05/08/24 平成17年8月24日・25日(大阪市・東京都)「食品に関するリスクコ ミュニケーション(妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項について の意見交換会)」            食品に関するリスクコミュニケーション  (妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項についての意見交換会:大阪市)                          平成17年8月24日(水)                         於:トーコーシティホテル梅田                    開会 【司会(森田厚生労働省食品安全部企画情報課情報管理専門官)】  本日は皆様ご多忙の中、ご参加をいただきましてありがとうございます。ただいまか ら「食品に関するリスクコミュニケーション(妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注 意事項)の見直しについての意見交換会」を開催いたします。私は本日、司会を務めさ せていただきます、厚生労働省食品安全部企画情報課、森田と申します。よろしくお願 いいたします。本日、私、ネクタイを外しておりますけれども、これはクールビズとい うことで、ちょっと楽な格好をさせていただいておりますけども、恐縮ですけどもよろ しくお願いいたします。  それでは、初めに配付資料の確認をさせていただきます。議事次第があるかと思いま すけども、そこに配付資料、下のほうに書いてございます。資料1といたしまして「リ スクコミュニケーションについて」という、とじられたもの。それから「妊婦への魚介 類の摂取と水銀に関する注意事項について」と、これは資料2としてあります。それか ら資料3として「食品に関するリスクコミュニケーションにおける事前意見・質問につ いて」と、これは1枚のA4の紙になっております。それから参考資料でございますけ れども、「意見交換会に参加いただいた皆様へ」という1枚の紙と、少し分厚いとじら れたものですけれども、「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項についての意 見交換会参考資料」というものがあります。それから1枚紙ですけども「食品安全エク スプレス」というもの、それから「食生活指針」、「食事バランスガイド」と、このも のがございます。もし資料でないものがありましたら、手を挙げていただければ担当の 者が伺いますので、もし何か資料がないという方がいらっしゃれば手を挙げていただけ ればと思います。  それでは続きまして、簡単に本日の議事の進行についてご説明させていただきます。 議事次第をご確認いただきたいんですけども、まず順天堂大学医学部公衆衛生学教室の 堀口先生から、リスクコミュニケーションについてということで10分ぐらいご説明を いただきたいと思います。その後、テーマについての説明ということで、厚生労働省食 品安全部基準審査課の近藤専門官から、45分になっておりますけれども、1時間ぐら い、ちょっと修正いただきたいんですが、13時15分から14時15分ぐらいにかけ てご説明させていただきたいと思います。その後、10分から15分ぐらい休憩させて いただきまして、2時25分あるいは2時半からパネルディスカッションということを 考えています。それで、意見交換会、パネルディスカッションの終了を4時ごろを予定 しておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  それから、本日の意見交換会の目的でございますけれども、これは資料のほうにござ いますけれども、「意見交換会に参加いただいた皆様へ」という、この1枚の紙をちょ っとご確認をいただきたいと思います。これを簡単にご説明いたしますと、今回の意見 交換会は、リスクコミュニケーションの一環として開催するというものでございます。 ただ、このリスクコミュニケーションといいますのは、必ずしも個々の意見交換会で何 かを合意して決めるというようなものではございません。ここの下のほうにございます ように、(1)、(2)とございますけども、妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項 について、関係者の間で情報を共有することというのが一つの目的であり、もう一つと して、さまざまの立場から意見交換を行っていただいて、この問題についての認識、正 しい理解を深めてもらうということを基本的な目的としているということでございま す。このリスクコミュニケーションということにつきましては、聞きなれない言葉だと お伺いもしておりますので、まずこのリスクコミュニケーションというものについて、 順天堂大学の堀口先生から、10分程度でご説明をいただきたいと思います。  では、よろしくお願いいたします。                    説明 【コーディネーター(堀口氏)】  こんにちは。順天堂大学公衆衛生学教室の堀口といいます。きょうは一日よろしくお 願いします。  そしたら、スライドを使って説明をしていきたいと思います。                  (スライド)  リスクコミュニケーションなんですけれども、聞きなれない言葉だと思います。私も あまりよく知っていたわけではないんですが、ここ数年、研究を続けさせていただきま した。  リスクコミュニケーションというのは、いわゆる片仮名の用語で、わかりやすい日本 語が何かないかということで、食品安全委員会や厚生労働省、農林水産省など、関係機 関でいろいろとその日本語について検討されてきていますけれども、これまで日本にな かった新しい考え方ということで、適当な日本語が見つかりませんでした。それで、リ スクコミュニケーションという言葉をそのまま使用しているという現状になっていま す。                  (スライド)  今、このリスクコミュニケーションは食品について話をしているのですけれども、リ スクコミュニケーションはいろいろなものをテーマとしてされています。それで、それ はどういうものかというと、例えば化学物質だとか、感染症だとかいろいろなものでコ ミュニケーションされております。  それで、食品に関して、今どのような状況があるかというと、環境の変化ということ で、日本も戦中から栄養不足などが言われてきて、学校給食などでその栄養を補うよう な政策がされてきていますけれども、飢餓から飽食の時代になってきています。それか ら、食品自体が大量生産と大量流通がされています。それから、その食品自体、日本も その食品の自給率が低い状況になるんですけれども、貿易の国際化が言われています。 それから、鉄道、トラックなどの交通網の発達によって、長距離輸送の普遍化がされて います。それから、消費する側の私たち国民というか住民は、海外旅行にたくさん出か けるようになりまして、それによっていろいろな食べ物を食べたり、また持って帰って きたりというような、海外旅行の一般化なども食品の安全を取り巻く新しい動向になっ ています。  こういう中で、その国際機関としてはFAOとWHOなどで食品の安全について議論 をしているわけですけれども、国際的な考え方としては大きく2つあります。1つはフ ード・チェーンアプローチという考え方で、消費するときの段階において安全を確保し ていくだけではなくて、生産から消費に至るすべての段階において安全を確保していき ましょうという考え方。もう一つはリスク分析、リスクアナライシスといいますか、リ スクアナリシスの考え方があります。これは事故に対応するというよりは、その事故が 起こる前に未然に防ぐということで、予防に重点を置いたものとなります。そのリスク アナリシスについては、2002年の国際会議などで議論をされているところで、その 報告書などもまとまっております。                  (スライド)  では、そのリスクアナリシスについて少しお話をさせていただきたいと思います。リ スクアナリシスは大きく3つから成ります。1つはリスク評価、もう一つはリスク管 理、そしてリスクコミュニケーションの3つから成ります。それで、この3つをまとめ てリスクアナリシスというわけですけれども、これは食品衛生法にもうたわれています けれども、国民の健康の保護を目的として、国民やある集団が危害にさらされる可能性 がある場合、事故の後始末ではなくて可能な範囲で事故を未然に防いで、リスクを最小 限にするためのプロセスと言われています。  その3つの要素の一つ一つですけれども、まずリスク評価。日本においてはどのよう なところでそれを行っているかというと、食品安全委員会においてリスク評価をしてい ます。次にリスク管理ですけれども、食品に関しましては厚生労働省、それから農林水 産省でこのリスク管理をしております。そして最後にリスクコミュニケーションですけ れども、これは食品の安全に関するさまざま情報を、それぞれの立場の人、皆で共有し てお互いに意見を交換し、消費者などそれぞれの皆さんの立場のご意見を施策に反映さ せていくということで、このリスクコミュニケーションは食品安全委員会主催でもされ ておりますし、農林水産省主催でもされていますし、きょうのように厚生労働省主催で もリスクコミュニケーションが今日本では実施されているというところになります。                  (スライド)  それで、今リスクコミュニケーションと先に進んで話をしているんですけれども、リ スクという言葉について少し説明させていただきたいと思います。リスクというのは危 険なものそれ自体を指すものだけではなくて、人間の生命や経済活動にとって望ましく ない事象の発生の不確実さの程度及びその結果の大きさの程度となっています。危険な 物質そのものはハザードと言われていまして、それが起こす事件の大きさだったりと か、確率だったりを考えてリスクと言っています。  このリスクを私たちはどのように感じているのか、何によってそのリスクを感じるの かというのは、心理学の分野で研究がされておりまして、それは大きく3つの要素から 成り立っていると言われています。それが1つは恐ろしさ、もう一つが未知性、3番目 に災害規模、その事件の規模と言われています。恐ろしさというのは、例えば飛行機事 故とかをイメージしていただくと、生存者が非常に少なかったりというようなこれまで の事例から、飛行機事故というのは、多分恐ろしさについては大きく皆さん感じている のではないかと思います。それから未知性については、例えばこれまでその物質、その ハザードによって事件が起こることは予測できたとしても、まだ起こったことがなけれ ばどんなことが起こるのかがわからない。遺伝子組みかえ食品なども、今盛んに利用さ れていますけれども、消費者が心配しているというところは、何が起こるかわからな い、自分がじゃなくても将来の子供たちやその子孫に何が起こるかわからないというと ころでいろいろな話題になっていると思います。その未知性というのがリスクを感じる 一つの要素になっています。それから災害の規模。影響を与える大きさですね。日本人 全員なのかとか、世界中の人すべてなのかというようなところもありますし、その規模 によってリスクを感じる要素が決まってくると。また、もう一つの考え方としては、こ のボランタリーというのとインボランタリーというのがあるんですけれども、受動的な ものか能動的なものかというところになるかと思います。ある程度自分でそのリスクを 回避できるものと、回避できないものというところでそのリスクの認知が変わると言わ れています。                  (スライド)  それで食品に当てはめて、まずそのリスクを考えていきたいと思うんですけれども、 今、食品の安全ということを言いますが、完全に、例えば絶対的に安全な食品はあるん だろうかというところの話です。これも1998年にFAOとWHOの会議において議 論されて、その報告書から英文をそのまま抜粋いたしましたけれども、多くの人々とい うのはsafe food、安全な食品というものを、全くリスクがない、zero  riskのものだというふうに意味をとらえてしまうけれども、zero riskと いうのは実現不可能なものなんだと、はっきりと明言されております。それで、saf e food、安全な食品というのは、十分に安全性が担保されている、safe e nough、十分に、zeroではなくてenoughというところになります。これ をもとにして議論をしていかないと、例えばちょっとでも有害物質が入っていたらもう 安全ではないとか、自然に由来する何かの物質は大丈夫だけれども、例えば化学的な物 質は安全じゃないとか、例えば賞味期限1日超えてしまった食品は安全じゃないとか、 極端な話が出てきてしまうので、そのzero riskというものはまずはないとい うことで話を進めさせていただきたいと思います。                  (スライド)  それでリスクコミュニケーションですけれども、これはリスクに関係する人々の間 で、今回は食品なので、食品のリスクに関する情報や意見を相互に交換することという ことです。お互いにお互いの立場に立って意見を述べるということ。それからそのリス クについてどれぐらいであれば、皆が受け入れ可能で、受け入れ可能な状況までリスク を下げるためにはどうすればよいのか、お互いにリスクについて理解を深めて一緒に考 えていきましょうというものです。このリスクコミュニケーションは、例えばパネラー から、またはきょう私、コーディネーターさせていただきますけども、コーディネータ ー、またその主催者などから一方的にこれは安全なものなんだとか、宣伝をするとか、 説得をするとかというために行うものではありません。いろいろな意見があるというこ とを理解するものになります。                  (スライド)  最後になりますけれども、これまでリスクコミュニケーションの研究を進めてきまし て、幾つかのテーマで実際にリスクコミュニケーションをやってきました。そこでわか ったことなんですけれども、6点述べさせていただき、これを踏まえてきょうのリスク コミュニケーションを実施していきたいと思っております。  まず、同じ時代、今この平成の17年の、この8月の同じ日に皆さんが集いました。 そして、私たちは今、同じ日本という社会の中に暮らしています。きょうは特に大阪な ので関西地域という、もう少し小さい地域になるかもしれないんですけれども、同じ社 会に暮らしています。