04/09/17 平成16年9月17日(東京都)「食品に関するリスクコミュニケーション (水銀を含有する魚介類等の摂取に関する注意事項の見直しについての意見交 換会)」議事録 食品に関するリスクコミュニケーション(水銀を含有する魚介類等の摂取に関する注意 事項の見直しについての意見交換会)                  日時:平成16年9月17日(金) 13:00〜16:43                  場所:国際研究交流会館(国立がんセンター内) 1.開会 2.あいさつ 3.魚介類等に含まれるメチル水銀の健康影響について−魚食のメリットとデメリッ   ト− 4.水銀を含有する魚介類等の摂取に関する妊婦等への注意事項の見直しについて 5.休憩 6.ラウンドテーブルディスカッション 7.意見交換 8.閉会 ○広瀬課長補佐  それでは、ただいまから「食品に関するリスクコミュニケーション(水銀を含有する 魚介類等の摂食に関する注意事項の見直しについての意見交換会)」を開催したいと思 います。  私は、本日コーディネーターを務めさせていただきます厚生労働省医薬食品局食品安 全部企画情報課の広瀬と申します。よろしくお願いいたします。  初めに、配布資料の確認をさせていただきたいと思います。配布資料として、資料1 から4です。  まず資料1が、「魚類等に含まれるメチル水銀の健康影響について−魚食のメリット とデメリット−」。  資料2が、「水銀を含有する魚介類等の摂食に関する妊婦等への注意事項の見直しに ついて」。  資料3が、「パネリストからの「水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項の 見直し」に対する意見」。  資料4が、「食品に関するリスクコミュニケーションにおける事前意見・質問につい て」、これは会場に参加される方がお申込みのあった際に事前に意見をいただいたもの でございます。なお、簡単に回答を付けさせていただいております。  それから、追加資料といたしまして1枚紙の裏表で「水銀を含有する魚介類等の摂食 に関する管理施策について」ということでいただいております。  もし不足等がございましたら、事務局もしくは受付の方までお申出いただけますよう お願いいたします。  続きまして、簡単に本日の議事進行を紹介させていただきます。  まず厚生労働省大臣官房の松本参事官よりごあいさつを申し上げた後、東北大学佐藤 教授より「魚介類等に含まれるメチル水銀の健康影響について(魚食のメリットとデメ リット)」について1時間程度御講演いただきます。  続きまして、食品安全部基準審査課の近藤専門官より、「水銀を含有する魚介類等の 摂食に関する妊婦等への注意事項の見直しについて」ということで15分程度説明させて いただきます。  そこで10分程度休憩いただきまして、午後2時35分をめどにラウンドテーブルでのデ ィスカッションに移らせていただきたいと思います。大体の目安として4時ぐらいまで ディスカッションを行い、その後、会場との意見交換をさせていただきたいと思いま す。  なお、会場の都合上、午後4時30分ごろには終了させていただきたいと存じますの で、あらかじめ御了承願います。  それでは松本参事官、お願いいたします。 ○松本参事官  皆様こんにちは。ただいま御紹介いただきました大臣官房参事官の医薬食品を担当し ております松本でございます。  食品に関するリスクコミュニケーション、水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注 意事項の見直しについての意見交換会と、少し長うございますけれども、その開催に当 たりまして一言ごあいさつ申し上げます。  皆様方におかれましては、日ごろより食品衛生行政の推進につきまして御理解をいた だき、ありがとうございます。また、本日は大変お忙しい中、このリスクコミュニケー ションに御参加をいただいていることにつきまして厚く御礼申し上げます。  魚介類等に含まれるメチル水銀に関する安全確保につきましては、昨年の6月に妊婦 の方等を対象にいたしました、水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項という ものを公表したところでございます。その後、あるお魚の売れ行きが止まったというよ うなこともあったと思いますけれども、そういうことがございました。  その後、FAO/WHOの合同食品添加物専門家会議におきまして耐容摂取量の再評 価というものが行われました。また、平成15年度に実施されました魚介類中の水銀調査 結果についても取りまとめられたということなどから、今般、昨年公表しました注意事 項の見直しを行うということにしたわけでございます。この件につきましては、今年の 7月23日付で内閣府の食品安全委員会に食品健康影響評価というものを依頼しておりま すので、今後食品安全委員会より通知される評価結果を踏まえまして、最終的な結論を 得るものと考えております。  本日の意見交換会の目的というのは、何か特別の結論を出すということではございま せんし、漁業者、流通の方、消費者の方など、いろいろなお立場での異なる意見を持つ 方が論争をすることでもございません。この意見交換会を通じまして、今回の注意事項 の見直しに関しまして消費者、水産関係者、あるいは流通関係者、それぞれの関係業界 の方々との双方の意見交換を行いまして、それぞれ発表される背景等をお互いに理解 し、相互の信頼の構築を図るということがねらいと言えばねらいでございます。各参加 者におかれましては忌憚のない御意見、御提案をいただければと思っております。  簡単ではございますけれども、開会に当たりましてごあいさつを申し上げます。どう ぞよろしくお願いいたします。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  冒頭の配布資料の説明のところで1点抜けておりましたが、本日リスクコミュニケー ションに参加いただいた皆様へということで、1枚紙のアンケート、裏表のものを用意 しておりますので、御講演が終わった際に回収させていただくことになると思います が、御協力いただけますようよろしくお願いいたします。  それでは、早速ですが、基調講演に入らせていただきたいと思います。タイトルは 「魚類等に含まれるメチル水銀の健康影響について−魚食のメリットとデメリット−」 です。 佐藤先生は東北大学大学院医学研究科で環境保健医学分野の研究、重金属によ る生体影響とか、メチル水銀中毒などに取り組まれていらっしゃいます。また、内閣府 の食品安全委員会、汚染物質専門調査会の座長として水銀など、汚染物質の健康影響評 価をされていらっしゃいます。それでは佐藤先生、よろしくお願いいたします。 ○佐藤教授  皆さんこんにちは。ただいま御紹介いただきました東北大学の佐藤です。今日は宮城 県の方もいらっしゃるようですけれども、東北大学というのは皆さん方も多分東京でも 御存じだと思うのですが、医学系研究科環境保健医学というのは余り聞き慣れないので はないかと思うので、自己紹介を兼ねてその辺からお話をしてみたいと思います。  日本も戦後五十数年たっていろいろな構造改革というものを一生懸命やっているわけ ですけれども、大学もそうなんですね。大学はその原形が明治の初期にできて、100年 以上にわたってずっとそういう形を恐らく維持してきたんだろうと思います。  ところが、最近になって大学も少し変わらなければいけない。少しではなくて大きく 変わらなければいけないというようなことがございまして、ここ7、8年くらいで大き く変わりつつあります。  その1つが、大学院重点化大学というものです。平成9年に我々の大学も大学院重点 化大学ということになったのですけれども、専ら研究を今までは医学部と称しておりま したのが医学系研究科となったのですが、それまでは医学部が我々は本務で、大学院と いうのは兼務だったんです。それを引っくり返して、医学部が兼務になって大学院が本 務になった。それは、1つには研究を充実させようということなんだろうと思います。 そういうふうなことで医学系研究科環境保健医学となって、これは昔の医学部衛生学教 室でございます。これだったら、いろいろなところで皆さん方お聞きになったことがあ るのではないだろうかと思います。  それで、何をやるところかというと、要するに環境の健康への影響、特に医学系研究 科ですから人への健康影響を調べようというところなんです。それも従来あった医学部 の衛生学教室と同じことでございます。大学院大学にしたというのは、1つは今まで日 本の大学はドイツ型できたわけですけれども、アメリカの形になったのかなというよう なところですね。  それからもう一つ、これは直接関係ないかもしれないですけれども、大学も法人化を いたしまして、この4月から我々も国立大学法人ということで国家公務員でなくなりま した。これも大学の自主性と競争力を増すためだと言われておりますけれども、聞くと ころによると公務員を減らすことを考えたときに、その減らす数にぴったり合ったのが 大学の教官だったというような話もあって、では大学を独立させてしまえということに なったということも聞いておりますけれども、その真偽は定かではありません。大学も いろいろ努力をしておるということを少し申し上げて、今日の本題のお話に入りたいと 思います。  魚の中にメチル水銀があるということはよく御存じだと思うんですけれども、では一 体それがどういう健康影響を持つのか、持たないのか、あるいは持ち得るのかというと ころでいろいろ議論があるんだろうと思います。それついて、これまでの研究の概説を しながら何かお話できればと思っております。いただいた時間が1時間ということなの で、2時ちょっと過ぎぐらいまでお話をさせていただこうと思っております。  これは河北新報と言うんですけれども、カワキタではございませんでカホクシンポウ と読みます。これは宮城県の地元の新聞でございます。それで、どこの新聞も一緒だっ たと思いますけれども、8月18日にこういうような魚の摂食制限に関する、特に妊婦さ んの摂食制限に関する記事が載っていたと思いますし、テレビ等でも報道されたことは 皆さん方よく御存じだろうと思います。先ほど松本参事官もそういうお話をなさってい たわけですけれども、去年の6月3日の厚生省の薬事・食品衛生審議会の部会で以来、 メチル水銀の問題というのは注目されていると言えば注目されている。世間を騒がせて いると言えば世間を世間を騒がせているのだろうと思います。  こういうような注意が再び出されたわけですけれども、これは日本だけの問題ではな くていろいろな国でもこういう注意が出されています。オーストラリアとニュージーラ ンドの合同食品基準協議会で最近新たなものがまた出されたようですけれども、2001年 に出されたものなんです。それで、魚は妊娠や授乳に有用な栄養素の良好な供給源であ るものの、水銀なども含まれている。科学的な根拠は今後の課題であるものの、魚の摂 取量を週600 g、この600が本当に妥当なのかはいろいろ議論はあるかと思いますけれど も、魚の摂取をある程度以下にすることが望ましいというようなことが出されているわ けです。  それから、これは英国の例ですけれども、サメ、カジキ類の摂取を控えるように勧告 してきたが、マグロステーキとかツナ缶等も控えるように量を示して言っている。これ はイギリスの例でございます。  ほかにもいろいろな例を挙げることはできるかと思いますし、また資料の中に表も入 っているのだろうと思いますが、何でこういうことになってきたのか。その辺がやはり 問題というか、いろいろな背景があるのだろうと思われます。  1つは、胎児期のメチル水銀の暴露といったものが、もしお母さんがメチル水銀を大 量にとった場合には、お母さんへの影響が余りなくても子どもに出るというようなこと がわかっているからなんです。つまり、水俣病の経験なんですけれども、胎児性の水俣 病という方々が生まれました。胎児性の患者さんですね。多くの場合、お母さん方はほ とんどメチル水銀中毒の症状がなかったわけです。それで、赤ちゃんが無事に生まれ た。けれども、生まれた後に発育、発達が遅れるというようなことで、胎児性の水俣病 の患者さんたちが生まれた。そこでお母さんよりも赤ちゃんというか、胎児期の暴露な んですけれども、胎児の方が感受性が高いということがわかってきたわけです。  御承知のように水俣病というのは工場の廃水にメチル水銀があって、それが魚に最終 的には濃縮して、その魚をたくさん食べた方々がかかったわけです。それで、大人の患 者さんたちもいましたけれども、ここではお母さんが食べた場合です。お母さんが食べ たメチル水銀が胎盤を通って赤ちゃんにいってしまって、その赤ちゃんが影響されると いうようなことが起こったのだろうと思います。  もちろんお母さんの体の中にも水銀はあります。ここではR−Hgで示してあります が、お母さんよりも赤ちゃんの方が感受性が高いから、お母さんは水銀があっても余り 症状が出ない。しかし、赤ちゃんは先ほどの写真でごらんにいれたような赤ちゃんが生 まれてしまったということになろうかと思います。  それで、水俣病の研究で有名な原田先生がそれをモデルにしているわけですけれど も、大人の場合には急性劇症あるいは典型例などというものがメチル水銀の大量の暴露 で起こるわけです。要するに、メチル水銀を含んだ魚をこの場合にはたくさん召し上が る。それで、この当時の水俣の方々というのはたくさん本当に魚を食べていらっしゃっ たようなんです。ですから、メチル水銀の摂取量も必然的に増えてしまう。そういう方 々が典型的な水俣病ということになるんだろうと思います。  それで、それよりももう少し量の少ない方々、こちら側に模式的に量を表しています けれども、余り典型的でない、あるいは軽症例の水俣病……。水俣病と言っていいのか どうか、この辺がまた難しいところなんですけれども、メチル水銀の影響を受けてい る。更にもう少し量が少なくなると、水俣病というか、メチル水銀に特異的な、メチル 水銀とはっきりと原因がわかるような、あるいはメチル水銀でなければ起こらないよう なことは余り起こらなくて、普通にあるような病気が増えるのではないだろうか。更に 量が少ないときは、もう少しいろいろな検査をするとわかるようなことが起こるのでは なかろうか。そういうモデルを考えられたわけです。  恐らくこういう形でいろいろなことが起こっているのだろうと思うんです。それで、 どこからどこまで水俣病と線を引くかというのは、実は国と患者さんたちの間で随分も めたことだろうと思いますけれども、今日はその話はしません。  一方、先ほど胎児は感受性が高いということを申し上げましたけれども、余りメチル 水銀の暴露量がお母さんに対して多いと、不妊になったり、あるいは流産、死産が起こ るだろうと考えられるわけです。実際に一時期、水俣では出生率が落ちたというような データがあるようです。  それで、流産、死産が起きるほどではない。つまり、母体にとっては妊娠を継続させ るくらいの健康度が必要なわけですね。母体がもともと病気だったら妊娠を継続するこ とはかなり困難になると思うんです。母親にとっては妊娠が継続できる程度の健康度で あっても胎児性の水俣病患者さんというのが生まれてしまった。つまり、これをもって 胎児の方が感受性が高いということになるわけです。  その周辺には、更に暴露が低くて、例えばここは精神薄弱、昔のことなのでこういう 言葉で書いてございますけれども、いろいろな発達の遅れとか、あるいは後で申し上げ ますようないろいろな調査をやってみると多少の遅れがあったりするような人たちもい るだろうと考えられたわけです。  ところが、水俣の場合には原因物質が初めはとにかくわからなかったわけです。それ から、病像を確定するのになかなか大変であって、この量と実際に何が起こるかという 関係については余り研究がなされなかったというか、そういうところまで手が回らなか ったのが恐らく実情だろうと思います。  その後、1970年代の初めにイラクでメチル水銀中毒が起こります。今、アメリカとの 戦争が終わった後にむしろ戦闘が続いて戦死者が続くという不思議な感じがするところ ですけれども、そのイラクがまだ恐らくパーレビ国王の時代だと思いますが、飢饉に陥 ったことがありまして、それを国際的に援助したんです。ところが、その援助物質の中 にメチル水銀を含んだ小麦があったわけです。  何でメチル水銀が小麦に入っているんだということになろうかと思いますが、ガーデ ニングなどをやっている方は御存じだと思いますけれども、種というのはかびてしまう と発芽率が下がるわけですね。発芽率を維持するためにはかびを防がなければいけな い。そのためにメチル水銀というのは毒性がありまして、特にかびなどにはよく効きま すので使われていたわけです。  それで、援助と言っても実は食べる小麦として援助をしたのではなくて、種まき用の 小麦として援助したわけです。それをまいて、半年後に召し上がってくださいというこ とだったのですが、おなかが空いている人のところへ食べ物をあげて、これを半年後に 育ててお食べくださいというのはやはり無理なのと、その注意書きの言語の問題とかい ろいろあったのだろうと思いますが、イラクの農民の方々はメチル水銀に汚染された食 べ物を食べてしまったんです。それで、小麦の種子には食べてはいけないよというのが わかるように赤い染料が塗ってあったんだそうです。  ところが、その染料は洗えば取れてしまったのですが、染み込んだメチル水銀は取れ なかったんです。それで、洗ってこれで毒がなくなった。おなかが空いたから食べてし まおうと粉にしてパンを焼いてイラクの農民たちは食べてしまった。それで、数から言 えば水俣よりも多いのだろうと思いますが、6,000人以上の患者さん、500人の死者がそ のときに出たわけです。  これをアメリカのローチェスター大学の人たちが細かく調査をいたしまして、詳しく は申し上げませんが、量影響関係とか、量反応関係とか、どれくらい体の中に入るとど ういうような症状が集団の中でどういうふうに起こるだろうかということで、実はこれ が一番対策をとるときに重要なことになるのだろうと思いますが、そういうことが解析 できたわけです。  量の指標として、髪の毛の中の水銀濃度というものが非常に役に立つことがわかりま した。何で髪の毛かというと、実際には我々のどこか脳の水銀濃度がわかれば一番いい わけですが、まさか生きている人の脳を取ってくるわけにはいきませんので、普通は血 液とかを代替にするわけですね。しかし、血液だとメチル水銀の取り方とか、それから の日数によって変わってしまうわけです。ところが、髪の毛というのは血液と一定の関 係でメチル水銀を濃縮する。250倍ぐらいと言われているんですけれども、髪の毛がで きたときの血液の濃度の250倍ぐらいの濃度で髪の毛の中に水銀が入っていく。それが ほとんどメチル水銀だということがわかったんです。  髪の毛というのは生え続けていくわけで、大体1か月に1センチから1.5センチくら いで、これは人によって多少差はあるんだと思います。だんだん私などはそういうもの が遅くなってきましたけれども、若い人は少し早いのかなと思います。ということは、 根本は最近の血中の濃度を反映するわけですね。それから、先の方は伸び方によって何 か月か前の血中の濃度を反映するわけです。  これは、イラクの赤ちゃんを生んだお母さんの髪の毛です。こちらの髪の毛の水銀濃 度はこれです。それで、こちらは先の方、こちらは根本の方ということになります。女 性の髪の毛ですから、30センチもあれば2年分くらいは優に調べられますが、髪の毛を 輪切り状に切って水銀を測ってやればどれぐらいメチル水銀濃度が血中にあったのか。 血液の中にあったということは、体の中に入ったということなわけです。  1971年の秋くらいから飢饉が起きて援助物資が入ってきたらしいんですけれども、そ のころから水銀値が上がっているわけです。恐らくこの辺りで妊娠しているわけですけ れども、食べる量が増えたり何かして増えたんだろうと思います。それで、具合が悪く なって入院して汚染されたパンを食べなくなったら下がってきたという歴史がわかるわ けです。それが後からわかるわけですね。これが髪の毛の非常なメリットになるわけで す。ですから、入院するまでこの人がメチル水銀中毒だということは自分でも知らない し、回りの人もわからなかったんですが、幸いなことに髪の毛が残っていますからわか るということになるわけです。  