04/12/03 平成16年12月3日(神奈川県)「食品に関するリスクコミュニケーション (輸入食品の安全性確保に関する意見交換会)」議事録 食品に関するリスクコミュニケーション(輸入食品の安全性確保に関する意見交換会)                   議事次第           日時:平成16年12月3日(金) 13:00〜16:55           場所:神奈川県民ホール大会議室 1.開会 2.輸入食品の施策に関する説明 3.民間の取り組み例について 4.基調講演 5.休憩 6.パネルディスカッション 7.意見交換 8.閉会 ○司会(森田)  それでは、定刻になりました。本日はお寒い中、たくさんの方にお集まりいただきま してありがとうございます。  ただいまから食品に関するリスコミュニケーション、輸入食品の安全性確保に関する 意見交換会を開催したいと思います。  私、本日司会を務めさせていただきます厚生労働省食品安全部の森田と申します。よ ろしくお願いいたします。  初めに、資料の確認をさせていただきます。茶封筒の中から取り出していただきまし て、次第と書いてある1枚の紙に沿いまして説明をいたします。下の方に配布資料一覧 とございます。  まず、資料1といたしまして「輸入食品監視の現状」。  次に、資料2として「輸入食品監視指導計画(案)」。  資料3が「輸入冷凍野菜の農薬管理の事例」。  資料4が「食品中の化学物質に関わる安全性について」。  資料5が「食品に関するリスコミュニケーションにおける事前意見・質問について 」。  それから参考でございますけれども、参考1といたしまして「平成17年度輸入食品 監視指導計画(案)」。  参考2といたしまして「平成16年度輸入食品監視指導計画監視結果 中間報告」。  参考3といたしまして「平成15年度輸入監視総計」。  それから、資料の中のレジュメにはございませんけれども、「平成17年度輸入食品監 視指導計画案についての意見募集について」。  それから、最後にアンケートの用紙がございます。このアンケートの用紙でございま すけれども、今後の意見交換会をよりよいものにすると思っておりますので、忌憚のな い御意見を御記入いただきまして、お帰りの際に提出いただければと思います。  続きまして、簡単に本日の議事進行を紹介させていただきます。  まず「輸入食品の施策に関する説明」ということで、輸入食品監視の現状につきまし て横浜検疫所の吉田所長から御説明いただき、「輸入食品監視指導計画(案)」につい てということで厚生労働省食品安全部監視安全課輸入食品安全対策室の桑崎室長から御 説明いただきます。  それから、次に「民間の取組例について」ということで「輸入冷凍野菜の農薬管理の 事例」につきまして輸入冷凍野菜品質安全協議会の山本様から御発表をいただきます。 そして、次に基調講演といたしまして「食品中の化学物質に関わる安全性について」、 実践女子大学の西島教授から御講演をいただきます。ここまでで約2時間、午後3時を 予定しておりまして、ここで10分間休憩を挟ませていただきます。  休憩を挟みましてパネルディスカッション及び意見交換会ということで、終了は午後 4時半を予定しておりますのでよろしくお願いいたします。  それでは早速でございますけれども、輸入食品監視の現状につきまして吉田室長から よろしくお願いいたします。 【輸入食品の施策に関する説明】(横浜検疫所長) ○吉田所長  皆さんこんにちは。御紹介賜りました横浜検疫所の所長を務めております吉田でござ います。まず私の方から輸入食品監視の現状ということで、パワーポイントを使って御 説明をさせていただきます。 (スライド)  まず、私ども検疫所というものにつきまして御紹介させていただきます。厚生労働省 の施設等機関の一つでございまして、検疫所の行っております業務は大きく2つござい ます。1つは、海外からの感染症の侵入防止を役割といたします検疫業務でございま す。もう一つが今日議題となっております輸入食品の監視・指導でございまして食品衛 生法に基づく業務、この2つが私ども検疫所の大きな仕事でございます。 (スライド)  まず、前提として我が国の食料自給率はカロリーベースで年々低下傾向にございます が、昭和40年の73%であったものが現在では40%にまで低下してきております。その中 でもお米や卵は96%とほぼ100%近く自給されておりますが、豆類はわずか7%、小麦 に至りましては13%と、極端に輸入に頼っている事態となっております。このため、我 が国の供給熱量ベースで40%の食料自給率となっており、その結果、私どもの食料の60 %が輸入食品であるということでございます。 (スライド)  我が国の輸入食品の監視体制は、昭和22年に食品衛生法が発足し、その後の法改正に よりまして昭和26年に輸入食品監視業務がスタートいたしました。厚生省の食品衛生監 視員が横浜を始め、7つの検疫所所在地に11名の食品衛生監視員が配置されたのがスタ ートでございます。昭和32年の法改正によりまして食品の輸入届出制度が発足し、昭和 57年に輸入食品の食品衛生監視員事務所が検疫所に統合されて現在に至っております。 そして、10年前の平成6年から輸入食品に対しますモニタリング検査が強化されまし て、検疫所におきますモニタリング検査が行われるようになってまいりました。 (スライド)  検疫所におけます現在の輸入食品監視体制は全国に国の食品衛生監視員として295名、 輸入食品の届出窓口が31か所、検査施設といたしまして輸入食品の検疫検査センターが 横浜と神戸の2か所、そのほか東京、名古屋、大阪、福岡、成田空港、関西空港の検疫 所に検査課が小規模の検査施設を持っております。 (スライド)  これが全国の届出窓口の状況でございます。31か所が全国に散らばって配置されてお ります。 (スライド)  検疫所におきます輸入食品の監視業務は大きく4つの業務を実施しております。1つ は食品等の輸入届出書の受理業務でございます。以前は書面によりますケースが大部分 でございましたが、近年におきましてはフロッピーディスクによる提出あるいはNAC CSというコンピュータの端末からによります届出、こういったものによる届出が行わ れております。その届出されました届出書を検疫所の方で一枚一枚審査をし、そして必 要な指導を行うわけでございます。その結果、必要なものについては食品等の検査を行 うということで命令検査、指導検査、行政検査、モニタリング検査等々の検査を実施い たします。そのほか事前の輸入相談指導業務と、この4つの業務を検疫所で輸入食品の 監視指導として実施しております。 (スライド)  食品を輸入した場合、その食品が販売の用に供される場合、または営業上に使われる 場合、これらを輸入しようとします場合にはその都度、厚生労働大臣に届出をしなけれ ばいけないわけでございます。ただし、個人の方が自家用として御利用になる、あるい は使用される食品等を海外から購入して持ってこられる場合には特に必要はございませ ん。販売あるいは営業に使われる場合にはすべて厚生労働大臣に届出をするということ になるわけでございます。 (スライド)  その届出は、このような輸入手続を取ります。簡単に御説明いたしますと、食品等が 海外から輸入されますとまず検疫所に輸入届出書を提出していただきます。検疫所はそ れを書類審査をいたしまして、検査の必要なものか、そうでないものかを判断をいたし ます。そして、検査を必要とするものについてはその保管されている輸入食品の現場に 出向き、そこで現場検査をいたします。そして、必要な命令検査をするか、あるいはモ ニタリング検査をするかという判断を行うわけであります。  一方、検査の必要のないものについてはそのまま届出済証を発行いたします。検査結 果合格したものについても同じように検査済証が発行され、そしてやっとこの品物は税 関を通関して市場に出回るということになるわけであります。  一方、検査をした結果、不合格になりますと、その品物はすべて外国に積み戻しされ るか、あるいは焼却されるといったことで、国民の口の中には入らないような形になっ ております。これが一般的な手続の流れでございます。 (スライド)  次に、食品等の輸入届出の件数等の推移でございます。この青い線が昭和40年来の届 出件数の推移でございまして、毎年ウナギ登りに上昇してきておりまして、昨年で168 万件の輸入届出がございました。一方、その届出をされました輸入食品の重量ベースで いきますと大体3,000万トン程度で横ばい状態でございます。これはその間、日本人の 人口自身が余り変わっていない。また、当然、人のおなかの大きさというものは変わっ ておりませんので、重量は大きく変わっていないということでございます。  一方、この数字は横浜の検疫所におきます取扱状況でございますが、件数といたしま しては18万件、重量といたしましては411万トンと、全国の10%強が横浜で荷揚げをさ れているということでございます。 (スライド)  これらの160万件余の輸入食品の審査届出受理に対しましては、私どもは輸入食品監 視支援システムというコンピュータシステムを導入しておりまして、平成8年にFAI NSというシステムを稼働させ、そのFAINSは平成9年に税関の通関情報処理シス テムとインターフェイスされております。したがいまして、輸入業者による通関代理店 そのほか銀行あるいは検査センター等々、関係するところとこのFAINSで結ばれて おるわけでございます。したがいまして、このFAINSを使ったシステムで90%の輸 入手続が行われております。これ以外にどうしても中小といいますか、零細な業者さ ん、あるいは異業種の方々が単発的に輸入されるような場合に書類での届出というもの が行われております。 (スライド)  これは、FAINSとNACCSのインターフェイスシステムを模式化したチャート でございます。 (スライド)  次に、輸入食品の内容、内訳でございます。これをごらんいただきますと件数で比較 してございますが、最も多かったのは農産食品及び農産加工品でございまして28%、そ の次が水産食品・水産加工食品で21.7%、畜産食品・畜産加工食品が19.4%、こういう ふうな割合で輸入されております。 (スライド)  次に、この件数を地域別で見ますとアジアが最も多く48%、その次がヨーロッパ、北 アメリカと、このような順序でございます。更にこれを輸入先の国別の重量で見ますと アメリカが最も多く、大豆、小麦、トウモロコシがアメリカから多く輸入されておりま すし、次いで中国から鶏肉、タケノコの水煮、そば、大豆、こういったものが輸入され ておりますし、第3位がカナダというふうな順位でございます。 (スライド)  そこで、輸入食品に関します検査制度を御紹介いたします。まず先ほどからお話をし ております命令検査というものがございます。この命令検査というのは輸出国の事情、 食品の特性、同種食品の不適格事例から、食品衛生法の不適格の可能性の高い食品につ いて厚生労働大臣が輸入者にあらかじめ検査を命じるものであります。したがいまし て、輸入者は自らの費用で登録検査機関で検査を実施し、その検査結果をもって輸入手 続を行うことになります。  したがいまして、この検査結果が出るまでは輸入されました食品は通関されない。い わゆるまだ保税中であるということになります。 (スライド)  次にモニタリング検査、これは食品の種類ごとに輸入量、輸入件数、過去の違反率及 び衛生上の問題が発生した場合の危害度等を勘案して、年間計画に基づいて厚生労働大 臣が決めます計画に基づきまして検疫所が行う検査でございます。したがいまして、こ れはあくまでも衛生状態を確認するという観点から、また円滑な輸入流通を目的として おることから、この検査結果の判明を待たずに輸入手続を進めることが可能でございま す。  しかしながら、仮にこのモニタリング検査において違反が判明されますと、その食品 については回収措置をとっていただくことになるわけであります。したがいまして、大 部分ではモニタリング検査に該当した場合には、その業者さんたちにその検査結果が出 るまで保管をされているというのが一般的でございます。 (スライド)  その他の検査といたしまして、ここに書いてありますように行政検査、指導検査とい うものがあります。初めて輸入される食品等の検査、あるいは輸送中に事故が発生した ような場合、その確認をするために検疫所が実施する行政検査というものが1つござい ます。また、指導検査といたしまして初めて輸入する場合、あるいは定期的に輸入する 場合、輸入者としての衛生確保の観点からその業者さんに確認をしてもらうために検疫 所が指導をして自主的にやっていただく指導検査、こういった4つの検査があるわけで ありますが、これらの検査を私どもは輸入届出をされた都度、必要に応じて使い分けな がら適正な、そして安全な食品の輸入が行われるよう、検査を実施しているわけでござ います。 (スライド)  モニタリング検査については、それぞれの食品の種類ごとにおいてどのような検査項 目を行うかが決められております。そして、必要な検査数というものも全国的に輸入食 品監視指導計画によって毎年決められております。今年度は総計で7万6,000件のモニ タリング検査が予定されて、これに基づいて各検疫所がそれぞれ実施をしているところ でございます。  ちなみに、この7万6,000件のうち横浜検疫所におきましては、本年は9,500件程度の 検査を実施するべく現在実施しておりまして、7割程度の検査を既に4月から実施して まいりました。 (スライド)  モニタリング検査におきますサンプリングにつきましても、ただやみくもに私どもは 輸入された品物の中からサンプリングしてくるわけではございません。それぞれどのよ うな検査項目か、あるいはその輸入食品の形態に応じまして、またその輸入をした量、 ロットの大きさと言いますが、このロットの大きさによってどの程度の梱包から開梱を してサンプリングするか、そして、そのときのサンプリングする量、こういったものが それぞれ決められております。このサンプリングについては国際的な世界WHOとFA Oが共同でつくっておりますコーデックスという規格基準の委員会が示しております基 準を元に我が国の検疫所でも使って実施しているわけでございます。 (スライド)  したがいまして、私ども職員は現場に行きまして対象貨物の確認、外観のチェック、 表示の確認などを行い、決められた採取方法により、サンプリングをいたすわけであり ます。特に、微生物の検査を行うような場合には異物の混入防止や、あるいは細菌によ る二次汚染の防止といったものに特に注意を払ってサンプリングをいたします。また冷 蔵あるいは冷凍された食品等につきましては、その採取時、そして採取後の保管、運搬 におきましても冷蔵、冷凍の形で同一条件の下で検査センターまで運ぶようにいたして おります。このような形で監視・指導を実施しております。 (スライド)  そのほか、横浜検疫所では埠頭におきますいわゆる野積みの塩蔵野菜等の保管監視を 行っております。この監視活動は昭和60年以来、毎年横浜市さんと共同いたしまして、 山下埠頭や本牧埠頭などにおきます野積み野菜の保管場所あるいは保管状況といったと ころを定期的に監視いたしまして、その関係業者に対し、適切な保管を指導要請してお るところであります。このことから、近年は以前と比べますと大分改善をしてきたので はなかろうかと思っております。 (スライド)  これが、先ほどから申し上げますようにサンプリングしてきた食品等でございます。 再度輸入届出の内容と照らし合わせをし、そして色などの外観あるいはにおいなどの感 応検査、こういったものを行った上でそれぞれ区分をして検査センターに搬送をいたし ます。 (スライド)  ここが横浜の検査センターでございます。 (スライド)  我が国においては、東日本の検疫所でサンプリングされました検体は横浜の検査セン ターに集められ、ここで検査を実施いたしております。一方、西日本の検疫所で集めら れました検体は神戸の検査センターで集められて同じように検査が行われます。 (スライド)  横浜の検査センターの組織は、ここにございますように現在5人の統括検査官制度を 設けておりまして、動物用医薬品、残留農薬、添加物、遺伝子組換え、そして微生物、 このような5つのグループごとに統括検査官、検査官19名、それに検査の信頼性確保の 部門としての審査指導課、こういった組織が検査センターで活動をしております。 (スライド)  全国からサンプリングされました検体は左の上のような検体箱に入れられて、これは 宅急便で毎日朝から送ってまいります。その中で特に冷凍、冷蔵食品等でございます と、その輸送途中におきます温度管理が大変重要でございます。そこで、ここにありま すような温度計を設置して、この温度計で常時温度を測りながら輸送をしてまいりま す。その輸送されましたものは輸入届出書ともう一度再確認をして検体受付をされて検 査に回されるわけであります。 (スライド)  大きく微生物検査の流れでございますが、サンプリングされました検体はクリーンベ ンチで調整をされ、そしてその調整された液を培地に接種します。 (スライド)  そして培養され、判定を行うというような形で微生物の検査は行われます。 (スライド)  一方、理化学検査でございますが、サンプリングされました検体を粉砕器によりまし て粉砕します。 (スライド)  そして、均一化された材料にこのように有機委溶剤を加えて撹拌をしてロータリーエ バポレーターで濃縮いたしまして、下のカラムで精製をいたします。 (スライド)  それを、このようなガスクロマトグラフあるいはガスクロマトグラム質量分析計とい った機械を使って検査を実施するわけでございます。 (スライド)  私どもこの検査に当たりましては、検査の信頼性の確保ということが極めて重要でご ざいます。そこで、先ほども申し上げましたように審査指導課という組織を設け、その 中の職員がこのように実際に検査者のやっておりますところで内部点検をして実際の検 査をチェックし、正しい適正な検査を実施するよう努力をしております。 (スライド)  その結果、昨年、平成15年の横浜センターにおきます検査実績はモニタリングだけで 2万6,000件余でございます。検査官は29名でございます。横浜センターではこの2万 6,000件に加えて、お米の検査あるいは感染症の検査等々を合わせますと約3万件の検 査をわずか29名という少ない職員で実施をしているわけでございます。  ちなみに、昨年は2万6,000件強のモニタリング検査から65件の違反を検出しており ます。 (スライド)  これが全国におきます輸入届出と、その検査、違反件数の推移でございます。一番下 の平成15年の欄をごらんいただきますと、168万件の届出に対し、検査されました件数 の総数は17万件でございます。その内訳といたしましては、行政検査が7万件余でござ います。そして、登録検査機関によります検査が約10万件、そのうち命令検査関係が6 万4,000件でございました。そして、最終的に違反とされた食品が1,430件判明したとい うことでございます。 (スライド)  これが、その1,430件の違反の内訳でございます。この中では第11条の添加物の使用 基準違反、農産物の残留農薬の違反、冷凍食品の細菌の加増殖などによるものが48.6% と、ほぼ半数を占めております。次いで、第9条の食肉あるいは食肉製品の衛生証明書 の不備によるものが約30%、そして次に3番目が第10条のサイクラミン酸等の指定外着 色料等、指定添加物使用によるものが10%強といった形で昨年の違反が判明したという ことでございます。 (スライド)  次に、検疫所の最後の業務として事前の輸入相談指導を行っております。これは横浜 検疫所におきます相談指導の状況でございます。昨年では約900の相談者から約4,000件 の相談品目の相談がございました。その結果、154件の違反を事前に発見し、これが未 然に輸入されることを防いだわけでございます。したがいまして、この相談指導という のは非常に重要な役割を担っていると私どもは感じております。 (スライド)  また、私どもは消費者等への情報提供として、検疫所でも消費者の方々に対します見 学の受け入れでございますとか、あるいはホームページを公開し、輸入食品の監視の実 態を御理解いただけるよう努力しているわけであります。厚生労働省でもホームページ をつくっておられますが、私ども横浜検疫所もこのようなホームページを公開し、その 中で輸入食品の情報提供を行っております。 (スライド)  更に、私どもではこのように輸入食品を含め、私どもの検疫所の業務を御理解いただ くための施設公開を毎年実施してきております。これは今年6月に行ったときのチラシ でございますが、土日の2日間、パネル展示、ミニ講演会、体験コーナーなどを行いま して、私たちの検疫所の活動を市民の皆様に御理解いただけるよう行ったわけでござい ます。来年以降もこのような施設公開を実施してまいりたいと思っておりますので、御 関心の向きは是非御来所いただきますようお願いしたいと思っております。 (スライド)  最後に、私どもの横浜検疫所はこの11月から発行されました1,000円札に掲載されて おります野口英世博士が、明治29年に半年間ではありましたが、横浜検疫所に勤められ て御活躍されたことがございます。そういったことで、野口英夫博士のレリーフが私ど もの検査センターの正面玄関で皆様方をお迎えしております。これからも私どもの検疫 所の業務を十分御理解いただき、また御支援を賜われれば幸いでございます。御静聴あ りがとうございました。 ○司会  ありがとうございました。  続きまして、「輸入食品監視指導計画(案)」につきまして、桑崎輸入食品安全対策 室長よろしくお願いいたします。 【輸入食品監視指導計画(案)について】(輸入食品安全対策室長) ○桑崎室長  御紹介をいただきました食品安全部輸入食品安全対策室長の桑崎でございます。それ では、私の方から平成17年度の計画案につきまして御説明を申し上げます。  お手元の資料2にこれから説明いたしますパワーポイントがコピーをされております ので、御参考にいただければと思います。参考の1が計画案の本体でございます。これ も後ほどごらんをいただければいいと思いますし、参考の2が平成16年度の監視指導計 画に基づく中間的な取りまとめで、半年分の結果をこの資料でお示しをしてございます ので、これも参考にしていただければと思います。それでは、概要について御説明を申 し上げます。 (スライド)  そもそも監視指導計画とは何ぞやということになるわけですが、昨年食品衛生法の大 幅な改正を行いました。その中で輸入食品、それから国内輸出食品もそうでございます けれども、重点的もしくは効率的、効果的に監視を実施するために計画を定めて監視指 導を実施し、輸入食品であれば輸入食品の安全性を確保するという観点から策定をされ るものでございます。  それで、重点的な監視、効率的な監視ということと合わせて、実はこのときになぜこ ういう計画をつくることになったかという背景の一つに、当時もそうですが、輸入食品 を含めた食品の安全性に大変消費者の方々の不安がある。その不安の原因は何かという ことをいろいろ議論している中で、先ほど吉田所長からお話がありましたが、例えば検 疫所は監視指導を一体どういうふうにやっているのか。その結果はどうなのか。もう少 し申し上げますと、保健所でやっている監視指導というのは一体どうやっていて、その 結果はどうやって公表されているのか。我々のやっている業務について十分消費者に伝 わっていないのではないかという反省も踏まえて計画を策定をし、その中で下から3番 目に書いていますけれども、その結果については公表をする。  先ほど参考資料の2をお示ししましたけれども、その公表の仕方も輸入食品に関して は中間的に一回公表をする。それから、最終的に年度の来年6月くらいに公表をする。 2回公表していこう。更に、つくるに当たってはこの度のリスコミもそうですけれど も、いろいろな方々の御意見をお聞きをしながらつくっていこうというような透明性の 確保という観点も合わせ持って監視指導計画をつくることになったわけであります。 (スライド)  監視指導の基本的な考え方ということで、先ほど実際の監視の話がございましたけれ ども、基本的には昨年食品安全基本法が制定をされました。その中に明確に書いてある わけですけれども、食品の安全性の確保というのは国の内外ですね。内だけではなくて 外も入っている。輸入食品も入っているということになりますが、外における食品供給 行程と書いていますけれども、農林水産物の生産から食品が販売されるに至るまでの食 品供給行程の各段階において適切な措置を講じることにより行うということが食品安全 基本法に明確にうたわれているわけでございます。  こういうことを踏まえまして私がいろいろなところで申し上げていますのは、輸入食 品の安全対策というのはスリーステージで行うんだ。それで、最初にやはり川上対策と いうとあれですが、輸出国における対策というものも強化をしていく必要がある。それ から、2番目として我々が実際にやっている検疫所を中心とした輸入時の取締りも強化 する。更には、その食品というのは国内に流通するわけでありますから、国内の流通時 でも違反がないかどうかをチェックする。こういう3段階で総合的に食品の安全を確保 していくというのが基本的なコンセプトです。 (スライド)  それをフローチャートに移行してみました。輸出国、輸入時の対策というのは今、御 説明申し上げていますとおり輸入食品に関しての計画に基づき実施をする。それから、 国内流通時におきましては下に少し書いてありますけれども、都道府県の監視指導計画 によって行うということになっております。  これらがぐるぐる回るわけでありますけれども、まず輸入時で先ほどお話がありまし たが、検疫所で審査をして検査をする。それで、ここで検査命令、モニタリング検査、 指導検査となるわけですが、モニタリング検査で違反が見つかった場合には後ほど出て まいりますけれども、命令検査に移行するということになっているわけです。これで仮 に合格をして都道府県に実際に流通する段階においても実は都道府県でチェックをする ということで、ここで違反が見つかった場合には検疫所におけるその食品に対する監視 の強化につながっていく。それで、それらの違反情報というものが合わせて輸出国にも 伝えられて必要な対策を要請していくということで、トータルで食品の安全性を確保し ているわけであります。 (スライド)  よくこういう場で食品衛生監視員の数の話が出ます。現在295名でございますが、過 去3か年を見てみますと平成14年度は268名でした。前年度4名の増になっています。 15年度は283名ですが、これは大幅増ということで前年度に比べると15名の増というこ とで、平成16年度は15年度に比べて12名、295名で現在食品衛生監視事業を実施をして いるということでございます。 (スライド)  16年度の監視指導計画に基づく監視結果ということで、先ほどの資料の参考2に詳細 が書いてありますので2ページをお開きいただきたいと思います。2ページの3に監視 結果中間報告ということで、届出検査違反の状況で4から9月の速報値となっていま す。それで、4月から9月までは届出が88万件あって、検査は9万件強実施しました。 検査の割合は10.3%ということになっています。違反は484件で、違反の割合は0.1%で したというのが全体の監視結果の概要になっています。それで、前年と比較をすると平 成15年の4から9までは届出が83万8,000件で若干5万件ほど伸びているということで す。それから、検査の総数も8万1,000件でしたから9,000件程度伸びているということ で、約12%の伸びという状況になっているわけであります。  次に、表の2をごらんいただくと主な違反事例ということで延べ数525、届出の件数 でいくと484件の違反の概要が示してあります。それで、先ほどの平成16年度違反の状 況でお気付きの方がいらっしゃったかもしれませんが、平成16年は違反の件数が1,430 件あるんです。前年は972件でした。この1年間でどうしてこんなに違反が伸びたんだ ろうとなってしまうのですが、これは昨年米国産のBSE事件が起きて、発生した時点 で衛生証明書の不受理という、要するに輸入を認めないという行為をしました。その数 が約500件、後ほどその詳細が出てまいりますが、それを引くと1,000件くらいです。し たがって、ほぼ前年並みの違反ではないかと私は思っております。  次に、4ページをごらんいただけますか。表3はモニタリングの検査実施状況となっ ています。この資料のつくり方は順繰りになっているのでごらんをいただくといいので すが、表3は予定件数年間7万6,000件というものが出ましたけれども、4から9で4 万件実施をして実施率は約53%ですから一生懸命しりをたたいているわけですが、ほぼ 目標どおり行われているということだと思います。  こういう食品群別の検査を実施して、その結果がどうであったかというのが表4で す。モニタリング検査を実施して、モニタリング検査で大抵1回違反になると、その次 の違反から同じ食品群については届出の半分について検査を実施することになっていま す。したがって、届出の50%について検査を実施する。ぐっと上げて検査を行うんで す。その結果、モニタリングの検査が強化された品目というのは評価4に書いています とおり全輸出国、最後はベルギーですけれども、このように国の右側に書いています が、例えば全輸出国であればハトムギ、ベルギーであればパ−スニップというふうに、 こういう食品について一番右側のこういう事項、物質について50%のモニタリングを実 施しているんですという流れになっております。それで、ここに書いていますけれど も、夏場の腸炎ビブリオについては50%ではなくて全部検査を実施しているということ です。  それで、50%に上げた結果どうなったのかというのが6ページの表5にあります。そ の結果、今、残留農薬、動物医薬品につきましては同一の国、同一の食品群について2 回違反が出ると検査命令に移行するということで、先ほど50%に上げた食品のうち検査 命令に移行した食品が実はこれだけあるということで、中国から始まってベネズエラの カカオ豆、物質はこういう物質ということで順繰りに実はこのような形で検査の強化を しているわけです。  表6は、4月から9月現在のトータルの検査命令ということで、検査をしないと通関 を認めない食品が実はこれくらいありますということになっておりまして、こういう概 要を実は報告をさせていただいているわけです。これがここにパワーポイントで書いて ございます。 (スライド)  16年度は、既に先ほど言いましたように16年度の監視指導計画に基づいて監視指導を 実証しているわけですが、17年度はこういう16年度の結果も踏まえて見直しを強化いた しました。  1つはまず輸入時の監視強化ですけれども、モニタリングの検査件数を1,000件増や して7万7,000件にしよう。これは届出の伸びも当然勘案をするし、それから新規に基 準ができたものもあるということで、その分も含めてカバーして7万7,000件の検査を 実施しようということです。それから、もう一つは先ほど3つの段階で食品の安全性が 確保されているんだということで、川上対策が極めて重要だという話を申し上げました けれども、輸出国における対策というものも推進をしていく必要があるということで、 これは計画にも書いていますが、17年度は問題がある場合にはできる限り外国に行って 調査を実施をしてこようということですし、去年はやはり残留農薬ということを中心に 考えましたけれども、いろいろ違反の状況を見るとそれ以外にも、例えば二枚貝の貝毒 の問題であったり、更には腸炎ビブリオの問題であったり、かび毒の問題であったりと いう問題も出ていますので、ここら辺も新たに追加をして輸出国にそういう対策の推進 を求めていく。  それから違反品の対応ですけれども、先ほど輸入で通関したら国内流通時でチェック があると申し上げましたが、違反品の処理に関して都道府県等の役割を一層の明確化を 図っていくということ、更にはその他として試験検査のGLPについても点検を計画的 に実施をするというような内容が主な改正の強化点でございます。 (スライド)  重点的に監視指導を実績すべき項目ということで、当然輸入時の届出におけるチェッ クというのは行うわけですけれども、モニタリングの検査というのは平成17年度は7万 7,000件ということでありますし、モニタリングの検査で違反が発見された場合には先 ほど申し上げましたように輸入時の検査を強化しているわけでございます。 (スライド)  輸入食品のモニタリングの考え方ですけれども、なぜ7万6,000件、7万7,000件が出 てきているのかということです。これは根拠としてコーデックス、コーデックスという のはFAO/WHOの合同食品基本計画ということで世界規模で基準の作成をしている 機関ですけれども、コーデックスの分析サンプリング部会においてここに書いています とおり、統計学的に一定の信頼度で違反を検出することが可能な検査の数がここで示さ れています。例えば95%の信頼度をもって、ある特定の食品群について間違いなく1% の違反を見つけようとした場合には299件をその食品群で検査すればいい。それで、違 反率をもう少し低くして0.1%の違反でも見つけようとする場合には2,995件を検査をす る。もう少し言うと、10%にすると29と、こういうガイドラインが実は示されておりま す。  それで、先進諸国といいますか、欧米諸国でもこのガイドラインに基づいてモニタリ ング検査を実施をしているわけでありますけれども、基本的には95%の信頼度で1%と いうものを一つのラインで欧米では考えております。したがって、特定の食品群で申し 上げると299件のサンプリングで1%の違反がないかどうかを見ているということにな ってございます。  それで、我が国はこういうことをベースにしているわけですけれども、そうは言って も問題のある食品はもっと多く検査しなければいけないし、ほとんど輸入がないものは 別に299件やらなくてもいいのではないかということなものですから、過去の違反率と か、輸入件数が多いか多くないか。輸入重量はどうなのだ。それから、違反の中身で直 接的に健康被害があるものはないかどうかということを勘案をして、これらで問題があ るものは実は299ではなくて最大の0.1%、2,295件を割り当てて特定の食品群について 検査を実施をしていますし、先ほど言いましたもっと問題のないものでは29件というも のもあります。こういう食品群ごとに積み上げた数字が7万6,000件になっていると御 理解をいただいていいのではないかと思います。 (スライド)  検査命令の発動の要件となっていますけれども、ここに書いてあるとおりでありまし て、外国で何か問題があって日本に輸出されているという場合には直ちに検査命令をか ける。それから、残留農薬、動物用医薬品はモニタリングで違反が見つかると50%にア ップをして違反がないかどうかをチェックする。それで、ここで2回目に見つかった場 合には直ちに検査命令に移行で、その食品については検査で合格しないと輸入できない ことにしています。 それで、問題は1回目、2回目のカウントなのですが、これは自 治体で同一の食品で違反が見つかってもここにカウントしているんです。したがって、 自治体で見つかったら50%、それも同じように扱っているわけです。それで、検査命令 の解除についてはもう大丈夫だということが確認されるまでは引き続き検査命令を実施 するとしています。 (スライド)  海外情報に基づく緊急対応ですけれども、先ほど申し上げましたように我が国はいろ いろな国からさまざまな食品を輸入している現状があります。したがって、モニタリン グでもちろん検査を強化するわけですけれども、それ以外に外国で何か食品安全に関す る問題が起きていないかどうか、これも十分に迅速に情報把握をして、その結果に基づ いて輸入時検査を強化するのに必要な措置をとる必要があるということで、ここの部分 を実はかなり強化をしているわけであります。  1つは、国立医薬品食品衛生研究所に安全情報部という部をつくって、ここが外国の 例えばFDA、EU、カナダというようなところの食品安全情報を定期的にモニターを していて、ここで問題を発見すれば当方に情報提供していただけるという仕組みになっ ていますし、更に最近は今日もお見えになっている食品安全委員会からの情報も大変貴 重で、そこでこういう情報があるぞとわかった場合には直ちに輸入時の検査の強化をし ています。  それで、具体例として米国産アーモンドと春雨の話が書いてあります。米国産アーモ ンドは、国立医薬品食品衛生研究所の安全情報部から情報をいただいて直ちに検査を強 化したわけであります。これは生アーモンドを食べてアメリカでサルモネラ中毒が起き ているという情報を探知をして、この中に御承知の方もいらっしゃるかもしれません が、我が方はそれを受けて直ちにアメリカから来るアーモンドについてはすべて届出を 保留をして、何が問題であったかということの情報を収集の上、必要な対策をとったと いうことでございます。  それから、中国産春雨についても日本では使用が認められていないというか、ハルサ メには使用が認められていない過酸化ベンゾイルがどうも中国で使われている情報があ ったものですから、これについても輸入時検査を強化したということで、こういうふう にモニタリングだけではなくて外国で何が起きているのかということも含めて情報収集 をして輸入時検査の強化をしているということであります。 (スライド)  こういうふうに整理をすると168万件の違反があるわけですけれども、下からモニタ リングをずっとして、網の目をなるべく細かくして違反がないかどうかをチェックす る。そして、引っ掛かったものについてはモニタリングを強化して50%に上げていく。 更にそこで引っ掛かったものについては検査命令に移行して、更にはもっと問題がある 場合には包括輸入禁止規定ということで、検査をしなくても特定の国の特定の産品につ いて輸入を禁止できるという措置を講じるということで、全体としてこうやって安全性 を確保しているんだということです。 (スライド)  輸出国における衛生対策の推進でありますけれども、どうやって推進をしていくのか ということになります。1つは、我が国がどういう衛生規制をしているのかということ を十分に外国の方に御理解をいただく必要があるのではないかということで、在外公館 を通じて、もしくは厚生省のホームページに食品安全情報があります。そこに輸入食品 に関するコーナーがあるわけですけれども、それは英語バージョンでも情報を提供して いますので、そういう形で日本はどういう規制をしているのか、今どういうものが問題 になっているのかということについて情報提供をしている。  更には、JICAというものを使って日本の食品衛生の事情をよく御理解をいただく ということがありますし、JICAベース以外でも例えばコロンビアのコーヒー豆でジ クロルボスの違反が出ました。そのときにはコロンビア政府と協議をして、コロンビア から分析担当者を日本に派遣をしていただいて、日本の先ほど出ました横浜の検査セン ターで日本で行っているジクロルボスの試験法を研修いただいて、向こうに持ち帰っ て、それを向こうで活用して日本に輸出されるコーヒー豆については輸出前に検査を実 施し、問題がないものを輸出するという体制も組んでいただきました。そういうことも 一生懸命やっているわけです。  それから、特に検査命令が実施されている食品につきまして、輸出国政府に対策を講 じていただくように要請をしています。具体的にどんな品目についてやっているかとい うことは後ほど出てまいりますけれども、再発防止策の確立について要請をしています し、また、必要に応じて現地調査や二国間協議を通じて輸出国の体制整備をしてもら う。例えば農薬の場合には生産段階からのコントロールが必要ですから、そういう意味 で農薬の使用管理はどうしているのか。更には、輸出国におけるモニタリングはどうす るんだ。輸出前の検査はどうするんだという対策を講じてもらうようにお願いをしてい るわけです。それで、先ほど申しましたように、来年度は特に生産段階での安全対策の 確認が必要な場合には、日本から専門家を派遣して調査を実施するということについて も考えているところであります。 (スライド)  輸出国に対する衛生対策の強化事例がざっと挙がっています。それで、解決したもの もあるし、今、輸出国で対策を検討している事例もありますけれども、特にこういうよ うな食品について輸出国に対策を要請しているわけであります。 (スライド)  中国産冷凍ほうれんそうの話は後ほど私の後に具体的な説明がありますので簡単にお 話を申し上げますけれども、御承知のとおり非常に大きな問題になったわけでありまし て、平成14年の3月に問題が発見をされまして、14年の7月に輸入自粛をお願いを申し 上げた。