でも、その中で異文化を持つ人々がそれぞれそこにいるというこ とです。そして、きょう同じ会場に集まりましたが、まず同じテーブルに着いて、相手 の話を心を開いて聞くということが大事です。自分の意見を述べることももちろんやる んですけれども、重要なんですけれども、相手を理解するというスタンスから、心を開 いて相手の話を聞きます。そして、押しつけないように自分の立場、自分の意見を述べ ます。立場と考え方に、それぞれ、本来、もともと違いがあるということを大前提とし て進めていきます。きょうの目的は、先ほど森田さんのほうから2つありました。関係 者間で情報を共有すること、それからきょうのテーマについて正しく理解することに努 めるというこの2点ですので、次の2点は少し当てはまらないかもしれませんけれど も、何かしら施策を皆で決めていくような場合には、調整可能な部分が何事にもあり、 調整可能であることを皆が信じて妥当な方策を探っていきます。1回きりの議論でそれ を完結することはとても難しく、一度であきらめず何度か繰り返すことが必要だと、研 究の中で主任研究者のほうから発表させていただいております。ということで、きょう は森田さんのお話ししました2つの目的に沿って、リスクコミュニケーションを進めて いきたいと思います。  ありがとうございます。 【司会】  どうもありがとうございました。会場の手配で、ちょっと不十分な点があり、ご迷惑 をおかけしまして申しわけございませんでした。  それでは続きまして、厚生労働省の食品安全部基準審査課の近藤専門官から、本日の テーマの「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて」というこ とでご説明をさせていただきます。 【近藤厚生労働省食品安全部基準審査課食品規格専門官】  皆様、本日はお忙しい中をお集まりいただきまして、まことにありがとうございま す。私、今ご紹介にあずかりました厚生労働省食品安全部の近藤と申します。よろしく お願いいたします。                  (スライド)  今、お話にもありましたように、これから私のほうで約1時間程度、今回の、このリ スクコミュニケーションのテーマでもあります「妊婦への魚介類の摂食と水銀に係る注 意事項」につきましてご説明を申し上げます。  とかく行政がつくる文章というものは、なかなかわかりにくいというのが常でありま して、そういうものをいかにかみ砕いて、皆様によくご理解をいただくかということ が、きょうのリスクコミュニケーションの一つの目的でもあろうと考えております。も う一つお話ししたいことは、やはり私どもこういう仕事をやっていても、その中身、こ れを正確にご理解いただかないと、私どもの目的とする効果が得られないというところ がございます。片や反面、国民の皆様におかれましては、このような内容、これをよく 理解できないとなりますと、理解できないことの積み重ねが不安につながると。で、不 安につながった段階では、なかなか物事はいい方向に考えていけないということが起こ ります。ですので、これからゆっくりと1時間程度、ポイントを絞ってお話を申し上げ ますが、その一つ一つにつきまして、皆様にわかりやすいように説明いたしますので、 十分にご理解をいただければと思います。  まず表題でございますが、「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」の見直 しについて」というものでございます。こちらの表題を見ていただきますと、皆様ぴん とくると思うんですけれども、私ども日本人にとってみますと、非常にセンシティブな 言葉が並んでいるということだと思います。一つには妊婦、そしてもう一つには水銀、 そして食生活になじみの深い魚介類というものが並んでおります。これが今回の注意事 項を構成する上での大きな要素となっている部分でございまして、なぜこのような注意 事項の見直しが今回行われてきたのかという点から説明をしていきたいと思います。                  (スライド)  本日ご説明する点は4点でございます。まず1番として、はじめに、そして2番、見 直しの経緯でございます。3番につきましては内閣府食品安全委員会の食品健康影響評 価というものの中身でございます。4番が薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水 産食品部会における検討というものでございます。これは先ほど堀口先生のほうからも お話しありましたように、リスクの原則というものに基づいて行われてきたということ がご理解いただけるかと思います。特にこの3番、この内閣府食品安全委員会の評価と いうものは、いわゆるリスク評価と言われている部分でございます。そして4番、こち らの審議会における検討、こちらがリスク管理機関における検討というものになってい るものでございます。                  (スライド)  まず、このテーマを進めていく上で、一番最初に皆様にお話を申し上げなければいけ ないのは、魚介類というものについての認識でございます。こちらの「はじめに」の第 1段落目に書いてございますが、皆様ご存じのとおり、魚介類というものは良質なたん ぱく質であったり、高度不飽和脂肪酸であるEPAまたはDHAと言われているもの を、他の食品と比較して多く含んでいる非常に優秀な食品、そして食生活における不可 欠な食材というものであろうと思います。当然ながら皆様も小さいころから、そして今 であっても毎日の食卓の中でこの魚介類を摂食し、そのメリットを十分に得ているもの と理解をしております。  そして第2段落目でございますが、ただ、この魚介類につきましては、自然界の食物 連鎖というものがございます。これは小さい魚を大きい魚が食べていくというものでご ざいます。この食物連鎖を通じまして、特定の地域に関係なく微量の水銀を含有してお ります。これはすべての魚介類において言えることでございます。ただ一部の魚介類に つきましては、他の魚介類と比較して高いものも見受けられるというものでございま す。これは食物連鎖を考えていただければわかると思いますが、やはり小さいものを中 ぐらいの魚が食べる、中ぐらいの魚を大きい魚が食べる、こういうことを繰り返すと、 どんどん体の大きいお魚には、小さい魚に比べればより比較的量の多いものが蓄積され てくるということは、これはご理解いただけるものと思います。                  (スライド)  そして近年ですけれども、この魚介類を通じました低濃度の水銀の摂取と胎児に影響 を与える可能性を懸念する報告が国際的になされております。これはどういう報告かと いいますと、このフェロー諸島前向き研究、またはセイシェル小児発達研究等というも のでございまして、この調査研究、数年にわたる大規模な疫学調査というものになって おりまして、今現在におきましてもこの調査研究は進められております。そしてその調 査研究の過程の中で、胎児にある程度または非常に程度の低いものであっても、影響を 与える可能性があるのではないかということが報告されているわけでございます。  このような現状を踏まえまして、私ども平成15年に一度、妊婦に対する注意事項と いうものをお出ししたわけでございますが、必ずしもその平成15年にお出しをした注 意事項の出し方、書き方、表現の仕方、そういうものが適切であったかどうかという点 については、より研究をすべき、または調査を行い、我々としても勉強すべき点も多々 あったものと思っております。今回はそのような点も踏まえて、どのように検討を進め てきたかということを次にお話をしたいと思います。                  (スライド)  見直しの経緯でございます。今お話をいたしましたが、平成15年の6月の上旬でご ざいますが、これはまだ内閣府食品安全委員会が発足する前の段階でございます。この 6月の上旬におきまして、審議会の意見を聞きまして7種類の魚介類について、妊婦を 対象とした摂食に関する注意事項を公表いたしました。ここで検討の対象とした魚介類 は何であったかといいますと、サメ、こちらは筋肉でございます。メカジキ、キンメダ イ、そして以下クジラ類でありますコビレゴンドウ、ツチクジラ、バンドウイルカ、マ ッコウクジラという7種類について公表をさせていただきました。そして、この公表に 当たりましては、特にはキンメダイということになろうかと思いますが、非常にセンセ ーショナルな取り上げられ方、そしてまたキンメダイは非常に赤い色、目に焼きつく色 であったというところもありまして、悪いイメージ、これが先行してなかなか私どもが ほんとうに伝えたかった内容というものがはっきりと伝え切れたのかという点について は、疑問が残ったわけでございます。  そして平成15年6月下旬でございますが、国際専門家会議、これはJECFAと言 われているものでございますが、こちらで発育途上の胎児を十分に保護するために、水 銀の再評価が実施されております。この水銀の再評価によりまして、こちらに書いてご ざいますように、従来の耐容量3.3μgが、見直しが行われまして1.6μgに引き下げら れております。                  (スライド)  また、私どもも水銀の含有量等に係る調査研究を進めており、国際的な評価が下がっ たということもございますので、これを受け、7月23日にリスク評価機関であります 内閣府食品安全委員会へ食品健康影響評価の依頼を行ったわけでございます。ここで私 どもが何を評価をしてほしいと依頼をしたかということでございますが、こちらにござ いますように、2つのポイントがございます。一つのポイントは、どの程度までの水銀 摂取が安全であるのか。つまり、人が体内に取り込む水銀の量というものにつきまし て、どの程度までであれば、その影響がないというものであるのかということを評価し ていただこうというのが第1点でございます。これを専門用語でいいますと耐容量とい います。  次に、特に悪影響を受けやすいと考えられる対象者はだれかというものでございま す。諸外国におきましても平成16年の3月、この期間に大体集中するわけでございま すが、日本と同様に胎児、または妊婦、またはそれ以外の方々を対象としました魚介類 の摂食に関する注意事項というものが出されております。ただ、諸外国におきましては その範囲が非常に幅広い。極端な例を言いますと、すべての人が対象であったりとか、 または子供であったり、授乳中の母親であったりという形で、その対象の範囲が非常に ばらけているということがございます。ですので、この評価の第2点としましては、だ れがその悪影響を受けやすいと考えられるのかという点について、検討を依頼しており ます。この悪影響を受けやすいと考えられる対象者、これをハイリスクグループといい ます。  そしてこの2点の検討の依頼をしたところ、4番にございますように平成16年の9 月から平成17年の6月まで、食品安全委員会の中にございます汚染物質専門調査会と いう部門がございまして、こちらのほうでその内容についての審議が計6回行われてお ります。  そして5番目にございますように平成17年8月4日、ですから今月の4日になるわ けでございますが、厚生労働省に対しまして食品健康影響評価、これが通知をされたわ けでございます。  ここまでがリスク評価を依頼し、そして私どもにそのリスクの評価が返ってきたとい う経緯でございます。                  (スライド)  では、そのリスク評価というものが、どのようなところにポイントを置いてなされて きたのかという点を、順を追って説明をいたします。                  (スライド)  食品健康影響評価のポイントの1番でございますが、今回議論の対象となるのは胎児 でございます。では、その胎児がなぜ影響を受けやすいのかという点について説明がな されております。ここはまず第1点目としましては、メチル水銀というものが今回の対 象の物質ということになるわけでございますが、赤ちゃんができますとおなかの中に胎 盤ができるわけでございますが、このメチル水銀は、この胎盤を介して容易に胎児に移 行するということがわかっております。そして胎児はいまだ発達過程でございます。そ して特にメチル水銀の標的臓器である、いわゆる神経系に影響が及ぶということが報告 されているところでございます。  では、その胎児が対象となるわけでございますが、片や乳児、または小児と言われて いる方は影響を受けないのかどうかという疑問が出てくると思います。この点につきま しては、まず乳児につきましては、母親が通常の食生活をしている限りにおきまして は、母乳中の水銀濃度は低いということで、乳児については対象とする必要はないであ ろうという結論でございます。そして小児につきましては、既に成人と同様にメチル水 銀を排せつする機能が備わっているということが報告されておりまして、このため小児 につきましても、その対象とする必要はないのであろうという結論が得られているとこ ろでございます。                  (スライド)  私どもが今取り扱おうとしているこの水銀という言葉でございますが、日本は悲しい ことに、過去、水俣病というものを経験しております。ですから皆様のイメージの中に も、この水銀というものが、つい、水俣病というものと結びつきやすいということがあ ろうと思います。ただ、今私どもがこの魚介類から摂取をするこの水銀、これについて どういうことをリスクとして考えているのかという点につきましては、水俣病のような 重篤なものとは異なりまして、例えば音を聞いた場合の反応が1,000分の1秒程度以下 のレベルでおくれるようになるというものでございます。ですからそこはもう全く水俣 病のような重篤な症状とは異なるという点を、十分にご理解いただきたいと思います。  そして評価の方法でございますが、先ほどご説明申し上げましたが、フェロー諸島の 前向き研究及びセイシェルの小児発達研究である、この疫学調査の研究結果、これに基 づきまして評価が行われております。また、先ほども説明しましたが、このJECFA という機関で用いられた代謝のモデルというものがございまして、この代謝モデルを用 いて耐容摂取量を算出するというものでございます。そして最後に不確実係数というも のを適用するとしております。これは疫学調査研究でございますので、非常に幅の広い 方々を対象として、多数のデータを集めてくるということが行われます。このため、必 ずしもそのデータの値というものは一点に集中しないということが起こります。このよ うなばらつきというものを十分に考慮した上で評価をしなければなりません。