よりは、要するに16年度よりは、少し多い 数になるんではないかということでございます。 よろしいでしょうか。 ●参加者3 了解しました。 ●コーディネーター ほかに、輸入食品の関係で、いかがでしょうか。 済みません。私の方からの説明で、ちょっと失念しておりまして申しわけありません が、今日、この会場の方に参加いただくに当たって事前にお寄せいただいた質問につい ては、資料4ということで整理をしておりまして、ここに行政側からの回答も付けさせ ていただいております。これ1つ1つを紹介はできませんが、ご自分で質問された方は お読みいただいて、もしこの回答で、何か私の聞きたかったことと、ちょっとずれてい るとか、また追加で聞きたいこととかがあれば、この機会に併せてご質問いただければ と思います。 それでは、前の方、お願いいたします。 ●参加者4 札幌消費者協会から参りました竹田と申します。 モニタリング検査というのは、計画的にやるというお話なんですけれども、毎年毎年、 時期であるとか、品目であるとかというのは決めているんでしょうか。 実は、それは大体時期が決まっていて、そろそろ検査があるということで、例えばポ ストハーベストなんかも、その期間やらないんではないのという話を聞いたものですか ら、その辺についてお伺いしたいと思います。 ●コーディネーター ありがとうございました。 参事官の方から、お願いします。 ●藤井参事官 毎年やるモニタリング検査というのは、今は毎年、その次の年度の計 画については、12月ぐらいに、国民の方からご意見を聴くということをやっておりま す。そのご意見を踏まえた上で、計画を策定します。その計画は、どういう品目につい て、どれくらいやるということは決めますけれども、時期までは決めておりません。そ ういう意味では、お聞きになった、そろそろそういう検査がありそうだからというのは、 まず、そういうことはないんではないかと思います。 ●コーディネーター ありがとうございます。よろしいでしょうか。 ●参加者4 はい、分かりました。 ●コーディネーター ほかの方、いかがでしょうか。 もしないようでしたら、次のテーマのポジティブリスト制度の方に入りたいと思いま す。 こちらの方も、制度の仕組み、これも非常に難しいんですが、行政の側から一応 ご説明させていただきました。これについても、それぞれパネラーの方からご意見を伺 ってみたいと思いますが、まず消費者のお立場からということで、成瀬さん、お願いい たします。 ●成瀬氏 ちょっと勉強不足で、最近、読み出したようなもので、よく実際は理解し ておりません。ただ、簡単に言いますと、今まで農薬基準というものがありました。た だ、それに外れたものは対象外になっていたということで、オール網をかぶせたと。そ れから、輸入品もいろいろ多くなってまいりますから、そういう意味の対応と、そうい う考え方で簡単に理解しておりますが、よろしいでしょうか。 ●藤井参事官 今日、ポジティブリスト制度についてご説明させていただいたんです が、かなり複雑なものですから、私の説明も悪かったこともあると思いますが、なかな か初めて聞かれた方、ご理解が難しいんではないかと思います。 今、簡単に成瀬さんの方からまとめていただきましたが、今までは、基準値があるも のしか規制ができなかった制度が、すべて基本的には、残留をしていると禁止になりま す。ただし、国で認めた残留基準があるものだけについては認めますよという制度に、 大きく変わるということでありますので、かなり国の方では、これは大変革ではないか と思っておりますから、いろいろと今回の資料等もよくご覧をいただきまして、できる だけ多くの方にご理解をいただければありがたいと思っております。 ●コーディネーター ありがとうございました。 それでは、事業者の立場から、張さん、お願いいたします。 ●張氏 そうしますと、実際に、実務の中で感じたのは、その食品を輸入するときに、 原料、調味料、添加物、では、その添加物はどこで作られて、調味料はどこのメーカー で作られて、それを全部さかのぼってチェックしなきゃいけないですね。既に、今まで は実施しているんですけれども、今以上に強硬にチェック、徹底をやっていかないとい けないかなという感じは、すごくしました。 それから、実際に食品安全というのは、今海外で日本に輸出経験のあるメーカーとか、 どんどん増えていますので、輸入しようとする、そのアイテムが、実際にそのメーカー で作られて得意分野なのかどうか、実際にその得意とする分野かどうか、きちんと見極 める必要があるんではないか。