それで、その間、先ほども少し説明をいたしましたけれども、国会の方で食品 衛生法の一部改正が行われて、輸入時検査をしなくても包括的に輸入禁止ができる措置 が講じられたわけであります。  それで、平成15年の2月に解除されましたが、3か月もたたないうちにまた違反が出 て、15年の5月に2回目の輸入自粛を実施をした。それで、その間、私も中国に行って 中国側の新たな対策について調査を実施をしてまいりました。  ポイントは3つあって、ほうれんそうを向こうで手当てするときに市場流通品、要す るに出所がさほど明確でないものを含めて向こうで買い集めてそれを加工して日本に輸 出をしていたということのようです。それについては、この2回目の自粛以降の対策で 加工工場が直接管理をする農場からの原料ほうれんそうしか認めない。直接管理をする という意味は、もちろん自前の畑もあります。もしくは契約農場ということもあります けれども、加工場の社員が実際に管理をするということです。  2点目は、問題が発生したときにすぐに原因が追求できるということも合わせてトレ ーサビリティが可能な仕組みの構築ということで、一番下に畑ごとの裁判管理表の作成 というものがありますけれども、ある製品がいつどこの畑で採れたのか。そこで採れた ほうれんそうというのはいつどんな農薬を使用しているのかということがすぐにわかる ような管理をするということです。  3点目は、加工工場で残留農薬の検査を実施する。  この3つが非常に大きな柱ですが、私が行って特に大きいのは、中国という特性から なんでしょうか、これから話が出ますけれども、ある農薬を使用する。これにはクロル ピリホスが含まれていないということで農薬を使用するのですが、どうもそれにはクロ ルピリホスが含まれているということもあるようですから、どこでどういう農薬を買う のか。要するに、信頼できる農薬のメーカーから直接購入する。日本から農薬自体を送 っているという場合があるようですけれども、クロルピリホスが入っていない農薬をち ゃんと使用するということも極めて重要ではないかと思いました。  それで、今は輸入が解禁をされているわけですが、一番右側にありますけれども、 今、中国側における対策に合わせて生産加工工程書という分厚い資料を輸入時に付けさ せています。これは、どの畑から採ってどういう農薬検査をしているのかというような 資料を輸入時に添附をさせて安全性の確認をしているわけです。 (スライド)  それから春雨ですけれども、これも16年の5月に問題を発見してモニタリング検査を して、たくさん違反が出て検査命令に移行しました。そのときの違反率は約4.2%でし た。それで、中国政府に対日輸出用のハルサメについては過酸化ベンゾイルを使用しな いようにという強い要請をいたしました。  それで、その後、中国側が対策を講じて、使用しないということが徹底されたという 報告を受けました。それを受けて以降、一定期間状況を見ておりましたが、違反がもう 出ないということですので11月に検査命令を解除したところでございます。 (スライド)  もう一つは、行政側のそういう施策に呼応して輸入者、営業者自らが輸入食品につい ての安全性を確保することが極めて重要であるということで、食品安全基本法にも営業 者は食品の安全性の確保について第一義的責任を有するというふうに規定をしていま す。更には食品衛生法の中でも食品衛生に関する知識、技術の習得、現材料の安全性の 確保、自主検査の実施に努めるという規定もあります。 (スライド)  こういう規定に基づいて、計画の中で輸入者に対する基本的な指導事項をお示しをし ているわけです。これは後ろの方をごらんいただくといいと思います。 (スライド)  それで、輸入者への自主的な衛生管理の実施に係る指導ということで、先ほど出まし たけれども、基本的指導事項を踏まえて輸入前指導を実施をする。特に初めて輸入する 場合には是非相談をしてほしいという要請もしていますし、それから輸入前指導によっ て違反が発見された場合には改善を指導するし、当然輸入の見合せも指導をし、更には 自主検査の指導もするということで計画がつくられているわけであります。 (スライド)  違反が判明した場合の対応ということですけれども、モニタリング検査については先 ほど言いましたように通関を認めてあげるということなものですから物が一部動いてい る可能性があります。その場合には港ではなくてもう流通している場合がありますの で、国内と連携をとって速やかな回収を図るということもしています。それから、都道 府県で違反が発見された場合には、これも国に報告を求めていますので、その結果に基 づいて輸入時の検査を強化しているところでありますし、違反があった輸入者に対して はなぜ違反が起きたのかということの原因究明であるとか、それからもう違反のものを 輸入しないようにというような具体的な指導もさせていただいているわけであります。  ちなみに、輸入食品の違反情報については厚生省のホームページですべて業者名も含 めて公開をしています。2週間に1回更新をしていますから、その厚生省のホームペー ジを見ると今、何が問題になっているのか。その中には措置も書いてありますので、具 体的にどういう措置がとられたのかということについても情報を得ることができますの で、是非一度ごらんをいただくといいと思います。  そういうことで、とりあえず取り急ぎでしたが、平成17年度の監視の計画案について 私の方から概略を御説明申し上げました。以上です。 ○司会  ありがとうございました。次に、民間の取組例についてということで、輸入冷凍野菜 品質安全協議会の山本様から「輸入冷凍野菜の農薬管理の事例」について御発表いただ きます。それでは、山本さんよろしくお願いいたします。 【輸入冷凍野菜の農薬管理の事例】(輸入冷凍野菜品質安全協議会山本氏) ○山本氏  こんにちは。輸入冷凍野菜品質安全協議会ということで御紹介いただきましたけれど も、正体は資料の3に所属を書いておきましたとおり、株式会社ニチレイの品質保証部 の山本でございます。  本日は「輸入冷凍野菜の農薬管理の事例」ということでお話をさせていただきたいと 思います。お話はパワーポイントを使いますけれども、若干細かい資料とか見にくいも のもございますので、すべてお手元の資料に入れてありますので、それをごらんいただ ければと思います。 (スライド)  この件は、先ほど桑崎室長から話がありましたので余り細かくはと思いますけれど も、実は中国から来る冷凍野菜、特にほうれんそうの農薬残留問題というのは皆さんが よく御存じのとおり、このことが日本の食品衛生の中で安全性をもっと根本的に見直そ うと食品安全基本法ができたとか、特定産物を特定の国から一律禁止、総括禁止できる 条項をつくるといった意味で、大変いろいろな規制が新たにできることになったわけで す。  それで、今日お話が出てくるのかどうかわかりませんけれども、今、検討されていま すポジティブリスト制による新しい農薬の規制、あるいは動物用医薬品の規制というこ とも多分にこれに関連しているわけです。先ほど桑崎室長から話がありましたように、 2002年の春先から始まって何回か自粛、再開、自粛ということを繰り返してきました。 その間に厚生労働省と中国政府との間で大変厳しい政治的な折衝も行われたようですけ れども、そういう状況の中で私ども事業者としても大変このことは苦々しい思いをして いる事例でございます。 (スライド)  これは冷凍ほうれんそうの輸入の実態でございますけれども、1995年辺りから徐々に 増え始めまして、2000年、2001年ですが、ここは実は5万トンを超えるくらい入ってい たんです。それが、2001年の3月くらいから事件が起こり始めて、7月に厚生労働省の 方から自粛勧告が出たわけですけれども、この2003年というのはグラフのここが1万 6,000トンでここが1万トンなんですけれども、実はこの辺の話なんです。輸入が自粛 になった後、いわゆる輸入量が激減をして6分の1くらいになっています。そういった ことで、大変ほうれんそうの輸入ができなくなってきたという問題と、それに代わるア メリカ、ベトナム、いろいろなところからほうれんそうが実は若干入っているんですけ れども、中国のほうれんそうがないとなかなか冷凍野菜のほうれんそうというのは輸入 できない、賄い切れないということで大変厳しい状態になってきているということでご ざいます。  それから、2002年度の実際の違反率は厚生労働省の統計によりますと全体の中の7% くらいあったというようなことも情報として出ております。 (スライド)  これから私どもの我が社の事例で、では輸入の冷凍野菜の農薬をどうやって管理して いるんだというお話をさせていただくんですけれども、その前にこれは世界地図が消え ていますのでお手元の資料をごらんいただければいいと思います。実は、私どもの事例 でも冷凍野菜というのはこれぐらいグローバルに世界各地からいろいろな商品が入って きているわけです。先ほど横浜検疫所の吉田所長の話にもありましたとおり、今、我が 国では食品の輸入に頼っている部分が多分にある。カロリーベースで60%は輸入ですよ というようなことが冷凍野菜についてすら言える状態である。これだけこういう世界的 なところの農薬管理をどうやっていくかということは大変厳しい状況だということでご ざいます。 (スライド)  私どもは、これは農薬だけではなくて輸入食品、国内産品も同じなんですけれども、 化学物質、農薬だとか農製抗菌剤、農製抗生物質、その他もろもろの化学物質、あるい は極端に言えば異物といったものも含めまして、管理するための原則が一つあるという ことで考えております。これが農薬の場合の私ども管理3原則と言っていますけれど も、基本的にはよけいに使わない、必要最小限にしましょうということがまず第一の原 則です。何で使うんだということがきちんと理解できていないとうまくいかない。農薬 の場合は、農薬使用に関する契約を現地の生産会社あるいは農家ときちんと契約を結ぶ という取組をしております。  2番目は、そうは言っても何らかの形で入ってきた農薬が法律上問題があるもの、若 干安全性に問題があるものとすれば、それを何とか日本に持ち込まないようにしよう。 それはできるだけ事前に検査をして確認して、安全なものだけを輸入する。私どもはこ れを先行農薬検査と呼んでおりまして、後ほどどのくらいの検査をやっているかお話を しますけれども、場合によってはロットを輸入する前にサンプルの形で空輸してきて検 査をして安全確認ができたものだけを輸入するということもやっております。  3番目は、これも先ほど桑崎室長の話にありましたけれども、今まさに注目されてい るトレーサビリティという仕組みをきちんと回していこう。私どもの場合は、何かおか しなことが起こったとき、それが完全に追跡できるという仕組みであるという意味から トレースバックシステムと呼んでいますけれども、もしこの前の2つで問題があったと しても直ちに追跡でき、問題がある範囲を特定してできるだけ速やかに処置ができると いう仕組みをつくるということだと思います。 (スライド)  これが今お話をした3原則を多少フローにしたものでございます。ここに私どもの会 社はございまして、このパッカーというのは業界の方はよくおわかりだと思いますけれ ども、一般の方にはちょっとわかりにくい言葉でございまして、いわゆる現地で商品を つくる会社という御理解をしていただければ結構でございます。このパッカーは、栽培 は最近は自営農業でやっている部分もございますけれども、基本的には栽培農家がいて 農家が栽培するわけです。それを原料として集めてきて、それで加工して、これは大量 の状態でまず大きなロットとして確保をして、更に細かく包装をして、最終的に一般の 消費者の方に向ける包装をして輸出してくるということでございます。  そういう仕組みになっているわけですけれども、先ほどの3原則に従いましてニチレ イはまずこのパッカーと農薬使用に関する契約を結んだ。この契約の中には、どういう 農薬を使っていてどういう使い方をする。それから、どのくらいの頻度で使うといった ことも全部入っていますし、一番大事なことは収穫直前の何日以降は使ってはいけませ んよといういわゆる安全使用期間をきちんと守るといった契約を結んでおります。この ことをパッカーを通じて栽培者にきちんと守らせている。  これは後ほどちょっとお話をしますけれども、ある時点からここに私どもがきちんと 入り込もうということで農業の指導者、あるいは農薬管理者を我々自身が日本国内にス タッフとして入ってもらって現地まで出向いていくということをやっております。それ から、先行農薬の検査というのはここで半製品になった状態で日本に持ってきて、これ は日本側でやります。日本側の検査でやるということが非常に大事なことでございま す。もちろん最終的に商品になって国内で輸入されれば、そのことについても検査をす るわけですけれども、2段、3段で検査をしている。  ここはこのことは書いていませんけれども、現地でもこのパッカー自身に農薬の検査 能力を持たせて原料段階で検査をする。現状では30くらいの検査をしている。このほか に輸入時の厚生労働省の公的な検査が入りますから、場合によると40、50の検査がされ るというのが実態でございます。  それからもう一つはトレースバックシステムということで、何かあったときに一番根 元のところの栽培の畑まで、これがいつ収穫されたものかがわかるところまでトレース バックできるようなコーディングシステムを採用しているということでございます。 (スライド)  1つ、農薬を考えるときに大変難しい問題がございます。これは今、世界で使用され ている農薬の中で、日本国内でどういう関係にあるかということでございます。農薬の 数え方というのは人によってさまざまですけれども、大体今、世界で使われている農薬 は平均的に700種類くらいあると言われています。人によっては、過去に開発されたも のを含めれば3,000あるとも、5,000あるとも言われていますけれども、大体我々も700 前後だろうと見ています。  それに対して日本では、これは農林水産省の所管なんですけれども、農薬取締法で使 うことができる、販売することができる。実はこれは農薬の生産販売の規制だったんで すけれども、最近は使用についての規制が新たに加わっていまして、それが今500種類 ぐらいあるだろう。  そのほかに、それぞれの農薬を農林水産省が許可するに当たって、環境保護の観点か ら守ってくださいということで環境庁がつくっている登録保留基準という基準がありま す。それから、同じ取締法の中で許可された農薬についても安全使用基準が決められて いるものがあります。この農薬についてはこういう野菜にはこういう使用方法をすれば 安全ですよ。当然この中には安全使用期間も決められているわけです。そういうものが 200種類くらいあります。  そのほかに、実は今までの法律では食品衛生法の中で食品の残留が決められている農 薬が220種類くらいあるんです。これが今度ポジティブリストでは600を超えます。700 弱になると思います。それで、実は私どもが中国で農薬の管理をする場合に各パッカー に対して、あなた方はどのくらい農薬を手に入れられますかということで調べると、地 域によっても違いますけれども、私どもが輸入している冷凍野菜の場合ですと130種類 くらいの農薬が手に入ることがわかっています。それで、この中の4割は日本では登録 されていない、許可されていない農薬なんです。その点をどう排除していくか。  そういうことから、私どもは少なくとも農薬登録法で登録されている農薬ですよと。 それで、できれば食品衛生法の基準、あるいは登録保留基準で決められているもの、更 に欲を言えば農林水産省の農薬取締法で言う安全使用基準が決められた農薬、ここの範 囲にできるだけ限定していきたい。ここを絞るということは大変難しいことでございま して、農業というのは天候、その土壌、それぞれの地域によって違ってくるわけです ね。そこを何とか日本の農薬に限定をしながらきちんと効果を上げる農薬の使い方をす るということを、我々自身が現地に入り込んで指導をしていくということがポイントで ございまして、ここができないとなかなかこういうことがうまくいかないということで ございます。 (スライド)  これは私どもの3原則の2番目でございまして、先行農薬検査です。これは、行政的 にはかつてタイからお米を輸入するときに先行検査などをされたと思いますし、いろい ろなところで我々はやっていますけれども、できるだけ輸入食品については事前にサン プルを取り寄せて検査をして安全を確認していこうとやっている中で、一番徹底的にや っているのがこの農薬の検査でございます。  この場合は、これがパッカーです。これが海を渡って中国大陸になりますし、アジア 各国でやっていますけれども、半製品の状態でサンプリングをして、Eメールというの はどんなサンプルを送りますよということでインターネットで送ってくるわけですが、 場合によっては空輸することもありますし、船で送ってくることが大部分ですけれど も、私どもの千葉にある食品安全センターというところで残留農薬の検査をします。そ れで、検査結果を実は営業部隊に伝えて、これはOKだから製品化、包装してもいいよ ということを向こうに連絡するわけです。そこで包装が始まって初めてこれが輸出され る。これが不合格であれば、ここから先に進まないという管理システムをきちんとつく るということだと思います。 (スライド)  これが3番目のトレースバックで、私どもはこの場合はトレースバックシステムと呼 んでいますけれども、一般論から言えばトレーサビリティということで御理解いただけ ればよろしいと思います。  これは、私どもの冷凍野菜の枝豆の袋でございます。市販用の250グラムか300グラム の袋だと思いますけれども、ここにこういう記号が付いております。この記号はどうい う意味があるかといいますと2005年の3月1日、3月10日というのは賞味期限ですが、 この後ろの「/GB」というのは私ども世界の工場は全部このように記号化していまし て、どこの工場の商品かすぐわかる。それで、枝豆の場合は台湾でもタイでも中国でも つくっていますし、中国でも5か工場くらい使っていますから、どの商品がどこからき ているかということがすぐわかるわけです。  この下に、いわゆるトレーサビリティコードというものを入れております。これは詳 しいことは余り申し上げてもあれですけれども、要はこの記号がわかればこの枝豆がい つどこの畑でつくられて、だれが管理をしたかということが全部わかるようになってい ます。もちろんこのことはシステム上の問題もありますし、このことを全部皆様方にお 知らせしてもということがありますので、もちろん記号は付いていますけれども、これ をコンピュータをたたけばすぐわかるという状態にはなっていません。私どもも向こう 側のデータをすべてリアルタイム、オンラインで持っているわけではありません。この 記号がわかれば、このことを向こうに照会すれば向こう側でコンピュータをたたけば全 部記録が出てくるという仕組みになっています。 (スライド)  ここが最近の一番のポイントでございまして、先ほど事件が起こったのが2002年だっ た。それで、2002年度に私どもも実は2品ほどごく微量なクロルピリホスが出まして、 そのことによって回収もしたわけですけれども、その時点での対策だったわけです。こ れを2003年度、やはり先ほどのお話で厚生労働省と中国政府の間にいろいろなことが話 し合われまして、そういったことでより厳しくする必要があるだろうということは私ど もも認識しておりましたので、より厳しく対策をとりました。  このことはお手元の資料を見ていただかないとなかなか説明できないというか、見に くいと思いますけれども、基本的には3つございまして、1つは栽培段階での管理を強 化するということです。先ほど桑崎室長の話にもありましたように、農場選定から変え ていこう。できるだけパッカーの自営農場で物をつくってください。契約をきちんと結 んだ畑でつくってくださいというようなことをやりましょう。  それから、栽培の管理をきちんとやりましょう。ここはフィールドマンという言葉を 入れていますけれども、日本も含めて欧米先進国ではフィールドマンというシステムは ごく普通なんです。ところが、やはり発展途上国ではなかなかこれができていない。フ ィールドマンというのは何をするのかというと、農家を一軒一軒、畑を一つひとつ回っ て、どういう栽培がされているか、農薬をどういうふうにまいているか。そのまいてい る農薬が正しいのかどうかといったことをチェックする要員を配置して監視をさせると いうことです。