05/06/24 平成17年6月24日(福島県郡山市)「食品に関するリスクコミュニケー ション(輸入食品の安全確保及び残留農薬等のポジティブリスト制度の導入 についての意見交換会)」 食品に関するリスクコミュニケーション(輸入食品の安全確保及び残留農薬等のポジテ ィブリスト制度の導入についての意見交換会:福島県郡山市) 議事録                           平成17年6月24日(金)                  ビッグパレットふくしま コンベンションホール                   1 開会 ◎司会(森田情報管理専門官)  本日は、皆様、御多忙の中、御参加をいただきまして、ありがとうございます。ただ いまから「食品に関するリスクコミュニケーション」を開催いたします。  私、本日、司会を務めさせていただきます、厚生労働省食品安全部企画情報課、森田 と申します。よろしくお願いいたします。  本日、私、ネクタイしておりません。失礼と思われるかもしれませんけれども、クー ルビズということでノーネクタイ、ノー上着ということでやっておりますので、皆様も そういった形でやっていただければというふうに思います。  それでは、初めに配付資料の確認をさせていただきます。  封筒の中に資料が入っております。まず議事次第があります。それから今回の意見交 換会等の座席図。それから、資料1といたしまして「リスクコミュニケーションについ て」というもの。資料2といたしまして「輸入食品の安全確保について」。資料3「残 留農薬等のポジティブリスト制度の導入について」。資料4といたしまして、これは皆 様からいただいた意見と、それに対する回答というものでございます。  それから、1枚の紙でございますけれども、「意見交換会に参加いただいた皆様へ」 というもの。それから、食品に残留する農薬等のポジティブリスト制度の補足資料でご ざいます。「食の安全・安心トピックス」という1枚紙、「遺伝子組換え食品の安全性 について」というパンフレット。それから、東北厚生局のパンフレットと、「食のかわ らばん1」というパンフレット。最後に、食品に関するリスクコミュニケーションとい うことで、参加いただいた皆様にアンケート用紙をお配りしております。皆様からいた だいた意見を今後のリスクコミュニケーションの改善に反映していきたいというふうに 思っておりますので、ぜひともこれは御回答いただきたいというふうに思います。  不足の資料がもしございましたらお手を挙げていただければと思いますけれども、ご ざいませんか。  それでは、続きまして、簡単に本日の議事進行を紹介をさせていただきます。  議事次第の方を御確認をいただきたいのですけれども、まず東北厚生局長の小竹久平 から御挨拶を申し上げた後に、厚生労働省の食品安全部企画情報課の課長補佐・広瀬誠 から、リスクコミュニケーションについてということで10分程度、御説明させていただ きます。続きまして、厚生労働省の大臣官房参事官・松本義幸から、本日のテーマであ ります「輸入食品の安全確保について」と「残留農薬等のボジティブリスト制度の導入 について」を御説明いたします。説明時間はそれぞれ35分程度を予定しております。2 つのテーマの説明の間には5分程度、休憩をとらせていただきたいというふうに思いま して、説明の終了時刻といたしましては2時30分ごろを予定しております。  説明終了後、10分程度の休憩をとらせていただきまして、2時40分からパネルディス カッション及び意見交換会を行いまして、午後4時半を終了の予定としておりますの で、よろしくお願いいたします。                   2 挨拶 ◎司会  それでは、小竹・東北厚生局長から開会の御挨拶をいたします。 ◎小竹東北厚生局長  ただいま御紹介いただきました、東北厚生局長の小竹でございます。「食品に関する リスクコミュニケーション」の開会に当たりまして、一言御挨拶申し上げます。  この食に関するリスクコミュニケーションは、平成15年度から食品安全委員会、厚生 労働省、農林水産省が全国で開催しております「食品に関するリスクコミュニケーショ ン」ということで既に100回ぐらい開催しているわけでございますが、恐らくここに来 られた皆様方の中にも、リスクコミュニケーションというのはそもそも何だろうかとい う疑問を抱いている方がおられるかもしれません。かなり国民の皆様の目に触れたり聞 く機会も増えてはまいりましたが、まだまだこのリスクコミュニケーションという言葉 そのものが十分御理解いただいてないかなというふうにも感じております。  お手元の議事次第を見ましても、3番目に「リスクコミュニケーションについての説 明」というのが入っております。ここで私がリスクコミュニケーションとは何かという ことを説明してしまうとこの説明が無駄になってしまいますので省きますが、事ほどさ ように、リスクコミュニケーションとは何だろうかというのがまだまだ十分、国民の間 に浸透していないということを物語っているのではないかと思います。  東北では5月17日に、米国産牛肉等のリスク管理措置に関する意見交換会を仙台市で 開催したところでございます。これも、リスクコミュニケーションと銘打ってはおりま せんが、リスクコミュニケーションの1つでございます。  現在、日本における総合食料自給率は、カロリーベースで約40%、金額ベースでは70 %。自給率ですから、これを日本国内で賄っておって、残り、食料の多くは海外に依存 している、要するに輸入しているということになるわけでございます。また、輸出国と の規制の違いから、必ずしも日本の基準に合わない食品が検査等で見つかる事例などが たびたび報道されております。このような背景から、輸入食品の安全対策や残留農薬に ついての国民の関心は非常に高うございます。  このたび、輸入食品の安全性確保と残留農薬等のポジティブリスト制度の導入の2つ のテーマを取り上げさせていただきました。本日のこの会は、お互い立場の異なる方々 の存在を理解し、信頼関係を築き、社会的な合意形成の道筋を図るための出発点でもご ざいます。御参会いただきました皆様方と双方向の意見交換ができれば幸いと考えてお ります。  最後に、忌憚のない活発な意見交換がいただけますことをお願い申し上げまして、御 挨拶といたします。よろしくお願いいたします。 ◎司会  すみません。先ほど資料の確認のところで、封筒の中にこっそり入っていました「食 生活指針について」という小さな1枚ものがありますので、これもぜひともごらんいた だければというふうに思います。           3 リスクコミュニケーションについての説明 ◎司会  続きまして、広瀬・厚生労働省企画情報課課長補佐から「リスクコミュニケーション について」ということで御説明させていただきます。 ◎広瀬企画情報課長補佐  御紹介いただきました、厚生労働省食品安全部企画情報課の広瀬と申します。最初に 「リスクコミュニケーションについて」ということで説明をさせていただきたいと思い ます。  本日事前にいただいている質問の中にも、リスクコミュニケーションについてよくわ かりにくいので何とか日本語にならないだろうかというような御意見もいただいている ところです。専門の先生にもお願いして、リスクコミュニケーションを何とか日本語に できないだろうかということで、我が省だけでなく内閣府食品安全委員会や農林水産省 の方でもいろいろ検討されたのですが、結局いい日本語が見つからなかったという状況 で、この「リスクコミュニケーション」という言葉のまま、どういうものかを日本語で 説明していきましょうということになっています。これから少しお時間をいただいて説 明させていただきたいと思います。  リスクコミュニケーションに入る前に、食品安全行政を取り巻く動向の変化について 説明します。  (OHP使用)1つは、食品をめぐる環境の変化。今でこそ日本の国自体は、飽食の 時代といいますか、食料に困ることはなくなったわけなのですが、これはごく一部の先 進国に限られていることで、まだ食に困っている国がたくさんあるわけです。そのよう な中で、我が国的にも、大量生産であるとか大量流通、それから新たな食の問題の発 生。これは、いろいろな国からいろいろなものを輸入してきますので、現地で起きてい る食品の問題なども当然、我が国に直接つながってくる問題になりかねないわけでござ います。BSEなどもまさにその典型ではないかと思います。  それから、貿易の国際化や長距離輸送。いろいろな国、遠くの国から食品が運ばれ、 長距離輸送が普遍化しています。それから海外旅行にも大勢行くというようなことで、 食をめぐる環境というのは大きく変わっております。今、そのような状況の中でどうい う安全対策をとるべきなのかということで、国際的な考え方というのが、ここに挙げた 大きく2つでございます。  1つはフード・チェーンアプローチということで、生産から消費に至るフード・チェ ーンの各段階ごとで安全性を確保していくということが重要なのではないかということ です。昔の仕組みでは、物をとりあえずつくってみて、最後に安全かどうかという検査 をして、安全であれば良いのではないかという考え方が主流だったのですが、今は、各 段階ですね。農場の段階とか、流通している段階とか販売の段階とか、そういうところ できちんと安全管理をしていくことが最終的に、消費される製品の安全確保に役立つの ではないかということでございます。  もう1つはリスクアナリシスというものがあります。これは、事故が起きるまでは大 丈夫だろう、事故が起きてから対応するということではなくて、事前に安全性の評価と 管理をきちんとやるという、予防に重点を置くシステムでございます。1つは、安全性 の評価と管理を機能的に分離するということとか、利害関係者間で情報や意見の交換。 ここがリスクコミュニケーションになるわけですけれども、そういうことを推進してい きましょうということがございます。  簡単にリスク分析の説明をさせていただきたいと思います。  リスク分析は、国民の健康の保護を目的として、国民やある集団が危害とか被害とか を受ける可能性がある場合に、事故の後始末ではなくて、全部を未然に防ぐのはなかな か難しいのだと思いますけれども、可能な範囲で事故を未然に防いでリスクを最小限に していきましょうという仕組みです。日本の国の場合には食品安全委員会というところ が科学に基づいてリスク評価を担っているところで、もう1つ、リスク管理をするとこ ろとして私ども厚生労働省とか農林水産省というところがあるわけでございます。  安全委員会がリスク評価を行ったその評価結果に基づいて、いろいろ管理措置を決め ていく。例えば食品中に含有されるものの基準を決めるとか、表示についてやるとか。 農林水産省の方でも、農薬の使用基準を決めるとか、餌の基準とか肥料の基準を決める とかという規制をずっとやってきているわけでございます。  そのほか、これらすべてを包含するものとして、評価に至るもの。それから、管理に ついてもそうなのですけれども、リスクコミュニケーションをしましょうということで す。これは、安全に関する情報を共有して相互に意見交換をしましょうということ。そ れから、当然これらの関係者が皆関係して安全の仕組みというのが成り立っているわけ ですから、それぞれ関係者の意見を施策に反映していきましょうという仕組みでござい ます。  次に食品のリスクについてということですけれども、ここにありますように、食品中 にハザード、ハザードというちょっとわかりにくい言葉なのですが、具体的には、健康 に悪影響をもたらす可能性のある物質。例えば農薬ですとか、化学物質ですとか有害微 生物などというものがあるわけです。それから物質以外にも、放射能などの物理的要因 とか食品の状態などがハザードとしては考えられています。そういったものがある結 果、生じる悪影響の確率と、その程度の関数であるというふうに言われています。リス ク自体はもともと日本になかった概念なので、正確にイメージするということは非常に 難しいということでございます。  リスクを例えると、一番近い日本語としては「やばさ」ということになるそうです。 これは、やばいぞという、そのやばさというのが非常にリスクに近い概念らしいのです が、余り公の場では使えないというような状況でございます。  リスクというのはあくまでも確率事象、可能性の話でございますので、リスクがある からといってそれは必ず起きるということではありません。また、起きてしまったこと については、これはリスクではなくて、起きたという事実になりますので、そこは若干 違うということは御理解いただければと思います。  次に、絶対安全な食品はあるか。要するにゼロリスクはないということを説明したい のですが、ある物質が健康に悪影響を及ぼすのかどうかということは、その物質が持っ ている有害性というものと、それをどのくらい摂取するかで決まってくるわけでござい ます。  ということで、物質によって安全とか危険とかが決まるのではなくて、ある程度の有 害性がある物質があったときに、それをどのくらい摂取するかでリスクは決まってきま す。ほんの少しであれば危険でないものでも、大量にとれば危険であるというようなこ とがあるわけです。  下の米印で書いてありますように、どんな食品でも摂取量によっては健康に悪影響を 及ぼす可能性があります。ゼロリスクはないということを強調させていただきたいと思 いますが、ちなみに、健康に良いといわれている食品がございますけれども、これもと り過ぎれば当然、健康を害するということになりますので、それは御注意いただければ と思います。  次に、本題ということでリスクコミュニケーションとはということでございますけれ ども、リスクに関係する人たちの間で、食品のリスクに関する情報や意見を相互に交換 し合うということを言っております。有害性とか起こる確率というのはどの程度であれ ば社会的に受け入れることができるのかとか、どうすればそのレベルまでリスクを下げ ることができるのかなどについて関係者の理解を深め、ともに考えていこうという取り 組みでございます。この意見交換というのは、お互い対等の立場に立って皆さんで話し 合おうというものであって、一方的に、例えば主催者側からこれは安全ですというよう な宣伝をするとか説得のために行っているわけではないというものでございます。  次に、リスクコミュニケーションを難しくしている要因というのがございます。まず 1つは、「リスクの認知ギャップ」と上の方にありますけれども、実際そのものが持っ ているリスクというのと人々が感じる認知リスクの間には差があるというわけでござい ます。認知リスクというのは人が感じるリスクなので、受ける側の人の持っている知識 とか経験で当然変わってくるわけでございます。これは何も専門家とか素人とかという ことで分けられるわけではなくて、専門家の間でもそれぞれ皆さん背景として持ってい る知識とか経験が違ってくるので、当然、認知リスクには差が出てくるわけです。リス クがどの程度なのかということを評価する場合には、やはりそれぞれ皆さんの思いがあ るので、皆さんそれぞれある程度合意することができればこういうリスクなのだろうと 評価がまとまることになりますけれども、それに至るまでは、皆さんそれぞれ想像して いるリスクというのは違っているのではないかと思います。  リスクは目で見えるものではないので、例えば赤いリンゴというふうに私が説明をす れば大体皆さんは同じようなイメージを想像できると思うのですけれども、例えば何と かのリスクと言っても、非常に重大だと思う人もいれば、大したことはないと思う人も いて、当然、その方の知識や経験で変わってきてしまうわけです。それから、少し話が ずれるかもしれませんが、全く同じ説明をしていても、説明者によって受ける印象が異 なる場合があります。  もう1つ、下の段になりますが、食品の安全性についての思い込みというのがござい ます。これらの要因がリスクコミュニケーションを難しくしています。  それから、最近さらに輪をかけてリスクコミュニケーションを難しくしているのが、 我々に問題があるわけなのですが、国の信頼度そのものが低くなっているということも ありまして、国がやっているリスクコミュニケーションの取り組みについて、御理解い ただくのにちょっと苦労している状況です。  まず最初のリスクの認知ギャップについて、少し補足で説明したいと思います。  上の段に記載したものは、実際のリスクよりも少し大きく感じられるものということ で、これは未知なもの、よくわからないもの、情報が少ないものといったものがありま す。あと、自分でコントロールできないものとか。農薬などはまさにこの分類に入りま して、恐らく農薬が持っているリスクよりも、それを我々が受け取って感じるリスクの 方が非常に大きく感じられる性質を持っているということが言えます。  次、下の段になりますけれども、実際のリスクよりも小さく感じられるというような ものでございます。これは便利さや利益というのが明らかなものであるとか、自分でコ ントロールできるものなどがありまして、例えば自動車などがこの分類に入るわけです が、自動車事故というのは最近の統計ですと、昔に比べれば少し減っていて年間7,000 〜8,000人ぐらいの方がお亡くなりになっているそうですが、農薬とか添加物で毎年 7,000人も8,000人も亡くなっていたら大変なことなのですけれども、そういうことはな いわけなのですが、それに比べると農薬とか添加物のリスクというのはこういうものよ りも非常に大きく感じられる傾向があるわけでございます。自動車の場合ですと自分で コントロールできるとか気をつけていれば避けられるのではないかというようなことが あって、本来のリスクよりも小さく受けとめられているような傾向がございます。  もう1つ、食品の安全性についての思い込みでございますけれども、とりあえずこの 3点ぐらい。まだほかにもいっぱいあるのですが、代表的なものを例示させていただき ました。  1つは、自然由来の物質というのがすごい安全で、合成化学物質というのはみんな危 険だというふうに一般的には思われている傾向がございます。実は自然物質の中にも有 毒植物、例えばトリカブトですとかハシリドコロだとか毒キノコがあるわけですけれど も、毎年、春先の時期には、山菜とりなどに行ってとってきたもので事故に遭われてい る方の例などが報道されたりしているわけでございます。  また、ほかにも、有毒動物ということでフグなどもございます。それから、有害微生 物の腸炎ビブリオとかサルモネラ、カンピロバクターなどの食中毒菌があるわけですけ れども、こういったものはみんな自然由来のものであるわけです。それから添加物の関 係では、最近、アカネ色素というものの発がん性が明らかになりました。これは自然の アカネの根っこからとってきたものでございますが、そういったものでも危険なものは あるわけです。ですから、自然が全部安全で、合成物質がみんな危険だということでは ないのですが、どうもそういうふうには思われていないようです。  次は、2番目、先ほども少しお話ししましたけれども、有害なものがほんの少しでも 入っていたらもう危険だと。ある量をとって危険なものは、どんなに少ない量になって もそれを摂取したら危険なのではないかと思われている傾向がございます。