05/09/09 平成17年9月9日(千葉県千葉市)「食品に関するリスクコミュニケーショ ン(輸入食品の安全確保及び残留農薬等のポジティブリスト制度の導入につ いての意見交換会)」            食品に関するリスクコミュニケーション  (輸入食品の安全確保及び残留農薬等のポジティブリスト制度の導入                        についての意見交換会:千葉市)                    議事録              平成17年9月9日(金) ○森田専門官  本日は皆様御多忙の中、御参加をいただきまして、ありがとうございます。ただいま から食品に関するリスクコミュニケーションを開催いたします。  私は本日、司会を務めさせていただきます厚生労働省食品安全部企画情報課の森田と 申します。どうぞよろしくお願いいたします。  今回のリスクコミュニケーションの開催には300 名の応募枠だったんですけれども、 300 名を超える御応募がありまして、どうもありがとうございました。ちょっと会場は 狭いかもしれませんけれども、よろしくお願いいたします。  また、私はノーネクタイでラフな格好でございますが、9月いっぱいまでクールビズ ということでやっていますので御理解をいただきたいと思います。  それでは、初めに資料の方の確認をさせていただきたいと思います。袋の中に資料一 式入っておるんですけれども、議事次第がございます。議事次第の下の方に配布資料、 それから参考資料として書いてあります。  まず、配布資料の方なんですが、資料1として「リスクコミュニケーションについて 」という資料がございます。それから資料2は「輸入食品の安全確保について」という 資料、資料3で「残留農薬等のポジティブリスト制度の導入について」、資料4で皆様 から事前にいただきました御意見をまとめた資料がございます。それから、参考資料の 方ですけれども、「意見交換会に参加いただいた皆様へ」というA4の1枚の紙でござ います。それから、「残留農薬等のポジティブリスト制度」についての補足説明資料、 これはホチキスどめになった資料でございます。  次に「食品安全エクスプレス」、これはA4の1枚紙の資料、それから、「食生活指 針について」という2つ折りの小さい紙があります。それから「食事バランスガイド 」、これはA4の紙1枚でございます。それから、「遺伝子組換え食品の安全性につい て」という小冊子が入っております。  次に「安心を食べてほしいから。見守っています、食の安全。」という三つ折りのパ ンフレットと『食品の安全性に関する用語集』の冊子、それから正誤表がA4判で1つ ついております。そして、最後に「食品安全」のvol.5 のA4判の冊子、最後にありま すけれども、アンケート用紙も一緒に付けておりますので、これはお帰りの際に受付の 方で回収しておりますので、休憩時間等を活用して御記入いただければというふうに思 います。  もし、配布されている資料の中で御不足のものがございましたら、手を挙げていただ ければ、担当の者が伺いにまいります。よろしいですか。  続きまして、本日の議事につきまして紹介をさせていただきたいと思います。まず、 最初に厚生労働省の食品安全部企画情報課の広瀬からリスクコミュニケーションのつい ての説明を10分間程度させていただきます。  続きまして、同じく広瀬から「輸入食品の安全性確保について」と「残留農薬等のポ ジティブリスト制度の導入について」という、この2つテーマについて御説明をさせて いただきます。この2つテーマはそれぞれ35分程度を予定しております。ただ、2つテ ーマの間には5分程度の休憩をとらせていただきたいというふうに思いまして、その説 明の終了時刻といたしましては、2 時30分ごろを予定しております。そして、説明終了 後、10分ぐらい休憩をはさみまして、2時40分からパネルディスカッション及び意見交 換会をしたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。  それでは、早速でございますけれども、広瀬課長補佐からリスクコミュニケーション についてということで御説明させていただきます。 ○広瀬課長補佐  御紹介いただきました厚生労働省医薬食品局食品安全部企画情報課の広瀬と申しま す。  最初にまず、リスクコミュニケーションについてということで説明をさせていただき ます。リスクコミュニケーションというのは、やはり新しい言葉であるということと か、カタカナ語であるというようなことがあって、非常にわかりにくいというようなこ とがございますので、最初に一体、それはどういうものなのかについて簡単に説明をさ せていただきたいと思います。                  (スライド) ○広瀬課長補佐  スライド自体が小さくて見にくいかもしれませんが、お手元に配布してある原稿は同 じものですので、もし見にくい方がいらっしゃいましたら、お手元の原稿を見ていただ ければと思います。  まず、リスクコミュニケーションに入ります前に、食品安全行政を取り巻く動向とい うことで、近年の間に食をめぐる環境というのは大きく変化してきております。一つは 飢餓から飽食の時代へということで、前はそもそも絶対量が足りなかったわけですけれ ども、量の確保というのは一通り終わり、これからは、かなり質の面というのも重視さ れているということがあります。それから、新たな食の問題の発生などもありますし、 貿易の国際化、大量生産・大量流通、長距離輸送の普遍化ということで、いろんな国か らいろんなものが、長距離でしかも大量に運ばれているという状況があるわけです。ま た、食の問題とは、ちょっと毛色が違うことになるかもしれませんが、海外旅行という のも、昔は非常に限られた方が行かれていたのかもしれませんが、最近は多くの方が行 かれ、そういうことによって、いろんな国に行った際に、その国の食の問題などに遭遇 する機会というのも増えている。そういったところから、病気を持ち帰ってきてしまう というようなことも場合によってはあるかもしれないというような状況があります。  食品の安全を確保するために、国際的にはどういう考え方がなされているかという と、大きく2つありまして、1つがフード・チェーン・アプローチ、もう一つがリスク アナリシス、リスク分析と言われているものでございます。このフード・チェーン・ア プローチというのは、ともすれば、食品の安全というのは、最終製品の段階で安全が確 認されれば、安全だろうと考えられがちだったんですけれども、やはり限界があるとい うことがございまして、生産の段階からそれぞれ流通だとか、加工だとか、消費、つま り生産から流通に至るフードチェーン全段階のところで、それぞれきちんと安全を管理 していくという仕組みが、全体の安全を確保する上で重要なのではないかと考えられて おります。  それから、リスクアナリシスの方は、事故の対応、何かが起きるまでは安全だと考え るのではなくて、予防に重点、安全性の評価と管理を機能的に分けて、透明性を持って やりましょうということとか、利害関係者の間で情報や、意見交換を推進するというこ とがあります。次に食の安全確保の仕組みとして、リスク分析ということでございます けれども、ちょっと説明が重なりますが、リスク分析というのは、国民の健康の保護を 目的として、国民やある集団が危害にさらされる可能性がある場合、事故の後始末では なくて、起きてから何かするということではなくて、可能な範囲で事故を未然に防ぎ、 リスクを最小限にするためのプロセス、分析というと分析して終わりみたいなイメージ を持たれるかもしれませんが、そういうリスクを減らす、管理するところまで全部含め た、そういうプロセス全体をリスク分析というふうに呼んでおります。  リスク評価とリスク管理、リスクコミュニケーションと3つのパーツがあるわけです が、先ほどのスライドにもありましたように、評価と管理を機能的に分離するというこ とで、日本においては現在、リスク評価というのは内閣府の食品安全委員会が行ってい るわけでございます。  リスク評価については、健康に悪影響を及ぼす物質が食品中に含まれている場合に、 どのぐらいの確率でどの程度の悪影響があるのかというようなことを科学的に評価する 機関でございます。食品安全基本法に基づいて行われております。  それからもう一つは、リスク管理ということで、これは厚生労働省、農林水産省で行 っていることですけれども、この食品安全委員会で行われた評価の結果をもって、食品 中にどのぐらいまで、そういう物質が入っていてもいいのかという基準を決めたりと か、どういうものが使われていますという表示をしたりとか、基準とか、表示がきちん と守られているかどうかの監視をしているというわけです。食品衛生法に基づいての監 視とかをしているわけです。農林水産省の方では、例えば、食品中の農薬の基準という のを満たすような農作物をつくるためには、どういう農薬の使い方をしたらいいのか、 農薬の使用基準を決めたりとか、餌や肥料の中には、どういう物質がどの程度まで入っ ていていいのか。それから動物用医薬品の規制だとか、表示だとか、安全のための管理 をしているわけでございます。  ちょっとスライド上も薄くて見にくいかもしれませんけれども、リスクコミュニケー ションというのは、全体の枠にかかっておりまして、いわゆる評価のところだけやれば いいとか、管理のところやればいいということではなくて、評価から管理に至る全部の プロセスにおいて、リスクコミュニケーションが重要だというふうに言われています。 ここでは食品の安全に関する情報を皆さんで共有しましょうということと、一方的では なくて、相互に意見交換をしましょうということ。それから、一つは消費者とか、関係 者の意見というのを施策の中に反映していきましょうというような目的でも行われてい るわけでございます。  それでは、まず食品のリスクについて簡単に説明したいと思いますが、リスクという 定義、ちょっと難しいんですけれども、食品にハザード、ハザードというのは何かとい うと、悪影響をもたらす可能性のある物質等、「物質等」とついているのは、放射能と かの物質以外のものも含まれてくるので、そういうものがある場合に、それによって生 ずる悪影響の確率と、その程度の関数であるというふうに言われております。  リスクというのは、あくまでも危険ということとは違って、それが必ず起きるかどう かというのはわからないという概念でございます。これ自体が非常にとらえにくい言葉 でございまして、ただ、これに近いという日本語も全くないわけではなくて、いろんな 先生に考えていただいたりもしたわけでございますけれども、リスクに近いという言葉 というのは、「やばい」という言葉が比較的リスクの概念に近い考え方だそうでして、 例えば、食品に使うとすると、この食品がどのぐらい「やばい」かということを評価し たりすることになるんですが、ただ、「やばい」とか、「やばさ」という言葉を公的機 関としては使えないので、やむを得ずリスクという言葉を使っているという状態でござ います。  次に絶対に全体の安全な食品があるかということなんですけれども、ある物質が健康 に悪影響を及ぼすかどうかというのは、その物質の持っている有害性、その物質がどん な有害性を持っているかということと、その物質をどのぐらい摂取するかで決まってく るということです。これはどんな物質とか食品であっても、摂取量によっては健康に悪 影響を及ぼす可能性がある。たとえ健康にいいと言われているものであっても、食べ過 ぎれば害が出るということでございます。  また、この辺は後ほどのスライドの中でも説明が出てくるところですので、またその 際に詳しく説明したいと思います。  「『リスクコミュニケーション』とは?」ということでございますが、リスクに関係 する人々、関係する人というのは、消費者でも事業者でも行政も学会の人とか、とにか く関係する人々全員がそうなんですけれども、リスクに関係する人々の間で、食品のリ スクに関する情報とか、意見を相互にお互いに交換するということだというふうに言わ れております。ここでは有害性についてどうだとか、それが起こる確率がどうだとか、 それについて、どの程度ならば受け入れることができるのかとか、どのレベルまでリス クを下げるためには、どんなことをすればいいのかについて、関係者の間で理解を深め て、ともに考えていこうという取り組みであるというふうに言われております。  リスクコミュニケーションを難しくしている要因というのが幾つかありまして、まず 御紹介させていただきたいのは、このリスクの認知ギャップというのと、食品の安全性 についての思い込みという、この2つがありまして、こういうような要因から、リスク コミュニケーションというのが現実難しくなっているというようなことがございます。  1つはリスクの認知ギャップといって、実際のリスクと人々が感じるリスク、認知リ スクというふうに呼んでいますけれども、リスクというのは概念であって、直感的にと らえることができないので、例えば、赤いリンゴと私が言ったときに、皆さん大体同じ ようなものをイメージできると思うんですが、リスクというのはそもそも概念なので、 多分、どんなふうに説明していっても、同じようなものだというふうに皆さんがとらえ るというのは、なかなか難しいんだと思います。実際にそのものが持っているリスクと いうのと、それぞれの人が感じるリスクの間には差があるといわれておりまして、その 人が持っている知識とか、経験とか、そういうことで、そのリスクに対しての受け取り 方に差が出てきてしまう。これは専門家と一般の方もそうなんですけれども、これは専 門家同士でもいろいろ話し合って、合意して決めていくというか、納得していかない と、リスクがどの程度なのかというのは、専門家の間同士でも多分違うというふうに言 われています。  リスクの認知ギャップについて、もう少し詳しくお話ししますけれども、上の段にあ るのが、実際のリスクよりもリスクが大きいというふうに感じられる傾向のあるもの、 下は実際にあるリスクよりも小さいというふうに感じられる傾向のあるものでございま す。  大きく感じられるタイプのものとしては、未知のものであるとか、情報が少ない、よ くわからない、自分ではどうすることもできない、そういうものというのは、本来持っ ているリスクよりも、そのリスクがあるということがわかったときに、人々は大きくリ スクを感じがちである。  それから、下の方は実際のリスクのよりも小さく感じられるようなものでございまし て、例えば、そのものの便利さとか、利益というのが明らかであるものとか、自分で管 理、コントロールできるようなものというのは、一般的に、そのものが持っている本当 のリスクよりも小さく、そのリスクというのは、そんなに大きくないじゃないかという ふうに思いがちだということです。これがリスクの認知ギャップというふうに言われて います。  上の欄で言うと、例えば、遺伝子組換え食品とか、非常に技術的にも新しいものだ し、よくわからないし、自分ではそういうものはコントロールできないというようなこ とで、非常にリスクとしては大きく感じがちなところはあるかもしれません。下の方は 食品の事例ではないんですけれども、例えば、自動車などがそういうふうに言われてお りまして、自動車ですと、最近交通事故の死亡者数というのは、ひとときに比べると大 分少なくなっているそうですが、最近の統計でも7,000 人から8,000 人ぐらいの方は毎 年お亡くなりになっているという状況があるわけです。  ですけれども、自動車の持っている便利さというのは、やはりきちんと自分で実感で きるものでありまして、自分で気をつけていると、かなりの事故というのは防ぐことが できるんじゃないかということもありまして、自動車などのリスクというのは、比較的 皆さん小さいというふうに感じておられるんではないかというふうに思います。  食品の安全性についての思い込み、リスクコミュニケーションを難しくしているもう 一つの方の要因でございますけれども、自然由来の物質というのは安全で、合成の科学 物質というのはみんな危険なんじゃないか。一般的にはそう思われていることが多いわ けなんですが、ちょっと振り返ってみると、例えば、フグの毒とかはもともと自然の毒 ですし、毒キノコもそうですし、植物でよく春先には山菜をとりに行って、間違えて毒 草をとってきてしまって、食べてしまってというようなこともあったりとか、それか ら、カビ毒なんかも、当然、自然の毒ですので、とにかく、自然由来だったら何でも安 全ということはないんですが、何となく安全だというようなイメージを持ってしまいが ちだということです。本来は自然由来であっても、合成の物質であっても、きちんと毒 性なり、何なりを評価して、安全性を確認してみないと、安全かどうかというのはわか らないんですが、ついつい自然のものというのは安全だというふうに考えてしまいがち です。  それから、先ほど有害かどうかは、ものの有害性と摂取量で決まるという話をしまし たけれども、有害なものというのは、ほんの少しでも入っていたりら危険というふうに 一般には思いがちですが、実は有害なものでも、自分が実際に食べたり、飲んだりする 量というのが小さければ、体に影響が出ないというような量というのも存在するわけで ございます。  それから、賞味期限で1日でも過ぎているともう危険だというふうに、多分、多くの 皆さん思っていると思いますけれども、賞味期限というのは、ある温度とか、いろいろ な管理をした上で、どのぐらいその食品がもつのかということを調べた上で設定されて おりますので、きちんとした管理をするということが、まず大前提でありますが、大 体、ぎりぎりでその期限を設定すると、期限内で物が悪くなってしまう可能性は、どう しても高くなりますので、多少余裕を持って設定されているのが一般的であるようで す。