輸出経験があるから、ここから入れましょうというので はなくて、おいしいから入れましょうというのではなくて、もう1つ、何かこの会社の 社長さんはしっかりしていそうだから入れましょうと、そういうのではなくて、本当に 客観的にいろいろ調査してチェックして本当に問題なければ入れる。 もう1つ、こちらで多分、輸入業務を実際にやっていらっしゃる方がいらっしゃると 思うんですけれども、発注してから、本検査の立ち会いを必ずやった方がいいと思いま す。やって、工場を出荷する前に、そのサンプルを持ち帰って、1回検品した方がいい と思います。検品して本当に問題なければ、工場の出荷の指示を出すと。工場から出荷 したら、もう遅いんです。だから、工場から出す前にチェックをするという徹底をした 方が、より安心な食品というか、安心できるんではないかなというふうに思います。以 上です。 ●コーディネーター ありがとうございました。 確かに、輸入してしまって、物が来てから初めて、良い悪いだと、そこでだめになっ ても非常に困ると思いますので、やはり事前にいろいろ確認されるというのは重要かな というふうに思います。 参事官の方からも、補足をお願いします。 ●藤井参事官 ポジティブリスト制度を導入されますと、特に輸入をいろいろされて いる事業者の方、輸入食品を使っておられる事業者の方というのは、どういう対応をす るのかということを、非常に今、不安に思っておられる方が多いのではないかと思いま す。 それは、事前にいただいた質問の中にも、そういうご意見が幾つかあって、既にお答 えをさせていただいております。 説明の中でも申し上げましたように、食品の安全を確保するというのは、基本的には、 事業者の方の責任に、法律上はなっております。そういうことから、できるだけ事業者 の方も、法律の趣旨をご理解の上、自ら原材料を含めて、どういうふうにしたら安全な ものを確保できるのかということに工夫をしていただきたいと思います。 いろいろと、情報が不足をしている等々の面があろうかと思います。そこは、各検疫 所の方に、ぜひご相談をしていただきたいと思います。 検疫所の段階で判断ができないものは、当然、私ども厚生労働省、本省の方に問い合 わせがあります。そういうものも含めて、幅広く情報提供を、また本省の方からもさせ ていただきたいと思いますので、疑問に思ったことは、個々のケースで細かいこともケ ースごとに出てこようかと思いますが、ぜひ個々具体的に検疫所の方でご相談をいただ ければと思っております。 ●コーディネーター ありがとうございました。 ポジティブリスト制度の関係で、道庁さんはよろしいですか。 ●高橋北海道保健福祉部食品衛生課食品安全グル−プ主幹 はい。 ●コーディネーター 分かりました。 それでは、ほかのパネラーの方、ご意見ございますでしょうか。 もしあれでしたから、また会場の方からお伺いして、随時、また聞きたいと思います。 先ほど、ポジティブリストの関係でということで、後ろの方で手を挙げていただいた 方、お願いします。 ●参加者1 ポジティブリストなんですが、これ食品安全委員会、内閣府の方で、7 00件もある成分分析、終わらないんで、多分、厚生労働大臣専決みたいな形で暫定基 準を行ったというふうに聞いているんですけれども、それはその手法でよろしいんです が、出来上がってくる作物、なぜこういうようなことを食品衛生法を改正してまでやる のかというと、多分、輸入作物、輸入食品に関する規制を、では中はどうなんだという ような趣旨からいって、何か首を絞めたかなというふうに考えているんですけれども、 生産者側からすれば、この700成分ある農薬について、作物を誰が、生産者が全部チ ェックしなきゃならないのか、費用は誰が持つのかという問題。 それから、今日は残留農薬という表現をされていますが、食品衛生法11条第3項は、 農薬ではなくて、成分となっているんで、成分が混ざっていれば、暫定基準及び、そう いうような基準のないコーデックススタンダードを超えるようなものについて、もし基 準値を超えれば出荷停止ということになるんですけれども、農水省としては、そういう ような対応をどのように今お考えなのか、伺えればなと思いますが。 ●コーディネーター それでは、参事官からお願いします。 ●藤井参事官 ポジティブリスト制度が導入をされたときに、暫定基準と言われる基 準が設定をされておりますのは、ご指摘がありましたように、今、712の農薬、農薬 成分というんでしょうか、になっております。それを生産者の方が自らすべてチェック をしなければならないかということになりますと、似たようなご質問が事前の質問にも ありまして、それは加工食品を扱っておられる業者の方、または農産物の安全について も、例えば16のご質問なんかもそうかも分かりません。