これはお母さんの血液中の濃度です。単位が違うんですけれども、実際には髪の毛の 方が血液よりも濃度が高いから測りやすいということもあります。  これは赤ちゃんの血液です。感受性が高いのはなぜかというのはいろいろな理由があ るんですけれども、その1つの理由に、赤ちゃんの方がお母さんよりもメチル水銀の濃 度が高くなってしまうということがあろうかと思います。  こういう症例が八十数例出てきましたので、イラクではリスク評価ができたわけで す。これはちょっとわかりにくいグラフなんですけれども、こちら側にあるのはノーマ ルと書いてありますが、お母さんの髪の毛の水銀濃度です。それで、このプラスでこち ら側にあるものは赤ちゃんの発達が正常であったという数です。重なっているものは17 とか16とか書いてあります。  それに対して赤ちゃんの発達が遅れていたよと、これは歩き始める月齢だったと思い ますけれども、それがこちら側に書いてあるわけです。そして、それの確率がこれとい うことになります。それに対して母親の毛髪中の水銀濃度が書いてあるわけです。  これで見ていただくとわかるとおりに、お母さんの髪の毛の中の濃度が10ppm以下く らいですと全員が正常な発達をしているわけですね。ところが、10ppmを超えて20ppmく らいからこういう発達の遅れを示す赤ちゃんが出てきたということになります。  ところが、400を超えても発達が正常な赤ちゃんというのもいるわけです。しかし、 さすがにこれくらいになってくるとプラスの数が込んでくるのでわかるとおり、発達の 遅れを示す赤ちゃんが増えてきたということです。  これを統計学的にいろいろな方法がありまして、この示してある色が違うのはいろい ろな方法なんですけれども、どれも大体10ppmを超えた辺りからわずかのリスクがある というふうに言うわけです。必ずそうなるわけではないんですけれども、可能性として 統計的な確率として発達の遅れを示すことがあるということです。これがイラクのメチ ル水銀中毒から得た教訓というか、そこから得た結果だろうと思います。  ただ、ここでおわかりのとおり、この4人の赤ちゃんがかなりこの結果に影響してい るんです。それで、実際にはこの10とか20という数字は低過ぎるのではないかという議 論もありますけれども、とりあえずWHOはこういう結論を出しているわけです。1990 年のエンバイロメンタル・ヘルス・クライテリア、環境保健クライテリアということで 多分日本語にも訳されているだろうと思いますが、そういう本の中で妊娠中のピーク毛 髪水銀濃度が10から20μg、これはppmと置き換えていただいて結構ですけれども、それ で5%のリスクがあると考えるのが妥当であるということです。  それで、ここで少し問題になるのは、10から20というのは一体我々にとってどのレベ ルなんだろう。水俣病が起こるのはこれよりはるかに高いレベルなんですけれども、10 とか20というと実は我々一般住民の中にもいないことはないんです。ただ、今はかなり 少ないだろうと思います。私も自分の髪の毛などを何回か測ったことがあるんですけれ ども、最高で8ppmくらいでした。それから、自分の経験の中でいろいろな方を測った ことがありますけれども、一番高い方で10を超える方はめったにいないですが、全くな いかというとそうでもないんです。  それで、世界じゅうの人たちがそんなことを考えたわけですけれども、恐らく魚をた くさん食べる人たちの間ではこういうレベルを超える人たちもいるだろうと考えられた わけです。  なぜかというと、水俣の場合もイラクの場合も、形こそ違え人為的な汚染だったわけ です。ところが、水銀に限らずいろいろな金属というのが古代、地球ができたときから あるわけです。特に水銀の場合には蒸気になるということがあるわけです。今日は写真 を持ってこなかったんですけれども、水銀というのは常温で液体状の唯一の金属で蒸発 もします。ですから、常温で水銀蒸気の中毒というのが起こるわけです。これは昔から 産業界で水銀を使っているところでは起こっていました。  例えば、火山のガスの中にも水銀はありますし、地殻の中にも水銀があるので、空気 中に出ていってしまうわけです。それから化石燃料と申しますか、石炭などをたくと水 銀も出ていきます。アメリカ辺りでは最近これを問題視しているようですけれども、量 的な問題については議論があるようです。  いずれにしても、大気中に結構な水銀蒸気があるわけです。濃度そのものは非常に薄 いんです。だけど、大気は地球の回りで薄いとどこまで考えるか、対流圏だけ考えてみ ても10キロというと1万メートルくらいあって、それが地球全体を覆っているわけです から相当の分量になるわけです。  水銀蒸気だけだったらいいのですけれども、それが何らかの形で水に溶けるような水 銀になります。イオン、リアクティブマーキュリーというふうに大気科学の研究者たち は言っていますけれども、単なるイオンではないのかもしれませんが、とにかく水に溶 ける形になるわけです。  水に溶けた後に、例えば硫黄などとくっ付いてしまえばそのまま海の底へ沈んでしま うことになるわけで、そうすると人間の生活や健康とはさようならということになるわ けですが、実はそうは問屋が卸さないところがあって、水の中で多分微生物の作用によ ってメチル水銀ができるんですね。このメチル水銀はあるときにはジメチル水銀という 形になって、この辺はちょっとややこしいので省略しますけれども、大気と行ったり来 たりをしていますよという地球化学的なサイクル、ジオケミカルサイクルと言っていま すけれども、地球の中を水の中だ、空気中だと姿形を変えながらぐるぐる回っているわ けです。  いずれにしても、非常に濃度が低いながら水の中にはメチル水銀が存在します。これ も細かい話はやめますけれども、その存在したメチル水銀が食物連鎖によって、要する に自然界の中の食う食われるの関係で食物連鎖というわけですが、その食物連鎖の上位 にいくに従ってバイオマスと申しますけれども、生物の量としては減っていくわけで す。それで、いろいろな形で大型魚類にはメチル水銀がかなりの程度濃縮してしまうと いうことになります。大型魚類というか、正確にいえば肉食の大型魚類ということにな ります。  それで、クジラなども魚類ではありませんけれども、やはり魚を食べるクジラとかイ ルカですね。肉食というか、ほかの魚を食べるものですね。けれども、ヒゲクジラなど は食性としてプランクトンみたいなものを食べていますから非常に水銀濃度が低いわけ です。だから、食物連鎖の上位にいるものは水銀濃度が高くなってしまうものもあると いうことです。  それを考え合わせてみますと、先ほどのWHOの10から20で5%のリスクがあるとい うことと、それから自分の回りの環境に人為的な汚染がなくても魚を食べる、特に大型 の魚類とかを食べる人たち、あるいはハクジラを食べる人たちは、もしかするとメチル 水銀の影響を受けている可能性があるだろうと研究者たちは考えたわけです。それで、 WHOの本が出たのは90年ですけれども、その少し前くらいからいろいろなところで調 査が行われています。  今までいろいろな調査が行われましたけれども、主なものは3つと考えていただいて いいかと思います。1つはニュージーランドです。これはサメを食べる人たちがいるん です。サメも魚類の中で特殊な魚類なんでしょうけれども、やはりほかの魚を食べます ので結構水銀の濃度が高い。それから、多くの方は御存じだと思いますけれども、フェ ローとセイシェルということで、フェローはハクジラを食べるところなんです。それか ら、セイシェルというのは魚をたくさん食べるところだと思うんですけれども、そうい うふうなところで調査が行われます。ニュージーランドは全体的な結果が少し不安定と いうか、いろいろな議論があるので今日はお話をしないで、フェローとセイシェルのお 話を少ししてみようかと思います。  フェローがどこにあるかというと、私はいろいろな方にお話をしてきましたけれど も、フェローの位置を知っていた人は今まで2人だけです。どういう方が知っていたか というと、1人は第二次世界大戦の戦史に非常に詳しい方です。なぜかというと、ドイ ツに物資を送るのにフェローの北を通っていくとUボートが届かないから安全なんだそ うです。フェローの南を通るとUボートの航続距離の範囲内に入ってしまうので、船を 沈められてしまうというのでフェローを知っていました。それから、つい最近同僚の教 授でフェローのことを知っている人がいたんですけれども、彼は石巻だかどこかに親戚 がいて、その人が遠洋漁業をやっているので学生のころフェローへ遊びに行ったことが あるというお2人だけでした。  位置としてはここです。北海の孤島ですね。デンマーク領の島なんですけれども、書 いてはありませんが、こちら側にグリーンランドがあって、アイスランドがあるんで す。イギリスの北部、スコットランド、シェットランド諸島があって、その真ん中くら いの、デンマークから飛行機で2時間半くらいのところです。  この島なんですけれども、岩山みたいな島で木がないんです。日本人にとって木がな いというのは本当に落ち着きが悪いですね。初めに行ったときに本当にびっくりしまし た。飛行場だから木がないのかと思ったらそんなことはない。島のどこに行っても木が ない。岩山の上に薄い土壌があって、そこへ草だかコケみたいなものが生えているとい うところです。  結局、畑などというのはほとんどないわけで、そのために漁業が主な食料を得る方法 だろうと思います。今はデンマーク本島からたくさんの食料が来ていて、スーパーマー ケットなどに行くと別にどこと変わることはなく、お肉もたくさんありますし、野菜も ありますけれども、昔は多分違ったんだろうと思います。  これはトーシャンという首都です。デンマーク領と言いながらもフェロー語というの もありますし、フェローのお金もありますし、半分独立しているんです。人口は4万 8,000人くらいです。そのうち3万人くらいがこのトーシャンというところに住んでい ます。それで、皆さん船を持っていて漁業が盛んだというのはよくわかるかと思いま す。  ここの人たちは伝統的にクジラを捕っています。これがそうで、パイロットホエー ル、多分日本で言うとゴンドウクジラになるんだろうと思いますけれども、それが時々 近くを通るわけです。そうすると、船で追って浜に追い上げる。私は漁業のやり方はよ く知りませんけれども、追い込み漁というのかと思います。  これはトーシャンの首都の病院なんですけれども、病院の近くの浜へクジラを追い込 んで捕っているところです。この赤いのはクジラの血なんだろうと思いまして、動物愛 護団体の人に怒られるかもしれません。  これは伝統的な漁なものですからコマーシャルベースではないんです。それで、皆わ あわあ出ていますけれども、これは地域の人たち皆に一定程度分けてあげる。それが恐 らく、例えば厳しい冬を越す食料になっていたのだろうと考えられます。大きさを測っ たりして皆、近辺の人たちに分けるということになります。  デンマーク大学の先生方がこういうところに目を付けて、恐らく水銀が高いであろう ということで調査を始めたのが1980年代の後半なわけです。それで、水銀濃度からいき ますと毛髪レベルで6.3ppmぐらいです。先ほどのWHOが10から20ppmで5%のリスク ということですから、平均値でいえばそのリスクのあるところよりも低いところにあっ たわけですが、高い人たちですと30ppmくらいの人たちもいたと言われています。  ここでコホート調査というものを行ったわけです。コホート調査というのは何かとい うと、簡単に言いますと対象者を決めてそれをずっと観察し続けていく方法なんです。 ですから、ここではお母さんが妊娠したときに調査に協力をお願いして、それで子ども が7歳くらいになったときに神経行動学的な検査と申しまして、これは一つの方法なん ですけれども、コンピュータゲームみたいに見えるかもしれませんが、ある絵が出てき たらぱっとボタンを押すんです。これは例えばネコでしょうか。ネコが出てきたら押し なさいよ、サルが出たりイヌが出たりウシが出たりいろいろするんですけれども、言わ れたものが出たときにぱっと押す。子どもは初めのうちは面白がってやっていますけれ ども、だんだん集中力をなくしてやる気がなくなってくるんですが、その集中力とその 速度とか、いろいろなものをこれで測るわけです。  ほかにも電気生理学的なと申しますか、神経で音がどう処理されるかというような検 査をやっています。これがそうなんですけれども、ちょっとわかりにくいかもしれませ んが、お母さんの髪の毛の水銀濃度は最高40くらいまでありますでしょうか。でも、大 体はこの辺です。先ほどの10から20というのはこの辺だからいることはいるんですけれ ども、そういう人たちの音を処理する脳波をとったわけです。そうすると、これは1,000 分の1秒が単位になっていますけれども、その1,000分の1よりも更に短い時間、遅れ るよというデータです。ばらつきは当然たくさんありますけれども、平均的なものを取 ってみると遅れますということです。  幾つかそういうような結果が出ております。これは時間の関係で説明しませんけれど も、幾つかの検査があって、星印が付いているのが水銀の影響が統計学的にあった。統 計的な検定をしてあったというものです。一般的に言うと、知能検査みたいなものにつ いての影響はほとんどないんですけれども、速さを要求されるようなものについては何 かあるのではないかという感じが私はこれを見ていたしました。  ただ、この子どもたちは7歳ですから普通に小学校に行っていますし、普通の生活を していて、特に何か異常があるということではないんです。ただ、ああいうふうに少 し、例えば音の処理をする脳波の出方が遅くなる。それも集団で見た場合であるという ことです。まだこの調査は続いていて、14歳のときの調査も昨年行われていて、これか らそういう結果が論文で発表されるだろうと思われます。  もう一方はセイシェルです。セイシェルというのは北インド洋の島です。ケニアの東 側で、ここはフェローと違ってきれいな海のリゾート地です。これはセイシャルの厚生 省兼病院なんですけれども、人口12万くらいの小さな独立した国です。  これはフェローで捕れる魚なんですけれども、私は全体はよくわかりませんがいろい ろな種類の魚がいます。中には日本で似たようなものも当然あります。日本の船もマグ ロなどを捕りにいっているらしいです。これは市場で並んでいる魚なんですけれども、 南の魚ですからきれいな色をしています。市場では魚がほとんどなんです。こんな魚と か、ちょっと大きいジャックフィッシュというのを多分一番よく食べているだろうと思 うんですけれども、こんな魚とか、小魚もあります。こういうテーブルみたいなものが 市場にはいっぱいあって、冷蔵庫がないのでとにかくその日のうちに全部売り切ってし まうというところです。お肉屋さんも市場にはあるんですけれども、魚に比べるとこの お店1軒しかなくて、お肉よりも魚がメインであろうというところです。  ここでもいろいろなテストをやりました。フェイガンテストとか、これは子どもの発 達の度合いを見ているベイリー検査というものですけれども、こういうことをやってい ます。  それで、このセイシェルというところは16世紀か17世紀だったと思いますけれども、 人が住むようになったところで、まず西洋の人と、それからアフリカの方々がいって、 その後にインド系の人たちが入ってきたというところなんです。イギリスとフランスの 植民地を経た後に独立した国です。ですから、言葉も比較的英語、フランス語、それか らクレオール語というフランス語と現地の言葉というのも変なんですけれども、フラン ス語と現地の言葉が混ざったというか、もともとアフリカの人たちがしゃべっていた言 葉が混じった言葉とか、3つくらいの言葉が通じるようなところです。  それから、人種的にもいろいろな方がいて、ここで検査をしている人とか受けている 方々、あるいはそれを見ているのは黒い方々ですけれども、白い人たちもいるし、いろ いろな方々がいるところです。  フェローはちょっと申し遅れましたけれども、ああいう島ですからバイキングの子孫 でやはり金髪で碧眼、緑の目というか、青い目をした人たちが多いというか、ほとんど でした。  それで、セイシェルでもいろいろな検査をやったんですけれども、実はセイシェルの 場合には幾つかの検査でお母さんの髪の毛中の水銀によって子どもの成績が上がるとい うようなことも出てきたんです。それで、フェローと違って水銀の影響で負の影響が見 えるということは結局はなかったんです。全く同じ検査ではありませんので、多少のや り方とか中身が違う検査もあるし、それからセイシェルの場合には電気生理学的な検査 はやっておりませんので、完全に比べられるかというとそうでもないんですが、やはり セイシェルの場合には水銀の負の悪い影響は見られなかった。むしろこの場合にはペグ ボードだと思うんですけれども、手の細かさを多分見ているんだろうと思いますが、男 の子の場合にはお母さんの髪の毛の水銀濃度が上がる、つまり水銀の暴露が大きい方が 成績がいいという結果が出たり、後になってから先生が評価する子どもの行動評価みた いなものがありまして、これは点数が低い方が問題行動が少なくていいんですけれど も、そういう結果が出てきたわけです。  それで、ずっとそういう結果の違いをめぐって論争はあるんですけれども、なぜだろ うということになるわけですが、1つ言われているのはお魚にはエイコサペンタ酸とか ドクサヘキサ塩酸とか、いわゆるn3系、オメガスリー系の不飽和脂肪酸がたくさん入 っていて、これは子どもの脳の発達などにいい方向へ働く。むしろエッセンシャル、必 須であるというようなことも言われているようで、この影響ではなかろうかというよう なことも言われています。  片やフェローの場合にはクジラが主な暴露源だったわけです。クジラはほ乳類ですか らこれは少ないわけで、魚とは違うというようなことも言われています。それから、フ ェローの場合には北海というところなのでPCBの汚染をどうしても抜きには語れない だろうと考えられています。PCBというのも先進国のまわりですとどうしてもそうい う汚染があります。それはもちろん非常に低い濃度ですけれども、それがどういう影響 を持つのかという議論があるわけです。それに対してセイシェルはPCBはほとんど考 えなくてもいいだろうというようなことも言われているわけです。  これは皆さん方御存じのことかと思いますけれども、n3系のEPAとかDHAとか というのは体の中でもできるわけです。アルファレリノレン酸という植物性の脂肪酸で すけれども、それはできますが、遅いものですからやはり外から取り込んだ方がいいわ けで、そのソースとしては魚が一番いいというか、ほとんどだということになるわけで す。  魚の中にはDHAとかEPAとか、そういったもののほかにタウリンとか、最近注目 されているらしいのですが、アスタキサンチンという色素があって、例えばアスタキサ ンチンの場合だと抗酸化作用があるのではなかろうかというようなことが言われていま す。ほかにもいろいろな栄養成分があるわけです。今年の夏は暑かったわけですけれど も、ウナギを食べるとビタミンAが豊富で夏ばてしないとか、ビタミンB12とか、いろ いろな栄養素があるわけです。  それから、セレンというのは実は随分昔からメチル水銀の有害作用と拮抗するという ことが言われているわけです。これも魚の中にある。セイシェルの場合にはこれでそう なのかどうかはよくわかりませんけれども、そういうようなことも言われているという ことです。  結局、魚の中には今、言ったような体にいい成分ももちろんあります。それから、先 ほど来お話ししたようにメチル水銀というのは自然界の中にあるわけですから、そうい うものは量の多少はあっても入っているわけです。それから、PCBのようなものも場 合によると入っているということになるわけです。  これをどう考えるかというのはこれからの課題だろうと思いますけれども、いずれに しても環境汚染物質には食品汚染というか、我々の回りにどうしてもあるものがあるわ けですね。先ほど言ったようなメチル水銀というのも自然界の中ででき上がって、濃度 の低い高いは別にしてもどこにでも水の中にあるはずです。それが生物濃縮によって人 間の食べる物に入ってきてしまう。これはある程度しようがないんです。これを避けよ うと思ったら全く食べなくなるのか、あるいは水銀を空気から一生懸命除いて水銀をな くしてしまうということになりますけれども、それは自然界の中でも火山活動とかで発 生していますから、これは大変なことになると思います。  