これは摂取 量が低ければ生体影響は起きないということがございますので、ある量以下であると本 来、害というものは検出されなくなるのですが、なかなかそのように理解されていませ ん。  それから、賞味期限を1日でも過ぎていれば危険というふうに思っている方が多いと 思うのですけれども、やはり賞味期限内に食品が腐ったりすることのないように、企業 でもある程度の余裕は見て設定される傾向があります。したがいまして、一般的には、 賞味期限が切れたから、午前0時を過ぎたらすぐに安全な食品が危険な食品に変わって しまうというものではないわけでございます。ただ、注意すべき点は、食品の品質その ものには、食品が製造されてから実際に消費されるまでの保存状態というのが大きく関 係してきますので、やはり賞味期限前であってもその途中の扱いが悪ければ危険な場合 というものもありますし、逆に保存状態がよければ多少賞味期限を過ぎていても安全に 食べられる場合もあるということでございます。  なお、今回のこの説明については、科学的な知見としてお話をさせていただきました けれども、賞味期限を過ぎたものの販売を奨励しているという趣旨ではございませんの で、誤解のないようにお願いしたいと思います。  このようなことで、最初に「リスクコミュニケーションについて」ということで説明 させていただきました。この後、輸入食品の安全対策と残留農薬のポジティブリスト制 度ということでまた参事官の方から説明があると思いますので、スライドには入れられ なかったのですけれども、本日の資料の中に「意見交換会に参加いただいた皆様へ」と いうカラー刷りのA4、1枚の紙が入っているかと思います。ここにも、リスクコミュ ニケーションとは何かということをなるべく簡単にしたつもりでございますが、まとめ させていただきましたので、後ほどでも読んでいただければと思います。  最後に申し上げたいのは、本日のこの意見交換会の目的でございますが、冒頭、厚生 局長の方からも御挨拶の中にありましたけれども、リスクコミュニケーションというの は必ずしもここの意見交換会の中で何かを合意して決めるというものではありませんの で、輸入食品の安全対策の現状とか残留農薬等のボジティブリスト制度について、関係 者の間で情報を共有すること、理解を深めていただくというようなことをまず第一前提 にしております。  それから、2番目のこととして、さまざまな立場の方からいろいろな意見を言ってい ただいて意見交換をするということで、この問題についてみんなで考えていきたいとい うこと、認識を深めていきたいということを目的としておりますので、どうぞよろしく お願いいたします。  簡単でございますが、以上です。               4 テーマについての説明 ◎司会  続きまして、松本・厚生労働省大臣官房参事官から、1つ目のテーマでございます輸 入食品の安全確保について御説明させていただきます。              〇輸入食品の安全確保について ◎松本大臣官房参事官  皆さん、こんにちは。ただいま紹介いただきました、厚生労働省でこのようなリスク コミュニケーションを担当しております松本義幸であります。この後、輸入食品の安全 確保、また残留農薬のポジティブリスト制度についてのリスクコミュニケーションにつ いての話題提供ということで説明させていただきます。  その話に入ります前に、一言、福島県民の皆さんにお祝いを申し上げます。大分過ぎ ましたけれども、この郡山の西方に猪苗代湖があります。そこ辺で生まれた野口英世さ んが千円札の絵柄に採用されたことは非常におめでたいことだと思います。また、輸入 食品を担当しております検疫所にとりましても、この野口英世博士は非常に縁の深い方 でございます。そういうこともありまして、まずお祝いを申し上げます。  それでは、輸入食品の安全確保について話をさせていただきます。 (スライド2)  これは主要先進国の自給率を示したものです。昭和45年と平成14年を加えております けれども、イギリス、ドイツ、フランスはそれぞれ自給率を増やしておりますが、我が 国の場合には逆に減らしております。ですからカロリーベースでいえば、自給している のが4割ぐらい、残りの6割は海外からの輸入に頼っておるということが、皆さん方は よく御存じのことだと思いますけれども、実際に目で確かめていただきたいと思いま す。 (スライド3)  これはその移り変わりでございます。一番左が昭和50年であります。大体、量として は2,000万トン強ぐらいです。それが大分増えまして、平成16年では3,428万トンです。 件数はものすごく増えております。これは、少量多品種で輸入されている。重量自体は そう極端に増えておりませんけれども件数は非常に増えています。輸入時の書類の届け 出の変更とかもありますし、世界各国からいろいろな珍しい食べ物が、量はそう多くは ありませんけれども、たくさん種類が入ってきておるということの移り変わりでありま す。 (スライド4)  これは輸入食品の監視体制の概要です。輸入食品の対策としましては、この後説明い たしますが、3つの段階があります。1つは、我が国に入ってきた受け入れ段階。2つ 目が国内で流通する段階です。大元締めは輸出国での段階ということになります。  輸入しますと、まずは輸出国のいろいろな書類が届出されますので、検疫所でそれを きちっと審査します。その後、輸入時の検査体制として品物の抜き取り検査をやります し、少々おかしいのがあれば検査命令ということで、その事業者に強制的に検査を受け させます。あるいは、事業者、輸入業者に自主的に検査することを指導することがあり ます。不合格となりますと、回収、廃棄、またはそのまま輸出国に積んで戻ってもらう ことになります。合格すると国内に出回るわけであります。  ただ、たくさんの量が輸入され出回っておりますので、すべてを輸入段階で検査し切 れるものではありません。都道府県でも、違反がないかどうか見ていただいています。 違反があれば通報されまして、もとへ戻れば輸出国に、そういう農産物等の管理をきち っとやってくれと要請します。あるいは輸出証明をきちっとやってくれというようなこ とを迫っていきます。あるいは物によりましては、日本の政府職員が現地に行ってつぶ さに実態を調査し、安全であるかどうかを確認します。その確認が済むまでは輸出をさ せないということもやっておるわけであります。 (スライド5)  これが安全確保の基本的な考え方であります。ここにありますように、国の内外にお ける食品供給行程の各段階において適切な措置を講じることで安全を確保しています。 3段階での適切な対応が必要ということで、この前に図を示しましたけれども、輸出国 における対策、水際(輸入時)での対策、国内流通時の対策という、この3つの段階で 対策をとっていくということです。 (スライド6)  これが水際の対策ということであります。この赤丸のところが食品等輸入届出窓口の ある、全国で31カ所の検疫所です。ここでいろいろな輸入食品の検査をするということ はなかなか大変でございまして、その検査につきましては、輸入された段階で抜き取 り、そのサンプルを、西の方は神戸、東の方は横浜検査センターへ送り検査をやりま す。  ちなみに、先ほど申し上げました野口英世博士は、横浜の検疫所に昔、伝染病の侵入 を防ぐために隔離病舎がありましたけれども、そこの横浜検疫所で勤務されたことがあ ります。横浜検疫所の検査センターの横に野口英世記念館がございまして、野口英世博 士が執務されていた机や当時の器具類が展示してあります。 (スライド7)  話が横道にそれましたけれども、もう1つ、全国31カ所の検疫所で対応をとっておる と申し上げましたけれども、そこで働く人間がどうかということであります。  全国で検疫所の職員、約八百数十名います。検疫は食べ物だけではなくて、人の検疫 もございます。そういう業務に従事する者が八百数十名います。食べ物について申し上 げますと、食品衛生監視員がおります。これは平成元年、17年前は31カ所で、全国で89 名しかいませんでした。輸入食品の問題等々でいろいろございまして、輸入量も増えて いる、件数も増えたということもありまして、現在、全国で300名まで増やすことがで きました。まだまだこれだけで十分だと思っておりませんけれども、17年間かけて3倍 強までは増やしてきました。公務員全般としては減らせという声がありますけれども、 このような重要なところについては人を増やしてきています。 (スライド8)  次に、輸入時に重点的に監視指導を実施すべき項目についてです。まず1つは、輸入 届け出時における法違反がないかどうかをきちっとチェックするということです。もう 1つが、輸入時に検査を実施するということ。もう1つが、そういう輸入業者、取り扱 う方々についてきちっと指導して、適切に対応してもらうことです。儲かるからといっ て、輸出国のわけのわからぬところで十分管理されていないものを輸入することがない ように業者を指導するわけであります。  また、検査のところで、モニタリング検査等で違反が発見された場合には輸入時の検 査を強化する、検査の頻度を上げる。あるいは、それでも違反があったときには命令検 査ということで、事業者に全件検査をさせることになっております。 (スライド9)  今申し上げました検査ですが、主体はモニタリング検査です。180万件、三千数百万 トン入ってきておりますけれども、年間計画を立てて検査しています。今年度の予定は 全国で7万7千件程度、モニタリング検査を予定しています。ただ、このモニタリング 検査の場合には、結果が出る前に物自体は輸入可能ということになります。  一方、検査命令があります。食品衛生法に不適格の可能性が高い食品のような場合に は検査命令ということになりまして、費用については輸入業者が負担する。ちなみに、 モニタリング検査は国の負担でやっているということであります。検査命令の検査の費 用は輸入業者が払いますし、検査結果が出るまではそのもの自体を流通させてはならな いということで、より強化された規制になります。  もう1つは、輸入業者の自主的努力で、自主的に検査をやることを指導しています。 (スライド10)  基本的にこの流れとしては、違反の蓋然性が高いとより厳しくなります。モニタリン グとか指導検査をやる。違反が出るとモニタリングの頻度を上げる。それでも違反があ ったときには事業者が費用を負担して、検査結果が出るまで品物自体をとめ置く検査命 令になりますし、最終的にはそのものについては輸入差しとめということまでできる仕 組みになっております。ちなみに180万件のうち、このモニタリング、検査命令まで含 めて19万件です。 (スライド11)  ちょっと戻りますけれども、180万件入って、そのうち検査するのが19万件で大丈夫 かいなという御心配があろうかと思います。モニタリング検査につきましては、17年度 で7万7,000件と説明しました。FAOとWHOという国連の機関があります。それが 一緒につくっているコーデックスという委員会がありまして、その中の分析サンプリン グ部会で、統計学的に一定の信頼度で違反率を検出することが可能な件数が示されてお ります。大体、違反率が0.1%、1,000件のうちに1つ違反があるものを見つけようとす るときには、大体3,000件ほど検査が必要です。100件のうち1件ということになると 300件ほど調べればいいと。10件のうち1件ということになると29件ほど調べればいい ということであります。先進諸国につきましてはこのコーデックスで示された考え方を 踏まえて抜き取り検査をやっておりまして、我が国も違反検挙率1%で考えておりまし て大体300件程度と。この考え方に基づいて、17年度はサンプリングを7万7,000件予定 しているというところであります。 (スライド12)  何度も繰り返しになりますが、先ほど、サンプリング検査をやった後、違反が出たと きにどうなるかを申し上げましたけれども、厚生労働大臣の権限で検査命令が出ます。 その要件といたしましては、健康被害の発生があるとか、あるいは健康被害の発生の恐 れがあるということで、同一の製造業者または加工者から同一の輸入食品がある場合、 例えばひき肉がO-157で汚染されていたときには、直ちに検査命令が出されることにな ります。  一方、それほど切迫していないときは、残留農薬とか動物用医薬品がモニタリング検 査で1回目違反となったときには、モニタリングの抜き取りの頻度を倍に引き上げま す。それで2回目の違反が出ますと、違反の蓋然性が高いと判断されて検査命令という ことになるわけです。  検査命令解除につきましては、輸出国の再発防止策の対策が確立されて違反食品が輸 出されることがないことが確認されることが必要でありまして、検査をやっておっても 根っこを絶たなければだめだということになっているわけであります。 (スライド13)  これは、検疫所の食品検査員がやっている抜き取り調査であります。このような果 実、これはオレンジですかね、これを積んであるのから、あの箱とあの箱とあの箱を持 ってきてくださいと言って、それから抜き取る。どれから抜き取ったかをデジタルカメ ラできちっと撮って記録します。こちらは冷凍の魚介類だと思いますけれども、モンゴ ウイカなど石と同じくらい硬くなっています。それをノミとハンマーで砕いてサンプリ ングをしております。 (スライド14)  途中、温度が変わったりしますと、例えば肉などですと菌が増えたりしますので、サ ンプリングしたときと状態が変わります。そういうことがないように、クーラーの中に 入れて、このように温度計を入れて、きちっとした状態で検査センターまで送ります。 こういうふうに、それぞれパッキングします。検体を受け付けるということでありま す。 (スライド15)  これが、横浜あるいは神戸の検査センターであります。受け付けた後、その素材は、 丸のままではどうしようもありませんので、つぶして均一化いたします。その後、必要 な成分、例えば残留農薬などであれば、そういうのを抽出・精製いたします。その後、 機器分析をするということです。  ここまで来ると機械は自動的にやってくれますけれども、粉砕・均一、あるいは抽出 ・精製については全部手作業です。ですから、輸入の魚などもありますけれども、魚を 砕いてミキサーでつぶして均一するだとか、あるいは物によっては魚を3枚におろして 身だけの部分をやるとかということもやっておりまして、結構、力仕事であります。 (スライド16)  もう1つ、輸入の段階でのチェックが大変重要でありますけれども、ただ単にそれを 漠然と見ているわけではありません。海外でおかしいと、あるいは危ないのではないか という情報があったら、そういうところから来た品物だとか、あるいは、どこどこのど ういう製品について輸出国の方で何か不具合があったというようなこと、あるいは、ど こかの研究所で農薬の残留が見つかったというような情報をきちっと把握する。それに 基づいてより集中的に検疫所の段階でサンプリングをしたり検査をしています。そのた め、海外における食品安全情報の積極的な収集を行っています。1つは、日本の大使館 が各国にありますので、そこからの情報があります。もう1つは、国立医薬品食品衛生 研究所がありまして、そこの安全情報部に世界各国で公表されたデータが集められてい ます。あるいはよその国の研究機関の情報を収集しています。そういう情報に常に目を 見張らせておりまして、ちょっと怪しいぞということになると、それぞれ検疫所、ある いは厚生労働省、農林水産省、食品安全委員会に情報が伝わる仕組みになっておりま す。  また、3番目にありますけれども、食品安全委員会の事務局に情報・緊急時対応課が ございます。そこでも諸外国での食品安全の情報について常に目を光らせているという ことであります。  そういう問題の食品が我が国に輸入されている場合には、流通状況を調べたり、ある いは回収したり、あるいは輸入時の検査を強化することになっております。具体的に は、米国産のアーモンド、あるいは中国産のはるさめというのが最近の事例です。 (スライド17)  ちょっと字が小さいですけれども、主な食品衛生法の違反事例です。一番上はいろい ろな自然のカビ毒で、ピスタチオなどにアフラトキシンという非常に発がん性の高いカ ビが発生することがありますけれども、そういうものだとか、4番目のところが主とし て残留農薬のところですね。一番最近、残留農薬の関係で輸入をとめたということで は、マンゴーがあります。マンゴーが好きな方がいらっしゃれば気づかれたかもしれま せんけれども、昨年の12月、フィリピン産のマンゴーから残留農薬の基準を超えるもの が検出され、フィリピン産のマンゴーの輸入を止めました。その後、当方の職員がフィ リピンまで出向いていっていろいろ調査し、改善を要請し、大体それができるというこ とになりましたので輸入が再開されたわけであります。そのときに、「お待たせしまし た。フィリピン産マンゴー」という表示がマーケットにあったのを私は覚えておりま す。 (スライド18)  違反事例を1つ挙げましたけれども、違反が判明した場合の対応をどうするかという ことであります。  1つは、違反食品が国内流通しているときには、関係の都道府県と連携して回収等の 措置をとるということになります。また、都道府県等により違反輸入食品が発見される ということもあります。そういうときには、その情報に基づいて輸入時の検査を強化す ることもありますし、一番最初の方の図でお示ししましたけれども、物によっては輸出 国にまでちゃんと改善してくださいと要請することになります。  また、違反があった輸入者に対する措置といたしましては、どうしてそういうことが あったのかということの原因究明、また再発の防止策をとらせるということ。  また、同じ製品を再度輸入する場合にあっては、サンプル品の検査等による、改善が 図られているということを確認するということをやっております。  さはさりながら、違反を繰り返す輸入業者もおります。そういう者に対しては営業の 禁止とか停止ということになります。  こういういろいろな違反がありますと、輸入食品の違反情報ということにつきまして は厚生労働省のホームページできちっと載せております。載せるときに当然、記者発表 をするわけであります。ですから、そういうのがありますと、新聞にどこどこの業者が 輸入したもので違反が見つかってというような小さな記事が載りますけれども、こうい う違反のものについては包み隠さず情報を出しているということであります。 (スライド19)  輸入者への自主的な衛生管理の実施に関する指導も行います。まず輸入業者も安全な 食品を提供する義務があるわけでありまして、食品の安全確保についての責任をきちっ と認識させるということです。輸入前にどういうものをどこから輸入するということを 相談してください、また、できたら自主検査をやってください、輸入に当たってのいろ いろな記録等についてはきちっと保存してくださいということを義務づけたりしている わけであります。 (スライド20)  もう1つ、今まで主として国内対策のことを説明してきましたが、輸出国の衛生対策 が進まないといつまでたっても、水際あるいは国内へ入ってからでは対応できません。 