すべての成分というものを消 費者から求められたら、しなければならないのか等々というご質問等があります。 ポジティブリスト制度というのは、その回答のところにもございますように、食品の 事業者さんでありますとか、もちろん生産者の方に残留農薬の分析を義務付ける制度で はございません。特に農作物、国内の生産者の方については、説明の中でも若干触れさ せていただきましたが、きちんとした登録をされた農薬を使用基準にのっとって使って いただくと、基本的には、その残留農薬基準に違反が出るようなことはないというふう に考えておりますので、国内については、そういうことだと思います。それをどういう ふうに証明するのかというときには、先ほど申し上げましたように、生産者の方、また は事業者の方に分析を義務付けるものではありません。 あとは、回答のところをご覧をいただきたいんですが、生産者の方も、グループを作 って自主的に残留農薬を検査をしておられる方があると思います。そういう方々にいろ いろ聞いてみますと、自分たちが使っている農薬またはその周辺で使っている農薬、そ ういうものについては、定期的にチェックをかけたりするということは聞いております が、全く使われてもいないような農薬を、お金をかけて、時間をかけてチェックをする ということは、余り現実的ではないのではないかなと思っております。 ●参加者1 分解速度の遅い農薬、例えばDDTの後に出ましたデルドリンなんかは、 いまだに残っている農地があるはずなんですけれども、そういうのについては、どうい う考えで処理していけばいいんですか、そうしたら。万が一、出ましたよと。まして、 人から買った土地なのに、俺はそんな農薬を使ったことないぞと。でも成分として出ま したと。では、そこで作ったもの売れないぞと言えば、食糧自給率40%しかない日本 が、そういうような形の対応というのは、全然考えてないんですか。 今、使っている農薬だけを参考に、調査だけをすれば、それでよろしいというポジテ ィブリスト制度というふうに理解してよろしいでしょうか。 ●コーディネーター 恐らく、ご質問の点は、汚染物質みたいなものをどうするかと いうことなんですが、確かにご指摘のように、農薬の成分である物質が検出された場合 ということなので、例えば、前の方が使っていたものであっても、ご自分が使用したし ないにかかわらず検出されれば、その食品自体は違反という扱いにならざるを得ないと いうふうに思います。 ただ、その中で、管理の一環として、やはりご自分が使用されたものを中心に、どう いうふうに管理をして物を作られたのかということの確認をされるのが、多分一番で、 新しく買った土地であれば、それも最初の年は、1回目は何か調べてみようかなという ことは、ひょっとしたらあった方がいいのかもしれません。ただ、今年は出なかったけ れども、また来年出ると、そういうことがあるのかどうかは、私も農作物の専門家では ないので分かりませんが、やっぱり出る土地というのは、ある程度決まっていると思い ますので、毎年、700件を全部分析しなきゃいけないということはないと思います。 ちょっと十分な回答でないかもしれませんが、もしまだ、不足の点があれば、続けて ご質問いただければと思いますが。 ●参加者1 農作物ですと、いろいろ吸収量も違う、窒素の必要なものですとか、い ろいろな吸収ルートがありますので、作物によって吸収しやすい農薬、また作物によっ て吸収しづらい農薬というのはあるんで、そういうような部分の、例えば新規取得土地 については、例えば補助で、土地土壌調査費用補助金みたいな手当てというのは創設さ れないんですか。 ●コーディネーター 農水省さん、いかがでしょうか。 ●引地情報官 基本的には、自らの生産手段である土地の管理というのは、やっぱり 自らするものではないでしょうか。補助金があるからやるとか、補助金がないとできな いという問題ではないのではないかと思います。 その上で、今お話があったように、この土地はこういう土地だという履歴は、耕作さ れている方が一番よく分かっているし、関係の農協の方もよく分かっているとすれば、 農薬の使用内容に応じ、ある程度ターゲットを絞って調べるというのは、やはり安全な ものを提供するという生産者の責務としては、1つ大事なことではないかなというふう に感じますけれども。 ●参加者1 農水で今、農用地利用集積を高めるため、担い手育成の対策、3月にで きた食糧農業農村基本法に基づいても、集積率を高めろと言っているのに、その部分、 自己責任でという考え方でよろしいんですね。 ●引地情報官 ちょっと観点が違うんではないでしょうか。