このシステムをもっと徹底的にやろうということをやってきました。  2番目は、農薬の管理の体制をつくっていこう。これも、余りそれが本当にあるのか どうかよくわからない部分もありますけれども、農薬というのは国によっては大手の農 薬メーカーがつくっているものだけではなくてコピー品というのがたくさんあるわけで すね。そういうおかしなものをできるだけ使わないようにするためには、信頼のおける メーカーからの農薬の手配が必要です。そういうことをきちんとやりましょう。当然農 薬を買って散布をするまでの間に保管するわけですけれども、その保管過程でもやはり いろいろなことが起こりかねないので、それをもっと徹底的に管理しましょうという農 薬の保管、在庫の管理、それから一番大事なことは散布するときにきちんと立ち会いま しょうということです。これはフィールドマンがやったり、農場主がやったりするわけ ですけれども、そういったことを徹底しましょう。  3番目が検査です。検査については、後ほど安全センターの検査について若干触れさ せていただきますけれども、ここでは現地の検査をかなり徹底しまして、私どもが日本 に呼んできたこともありますし、これも後ほどお話をしますが、現地の私どもの分室で やっていることもありますし、逆に私どもが検査員を定期的に各会社の検査室に派遣を して、まず検査の初歩から教えていこう。残念ながらそれをやらないときちんとした検 査ができないという実態も一部ありますので、そういうことをやっているということで ございます。 (スライド)  設備その他については先ほど横浜検疫所の吉田所長のお話にありましたとおり、ああ いう設備を使ってやっているわけです。若干機器の大小だとか数だとかということはさ ておいて、私どもも同じようにガスクロだとか、最近は液体クロマトグラフィーです ね。それで、これは詳しいことを申し上げても何でしょうけれども、ガスクロマトグラ フィーに質量分析器というものを付けてよりスピーディに、効果的に検出するといった ことを組み合わせて今、我が社だけで年間2,000検体ぐらいのサンプルについて農薬を 検査しています。そのうち1,300件、これは先ほどの先行農薬検査でございます。  こういう検査を組み合わせて、1つは輸入前に安全性をチェックするということと、 実際に私どもが今1つ前で申し上げた農薬の管理を現地がきちんとやっているかどうか ということを我々自身で検証をしていく。そして、そこで出てきた問題がもしあれば、 もっと振り返って農薬の契約が守られていないのではないかというようなところまでチ ェックできる体制を我々自身がきちんと持っているという体制をつくりましょうという ことです。そこが一番大事なところだと思います。 (スライド)  これは細かい数字なので見ていただく必要はありませんけれども、今、私どもは130 種類くらいの農薬を一斉分析という形で検査をしております。もちろん現地ではこれほ どたくさんやっていないんですけれども、厚生労働省さんがモニタリングでやっている 75のほぼ倍くらいの種類の検査をしています。これはできれば近々300くらいまで広げ たいと思っていますけれども、そういったことをやりながらきちんと把握していくとい うことで、下にちょっとよけいなことですが、学会に論文その他、分析の研究も結構や っていまして、学会発表などもやっているということでございます。 (スライド)  これが最後の最後になりますけれども、先ほど申し上げていますように、私どもは千 葉に品質保証部の傘下の食品安全センターというものを持っております。ここではもち ろん農薬の検査もしていますし、微生物の検査から、食品衛生上必要ないろいろな検査 をやるわけです。実は、その安全センターの分室を山東省につくりまして、農薬の問題 その他いろいろなことをやり始めた当初から、どうも日本海を挟んで、海を挟んで向こ うのコントロールをやるというのはどうも靴の上から足をかくようなものでなかなかう まくいかない。では、いっそのこと中国側に我々の手足をつくろうかということでつく りました。  この分室というのが山東省の北の方にありまして、名前は皆さん余り御存じないと思 いますが、ここで中国のほぼ全土でやっているいろいろな食品の安全性の検査の指導で すとか、これは分室に現地の人たちを呼んでくることもありますし、逆に私どものスタ ッフがそれぞれの工場に飛んでいって指導をすることもありますけれども、こういった ことをやっていく。  それから、ここには書いてありませんが、私ども上海に営業の拠点を持っていまし て、そこにもスタッフを何人か配置しておりまして、これは先ほど言いましたように農 業の監視、それからパッカーの監視といったことをやっています。ここも定期的に本当 に畑まで出向いていって、それぞれの畑が全部見えているわけでもないんですけれど も、畑で我々が意図することがきちんとできているかどうかをやはり我々自身の目で確 認をし、安全性をきちんとチェックをした上で輸入していきたいということで取り組ん でおります。  これをやるにはお金もかかりますし、手間暇もかかります。ただ、安全性を確保する ということからすると我々事業者にとって必須のことだと思っていますけれども、最近 この種のことをかなりの企業さんはやっておられると思うんです。ところが、残念なが ら一部、まだまだこういうことができていないところがある。  それで、たまたま先ほど輸入検査のデータがホームページで公開されていますという 話が桑崎室長からありました。実は、私も今朝のぞいてきたんですけれども、これも定 期的にのぞいています。これをのぞく意味はどういうことがあるか。我々事業者にとっ てどういう意味があるかというと、世の中で何が起こっているかということをいち早く つかんで、では我が社の商品ではそういうことが起こるのか、起こらないのかという予 見をしていこう。その予見をした上で、それをできるだけ前倒しで政策として展開して いこうということと、やはり業界全体としてそういうことに取り組まなければいけない という情報を業界自体が共有化していくことが必要だということですけれども、ある意 味では大変口はばったい、言いにくいことですが、一部の企業さんがやはり繰り返し同 じようなことを起こしておられる。これは業界自身の責任でもあると同時に、行政の方 にも是非そこら辺の指導をきちんとやっていただきたいということを申し上げて、急ぎ 足でわかりにくい説明をしてしまいましたけれども、私のお話を終わらせていただきま す。どうもありがとうございました。 ○司会  どうもありがとうございました。引き続きまして基調講演ということで、「食品中の 化学物質に関わる安全性について」、実践女子大学の西島教授から御講演をいただきま す。  西島教授、よろしくお願いいたします。 【食品中の化学物質に関わる安全性について】(実践女子大学教授西島氏) ○西島教授 西島です。よろしくお願いします。  実は、私は三十数年間、東京都の衛生研究所に勤めておりまして、最近実践大学に移 りまし。研究所では数年間、食品の化学部門で安全性について調査研究をしてきまし た。都の研究所にいたときは、こんなに一生懸命いろいろなことをやっているのに何で 消費者は心配するんだろう、というような気が非常に強かったのですが、大学に移って みると、本当に消費者はいろいろなことを心配しているということを痛感しておりま す。改めて吉田さん、桑崎さん、山本さんの3人のお話を聞きますと、食品の安全性と いうのはかなり科学的にしっかりして、考え方も消費者のために真剣に頑張っているこ とを理解できます。しかし、それで国民が安心するかというと、必ずしもそうではな い。一般消費者と遊離している部分があるのではないかと思います。  なぜ私が大学に行って安心に関して、まず最初に感じたのは、今日ここは神奈川県で すが、たまたま神奈川県から大学に通っているお嬢さんが教職課程ということで4年生 になりますと地元に帰って先生のお手伝いをして学生にいろいろなことを教える教科が あります。その学生から夜中に電話がありまして、「先生、困ってしまった。」何が困 ったかというと、私が大学で講義したことと、その中学の先生がこういうように学生に 教えてくださいというのが余りにも違うということで困っていたんです。  それで、内容は、色素の検査で、あなたは大学で食品をやっているので食品の色素に ついて学生に教えてください。食品添加物について教えてくださいという内容でした。 「片方に酸性タール色素の入っている清涼飲料水を用意して、片方は絞ったいわゆる天 然のジュースを用意して、そこに酢酸を入れて毛糸を入れて発色させます。毛糸は当然 酸性タール色素の方が染まるわけです。それを学生に見せて、「こんなに胃の中が染ま るのよ、こんなに怖いのよ、皆のおなかの中はこんなになっちゃうんだからこういうジ ュースを買うのはやめましょうね」と教えなさいとやられたんです。実際にあった話で す。  それで、その学生から心配して電話があったわけです。先生の授業と余りにも違うと いうことで、感性の鋭いお嬢さんなのか、ちょっと泣きべそっぽいような電話だったん です。非常にそれが私は心に引っ掛かりました。  そのころから学生が食品添加物、農薬、そういう化学物質についてどういうような認 識をしているのかということに非常に興味を持つようになりました。それで、食品安全 委員会、東京都、川崎市、あるいはいろいろな大学の先生方が「食品の安全性を脅かし ているものはどういうものがあると思いますか」というようなアンケート調査をした結 果を公表しています。  私も授業で添加物や農薬についての講義をやる前にアンケート調査をするようにして います。結果はほとんどの人が農薬や添加物は怖い、嫌だといいます。それで、私の大 学だけでなく、たまたま私は現在東京農工大学と茨城大学と東京薬大の生命科学部で講 義をしておりまして、そこでも同じアンケート形式で調査をしますと、ほとんど全部同 じように考えています。大学生、しかもレベルが高いといわれている大学で、そこの学 生が考えている実態はそういうことです。  その情報源は、意外とお母さんの影響が非常に強いようです。あとはテレビとか、本 を情報源としている学生ももちろんいます。  お母さんはどこから情報を入れているかというと、やはり主にテレビでしょうか。私 は、安全性はかなり確保されているし、今の行政の方向というのは非常に王道である し、それを続けてほしいのですが、一方、一般の消費者に対してどうそれを理解しても らうか。それが非常に重要だと思っております。  それで、厚生労働省の方にお話をしますと、全部情報は公開しているよ。都庁の方に お聞きしても、情報は公開しているよと、皆さんそうおっしゃる。でも、その方法とい うのはインターネットが多いんです。一般の主婦はそんなにインターネットを見るかと いうと、そうでもない。そこをどうするか。要するに、安全は確実に確保しておかない と安心も何もないわけですが、消費者を安心させるにはその乖離をどうするか。安全が 確保されたときからその点をもう少し考える必要があるという気がしております。  有名な先生が自分の哲学みたいなものを振り回して怖い、危ない、売名行為まがいの 人もいるというのも事実だと思います。 (スライド)  食品の安全性を脅かしているものはどういうものかというと、例えば、やせるハーブ 茶があります。メチルフェニフルラミンは大きな問題になったので御記憶だと思います が、それから何年か前にさかのぼった話ですが、国民生活センターの方から、痩身茶を 消費者が飲んで本当にやせてきて大丈夫でしょうかという問合せがありました。消費者 は、やせたいために飲んでいるのにやせると心配になるというような非常に面白いとこ ろがあります。これはティーパックに入っておりまして、そのティーパックを開けると 白い結晶みたいなものがあったんです。  構造解析が得意な研究者に、これを見てよと言ったら1週間もしないうちに、これは フェニフルラミンが入っていました。私は全然フェニフルラミンについては知りません で、何かと聞いたら、当然聞かれるだろうと思ってうれしそうな顔をして説明してくれ たのが、アメリカやヨーロッパでは医者がやせ薬ということで処方している薬だという ことで、それが入っていたわけです。  それから、これも国民生活センターの依頼だったのですが、便秘によいハーブ茶とい うものがありました。これもティーパックみたいになっていたんです。そこには堂々 と、これにはセンナは入っておりませんと書いてあったんです。それで、私が見たとこ ろ、どうもセンナっぽいので生薬の研究者に鑑定を頼みました。この8割以上がセンナ でしたのでセンナは昔からよく知られている緩下剤ですが、入っていないといってそう いうものを入れているというのはかなり悪質だという気がしております。  あとは、元気になる飲料というんですが、これは御存じの方はいらっしゃると思うの ですが、中国に何かいい健康食品はないかということで尋ね歩いたところ、「ぐちゃぐ ちゃ言わないで飲んでみろ」と、飲んでみたら元気になったということで、日本で売っ たわけです。「本当に元気になるので大丈夫か」という苦情がありました。これは中に バイアグラが入っていたんです。この元気になる薬も直接には健康被害にはなっていな いのかもしれませんが、知らないで飲み続けるとちょっと具合が悪いのではないかと思 います。  それからがんが治る健康食品、これも本当にがんというものが薬よりも食品にかなり 近いもので治るかどうか、だれしも疑問を持っていると思うんですが、でもこれは非常 に売れている商品です。お金が余っている人はいいですが、これは安全とは関係ないの かもしれないけれども、これを世の中で放っておいていいんだろうかという思いがして おります。  血圧に効く健康食品イチョウ葉エキスが、血栓予防であるとか、最近の血がさらさら ということで売っているということでした。肝臓障害を起こした人が出てきたというこ とで持って来られたものです。これはヨーロッパでは血栓予防で医者が処方していたも のでした。  その成分であるギンコール酸は欧米では毒だということで、イチョウの葉っぱのエキ スを作る抽出法も既に確立しています。イチョウはいいということでやったのではない かと思いますが、これは健康障害が出ております。  企業の方は摘発されるのにインチキものでおれたちは関係ないよというものがほとん ど全部だと思います。食品衛生法違反の食品は新聞やテレビに出ますので、消費者は非 常に食品を不安視する一因になっているのではないかと思っております。  クロレラ販売というものが一番下に書いてありますが、これは国民生活センターです と毎年食品関係では何らかの苦情などのトップになっています。これはクロレラ自身が 悪いわけはないんですが、中には下痢をしたりするものがあるようです。これは販売方 法がいけないんだと思うのですが、下痢をした人に今は毒素が出ているところなので飲 み続けろといわれて、飲み続ける、どうしようもなくなって医者に行って怒られるとい うようなパターンが多いようです。それで、実際に食品の安全性を脅かしているものと いうのはこのようなものと思っています。 (スライド)  それに対して食品の不安を助長させているもの、私はこれはどれを見ても本当にこの 健康障害が出るとは思っておりません。特に香料の違反でアセトアルデヒドやひまし油 など、日本の食品衛生法では許可されていないものを使っていたということで、食品衛 生法違反ですので弁解の余地はありません。しかし、これで健康障害を起こすと思って いる人は、毒性の専門家の方はどなたもいらっしゃらないと思うんです。  香料は食品あるいは人が付けるとしてもごくごく少量を使う。その成分がまたいっぱ いありますから、そのうちの一つの成分が食品衛生法に許可されていなかったというこ とであっても健康障害とはちょっと次元が違う話だと思います。でも、報道としてはこ れを大々的に取り上げますので、消費者としては怖いと実際に思っている人がいっぱい いたことも事実です。  ほうれんそうの残留農薬違反、これもクロルピリホスやディルドリンなどの違反も、 絶対弁解できませんが、消費者はほうれんそうを食べるとおかしくなってしまうと思っ ている人たちが数多くいるということも事実だと思います。  肉まんのTBHQですが、これなどは外国では許可しているものだし、現に今ポリフ ェノールなどと言って消費者がいっぱい好んで飲んでいるものと毒性の比較をしたらど ちらが強いか分かりませんが、やはり不許可のものが入っていて、それが報道に取り上 げられると消費者が非常に不安になるということが多いのではないかと思っています。 (スライド)  私は大学で授業をするときに、完全な食品ないんだよ、どんなものでもそれだけ食べ ていると健康障害が出るんだよということをしつこく言います。もう一つは、食品とい うのは化学構造式で書ける物質の塊なんだよということも非常にしつこく言います。  それでよく例を挙げるのが、お酒の会社の方がいたら大変申し訳ないのですが、清酒 の成分として食品添加物協会が200種類くらい微量分析したデータを出しております。 それをちょっと拝借しまして、その中からホルムアルデヒドであるとか、ハルマン、ノ ロハルマンとか、悪いものばかり嫌がるようなものを羅列して、飲食物ですが、これは 何だと思いますかというようなことを話すわけです。そんな怖いものを食べるはずがな いという顔をします。その物の毒性の強さと、その量ということを全然ごちゃごちゃに して報道される。そこがいろいろなことの混乱の元だと思うんです。農薬でも毒性の強 いものから食塩よりも毒性の弱いものまでいっぱいあります。それが微量出たからとい って……。  こんなことをあまり言ってはいけないのですが、そういうような感じもします。  もう一つ大事なのは、全く無毒のものはないですよということを前提に教えます。ど んなものでもそれだけ食べていたら絶対性は出てきます。ですから、本当にそのものの 毒性の量、いわゆる人で言うと摂取量が問題です。それを証拠に、毒物も微量であれば 怖くない。これをどの程度消費者が理解してくれるかというところだと思います。ダイ オキシンだって同じです。それで、一部の消費者はミリグラムもピコグラムもナノグラ ムもマイクログラムもどの単位が大きいのか全然わからない。数字があって何か単位が あると、出た、怖いという消費者が多い。でも、それを優しく伝達する術がなかなかな いということが問題だと思っております。  子どもに影響の大きい母親がもっと勉強してくれればいいと思います。実はうちの家 内も私が都の衛生研究所に何十年勤めているにもかかわらず、平気でこれは体にいいの よとか、これは体に悪いのよと、隣のおばさんの言っていることを私に教えてくれま す。ですから、多くの主婦にどう理解してもらうかということを真剣に考えるべきだと 思っております。  科学的な根拠とされるADI、一日摂取許容量ですが、これをも否定して人に言って しまう人がいるんですね。これは動物実験だからあてにならないよ。でも人体実験はで きません。そういう人の言うことに引きずられるというのを黙っていることはそろそろ 考えなければいけない時期になっているような気がしております。 (スライド)  農薬は要らないという学生が非常に多いんです。なぜ嫌われるかという原因を調査し ますと、ほとんどの人が安全性といいます。農薬は怖い。発がん性があるという人も現 にいるんです。よくアメリカのがんの疫学者のデータと日本の消費者の違いなどという ことでいろいろなところで表が出される。現に多くの人がまだそういう感覚でいるとい うことも確かだと思います。  それで、農薬はなぜ嫌われるかというと、本当は生産者だって余り使いたくないんで す。値段は高いし、散布するのは大変だし、本来は使いたくないと思うんです。だけ ど、使わざるを得ない。農薬がなかったらということを、学生にはかなり強調して説明 をします。 (スライド)  これは全然見えませんが、昔、農薬がなかったころは畑にクジラの脂をまいたという スライドです。 (スライド)  これもよく映っていないですが、畑の近くでふんどしのおじさんが松明を持っている ところで、夜ではないかと思います。夜の割には向こう側に景色が見えたりして面白い 絵ですが、松明を焚いて虫を集めて殺したり、こういうことも授業中では丁寧に話しま す。 (スライド)  それと、農薬を嫌われているのになぜ使うのかということです。大体、昔から人間は 飢えとの闘いでした。3大文明の発祥地も大体川の近くというのは食料が確保され易か ったからですし、一揆なども食べ物が無くなり、米倉をおそったのだと思います。本当 に食料というのは人が生きるためには絶対必要です。