相手国(輸出国)に対しましては、検査強化品目について違反原因の究明、あるいは再 発防止策を確立してくださいと要請しますし、2国間協議とか現地調査を通じまして、 農薬等の使用管理、あるいは監視体制の強化、あるいは輸出国が輸出前に検査するとい うようなことを推進していただきたいということで働きかけます。また、輸出国の現地 での生産段階での安全に対する確認が必要な場合につきましては、専門家を輸出国に派 遣して、農産物であれば実際に農場に行って、あるいは魚であれば養魚場に足を運ん で、本当にちゃんとやられているかどうか確認をするということであります。 (スライド21)  もう少し細かくなりますけれども、例えば輸入食品で問題になりました中国からの冷 凍ホウレンソウの話であります。平成14年に民間の検査機関で中国の冷凍ホウレンソウ にクロルピリホスという農薬が残留しているというのがありまして、いろいろ調べたら 結構あるということで、その後、当然、輸入はとまりますので、中国政府はいろいろ言 ってきました。  交渉もやりましたし、現地に職員も派遣して、ここにありますように、生産農家の段 階では生産段階における農薬の管理、あるいは使用農薬、使用方法の遵守、あるいは使 用農薬の統一的購入、あるいは使用農薬の記録の保存等々をやってくださいと。加工工 場にあっては、生産農家の畑ごとに製造管理をするような形にしてくれと。また、使用 原料の記録保存をやってくれということ。収穫前、加工時、最終製品というところでの 農薬検査を加工工場がやってくれと。輸出段階では、中国政府による輸出前の検査、あ るいは生産工程の確認というようなことをやってくれということで働きかけたわけであ ります。 (スライド22)  そういうこともありまして、14年45件。少し改善されて、15年4件ありました。違反 重量も620トンから104トンになりましたけれども、16年、17年になりますと、そういう ことをちゃんと守るということで違反件数はゼロになりました。このようにして、輸出 段階、あるいは輸入の水際の段階、後のところで検査あるいは業者の指導ということ で、輸入の安全確保ということをやっているわけであります。  しかしながら、こういう食品の安全に関するリスクコミュニケーションをやっており ますと、輸入野菜の6割が中国から今来ているそうでありますけれども、本当に大丈夫 かと聞かれます。これはひとえに、今話しました中国からの冷凍ホウレンソウでの問題 が大きくきいていると思いますし、この後話します農薬のポジティブリスト制について も大きなインパクトがあったわけでありますけれども、本当に大丈夫かという話は聞き ます。ですから、輸入食品の安全と農薬についての不安というのがほぼ同じような割合 でありますけれども、今説明したようなことで輸入食品の安全に取り組んでおるという ことであります。 (スライド23)  少々長くなりましたけれども、最後に、こういう情報はどこに行けばいいかというこ とになりますと、インターネットをつないでいないからひどいではないかという声も聞 こえますけれども、つないでいる方がいらっしゃれば、厚生労働省のホームページで、 こういう食品安全の確保に向けた取り組みというのをいろいろなデータを公表しており ます。画面自体は見やすくしたつもりでありますけれども、中の情報の出し方がまだ十 分だと思っておりません。皆さんから見ていただいて、いろいろ忌憚のない御意見をお 寄せいただければと思います。  ちょっと長くなりましたけれども、輸入食品の安全確保についてはこれで話を終わら せていただきます。御清聴ありがとうございました。 ◎司会  それでは、ここで、ちょっと時間も押している関係で、2時まで休憩をとらせていた だきたいと思います。2時から2つ目のテーマの御説明をさせていただきたいと思いま す。  それでは、2時になりましたらお席の方へお着きくださいますよう、よろしくお願い いたします。                   (休憩)         〇残留農薬等のポジティブリスト制度の導入について ◎司会  それでは、引き続きまして、2つ目のテーマでございます「残留農薬等のポジティブ リスト制度の導入について」を御説明いたします。 ◎松本参事官  それでは、残留農薬等のポジティブリスト制度の導入について説明させていただきま す。ちょうど、昼食を食べて一番眠い時期ではないかと思います。目をつぶっていただ いて、耳だけ傾けていただければ結構でございます。  表に出てくるのは、皆さん方に資料3として配布してあります。遠くの方は恐らくこ の画面は見えないと思いますので、資料3を見ていた方がいい場合があろうかと思いま す。  (OHP使用)まず、食品に残留する農薬に関する規制がどうなっておるかというこ とであります。食品の安全確保のための残留農薬規制の仕組みということであります。 (スライド3)  基本的な考え方としましては、我々、皆さん方も含めて毎日食事をしますが、毎日の 食事を通じて体に摂取する農薬等の量がADIを超えないようにするということであり ます。ADIといきなりアルファベットが出てきて、「あっ、何か難しいな」という印 象を受けられると思いますが、日本語にすると、2ページの下に「ADI」の説明があ ります。許容一日摂取量というものであります。要するに、ずっとそれを取り続けても 大丈夫というようなものであります。 (スライド4) そこで、ADIについて簡単に説明させていただきます。  ADIというのは、そこにありますように、Acceptable Daily Intakeということ で、Acceptableというのは許容できるということ、Dailyというのが1日、Intakeとい うのが摂取量ということであります。  このADIというのは、ある物質について人が生涯その物質を毎日摂取し続けたとし ても、健康に対する有害な影響が現れないと考えられている1日当たりの摂取量という ものであります。通常、1日当たり体重1kg値の量ということで表されます。ですか ら、私は今71kgほどあります。やせた方は50kg、あるいは女性の方でもう少し軽い方が いらっしゃると思いますけれども、そういう方は当然、絶対量は違ってくるわけであり ますが、そのようなものであります。来るとき新幹線の中で、ADIを覚えやすくする いい方法はないかと考え、Aは会津のA、Dは中通りのD、IはいわきのIの略ではど うかなと思いました。おじさん的なしゃれで非常に恥ずかしく思っております。 (スライド5)  ADIをどうやって決めるかということであります。まず、ADIを決めるもとにな るデータがしっかりしていなければなりません。きちんとした評価をするためにはきち っとしたデータをとるわけであります。GLP、また英語が出てきましたけれども、 Good Laboratory Practiceの略です。これは安全性試験の適正実施に関する基準と言っ ています。ちょっと長たらしいですけれども、このGLPに従って作成された安全性試 験のデータに基づいて食品安全委員会が評価することになっております。  なぜこのGLPがあるかといいますと、データは申請者、この場合は農薬ですから農 薬メーカーがつくるわけであります。そのときに農薬に強いネズミとかマウスを使って 実験をしたら、大量に使っても異常が出てこない。だから大丈夫ですよと言われても困 ってしまいます。ある非常に気の弱い慎重な人は、農薬に弱いラットを使うと量が大分 低くなるということがありますので、それでは何を比較しているかわからないというこ とで、国際的にきちっとデータが揃えられるものにするためこのGood Laboratory Practiceという基準が決まっております。  ですから、どういう系統のラットを使う、あるいはマウスを使う、あるいはいろいろ な変異原性の試験だとかということについては、どういう手続をやってどういうものを 使うという基準が決まっております。そういうものに基づいて動物実験などをやってお るということであります。当然、そういう動物だけではなくて、それを飼っている施 設、あるいはそれを管理しているいろいろな技術者、研究者がいますけれども、その方 々についても一定のスタンダードがあるわけであります。  そういう施設もちゃんとやっているかどうかということについては、管理機関であり ます、農薬の場合ですと農林水産省が、そういう施設に査察に行って、ちゃんと基準が 守られているかどうかを検査します。ですから、企業がいろいろなデータをとるという ときに、自分のところで実験するといったときには、自分のところの施設がこのGLP の基準にちゃんと則っているということが必要ですし、それに則っているということに つきましては、きちっと査察を受けているという必要があるわけです。そういうきちっ とした手続に基づいて得られたデータを食品安全委員会が評価するということになって おります。  どういうものについて調べるかといいますと、下にありますように急性毒性、亜急性 毒性、あるいは慢性毒性、あるいは発がん性、あるいは催奇形性、あるいは次の子孫へ の影響がないかどうか繁殖への影響等々、あるいは残留度についても調べられておりま す。そういう試験から有害な作用が認められない量というもの、これは無毒性量といい ますけれども、それを見つけ出しまして、安全係数をかけます。これは、動物実験をや りますので、動物実験のデータを人に適用するということがそのまま使えない、種の差 があるだろうということで、そこで安全率を10倍見ます。また、同じ人間でも小柄な 人、太った人がある、個人差もあるということで、それで10倍で、合わせて100倍、安 全率を見ようということで、無毒性量に安全係数100分の1をかけてADIを設定して いるというのが一般的であります。  このように、GLPに基づく施設で行った動物実験等により出てきた多くの項目につ いてのデータに基づいて、食品安全委員会が評価をして許容一日摂取量を評価している ということであります。 (スライド6)  これが模式図であります。縦軸が生体影響ですね。いろいろ実験動物などの影響が出 てくる。あるいは培養の場合は細胞に影響が出てくるということであります。影響の程 度です。横軸が暴露量。すなわち、どれだけ農薬に暴露されたかということになるわけ です。当然、農薬も量が過ぎますと影響が出てきて、実験動物が死んでしまいます。こ れは致死量ということになるわけです。  一方、どんどん減らしますと、全然症状が観察されないところがあります。これを無 毒性量と判断します。この無毒性量から100分の1の部分がADIということになりま す。農薬の残留基準は後で説明しますけれども、さらにこの下の部分ということになる わけであります。  よく残留基準の10倍の農薬が検出されたと報道されることがありますが、残留基準の 10倍のものを食べたからといってすぐいろいろな症状が出てくるわけではありません。 ただ、ADIのところで申し上げましたけれども、一生それをずっと食べ続けたときに 影響がないようにと評価したのがこのADIでありますので、そういう基準を超えたも のを1回でも食べたら具合が悪くなるかというと、そういうことではありません。そう いうものは食べないように基準を設けているわけであります。 (スライド7)  ADIをどうやって決めるかということを御説明しました。この前の図(スライド6 )でADIよりもっと下のところで実際の使用基準が決まるということを申しましたけ れども、そういう基準値の決め方の例がこの表です。これは1つの例で、農薬Aという のは、具体的にどういう農薬というわけではありません。1つのただ単に例示でありま す。  農薬は、その農薬を使っていい作物が決められております。その作物ごとに残留農薬 基準は決まっております。ここでは小麦。パンをつくったり、だんごにしたりする小 麦。あるいは鍋物に使う白菜。また、みかん、お茶、お湯で出すお茶ですね。そういう ことでありますけれども、では、こういう基準をどうやって決めるかというときの1つ として、例えば小麦であれば海外、EU等で決めているものを参考にして、基準値を1 ppmとします。白菜についていえば、国内でいろいろな作物の残留試験をやっている。 そのデータに基づいて1ppmと決める。みかんでいえば、これはコーデックスという国 際貿易の関係で農薬の残留基準値を一応決めている、柑橘類についての値があるからそ れを使う。お茶については、農薬の登録保留基準がありますので、それを使う。こうい う決め方もあるということであります。 (スライド8)  もう1つ、さはさりながら、それでいいのかという話もあります。どれだけ農薬に暴 露されるかに基づいて基準値を決める決め方があります。1つは、理論最大一日摂取量 方式ということで、すべての食べる作物に基準値いっぱい農薬が残留していたと仮定す るわけです。毎日小麦ばかり食べて、ほかに何も食べないというわけではありません。 小麦のほかに白菜を食べたり、あるいは食後のデザートといってみかんを食べたり、そ の後、お茶を飲んだりします。それぞれのもので基準値いっぱいに残留農薬があったと 仮定する。そうしたときに、どれだけ体の中にそれぞれのものから農薬が入ってくるか を求めます。この値と実際の農薬のADIを比較する。これがもしADIを超えるよう であればこの基準値自体がおかしいということになるわけであります。この場合にはA DIより少なくなっているということでありますので、こういう決め方も1つあるとい うことです。これは、体に摂取される量が実際以上に過大に評価されるというところは あります。 (スライド9)  もう1つの決め方としては、日本型推定一日摂取量方式と言ったものがあります。こ の前に説明した方式では農薬の残留量として基準値いっぱい残留するという仮定のもと に計算を置きましたけれども、一般には基準値案のもととなる作物の残留データは、大 雑把に言って基準値の半分ぐらいしか実際残っていません。  そういうことから、実際に作物をいろいろ調べまして、その残留した値を用いること をします。バナナですと皮も含めて今は農薬の残留の度合を調べておりますけれども、 バナナを皮ごと食べる人はいません。大体、皮をむいて食べますので、そうしますと可 食部の残量レベルはぐっと減ってまいります。そういうようなことから精密に推定され る農薬の摂取量を計算するということになるわけであります。  こういう決め方があるということであります。 (スライド10) もう1つ、集団としては国民全体ということで子供さんからお年寄りまで平均していま すけれども、子供さんのグループと妊婦さんのグループと高齢者のグループとはやはり 少し違うだろうということがありまして、それぞれについて摂取量を計算する方法で基 準値を決めます。それを全部足し合わせてADIと一日許容摂取量とを比べます。その 基準値を判断するときに、ここにありますようなフローチャートを示して、80%より少 ないということで収まっておればその基準値を採用する。そうでなければもう一度見直 すという形で決めていくという方法があるということであります。これも決め方として ここでぱっぱっと説明するのはなかなか大変ですけれども、このような決め方で決めて いくということであります。 (スライド10)  それでは、食品に残留する農薬等に関するポジティブリスト制度について、本題に入 っていきます。 (スライド11)  まずポジティブリスト制度というのは何かということです。写真でネガとかポジとあ りますけれども、ではポジとかネガとか何なのということがあります。 (スライド12)  一般的にネガティブリストというのは、原則自由。規制がない。規制するものだけリ スト化するというのを一般的にネガティブリストと言っております。一方、ポジティブ リストというのは原則禁止。使っていいものだけリストにすることをポジティブリスト と言っております。こう説明しておりますけれども、多くの国民の方がそれをそのま ま、そうだそうだと言うほど理解が進んでいると思いません。こういうものだというこ とで御理解いただきたいと思います。  ですから、今の状態はどうかというと、現在の農薬の規制はネガティブリストの方で あります。ですから、カロリーベースで自給4割。すなわち、残り6割は海外から来て おりまして、日本では規制されているけれども、そうでない農薬を海外で使っておると いうときにどうするかというと、日本国内と同じ農薬であれば残留基準を超えておれば 流通を止めることができますけれども、そういう規制のないものが使われておったとき には現在の仕組みでは止めようがないというのが今の状況です。 (スライド13)  そういうことではよくないだろうということで、ポジティブリスト制に改めようとい うことで、原則、農薬の残留しているものについては流通はだめ。直接、農薬を使うこ とを禁止しているわけではありません。しかし、農薬が残留しているものは流通がだめ だということは、間接的にその農薬は使わないでくださいということを言っているわけ であります。そのかわり、ちゃんと基準のあるものだけは認めましょうという形に変え ていこうと。そういうことによって、海外から入ってくる食品の中で残留農薬の基準を 厳しくしようというところで始まったということであります。  繰り返しになりますが、この残留農薬等のポジティブリスト制度といいますのは、基 準が設定されていない農薬等が一定量以上残留する食品の販売等を原則禁止するという 制度であります。 (スライド14)  では、この一定量とはどれくらいかということであります。これは、人の健康を損な うおそれのない量として一定の量を定めて規制するという考え方であります。では、こ の一定量としてはどうかといいますと、0.01ppmということで定めようと考えておりま す。0.01ppmというのは、諸外国のデータ等々を見て、これであれば大体妥当だという ところで決めたわけであります。 (スライド15)  ちなみに、ポジティブリスト制度をとっている国はどこかといいますと、ことしの3 月からでしたか、EUがとり始めました。使用対象外の作物に残留する場合とか安全性 に関する資料がない場合ということで、0.01ppmを超えるレベルで残留することを禁止 ということでEUは判断しています。ニュージーランドの場合は0.1ppm。ニュージーラ ンドはかなり前から農薬のポジティブリスト制度をとっておりますけれども、ニュージ ーランドは0.1ppmということになっております。ドイツはEUよりも先にポジティブリ スト制度をとっておりましたけれども、EUもやり始めましたので一緒になりますが、 0.01ppmです。米国の場合、基準は特に定められておりませんけれども、運用上、0.01 から0.1ppmということになっております。 (スライド16)  このポジティブリスト制度の規制の対象はどういうのが入るかといいますと、農薬等 ということで農薬は当然入ってまいります。それ以外に、家畜を飼うときに伝染病の予 防のための抗生物質を投与したりだとかいろいろあり、そういう動物用医薬品というの が入ります。また、家畜などの餌に使います飼料添加物も、対象になるということであ ります。さらには、原産品だけではなくて、規制対象食品として、加工食品を含むすべ ての食品がポジティブリスト制の対象ということになるわけであります。 (スライド17)  これまで農薬として使っておったものでも規制の対象とならないものもあります。そ れは具体的にいうと、ここに挙げておりますようにオレイン酸、これは殺虫剤として使 っているのがあります。また、レシチン。これは大豆レシチンで、これも殺虫剤として 使っておりますけれども、このような食品添加物として指定されているものですとか、 重曹、料理にも使いますけれども、これも農薬として使ったりする部分があります。そ ういうものを特定農薬として今回の規制対象にならないということになります。 (スライド18)  それでは、いつから規制が実施されるかということであります。現在はまだネガティ ブリスト制の状態でありますけれども、平成15年の国会で食品衛生法が改正されまし て、現在やっている残留農薬の規制をネガティブリスト制からポジティブリスト制にす るということが決まりました。施行は、法律の公布から施行まで3年間ということであ りますので、15年5月に法律は公布されました。それから3年間ということですから来 年の5月からということになりますので、来年の今ごろですとポジティブリスト制に移 行した後ということになります。18年5月までに実施するということで今進めておると いうことであります。 (スライド19)  左が現行でありまして、食品の成分に係る基準が定められている農薬等ではいろいろ 規制がありますが、その下の方、枠外にありますように、残留基準が定められていない 農薬等については基本的には販売等の規制はないというのが現状であります。それを、 一定量を超えて農薬等が残留する食品の販売等を禁止するということで、これは全体に 網をかけてありますけれども、これがポジティブリスト制で、来年の5月からこのよう な形に変わるということであります。 (スライド20)  既に現在いろいろな基準があるものがあります。それについては暫定的に基準を決め ようと。効力は正しい基準と一緒ですけれども、暫定的に基準を決めようと。  それはどういう意味での暫定かといいますと、農薬の基準を決めるというのは、先ほ どGLPに基づいた試験をして、データに基づいていろいろ決めると言いました。そう いうことを1つ1つ積み重ねて現在の基準はできています。しかし、約700近く農薬が ありますけれども、来年の5月までそれだけのものをやろうとしたら時間が足りませ ん。それで、基準があるものについて、あるいは国内に基準がないものについては、諸 外国の非常に信頼できる基準を仮に使っておこうということで暫定基準を決めるという やり方。あるいは、それ以外の特定農薬については対象外のものもあるということであ りますけれども、そのような形で決めていくということであります。 (スライド21)  それで、「暫定基準とは?」ということで今申し上げましたけれども、これが今現在 の日本の残留農薬基準の設定状況です。農薬取締法による国内食用の登録農薬数は約350 あります。一方、食品衛生法で残留基準が設定されたのが246。少し重なっている部分 があります。一方、先ほど申し上げました国連の機関でありますFAO(世界食料機関) とWHO(世界保健機関)とが共同でつくっている、コーデックス委員会がいろいろな 基準を決めておりますけれども、それが130ほどある。しかし、そこの外にありますけ れども、国際的に食用農産物に使用が認められている農薬は約700あるということで、 この部分が全然埋まっていないわけです。しかし、枠の中の部分は何らかの形でその基 準があるということであります。 (スライド22)  では、暫定基準をどうして決めるか。目的は、国民の皆様の健康の保護ということ。 これはまず1番の主眼です。もうひとつはポジティブリスト制度の円滑な施行というこ とで、そこの下にありますけれども、科学的な根拠に基づいて定めている基準等を参考 に、食品衛生法に基づいて食品成分規格として設定する。既に設定している残留基準の 改正を行わないということで、とにかくたくさんの農薬についての対策をとるというこ とでありまして、既に科学的な根拠に基づいて定められている基準等はそれを使ってい くことで国民の健康を守っていこうということで進めておるわけであります。 (スライド23)  では、参考とする基準は何かということです。科学的な根拠に基づくことが基本で す。まずひとつは国際的基準です。これはコーデックス基準と言っております。これは 世界各国いろいろな科学的なデータを持ち寄って決めた基準でありますので、科学的に はきちっとした根拠があります。まずコーデックス基準があるものはコーデックス基準 を用いる。農薬取締法に基づく登録保留基準があるものはそれを使う。あとは、JMP RとかJECFAは、コーデックスなどの機関で添加物だとか農薬等の安全性を評価す るところでありますけれども、そういうところで必要とされている、毒性などに関する 資料に基づいて設定されると考えられる米国、カナダ、欧州連合、オーストラリア、ニ ュージーランドの基準を参考にして決めるということであります。ですから、コーデッ クスの基準と日本の既にある基準と、ポジティブリスト制度をとっている、かつ、デー タ自体が科学的根拠に基づいて決めていると考えられる5カ国の基準を参考にして決め るということであります。 (スライド24)  どのように決めるかといいますと、コーデックス基準があるものはコーデックス規準 を採用する。コーデックス基準がない場合には登録保留基準を使います。コーデックス 基準あるいは登録保留基準がない場合には、先ほど申し上げましたポジティブリスト制 を導入している国の基準を使わせていただくということで進めているわけであります。 (スライド25)  暫定基準のイメージとしましては、小麦、みかん、お茶というのが大体出てきますけ れども、小麦については、現行基準があるからそのまま使う。みかんについては農薬の 登録基準を使う。お茶はちょっとありません。牛の肉(筋肉)については、コーデック スの基準があるからそれを使う。牛乳については、コーデックスも我が国もないので海 外5カ国を示しましたけれども、そこにあったから、それを使おうということで、暫定 基準を決めるときはこのような形で決めていくということになるわけです。 (スライド26)  ただ、この暫定基準は、あくまでも時間がないということが一番大きいわけですけれ ども、基準としては効力が必要ですけれども、あくまでもやはり暫定基準だということ で、やはり見直しが必要だろうと考えておりまして、この暫定基準につきましては5年 ごとに見直すことで考えております。  来年5月にポジティブリスト制を導入するということになりますけれども、この暫定 基準の設定の際に参考とした諸外国の基準等々に変更がある場合もありますし、そうい う変更があったときは5年ごとにその暫定基準の見直しを行うというのが1つありま す。  もう1つ、日本の皆さん方がどれくらい食べ物から残留農薬をとっているかを調べる ために、マーケットバスケット調査というものをいたします。これは、実際にマーケッ トで購入されるものを買ってきて残留農薬を調べて、どれくらい摂取するかということ を調べているわけです。今のままの基準だとそういうマーケットバスケット調査等で大 分、摂取量が増えているのではないかというようなことだとか、そういう調査に基づい て見直す優先順位を付けます。いろいろな農薬がありますけれども、その農薬の優先順 位をつけて、安全性試験のデータを収集して暫定基準をきちっと見直していこうという のが1つあります。  また、もう1つは、国際機関の評価、先ほど一日許容摂取量(ADI)と言いました けれども、国際機関でADIが設定できないと評価されるものについて資料を集めて、 食品影響評価を優先的に依頼して、その結果を踏まえて暫定基準の見直しを行う。その ようなことで5年ごとに見直していこうということであります。  暫定基準だけでも714ございますので、一遍に見直すことは難しい。その中でも優先 度の高いものをマーケットバスケット調査、あるいは諸外国の見直しがあればそれに応 じて見直していくということで進めていくということであります。 (スライド27)  今後の予定ですけれども、現在、来年度の施行に向けまして最終案をWTO通報して おりますし、パブリックコメントということで国民の方の意見を求めております。普通 ですと4週間ぐらいで終わるのですけれども、これは量が膨大なものですから3カ月間 の期間をとっております。その後、意見が集まったところで内閣府食品安全委員会の調 査審議を受け、同時に薬事・食品衛生審議会の食品衛生分科会での諮問をするというこ とです。いいよということになりますと関係法令を整備いたしまして公布・告示という ことになります。非常に大幅な変更なものですから、皆さん方に知っていただく期間を 6カ月間見る必要があるだろうということで、ことしの11月末までにはそういう関係の 法令を整備しようと考えております。来年の5月末までにポジティブリスト制度に移行 しようというスケジュールでおるわけであります。  ポジティブリスト制度についてはそのような状況であります。 (スライド28)  現状は制度としてはネガティブリスト制度と言いましたけれども、輸入食品について も残留農薬等いろいろ調べておりますけれども、では現在の残留度はどの程度かという ことであります。 (スライド29)  食品中の残留農薬の一日摂取量調査がございます。これは13年度と14年度であります が、ADI(一日許容摂取量)の何%かということであります。平成13年度が0.19%か ら、多いものでも31.04%ということで、これは21の農薬についてです。平成14年度が 0.04から1.69%ということであります。国民栄養調査がありまして、そこで何をどれだ け食べているというのがわかっておりますので、それを基礎として、町のスーパーマー ケットとか八百屋さんとかで、国民栄養調査で、国民が食べている量を買ってきて、日 常の食事を介した食品からどれだけ農薬が入っていくかということを調べる調査になり ます。 (スライド30)  一方、加工食品中の残量農薬検査をやっておりまして、平成13年度、フライドポテ ト、発泡酒及びビールで250農薬。総検査数が1万4,985件で31件。割合として0.2%で、 農薬としては4つの農薬で0.02から2.1ppmが検出されたということであります。  平成14年ですと乾燥野菜。これはニンニクパウダー、乾燥ホウレンソウなどですけれ ども297農薬。総検査数が7,587件実施して、そのうち18件で検出されて、農薬の数とし ては12農薬。量としては0.008から0.25ppmが検出されたということであります。  下の方に書いてありますけれども、これまでにベビーフードとかパン、果物、缶詰、 あるいは植物油、冷凍食品、パスタ、トマトについても調査を実施しておるところであ ります。 (スライド31)  もう1つ、農産物中の残留農薬の検査結果です。平成12年度、総検査数が46万7,181 件。そのうち、検査をやったのが2,826件ということであります。そのうち、基準を超 えたものが74件であります。平成13年度は、そこにあるようなデータであります。た だ、これは、1つのサンプルについて複数の農薬の検査をやります。そうしますと、ニ ンジンについて、例えば5種類の農薬について検査するとこれは5件ということになり ます。この件数46万7,181件、これは約47万個のものを検査したということではなくて、 検査の個数はもっと少のうございますけれども、1つ1つについての農薬を複数検査し て、それを1件ということでカウントしております。 (スライド32)  最後に、今まで残留農薬結果とかということで見ていただきましたように、サンプル をどれをとったかというのはあるかもしれませんけれども、それほどたくさん農薬が残 留しているということはないということでおわかりいただけたと思いますけれども、そ れでも気になるという方がいらっしゃいます。そういう方のために、残留農薬の減らし 方ということで、最後でありますけれども、水洗い、皮むき、ゆでる、揚げるという、 ごく普通の料理をやることで残留農薬が減少するということが知られておりますので、 最後に御参考までにお話しいたしまして、ちょっと長くなりましたけれども、お話を終 わらせていただきます。  御清聴ありがとうございました。 ◎司会  それでは、ここで10分程度、休憩を設けさせていただきたいというふうに思います。  パネルディスカッションと意見交換会を2時50分から開始したいと思いますので、そ れまでにお席の方にお戻りいただきますよう、よろしくお願いいたします。                   (休憩)            6 パネルディスカッション及び意見交換 ◎司会  それでは、時間となりましたので、これからパネルディスカッション及び意見交換会 を行います。パネルディスカッション、意見交換会の議事進行につきましては、コーデ ィネーターの広瀬課長補佐の方にお願いしたいと思います。 ◎広瀬補佐  コーディネーターとして進行をさせていただきます広瀬と申します。よろしくお願い します。  それでは、まずパネリストの紹介をさせていただきます。  真ん中の方からになりますが、福島県消費者団体連絡協議会の水口ミキ様でございま す。  社団法人福島県食品衛生協会理事の伊藤治様でございます。  こちら側になりますけれども、福島県の方から福島県保健福祉部健康衛生領域食品安 全グループ参事の五十嵐敬司様でございます。  あとは国の関係でございますが、一番端になりますけれども、農林水産省の消費・安 全局消費者情報官の姫田情報官でございます。  そのお隣が、内閣府食品安全委員会事務局の評価課、島田和彦課長補佐になります。  それから、一番こちら側になりますけれども、先ほどプレゼンテーションさせていた だきました厚生労働省大臣官房の松本参事官でございます。  以上、6名でございます。  パネルディスカッション、意見交換の進め方についてでございますけれども、テーマ ごとに進めさせていただきたいと思います。  本日は、輸入食品の安全対策、それから残留農薬のポジティブリストという2つのテ ーマがございますので、それぞれ1つ1つ進めていきたいと思います。また、最後です けれども、食品の安全全般について自由に意見交換を行う時間というのを設けたいと考 えております。  それで、輸入食品の安全対策の方から始めたいと思います。輸入食品の安全対策につ いては、現在行われている取り組みというのを先ほどプレゼンテーションの中で御紹介 させていただきましたが、これはあくまでも、こういう取り組みがされていますという ことで、これで安全だと思われる人、それから思わない人がいらっしゃると思います。 安全だと思えないとか安心できないというようなことで、それを解消するためにはどう いうことをすべきなのかとか、何が問題なのか、そういうようなことについて議論を進 めていきたいと思います。  まずパネラーの方から御意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。 ◎水口氏(福島県消団連)  水口でございます。消費者の立場から、輸入食品の安全についてということで先ほど モニターで説明がありました。御案内のように、食料自給率が40%。私たちが毎日食し ている食べ物の半数以上が望む望まないにかかわらず外国産のもので賄っているという 現状は、動かしがたい事実なのですね。  そういう中で、私たち消費者が毎日食卓にのせるものを買いにスーパーに行きました ときに、ここまで外国産の野菜、果物、加工食品が並んでいることに、何といいましょ うか、きのう私はそれを感じましたけれども、私たちが安全か安全でないか考えるいと まもなくそのようなものを毎日摂取しているという中で、どうやってその危険とか安全 について避けようとするかとしたときに、私たちは選ぶという権利を持ってその危険な りリスクなりを避けるしかないのですけれども、現実には選ぶことさえも目に見えな い。そうすると、私たちが何を頼りにするかというと、やはり確かに表示がなされてい るかどうかということに一番なるだろうと思います。  それと、日常、新聞なりテレビ等で報道される食品の安全についてというと、きょう の御説明は一貫して、心配することはないよということにつながっていたような気がし ますけれども、報道されるさまざまな輸入食品についての話題というのは、危険、わか らない、危ないというふうなことが一般的に多いのではないかと思います。  まして、一連のBSEの事件とか偽装表示問題、それから鳥インフルエンザ。国内外 を騒がせたあの事件によって、今回、食品基本法が制定され、食品安全委員会が発足し たということは、かなり私たちにとっては期待できる、頼りになるなというふうに思っ ていますけれども、消費者にとって不安というのはぬぐい切れないものが一番、私の身 近で感じられる問題です。  以上です。 ◎広瀬補佐  ありがとうございました。  それでは、食品衛生協会の伊藤さん、いかがでしょうか。 ◎伊藤福島県食品衛生協会理事  伊藤でございます。先ほどの説明にありましたとおり、今までの残留農薬等について の、いわゆるネガティブリストからポジティブリストになるということは、今まで野放 し状態だったものが今後についてはそれらについても一応、網がかかるというか、そう いった部分についての安全性がより一層確保されるということで、大変いいことだと思 っております。  私ごとでございますが、先ほど言われたBSE、虚偽表示等につきましては、私、協 会の役員と同時に、食肉の件の方で、いわゆる表示の問題、あるいは衛生面の問題につ いても代表していますので、そういった部分でも我々業界としても引き続き努力してい こうと思っていますので、よろしくどうぞお願いします。 ◎広瀬補佐  ありがとうございました。  ほかはどうでしょうか。 ◎姫田情報官  今、表示の話がありましたが、現在、私ども農林水産省では表示に取り組んでおりま す。1つは、今、海外のという話がありましたが、原産地表示ということで取り組んで おります。  生鮮食料品につきましては、輸入品については原産国を表示することになっていま す。そして、国産品については産地、いわゆる福島県産とかというような形での表示を することになっております。  そうすると、外食とか加工品について表示がないではないかというようなことがござ います。ただ、例えば加工品のレトルトカレーなどについて表示をするよう言われて も、その中に入っている肉とかニンジン、ジャガイモとか、それぞれ原産国表示すると いうのはなかなか難しい面があります。  もう1つは、安定的に生産するということを行うには、特定の1カ国だけから原料を 供給するというのはなかなか難しい面があります。それでも、例えば焼き肉用カルビの 味つけカルビとかいうのは今まで加工品になっていたわけなのですけれども、そういう ものも表示対象にしようということで、従来はラッキョウとか梅干しぐらいしかなかっ たのですけれども、今、6品目の加工品についても原産国表示しようということにして いたのですけれども、今後、来年の10月までの間に20食品を追加することで、かなりの 部分を原産国表示をするようにするということを決めた次第でございます。  