ただ、これは全部が全部そうではないかもしれません。ですので、温度管理、冷や したりとか、細菌が増えないような管理というのをきちんとしていれば、多少賞味期限 が切れていても中のものは安全であるということがあるかもしれませんし、逆に賞味期 限内であっても、本来ちゃんと冷蔵庫に入れて保存すべきものをテーブルの上に長く置 いてしまったりすると、賞味期限内であっても物が腐ってしまったりするということも あるわけです。  一応、科学的にはそういうような実態があるということで御説明させていただいたも のですので、賞味期限が切れたものを販売しても大丈夫ですという趣旨で今回スライド をつくったものではありませんので、その辺は誤解のないようにしていただければと思 います。  それから、スライドにはなかったんですけれども、意見交換会に参加いただいた皆様 へということで、皆様にお配りした資料の中に、A4の1枚紙のカラー刷りのものがご ざいます。今日のこの会というのは、リスクコミュニケーションの取り組みの一環とし て行っております。リスクコミュニケーションというのは、今御説明したようなことで ございますが、この意見交換会の目的といたしましては、必ずしも、この場で何かを決 めて、合意して決めるということを目的としている会ではありません。今日の意見交換 会の中では、輸入食品の安全対策の現状とか、それから残留の農薬などのポジティブリ スト制度というものについて、今日来ていただいた方の間で同じ情報を共有したいとい うことと、それから、様々な立場から意見交換を行い、この問題について広く認識を深 めていきたいということを目的としておりますので、よろしくお願いいたします。 ○森田専門官  それでは引き続きまして、輸入食品の安全確保について、同じく広瀬から御説明させ ていただきます。 ○広瀬課長補佐  それでは、1つ目のテーマの「輸入食品の安全確保について」に入りたいと思いま す。  まず、主要先進国の総合食料自給率でございますけれども、イギリスとか、ドイツと か、フランスとかがありまして、ここが100 %になっているわけですけれども、イギリ ス、ドイツというのは、若干低めですが、フランスは昭和45年と平成14年、緑の方が昭 和45年ですが、こんな状態になっている。イギリスとか、ドイツとかというのは、低い ながらも増えているわけですが、日本はむしろ、カロリーベースで見ると落ちている。 昔は50%を超えていたんですけれども、平成14年度は切っていて、今は4割ぐらいだと 言われています。逆に言うと6割の食料を海外に依存しているという実態になっていま す。  次は、食品等の輸入届出件数とか、重量の推移でございまして、こちらの緩い傾きの 方は輸入されているものの重量でございますが、こちらのちょっと急な傾きの方は届け 出件数でございます。物の量自体は、それほど大きくは増えていないということがわか るかと思いますけれども、件数というのが非常に大きくなっております。件数が大きく なるということは、それぞれ1個口あたりのものというのが小さくなっているわけです から、検査の頻度というのもたくさんの検査というのが求められているというような状 況になっているわけです。  輸入食品の監視体制が一体どうなっているのかということでございますが、一般的に は輸入時のことが割と着目されがちですけれども、輸出国における取り組みとか、輸入 時における取り組み、国内における取り組みと大きく3つ段階での取り組みに分かれて おります。  1つは輸出国における衛生対策ということで、農薬等の使用情報だとか、証明書だと か、そういうようなことがあるわけです。そういうようなことを受けて、入ってきたも のについては、検疫所における届出審査というものをします。輸入時の検査体制として は、この3つのものがございますけれども、一般的には、まずモニタリング検査という ものを行う。また、こちらの方では後で少し詳しく説明させていただきたいと思います が、こういった中で合格となれば、国内に入ってきますし、不合格となると廃棄または 積戻しというようなことがあるわけです。  国内に入ったものは、さらに都道府県などの監視指導計画に基づいて、収去検査とい うのをしておりますし、違反が見つかれば、規制、通報などをすることになっていま す。そういう違反情報などが来ると、またこのようにフィードバックされてきて、これ も過去の違反事例とか、輸出国の情報とか、それから原料の製造基準とか、そういうよ うなものを参考に、こういう検査をしたりとか、そういうところに情報としてフィード バックされてきますし、こちらの方では違反が相次げば、二国間協議をしたりとか、必 要に応じて現地調査をするとか、こういうような仕組みになっているわけでございま す。  安全確保の基本的な考え方なんですけれども、国の内外、国内だけじゃなくて、外国 も含めて、国の内外における食品供給行程の各段階において、これは先ほどお話しした フードチェーンの全段階というのと同じですけれども、適切を措置を講ずることによっ て行うということが、食品安全基本法の中でもうたわれているわけでございます。  3段階での適切な対応が必要ということで輸出国における対応、それから、水際(輸 入時)での対策、それから国内流通時での対策、こういうような形で適切な対応が必要 だというふうに言われております。  こちらは食品等輸入届出窓口配置状況ということですが、全国31か所に検疫所という のがあります。大きなところでは検査センターというのが神戸と横浜にありますが、こ ういうようなところで高度な検査というのを行ったりしています。食品衛生監視員が 300 名ぐらい配置されているというような状況です。  検疫所の食品衛生監視員の年度推移でございますけれども、平成元年のころは89名と いう数でした。近年、国家公務員の数を減らすという国の大きな方針のある中でも、こ の分野というのは、必要性というのはある程度認めていただいて、このように少しずつ 人が増やしていただいて、この平成17年のところでは、ようやく300人ぐらいになった ということですが、輸入件数そのものが伸びていますので、なかなか難しい状況だとい うことでございます。  輸入時に重点的に監視指導を実施すべき事項として、こういうようなものを挙げてお ります。1つは輸入届出時において、法違反の有無のチェックというのをするというこ とと、輸入時検査の実施、これは入ってきたものがどうかということ。それから、輸入 者への指導とか、モニタリング検査等で違反が発見された場合は、輸入時の検査を強 化。また、これは後ほど出てきますけれども、まずモニタリング検査というところで違 反が見つかったら、例えば、モニタリング率を上げるとか、さらに検査を強化する方向 で仕組みが進んでいくわけです。  輸入者への指導ということがありますので、輸入をする方、相談に乗ったりとか、ど ういうふうにすべきだというような指導もさせていただいているということでございま す。  輸入時における検査体制、この順番で書いておりますけれども、まず、国が直接的に 税金で検査しているというのは、このモニタリング検査でございまして、年間計画に基 づいて検査をしております。平成17年度7万7,000 件を検査する予定ということでござ います。こちらのモニタリング検査というのは、一応、入ってきた荷物を収去させてい ただいて検査をするわけですが、検査結果の判明を待たずに輸入は可能。要するに、物 としては流れていってもいいという状態でございます。  当然、後で見つかると、それについては遡って、いろいろ回収したりということは必 要になってくるわけですが、モニタリングでして、違反頻度もそんなに高くないという ことがあります。  もう一つは検査命令というものですが、モニタリングで何か違反が見つかると、まず モリタリング率、検査する率を上げます。さらに違反が見つかるようであれば、そのも のは違反の蓋然性が高い。要するに、違反する可能性が高いということで検査命令とい うものが出ることになります。食品衛生法の不適な可能性が高い食品等については、こ の検査命令が出されまして、輸入者が費用負担をして検査をする。しかも、検査結果が 出てくるまでは荷物は先に流せなくて、そこで留め置かれるということでございます。 これらの検査のほかにも、その他の検査として、輸入者などが行う自主的に検査をする というのがありまして、こういったものの指導なんかも行っているわけでございます。  輸入時の検査体制の概要ですが、まず、はやりモニタリングするとか、指導、検査と いうことですけれども、違反が見つかればモニタリングをまず強化して、さらに違反の 可能性が高いものというのは、検査命令をかけて検査があって、安全なものというのが 確認できるまでは、物を流すことができないという措置をとるわけです。さらに危ない ものについては、包括的な輸入禁止というものがありまして、法律に基づいて、そのも のの輸入自体が禁止されてしまうということがあります。  ここにありますように、違反の蓋然性といいますか、違反の可能性というのは低いも のから高いものまで、それぞれどんどんピラミッド型に、三角の上に行くほど規制が厳 しくなるということでございます。  このモニタリング検査の考え方ですが、どのぐらいの数を検査すればいいのかという のは、ある程度科学的に考えていく必要があります。モニタリング検査に必要な検体数 というのは、コーデックスの分析サンプリング部会、このコーデックスというのは、世 界的な食品の規格を決めている国際機関でありますけれども、そういうところで統計学 的にある一定の信頼度でもって違反というのを見つけることができる検査数というのが 示されておりまして、95%ぐらいの信頼度でもって、0.1 %の違反というのを見つける ためには2,999 件。それから1%の違反率のものに必要なものといったら299 件、10% のものを見つけようとすれば、29件やれば95%の信頼度で見つけられるんじゃないかと いうことです。  わが国では、299件を基本として、過去の違反率とか、輸入件数、重量、違反内容の 重要度というようなことを考えて、それぞれの食品群ごとに検査件数を設定していま す。  厚生労働大臣における検査命令ということで、先ほどモニタリングをして違反の可能 性が高いものについては、検査命令をかけるとお話ししましたが、それについての説明 でございます。  検査命令の発動の要件としては、例えば、健康被害の発生とか、健康被害発生のおそ れというようなこともありますが、同一の製造者または加工者から同一の輸入というよ うなことがあった場合、残留農薬、動物用医薬品であれば、1回目の違反については、 50%モニタリング検査の検査率をアップするわけです。さらに、そこに2回目の違反と いうのが見つかると違反の可能性が高いというふうに判断して検査命令がかかります。  それから、検査命令を解除する場合ですけれども、輸出国における再発防止策の確立 とか、違反というものが輸出される状況じゃないということが確認できた場合には、そ ういう検査命令の解除ということができるということでございます。  これが実際の検査のサンプリングの現場の写真でございますけれども、決められた採 取方法で採取するということでございます。きちんと監視員の方々が現場に行って、荷 物の偏りがなく、一部のいいところだけ集めて検査しても何も意味がないので、ちゃん とマニュアルに従って、荷物をあそことこことこっちとか、幾つかきちんと均等にサン プリングしてきて、そういったものを袋に詰めている。こちらは多分、穀類とか、もし くは粒状のものだと思うんですけれども、何かでぐさっと差してとっているというもの でございます。比較的こういうものは簡単だと思うんですが、冷凍なものはなかなか大 変で金づちとかでカンカンカンとやって削りとって、とってこないといけません。  検体については、温度管理などがきちんとしていないと、サンプリングしてきて検査 するところに運ぶまでの間に微生物が繁殖したりしますので、きちんと温度管理、こう いう保冷するような箱に入れて、温度の記録もとっている。きちんと管理された状態で 検体を運んできて、運んできた検体については、先ほどの大きな検査をするところで は、検査センターがありますけれども、そういうところに集めてくる。検体の受付など をするということでございます。  これは理化学検査といいまして、いわゆる微生物とかではなくて、クロマトグラフと かを使って数値を出す、分析するものでございますけれども、まず、粉砕・均一化とい うのがあります。先ほどの食品のサンプルを、ちょこんと入れてすぐ分析できれば非常 に楽なんですけれども、実は、そういうところに行くまでに非常に大変です。まず、と ってきた食品のサンプルを細かく砕いて均一化して、そこからさらに溶媒というふうに 呼んでいますけれども、液体とかで抽出をするわけです。抽出したものを濃縮して、さ らに濃縮したものを抽出・精製と書いてありますけれども、農薬とか、添加物とか、動 物用医薬品なんかを測るために、その計測の妨害になるような物質というのを、この間 の操作の中でどんどん取り除いていくということがあります。  ここでようやくクロマトグラフにかけるサンプルができて、あとは機械に打てば、打 てばと言っても試験管に入れておくと、最近オートサンプラーとかといって、自動的に どんどんデータを出してくれる機械もあるそうですけれども、ここで機器分析ができる ということでございます。  これからまた、海外の情報なども説明したいと思いますが、海外情報に基づく緊急対 応ということで、何も情報がない段階で、国内での検査を漫然としているわけではなく て、海外での情報収集にもいろいろ努めています。  海外における食品安全情報の積極的な収集ということで、在外の日本大使館を通じて とか、それから国立医薬品食品衛生研究所の安全情報部というところで、いろいろ海外 情報というのを集めて、海外の論文とか、そういったものを集めて、定期的に情報を流 してくれている。それから食品安全委員会の事務局にも、情報・緊急時対応課というと ころがありまして、ここでも積極的に海外情報を集めている。  問題の食品が我が国に輸入されている場合には、その流通の状況の調査ですとか、物 によっては回収だとか、輸入時の検査の強化をしたりとか、そういうようなことがある わけです。  具体例については、米国産アーモンドとか、中国産はるさめとかがあるんですけれど も、通常の検査の中で突然見つかったというよりは、予めこういうものが問題になって いるというような情報をキャッチして、調べて、こういうものを見つけ出したというよ うな例でございます。  ちょっとスライドの字が小さくて見にくいかもしれないですけれども、主な食品衛生 法違反の事例ということでございます。いろんなものがあるわけですけれども、一番多 いのは、規格基準に違反する食品等の販売の禁止で、これが65%ぐらいになるんでしょ うか。その次が指定外添加物等の販売等の禁止とか、それから有毒・有害物質等を含ん でいるというようなもの、多分、こちらはアフラトキシンとかが中心になっておりま す。先ほどの規格基準のところでは、動物用医薬品と言われているものとか、抗生物質 とか、冷凍食品での微生物の違反とか、そんなものが入っている。  指定添加物以外のものというのが見つかったりしているということがありますが、添 加物規制も一つは、それぞれの国で必要なものというのを使いたい人が申請をして、評 価して、それぞれの国が添加物を認めているので、日本と外国で指定されている添加物 に違いがあるということがあります。当然、輸入食品ですので、制度の違う国から物が 入ってくるわけですから、日本の基準に合致しているかどうかという点では、必ずしも そうでないというものが見つかる可能性が高い。ただ、外国でもきちんと安全性評価と いうのをして基準を決めている場合もありますので、要するに、日本で認めていないも のはすべて、実際に危険かどうかというのはまた別の問題ではあります。安全であるも のについては、なるべく整合性を図っていきましょうということで、そういうもののハ ーモナイズみたいな取り組みもしている。ちょっと輸入食品に関しては違う次元の話に なりますが、参考までにお話させていただきました。  違反が判明した場合の対応ですけれども、違反食品が国内流通していた場合には、関 係の都道府県と連携して、回収等の措置をとります。都道府県の段階で、この違反のも のが見つかったという場合には、そういう情報に基づいて、国の方でまた逆に輸入時の 検査の強化をするということがあります。  違反のあった輸入者に対する措置ですが、例えば、原因究明の調査とか、再発防止対 策をとりなさいというようなこととか、同一の製品を再度また輸入する場合には、サン プル品の検査とか、そういう改善が図られていることを確認するというようなことで す。違反を繰り返す輸入者に対しては、営業の禁停止というのがかけられる場合という のがあります。また、輸入食品の違反情報については、ホームページ上に公表しており ます。  国の取り組みというのは、自主的な衛生管理の実施についての指導ということですけ れども、食品安全基本法にもありますが、事業者は食品の安全性の確保について、第一 義的責任を有するということで、やはり、輸入してからだと物も来てしまっているわけ ですし、いろいろ被害も大きいということだと思いますが、輸入前に検疫所の方に御相 談いただければということが一つあります。  それから、ある程度は自分たちでも自主検査というようなことで、少しそのものが安 全なのかどうかというのが確認していただきたいということとか、自分たちが扱ってい るものについての記録ですね。流れの記録については、きちんと保存してほしいという ようなことを指導させていただいております。  