平成16年4月26日(栃木県)「食品に関するリスクコミュニケーション」議事録 食品に関するリスクコミュニケーション(議事録)                         厚生労働省医薬食品局食品安全部                         平成16年4月26日(月)                         13:00〜16:30                         於:とちぎ福祉プラザ 1.開会 2.挨拶(栃木県知事(代読:栃木県保健福祉部次長兼保健福祉課長)) 3.食の安全をめぐる現状と取組について(内閣府食品安全委員会委員 小泉 直子) 4.「健康食品」の賢い選び方(独立行政法人国立健康栄養研究所理事長 田中 平三) 5.パネルディスカッション    【コーディネーター】      厚生労働省食品安全部企画情報課課長補佐        広瀬  誠    【パネリスト】      内閣府食品安全委員会委員               小泉 直子      厚生労働省大臣官房参事官               外口  崇      農林水産省消費・安全局消費者情報官補佐        片桐  薫      栃木県保健福祉部生活衛生課食品安全推進担当課長補佐  大島  徹      独立行政法人 国立健康・栄養研究所理事長        田中 平三      オイシア(株)清原工場工場長             倉持 正夫      栃木県生活協同組合連合会会長             竹内 明子 6.意見交換 7.挨拶(厚生労働省大臣官房参事官 外口 崇) 8.閉会 <司会>  ただいまから「食品に関するリスクコミュニケーション」を開催します。私は、本日 司会を務めさせていただきます栃木県保健福祉部生活衛生課、清嶋かすみと申します。 どうぞよろしくお願い申し上げます。  初めに、配付資料の確認をさせていただきます。                 (配付資料確認)  もし不足等がございましたら、事務局もしくは受付にお申し出願いたいと思います。  続きまして、簡単に本日の議事進行を紹介させていただきます。  まず、栃木県知事福田昭夫よりご挨拶を申し上げました後、基調講演として、「食の 安全性をめぐる現状と取り組みについて」というタイトルで、内閣府食品安全委員会、 小泉直子委員よりご講演いただきます。所要時間は40分程度を予定しております。  続きまして、「健康食品の賢い選び方」につきまして、独立行政法人国立健康・栄養 研究所、田中平三理事長よりご講演いただきます。所要時間はやはり40分程度を予定し ております。ここで10分間の休憩をいただき、2時35分を目途にパネルディスカッショ ンに移らせていただき、その後、全体についての意見交換を行うことにしております。 なお、会場の都合上、午後4時30分ごろには終了させていただきたいと存じますので、 あらかじめご了承いただきたいと存じます。  それでは、福田知事、よろしくお願いいたします。 <福田昭夫栃木県知事 代理 栃木県保健福祉部次長兼保健福祉課長 神野俊彦氏>  私は県の保健福祉部次長兼保健福祉課長の神野でございます。本来ならば、福田知事 が参りましてご挨拶を申し上げるところでございますが、ただいま県公館で市町村長会 議に出席しておりまして参れません。挨拶を預かってまいりましたので、代読させてい ただきます。  「食品に関するリスクコミュニケーション」開催に当たり一言ご挨拶を申し上げま す。食品の安全性に対する県民の皆様の関心が高まる中、本日、ここ宇都宮市におきま して、食品関連の事業者や消費者の方々にご参加いただき、意見を交換する機会が得ら れましたことは大変有意義なことであると考えております。開催に当たりご協力をいた だいた関係者の皆様には厚く御礼申し上げます。  申すまでもなく、食は私たちの大切な命をはぐくみ、健康な生活に欠かせないもので あり、食品の安全性を確保することは、県民が安心して生活していく上で最も重要なも のであります。しかしながら、昨今のBSEや食肉の偽装表示、さらには、鳥インフル エンザなど食品に関する問題が相次いで発生し、食品の安全性に対する消費者の不信が これまでになく高まっており、食品の生産から流通、消費に至る総合的な安全確保の取 り組みの充実が求められているところであります。  こうした状況を踏まえ、ご案内のとおり、昨年5月、食品の安全確保に向けた基本的 理念などを定めた食品安全基本法が制定され、あわせて、国民の健康の保護を図ること を目的として、食品衛生法を初め食品関連法の抜本的な改正が行われたところでありま す。  こうした中、県では、本年3月、食品安全行政を総合的に推進していくため、消費者 の視点に立ち、県民の健康保護に努めることなどを基本方針とした「とちぎ食品安全確 保指針」を策定いたしました。今後はこの指針に基づき「安全・安心な食品供給体制の 確立」「生産から消費に至る監視指導、試験検査体制の強化」「食品の安全確保のため の協働システムの構築」の3つを重点目標として、関係部局等はもとより、消費者を初 め食品関連事業者や各関係機関団体と十分に連携を図りながら、各種の施策を計画的か つ総合的に展開してまいりたいと考えておりますので、皆様のご理解とご協力をお願い いたします。  本日は、基調講演とパネルディスカッション、さらに会場の皆様を交えまして意見交 換が行われます。この機会に食の安全に関する理解を深めていただきますとともに、率 直なご意見をちょうだいしたいと存じます。県といたしましても、ご参加の皆様方のご 意見を今後の食品安全行政に反映させてまいりたいと考えておりますので、自由で活発 なご討議をしていただくようお願い申し上げましてご挨拶といたします。  平成16年4月26日 栃木県知事福田昭夫(代読)」 <司会>  どうもありがとうございました。続きまして、内閣府食品安全委員会の小泉先生よ り、「食の安全性をめぐる現状と取り組みについて」についてご講演をいただきたいと 思います。  小泉委員は、神戸大学大学院医学研究科博士課程を修了され、長年、公衆衛生学に関 する研究に携わられていらっしゃいます。最近まで兵庫医科大学公衆衛生学講座の教授 としてご教鞭をおとりになられていましたが、昨年7月に内閣府食品安全委員会の常勤 委員に就任されました。それでは、小泉先生、よろしくお願いいたします。 ○小泉委員  ご紹介ありがとうございました。私は昨年6月末まで医学部で公衆衛生学という予防 医学を担当し、学生に教えてまいりました。このたび7月1日から食の安全委員会を担 当しております。                (スライドによる説明) 『食品安全基本法』  先ほど知事代理の方が言われましたが、平成15年5月16日に参議院で成立し、5月23 日に公布され、7月1日から施行された食品安全基本法でございます。これは、国民の 健康の保護が第一であるという理念に基づいて、食の安全を見ていこうというものでご ざいます。 『新たな食品安全行政』  食品安全行政の図です。食品安全委員会は今までいろいろな食のリスクを厚生労働 省、農林水産省で評価して、管理もやっていましたが、BSE問題等の発生がございま して、リスクの科学的評価は食品安全委員会で独立して行うことになり、内閣府の中に 設立されました。今の担当大臣は小野清子大臣でございます。厚生労働省、農林水産省 と一緒になってリスクコミュニケーションをやっていき、皆様に食の安全、科学的評価 とはどういうことかわかっていただくために、きょうも開催させていただいておりま す。評価に基づいて、厚生労働省はいろいろな指定や残留基準を検討いたしますし、農 林水産省では生産時点での農薬の使い方の基準を決め、安全行政を個々に分けつつ連携 しながらやっています。それ以外に関係省庁や諸外国との連携も非常に大切で、情報収 集も行っております。 『食品安全委員会の役割』  私どもの役割といたしまして一番重要なのが、食品の健康影響評価、いわゆるリスク 評価です。リスクとは非常に難しい言葉で、日本語で「危害」という意味もございます が、危害とは、絶対に何かがあるのではなくて、食の問題についてゼロのものはないと いうことです。では、ゼロでないならどの程度なのか、健康に障害があるのかというリ スクの度合いを評価します。安全委員会としての第一義的な役割は、食の危害要因の評 価を行うこと、すなわち食を介して入ってくる可能性のある化学物質、農薬とか添加物 等、あるいは微生物の要因について、その健康に及ぼす悪影響のリスクを科学的事実に 基づいてやることでございます。この科学も日進月歩でして、今わかっているレベルで の科学的知見に基づいて客観的かつ中立公正に行うことで、生産者にも消費者にもかた よらない、科学的事実に基づいてやるということです。リスク評価の結果に基づき、必 要がある場合には、講ずべき施策について独自に評価して勧告すべき権限は有していま す。  もう一つ重要なのはリスクコミュニケーションの実施で、リスク評価の内容等に関し て消費者、食品関連事業者など関係者相互間における幅広い情報や意見の交換、すなわ ちリスクのコミュニケーションを意見交換会、ホームページ等で行います。大事なの は、交換してお互いに理解して知識を高めることであります。  緊急事態の対応といたしましては、私どもは政府の内閣府に設置されていて、危害の 拡大、再発防止等に迅速かつ適切に対応するため、国の内外からの情報収集、あるい は、事態を早急に把握しまして、関係各省への迅速な対応の要請、国民に理解しやすい 情報提供を行いますが、現実にはリスク管理問題に非常に大きなウエートがありまし て、何か起こると、地方の支所を持っている厚生労働省、農林水産省が即座に適切に対 応しますが、情報がすぐ上がってくるようになっております。 『BSEの経過』  今話題の中心のBSE問題についてご説明します。  BSEの経過ですが、1986年英国におきまして、BSE(伝達性牛海綿状脳症)が家 畜の病気として初めて認定されました。2年後に英国で、肉骨粉を与えることによって 起こったのではないかということで反すう動物への給与を停止いたしました。1989年英 国は、牛の脳、脊髄、腸等の臓器の食用を禁止いたしました。しかし、肉骨粉の約1割 をヨーロッパ等に輸出しておりましたから、1990年以降、ヨーロッパ大陸にBSEが非 常に蔓延することになりました。発見から約10年たちました1996年、英国で変異型クロ イツフェルト・ヤコブ病とBSEとの関連を発表しました。このクロイツフェルト・ヤ コブ病は、本来、人間に自然発生的に起こる病気でございます。非常に難儀で、発症す ると 100%死に至ります。プリオンで起こるのですが、臨床症状が少し違う変異型クロ イツフェルト・ヤコブ病が発生し、これがBSEと関連がある可能性を発表いたしまし た。こんなことは日本では起きないと思っておりましたところ、2001年、日本で国内初 のBSE感染牛が確認され、ここから非常に大きな問題となりまして、食品安全基本法 ができた経緯があります。2003年にカナダでBSE感染牛を確認、2003年12月24日に米 国でBSE感染牛が発見され、以後、非常に大きな問題となっております。 『臨床的兆候の発現件数の月別推移』  私どもではこれはまだ評価する段階ではないのですが、BSE問題に関与した諸外国 のトップの方々に来ていただいて情報交換をやっております。そのときに来ていただい た英国海綿状脳症諮問委員会委員長をされているDrピーター・スミス氏のスライドか ら少しお話しさせていただきます。これはBSEの発生のグラフです。英国では約18万 頭発生いたしました。肉骨粉を中止したのは1988年時点ですが、まだどんどん発生して おります。1995年に肉骨粉の哺乳類への使用を全面的に禁止してやっと下火になってき て、ピーター・スミス氏によれば毎年40%ずつ下がっているという話でございます。 『BSE感染牛の出生月別推移』  発症月を見てもわからないので、その牛がいつ生まれた時にどういう施策がとられた かのグラフです。1982年ぐらいから徐々に発生しまして、一番発生が多かったのが1988 年です。全部1月に統計をとっております。