それから、表示がしっかりされているかどうかということで、牛肉とかウナギなどに つきましては、例えば中国産のウナギと日本産のウナギはウナギの品種が違いますの で、DNA検査をするとわかります。ですから、そういう意味では、現実にウナギの立 入検査をいたしましてDNAの鑑定をして検査しているというようなことがございま す。  ただ、残念ながら、その結果としては、残念ながらかどうかわかりませんが、国産ウ ナギの価格が上がったということは事実でございまして、国産ウナギと書いてあるのは ほとんど国産になったということではないかなと思っております。  そういうことで、全国の2,000人余りの農政事務所の職員。これは昔、お米の検査を していた人たちで、平成15年から農政事務所の職員になったのですけれども、その農政 事務所の職員や消費技術センターの職員が現実にそれぞれのスーパーとかを回って検査 しているというようなことでございます。  以上でございます。 ◎広瀬補佐  ありがとうございました。  それでは、いただいたお話の中で、やはり不安とかがぬぐい切れないというようなお 話がございましたけれども、もともと、きょういろいろスライドの中で説明させていた だきましたように、安全対策で何をやっているかということをなかなかお伝えする機会 がなくて、実際こういう取り組みをしていますというのは新聞などでも余り報道されま せんので、そういうようなことも含めまして今回、こういう取り組みをしていますとい うことを、まず情報として皆様と共有して認識した上で、さらにどういうことをやって いったらいいのかについて考えていきたいと思っております。  それから、きょうの話の中で幾つか複雑に絡んでくるかもしれないのですけれども、 やはり皆さん不安に思われるのは、基準に合わない食品というものが、当然、日本と外 国でそもそもの規制が違っていますので、それでも基準に合ったものを輸入するように という指導はしてきているわけですが、基準に合わない食品がたびたび見つかって、そ ういう危ないという情報というのはすぐ新聞に載りますので、皆さんはそういうのを目 にされていると毎日食べているもので危ないものがいっぱい出ているのではないかとい うふうに思われるかもしれませんが、実際にはそのような状況ではないのだと思うので すけれども、その辺をもう少し話し合っていきたいと思うのですが、どなたか何か御発 言はありませんか。 ◎水口氏  やはり、目に見えないということが不安の1つだと思うのですね。でも、最近はかな り消費者の方も表示には関心を持って、必ずチェックする項目があります。  それは、価格とか正味期限よりも、添加物の問題とかというようなところに気をつけ ていますから、関心はかなり高い。だけど、実際、情報というのが一般の消費者の方に は回っていってないのですね。  そして、私たち消費者グループなどに交ざって活動していますと、試売調査をしたり して「えっ、こんなことあるの」というようなことをじかに感じられますけれども、一 般の主婦は、お勤めなどをしていますとなおのこと、忙しい中で、勤め帰りに買い物を して帰る。その買い物のバスケットを見てみると、今は本当に便利な世の中になりまし て、コンビニがかなり年寄りから若者に利用されているといいますけれども、ほんとに 加工食品がバスケットの中に入っている場合が多いのですね。私だったら素材でもって というふうに考えるけれども、現実は手間をかけないでと。それから、かなり味なども 消費者向けに考えてお惣菜などでもできているというふうなことで、便利になった、豊 かになったという反面の不安というのか、デメリットの面をもう少し皆さんで考えまし ょうと。  コンビニが悪いとかではないのですけれども、やはり私たち、市販弁当の試売調査を したときに、冷凍食品をそのまま、どこで加工されたのかわからないようなものが並べ て入っている、野菜類が少ない、添加物も結構入っているというふうなことを確認する と、必要に迫られたときには仕方ないけれども、それを常食にするようなことは避けよ うというようなことでやっていますけれども、そのようなことの情報というものは一般 の主婦などには浸透していないし、もしできれば、安全なら安全だよというふうなこと も含めて、きちっとした消費者の目線でその情報を提供してほしいなというのが願いで す。 ◎松本参事官  きょう話題提供でいろいろ説明させていただきましたけれども、輸入食品をどうやっ ているか、なかなか説明するのも難しいです。私も昨年、東京検疫所、横浜検疫所のサ ンプリングのところを見、あるいは分析のところを見て、ああ、ここまでやっているの かというのはわかりましたけれども、そこのところを多くの国民の方にうまく伝える方 法が今のところありません。  ですから、多くの方にというのはなかなか難しいですけれども、多くの方に実情が理 解できるように、横浜検疫所にもう少しコンパクトな5分間の映像で、デジタルカメラ を使ってわかりやすくつくってみないかと言っております。NHKテレビで週刊こども ニュースというのがあります。非常にわかりやすいのです。あれの食品安全版みたいな ものを作るよう今年度チャレンジしようと思っていまして、そうするともっとわかりや すいものを出せるのかなとは思っていますけれども、まだまだ試行錯誤であります。  ですから、リスクコミュニケーションで熱心に説明しているからわかるけれども、意 見交換会に来たからわかるけれども、多くの来ない方々に情報が伝わらない。来たけれ ども難しいと毎回お叱りを受けております。2年前にリスクコミュニケーションを始め たときよりは、資料を見ると少しは進歩したと、これは自信を持って言えますけれど も、ただ、多くの方々が、確かに努力は多とするけれども、だからといってすっとわか るかというと、まだわからないねというのが正直な声だと思いますし、まだまだ努力が 足りないと思いますので、多くの方々のところに情報が行くように、かつ、わかりやす くということで進めていきたいと思っております。  また、要するに、情報は出せても、最後の判断する部分がありまして、この部分はな かなか難しい。だから、判断する材料となる情報も含めて提供していく努力を続けてい く必要があるだろうと思っております。 ◎広瀬補佐  ありがとうございました。食品を一目見ただけで、そこに何が入っているのかとか、 農薬とか添加物とか見ただけではわからないということで、そういう情報もそんなには ないですからやはり不安に思われるということなのだと思うのですけれども、そういう ところは企業の方でも情報提供していただくとか、国も積極的に情報を出していくと か、こういうような意見交換の場とかですね。  多分、事業者の方、それから生産者の方、それから流通の方もそうなのですが、もう 少し今進めているコミュニケーションの取り組みというのを進めていって、それぞれお 互いの理解というのを深めていくというのが最終的には信頼につながっていくのだと思 いますけれども。 ◎五十嵐福島県保健福祉部食品安全グループ参事  五十嵐です。輸入食品関係の食品の安全確保なのですが、一番身近なところでという と県の保健所がどんなふうな動きをしているのかなということになるかと思うのです が、福島県では、例えば残留農薬につきましては、BSEの問題以降、検体数を倍増し まして、現在、大体220検体ぐらいの検体数のうち、輸入食品──野菜とか果物とかに ついては55検体ほど検査を実施しております。  16年度は基準値をオーバーしたことはなかったのですが、先ほど来、中国のホウレン ソウにつきましては、14年度に検査したときには2検体ほど基準値をオーバーしてござ いました。ああいうBSEの1つのきっかけがあって、各自治体も相当力を入れて安全 確保対策に取り組んでいるのではないかと思っております。  ただ、先ほど来、食品安全確保というのはなかなか消費者の方々に理解をいただけな いというふうな話がございます。福島県の場合は平成14年度に食品安全確保対策プログ ラム(アクションプログラム)をつくりまして、その中で全国に先駆けて数値目標を掲 げたわけです。できるだけ消費者の方々にわかりやすく具体的にということで、数値を 入れ込んでやりました。  県全体では90事業ほど関連事業があるのですが、その中の45事業ほど数値目標を入れ てやっております。その中でABCのランクづけをして、だめなものはCだよというこ とで、先ほど来、安全だというふうなことがなかなか理解していただけなくて、危険だ という方向にばかり目が行くというのと同じように、大体9割近くは何とかうまく事業 はいっているのですが、1割近くがどうもうまくいかないということで、うまくいかな い事業の方にどうしても目が行って、いろいろお話が出てきます。  私らからすると、9割はうまくいっているのだから何とかその辺をという気持ちが強 いのですけれども、いかんせん1割の方に目が行って、ではそれをどうしようかという ふうなことで安全確保対策を進めている現状にございます。  以上です。 ◎姫田情報官  今、水口さんの方から、市販の弁当などを見ると、どこでつくった冷凍食品かよくわ からないものがあったり、添加物がたくさん入っていたり、野菜が少ないという話があ りました。一方で、今、五十嵐さんや松本参事官の方からも、どう安全をしっかり守っ ていっているのかという話があったと思うのです。  この2つの話というのは、よく考えてみると、例えば冷凍食品や加工品、食品添加物 も、きちっと安全につくっていけばいいということが基本にあります。それは要する に、冷凍食品をつくるメーカーがきちっと安全性を守りながら、例えばHACCPを使 って安全なものをつくっていけばいいわけでございます。  そして添加物についても、添加物といっても、例えばビタミンCだって添加物です し、天然のものも人工のものもいろいろありますけれども、添加物が一概にすべて悪い ということではなくて、それを安全にどう使っていくかが大事なのではないかと思って おります。多分、むしろ伊藤さんの方がおっしゃりたいと思うのですけれども、例えば 添加物を入れないことによって細菌が発生するというような面もありますから、その添 加物を入れることによってよくないということではないと考えております。  ですから、それぞれの場所によって安全性をしっかりと守っていく。それは食品産業 の皆さん方、あるいは農業生産者の皆さん方が、そういうことを守っていくことが大事 なのだろうと思っています。  一方で、さはさりながら、皆さん方は、余り加工品や、やはり新鮮なもの。そして、 福島はこんな農業大県なのですから、福島の農作物をしっかりと食べられるようにした らどうかというふうなこと。そして野菜を食べることが少ない。これはいけませんです ね。やはり野菜はしっかり食べないといろいろな栄養バランスがよくなくなりますか ら、そういうことはむしろ安全の話とは違っていて、現在、私ども食育というのを進め ております。いわゆる栄養教育だとか安全教育だとか、それから地域の食文化の教育 や、そして食品産業、農業生産も含めての教育ということを行っています。その中で、 むしろ安全とは切り離して、食育という面でしっかり取り組んでいく必要があると。こ れはおっしゃるとおりなのだろうと思います。  ですから、前半の安全性については、いかにきちっとした基準を食品安全委員会の評 価を受けながらリスク管理していくかと。それは食品産業の方々も、それから農業生産 者の方々も当然のことであるから、それをどう行っていくかと。それが基本です。  それから、いい食をということであれば、食育でしっかり野菜を食べましょうとか、 バランスよい食事をしていきましょう、福島の農産物を食べましょうというようなこと を行っていくことではないかなと思っております。 ◎広瀬補佐  ありがとうございした。  パネラーの方、大体よろしいでしょうか。 ◎伊藤理事  輸入食品の安全云々という部分ですけれども、先ほどのリスクの認知ギャップという 部分であったと思うのですけれども、私も食肉以外については消費者の1人だと思って おります。そういった場合には、未知のもの、情報の少ないもの、よく理解できないも の、自分でコントロールできないものについては、やはり不安なものが実際あります。 そういった部分の1つとして、手前みその話ではないのですけれども、我々の食肉業界 においてはトレーサビリティー、その他、表示に関していろいろと努力しております。  そういう観点からすると、自分も消費者の1人として考える部分でいうと、今、生鮮 については原産地表示などはある程度徹底して、なおかつ普及しているところだと思う のですけれども、今後においては、先日も一部の外食産業さんでもやっていたと思うの ですけれども、加工食品や外食の部分についても、主たる原料についてはある程度そう いったことをされれば、いわゆる消費者としては安心できるのではないかなと。そうい ったことも考えております。  以上です。 ◎島田内閣府食品安全委員会事務局評価課課長補佐  食品安全委員会の事務局におります島田でございます。今、ほかのパネラーの方か ら、私ども食品安全委員会の評価を受けて、あるいは基準をつくっていただいてという ふうなお話をいただきましたので、ちょっとその御説明をさせていただければと思いま す。私どもは農林水産省、あるいは厚生労働省という、食の安全対策を推進していただ く省庁と別のところにできているということについて多少御紹介をさせていただこうと 思っているのですれども、例えば政策ベース、農産物の生産の振興とか、あるいは農産 物を使って外食産業を盛んにするということも当然必要なことでございますけれども、 それとは別の次元で、いわゆる科学を頼りに判断をしましょうというのが私どもの基本 的な役割でございます。今般、BSEなどで私ども食品安全委員会が、例えば外国の圧 力を受けているのではないかとか、あるいは関係省庁と慣れ合いの関係で仕事をしてい るのではないかというふうなことを言われておりますけれども、逆にそういうことを言 われるということは、私どもが本来、独立の機関であるべきということだと思います。 私どもは今、約200弱の大学の先生とか科学者の方を集めて、その科学者の方々の判断 を伺って評価をしているわけでございまして、そういう評価結果を農林水産省さんと厚 生労働省さんにお伝えして、それによって施策を決めていただくというふうな仕組みで ございまして、安全だけを追求するという立場でやっております。  あわせて申し上げますと、今、私どもの評価をしている対象というのが13の項目にわ たっておりまして、これは今回、食品安全基本法というものができたときに、フードチ ェーンとか、あるいはファーム・トウ・フォーク、あるいはファーム・トウ・テーブル と。いわゆる農業現場でつくられてから食卓に至るまでのすべてのところで食の安全に かかるものがあるのですというふうなことなものですから、そのすべてにおいて安全の 問題となるようなものをチェックするのが私どもの機関でございます。一例を申し上げ ますと、例えば農業の現場において農薬、肥料、それから例えば遺伝子組換え作物とい ったようものの評価、安全性というのをそれぞれ担当しているグループがございます し、加工現場で使われるような添加物、変わったところでは、例えば食品のトレーと か、いわゆる樹脂などで使われているようなものの化学物質が食品に移って、問題が起 きないかというようなことまで調べておりまして、合計13のグループが今、活動してお ります。  申し上げたいのは、私どもはあくまで科学をベースに判断をさせていただいて、安全 に貢献する1つの役割を担っているということです。 ◎広瀬補佐  ありがとうございました。  過去のBSEの反省に立ってということで行政改革されまして、かつてはリスク管理 機関は我々の厚生労働省ですとか、農林水産省の方でリスクの評価から最終的な管理ま で全部一貫してやっていたわけなのですが、ともすると最後の管理のアウトプットのと ころだけ安全ですというような説明になるのでしょうけれども、その過程で科学的には どうだったのかというところがきちんと明らかにされてこなかったのではないか。行政 のところで、例えば科学がきちんと反映されてなかったのではないかというような反省 に立って、純然に科学的な評価をする機関として食品安全委員会が設立されて機能して いるということでございます。  それでは、まず前半の輸入食品のところについて、会場の方からも意見を伺いたいと 思います。  実は今回、この意見交換会に参加いただくに当たって事前に質問とか意見をいただい ておりまして、それについては資料4という形でまとめさせていただいております。一 応、質問の内容と、それから国としての一通りの回答をさせていただいておりますの で、基本的にはこちらの回答をお読みになっていただければというふうに考えておりま すが、ただ、お読みになられて、ちょっと私が質問した意図とは違うということとか、 もう少し細かく聞きたいということなどあれば、質問とか意見交換の際に手を挙げてい ただいても結構です。  御質問、御意見をいただく際のお願いでございますけれども、まず、御意見に当たっ ては手を挙げていただきますが、発言をされる方については私の方で指名させていただ きますので、その際に係の者がマイクを持って伺いますので、発言される際に、差し支 えなければお名前と御所属をおっしゃった上で御発言いただければと思います。  御質問、御意見をいただく際に、他の意見交換会でも同様なのですけれども、大変申 しわけないのですが、お1人様1回当たり2分ぐらいでお願いしております。ほかの意 見交換会の例ですけれども、お一方がずっと長い間お話をされていて、ほかにも聞きた い人がいたのですけれどもなかなか聞けなかったというような事例もございましたの で、なるべく多くの方に御発言いただきたいということで、手を挙げていただいて、ほ かに発言される方がいなければ何回でも当てられると思いますので、御了承いただけれ ばと思います。  それで、2分間についてなのですが、最初に1分40秒たちましたら1回ベルが鳴りま すので、大変申しわけないのですがまとめに入っていただいて、2分たちましたらベル が2回鳴ります。ここで次の方にお譲りいただければと思います。こういう形で進めて いきますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  きょうの目的は、冒頭申し上げましたけれども、いろいろな立場の方からいろいろな お考えを述べていただくということで理解を深めていきたいと思いますので、ぜひ積極 的な御発言をお願いしたいと思います。  それでは、輸入食品の安全対策について御意見のある方はどうぞ。農薬の方はまた次 のときにやりますので、ここでは輸入食品の安全対策についてということでお願いした いと思います。  それでは、意見のある方、いかがでしょうか。 ◎参加者1  郡山女子大学の諸岡と申します。2点ちょっとお聞きしたいことがあるのですけれど も、例えば、BSE絡みですけれども、従来、安全であると。例えばプリオンが入って いないような油脂という問題がありますよね。こういうのは県内でもいろいろ問題を起 こしてきていると。