今、安全な作物をどうい うふうにして生産して、どういうふうにして供給するかという議論でございまして、そ のことをもってして、今の土地集積、これは大事なことですし、やらないといけないん ですが、直ちにそれを結びつけて、それをやらないのがおかしいとか、どうかというこ とについては、いかがなものでしょう。すぐ結びつくようなお話ではないんではないで しょうか。 ●コーディネーター 済みません、ほかにもいろいろな方いらっしゃると思いますの で、また、一通り聞いて、もし時間があったら、更に続けてお伺いしたいと思います。 ほかの方、いかがでしょうか。 ●参加者5 札幌市の健康衛生部の勝俣と申します。私は、札幌市全体の監視指導計 画の策定を担当している者なんです。 それで、今どうしようかなと考えているのは、ポジティブリスト制度に対応して、農 薬の検査項目を増やしたいなというのは考えているんです。 今札幌市では、農産物150検体で、全体の検査項目数の合計としては、500項目 ぐらいです。ですから、1検体当たり3項目か4項目ぐらいしか検査ができていません。 それでも、年間の歳出の方は1,200万ぐらい使っているんです。 それで、これから700項目のリストを作ると、来年の5月から施行すると、そのこ とについては、今まで野放しだった農薬が全部入るわけですから、とてもいいことだと 思うんですが、実際、それだけの検査項目を、一体どうやって検査するのか。厚生省さ んの方でも、検疫所さんの方でも、そのことについて対応したいと言っていますが、実 際に対応できるのか。来年度、1検体当たり、どのぐらいの項目をやろうと考えていら っしゃるのか。うちの方でも予算要求をしまして、約400万ぐらい付けてもらえそう な感覚なんですが、それでも、1検体当たり2万6,000円プラスですから、大体2 〜3項目しか増やせないんです。全部やるなんていうのは、現実には無理で、誰がどう やって、このリストの検査項目をやろうとするのか、教えていただきたいなと思います。 ●コーディネーター 通常、パネラーの方に答えていただいているんですけれども、 実は私、基準審査課というところの業務にも併任がかかっておりまして、ポジティブリ ストの関係の分析法にも少し関係があるものですから、ちょっと私の方から説明をさせ ていただきます。 分析法については、実は、700幾つある中でも、すべてについて整備できていると いう状況ではないので、幾つかのものについては、来年度整備というようなことになる ものもございます。 ただ、主要なものについて、今年度といいますか、間もなく告示の時期に併せて、一 斉分析法というのを通知でお示しをさせていただく予定としておりまして、それは1つ の操作で100ぐらいの農薬の検査はできるようなものが、多分、3種類ぐらいできる のではないかというふうに思います。 詳細は、告示の際の通知をご覧いただければと思うんですが、ただ、分析のときに、 ちょっと機器の方が、多成分一斉分析ということもありまして、質量分析計というよう なものをかなり使った分析法になります。ガスクロに質量分析計を組み合わせたものと か、液クロに質量分析を組み合わせたもの、更には、その質量分析を2台くっつけたよ うなものとかを使っての分析法になりますので、実はちょっと検査機器の整備自体には、 かなりお金がかかるかもしれません。 ただ、その方法を使うと、1回の方法で数百、私も正確には数を申し上げられないん ですが、100ぐらいの農薬が分析できる方法というのは、多分、2〜3種類示される 予定になっております。 当面は、そういう分析できるものなどが対象になっていくんではないかということが 1点と、あとは農作物について、700項目すべての農薬が1つの農作物に使われるわ けではありませんので、やはり分析対象となっている農作物に使われる可能性のある農 薬を、いろいろその情報を集めていく中で、かなり絞り込んでいくというようなことを しないと、限りある検査の予算の中では、なかなか全てを検査するということは難しい かなというふうに考えております。 追加でございましたら、またお伺いしますが。 ●参加者5 ありがとうございます。 ●コーディネーター ほかの方、いかがでしょうか。 ●参加者6 十勝農協連から参りました柴田と申します。よろしくお願いします。 現場では、実際、ドリフトの問題が、やはりあるかと思います。要するに、お隣同士 に違う作物が植っていて、片一方の作物に農薬をかけたときに、別の農作物に農薬がか かってしまって残留してしまう。そのときに、恐らく一律基準0.01ppmにひっか かってしまうような可能性も、これから出てくると思うんです。ですから、やはり0. 01一律基準というやつも、そういった現場の現状を見据えていただいた上で、やはり 考えていっていただければと。 