肉骨粉の使用禁止をしたのが1988年から 1989年ぐらいです。肉骨粉の使用を禁止した以降に生まれている牛がまだ発生している のは、恐らくどこかでコンタミネーションを起こしているのだろう。飼料をとめても、 どこかから混ざってきたプリオン異常蛋白によって発症があるということで、ここで初 めて肉骨粉のすべての飼料を哺乳類に与えることを使用禁止にしました。 『英国におけるvCJD死亡者数の推移』  今のはBSEで牛の病気でございますが、それが人間に起きたのが1996年に英国で報 告された変異型クロイツフェルト・ヤコブ病です。これは、発生人数の結果のグラフで す。 1995年の3人から増えてまいりまして、2000年に一番ピークを迎えまして、2003年は18 人です。これから下がるのか、横ばいなのか、多少横並びになるのかわかりませんけれ ども、徐々に下がっていく傾向を示しているのではないかと思います。英国では18万頭 以上の牛がBSEにかかり、今の時点で、英国で人にCJDが出ているのが 146名でご ざいます。生存者7名を加えて 146名なのですが、その他、フランス6名、イタリア1 名、アイルランド1名などで、トータル 156名おられます。ほとんどが英国での発生で す。しかもこの当時の発生者は、危険部位を食べていたときの発生者でございます。フ ランスで 900頭ぐらいBSEが出ております。6名も出たら多いではないかと思われる かもしれませんが、英国で暮らしていた人がかなり含まれています。カナダ1人、米国 1人おられるのですが、それもイギリス滞在歴のある人でございまして、何百頭か出て いるドイツやフランスにおいて、本当に発生したのは数名ではないかと推測されており ます。 『英国におけるBSEとvCJD発生比較』  先ほどのBSEとバリアントタイプのCJDを重ねた図です。BSEは1989年からず っとふえてまいりまして、1992年がピークで3万 7,280頭でございます。日本の9例は このレベルで、非常に少ないです。英国はピーク時以降、徐々に下がっております。表 の折れ線グラフの人数がバリアントタイプのCJDの死亡者数で、1994年ごろから始ま りまして2000年にピークになり、徐々に下がってきていますが、BSEのピークとCJ Dによる死亡数のピークを合わせますと、恐らくこれが公衆衛生学的には潜伏期ではな いかと感じますが、ピークが8年ごとに起こってきております。英国にこれほどのバリ アントが出たことにつきましては、BSEは18万頭ではなくて70万頭とも80万頭とも言 われています。 『1986年以前に自然発生した主な伝達性海綿状脳症』  私ども食品安全委員会は人の健康の保護で、牛の病気よりむしろ人の健康問題が非常 に大切です。伝達性海綿状脳症がいろいろな動物に起こることを見てみますと、人では クロイツフェルト・ヤコブ病が1920年代に既に特定されています。全世界で 100万人に 1人の割合で出ておりまして、日本でも毎年 100人前後発生しております。自然発生 で、今のところ予防することができません。世界的にも同じような割合で出ておりま す。  その内訳を見てみますと、原因不明で自然発生的に出てくる孤発性が85%、家族性が 15%以下、医原性が1%以下です。医原性は医療行為によって起こるもので、世界中で 約 150名います。医原性が起こった理由は、脳手術の後に非常に高価な乾燥硬膜を使う わけですが、日本は医療制度が非常に発達しているものですから、これを使って手術を 受ける人が非常に多かったわけです。世界の 150人のうち約3分の2は日本で発生しま した。医療制度が裏目に出てクロイツフェルト・ヤコブ病が起こっているわけです。  もう一つは、パプアニューギニアで人肉を食べる習慣によって、クールーが起こって います。しかし、もう食べないようにということで近年ではまれになってきております が、潜伏期が長く、30年ということで、たまに報告がございます。  羊から発生したのではないかと思いますが、英国はBSEが発生した理由が本当はつ かめていません。かかっている動物を飼料にして、それが循環してしまったのではない かと言っておられましたが、羊にはスクレイピーという異常プリオン蛋白によって起こ る病気がございまして、広く分布しております。しかし、なぜかオーストラリア、ニュ ージーランド、アルゼンチンにはないと話しておられました。  ミュールジカは野生シカですが、慢性消耗病という異常プリオン蛋白で起こる病気が ございまして、北アメリカ方面でシカで狩猟を立てている人たちにとっては非常に大き な問題になっていると聞いております。  先ほどからプリオンの話をしておりますが、プリオンは蛋白です。我々が感染といい ますと、大抵ウイルスとか細菌を思い浮かべます。蛋白がどうして感染性を持つのか最 初は非常にわからなくて、異常蛋白によって感染が広がっていくのを見つけた人はノー ベル賞をもらいました。蛋白が異常化して起こるのが伝達性海綿状脳症でございます。 『英国における外来動物の伝達性海綿状脳症』  スミスさんは、いろいろな動物を調べたと話していました。2002年3月現在いろいろ な動物に発症しておりますが、おもしろいことにネコ科が多く、ネコが89頭出ておりま す。しかし、イヌは1匹も出ていません。ペットフードに加えたとすれば、ネコもイヌ も一緒だろうと思います。ネコは89頭も出ているのに、イヌには1匹も出ていないの は、種の特異性で、感受性が非常に違うということです。例えばBSEならば、牛は何 十万頭と発症するけれども、人が危険部位を食べても 150名ぐらいだということです。 ネコ科はかかりやすく、イヌは全くかからないことが発見されております。 『英国におけるvCJDによる年齢層別・性別累積死亡率』  バリアントタイプのCJDでの場合です。先ほど言った孤発型のCJDと違うところ はどこかといいますと、発症年齢でございます。大体20歳から29歳がピークで、若い人 に発症し、男性・女性同じです。うつ的状態、不安、無欲状態などの精神症状を伴い、 あるいは痛みを伴う感覚障害を起こし、本来のCJDと違った臨床症状を示しておりま す。 『英国における孤発性CJDによる年齢層別・性別死亡率』  「英国における孤発性CJDによる年齢層別・性別死亡率」のグラフですが、これが 本来 100万人に1人あるクロイツフェルト・ヤコブ病で、ほとんどが高齢者です。50歳 代以降に発症するものです。バリアントタイプのCJDは孤発性CJDと少し違うの で、バリアントという名前がついております。 『BSE感染から発症まで』  日本ではいろいろな検査をやっておりますが、私は大学院を卒業しまして、重金属に ついて研究してまいりました。特にカドミウムについて研究してきたのですが、私が卒 業した当時はppmオーダー、いわゆる 100万分の1の濃度ははかれたのです。1円 玉を 100万円置いて、その中で色のついた1個の1円玉を探すレベルが私が卒業した当 時でございましたが、今は1兆円の1円玉を積み上げた中で色のついた1円玉を見つけ るぐらいのレベルで測定でき、分析する技術が非常に発達してきております。しかし、 分析技術の高いレベルであっても、BSEは検査しても難しい。子牛のときに感染して いるらしいのですが、非常に潜伏期間が長いわけです。1ミリ1日という話もあります が、OIEの小澤先生は4年と言われますが、発症するのに平均5年以上かかります。 発症して検査で見つかるのは、恐らく発症を起点としてさかのぼって6カ月です。検査 をしても発症前6カ月ぐらいしか陽性と出てこないことがわかっております。ですか ら、生まれて発症するまでの数年間、例えば5年で発症したとしますと、4年6カ月は 検査しても摘発不可能であるわけです。脳幹中の一番感度のいいところを探しても、6 カ月だけが検出可能であります。 『BSE検査と発病時期の関係』  OIE、いわゆる国際獣疫局の小澤先生に最近来ていただいてご講演いただいたスラ イドからですが、異常プリオン蛋白は感染してもしばらくは非常に少ない状態で、発症 間際に上がってまいります。ここで発症したとしますと、最大6カ月間だけが検出可能 であります。日本が今やっておりますELISA法の検査は、敏感度が高いので疑陽性 が起こる確率は高いですが、検出することができます。ヨーロッパでやっている免疫組 織化学検査は、ELISA法の約1カ月後にやっとわかります。空胞の検出は、切片を 切って病理学的に見て空胞があるかどうかです。空気の穴がたくさんあいているかどう かの検出はELISA法による検出の約3カ月後にわかります。とにかく発症6カ月間 しか今の検査方法では見つかりません。 『1996年3月英国海綿状脳症諮問機関がBSEとvCJDの関連性を示唆』  人の問題では、肉骨粉に異常プリオン蛋白が含まれているとしますと、これがもし牛 に取り込まれた場合は海綿状脳症になりますが、危険部位以外は全く問題はありませ ん。特定危険部位は脳とか脊髄で、これを持っているとBSEが発生します。英国が約 18万頭、フランスが約 900頭、アイルランドが 1,353頭などで、今でもぼちぼち報告が ありまして一、二頭ずつふえております。この危険部位を摂取した人が変異型CJDに なる確率は、非常に少ないです。数十万頭のBSEの中で、起こった人が、英国が 146 人、フランスが6人といったように、非常に発生が低い。日本はBSEが11頭としまし ても、人間のバリアントCJDになる確率は0.06とか0.04とかで、1人発生することは ほとんどないという計算が各先生方によってなされております。 『BSE感染牛の危険部位』  BSEの感染危険部位はどうかといいますと、脳が約3分の2で、脳に66.7%、脊髄 に25.6%です。ですから脳と脊髄を取るだけで92.3%の危険性は取り払われるわけで す。背根神経節、いわゆる神経の中から出ていくもとのところは 3.8%です。眼は脳と 一緒で、眼はわずかです。扁桃はリンパ節領域です。最初に起こってくるのは、小腸の 後ろの部分で、回腸遠位部という小腸の一部ですが、ここにまず感染するらしく、小腸 のうちの最後の2メートル程度のところの危険性は 3.3%でございます。 『OIEが安全と考えているもの』  では、何が危険なのか。皆さんには非常に不安が起こっておりますが、現実には日本 ではまだ1人も出ていないのです。OIEが安全と考えているものは、危険部位以外の 舌、筋肉、脂肪、心臓、肝臓などの臓器です。骨抜き肉や、ミルクと乳製品、皮からつ くられたゼラチンは安全です。このゼラチンは医薬品のカプセルに使われたりするので 心配されていますが、これも安全です。蛋白を含まない獣脂、燐酸石灰、皮革、生皮、 精液、受精卵も安全です。ほかの国の方で、血液を通して感染したかもしれない人が1 人います。もちろん注射で投与した場合には起こるかもしれませんが、OIEの小澤先 生は今のところ血液は大丈夫だと言われました。 『BSEに関する安全・安心の確保のための措置』  BSEに関する安全・安心のための措置は各国によってばらばらでございます。米国 で昨年12月に出まして、急遽出してきた方針が、「BSEに関する安全・安心の確保の ための措置」です。検査してBSEが出たときに、その肉がどうされたのか、行き先が 全くわかりませんでした。日本ならば、検査結果が出るまでは絶対に保留にしてそこに 置いてあるのですが、アメリカは市場に回してしまっていたのです。そこで、30カ月齢 以上の牛の危険部位は取り除きます、検査したら必ず置いておいて検査結果が出るまで 市場には回しませんと打ち出しました。カナダも同じです。EUは非常に日本に近くて 厳しゅうございます。特定部位の取り扱いは、12カ月齢以上の牛の頭部や腸類は除去し て焼却します。屠畜場による検査は30カ月齢以上でやっています。特にフランス、ドイ ツ、スペインでは、24カ月齢以上で検査しましょうといっているのですが、つい数日前 に、フランスは24カ月以上の月齢を7月1日から30カ月に上げると決定しております。 英国では、今まで30カ月齢以上の牛は全部食に回さないとしていたのですが、費用が高 い等ありまして、見直そうという話をしておられました。フランスは30カ月に引き上げ るという話も既に決定したようでございます。