あとは輸出する元の国の側のことになりますけれども、輸出国における衛生対策の推 進ということで、検査強化品目について、違反原因の究明とか、再発防止対策の確立を するようにお願いしているとか、2国間協議とか現地調査を通じて、農薬とかの使用の 管理をしてもらうとか、その国における監視体制を強化してもらうとか、輸出前の検査 というものの推進をしてくださいということをしているわけでございます。  生産段階で安全対策の確認が必要な場合には、日本の国から専門家というのを輸出国 に派遣するというようなこともしております。  これは輸出国による衛生対策の例なんですけれども、皆さん印象には残っていると思 うんですが、中国産の冷凍ホウレンソウでいろいろ問題が起きました。加工工場の方か ら生産農家に対して、直接的な管理ということで生産段階における管理、使用農薬だと か、使用方法の遵守だとか、農薬についても統一的に購入しろとか、かなり管理をして いただいた状況で物をつくっている。さらに、加工工場では畑ごとの製造管理とか、使 用原料の記録を保存したりとか、三段階での農薬の検査、収穫前と加工時と最終製品、 それぞれの段階で検査をしたりして、初めて輸出をするというようなことです。  こちらの方では、中国政府輸出検査、検疫検査機関による輸出前の検査とか、生産加 工工程の確認とか、そういうようなことをしています。問題発生時には、製品の遡及調 査というのが可能な仕組みになっているということでございます。  これは中国産冷凍ホウレンソウの輸入及び違反の状況でございますけれども、14年と いうのは届出検査がこのぐらいあって、違反45件、違反重量としては620 トンあったわ けですけれども、多分、いろいろその後あったので件数自体も非常に下がっております が、違反件数というのは、16、17年度で0件ということになっております。届出重量と しては大分落ちたようですけれども、6,000 トンとか、4,000 トンとか入ってきており ますが、違反は出ていないという状況です。その間における概要みたいなものも書いて おります。  これでおしまいになりますが、厚生労働省のホームページに食品の安全確保に向けた 取り組みのページを設けておりますので、スライド上は見にくいと思いますが、お手元 の資料で確認いただき、見ていただければと思います。  どうもありがとうございました。 ○森田専門官  それでは、ここで5分ほど休憩をさせていただきたいと思います。1時55分から再開 したいと思いますので、時間になりましたからお席の方にお着きください。よろしくお 願いいたします。                   (休憩) ○森田専門官  それでは、再開をさせていただきます。引き続きまして2つ目のテーマ「残留農薬等 のポジティブリスト制度の導入について」を御説明いたします。 ○広瀬課長補佐  引き続き「残留農薬等のポジティブリスト制度の導入について」の説明をさせていた だきます。  最初に食品に残留する農薬が、どういう規制をされているかについて説明します。  食品の安全確保のために、残留農薬規制というのはどうなっているかでございますけ れども、基本的な考え方としては、毎日の食事を通じて自分たちが体の中に取り入れる 農薬等の量が、ADIを超えないようにするというのが基本でございます。ADI、ち ょっと難しい言葉が出てきましたけれども、また、説明していきます。  「ADI」というのは何でしょうかということですが、ADI=許容一日摂取量、日 本語ではこういうふうに言われていますが、Acceptable Daily Intake というものでご ざいます。定義としてはある物質について人が生涯、その物質を毎日摂取し続けたとし ても、健康に対して有害な影響というのがあらわれないというふうに考えられている一 日当たりの摂取量のことをいいます。通常、一日当たり体重1キログラム当たりの物質 量でmg/kg/day というのであらわされているものでございます。このように生涯にわた って、毎日こういうものを、こういう量をとり続けたとしても影響が出ないと考えられ ている量だということでございます。  ADIというのは、どうやって決めるんでしょうかということなんですけれども、G LP、また英語が出てきましたが、good・laboratory・Practiceというもので、安全性 の試験の適正な実施に関する基準、試験を適正に行うための基準というのが決められて おりまして、それに従って作成された安全性試験のデータを提出していただいて、内閣 府の食品安全委員会が評価をしています。このデータそのものは申請者であります農薬 のメーカーなどが作成するわけですけれども、きちんとこういう基準に従ってデータを つくっていて、農薬の場合には、農林水産省が、そういう試験を実施している施設の査 察を行って、実際にきちんとデータがとられているかというようなことをチェックして いるわけでございます。  評価のもとになるデータですけれども、例えば、急性の毒性とか、亜急性というの は、ちょっと長めのものでございますけれども、慢性、これは本当に長いものでござい ますが、一時的な影響と、それと長期にわたる影響、それぞれ見ているわけです。それ から発がん性ですとか、その物質に奇形を誘発するような性質がないかどうかとか、繁 殖ということで、子どもとか、孫の代に悪い影響が出ないかというような、そういう各 種の安全性試験というのをやっていて、その試験の結果から有害な作用が認められない 量、無毒性量というのを導き、評価しますが、これに安全係数をかけてADIというの が決まってきます。安全係数というのは、動物実験ですので、人間とは種の違いがある ということで種差を考え、また人間同士でも個体差がございますので、それぞれ10を 考慮して、通常無毒性量の100 分の1という数字になっているわけでございます。  ここで曝露量と生体影響の関係ということでございますけれども、有害な物質という のがあった場合に、こちらの横軸が曝露量、要するに人や動物が摂取する量で、縦軸が それに対する健康影響だというふうに考えていただければと思いますが、有害な物質が あったとしても、これと生体影響の関係は、原点を通る直線的な線ではなくて、一般的 には、このようなシグモイドカーブと呼ばれるようなSの字を伸ばしたような状況にな るというふうに言われています。  ここに致死量というのがありますが、こういう量を摂取してしまうと死んでしまうわ けでございまして、一般に通常、私たちが日常食べている量で、こういうような致死量 になるものとか、こういう毒性の影響のシビアなものというのは、一般には我々は毒と いうふうに呼んでいるわけですが、そういうものであっても、その量をずっと下げてい くと影響が出ないという量が存在するわけでございます。  先ほどお話ししましたいろんな毒性の試験、急性とか、慢性とか、発がん性とか、催 奇形成ですとか、子とか、孫への影響とか、そういうものを全部調べた上での全く毒性 のない量、無毒性量というのをまず動物で調べて、その動物の調べた無毒性量に安全係 数ということで種差、個体差を考慮した100 分の1の数字、これがADIになっている わけです。  農薬とか、添加物とか、動物用医薬品もそうなんですけれども、実際に使用されてい るレベルというのは、このADIを超えないレベルで管理しましょうということで、い ろんな食品中の基準だとか、畑でのまき方とか、そういうものが決まってきているわけ です。こちらの生体影響というのは、リスクというふうに読みかえていただいてもいい かと思うんですけれども、このように摂取する量自体が下がってくれば、リスクという のは非常に小さくなってくるわけでございます。よく基準値の100 倍だとかということ で騒ぎになることがございますけれども、それがここのあたりの話であれば、生体影響 として大きく変化するかもしれませんが、ADIよりも下のところでは、別に生体影響 として毒性が10倍とか、100 倍、1,000 倍になるわけではありません。一般的には基準 値の100 倍というと、100 倍危ないと考えてしまいがちですが、そうではありません。 このように原点から直線で比例関係の影響であれば、摂取量が10分の1、100 分の1に なれば、当然、毒性というのも10分の1、100 分の1になってくるんでしょうけれど も、現実の生物反応というのは、このようなことになっておりますので、ADIを下回 るレベルのところで、例えば、このぐらいの摂取量だったのを、このぐらいまで下げる ということは、確かに摂取量のレベルとしては下がりますけれども、縦軸でいうところ の生体影響とか、リスクという点では、余り大した変化はないというのが現実かと思い ます。  次に農薬とかの基準値の決め方、食品残留農薬の例でございますけれども、どういう ふうに基準値を決めているかということなんですが、個々の農薬ごとに登録保留基準と か、外国の基準とかを考慮して決めてきたということがあります。これはAという農薬 の例ですが、例えば、海外では小麦に「1」という基準がありました。それから白菜に は国内で使われている可能性があるというようなことで、ここでは作物残留の試験とい うのをきちんとやりましたという例があって、1ppm ぐらいまでということがわかって いることですね。コーデックスで柑橘で0.5 という基準があります。我が国はミカンを いっぱい食べていますけれども、世界的にはオレンジとか、そういう柑橘の方が食され ていて、コーデックスにミカンという基準があることはめったにないんですけれども、 国際的には柑橘類というようなことでオレンジとか、グレープフルーツだとかを一括り にした基準が決まっていることがあります。あとは、例えば登録保留基準ということ で、もともとお茶に「2」というのが決まっているとか、こういうのを参考にして、ま ず基準値というのを検討するわけです。  ここから少し話が難しくなってくるんですけれども、基準値を決めるにあたって、ま ず理論最大一日摂取量方式という考え方で評価をすることにしています。それは基準値 の対象となる農作物の摂取量に基準値というのを乗じて足し合わせる。それがADIを 超えないかどうかというのを確認して、超えないということを確認できたら基準値を決 めるということ。ADIを超えないといっても、実際には、ADIの8割ぐらいに収ま っているかどうかというのが判断基準になります。  ここにありますように、農作物の摂取量、国民平均での例ですけれども、まず、小麦 はこのぐらい食べています。それから白菜は一日当たりこのぐらい食べていますという ような量に、それぞれ農薬が基準値いっぱいまで残っていたと仮定したときに、その農 作物を通じて、どのぐらいの農薬を摂取する可能性があるのか調べると、このようにそ れぞれ計算して出てきて、これを足したものが、Aという農薬についての理論上、最大 摂取されると考えられる量だろうということでございます。  この(1)と農薬のADI、これは体重1キログラム当たりで出しておりますので、国 民の平均的な摂取量のもとになったところの、その方々の平均的な体重というのを考慮 すると、一日当たりミリグラム数が出るので、このような形で数字として出るわけで す。1人当たりの許容摂取量というような言い方をしています。これは実際には、こち らを53.3で割っても多分同じ、この0.02と比べてもいいんですが、一応便宜的に、こう いう説明を今回させていただきます。  この値、1人当たりの許容される摂取量と基準値をおいたときに、農作物を通じて摂 取されると思われる農薬の量を比べて、(1)が(2)より小さければ、基準値として設定し ても安全は保たれるんじゃないかというふうに基準が決まってくるわけです。  基準値の決め方で少し難しいものとして、日本型の推定一日摂取量方式という方法が あります。今回お示しした事例では、基準設定の対象となる農作物に、基準値いっぱい まで農薬が残留するという仮定で計算をしましたが、実は基準値いっぱいまで農薬が残 留しているということはほとんどなくて、もともと農薬の基準値を決めるときには、作 物残留試験というのをしますが、作物残留試験の結果をそのまま基準値に持ってくる と、基準を超える可能性なんかもありますので、大体、基準値の5割ぐらいになるよう なところに作物残留試験が収まるような形で、逆に基準値というのを決めているという ようなことがありますので、実際の想定される摂取量というのは、作物残留試験で得ら れているレベルの残留レベルだということの推定ができるわけです。  それから、バナナというのは、国際機関上では皮ごと測って基準値を決めていますけ れども、実際、皮は食べないので、中身だけであれば、どのぐらい残留しているのかと いうような、ちょっと細かいことをいろいろ検討していくと、より精密な農薬の摂取量 が推定できます。これは非常に手間がかかるので、本当は最初から日本型の推定一日摂 取量方式で推定した方がより正確な推定ができるんですけれども、この推定にはいろん なデータが必要となってきて、なかなか手間のかかる方法です。  というようなことで、最終的に基準値になるまでには、こういう3つ段階がありま す。先ほどの例では国民平均での推定の例を示しましたけれども、これは国民平均だけ ではなくて、例えば、幼小児の集団とか、妊婦の集団とか、高齢者の集団というのを、 それぞれグループごとに摂取量とかを国民栄養調査で調査することができるようになり ましたので、それぞれのグループごとに最初の基準値いっぱいまで残留した場合の評価 をしています。ADIの8割を超えなければ、基準値として採用されるということです が、どれかのグループで、ADIの80%を超えてしまうような場合には、それぞれのグ ループに対して、2番目に御紹介したより精密な計算の方法というのをやります。その 精密な計算の方法で、ADIの8割を超えないということがわかりましたら、同じよう に基準値になりますが、8割を超えてしまった場合、これは安全であるということが担 保できないので、基準値案そのものを再検討するというようなことになってくるわけで す。ここのサイクルはぐるぐる回って、最後のADIの8割を下回るということが確認 できれば、初めて基準値のところにいくということでございます。  ここからが今日の本題でありますポジティブリスト制度ということでございます。  まず、ポジティブリスト制度というのは何でしょうかということなんですけれども、 一般的にネガティブリストというものとポジティブリストというものの2つ方法があり ます。  ネガティブリストというのは、今の現在の方法がそうなんですけれども、原則、その 規制がない状態の中で、規制が必要なものについては基準を決めて、それをリスト化し ているというものでございます。基準のないものについては、ほとんど原則自由になっ ているというのが、このネガティブリスト方式です。  次のポジティブリスト方式というのは、これが対局になるものだと思いますが、原則 禁止、とにかくまず禁止という中で、使用を認めるものについて、その基準値の中で使 っていいですよというものを認めるという制度になります。今回、農薬とか、動物用医 薬品、飼料添加物の制度は、このネガティブリスト制度からポジティブリスト制度に大 転換されるということでございます。  残留農薬等のポジティブリスト制度というのは一体何なのかということなんですけれ ども、これは基準が設定されていない農薬などが、一定量を超えて残留する食品の販売 等を原則禁止しようという制度でございます。  一定量というのは何かということなんですけれども、最初にお示ししたように、ポジ ティブリスト制度というのは、基準のないものが原則禁止なわけなんですが、ただ、そ うは言いつつも、農薬などの場合には、環境に由来するものとか非意図的な汚染の可能 性などがあるわけでございまして、その一定量としては0.01ppm というようなことで、 この0.01ppm までは、そういう基準のないものが残っていてもいいけれども、0.01ppm を超えて残っていてはいけない。要するに、基準があれば基準の範囲でいいんですが、 基準のないものについては、0ではなくて0.01ppm を超えて残っていてはいけないとい うことでございます。  このポジティブリスト制度を採用している外国の国々の事例ですけれども、例えば、 欧州連合、EUはまさに並行してポジティブリスト制度というのを導入しようとしてい るようですけれども、使用対象外の作物に残留する場合とか、安全性に関する資料がな い場合になどについて、この0.01ppm を超えるレベルで残留することを禁止するという ようなことにしているそうです。  それから、ニュージーランドでは0.1ppmということでやっているということです。ニ ュージーランドは話をお伺いしたところ、カナダの基準を参考に、こういう制度にした ということなんですが、そのカナダも実は0.1ppmということにしているそうなんですけ れども、最近、カナダ自体が見直そうとしているということだそうです。ドイツはこれ もEUの中の1国でありますが、ポジティブリスト制度をとっていて0.01ppm というこ とです。アメリカはそういうふうにきちんとした数値として決めていないそうなんです けれども、運用上0.01から0.1ppmで判断しているそうです。  このような状態ですので、我が国として0.01という数字で今回設定しようというの も、科学的には大体妥当なのではないかというふうに考えられています。  ポジティブリスト制度の対象となるものについてでございますけれども、規制対象と なる物質は、例えば農薬とか、動物用医薬品とか、飼料添加物、こういったものの成分 である物質、それが規制対象になります。それから規制対象の食品ですが、これは加工 食品を含むすべての食品でございます。  