イモチ病で多くの人が凶作になっ て飢え死にしたそうです。それについては、有機水銀というものの開発があり、数え切 れない人の命が救われたわけです。でも、一方、この水銀等では水俣病という暗い影が 残っています。  それからニカメイ虫、これがパラチオンの発見によって非常に多くの人が飢えから救 われたわけです。この毒性は、それを食べた人ではなくて農薬を散布している人が畑の あぜ道で倒れてしまったり、大半が使用者の障害でした。  それからウンカ、これも病害虫の代表的なものですが、一夜にして畑がやられたり甚 大な被害が出ます。ウンカはDDTで防除でき、これによっていかに多くの人が飢えか ら救われたか。  しかし、現在の見方で見ると、これが野菜から検出されたら大騒ぎになります。今で は低毒性の農薬の農薬が開発され、残留基準も決められて安全性も確保されていると思 います。  農薬というと本当に消費者、学生、実は私もよくわからない。検査をした結果を持っ てそれについて皆で検討したりということは長いことやっていたのですが、どうも農薬 についてはなかなかなじめませんでした。農薬の種類、名前が多いんですね。フェニト ロチオンと言ったり、登録名はMEPですか。それから商品名ですとスミチオン、一番 これが有名かと思うですが、ガットサンとか、殺虫コートとか、すごく利きそうな名前 が商品名ではいっぱいあります。それにIUPAC名とか、1種類の農薬でもこんなに 名前を持っている。これが農薬をわかりにくくしている一つだと思います。でも、個々 の組織の人は全部同じ名前で言っていますので、自分たちは認識できますが、ほかの人 がそれを聞いて果たしてわかるかというと、またちょっとそこは疑問だと思います。 (スライド)  これは、農耕面積と作地利用の推移というものを農水省のホームページからいただい たスライドですが、どんどん減っています。この100%以上というのは二毛作で100%以 上だそうですが、減っております。私はどこの大学に行っても若い青年をつかまえて、 君たちは農業をやろうと思うか。それから女子学生に対しては、農家にお嫁さんに行く かというとだれも手を挙げてくれないんです。日本の国土の狭さとか、そういうものの ほかに、今の若いこれからという人たちが農業に対して理解できていないという一面が あると思います。ですから、こういうデータだけではなくて人の感情という面からも本 当に真剣に考えないと今後の日本の農業というのは復活できないのではないかと思って おります。 (スライド)  これもいただいたデータですが、農産物の輸出国と輸入国というものを並べますと日 本が突出しています。日本国民の食の安全を守るには相手の国の日本に輸出するものに ついての管理体制をしっかりするという、そこに帰着しているのではないかと考えてお ります。 (スライド)  これはやはり農水の食料自給レポートからいただいたスライドですが、輸入食品の現 状や自給率向上の意識というものを調査したものがありました。非常に不安を感じると いうのは農業者の方で57.6%、ある程度不安を感じるものを合わせると九十数%です。 本当に農家の方もこのままでは日本の国の農業はだめだと思っている人が非常に多いの ではないかと思うんです。  消費者もやはり非常に不安を感じる、ある程度不安を感じる人が非常に多くいます。 しかし、ではどうするかということになると全員がお手上げなのが現状だと思います。 (スライド)  自給率の水準に関する意識ですが、自給率を上げるべきだというのは大幅に上げるべ きと思っている人が90%近いことになります。  さすがにこのままでよいという人は非常に少ないわけですが、この上げるべきという 人が、ではおれが農業をやろうという人はほとんどいないわけです。ですから、この矛 盾、農業の魅力というものも今後真剣に考えないと、このままずるずる下がって本当に どうしようもない国になってしまうのではないかと心配しております。 (スライド)  これは、学生には新聞で報道された農薬について毒性を話すときがあります。何か違 反があったというとき、そのものを食べるとすぐそれで体がおかしくなるように感じて しまいます。こういう表も時々使うのですが、シアンナトリウムとか、これは農薬です が、カプサイシンというのは例のトウガラシの成分です。カフェインなどがここにあり ます。それからアスピリンがあり、ビタミンAがあって食塩がある。ここに砂糖がある わけですが、実際に学生に見せるときはここの下の食塩よりも毒性の低い農薬をたくさ ん挙げます。農薬が出たからといって一概にどうこうではない。報道されたときに、そ の農薬がどのぐらい毒性が強いのか、それを人がどのぐらい食べているかということで 判断してほしいということを話しております。 (スライド)  これは飛ばします。この基準値の設定の仕方は厚生労働省のものをそのまま移したも のですが、非常に科学的な根拠の下に設定しているわけですから、基準値に近くても心 配ないわけです。  ところが、私のいた東京都の衛生研究所でも非常に多くの農薬検査をしています。農 薬が二百幾つ使われているとか言われていますが、検出されない農薬も多いし、検出さ れても基準値よりはるかに下のものが多いんです。検査している人間の心理というのが 私はわかるんですが、来る日も来る日も検査をしていますと、何か違反を出したいとい う気になるんです。でも、違反は出ない。出ないと検査している者にとっては残念なん です。  でも、私は先ほど検疫所の人数と農薬の検査件数を見たのですが、行政の方は検査を している方をもっと大事にしてやってほしいです。あの人数であれだけの検査をすると いうことは本当に死に物狂いではないかと思います。本当に検査をするのは大変です。 心理もそういう心理ですから、たまたま消費者の気持ちと合っています。悪いものは絶 対に見つける。 (スライド)  消費者は「検疫所がもっとしっかりしてほしい、流通している農産物で違反が見つか るじゃないか、心配だ」と言う人がいます。それで、私は東京都に勤めているときはそ れは耳障りのいい言葉だったんです。検疫所はだらしない、東京都はしっかりしている と、そういうふうにも聞こえます。  でも、それは実際は無理ですね。食べる食料を全部調べて、全部使ってしまったら、 食べるものはなくなってしまう。ある科学的な根拠の下のサンプリングでやっていくと いうことでいいのではないかと思っております。でも、東京都も随分違反を見つけて、 それですぐ都庁から厚生労働省に連絡して連携プレーはとれていると思います。  平成18年に農薬がポジティブリストになるのもいいんですが、よほど国とは地方と連 携プレーをしないと非常に大きな無駄が起こると思います。それは何かというと、都道 府県がものすごく一生懸命農薬の検査なども多くのところでやっています。ですが、情 報を国とどの程度共有しているのか。先ほど、外国でどういう農薬を使っているかの情 報を今から一生懸命取ろうとしているという心強いお話を聞いたのですが、それを都道 府県にどんどん流していただきたい。そうすると、どういう農産物については何を調べ ればいいかということがかなり絞られてくるんですね。そうでなくて、基準値が700近 くもできるポジティブリストで対象農薬を全部を調べないといけないとなると現実には とてもできません。  農薬は毒性がすごく違います。結構毒性の強いものから弱いものまであります。とい うと、当然毒性の強いものから検査していると思うわけです。ところが、実際に検査す る方はそうではなくて同時分析できる。70とか100とか同時にできる分析を開発して一 生懸命やる。消費者の感覚とは非常にずれがあるわけですね。  でも、たまたまその中に毒性の強いものも入っているから、消費者に言うときは、 「大丈夫ですよ、一斉検査でどんどんやっているその中に毒性の強いものもあるから、 当然それも引っ掛かりますよ」という説明をするんですが、今後700近くにもなると何 でもかんでも700を調べるかというととてもそんなことはできません。国と地方の情報 交換というのは非常に重要だと思います。それは地方だけでなく、登録検査機関にも情 報をどんどん流すことによって本当の意味の安全性確保というのか、何を調べればいい かというポイントがつかめるのではないかと思っております。 (スライド)  これもそうですね。残留農薬の違反で、これは国産と輸入品とどちらが多いのか東京 都の結果をざっと見たのですが、輸入品の方が少し多いのかなというような結果でし た。  ただ、これは違反ということだけで内容は別です。日本はどちらかというと分解性が よくて、散布してすぐなくなってしまうような農薬を当然指向しているわけですが、外 国ではもちろん食文化も違うでしょうし、気候風土も違います。そうすると、果たして 極端な話ですが、熱帯地方の農作物に日本の農薬をまいていいかどうか。すぐ分解して 効かなくなってしまう。やはり日本だけの事情で世界共通にしようというのはちょっと 無理だと思うのですが、でも少なくとも日本に輸入するものについては先ほどからお話 があるような考え方が正しいのではないかと考えております。 (スライド)  農薬の検査ですが、トレースアビリティということで今、非常に散布履歴というもの がしっかりしてきました。これは厚生労働省だけではなくて農水との共同のことなんで しょうが、これがしっかりすれば国や地方自治体、登録検査所が何を検査するかという ことが非常に絞られる。というのは、この情報がしっかりしないと、何でもかんでも検 査をして検査料をいっぱいいただくという商売では登録検査所は余り情報がない方がい いのかもしれないですが、消費者にしてみればやはりきっちり目的を明確にした方がコ ストの点でもいいのではないかと思っております。 (スライド)  輸入食品の添加物ですが、ほんの少し説明させていただきます。 (スライド)  これが先ほどありましたので、こういうものについて結構違反というものがありまし た。 (スライド)  これも、違反については中央でやった結果を見ると表示違反がほとんどです。それ と、ほとんどか指定外添加物です。各国は自国民の安全性を確保するために食品衛生法 があるわけですが、たまたま国によって食文化も違うし、考え方も違うということで統 一がとれていない。ですから、ハーモナイゼーションということで今、一生懸命国同士 では検討しています。しかし、国益が関係して徐々にはそういう方向にあるようです が、今のところはまだ完全ではないような気がします。  ですから、こういう違反のものを日本の人が食べて体を悪くするわけがない。現に日 本人がフランスに行って食事をするときに、日本の食品衛生法に合っているかしらと心 配する人はいないはずです。ですから、健康障害とは全く関係ないわけですが、こうい う違反が消費者の不安をかき立てているのではないかと思っております。過量使用も同 じだと思っています。しかし、食品衛生法をきっちりと遵守しないと国民の信頼は全く なくなってシマします。 (スライド)  これは食品添加物の一日摂取量調査です。私は厚生労働省の仕事を研究班で何年もお 手伝いしてきました。プロピレングリコールが指定添加物の中では一番摂取量が多いよ うに思っております。次はソルビン酸です。でも、これは対ADI比ということでは非 常に低いし、安全性という点からは全く心配ありません。しかし、報道の仕方によって は消費者が何かソルビン酸というのはすごい怖いようなことを考えている人がいるとい うのは、やはり情報がまだ浸透していないせいではないかという気がしております。 (スライド)  これも同じです。一番下の硝酸は発色剤で許可しています。しかし、これは植物から 摂取していますので添加物としての寄与率は1%あるかないかということだと思いま す。そうすると、今の添加物は輸入品も含めて一般的には非常に安心して食べていいの ではないかという感じがしております。 (スライド)  時間がないのでこれを最後にしたのですが、これで1つ大きな問題があると思いま す。実は、厚生省の方が今日いらっしゃるのであえて申し上げたいのですが、学生にと いうのか、学校の先生に情報提供をわかりやすくするすべがないか。これは時間がかか るようですが、指導をきっちりすると消費者が食品の安全性、添加物も含めてですが、 正しい知識を持つようになると思います。  ところが、厚生労働省の動きが逆でして、全国の大学で栄養士や管理栄養士を教えて いるところが、今までは1年とか1年半で食品衛生を教えていました。ところが、管理 栄養士のカリキュラムを変えて国家試験も食品の安全性に関する問題をぐっと少なくし たもので、全国的にどこの大学も半期で教えるようになってしまいました。本当に消費 者と向き合う、本来一番食品の安全性をきっちり理解してもらわなければならない職種 の人をなぜそんなことにしたのか、一番根底になるところを考えないと、幾ら国だけで 頑張ってもなかなか消費者には伝達できないのではないかと思っております。  それから、消費者に対して正確な情報をやさしい言葉でというのは、業界の人も行政 の人も大学の先生も皆、同じだと思うのですが、つい自分たちが使っている言葉で言っ てしまうと消費者にわからない言葉が多い。わからない言葉に対しては非常に不安を持 ちます。 それから、最初IT企業の方は大変だと思っていたのですが、だんだん企業 がいけないと思うようになりました。なぜかというと、その最たるものが無添加食品と いう言葉なんです。保存料を使っていません。着色料を使っていません。それが何であ んなことを言うのか。その商品をじっと見ると、その中に許可されているものがあるの かという商品にまで保存料、着色料は使っていませんとか、無添加食品とか、そういう 言葉が氾濫し過ぎます。企業にしてみればそのものを今、消費者にこびて売りたいと思 っているのかもしれないけれども、それが今、添加物とか農薬とか、そういうものを怖 いと消費者に思わせるものの大きな要因の一つになっていると思うんです。ですから、 企業の方はコマーシャルをするときに刹那的な無責任なコマーシャルはしないように是 非お願いしたいと思います。今これが消費者を惑わせている大きな原因の一つだと思っ ております。  それで、行政は、ともかく科学的に理論武装ができて、今までの道を進んでもらいま せんと、そこがいいかげんになってしまうと総崩れになります。ですから、より一層科 学行政を進めていただきたいと思います。  消費者に対しては、心配するならば勉強しろと言いたい思いがあります。消費者団体 の上の方は知識があってすぐ理解していただけるのですが、それがどうも伝達しない。 消費者団体のリーダーの方が是非正しい情報を自分たちの団体に伝えていただきたいと いう強い思いがあります。本当にそういうことをちゃんとしませんと、、多くの消費者 の不利益にもなるし、無駄遣いがとても多いような気がしております。  ちょっと時間がないので雑駁な話になってしまいましたが、ここで終わらせていただ きます。 ○司会  どうもありがとうございました。  それでは、ここで10分程度休憩を設けさせていただきます。ただいま3時15分という ことで15分くらい遅れておりますけれども、3時25分からパネルディスカッションの方 を開始したいと思いますので、それまでにお席の方にお戻りいただけたらと思います。  それでは、よろしくお願いいたします。 【パネルディスカッション】 ○司会  それでは、時間となりましたのでパネルディスカッションに移らせていただきたいと 思います。  パネルディスカッションにつきましては、コーディネーターに進行をお願いしたいと 思います。それでは、よろしくお願いいたします。 ○コーディネーター(広瀬)  本日コーディネーターを務めさせていただきます厚生労働省食品安全部企画情報課の 広瀬と申します。よろしくお願いいたします。  初めに、本日のパネリストの御紹介をさせていただきます。  皆様方から左側、私の隣から、有識者ということで先ほど御講演をいただきました実 践女子大学の西島教授でございます。  そのお隣が、輸入冷凍野菜品質安全協議会の山本様でございます。  そのお隣が、消費者の代表ということで参加いただいております、横浜市消費者団体 連絡会代表幹事の清水様でございます。  それから、行政の代表ということで内閣府食品安全委員会事務局総務課の植村補佐で ございます。  そのお隣が、厚生労働省大臣官房の松本参事官でございます。  そのお隣が、厚生労働省食品安全部監視安全課輸入食品安全対策室の桑崎室長でござ います。  そのお隣が、厚生労働省食品安全部基準審査課の宮川補佐でございます。  そのお隣が、横浜検疫所の吉田所長でございます。  そのお隣が、農林水産省消費安全局消費安全政策課の古畑補佐でございます。  本日のパネルディスカッションの進め方ですが、テーマごとに進めさせていただきた いと考えております。また、会場の皆様にも御意見をいただく機会を設けたいと考えて おります。御発言いただく際には、手を挙げられた方の中からコーディネーターの方で 指名をさせていただきます。その場合、係の者がマイクを持って順番に伺いますので、 差し支えなければ御職業とお名前をおっしゃっていただいて御発言いただければと思っ ております。 本日のテーマでございますが、皆さん本日こちらの意見交換会に参加い ただくに当たりまして事前の意見や質問というものをお寄せいただいております。お寄 せいただいた意見と、それから回答につきましては、本日資料5ということでA4横の 紙を配布させていただいておりますので、回答等についてはこちらの方を見ていただけ ればと思います。  寄せられた回答などをいろいろ参考に検討させていただきましたところ、本日のパネ ルディスカッションのテーマとしては大きく3つくらいに分けていきたいと考えており ます。1つは、まずやはり「輸入食品の何が不安なのか」というところを消費者の方、 それから行政、事業者の方で少し論じてみてはどうか。それから、その不安を解消する ということにつながるのかもしれませんが、「輸入食品の検査体制について」ですと か、本日のテーマの一つでもあります「輸入食品の監視指導計画について」ディスカッ ションをしていきたいと考えております。  それでは、最初の輸入食品の何が不安なのかというところから入っていきたいと思い ます。まず、やはり率直に消費者の御意見ということで、清水様から少しこの辺を伺っ てみたいと思います。 ○清水幹事  皆さん、こんにちは。先ほど御紹介いただきました横浜市消費者団体連絡会の代表幹 事をしております清水と申します。よろしくお願いいたします。  今日は輸入食品の安全性確保に関する意見交換会ということですので、私の方から口 火を切らせていただこうと思います。まず何が不安なのか。先ほど行政の方、それから 西島先生からお話をいただきましたけれども、西島先生がその御講演の中で最後の方に 言っていらっしゃいました。先ほど打合せのときに私が、何が不安なのかという辺りの ことをお話させていただいたところをおっしゃっていらしたのですけれども、要するに 輸入食品は検疫がございますね。それで、その検疫を通った後で違反が出るという事実 があるわけです。この事実がやはり消費者を不安にさせているのではないか。それが一 因なのではないかと申し上げました。  非常に過去の問題となってしまっているかもしれませんけれども、86年にチェルノブ イリで原発事故がございました。その後、日本に輸入される食品から放射能検査という ことで検査をして、日本で国として基準も決めました。その基準を超えるものについて は積み戻しなり、そういう措置をしたわけです。ところが、京都の方で実際に売られて いるものを買って検査をしたところ、基準値以上のものが出ている。そういうことが過 去にはありました。  過去をたどるとかなりいろいろな問題が出ておりまして、実際に国の検査ではなくて 民間の検査でございましたけれども、遺伝子組換食品でトウモロコシの日本では許可を されていないスターリンクというものが出ております。それで、先ほどおっしゃってい たホームページを私も見せていただきました。そうしましたところ、やはり韓国産のワ ケギというのが今年の11月で違反と出ておりました。それが届出は501件、その中に違 反が2件あったということでございました。それは基準値を超えるプロシミドンという ものを検出したとホームページに書かれております。  それで、措置という項目があるわけですけれども、その措置のところを見ましたら、 全量消費済みというふうに書かれております。こういうことが、根拠のない不安という よりは、事実としてあるわけですから、その辺を消費者が不安に思ってしまうところだ ろう、もちろん今、情報化時代でいろいろな情報が出ていると思います。