しかし、日本は、すべての牛を検出でき ない期間についても検査しています。日本の牛は、乳牛で生まれた雄は24カ月までにほ とんど屠殺されますし、和牛も30カ月未満でほとんど屠場に行きますので、一番問題な のは乳牛です。乳牛で数年以上いるものだけが検査で引っかかる可能性が高いのです が、今のところは若い牛も年寄りの牛もすべて検査している状況でございます。死亡牛 については、今年4月から全頭検査をするようになりました。その他、肉骨粉の取り扱 い等については、非常に厳しくやっているところもありますし、それぞれの国でいろい ろでございます。 『BSEのヒトへの影響』  私がまとめましたが、BSEはあくまでも牛の病気でございまして、人へどう影響す るかを我々が医師として見ると、自然発症的なCJDの方が非常に危険性は高いわけで す。 毎年 120人も出ているけれども、日本ではBSEからバリアントのCJDが出る可能性 は1人未満であろうと推測されています。これは牛の病気で、種の感受性の違いから人 には非常に感染しにくいのです。いわゆる種の壁と言われているように、ネコは89頭、 イヌはかからないとか、いろいろあります。  本来草食動物である牛に肉骨粉を与えたことによって発生したらしいので、人為的に 発生した疾患ですから、飼料に肉骨粉を混ぜないで原因をきっちり絶てば、時間はかか ってもなくなる病気であると思います。 『BSE感染牛対策で重要なこと』  感染牛の対策で大切なことは、危険部位を除去し、バリアントCJDの発生を防止す ることです。日本は今のところ11頭ですから発生する可能性は非常に少ないと思います が、ゼロではありません。CJDの発生の確率を推定することも大切です。  BSEの検査が今後どうあるべきかは、BSEの検査には今いろいろな方法がありま すが、感度のいい方法はどれなのか、もっと早いうちに見つけられないかなど、すべて の問題について検査手法を考えていく必要があるだろうと思います。  サーベイランスはどの程度牛が発症していくかで、BSEの発生状況を推計する必要 があると思います。  そして検査に要する費用を考慮することと、除去に要する費用、労力、作業者の健康 影響を考慮することが大切です。背根神経節をとる作業者は非常に大変です。屠場に行 きまして非常に鋭い刃物で1頭ずつ取り除く作業を見ましたときに、脂でつるつるして おりますので、手を滑らせてけがをするのではないかと懸念いたしました。産業保健上 の問題が起こるのではないかと感じました。日本は、全頭検査で毎年40億円、危険部位 の除去で 200億円と推測されていますが、フランスでは今まで使ったお金が約 1,000億 円という試算が最近出されております。そういったことから、人への健康影響が本当に 無視できる程度であるならば、私自身はコスト・ベネフィットも重要な検討項目ではな いかと思っております。『高病原性鳥インフルエンザのトリおよびヒトへの影響』  鳥のインフルエンザについてお話しいたします。鶏、アヒル、七面鳥、ウズラ等が感 染して、神経症状、呼吸器症状、消火器症状を呈します。感染経路はよくわかりませ ん。鳥の排泄物の汚染とか非常に高濃度曝露しない限り起きない病気でありまして、人 への感染がベトナムで起きているのは、塵埃の中で呼吸器を通して感染したのだと思い ます。生きた鳥を扱うハイリスクグループの人が気道感染し、死亡した報告がされてい ます。鶏卵、鶏肉の経口摂取により人が感染することは全く報告されておりません。早 く言えば、安全性は非常に高いと言えます。 『鳥インフルエンザウイルスの人への感染』  なぜ人間にうつらないかというと、鳥から人への感染の受容体がないからです。ウイ ルスが入ってきたときに、ぴたっとくっつく鍵穴がないのです。生きた感染鶏との密接 な接触がない限りは、人は受容体を持っていないので感染しません。獣医さんのお話で すが、鳥、人から豚で新型ウイルスがつくられる可能性はあるのですが、この確率は今 のところ極めて低く、人型ウイルスには今のところ変異していません。  では、人にうつる場合はどうかというと、鳥と人の受容体の両方を豚は持っていま す。豚の中で鳥と人とが混じって異常な新型ウイルスが発生されたら起こります。しか し、今のところ低い。新型ウイルスが人に感染する確率も低いです。豚から分離されて はおりますが、人型の変異は今のところしていないということです。 『鳥インフルエンザ』  鍵穴の図です。突起と人間の受容体が結びついて発症するわけです。ところが、これ に合うものを人は持たず、鳥だけが持っていて、HA型とかNA型で分類されていま す。 『渡り鳥が鳥インフルエンザウイルスを運ぶのか』  原因はどうかといいますと、カモではないかということですが、これも全くわかって おりません。シベリアとアラスカに営巣地がありますが、行き来するときに運んだのも しれません。 『養鶏産業』  養鶏産業は採卵系と肉用系がありまして、流通過程は衛生に考慮し、洗って消毒して 市場に出されているので、非常に安全性は高いと思います。 『鶏肉・鶏卵の安全性に関する食品安全委員会の考え方』  4府省で「国民の皆様へ」が出されて、非常に安全であるとインターネットに載って おります。なぜ安全かというと、鳥インフルエンザがたとえ食品についたとしても、非 常に酸に弱いため、胃酸で不活化されてしまいます。人の細胞に入り込むための受容体 は鳥のものとは全く違います。通常の調理温度で容易に死滅しますから、もし心配であ れば加熱すれば全く大丈夫です。実際には人に発症したことはありません。よほどの濃 厚曝露がない限り起きません。 『予防対策』  今の予防対策は、疫学調査をやるとかいろいろありますが、今のところ重要なのは摘 発・淘汰です。先進諸国では、それが見つかれば摘発して、すべて鳥は処分することに ウエートが置かれております。 『鳥インフルエンザのワクチン(不活性化)』  ワクチンについては、ワクチンを摂取された鶏肉、卵類は安全ですが、ワクチンは鳥 の発症予防であって、決してウイルスを死滅させるものではありません。少しウイルス を持っているので、それを排泄して、逆に非常に危険であると書いてあります。全国的 に流行のきざしがあるときには使用しなければ仕方がないですが、今のところは自然淘 汰・摘発淘汰でいくのがいいだろうということで、養鶏先進国は使用していません。 『食品の安全・安心の多様化・複雑化』  食の安全・安心については、非常に多様化してまいりました。新規農薬の開発に関し ては、利便性を追求します。効率よく生産物をつくろうとした場合に、農薬を適当に使 うということで開発されてまいりましたし、添加物によって非常に保存性が高くなりま した。しかし、もちろん人に害がないレベルで使わなければいけません。グローバル化 によって輸入食品が非常に増加してきたことで、新たな危害要因として、人獣共通感染 症から人に感染するかもしれないことも想定しておかないといけないし、あるいは、変 異・常在菌による食中毒、O-157で突然変異を起こしたものとか、本来は常在菌として 抵抗性があったものに対して感染するということがあります。先ほど言いましたよう に、今の分析技術で分析すればすべて検出されますが、出てきたからといって危険なの かどうかをしっかりと見据えないといけません。検出感度が上昇して、ゼロは非常に非 現実的になってきたわけです。 『食品の安全性とリスクの関係』  リスクは少ない方が安全性が高いのですが、我々は食中毒を起こしても、それに対応 してやっています。許容できないリスクについて、何とか考えないといけないわけで す。 『2002年の食中毒』  「2002年の食中毒」です。食中毒は現実に健康被害が起こっているものでありまし て、毎年 1,000件前後、患者数は3万人前後です。死者は普通は数人ですが、このとき は多くて20人近く出ました。 『アマメシバを大量長期に摂取させることが可能な粉末・錠剤等の加工食品』  健康食品については次の田中先生がお話しなさいますが、健康食品は適切にとってい ればいいのですが、粉末で7倍ぐらい食べた人が閉塞性細気管支炎を発症しました。 『食品安全委員会の今後の課題』  今後の課題ですが、BSEの問題についても、今後いろいろなことを解明していかな いといけません。遺伝子組みかえ食品の安全性とか、大規模発生の懸念のある食中毒、 人獣共通感染症の人への影響、規格・基準の国際化と健康影響の関係、抗菌性動物医薬 品の問題、いわゆる健康食品など、種々の食品についての問題を、我々はやっていかな いといけないと考えております。ご清聴どうもありがとうございました。 <司会>  どうもありがとうございました。  続きまして、独立行政法人国立健康・栄養研究所、田中先生より、「健康食品の賢い 選び方」についてお話しいただきます。  田中先生は、大阪市立大学医学部をご卒業、博士号を取得されました後、東京医科歯 科大学の教授をなされまして、その後、国立健康・栄養研究所成人健康・栄養部長をさ れております。2001年3月、独立行政法人国立健康・栄養研究所理事長に就任され、現 在に至っております。また、厚生労働省薬事・食品衛生審議会委員にも任命されてお り、現在、新開発食品調査部会長をされております。  それでは、先生、よろしくお願いいたします。               「健康食品の賢い選び方」 ○田中理事長  皆さん、こんにちは。ただいま紹介にあずかりました独立行政法人国立健康・栄養研 究所の理事長を務めております田中でございます。よろしくお願いします。                (スライドによる説明) 『関与成分からみた健康食品』  健康食品とは何か。「関与成分からみた健康食品」のところで、関与成分という言い 方をしておりますが、医薬品の場合は有効成分とか薬効成分といいますが、その言葉は 食品には使うことはできません。何らかの健康にかかわる成分ということであります。  栄養素は、蛋白、脂質、炭水化物、ミネラル、ビタミンといったもので、人間が生き ていく上で絶対に必要なものであり、健康を維持していくときにも必要であり、その中 のいずれかが欠乏状態に陥りますと欠乏症という病気が起こってきます。栄養素として の機能を示すもの、例えば蛋白ですと体内でアミノ酸に分解され血や肉となっていく材 料です。 生きていく上で必要なものであります。栄養素を関与成分とした健康食品がありまし て、現在は栄養機能食品として厚生労働省でオーソライズしている健康食品でありま す。  栄養素でも、栄養素機能以外の働きを持つものもあります。皆さん方も聞かれたこと があると思いますが、ビタミンCは抗酸化作用を持っております。体内のコレステロー ルが酸化されて動脈壁の中でふえていきますと、動脈硬化が起こったり、あるいは、癌 が起こる場合もありますが、その酸化を防ぐ作用を持つということで、それも健康食品 になっております。  非栄養素は、栄養素でない成分です。1つは、難消化性炭水化物です。これは簡単に 言いますと食物繊維で、今の特定保健用食品の半数がこれです。難消化性デキストリン とかオリゴ糖などは皆さんも聞かれたことがあると思います。  もう一つは植物性化学物質(フィトケミカルズ)ですが、いろいろなものがありま す。よく聞かれるのはフラボノイド、例えば大豆の中に含まれているイソフラボンで す。これは生きていく上で絶対に必要なものではないのですが、多くの植物の中に含ま れていて、種々の生理作用を営んでいます。  特殊成分は生薬等由来のものですが、作用が穏やかで副作用のないものは、現在は 176種類ぐらいだと思いますが、医薬品から外されまして食品として売ってもいいとな っています。歴史的に見ますと、生薬由来の特殊成分は有名であります。わかりやすい 言い方をしますと、例えばアスピリンは、解熱剤として非常に長い間使われているもの であります。昔、マラリアが流行している地域に、青々と茂っているヤナギのような木 があったそうです。学者が、マラリアがはやっているところに何故生き生きと生えてい るのだろう、ひょっとしたらマラリアにかからない物質があるのかもしれないと調べて いったところ、最終的にはアスピリンに至ったという話があります。