それから、その0.01を決めた根拠につきましても、コーデックスですとか、海外 の基準をもとに決められているということは分かるんですが、やはりその現場の状況で すとか、更に国内の試験成績、そういったものも踏まえた上で、ちょっと現場を見据え ながら決めていただければなというのが我々の意見ですので、それに対してご意見を頂 戴できればと思います。よろしくお願いいたします。 ●コーディネーター 参事官の方から、とりあえず伺いまして、あと、農水省さんか らも、ドリフト対策のあたりを補足いただきたいと思います。 ●藤井参事官 確かに、ドリフトの問題というものが、一律基準を設定する際に、国 の段階でも議論になったことは事実です。ただ、我が国で、いわゆるドリフトによって、 どれだけの具体的な影響があるのかという、検討の基礎になるデータというものが、残 念ながら何もなかったということから、そのドリフトの問題は、議論にはなったけれど も、検討の材料とはなかなかできなかったということです。現在のところ、ほとんどド リフトについては考慮されていない案、考え方になっています。 そういう状況もありますから、いろいろと現在、農林水産省さんの方では、ドリフト 対策というものを進めようとご検討されているようですので、あとは引地情報官の方か らお願いをしたいと思います。 ●引地情報官 ドリフト防止につきましては、ドリフトの対策連絡協議会という民間 団体を会員とする協議会を組織化しまして、ドリフト防止のためのガイドラインを作っ て、各県にそれを配布いたしまして、そういう方法でドリフトを防ぐ、極力防いでいく という取り組みがなされております。 また、技術的にドリフトを防ぐ方法はないものかということで、今、私どもの国の方 でも、防止のための対策事業ということで、技術的な開発の仕事も併せて行っておりま して、例えば、葉の裏につきにくい農薬の素材を見つけるとか、静電気で付きにくくす るとか、それから、そもそも農薬に頼らないで、少し天敵とか、フェロモンとか、そう いうことも含めてドリフト対策というのを、今やっておりまして、まだまだ課題は多い んですけれども、これは一歩一歩、前へ進めていかないといけないなというふうに考え ているところでございます。 ●参加者6 お時間ないところ恐縮ですが、一言だけ。 分かりました。それで、そんな現状で、農家のお母さんたちが隣の作物に農薬が移ら ないように、現場では、例えばスプレイヤーと一緒に搬送しながら板を持って歩いてい るとか、そういった現状が現場ではあるわけです。どちらかというと、農薬が作物に残 留するよりも、そのお母さんの命の方が危ないんではないかなというような、そういう ような現状も現場にはあるということを、ちょっと頭に置きながらお仕事を進めていた だければなと思います。 ●コーディネーター いろいろな状況があるということで、皆さんの情報共有という こともありますので、そういうこともあるんだということを、ぜひご理解いただければ と思います。 ほかにいかがでしょうか。先ほどご指名させていただいた右側の方。お願いします。 ●参加者7 2点、お願いしたいんですけれども、現在、野菜について残留基準など が決められているのは、食品衛生法の残留基準と、あと農薬取締法の登録保留基準値と いうふうに認識しています。ポジティブリストが施行になった場合、その後、農薬の登 録保留基準値の方は、これからどのようになっていくのかというのが、1点目。 もう1点は、ポジティブリストが施行されると決まった後に、例えば、諸外国、中国 などにどんなふうな周知をしていくのか、その辺を教えていただきたいと思います。 ●コーディネーター それでは、前段の登録保留基準の方を農水省さんの方に、後段 の周知の方を参事官にお願いしたいと思います。 ●引地情報官 農薬取締法の基準の方は、今ここで言うポジティブリストの基準は、 それをそのまま準用していますので、引き続き、それは生きていくということでござい ます。 ●コーディネーター 諸外国の、中国とかへの周知ということなんですが。 ●藤井参事官 まず、農薬のことに追加をさせていただきますと、食物に対する農薬 の残留基準というのは、あくまでも食品衛生法で決まっている基準によって取り締まり が実施されるということであります。 農薬の登録基準というのは、基本的には、農薬を登録するかどうかを判定するための 基準ということでありますから、ちょっと視点が違うということでご理解をいただいた ら、よろしいんではないかと思います。 それから、諸外国への周知ということでありますが、このポジティブリスト制度へ変 更しようということが決まったのが、ご説明しましたように平成15年5月になります。 