その中で、本 当に正しい情報なのかどうかというのは、それぞれ一人ひとりが自分が正しいと思うも のは多少違いがあるかもしれませんけれども、こういうきちんとした事実が出てしまう ということが消費者を不安にかき立てる一因なのではないかと思っております。  漠然とした不安と言われてしまうと、漠然とした不安というのももちろんあるだろう と思うんです。何も日本で採れるものをわざわざ海外でつくってもらって、それを輸入 して、その全量を食べていればいいんですけれども、廃棄している部分もかなりあるわ けです。そこまでして日本が輸入する必要があるのかどうかという基本的なところもも ちろんあるんですけれども、そういういろいろなものを含めても、やはりこういうふう に事実としてその数値が出てしまう。その数値がどうかということの問題とは別に、や はり消費者がそういうところに不安を持つということは事実として突き付けられている わけですから、それは不安に思うのではないかというのが私のまず最初に口火を切らせ ていただくところでございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。そのほか、行政もしくは事業者の方からも少し御意見をい ただければと思います。 ○桑崎室長  先ほど輸入食品に関しての仕組みは御説明申し上げました。望むべくは輸入時で全部 止めることができればということですが、幅広く網を掛けて、それがモニタリング検査 になるわけで、この網の目も実は細かく経年ごとにしていますが、そこで引っ掛かった ものについては2回引っ掛かれば検査命令で、今度は全部検査をしなくては通らないと いう仕組みの中で、どうしても抜けが一部出てしまう。これは事実としてそれはあるん です。  したがって、我々もその点については輸入時だけではなくてもう少しさかのぼって、 先ほど言いましたように輸出国対策はどうあるべきか。もしくは、もう少し早目に情報 をつかんで輸入時で押さえられないかというようなことで一生懸命努力はしていますけ れども、いかんせんなかなかそこのところは100%いきません。  先ほど吉田所長のお話にもありましたけれども、実際問題としては、国内に流通して しまってから回収ということになると、実は大変な手間とお金がかかるということもあ って、実態上は輸入業者はモニタリング検査にかかったら場合によっては一時留め置い て検査結果が出るまで流通させないという措置を自主的にとっている場合もあります。  そんなことも組み合わせながらやっているわけですが、先ほどワケギの話が出ました のでちょっとその話を申し上げますと、ワケギで実は2回違反が見つかって検査命令が かかっているわけですが、これは通常の形態の輸入というよりは、よく韓国から荷物を 背負って日本に小口で持ってきてそれで販売するというケースが実は少しあります。韓 釜フェリーに乗って荷物を担いでくる。それも輸入になります。したがって、このワケ ギは実際上は大量でどんと入っているのではなくて、たしか数十キロだと思いましたけ れども、そういうレベルで違反が2回見つかっているということがあります。 ですか ら、輸入量が非常に少ないものですから消費されてしまっているということもあります けれども、いずれにしてもモニタリングで違反が見つかれば関係の都道府県にすぐ連絡 をして消費者の口に入らないように迅速な対応はとっているということだけ、最初に事 実関係として申し上げたいと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。この関係でパネラーの方からほかに発言される方はいらっ しゃいますか。先ほどいろいろ御講演いただいた中でも、やはり現地の情報をなるべく 集めるだとか、輸入時での検査がありますけれども、その下には更に自治体レベルで検 査をいただいておりまして、そういった中で輸入食品全体の安全性が確保されていると いうことかと思います。  私は今回のお話以外にも、要するにそもそも輸入食品で度々新聞に回収のような広告 が出ること自体が非常に不安をかき立てているというようなことも伺いました。事実と して、確かにそういう違反なので回収しなければいけないということなのかもしれませ んが、先ほど西島先生のお話にもありましたように、必ずしも食べ物として危険かどう かというとそうではないものも多数ありますので、そういったことをきちんと我々も説 明していかないといけないかと考えているところでございます。  それでは、会場の方からも輸入食品の不安のところについて、私はこう思うとか、何 か御意見があれば伺いたいと思いますが、どなたか挙手をいただいてもよろしいでしょ うか。 ○参加者1  今の桑崎室長のお話と、それからこれまでの説明の中で主に輸入食品は今はほとんど モニタリング検査になっていますね。今、細かい網の目をかけているというふうにおっ しゃいましたけれども、私どもの不安は通関をさせてしまった後のモニタリングです ね。ですから、何らかの問題がモニタリングで見つかっても、それは既に私たちのおな かの中に入った後ということがほとんどだと思います。  今の室長のお話では、業者は問題があって回収措置をする場合には大変なコストがか かるから、自主的にモニタリングがかかった場合には止めるような措置もしているとお っしゃいましたが、それは必ずしもどの業者がやるわけではないわけですから、問題が 起こった後、私たちが調べたら皆、食べてしまった後だったという話は今、具体的な事 例は挙げられませんけれども、何度かそういうことを体験しております。  ですから、このように食料輸入大国である日本がいかに検疫で水際の措置がとれるか は、モニタリングという措置ではなくて本来は留め置くわけですけれども、それが実質 不可能であれば、モニタリングにかかった場合には業者が自主的な措置ではなくて義務 として流通を止めるというぐらいのことをしていただかなければ、消費者の不安という のは消えないと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、コメントを西島先生、桑崎室長からお願いしま す。 ○西島教授 私も安田先生と非常に意見が似ているのですが、無理なんですね。ともか く生鮮食品というのは早く流通させないと品質も落ちるし、検査の結果が出る頃には大 体消費されているんです。それは流通の関係である程度やむを得ないと思うのですが、 先ほど私が講演で非常に心強く思ったのは、現地に行って指導をする、管理をするとい うことが、私が思っていたよりもずっと国の方がきっちり動き出しているということで す。ですから、検査するのも非常に重要なんですが、日本に持ってこない。事前にサン プリング検査をして、それは止めた実績が随分ある。そういうことに比重をかけていく と、消費者が口に入れてしまうということはかなり避けられると思います。  私は、今まで検疫所というのは来たものを検査してそれでいっぱいと思ったのです が、先ほどの話は現地に行っていろいろなものを調査して指導をするということで、で きるだけそういう方に比重をかけることによって実質的に消費者のおなかの中に入るの を防げると思うんです。  それでもう一つ言えることは、消費者の輸入食品に対する不安として何を使われてい るかわからないということが1つあると思うんです。日本の検査体制というのは私が知 る限り、よその国に比べて精度もいいし、いろいろな点で優れていると思うんですが、 そういうやり方というのは限度があると思います。一生懸命やればやるほど時間はかか るし、生鮮食品はどんどん流通させなければならない。繰り返しになりますけれども、 これからはもっと現地の指導、管理、農薬の薬歴、そういうものをしっかりやることが 非常に有効ではないかと感じました。 ○コーディネーター  ありがとうございました。追加のコメントは何かございますか。 ○参加者1  それは、先ほどニチレイの方が話された事例のことをおっしゃっているのかと思いま すけれども、私たちにとってはあれほど何万トンも冷凍野菜が入ってきて急増している にもかかわらず検査体制もなかったし、残留基準の冷凍食品への適用もないという状態 が放置されてきて、民間が発見して検出して、それでこの対応をとったという話であっ て、本来それに対する行政のおわびと、それから業界の輸入業者の怠慢をまず反省すべ きなんです。  それが、その事故が起こった後の対応の説明でしかなかったじゃないですか。それを いい対応をしているというふうに西島先生がおっしゃることについては、そういう方向 はこれからは必要です。これほど大量に輸入しているならばどんどんやらなければいけ ないでしょう。けれども、これほど冷凍野菜が増えているにもかかわらず何の対応もと ってこなかったということをまず反省してほしいと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。 ○桑崎室長  意見交換はいろいろな立場でいろいろな意見があってしかるべきで、それは少し会場 の方の意見をいただきたいのですが、モニタリングをやったときに物を止めろという御 指摘というか、そういう措置はとれないのかというお話でしたけれども、もう一度説明 をしますと、違反の蓋然性が高いのは検査命令にかかるんです。それは半分くらいある わけです。約4万件以上ありますから。それで、本当に違反がないかどうかを見るのが モニタリングなものですから、そういう意味でいくと違反の蓋然性はかなり低いんで す。そういうもの対してまで検査をするからと言って流通を止めるということは、私自 身は少し行き過ぎではないか。蓋然性が明らかになった時点でそれはきちんと流通を止 めて、検査結果が出なければ輸入を認めないという措置は適切ではないかと私は思うん です。  この点について会場からひょっとしたら意見があるかもしれませんから、御意見をち ょうだいしたらいいと思います。 ○山本氏  確かにおっしゃるとおりで、私どもはまず法律違反をしない。それから、もちろんそ の前提として安全性を守るということですけれども、1つここで、これは西島先生の分 野かと思いますけれども、もともと今、法律で決められている基準というものはADI その他、絶対安全率の100倍ぐらいのものをかけているわけです。それで、その中で法 律が決まっていますから、その法律で決まった数字の倍ぐらい出ても、必ずしもそれが 直ちに人体の危害につながるわけではない。  もちろんそのことを言い訳にして私どもが法律違反をしていいというつもりは全くあ りませんので、法律違反をいかになくすかということでできるだけ現地に出かけていっ て、法律違反もしない。それから、最大限安全性を守るというような管理をかなり農林 水産業のところまでさかのぼってやっていくということは当然やらなければいけない し、やっているということですけれども、そもそも法律違反から少しでも超えたら、そ のことが直ちに人体の危害につながるのではないということと、少しでも超えたら人体 に危害を及ぼすような基準は逆に決めてもらっては困るわけです。  そこのところはなかなか難しい話なんですけれども、やはり御理解はある程度いただ かないと、確かに西島先生がおっしゃるように生野菜を持ってきて、農薬の検査をきた ものをすぐやっても48時間から72時間くらいかかりますね。では、その間にその野菜は そのまま置いておくんですかということになると、なかなかそうはいかないという事情 は日本の今の食料自給の現状、輸入食品に頼っているという現状がある。  だけど、そうは言ってもそのことが直ちに人体の危害につながるようなものでした ら、これは行政も完全に止めようとしておられるし、我々事業者もそのことをそのまま マーケットに出すということは全くやらない。絶対にやらないということは肝に銘じて やっているつもりでございます。 ○桑崎室長  誤解がないように申し上げますが、生野菜だから流通を認めているということでは決 してないんです。例えば今、韓国から生きたヒラメがきていますが、全て検査命令がか かっています。そうすると一部死ぬんです。ウナギもそうです。生きたウナギも検査を すると、検査命令がかかるとその一部は死んでしまう。  だから、食品の状態として早く流通させないといけないから早く通すということでは なくて、モニタリングと検査命令の性格を考えたときに、モニタリングというものにつ いてすべて留め置くというのは少し私自身はやり過ぎではないか。生野菜だから通すと かということではないんだということを私の方から補足をさせていただきます。 ○コーディネーター  それは健康被害といいますか、健康影響を考慮してということで、たとえ物が死んで しまっても危ないものについては留め置いてでも検査をするということでよろしいでし ょうか。 ○桑崎室長  危ない、危なくないという議論は少しまた切り口が違って、我々が今、輸入時にして いるのは、基準が決められた以上はその基準にのっとってきちんと検査をし、基準に合 わないものについては流通から排除をするということだと思うんです。  ただ、その基準の決め方が、先ほど西島さんがおっしゃっていますけれども、先生も 御承知のとおりかなりのアローアンスを持って決められていますから、仮に一時的にそ れを食べたとしても直ちにその物質によっての健康被害が生じることがないということ も十分に御理解いただく必要があるのではないかということが今までの我々の説明でご ざいます。 ○コーディネーター  そうすると、モニタリング検査の段階では違反率等もそんなに多くないということで 全数を留め置いてということはできないということですか。 ○桑崎室長  そういうことです。 ○コーディネーター  わかりました。まだ追加の御意見などはございますか。  では、そのほかの方で輸入食品の不安のところについて御意見のある方がいらっしゃ れば御発言いただければと思います。 ○参加者2  私は輸入食品そのものを全部否定しているわけではないんですけれども、できること ならばどういうふうにつくられているのかとか、例えば北海道で捕れたシャケだったら おおよそ北海道でこの時期に捕れるのはこういうシャケだろうということはわかります ね。そういうふうな状況のものを食べたいと思っているんです。  それで、ここのリスクコミュニケーションは輸入食品についての安全性確保に関する 意見交換となっていますけれども、外国から持ってくることに対して人のエネルギーも 含めてたくさんのエネルギーを使っていますよね。こんなにエネルギーを使いながら、 どうして国内の自給率がどんどん下がっていくことを黙っていられるんだろうかと思う んです。だからと言って、さっきの講師の先生ではないけれども、農家に女性が嫁に行 けるかといったら、それは別の話だとは思うんですが、国内の食料自給率というものを 何とか高めるために、輸入食品の安全もさることながら、ここの場でもそれを高めてい く方向で議論をするということは切り口が違うのかどうかです。 ○コーディネーター  最初に御説明が足りず、申し訳ありません。お1人当たりの発言を2分以内に抑えて いただきたいということと、1分半でベルを慣らしますので、あともう少し御発言いた だいて、2分くらいで発言を終了していただければと思います。 ○参加者2  わかりました。  それからもう一つは、具体的にアメリカの牛肉の輸入再開が決定しましたね。このこ とについて私自身はすごい不安があるんです。日本の牛肉がどういうふうにつくられて いるのか。ここの農家では違うのかもしれないけれども、大まかなところと、それから アメリカの牛肉がどういうふうにつくられているのかということを、例えばオーストラ リアも含めて、では政府は国民に対して知るようなことをしているのかどうか。そこの ところを私は聞きたいんです。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、前半の自給率を高める件については農水省の古 畑さんの方からコメントをいただいて、牛のことについては松本参事官からよろしいで すか。 ○古畑課長補佐  ただいまお話がありました食料自給率のお話です。私、農林水産省から参りました古 畑と申します。  食料自給率の関係は、農林水産省の役割であります食料の安定供給、もちろん今日の 話題からいくと安全な食料をいかに安定的に供給するかという役割を担っていると思っ ております。自給率に関してはもちろん国内農業の関係も大いにありますので、農林水 産省としてもそれをいかに上げていくのかというような議論をしておりまして、御存じ の方も多いと思うんですが、具体的に現在農林水産省の取り組み全体を食料農業・農村 基本計画という形で、輸入も関わると思いますけれども、今後の国内農業をどう進めて いくのかということを計画で決めているのですが、次の計画について今まさに検討をし ている過程で、先週辺りもたしか自給率の問題も含めて有識者の方の御議論をいただい ております。  その中でも、供給サイドの問題から消費サイドの関係も含めて幅広く議論をしており まして、現在の農業の関係とかいろいろ関わっていて、今40%というカロリーベースの 数字が挙がっておりますけれども、その目標をどうするのかということも含めて議論さ れております。その目標の在り方ですね。前目標もつくった当時は10年後に45%という 話もありましたが、そういう決め方でいいのかというところに立ち返って今、検討をし ている状況です。  結論から言うと、自給率はあくまでも指標といいますか、国内食料の供給をどう進め ていくかという一つの物差しだと思いますので、その数字がどうこうというのは結論で はないと思うんですけれども、今後の農業をどうするのかとか、安定的にその供給をど う確保するのかという議論の中で出てくる問題だと思っています。その中ではもちろん 量の確保が第一ですけれども、安全でないものというのは多分あり得ない話ですから、 安全の話も含めて更に議論が進められるかと思います。  正確な数字はありませんけれども、今年度内ですから3月までにある程度の形になる のではないかと思っております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、輸入牛肉の話についてお願いいたします。 ○松本参事官  米国からの牛肉の輸入の再開についてですけれども、まだ決定されたわけではありま せん。昨年の12月にアメリカでBSEが発生して、アメリカからの牛肉の輸入はその時 点から停止しております。その後、アメリカは再開したいということでこれまで交渉を やってきましたけれども、少なくとも日本に米国が輸出するとき、我が国は輸入すると いうことですが、そのときには我が国と同等の安全性が担保されている、確保されてい るということが輸入再開の条件ということであります。  我が国の場合は、現在輸入はBSE対策ということで3年前から全頭検査と特定危険 部位の除去ということをやっておりまして、3年たってその対策がどうであったかとい うことを食品安全委員会の方で科学的、客観的に評価していただきました。その結果と して9月に中間報告が出まして、それを元に厚生労働省、農林水産省とでリスクコミュ ニケーションを7か所で開いて御意見を聞いて、10月15日に検査月齢を現在全頭、ゼロ 月齢というのは全頭検査という意味ですけれども、それを21か月齢でどうか。それか ら、特定危険部位の除去の徹底と同時に検査あるいはBSE感染のメカニズム、あとは と畜場での汚染の防止措置についての研究を一層進めますということで諮問を食品安全 委員会の方にいたしまして今、検討をいただいているということです。  まず食品の安全確保ということについては、科学的合理性に基づいた政策をとる必要 があるだろうということで、まずは我が国のBSE対策についてのきちんとした見直し を今やっている最中でありますので、それが固まって、食品安全委員会からの検討が終 わって、答申があって初めて我が国のBSE対策の基準がきちんと決まるわけですけれ ども、それと同等の安全性が確保できるかということについて、米国からこういう措置 をとれば安全性が担保できると思いますという具体的な提案があると思います。その提 案があったときに再び食品安全委員会の方に評価をお願いしようと思っておりますの で、まだ米国からの牛肉の輸入の再開が決定したわけではありません  ただ、お互いに必要なものもありますからと努力をしましょうということではありま すけれども、あくまでも科学的な合理性に基づいたところで議論をしていきましょう。 日米の専門家で話し合っていきましょうというところでの認識の共有はできましたけれ ども、まだそういう段階であります。  