それから、PCBなどというのは人工的につくったものですから、この汚染が広がる のは人間が何とかして防がなければいけないわけですけれども、何十年か前に使って捨 ててしまったものは広く広がっているわけですね。これをかき集めてきて何とかしよう というのは大変なことで、恐らく不可能なんだと思います。水俣湾ではメチル水銀を含 んだヘドロを回収したわけですけれども、あの程度の湾の回収で、たしか400億と20年 くらいの月日がかかっているんでしょうか。お金についてはもしかするとけたが間違っ ているかもしれませんが、とにかく膨大なお金と時間がかかるわけです。  それは水俣湾のような決まり切った場所だからできたわけですけれども、地球全体に 広がってしまったものを何とかしようというのは無理ですから、これは我々は避けられ ないと考えるしかないわけです。それで必要なのは何かというと、もう皆さん方には釈 迦に説法だと思いますけれども、リスク評価とリスクコミュニケーションであるという ようなことだと思います。  お約束の2時までまだ5分くらいあるので、もう少しお話をしたいと思います。これ は人魚で、人魚は自分の体は水銀で汚染されていますよということを言っているわけで すけれども、これは水銀だけの話ではなくて、恐らくここにいらっしゃるどの方の血液 をいただいて測っても水銀は出てくる、鉛は出てくる、カドミは出てくる、PCB、ダ イオキシン、今の分析技術だと濃度は低いですけれども必ず出てきます。これは仕方が ないんですね。それを我々が認めた上で何を考えるかということが大事なんだろうと思 います。  社会の傾向としては、だんだんそういった汚染物質の濃度が体の中に入ってくるより は少ない方がいいというふうに考えているわけです。これは鉛の例ですけれども、鉛も いろいろな毒性があります。1970年くらい前までは、鉛というのは60という数字を超え たら高いだろうと考えられていました。これが今の我々のレベルですと、中毒が起こっ てもおかしくないレベルなんです。そのレベルが健康影響が起こる可能性があって、こ れを超えたらやはり困るというふうに昔は考えていたわけです。  しかし、学問が進み、社会が進歩をして、人間の健康に対して関心が高まってくると それがどんどん下がってくるわけです。それで、最近ではこの10という数字になってい るんです。6分の1になっています。最近では、まだこれでも高いのではないかと。実 際に日本も大気汚染が激しいころはガソリンの中に鉛が入っていたときがありますの で、そのころはこれくらいのレベルはあったわけです。私たちが子どものころはそうい うレベルでしたが、社会の進歩というものが一つあるわけです。  それからもう一つは、公衆衛生上の考え方で言いますと、これも鉛の例で恐縮なんで すけれども、鉛の場合には子どもが暴露するとIQが落ちるということがわかっていま す。これはアメリカの研究を中心にして世界じゅうで研究をやられてわかったんです。  ただ、IQが落ちると言っても集団では3とか4とか、その程度なんです。それを何 で問題にするんだという人たちもいるわけです。それから、メチル水銀の場合にも先ほ ど言ったようにフェローで見られた現象というのはほんのちょっとした神経伝達の遅れ で、それも1,000分の1ミリよりももっと短い。  ところが、あれは1,000人程度の調査なわけで、鉛などでもそうなんだろうと思うん ですが、分布の端の方の累積の曲線はIQをそういうふうにして表しているわけです。 真ん中辺りの50%タイルと言いますが、平均当たりの人たちの差というのはごくわずか なんです。もちろんこういう分布がありますので、その人たちの低い方を見ていただく と、例えば鉛の暴露の低い人たちはIQ80以下の人たちがほんの数%しかいない。とこ ろが、もしこれがそのまま平均では3、4くらいずれたとしても、今度は80以下の人が 10%くらいに増えるわけで、数倍に増える可能性があるわけです。  IQ80というのがどういう意味を持つのかはまた別ですけれども、ここで申し上げた いことはこういう分布の端にいる人たちにとっては結構大きな影響になる可能性はある だろう。これはまだ実際にはわかりませんけれども、公衆衛生の考え方としてはそうい う考え方があっていいだろうと私は思っています。ですから、実際にはここを問題にす るわけではないんです。  それから、高い方でいきましてもどん詰まりというか、100%タイルになってしまえ ばそこでおしまいなわけですけれども、鉛の高い場合には一番高いIQが125くらいで そこでおしまいになってしまうわけですが、鉛が低い場合には140くらいまでいく人が いる。これは全く同じ集団で実験するわけにはいきませんから、本当にこういうことが 起こるのかどうかわかりませんけれども、やはりこういう端を見ておくというのもその 集団を考える公衆衛生としては大事なんだろうと思います。  2時になったのでそろそろやめますけれども、我々がいつも考えているのは量なんで すね。これはドーズというふうに書いてあります。これはパラケルルサスという中世の 科学者、怪し気な錬金術師だったのかもしれないんですけれども、お医者さんもやって 薬を処方していたりしていた人らしいのですが、彼が言うにはすべての物質は毒であ る。毒でないものはないんだ。ただし、量が毒と薬を分けるんだ。つまり、薬であろう とも量を超せば毒になるわけですね。最近、間違って量を多く薬を注射してしまって亡 くなったなどという事例を時々見掛けますけれども、そういうことも起こります。  食べ物にしても、例えばコレステロールというのは我々の体にとって必要なものです けれども、これがないとホルモンなどはつくれなくなってしまうわけですね。体の中で も合成されますけれども、それで足りない場合には外から補ってやる。しかし、これを とり過ぎれば動脈硬化が進んだりして我々の体に悪くなるわけです。やはり一番大事な のは量であるというふうに私どもは考えております。  それでは、時間がきたのでちょっと過ぎてしまいましたけれども、これで私のお話は 終わらせていただきます。どうも御静聴ありがとうございました。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  続きまして、「水銀を含有する魚介類等の摂食に関する妊婦等への注意事項の見直し について」の説明に入らせていただきたいと思います。近藤専門官、お願いいたしま す。 ○近藤専門官  今、御紹介にあずかりました、私、厚生労働省基準審査課の近藤と申します。よろし くお願いいたします。  それでは、これから今、御紹介にありましたように、私どもが今、取り組んでおりま す「水銀を含有する魚介類の摂食に関する妊婦等への注意事項の見直しについて」とい うことにつきまして御紹介申し上げます。では、座りまして御紹介させていただきま す。  資料につきましては、配布資料の2をごらんください。こちらの資料は、平成16年8 月17日に開催いたしました審議会の内容を取りまとめたものとなっております。内容に つきましては、この概要及びQ&Aの2点についてお示しをしているものでございま す。  それでは、まず1ページ目をごらんください。こちらにつきましてはまず「はじめに 」といたしまして、先ほど東北大学の佐藤先生からのお話にもありましたが、魚介類等 につきましてはまず有益性があるということを最初にお示ししております。ここでは良 質なたんぱく質であるとか、またはEPA、DHAといった不飽和脂肪酸であるとか、 またはカルシウムといったような栄養素の摂取源であるという点において、健康的な食 生活を営む上で重要な食材であるという点についてまずお話をさせていただいておりま す。  そして、食物連鎖の過程において魚介類につきましては微量な水銀を含有してしまう ということについてのお話を申し上げまして、更には私ども日本人の水銀摂取というも のがどのような状況であるのかにつきましては、こちらにありますように厚生労働省で 行っております1日摂取量調査というものの中で見た場合には、約85%を魚介類から摂 取しているということがわかっております。  ですので、これらの状況、そして近年魚介類を通じた水銀摂取が胎児に影響を与える 可能性があるのではないかという御報告を踏まえまして、今回一定の注意が必要だろう ということで、昨年の6月においては妊婦等に対する魚介類を通じた水銀の摂取に一定 の注意を払いながら、有益である魚介類の摂取をすべきであるという注意事項を発出し たところでございます。  この昨年の注意事項の発出につきましては、次の2番の注意事項の見直しの(1)の 「経緯」というところに書いてございまして、こちらにありますように添附資料の別添 の1をごらんください。こちらで昨年の6月に公表いたしました注意事項の内容をお示 ししております。こちらの注意事項の中では、サメ、メカジキ、キンメダイ、そしてク ジラの一部について一定の注意をしながら摂食に努めるべきであるという旨を示してお ります。 この昨年の6月の注意事項の公表の後になるわけでございますが、ローマで 開催されました第61回国際専門家会議、こちらはFAO/WHO合同食品添加物専門家 会議、一般にはJECFAと呼ばれているものでございますが、この会議におきまして 胎児の健康を十分に保護することを目的としまして、従来のメチル水銀の耐容量の再評 価が実施されております。  この従来の耐容量というものは、1週間当たりに人間体重1キログラム当たりの耐容 量として表されておりまして、こちらが3.3μgであったものが、この再評価の結果では 1.6μgにされました。  また、私どもの国におきましても継続的に実施をしてまいりました水銀濃度に関する 結果、この取りまとめが行われております。この継続的な調査につきましては厚生労働 省であったり、または水産庁であったり、地方自治体であったりというところで継続的 に行われてきたものでございます。そしてまた、諸外国においても公表されております 魚介類等の水銀濃度に関しまして取りまとめを行いました。そして、これらの状況を踏 まえまして今回の注意事項の見直しを行うこととしたところでございます。  なお、先ほど佐藤先生のお話にもありましたが、諸外国においても魚介類を通じた摂 取につきましては一定の注意事項が公表されておりますが、その内容というものは一概 に同じものではないということでございます。  この諸外国における注意事項につきましては、資料の5ページの別添の2をごらんく ださい。こちらに日本、アメリカ、イギリス、カナダ、そして次ページにまいりまして アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、ノルウェー、そしてデンマークと いうものにつきまして各国の注意事項を列記しております。この内容を見ていただきま すとおわかりかと思いますが、まず対象魚種につきましても食習慣の違いもあるとは思 いますが、例えば米国であればナマズであったりとか、オーストラリア、ニュージーラ ンドにしてみればオレンジラフィーといったような魚種が入っております。ただ、総じ てごらんになっていただきますればわかりますように、主にサメであったり、カジキで あったり、マグロであったりというものが対象となっているようでございます。  また、対象者につきましても日本の場合には昨年、注意事項の公表を行った際には妊 婦、または妊娠の可能性のある方を対象としておりますが、米国におきましては幼児が 入っている。そして、アイルランド、オーストラリアについてはすべての人であったり ということで、各国においてその対象者も異なっているということがこの表からおわか りいただけると思います。  我が国の水銀を含有する魚介類等の摂食に関する妊婦等への注意事項の見直しを行う に当たっては、まずどの程度までのメチル水銀摂取が安全であるかを定めることが非常 に大切であると考えております。そして、特に健康影響を受ける可能性がある胎児を十 分に保護するために必要なメチル水銀摂取量を設定する必要があると考えております。  このメチル水銀にかかる耐容摂取量の設定というものは、リスク管理という観点から お話をさせていただきますと、リスクの評価という部分に当たるものであります。昨年 の7月に施行されました食品安全基本法によりまして、リスクの評価というものにつき ましては内閣府にございます食品安全委員会における業務とされておりますので、今年 の7月23日に耐容量の設定について食品健康影響評価を食品安全委員会に依頼したとこ ろでございます。  また、先ほど各国の表の比較においてもお話をいたしましたが、各国で注意事項の対 象者が異なっている等、これらを踏まえまして健康への影響を受けやすい対象者につい ても明確にする必要があるだろうということでございます。ですので、この点につきま しても合わせて食品安全委員会で議論をしていただくことを要望したところでございま す。  厚生労働省としましては、食品安全委員会の耐容量の評価等の議論には一定の時間を 要することから、並行いたしましてこの注意事項の見直しについて審議会における検討 を開始いたしました。そして、その第1回目の審議を8月17日に行ったところでござい ます。 この審議会においては、魚介類等の水銀含有量であったり、国民栄養調査にお ける摂食量であったり、市販のマグロ料理1回分、これはいわゆる1人前というものに なるわけでございますが、その摂食量の集計結果について御議論をいただくとともに、 これらの結果を踏まえた耐容量という比較についても御議論をいただいたところでござ います。  魚介類等の水銀濃度の集計結果につきましては、資料の9ページの別添3にその集計 結果をお示ししております。こちらの1番といたしましては、データの範囲がどの範囲 であるのか。2の調査結果はどのような結果であるのかということでお示ししておりま して、中身としては国内、国外に分けて掲載をしております。なお、別添3のページの 一番下にございますが、メチル水銀の含有量につきましては諸外国における調査結果に ついて、いずれのデータにおいてもそのデータが公表されていないということでござい ます。そして、国内の調査結果について申し上げるのであれば約400種類、7,800検体に ついてのデータの取りまとめを行っております。  次に耐容量との比較でございますが、こちらにつきましては21ページの別添4をごら んください。耐容量の比較でございますが、先ほど申し上げましたようにまず耐容量の 設定について現在食品安全委員会にその設定を依頼をしているということでございま す。ですので、あくまでも仮定といたしまして、表にもございますように、昨年の審議 会で用いた耐容量を用いた場合ということを1つの仮定とし、もう一つはJECFAの 再評価の結果に基づく耐容量を用いた場合という形で、耐容量につきましてはまず2つ の仮定を設定させていただいております。昨年の審議会の数値というものが3.3μg、再 評価が1.6μgでございます。  また、私たちが通常食品を介して摂取している水銀の量というものも当然ながらバッ クグラウンドとして考えなければならないというものでございますので、このバックグ ラウンドにつきましては3つの仮定を置いております。この3つの仮定は、先ほど御説 明いたしましたが、厚生労働省で行っております1日摂取量調査から算出しておりま す。その内容につきましては22ページの下のグラフをごらんください。こちらが今お話 をしました1日摂取量調査に基づく3つの仮定について御説明をしているグラフでござ います。この中に仮定の1、仮定の2、仮定の3という3つの仮定がございます。  仮定の1というものは、1日摂取量調査のうち先ほどお話をしましたが、魚介類から の摂取量が約85%であるという数字に基づきまして、1日に摂取している総水銀の量が 8.1μg、これに約85%をかけますと魚介類からの摂取量が6.82μgになります。これが 一番左にある1日摂取量調査結果のグラフでございます。そして、仮定の1というもの はこの魚介類からの摂取につきまして現在検討の対象としている魚種以外からの水銀の 摂取はないと仮定した場合の表でございます。  仮定の2は、魚介類のうち半分につきまして現在この注意事項の対象と考えているも の以外から水銀を摂取していると考えたものでございます。  仮定の3は、この魚介類の摂取量はすべて検討対象以外の魚介類から摂取していると いうことを仮定した場合の表でございます。  この2つの耐容量の仮定、そして3つのバックグラウンドの仮定、この6種類の仮定 を置いた上で魚介類の平均のメチル水銀濃度の調査結果を試算の根拠に置きまして、摂 食できる魚介類の量を試算したものが21ページから26ページまでの結果となっているも のでございます。  なお、表形式が21、22、そして23ページ以降、これで異なっておりますが、21ペー ジ、22ページのグラフにつきましては1週間当たりにどれだけ魚が食べられるのかを算 出したものでございます。そして、23ページ以降につきましては平均的な摂食量を元に 何回食べた場合にその耐容量を超えてしまうのを示しているものでございます。ですの で、考え方といたしましてはこの23ページ以降のものにつきましては平均的な摂食量と いう部分を1つ置く分、更にその仮定が多いと考えることもできるわけでございます。  いずれにしましても、この試算結果につきましては、あくまでも仮定に基づく試算結 果でございますので、確定されたものではないということを正確に御認識いただきたい と思います。そして、この概要のみならず、更にその詳細をお知りになりたいという場 合につきましては、当然ながら部会の資料はすべて公表でございまして、厚生労働省の ホームページ内ですべて公表を行っておりますので、更に内容を詳しく知りたいという 場合はこのホームページの中で資料の御確認をいただければと考えております。  次にQ&Aを添附しておりますが、こちらはその内容を更に深く御理解いただくため に添附した資料でございますので、お読みいただきまして今回8月17日に審議会におい て検討を行った中身についてはどのようなものであるのかという点についての御理解を 深めていただければと考えております。  以上が、現在私どもがメチル水銀に関して「水銀を含有する魚介類等の摂食に関する 妊婦等への注意事項の見直し」につきまして検討を行っている状況でございます。以上 でございます。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  それでは、ここで10分程度休憩を設けさせていただきたいと思います。少し早く進ん でおりますので、2時半を目途に開始したいと思いますので、それまでにお席の方にお 戻りいただきますよう、よろしくお願いいたします。                   (休憩) ○広瀬課長補佐  それでは、お時間となりましたので、ラウンドテーブルでのディスカッションに入ら せて移らせていただきたいと思います。本来はパネラーの方に壇上にお上がりいただく ところですが、会場の都合上、このような形式でのラウンドテーブルディスカッション となってしまいましたことをおわび申し上げます。  それでは、まず御参加いただいたパネラーの方から事前に意見を提出していただいて おりますので、お時間が短くて恐縮ですが、お1人3分以内で簡潔に御発言をお願いし たいと思います。  まず初めは、社団法人大日本水産会品質管理部長の高鳥様お願いいたします。 ○高鳥氏  皆さんこんにちは。大日本水産会の高鳥です。大日本水産会と申しますのは明治15年 にできました水産の中央団体でして、水産にかかります生産ですね。漁労とか加工、流 通といったあらゆる分野の会員さんが参加されている団体でございます。本日は、ここ で3分しか時間がございませんので、手短に私どものコメントを申し上げます。お話す る内容は、基本的にはお手元のレジュメと変わりません。  まず最初に最も基本的といいますか、根本的なことといたしまして次の3つのことを 要請したいと考えております。先ほど佐藤教授からお話がありましたように、フェロー 諸島やセイシェルあるいはさまざまなところにおける世界レベルでの諸々の疫学的調査 の結果が必ずしも一致しておらず、現時点におきましてメチル水銀のリスクの評価をし たり、あるいは管理を検討するための十分な科学的根拠が樹立されているとは言えない 状況でございます。