それ以降、国の方では準備をしまして、諸外国も含めて、今まで3回、パブリックコメ ントというような形で意見を求めたりしています。そういうことを含めて情報提供して おりますし、WTOという世界貿易機関の方にも、日本はこういう考え方で基準を設定 しますということをお伝えをして、そして、ほとんどの国がWTOに加盟をしておりま すから、そういうことを通して情報の周知を、この2年半の間に節目、節目でやってき たというところでございます。 ●コーディネーター ありがとうございました。 ご質問いただいた方、よろしいでしょうか。 ●参加者7 ポジティブリストが施行された後も、こういうふうになりましたよとい うことで周知されるわけですね。 ●コーディネーター 特に、例えば、ご指摘がありました中国政府などは、向こう側 も関心を持っておりまして、先般、日本国内にポジティブリスト制度のことについてと いうようなことで、向こうから、どういう制度なのかとか、ここのところはもうちょっ と何とかならないのかというようなご意見も含めて、意見交換をさせていただいており ます。 それでは、真ん中の列の後ろの方、先ほど手を挙げられた方。 ●参加者8 コープさっぽろの田村と申します。 このポジティブリストのことに関しては、私たちの食衛法の改正運動からということ で、とても消費者としては、進歩したことだなと思うんですけれども、このポジティブ リスト制度の導入に当たっては、行政とか、事業者、生産者、製造者、流通事業者、消 費者、それぞれが共通の意識を持たなければいけないと思うんです。特に生産者に関し ては、すごく大変なことかなと思うんですけれども、これに対して具体的な指導とか対 策とかということは、それぞれに任せるのでなくて、行政としても考えていらっしゃる ことがあるのかなと思って、ちょっと質問させていただきました。 ●コーディネーター ありがとうございました。 栽培段階での指導とか、農水省さん、いかがでしょうか。 ●引地情報官 まず、このポジティブリスト制度の内容について、生産組織、生産団 体の方々に、こういった機会も含めていろいろお知らせをしていますし、それから、私 ども農水省としては、農薬を使う立場ですね。農薬取締法という法律のもとで、いろい ろ規制していますので、そういった立場でのポジティブリストの制度の内容とか考え方 とかについて、ご説明をさせていただいております。 何はともあれ、農水省としては、今、農薬取締法で定められた正しい農薬の使い方と いうことについて、まずしっかり取り組んでいただくということが、基本だろうという ふうに思っておるところでございます。 ●藤井参事官 食品の製造販売、そして輸入をするような事業者の方に対して、なか なか今まで、ポジティブリスト制度を導入するに当たって、関心が低い状況が続いてき たんですが、やはり来年の5月から導入をされるということで、特に最近、ご関心が強 くなってきております。 厚生労働省の方としては、随分、各事業者の団体等から説明会に来てくれという話が 最近増えてきておりまして、それには積極的に対応をしてきておりますし、いろいろ細 かい通知等を11月以降出したときには、具体的なご質問等が更に増えるだろうという ことで、何らかのそういうご質問、ご相談に対する対応体制をとるべく、今、検討をし ているところです。そういうことを通じて、消費者の方、生産者の方だけではなくて、 事業者の方にも、ご理解、周知をしていただきたいということで、工夫をしているとこ ろでございます。 ●コーディネーター ご質問いただいた方、よろしいでしょうか。 ●参加者8 ありがとうございます。 ●コーディネーター では、ほかの方、いかがでしょうか。 では、後ろの方、お願いします。 ●参加者9 小樽消費者協会です。 私どもの15年度の残留農薬テスト結果がありまして、その当時、8品目、よく消費 者が使用するホウレンソウ、キャベツ、長ネギ、トマト、大根、レタス、キュウリ、以 上、8品目について、27件の残留農薬テストを道協会のテスト部について行ったこと があります。その結果をちょっとお知らせすると、トマトに使われていたコロロタロニ ール、これが基準値は5ppmだったんですが、そのときに検出したのが0.015p pmだったんです。検出量としては基準値内で、非常に少ない基準だったんですが、今、 ポジティブリストの基準値は0.01ppmとおっしゃっていましたので、これは超え ております。 それから、検出した事例としては、トマトのほかに、長ネギのEPN。EPNが、こ れは長ネギから検出していますけれども、野菜では、1つの検体では0.114ppm で、もう1つは0.057ppmだったんです。