幾ら科学的とはいえ、これは入っていないはずだというものが、実 はいろいろな感染ルートになっているという場合が幾つかあるわけですけれども、こう いう対策というのはどういうふうにとられるのかという点が1点。  第2点目は、最近、ウェブ等で個人の外国産品の輸入というのがございますよね。こ れはやはり死亡事故まで起こしてきているという状況がある中で、輸入食品のこの辺の 対策というのはどういうふうにとらえているのかなと。  この2点をちょっとお伺いしたいと思います。 ◎姫田情報官  油脂というか、基本的なBSE対策の現状ということでお答えしたいと思いますが、 おっしゃるように油脂については、OIEという国際的な機関、いわゆる獣医とか食肉 などの対策を決めているところがございますが、そこでの考え方は、0.15%以上のコン タミネーションがなければ油脂だから安全だよという取り扱いをしております。  ただ、我が国におきましては、1つは、さらに念には念を入れということで、0.02% 以下のコンタミネーションがないものしか餌用には使ってはいけませんということにし ました。さらに、それも、いわゆるSRM(特定危険部位)が入っているようなところ からとった油脂はだめよということにしております。ですから、特定危険部位について はすべて焼却しようではないかというような考え方をとっております。  そういう形で、完全に0.02%以下のものしか使えません。  あと、いろいろなところでも、念には念を入れということで、クロスコンタミネーシ ョン。交差汚染というか、ほかのものがたまたま機械の端っこについているとか、そう いうようなことでの汚染が起こる可能性があるので、そういうことについてもできるだ け分けていこうということで、例えばレンダリング、いわゆる肉骨粉や油脂をつくるラ インですけれども、これも牛用と、豚に鶏用と、それから死んだ牛用と、それぞれライ ンを分けました。それで、去年の4月から完全にそのような状態になっております。そ れから、ことしの4月からは餌も、牛の餌と、それ以外の餌をつくる工場、あるいはラ インを分けました。  ですから、そういう意味で、いろいろなところで、本当は全然混じっていないはずな のだけれども、何かの拍子に混じってしまっているということも含めて防ぐという対策 をとらせていただいております。 ◎広瀬補佐  では、ウェブによる外国品の輸入のところでお願いします。 ◎松本参事官  インターネットを使っての健康食品の輸入ですが、はっきり言って対策がありませ ん。怪しげな広告を自治体が見て購入して調べると、大体、それには食品以外に医薬品 が入っていることがある。  例えば、「今でも現役」「ますます元気」とかいうのは、大体、バイアグラの成分が 入っていますね。最近では、天天素という、痩せるといって精神安定剤みたいなのが入 っていることで取り締まりましたけれども、ああいうのは、はっきり申し上げて、イン ターネットで購入される分については手の出しようがない。ですから、できることなら ば、そういうことがありますから気をつけてくださいと、国民の方に理解してもらうし かありません。  国としてはそういう注意喚起まではできてもそれ以上のことはできません。我々とし てもああいう事故が起きるたびに「さあ、どうしたものかな」と悩んでおりますけれど も、明解な方法はない。あれを大量に購入して業として販売するのであればいろいろ規 制はかけられますけれども、自分が使うのだといって購入し勝手に具合が悪くなるとい うのは困ったものだと思っております。  そういうことのないように事故が起きるたびに新聞等で書いてもらっていますけれど も、手を変え品を変え相手も出てくるものですから、なかなか困ったなというのが正直 なところであります。 ◎広瀬補佐  ありがとうございました。  ほかには、意見とか質問、いかがでしょうか。 ◎参加者2  福島の消費者団体の羽田と申します。  輸入食品の表示の件なのですけれども、実は去年、私らの団体とみんなで調査したわ けなのですけれども、そのとき、今の表示というのは農水省の方でいろいろ書いて、よ り消費者にわかりやすくという御苦労のほどもわかるのですけれども、実際にかつて試 売しますと、福島県は特に農業県ですから、表を見ると福島のお漬物となっているので すけれども、裏側を見るとベトナム産とか中国産とかという原産国表示ですね。  漬物がいっぱいございますよね。やはりこれは消費者の立場から見れば、そこまでき ちんと見るのが当たり前だよとかプロはおっしゃいますけれども、一般の消費者は表の 方を見て、特に観光客などは「ああ、これは福島のお漬物」と思って買っていって、自 分であけてみたら、何とベトナム産、中国産の原材料ということになると、これはばか にされたという感じになりますよね。  だから、表示の問題にも、法律的には間違いでないのですけれども、加工地を表示す ればいいということになっていますのでね。でも、やはり消費者のための表示という視 点を今後はぜひ入れていただいて。消費者から見れば、それはまさしく紛らわしい表示 なものですから。  事ほどさように、輸入の塩蔵野菜など横浜にまだまだ積まっているという情報を今回 見せていただいてまたびっくりしてしまったのですが、あれはもう20年前の話かと思い ましたら、いまだに続いているという話を見まして、今後もまだまだ起きる問題だと思 いますので、ぜひその表示については、もうちょっと消費者サイドからの表示に直すよ うにお願いしたいと思います。 ◎広瀬補佐  ありがとうございました。  原産国をまじめに書いているという点では良心的な業者だなとは思うのですけれど も、情報官、何かコメントありますか。 ◎姫田情報官  今おっしゃったような、例えばお漬物とか加工品については、そういう皆さん方の声 を聞いて、従来は、例えば輸入のラッキョウを買ってきて郡山でパックすれば福島県産 と書けたのですけれども、今はそうではなくて原産国を書くようになっております。  多分、おっしゃっているのは、表示のところと、それから表のラベルのところの問題 ということだと思うのですけれども、そこはかなりぎりぎりのところだと思いますが、 要するに、明らかに福島県産という形ではなかなか書けないようにはしてありますけれ ども、例えば郡山漬といって書かれると、裏にきちっと原産国が書いてある限り違法に はならないという状態です。  表の表示の方は、実は農林水産省や厚生労働省の仕事ではなくて、公正取引協議会と いうのがありまして、そこでみんなで不公正な表示はやめようという考え方に基づいて おりますので、そこはぎりぎりの、ある程度の販売の方の考え方も入ってきます。です から、原産国ということであれば、やはり後ろを引っくり返してラベルを見ていただく ということが必要かと思います。  先ほども申し上げたように、加工品についてはそういう声も聞いて、今まではお漬物 とかごく限られた品目だけだったのですれども、加工度の低いものについては原材料の 生産国を表示するように、来年の10月から20品目まで増やすということにしておりま す。 ◎松本参事官  最後に言われた横浜の漬物の続きですが、昨年の12月3日に輸入食品の監視指導計画 についてのリスクコミュニケーションを横浜でやりまして、そのときにも話題が出まし た。  大分、業者の方も改善して、屋根がつくようにはなりましたので、野積みではなくな ったということは聞いておりますが、これから先も適切な指導をしていきたいと思って おります。 ◎広瀬補佐  ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。  もしあれでしたら、次に農薬の方に進んだ後に、最後にまた何でもという時間を設け ますので、そのときにでもあわせて意見をいただければと思います。  それでは、次の、農薬のポジティブリスト制について。これも説明をいただいて非常 に難しい制度だなというふうにお考えになった方が多いかと思うのですけれども、これ について、これから新たな制度として導入されるということと、1つ大きな点は、今ま で原則自由だったところががらっと原則禁止になるということで、今までは基準をクリ アすれば何が残っていても規制されなかったものが、これからは基準のあるもの以外は 残っているとだめになるわけですから、こういった制度が円滑に進められていくために はどういうふうなことにしていけばいいのか。  これは国の取り組み以外にも、事業者の取り組みですとか、消費者としてもどういう ようなことについて注意してほしいとか多分あるかと思いますので、まずパネラーの方 からちょっと御意見をお伺いしたいと思いますが、ポジティブリスト制のところで、ど なたかいかがでしょうか。 ◎伊藤理事  先ほども言いましたとおり、大変いいことだと思うのです。ただ、実際に事業者の1 人として、納入先からそこのところについての安全確認の書類を出しなさいとか、そう いった場合にはどういった方法があるとか、そういった部分について、より細かいやり 方について事業者に対する手引書というか、検査方法というか、そういったものについ てやっていただければと思っております。 ◎松本参事官  今、一生懸命、暫定基準の策定をやっているところで、その効果の後の運用の部分に ついてはパブリックコメントでもいろいろ意見が寄せられておりまして、当初想定して いなかったようなことも起きてきました。円滑に施行するためにはそういう意見にもち ゃんとこたえるよう今進めているところでございますので、いましばしお待ちいただき たいと思います。  それと、農薬の残留基準の測定法が必要です。基準を決めても測らなかったら、何の ために決めたかということになります。正直なところを申し上げますと、現在、測定す る方法がきちっとしているのが6割ちょっとですね。3割ちょっとが分析法としてまだ 不十分ですので、今、その分析方法を都道府県の衛生研究所と国の機関と一緒になって 一生懸命研究しているところであります。  正直申し上げまして、来年の5月スタートといいながら、そのときに分析法が本当に ぴしっと間に合うかというと、ちょっと間に合わない部分が幾つか出てくるのではない かと思いますが、とにかく分析法についても、今、一生懸命開発を進めているというと ころであります。 ◎広瀬補佐  ありがとうございました。  消費者的な立場からはいかがでしょうか。 ◎水口氏  私も今回ここに出席させてもらうことになって、いろいろ資料を見させてもらって、 知らなかったことがたくさんありました。なるほど、これはいい制度だなというふう に、単純にわかりました。だけど、やはりわかりやすくということが一番あります。  先ほど来、難しい表現だけれども、日本語で適当な表現の仕方がないからこのような 形でと言われていますけれども、実際、この間、私の周りの人が7〜8人集まったとき にお話をしたのです。「トレーサビリティーって、わかる」と聞いたら、誰もわかると いう人はいませんでした。コマーシャルにもトレサービリティーが出てくる時代なの に、実際にはわからない。こういうことなのだよと大体のことを話したら、では、日本 語に履歴という言葉がはっきりあるのだもの、生産流通履歴という言葉で書いてもらう と、「ああ、そうなんだと安心できるのにね」というふうな言葉がありました。  そのようなことが今回いろいろなところで出てきまして、私、片仮名語辞典を脇に置 いて確認しながら資料を読んだという経過がありますので、返す返すも消費者にわかり やすい表現をお願いしたいと思います。  この制度については、私は本当に評価したいと思います。 ◎松本参事官  いい制度だとお認めいただきまして、本当にありがとうございました。その期待にた がわないように努力したいと思います。  あと、片仮名の言葉が多いということについては、日ごろから私も、今のところに来 て部下から資料を見せられて、まず片仮名は何とかせいということを言っているのです けれども、なかなかいい表現がありません。日本語に言い換えると先ほどのように長っ たらしいことになってしまうとか、なかなかいい表現がありません。しばらくすると慣 れてしまって違和感を感じなくなるという恐ろしいこともありますけれども。  ですから、こういうところでよくわからないと言っていただくと、「そうか、そう か。まだ頑張らなくちゃ」ということで、もっとわかりやすい表現を心掛けたいと思い ます。 ◎広瀬補佐  ありがとうございました。  本来のポジティブリスト制度というと、基準の決まっていないものは全部禁止という 添加物タイプのものになるのですが、ただ、添加物は基本的に工場内でかなり管理され て使われていますけれども、農薬ですと環境由来とかですね。川であれば川上から何か 別のものが流れてきたりとかというようなことも想定されますので、そういったことで あって、本来、原則ゼロなのですけれども、ゼロになかなかできないといいますか、一 定量以下。  ある程度、健康に影響のない量というものを定めて、基準のないものはそれを下回っ ていないとだめという制度という形になっている状況でございます。 ◎五十嵐参事  この制度は、我々、長年の懸案が一気に解決できるのでないかなと思っているのです けれども、では基準値をどうやってチェックしていくのだというふうなことになります と、今まで240ぐらいの農薬を一気に700というふうになりますと、検査体制の問題から 経費の問題から大変な問題が山積みしてくるなということで、これから来年の5月に向 けて一生懸命考えていかないと追いついていかないなというふうな気持ちでいっぱいで ございます。 ◎姫田情報官  私は消費・安全局の消費者情報官ということですから、農林水産省という立場でお話 ししたいと思いますけれども、今、広瀬さんからもお話あったように、例えばポジティ ブリストに入っていないのは0.01ぐらいの残留基準になりそうなのですけれども、そう すると、これは残留基準が決まっている作物ですから畑で使って大丈夫です。でも、も しその隣に残留基準が決まっていない作物があって、それにかかると、0.01だとかなり 可能性としては出てくる可能性があるわけです。そうすると、生産者あるいは食品産業 の方々でも非常に厳しいことになるのかなということがあります。  そのときに、こういう検査をやればいいのだよということをきちっと決めておいてい ただけるとその中で調べていけるということがあるわけなのですけれども、それがない と、消費者団体に検査しますよというような人たちが出てきて、そういうことで検査さ れて出てしまったということになると食品産業も生産者も非常に困りますので、ぜひ早 く公定法を確立していただきたいと思っておりますし、もう1つは、まだ暫定値となっ ているようなところをどんどん埋めていただいて、0.01ではなくて、もちろん安全性を しっかりと確保する中で、それぞれの基準値というのを早く決めていただく必要がある のではないかなと思います。  我が国の場合、輸入品があるものですからものすごく大きい数になってくると思うの ですけれども、やはり全体のシステムをしっかりと早くつくっていただく必要があるの ではないかなと考えております。 ◎広瀬補佐  基準がないものは基本的には使わないというのが本来の趣旨ではないかと思います。 ◎姫田情報官  登録農薬の場合で、隣の圃場にかかる。そうすると、農薬の使用が認められている農 産物に適正にまいていて、多分、それについては適正な残留値になるのですけれども、 その隣の畑で、登録農薬だけれどもその作物には登録農薬になっていない場合、0.01の 暫定値になってきます。  そうすると、その作物はちょっと厳しい状態になってくる可能性がかなり高くなるの で、分析法をきちっと確立していただくということが大事なのではないかなと思ってい ます。 ◎松本参事官  公定の分析法についても、先ほど申し上げましたけれども、今、一生懸命開発してい るところで、決まり次第どんどん公表していくことにしております。施行までに早くや らぬといかぬというのはよくわかっておりますので、とにかく全力投球しているところ であります。 ◎伊藤理事  少し外れるかもしれませんけれども、これまた食肉の話で恐縮なのですけれども、食 肉、生肉については、規格基準の上では細菌数とかその他については基準がないわけで すね。このことについては本省の方にも私は電話したのですけれども、このものについ ては加熱処理をするから特に規格基準がないというお答えだったのですけれども、実 際、先ほどと同じように、私が納入先の方から細菌検査等の提示を求められた場合に は、規格基準がないということだと、逆からいうと菌ゼロを期待する場合があるわけで すね。言っている意味がわかるでしょうか。  そういった意味からしても、ある意味では、細菌の規格基準がないということではな くて、大体は菌数でいえば10の何乗くらいまでOKとか、そういったものをある程度は 出していた方が、我々販売する側も消費者の方もどちらもある程度の判断基準になるの ではないのかなということでお話ししました。 ◎島田補佐  今御指摘の点、確かに重要だというふうに思っておりまして、私どもの食品安全委員 会、実は2つの機能というか評価の仕方がありまして、1つは農薬などについて厚生労 働省、農林水産省さんから、評価の依頼を受けて評価をする場合がございます。  そのほかに、食品安全基本法に私ども食品安全委員会みずからが評価案件を決めて、 それについて評価をするというふうな場合がございまして、実はその第1号案件としま して、食肉等の定量的な微生物の管理ということに関して評価を開始しておりまして、 順次、重要な細菌、例えば感染しますと重篤な病気を起こすとかといったものを中心 に、優先順位をつけまして評価を始めている状況でございます。  なかなかすぐに結論を出すというわけにはいきませんけれども、努力をしているよう な状況でございます。 ◎広瀬補佐  伊藤さんからのお話のところも、基準がないということは、それがなぜないのかとい う意味がわかるように伝わった方がいいという御指摘かと思いますので、そういうこと に努めていきたいというふうに思います。  そういった意味で、ポジティブリスト制度の1つ1つの基準も、もともと基準がある もののほかに暫定基準というものもありますし、一律基準と言われているようなものも あるわけで、そういったものをできるだけ、その持っている意味を正確に伝えていきた いというふうに私どもとしては考えております。そういうふうに頑張っていきたいと思 いますので、ありがとうございます。  ほかに、このポジティブリストのところで、パネラーの方で農薬の関係ではいかがで しょうか。 ◎水口氏  私の周りで、家庭菜園ではないですけれども、わずかの土地に野菜をつくって食べて いる人たち、それから出荷している人も身近にいるのですけれども、私ども仲間で話題 になるのが、出荷用のキュウリでも野菜でも消毒するけれども、自家用の作物には消毒 しないのだよというようなことがまことしやかにお話しされて、「そうなんだ。売るの はいいんだ」というふうなことが耳に入ってくると、またそこに不安が1つ出てくると いうようことがありますので、その辺、ちょっと。 ◎広瀬補佐  いろいろなところでそういうお話を実は聞いていて、参事官の方からお願いいたしま す。 ◎松本参事官  去年の9月だったか10月だったか、神戸で農薬についてのリスクコミュニケーション をやったときに、やはり消費者の方で、「そういう話を聞く」とおっしゃる方がいまし た。  