そのようなことから、この厚生労働省あるいは食品安全委員会にお きまして水銀のリスクに関わる検討をされる場合には、現時点で得られている最良の知 見の範囲の中でそれを超えることがなく対策を検討していただきたいと考えておりま す。  2つ目は、我が国は世界で有数の魚食国家でありまして、長年にわたりましてその栄 養学的有用性といいますか、EPAやDHAも含みますが、それを甘受しております。 そして、メチル水銀に関しまして今まで問題になっておりますような低レベルの汚染と いいますか、ごく低いレベルの汚染におきまして明確なリスクが報告されたことはござ いません。そういった事実を最も尊重すべきだと考えます。  最後に、先ほどありましたようにセイシェル、フェローあるいはニュージーランドと いったところの魚食のパターンが違います。クジラを食べたり、魚があったり、あるい はサメ、そういうことで我が国もそのようなそれぞれの国と異なった食生活のパターン を有しております。したがいまして、先般の食品安全委員会における調査会でもお話し したところですが、我が国の食生活等の実態を踏まえた独自の疫学的調査が必要であ り、それが近年開始されております。そして、完結するまでには今後数年を要するもの を考えられます。そのようなことから、将来我が国独自の疫学調査が完成しまして十分 な科学的なデータに基づく取り組みが行われるようになった時点で、そのときに改めて もう一度メチル水銀のリスクについて検討していただきたいと考えております。  もう一つは、昨年6月に注意事項が発表されましたが、そのときに業界が被った被害 といいますのは極めて遺憾なものでございます。そのような風評被害を防止をするとい う観点からさまざまな対策を講じていただきたいと考えていまして、時間になりました が、実はここに13項目注意事項の公表文書を作成するときの留意点といいますか、そう いったことをお示ししております。書いてある内容は基本的に変わっていませんが、こ れは当然ここにおられます議長さんにお渡ししておきまして、それを後日参考にしてい ただきたいと考えております。以上です。 ○広瀬課長補佐  高鳥様、ありがとうございました。  続きまして、日本生活協同組合連合会の原様お願いいたします。 ○原氏  こんにちは、日本生協連安全政策推進室の原と申します。よろしくお願いします。私 は、4点ほど意見を述べさせていただきたいと思います。  まず第1点は水銀の有害性の認識についてということで、魚介類の栄養学的な価値と いうのは周知のことなのですけれども、摂食の仕方によってはやはり有害物質のとり過 ぎになるということで、この点については影響が出るようなことは避けなければならな いのではないかということはやはりきちんと強調していただきたいと思います。水銀の 有害性については食品安全委員会でこれから検討されるということですので、健康の被 害が出ないように慎重な論議をしていただきたいと思います。  JECFAの評価はフェロー諸島とセイシェル諸島のデータを主に使ってされたとい うことですけれども、日本でも水俣病の認定患者になっていないが、いろいろ軽症の被 害があるということは先ほど佐藤先生の方から御報告がありました。かなり期間も過ぎ てしまっていて今からできる調査には限りがあるかもしれませんけれども、そういった 調査をきちんと日本でもしていただいてそういった影響についての解明、それから被害 者の救済にも結び付けていただきたいと思います。  2点目に注意喚起の対象魚種について、水銀の含有量が高い魚種というのは限られた ものですので、その魚の摂取を避ければ被害が避けられるものだということをきちんと 注意喚起していただくことが必要だと思います。  ただ、昨年の出された注意喚起文書ではマグロが外されていましたけれども、水銀の 濃度が高い魚種の中でマグロが最もポピュラーで摂取量の多い魚だと考えますので、マ グロを含めた水銀の濃度の高い魚種全体について食べ過ぎないように注意喚起をしてい ただきたいと思います。  3番目に、注意喚起の対象の集団について、PTWIというものはすべての人を対象 に設定されているもので、妊婦の方以外にも過剰な摂取にならないようにすべきだと考 えております。諸外国でも先ほど御説明にありましたように授乳中の母親、幼児、子ど も、一般の人についても注意喚起の対象にされております。摂取後調査では平均的な食 生活はPTWIの6割程度の摂取ということで、PTWIを肯定摂取している方も一定 程度はいらっしゃるのではないかと考えられます。したがって、すべての人に対して注 意喚起をしていただき、妊婦ですとか幼児に関しては特に影響を受けやすい方というこ とで特段の注意を喚起していただきたいと思います。  4番目に、実効の上がる具体的な対策を進めていただきたいということです。73年の 局長通知、私が今日出させていただいた3ページの最後のところに資料でお出ししまし たけれども、食生活指導というものが実際にはほとんど行われてこなかったということ で、そういった反省に立って実効ある指導をきちんとしていただきたい。  最後にお願いしたいことは、こちらの席に生産者、業界の皆さんが多数御出席いただ いているかと思います。皆さんにお願いしたいのですが、養殖業というものはえさによ ってその汚染物質の残留というのは大きく変わってくるものでございます。したがっ て、例えばマグロでしたら畜養というものが行われています。捕ってから何か月かえさ をたくさん与えて脂ののりをよくするということが行われておりますけれども、そこの ところはえさを工夫していただいて水銀の低減、その他の汚染物質の低減に是非努めて いただきたいということで、生産者の皆さん自身も安全な魚、安心して食べられる魚と いうものを目指して御努力いただければということで、この場を借りてお願いをしてお きたいと思います。ありがとうございました。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  続きまして、生活協同組合東京マイコープの松本様お願いいたします。 ○松本氏  こんにちは、生活協同組合東京マイコープの松本と申します。私は、一方では消費者 を組織している生活協同組合という消費者の立場、それからまた片方では生協自身が魚 を含めて食品を取り扱っている、あるいは販売しているという事業者の立場から意見を 申し上げます。  まず最初に申し上げたいのは魚を食べること、あるいは魚介類にメリットがある。こ の点については先ほどの先生もそうですし、皆さんも一致されると思いますけれども、 このことを述べたいと思っています。人体に有用な健康栄養という面から、あるいは日 本列島に住む人たちが長年にわたって築いていた食文化を守るという点でも、魚の文化 については大事な食文化、食材だと思っております。  そのような立場を前提にした上で、こういう魚を食べてきた民族の伝統を守るために も実際の魚がどのようなリスクを持っているのか、どのような汚染があるのかというこ とについては正直に私たちが等しく認めて、そういう正確な情報を共有する。その上で 魚を食していくというスタンスが必要ではないかと思っています。個別業界の利益であ るとか、個別のどこどこの立場ということで自己保身的に考えるのではなくて、等しく 魚の文化を守るためにリスクをきちんと理解する、あるいはリスクをどのように避けた らいいのかということを共有し合っていく。そのために厚生労働省にも注意喚起してい ただきたいですし、私たちも食を取り扱う者として正直にリスクを開示する、あるいは このような食べ方をしましょう、あるいは偏らないようにしましょうであるとか、これ とこれにはこういう検査データが出ていますよ。生物濃縮の高い魚についてはメチル水 銀が高く出ていますよということは正直に伝えていく。その上で食文化を守っていくこ とが大事ではないかと思っています。  その観点で言うと、昨年の厚生労働省の注意喚起の文書はマグロを結果的に注意喚起 の対象から外してしまったんですけれども、逆にマグロがクローズアップされてリスク コミュニケーションとしては失敗したのではないかと思っております。その点で、今回 の見直しについては前回の教訓を学んでいただきたいと思っております。  いろいろ外国の事例も含めて新しい研究とか報道があるわけですけれども、そういう 事例を通じて一つひとつ私たちが食のリスクあるいは食のメリットも含めて勉強してい る段階だと思います。メチル水銀だけではなくてO−157もそうですし、鳥インフルエ ンザもそうです。そういうことを通じて、私たちが食の持っているメリットとともにリ スクをきちんと理解していく。そのためにリスクをどう回避したらいいかということを 学んでいく。そういう見直しの文書にしていただきたいと思っております。  合わせてもう一つ申し上げるとしましたら、リスクコミュニケーションをしていくた めに行政、あるいは私たち食に携わる事業者も大事ですけれども、マスコミの影響とい うのは極めて大きなものがございますので、テレビ、新聞等に携わる方も正確に伝え る、あるいはきちんと背景も含めて伝えていくことをやっていただきたいと思っており ます。以上です。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  それでは、続きまして全国水産物商業協同組合連合会専務理事の村井様お願いいたし ます。 ○村井氏  皆様こんにちは、全国水産物商業協同組合連合会と大変長うございますけれども、通 称全水商連と申します。私ども、全国の町の魚屋さん約1万5,000人を構成員としてい る団体でございます。したがいまして、主として対面販売という形で皆さん方にお魚を 提供しているわけでございます。言うなれば大変消費者の皆様方と身近といいましょう か、直接情報の提供あるいは情報をいただくという立場でございます。  そういった立場で一言お話を申し上げたいと思うわけでございますけれども、本日の リクスコミュニケーションにはリスク評価だとか、あるいは対象魚種をどうするんだと か、こういった論点があるわけでございますけれども、それはさておきまして私どもは 風評被害、言葉は余り好きではないのですが、こういったことが事実として起きたとい うことだけについて申し上げたい。  6月3日に厚生労働省の方から注意喚起といいましょうか、注意事項が出たわけでご ざいますけれども、そのときにどういう現場でどういうことが起こったか。これを皆さ ん方に御紹介申し上げて御理解いただきたいと思うわけでございます。何しろ御案内の とおり、6月3日の夜の7時だったと思いますけれども、放送局から報道がありまし て、その後さまざまな新聞だとか、あるいはテレビ報道があったわけでございます。ひ どいものになると水俣病と一緒に画像が出るというようなことがあったわけでございま して、大変パニックといいましょうか、現場では大変混乱、困惑したわけでございま す。  例えば、翌日からキンメを中心として2割から3割減少しました。中には、これは妊 婦の方はだめということを申し上げるわけですけれども、妊婦さんが悪いんだったら私 ども若い人にも悪いんでしょう。若い人に悪いんだったら、私ども年配と言っては大変 失礼なんですけれども、そういった方々もだめでしょうということで、魚全体が悪いか のようなことで半年から約1年、消費は減退したわけでございます。  決してこれを申し上げているのは、私ども魚が売れなくなったから困るということで 申し上げているのではなくて、いわゆる風評被害というのは私ども関係業界ではなく て、結果的には消費者にとっても大変不幸といいましょうか、残念なことだろうと思う わけでございます。したがいまして、こういうことが絶対ないような対応を考えていた だきたいと思うわけでございます。  事例を申し上げますけれども、ちょうど1年後、今年の5月だったそうでございます が、それまではキンメダイを大変買っていただいたお客様に冗談半分に、お客さん、も うあなたは50年も生きないんだからいいじゃないのという話をしたわけですけれども、 いやいやそれは怖いということで買っていただけない。通常、安全宣言とか、そういう ものがあれば一過性で済むわけですけれども、今回の場合はじわじわ約1年間こういう ことがあったわけでございますので、そういうことが絶対ないようにお願いしたいと思 っている次第でございます。先ほど先生から最後に、正しい評価と冷静なリスクコミュ ニケーションとおっしゃいましたけれども、このためにも正しい適時適切な情報開示と いったことを是非ともお願いしたいと思いまして一言御理解賜りたい。  最後に、私どもは魚屋でございますので、毎日安心で安全な、かつ新鮮なものをお届 けするということを日夜努力しているものでございますので、その辺も是非御理解と御 協力というか、御利用いただければ大変ありがたいと思っているわけでございます。ど うぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  それでは、続きまして東京築地魚市場大物業界の野末様お願いいたします。 ○野末氏  御紹介いただきました野末でございます。私どもは築地の大物業界、つまりマグロ専 業でやっております。大体1年間で5万5,000tぐらいです。しかしまた全国組織がござ いまして、6大都市の役員もしておりますが、大体日本じゅうの人たちが食べる刺身マ グロ70、80%を扱っているものでございます。消費者の方と先ほどいろいろお話をした のですが、魚屋さんと私どもは本当に消費者に密接な関係があります。  そんなことで、15年にいろいろな変な報道がなされましたね。マグロは何か逃れたの ではないかとだれかがちょっと言っていましたけれども、とんでもないことです。逆に 平成9年の一酸化炭素のマグロは消費者に向かって我々が暴露したんです。ですから厚 生省も立ち上がって、すぐ1か月で色が真っ赤になると魚も腐ってしまっているんで す。3年置いても5年置いてもだめなんです。  私どもの使命というのは、評価機能と衛生なんです。その衛生に対して、逆に私たち も消費者なんです。そういうことから完全に1か月で私もNHKに出て安全宣言をして やりました。非常に損をした人では、40 tぐらいのものが廃棄処分になった量販店もあ ります。そんなこともひとつお話申し上げておきます。  まず、私は風評被害ですね。今、原さんがちょっとおっしゃいましたが、マグロは食 べ過ぎないように、これも小さな風評被害です。では、どのぐらいまでがいいのか。こ ういうことはいけないんです。そういうことを例えばマスコミ等に出していただくとき には、通常食べているものはいいんです。ただ、それから3倍、4倍食べないように と、こういう文句ならば一般の消費者もわかります。  それから、先ほど画面に佐藤先生が出していただいた絵ですが、女性の中に胎児が入 っている。そこに魚がある。あれ一つ見ただけで怖いという恐怖心が出ます。今、日本 は世界の60%を食べています。1億1,000万人の中で20 kg食べたら世界の魚がなくなっ てしまうんです。日本はそれを70 kg、今は65 kg食べているんです。  マグロのことを言えば切りがございませんが、前回はメカジキは60 gから80 g、それ を1週間に2回、これもえらい風評被害です。私たちでもあのメカジキの80 gのものを 1週間に2回食べません。私はせいぜい2か月に1回食べるか食べないかです。マグロ には40 gしか入っていないんです。それもせいぜい月に1回食べるかなと。大体メカジ キなどというのは1万4,135tしかないんです。それは庶民にしますと、本当に1年間の あれが2日で終わってしまうんです。  これからいろいろとフェローの問題も私は言いたいことがありますし、私は消費者の 立場に立って物を考えたいと思っております。時間ですので、以上です。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  それでは、続きまして日本消費者連盟代表運営委員の富山様お願いいたします。 ○富山氏  日本消費者連盟の富山洋子です。  食べ物の汚染が人の命や健康を阻むことは言うまでもありません。ですから、私たち 消費者はできるだけ汚染されない食べ物を手に入れることに心掛けています。添加物や 農薬について言えば、添加物は表示を見たり、加工現場を見たりしてある程度防ぐこと もできます。農薬汚染につきましても顔の見える関係の中で野菜を手に入れたり、ある いは自らも有機栽培を推進するという努力をすることもできます。  ですけれども、魚について言えば海で生育される。今は養殖魚もありますけれども、 自然の中で生育される魚の汚染について言えば、私たちはどのようにして汚染による被 害を防ぐことができるのでしょうか。これは正しい実態調査、そしてその調査の結果が 誤ることなく、ゆがめられることなく公表され、それに基づいて私たちは一人ひとりの 消費者が自らの責任を持ってそれを選んでいきます。  したがって、私は昨年の6月に発表されました水銀を含有する魚介類の摂取に関する 注意事項にはいろいろ問題点があることを指摘したいと思います。限られた時間ですの で、5点ばかり指摘したいと思います。  まず、30年も前の暫定的な耐容摂取量を元にしているものでして、JECFAの数値 に比べても倍以上緩やかなものです。そしてまた、更に水銀濃度が高いマグロについて は摂食制限すべき魚から外されていました。マグロは日本人はそれほど食べていないの でしょうか。食べています。世界の漁獲量の30%の魚を私たち人口2%の日本人が食べ ており、マグロについては37%くらい食べているわけです。  そして、一般の人々への影響が皆無だとの印象を与えて、水銀汚染濃度が高いクジラ などは一般の人々は食べてもいいというような動きもありました。それで、先ほど厚生 労働省さんが発表された数字ですと、1日摂取量の調査からすると魚介類から私たちの 摂取量の85%の水銀を取ってしまうという調査が出ております。私の方のレジュメには 87%と書いてございますが、これはやはり厚生労働省の研究機関が調査をされた日本人 の日常食の汚染物質摂取量調査によるものですが、80%を超えるほどのものだと考えま す。  そして、その上にこの水銀汚染の状態というものが非常にゆがめられるような形で報 道された。それは、水産業界さんと私どものとり方は逆の意味でゆがめられると思って いるわけですけれども、更に言えば胎児の血中濃度の水銀は母親の1.5倍から1.8倍ある と言われていますから、一番命に関わる人々というか、命に水準を置くべきだと思いま す。  そして、最後に締めくくります。環境汚染をしないよう皆でいろいろな努力をしまし ょう。そのためには水銀の規制値を厳しくするということも大きな足掛かりになると思 います。以上です。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  続きまして、宮城県産地魚市場協会副会長の佐藤様お願いいたします。 ○佐藤氏  佐藤でございます。私は40年来、漁業をずっとやっております。その都度、何度か途 中で水銀の問題で大分頭を痛めたことがあります。そのほとんどが欧米からの発信とい うふうなことでございます。  その発信を受ける度に値段ががたんと下がるので大変頭を痛めたわけですけれども、 そういうことを通じてそのような情報をそのままうのみにしてはいけないのではないか と思います。といいますのは、日本と欧米の食生活の違いということも考慮に入れなけ ればならないのではないかと思います。前に気仙沼からメカジキをアメリカ、ヨーロッ パに大変多く輸出したことがあります。今はもっと安い国から輸出されていると思いま す。このメカジキは健康にいいんだ、美容にいいんだということで大分食されているよ うです。美容にいいと言うからきっと女性だと思いますけれども、鳥の代わりというこ とです。  もう一つ、ビンチョウマグロも随分やり玉に上がりました。これはシーチキンです が、これもまた鳥の代わりというふうなことであります。  さて、では日本はどんな具合に食べているんだろうと思いますと、ほとんど食べてい ません。先ほどの欧米の発表というのはたくさん食べる人たちでありますので、週に2 回にしなさい、あるいは1回にしなさいということでありますけれども、日本はどのく らい食べているかというと1週間に1回も食べているか食べていないかわからないとい うことです。ですから、その違いを十分理解しながら日本人はやっていかなくてはなら ないのではないかと思います。たくさん食べるから週に1回以内、週にほとんど食べて いない人も1回以内、何か変なことであります。