ネギの基準はないので、検出したとい うことで、今度、ポジティブリストになると0.01になると、これもはるかに基準値 から超えております。 それから、先ほどお話に出たドリフトの事例になると思うんですが、大根葉でフラサ イトが出ておりまして、これが0.017ppmで、これは多分、稲作の近くで大根を 作っていたので、このようなものが検出されたと思われる、調査していませんので、正 確には分かりませんけれども、多分、そういう状況ではないかというようなことで、こ れが出ています。 だから、ポジティブリストには賛成なんですけれども、この基準値の0.01は、国 内の野菜でも、輸入野菜でも、非常に厳しい基準ではないかと思われるんですけれども、 いかがでしょうか。 ●コーディネーター 参事官、お願いします。 ●藤井参事官 先ほどご質問があったドリフトの問題とはちょっと別にしまして、い わゆる一律基準、0.01ppmが適用されるというのは、基本的に、世界どこの国で も、世界どこの国でもと言うとちょっと語弊がありますが、国際基準であるとか、暫定 基準等を参考にした、5つの国と地域で、使用されていない農薬についてです。農薬で も、ある作物について使用が認められていても、別の作物については認められていない というものがたくさんあります。その農薬を使うことを認められていないものについて は、0.01ppmを使いますよということでありますので、先ほどちょっとご紹介を いただいたような中で、既に基準があるものについては、その基準を使います。ですか ら、既に基準があるものまで、0.01ppmを使うわけではありません。 たとえ、日本で基準がなくても、今回、国際基準でありますとか、その5つの参考に した国、地域で基準があるものについては、暫定の基準というのを設けることになって おりますので、もし、そこの国できちんと使えるということになっておりましたら、0. 01ppmではなく、そこでの基準値が暫定基準として入ってくるということですから、 ちょっと今、いろいろとご報告をいただいたことすべてをフォローできなかったんです が、決して0.01ppmが厳しいとは思っておりません。 基本的には、使ってはならない作物への基準を0.01ppmとしているということ で、ご理解をいただきたいと思います。 ●コーディネーター ありがとうございました。 そういう意味では、いただいた中で、長ネギについては、何かもともと基準がないと おっしゃっていたので、確かに0.01の適用になるかと思うんですが、なぜその0. 1とかの数字が出てきたのかのところについては、ちょっと状況は不明だと思います。 確かに、大根の葉っぱのところは、何かドリフトの葉のせいがあるのかもしれません が、あと、実際分析する場合には、ロットを代表するサンプルでの分析になりますので、 多分、畑の際にあったものだけを集めて、何か検査をして農薬が検出されたらだめみた いなことには、多分ならないのではないかと思います。余りいい補足でもないのかもし れませんが。 今の方、よろしいでしょうか。 ●参加者9 したら、長ネギのEPNに関しては、基準を超えているということです ね。 ●コーディネーター 基準がなかった場合には、0.01になるので、多分、超えて いるということになります。 今、基準がないというのは、その食品衛生法上、基準がないだけなのか、暫定基準も 含めてないのかのところまで、実際の資料がないので確認できないんですけれども、い わゆる暫定基準も含めて、基準がない農薬であれば、0.01の適用になるということ でございます。 ほかには、いかがでしょうか。 パネラーの方から、総括として何かございますか。特にはよろしいですか。 それでは、ほぼ予定していたお時間となりましたので、本日は長い間どうもありがと うございました。 司会の方にマイクをお返しいたします。 7 閉 会 ●司会 それでは、長時間にわたり、ご参加いただきまして、ありがとうございまし た。 これをもちまして、食品に関するリスクコミュニケーションを終了させていただ きます。 あらかじめ、アンケートを皆様にお配りしております。このアンケートに書 いていただいて、出口のところに回収箱を置いてありますので、そこに提出していただ ければと思います。 このアンケート、今後のリスクコミュニケーションの参考にさせていただきたいと思 いますので、是非ともご協力をお願いたします。 また、この近く、あるいは北海道内でも意見交換会をする機会があると思いますので、 そうした機会がございましたら、ご参加いただければというふうに思います。 本日は、どうもありがとうございました。(拍手)                                 (了)