アスピリンは医薬 品ですが、今言いましたように、働きが穏やかで副作用がない自然界での生薬的なもの は、植物中の常成分に対して特殊成分という言い方をしておりますが、そういう健康食 品があります。  多種成分は、「いわゆる健康食品」でありまして、これにはいろいろな成分が入って おります。栄養素ももちろん入っています。非栄養素も、時には特殊成分も含まれてい ます。しかし、どれが効くか明確でないものもありますし、相互作用によるものもあり ます。とにかく種々の成分が入っているものが健康食品になっております。皆さんも聞 かれたことがあると思いますが、例えばアセロラ、プルーン、プロポリス、ロイヤルゼ リー、ニガリなどです。それらの多種成分が、「いわゆる健康食品」としてあります。  発酵微生物等はプロバイオティクスといっております。難消化性炭水化物と作用的に はよく似ておりますが、これは乳酸菌やビフィズス菌といった細菌の製品であります。 健康食品に関与している成分は、大きくこの5つに分類することができます。 『保健機能を期待させる食品の現状』  「保健機能を期待させる食品の現状」すなわち、「健康食品」で問題となっているこ とをお話ししたいと思います。まず、期待させる作用に科学的根拠がないものが多いと いうことです。。試験内の研究や動物実験のデータをそのまま即座に人間に持っていこ うとしているものもあります。さらに、末期癌の手おくれだと言われたけれども、○○ キノコを食べたら治ったという体験談、また、某国立研究所の理事長がいいと言ったと いうような偉い人の話は怪しいです。  また、原材料のイメージのみを前面に出して、イメージ的に図とか写真で示すことも あります。  価格と効果が一致しません。日本人の弱いところで、東大のイチョウ並木から拾って きたイチョウの葉っぱを乾燥させてこねたものは、原価でいえばただですが、1錠 5,000円だと買う人が多いようです。しかし、1円だと買わないらしいです。  品質にもさまざまな問題があります。中には、関節リウマチに効いたものがあって、 調べてみると、実際はステロイドホルモンのような医薬品が添加されているものがあり ます。それらが今問題になっていることであります。 『誇大広告にだまされないように』  まず、いわゆる誇大広告にだまされないでくださ い。癌が治ったとか、あるいは、長嶋さんも脳卒中になっておられますが、脳卒中は左 半身や右半身が麻痺するわけですが、それを食べればぴんぴん歩けるようになったなど の誇大広告は、科学的根拠は全くありません。もしそういうものがあれば、医薬品であ るべきです。末期癌が治る、脳卒中の麻痺が治る、中にはIQが上がるという話があり ますが、それであれば医薬品です。これらの話のものが食品で売っているのはおかしい と思うのが一番賢いわけです。  医薬品と健康食品は、法律的な問題もありまして、明確に区別することはできませ ん。医薬品と通常の食品の間にあるのは事実ですが、その境界線は必ずしも明確ではあ りません。わかりやすい言い方で区別しますと、数日以内に顕著な効果が出現してくる ものが医薬品です。健康食品は、数カ月してから穏やかな効果が出現してきます。穏や かな効果とは関西弁で言うと「ぼちぼち」です。厳密に言うと、その程度の差しかあり ません。 『保健機能食品の名称』  そこで、厚生労働省では、たくさんある健康食品の中から、科学的根拠があって有効 性が認められ、かつ、副作用のないものを保健機能食品としてオーソライズしておりま す。「保健機能食品の名称」で、現時点では医薬品と一般食品の間に保健機能食品が入 っております。1つとして栄養機能食品があります。これは何かと言いますと、ビタミ ンとミネラルであります。これは作用機序がわかっております。欠乏症に対してはドラ マチックな効果があるのは事実です。これを栄養機能食品と言っております。形は薬と かわりませんで、錠剤やカプセルです。極端な言い方をしますと、同じものを医薬品と して売ってもオーケーですし、栄養機能食品として売ってもオーケーです。医薬品で売 る場合には、明確に病気の名前を書くことができますし、病気の予防や治療や診断にか かわる表示をすることができるわけですが、栄養機能食品の場合は、病気の予防、治 療、診断などを表示できませんが、定められた含有量を守ったものであると、栄養素の 機能について触れることができます。そういったことで、なかなか難しいかもしれませ んが、栄養機能食品があります。 『保健効果に関連した食品等』  もう一つは、特定保健用食品で、特保と通常言われておりますが、皆さん方もマーク を見たことがあるかと思います。商品を一つ一つ審査します。膨大なデータを調べて本 当に効くのかどうかを見て、かつ安全であるかどうかを見て、よしとなればマークをつ けて、保健に関する表示をすることができるものです。これを特定保健用食品といって おります。現在、科学的根拠に基づいて有効性が認められているのは以上の2つです。  「健康食品」の選び方を一言で言いますと、「栄養機能食品もしくは特定保健用食品 を選んでください。」であります。  特定保健用食品と栄養機能食品以外に、もう一つマークのついたものがあります。こ れは日本健康・栄養食品協会が自主的に決めているものですが、これは品質が保証され ているものであって、有効性を保証したものではありません。特定保健用食品と栄養機 能食品は有効性と安全性を保証したものであります。  先ほどイチョウの葉っぱのことを言いましたが、イチョウの葉っぱのエキスはよく売 られておりますし、ヨーロッパでは医薬品として販売されているものであります。この エキスに有効成分はどれぐらい入っていなければならないか、また、イチョウの葉っぱ には有害な物質がありますから、有害な物質は何%以下に抑えていなければならないな どの規格を決めて品質を保証しているものであります。 『特定保健用食品が創設された背景』  特定保健用食品が創設された背景の一つは、食品分野における研究の進歩です。機能 性食品という言葉を聞かれたと思いますが、これは1980年代前半に日本で盛んに研究さ れ、世界でも機能性食品(ファンクショナルフード)と言われてきたいきさつがありま す。その研究が日本で非常に進歩していきました。日本は高齢化というよりも高齢社会 であります。生活習慣病の予防から、保健作用を有する食品の活用をしていきたいので すが、いろいろ問題点が起こってきました。そこで、食品の選択における不正確あるい は非科学的な情報の混乱防止のため、国が科学的根拠に基づく情報提供を積極的に行う 必要があったわけです。  つまり、栄養機能食品と特定保健用商品は、数ある健康食品の中で科学的根拠に基づ いて有効性と安全性が保証されたものですから、使うならばこれをお選びくださいとい う意味です。これをどんどん食べなさいと奨励しているのでは決してありません。 『栄養機能食品』  栄養機能食品について触れますが、現在、ビタミン12個とミネラル5つが認められて おります。今の日本人女性はダイエットが好きで、やせている人ほどやせたいと思うと ころが日本女性の不思議なところであります。日本は、太っている人よりもやせている 人がふえてきている唯一の先進国として有名であります。どこの国でも、年をとってい くと太っていくのが普通ですが、日本の若い女性はダイエットをします。女性とか高齢 者とか独居者などで、栄養素補給の必要な人がいます。私ども夫婦も高齢者ですので、 家内も毎日食事をつくるのが嫌だと言います。たまにはインスタントラーメンで済ませ るとか、残り物のご飯と漬物で食べてしまうとなると、栄養バランスが崩れてきます。 きょうは私より若い人ばかりですけれども、高齢化を迎えていく時代であります。その ときに、栄養機能食品をとるのは悪いことではない、とらないよりはましという位置づ けにしてほしいと思います。栄養機能食品だけを食べていたら大丈夫、ということでは ないわけです。 『表示の実例、ビタミンA』  薬と違って、栄養機能食品としてどういう表示がされているかです。例えば、ビタミ ンAについてお話ししますと、ここに1字1句たがわず表示せよと指示されておりま す。ビタミンAは夜間の視力の維持を助ける栄養素ですと書いてあります。もう一つ は、ビタミンAは、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素ですというわけです。ビタミ ンAの欠乏症は、皆さん方ご存じのように夜盲症です。例えば、外の明るい場所に行く と、部屋に入ってきてしばらくは顔が見えづらいですが、少しするとよく見えてきま す。それを暗順応といいます。ところが、しばらくしても見えないことがビタミンA不 足のときに起こってくるわけですが、それが書いてあります。注意喚起表示として、本 品は多量摂取より疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。1日の 摂取目安量を守ってください。妊娠3カ月以内または妊娠を希望する女性は過剰摂取に ならないよう注意してくださいとあります。一定量のビタミン、ミネラルの入っている ものについては、自由に販売してもよろしいが、栄養素の機能について表示することに なっております。そのほかの食品はできないことになっています。 『栄養機能食品の表示に関する問題』  だまされないために注意しておきたいと思いますし、現在、厚生労働省の検討会でも 消費者が一番嫌っている問題です。例えば、○○エキスが入っていて、これを売りたい とします。仮にこれは骨粗鬆症の予防の可能性があるというレベルのものであったとし ます。そこへカルシウムやビタミンDを入れておいて、栄養機能性食品と表示している ものがあります。厚生労働省は、○○エキスを栄養機能食品としてオーソライズしてい るのでは決してないわけです。このような○○エキスにビタミンD、カルシウムなどを 一定量入れておいて、栄養機能食品と表示していることが、大きな食品会社の商品でも あります。これにはだまされないでください。決して○○エキスをオーソライズしてい るのではありません。これが栄養機能食品で大きく問題になっている点であります。 『現行において認められている主な表示内容(例)と保健機能成分』  特定保健用食品とはどういうものかということですが、現在、7つの表示が認められ ております。表示内容は、お腹の調子を整える食品です、と。平たく言えば便秘にいい のですが、便秘という言葉は食品には使えません。これには食物繊維や難消化性炭水化 物、ビフィズス菌とか乳酸菌があります。  血圧が高めの方に適する食品とか血圧が気になる方のための食品という表示であっ て、高血圧のための食品とは表示することはできません。病気の名前、予防、診断、治 療については食品には使えないからであります。血圧、コレステロール、血糖などにつ いては、手おくれになる可能性があると医者が心配しております。血圧が高いと言われ たときにこの物をとっていたために血圧がうまくコントロールできなくて、脳卒中や心 臓病になる可能性もあり得るわけです。皆さんは血圧が高いと言われたら何をします か。できるだけ薄味にするとか、運動をやられますね。それと同じ意味で特定保健用食 品を使わないといけません。しかし、血圧が高い、血中コレステロールが高い、血糖値 が高いなどのときには、やはり、まず、主治医のもとで治療しなければなりません。  科学的根拠に基づいて、実際に保健作用が認められておりますし、安全なものとして 認められているものが、先ほどの「万歳マーク」のついた特定保健用食品です。 『健康食品が問題となった過去の事例』  安全性の問題ですが、健康食品が問題となった事例はいろいろ出てきております。先 ほどありましたアマメシバは閉塞性細気管支炎に関係します。これはいわば難病の一つ です。 『国立健康・栄養研究所ホームページ』  私どもの研究所では、健康食品の情報を共有していこうということで、ホームページ で健康食品の安全性と有効性の情報を得ることができます。健康食品につきましては、 その有効性はどれぐらいのレベルであるのか、安全性はどれぐらいのレベルであるの か、また、メカニズムとしてなぜその効き目があるのかという情報を得られます。