このため に不確実係数というものを使って、安全性を高めようというものでございます。                  (スライド)  これらのポイントによって評価結果が提出されまして、評価結果は8月4日に出され ました。結果の中身ですけれども、ハイリスクグループ、これは誰が対象かということ でございますが、これは胎児でございます。むろん胎児はお母さんのおなかの中にいる わけでございますので、実際に対象となる集団というものは妊娠をしている方、もしく は妊娠している可能性のある方、こちらが対象になるわけでございます。そしてどの程 度までの水銀の摂取ができるのか、耐容できるのかということでございますが、この耐 容の1週間当たりの摂取量につきましては、メチル水銀2.0μg/kg体重/週という ものでございます。非常に見なれない数字だと思いますので、これはかみ砕いて説明し ますと、1週間当たりに体重1kgに対してメチル水銀が2.0μgまで、これは耐容で きるということをお示ししているものでございます。                  (スライド)  この評価結果を受けますと、今度はリスク管理機関であります厚生労働省におきまし て、具体的な注意事項の検討というものが始まります。私ども、既に3回の検討を行っ てまいりました。第1回目は平成16年8月、第2回目は平成16年11月、そして第 3回目は平成17年8月ということでございます。それでは具体的な検討の中身につい てご説明をいたします。                  (スライド)  水銀の注意事項を検討していく中では、まず実際に魚介類というものがどれぐらいの 水銀を持っているのかという実態を把握しませんと、その評価はできません。ですの で、まず第1点目としましては、この魚介類の水銀の含有量というものの調査を行いま した。これは厚生労働省、水産庁、地方自治体及び諸外国において実施されました、水 銀濃度に関する調査結果を取りまとめたものでございます。内容としましては、国内に つきましては385種類、9,712検体の調査を行っております。参考までに横に括弧で記し ておりますが、平成15年6月、この時点で、注意事項を公表した段階では、約2,600 検体という数字であったところですので、今回の注意事項の検討に当たりましては、約 4倍弱というデータを集めたということになるわけでございます。また、参考としまし て国外につきましては165種類、21,724検体、こちらについての調査結果を取りまとめ ております。  次に、魚介類の摂食の実態でございます。今回対象となるのは、食品健康影響評価に ございましたように、妊娠している方または妊娠している可能性のある方、これが対象 となります。このような方々は、いわゆる統計調査の中では再生産年齢人口と呼ばれる 方々になりまして、15歳から49歳までの女性ということになります。いわゆる再生 産年齢人口というのは、お母さんになれる年齢を指すわけでございますが、この方々の 魚介類の摂食のデータを集計いたしました。これによりますと、魚類の平均としては 73.6g食べているということがわかります。また、カジキ類、キンメダイ、マグロ類等 については、個々に65.4g、75g、32.2gということが調査結果からわかっているとこ ろでございます。  また実際に喫食、自分たちがお店や例えば家とかで、どういうふうに魚を食べるのか という喫食の形態、こういうものが実際の評価を行っていく上では、非常に重要なポイ ントになってくるというところがございます。そこで私ども、今回マグロ類につきまし て、1回分または1人前でございますが、そのマグロ類の調理品を食べた場合に、どれ ぐらいの量を食べているのかということにつきましても調査を行いました。その結果と いたしましては、マグロ類の刺身、すし、鉄火丼、これにつきまして1回当たりに約60 gから100g、これだけのマグロを摂食しているということが調査の結果からわかって おります。                  (スライド)  続きまして、では私どもの現在の食生活における水銀暴露の実態について説明しま す。暴露というのはどれぐらいの水銀を摂取しているのかということでございますが、 その実態についても調査を行いました。これは私どものほうで調査を行っております汚 染物質摂取量調査結果というのがございまして、これの平成7年から平成16年まで、 この10年間における調査結果の平均値を取りまとめております。その結果としまして は、1日当たり、ヒト1人当たり平均しますと8.4μgの水銀を摂取しているというこ とがわかっております。この8.4μgの中で魚介類というものがどれぐらいのウエート を占めているのかということを、その横の括弧に示しておりますけれども、その寄与率 というものは約8割という形になっております。ですから、私どもが1日当たりに摂取 をしている水銀というものの大半が魚介類に由来をしているということが、この数字を 見ていただければおわかりいただけると思います。  そしてこの8.4μgというものが、どの程度のものであるのかということが次の2番 のポツになるわけでございます。こちらでは仮にすべての水銀がメチル水銀であって、 妊婦の体重を50kgと仮定した場合、その1週間当たりの水銀摂取量はどうなるかとい うことを計算しております。これは8.4μgに1週間ですから7を掛けまして、それを 体重キログラムで割るという作業を行いますと、1.2μgという数字が出てまいります。 この1.2μgが、食品安全委員会から示されております2.0のどの程度かということが一 番最後に示しているわけでございますが、これは耐容できる摂取量の6割程度というこ とになっております。ですので、現状の日本人の水銀摂取の実態というものは、まだま だ耐容量を超えていないということが、これでおわかりいただけると思います。                  (スライド)  では、具体的に妊婦の方に着目をしまして、1日当たりの耐容摂取量がどれぐらいに なるのかということを、次に試算をいたしました。最初の1ポツでございますが、こち らは食品健康影響評価における耐容摂取量でございますので、2.0μgというものが出 てまいります。そして、国民栄養調査というものが行われておりまして、この調査にお きましては、国民の方々が大体どういうものをどのぐらい食べているのかということの 調査を行っております。この調査を行う際におきましては、その調査の対象となった方 々の性別、または妊娠をしているかしていないか、または体重というデータも集めてお りまして、この調査の対象となった方々のうち、この妊婦の方に着目をしまして、その 平均体重を求めますと2番にお示ししているように、55.5kgという結果が得られてお ります。これはいわゆる妊娠のステージというものは、最初から最後まであるわけでご ざいまして、一般的には体重が妊娠しても10kg以上に増加することのないように管理 をしなさいということになっているかと思います。ですからそのステージごとにいろい ろなばらつきがあると思いますが、この国民栄養調査におきましては、それら幅広いス テージをカバーした形で調査が行われておりまして、その平均値である55.5kgという ものを採用したところでございます。この1番と2番というものを使いまして、妊婦1 日当たりの耐容摂取量を求めますと、(1)掛ける(2)割る7で15.9μg/ヒト/dayとい う数字が出てくるところでございます。ですので妊婦に当たりましては、1日当たり 15.9μgまでであれば、水銀による影響がないということでございます。                  (スライド)  今お話ししましたその15.9μgというものが、どういうふうに考えていけばいいのか というのが、この仮定の表でございます。一番上に書いてございます、この耐容量とい うものが15.9μgに相当する部分でございます。そして先ほどお話ししましたように、 汚染物質の実態調査で、私どもが1日当たりに摂取をしております水銀の量、これは 8.4μgでございます。こちらはさらに細かく8.42μgと記載しておりますが、その8.4 μgを示しております。これが一番左側のグラフになるわけでございます。これから私 どもが水銀濃度を管理するために魚介類の摂食をどのようにコントロールをしていくの かということを考えるためには、いわゆる魚介類以外、または検討対象となる魚介類以 外から摂取をしている水銀の量をバックグラウンドとして引くという作業が必要になっ てまいります。そのバックグラウンドをどのように処理するのかという考えをお示しし ているのが仮定の1、2、3というものでございます。  仮定の1から順番に説明いたしますと、まず仮定の1番は、魚介類の部分の水銀摂取 量が全くなくなっているというグラフでございます。これは、これから選択をする検討 対象となる魚介類以外のお魚からの水銀摂取量はないと仮定しているものでございま す。ですから、その他の食品のグラフのちょうど上から耐容量までの範囲、この間で検 討対象となる魚介類から水銀を摂取できるという考えでございます。ただ、先ほどもご 説明をいたしましたが、魚介類というものは天然に存在する限りにおきましては、微量 ながら水銀を含有してしまうというものでございます。ですから、検討対象とならなか った魚介類が、水銀含有量がゼロということはあり得ないわけでございまして、これは その他の検討対象以外の魚介類からの水銀摂取を、過小に見積もっているというもので ございます。  これの対極となるのが仮定の3番でございます。仮定の3番は検討対象となる魚介類 以外の魚介類から、現在摂取している魚介類の水銀を全部とっているということになる わけでございます。しかしながらこの仮定の3番というものにつきましても、当然なが ら、現在の食生活というものについては、これから選択されるであろう検討対象の魚介 類も含めた形で魚介類を食べているわけでございますので、これについては検討対象以 外の魚介類からの水銀摂取を、過大に見積もり過ぎているのであろうということになり ます。  そして仮定の2番でございますが、これはそのちょうど中間、半分ぐらいを検討対象 となる魚介類から、それ以外の魚介類からも半分とっているという表でございます。私 どものほうでも幾つか試算を行ったわけでございますが、考え方としましてはこの仮定 の2番が実態に即しているものであろうということで、検討を進めているわけでござい ます。                  (スライド)  それでは次に、どのような魚が検討対象の魚介類となってくるのかという点でござい ます。これは先ほどご説明しましたが、約9,000検体を超えるデータの中から総水銀で 0.4ppm以上、メチル水銀であれば0.3ppm以上という魚介類を選択したものでございま す。こちらに書いてございますように、魚介類につきましては、上から魚類、クジラ、 そして最後に貝類というふうに並んでおりまして、それぞれの水銀のデータが示されて おります。ですので、検討を進めていくというものが、この今お示しをしている魚介類 またはクジラ、そして貝類、こういうものについて、どれぐらいだったら食べられるの かということの検討を進めていくことになるわけでございます。                  (スライド)  では、その量というものを、どういうふうに計算をしていったらいいのかというもの でございます。これは先ほどご説明しましたが、仮定の1、2、3というグラフがあっ たと思います。この中で、まず耐容量からバックグラウンドとなる数字を引くと、検討 対象となる先ほどの表にお示しをした魚介類に割り当てられる水銀の量が出ます。この 量をその魚介類の持っている水銀濃度で割ってあげると、いわゆる耐容量の範囲内で摂 食できる魚介類の量、これはグラムでございますけれども、このグラムが計算できると いう式でございます。この式に従いまして計算を行いますと、次にお示しをする表が出 てまいります。                  (スライド)  これが試算結果でございます。魚介類の水銀のデータにつきましては、総水銀のデー タ、そしてメチル水銀のデータ、この2つのデータがございますので、総水銀、メチル 水銀の両方を並べております。そして個々に先ほどご説明いたしました仮定の1から3 番までを組み合わせまして、全部で6つのパターンが示してございます。ただ、今その 健康影響が懸念される対象の物質というものは何であるのかといいますと、これはメチ ル水銀であります。そして試算の結果等からどの仮定が現状に合っているのかというこ とを計算するならば、それは仮定の2番ということになるわけでございます。ですの で、これから注意事項の案というものを起こしていくことになるわけですけれども、そ の注意事項の案をつくるに当たっては、今お示しをしておりますとおり、この右側の表 の仮定の2番というものに基づきまして、注意事項の案を作成していくということにな るわけでございます。                  (スライド)  続きまして、では具体的に注意事項をつくるに当たって、どのようなことに注意をし なければいけないのかという点です。今回、私どもがこの注意事項を取りまとめるに当 たりましては、ここにお示ししているように6点ございますが、この点に十分配慮を行 った上で注意事項の案を作成しております。まず1つ目ですけれども、冒頭説明しまし たが、魚介類というものは、健康的な食生活を営む上で重要な食材であるんだというと ころをしっかりと理解していただくと。  そして2番目でございますが、魚介類というものはどこに住んでいるとか、というわ けではなくて、食物連鎖の過程で水銀を蓄積してしまうものなんですということです。 ですから、これはだれかが人為的に、意図的に汚染をしているというようなものではな く、自然界に住む以上は食物連鎖の影響を受けるということでございます。  そして3番目でございますが、検討をしているこの水銀の影響というものでございま すが、これはあったとしても、胎児の将来の社会生活に支障のあるような重篤なもので はないということを正確に理解していただくこと、これが重要であると考えています。 この点を明確をお示しをしませんと、一体どのような影響があるのかという点に関して 非常に不安が募ると。先ほどご説明をしましたが、不安が募りますと物事はいい方向に は考えられないということになります。ですからこの点につきましても、具体的な数字 等をお示しをして、そしてきちっと理解をしていただくことが重要であろうと考えたわ けでございます。  次に4番目でございますが、妊婦につきましては、一定の注意をした上で、魚介類を 摂食することが重要であるという点でございます。