それから、アメリカと日本での牛の飼い方がどう違うのかということですけれども、 今、全国食品安全委員会と農林水産省、厚生労働省で一緒になって全国リスクコミュニ ケーションでいろいろそういうことも含めて説明して回っております。神奈川はまだ来 ておりませんけれども、そのうちにこちらの方でも開く予定にしております。  ちなみに、日本の場合には乳牛と和牛といいますか、肉牛がありますけれども、これ まで我が国では14頭BSEの牛が発見されましたが、種類としては全部ホルスタインで あります。雄というのもありますけれども、ほとんどは牛乳を出し終わった後の牛とい うことになります。それで、乳牛の場合には母牛は子どもを生まないとお乳は出ませ ん。それで、子どもを生みますと最初のお乳は免疫力がたくさんあるものですからそれ は子牛にいくんですけれども、その後のお乳は人様、人間のために横取りするものです から子牛は飲めないということで、子牛を育てるのに代用乳などで大きくしていくとい うことであります。 一方、和牛は生まれてくるとたっぷり半年くらいはお母さんのお 乳を飲んで育って、その後、干し草だとか、いろいろなものを食べて育つということで えさのやり方も違ってまいります。日本の場合は広い牧場で飼うわけではありませんの で、農家の方の牛舎といいますか、そこで飼っておりますけれども、米国の場合にはだ だっ広いところで飼っておりまして、そのうち何か子牛が増えたなというところで自然 に生まれてくるというような状況であります。  皆さん方はいろいろ新聞等で牛のことが御関心があるのは、仮に日本の対策として特 定危険部位の除去を全頭からやっていて、検査を見直すとしても本当にアメリカから入 ってくるときに月齢を確認できるのかどうかということが大変御不安であろうと思いま す。日本の場合には3年前の経験から、生まれてくる牛には全部耳に耳標というものを 付けまして、牛一頭一頭の戸籍ができて、この牛はいつどこで生まれて今、何月齢かと いうことが全部わかります。アメリカでも1割弱くらいのところはそういうことができ るようですけれども、なかなか日本みたいな形ではいっていない。  それで、アメリカが今、提案してきているのは生理学的な評価、生理学的な成熟度と いうことで具体的には背骨のところが後ろに局突起と出ていますけれども、そこの軟骨 の部分が月齢とともに骨化してくるので、それでもって月齢を判断できるということを アメリカでは主張しているんですけれども、それは科学的に検証できるかどうかという ことについて日米の専門家で話し合って決めましょう。  我々としても、そういうアメリカが提案したものを国民の皆さんにきちんと御納得い ただくようなことができなければ、それはなかなか難しいと思いますので、現在肉質の 専門家と解剖学の専門家と統計の専門家でもって今、検討していただいています。それ で、アメリカの方から具体的にこういうことでどうでしょうかというデータが出たとき に、それに基づいていろいろ議論をして、本当に科学的にそういう月齢がアメリカが言 うような形で判断できるかどうかということは今後、専門家の議論として残っていると いうことで、まだいろいろ手続きがあるということであります。 ○コーディネーター  ありがとうございました。山本様からも発言をお願いしたいと思います。 ○山本氏  日本の食料自給の問題について今、御質問の方に対して申し上げるのではなくて、こ れはむしろ私も行政の方に情報をきちんと開示してほしい、知らせてほしいと思ってい る部分が若干あります。  例えば大豆の消費量のことを考えますと、大豆というのはよく遺伝子組換えが問題に なるんです。私どもも遺伝子組換えの分別したものをできるだけ調達しようということ で努力はしているんですけれども、そもそも今、日本で1年間に日本人が消費している 大豆が550万トンくらい多分あったと思います。間違っていたら古畑さんに訂正してい ただければと思うんですけれども、直接人間が食べるものだけでも130万トンくらい消 費しているはずです。そのうち、日本でつくられているのはたしか15万トンあったの か。  では、550万トンを全部日本でつくろうとしたときに、日本の耕地面積で今お米をつ くっている部分の何十%をつぶして、その他の野菜をつくっているところや果樹をどれ ぐらいつぶしてどうやってつくれば550万トンのうちの何割を自給できるのかといった ようなことは多分、試算もある程度されているし、研究されていると思うんです。そう いう情報をきちんと一般の方にも、もちろん我々事業者も含めて公開をしていただい て、そのことによって安全性だとか安心、特に安心という部分について皆さんに御理解 をいただくというような努力が明らかに足りないと思うんです。  先ほど松本参事官がおっしゃったように、BSEについても全く同様だと思います。 そもそも何が議論されているのか。牛の月齢をどうやって判別しようとしているのか。 これは御存じの方は皆さん御存じなんですけれども、そういうことをわかりやすく国民 に開示をして理解をしてもらう。そのときに、では牛肉の自給率をどうやって上げてど うすればいいのかというところまでどう施策して考えておられるのかということを出し ていただかないと、私どもも含めて皆さんは理解できないと思うんです。大変申し訳な い言い方ですけれども、自給率を上げようと努力していますということでは実態として 何をやっているかわからないんです。  そこの情報の出し方が今の行政というのは足りないなと、大変恐縮な言い方ですけれ ども、ここは一言申し上げておきたいと思います。 ○清水幹事  ちょっと視点を変えまして、輸入食品の何が不安か。今、日本は比較的お金があるわ けです。それで、食料もつくってもらっている。それが、何かあった場合にはこんなに 低い食料自給率だとどうなるんだろうという不安がありますね。  ずらっと並んで男性で、私はたった一人の女でございますが、やはり女性の視点とい うのは自分の代だけではないんです。その先のことも考えますと、そういう意味では自 給率というのは農水省が今いろいろなことをやっている。それから、厚生省もいろいろ なことをやっているというような縦割りといいますか、それではなくて国がこの国の農 業はどうしていくのかという基本姿勢をきちんと示さないといけないのではないか。そ れにはやはり消費者もどんどん声を挙げていかないと、この国はどこへいってしまうの だろうかと本当に不安になるわけです。  今は、そういう意味では中国でもつくってくれている。先ほど世界地図がありました けれども、いろいろなところから輸入ができていますけれども、これがいざ何かあった 場合には、例えば水の枯渇の問題ですとか、それからもちろん運んでくるためのいろい ろなものが必要なわけですね。そういう問題も全部含めて、国としてこの国をどうして いくのか。この国の農業とか食料というものをどうしていくのかということをもっと先 の先まで考えていかなければいけないのではないか。何が不安かと言われると、いろい ろな面で考えざるを得ないかと思って今、提案させていただいています。 ○コーディネーター  会場の方で手を挙げていただいている方がいらっしゃいますので、お願いします。 ○参加者3  1つは自給率なんですけれども、どれくらいの量をつくったらいいかというお話があ りましたが、減反の跡地の政策として大豆をつくりましょうということで大豆の作成の 計画を立てられて農水省が推奨してきたと思います。  ところが、立てられた数量よりもたくさんできてしまったということで、総務省の評 価がものすごく悪かったんです。私たちは、簡単に考えたらたくさんできたことはすご くいいことだと思ったのに、たくさんつくり過ぎたのは悪いことだという評価が出たと いうので実はびっくりしたんです。その辺は一体、政治というのは何をやっているのか ということがひとつ私たちには疑問です。  それから、残留農薬あるいはいろいろな問題が出ましたけれども、流通してしまった もの、私たちは何が一番心配かといったら、やはり輸入食品、特に冷凍食品は心配かと いう気がするんです。生の野菜と冷凍食品では農薬の基準が違うと伺っていますけれど も、それにしても通って加工されてしまってコンビニのお弁当になっておかずの中に入 ってしまったら、そのおかずを私たちが見分けるのはすごく難しい。でも、多分コンビ ニのお弁当の中に入っているものはほとんど輸入食品で占められているのではないか。 そういうときに私たちに情報が何も流れてこないのは非常に不安かと思います。  それから、輸入牛の話で21か月くらいということでしたけれども、でも日本で最後に 出たのは23か月でしたね。だから、21か月でいいということではないということで御検 討願えたら大変ありがたいと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。自給率の問題については確かに大きな問題かもしれません が、今日のここでの議論の中心はできれば安全性のところに焦点を当てて進めていきた いと思いますので、そのように御理解いただければと思います。  今いただいている意見の中で、冷凍食品のところが心配だという御意見をいただいて おりまして、特に生と冷凍で基準が違うのではないかというお話もありましたので、基 準がどうなっているかについて宮川補佐から少し説明をいただければと思います。 ○宮川課長補佐  基準をつくっている立場で申し上げます。  幾つか、殊に農薬のことで申し上げるとすると、まず先ほどおっしゃられた冷凍食品 のことに関して申し上げると調理をしたような冷凍食品、お総菜を固めたような餃子と か春巻とか焼売とか、ああいうものであれば生と同じ基準を適用するというのは難しい ことなんですが、殊、冷凍野菜、例えば冷凍ほうれんそうというものについては基本的 に同じ数字を当てはめて対応するということになります。  それから基準をつくるとき、これは皆さん方の食べる量に基づいて決めるというのが 原則になっています。それはお子さんの食べる量も含めて、お年寄りも妊婦の方も、そ れぞれの食べる量をベースにして決めるのですが、その際には例えばほうれんそうだっ たらそれが加工されて食べられるものも含めた食べる量、つまり生のほうれんそうの量 だけではなくて、生としてお食べになるだけではなくて、生のものが加工されて加工食 品としてお食べになる量も含めて、それでも大丈夫な基準をつくっているということに なります。  基準のつくり方に関して申し上げれば、殊、残留農薬に関しましてはあと2年いたし ますといわゆるポジティブリスト制度という制度に変わります。したがいまして、基準 のないものは一定の量以上残留するものは流通ができないという制度になります。今ま でですと基準のあるものしか規制がかからなかったということですが、基準のないもの は原則輸入できませんというふうに大きく制度が方向転換をいたしますので、それは国 産、輸入品、どちらも同じことですけれども、農薬の内容についてより厳しい管理が求 められることになるかと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、前の方どうぞ。 ○参加者4  輸入食品の安全性確保という意見交換会を東京でやってほしかったのですが、横浜し かないということで来ました。たまたま私どものグループで、この近くにある横浜港の 塩蔵野菜の貯蔵庫を見学する機会がありました。それで、これは20、30年前に問題にな ったんですが、一時沈滞したからそういうものが現物としてないと理解しておりました けれども、ここのところへきていまだにきちんとあるということを聞きましたので見学 に来ました。  塩蔵の倉庫の在り方ですけれども、いろいろな方に御意見を伺いまして、今日の報告 の中にも監視している、検査しているというふうな報告がありましたが、基本的には輸 入されたものが日本へ入ってしまったから、もうこれで安心なんだ。その食品という か、食べ物がいつどこでどう使われているかということまでも消費者としては非常に関 心を持っておりますので、あれは倉庫業の問題だけではないと思います。やはり食べ物 ですので、それがどういうふうな食品の中に使われているか。ただ単に漬物だけではな いと思いますけれども、輸入されたものがどう保管されていくのか。ああいう姿を二度 と見たくないと私たち東京都の消費者団体が来て思いましたので、そういう点は是非こ の機会に計画の中にきちんと入れておいていただきたいと思います。  多分あの現状を皆さん見ていらっしゃると思いますけれども、あれが安全な保管管理 の状態だとは決して思っておりません。そのために東京から来ましたので、よろしくお 願いいたします。 ○コーディネーター  ありがとうございました。国としての見解ということで、まず行政の方からお願いし たいと思います。では、吉田所長お願いします。 ○吉田所長  先ほど冒頭にスライドでもお見せいたしましたように、私ども横浜検疫所と横浜市の 皆さん方と共同して、毎年いわゆる野積みの塩蔵野菜の監視指導をしておるわけです が、この問題が起きましたのは昭和60年でございます。それ以来約20年たつわけでござ いまして、毎年私どもこの調査の監視指導をやっているわけであります。  実は先月も横浜市さんと共同で調査をいたしましたところ、今年度は山下埠頭と本牧 埠頭の6か所におきまして100件余の約1,000トンの食品、いわゆる塩蔵野菜が保管され ておりました。それで、このうち23件が露天、軒下というのが45件、テント内が43件と いう状況でございました。  私どもとしては、以前はすべてが露天であったわけでございますが、保管についても できるだけ軒下あるいはテント内できちんと保管するように、それができない場合には カバーをかけてちゃんとした保管をするようにという指導をしてきたわけですので、以 前と比べれば相当改善してきたと思っております。  ちなみに、量的に言いましても10年前ですと1万1,000トン近くあったものが約1,000 トンでございますから10分の1まで減少してきたということでございます。これらの品 物につきましては、通関済みの食品については横浜市さんの方でそれぞれ業者さんに御 指導をいただいておりますし、まだ未通関のものにつきましては私ども検疫所の方で通 関までの適正な管理指導を行っております。  その結果、検査を行いまして1か月たった現在においては、未通関のものですと半分 程度は処理されたというふうに報告を受けております。いずれにしても、塩蔵野菜等に ついては保管状態が適正な形で行われるよう、またその都度輸入業者さんには私どもの 方からも強く御指導していきたいと思っております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。会場の方に横浜市さんも見えているかと思うのですが、少 し横浜市の取り組みを御説明いただければと思います。 ○相澤氏  横浜市衛生局食品衛生課の相澤と申します。  今、検疫所の吉田所長さんから御説明がありましたので、重複する点もあろうかと思 いますが、その点につきまして御容赦いただきながら御説明を申し上げたいと思いま す。  今、経過につきましてはお話の中に出てきましたように、昭和60年ごろに輸入食品が 非常に増えてきた現況の中で、昭和60年の秋、10月ころに毎日新聞さんの方で輸入食品 は安全かという報道がなされ、この中で今こちらから港が見えますけれども、横浜の各 埠頭にいわゆる露店というか、外の公共の荷さばき所にポリタンクだとか竹かごに入れ た、ほとんど多くが中国からの輸入食品でございますけれども、野積みされていた。  当時は7埠頭、山下埠頭、本牧埠頭、新港埠頭、高島埠頭、神奈川の方の出田町、そ れから瑞穂ですとか大黒埠頭辺りに野積みをされていたということで、60年過ぎから平 成の頭辺りには私も監視等で行っておりますけれども、高さは大体ビルの2階くらいま で積んだというような状況がございました。  平成2年から数量的なものを取りまして、どのぐらいいわゆる野積み、外に雨ざらし ではないですけれども置いてあるかということを数的に確認したのが今、所長さんがお っしゃったように平成2年に約1万1,000トンございました。今年11月12日に横浜検疫 所さん、それから横浜市の港湾局、私ども衛生局、福祉保健センターの食品衛生監視員 が立ち入って実態を見たところ、山下埠頭、本牧埠頭に981トンです。そのうち、本当 に外に出ているのが182トンくらい、率にすると0.8%くらいになるかと思いますけれど も、そういった状況でございました。  数的には非常にここのところ減っております。7埠頭から今は2埠頭になっていま す。あとは横浜市の港湾局の港湾条例で、埠頭の利用につきまして公共の荷さばき所に はそういったものを置かないという禁止条項ができて、現在置けないような状況になっ ております。  それから、長年の18年間の監視指導を続けてきた中で改善が見られた大きな点は、容 器の改善が非常にここのところよくなったということで、ポリ容器が主流を占めており ます。この容器も、例えば1段、2段積んでも重量でつぶれないようなポリ容器の形、 それから厚みですとか、中の食品を入れているビニールですとか、ネジキャップ式の形 態だとか、そういうような形に変わってきております。以前の竹かごに入れて何段も積 んだといったようなものは今回は1件見ただけです。  それから、長期、長期というお話が出るケースが多いかと思いますが、私ども長期の 野積みということで本当に外に積んであるもので長期という位置付けは1年以上を一つ の目安にさせていただいております。この中で、今年辺りも例えば3か月だとか5か月 だとか非常に短期間の中で国内の製造メーカーさんの方へ流れていくというような話で ございます。  それから、私ども監視指導の中で一番着目しなければいけないし、当然食べるもので すから見なければいけない点は、保管の状況ですとか、中によくかびが生えていたと か、異物が入っている。砂、糸くず、いろいろなものが入っているということでござい ますので、立ち会っていただきました輸入の保管業者の方に、輸入業者の許可を得て開 けて中の方のチェックをさせていただくことにしております。一部押しつぶされて輸送 の段階で割れたものだとか、かびが生えているものは確かにございました。全体からい くと非常に一部ですが、これも食品に回るというのは非常に不適切でございますので、 私どもは今回もすべての調査結果を整理して検疫所さんの方と情報を交換したりした中 で、輸入業者はほとんど横浜市外の業者の方が多いわけでございますので、関係の管轄 している自治体の方へ通知文を出して結果を添えて、全体の監視結果プラスそちらの管 轄している輸入業者さんのこういったものの中にこういったものがあるので改善の方を 指導してほしいということで指導の依頼をしております。これは合わせて輸入倉庫の業 者を通じてもやり、両サイドからやって速やかな改善をということでお願いをしており ます。  あとは、時々監視指導の頻度をもっとというようなことで、この質問の中にも今、私 が目を通していましたらありましたけれども、これは昭和61年の5月から始めています が、平成5年までは5月、6月、それから11月、12月と年2回、1回に3日から4日く らいかけてやっていましたけれども、今、言ったように1万1,000トンから980トンと非 常に数が落ちています。それから、いろいろな点で容器も改善されたので、このところ は秋、11月辺りを中心にやっているというのが現況でございます。  私どもこういった輸入内貨も各自治体の製造メーカーの方へ流れますので、その一流 通段階として食の安全の確保のためには毎年こういったことで不良品の発見、あるいは そういった排除に努めている次第でございます。非常に雑駁ですが、以上です。 ○コーディネーター  ありがとうございました。行政の方でもいろいろ指導なり、きちんとしていただくと いうことも必要ですし、消費者の方がやはり不安に思っているということでございます ので、そこは業者さんの方にもいろいろ御事情はあるかと思いますが、是非適切な保管 ということに努めていただければと思います。  それでは、先ほどから手を挙げられている方どうぞ。 ○参加者5  ポジティブリストの話が出たのでお伺いしたいのですけれども、農産物は現行モニタ リング検査は75品目やられているということだったんですが、ポジティブリスト制度と なった場合のモニタリング検査の件数がどのように変化するのかということをお聞きし たいのですが。 ○コーディネーター  ありがとうございました。