もう 一つ重要なことは、他の一般の食品とか、健康食品とか医薬品との相互作用も起こって きますから、それらの情報も得ることができるようになっております。 『健康食品の安全性に関する情報ネットワーク構築プロジェクト』  安全性情報ネットですが、目的としては、健康食品が関係した健康障害から一般消費 者を守るためであります。栄養や食品を専門とする職業人がお互いに協力して、必要な 情報の収集、把握、蓄積を行い、専門家と消費者との間で情報を共有して活動しやすく するためのシステムであります。ネットワークシステムを利用して、NR(栄養情報担 当者)、管理栄養士、薬剤師などが栄養・食品に関する知識をさらに深め、一般消費者 に対して適切な助言や指導を行い、健全な食生活の推進が図れる体制を整えていくわけ です。 『健康食品等の情報ネットワーク構築』  わかりやすい言い方をしますと、国立健康・栄養研究所はプロジェクトチームを持っ ています。健康被害が起こったという情報があったら、栄養士と薬剤師が過半数を占め ている専門家から研究所にその情報を届けていただきます。研究所側は、専門家の意見 や文献等で調べて、何が正しいかを判断してホームページに載せます。プロジェクトチ ームは、専門家を通じて一般消費者に正しい情報を提供します。消費者は直接アプロー チもできますが、ワンクッションおいた方がより理解されやすいだろうという趣旨で二 重構造になっています。 『安全性に影響する種々の因子』  安全性に影響するいろいろな因子があるわけですが、食品ですので、成分自身に問題 がある確率は比較的低い。それより問題になってくるのは、利用方法です。例えばやせ ると書いてあると、1日1粒飲んでくださいと書いてあっても、私は早くやせたいとボ トル1本飲んでしまう人もいると聞いております。また、それを飲む人の体質的な問題 で、特にアレルギー体質の人に起こることもあります。それから品質の問題がありま す。これは先ほど言いましたように、製造過程で不純物とか有害物資が誤って入ってく ることがあります。もう一つは、意図的に医薬品などを入れることもあります。これは アトピー性皮膚炎によく効く健康食品であるといって、実際はそこにステロイドホルモ ンというホルモン薬を入れているものもあります。それから、医薬品や他の食品、他の 健康食品との相互作用に基づいて健康障害が起こってくることもあります。  健康食品はたくさんあります。先ほどアマメシバが出てきましたけれども、私も、そ れまで聞いたことがなかったので、最初は何かなと思いました。ですから、リスクコミ ュニケーション、情報を共有して提供していくことは、非常に重要です。  例えば、栃木県で○○エキスを飲んだ人に空咳が起こるようになってきたという話が あったとします。一例ぐらいだったら多分見過ごされます。今度は九州で同じ○○エキ スを飲んだら空咳が出てきた、北海道のどこかで○○エキスを飲んだら空咳が出てきた というように、数例出てきますと、私どものセンターにモニターである管理栄養士や薬 剤師からそういう情報が数例入ってきますと、これはおかしいということになり、情報 を全国へ流せるわけです。そうすれば大規模に起こってくる健康食品による健康被害を いわば流行を未然に防げる、こういうシステムであるわけです。安全性についてはいろ いろなことで起こってきますし、何がどう起こってくるかは明確でないので、専門家等 が情報を集め解析し、専門家を通じて消費者の皆さんに流していきます。きょう来てお られる皆さんが直接そのネットワークに入ることも可能であります。これはすべて無料 であります。 『医薬品成分を添加した健康食品の事例情報』  医薬品成分添加の話をしましたが、デキサメタゾンとかのステロイドは関節リウマチ に有効ですので、入っているとか、いろいろあります。医薬品の混ぜられていた実例で あります。 『健康食品の摂取と健康障害発生の因果関係を証明するための些細な危害情報の収集・ 解析と蓄積』  数例の事例が出て解析すれば未然に防げるという話であります。 『2004年3月21日朝日新聞より』  去る3月31日の朝日新聞の「キーワードの周辺」の記事で、サプリメントが取り上げ られていました。そのときに載っていた記事をそのままスライドにいたしました。  「大阪府堺市の会社員、島田賢一さん(24歳)は、約1年前からサプリメントにはま っている。頭がすっきりと感じるDHA入りの錠剤と、内蔵にいいと思う黒酢カプセル が愛用品。朝食のときに胃潰瘍などの原因になるピロリ菌を抑えるとされるLG21乳酸 菌入りのヨーグルトドリンクを流し込む。薬局の店頭に並ぶサプリメントの効能書きを 読んでいると、1時間はあっという間に過ぎる。毎月 6,000円は使っている。職場はき つい3交代制。酒、たばこもやめられない。将来の成人病が心配になってきたところ に、家族や知人の薦めもあって飲み始めた。食事は1日30品目を心がけているが、酢の 物や青魚を毎日とるのは難しい。もうサプリメントは欠かせません」  皆さんは、こういう人に会ったときに、どう相談にのってあげますか。 『某国立研究所の理事長は……』  一番最後に某国立研究所の理事長は語ると書いてありますが、私です。健康の維持・ 増進には、まず日常の食事が基本であります。さらに運動、労働、休養、睡眠、たば こ、酒なども健康の維持・増進に関係してきます。これらを適切に営むことが第一であ ります。サプリメントだけで健康になるとは考えるべきではありません。  こういう常識的なことをすぐ思い出してくださいというのが、健康食品の賢い選び方 であるということです。 『健康の保持・増進』  要するに、食事、休養、睡眠、運動、そして悪さをするものとして、たばこ、酒があ るわけです。食品だけでは健康になりませんし、健康食品においておや、こういうこと であります。  食事のことについては、「食生活指針のしおり」の3番目がポイントであります。主 食と主菜、副菜の3つをバランスよくとりましょうと。主食はご飯やパンやめん類を中 心としたものです。先進国の中で、今もなお、まがりなりにも主食を維持している国は 日本だけかもしれません。主菜は主として蛋白質源になるもので、肉類、鶏肉、卵もそ うです。日本人にとって何よりも大切なのは、魚、豆、大豆製品であります。副菜とい うのは主として野菜類であります。これはビタミン、ミネラル以外にいろいろな成分が あります。それをバランスよくとることが基本です。これを忘れては健康の維持・増進 はないわけです。  日本人は昔からの食文化をうまく維持しながら、韓国料理、中国料理、イタリア料 理、フランス料理、エスニック料理等いろいろなものをとっております。そういったバ ランスのとれた食事が日本を世界一の長寿国にしたのだ、日本をみならえと全世界の栄 養学研究者が言っております。  私が先般、大阪で講演したときに、日本人の食生活のバランスがいいのは、いいとこ どりをやってきたからであると言いましたら、たまたま歴史を勉強されている先生が手 を挙げられまして、日本人のいいとこどりの起源は聖徳太子にあると言いました。どう いうことかといいますと、「和を以って貴し」と言いつつ、当時の朝鮮半島新羅へ出兵 した人です。冠位12階制度を採用され、非常に有能な人材を登用されました。その一方 で、氏姓制度を併用されました。氏姓制度とは、門閥や貴族を世襲的に雇用していくこ とです。天皇家でありますからもちろん神道信者でありながら、仏教の興隆に努められ ました。また「日出づる処の天子、書を日没する処の天子に致す」といって、当時の大 国である隋と対等外交を唱えられたわけでありますが、遣隋使を盛んに派遣されて、隋 の最先端文化・文明を輸入されました。いいとこどりの起源は聖徳太子にあり、日本人 のすばらしい知恵が今の日本の食生活にも生きているのですと言われて、感激した次第 です。  皆さんもどうか上手に健康食品を選ばれて、バランスのとれた食事を営まれ、健康で 長生きしてくださることを祈念して私の話は終わります。どうもありがとうございまし た。 (拍手) <司会>  田中先生どうもありがとうございました。  それでは、ここで10分間の休憩を設けさせていただきたいと思います。  パネルディスカッションは午後2時45分から開始したいと思いますので、それまでに お席にお戻りくださいますようお願いいたします。                パネルディスカッション <司会>  それでは、時間となりましたので、パネルディスカッションに移らせていただきたい と思います。  パネルディスカッションにつきましては、コーディネーターに進行をお願いしたいと 思いますので、よろしくお願いいたします。 ○コーディネーター  本日、意見交換会のコーディネーターを務めさせていただきます厚生労働省医薬食品 局食品安全部企画情報課の広瀬と申します。よろしくお願いいたします。  まず、本日のパネラーのご紹介をさせていただきたいと思います。  一番右から、内閣府食品安全委員会の小泉委員でございます。  その隣が、独立行政法人国立健康・栄養研究所の田中理事長でございます。  その隣が、厚生労働省大臣官房の外口参事官でございます。  その隣が、農林水産省消費安全局消費者情報官室の片桐補佐でございます。  その隣が、栃木県保健福祉部生活衛生課食品安全推進担当課の大島課長補佐でござい ます。  事業者の代表の方にもご参加いただいておりまして、オイシア株式会社清原工場の倉 持工場長でございます。  消費者代表の方ということで栃木県生活協同組合連合会の竹内会長でございます。  本日のパネルディスカッションの進め方ですが、テーマごとに進めさせていただきた いと思います。幾つかテーマがございますので、発言いただく際には、それぞれのテー マごとに1回ずつ発言いただきたいと考えております。  また、発言の過程で会場の方にも途中ご意見を伺っていく機会を設けていきたいと考 えております。会場の方からご発言いただく場合には、手を挙げていただきますようお 願いいたします。その場合、コーディネーターの方で発言される方を指名させていただ きますので、係の者がマイクを持って伺います。そのときに、もし差し支えなければ、 職業などとお名前をおっしゃられた上でご発言をお願いしたいと思います。  テーマについては幾つかあるわけですが、きょうはまず、「食品安全行政の枠組みに ついて」「健康食品について」、その後に「リスクコミュニケーションについて」とい う形で順番に進めていきたいと思います。すべてのテーマが終わりました段階で、最後 に全体を通じてどなたからでもということで、全体の意見交換の時間を設けたいと思っ ております。  それでは、まず最初の「食品安全行政の枠組みについて」から始めさせていただきた いと思います。  まず、きょうお配りした資料の中で、横長の資料3は、今回の意見交換会に参加いた だくに当たりまして、事前に申込書の中にご意見、ご質問等があればということでご記 入いただいたものですが、この中から幾つか意見交換のテーマに取り上げさせていただ いております。  質問の内容を中央に書かせていただき、右隣に回答を一通り準備させていただいてお ります。時間の都合上、すべてのものについて意見交換の場で取り上げることは難しい かと思いますので、それにつきましては回答をお読みいただくことでご了承いただけれ ばと考えております。  それではまず最初のテーマになりますが、テーマ番号1−1、今回の食品安全行政の 枠組みという中でも、食品安全基本法の制定や食品安全委員会の設置、リスクアナリシ スの考え方等についていろいろと進められてきているわけですが、まだ一般に認知され ていないと思われます。さらなる徹底を図ってくださいというご意見が寄せられており ます。  本件につきましては、まずパネラーの方にご意見を伺ってみたいと思いますが、行政 あるいは専門家の立場で何かコメントはございませんでしょうか。  特にはよろしいでしょうか。食品安全委員会は新しい組織ということで、東京の方で は大分認知されてきているわけですが、地方ではまだ余り知られていないということが あります。私どもでは、このような機会を通じて、新しい食品行政の枠組みについて皆 さんに知っていただきたいと考えております。  