今回私どもが作成をいたしました注 意事項の案でございますけれども、これは魚介類を食べるなと言っているものではござ いません。魚介類を食べる場合には、妊婦の方については一定の注意を払っていただい た上で、魚介類を食べることが重要であるんだということを、お伝えしたいというもの でございます。2番目のパラグラフですけれども、また水銀濃度が高い魚介類を偏って 多量に食べることは避けて、水銀の摂取量を減らすと。このことで魚食のメリットとの 両立が可能であるのだということを、しっかりとご理解いただきたいという点でござい ます。厚生労働省でございますので、いろいろな施策を進めているわけでございます が、食品に限って言うならば、やはりバランスのよい食事というものが大事で、そのバ ランスのよい食事の中では、やはり水銀濃度の高いものを偏って食べるのはやめましょ うと。その偏って食べることを避けることによれば、当然ながら水銀の摂取量はコント ロールできると。これによって魚が持っている本来のメリットというものを、妊婦さん においても十分に生かすことができるんだということを、説明していかなければいけな いという点でございます。  次に5番目のポツでございますが、妊婦が注意事項の対象であること。そして子供や 一般の方々は対象外であること。この注意事項の対象者はだれであるのかという点を、 正確にご理解いただくということが必要であろうと思います。この点が理解できません と、すべての方々が不安になってしまうということになります。ですから、対象者を明 確にして、それをクリティカルにお伝えをしていくという点が大事であろうと考えたわ けでございます。  そして最後の6番目でございますが、消費者の方々に注意事項を正確に理解してもら うこと、これが大事なんだということでございます。本日、こうお集まりいただいてお りますけれども、このようなリスクコミュニケーションという場も、この注意事項の中 身を正確にご理解をしていただくための一つのツールであろうと考えております。この 注意事項の案におきましても、その点について明確に記載をして、そして正確にご理解 をしていただくということに努めていただきたいということも記載しているところでご ざいます。                  (スライド)  これら留意点を踏まえて作成をしました現在の私どもの注意事項の案が、今こちらで お示ししているものでございます。この注意事項の案につきましては、ちょっとスライ ドでは見にくいと思いますので、きょうお手持ちの資料の中に、少し厚い資料でござい ますが「食品に関するリスクコミュニケーション 妊婦への魚介類の摂食と水銀に関す る注意事項についての意見交換会の参考資料」という、5ミリぐらいのかなり厚い目の 参考資料があると思います。この参考資料の中に、1ページをめくっていただきます と、今スライドにお示しをしている注意事項と同じものが添付をしてございます。ペー ジで言いますと1ページ目、そしてその裏の2ページ目というものが、こちらのスライ ドに示しているものでございます。ですので、説明はこちらの手元の資料をごらんにな りながらお聞きいただければと思います。  こちらの注意事項では、まず表題をごらんいただきたいんですけれども、表題には 「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項(案)」という形になっております。 つまり、対象者はだれであるのかという点を、一番最初に妊婦という形で表題からお示 しさせていただいております。そして、小見出しの「魚介類の有益性」でございます が、ここでは魚介類が非常にすぐれた栄養特性を有しているという点について、まずは ご説明をさせていただいております。  そして、2番目の小見出しでございます「魚介類の水銀」という点でございますが、 こちらでは自然界の食物連鎖を通じて、そして特定の地域にかかわりなく微量の水銀を 含有するということが示されております。また、一部の魚介類につきましては、食物連 鎖を通じまして、他の魚介類と比較して水銀の高いものもあるんだということをお示し しているところでございます。  次に3番目の小見出しでございますが、こちらの「妊婦の方々へ」という点でござい まして、こちらでは先ほども説明しましたが、魚介類を通じた水銀摂取が胎児に影響を 与える可能性を懸念する報告がなされているという点、そしてこの胎児への影響という ものは、例えば音を聞いた場合の反応が1,000分の1秒以下のレベルでおくれるように なるものと、そしてあるとしても、将来の社会生活に支障のあるような重篤なものでは ないということをお示ししております。その上で妊娠している方、または妊娠している 可能性のある方、この方々を妊婦と称しますけれども、次の事項に注意しながら、魚介 類を摂食するように心がけていただきたいというメッセージをお示ししております。  その次のパラグラフでは、現在の私どもの水銀の摂取量、水銀暴露の実態、これをお 示しした上で、魚介類については妊娠と出産に重要である栄養のバランスのよい食事に 欠かせないものであること。妊婦の方々において、水銀濃度の高い魚介類を食べないよ うに要請するものではないんだということ。そしてこの注意事項は、胎児の保護を第一 に考えて、食品安全委員会の評価も踏まえまして、魚介類の調査結果等からの試算をも とに作成したものであるということをお示ししております。その上で、水銀濃度の高い 魚介類を偏って多量に食べることを避けて水銀摂取量を減らすことで、魚食のメリッ ト、これと両立することができるのであろうということをお示ししております。  そして次に2ページ目になるわけでございますが、この2ページ目におきまして、具 体的に魚種ごとの一定期間に摂食のできる量、これを表としてお示ししているところで ございます。この表現方法につきましては、これは日本のみならず諸外国におきまして も同様な表現がなされているところでございます。やはり諸外国でも同様の表現がなさ れているということであれば、このような表現方法が一つにはわかりやすいメッセージ の伝え方なんだろうと考えております。  一番上から例を示すのであれば、例えばバンドウイルカというものがあるわけでござ いますが、これは1回当たり約80gということで、妊婦につきましては2カ月に1回ま でという形でお示しをしているところでございます。そして参考としましてその括弧の 中に1週間当たりではどれぐらいかということで、10gという数字をお示ししていると ころでございます。以降、同じような形で表を構成しているところでございます。  この表の下には参考の1、2というものもおつけしております。これは一つに例示と いたしましてはこのマグロがあるわけでございますが、そのマグロの中でも、水銀含有 量の高いもの、低いものがございます。マグロというものが今回注意事項の対象に上が っているわけでございますが、すべてのマグロがその対象となっているわけではないと いうところを、明確にお伝えする必要性があるという点で、この参考の1を記載させて いただいております。参考の1番では、マグロの中でもキハダ、ビンナガ、メジマグ ロ、これはクロマグロの幼魚でございますが、さらにツナ缶、こちらについては、水銀 含有量が現在の調査結果においては低いということがわかっております。ですので、こ のようなマグロについては通常の摂食をしていただいて差し支えがないんだということ を、明確にお伝えしたいということで記載をしております。  そしてまた注意事項の表の中には、1回当たり約80gという数字がお示ししてござい ます。これは審議会における検討の中の一つの要素としてお話をしましたが、摂食の実 態というものがございます。その摂食の実態のデータに基づきますと、大体1回当たり に食べる量というものが、この80g程度、これを中心としているのであろうと考えられ るところでございます。ただ、この80gという数字を単にお示しをしても、では一体こ れはどの程度のものなのかというイメージが、なかなかしにくいということがございま す。ですので、80gにイメージをしっかりと持っていただくために、参考の2番といた しましては、すしとか刺身、これは一貫とか一切れであれば15gであろうと。そのほか にもお刺身の1人前当たりというものは80g程度なんですよという、個別、具体的な例 示を添えさせていただいております。これにより、そのイメージというものがとりやす いだろうと考えているところでございます。  さらにその下にございますが、「例えば」から始まる文でございます。これは食べ過 ぎてしまった場合、またはその複数の種類を組み合わせて食べたい場合、そういう場合 はどうしたらいいんだろうという点についてお示しをしているものでございます。やは り食生活におきましては、一つの魚を連続して食べ続けるということは、なかなか想定 しにくいという部分がございます。ですので、そのような点につきましては、こういう 工夫もあるんだろうということをお示ししているところでございます。  次に小見出しの「子供や一般の方々へ」という部分でございますが、こちらにおきま しては、先ほど留意点においても説明をいたしましたが、だれが対象であるのかという ことを、明確にここでお伝えをしたいというものでございます。ですので、今回の注意 事項は胎児の健康を保護するためのものであると。子供や一般の方々については通常食 べる魚介類によって、水銀による健康への悪影響が懸念されるような状況ではないんで すと。ですから、健康的な食生活の維持にとって有益である魚介類を、バランスよく摂 取をしていただきたいということを記載しております。  そして最後の小見出し、こちらが「正確な理解のお願い」という点でございます。こ ちらにおきましては、魚介類が一般に人の健康に有益であるということを、再度強調さ せていただいております。そして本日の妊婦への注意事項が、魚介類の摂食の減少や、 いわゆる風評被害というものにつながらないように、正確に理解をしていただくようお 願いをしたいということを書いております。  そして最後に、今後とも科学技術の進歩に合わせまして、本注意事項の見直しを行う ものでありますという形をお示ししているところでございます。  これが今、私どもが作成をしております注意事項の案というものでございます。                  (スライド)  今、説明をしました注意事項の案につきましては、今月の22日、ですから今週の月 曜日からでございますけれども、意見募集を開始しております。これは1カ月間という 形になっておりまして、9月21日まで意見募集を行っておりますので、ご意見等がご ざいましたら、この意見募集の期間内に、忌憚のないご意見をお寄せいただければと考 えているところです。また、この内容につきまして、より皆様と、広く深く理解をして いただくために、意見交換会を開催するというものでございます。こちらにございます ように、まさに今日、この場所、これが大阪会場で行われているリスクコミュニケーシ ョンでございます。そして明日は東京会場、これは三田になるわけでございますけれど も、この三田のほうで同じようなリスクコミュニケーションを開催するというものでご ざいます。そして、この案につきましては、寄せられた意見を踏まえまして、再度審議 会における議論を行った上で内容を確定しまして、その上で各自治体の皆様方等に注意 事項を発出をしていきたいと考えているところでございます。  今お話しした内容、きょうはお手元のほうに参考資料という形で、少し厚目の資料を お配りしておりますけれども、これ以外にも今まで私ども、3回審議会を開いておりま す。この審議会の中で使われた資料はすべて公表しております。ですので、さらに詳細 な情報等をお知りになりたいという方がいらっしゃいましたら、こちらにお示しをして おります厚生労働省のホームページに載っておりますので、アクセスをしていただきま して、その内容のご確認をしていただければと考えております。  あと、若干、お手元にお配りしております参考資料、今1ページ目と2ページ目をご らんいただきましたが、この注意事項をさらによく、またしっかりと正確に理解をして いただくために、私ども、この案を公表するに当たりましては、Q&Aを作成しており ます。このQ&A、問いの1番から問いの22番まで作成しております。この中をごら んいただければ、おおむね皆様がお持ちになるような、ご懸念する疑問等が解消できる のではないかと考えております。ですので、こちらの中身につきましてもご一読いただ ければと思っております。  また、ページで言いますと19ページまで飛ぶわけでございますが、この19ページ 以降につきましては、表題にございますように、概要というものが添付されておりま す。今回の審議につきましては、平成16年の7月に食品健康影響評価を依頼しまし て、1年以上という時間をかけてこの議論がなされてきております。その議論というも のがどういうふうになされてきたのかと、そしてその背景はどういうものであったのか ということを、端的にご理解いただけるように取りまとめたものが、この19ページに お示しをしている概要というものでございます。ですので、Q&Aもご一読いただくと いうことでございますが、こちらの概要というものをお読みいただければ、時系列に沿 って、どういうことが行われてきたのかということがおわかりいただけるものと思いま す。また、こちらの概要につきましては、かなり細かい別添の資料を添付しておりま す。ですので、個々の別添資料も含めてご一読いただければ、今私が説明をしました中 身というものが、よりご理解いただけるものと考えておりますので、ぜひともご一読い ただければと思います。  ちょうど1時間ぐらいでありますので、私の説明はこれで終わりにさせていただこう と思います。ありがとうございました。 【司会】  それでは、ここで休憩を設けさせていただきたいと思います。パネルディスカッショ ンと意見交換会、2時半を目途に開始したいと思いますので、それまでにお席のほうに お戻りいただければと思います。                   (休憩)             パネルディスカッション・意見交換 【司会】  それでは時間になりましたので、これからパネルディスカッション及び意見交換会を 行います。  まず、本日のパネルディスカッションを行っていただくメンバーをご紹介いたしま す。皆様から向かいまして一番左側になりますけれども、コーディネーターといたしま して、先ほど、リスクコミュニケーションについてのご説明をいただきました、順天堂 大学の堀口先生でございます。