野菜農家が、自分のところのものには農薬を使わずに栽培して、出荷するのだけ使っ ているではないかということを聞くけどという質問をされて、生産者の方もいらっしゃ いまして、その方が、それを業としてやっているので、農薬をまくのにそんな区分けで きない。かつ、自分が危ないのは絶対つくらない。だからそういうことはありませんと はっきりおっしゃいまして、役所の人間が言うとそういうことは信用されないのですけ れども、生産者の方が力説されると「ああ、そうでしたか」と消費者も納得されること があります。  神戸灘生協というのは生協の中では非常に有力なところなのですけれども、そこでい ろいろ消費者相談窓口をお持ちになっている。相談があって、マーケットで野菜を買っ たら虫がついていると。こういうものを出荷するとはけしからぬといって怒られたと。  そのときは、虫がつくというのは、それだけ農薬が少ないという証拠ですよと。本当 に農薬を使わなかったら虫だらけになりますよといって、「ああ、そうですか」と言い つつも、消費者は農薬は嫌だと言いつつ、農薬が少し減って虫がついたようなやつを嫌 うという、そういう矛盾したことをやっているということはおっしゃいますけれども、 生産農家の方に言わせると、もう少し使用の実態を見てほしいということを切におっし ゃっていらっしゃいます。ですから、そういうのがまことしやかに語られて非常に迷惑 しているということを、その場でおっしゃっていましたね。  私は農家でないものですから聞きかじりの知識しかありませんので、もしフロアの方 で農家の方がいらっしゃったら、いや、そういうことではないのだとかおっしゃって下 さい。その方が一番正しいと思いますので。 ◎参加者3  私自身はキュウリを30本ぐらい植えるのですけれども、だからグループの皆さんに減 農薬で喜んでもらって食べてもらっています。  でも、近所の出荷している農家の方は、これは自分で食べる、これは出荷するという つくり方はしていないと思います。やはり自分で食べるから、それなりに気をつけてや っていると、私は思います。 ◎広瀬補佐  一般には、例えばキュウリ農家の方が自分のところで食べるキュウリというのは、基 本的に栽培しているものと同じものを食されているというような話を聞いていますけれ ども、例えばキュウリ以外に、自分のところでまた別に家庭用に、ほかにもナスとかト マトとか、それも何10本ではなくて2〜3本とかつくっているときは、栽培地とは区分 けしてつくられているということはあるみたいですけれども。というのは、畑と自分の 庭先でつくっているものはまたちょっと違うかと思うので。  ただ、つくっているものについて区分けして、例えばちゃんと自分でキュウリを栽培 しているのに、そのほかに分けて、その一部を自分用とかには分けていないと聞いてい ます。情報官からもお願いします。 ◎姫田情報官  これは宮城の門田さんという有名な農家の方がおっしゃっていたのですけれども、出 荷用につくるものは分けないで使っていますと。それはプロだから、施用基準を全部知 っているからちゃんとやっていますと。ですから、出荷するものを分けないで自分も食 べているしと。  ただ、例えばキュウリを出荷しているのだけれども、トマトを自分のためにつくるに は、自分はトマトの施用基準を知らないので、だから農薬をかけないでやっています と。ただ、そのときは、大規模につくるわけではないので、いわゆる病害虫もそんなに 来ないからつくれるのだけれども、という話をされていました。  ですから、あくまでも施用基準を知らないものについては農薬をかけないと。だか ら、プロとしてやっているときは当然、施用基準をわかっているのだから、きちっとか けているということをおっしゃっていました。 ◎参加者4  郡山の消費者団体です。  私、直接、農家の方から聞いた話で、農薬ですが、お米なのですけれども、「空中散 布、あなたの方でまだやってんの」と聞いたときに、その農家の方が、うちの方は空中 散布をやっていますと。でも、山の麓で空中散布が届かないところに自分が食べる田ん ぼがあるのだということを聞きました。  だから、やはり裏腹はあるのではないかなということと、あとは、トレーサビリティ ーの問題の説明のときに、キュウリ栽培の方が、毎日消毒しているのだけれども、それ を毎日記入して出さなければならないのかいと、農協の方に聞いておりました。  というのを2つ、私、実際に農家の方から聞いております。 ◎姫田情報官  2年前に農薬取締法を改正しまして、従来は農家が農薬の不適正な使用をした場合に は罰則規定はなかったのですけれども、罰則規定をつけました。その後、日本の農家数 が400万戸なのですけれども、480万枚のパンフレットをつくって配布して、いわゆる農 薬の適正使用についてずっと訴えております。  そういう意味で、時々、農協の事務所にどんと積んであったりすることもあるようで ございますけれども、とにかく農薬の適正使用ということについて、我々、そして都道 府県の方々、そして農協と一緒に、みんな協力しながら十分に周知徹底を図っていかな ければいけないと思います。農家の方皆さんが全部わかっているとは私どもはまだ思っ ておりませんので、これからも十分、周知徹底を図っていかないといけないと思ってお ります。  それから、トレーサビリティーということでございますが、トレーサビリティーとい うのは決して安全を確保するものではございません。今おっしゃったように、顔が見え るから安全ということは決してありませんので、その前に、私ども、適正農業規範を、 つまりまじめに、農薬についても肥料についてもきちっとやっていこうではないかとい うこと。そして出荷のときもきれいな水で洗うなどということを決めて行うなど、その ような対応をしています。  いわゆる食品産業ではHACCPに当たるようなものを今、一生懸命やっていて、食 品産業にも法令遵守という、コンプライアンスを高めろという話もありますけれども、 農家の皆さん方にもやはりそういうことを守っていただこうとしています。そして、適 正農業規範というものを守って安全な農産物を出荷していこうでないかという動きを行 っております。  そして、トレーサビリティーというのは、そういうことをきちっとできて安全性が確 保された中で、顔が見えなくても安全なのだという状況の中で、それでも顔が見える方 が安心だわとおっしゃる方には、ちょっと高くなりますけれども高く買っていただくと いうことでございまして、別に顔が見えないから、トレーサビリティーがないから安全 ではない農産物ですということではないと思っております。 ◎広瀬補佐  ありがとうございました。  少し繰り返し強調しておきたい点がございまして、資料3の3ページの下のところの 6番目、暴露量と生体影響の関係というのがありますけれども、ちょっと誤解をしやす いのは、暴露量が10分の1になるとリスクが10分の1とか、要するに危険度が10分の1 に下がるというふうに一般的に誤解されやすいのですが、この図で、例えば致死量みた いにあるところは、少し量を下げると生体影響というのは大きく下がってくるわけです が、無毒性量以下の、例えば実際に今規制しているようなエリア以下レベルのところに なったときに、暴露量を10分の1にしても例えば生体影響の縦軸というのはほとんど変 化がないですね。  ごく微量に変化するのかもしれないのですけれども、そういう意味では、基本的に基 準を守ってつくられているものであれば生体影響は出ないはずなので、それだと無農薬 のところとそんなに危険度としては変わらないはずなのです。リスクはゼロではないと いうふうに言っていますので、そこは完全にゼロではないかもしれないのですけれど も、そんなに大きくは変わらないということです。どちらも安全だということなのだと 思うのですけれども、その辺はちょっと誤解のないようにしていただければというふう に考えております。 ◎参加者5  郡山女子大の短期大学部の紺野と申します。  2つほどお願いしたいのですけれども、ADIという考え方がございますね。それ で、このADIというのはもともと1つの化合物についてだけ決められるのだと思うの ですけれども、農薬の場合は、複合汚染というのですか、1個だけではなくて2個か3 個となるので、我々消費者は何が不安かというと、1個だけではなくて複合的にいっぱ い出てきた場合どうなのだということはあると思うのですね。それに対する国の考え方 はどういうことになっているのかなというのを、ひとつ教えていただきたいと思いま す。  あと、今、暴露の話を私が質問しようと思っていたら、そちらでお話があったのです けれども、これは最近、環境ホルモンなどというのがありまして、閾値がないと。閾値 以下でも出てくるのだというようなことがありました。ところが最近になりますと、そ の話題がだんだん少なくなりました。というのは、きょうは環境省の話ではないので出 てこないのだろうと思うのですけれども。  そういうわけで、幾ら下がっても安全だとなかなか言いにくいというのは、実際はあ ると思うのですね。ただ、先ほどからお話があるように、分析する技術も難しいわけで すからなかなか最低のレベルを決めるというのは難しいわけですけれども、やはり消費 者の不安を除くためにはどうしても、閾値というのですか、その辺の考え方をもう少し きっちり教えていただきたいなと思います。  以上です。 ◎広瀬補佐  複合汚染のところ、いかがでしょうか。 ◎松本参事官  複合の部分については、実際には組み合わせが多くあり過ぎて、手つかずというか、 どういう手法をとればいいかまだわかっていません。  ただ、これまで農薬を使ってきた経験があるわけですけれども、基準値以下のような ところで複合的なものによってできたであろうということを裏づけるような研究は今の ところありません。では本当に影響はないのかというと、これはなかなか難しい。  ただ、1つ1つについてADIを調べ、強化し、それをもとに基準をそれ以下のとこ ろで決めていますので、その複合の影響はどうかというと、正直いうとこれはわからな いということですけれども、そういうことを強く示唆するような事実というのは今のと ころ見当たらないというところであります。  それと、農薬と環境ホルモンの話というのをちょっとお話しになりましたけれども、 群馬県で「ちょっと気になる農薬の話」という小冊子を出されました。反農薬東京グル ープの辻さんという方も委員の中に入られて、合格点とはおっしゃってなかったですけ れども、主張したことの半分ぐらい取り入れてあるということをおっしゃっており、今 おっしゃったようなことをQ&Aの形で、子供さんが親に農薬の話を聞くという形で書 いておりますので、我々の説明よりはこちらの方がもっとわかりやすいかなという感じ でおります。320円だそうですから、もし御関心がある方はお買い求めになってくださ い。 ◎島田補佐  補足でございますけれども、確かに、今御指摘いただいたような複合汚染。難しい言 い方をしますと、相加効果とか相乗効果というような言い方をします。  私どもの農薬の科学者グループでもそういう議論はされておりまして、これは特に医 薬品の部分で、実際に体に取り込むような形で人間に摂取するような高容量、濃度の高 い量のところで、確かにそういう相乗効果、あるいは複合の効果というのは見られてい ます。  それに対して、いわゆる農薬のように農作物にほんの少し残留しているものについて も幾つかの論文が出ています。その中には、相乗効果、相加効果という複合汚染の効果 が見られますというものがありますが、実はその後に同じような論文で、そういうこと は見られなかったとの報告がなされるなど、科学的には完全に証明がされないというふ うな状況がございます。  逆に言うと、今、参事官の方から御説明をいただいたように、少しの効果があるかも しれない。ただ、それは個々の農薬について100分の1という、本来、何か毒性が見ら れるものよりも濃度的に100分の1低いところで基準をつくっていることからすると、 今言ったような相乗効果によって問題が起きるレベルにはないというふうな議論がされ ておりました。  それから環境ホルモンの方につきましては、先ほど広瀬補佐の方から御説明をいただ いた暴露量と生体影響の関係ということですが、今、先生が御指摘されたのは閾値に関 係する話だと思いますけれども、この閾値というのは、先ほどの致死量との関係でこう いうなだらかなグラフが描けなくて、ごく低いレベルのところで反応が出るところがあ るのではないかと。  それが環境ホルモンの一番の問題だったのですけれども、これは農林水産省さんと環 境省さんの方でお調べいただいて、現行登録されているような農薬について問題となる ようなものがないので登録を抹消する必要はないというふうな判断がなされ、今、登録 されているものについて問題がないとの評価が出ております。 ◎広瀬補佐  ありがとうございました。一般論でお話をするとさらに暴露量は生体影響の関係にも つながるのですけれども、ただ、作用のある量同士を合わせると相互に作用したりとか 相乗効果になるのでしょうけれども、作用のないもの同士で合わせたときにどうかとい うのが多分、非常にわかりにくいということ。恐らくないだろうと。あるかもしれない けれども、完全にないとは言えないけれどもわからないということなのだと思うのです が、量的に作用のあるもの同士で、例えば医薬品みたいなものを重ね合わせるとまたそ れによって作用というのは出てくるかもしれないのですが、作用しない量同士で掛け合 せせたときというのはそれほど相乗的な効果というのはなかなか起きないのではないか なというのが、どうも一般的な認識のような気がしております。  それから環境ホルモンについては、環境ホルモン問題が起きたときに政府の方からす ごいお金をかけていろいろな試験をやって、いろいろな科学者の方が、何と言ったらい いのでしょうか、この線でいくと、ずっと下におりていって、実際の使用レベルあたり のところにぽこんと山ができるのではないかというものを一生懸命探したわけなのです が、探して探して見つからなかったというのが今の状況でございます。  それでは、3人目の方。後ろの列の方、お願いいたします。 ◎参加者6  日本エコテックの川崎と申します。  ポジティブリスト制が施行された場合に、消費者サイドさんの方はすごくリスクが減 ってよろしいかと思うのですけれども、生産者サイドさんの方から見るとすごくリスク が上がるのではないかなというふうに思います。その点は、先ほどちょっとお話が出ま したがドリフトの問題と、土壌施用した薬剤の後作への影響の2点があると思うので す。したがいまして、農薬はちゃんと登録農薬をまいているのだけれども、そうでない ものが一律基準値以上に検出されるリスクがあると思いますが、そのあたり。  もう1点は、前作に土壌施用した農薬が後作に検出されないかということが心配され ていますが、そのあたりについて、そういう実態調査の結果と、あるいは対応策があれ ばちょっとお話しいただければ農家の方は安心できるのではないかと思いますけれど も、お願いします。 ◎姫田情報官  おっしゃるとおり、特にポジティブリスト制になったらドリフト、つまり農薬の飛散 という問題で、隣で適正に使っていたけれども、作目が違うので厳しい0.01ppmの残留 基準が適用されて、オーバーしてしまう可能性があるというものがございます。  それで、当然、そういうことで、ドリフト飛散をどう防止するかというようなことで ドリフト対策連絡協議会というのをつくりまして、まずドリフトの防止と、低減するた めの技術開発というものを今進めているところでございます。  また、選果場などに行って、選果場もその品目専用ということではないものですか ら、選果場でうつるというようなことも考えられますが、そういうことについても現 在、技術的に、あるいは具体的にどういうふうにやっていけば低減できるかということ を検討している最中でございます。  それから、土壌中にということですが、昔はドリン剤が特にこの近県でかなり大きな 問題になっていたものですけれども、ドリン系の農薬ということで、残留が非常に大き い農薬がございました。それがまだ今でも残っていて、時々出てくるというようなこと もございます。ただ、現在においては農薬というのは昔に比べてかなりよくなりまし た。よくなったというのは、皆さんはよく、効果が上がるから人間への影響も強いので はないかということですが、そうではなくて、害虫に対して効果が高くて、人に対して は効果が低いと。しかも、光に当たるとすぐ分散してしまうというタイプのものが非常 に増えてきております。  ですから、そういう意味で、農薬というのはどんどん見直しされて、古いタイプのも のは新規の登録をされなくなってきておりますので、そういう意味ではかなり残留性と いうのは全体的に低くなっておりますので、それぞれの登録農薬の残留性は当然検査い たしますけれども、余り残留性ということについては心配する必要がないのではないか なと考えています。 ◎参加者6  先ほど五十嵐さんが、この制度が実際に動き出したときに地方公共団体に相当の負担 がかかるのだろうというふうなことをおっしゃいましたけれども、私もその辺は非常に 気になるところで、例えば人材の育成とか、検査する検査員の能力とか、そういうもの が大きな問題になってくるのではないかと思うのですね。  その辺をどんなふうに考えていらっしゃるのかひとつ伺っておきたいことと、もう1 つは、私の意見の中に入れておいたのですが、耐性菌の問題。いわゆる飼料添加物とし て使われておりますよね。あと、病院でもちろん耐性菌の問題は大きく出ておりますけ れども、そういうものが規制の対象に入ってくるのかどうか、その辺が知りたいところ なのですね。これは人間の病気とのかかわりもありますので、できればその辺も含めて お伺いしたいと思います。 ◎広瀬補佐  分析法の方を、まず参事官の方から。 ◎松本参事官  このポジティブリスト制導入に当たりましては、まず、分析すべき対象の農薬は格段 に増えます。ですから、そのための人と物の部分は必要になるということで考えており まして、国としても例えば検疫所での検査の体制を今後どうするかということがありま すし、都道府県の方についても、こういう公定の分析法についてきちっとやっていただ くというようなことでの講習なり研修ということが必要であろという具合には考えてお ります。  あと、都道府県の方については、それなりに手当てをしていただくということになる わけでありまして、都道府県の方では一緒になって苦労してくださいというお願いで す。 ◎広瀬補佐  耐性菌は姫田情報官の方からお願いします。 ◎姫田情報官  まず耐性菌の問題につきましては、もともと飼料添加物に入れる抗菌性物質というの は、どちらかといいますと人間でいうと古手のものを使っております。  29成分ありまして、そのうち13成分が人と共通でございまして、残りは動物だけしか 使っていない、人間ではもう使っていないようなもの、あるいはもとから動物専用のも のというふうになっています。  