もしないようでしたら、パネラーではなくて、会場の方から、例えば「食の安全の枠 組みについて」何か発言したいという方がございましたら挙手いただければと思いま す。  特によろしいでしょうか。  では、テーマも幾つかございますので先に次のテーマに進んでいきたいと思います。  2つ目のテーマということで、「健康食品について」に移していきたいと思います。  健康食品については、テーマ番号2−1で、健康食品といっても非常に幅が広過ぎ て、その上商品もピンからキリまである。いかがわしいものも多いが、どのようにとら えているのか、行政として線引きはどう考えているのか詳しく伺いたいということでし た。  回答文は右のようなことで書かせていただいております。  これにつきましてパネラーの方からコメントをいただきたいと思いますが、発言され る方はいらっしゃいますでしょうか。消費者の方ということで竹内会長、健康食品の問 題についてここがということがございますでしょうか。 ○竹内会長  この問題は非常に私たち消費者としては難しいと思います。なぜかといいますと、い ろいろな所で売られておりますが、きちんとした情報がなかなか入ってこないのです。 入ってこないから、ついついそれに偏ってみたりします。そのことが非常に難しいとい うことです。  それから、高齢者の人たちにどういうふうに情報を流していくのか、若い人たちにど ういうふうに情報を流していくのかというように、必要性に応じての情報の流し方がま だ不十分ではないかと感じております。 ○コーディネーター  田中理事長、いかがでしょうか。 ○田中理事長  情報をどのように提供していったらいいかということでコメントさせていただきま す。  いわゆる通常の食品の専門家として管理栄養士があるのはご存じだと思います。もう 一つ、医薬品の専門家として薬剤師があります。その間に健康食品がありますが、これ の専門家はそういう意味では不在であります。したがいまして管理栄養士及び薬剤師と しての知識と技能の応用編として、それを基礎知識として健康食品のことを勉強してい ただき、何が正しいのか、何が効くのか、安全性は大丈夫なのか、どういう人にどの健 康食品を選べばいいのか、そういう情報を提供する人ということで厚生労働省側では 「アドバイサリースタッフ」を養成していこうとしております。ただ、ご存じのように 「小さい中央政府」という流れがありますので、国としては国家試験的なことはせず、 民間に委託してやっていくようになっております。そういうシステムが幾つか生まれて きておりますので、そういった人を養成し、そういう人から一般の国民の皆さん方に健 康食品の適切な情報を流していこうと考えております。  私ども研究所では、研修はいたしませんが、各職能団体、例えば日本栄養士会、食品 ・医薬品関係の企業、あるいは既に管理栄養士養成課程でもその授業を行っております し、民間団体ではどの方でも受講できるというところも出ております。私どものホーム ページを見ていただければ、どういうところがそういう研修をしているかがわかりま す。そこで一定期間の講習を受けて単位を取得された人に対して、私どもの研究所が認 定試験をいたします。認定試験に合格した人に対して「栄養情報担当者」(Nutrional Representative,NR)という資格を与えることを始めつつあります。この5月に第1回 認定試験をやる予定にしております。「アドバイサリースタッフ」の質の高い人を普及 させていきたいと思っております。なお、健康食品の有効性・安全性の情報ネットワー クについては、先ほど、お話ししたとおりでございます。 。 ○コーディネーター  これからの取り組みということで、少しずつ状況はよくなっていくのではないかと考 えておりますが、ほかに何かコメントはございますでしょうか。外口参事官、お願いい たします。 ○外口参事官  1つ補足させていただきます。田中理事長のところで、いろいろな健康食品の素材ご とに、何がわかっていて何がわかっていないのか、どういう試験結果があるかが客観的 な立場でわかるようにデータベースをつくっていただき、それをホームページで公開し ようという作業を今、進めております。  実際に、新聞広告とかその辺の本屋さんに売っている本を見ても、極端なものは体験 談ばかりで何のことかよくわからない。一方的な情報で、これはどうなんだろうとお思 いになる方も多いと思います。そこで、第三者的に客観的な判断ができるようなデータ ベースを今、作業中でございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。ほかに何かご意見等はございますでしょうか。  特によろしいでしょうか。  会場の方でも、健康食品というテーマについて何かご意見がある方がいらっしゃいま したら挙手いただければと思います。  特にないようですので、それでは3つ目のリスクコミュニケーションのテーマに移り たいと思います。  テーマ3−1・2、BSEや鳥インフルエンザの問題等、最近、食の不安をあおる問 題がいろいろと起きてきているわけですが、畜産現場ではさまざまな風評被害が拡大し ている状況があります。確かに消費者の不安をあおるような一方的な報道には問題があ り、関係者の冷静な判断と対応が重要と思われるというご意見でございます。  もう一つは、リスクコミュニケーションという概念が比較的新しいのでやむを得ない 部分もあるけれども、もう少しわかりやすい言葉にならないだろうかということでござ います。せっかくの取り組みも、消費者の方にとってはまず入り口でつまづいてしま い、関心を寄せる上での障害となっているのではないかということでございます。  回答としては、右にあるようなことを用意させていただきました。  例えば報道が一方的ではないかということについては、確かにこの問題はいろいろな ところで議論されているわけですが、とにかく報道を規制すればいいという単純な問題 ではないという議論になっております。報道の社会的役割といいますか、社会に警笛を 鳴らすというマスコミ本来の役割にも関係しておりますので、無理に制限すればいいと いうものではないということです。これは引き続き検討が必要であり、まだ特にどうし たらいいか結論は見えていない状況でございます。受け手の側も、報道が何を伝えよう としているのか、誇張され過ぎていないかどうか、その背景はどういうことがあるのか も含めて考え、正しく理解する習慣を身につけることが重要ではないかということでご ざいます。  もう一つのリスクコミュニケーションにつきましては、リスクアナリシスというのは リスク評価・リスク管理・リスクコミュニケーションという3つのプロセスで成り立つ わけですが、リスク分析の全過程において、リスク評価者、リスク管理者、消費者、事 業者、研究者その他の関係する人たちが情報や意見を相互に交換することがリスクコミ ュニケーションであると考えられております。中にはリスク評価の結果やリスク管理の 決定事項の説明についても含まれております。なかなかうまい日本語がないのが実態で すが、情報や意見を相互に交換するというイメージをお持ちいただければよいのではな いかということで、回答を用意させていただきました。  パネラーの方で、この辺について、ご意見等はございますか。外口参事官、お願いし ます。 ○外口参事官  きょうのような意見交換会をリスクコミュニケーションの一環として位置づけている のですが、ご質問いただいたように、リスクコミュニケーションというのは非常にわか りにくい言葉です。うまく日本語にもできないので片仮名のままなのですが、ポイント が2つあります。まず「リスク」という意味ですが、これは英語のriskと日本語訳では 1対1対応ではありません。日本語で言うリスクは、危険と訳すことにすると英語で言 うhazardつまり危険そのものの概念と、risk、これには危険の程度や可能性というニュ アンスが入りますが、そちらも含んでいるので、英語をそのまま訳してしまうと難しく なるわけです。リスクを平たい日本語で言うと何が一番近いかというと、「これはやば いぞ」とか「やばい」といいます。名詞形にすると「やばさ」です。この「やばさ」が リスクに非常に近いのです。ですが、「やばさコミュニケーション」にすると役所で使 うのはちょっとまずいので、片仮名のままになっています。ニュアンス的にはそんな感 じだと思っていただけばいいと思います。  それからコミュニケーションですが、今まで行政と消費者の方がこういう大きな会場 でお話しするときに何をやっていたかというと、一方的な説明に近かったのです。行政 の方は単なる説明をする。言いっぱなしで、言いたいことしか言わない。これでは意見 交換ではないだろうということで、質疑応答が次の段階で出てきました。でも、質疑応 答もだめです。自分たちの説明をし相手側の意見を聞いて、まず両方の立場をよくわか り合う。そこからやりとりをしていく中で、お互いに今までいい案がなかったものが次 のステップにつながっていくわけです。そういうものを目指していくことが、食の安全 性を確保する上では大事だろうということです。きょう皆さん方とやりたいのは、お互 いの立場をよく理解し合って、では次はどうしようかというところのやりとりに持って いきたいと思っています。先ほどお聞きしたら、栃木県の方は人前で論争することは余 り好まない方が多いとお聞きしましたが、そうではなくて、きょうは相手を説得すると か論争するのではなく、自分の言いたいことをどんどんおっしゃっていただきたいと思 いますので、よろしくお願いいたします。 ○コーディネーター  ありがとうございました。大島課長補佐、どうぞ。 ○大島課長補佐  栃木県の大島です。私どもの取り組みを資料4に載せさせていただいておりますが、 私どもも昨年5月に食品安全基本法ができたということで、それぞれの関係者の役割と いうことでは、地方公共団体の責務として地方の実情に応じた施策を推進しようとして おります。これまでもそれぞれの関係部局で食の安全性に対する施策は推進していまし たが、昨年、「とちぎ食品安全確保指針」という形で、県庁のそれぞれの部局を総合的 に統一する施策を展開していこうということで目安的なガイドラインを策定しました。 お手元の資料の3ページに「とちぎ食品安全確保指針」がありますが、その中の第4章 の3に「食品の安全確保のための協働システムの構築」とあります。今までも各保健所 なりいろいろな研修会等で皆さん方と意見交換をして、リスクコミュニケーションのし ょっぱなみたいなものをやっていたはずですが、今後は、食に関するリスクコミュニケ ーションを進めていこうとしています。これからやっと船出をするという立場なのです が、それを進めていって皆さん方の意見を私どもの施策に反映できればと考えていま す。  その取りまとめということで、今年4月から、食品安全推進担当が生活衛生課の中に できましたし、農務部の方では消費安全担当ということで農務部の総合調整をする部署 もできました。本県でも、おくればせではありますが、皆さん方と食の安全に関する意 見交換会を今後進めさせていただき、本県における食の安全性の確保が確実に実行され ていけばということで進めていきたいと思っております。宣伝になってしまいました が、そのような形で私どもでは考えておりますので、よろしくお願いしたいと思いま す。 ○コーディネーター  ありがとうございました。リスクコミュニケーションには、国の立場、地方の立場と いろいろな立場があるかと思います。リスクコミュニケーションというと幅広い取り組 みになってしまうかもしれませんが、その中でも、食の安全に関する知識の普及など は、「食育」的なとらえ方をされている部分もございます。事業者の方から、食の安全 に関する普及啓発や知識の普及、コミュニケーション等を含めての取り組み等について ご意見を伺ってみたいと思います。オイシアの倉持工場長から一言いただければと思い ます。 ○倉持工場長  オイシアの倉持と申します。オイシアというと聞きなれないかと思いますので、ちょ っと会社の紹介を申し上げます。カルビーの清原工場というと、何人かの方は見学に来 られたことがあるかもしれませんが、4月から分社しましてオイシア株式会社と名前が 変わっております。  