また、本日のパネリストでございますけれども、前のほ う、皆様から向かいまして左から3番目の方から順に右手のほうに向かってご紹介をさ せていただきたいと思いますけれども、まず食生活ジャーナリスト、村上様でございま す。全国漁業協同組合連合会漁政部部長代理、高浜様です。それから農林水産省水産庁 漁場資源課生態系保全室の丹羽室長です。それから食品安全委員会事務局西郷リスクコ ミュニケーション官です。最後に皆様から左から2番目でございますけれども、厚生労 働省食品安全部基準審査課、中垣課長でございます。以上5名でございます。  それでは堀口先生、議事進行よろしくお願いいたします。 【コーディネーター】  それでは、早速始めさせていただきたいと思います。まず初めに、パネリストのほう から、今回の妊婦に対する水銀の注意事項についてご意見を伺いたいと思います。まず 一番初めに、全国漁業協同組合連合会の高浜さんのほうから、よろしくお願いいたしま す。 【高浜氏】  高浜でございます。全国漁業協同組合連合会、略しまして全漁連と申しております が、全国に、大体津々浦々に1,400ほどの漁協が今ございまして、それらの漁業協同組 合の全国団体ということで仕事をさせていただいております。  今回の注意事項の見直しにつきましては、先ほども近藤さんのほうからもありました けども、2年前に水銀の注意事項が出されたときには、非常に大きな風評被害が出た と。特にそのときには、キンメダイが非常に大きな打撃を受けて、しばらくの間、消費 あるいは価格が低迷するというような事態が生じました。我々としては大変憂慮する事 態が続いたわけでございます。今回の見直しにつきましても、また同じことが、あるい はもしかしたらもっと大きな影響が出るのではないかということで、非常に懸念してお ったわけです。幸いにして、8月12日に注意事項が発表されて以降、さほど大きな影 響がなく、現在のところまで推移していると聞いております。それは、これまで食品安 全委員会でもそうですし、厚生労働省でもそうです、いろんな形でリスクコミュニケー ションというのは、ここ2年間ぐらい図られておりまして、そういった努力が、今回も 非常に正確に伝わって、なおかつそういったこともあって、落ちついた状態が今続いて いるのかなと思うところであります。  殊さら水銀というと、日本人にとっては水俣病を経験しているだけに、イメージが普 通のものに比べて極めてショッキングな、水銀という2文字は非常にショッキングなも のでありますけれども、今回は妊婦に限定されたものであって、水銀といっても自然界 の中でどの魚にも量の多少はあれども、自然の状態の中で蓄積されていくものだという ことも含めて、ご理解いただいているのではないかなと思います。  我々としましては、これまでもずっと魚を皆さんに食べていただきたいということ で、いろんな形で、我々の言い方をすれば「魚食普及」ということですね、魚、魚介類 を皆さんに食べていただきたいということで、ずっといろんな活動をさせていただいて おりまして、もう一昨年、もうちょっと先になるんですか、「おさかな天国」という歌 が全国を席巻いたしまして、大変な反響を呼びまして、その歌を、ああいう企画をした のも私どものほうで企画させていただいて、紅白歌合戦でもちらっと出まして、当時す ごく歌と魚というものをアピールできたんじゃないかなと思っております。  ご用意いただいている資料の18ページのほうでも、これも、もうずっとかつてから 言われていることではありますが、こういうEPA、DHAをはじめ、タウリン、アス タキサンチンといろんな形で、食生活の中で魚介類というのは非常にメリットが大きい ということは、おおむね皆さんご理解いただいていると思うんですけども、今回のこと で、さらにこういったことをまず前面に押し出していただいて、魚介類は非常に食生活 の中で重要な位置を占めているんだという中で、妊婦さんについては多少の注意をいた だければということで公表されて、それは冷静に受けとめられているという現状に今あ るのかなと思っています。  我々としましては、こういう日本の食生活の中では伝統的な食材ということで、魚介 類というのはずっと食されてきておりますし、これからも、日本の場合は大体300種 類ぐらいの水産物が食用に供されているということで、いろんなものを食べることがで きますし、それを我々としてはずっと資源を大事にしながら、皆さんに供給していくよ うに努力していきたいと思っております。 【コーディネーター】  ありがとうございました。それでは次に、食生活ジャーナリストの村上さんから、よ ろしくお願いいたします。 【村上氏】  村上です。私は長く新聞現場で食生活全般を担当して、その後大学に移って食と健康 の情報を専攻して、主に教えたり研究したりしておりまして、きょうはそういう食生活 と情報のあたりからちょっと気づいたことをと思って参りました。  この魚の水銀問題は、一昨年の6月に最初に発表になった、このときはキンメダイが 主役、マスメディアではもう専らキンメダイ、キンメダイで主役で報道されましたけど も、まさに今おっしゃったように、大変その後、不買現象などがございまして、マスメ ディアの伝え方があまりにも不安をあおるようなやり方だったのがいけないと、大変な 批判を受けました。  そしてその手前にある行政の発表の仕方にも問題があるんじゃないかという批判も出 たりして、それに早速、厚生労働省のほうでは対応して、いろいろどういうふうにコミ ュニケーションしていったらいいかという研究会を発足させるなど、非常に反応が早か ったんですけど、マスメディアのほうは果たしてというところが、とてもまだ心配でご ざいますけども。どんなふうだったかと、当時の報道ぶりを新聞はほとんど……。ほん とうに申しわけないんですけども首都圏を中心に私調べておりまして、こちらのエリア ではもっと冷静に報道されたのかもしれませんのに例を挙げるのは首都圏の例でござい ますけども、新聞各紙はまあそれほどセンセーショナルでもなく報じてはおりました。 ただ、ある全国紙は「妊婦さんギョッ」と片仮名で「ギョッ」と書いてあって、「週3 回御法度」なんて、何かやっぱりちょっとおどろおどろしい大見出しもあったりしまし て、その紙面をまた、このごろテレビのワイドショーというのは新聞からどんどん切り 抜いて報道しますね。あれ楽ちんでいいなと思いますよ。私ども苦労して書いた――新 聞におりましたから――苦労して書いたのをテレビはもうそっくりそのまま持ってっ て、おもしろおかしく報道なさる。うらやましいというか、それはそんな報道もござい ました。  新聞のほうはそれでも、それほどセンセーショナルと言われるほどでもなかったかと 思いますけども、テレビのほうはかなりおどろおどろしく、びっくりマークが幾つもつ いたり、それから何といっても水俣病を引き合いに出すケースが非常に多うございまし た。これはどうしても映像が欲しいわけですね。ところがあの場合は、今回のように準 備をする時間がなかったこともあって、映像だ、それ水銀だ、それ水俣の患者のVTR を持ってこいというふうにして、随分水俣を引用して。水俣の引用はまだしも、そのと きに、水俣のときの水銀レベルと今回の問題の水銀レベルとでけたが違うんだという、 その辺のだめ押しみたいなことをしないまま流している局が随分多いようでございまし た。  いずれにしろ非常に報道量が、質ももちろん問題でしたけど、量が多かったんです ね、前回は。なぜかというと、1つは魚と水銀ということについては日本人は過去にも いろいろあったので、非常に敏感であるということで、報道の立場からすればニュース 価値があるテーマではあると。それから今回の水銀が、先ほどもお触れになりましたけ ども、だれか公害で人為的なものではなくて、天然に、自然現象であったということ は、ある種やっぱりショックですわね。発がん物質問題として、人為的に入れた化学物 質じゃなくて、お魚の焼け焦げが怖いとか、ポテトチップスのアクリルアミド、ああい うものはやっぱり天然というか、長く食べていたものに危険があったということを知ら される、これがかなりショックなものですけども、お魚についても、今回は人為的じゃ ないということは一つ、実際ながらショックではあった。  それからもう一つは発表の特色としては、妊婦に対象が絞ってあったという、これも 割合に今までの公害問題の発表としてはちょっと珍しい。それから魚種、お魚の種類が 絞ってあった。  それから加えてもう一つおもしろいと思いましたのは、まあマスメディアがちょっと おもしろいと関心を寄せる要因としましては、お魚の重要性ですね。お魚は非常に健康 のためにいいんだから食べましょうということを、かなり最初のところに打ち出した。 これはちょっと厚生労働省としては異例というか珍しいことで、今までどちらかという と科学的にこうでありますよというところどまりのことが多うございましたね、発信情 報の中で。ですけど今回は、魚が重要だということを割合に早い段階で打ち出している のと、それから、じゃ、どういうふうに食べたらいいかという、食べ方のレベルまでお りてきて、週にどのぐらいという具体的な方法をお出しになった。これはやっぱり報道 側からすればおもしろい材料だということがございますわね。  こういうことがあって、かなり関心が強かったということは確かですけども、それに 続いて連鎖反応というか、続く現象として、先ほども触れた不買の現象、売れない現 象、暴落現象、それがあって、それをまた報道する。それをかなり大きく報道する。そ うするといよいよまたその売れない現象が拡大する。これはマスメディアの癖という か、特色、特性というか、ブームですよという報道をすると、それが報道されたことに よって、小さなブームですよという報道が実は大きいブームを呼び起こしてしまうとい う、こういう現象がちょうどブームと裏返しになるんですけども。じゃ、報道するなと いうことが言えるかどうかという、ここは非常にデリケートなところで、やっぱりニュ ースというものは、社会の私どものいる環境の変化を、いち早く知らせるということが 役目だとすると、その変化の一つとして売れない現象を見たりというので、それを報道 するということもありまして、それをするなということも難しいんでございますけれど も、その辺はちょっと今ここで回答するのも非常に難しいんですけど、そういうことも ございました。  で、非常に暴落の情報なんかも多くて、ただ、売れないという側面に一つ、消費者が いつも感情的にやたら不安がって買わなくなったというふうに、消費者のせいにされた りすることもよくあるんですけども、消費者の手前の流通の段階で魚を仕入れるのを恐 れる。マスメディアがあんなふうに報道したら売れっこないから、その売れないものを 買い入れるというリスクを避けたいというのもまた、これも一概に否とも言えないとこ ろですけども、それで売り場に並ばなければ、消費者はほんとうに買いたくなかったの か、それともないから買えなかったのか、その辺があいまいになるという、そういう難 しいところもございますけども、いずれにしろ非常に大きなニュースでございました。  ニュースが大きくなるかならないかというのは、リスクの大きさ、大小と比例はしな いんですね。この場合、食中毒で死者が出るなんていうほうが、ほんとうはリスクは大 きいわけですけども、食中毒の情報、ニュースは小さくても、このわずかばかりの水銀 で1,000分の1の聴覚の云々というレベルの問題は、非常に大きく報道される。これはつ まり、報道の基準、ニュース価値の基準とリスクの大小とは決してイコールではないと いうことでございます。それはいいか悪いかの問題は、もう少し別な次元で考えないと いけないと思いますけど、そういう現象がございますよね。  ともかく不安をあおった形になり、混乱を起こしたことによって、マスメディアも諸 悪の元凶、根源のように言われるんですけれども、それとその手前にある厚生労働省の 発表ぐあいがどうだったかということでも、早速発表内容のほうの検討を、特別研究会 というのをつくって、そこには社会学者とかリスクの専門家とか、公衆衛生の専門家と か、それから現場の新聞、テレビのジャーナリストたちが集まって、あの発表の仕方は どうだったのかというのを研究する組織ができて、そこで、今度発表するときにはどう したらいいかというチェックリストをつくったりして、わりとそういう対応は行政のほ うが早かったんじゃないかと。  新聞、テレビのほうはどこまで反省をしたのだろう、学習はしたのだろうかというこ とになるんですけども、じゃ、今回の発表の報道の仕方はどうだったかということです けども、今回の場合も申しわけありませんが首都圏の新聞というか、東京を中心という か、首都圏の新聞とテレビの調査で申しわけないんですけども、それで見た限り、新聞 は以前とそう変わりませんで、静かといえば静かでございました。それからテレビのほ うはどうかというと、今度は水俣はほとんど、私の知る限り相当な局を調べて、毎時ニ ュースを全部ピックアップしてあるんですけども、水俣は触れませんでした。そして、 中には妊婦のCG、コンピューターグラフィックスで妊婦の体があって、そこに子宮の 中に胎児がいて、その胎児にどんどん何か入っていくという様子を示すとかそんなのあ りましたし、それから超音波で胎児の様子を調べるという映像もありました。やっぱり テレビは映像がどうしても欲しいので、そういうものを用意したわけですね。今回はい つごろこういう発表があるだろうということをメディア側はある程度知っていたので、 用意したかと思います。で、妊婦たちの集まりでおなかの大きい若い女性たちが数人い るところをもう取材してあったりして、発表が午後2時、夕方でしたね、正式発表は。 夕方? 【中垣厚生労働省食品安全部基準審査課長】  2時から5時の会議で。 【村上氏】  そうですね、2時から5時、私も出てましたけど、会議があって、その後の発表で、 それでもうすぐにその夕方からどんどん流れている中に、その映像もございました。で すから、やっぱりちょっと映像の準備ができる時間、余裕があるかどうか。それはニュ ースの緊急性にもよるわけで、今回のようにきょうの朝でなければ絶対というのではな い場合は、少し余裕が事前にあると、知らされていると随分違うんじゃないかという気 もいたしました。  ただやっぱり少しテレビは何といっても速報性で慌てるんですね、せわしないという か、せっかちというか、それがまあ性質なんですね。で、夕方のNHKのニュースなん かに胎児のという、「胎児」が鬼退治の「退治」になったスーパーが出たりしまして、 やっぱりテレビは忙しいんだなということで、かのNHKでもしょっちゅうスーパーの 字が間違って、新聞はそういうことはちょっとありませんよね。