むしろ月に2、3回は食べてもいいの ではないかというふうな表現と、週に1回以内にしなければならないというのは、右と 左から見たら同じことではないかと思います。  魚の含有する水銀、これは魚自体持っているものであります。なおかつ、水銀を排出 したり、あるいはその作用を抑える物質も合わせて持っているということを聞いており ます。そうでなければ、魚類は自分の持っている水銀で死んでしまうわけでありますの で、必ずそういうふうなものがあってバランスをとっているのではないか。是非研究を していただきたいと思います。  気仙沼は昔から魚をたくさん食べておりますので、いつか先生に来てもらって気仙沼 の人の水銀を是非見てもらいたい。どれだけ悪い影響があるか、気仙沼が実験台になる のではないかと思っています。要は、バランスのいい研究とバランスのいい情報を発し て、消費者がいたずらにおそれをなしたり、そんなことのないように正しい知識を持っ てもらうように、そういう努力を私たちもしなくてはならないと思います。これで私の 発表を終わります。ありがとうございました。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  続きまして、家庭栄養研究会の蓮尾様、お願いいたします。 ○蓮尾氏  家庭栄養研究会の蓮尾と申します。資料を読ませていただきます。  昨年の6月に行政から初の、魚が含有するメチル水銀の妊婦への摂取警告事項が公表 されましたけれども、せっかくの情報公開がサポート不足で、安全だと言われるのに安 心できないという安全と安心の乖離に一役買った感を大変残念に思っております。優れ た栄養価はもとより、健康面からも優れた機能性を持つ魚介類をもっと食卓へと、日本 型食生活の復権を呼び掛け続けている当会としては、水産物から取り込む環境汚染物質 には大変関心があります。  水銀もその一つです。特に妊娠中の母親から胎児に移行し、先天的な負荷を負わせて しまう疑いのある化学物質のリスクは、より慎重な対応を望むものです。基準値はより 厳しく、食生活上の防衛策の定期指導も含めて大切なことだと思っております。特に、 メチル水銀はアミノ酸と結合して胎盤を容易に通過すると言われています。また、成人 では化学物質を脳の血液脳幹門がシャットアウトしてしまうことができますが、胎児の 場合は不完全な脳の発育と、それから乳幼児も未熟な血液脳幹門がやはりアミノ酸と結 合したメチル水銀は容易に通過してしまうとも言われています。  また、例えば1匹のマグロで水銀、ダイオキシン、PCBなど同時に分析するわけで はないとのことですから、それぞれの安全をクリアする基準値は複合的な危険を考え て、より厳しく設定する必要を感じます。  近年、脳が影響していると思われる行動異常との関わりをとても心配しています。ま た、治療によると米国、英国、豪州の摂取注意事項を見ますと、妊産婦のみならず乳 児、授乳中の母親、子どもに対しても対象魚の摂取注意を呼び掛けています。今回の見 直しに当たっては、生で幼児も好んで食べる機会の多いマグロも是非対象に、平均値で なく最大値で検討をし、基準値に関しても再検討を望んでいます。  また、下処理、調理の工夫でこれら化学物質を低減化するという生活の工夫も、私た ちも活動の中で呼び掛けていきたいと思っております。基本的には、対象者により厳し い視点での安全管理のための基準値の設定、そして多くの対象外の人たちには安心して 魚食を摂取することのできる行政、消費者がPR、工夫の呼び掛けを一致した形で進め ていきたいと思っておりますので、基本的には対象者と対象外のところの魚の摂取の在 り方というものをきちんと説明して情報提供していく必要があるように思いますので、 よろしくお願いいたします。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  それでは、続きまして食品汚染を考える市民の会事務局長の桝山様お願いいたしま す。 ○桝山氏  食品汚染を考える市民の会の桝山と申します。よろしくお願いいたします。  この度は、このようなリスクコミュニケーションの会を開催していただきまして、ま た当会に出席させていただきましてありがとうございました。  私は安心して水産物を購入して、おいしくいただき、家族と健康な生活を送ることを 願う市民、消費者の立場から述べさせていただきます。私どもの会の生い立ちにつきま してはお手元の資料の方にプリントとしてあるかと思いますが、ちょっと別のこととい いますか、今回のテーマに絞ってお話をさせていただきます。  昨年、出されました水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項についてです が、昨年の時点では海外、アメリカ、イギリス、デンマーク、その他の国々におきまし てこの種の勧告は既に出されておりました。私どもは、まだ日本の勧告が出る前にその ような措置を日本もとるべきであると主張してまいりましたところ、実際に6月に勧告 が出されました。消費者保護のために厚生労働省が立ち上がったのだと大変力づけられ ました。  しかし、勧告発表からわずか半月たつかたたないかのうちに、JACFAの方はPT WIを半分以下、3.3μgから1.6μgに引き下げました。せっかく出されました日本の勧 告は世界標準から取り残されてしまったのかと、当時は落胆したものでした。それが今 回、見直しを検討されているということですので、この取り組みは大変よいことだと思 っております。せっかくの取り組みですので、是非世界の安全基準に準じた、そして日 本の実情に合った勧告の形に見直していただきたいと思います。  御存じのように、日本には昭和48年に定められました総水銀で0.4、メチル水銀で0.3 ppmという暫定規制値があります。これは世界一厳しい値ですが、マグロ類、マグロ、 カジキ、カツオなど、またクジラ、これは魚ではないからこの規制値に入らないという ような適用除外のものがいろいろあります。正直申しまして、やや骨抜きの感を否めま せん。これを補う形で、今回見直される新注意事項が機能するようにしていただきたい と思います。 もう一つ、日本の暫定基準値について述べさせていただきますと、この 規制値は厚生省環境衛生局長通知であって法律ではありません。各地方自治体への努力 を促すものにすぎず、県政や規制値超えのものを流通から排除することを法的に義務づ けるものにはなっておりません。規制が守られなかった場合にもだれもペナルティを負 うことにはなっておりません。また、規制値超えの魚介類の流通をもし停止したとして も、漁業者の方に損失補填のような救済措置法も方法も設けられていると聞いたことは ございません。  こうした面を法律によってしっかりと整備し、私ども一般の消費者が安心できる環境 をつくっていただきたいと思います。少なくとも規制値を数十倍、数百倍以上も上回る ような商品が店頭に並ぶことはないようにしていただきたいと思います。  近年、水銀の子どもたちへの影響は、たとえ微量であっても従来思われていたものよ り大きいのではないかという観点で研究が進められていると伺っております。すぐ命に かかわるような極端な汚染ではなくても、子どもたちの発育や運動能力、注意力、集中 力、学習能力といったものに悪影響があるのではないかと私は心配しております。今、 生まれてこようとしている胎児や乳幼児はこれから20年、30年後には日本を背負って立 つ大切な宝です。今、私たち大人世代が責任を持ってこの子どもたちを健全に育てられ る社会の仕組みをつくることが求められています。どうか行政の皆様、有識者の先生 方、そして水産業界の皆様、予防原則の立場で安全、安心な水産物流通を実現できる仕 組みづくりをお願い申し上げます。どうもありがとうございました。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  それでは、続きまして全国漁業協同組合連合会の前林様お願いいたします。 ○前林氏  全漁連の前林と申します。一言意見を述べさせてもらいます。  御存じのとおり、我が国は四方を海に囲まれておりまして、私たちは魚食の民という ことが言えると思います。私どもは沿岸沖合漁業を営む漁業者の代表でありまして、北 は北海道から南は沖縄までの県漁連さん、そしてその下に漁協、そして漁業を営む漁業 者という形で私どもの組織が成り立っております。私どもは、魚につきましては品質が よく、安全な水産物を消費者に供給するということが最近のテーゼになっておりまし て、このことをしっかりとらえて魚食普及、そしてPR、安全確保のための対策をとっ ていきたいと考えております。  私どもは、根つき資源を含みます沿岸資源についてはかなり陸域からのいろいろな物 資の影響を受けやすいということで、これまでさまざまな辛酸をなめてきたことがござ います。水俣病もそうでしたし、いろいろな工場からの排水問題とか、そういったこと で私どもも住民の方とともに環境保全運動を展開した経緯がございます。今回の水産物 の問題に関しましては非常に残念なことというんですか、あってはならないというんで すか、魚介類には蓄積しやすい物質であるというような表現がとられていますけれど も、自然界にある物質で汚染物質という言い方もありますが、私どもも若いころ、学生 時代はたしか微量元素というような言い方で呼んでいたような気がします。それが、突 如として魚に蓄積された段階で汚染物質と言われまして、魚にとってはいわれもないよ うな言い方をされているわけですけれども、今後ともこの問題につきましては科学的に 広く調査され、研究されるべき問題でありまして、疫学的にはまだまだ十分なデータが 取れていないと聞いております。  近年は消費者の皆様方のいろいろな健康志向もございまして、水産物にはEPAやD HAなどの有用な物質が多く含まれておりまして、食品行政の側におきましても食品と しての有用性を消費者の方々にわかりやすく十分にアピールしていただきたいと思いま すし、また同じ魚種を毎日食べ続けるということは余り考えられず、むしろいろいろな 魚種を摂取しており、消費者の皆様に対してこういったようなことを啓発していく必要 があると思います。  また、生産者にとって一番困る問題はまさしく風評被害の発生でありまして、いろい ろな観点、心理学、社会学等の考え方を導入しまして、これを何とか未然に防ぐ具体的 な手法を検討していただきたいと考えております。どうかひとつよろしくお願いしたい と思います。 ○広瀬課長補佐  どうもありがとうございました。  それでは、続きまして日本鰹鮪漁業協同組合連合会総合対策部参事役の尾崎様お願い いたします。 ○尾崎氏  通称日カツ連の尾崎と申します。遠洋鰹鮪漁業の生産者の団体でございます。 私ど も生産者団体でございますから、優れた栄養食品である魚を皆様に安心して食べていた だきたいというのが基本的な立場でございますので、この水銀問題につきましても一生 懸命考えてまいりましたし、専門家の方にもいろいろ教えていただいております。先ほ ど気仙沼の魚市場の佐藤さんが大変いいことを言ってくださって、全面的に私どもと同 じ考え方でございます。それで、勉強をしたこととか、過去の30年くらいの経緯を振り 返ってみましてもポイントは2つではないか。  この水銀問題については、1つは解決を急ぐことは得策ではないということでござい ます。もう一つは、安全か有害かという二者択一の議論で魚の持っているベネフィッ ト、いいところを捨てるということはやってはいけない。この2点に尽きるのではない かと思っております。  急ぐなということをもう少し御説明いたしますと、本来魚介類に含まれるメチル水銀 の問題というのは産業排水など、人為的な海の汚染による中毒、水俣病でございますけ れども、これとは全く別の問題であろう。自然界に普遍的に存在しております魚を日常 的に食べてメチル水銀中毒を起こしたということは世界じゅうに出ていないと私は承知 しております。我が方は遠洋マグロ漁業の協会と申し上げましたけれども、30年ほど前 にかなり大規模に遠洋航海中、マグロを多食する漁船員の方の健康調査を専門家のお医 者さんにやっていただいて、全く健康被害がなかったということがございました。  いま一つの理由は、魚介類中のメチル水銀というのは自然界に昔から存在していたも のですので、最近急激に増加しているということは考えられないということでございま す。工業化が進んで、汚染が進んでということではないと理解しております。最近は水 銀使用規制により、むしろ沿海域では減少が考えられるということも伺っております。 ですから、緊急性がないという状況で急いで管理などを進めていくということが果たし て得策であろうか。  特に科学的根拠の問題が非常にあいまいなところで、かなり具体的な摂食指導につな がってしまうということで、これは専門家のアメリカの雑誌に魚食は明快な健康上のベ ネフィットがある一方、水銀によるリスクは今のところ憶測に基づくものでしかない と、専門家のお医者さんのジャーナルが書いているくらいでございますので、そういう 基本的な考えを持っておりますけれども、厚労省は予防保全のお立場から指導を昨年に 引き続き何らかなされるのであれば、消費者等にいたずらに不安を与えることのないよ う、魚介類を摂食することの意義は大前提としていただいて、水産物のメチル水銀によ る健康リスクを総合的にどのように判断すればよいのかの判断材料を幅広く、わかりや すく、バランスの取れた形で提供するように努めていただきたい。  それで、一つのものを制限すれば代替物を探しますけれども、今、市場に出ているも のは残念ながらゼロリスクではあり得ないわけですから、そういう意味でもリスク低減 のために幅広い多元的な選択肢を提供していただくことが極めて重要ではないかと思っ ております。ちょっと長くなりましたけれども、以上でございます。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  それでは、いろいろと御意見をいただいているところですが、これからのディスカッ ションの方は少し論点を絞って議論させていただきたいと考えております。  いただいた意見を元に大体整理させていただきますと、まず大きなテーマの1つとし ては水銀のリスク評価についてというようなことがあるかと考えております。  それから、出された意見の2番目といたしまして、対象魚種についていろいろ御意見 をいただいているところでございます。  3番目といたしまして、いわゆる魚介類の有用性と、それから風評被害の防止という ようなことについてお話があったかと思っております。  4番目といたしましては、報道機関への正確な報道というような御意見もいただいて いるところでございます。  最後にその他という形で、この5つの論点に絞ってそれぞれ1つずつ進めていきたい と考えておりますので御協力をよろしくお願いいたします。  まず最初の水銀のリスク評価についてということですが、何人かのパネラーの方か ら、例えば幼児には感受性が高いというようなことで胎児だけではなくて幼児もという ようなお話ですとか、妊娠女性のアピールをもっとしてほしいというようなお話ですと か、JECFAの基準を厳しい基準にしてほしいというようなお話ですとか、その他一 般の人にも注意を喚起してほしいというような意見をいただいているところですが、こ の辺でもう少し付け加えて御発言されたい方はいらっしゃいますか。 ○野末氏  先ほどは3分しかなくてほんの少ししか言えなかったのですけれども、今回はマグロ ということが非常に多いんです。そんな中で私の方がマグロということなので、マグロ についていろいろ御説明したいと思います。  ともかく、先ほど佐藤先生が言ったようにフェローの問題ですね。これもよく研究し てみますと、まだ臨床学でやっていないんです。疫学で、ただ1人の人がレポートとし てアメリカへ出したんです。臨床をちゃんとしていてその論文に書いてあれば、そこに いろいろな検査官がいて正確なデータが出るわけです。それで、後で先生の方から論文 にして出されるのではないか。こういうこともちゃんとした中で発表していただきた い。  その1つとして、私どもは世界じゅうで一番マグロを食べている人種と言っても過言 ではないと思います。私も毎日100g、もう50年食べています。うちの娘が今、妊娠3か 月です。当時もともかく魚が一番いいんだよと、毎日のように、もちろん商売をしてい ますから魚を欠かすことなく食べております。それで、立派な赤ちゃんができていま す。そういうことも含めて、やはり正確なデータ、諸外国のデータもはっきり言ってま だクローズドなものがいっぱいあります。  ですから、日本は日本独自の、そして一番食べる私どもの検査ですね。私たちもはっ きり言ってモルモットになりましょう。2年、3年のきちんとしたものを出して、その 中で正確に出していくのが日本の国民として、一番魚を食べる国民として世界じゅうに アピールできるのは日本だけなんです。野菜にしてもジャガイモにしても、全部そうい うものは今、向こうに負けています。しかし、魚だけはいろいろな面で日本が主導しな ければならない立場であるし、また使命でもあるんです。そういった使命国がちゃんと した一番食べている日本の人種の、特に私どもはよくそこのところを臨床学でやってい ただいて正式なデータを出して、そこで初めて発表してやっていただきたいと思ってお ります。時間の制限がありますので。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。パネルの方も余り長くなっても皆さんの御発言ができなく なってしまいますので、なるべく簡潔に御発言いただきますようお願いいたします。  それでは、厳しくという立場で富山様から御意見いただけますでしょうか。 ○富山氏  先ほど桝山さんから、水銀の残留基準値についての御発言がありました。それで、日 本の総水銀の残留基準値が0.4ppm、メチル水銀の基準値が0.3ppmで何か厳しいように思 いますけれども、その問題点は桝山さんが指摘されておられましたが、例えば水俣病の 発生のことを考えてみますと、水俣病を発生させないための基準値というのは0.22ppm 以下でなければならないという数字も出ているやに聞いております。その点について厚 生労働省とか、水俣という悲惨な例を我が国で発症された国の健康を担当する、当時は 厚生省でおられたんですけれども、その点についてきちんとした数値を出されているの でしょうか。  そして、先ほど疫学調査が十分でないよその国の調査を持ってきて云々するのは論外 であるような御発言がありましたが、日本では水俣病というとても痛ましい一人ひとり の命に関わることをどのように生かしてこられたのでしょうか。そういうことを私は逆 に皆様方に問いたいと思います。私たち消費者はppmレベルで物を考えているわけでは ないんです。ppbでもいいです。毎日毎日食べるものが安心できて健やかな命を未来へ つないでいくという一人ひとりの問題で、一人ひとりの命を公衆としてのマスで考えて もらっては困るんです。  そして、その命というのは一番弱いところに被害が及ぶ。それは魚たちでもあるわけ です。人、人とばかり言っておりますが、魚はどんな思いだったのかと思います。です から、そういうことも含めて食べ物とは一体何であるかということをきっちりと根本的 に踏まえて基準の問題も考えていくべきであるし、そういう施策が行われるべきだと思 うんです。 私は、今にしてppmだの何とかかんとかということについて非常に違和感 を感じています。確かに規制値を設けることは今の状況の中で重要なことであるとは思 いますが、そうしたら一番厳しいところを取るべきだと思います。十分調査をしてから 決めるというのでは余りにもゆっくりというか、命を軽んじた考え方ではないかという ことを私は言いたいと思います。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。 ○佐藤(亮)氏  ただいま水俣病の話が出たのですけれども、今回は水俣病と同じ段階で話をするよう なことではないのではないか。もちろん理論的にはそのとおりであります。ただし、確 かに水銀があるわけですから、この水銀の安全率というのはどういうものなのか。それ をやはり発表するべきだと思います。  聞くところによると、大体このぐらいだろうという推定の数字の50倍をもって基準と しているというふうな話も聞きます。大体いいだろうというものの50倍と言ったら、ほ とんど全く関係ないというふうな数字でありまして、その関係ない数字で暮らすのは消 費者にとっても生産者にとっても大変不幸なことだろうと思います。