話を戻しますが、リスクコミュニケーションと横文字で言うと難しいのですが、自分 たちが食べているものの安全を確認しましょう、つくっている現場を見に行きましょう という理解をすればよいのではないかかと思っております。私どもの工場には、小学生 も含めて年間1万人ほどの方が工場見学に来られますが、そういった中で、自分たちが 毎日食べているものの原材料がどこから来て、どういうふうにつくられて、どういうふ うに自分たちの手元に届くかを勉強していただきたいておりますが、これも一つのリス クコミュニケーションと考えます。  このような場ですとなかなか質問もままらないでしょうが、私どもの工場に来ていた だければ、私どもがつくっているものについてはお話ができると考えております。この ような場で得た知識をもとに、いろんなメーカーに行って(ほかにもたくさん市民に開 放しているメーカーがありますので)、そういうところで、自分の食べているものの安 全、素材の確かさを確認していただきたいと思っております。  「食育」ということでは、今回のこのディスカッションに当たっていろいろなホーム ページを見ましたら、厚生労働省でもおやりになっていました。私どもでも小学校に出 向いてスナックフードとはどういうものか、必ずしも体に悪い食べ物ではないという話 を宣伝を交えながら話しております。そういったところでどんどん知識を得ていただく ことで、マスコミによる一方的な話をそのまま受け入れるのではなく、自分で判断でき る知識を身につけていただけば、安心していただけるのではないかと考えております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。国、事業者ときましたが、消費者の立場から見た今のリス クコミュニケーションの取り組みの状況について、まだ生ぬるいということはあるかと 思いますが、ご意見をいただければと思います。 ○竹内会長  地域生協では安全を求めて組合員になる方が大半でございます。そういうことでは、 安全性に対しては非常に問題意識もあり、深いと感じています。  ずっと見てみますと、昔の消費者は、限られた人たちだったと思いますが、そういう 問題に対して専門家的なご意見にも強かったですし、いろいろな学習会にも出ていらし たということがありました。しかし今、私たちが栃木県の中で学習会をしますと、限ら れた人しか出てこられないということがあります。リスクコミュニケーションといった 場合に、こういうかたいものではなかなか意見が出ない。だけれどももっと小単位にす ればさまざまな意見が出て情報が発信され、受け取る側もわかるということがあるので はないかと思います。ですから、時代に応じて情報の出し方を変えていかなければいけ ないのではないかという感じがいたします。今回、国の方でも施策をきちんとやられ て、こういう場も設けられたことは非常に画期的ことだとは思いますが、受け取る側、 特に若い方などは、もっと気軽に参加できる、気軽に情報がとれることが非常に大事で す。そのことをもう少し考えていかないといけないのではないかという感じがいたしま す。 ○コーディネーター  ありがとうございました。今のコメントにつきまして、何か行政側からありますか。 外口参事官、お願いします。 ○外口参事官  今、気軽に情報がとれるようにというご指摘がありましたが、役所の情報は非常に見 にくいし探しにくいとか、ホームページを見ない人はどうするんだとか、いろいろとご 意見を伺っています。  我々の方としては、皆さん方とこういう機会を持つのは、私はこれで十数回目です が、そこで随分いろいろなことをお聞きして、今、少しずつ変えていっています。例え ば厚生労働省のホームページも、去年の今ごろと比べると大分よくなっているとは思い ますが、残念ながら農水省のホームページは我々の上を行っています。これに追いつき 追い越せという感じで、もう1回変えて探しやすくします。どこを探せばいいかという ことも、Q&Aのようなものを上手に使って絞り込んでいけるように工夫しようとして います。  また、ホームページ以外にも、いろいろなメディアがあります。例えば映像メディア は非常に有効です。どういうときに有効かというと、例えば輸入食品ではどんな検査を 現場でしているのだろうかということは、ホームページで活字をいっぱい並べるより は、テレビで15分ぐらい現場をうつしてもらうのが一番わかりやすい。そういったこと にも今、トライしています。この辺についても、皆さん方から、こんなことをやってみ たらどうかとか、各自治体や役所でいろいろな取り組みをしておりますので、ここでこ ういうことをやっているからあなたもやりなさいということをいろいろと教えていただ ければ、もっとよくなっていくのではないかと思っています。竹内会長さん、何かお勧 めはありますか。 ○竹内会長  今回も壇の上ではなくて下におりてやるとか、もう少し小単位でディスカッションが できるようにするといったことも必要ではないでしょうか。 ○外口参事官  小単位というのは、いろいろなテーマ別にこれからやろうと思っています。農林水産 省中心にやっているものでは、カドミウムの話とか、残留農薬だけとか、テーマや人数 を絞ってということもやっています。  壇上の話ですけれども、きょう、原案は下で行う予定だったのです。なぜ上がったか というと、同じような会場で目線を同じにしようということで下でやりました。そうし たら「顔が見えない」とアンケートに書いてあって、きょうは壇上になりました。そう いう試行錯誤を繰り返す中での壇上ですので、ご理解いただきたいと思います。 ○コーディネーター  オイシア倉持様、どうぞ。 ○倉持工場長  先程の竹内さんの話に関連しますが、食の安全とか健康については、消費者の方は 100万人の健康に関心があるという訳ではなくて、自分の健康に最も関心があるわけで す。見学者から聞かれる質問の多くは、「私の場合はカルビーの製品を食べたときに安 全なのか」ということで、情報はオーダーメイドで提供する必要があるかと思います。  「健康」「病気」の情報を得ようとするとぶ厚い本もあるし、いろんあホームページ を見ると咳が出て熱が出るのはこの病気と、たくさんの病名が出てきます。そうする と、「私はこんなに重い病気なのか」という錯覚に陥ってしまう。今のような情報社会 だと、情報があり過ぎて自分にあてはまるものがどれかわからない。それで、例えば私 どものメーカーに、こういう危険はどうなのかとオーダーメイドで聞いてこられること が多いのです。先ほどのもっと小さな場でというのは、「私の健康」を教えてくれる場 がほしいということだと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。大島補佐、お願いします。 ○大島課長補佐  今回は、本県も厚生労働省や農林水産省と一緒にこういう形でやらせていただく形に なったのですが、私どもも県内で各地域ごとに開催できればと考えております。その場 合、タウンミーティングのような形で進めていって、少人数制度でやった方が意見が出 やすいかなと。これだけ人がいらっしゃると、なかなか手を挙げるのは難しいかなとい う気がいたしますので、今後はタウンミーティングを進めていきたいと考えておりま す。その際には、なるべく数多くの方にご参加いただいて、本県の食の安全性について 皆さん方とリスクコミュニケーションができればと考えております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。国の取り組みですと、施策を知ってもらいたいということ もあって、なるべく多くの人に知っていただいた方が効率的だということがあるので大 勢を集めるタイプになりがちです。意見交換をということであれば、確かに規模の小さ なものをということもあるかと思います。その2つの目的をいいとこ取りしようという こともあって、形として中途半端になるのかもしれませんが、このような形で意見交換 をしているということです。  今の2つの意見につきましてパネラーの方からいろいろと発言をいただきましたが、 この意見をお寄せいただいた方が今の議論を聞かれて、私はこういうところが知りたか ったとか、それはこういう意味だということがあればお伺いしたいと思います。  最初の、BSEとか鳥インフルエンザのときの報道には問題があるので、関係者の冷 静な判断と対応が重要というコメントをお寄せいただいた方がもしおられましたら、ご 発言いただければと思います。 <質問1>  進行の方がおっしゃって、回答も書いてあるのですが、BSEと鳥インフルエンザに ついては、小泉先生が非常にわかりやすいスライドを用意してくださいました。  例えば鳥イルフルエンザが日本で初めて出たとか、京都で大発生したと言っても、 「野鳥からヒトにかかるのですか」ということはホームページにも書いてありますし、 福田官房長官もテレビに出てしゃべっているのですが、そういうふうに報道されなが ら、「カラスから鳥インフルエンザがとれました」という報道があった月曜日からうち の職場も電話が鳴りっ放しです。ということは、報道を規制すればよいという単純なこ とではないということは、国民の皆さんもわかっていると思います。  揚げ足をとるわけではないですが、「受け手」というのは国民のことだと思います が、「受け手側もきちんと勉強していることが大切です」と書いてあります。オイル ショック時には日本国民の中でトイレットペーパー騒ぎが起きました。ああいうことが 過去において経験されていても、喉元過ぎればということになってしまうのです。  BSEも、こういう場ではちょっと言いづらいのですが、はっきり言えば、NHKで イギリスのある村でのバリアントのクロイツフェルト・ヤコブ病の患者の映像が出た 後、がくっと牛肉の消費が落ちたわけです。タイミングが悪すぎましたよね。NHKを 攻撃する人はだれもいませんけれども……。  鳥インフルエンザについては、民放が適当な報道をしているということがホームペー ジに書いてあります。大分のところには黒い鳥が発生前にどれくらい来たとか、そんな ことをテレビでやったということが書いてあります。規制しろとは言いませんが、きょ う小泉先生がサマライズしてくださったような報道の仕方を事が過ぎた後にやっている のです。鳥インフルエンザについては、番組は忘れましたが、有名な人が中国に行って 「カモが持っている」とかね。あの映像は非常にわかりやすかったのですが、もう少し 行政もマスコミも真剣に、科学的な根拠に基づいて報道するということをやればと… …。日本国民はそういうことは訓練されていないと思います。テレビがやったから、週 刊誌が書いたから、それを鵜呑みにするわけではありませんが、それ以上の情報を自分 で積極的に収集しようとは思わないのが一般国民だと思います。だったら、そういうこ とを改めるのがマスコミの役目だと思いますが、マスコミは、ただ面白おかしく書いて いる。NHKの報道の後、畜産業界には倒産した会社がたくさんあるわけです。それに 対してマスコミは全く責任を負う必要はないし、それに対して悪かったという報道も全 くない。情報のたれ流しであって、本当に国民に必要な情報を出しているのかなと。  2番目で健康食品の話をされましたが、自分で間違って食べたり飲んだりすれば自己 責任だということになりますが、正しい情報をきちんと出して、国民の目にとまって、 それをもとに判断する訓練を国民一人一人がすることも大事ですが、行政も最大限それ に腐心する時代になっているのではないかと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。片桐補佐、お願いいたします。 ○片桐補佐  農林水産省の消費者情報官室の片桐と申します。BSE、鳥インフルエンザの報道発 表は、主に私ども農林水産省から記者会見なりプレスリリースしておりますので、まさ に私ども農林水産省に、情報の出し方ということでご意見をいただいたものと理解して おります。  ご指摘のBSEは、平成13年9月だったと思いますけれども、日本で確認されまし た。