というのは新聞は1日 に2回しか出しませんし、それから印刷媒体ですから大勢の目が通ります。校閲なん か、非常に新聞の校閲は誤字、脱字に厳しいんですよ。でも、もちろん間違いはあるん ですよ。訂正ということはしょっちゅうしますけど、単純な間違い、胎児を鬼退治はま ずないだろうと思うんですけど、それだけテレビというのは速報性のゆえにいろいろ問 題もあると。  しかし危険情報について、やっぱり行政は緊急周知の義務、急いで大勢に知らしめる 義務というものがございますから、それにはテレビというものは非常に重要な役割を果 たさなきゃならないので、テレビの側もしかり、それから行政の側もしかり、その辺を きちっと、リスク情報についての体制というのは考えなきゃいけないんじゃないかと思 います。  最後、テレビのことばかり申し上げて、新聞も含めてですけれども、マスメディアも こういう危険だという情報に対する批判は、今はもう真摯に受けとめざるを得ない状況 に来ている。つまり、こんなにインターネットその他のメディアが多くなったときに、 マスメディアに対する批判というものをきちっと受けとめないことには、みずからの生 き残りが危うくなる時代だという、そういう自覚をそろそろ始めていますので、その辺 はこれからほんとうに真摯に受けとめていかなきゃいけないんじゃないかと。  今回先ほどの2回目の報道がそれほど大げさでなかったのは、ほんとうに学習したの かどうかということになると、ちょっと心もとないので、これもマスコミの性質の一つ ですけども、ニュースの相対性という言葉があるんですけども、ほかに大きなニュース がないと静かだとか、今回は選挙でおもしろいニュースがいっぱい多いから静かだった のかもしれませんし、もう一つは先ほど申し上げたリスクの大小よりも関心の度合いが 別なところにあるということからすれば、前回の大騒ぎに比べて2回目だと、もう出す ほうも受けとめるほうも免疫ができていて、なれが少しあると。そんな事情があって、 また第二のキンメダイみたいなことが起こらないなんていうことは、とても保証はでき ない。しかし、さっき申し上げたように、リスクコミュニケーション自体のありようと いうものを、やっぱり考えていかなきゃいけないんじゃないかと思います。 【コーディネーター】  村上先生、ありがとうございました。  今、お二人のパネラーからお話をいただきました。高浜さんのほうからは、2年前は キンメダイにターゲットが当てられて、価格が下がるという風評被害をかなり受けまし たと。しかし8月12日の発表から今まで、現在のところさほど影響が出ていないと聞 いていますというご報告がありました。それについては、安全委員会や厚生労働省のほ うからの、このリスクコミュニケーションの取り組みによって、情報が正確に伝わっ て、一般の人たちの理解が進んだのかなと感じているというお話でありました。また、 全国漁業協同組合連合会では魚食の普及活動をこれまでも積極的にされてきていまし て、今回も水銀に関する注意事項ではありますが、魚食のメリットについても記載され ているというようなお話がありました。  村上先生のほうからは、報道のされ方というところで、前回と今回の報道の違いなど もお話がありましたが、その報道というか、情報の伝達の、メディアの伝え方と厚生労 働省側の伝え方という、2つの視点からのお話があったかと思います。そしてまた、そ のメディアのほうの伝える側としては、リスクの大きさとニュース価値の大きさが決し て比例するものではないというお話があったかと思います。  ということで、メディアの立場ということと、あとその漁業関係というところの立場 でお話をいただきましたが、この2つの話題を中心としまして、何かフロアからご意 見、それから質問等ありましたら挙手をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。  もしなければ、今はメディアの立場と、あと漁業関係の立場のほうからお話をいただ いたんですが、ここのパネラーの中には消費者の立場の方が今回入っておられませんの で、今、消費者の立場でおられる方からのご意見などを伺うことができてないんです が、フロアにおられる方で消費者の立場でおられる方、もしよろしければ何かご発言い ただけないかと思うのですが。挙手を……。 【参加者1】  消費者の立場以外でも構わない? 【コーディネーター】  全然大丈夫です。どうぞ。 【参加者1】  私、日本流通産業の者ですけど、我々共同仕入れ会社で、各スーパーさんで聞いてい る限りにおいて、今回、別にマグロが売り上げ下がったという報告は受けてません。そ れは冷静に皆さん受け取っているので、それは別に妊婦さんということに限定している ので、それは何の問題もないと思ってます。ただ、きょうは気にかかるのは、ちょっと 教えていただきたいんですけど、資料2で、特に厚生労働省のほうにお聞きしたいんで すけど、資料2の9ページの18、検査対象の魚介類ということで、総水銀とメチル水 銀を測定されてるんですけども、きょうは審査課のほうが来られていると思うんですけ ど、厚労省の方、そうですね? このデータのことでお聞きしたいんですけど、よろし いですかね。いいですか? 【コーディネーター】  はい。 【参加者1】  総水銀0.4ppm以上、メチル水銀0.3ppm以上と書いているのは、これは昭和48年の暫 定規制値のことですね。その規制値が総水銀0.4、メチル水銀0.3と書いておるんですけ ど、下のデータを見ると、それを大幅に超えている高い魚介類を対象として書かれてあ るわけですね。ということは、昭和48年のあの数値は、設定はされてますけども、実 際現実論として、このような出てきたデータとの兼ね合いはどうなるんですかね。それ をお聞きしたいんですよ。 【コーディネーター】  それじゃ、中垣課長、お願いします。 【中垣課長】  今ご紹介いただきましたのは、昭和48年に水銀の暫定規制値というのを出しており ます。具体的には参考資料の問の17でございますから、15ページをごらんいただき たいと思います。15ページに問の17というのがございまして、ご紹介いただきまし た昭和48年の規制がございます。総水銀で0.4ppm、メチル水銀で0.3ppmとなっておる わけでございますけども、ここでただし書きがございまして、「マグロ類、内水面水域 の河川産の魚介類、深海性の魚介類を除く」となっております。すなわち当時から、こ れらのものについてはいわゆる食物連鎖、小さい魚を大きい魚が食べる、その魚をまた もっと大きい魚が食べていくというような形で、水銀が自然に蓄積していくということ があるということから、このただし書きがございまして、今回の注意事項、あるいは1 5年6月の注意事項というのは、このただし書きへの対処をどうするのかという点が基 本となっておるわけでございます。食品安全委員会に安全性を評価していただいたとこ ろ、幸いにも妊婦ということでございましたので、そういう意味でこのただし書きと妊 婦との関係について、注意を呼びかけておるということでございます。 【コーディネーター】  よろしいですか。はい、どうぞ。 【参加者1】  済いません。妊婦の方はわかるんですけど、このただし書きのことで事足りるので、 これはそのまま設定はただし書きつきでやるということですね。変更はしないというこ とですね。 【中垣課長】  変更する考えはございません。すなわち、ここのただし書きを取ってしまえば、現実 的に申し上げますと、今回注意事項の対象となっておるような魚というのは流通できな いというようなことが起きてしまうわけでございます。じゃ、そのような規制をする必 要があるかと言われますと、先ほど来ご紹介したような安全性評価の結果、妊婦であ る、あるいはそのリスクというのも重篤なものではないということから考えますと、こ のただし書きを取ってしまうというような一律の規制をする必要はないと考えておると ころでございます。 【参加者1】  つまり、ただし書きを外せば一律の規制になって、魚介類が流通できないという理屈 ですね。ということは、数値を変えれば、このデータに基づく数値を変更することはあ りますかと私は聞いたのであって、あくまでこの数値を維持してということではなく て、今まで集めたデータの中でああいうふうに、こういう注意書きを呼びかけておった ら、その暫定値自体を変更しませんかということを私は尋ねているんです。 【中垣課長】  この暫定値の数値、ただし書きの問題ではなくて、それ以外の魚に対して暫定値をど うするかというご質問だということで、私が取り間違えて申しわけございません。それ 以外の魚についてもいろいろ測定し、今回の資料の中で申し上げますと、47ページか ら今回まとめた九千数百検体の数字を出しておりますけれども、数字を変更する必要は ないと、今回の注意事項以外のものについて数字を変更する必要はないんだろうと考え ておるところでございます。 【参加者1】  それで、この暫定値は日本では有効になりますけど、海外から魚を入れた場合は、そ れは有効としてその数値を使う必要性があるんですか。それとも海外から冷凍で仕入れ た魚の場合、これはどうなりますかね。 【中垣課長】  国内外で差はございません。 【参加者1】  要するに、海外でとれた魚を冷凍で日本に持ってきたときに、この暫定値にかかると いうことですね。 【中垣課長】  もちろんでございます。 【コーディネーター】  はい。よろしいですか。ありがとうございました。ほかに。  はい、どうぞ。 【参加者2】  きょう、ここの席をずっと見ていますと、消費者というのはあまり参加が少ないよう なんですけれど、私は消費者団体に入っておりまして、このようなお話があって私がき ょうここへ出させていただくというようなことを、ちょっとその席上で話をしたことが あるんですけれども、この前の発表で、それほどみんなの心の中ではあまり不安は、前 回ほどはなかったように思いますけれども、1日の消費量だとか1週間にどれだけとい うような発表をされましても、なかなか消費者はぴんとこない。そして今ちょっと申し 上げますけど、消費者団体に入っているのは大体妊娠をしない可能性の、いわゆる高齢 者ばっかりで、妊娠をする可能性のある方は消費者団体に入らなくて、スーパーなんか でお働きになっている方が多いと思うんですけれども、大体そういう方たちは新聞をご らんになるんですが、我々のような、いわゆる年金生活者のような者で構成されておる 消費者団体の中では、あの発表では頭にぴんとこないということが多くて、何グラムな んて言われてもあまりぴんとこないと。だからお刺身一切れ当たりが何グラムぐらいだ から、1週間に何切れぐらいというふうに言ってもらうとぴんとくるけれど、あんなふ うに今回の発表ではぴんとこないなということと、それから比較的あまりセンセーショ ナルにみんなが騒がないのは、お若い方は魚よりも手っ取り早いお肉のほうに走ってお られるんじゃないかなと思います。  それで、いわゆる魚でも最近は切り身で簡単にというのが多いんですけれど、そのと きに今回の発表のようなときは、一番手っ取り早くだれでもわかるのが平均的な切り方 の刺身だと思うんです。それでマグロの場合の平均的な一切れが、大体、縦横何センチ ぐらいの大きさで、何グラムぐらいと考えるので、それを1週間とか1回に何切れとい うふうに、もう少し消費者の生活に即した発表の仕方をしていただくと、よりみんなは わかるんじゃないかなというのを、ちょっとこの前、話が出ましたので、お願いしてお きたいと思います。 【コーディネーター】  今のは魚の摂取量の表現の方法について、まだ消費者には伝わりにくいというご指摘 だったと思うんですが、課長、お願いします。 【中垣課長】  2点ご指摘いただいたと思っています。一つには妊婦にどのような形でアプローチし ていくのかということだろうと思います。実は今パンフレットを作成をしよう。保健所 の母親教室とか、そういう場で使えるような形で考えていこうというふうに、その用意 に入っているところでございます。先ほどご紹介したとおり、今回の注意事項の確定と いうのは、意見募集をし、その意見をまとめて聞いた上で再度審議をして確定をする。 そこからパンフレットを正式につくっていくという形で考えておるところでございま す。  2番目に具体的なイメージがわかりづらい、ぴんとこないというご指摘でございまし た。このご指摘はそのとおりだろうと思います。15年6月のときにも同じようなご意 見も、あるいは調査研究班からもそういったレポートをいただいております。今回この 参考資料の2ページを見ていただきますと、表があって、妊婦が注意すべき魚介類の種 類とその摂食量の目安というのがあって、参考の1でマグロについて述べ、参考の2の ところに大体刺身一切れというのが15g程度ですよと。あるいは切り身一切れ、刺身一 人前というのは大体80g程度ですよと。この80gというのは大体切り身、あるいは刺身 一人前ということで述べておるわけでございますが、それでもわかりにくいんだろうと 思います。パンフレットをつくっていく中では、少し写真を使うとか、そのような形で よりぱっと見た形、ぱっと、ぴんときていただくというようなところに頑張ってみたい と思います。  ありがとうございました。 【コーディネーター】  ありがとうございました。ほかにありませんでしょうか。  消費者の方からも今ご意見いただきましたけれども、妊娠の可能性のありそうな若い 女性も、こちら側にいるとぱらぱらとは見受けられるんですが、何か感じられたことな どありませんでしょうか。どうぞ。 【参加者3】  個人的な興味で申しわけないんですけれども、バンドウイルカとかコビレゴンドウと いうのは食べるんでしょうか。 【コーディネーター】  水産庁、漁協、どちらか……。 【丹羽水産庁漁場資源課生態系保全室長】  水産庁の丹羽と申します。地方によっては食べられているというようなことだと思い ます。この摂食指導といいますか、注意事項の範囲は日本全国ということですので、そ ういった意味で首都圏なり大阪ではあまりなじみがないということでも、場所によって はということだと思っております。 【コーディネーター】  高浜さん、もしよければ。 【高浜氏】  地域によっては、イルカを非常に好んで食べる地域もあるんですよね。市場なんかで イルカが上がって、それで処理しているような市場もございまして、それをなりわいに している、そういったイルカをとることをなりわいにしている漁業者もおりますし、最 近はこういうご時世なもんですから、少なくはなってはいるんですけども、そういう食 文化というか食生活をしている地域もあるということです。 