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。続きまして、尾崎様お願いします。 ○尾崎氏  今も出ておりましたが、水俣病とは定常的にその魚を食べて摂取される水銀の問題は 全く違う問題だと私は思っております。それで、水俣病のメチル水銀と、それから魚に 含まれるメチル水銀が化学形態が違うというような論文が出ていると私は伺っておりま して、私どもといたしましてはなるべく早い将来に、普通の魚食から取られる水銀が安 全であるという科学的な解明がされることを希望しておりますけれども、そういった見 通しをどのようにお考えになっているのかを伺いたいのが1点です。  いま一つはJECFAの昨年6月の議論でございますけれども、元になった疫学調査 でフェローとセイシェルが明らかに矛盾する、対立する結果を出しているのをどのよう に調整されたかということ、この2点をお伺いしたいと思います。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  この辺で少し整理をしていきたいと思うのですが、汚染物質の規制というものは例え ば食品の残留農薬みたいに意図的に制御できるようなものとまた性格が違うようなとこ ろがありますので、要するに食べなければいいというものでもないと思うんです。佐藤 先生の先ほどのスライドの中でも魚から摂取する水銀のリスクと、もう一方で魚が持っ ている栄養素としての有用性があるので、もし摂取をやめてしまえば逆にその有用性を 欠くことによってまた別のリスクがあるかもしれないというようなことがあるかと思い ます。  では、中垣課長お願いします。 ○中垣課長  厚生労働省の基準審査課長でございます。  今、リスク評価についてどのように考えるのか、あるいはJECFAがどうだったの か、あるいは日本のデータがどうなのかというようないろいろな議論をいただいたとこ ろだと思っております。また、水俣病という議論がございましたけれども、食品分野で 申し上げますとBSEの問題でございますとか、いろいろな問題があったところでござ います。  そういう意味から申し上げますと、昨年食品安全基本法が国会で成立したところでご ざいまして、食品安全基本法それ自体にもいろいろな御意見があるのだろうとは思いま すけれども、国会といたしましては科学的知見にのっとって施策を展開していくという ことを決めたところでございます。  もちろんその中にはいろいろな学術雑誌の引用がありましたけれども、この水銀をめ ぐりましてもいろいろな意見が当然のことながら右から左からあるわけでございます。 そういう中で、JECFAにおいては一定の評価をされたということが現実なのだろう と思っております。我が国におきましては今、食品安全委員会においてその議論がされ ておるということでございまして、これは現在アベーラブルな利用可能なデータを元に 議論がされていくのだろうと考えるわけでございます。  厚生労働省といたしまして、昨年妊婦への注意事項を提出した際には基準が緩いとい うようなお話もありましたけれども、昨年のその時点のJECFAの結果をベースにす るかどうかということをまず審議会で御議論いただいて、それをベースにしたらいいの ではないかということから、当時のJECFAの結果を元に試算をしていったところで ございます。既に御紹介がございましたとおり、JECFAは昨年の6月の末にござい ました会合でその数字を切り下げたところでございますけれども、それはあくまでもJ ECFAの評価でございますから、今後見直していく中におきましては現在、行われて おります食品安全委員会の結果をもって我々妊婦等への注意事項というものを見直して いく。  更には、その対象者をどうすべきかという御議論もございました。一般の方々も、あ るいは子どもも、授乳婦もというような御主張もございましたし、一方では妊婦に限る べきだというような御主張もあったわけでございますが、これも科学の問題だろうと思 います。私が承知している限りで申し上げますと、授乳婦の母乳にはほとんど移行しな い。若干するようでございますが、その程度は非常に少ない。更には、新規発達という 観点から申し上げますと、幼児の段階では既に大体終わっておると私は承知しておりま すが、これも食品安全委員会で科学的なデータに基づいて御議論願うということでお願 いをしているところでございます。以上でございます。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。 ○松本参事官  富山さんの方から食品安全行政にどのような観点で取り組んでいるのかというお話が ありました。これまで日本に限らずいろいろなところで食品の安全についていろいろな 事故なり、大きな不幸なことが起きたというのは事実ですし、日本においても水俣だけ ではなくて幾つもそういう反省すべき点はあると思います。  そういう点に立ちまして、これから先の食品安全についてはリスク分析という手法で やるというのがFAO、あるいはWHOの世界的なスタンダードということで、我が国 においてもそれに基づいてやろう。そのリスク分析の手法というのは、1つはきちんと した評価をする機関、これは科学的、客観的に評価する部分とリスクを管理する部門、 これは厚生労働省なり農林水産省なりです。そのときに、そういうことを進めるときに はリスクコミュニケーションをやっていこう。今回のこのリスクコミュニケーションも そういう考え方に基づいたものであります。  10年前、20年前、こういう国の議論あるいはいろいろな会議、審議会の議論というの は大体非公開で議事録も余り出ておりませんでした。しかし、今や厚生労働省の審議会 あるいは研究会はほぼ100%と言っていいくらい公開であります。ただ、個人のプライ バシーに関わるものとか、企業の特許に触れるようなところは非公開でやりますけれど も、それ以外はほとんど公開されています。また、議事録もインターネットで見ること ができます。  やはりこれから先、食品の安全は、一も二も情報公開が大事な要素だと。公開するこ とによって多くの国民の目、消費者、生産者、流通関係者の目が光っているというとこ ろで進めていくのがこれから先の食品安全の進め方だろうと思います。こういう手法 は、結果的には多くの失敗に基づいてそれをいかに進めていくか。リスクというのはい ろいろなことについてゼロではない。  佐藤教授がお示しになった最後に、すべてが毒だ。しかし、毒といいものを決めるの は量の問題だと言われました。水でもおいしい水と言いながらも1日2リットル飲むか らいいわけでありまして、少なければ人は死んでしまいますし、かといって1日に10リ ットルも水を飲んだら、これまた体を壊してしまいます。やはり生命を維持する適当な 量というものがあるわけでございまして、それを摂っている範囲においてはいいですけ れども、過ぎたるは及ばざるがごとしという言葉もありますし、欠乏してもまた困ると いうことで、そこのところをいかにやっていくか。  食品安全行政についてもリスクはある。そのリスクをいかに減らしていくか。そのた めにいろいろな施策を講じていく。かつその施策をやり始めたらそれだけで止まってい るのではなくて、常に評価をして直すべき点は直していくということで進めていくのが これから先の我が省あるいは関係する農林水産省もそうでありますけれども、食の安全 をつかさどる役所としての取り組みの姿勢であるということでございます。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  それでは、佐藤先生からも少しコメントをいただければと思います。 ○佐藤教授  論点を絞ったとは言いつつ、いろいろな御意見が出たので、私の方から何かまとめる ような形で申し上げることはできないのですけれども、一部誤解があるようなのでそこ だけお話をしたいと思います。  どうも疫学というのは今のお話だと余り評判がよくないようなのですけれども、こう いうものの調査は疫学的な方法でやらざるを得ないだろうと思っております。それで、 フェローの論文についてきちんとした審査を受けていない雑誌に公表されたというよう な御発言があったかと思いますけれども、そんなことは決してございません。きちんと した審査のあるジャーナルにたくさんの論文が掲載されております。  先ほどどなたかがローチェスターのマイヤース教授の研究をだれかが裏打ちするよう なことを言っていたとおっしゃっておりました。私は個人的にマイヤースとかデイビッ トソンとか存じ上げておりますし、フェローの研究をやっているグランジャン教授も存 じ上げておりますけれども、両方とも研究者として立派な方々で、我々を含めて世界じ ゅうからきちんと認識されています。  その疫学的な方法でないとできないというのは、1つは何か特異的な病気のようなも のですと一例をもってかなりいろいろなことを言うことができるのだと思いますけれど も、私は先ほど申し上げましたように現在言っているような暴露のレベルで起こる影響 というのは余り特異的なものというのは起こり得ないのだろうと思います。  それから、恐らく同じような暴露レベルであっても起きる人と起きない人があるわけ で、そういう意味では疫学的な研究というか、数を集めた研究でないといろいろなこと がわからないと思います。だからと言って一人ひとりを大事にしないわけではなくて、 例えばこういうフェローの研究にしろ、セイシェルの研究にしろ、あるいはニュージー ランドの研究にしろ、1,000人前後の人たちの一人ひとりをきちんと見ながら、あるい は1組の母子をきちんと見ながらそれぞれの研究を進めて結果を出しているんだという ことを御理解いただきたいと思います。  確かに、何万人規模で厚生省の出すような数字だけを見て研究をしている人もいま す。それはそれで、また違う意味を持っているんだろうと思います。そういう研究の質 とか差はあると思いますけれども、やはり研究をしている人たちはそれぞれの自分たち の方法論でもってできるだけ正確なことをやりたいと思っていますし、それがうまく結 果が出て社会の役に立てば、それはまた望外の幸せだと思っているのが研究者だと思い ますし、私はそう思いたいと思っております。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。お時間の関係もありますので、リスク評価のところはこの 辺でと思いますが、何かまとめで特に発言し足りない方はパネラーの方からございます か。  それでは、次の対象魚種の選定というところに入らせていただきたいと思います。パ ネラーの方からも、やはりマグロがその制限から前回の注意事項の中では外れていたの ではないかというような御意見もいただいておりますし、クジラの化学物質の汚染が非 常に進んでいるというような御意見もいただいているところですが、例えば魚種の選定 についてまた追加でコメントをいただけるパネラーの方、いらっしゃいますか。 ○原氏  魚は確かに栄養学的に非常に有用なものなんですけれども、すべての魚が水銀を高く 含んでいるわけではないということです。ですから、私どももホームページ等で消費者 に注意喚起をしているんですけれども、魚はいいものだから普通に食べている分には全 然心配はない。ただし、特定の魚種、マグロですとか、一部の魚種は高いので食べ過ぎ ないようにしましょう。  食べ過ぎないというのは、1週間に100gから200gぐらいということで私どもは示させ ていただいてはいるのですけれども、食べ過ぎないようにしましょうと言うことが大切 であって、私どももほかの消費者団体も皆そうですが、魚自体を毒だと言っているわけ ではなくて、そういう高いものを食べ過ぎないという正しい理解を消費者に持ってもら うことも大事だし、場合によっては先ほど養殖の件については申し上げたんですけれど も、魚屋さんも地域の魚屋さんなどだったらお客さんがどういうものを買っていくかと いうことが一人ひとりわかっていらっしゃるんでしょうから、あなたはマグロばかり買 っていないでサンマも食べなさいよというような売り方もできるのかもしれません。な かなかスーパーとかではそういうことはできないんですけれども、そういうことで御努 力をいただいたらどうなんでしょうか。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。 ○富山氏  一言です。ですから、マグロは対象魚種に入れるべきだと思います。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  では、生産者の方からも少し御意見をいただきたいと思うのですけれども。 ○佐藤(亮)氏  マグロと言っても大変種類があります。恐らく今、言っているのは輸入用の蓄養マグ ロではないかと思います。これは大変色もいいし、おいしいし、脂もあるし、安いんで す。これを文句を言うと焼きもちをやいているように思われるので、私は言っているん です。70歳ぐらいになったら食べていいよ。その代わり、若い人は食べてはいけない よ。要するに、生殖能力がある人は食べてはだめだと言っているんです。そういうふう なことでも言わないと、なかなかぴんとこないのではないかと思うんです。  それを全部まとめてマグロとなってしまうと大変困ることになります。発表をするの であれば、正確なバランスの取れた発表をしないと全部がどぼんとなってしまって、本 当に安いものをおいしく食べられるはずの消費者も食べられなくなってしまうし、捕っ てくる方もなかなか仕事にならないでつぶれてしまうということになると思います。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。 ○桝山氏  私ども消費者団体としまして日ごろ情報誌などを送っている会員から、どういうもの が危ないんですかということをよく聞かれます。それについては、基本的には先ほど佐 藤先生がおっしゃっていましたように、大型で長生きで肉食で、そういうものは危ない というか、濃縮が進んでいますよということで、そういうものを食べてはいけないとは 言わないんですけれども、幾ら好きだからと言ってやはりとりつかれたようにそれを食 べることは危険だと言っております。  それで、私どもは食べ物の汚染の指標として一番わかりやすいのが、濃度が上がって いるのでクジラをよく調査に使っているんですけれども、ハクジラなどはこの辺が非常 に濃縮が進んでいるので、はっきり言って推奨できないものが多いというふうに会員の 方には案内をしています。  ただ、クジラのすべてがすべてだめだという言い方はしておりません。種類ですと か、産地ですとか、そういうものによっては安全なものもありまして、ハクジラで南氷 洋の方の沖合のものでしたら比較的大丈夫ですということも聞かれればお教えしている というか、御案内しています。  対象魚種の話としましては私ごとで恐縮なのですが、私には5歳の子どもがおりまし て、子どもたちの幼稚園のつどいなどに行きますと、正直申しましてマグロが大変好き です。マグロのづけ丼などを頼みますと、目をかがやかせて大喜びでぱくぱく食いつき がいい。子どもは好きなんだなと、見ていると本当によくわかります。  こういった中で、マグロにもいろいろ種類があるというお話をさっき教えていただき ましたけれども、私どもははっきり言って素人ですので、どのようなマグロの種類があ るのか、今、自分の目の前に盛られている丼の中に入っているのは何のマグロなのか、 どういう素姓のものなのか、見ただけでははっきり申しましてわかりません。そういう お店屋さんなどに子どもを連れていった場合、これを全部食べさせて本当に大丈夫なん だろうかと不安に思うというのが正直なところなのでございます。ですので、その辺の 年齢に応じた食べ方といいますか、そのような指標というか、ガイドラインのようなも のを御案内いただけると消費者としてはありがたいと思っております。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。摂取との関係では、一時的に摂取量を超えても後で控えれ ばいいということもあるのではないかという御意見もいただいているところですが、尾 崎様から補足いただいてもよろしいでしょうか。 ○尾崎氏  今の注意事項は、特定の比較的高い水銀含有量の魚介類について、1人当たりの平均 的な1日摂取量を元に週何回までならば食べても耐容週間摂取量を超えないかというよ うなことで検討されて出されていると思っておりますけれども、そもそも日本人が非常 に多種多様な魚類を摂取する食文化を持っていて、ある特定のものを食べ続けるという 慣習はないのに、特定の魚類のみ取り出して、それを週何回も繰り返し食べることを前 提とした食事指導が適切であるかという疑問があります。  もう一つは、そうやって計算されていって、最後に非常に断定的に数字で出ます。そ こに至る間に非常にいろいろな仮定が置かれているということなんです。耐容1日摂取 量、毒性の強さなども含めて、データというのは限界があるだろうと思っております。 ただ、具体的な数字が出るということが結果としてありますので、やはり非常にきめ細 かい作業をやっていただきたいというのが私どもの願望です。  データについても数値に代表性があるか。それから社会経済的考慮、消費者の方々は やはり財布と相談して購入されると思いますので、余り高価なものはそれほど頻繁に食 べられないと思います。そういったことも踏まえて消費の実態に近付いていただきた い。毒性の強さについても、水銀含有調査の魚の種類、サイズ等が流通の実態に近い か、検体数が十分か、サンプルを抽出する市場に代表性があるか等、やはり数字が一人 歩きをする怖さ、それからそれが断定的にあるものを食べるなと言うのに近い形でそう いうインパクトを持った指導になってしまいますので、非常にきめ細かい作業をやって いただきたいというのが私どものお願いでございます。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。 ○佐藤(亮)氏  どのマグロがいいか悪いかなどというのは、私も刺身になったら全くわかりません。 ですから、そこで売っているところのおやじあるいは店主が、これは日本のどういうと ころで揚がった魚である。あるいは、日本の船がどこどこで捕った魚であるということ をきちんと説明ができるような店で買えば、あるいはそういう店で食べれば、余り問題 ないのではないかと思います。見分けというのはそれが一番大事ではないかと思いま す。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。 ○長畠室長  マグロの魚種の話が出ておりますので、関連の御説明を申し上げたいと思います。こ れは先ほど時間の関係もあって説明がはしょられたんだと思いますけれども、先ほどの 近藤さんの説明された資料2の24ページをお開けください。  いわゆるマグロと言いましても、2段目と3段目を見ていただくとクロマグロ、ミナ ミマグロ、メバチというものが3魚種挙がっていまして、下の参考のところにキハダ、 ビンナガ、メジ、これはクロマグロなりキハダの小さいものです。そしてまたツナ缶詰 と書いてあります。  まず、先ほど来のお話で30年前の暫定規制値からマグロが除かれているからマグロは 一般に高いんだろうという認識に対してはキハダ、ビンナガ、メジ、ツナ缶というのは 0.3 ppmを切っているということです。そして、上のクロマグロ、ミナミマグロ、メバ チというものについてはそれなりの濃度が出ていますけれども、基準値の2倍もない。  あとは、魚種に関しては、これは外食といいますか、外で食べられるときはつくった 人に聞かないとわからないということがあろうかと思いますけれども、スーパーなりで お買いになるとき、または小売店の対面販売であれば聞かれたら答えるようにしなけれ ばいけませんし、スーパーもこのごろはしっかりと魚種と産地が言える。これは2000年 の7月くらいからですけれども、生食についてはそういうところを参考にしていただき たいと思います。  そして、マグロ類はよく食べるということですけれども、どれぐらい食べられている かという感覚を持っていただく意味で情報を御提供しますと、キンメダイは去年1回60 から80 g食べるとして週2回までだったらいい。3回以上はだめという言い方ですけれ ども、これは生産が大体7,000 t弱ございます。