今、食品安全委員会の方に評価をお願いしておりまして、13成分のうちの4成分はも うやめようということで、9成分についてはこれからどうするかということを評価して いただこうと考えています。残りの動物性専門の成分については人への影響というのは 関係ございませんので、これから食品安全委員会がどう評価されるか別ですけれども、 という状況になっております。ですから、できるだけ人との共通のものは減らそうとい うことを考えています。  もう1つ、それを堆肥の中でというようなことが質問の中にあったかと思うのですけ れども、堆肥はまじめにつくっていただきますと、きちっと切り返しをすると中心温度 が80度から90度ぐらいになります。そうすると表面温度でも60度を超えます。通常、低 温殺菌牛乳が60度を30分間ですから、60度を30分間で基本的に細菌は死にます。一応、 堆肥の指導では表面を60度、2日間は置けというような指導をしておりまして、まじめ に堆肥をつくっていただく限りにおいては、耐性菌どころかすべての細菌は基本的に死 滅するということになっております。  もちろん、私ども人間と共通の好気生物を減らすという考え方と、もう1つは、いわ ゆる堆肥のきちっとした生産を指導してまいりたいと思っております。  もう1つは、よく、この薬を入れると堆肥がよくなるとかというようなのがあるので すけれども、これはほとんど怪しくて、基本的には堆肥は普通に積み上げて、そして雨 がかからないようにして適切に切り返しをする。そうすることによって非常にいい堆肥 ができるだろうと思っております。水分含量を減らすということでも、いい堆肥ができ ます。  それから、人間のバンコマイシンなども、もちろん飼料添加物には使っておりませ ん。 ◎島田補佐  今、私どもの食品安全委員会で評価をしているというお話が出ましたので、今の評価 の進み具合をちょっと御紹介しておきます。  今申し上げたような人への耐性菌ということで、医療現場でなかなか菌が殺せなくな って感染症で困っているということがあるのですが、食品として果たしてそういう問題 が起きているのかどうかというのは、ひとつ疑問だということだけ念頭に入れていただ ければと思います。  つまり、医療現場で抗生物質を使っているものによって耐性菌が出ているものもあり ます。それから、今御指摘のように、飼料添加物なり動物用医薬品の中の抗菌物質とい うものを原因としてそういったものが発生している。というのは、そういう物質を使っ た家畜の肉に耐性菌が発生して、その肉を食べた人が発症するということで、それが人 間の抗生物質に効かないというのが耐性菌の一番の問題でございます。  本件は、人の医療と食品の関係でございますので、厚生労働省さんの方から、医療現 場でどの菌、いわゆる感染症の菌が問題であるかという情報をいただきまして、今後、 動物用医薬品なり飼料添加物を評価する際に考慮していただくリスト等の作成をしてい る状況にあります。 ◎姫田  現在、世界的には耐性菌というのは医療現場では数多く発見されておりますけれど も、いわゆる動物の方からの発見というのはごく一部の論文に限定されているというの も現実でございます。ですから、量的にはなかなか申し上げられませんけれども、医療 現場での耐性菌の発生ということが大きな問題だろうと考えております。  ただ、だからといってきちっと評価しないということではないということです。 ◎参加者1  郡山女子大の諸岡です。3点お聞きしたいのですけれども、1点目は、このポジティ ブ制度というのの対象品というのは、輸入品、国内品、両方ともなのかどうなのかとい う点が、話を聞いているといまひとつよくわからなかった。  第2点目。輸入品、国内品、両方ともというチェックが恐らくあるのだろうと思うの ですけれども、この場合はほかの法律との関係ですね。例えば抗生物質等については食 品等から検出されてはならないというような基準があるかと思うのですけれども、例え ばこのポジティブリスト制度外には、対象となるものの最低基準が0.01ppmというよう な判断が例えば法的に出るとすると、これはOKなのかという点が次の点にあるのでは ないかと。  さらに、外国からの輸入品、特に赤道周辺の国の場合、マラリア等の防除のためにD DTを使用していて、現行はやはりその国ではDDTを使って、日本国内に輸入する場 合、日本はそれをチェックしているわけですね。こういったものの取り扱いというのは どうなっているのかということですね。  最後の3点目は、ここで挙げられたポジティブリスト制に出てくる基準というのは、 今、話を聞いていると安全基準というふうに聞こえるのだけれども、安全基準なのか管 理基準なのか、この辺、話を聞いていてよくわからないのですけれども、そこら辺をち ょっとお聞かせ願いたいと。  以上の点であります。 ◎松本参事官  ポジティブリスト制の対象は、国内、国外、全部かかります。  それと、マラリアの常在地でDDTを使っているがどうかということでは、マラリア の常在地で使おうと使うまいと、それは当然、この基準を超えるものについては認めら れないということになります。  それと、安全基準か管理基準かということは、これは管理基準ということで考えてい ます。  それと、法制制度としては、担当が来ておりますので、担当の方から答えた方がいい と思います。 ◎事務局(厚生労働省食品安全部基準審査課浦上係長)  厚省労働省食品安全部基準審査課の浦上と申します。  抗生物質の御質問の関係でございますけれども、現行の規制で抗生物質は食品に含有 してはならないという規制がございまして、ただ、残留基準が設けられているものはそ の含有してならないというのは当てはまらないというところはあるのですけれども、こ の規制がございますので、抗生物質につきましては一律基準は適用されないということ でございます。 ◎広瀬補佐  要するに、抗生物質が出た段階でアウトということになるわけですよね。基準のない ものが出たら。 ◎事務局(浦上係長)  そうです。 ◎広瀬補佐  それで、3人目の方に行きたいと思います。 ◎参加者7  カゴメ総合研究所の須川と申します。資料4の質問集の12番目の質問でも触れられて いると思うのですが、加工食品についての判断基準について質問があります。  この12の文章を読むと、加工食品は水分含量などを勘算して判断に用いるというふう に読めますが、これが複数の原材料から成る加工食品の場合、例えば基準値と原材料比 を掛け合わせて判断に用いるということはできないのですよね。例えばそういう基準値 をつくったとしても、それを超えないからといってすべての原材料は基準値を超過して いないかと言われれば、そうではない。  複数の原材料から成る加工食品の場合、どうやって判断すればいいのかというのが、 ちょっとわからないのですが。 ◎広瀬補佐 野菜ミックスジュースみたいに10何種類も入っていたりしたら、恐らく現実に無理なの ではないかと思うのですけれども、それはどうでしょうか。 ◎事務局(浦上係長)  まず、原材料は基準に合ったものを使っていただくというのが基本でございますの で、使う原材料をきちんと管理していただくということが重要だというふうに考えてお ります。 ◎広瀬補佐  結局、遡って調べていくことになるのではないかと思うのですけれども、違反の蓋然 性があるものがあったら、例えば使っている原材料がほんとに大丈夫なのかと。  ただ、それは後から別のものに替えたりしては見つからないとか、現実的に管理でき ない部分というのは多分出てくると思いますが、なるべく原材料の時点できちんとした ものを使っていただくということが重要なのではないかというふうに思います。 ◎参加者7  たらればのことになってしまうとちょっと申しわけないのですが、もし製品としてそ ういった基準値を超過してしまって、どうやって判断しようというときに、原材料にま でトレースできない場合というのはどういう処置をとるべきかわからないので、それを どうすればいいのでしょうかね。担当の方でわかりますでしょうか。 ◎松本参事官  厳し目に言えば、そういう製品は出荷しないでくださいということになるのだと思い ます。 ◎参加者7  ありがとうございます。 ◎広瀬補佐  時間の方、押してしまいましたが、何でもということで結構ですけれども、あと数名 お伺いしたいと思います。 ◎参加者8  福島県の農林水産部の農薬の方を担当しております草野といいますけれども、暫定基 準の決め方の部分で、厚生労働省さんの方でホームページで公開している暫定基準案の 設定というのを見せていただいたのですけれども、類型が6つほどありまして、1の1 から3とかいろいろ分かれている、そういう細かいところを見させてもらったのですけ れども、その中で、1から5までというのは割と納得できるのかなという気がしたので すけれども、6の部分ですね。ちょっと細かいところで申しわけないのですけれども、 そこを見ていて、ちょっと厳しい部分があるのかなと。  その6を適用した部分で、設定された暫定基準の中で、0.01という一律基準の部分で はなくて、外国でもっと低い基準を採用しているから0.001とか0.002とかという設定を されているものがあると。  そういうふうに、ないものについては0.001とか0.002というものになっていて、外国 で設定されたもので0.1とかと非常に高いものがあって、同じ作物分類群の中で50倍な り100倍の違いが出ているというふうなところがあるので、その辺のところについて見 直しとかがあるのかどうか、その辺をよろしくお願いしたいのですが。 ◎松本参事官  暫定基準については、先ほど申しましたけれども、施行後5年の間に諸外国の状況と かを見て優先順をつけて見直すことにしておりますので、今お尋ねあった部分がその辺 に該当すれば見直すということになろうかと思います。 ◎参加者9  お願いなのでございますけれども、こういういいリスクコミュニケーションをせっか くなさっても、私もその世代なのですけれども、インターネットを見ない世代にはさっ ぱり情報が届かないという現実がございますね。そういうのをどうしても見たいという ことになれば誰かにプリントアウトしてもらって見るということになるのですけれど も、そこまで手間をかける消費者というのは余りおりませんよね、実際問題としまし て。  やはり、これだけ優秀な方が並んでいらっしゃるのですから、わかりやすい情報をリ アルタイムに届けていただくという、そちら側の努力もぜひお願いしたいと思うので す。そうでないと宝の持ち腐れで、消費者の方の不安はさっぱり解消しないという部分 がございますので。  それで、1つ提案なのですけれども、国民生活センターでは「国民生活」とか「確か な目」とか、情報を出しておりますね。ああいうところに情報スクランブルというコー ナーもあるのです。そういうところに毎月、定期的に、今月はこういうコミュニケーシ ョンがあって、こういうあれがあったというあたりを、きちっと簡単に、わかりやすく 出していただくという、わかりやすくという部分ですね。それは、やはり努力というも のをぜひお願いしたいと思います。 ◎松本参事官  貴重な御意見、ありがとうございました。すぐ御期待に沿えるかどうかちょっと自信 ありませんけれども、いろいろ努力はしたいと思います。  インターネット以外の部分についてもっと努力する必要があると行く先々で言われて おりまして、それなりに努力したいと思いますけれども、指先の訓練にはなりますの で、まずは使うということもまたお考えいただければと思います。 ◎広瀬補佐  それでは、3人目ということで、一番端の列の方、お願いします。 ◎参加者10  これは質問の方なのですが、自分で質問した幾つかのものをずっと読んでみたわけで すけれども、その中でまだ納得しないところがあるので、同じことで質問したいのです けれども、遺伝子組換え大豆のことなのです。  番号でいけば23番なのですが、回答を見ますと、いわゆる遺伝子組換えを使っていま すという表示をしなくてならない豆腐とか納豆には遺伝子組換え大豆は使っていないの だと思うというふうに書いてあるのですね。大豆の自給率は3%ですよね。そのうちほ とんどがアメリカから入ってくるわけですけれども、アメリカから入ってくるのは全部 遺伝子とは言いませんが、入ってくる場合のことについて1つ質問したいのです。  というのは、いわゆる大豆製品業者を幾つか回って見て歩いたことがあるのですけれ ど も、うちの大豆は荷積みで入ってきますという業者と、うちはばら積みですという業者 が あるわけなのですが、ばら積みと荷積みでは大きな違いがあると思うのですね。  日本の国に入ってくるときに、ばら積みと荷積みというのはどのくらいの割合で入っ てくるのかなと思うのです。それによってこの回答が少し納得できる部分と納得できな い部分に分かれるのですけれども、そこのところをお願いしたいと思います。 ◎広瀬補佐  残念ながら手元に細かいデータはないのですけれども、アメリカの遺伝子組換え大豆 の作付の割合というのは御存じですか。  全部が遺伝子組換えではなくて、たしか6〜7割だったと思います。要するに、遺伝 子組換えではない大豆もちゃんと作付されていて、分別生産流通管理というのは遺伝子 組換え品ではないということを、きちんと遺伝子組換えのものと分けて、それぞれ生産 から、集荷するところ、船に積むところまで全部分けて、その証明がきちんとしていな いと分別流通管理できていないことになって、不分別という表示をしなければいけなく なるのです。  それは、混ざらないことをきちんと管理していますよということを全部証明できない と不分別の扱いになってしまいますので、不分別の原料を使った場合には遺伝子組換え でないとは書けない。むしろ、遺伝子組換え、もしくは遺伝子組換え不分別という表示 をしなければいけないという制度になっていますので、そこは、脱法行為というか、法 の網をくぐり抜けたものがない限りはきちんと遺伝子組換えでない大豆が使われている はずです。 ◎姫田情報官  大豆の自給率が低い原因は、大豆は国内輸入されまして、ほとんどが油用です。サラ ダオイル用に使われております。これは多分、組換えのものがかなり多く使われている と思います。御存じのように、それは表示義務がないということでございます。  そして、国産の自給率が低いのですけれども、国産のものはかなり豆腐、納豆、味噌 などに使われているということで、まず1つは、豆腐、納豆、味噌については国産の割 合がかなりあるということがあります。  それから、今、広瀬さんからお話しされたように、特に大豆については非組換えのも のがアメリカでもかなりつくられておりますので、それは使われているのではないかな と思っております。ですから、表示義務がありますので、当然、使いたくないのがある のでそういうことになっていると思います。  ただ、もう一方で、今おっしゃった荷姿の話なのですが、現実に食品用は、許可され た、いわゆる安全性の評価された登録物の組換え体については、混入規制が5%という ことです。ですから、明示的に組換え体を使っている場合は表示しないといけませんけ れども、基本的に組換え体ではないということで買ってきたものについては、5%以上 混入していなければ組換え体ではないということで使えますので、当然、その場合、途 中での船の輸送経路での混入ということは全く否定することはできないということはお っしゃるとおりであると思っております。 ◎広瀬補佐  一応、きょうの資料の中に「遺伝子組換え食品の安全性について」というパンフレッ トも入っているかと思いますので、こちらの方も御参考にしていただければというふう に思います。  まだ御納得できないということであればもう少し御意見いただいても結構ですが、い かがでしょうか。 ◎参加者10  ばら積みで入ってくる場合は、私としての心配は、いわゆるばらだから、遺伝子組換 えのものも遺伝子組換えでないのも一緒にごっちゃに入って、混ざってしまう可能性は ないのか。それで5%ということを言っているのと思うのですけれども。  だから5%。でも、EUは3%ですよね。そこら辺でちょっと納得できない部分があ るのですけれども。 ◎姫田情報官  EUの場合は、組換え体については安全性の問題以前の、いわゆる農業問題がござい ます。EUとアメリカの間には油糧種子問題がございまして、いかに油糧種子を輸入し ないかということで非関税障壁になっております。  これについては、WTO上、提訴されておりまして、EUはその代償措置を払ってお ります。払って、絶対にアメリカの油糧種子を入れないのだということで、非関税障壁 として堂々とやってしまっている。安全性の問題ではないということをEUは考えてお ります。 ◎広瀬補佐  あと、多分、ばら積みだからというのは、恐らくばら積みする大豆すべてが遺伝子組 換え品でないやつを積まないと、ばらばらになったとき混ざってしまうのでそういうふ うにされていると思うのですけれども、担当の方から補足がありますので。 ◎事務局(厚生労働省食品安全部監視安全課輸入食品安全対策室鶴身室長補佐)  食品安全部監視安全課で輸入食品を担当しております鶴身と申します。どうぞよろし くお願いします。  ばら積みと荷姿の違いがどれぐらいあるかというのは、データを持ち合わせていませ んのでお答えできないのですが、ばら積みであっても遺伝子組換えでないものというも のもたくさんありまして、そういったものの検査も行っております。ばら積みだから遺 伝子組換えが混ざっているということは、必ずしも荷姿でもって言える話ではないので はないと思っています。  輸入量について大まかに言いますと、昨年度の実績で、大豆の場合、遺伝子組換えの 大豆ですと言って輸入されているものはありませんでした。ただ、もちろんこれは食品 の場合ですが、不分別として輸入されているものが5割強ぐらいです。不分別でないも の、GMではありませんとして輸入されているのが5割弱ぐらいの割合になっておりま す。 ◎広瀬補佐  どうしても最後に私はこれだけ聞きたいという人がいらっしゃれば、もう1名の方だ けでもお聞きしたいと思いますが、よろしいでしょうか。  それでは、ちょっとお時間を超過してしまいましたが、司会の方にマイクを返したい と思います。ありがとうございました。                   7 閉会 ◎司会  本日は貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。これをも ちまして「食品に関するリスクコミュニケーション」を終了させていただきます。  また、皆さん。近くでこうした意見交換会を開催するということもございますので、 そういった場合はぜひとも御参加をいただきたいというふうに思います。  最後に、皆様の御意見をよろしくお願いしますというふうに申しましたけれども、ア ンケート用紙を出口で回収しておりますので、御記入いただきまして、ぜひとも御回答 いただければというふうに思います。  それでは、皆様、お気をつけてお帰りください。本日はどうもありがとうございまし た。(拍)  本日の意見交換会はシリーズでやっていまして、8月に名古屋で、9月に千葉で開催 する予定でございますので、興味のある方はぜひ参加していただければと思います。ど うもありがとうございました。                                     (了)