【コーディネーター】  よろしいですか。  ほかに何かありませんか。ほんとうに素直な、実直な疑問等、言っていただければ と。 【参加者2】  今の補足なんですけれども、主人の田舎は広島なんですが、あそこは夏の祭りにはワ ニというお刺身を食べるんですけれども、それはイルカなんですよね。それで夏祭りに は絶対ワニが欠かせないんですよ。そうするとあちらのほうは大国主命の伝説に出てく る、ウサギが丸裸になってワニザメにどうのこうのというのがあるんですけれども、あ ちらに近い方向でワニザメがウサギをむしったとかどうとかというのは、イルカの話だ と思うんです。やっぱり所によっては今でも重要なお祭りの、ものすごくおいしい食べ 物になっております。 【コーディネーター】  魚食といっても、先ほど300種類ほどが今日本の中で流通して、それぞれの地域で 食文化がありますので、食べている魚の種類も違うとは思うんですけれども、イルカも 食べている地域があるというお話でした。  ほかに何かありませんか。  きょう、厚生労働省ではないですけれども、保健所に関係する食品衛生の方もお見え になられているんですけれども、消費者に向けてメッセージを発する立場であると思う んですが、何かご質問等ありませんでしょうか。  はい、お願いします。 【参加者4】  消費者の方に発するということではありませんけども、東大阪市保健所の者です。こ の参考資料の中で見せていただいて、それと今回のリスクを見せていただいたんですけ ども、市中に出回っている、特にクジラ関係の肉に関しまして、種類を書いているのは 実際、見受けることは一般にはないと思います。例えば何とかクジラであるとか何とか イルカであるとかではなく、あくまで一律的に鯨肉であるとかクジラ肉と書いてあるだ けですので、このような細かいものを設定したとしても、なかなか実際購入される方 々、一般市民の方にはちょっと判断つかないのではないかという疑問点があります。  それと、一番最後のページのところなんですけども、対象外とした魚介類の中にメル ルーサが入っているんですけども、メルルーサというのは一般にメルルーサとして市中 に出回ることはないと思うんですけども、多くの白身魚フライの原材料となっているこ とが多いと思います。名前出してあれなんですけども、マクドナルドのフィレオフィッ シュ、これはたしかメルルーサだと記憶しております。一般に、妊娠されるような可能 性のある若い女性は、ファストフードを好んで食べますので、当然、極端なことを言い ますと、一般に鯨肉よりもこのような白身魚のフライを喫食することが多いのではない かと思うんですけども、この辺、なぜ対象外とされているのかちょっと疑問に感じると ころであります。 【コーディネーター】  それでは、表示のことに関しましては水産庁、クジラの表示……。 【丹羽室長】  直接担当ではないんですが、加工食品等含めまして、表示のほうは種名で書くという のが原則になっているはずでございますので、今言われましたクジラの何か加工食品な りがあったときに、本来であればその種名を書くと。何とかクジラとか、というのが原 則になっていると思います。そういうのが今のJASのやり方ということだと思いま す。 【コーディネーター】  ありがとうございます。そしたらメルルーサ、加工食品について中垣課長、お願いし ます。 【中垣課長】  メルルーサのご質問についてお答えします。ご紹介いただいてますのは、参考資料の 一番最後のページ、79ページだろうと推測をしております。78ページからごらんい ただけるとありがたいんですが、4番、検討対象の魚介類というところで、先ほどご指 摘いただいた、魚介類における総水銀濃度が0.4ppm以上、メチル水銀0.3ppm以上を一つ の目安としたということが書かれておって、そこに一覧表がございます。そしてなお書 きがあって、この0.4ppm以上、メチル水銀0.3ppm以上に該当するんだけれども、何らか の理由で除外したというのが79ページに載っておるわけでございます。この一番最初 のカラム、アオハタ、アカガレイのところの一番最後にメルルーサ(加工品)となって おるわけでございます。このご質問だろうと思います。このメルルーサの加工品という のが、おっしゃったようなものなのかどうかというのは、今、手元に資料ございません のであれでございますが、1件だけ測定したデータがあるというような現状でございま す。この検体数が少ないというのは、また今後とも調査をしていかざるを得ないんだろ うと考えておるわけでございます。  具体的に申し上げますと、今回一部のマグロ類を注意事項の対象としたわけでござい ますが、15年の6月の時点で申し上げますと、クロマグロ、メバチ、ミナミマグロな どについて、大体1つの魚種ごとに10件前後のデータしかなかったわけでございます が、それから1年間ぐらいのうちに、水産庁のご協力も得て調査をして、大体それぞれ 100件程度ぐらいの検査をして、今回食品安全委員会の評価結果で、従来使っておっ た3.4という耐容量が2.0に引き下げられたということもあって、このような形で案を提 示しておるところでございますが、いずれにいたしましても、調査をする。調査件数を 増やす、一定の科学性を持たせるということが必要だと考えておりまして、今回でそう いう意味では終わりではないんだと。引き続いて不十分なものについては、詰めの作業 を行っていくということで、考えておるところでございます。 【コーディネーター】  よろしいですか。ほかに何かありませんか。 【参加者5】  神戸の中央市場の水産係の者です。私は前回はまだ、その例のキンメのときには市場 にはいなかったんですが、非常に問題になったということで、卸も仲卸も大変困ったよ うです。小売りも大変困ったということです。今回は非常に上手に、その前にアナウン スを何回か一、二回、農水なりがされてたと思うんですけども、非常にうまく軟着陸し ていただけました。私たち荷受けなり、仲買なり、小売りなりに、いろいろ土曜日に関 西では新聞が出たんですが、次の日がちょうどお盆休みであって、その休み明けに小売 りさん何軒かとそれから仲買の太物関係にいろいろ聞きましたけども、今のところ、全 然問題がないというふうなことでした。まもなく、今度はもう一つ、水銀以外に例のも う一つの物質が出てくると思うんですけども、そのときも何とか上手に軟着陸していた だきたいと、そういうふうに思ってます。 【コーディネーター】  今現在のところ、関西のほうでもあまり影響が出ていないということで、これからも 新たに出てくる問題に対しては、インフォメーションを正確にしていただきたいという お話だったと思います。  ほかに何か。はい。後ろの女性の方お願いします。 【参加者6】  済みません。岸和田保健所の保健師です。今妊婦さんの声がなかなか届かないという ことで、私たち母子チームですので、妊産婦の家庭訪問している者ですので、静かな反 応は確かにあります。この、最近8月以降生まれた赤ちゃんのお母さんたちは、妊娠中 に食べてたんだけど大丈夫でしょうかという相談、自分たちでどこかに聞くことはでき ないけども、保健師が訪問したり、4カ月健診の中で、やっぱりちょっと気にはされて いるという声をちょっとお届けしたいなと思いまして、今、手を挙げさせていただきま した。パンフレット等つくっていただけるということですので、早急に保健所のほうに もお願いしたいなと思うのと、あと私たちがきょうのこの資料を持ち帰って、確認して また妊婦さん等に伝えていきたいと思いますので、またよろしくお願いいたします。 【コーディネーター】  今のお話は、今、出産を終わったばかりのお母さんから少し不安の声が、相談を受け ていますということだったんですが、その産んでしまった人たちへの影響などの説明も 必要になっていると解釈してよろしいんですか。 【参加者6】  済みません、妊婦さんも育児のことが精いっぱいなので、大丈夫でしょうかというこ とで、私たちもわかる範囲で、そんなにたくさん食べなかったら大丈夫ですよという範 囲でお答えすれば、一応は安心はしてくださっている程度で、そんなにすごく深く悩ん でいるということはないんですけども、やっぱり大丈夫かなという不安を持ちながら大 変な育児をしていらっしゃる方がたくさんいらっしゃるというのを、なかなか届きにく い声だと思うんですね、一人一人のお母さんたちの声ですので。それでちょっと代弁と いうことで、お伝えさせていただきたいなと思いました。 【コーディネーター】  中垣課長。 【中垣課長】  感想みたいなことを2つ述べたいと思います。一つは、今回の場合ですと、8月12 日の午後2時から会議をやって、5時過ぎ、5時半近くまで会議をやって案がまとまっ たわけでございます。訂正等がございましたのでそこから1時間ぐらいで正式な文章に して発表したということで、それが正確な時間の経緯でございますけれども、村上先生 の話ではございませんが、一斉に、テレビ等が報道を始めていく。一方では、今、保健 所の方にご発言いただいたわけですが、保健所の方などに情報が届かないというのが、 一つのギャップとして生じてしまうわけでございます。そのために今回は、今お手元に ございます参考資料の2に当たる、この80ページぐらいの資料なんですけれども、こ れを8月12日の夕方の7時にはホームページにアップをして、ホームページにアップ をしたということを各都道府県の食品衛生担当部門まではファクスを流した。そこから 先が、何しろ7時の話ですから、どのような形でたどり着いていったのか、もちろん、 都道府県だけではなくて消費者団体の連合会でございますとか、魚の業界団体でござい ますとか、そういうところにも同時にお伝えをしたわけでございますけれども、時間の 差のギャップの問題が、まだまだ我々としても今後改善を図っていく一つの点なのかな と考えておるわけですけども。一方では、ホームページに発表してから2日間で、1万 件弱のアクセスがあったと記録されております。そういう意味から申し上げますと、ど のような方が見たかというのは分析できないわけでございますけども、少なくとも1万 人近くの方が2日間の間にごらんいただいたという意味では、ホームページに早急に必 要な資料を掲げるということも有意義なのかなと考えておるところでございます。  もう1点は、特に現場の方々に対して、わかりやすい情報をいかに発信をするかとい うことが我々の課題だろうと考えておるわけでございます。もちろん、その情報をつく るまでがいかに科学的でデータに基づき、証拠に基づくかというのが大前提になるわけ でございますが、それをわかりやすく発信をする努力というのが必要なんだろうと思っ ておるわけで、今回は研究班の先生方にご協力をいただいたわけでございますけども、 まだまだぴんとこないというご指摘も賜っておるわけでございますから、そのあたりも 今回の発表のやり方というのもまた分析をしてもらって、さらに今後に生かしていきた いと考えている次第でございます。感想で申しわけございません。 【コーディネーター】  ありがとうございました。ほかに何かありませんか。資料もかなり分厚いものなんで すけれども、資料等見ながら、わからないことなどありましたら。  はい、どうぞ。 【参加者7】  食品安全委員会が出された、45ページなんですけども。 【コーディネーター】  済いません、もしよければご所属を。 【参加者7】  大阪府の保健所に勤めてますけども。  一番上のほうなんですけど、フェロー諸島における前向きな研究ということで、日本 人も魚介類を摂取しますので、こういった胎児が、やっぱり水銀による健康被害が起き る可能性があるのかどうか。どういった状況にあるのか、ちょっと考え方をお聞きした いんですけども。 【コーディネーター】  西郷さん、よろしくお願いいたします。 【西郷食品安全委員会事務局リスクコミュニケーション官】  食品安全委員会でございます。ありがとうございます。フェロー諸島の前向き研究と いうのは、ここで生まれた方を次々調べていって、フェロー諸島というのはアイスラン ドの近くのデンマーク領の島でございまして先ほどもお話ありましたけれども、非常に 水産物をたくさん食べる、クジラなんかをたくさん食べます。メチル水銀の摂取量が非 常に多いということがあって、実際どのような影響が出ているかというのを長いこと調 べて、赤ちゃんが生まれて7歳になったときとか、あるいは14歳になったときにいろ んな試験をします。ただ、いわゆる重篤な神経症状が出ているとか、そんな話ではなく て、例えばパソコンに丸がぽっと出たらそれを押すまでの反応時間を調べたり、あるい は小さい子に「これと同じ絵を描いてごらん」と言って、うまく描けるかとか、あるい は動物の絵を見せて「これは何?」という質問に答える早さはどうかとか、そういった のをやるわけですね。なので、基本的にはそれでもって差が出ているとか出ていないと いう議論もいろいろあって、試験の方法によって大分違うのが出てくるのでございます けれども、フェロー諸島のほうでは若干影響があったのではないかという結論になって いるということです。  もう一つ、セイシェルというインド洋の島、これはたくさん魚を食べるところであり ますけれども、そこでは逆にほとんど影響が出ていないという結果になっているわけで す。それで、その辺が非常にまだるっこしいところではあるんですけど、どっちかわか らないということなんですけれども、評価の先生方にいろいろ検討していただくと、両 方とも正しいんだろうと。なので、その影響が出ない点と影響が出る点というのは近い ところにあるんじゃないかという議論になりまして、両方を折衷した形の評価になった と。これは国際評価機関における考え方とほぼ同じ形をとったということです。ですの で、ここに書いてありますことでございますけども、ゴンドウクジラを食べて、みんな が見てわかるぐらい、健康にまで影響が出ているということでは全くないということは ご理解いただければと思います。 【参加者7】  我が国においてそういった調査というのは……。 【西郷リスクコミュニケーション官】  我が国でも少し行われているようです。ただ、これは非常に時間がかかる研究で、例 えば、これは評価に当たられた先生がこぼされているんですけども、東北大学でやって いらっしゃるんです。ただ、赤ちゃんが今度生まれたから、お母さんに、例えば一月 後、あるいは2年後、あるいは何年かごとにずっと追跡調査をさせてくださいというこ とを言うと、大概途中で、何年か後には引っ越されてしまうとか、そういった点でフォ ローができなくなってしまう例が非常に日本の場合は多いのと、それからやっぱり水銀 を調べますと言うと心理的に嫌がる方もたくさんいらっしゃるということで、なかなか うまくできないんだそうです。  