そして、輸入も南西インド洋なりで捕 っているものが入ってくるんですけれども、この輸入は単独で特定されてはございませ んのでわからないんです。その他となっていますので、足して仮に日本への供給が1万 tとしまして、それで歩留まり、これは魚の頭とか骨がございますから、肉にした場合 は50%としましょう。そうすると、正肉は5,000 tです。これを日本人は1億2,000万人 ですけれども、2,000万人の人は食べないとして1億、10の8乗の人間で割ると1年間 に50 gという摂食量になります。  そういうものを頭に置いていただいてマグロのお話をしますと、例えば濃度が0.55あ りますクロマグロというのは国内の生産と輸入を入れて2万 t強です。2万 tとして、 いろいろと持ち込まれるときには内臓が抜けたり枝鰓が抜いてあったりして歩留まりは 5割よりいいかもしれませんけれども、1万 tとしまして先ほど言ったように1年間1 人50 gです。ミナミマグロは1万2,000 tですから、その6割。メバチはキハダととも に主力魚種で16万5,000 tありますから、これは15倍としますと750 gくらい取れます。 キハダも同じくらいありますので750 gといったように、そういった供給量の内訳もよ く見ていただくということです。  あとは値段ですけれども、やはりクロマグロ、ミナミマグロというのは本当にいわゆ るマグロであって高いです。私も今週の火曜日、近くのスーパーで何とか水産という高 いところですけれども、そこで値段を見てきたら、地中海、蓄養、クロマグロ、中ト ロ、解凍、これで1,500円です。ミナミマグロ、ケープタウン、天然、中トロ、解凍で 100 g1,300円です。メバチは清水産としか書いていないのでちょっとあいまいなものな んですけれども、解凍で100 g480円といった状況ですので、やはり高いものを連続して 食べるということは普通、余り起きないだろうという観点も含めて、我々も厚労省の審 議会で御議論なさる際には、こういった付属の関連の情報というものもできるだけ提供 申し上げて、起こり得る可能性が高いということも頭に入れて議論していただきたいと 存じます。  最後にクジラですけれども、これも先ほどの15ページをごらんください。ハクジラ、 これは歯が付いています。マッコウクジラというのは一番大きいですし、そこにあるイ ルカ類というのは大きくなっても体調体長4 m未満の鯨類、クジラの仲間です。これは 歯が付いていてイカとか大きな魚を食べますので、どうしても食物連鎖の上にあるとい うことで高くなってしまっている。  ところがヒゲクジラ、これはそこにありますものでは上から2つ目のイワシクジラ、 下から4つ目のニタリクジラ、そして下のミンククジラですけれども、こういったもの は歯の代わりにひげで餌を濾しとる様になっていまして、オキアミであるとかイワシ、 せいぜいサンマぐいしか食べられないということもあって、それだからハクジラに比べ て大きくなれるんだと思いますけれども、栄養段階が低いということから非常に水銀の 濃度が低い。  そして、調査捕鯨なりで例えば南氷洋で440頭捕っているミンククジラというのがこ のヒゲクジラですので、給食などで心配だというお声はありますけれども、給食なりに マスで提供できるのはこのヒゲクジラですから、そういったことの確認は簡単にできま すので、こういった面では安心していただけるのではないかと思っております。以上で ございます。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。それでは野末様に簡単にいただいて、中垣課長から最後に まとめていただきたいと思います。 ○野末氏  大分マグロのことが出ていますので、マグロ業界として一言申し上げます。  数値が24ページにも26ページにもあるのですが、一般の方が見てこの数値は絶対わか りません。これはマイクロですよね。100万分の1でしょう。1人当たり幾らと。ppmも しかり、これは重量ですね。そういう記号ではなくて、現実に今、生で食べる刺身マグ ロが25万 tです。前回の15年度の風潮を見ますと、マグロが70万 tで1人の人間が5.5 kg食べる。食べません。あれは頭も骨も全部付いている目方です。これもちょっと書い ていることが違う。正式にちゃんとしたものを書いていただきたいということです。  25万 tというのは今、日本の人口が1億2,075万人です。それから、妊婦さんが昨年 は112万3,838人です。そうした中でマグロが、例えば1億人の人が毎日365日一人ひと り食べたとすると、1日5 gです。5 gと言ってもどのぐらいの大きさなのか一般の人 たちにはわかりません。5 gというのはお寿司の半分なんです。日本は一番世界で多い と言ってもそれだけなんです。それをこういう数値で表して、さもマグロはだめなん だ、危ないんだと。一般の方が本当にわかるような説明を是非、厚生労働省の方にお願 いしたい。これが私の最後の言葉です。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。それでは、中垣課長からコメントをお願いいたします。 ○中垣課長  マグロを入れる入れないに議論が集中しているようでございますが、何もここで多数 決で決めるわけではございませんし、先ほど御発言がございましたとおり、透明性を持 って議論をしていくということが重要なんだろう。また、その試算をするのであれば試 算の仮定を示していくことが重要なんだろうということで取り組んでいるところでござ います。  具体的に申し上げますと、資料2の9ページをごらんいただきますと、集められるだ けのデータをまず集めました。具体的には大体400種類、七千数百を超える検査データ が集まってまいりました。恐らくアメリカのホームページ、いろいろなところのホーム ページを見てもこれだけ膨大に公表いたしておりませんから、そういう意味ではかなり の数が集まったのだろうと思うわけでございます。  また、ここで少し申し上げておかなければいけないのは、先ほど畜養と天然のお話が ございました。これも水産庁に分析していただきましたけれども、クロマグロとミナミ マグロは畜養も天然もほぼ同じような数字が出てきておりますが、いずれにいたしまし ても国内でやられたものについてある程度高いものについて試算をしていった。  それが21ページでございます。21ページは下に枠囲みで書いておりますように、いろ いろな試算仮定を置いております。すなわち、現在食品安全委員会でやっていただいて いる耐容量というのを最後に用いるわけでございますが、ここでは昨年の審議会で用い た耐容量とJECFAの再評価結果の2つを置いております。また、バックグラウンド で1週間のうちにほかの魚を食べないというのはちょっと考えられませんから、いろい ろな仮定を置いておるわけでございます。  その上で、それぞれの耐容量を超えない範囲の魚のグラム数をこれは試算しておりま す。すなわち、1週間に例えば最初のエッチュウバイガイであれば、昨年の審議会で用 いた耐容量で考えますと、仮定1だと318 gという数字になってまいるわけでございま す。  今、議論になっておりますマグロでございますが、22ページをごらんいただきます と、例えばクロマグロですと昨年の審議会に用いた耐容量ですと、仮定1だと週に283 g、JECFAの再評価結果5ですと129 gという試算が出てまいるわけでございます。 もちろんこれは最終的にはバックグラウンドはどの程度あるのか。ある試算によると半 分くらいということになりまして、そういう意味では仮定2になるのかもしれません が、そういったところももう少し科学的に詰めていく必要があると思っておりますし、 大前提となりますのは耐容量がどこにセットされるのかということでございますから、 それを用いることが必要となってまいります。  また、御注意いただかないといけないのは、マグロを週に何回食べる、あるいはキン メダイを週に何回食べるということが言われておりますけれども、マグロから摂取する 水銀とキンメから摂取する水銀は同じものでございますから、仮にマグロとキンメと同 じ週に食べるのであれば、それは例えば一定量の半分ずつにしていただくとかという工 夫が出てまいりますので、例えばキンメが週に2回食べることは考えられないからキン メを外そうというような話ではないのだろうと考えております。  一方、最終的に消費者に、あるいは妊婦だとすると妊婦の方々にどのような形で情報 を渡すかということを考えなければならないのですけれども、そのときに週に5 gです よとか、週に100 gですよと言っても、妊婦の方々はそれこそ戸惑われるのだろうと思 います。そのために特別の調査をして、全国でたしか10件か8件だったと思いますが、 実際に売られている1人前の刺身の量がどの程度なのか。鉄火丼に乗っているマグロの 量がどのくらいなのかということも調べて公開をしておりますが、大体70 g、80 g、あ るいは100 g程度ということでございますから、一回食べるとなると80 g程度を念頭に 置いて考えればいいのかなとは考えておりますけれども、申し上げておきたいのは、少 しずつ積み重ねてデータをできるだけわかりやすく、かつ正確に伝えていきたいと考え ているわけでございます。  一方、23ページから先ほど長畠室長から御紹介いただいたものがございます。これが 昨年用いた試算の方法でございまして、確かに御指摘のようにわかりにくいということ が1つと、これは国民栄養調査の平均摂食量を元にしておるわけでございますが、平均 摂食量というのはやはり分布がございます。その中の1点を示しておるわけでございま して、その山が非常に小さいと申しますか、分布が広がっていない、狭いというのであ れば平均でいくということもあるわけでございますが、どうも魚の場合にかなり広い裾 野、すなわちたくさん食べる人と少ししか食べない人があるということから考えます と、この23ページからの試算ではなくて、先ほどごらんいただきました21ページからの 試算を元に議論を進めていただいた方がいいのではないか。  要するに、試算すると週に何 gだったら耐容量を超えない。その耐容量はこれから食 品安全委員会で決めていくということで議論を展開していった方がいずれの方々もわか りやすく、かつ議論のベースが整うのではないかと考えている次第でございます。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  それでは、当初予定したお時間になっておりますが、テーマとしてまだあと2つ残っ ておりますので、もう少し延長して進めていきたいと思います。続いてのテーマといた しましては、魚の有用性と、それから風評被害防止のための方策についてということ で、これまでもその対象者を特定してくださいですとか、文面の工夫が必要なのではな いかとか、Q&Aの作成が必要ではないかとか、リスコミをもっとやるべきではないか とか、いろいろ御意見をいただいたところでございます。この辺について少し御意見を いただきたいと思います。  最初に村井様、それから蓮尾様ということで御意見をいただきたいと思います。 ○村井氏  風評被害ということで少しお話をさせていただきたいと思います。これは決して前に おられる方を非難しているということではさらさらございませんので、誤解のないよう にしていただきたいわけでございます。  というよりも、むしろ去年の反省を踏まえて、例えば一枚一枚こういうふうに、決し てこれは仮定のものですから運用をちゃんとしてくださいというふうに御配慮をいただ いているということで、大変ありがたく思っております。行政機関が一枚一枚にこうい うふうに掲載されるというか、記述されるのはなかなかないことだろうと思っておりま して、大変高く評価申し上げたいと思っているわけでございます。  そういうことでおさらいというようなことで、繰り返しますけれども、決して非難で はございません。どういうことがあったということだけを申し上げて、御議論の材料に していただきたいと思ってお話をさせてもらうわけです。  御案内のとおり6月3日に出たわけです。そして、6月3日の夜7時にNHKから放 送があった。翌日4日に水産庁に私どもは呼んでいただきまして説明を受けました。そ れから、5日に注意事項についての正しい理解のためというものが厚生労働省からプレ スリリースされたと思っております。そして、6月13日にQ&Aが発出された。そし て、6月16日にホームページに掲載された。  これが事実ではないか。もし私の記憶違いであれば御訂正なり、おしかりをいただき たいと思っておりますが、言いたいのはこういうことでありましたねと。そうであるか らいろいろな問題が出たということでございまして、言いたいのは一度こういった問題 が出ると私どもも正しい理解と正しい行動をしなければならないわけですけれども、こ れを訂正するだとか修正する、あるいは理解をもう一度してもらうというのは至難の技 です。まず不可能と考えてもいいだろうと思っております。そういったことを是非お願 いしたいということです。  そして、一番私どもが困ったのが、先ほど申し上げましたように店頭でこれは妊婦さ んだよと言っても、妊婦さんが悪ければ私ども若い人もだめなんだね。若い人がだめな らば当然相当年配の方も私たちもとなるわけです。それで、店頭でわかりやすく消費者 から質問があったときに、こういうことですよということを是非とも私どもに、難しい ことは御勘弁いただきたいわけでございます。一目でわかるようなものをいただければ 大変ありがたいと思っておるわけでございます。  今日おいでの方は、100%魚食を否定する方はおられません。そういった意味で、私 どもは魚食を是非頑張っていきたい。先ほど大変心強いことをおっしゃっていただきま した。町の魚屋さんはいろいろな情報がございますので、御利用いただければと思って おりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  続きまして、蓮尾様お願いしたいと思います。 ○蓮尾氏  風評被害に関わる問題ということですけれども、消費者に軸足を置いた一つの安全に 対する施策ということで、こういったリスクコミュニケーションをかなりきめ細かに設 けてくださっているということは、大変私ども消費者にとってはありがたいことです し、これが積み重なっていけば必ずどこかで安全と安心というものの乖離が近付いてく るのではないかと思っていますけれども、今日の論議を聞いていても、やはり消費者の 考える危険と科学が示す危険、それから科学的事実と消費者の心理というのは必ずしも 一致しないということを前提にして論議していかないと、さっきのマグロの問題も国民 栄養調査等々、科学的、基礎的なデータに基づいて出されているということですが、現 実に消費者の立場で回りの人たちの声を聞くと、例えば妊婦でもつわりがひどくてマグ ロしか食べられなくてマグロばかり食べていたという人が出てきたり、子どもも骨なし の魚ということで、マグロだったら食べるから毎日のようにマグロを食べさせていると いう実例もあるわけです。ですから、それにとらわれていれば何事も進んでいかないと いうことは当然ですけれども、消費者の立場で参加してほしいということであれば、消 費者の日常的な生活感覚というものを無視して科学だけで進めていっていいものかどう か、私は大変疑問に思っています。  それから、混同されている問題で風評被害につながる問題として、論議しているのは 妊婦、それから妊娠を考えている人たちというふうに対象が絞られているわけですね。 あとの大多数の人たちというのは、それなりに安全施策が講じられているものに対して 安心して提起された情報を生活の中に取り入れていけば不安ではないわけです。  ただ、妊婦というところで私はこのごろの世相の中で、それは消費者の情緒的な問題 と否定されてしまうかもしれませんけれども、人の命が軽んじられる、本当に今までな かった時代ではないかと思います。その中で、妊娠をするという命をこれから生み出す という人たちをどうやって守るかというところで、国の行政がその人たちのことを考え て対象の魚を決め、食べる回数も指導し、そしてそれを守っていれば大丈夫ですよとい うことを温かく提供する感覚というものが非常に大事な時代なのではないかと思いま す。  それは、科学だけでは完全なものではないと思います。だからこそ妊娠中の人たちに 対しての基準値というものの設定というものがわかりやすい形で提起されるということ と、それからやはり弱者である、先生は胎児が心配で乳児の場合は大丈夫とおっしゃら れていますけれども、私たちにしてみれば、ではなぜ外国がそういう子どもまで対象に しているのだろうか。そういう現実の問題を検討されるときにどういうふうに参考資料 として用いられているのだろうかということを是非伺いたいと思います。  そういう意味で、妊娠中の女性を特定しているということは、確実に胎盤を通じてそ ういった化学物質のリスクが入っていくということは多分化学の先生たちも否定はされ ないんだろうと思いますし、胎児における脳への影響というものはこれから明らかにな っていくことではないかと思います。そういう意味で言っているので、あれもこれも信 用できないとか、おかしいとかということではなくて、やはり対象をきちんとわかりや すい形で国民に情報開示していき、指導をしていく。一般の人たちには魚を食べるとい うことがどれだけ大事かということをきちんとわかりやすい形で提供していくというこ とは、行政だけではなく我々消費者の立場でも求められている問題だと思いますので、 よろしくお願いします。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  では、最後は報道機関への要望ということで、時間が大分押していますので先に全部 くくった上で締めくくっていきたいと思います。今回パネラーの方から幾つか御意見を いただいておりまして、やはり節度ある適切な報道をお願いしたいというようなことで すとか、消費者が一瞬見てわかりやすい報道をお願いしたいというような御意見、それ から予防的措置として与える注意という性格の割には視覚的に一般の方の感情を強く刺 激するような、例えば水俣病の映像があったりとか、そういうようなことがあって誤解 を招くというような御意見をいただいております。また、表現には細心の注意をお願い したいというようなこと。それから、行政側には報道機関の方で適切な報道が行われる ように正しい情報の提供をというような御意見をいただいております。この辺につい て、パネラーの方で追加で御発言されたい方はおられますか。 ○野末氏  水銀の怖さというものをまず前面に先に出してしまうんです。そうすると、水銀の怖 さというものに対して物をずっと考えていってどうなんだと。我々日本人というのは魚 食民族ですから、魚のよさ、先ほどメリットがありましたね。魚にはDHA、ドコサヘ キサエン酸、EPA、エイコサペンタエン酸、ドコサというのはギリシャ語で22の炭素 の数字を表しているのですが、エイコサペンタエン酸というのは20です。そして、いろ いろな酸化を防ぐすばらしいものがあるわけです。  そして、各世界の食べ物の中で環境がやはりあると思うんです。日本人はお茶を飲み ます。お茶にはカテキンというものがあります。そういう物質がいろいろと魚に対し て、例えば水銀があればそういうものを抑制しているわけです。それも一つ含めて、今 はそういう水銀というものの怖さがばっと前面に出てしまって、水銀というのは濃度が こうなんだ、こうなんだ。そして、そこに今度はマグロと出ると、大丈夫なのかと。で すから、ちゃんとした適正なそういう日本にある今の文化をよく尊重する。  現実に、今まで妊婦の方は赤ちゃんが生まれるまで一番魚を食べています。その人た ちが一人でも弊害があったんですか。あったのならば別です。しかし、今日の問題はそ ういうものをなくそう、あっては困るということの前提ですからそういうことは言えま せんけれども、ともかく今まではないわけですね。先生がさっきおっしゃっておられた デンマークにしても、まず木がない。木がなければ、葉緑樹が下に落ちない。いい酸素 が海に流れてこない。そうすると、プランクトンも死んでしまう。いろいろな環境があ るわけです。そういうものも踏まえて、やはり日本の現状の正しい行動をしていただけ ればと思います。 前回の平成15年度のものは、中身はちゃんと小さく書いてあるんで す。しかし、大きな見出しにぼんと出る。消費者などはそこしか見ていませんから、逆 にせっかくやったことが消費者の方にはマイナスになってしまう。