規制対象にならないものはどういったものかということでございますが、こういうオ レイン酸だとか、大豆レシチンだとか、食品添加物としても指定されているようなもの とか、それから重曹なんかあるわけですが、こういう特定農薬などは規制対象としな い。これらについては、厚生労働大臣が定める物質ということで、リスト化して規制を するわけでございます。これは、ただ安全だという視点だけではなくて、食品にある程 度残留したという前提でも安全なものということで指定をしていますので、蜂などの天 敵農薬のように、最近、生物を利用した防除というのが一部で行われているそうです が、そういったものは栽培段階では使用されても、いわゆるスーパーなどで売っている 野菜に、残留することは考えにくいということもありまして、天敵農薬などは最終案で は対象から外れています。これは危ないから外れたということではなくて、食品に相当 程度残留するものを検討の中心としているので、残留しないものを外したということで ございます。  規制がいつから始まるかということなんですけれども、平成18年の5月までに実施す るということでございます。「まで」と言っておりますけれども、実際には食品衛生法 等の一部を改正する法律が、平成15年の5月30日に公布されておりまして、この日から 起算して、3年を超えない範囲内で政令で定める日から実施されるということなので、 平成18年5月30日よりも前の日から実施されるということでございます。  これもちょっとスライドが小さくて見にくいので、お手元のもので見ていただければ と思いますけれども、現在の制度とポジティブリスト制度、どういうふうに変わるのか ということを示させていただいたものでございます。  現在は基準が決まっているもの、ここに農薬とか、動物用医薬品とか、決まっている ものがありますけれども、これは基準を超えると販売等の規制がかかりますが、それ以 外の基準がないものは、原則、残っていても販売等の規制がなかったという状態でござ います。これからはポジティブリスト制度ということで、基準の決まっているもの以外 は一律に禁止されてくるわけなんですが、例えば、ここにあるものというのは、現在、 基準が決まっているものなので、こちらの方は基準値を超えれば販売等が禁止されます が、基準値の範囲内であれば、合法的であるというふうに考えられるもので、また後で 説明しますけれども、暫定基準というのを今回定めています。  基準があるものについては、基準値の範囲内で使ってOKなんですが、基準のないも のというのは、一律に一定量を超えて農薬等が残っていたら販売等が禁止されるという のが、この制度の大きな特徴です。ただ、対象外となる部分がございまして、先ほどお 話ししましたようなレシチンだとか、オレイン酸だとか、残っていたとしても健康を損 なうおそれがないというようなものについては、この制度からの対象外ということにな るわけでございます。  次に暫定基準というのは何でしょうかということなんですが、これは日本における農 薬の基準の設定状況なんですけれども、これは農薬だけについての図でございますが、 食品衛生法で基準のある農薬については246 あります。それぞれの内訳をこのように書 いておりますけれども、いろんなものと重なっている部分があります。  一つは農薬取締法によって国内に食用登録のある農薬の数は約350 あると言われてい ますが、この246 すべてがカバーされるわけではなくて、このうちの200 ぐらいの農薬 は食品衛生法で基準がある。そうすると、ここに150 ぐらい食品衛生法の基準のないも のがあるわけです。こちらはコーデックス、国際的な機関が決めている国際基準がある わけですけれども、これは130 ぐらい農薬があるわけですが、このうち、食品衛生法と 重なっているのは80ちょっとということで、50弱ぐらいは基準がない。現在、食品衛生 法の基準があるものだけを基準として、これ以外のものは全部一律基準だというふうに してしまうと、合法的に今まで流通している部分というのが、急に違反になって大混乱 が生じるということがあるわけです。  そこでポジティブリスト制度の施行に当たり、国民の健康の保護、それからポジティ ブリスト制度の円滑な施行という、この2つの目的のために暫定基準というのを設定す ることにしています。  暫定基準の設定に当たっては、科学的な根拠に基づいて決めている基準を参考に、今 回食品の成分規格として決めているということでございます。  それとちょっと誤解があるといけないと思って書いてあるんですけれども、今までに 基準を設定している246 農薬について、それぞれの農作物に定めている基準というの は、これは変更しないということでございます。暫定基準を決めるときに合わせて緩和 してしまおうとか、そういう意図はありません。  暫定基準の参考としている基準ですけれども、1つは国際基準であるコーデックス基 準、農薬取締法に基づいて決められている登録保留基準など、あとはJMPR、また横 文字が出てきてしまいましたけれども、国際機関で農薬を評価している機関とか、国際 機関で添加物の評価を行っている機関などで、毒性の評価の際に必要とされている毒性 のデータなどに基づいて設定されていると考えられている諸外国の基準については、参 考にしましょうということでございます。  基準の決め方の順番ですけれども、まず、コーデックス基準があるかないかというこ とから判断がスタートします。コーデックス基準がない場合には、登録保留基準を考え ていきましょう。コーデックスの基準も登録保留基準もない場合は、海外の基準を考え ていきましょうということです。若干、細かくは、さらにここでも海外の基準を考慮し たりとか、輸入品が多い場合なんかですね、国内の登録保留基準だけじゃなくて、外国 の基準なんかを考慮する場合とかもありますし、どこにもない場合には、海外の基準と か、それもない場合は一律基準というようなことをすることになります。  暫定基準設定のイメージということで、先ほどとちょっと似ているんですけれども、 農薬Bについてこんなふうになっているということがあります。参考とする基準国、現 行と書いてあるのは、現在基準のあるものでございまして、小麦のBという農薬につい て、現在基準0.5 というのが決まっています。現在の基準だけだと、これだけなんです が、そのほかにも登録保留基準でミカンに0.1 というのがあったりとか、国際機関で牛 の肉とか、肉と言っても筋肉なんですけれども、それに0.05というのが決まっていたり とか、その他、先ほどの各国または地域というようなところに0.02というような基準が 決まっていたりというようなことがあるわけです。  お茶については、どこの地域にも全く基準がないので、こういうようなものは一律基 準が適用される例になります。暫定基準というのは、ミカンから下の部分で、この小麦 の部分というのは、あくまでも現在、正式な基準として決まっているわけですが、リス ト上、見やすくするために1つにまとめているということです。  暫定基準の見直しなんですけれども、暫定基準は5年ごとに見直しましょうというこ とです。これはポジティブリスト制度を導入した後、それから5年ごとに、暫定基準を 決める際に参考とした外国の基準というのは変更される場合がありますので、この変更 に応じてということですけれども、具体的には基準があったけれども、それが廃止され ましたというような場合に、暫定基準についても、その部分を削っていくとか、そうい う見直しを行おうという趣旨でございます。  それからもう一つは、マーケットバスケット調査とか、国際機関の評価というのがあ りまして、マーケットバスケット調査で農薬の摂取実態というのがある程度高いという 場合には、優先順位を付けて安全性試験成績を集めて、暫定基準ということではなく て、正式な評価をしていきましょうということです。  それから、国際機関でADIが設定できないというような評価をされているものにつ いても、資料をきちんと集めて、食品健康影響評価というのを優先的にやっていきまし ょう。その結果を踏まえて、きちんとした基準をつくっていこうという流れでございま す。  こちらは最近の状況と今後の予定ですけれども、現在、9月ですので、ここから先が 今後の予定ということになります。一応、この8月までにWTO通報とか、パブリック コメントというのが終わっておりまして、現在、コメントを踏まえた最終案の調整の段 階に入っているわけでございます。9月から10月にかけて、内閣府の食品安全委員会に 調査審議をお願いするのと、それから厚生労働省においても薬事・食品衛生審議会、食 品衛生分科会で審議をしていくということにしております。  それから、17年11月末ですが、これは関係法令の告示ということで、一応、ポジティ ブリストの施行のための告示を11月末に予定しております。これは来年の5月末が、多 分施行期限になると思われますので、それまでの6か月を周知期間として確保するため に、11月末を目指して今作業が進められている。手順としては、ここが絶対ではなく て、既に施行が5月の末までと決まっていますので、そちらは法律上動かないというこ とがありますが、なるべく6月を確保するために、この告示は急いでいるということで す。告示が遅れても施行が延びるということはありません。5月末にはポジティブリス ト制度が施行される予定になっております。  ここからは少し、現在どういう状況かということで説明をしたいと思います。  これが食品中に残留する農薬が一日当たりどのぐらい摂取しているかという調査の結 果でございます。平成13年度、14年度とそれぞれの21農薬ずつ調査をしております。マ ーケットバスケット方式という調査をしていまして、名前の由来なんですけれども、買 い物かごを下げていって、小売店で売っている材料を買ってきて、それで料理をして、 その料理を先ほどの分析の調査といいますか、均一化したり、抽出したりして、分析に かけて検査をするんですが、その最初の段階の買い物かごを下げていって、物を買って きて調べるという調査なので、マーケットバスケット調査方式という名前が付いており ます。この場合は、個々の農作物にどのぐらいものが残っているかという調査ではなく て、実際に調理加工したものが検査の対象になっています。より摂取自体に近い状況で 調べられているということです。  そういう食事を介した農薬の摂取量というのが、先ほど出てきたADIと比べて、ど のぐらいなのかというのを調べているわけですけれども、実態としては、この平成13年 度では、0.19から31%、平成14年度では0.04から1.69%ということでございます。この 31.04 というのも、実際サンプルから農薬が検出されたということではなくて、実はマ ーケットバスケット調査の場合に、検出限界というのをある程度考慮しまして、全く農 薬が検出できなかったとしても、検出限界の数%に値を決めて、そういうものが含まれ ている可能性があるという推計のもとに足し上げていったら、31%になったというもの で、これはたしか実際に、この物質が検出されたということではありませんでした。大 体のものがADIの数%までには収まっているというような結果が得られています。  こちらも加工食品についての残留農薬の検査というのをしてみたものでございます が、平成13年度はフライドポテトとか、発泡酒、ビールなどについて、250 農薬につい て検査をしています。それでここに総検査数として1万4,985 というのがありますけれ ども、この検査数というのは、例えば、1検体、スライドポテトというのを買ってき て、それについて250 の農薬について検査をした場合に、250 検査というふうになりま すので、この検査数というのは、農作物ベースではないということはお断りしておきた いと思います。  こういう検査数において、ただ、このときは31件、0.2 %、それから、4農薬という ようなものが検出されたというような状態でございます。14年度は乾燥野菜、ニンニク パウダーとか、乾燥ほうれんそうとか、そういったものについて、297 農薬、7,600 件 ぐらいの検査をしておりますけれども、違反は18件で12農薬が、このぐらいの濃度で出 たというような結果でございます。  こちらの方は農作物中の残留農薬の検査ということで、実際に市販されている農作物 について、これは各自治体などにおいて検査いただいたデータとか、それから、私ども の厚生労働省の検疫所で調べたデータなどを集計したデータでございますけれども、12 年度は47万件ぐらいのものを調べたところで、検出されているものが2,826 件、これは 検出されたということなので、違反ではないんですが、そのうち基準を超えた件数、こ れは違反になるものですけれども、74件というような数字でございます。13年度も総検 査数53万件に対して、検出されたのは2,700 件ぐらいですけれども、基準を超えたのは 29件だというふうなことでございます。  以上、御説明をさせていただいたわけですけれども、これでも農薬というのは気にな るので減らしたいという方のために、ちょっと御参考までにこういうスライドを入れま したけれども、やはり、食品中の残留農薬というのは、加工とか、調理の過程で減少し ていくというようなことがデータ的にも裏付けられております。水洗いとか、皮むきと いうのは、要するに、皮に植物が農薬を濃縮しているわけではないんですが、外から農 薬をかけると、そこに農薬がついているわけですから、農薬がついているところを除け ば、おのずと農薬の部分が食べる部分からは除かれていくということになるわけです。 あとは茹でる、揚げるなどの加工などによっても、分解されるなどして、残留農薬が減 少するということが知られております。御参考までということでございます。  以上でございます。どうもありがとうございました。 ○森田専門官  それでは、ここで10分程度休憩を設けさせていただきたいと思います。パネルディス カッション及び意見交換会は2時45分から開始したいと思いますので、それまでにお席 にお戻りくださいますようお願いします。                   (休憩) ○森田専門官  それでは、パネルディスカッション及び意見交換会を行います。本日のコーディネー ターでございますけれども、NPO法人食品保健科学情報交流協議会監事の北村忠夫さ んにお願いします。  また、本日のパネリストを御紹介いたします。壇上、中央になりますけれども、千葉 県消費者団体連絡協議会会長の和田三千代様です。皆さんから向かって右手の方になり ますけれども、千葉県の農業士藤崎忠様です。その右手ですけれども、食品安全委員会 事務局西郷リスクコミュニケーション官です。そのさらに右ですけれども、農林水産省 消費・安全局引地消費者情報官です。皆様から見て左側から3番目の方になりますけれ ども、千葉県健康福祉部衛生指導課食品安全対策室岩村室長でございます。最後になり ます、その左手でございますけれども、厚生労働省大臣官房藤井参事官です。  以上の6名です。それでは北村先生議事進行をよろしくお願いいたします。 ○コーディネーター(北村氏)  ありがとうございます。これから始まりますパネルディスカッション並びに意見交換 会のコーディネーターを務めさせていただきます北村でございます。よろしくお願いい たします。  初めに本日のパネルディスカッションの進め方につきまして御説明をさせていただき ます。本日のテーマは2つございます。輸入食品の問題、それから残留農薬等のポジテ ィブリストの問題でございますけれども、本日のパネルディスカッション及び意見交換 会につきましては、輸入食品の問題を最初に取り上げ、それから、その後で残留農薬の ポジティブ制度の問題に入って、最後に時間がもしあれば、食品の安全の問題全般につ いて討議をさせていただくという形にさせていただきたいと思います。  それでは、先ほど御説明がありました輸入食品の安全対策について始めたいと思いま す。本日のテーマは輸入食品並びに残留農薬等につきましては、常に消費者等のアンケ ート調査におきましても関心度の非常に高いものであるというところでございます。先 ほど行われました説明の中で、現状の対策についてはおわかりいただけたかと思います けれども、これらにつきましてもまだ、不安を感じる方等もおられるかと思いますし、 それについてのいろんな意見の方もおられるかと思います。これらの問題をどのように 解決したらよろしいかということで意見交換会を始めていきます。  本日のパネラーの方から最初に御意見をいただきまして、パネラー同士の話し合いを して、その後、会場の皆様方からの御意見をちょうだいするという形で進めさせていた だきたいと思います。  初めに消費者団体の和田さんの方から御説明をいただきたいと思います。 ○和田氏  御紹介いただきました千葉県消費者団体連絡協議会の和田三千代と申します。よろし くお願いいたします。お耳ざわりな部分もあるかと思いますが、御容赦いただきたいと 思います。  先ほど輸入食品に対して、その安全性確保に対しては、これだけの検査を行い、手立 てを尽くして国民の安全を守っているのだから、消費者は安心してほしいと御説明をい ただいたと、私は解釈をいたしました。確かに私が20年前ごろに勉強した中では、監視 員が70名ぐらいしかいらっしゃらなかったと思いますが、今は300 名の増やしたとおっ しゃいました。御努力は認めます。でも、カロリーベースで6割が輸入食品であるとい うことは、監視員を増やさざるを得なかったということだと思います。それだけ監視員 を増やしても検査はすべてではなくて、19万件の内、7万7,000 件でしょうか。いろい ろな情報を得ながら違反がありそうなところに目星を付けてモニタリング調査をしてい らっしゃるように理解しました。御努力はありがたいのですが、全量検査ではないとい うわけで、それですべてが安心とは言えないと私は思います。  