それと、もっと先生方がおっしゃっているのは、これは私ども、考えなければいけな いんですけども、研究の予算というのは1年1年とっていくものなんですね。これは、 7年後とか14年後とかまで、ずっと計画を立てたそういうプロジェクトというのはな かなか実現しない、公衆衛生のほうでは、非常に昔からそういった問題があるというこ とを先生方はこぼされているということです。ただ、先生方も、日本のデータが何もな いということでは困るということもあるので、少しずつではございますけれども、デー タを集められているという状況だと聞いております。 【コーディネーター】  じゃ、中垣課長、補足をお願いします。 【中垣課長】  1点追加をしたいんですが、このフェロー諸島の前向き研究では、14歳まで、要す るに妊婦、妊娠されたときに登録をして、生まれた子供と母親を14歳までフォローし ているという膨大な研究でございます。確かにこれでは水銀の影響が見られて、今ご説 明があったような影響が見られているわけですが、その影響はあくまで水銀の量との関 係でございまして、妊婦の髪の毛に含まれる水銀の濃度を指標にしておるわけでござい ますけれども、妊婦の髪の毛の水銀濃度が11ppm以下であれば影響は見られないという ことで、その11ppm以下に抑えるために、どの程度魚をとったらいいかという議論にな っておるわけで、また日本人で髪の毛の水銀濃度を数千人について調べた方がおられま すけれども、そのデータによると、日本人の女性の髪の毛は99%程度の人が11ppm以 下だということでございますから、そういう意味で申し上げますと、今、我が国で、現 在進行形として水銀の影響が出ているというような状況にはないのではないかと考えて いるところでございます。 【コーディネーター】  よろしいですか。ほかに何かありませんか。  はい、どうぞ。 【参加者8】  泉佐野保健所の者です。素朴な疑問であれなんですけども、以前ニュースの養殖マグ ロの件で、養殖マグロは脂身が多くて、水銀がよく蓄積するんじゃないかというのを見 たんですけども、魚介類の水銀の蓄積量について、天然のものと養殖のもので違いがあ るんでしょうか。 【中垣課長】  その点につきましては、水産庁に分析をしてもらったデータを公表しております。簡 単に申し上げますと、養殖と天然で差はない。少なくとも分析した限り、差は見られて いません。 【コーディネーター】  よろしいですか。何かほかにありませんか。  難しく考えず、わからないことはこの場で解決して、正確な知識を皆で共有するのが 大事だと思っているんですが、皆さんすべてご理解できたと解釈してよろしいのでしょ うか。何かありませんか。  それでは、フロアから何もないようなので、パネラーのほうから一言ずつお話をいた だいて、そうしますと多分ちょうど時間となると思いますので、終了させていただきた いと思います。  それでは、一番左の西郷さんのほうから、よろしくお願いいたします。 【西郷リスクコミュニケーション官】  どうもきょうはありがとうございます。私ども食品安全委員会はリスク評価機関とい うことで、いわゆるリスクがどうなったかといったことを、今回の場合であれば厚生労 働省から評価しろということをいただきまして、1年にわたって議論をしてきたという ことでございます。  それで、要はこういうお話は、科学者が議論するものですから、えらく難しい話にな りがちなわけですね。それで、先ほどリスク分析のご説明がございましたけれども、な るべくわかりやすくということでのご説明は今後ともやっていきたいと思いますが、や はり皆様こういったことに興味を、難しい水銀の話だからと評価そのものには関心があ まりいかないと。魚がどうなんだということももちろんそうなんですけども、どういう ふうなことで、どういう理屈で行っているのかといったことについては、若干興味を持 っていただければありがたいなと思います。そのためには十分資料も準備したいと思い ますし、そういうことで、みんなでリスクをどういうふうに下げていくかというのが基 本になっていくと思いますので、とっつきにくいかもしれませんけども、食品健康影響 評価、パブリックコメントでもあったら、いろいろお寄せいただけばと思っておりま す。よろしくお願いします。 【コーディネーター】  ありがとうございました。それでは、次に水産庁の丹羽さん、お願いいたします。 【丹羽室長】  水産庁でございます。私どものほうはもちろん生産者、それから流通業者のところを 関知しているというところでございますが、農林水産省全体といたしましては、今回、 このリスクコミュニケーションの主催のほうにも名前が載っておりますように、消費者 を含めまして、全体的なリスク管理を行っているということでございます。今回の件に つきましては、先ほど来、村上先生のほうからもありましたが、マスメディアの方々の 取り扱いも非常に冷静だったのではないかということもございますし、それから先ほど 高浜さんのほうが、この資料の中で触れられましたように、あれは水産庁が出しており ます漁業白書の部分でございますが、やはり魚の有用性というところが消費者の方々含 め、国民一般の方々に非常に知れ渡ってきているというようなところで、前回ほどの大 きな問題には今のところなってないのではないかと思っています。この件がこのような リスクコミュニケーション等を通じまして、消費者の方々、それから生産、流通の方々 に混乱を起こさないように、今後とも農林水産省として万全を期していきたいと思って おりますので、ご協力のほどをよろしくお願いいたします。 【コーディネーター】  どうもありがとうございます。それでは次に全漁連の高浜さん、お願いいたします。 【高浜氏】  先ほどフェローとセイシェルの話がちょっと出てましたけど、セイシェルのほうはど ちらかというと日本人が食べている魚と同じようなものを食べていると言われてまし て、しかも数倍食べていると。そっちのほうでは全く水銀についての影響は出てないと いう研究評価になっているようでして、そういった意味では、魚を食べて水銀で云々と いうことは、まあ私は専門家ではありませんが、基本的にはないのかなと。日本はこう いう社会を形成してて、過去ずっと魚介類を食べてきて、それで今のような社会が形成 されて、水銀が急に増えたからどうのこうのという、そういうたぐいの話ではなくて、 あくまで過去からずっと有史以来そういったことがずっと繰り返されて、同じようなも のを食べてきて、それで今のような社会を日本では形成してるわけでして、急に水銀 の、急速に何か問題があるというようなことではないんだろうと思います。妊婦さんと か、私も子供がおりますけども、それはやっぱり自分の子供のこととなれば、気になる ものであると思います。ですからこういった公表されたものに注意しながら、食べてい ただければと思いますし、基本的には先ほどセイシェルのことも言いましたけども、日 本は幸いにして、いろんなたくさんの種類の魚を食べることができますし、体にもいい というふうに、いろんな専門家の方も公表されておりますので、ぜひ魚介類になれ親し んでいただいて、今後ともよろしくお願いしたいと思います。 【コーディネーター】  ありがとうございました。それでは村上先生、よろしくお願いします。 【村上氏】  リスクコミュニケーションといいますか、危険、リスクについての情報論からします と、この魚の水銀の問題は非常にいい学習材料ということだったと思います。これが厚 生労働省でも研究会をつくって検討しましたけども、例えば地方自治体でも、都庁でも 私も委員をしておりますが、やはりこのお魚の水銀問題ではこのコミュニケーションの あり方はどうであろうかという、これを材料に勉強会、研究会をして、ある程度まとめ を出したりしております。ですから、とてもいい材料であった。そして食品安全委員会 ができる直前ですけれども、ともかくリスクコミュニケーション時代を一歩前に厚生労 働省が問題を踏み出して、食生活にどうあったらいいかという具体的なところまでおり てきたという、ここのところではなかなかおもしろいことだったと思います。  で、マスメディアですけれども、今回はいろんな事情でわりと冷静だったのかもしれ ませんけれども、また別な件ではまたマグロ事件でなく、マグロでなくキンメイダイ型 の騒ぎを起こさないとも言えないのでございますけども、その際も批判はどんどんいた だいたほうがいいのかと思います。ただ、メディアに対する批判の中でも、批判なさる 方はもうそんなことは考えなくてよろしいので、何でも気づいたことをおっしゃってい ただければいいんですけど、メディアの側からしますと、すぐに改善できる部分があ る。それから長い慣習といいますか、報道の慣習で癖のようなものでなかなか簡単に直 しにくいけれども直したほうがいい問題と、それから、ここはもう外せないというメデ ィアの本質的な問題がございますね。例えば明るいニュースと暗いニュースがあったら どちらが先かといったら、もう絶対に暗いニュースを優先ですね。それが暗いニュース ばかり集めて流すので、メディアは不安をあおるというふうにも言われるんですけど も、それは優先順位がやはり危険な情報からということがございますとか、そういうあ る程度本質にかかわる部分と、それから先ほどの中間の部分と、それからすぐにでも改 善すべき部分、できるはずの部分とございまして、マスメディアの批判を受ける側とし ては、その辺をきちんと分けながら丁寧にご説明していかなきゃいけないとは思います よね。  でもいずれにしろ、マスメディア自身が今ちょっと危機感を持っております。もう行 政からは嫌われているし、一般の方たちからも支持をなかなか得られないでいるとい う、この危機感の時代に、このリスクコミュニケーションというものを、ほんとうに真 剣に考えなければならない時期に来ていると思います。そして、きょうのように意見の 交換会というのを、行政が一生懸命あちこちで始めておりますけども、マスメディアも みんなの意見を集めて、そこで討論するフォーラムの場みたいなものを積極的に提供し て、テレビの、あるいは新聞の上で忌憚のない意見を交換し合う場の役割も、もっと積 極的にしていくべきじゃないかと思っております。 【コーディネーター】  村上先生、ありがとうございました。それでは中垣課長、お願いいたします。 【中垣課長】  本日はどうもお忙しい中をお集まりいただいて、ありがとうございました。  今、村上先生からご紹介いただいた、研究会の報告書によりますと、正しい情報をと りまとめ、それが正しく伝達され、正しく理解されるように行政は努めるんだというよ うなことが書かれておるわけでございます。正しい情報というのは、あくまで科学的と いう言葉で読みかえてもいいんだろうと思います。データを収集し、分析し、今の時点 で何が言えるのかということを冷静に判断することが必要なんだろうと思います。もち ろん、その安全性評価の一端というのは、食品安全委員会にお願いする部分と、厚生労 働省でやる部分と2つから成っておるわけでございますが、あくまで科学的に、合理的 に判断をする作業が一つあるわけでございます。  次に正しく伝達され、正しく理解されるようというところでございますけども、我々 としてはデータの発信については、当然のことながらいろんな意味で今回も研究班のア ドバイスを得たわけでございます。例えば、タイトル。今回のタイトルというのは「妊 婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」となっておるわけでございます。役人的 に申し上げますと、「水銀を含有する魚介類の摂食に関する妊婦への注意事項」みたい な形になっていくわけでございますが、妊婦に限定をするという意味から申し上げる と、妊婦というのを最初に出すべきだというようなご示唆、あるいは魚介類の摂食と水 銀を対比させるというようなご示唆をいただいたわけでございます。  また、小見出しがついております。妊婦の方々へとか、子供や一般の方々へとかいう 小見出しをというアドバイスも受けたわけでございます。役所の文章にあまりこういっ た小見出しというのはない。もっと申し上げますと、役人は何々などというのを書くの が非常に好きなんです。また、正確に表現するためにはやむを得ないということもあり ます。具体的には、魚介類などとか、妊婦などとかということになりますが、そのよう なものがまた逆に不安感を引き立てるというようなご示唆もいただいて、今回は「など 」というのは基本的に使わないということを方針としておりますし、いろんな意味で1 5年6月の経験を踏まえてやってきたわけでございます。  しかしながら、今日もまたご指摘をいただきましたし、引き続いてこの研究班には、 今回の事例もまた分析をしていただこうと考えておりますし、役所としてはいろいろな 経験を積み重ねながら、もちろん、国民の健康を確保するというのが第一の目的でござ いますから、その目的に向かって努力をしていきたいと考えておりますので、率直なご 意見等を引き続き賜りますようお願いを申し上げたいと思います。  ありがとうございました。 【コーディネーター】  中垣課長、ありがとうございました。努力をされたということですので、平成15年 6月に出た注意事項と、今回の案がどのように変わっているのかというのを見比べてみ るのも、また、皆さん、ご理解が一層深まるのではないかと思います。  本日は長い間ありがとうございました。これで一応パネラー全部しゃべりましたの で、終了させていただきたいと思います。  それではよろしくお願いします。                    閉会 【司会】  以上をもちまして、食品に関するリスクコミュニケーションを終了させていただきま す。本日は長時間にわたり、また貴重なご意見をいただきましてまことにありがとうご ざいました。また、皆様のお近くで、テーマは違うかもしれませんけれども、こういっ た意見交換会を開催することがあるかと思いますけども、そういったときには、ぜひと もご参加をいただきたいと思います。  本日の意見交換会についてのアンケート、まだ、ちょっと時間ありますので、書いて いただいて、ぜひとも我々にアンケートの情報をいただければと。今後の意見交換会の 改善に役立つと思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。  それでは、皆様、お気をつけてお帰りください。本日はまことにありがとうございま した。                  ―― 了 ――