私は今日はプラスに していただくことが前提ですから、マイナスにならないようにひとつ日本の文化を大切 にしていただきたい。それもひとつよろしくマスコミの方にはお願いしたいと思ってお ります。以上です。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございます。それでは、富山様お願います。 ○富山氏  一言だけ、メチル水銀の有害性はきちんと報道すべきだと報道関係の方にお願いいた します。 ○広瀬課長補佐  では、松本様お願いします。 ○松本氏  今の野末さんの一人でも出たのかという発言は、私は不適切かと思います。リスクは リスクとしてあるんですよということを立場の違いを超えて、佐藤先生からも御説明い ただいたことですし、それはそれできちんと受け止めた方が私はいいのではないか。コ ミュニケーションにならないと思いました。  それで、マスコミの報道のことですが、例えば佐藤先生の資料で河北新報さんの記事 が紹介されているわけですけれども、もちろん新聞にしろ、テレビにしろ、絵になる画 像を求めたり、あるいは読者が目を引く記事を書くというのは、マスメディの方もビジ ネスとしてやっていらっしゃるからそれはわかるんですけれども、その報道を通じてど ういうことが伝わったか、伝えられなかったか、あるいは誤解が生じたかということに ついて、少しワークショップというのでしょうか、マスメディアの関係者も含めて、ど ういうふうに伝えたらよかったんだろう、あるいはどういう書き方をすればよかったん だろうということを一回一回の事例を通じてお互いに学び合う。消費者も報道や記事を 読むときにどう受け止めたらいいか。あるいは、マスコミやテレビの方もどういうふう に伝えたら正しく伝わるのかというところをお互いに学び合うような機会をつくれたら いいかと思っております。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  では、課長から何かコメントをいただいてもよろしいでしょうか。 ○中垣課長  昨年の妊婦等への注意事項につきましては確かにいろいろな報道がなされ、いろいろ な影響を仄聞したところでございます。私どもといたしましては研究班にお願いをし て、行政としてどういうことに気をつければよかったのかというようなことをまとめた レポートもつくっていただいたところでございます。  どなたか御発言がございましたけれども、昨年6月3日に出してQ&Aを出すのが遅 かったとかというのも確かにそのとおりでございまして、そういうことも踏まえて今回 は検討を始めるに当たってQ&Aをつくっております。それなりに分析した結果を元に できるだけわかりやすい言葉で、かつ詳細に知りたい方々には詳細なデータをというこ とで膨大なデータを公開してきておるということだろうと思います。  ただ、ある面で申し上げますと審議会は公開で行います。従来ですと、根回しではご ざいませんが、決めておいてありとあらゆるパンフレットまで用意しておいて最後にぽ っと流れるということが可能であったわけでございますが、昨今は審議会の中で訂正が 出てくるということがございますから、そういうわけにもなかなかまいらないわけでご ざいまして、私どもももちろんQ&Aは出したいと思いますし、注意事項あるいはその 他の資料もできるだけわかりやすい形で出していきたいと思っておりますが、審議会で の進め方を透明性をもってやるというのもまた一つの行政の軸なんだろうと思っており ますから、そういうことも御理解いただいた上で、また報道関係の方々にも正確に理解 をしていただいた上で報道していただきたいと考える次第でございます。 ○長畠室長  今までの議論が、こういった注意事項の見直しを行った場合、どういうふうに対象の 方、また消費者の方に伝えるかという手段としてはマスコミにでの一様な報道というこ とを前提としているようなのでお話をしたいのですけれども、去年7月1日に母子手帳 を受けて今年出産を無事に済ませた奥さんを持つ課員がうちにいまして聞いてみまし た。 まず、母子手帳にこの注意事項が入っているかと聞いたら、去年の7月1日に受 けたこともあって入っていない。そして、母親学級などに行ってこの話が出たかと聞く と、一つもされていないということです。  それが悪いというのではなくて、今日は和田さんが来ていらっしゃるようですけれど も、例えば今年の7月に東京都の委託で未来研さんがなさったものを見ると、妊娠され ている方とお話をされる栄養士さんも、いろいろ聞いてみて心配がないようなので、そ してまた注意事項の内容を伝えると不安をあおるだけになってしまうから、それについ ては特に触れなかったという対応をされた方もいらっしゃいます。先ほど来出ているよ うにまず対象は妊婦さんであることは明らかなので、マスコミにおいての一様な報道と いうものも大事でしょうけれども、日本の国には妊娠されている方を対象とするきめ細 かな組織もあるようですので、そこでの有効な対応というものも是非忘れないで考えて いただきたいと思います。以上です。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  それでは、大分お時間もきてしまいましたので、会場の方も含めてトータルに意見交 換をしたいと思います。最初に真ん中の方、それから一番後ろの方と右側の列の方とい う感じにしたいと思います。まず真ん中の方からどうぞ。 ○参加者1  東北大学の佐藤先生のフェロー、それからセイシェルの状況を見たところ、とにかく 水銀という話よりも衛生環境が非常に日本から見ると大変なところだと。それを一言お 話しておきまして、今日は学会の発表ではなく、やはり報道を通して一番心配している 消費者に対して、恐らく報道が流れるかと思います。特に今日ここに来ております日本 消費者連盟の富山さん、それから家庭栄養研究会の蓮尾さんといった方々にしっかりと マグロの大切さ、魚の大切さを認識してもらいたい。  十分以上に認識しているようですが、ここに妊婦とか、それから胎児とかとありま す。病院に行きますと、アレルギーがありますか、この薬を飲んでどういうふうになり ますか。それと同じように、やはり妊婦の方はお酒を飲まないように、たばこを吸わな いようにというのと同じように、そういうふうな形で消費者に理解してもらう。厚労省 の方とか、そういった方々は職柄しっかりとした数字を出して、世界でいろいろな会議 の中でそれを議論しなければならない。そういった議論の内容を我々が聞かされてもち んぷんかんぷんで、むしろ誤解を招く結果になりますので、魚食というものは何千年か 続いた日本の食生活の中で絶対欠かすことのできない大切なものであるということをは っきりと伝えてもらいたいと思います。  それで、水銀の中にはセレンというものが入っている。それをちょっと読ませていた だきます。水銀は水俣病の原因物質として有名で、極めて毒性の強い金属です。そし て、マグロには非常に高濃度の水銀が存在しますが、マグロ自身が水銀中毒症状を示す ことはありません。  アメリカのウイスコンシン大学のガンサーらは、ウズラを用いてこのなぞを解くため の実験を行っています。ウズラにマグロを与えても水銀中毒は起こらないですが、マグ ロに入っているのと同じ量の水銀をウズラに食べさせると水銀中毒が起こります。そこ で、マグロの中の何かの物質が水銀の毒性を殺してしまうと考えられます。海産生物は 陸上の生物よりもセレン濃度が高いことが知られています。特にマグロは非常にセレン 量の方が水銀量を上回って高濃度に含まれています。  いろいろ調べた結果、面白いことに高濃度の水銀を有しているマグロはセレンをたく さん有している。セレン含有量の低いマグロは水銀量も低いことが明らかになりまし た。このようなわけで、セレンは水銀と結合して毒性の低い物質をつくるのであろうと 考えられるようになりました。  そういった形の中で、セレンは毒は毒を制するという形の中で誤解のないように、こ こでマグロがどうのとか、魚を食べてどうのということではなくて、魚を安心して食べ てくださいということをここにいる方々も御理解して、日本の長い食文化というものを 大切にする必要性があるのではないかと思いますので、ひとつ誤解のないようにお願い したいと思います。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  それでは、後ろの列の方どうぞ。時間も限られておりますので、2分程度でお願いい たします。 ○参加者2  私はクジラの水銀汚染とマグロの水銀汚染の調査をずっとしております。それで、今 日の話の内容で補足させていただきたいところがあります。先ほど中垣さんの方から、 畜養マグロのメチル水銀濃度はそんなに高くない、天然とほぼ一緒だという話だったの ですが、私の調査結果もほぼそれと同じような結果です。  それで、畜養マグロの方が脂肪が多いんです。脂肪が多い分だけメチル水銀が少な い。トロの部分、脂肪の部分には基本的に水銀は入りません。蓄積しません。ですか ら、畜養マグロは脂肪が多い分だけメチル水銀は少ない。ただし、脂肪が多い分だけP CBだとかダイオキシンがたくさん入っています。ですから、食品としての安全性を考 えた場合はトロの方が少し心配だと思っております。  それから養殖マグロの話がありますが、日本では養殖マグロを各地でやっています。 大体販売しているのは小型のマグロなんです。生後3年か4年ぐらい養殖をして販売し ていますけれども、体重が20 kgとか30 kgとか、その程度のものを販売しています。で すから、小型なものですから水銀濃度が低いんです。大体0.4 ppmを超えるものはほと んどないんです。日本で養殖している養殖マグロです。ですから、今のところ余り問題 はないような気がします。  それからクジラの問題ですけれども、先ほど桝山さんの方からありましたが、クジラ は暫定規制値の適用除外なんでしょうか、どうなんでしょうか。その点を厚生省の方に 聞きたいんです。実は、私は明日この件で1時間の講演を頼まれていますので、下手な ことを言うとちょっと問題になってしまいます。ですから、はっきりとした回答をして いただきたいと思います。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。  では、右の列で手を挙げていただいた方お願いします。 ○参加者3  私は水産加工品を扱っていまして、6年ほど前にO−157のイクラを日本全国で一番 扱っていた者ですが、幸いにも該当の日付はうちのイクラからは出ませんでしたが、 今、聞いていますとちょうどマグロの会議のような感じがしまして、我々のイクラの場 合は生を加工業者が加工してそれを販売する。  O−157の事件が始まってからは各加工業者が自主検査をするようになったんです。 今、聞いてみますと、日カツ連さんなりインポーターさんなりがそれぞれ検査をして、 その検査結果をもって発表するだけで済むのではないんでしょうか。牛も全頭検査をや っていると思います。あとは、その経費をどこで持つかだけの問題ではないかと私は思 います。以上です。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。そのほかにいらっしゃいますか。  では、一番左の列の後ろの方どうぞ。 ○参加者4  御指名いただきましてありがとうございます。私は野末さんと同じで、毎日マグロを 扱っております。  実は、私は日本地質学会の会員でもありまして、先ほど佐藤先生に個人的にお話をし たのですが、ここで少し違う質問をさせていただきたいと思います。妊婦さんの体内に おります胎児に対して、妊婦さんがマグロを食べたときに相当の影響がある。例えば 60 gがどうのと言っていますけれども、確かに個々のマグロの数値というのはいろいろ とあります。今まで有史以来、日本人は縄文時代からマグロを食べてきていまして、皆 さんはそれをずっと引き継いでいるわけです。  では、それなりのものが出たのかと言えば、先ほどの野末さんと同じようなことにも なりますけれども、それは一応こちらに置きまして妊婦さんの話になりますが、妊婦さ んが食べたときに相当の影響があるというのは、子どもが成長するために脳神経細胞が 増えていくときにメチル水銀が脳神経細胞のアポドーシスをするということだと思うん ですが、中枢神経を侵してしまう。ですが、それには相当の量のメチル水銀なり、モノ 水銀が必要だと思います。  そこで佐藤先生にお聞きしたいのですが、その辺はどの程度、先生がWHOのこれだ と10から20と言われていますけれども、ではそれ以上だったらアポドーシスは相当影響 があるのか、ひとつお願いします。 ○佐藤教授  大変議論が混乱しているようですけれども、WHOが出したのはイラクのリスク評価 をして、子どもが例えば18か月で歩くかどうかを見たときに、それに遅れがあるかどう かということで判断して、10から20 ppmで5%のそういうリスクがありますよという判 断だろうと思います。  では、そういう元気な子たちからサンプルを取るわけにはいかない。それこそ科学は 冷たいと言われるのでそんなことはできませんけれども、脳を調べたら神経細胞が死ん でいるかというとそんなことはないと思います。神経細胞が死んで水俣病のようなこと が起こるのは、多分1けた2けた違うレベルの話だろうと私は思います。ですから、私 が先ほど申し上げたのは量が問題なのであるということだと思います。  それから少し付け加えさせていただきますけれども、私の講演を聞かれて誤解があっ たようです。フェローは確かに木がないのですが、木がないのは自然条件が厳しいから なんです。この間も行って参りましたけれども、フェローは文化水準とか生活の水準か らいくとデンマーク本土と全然変わりません。ちょっと遅れているところのような御発 言がありましたが、そんなことはございません。  それから、セイシェルもアフリカで一番豊かな国です。私も2度ほど訪れたことがあ りますけれども、生活の水準から言っても本当に豊かなところで、日本の東京と比べれ ばちょっと違うかなという感じはしますけれども、立派な国で、飛行機会社も自前のも のを持っているような国です。ちょっと私の講演で誤解されると困るので、フェローの 島民のため、それからセイシェルの国民のために付け加えさせていただきました。 ○中垣課長  御質問いただきましたので、それに答えさせていただきたいと思います。  まず、マグロの件で畜養マグロ、天然マグロのデータというものが1つございました けれども、これは水産庁のホームページ、厚生労働省のホームページにその大きさも含 め、測定部位も含め、載っておりますから御参照いただければと思います。  また、クジラにつきましても厚生労働省のホームページに昨年の審議会で使った資料 がそのまま載っていると思います。  また、暫定規制値がクジラに適用されるかどうかという議論がございました。暫定規 制値は魚というものに対象を絞っておりますので、そういう意味から申し上げますと暫 定規制の対象とはしておりません。 ○参加者2  PCBの対策の中でPCBの基準がありますね。PCBの基準の中には魚介類対策の 中にクジラは入っています。水銀の方には入らないんですか。 ○中垣課長  これはしゃくし定規なことを申し上げますと、通知の中で魚と書いてありますから、 魚以外は入らないということでございます。 ○参加者2  PCBの対策の法律の中には入っていますけれども。 ○中垣課長  PCBの条文を私は読んでいませんので何とも言えませんが、何しろ今、突然PCB と言われたわけですから。 ○参加者2  それは読んでください。それはあなたの勉強不足です。ちゃんとPCBの中には入っ ています。読んでください。  それで、これからどうしますか。入れないんですね。 ○中垣課長  今回の妊婦等への注意事項、あるいは昨年の注意事項も同じ考えからできておるわけ でございますが、リスク管理の手法として一律に基準をつくるというような手法を基本 としておるわけでございます。例えば農薬の基準、添加物の基準というようなものに代 表されるものでございます。それに対しまして、昨年のこの注意事項というのは特定の 方々に御注意を呼び掛けておるということになっておるわけでございます。  なぜこのような手法をとっているかと申し上げますと、先ほど佐藤先生の方から御紹 介いただきましたように、対象となる方々が特定されるのではないかということが基本 にあるわけでございます。それであれば、一律にその方々を覆うような基準を設定する のではなくて、その方々に御注意をしていただくというような手法を取り得るのではな いかということが考えられたところでございます。  また、諸外国におきましても、先ほどアメリカ、ヨーロッパ、いろいろな国々におき ましても同様な手法が水銀についてはとられておるわけでございます。そういう意味か ら申し上げますと、科学的根拠がある程度特定できる。対象者が特定できるというよう なことにあるのだろうと考えているわけでございます。  もちろん繰り返しになりますが、我が国におきましてはその対象者も含め、食品安全 委員会で今、御議論をいただいておるところでございますから、その結論をもって最終 的に判断したいと思っておりますが、昨年はそのような方向で判断をしていったという ことでございます。 ○参加者2  よくわからない内容なものですから、よろしいですか。  結局、暫定規制の対象魚に入るんですか。適用除外になるんですか、適用になるんで すか、どちらですか。 ○中垣課長  資料の4の質疑の問6の回答をごらんいただければと思います。問6の回答の末尾で ございますが、昭和48年の暫定規制値の対象となるかということでございますと、この 対象とはならないということでございます。 ○広瀬課長補佐  それではもう一方だけ、今まで発言されていない方でどうしてもこれだけ発言してお きたいということがございましたらどうぞ。  では、真ん中の後ろの方どうぞ。 ○参加者5  1点言いたいんですけれども、今の特定というものの中には地域なども入るのでしょ うか。  実は、30年前のマグロの調査の件がちらっと言われていたようですが、私がたまたま その調査に携わった原田まさずみ先生とお話をしたときに、毛髪検査では明らかに出て きたけれども、実際に多量に摂取する人たちと業とが重なっていたためにそれ以上の調 査が困難であって、途中で打ち切らざるを得なかったというようなことをおっしゃって いたことを覚えているんです。本人に確認されればわかると思うんですが、健康被害が 出なかったということではなくて、多分十分な結果を出せない状態もあったと思ってい ます。  例えば捕鯨漁などもそうですし、イルカ漁などもそうですが、漁をなさる方たちの食 べる量というのはある程度多いのではないかと思っていて、その人たちにとっては非常 に自分自身の持っている業の中からジレンマがあるだろうという気がするんです。もち ろん自分たちの生業ですから、それ自体をつぶすわけにはいかないということはあると 思いますけれども、1つ私が申し上げたいのは、今の時代ですぐに結果は出ないかもし れないけれども、皆、同じように消費者であり、2代、3代先にどういうような状態に なるか、まだだれもわかっていないのですから、その点で自分たちのお子さんや孫のこ とも同時に考えていただきたい。  それで、厚生労働省としてはその足かせになるようなものではなくて、むしろ風評被 害ということについてはお互いの信頼関係を持っていくというふうな形で、先ほどイク ラの方が言っていたように自主的なところでの透明性を高めて、消費者に対してこれだ け大丈夫なんですよということをむしろ積極的に言っていく。厚生労働省さんの方から は、狭めていくのではなくてきちんとした基準を示されて、注意事項についても厳しい ものを実行される方がすべてにとって将来的にいいのではないかと思います。 ○広瀬課長補佐  ありがとうございました。わかりやすく明確な形できちんとやっていくということが 重要なのではないかということだと思います。  いろいろと御意見をいただきましてありがとうございました。時間の方も大分超過し ておりますので、大変申し訳ありませんが、これで意見交換会の方を終了させていただ きたいと思います。  最後に1つお願いがございます。お手元のアンケートを是非御記入いただいて提出い ただきますようお願いいたします。言い足りなかったこと等もありましたら、是非御記 入いただければと思います。  本日は御参集いただきまして誠にありがとうございました。