テーマとしては何が不安かというほかに、今後検査のとこ ろと監視指導計画ということで区切っておりましたが、時間の関係もありますので今モ ニタリング検査のところにも話題は飛んでしまいましたし、今後は全体を含めてという ことでテーマの設定をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。  それでは、今の今後のモニタリング検査はどうなるかというところですけれども。 ○桑崎室長  輸入食品を監視する立場としても、ポジティブリストにどうやって対応するのかとい うのは非常に大きな課題です。それで、基本的には先ほど先生のお話もありましたけれ ども、外国でどういう農薬が使われているのかという情報も大事ですが、実際に現場で 検疫所でいくと検査センターになりますが、検査センターで使える検査法でどれぐらい の農薬を一斉に分析することが可能なのかという両方から今アプローチをしているんで す。  それで、基準課の方では一部分、一斉分析法をつくっていただいているわけですけれ ども、それも参考にしながら今それを現場でどういうふうにルーチンとして取り込める のか。もちろん今の75では全然だめなわけですから、それを今、検疫所、国立衛研の先 生を中心に検査法の開発をしていただいていまして、できる限り多くをカバーする一斉 分析法の設定と、それからもう一つは外国の使用状況を勘案をしながら一斉分析法でカ バーできない部分についてはどうしてももう少し小さな区分けで個別検査法をやらざる を得ないという両方をにらみながら今、検討をいただいているところです。  少なくとも今の75に加えて相当数カバーできる検査法を早期に確立をしてもらって現 場で活用していきたいと思っております。以上です。 ○コーディネーター  ありがとうございました。パネラーの方で何か追加のコメントがある方はいらっしゃ いますか。  特にないようでしたら、まず先ほどのことに対する追加のコメントをいただいて、あ とは数名手を挙げておられるのでその方にいきたいと思います。 ○参加者5  今のお話ですと、結局まだ数字は出ていないということですね。それで、75プラスア ルファという意味合いで、それが300になるかという話ですね。 ○桑崎室長  それはこれからです。 ○参加者5  ありがとうございました。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、安田様と真ん中の列の方の順にどうぞ。 ○参加者1  検査のことでお尋ねしたいことがあります。  まず、遺伝子組換えの検査という項目が横浜検査センターであるというふうに御説明 いただいたのですが、それは未承認の品種が混入していないかどうかという検査をされ ているのか。そして、それはどの程度の実効性があるのか。市内で流通しているものに そういうふうなものがかなり混入というのはこれまで何度も報道されてきましたね。ポ テトチップスにしろ全量回収ということになったり、それからその後追認というような ことになったりもしてきました。  それから、もう一点は放射線照射のチェックということです。これはチェック技術が ないということで言われていることなのですが、よく日本はたくさんのシャケなどを輸 入していますけれども、そのシャケが異臭がするということで裁判になって、その結 果、放射線照射がされていたということが報道されましたね。そのように放射線照射と いうものが今、輸出国ではかなりされている部分があると思うのですが、そういうふう な場合には検査機器でそれを確認することができない技術上の制約がある段階では、輸 出国の情報の収集というものが非常に大事だろうと思うのですが、放射線照射に対する 措置というのはどのようになっているのか。その辺についてお答えいただきたいと思い ます。 ○コーディネーター  ありがとうございます。では、行政の方からお願いします。 ○桑崎室長  まず遺伝子組換食品の検査対象は未承認なのか、それとも承認したものかということ ですか。 ○参加者1  未承認のチェックをどのようにしているかということです。混入がないかどうかです ね。 ○コーディネーター  未承認の検査の実効性がどうかということですね。 ○桑崎室長  検査実施数でお知らせすればよろしいですか。  未承認のものも検査を、例えばトウモロコシであればスターリンク、それからパパイ ヤも未承認ですので、そういう未承認のものの検査も実施をしているし、それから承認 されたものであっても5%上回るものがないかどうか、両方検査をしています。それ で、平成15年度で申し上げますと都合1,804件の検査を実施していまして、違反の件数 はございませんでした。  ちなみに、平成14年度は2,813件の検査をしておりまして、パパイヤから3件の違反 が見つかったという状況でございます。これが遺伝子組換食品の検査の実情ということ で、吉田さんから追加の説明があればちょうだいしたいと思います。  それから放射線照射食品ですが、安田さんも御存じのとおり検査法ができるのが一番 いいわけです。それで、これも衛研の先生方にお願いをしているのですが、これでいけ るかというとなかなか難しいことも事実です。  それで、今、実際にどうしているかというと、輸入食品届出書がありますね。そこで 製造工程を記載することになっています。それで、その製造工程で特に殺菌工程がある ということについて記載がある場合には、これまで調査したものがなければ、それはど ういう殺菌工程を経ているんですかということで、特に中国産を中心に輸入者に確認を させた上で日本に放射線照射食品が認められたもの以外は入ってこないような対応をと っているということでございます。 ○参加者1  その殺菌工程というのは魚、肉とあらゆる食品ですか。 ○コーディネーター  もし時間がかかるようでしたら少し調べていただいて……。 ○鶴身氏  輸入食品安全対策室の鶴身と申します。  先ほどお話がございました中国産の殺菌の工程の確認ということで現在取り組んでい るものについては、中国産のすべての食品を対象にして確認をさせていただいておりま す。 ○参加者1  中国産だけですか。シャケの場合にはチリとか、カナダとか、そういうところの輸入 だったと思うんです。腐敗、変敗というものが輸入食品には必ずつきものですけれど も、それに対してあらゆる食品で放射線照射というのは、日本ではそれは違法としてい ても商業稼働している国においてはそれをされる可能性があるわけですね。ですから、 その辺は輸出国の事情というか、状況をチェックして、可能性のあるものについては中 国だけではなくてチェックしていただく必要があるのではないかと思います。 ○桑崎室長  私は先ほど安田さんがおっしゃったシャケの話は余り知らないんですけれども、なぜ 中国かというと過去中国の製品でそういうものがあったということです。したがって、 そういう事例があったものについては集中的に監視をするということから中国をターゲ ットに絞って監視を強化していますし、またその他の国についても情報を収集して、必 要があれば監視を強化していきたいと思っております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、次の方どうぞ。 ○参加者6  先ほど東京都の方から荷さばき場にあるポリドラムの話が出ましたけれども、どうし て炎天下に置いておいても大丈夫かということを非常に不思議に思っているんです。そ れで、軒下というお話がありましたけれども、倉庫に置きましても倉庫の中ではなくて 倉庫のテラスに置いてあります。なぜかといいましたら、液が漏れてにおいがしたら中 には置けないという話だったんです。そういう状況のものが何で炎天下に置かれている のか。 それからもう一つは、その輸入食品が地方に行ったときにどんな形で置かれて いるかということも御存じなのでしょうか。特に輸入食品の塩蔵野菜は地方のお土産の 漬物になります。私が2年ほど前に長野に行きましたら、長野の小さな食品メーカーの 庭にこれだけたなざらしになっていました。ということは、荷さばき場に置いてあるだ けではなくて、地方に行って大変そういった不都合な状況に置かれているのではない か。その先の部分はどのように厚生労働省は見ていらっしゃるのか、ひとつ伺いたいと 思います。  それから、先ほどニチレイの山本さんが手間隙かけて日本へ冷凍食品を送っていらっ しゃるとおっしゃいましたけれども、その手間隙かけるところを是非日本の農業のため に力を貸していただきたい。  それから、先ほどシャケの話が出ましたけれども、チリでやっているシャケはJIC Aが日本の技術を持っていって、そしてつくって日本に輸入されていると聞いておりま すが、それは間違いないことなのか。この点を伺いたいと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。国内に入ってから地方に行ったところというのは輸入食品 の担当で答えていただくのでよいのかどうかということはあるんですけれども、行政の 方からいいでしょうか。 ○桑崎室長  なぜ野積みがあるのかということは先ほどコメントがありませんでしたのであれなん ですが、私の理解では間違っていたら検疫所もしくは横浜市の方にコメントをいただき たいのですが、あれは塩蔵でたしかすごい濃い食塩水の中に野菜を入れているんです ね。したがって、従来であればさっき容器の改善の話がありましたけれども、ドラム缶 なりその他の容器から塩水が漏れ出るとコンクリートがだめになってしまうんです。そ れで、倉庫会社の人はその倉庫に搬入するとそのために倉庫のコンクリートが腐食して ダメになってしまうから、なかなか中に運び込めない実情があるというふうにまず理解 しています。  したがって、今日は専門家がいらっしゃらないのであれなんですけれども、非常に高 濃度の塩蔵野菜ですので、微生物学的には水分活性がほとんどないということだと思い ますから、ひょっとしたら問題がないかもしれないと思います。  ただ、先ほどのお話でちょっと私が思っているのが、当然ながら腐敗、変敗したもの はだめだから、そこのところは横浜市なりにしっかり監視をいただいて、そういうもの ははねていただくということが最低限必要だということで、それはさっきやっていると いうお話でした。  それから、地方に行ったらどうなのかというのは、実は地方の実情を私はすべて承知 をしているわけではありませんけれども、ただ、一般的に申し上げると、やはり食べる ものですから食品衛生上の話は別にしても、口に入るものについて長時間野ざらしとい うのは道義的にも問題があるんだろうとは思っていますので、1つは営業者の自主管理 を是非徹底してもらいたい部分でもあるし、それについて保健所がどう指導をするのか というのは考えなくてはいけないというふうには思います。  それからもう一つはチリの話ですが、チリのシャケについて、抗生物質の残留問題が あったから私が調査に行ってまいりまして今は改善をされているわけですが、ある企業 がそこでシャケの養殖をJICAのプロジェクトとして始めたのがスタートだというこ とは私も聞いておりますので、それは間違いないだろうと思っております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、山本様からもコメントをお願いしたいと思いま す。 ○山本氏  我が社に対する御意見がありましたのでお話をしますけれども、実は我が社はお米に 関するピラフだとか、お握りだとか、こういう商品もたくさんつくっているんですが、 これはすべて国産のお米を使い、特に北海道の農協と提携をして特定のお米を使ってや っています。お米でしたらそれはできるんです。  ところが、ほうれんそうというのは残念ながら今、国内で特におひたしみたいな形の ほうれんそうというのはまず原料が十分に調達できない。それから、あれをつくるため の人手がかけられない。さっきの農業のなり手がないということと同じように、食品産 業もそろそろ相当そういう人手がかけられなくなりつつあるという事情が日本の社会の 中にあるんですね。  そのことは私どもも大変残念だと思っているんですけれども、そこはある程度日本の 今の社会が要求するもの、これはもちろん我々ビジネス上の問題もありますが、すべて 国産の原料を使ってすべて国産の食品をつくるということが難しくなっている。先ほど 来出ている自給率が40%しかありませんよということは、それを加工食品で見たときも 同じ事情があるんだということは御理解いただきたいと思います。  チリの件は桑崎室長がおっしゃるとおり、これは逆にチリもありますし、ノルウェー もありますし、逆に日本では捕れない魚種、これは実は必ずしもギンジャケ、シロジャ ケではないタイプのものがありますので、そういう意味ではいろいろなものですね。 今、日本の食生活が非常に多様化している。そこで消費者の方が求められるものをいか にタイムリーにきちんと提供するかということも、我々食品産業としての一つの役割で ございますので、そういう観点からもいろいろ考えながら仕事をしているということは 御理解をいただけると大変ありがたいと思います。 ○参加者6  一言だけ申し上げたいのですが、ほうれんそうは冬場のもので夏ではないですね。そ れが今、日本の国内においてはすべての野菜が1年じゅうあるという形で回らないと、 なかなか消費者が許さないというような風潮を私は聞いております。でも、それをつく ったのは消費者ではないと思っています。それは、そういうものを提供している業者さ んの方にも責任があるのではないか。  それから、これは食育の問題に入るのですが、国としましても正しい食生活というも のをやっていただかないと、日本の農業も立ち行きませんし、日本はいろいろな国から 取ってきて、先ほどもおっしゃったように捨てるものがあるということを考えますと、 全般的に物をもっと考えていただかなければならないと私は思っております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。予定していたお時間が大分超過してしまいましたので、最 後にお1人だけどうしても発言したいという方があればお伺いしたいと思います。  では、一番後ろの方、最後ということでお願いいたします。 ○参加者7  二、三、監視指導計画についてお聞きしたいところがございまして質問させていただ きます。監視指導計画のところで今度、適正表示について輸入品に対して事前に都道府 県等に照会などをして輸入食品の表示がちゃんとなるようにしなさいという文言が今回 加わりましたけれども、この都道府県等というのは本社を管轄する都道府県等という考 えでよろしいのか。もしその場合でしたら、事業者さんの方もどこに相談したらいいか ちょっと迷うところもあると思いますので、本社、輸入者の所在地を管轄する都道府県 等に直したらいかがかという提案でございます。  もう一つが違反が判明したときの対応で、今回監視指導計画の中に自主検査でも違反 等が判明した場合は回収等の速やかな指示、指導を一緒にとっていこうという文言が加 わっておりますけれども、これについて自主検査を行う部分、登録検査機関等で自主検 査を行うとは思うのですけれども、その登録検査機関の精度体制などはどのような形に なっているのか。  また、この文言の中に都道府県は当該輸入者に対して回収等の指示を行うということ がございますけれども、この指示というものが行政指導に当たるのか、また命令等に当 たるのか。命令等に当たった場合は、その根拠をどこに求めたらいいのか。それが疑問 に思うところですので、教えていただければと思います。  最後に、自主検査等で違反が見つかった場合、所在地を管轄する都道府県等の指示に 従うようにという文言がございますけれども、これも先ほどと同じように輸入者の本社 が所在する都道府県なのか。その辺の御見解というか、読み方についてお聞きしたいと 思います。以上、よろしくお願いいたします。 ○コーディネーター  それでは、桑崎室長お願いします。 ○桑崎室長  聞かれれば本社所在地で結構ですということですけれども、やはり行政機関ですので そこは一義的にそういうことなんでしょうが、保健所も各地にあるわけですから、相談 があったら是非相談に応じていただければ、それはそれでいいのではないかと思いま す。ただ、聞かれれば本社を管轄する都道府県が一番いいのではないですかということ は言えると思います。  それから、自主検査で回収の話ですけれども……。 ○コーディネーター  それでは、会場の方から解説をお願いいたします。 ○田中氏  輸入食品安全対策室衛生専門官の田中と申します。  今、御質問いただいた件について少し補足をさせていただきます。ここの違反が判明 した場合の対応ということで、先に御説明させていただきますと、以前は保税倉庫に保 管されている貨物に対しての取扱いというものを検疫所が一義的に行っていたところが ありました。  そこで、今後の取扱いの整理としてまず御理解いただきたいのが、通関前のものに対 しては検疫所が措置を行うこととし、通関が切れたものというのは法律上も内貨品で国 内流通品と全く変わりがありませんので、これについては各自治体の方で措置をしてい ただくということを文章をもって整理をさせていただきました。  これにつきまし、保税倉庫にあるものについては、検疫所が輸入者とまずコンタクト をとって措置をすることが、違反品が国内に流通することを防ぐ上で非常に有効であろ うということからそれを明文化しております。  それで、自主検査のお話になりますけれども、当然輸入者の方々も自主管理の上で安 全性の確保で自主検査をしなさいということは食品衛生法の中にも明記されております ので、当然そういった上で自主的な管理でやられている検査の中で食品衛生法に適合し ていない事例がもし自主的な検査の中であれば、それは管轄される自治体、これは当然 本社の管轄する自治体で結構だと思いますので、そういったところに御相談いただい て、当然食品衛生法に不適格な事例となるものであれば回収等の措置を行わなければな りませんから、それは当然自治体の指示に従っていただかなければならないというとこ ろで記載がなされています。  ただ、試験の場合には当然その精度管理等の問題も関わってまいりますので、それが どういった検査がなされていたのかという部分も含めて、当然自治体の方々とも相談を しながら話を進めていただくことになるとは思われますけれども、それが例えば登録検 査機関等をお使いになってやられるのであれば、登録検査機関は自主検査においてもそ ういう精度管理というものはしっかりなされていますから、行政上、判断する上でも十 分な検査結果が得られているというのであれば、通常の範囲の措置をやはりしなければ ならないと考えます。 ○コーディネーター  基本的には相談をして、どこの自治体でやるかについても相談と。 ○田中氏  そうですね。それにつきましては基本的に輸入者を管轄する自治体にまず御相談をい ただいて、その措置に関しては輸入者を管轄する自治体から当然広がって流通している のであれば、その流通先の自治体に監視依頼をする必要がありますので、キーになるの はその輸入者を管轄する自治体になると思います。 ○コーディネーター  あとは、行政指導になるのか、命令になるのかというところですが、いわゆる法令に 定めがないものが一般的に行政指導と言われていますが、それとも、法に基づく命令に なるのか。 ○田中氏  先ほどのくくりで言いますと、通関が切れる前のものに対して検疫所が行政的な措置 の必要性を判断し、内貨品に対しては自治体が判断することになると思いますけれど も、ここで記載しています既に通関が切れている貨物に対して検疫所が一義的に指導す るというのはあくまでも国内に違反品が流通するのを防止するための緊急的な対応と考 えております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。以上のようなことでよろしいでしょうか。  それでは、大変時間が遅くなってしまいまして申し訳ございませんでした。パネルデ ィスカッションの方をこれで終わらせていただきたいと思います。  司会の方にマイクをお返しいたします。 ○司会  大変時間を超過して申し訳ございませんでした。これをもちまして、食品に関するリ スクコミュニケーションを終わらせていただきます。  終わりに当たりまして、アンケート用紙の回収を行っております。今後のリスクコミ ュニケーションに役立てるために必要ですので、できる限り御協力いただければと思い ます。 本日は、御参集いただきまして誠にありがとうございました。                                     <了>