今、小さな政府をと言われている中で、これ以上検査員、監視員は増やせないという かもしれませんけれども、こういう国民の健康の安全の問題では、きっちりと税金を使 っていただきたいと思っております。そういうことの国民の合意も必要だというふうに 思います。今後も検査品目の増加をお願いしたいというふうに思います。  それから、現在、加工食品や生鮮食品には、原産国あるいは原産地表示をするように 決まっています。私は友人と一緒に1987年に原産国表示をしてほしいと公正取引委員会 に申し入れをした経験があります。それは安全性の問題ばかりではなくて、最終加工地 を原産国とすれば優良誤認になる。その間の事業者の利益は莫大である。そういうのが 私たちの主張でした。初めはそんなことはできるわけはないと言われましたが、11年か かってJAS法の改正がされました。でも、現在それがすべて表示されていないという 事実がやはりあります。  今日は事業者の方たちもいっぱいいらっしゃると思いますけれども、消費者は消費者 基本法で認められた選ぶ権利を行使するのには表示が頼りなんです。まだ、完全に表示 が行われていないとすれば、大変残念なことだと思います。どうぞ、それもうそ偽りの ない表示をお願いしたいと思います。  BSE問題で偽表示は大きく表に出てきました。それで大分少なくはなっていると思 いますけれども、いまだに牛の耳標のつけかえが出てきたり、そういうことが表に出て まいります。消費者は何を信じて買えばいいのかわからなくなります。ぜひ、こういう ところにも消費者の期待があるということを、行政の方々ばかりでなく、事業者の方々 もしっかりと受けとめていただきたいと思います。  1回目は以上で終わります。 ○コーディネーター  どうもありがとうございました。ただいま、輸入食品の検査量を増やすというような こと。それから、原産国表示を初めとする表示についてしっかりしてほしいというよう なことがあったかと思います。  次に生産者、農業者の立場から藤崎さんに御発言をお願いいたします。 ○藤崎氏  千葉県農業士の藤崎です。よろしくお願いします。私は一応農業者なんで、第一次の 生産者です。今日来ていただいている方は、皆さんそこから加工なり、中間の食品の取 り扱い業者の方が多いと思います。  ポジティブリストもそうなんですが、輸入品とか、食品に関して、もし残留農薬の基 準でオーバーした数値が出たとき、そういうときの責任の所在というのがどこにあるの か、それは第一次の生産者側に責任が持ってこれられるのか、取り扱いの中間の加工業 者なり、仕入れて販売している責任になるのか、それをどういう割合の責任にするのか ということ、多分、普通に考えるとつくった人間が一番悪いとなると思うんです。その ために、今、トレーサビリティの確立をして、農水関係で言うとトレーサビリティの確 立というのはしなければいけませんよという規制みたいな形になっているんですが、考 えてみると、これというのは自分たちを守るために記帳して、ドリフトで隣の畑から農 薬が飛んできたりとか、あと光化学スモッグだとか、酸性雨だとか、そういうものに対 して検査でちょっと変な数字が出ましたというときに、それの言い訳をするためにトレ ーサビリティはちゃんとしなければいけないなと、今日説明を聞いてつくづく思いまし た。  食というのは、私たちは生産者ですので、カロリーからサプリメントの面から心の豊 かさ、おいしいとか、和ませるための食事というのは大切なものだと思います。私たち も生産者として、それを自覚して、確かなものを届けなければならないというのは重々 わかっています。ただ、こういう法制というのができますと、それで縛られるという感 覚が、多分、一次生産者、二次生産者の方は規制ができてうるさくなったというイメー ジしかまずは持たないと思いますので、それをどう理解して、みんなにさせるかという ことを国の方なり、県の方なりで理解させていただけるような方針を出していただけれ ば幸いかと思います。  以上です。 ○コーディネーター  今のお話につきましては、輸入食品のトレーサビリティという考え方でよろしいわけ ですね。  次に行政の立場から岩村さんにお願いいたします。 ○岩村千葉県衛生指導課食品安全対策室長 御紹介いただきました千葉県衛生指導課食 品安全対策担当岩村でございます。  輸入食品につきまして、恐らく皆さんは、国の事務につきましては、先ほど説明があ り、御理解いただいたと思います。それでは、千葉県といたしましては、どういう対応 をしているのか。その辺が恐らく皆さん興味があろうかと思いまして、この点につきま して、現状を説明させていただきます。  当然、輸入食品を含めまして、食品の安全確保につきましては、我々はすべての畜産 物、加工食品、輸入も含めて、県産品、県外品すべて同列に安全確保を図る必要がある というスタンスでございまして、本県といたしましては、そういったトータル的な検査 は年間約3,500 件、項目といたしまして3万3,000 の項目をやっております。  そのうち、輸入食品という分類では、ちなみに16年度におきましては、134 検体の食 品を、これは農畜水産物、特に農産物、養殖魚介、それから菓子類ですね。これらにつ きまして約2,300 の項目を行いました。  結果ですが、昨年度は特に問題となるものはございませんでした。これは検査の結果 でございますが、そのほかに輸入食品ですと、県内に輸入業者が結構ございます。そこ を拠点に県外に流出といいますか、県外に流通するものもございます。こういったもの につきましては、他の自治体で検査をされておりまして、その結果に基づいて検査と表 示ですね。そういう監視、指導の結果、本県に通報があったものがございます。それは1 3件ほどございます。特にかびが生えていたとか、添加物が過剰に使用されていたとか、 表示が不適正であったとか、そういったものが昨年は13件ございまして、これらにつき ましては、それぞれの他の自治体と国、厚生労働省と連携をとりながら、適切な改善指 導を行ったところでございます。ちなみに今年度におきましては、やはり、農産物、畜 産物、それから菓子類等を中心に145 件の検体について検査をする予定でおりまして、 現在、実施をしているところでございます。  特に検査を中心にした本県の輸入食品についての対応の概要でございます。  以上でございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。ただいま3人のパネリストの方に御発言をいただきました けれども、パネリストの方、お三方の間でほかの方の発言につきまして、何か御意見、 あるいはお話等ございましたら意見を表明していただきたいと思います。和田さんいか がでしょうか。 ○和田氏  今、こちらの農業士の方から外国のものもトレーサビリティをしてほしいというふう におっしゃいました。私、後の方で言おうと思っていたことなんです。やはり、日本で は生産履歴といいますか、トレーサビリティ、どんな農薬を使ってつくったというよう なこともきっちりと書かなければいけないといいますか、書くように指導されていると 思いますけれども、やはり、外から入ってくるものも、ぜひそうあってほしいというふ うに思うんです。  今、輸入食品の原材料の多くは、もちろんアメリカも多いんでしょうけれども、アジ アへは日本の企業が出ていって、そこで指導をしながらつくってもらっているというこ とが多くあると思うんですけれども、これは大分改善されたと私も伺っておりますけれ ども、日本で使えなくなった農薬を現地が使わせて、そしてつくらせているというよう な話を耳にしたことがあります。これはやはり、ポジティブリスト制の問題かもしれま せんけれども、こんなことをどうしてなさるんでしょうかと、きつい言葉で言えば、人 間に対する冒涜行為だというふうに思います。ほうれんそうの例もありましたけれど も、こういうことに対しても、ぜひ検査体制の充実を願うものです。それにはやはり、 トレーサビリティの方法を海外で生産する場合にも、ぜひ取り入れていただきたいなと いうふうに思いました。 ○コーディネーター  ありがとうございました。ポジティブリスト制にかかる部分につきましては、また後 で議論させていただきたいと思います。藤崎さんいかがでしょうか、今のお話。同じよ うな御意見だということで。  ここで農林水産省の方から引地さんが来られておりますけれども、外国のトレーサビ リティ、外国産品の輸入食品のトレーサビリティについて、何かお話をいただければと 思います。 ○引地農林水産省消費・安全局消費者情報官  日本と同じように、外国の輸入品についてもトレーサビリティということですが、確 か同等な対応ということが求められるということですが、現実的に外国の生産状況につ いての情報を把握するというのは、技術的になかなか難しいという面はあります。  さはさりながら、今、お話があった消費者の方、生産者の方も求めているという現実 があります。それで私どもとしても、特に輸入業者あるいは向こうで生産されている事 業者の方に、国内法をもって強制的にそうしろというのもなかなかできないんですけれ ども、トレーサビリティのシステムを導入していただきたいということで要請している ところでございます。あわせて、どういうふうにしたらいいのというようなお話もあり ますので、ガイドラインや手引書を作成したり、セミナーを開催させていただいて、日 本向けの製品に対するトレーサビリティは、こういうのはいかがでしょうかというふう なお話をさせていただいているという状況でございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。パネリストの方で、輸入食品について、何か御発言等ござ いますか。藤崎さんお願いします。 ○藤崎氏  最近の輸入品についての状況は、ちょっと勉強不足でわかないんですけれども、お尋 ねをしたいと思うんですが、前は一応、植物検疫だとか、動物検疫のために、船でした ら船内でのポストハーベストだとかがあったり、それから外国の業者さんから出てくる ときの、今はそれをクリアできるような形での農薬使用なんですけれども、そういうの というのが、現在の状況であって、それは残留農薬に出るようなものがあるのかどうか というのをお聞きしたいんですが。 ○コーディネーター  藤井さん、その辺はいかがでしょうか。 ○藤井厚生労働省大臣官房参事官  外国でもいろんな農薬が実際に使われています。それで非常に問題になっているよう なものにつきましては、最初に担当の者が御説明をしましたように、輸入の段階で検疫 所で検査をするということになっています。  ポストハーベストの問題になりますと、外国では農薬というカテゴリーで位置づけら れていますけれども、日本の場合は、一旦、生産をしたものにいろいろと薬をかけると きには、添加物という扱いで整理をされているという違いはございます。ただ、その点 についても、日本で使用が認められている添加物、これは明らかにリストがありまして 決まっております。そして、残留の濃度というものも決まっております。それに違反す るようなものについては、検査をしてわかれば販売流通ができないことになります。現 在、そういうものが検疫所の段階でわかっているかどうか、違反のケースがあるかどう かについては、残念ながらそういうケースがございます。  具体的に何件というのは手元に資料はございませんが、毎年、検疫所で検査をして、 問題があったり事例というのは、厚生労働省のホームページに事細かに掲載をしており ます。コンピュータにアクセスできない方は大変申し訳ないですが、現在のところ、で きるだけ広く公表するということから、インターネット上で情報公開しているところで ございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。パネリストの方にいろいろお話をいただいたところでござ いますけれども、本日、会場には約300 人の方が来られております。この皆さんの中 で、輸入食品につきまして、御意見等ございましたら発言いただきたいと思いますけれ ども、非常に多くの方が来られておりますので、お一人様約2分ぐらいでお願いしたい と思います。1分30秒ぐらいでベルを鳴らしますので、それから30秒ぐらいでとりまと めて、約2分間でまとめて御発言をいただきたいと思います。  では、会場の方どうぞ。よろしかったら所属とお名前をお願いいたします。 ○参加者1  キッコーマン株式会社の梅田と申します。今日はどうもありがとうございました。残 留農薬ポジティブリストについてお願いがあるんですが、とりあえず、輸入食品の方だ けということで、モニタリング検査についてお願いがあります。  残留農薬のモニタリング検査について、検査する農薬有効成分の品目をだんだん増や していっていただいていると思うんですけれども、最初、30個ぐらいだったのが、どん どん増えて、去年はたしか80個ぐらいだったのが、今年の3月31日なんかに百何十個に 増やしていただいているかと思うんです。  実際問題、我々が海外から輸入する食品に関して、使われている農薬を調べると、百 何十のリストに載っていないものもありますし、載っているものもあるということで、 例えば、ほうれんそうと大豆では全然違う農薬を使いますから難しいんですけれども、 ただ我々が困るのは、お客様から厚生労働省が一斉モニタリング検査がこうやっている んだから全部検査してくれと。百何十個全部検査してくれという要求を受けてしまうわ けですね。ただ、我々の観点からして、明らかにトマトにはこういう農薬しか使ってい ないし、大豆にはこういう農薬しか使っていないし、違うわけですから、我々としては 実際に使われた農薬を調べて、それの残留検査をするという作業をしていますので、百 何十個全部やってくれと。それも全然関係ないものもやってくれと言われると非常に困 るんです。  モニタリング検査を一律に全部どんな食品にも当てはめるんじゃなくて、農産物によ って、検査項目を変えていただくようにしていただければ、一般の国民の皆様もより理 解しやすいんじゃないか。現状で一律でやっていますので、そうすると、この百何十個 全部、それこそ「やばい」んじゃないかというふうに思われる傾向がありますので、そ こら辺の検討をよろしくお願いいたします。 ○コーディネーター  ありがとうございました。その場合、1点だけお伺いしますけれども、そちらで輸入 される場合には、現地の使用状況等についての、先ほどトレーサビリティの話がありま したけれども、そのようなことはされているわけですか。 ○参加者1  我々の考え方としては、実際に使われた農薬、あるいは使われた可能性のある農薬を 確認して、それについて残留農薬検査をする。これが正しいやり方だと思っております ので、全くトマトに使われるわけのない農薬とか、あるいはその地域で、その国で全く 使われていない農薬を検査するのは無駄だと思うんです。もちろん、調べた上でやって おりますので、そこら辺が、何でもかんでも180 個を全部やれと言われると困ってしま います。 ○コーディネーター  それでは藤井さんの方から、その点につきまして。 ○藤井参事官  例えば、輸入食品ということになりましたら、食品安全基本法にしましても、食品衛 生法にしましても、まずは、事業者の方が一義的に食品の安全性を確保していただくと いうことは理解をしていただきたいと思います。  ただ、今百幾つというふうに言われましたけれども、次のポジティブリストの関連で 言いますと、世界的には700 以上の農薬が使われております。1つの作物について、す べて本当に詳細に調べるのかということになりましたら、いろいろと物理的な問題、金 額的な問題、時間的な問題、多々あろうかと思います。どうしても、そこは今おっしゃ ったように、現地で使われている農薬をリストアップをするとか、特に違反事例が多い 農薬、そういうものについては、厚生労働省の方も情報提供をしておりますので、そう いう農薬であるとか、やはり少し濃淡をおいて調べていくのが現実的であろうと思って おります。  ぜひ、そういうことについては、消費者の方も十分に理解をしていただければありが たいと思っております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。ただいまの御発言がありましたけれども、ほかに輸入食品 一般につきましてございましたら。 ○参加者2  消費者団体です。つい最近なんですが、平成のお米大飢饉のときに購入したタイ産の お米なんですけれども、それをロッカーか何かにしまいっ放しだったそうなんです。そ れをつい最近見ましたら、あったのがわかったんですけれども、そうしたら何の変化も ないそうなんです。国産のお米は古米になってくると、コクゾウムシやらいろんな虫が 出てきたりしていますけれども、10年近く変化がないということの恐ろしさを、そのと き、その友達と話をしたんですけれども、また、いつそういうお米飢饉というのがある かわかりませんので、やはり、トレーサビリティというのは、ぜひやっていただきたい し、また、その検査をいろいろしていただきたいと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございます。御意見として賜ってよろしいでしょうか。それでは、トレー サビリティをきちんとして消費者が不安を感じないようにしてくれという御意見だった と思います。ほかに輸入食品につきまして御意見等がございましたら。  よろしいですか。パネリストの方が輸入食品につきまして、まだ何か御発言……、西 郷さん、まだ御発言いただいていないので、何か一言お願いします。 ○西郷食品安全委員会事務局リスクコミュニケーション官  輸入食品については、食品安全委員会は基本的にはリスク評価の機関でございますの で、何か問題があったときに、多分、管理省庁から評価の依頼があったときには、きち んと対応するというのが第一だと思っておりますけれども、先ほどのプレゼンテーショ ンにもありましたけれども、世界中の評価機関がどのような評価をしているかとか、あ るいはどのような事件が起こったかといったことにつきましては、いろいろ評価機関の 間のネットワークも進んできておりますので、そういったことで情報を得ております。  そのうちの一部につきましては、最近、食品安全委員会のホームページにデータベー スといたしまして、公開してございますので、もし、御関心があれば見ていただければ と思います。また、国内につきましては、私ども小さい役所でございますけれども、全 国470 人の方に食品安全モニターということをお願いしておりまして、何か身近で起き ましたということになったらば御報告をいただくことになっております。そういったこ ともまとめまして、こんなことがあったよといったことにつきましては、各省庁にお知 らせするようなことにしております。ですので、もし何かお気づきの点がありました ら、委員会にもお知らせいただければ幸いかと存じます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。ほかにございますか。藤井さんお願いします。 ○藤井参事官  先ほど一番最初の発言のところで、和田さんの方から輸入食品、カロリーベースで言 うと6割、日本人の食べるものが占めている。できるだけ安全性を確保するために、全 量検査というものを希望したい。それには安全のためだからお金を糸目を付けなくてい いんじゃないか、非常に私ども厚生労働省にとってはありがたいようなお話をいただき ました。  それについて現実的な問題としましては、なかなか全量を検査をするというのは難し いということでございます。ただ、一番最初担当の者がスライドで説明しましたよう に、全体で年間で言いますと、180 万件、3,400 万トンぐらい輸入食品というのが入っ ておりますが、そのうち、国に入る段階で検査をしておりますのが、約10%、10分の1 の件数については、検査をしております。  次のポジティブリストの関係にも若干かかわりますが、ポジティブリスト制度が導入 をされますと、やる項目が非常に増えてまいります。そういう意味で現状の体制のまま では、物理的に難しい状況になるということも現実の問題としてございます。来年から ポジティブリスト制度等が入ることも含めまして、検疫所の段階では、そういう検査に 対する人の増員でありますとか、検査機器の充実、そういうこともしておりますし、新 たな検査法の開発とできるだけ少ない人員で効率的に検査ができるようにということを 工夫をしていきたいと思っております。  ただ、それだけでは輸入食品の安全性というのは、なかなか確保されないということ も事実だと思います。これも担当の者が御説明しましたように、いわゆる、輸入食品の 安全性については3段階といいますか、三重の安全性をもって、トータルとして安全を 確保していこうということが国の方針でございます。同じことを繰り返すようでありま すが、輸入をする相手国の方に日本の制度を十分に理解をしていただく。そういうこと を通じて、相手国の生産者の方にも理解をしていただく。そして水際ということで輸入 の段階、そして3番目としては、国内に流通をしている段階で各都道府県等を中心に輸 入食品の検査を、かなりたくさんやっていただいております。そういう三重の安全の中 で、トータルとして安全性を確保するように努めてまいりたいと思っております。 ○コーディネーター  どうもありがとうございました。それでは、そろそろ輸入食品の問題と残留農薬のポ ジティブリストの問題、つながりのある部分が多くなりましたので、次の話題でござい ます。残留農薬等のポジティブリスト制度の導入につきまして、またパネリストの方の 御意見を賜りたいと思います。  それではまた、和田さんからお願いいたします。 ○和田氏  まず、農薬について、私の勝手な解釈ですけれども、農薬というものは、虫や細菌な どを殺す、生物を殺すために開発されたものですから、人の健康にも基本的に影響があ るものと思っております。したがって、やむを得ず使用する場合にも、使用に当たって の基準を守るため、皆さんに厳しい管理のもとに使用していただきたいと願っておりま す。それを前提として、これから私がポジティブリストが感じたことをお話をいたしま す。  残留農薬だけを私たちは体内に取り入れているのではなくて、食品添加物であると か、環境汚染、排ガスとか、そういうものすべてを、やはり体内に取り入れているもの だというふうに認識をいたします。  今回のポジティブリスト制はこれまでの残留基準リストにない農薬を、ADIを考え て暫定基準を設けたというふうにおっしゃったと思いますけれども、先ほどの輸入食品 のときにも言いましたけれども、輸入食品がこれだけ増えている現状から考えて、ある 程度、やはり評価をしなければいけないことなんだというふうに思いました。  ただ、今までの基準のないもの以外は使用してはいけないというのではなくて、残留 が見つかっても一定量以下ならよいということを認めることになるんだというふうに思 います。それが国民の健康につながるのかどうなのか、そこのところがいま一つ、私に は納得がいかなかったなというふうに思います。  その暫定基準というのが、コーデックス基準を一番の根拠にしているというふうに理 解しましたけれども、それでいいのかどうかの議論は、どのぐらいされたのかどうか。 農作物というのは、その土地の風土や気象などで農薬の使用量も様々な違いがあると思 いますが、コーデックス基準というのは、世界を視野に入れて行われておりますので、 どうしても甘くならざるを得ないところがあるのではないかというふうに思うんです。 結局は輸入をしやすくするためにいろいろな基準をつくられたんではないかというふう に消費者は思ってしまうんです。とりあえず、今、そこだけにしておきます。もう少し また、発言したいことがあります。 ○コーディネーター  和田さんありがとうございました。ただいまのお話はコーデックス基準という判断基 準がいいのかどうかというお話と、ポジティブリスト制度というのは、輸入をしやすく するための方便ではないかという御意見だったと思います。  それでは、次に農業者の藤崎さんの方から御発言いただきます。 ○藤崎氏  食品に対しては、消費者が1億何千万いるんですよ。それで、その人のために添加物 にしろ、農薬にしろ、基準を決めるということは必要だとは思います。ただし、我々生 産者から考えると、農薬というのは必要悪です。なければならないというのは、例え ば、添加物で考えると、食品を加工して店頭に並んでいるときに、そこで腐っているも のが出てきた。それは消費者に対して大変な問題になるし、食堂でも何でも虫が出てき ちゃったら大変なことになりますよね。それと同じ考えで農家は農水省の決められた基 準の最低限の農薬を使っているつもりです。私もいろんな方面の生協さんに出荷してい ますが、自主検査を行っています。自主検査というのは、各生協さんの元団体が行った り、中間団体で行ったりもしています。それというのは、もし、こういうふうに政府関 係とかの検査が出てしまって、やれ全部を回収しなければしょうがないとか、会社に対 しての信用という問題になったら、すごい大変だからこそ検査していると思います。  殺虫剤についても、例えば、コマーシャルで殺虫スプレーやっているじゃないです か。あれをうちなんかでもあると、効き目が全然違うんですね。例えば、クマンバチの 3センチも4センチもあるのが飛んでいて、その殺虫剤をかけると、1分もしない間で 痙攣を起こして死んでいます。だけど、作物にかけている農薬なんかは3日経って、そ のかかったものに対して、食べたものが脱皮できなくなって死ぬとか、食べられなくな って餓死するとか、そういう農薬、前日まで認められているとか、カウントも決まって いるんですけれども、そういう農薬しか今ありません。  そこで、同じ口に入れるものに対して、どういう観点が違うのかなという、どこでか けても農薬というのは口に入るものじゃないですか。それが生産者としては不満があり ますし、そこまできっちりしたことを言うんだったら、全段階でそうやってやってくだ さいと言いたいところです。  それとさっきもちょっと言ったんですけれども、責任の所在ですか、ポジティブリス トで残留農薬が基準を超えるものが出てきた場合、単純な質問なんですけれどもお願い します。以上です。 ○コーディネーター  ありがとうございました。次は行政の立場から岩村さんお願いします。 ○岩村室長 千葉県でございます。それでは、このポジティブリスト制度の導入に当た りまして、県として検査でどういうふうに課題があって検討しているかについて御紹介 いたします。御承知のとおり、今、246 の基準の項目が約700 に格段と増大するわけで ありまして、この増大するに当たっての県として、農薬の検査をどういうふうにするか といいますと、今、国で詳しい検査法がかなり検討されております。もう既に、私ども に通知されている部分もございます。  それから新たにされる予定のものもございます。そういう国の動向を、当然今踏まえ ておりまして、問題としましては、当然、この検査するに当たっての機器ですね。高度 な機器の問題、それから検査技術の習得の問題、そういったものがございます。それら について、今、どういうふうにすべきか検討しております。  それと一方、これだけ増大する検査項目に対して、どういう品目をどのぐらいやるの か、これも実は我々にとっては非常に大きな課題でございます。先ほど、県下で約3万 3,000 の項目をやっておりますと申し上げました。これにつきましては、実は本県とい たしましては、衛生研究所をトップに県下14保健所、それから3食肉検査所、この機関 で諸々の食品、食肉も含めて検査をやっておりますが、こういう残農の高度な検査は衛 生研究所でやっております。  そうしますと、当然、限られたマンパワー、人、それから財源、予算、機器、これら があります。こういう限られた状況の中で、いかに効率的に科学的に検査を実施するか が命題でございまして、現在、それについて検討をしております。  では、やみくもにすべて700 をやるかというと、そうではないと考えております。そ の必要性と検査の頻度ですね。残農につきましては、特に輸入食品については、国から 随時違反状況、それから輸出国の状況、これが新しい情報が入ってきております。そう いう状況を踏まえて、いかに効率的に検査をやるかを、今、過去の違反状況、それから リスクの状況等を精査、整理しながら、今後どうすべきかを現在検討しておる。こうい うことが課題であり、検討中の事項でございます。  以上、概要でございます。 ○コーディネーター  ただいま行政の方からは、検査を主とした体制の整備について話がありました。パネ リストの方から質問的な部分がありましたので、先にそこの辺についてお話をお伺いし ていきたいと思います。コーデックスを判断基準にしている部分はどうしてかというこ とですが……。 ○西郷リスクコミュニケーション官  私がお答えするのが適当かどうかはわかりませんけれども、評価と実際の規制とを分 けて考えると、評価は基本的には人間どこでも大体同じじゃないかという発想に立つわ けです。食べ物からいくと、その物質が体重1キログラム当たりどれだけ食べてもいい かというふうな話ですから、これはもちろん人とか、社会によって大分違うという説も あるかもしれませんけれども、先ほど御説明があったとおり、何倍かの安全係数を見て いる中で収まる話になるのではないかと。だから、基準というか、先ほどADIとか、 そういう言葉が出ましたけれども、どれだけなら食べても大丈夫だろうかというのが決 まってくるのは、これは多分、世界中どこであってもそう違いはないのではないだろう かということでございます。  ですから、コーデックスあるいはJMPRとか、いろいろ専門家の会合がございま す。日本の専門家も参加してございますけれども、そういったところでつくってくる評 価については、やり方も同じでございますし、そう違った答えは出ないのかなというふ うなことは思っております。  ただ、これを先ほど申しましたように、食生活に落して、例えば日本人はお米をたく さん食べるから、お米にどれだけ入っていいというものを高く設定してしまうと、これ はまずいことになるでしょうと。ですから、ADIが決まった中で、この食品を食べ る、これを食べる……とそれを全部足しても大丈夫と、これをきちんと設定していただ くのが、厚生労働省にやっていただいていることです。そのきちっとしたデータが得ら れるかどうかというのが、今回非常に問題なところであって、諸外国にはあるが国内で は足りないところについては、とりあえず、国内での評価をやらなくても暫定的な基準 として使っていいんじゃないかというお話が今あるというふうに思っています。  私どもは、実は評価する立場ですから、基本的には全部評価をしたいというふうに考 えているわけですけれども、法律は来年5月までに施行しなければいけない。これは法 律で決まっているわけでございます。食品安全委員会の非力なことを、ここであえて申 すのも何なんですけれども、評価を一つずつやっていったら来年の5月までには間に合 いません。間に合いませんというよりは、世界中で使われている700 の農薬について、 全部評価を今からやってということは不可能だと思います。なので、厚生労働省とも御 相談して、それから外国での使用状況でございますとか、輸入の状況だとか、そういう のをよく見ながら、きちんとしたリスク評価の計画ということを厚生労働省にも立てて いただいて、日本での食生活が安全であるように全力を尽くしてやっていきたいと思っ ております。ですので、食品安全委員会は非常に小さな機関ですけれども、農薬の審査 に当たるスタッフだとか、あるいは先生方をたくさん増やせるように、今、要求をして いるところでございます。  以上でございます。 ○コーディネーター  ありがとうございます。食品安全委員会の方は、物に対する、農薬本体に対する評価 をするというような形でございます。コーデックスの基準を採用するかどうか、そうい ったような判断というのは厚生労働省でされておりますので、藤井さんの方からお願い します。 ○藤井参事官  ポジティブリスト制度というのが外国からのものを輸入をしやすくさせるための基準 ではないかという御指摘もありましたので、そこをあわせて答えさせていただきたいと 思います。  今、最初にプレゼンテーションで御説明をしましたように、日本の法律からいきます と、現在、農薬で基準値が定められているものが246 個あります。今の日本の法律では 246 の農薬について、基準を超えていれば規制ができるという法律でございます。つま り、246 以外の農薬については、基本的にどれだけ使われていようと規制ができないと いう仕組みになっております。  それでは、大変多くの輸入食品が皆さんの口に入る状況の中で不安であろうというこ とから、ポジティブリスト制度というものを導入をすることにしました。ポジティブリ スト制度というのは、原則、食品に農薬が残留することについて禁止する。ただし、リ ストアップしたもの、基準を定めたものについては、その基準の範囲内において残留を 認めましょうという制度になっております。したがいまして、決して輸入をしやすくす るための制度ではなくて、今まで規制が野放しになっていたものに規制をかけるための 制度ということでポジティブリスト制度を御理解をいただきたいと思います。  そして、コーデックス基準云々ということにつきましては、非常に細かい話をします と、原則禁止と言いましても、すべて0でなければならないのかというと、そこはいろ いろと自然界にある水とか、空気の中に含まれているものに、どうしても汚染をされて しまうという部分もありますので、人の健康に影響を及ぼさない最低限度までは許容し ましょうというのが基本的な考え方になっております。  それが一律基準ということで、0.01ppm ということで御説明をしたと思います。ppm といいますのは100 万分の1ということでありますから、0.01ppm というと1億分の 1、日本の人口1億二、三千万ですが、日本の人口のお一人、その程度の濃度までは認 めていきましょう。ベースラインとして認めていきましょうということがございます。  別途、日本では既に農薬として認められているものがありますが、それは農林水産省 で一緒に使う作物ででありますとか、時期でありますとか、量でありますとか、厳しい 規制があります。その規制を守っていただくと残留農薬の問題というものは生じてこな い。基準を超えることがないというのが今の制度になっております。  それ以外の世界に使われている多くの700 余りの農薬、それをすべて0.01ppm という ことで規制をしてしまいますと、何回も話に出ますように、非常にたくさんの輸入食品 が入っておりますが、その輸入食品が止まってしまうということになり、それでは余り 現実的な対応ではないだろうということがあります。  それから、日本も国際社会の一員ですので、コーデックス基準として、国際機関が決 めた基準値については認めていくということが基本的な線としてはあります。ただ、先 ほど西郷さんからもありましたように、日本では特にお米をたくさん食べます。そうい う特別な事情があるものについては、なかなかコーデックス基準国際基準といえども、 それを使うというのが難しい部分があります。そこについては、また別途考えていきま しょうという考えであります。  気候、風土が違う中で使われている農薬なので、コーデックス基準というのは、非常 に甘い基準になっているんじゃないかという御指摘もありましたけれども、国際機関と して科学的な根拠に基づいて、判断をされた数値ということで、私どもとしても、科学 的根拠がある限りは、認めていくのに十分にいろいろな御意見に耐えるのではないかと 考えております。 ○広瀬課長補佐  担当の方から補足させていただきますけれども、やはり、コーデックスの基準につい ては、確かにいろんな国々の基準の中で合意されているので、高めになるんじゃないか という御指摘は、そのとおりかもしれません。ただ、そういう摂取量であっても、人の 健康に害がないだろうということは、きちんと確認した上で決められておりますので、 人の健康を全く無視して、どこの国も合意できるから、この数字にしようという評価が なされているわけではないということだけを、補足させて下さい。それから、なぜ、い ろいろその国の基準がある中で、コーデックス基準が一番に持ってこられているのかと いうことですけれども、例えば、アメリカに基準があるとか、オーストラリアに基準が あるとか、ヨーロッパに基準があるとか、いろんな国で、それぞれ基準をつくっている わけですけれども、それは各国、それぞれその国における基準で、それぞれの国では科 学的に評価されているわけです。ただ、国際的に合意されている基準というのは、もう ちょっと一国の基準よりはいろんな国も合意された基準なので、そういう意味では広く 合意された基準ということで、まず、国際基準を考えて、それがないものについては、 ここは日本なので、国際基準のないものは登録保留基準を次に考えましょうとか、それ もなければ、外国の科学的評価に基づいて決められた基準を決めましょうとか、そうい う段階で一応決めているという状況でございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。先ほどの話の中で、ちょっと整理しなければいけない部分 があるのかなと思って、私の方から1つお伺いさせていただきますけれども、0.01ppm という数字が出ましたけれども、これの数字が出されたものは、すべてリストアップさ れるかどうかということについて、まだ明確でない部分があるかということと、2番目 のコーデックスについての基準の考え方、先ほどちょっと触れられましたけれども、気 候、風土、あるいはその国の食文化等によって、その基準の受け入れが違うというお話 がありました。その辺の確認をちょっとさせていただきたいと思うんです。 ○藤井参事官  先ほど0.01ppm と言いましたのは、既に基準があるもの、または暫定基準が設定をさ れているものについては、そちらの方の数字を使います。ただし、それが全く設定をさ れていないものについては、一律に0.01ppm という基準が使われますという意味で申し 上げました。  それからコーデックス基準、日本がすべて国際機関が定めた基準を受け入れなければ ならないかということになりますと、そこはまた少し違います。若干申し上げましたよ うに、そして御指摘もありましたように、気候、風土が違ったり、その中では当然、農 薬の使用方法が違う、または食べ方が違う、食べる種類が違う、そういう各国の個々の 事情があるものについては、独自の基準を設定してもいいということになっております ので、そこはちょっと追加をさせていただきたいと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、パネルディスカッションをもう少し続けていき たいと思います。和田さん、まだ何か御発言したいというお話、先ほどございましたけ れども。 ○和田氏  すみません。私ばっかりしゃべりまして……。 ○コーディネーター  簡明にお願いいたします。 ○和田氏  もう一つは、検査機器の問題で不検出とされるものの話なんですけれども、そこにま ず不安を覚えました。私、平成6年にたしか除草剤CNPという問題が出てまいりまし て、あのときには農水省さんへ何度伺ったか、厚生省さんへも何度伺ったかという経験 をしているんですけれども、結果的に1年近くの運動の結果、製造中止という結論を出 していただきました。ただ、それは製造中止であって、使用禁止ではなかったという、 私の運動の苦い経験がありまして、結局、四、五年経ってでしょうか。平成12年だった と思うんですけれども、すべてが、多分農家では使用し終わったころにダイオキシンが 見つかったということがありました。  CNPを全国で使っていたころには、川の水の中には、かなりのダイオキシンがあっ た。かなりと言っても、それはものすごく低い数値ではありますけれども、このごろは 大分きれいになったというふうにも伺っておりますけれども、そんなことを考えます と、今の時点で不検出ということが、本当にそれで安全なのかなというふうについ考え てしまうんです。  どこかで基準をつくらなければいけないというのは、私もわかりますから、これはや らなければいけないポジティブリスト制だというふうには思っております。無作用量と よく言われますけれども、例えば、遺伝子を傷つけると、それは今の世代の私たちには 影響はないけれども、4代先にいろいろなものが出てくると。これは遺伝子学の権威の 方から勉強させていただいたことがあります。死ぬのではないけれども、虚弱体質と か、いろいろな問題が出てくるというふうに伺ったことがあります。  今、考えてもいろいろなアトピーとか、何とかというのが、これだけ増えているとい うことを考えると、私はできるだけ化学物質を体に取り入れたくない、そういうことを 望みたいというふうに思いました。 ○コーディネーター  ありがとうございました。非常に難しい部分のあることかと思いますけれども、この 辺の部分、今、和田さんが御発言になった中に、それから残留農薬等のポジティブリス ト制度等につきまして、会場の皆様方からの御意見等を賜ればと思いますので、いかが でしょうか。一番後ろ右側の方。 ○参加者3  全国相談員協会から参りました。2つのテーマについていろいろお話を伺ったんです けれども、結局のところ国民や消費者の口にどういった形で輸入食品が入るのかは考え ますと、生鮮のそのままの形、それから加工食品、それから外食産業が非常に大きなウ ェートを占めるのではないかと思います。そう考えますと、本年度加工食品の原料原産 地表示の品目は増えましたけれども、やはり、さらにもっと検討を重ねるべきではない のかなという印象を持ったんですけれども、そこのところは、どういう御予定があるの かということ、それからもう1点、外食産業の原料原産地表示のガイドラインが先月、 農林水産省さんの方から出されましたけれども、そのガイドラインの中で、これは事業 者のさんの自主的な取り組みを促すものであるという表現がありましたけれども、これ は出されるに当たっては、やはり外食産業さんからのヒアリング等もあったかと思いま すけれども、今後、どういった形で外食産業における原料原産地表示が進められていく のか、それからもう1点なんですけれども、生鮮食品の場合、例えば、レモンの場合、 日本産のレモン、それからチリ産、カルフォルニアと3つ並んだ場合に、ただ、その国 だけを書かれていても、1つの情報にはなりますけれども、その国の3つが並んだとこ ろで、どんな違いであって、何で3つ違うのかということを、もう少し消費者がわかり やすくなった方がいいかなと思うので、国別の許されている部分と許されていない部分 の違いがわかるような勉強材料の資料があれば、教えていただきたいと思います。 ○コーディネーター  ただいま残農のポジティブリスト等のお話をしておりまして、最後の場面で食品の安 全全体のお話をさせていただきますので、ただいまの発言は、そのときの討議事項とさ せていただきたいと思います。先ほど来パネラー等でお話ししました残農のポジティブ リスト制度等につきまして、和田さんからの御提言等もありましたけれども、その件に 限りましてお願いいたします。 ○参加者4  消費者関係です。栗本といいます。今日のいろんな発言を見ておりますと、論点の中 で残留農薬にしても何にしても根本的に欠落がある部分が気になるんです。それはどう いうことかといいますと、例えば、和歌山県のカレーの事件ですか、あれの裁判を見て おりますと、初めに食べた十数人の方の中で、食べてしまったわけですが、中で死んで しまった人もあるけれども、ほとんどどうでもなかったという人もあるんです。同じカ レーの量を食べてもね。その辺のところを踏まえて、私が思うに、今の安全委員会と か、厚生労働省とか、いろいろなことを、規制の問題とか、あるいはADIの問題とか をやっていますが、私が感じるのは、もう少し動物とは違う人間の、特に文化が発達し ております人間の心の面といいますか、精神の面ですね、これをもっと取り入れなけれ ばいけないと思うんです。というのは、今のカレーの事件なんかを見てもそうですし、 今後は、例えば臨床医学とか、あるいは臨床心理、そういう学会とも連携して、今の枠 を飛躍的に大きくして、時代の流れもそうなっておりますので、そういう学会と連携し て大いに議論を拡大して、安全の基準を求めていただきたいなと、そうでないと消費者 の方も一体何を一番のよりどころにしていいのか、根本的にわからないというふうに思 うんですが、そのあたり、今日のパネリストの方、あるいは基調講演の方も含めて、見 解をちょっと聞かさせていただきたいなと思います。 ○コーディネーター  先ほど申し上げましたように、トータルでの食の安全の話は後で話題とさせていただ きまして、まだ、ポジティブリスト制度の話で御意見を賜っておりまして、その点に限 ってでよろしいですか。 ○参加者1  キッコーマンの梅田です。先ほどに続いて再び広瀬さんの方にお願いがあるんですけ れども、厚生労働省さんの方から3回にわたって出されている残留農薬ポジティブリス トの暫定基準値案について、我々海外の仕入先、製造委託先に周知徹底をやってきてい るわけなんですけれども、これは一昨年、昨年、今年も言われていることなんですけれ ども、アメリカとか、イタリアのアグロナミストの見解によると、日本の現在、厚生労 働省さんが出しているポジティブリストには、欧米ではすっかり使われなくなってい る、そして恐らく日本でも使われていないであろう、とても古い、ある意味で毒性の高 い農薬が、まだリストアップされている。かつ、基準もかなり高く緩めになっている。  その一方で、欧米が最近新しく発売されているような、新しい毒性のとても低い農薬 はまだリストアップされていないと。中には、これは幾つか、私も直接教えてもらっ て、例えば、これこれは日本でも使われていないだろうし、欧米でも使われていないけ れども、まだ、日本のリストには載っているよというような例示を幾つか見せてもらい ました。  その一方で、新しいもので毒性の低いものは載っていないというのが結構あると。こ ういう状況が現にあります。あるいはリストには載っているんだけれども、ほんの一部 の農産物に対してしか基準が設定されていない。実際に使われている農産物に対する基 準が設定されていないというのが多々あるというふうに聞いております。  最初に申し上げますと、EUの基準を厚生労働省の方で参考にされていると思うんで すけれども、実際、EUの基準とフランス、スペイン、イギリス、ドイツ、イタリアの 基準はそれぞれ違いますので、EUの基準に載っていないけれども、各国の基準に載っ ているのが結構ありますので、そこら辺がまず漏れているというのがいっぱいあるんで す。昨年、イタリア政府が残留農薬のポジティブリストを全面的に改定したんですね。 古い毒性の高いものは削除、新しい毒性の低いものは新しく追加されたんですけれど も、新しく追加された毒性の低い農薬が、今回の厚生労働省さんの第三次リストにほと んど載っていないということで、私の友人の1人のイタリア人のアグロナミストが危機 感を抱いて、何とか欧米の状況を日本政府に伝えなければいけないということで、ロー マにある日本大使館に電話をさせていただいたと、そうしたら、運が悪かったんでしょ うか。たまたま出たイタリア人がいい加減だったのか、全くとりあってくれなかったと いうことだったんですね。先ほどの説明の中に、在外日本公館における積極的な情報収 集というふうにおっしゃっていたんですが、そのローマのケースはほど遠いような状況 だったので、そこら辺は外務省も含めて連携してやっていただければなというふうに希 望します。  とりあえず、輸入食品検査官を大幅に人員を増やしているということなので、できれ ば、海外における各国の農薬の法令の調査する人間及び海外の実際の農薬の使用状況を 調査する人間、あるいは各農薬メーカーからの情報を収集する。そういった方々のスタ ッフも厚生労働省さんの方で増やしていただければなというふうに思います。  私が聞いた話によると、中には日本の農薬メーカーが新しく発売している毒性の低い 新しい農薬も日本のリストにはまだ載っていない。そういうことをいろいろ、私が文句 を言われても、私が厚生労働省ではないので、弁解はできなかったんすけれども、いろ いろ海外のアグロナミストの方でも、かなり危機感が高まっています。  今度、秋に実際に法令が出るのには間に合わないと思うんですけれども、先ほど5年 に一度見直しというふうに説明があったんですけれども、5年に一度じゃなくて、直ち に見直しに入っていただきたいなというふうに思います。今回の第三次案が法令になっ ちゃうのは仕方がないにしても、直ちに見直しをして、随時、古い農薬、毒性の高い農 薬を削除していく。新しい農薬、毒性の低い農薬を入れていくというふうなもの、そう いう作業をするためには、やはり人員を増やさなければいけないのかなというふうに思 いますので、よろしくお願いいたします。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、今の話、リストを現状に合わせてほしいという 話と、海外の情報等を広瀬さんお願いいたします。 ○広瀬課長補佐  御指摘いただきましたのは、恐らく、最後の方で出てきたように、EUの基準を参考 にしてきているわけですけれども、EUの中には各国の基準が別途あって、それが統一 されていないということがある。多分、そこに起因しているんだと思います。我々もE Uのリストは参考にしていますので、EUのリストの中にきちんと基準として定められ ているものであれば、すべてリストの中には織り込んできているわけでございます。  現在、日本の各国への意見の募集だけでなくて、各国にもWTO通報などをしており ますので、基準としては締め切っておりますが、国々からの意見があれば、そういった 意見もいただいて、その意見も踏まえて、現在、リストの値を詰めているという状況で ございます。  新しい農薬が入っていないということでございますが、そこはいつかの時点では切ら ざるを得ない状況ですので、常時新しいものが入ったからといって、暫定基準を一々つ くるというのはなかなか難しい状況であるというのは、ひとつお断りさせていただきた いと思います。ただ、暫定基準というのは、あくまで暫定的に決めている基準でござい ますので、もし毒性データなり、作物にどのぐらい残留するかなどの作物残留データと いうのを付けて、厚生労働省の方にきちんと申請していただくような仕組み、これは海 外の方からも申請していただく仕組みというのができておりますので、そういう仕組み を通じて申請いただければ、これは随時、食品安全委員会の方に評価をしていただくと いう措置をとらせていただきます。これは5年を待っての暫定基準の見直しとかという ことではなくて、随時進めさせていただきたいということで考えております。 ○コーディネーター  広瀬さん恐れ入ります。随時改正するものと、先ほど5年ごとに改正する。その違い について、ちょっとお知らせください。 ○広瀬課長補佐  5年ごとに見直すというものの違いについては、今回たまたま暫定的にリストをつく るために海外の基準を参考として持ってきている状況でございますので、海外の国にあ った基準、今、お話がありましたように、たまに古くなったものをやめるとか、そうい うことをしていまして、そういうものがあった場合に、暫定基準の中から落していこう というのが、この5年ごとの見直しというものでございます。随時やっていきましょう というものは、これは農薬についての科学的なデータをきちんとフルパッケージで、い わゆる毒性評価なり、基準を決めるための必要なデータをフルパッケージで集めて申請 いただくようなものについては、これは随時評価できるということでございます。 ○コーディネーター  残留濃度の件でよろしいですか。 ○参加者5  食品事業関係に従事しております長谷川と申します。今の厚生労働省の方の御説明 で、私も何度か、何度と言っても今回で2回目とか、あといろんなホームページとかで 残留農薬の勉強をさせていただいているんですけれども、暫定基準の点で、今の説明が 少し誤解を招くんではないかなと。たしか私が講演会で聞いたのは、暫定基準というの は、要するに、その決め方が暫定であるのであって、基準はきちっとした評価に基づい てやっておりますと。ただ、日本できちっとした評価、日本の農水省が農薬法に基づい て、基準を決めたんではないと。だけども、海外でそういう評価があるので、それをも ってきて、暫定基準と持ってきたということであって、決め方がそういう評価がないた めに、日本でやっていないために、暫定という表現であって、数値、基準値自体はきち っとしたバックグランドに基づいているということでお聞きしていたように、私もそう いうふうに理解しているんですけれども、その点いかがなんでしょうか。決め方が暫定 なんでしょうか、それも数値が暫定なんでしょうか。 ○コーディネーター  藤井さんお願いします。 ○藤井参事官  今の点でありますけれども、長谷川さんが聞いて理解をされた、それが正解でありま す。言葉は「暫定」でありますが、それは法律的にきちんとした値になりますので、そ れを超えられると罰則がかかり販売流通ができない。そういうことになります。あくま でも、仮に値を持ってきたので暫定であって、値そのものがいい加減というか、不確か なものという意味ではないということで御理解はいただきたいと思います。 ○コーディネーター  広瀬さんどうぞ。 ○広瀬課長補佐  要するに、食品安全委員会にきちんと評価をいただいていなという意味で、正式でな いということで申し上げたんですけれども、余りいい加減に数値を置いているというこ とではございませんので、誤解があったらお詫びさせていただきたいと思います。 ○コーディネーター  ほかに。一番奥の方。 ○参加者6  食品事業をしています相馬と申しますが、ポジティブリストに関しましては、食品業 界の中では、恐らく皆さん余りよくわかっていらっしゃらないのではないかなと思いま す。実は私もよくわかっていないんですが、とは言いつつ、実は私どものグループとい たしましては、千葉県の検査の数よりも多い数の年間の検査は一応して、そういったデ ータはあるんですが、そういった中で、こういった検査を今後各食品業界、またスーパ ー様の方でお金、膨大な人件費をかけて検査をしていくのか、ただ、検査をしたとして も、これはあくまでもモニタリングですので、先ほどトレーサビリティという言葉があ りましたとおり、生産工程、元を押さえていかない限りは、幾ら検査といっても、当然 抜けていくのが出てくるんじゃないかと危惧しております。  来年施行の後、輸入品は一定の頻度で検査されていると思うんですけれども、国産の 流通している農産物、食品を検査して、恐らくこういった基準を超えてくるのが多々出 てくるんではないかなと予想はしております。こういったとき、それを即行政措置とな ると、やはり食品業界の者としては非常に辛いものがあると。それから、こういったこ とが、たまたま私どもはそういったいろんなバックデータがありますので、ある程度の 状況は予想はできますが、そうじゃないところも多々ありますので、お互い安全証明を 出しなさいとか、そういった書類のたらい回し的なことがされているのが実情でござい まして、一律基準の0.01で即行政処分、行政措置とか、そういったことについては、若 干見直す部分があるのではないかなと考えております。  以上です。 ○コーディネーター  ただいまの御意見は提言として賜ることでよろしいでしょうか。それでは、最後にお 一人、まだ発言をされていない方がおります。 ○参加者7  消費経済研究所の田村と申します。ちょっと、2つほどお聞きしたいんですが、これ は来年の5月末からという形なんですが、今現在、栽培されている米、収穫されていま すけれども、来年売るようなものも対象になるのかということと、もう一つがドリフト の問題が非常に問題あると思っていまして、例えば、品目で土物とか、重量野菜という のはそんな影響はないと思うんですが、軽量野菜ですね。葉物とか、例えばシソみたい なものですかね。そういうものは非常にドリフトの影響を受けやすいというのはわかっ ているので、そういうものが非常に品目とか、栽培状況、特に隣接圃場からの影響とい うのは非常に大きいと思っているんですが、その辺はどうお考えなのか、ちょっと御意 見をお聞かせください。 ○コーディネーター  藤井さんお願いいたします。 ○藤井参事官  まず、法律自体は来年の5月末から施行されるということに決まっております。前段 の今栽培をしているようなお米が実際に売られるのは来年になってからですから、そう いうものが該当するのかどうかということについては、いろいろなことを我々の方とし ても今検討をしておりまして、できるだけ混乱を来さないような形での実行ということ ができればいいなということを思っております。それに関するいろんな問題があるもの ですから、具体的にはっきりとしたことは現時点では申し上げられませんが、先ほども 説明の中でありましたように、6か月間の告知期間を置くということで、11月には、か なり細かいいろいろなことについて、皆さん方にお知らせをするということになりま す。その中に施行時点で、一体いつから、どういうものに対して適用になるのかという ことについてもお示しをさせていただくことになりますので、もうちょっとお時間をい ただければと思います。  それから、ドリフトの点について御指摘がありましたけれども、農林水産省からもも しあれば、補足をしていただければと思いますが、厚生労働省で基準を決める段階で、 明らかにドリフトの影響があるという事実を示すデータをどこからもいただくというこ とができませんでした。したがいまして、現時点ではドリフトに対する影響ということ については、考慮がされていない基準になっているということでございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。引地さんいかがでしょうか。 ○引地情報官  ドリフトの問題について、直ちに残留問題ということとは、別ですけれども、私ども の今の取り組みとしては、関係する省庁なり、関係団体と今ドリフト対策連絡協議会を 組織しておりまして、ドリフト問題についての対策を検討しています。実際の話として は、農薬の飛散を抑えるための手法なり、施設対策、研究等々について、いろんな事業 の活用をしながらその対策に乗り出しているところです。当然、将来的に、この残留農 薬とドリフトの問題とも絡めて、いろいろ検討していくべきことだと思っております。 ○コーディネーター  藤崎さんどうぞ。 ○藤崎氏  議論自体が私にとっては木を見て森林を見ずになっていると思うんです。それという のは、これは何のためにポジティブリストの制定をするかというと、食品を安全にする ため、それでそういうものが出ないようにするために、制度を設けると思うので、この 制度を設けたからには、どうやってそれを周知徹底して、今日、来ていらっしゃる方の 関係団体に全部知ってもらうか、そして、そんなものが自分のところから出ないように するかというのが、本来の私たちの役割じゃないかなと思うんですけれども、暫定基準 とか、そういうものは、当然、専門家の方々がいろいろ検討していらっしゃることです し、我々のレベルとしては、それを考えていただきたいなというのが実際の感覚なんで す。  以上です。 ○コーディネーター  ありがとうございます。4時半までということで大分時間も押してしまいましたけれ ども、今まで輸入食品の問題、それから残留農薬等のポジティブリストの話ということ でございましたけれども、先ほどお二方から食の安全についての御意見等が出されまし たけれども、食の安全一般についての御意見、御提言を会場の方から賜りたいと思いま すけれども、はじめに先ほどいただいた方の原産国表示につきましてのお話を。 ○引地情報官  原産国表示について、一つは加工食品の件、それから外食産業でのレストランでの料 理での原産国表示という2つのことです。お話の趣旨は、こういうのが導入されたんだ が、今後どうなるのかというようなお話の趣旨だったと思います。  御案内のとおり、加工食品につきましては、昨年、生鮮に近いような加工食品につい ては、原産国を明記してくださいという義務化になりました。ただ、全部ではありませ ん。かつては8品目だったんですが、今度は品目じゃなくて、食品群ということで20食 品群に拡大して、相当量カバーできるようになったんですが、全部ではありません。平 成18年から義務化される予定ですが、今試行期間になっております。  今後の扱いということでございますが、やはり、表示の定着状況ですね。それから消 費者の方の関心だとかニーズ、あるいは原料の流通状況、そういうのを見ていく必要が あるんだろうと思っています。その上で一定期間経た上で、いつということはちょっと 今、私申し上げられないんですけれども、見直しをするというのは、当然、プロセスと しても有得るんだろうと思います。  それから、外食については、まさに今、自主基準として皆さんにお願いしつつ始まっ たばかりでございます。これがすぐさま制度ということにはなかなかいかない。御案内 のとおり、外食産業の方というのは大手の方から小さい事業者の方までおられます。そ ういった方々の取り組みの状況等も、やはりこれから見ていかないと難しいのかなとい うふうに思っておりますので、そこはしばらくお待ちいただきたいなと、まさに今、始 まったばっかりだということで御理解願いたいと思っております。よろしくお願いいた します。 ○コーディネーター  ありがとうございます。次に先ほど栗本さんの方から出たお話につきまして、藤井さ んお願いいたします。 ○藤井参事官  私どもの方としては、いろいろな基準をつくるときに、科学的な結果やデータに基づ いて設定をしていきたいなと思います。ただ、それを皆さん方に安心だと思っていただ けるかどうかというのは、まさしく御指摘がございましたように、心の問題というもの も大きくかかわってこようかと思います。先ほど藤崎さんの方からもありましたけれど も、科学的に基準を設定しましたというだけでは非常に無味乾燥で、皆さんにとってわ かりにくい説明にしかなりませんので、できるだけこういう機会を設けるなり、いろい ろなメディアを通じるなりして、それを十分に理解をして、安心と思っていただけると いうことを、そういうレベルに達するように努めてまいりたいと考えております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。 ○参加者4  基調講演の方の御意見を聞かせてください。 ○広瀬課長補佐  見解としては、ほとんど同じでございます。皆さんに理解していただくことが重要だ と思っております。要するに、安全と安心というのは、一つステップがありまして、事 実的に安全であっても、それを皆さんが安全だという理解なり、認識がなされなけれ ば、当然、安心だというふうには考えてもらえないわけで、それは理解をしてもらうた めに、いろんな努力というのをしていかなければいけないんだというふうに思っており ます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。時間が若干迫ってまいりましたけれども、ちょっと規定の 時間を押しても二、三の方に御発言いただきたいと思います。一番前の方。 ○参加者8  簡単に。ネガティブリストをもっと増やしてほしいというお願いです。というのは、 和田さんもおっしゃられましたけれども、私たちは化学物質に非常に不安を感じており ます。子孫の代、先の世代に向けてより安全を食品を、絶対に安全な食品があるとは私 たちは当然思っておりません。ですから、できるだけ安心な安全なものをということ で、農薬あるいは添加物にしましても、使用が許可されるのは増えますけれども、取消 になるというのは少ないんじゃないかなと思っています。一つずつ添加物の名前を覚え るのも、私たちも年取ってきまして、限界が近づいてきました。本当に忘れてしまいま す。ですから、全部表示されてあっても、果たして、これはどういうものだったろうか と悩んでしまうことも多々あります。ですから、本当に同じようなものであれば、そう いうのはカットしていただくという使用禁止にしていただきたい。それを増やしていた だきたいということを最後にお願いしたいと思います。 ○コーディネーター  それでは御提言ということでお預かりしておいてよろしいでしょうか。ほかに。 ○参加者9  農薬に携わった仕事をしています。今日のお話で何点かよくわかったことと、あと質 問が1つ。何点かしゃべらせていただきます。  1つは今日の議題が輸入検疫とポジティブリストというような話だったんですけれど も、最初は関連がわからなかったんですけれども、要するに、ポジティブリストという のは、主にはインポートトレファランスを含めた輸入食品の話であるということが今日 はよくわかりました。それで先ほどの、今、つくっている米はどうなるかというお話で すけれども、あれは日本の国内で日本の農薬を登録どおりつくっている場合は、ドリフ ト問題を除いて、基準があるわけですから全然問題ないです。  それから、質問の方なんですけれども、暫定という以上は、いつかは暫定がとれて本 基準というのか、国内基準になると思うんですけれども、今、200 は国内で基準があ る。残り、世界的に見ると500 残っている。暫定基準をつくるに当たっては、ADIを 設定しなければいけないんですけれども、食品安全委員会でADIが決定されているの は20ぐらいだと思うんですけれども、残り500 が果たして何年で本基準になるんでしょ うか。ちょっとそこだけ伺いたいと思います。 ○コーディネーター  西郷さんいかがでしょうか。 ○西郷リスクコミュニケーション官  私も実はわかりません。おっしゃるとおりで、今のペースでやっていったら、絶対間 に合わないと思います。ですので、優先的にすべきもの、優先的にしなければいけない というのは、要するに入ってくるものでございますけれども、きちんと見極めましてや っていきたいと思っております。  今のペースでやっていくと、とてもとても間に合わないということ、年間20件しかで きないとすると数十年かかると。それから新しいものも出てくるとなると大変なことに なるということでございますので、農薬の評価の部分をできるだけ拡充して対応してい きたいというふうに考えております。  それから、暫定基準をすべて受け入れていいかというお話も一方ではあるかと思いま すので、それについては、委員会としても、例えばADIが設定できないものについて は、はっきりと申し上げてまいりたいというようなことも申し上げているところでござ います。ですから、大体何年かかるんですかという御質問に関しては、ちょっとお答え ができないんですけれども、順番に粛々とやっていきたいと思っております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは最後にお一人。 ○参加者10  一般消費者の立場から一つお願いがあるんですけれども、リスクコミュニケーション ということで、国民の健康の保護というか、それをもとにして消費者向けというか、国 民向けのリスクコミュニケーションだったと思っていたんですね。技術的なところと消 費者の不安のギャップを縮める機会だと思っていたんですけれども、消費者向けの説明 というのが余りなくて、技術的なところに終始しているような気がして、キッコーマン さんの方から話があったように、消費者が何を求めているかというと、自分が食べる農 産物で、どういったリスクがあるのかなというようなところなんですけれども、農薬の 説明を幾ら聞いても全然ぴんと来ないといいますか、法律の方には明文化されなくても 結構なんですが、食品安全委員会の方で消費者向けに輸入作物について、できれば国 別、作物別に、こういったものが今使われていて、政府の方で調査をした結果は、こう いう農薬が残留していましたけれども、ちゃんと安全を確認した基準値以下でしたよと いうような、その不安を除くところの部分の配慮をもう少ししていただきたいなという ふうに思いました。  以上です。 ○コーディネーター  ありがとうございました。ただいま消費者向けのより多い情報提供をというような御 意見だったと思いますけれども、時間も定刻を過ぎてしまいました。最後にどうしても 一つ、私だけ言いたいという方おられますか。一番前で手を挙げられましたので。 ○参加者11  いろんな意味で、いろんな制度をつくっていただいてありがたいと思います。ですけ れども、本当は今日、こうやっておそろいいただいた方、聞きに来た私たちも含めまし て、できましたら、農薬が使われないように、そういう運動ももっとその中から、ちょ っと無理でしょうけれども、やっぱり安全なものを書いて出すとか、いろんなこうだよ ああだよと言っても、私たちものを買いに行ったときに、それが見えてこないんです ね。買う場所とか、食堂でも何でもそうです。わかりやすく、私たちの生活に、それか ら命の大切さに用いていくものが、少しもわかってこないということで、よく顔の見え るあれをしましょうと申しますけれども、農家の方が来たってよくわからないんです ね。それよりも、もっと親切にお家の中で皆さんが家族で話し合われるような話ぶりで やっていただきたいと思います。  そして、私ちょっと質問でお願いに出したんですけれども、外国の品物を入れている ということは、私たちが外国の土地とか、外国の人に働いてもらったのを買ってきてい るわけですから、本当に外国の輸入品がおかしかったら、その取引の中で、あちらの方 に農薬はこういうのを使わないでくれとか、それから、この辺まではいいよとか、日本 人はやっぱり一生懸命やっているよというようなことでお話をいただいて、指導して、 いいものを入れていただきたい。そして、少なく輸入品がなっていって、私たちも昔じ ゃないですけれども、本当に食物を大事にしてやっていきたいと思っております。安く 入ると結局、簡単に捨てたりいたしますので、そういうことで戦争中を通してきました ので、本当の意味で日本の食を考えていきたいと思いますので、よろしく御指導くださ いませ。どうぞお願いいたしておきます。 ○コーディネーター  どうもありがとうございました。皆様から御協力いただきまして、貴重な御意見をい ただきました。時間も過ぎましたので、これにて終了させていただきたいと思います。 どうもありがとうございました。(拍手) ○森田専門官  以上をもちまして、食品に関するリスクコミュニケーションを終了させていただきた いと思います。本日は長時間にわたり、また貴重な御意見を賜りまして、誠にありがと うございました。                                     (了)