そのとき以降、行政としての対応や情報の出し方が必ずしも適当ではなかったとい うことで、いわゆる風評被害といいますか、牛肉の消費が大きく落ち込み、今現在はB SE発生前の8割くらいまで回復していますが、まだすべて戻り切ってはいない状況に あります。 ただ平成13年当時と比べれば、これまで国内で11例出ておりますけれども、比較的消費 者の方は冷静に対応していただいているのではないかと思います。  鳥インフルエンザにつきましては、農林水産省が国内の養鶏産業のために、家畜伝染 病予防法に基づいていろいろな措置をとったわけでございます。具体的には、発生農場 から30km以内は徹底的に消毒をする、場合によっては報道関係者の方も立ち入りもご遠 慮いただくという形で、30kmの範囲から外に広がらないようにしたわけでございます。 そういったときの報道のされ方が、鳥を守るため、養鶏産業を守るためにこういう措置 をとっているということが必ずしも伝わらずに、いたずらに人に対する不安、鶏肉や鶏 卵といった食品の安全性についての不安を起こしてしまったということもあろうかと思 います。  そういった意味で、今お話がありました官房長官が話をしたといいますのは、3月9 日に、農林水産省、食品安全委員会、厚生労働省、環境省などが連名で国民の方々に、 鳥インフルエンザの正しい理解のために訴える文書を出したわけです。こういったもの ももっと早く適切にやれというご指摘だったと思います。  私どもは、これまで農業生産とか畜産業の生産振興と一緒に安全管理をやっていたわ けですが、平成15年7月に新しくそれを分離しまして消費・安全局をつくったわけです けれども、情報をきちんと隠さずに出していくことをまず基本にしなければならないと 考えています。その際に、情報の持つ意味もきちんと説明しながら出していくことが必 要だろうと思っています。そういう意味では、リスクコミュニケーションという会場で のご説明の機会のほかに、ホームページ等も活用しながらきちんと情報をお伝えしてい きたいと考えております。  実はこの場には、私の上司であります消費者情報官本人が参る予定でしたが、まさに 今この時間、東京大手町で、先ほど小泉先生からお話がありましたOIE(国際獣疫局 事務局)におけるBSEの国際ルールの改正案というテーマに絞ってリスクコミュニケ ーションをやっている関係で、私が代理できょうここに参っております。ご指摘いただ いた情報をきちんと出していくということについては、農林水産省の食品安全行政を進 めるに当たってのベースの部分だと思いますので、平成13年9月以降の過ちを繰り返さ ないようにしていきたいと考えております。これからもよろしくお願いいたします。 ○コーディネーター  ありがとうございました。リスクコミュニケーションについては、内閣府の方でも、 専門調査会で消費者の方やマスコミの方も加わっていただいて議論をされていると思い ますので、その辺について小泉先生からご紹介いただければと思います。 ○小泉委員  今質問されたことですが、私どもも、本来は科学的にということで、学者として参加 した場合には非常にやりやすかったのですが、実はコミュニケーションはそんなに簡単 なものではないということが私、わかりました。といいますのは、消費者の方々によく 聞きますと、安全なことはわかっている、だけどやはり食べたくないという心理的な面 が多い。 いまだに京都府の 170万羽の鳥の行き先も決まらない。ということで、不安要因をいか に取り除くかが非常に難しい。ただ科学的に、鳥インフルエンザにかかる率は日本では ゼロに近いですよと言っても、BSEでバリアントの発生率はほとんどないですと言っ ても、わかっていても不安だというのは、これはどうしようもない。  いろいろな方々と話してみますと、最初にNHKで非常によろよろした牛の映像が 出、その後にバリアントCJDの患者さんの映像が出ると、頭にそれがインプットされ たらなかなか人間はそこから離れることができない。それが大きな不安要因になって、 自分がそれにかかって 100%死ぬのだと。いつもゼロリスクを要求されるのですが、そ ういうときに科学者は正確に物を言わなければならないということで、「ゼロですか」 と言われると「ゼロです」とは言えないのです。「だけど限りなくゼロに近いだろう」 と言うと、どっちか言えという要求が強いわけですが、それは科学者の態度としては無 理なんですね。  そういったことで、いつも悩むのは不安と安全・安心が非常に乖離していることで す。この不安をどう除けばいいのか、消費者の方々に教えていただきたい。  また、今、司会者が言われましたが、リスクコミュニケーションの中で、 17名ぐら いの学者や専門家、消費者が集まって、リスク評価とリスクコミュニケーションの企画 専門調査会等16の専門調査会で今、リスクコミュニケーションの現状と課題ということ で取り組んでおります。近いうちに、どういう現状があるのか、どういう課題があるの かを発表することになっております。  また、すべて私どもがやっている専門調査会は公開となっています。安全委員会も毎 週木曜日の2時から公開で、傍聴される方も結構ございます。議事録等もすべて公開し ておりますので、評価とはどういうことかをお知りになりたい場合は、議事録を読んで いただければ、正確な情報やいろいろな評価の経過が理解していただけるのではないか と思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。先ほどご意見をお寄せいただいた方から、何か追加のコメ ント等はございますか。 <質問1>  農林水産省等の省庁がどうこうということではなくて、国としては今、先生がおっし ゃったように食品安全委員会が一番上にあるとすれば、食品安全委員会も含めて、国民 がやばいと感じること、ゼロリスクはないんだと。ゼロリスクを追求しても、検査法が どんどん進んで、調べれば調べるほどゼロにはなり得ないということを多分国民は頭で しかわかっていないと思います。だから、 100%安全なものを毎日食べているわけでは ないということをもっとオープンにした方がいいと思います。  私も生協をよく利用しているのですが、生協のものも 100%安全であるはずがない。 あれだけ過去において土地に農薬をまいたわけですから、残留が急にゼロになるはずは ないのです。極端な話、君たちが 100%安全なものを食べようと思っても、それは無理 だよとはっきり言った方がいいと思います。無農薬だとか、減農薬だとか、こういうき れいな水のところからとってきたものだから安全だとか、変なイメージができてしまっ ていると思います。そうではなくて、本当に情報をオープンにするのであれば、有害物 質はゼロではない、毎日とっている食品の中にもこれくらいの量は入っているというこ とを皆が理解して、そういうものを5年、10年、何十年ととっても皆さんは健康ではな いですか。ただ、明らかに被害が出ているものについては、こういう危険性があるから とるときには注意しましょうと。最初に安全だと言うのではなくて、安全ではないもの を普段我々は食べているのだと。発想を転換して、国としてそういう視点からものを発 信していただいたらいいのではないかという視点から、私は申し上げたわけです。以上 です。 ○コーディネーター  ありがとうございました。多分、我々の取り組みがなかなか行き届いていないという ことなのだと思いますが、今ご指摘いただいたようなことを我々も伝えたいという気持 ちがあって、全国各地でこういう講演会をやっているわけです。ただ、講演会ですとど うしても来ていただける方は限られますので、なかなかすそ野が広がっていかないとい う状況はあるかと思います。  それでは、もう一人、8番の「リスクコミュニケーションという言葉が理解しにくい 」というご意見をお寄せいただいた方がいらっしゃったと思いますが、きょうパネラー の方にお話しいただいた中で、特に追加したいこと、もしくはこういうことが聞きたか った等ございましたら、ご発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。 <質問2>  一消費者としてこちらに参りました。表の表題にもありますように、「食品に関する リスクコミュニケーション」と聞いたときに、実際に何をするのか半分ぐらいでもわか る消費者がどのくらいいるのかなというのが、そもそもの疑問でした。  私自身は、子供もおり、こういうことに関して興味があるつもりだったのですが、初 めに新聞等でリスクコミュニケーションというものを見たときに、「何だこれは」とい うのが正直な感想だったのです。読んでいるうちにだんだんわかってきたのですが、結 局はっきりしませんでした。先ほどの「やばいぞ」みたいな説明で、本当に府に落ちた 部分がありました。ほとんどの消費者は、いろいろなことが起こっていて、まずいな、 怖いなと思いながらも、結局何がどう起こっているのかわからない。新聞を読んでも、 リスクコミュニケーションで、「これは何、私わからないわ」と、そこで投げてしまっ ている人が結構な割合でいると思います。  言葉の置き換えが非常に難しいということは先ほどの話である程度は理解できたので すが、そこをまげて言葉の置き換えというよりもっと平易な表現で、基本的な言葉がわ からなくてもわかるような方法でやっていただけば、もう少し私たちも興味を持てる。 実際にコミュニケーションをとるためには、新聞を読むとか、こういうところに来ると か、もしくは近所の会話でそういう話題が出てもおかしくないようにするために、関心 を持ってもらう。そのためにもう少し報道関係者の方々も交えた上で、報道の仕方を考 えていただければありがたいと思いました。以上です。 ○コーディネーター  ありがとうございました。行政の方から何かコメントはございますか。参事官、お願 いします。 ○外口参事官  リスクコミュニケーションというのを「意見交換会」という名前でやったこともある のですが、実はそれもしっくりいかなかったのです。ということで、この際これを機会 にリスクコミュニケーションを理解してもらおうということも含めて、今、いろいろと やっております。  さっきの話に戻りますけれども、先ほどいろいろご意見をいただいて、一つ思い出し たことがありました。内閣府の食品安全委員会の中でもリスクコミュニケーションにつ いての会議をやっているのですが、その中で出た意見の中で、消費者の方が拒否すると きは、正確な情報が伝わらなくて誤解した時もあるかもしれません。それから本当にこ れが危ないと思ったときは当然ですけれども、もう一つあって、相手が信頼できないと きには絶対に拒否するという意見を伺いました。ここをどうするかが、安全と安心、特 に安心を考えていく上でポイントだと思います。それは、事業者の方が信頼感を得るよ うな取り組みをする。行政もそう。メディアもそう。ある程度信頼されていると、わか らないところについても、あそこだから大丈夫かなということがあるのです。実際に全 部わかるわけではないし、どこかは推測でやるしかないわけです。  そのためにどうすればいいか。議論をしている中で、ある事業者の方が言われまし た。信頼を得るためのポイントは3つある。逃げるな、隠すな、嘘をつくな、だそうで す。こういう事業者さんは信頼できますよね。我々行政もそれを真似していこうかと思 っています。そうすると何か言葉の足りないところがあっても少しいいかなと。  実際に鳥インフルエンザの時も、最初の山口県で起きたときには卵や鶏肉の消費はそ んなに落ちていないのです。その次にぐっと落ちました。これは、報道の量とか大きさ よりも信頼感の問題になってしまったのかなということが言われております。信頼を保 つにはどうするか、これがやっぱり鍵かなと思っています。 ○コーディネーター  ありがとうございました。どうぞ。 ○竹内会長  私どもは、安全と安心を切り離しておりまして、「安全な食品」という場合には、科 学的な根拠に立って「安全な食品」ということを基盤に置きます。「安心」というの は、事業姿勢は正直であることが大事ですので、正直であることとか、安全を確保する こと、人間関係の信頼、生協職員と組合員との信頼関係、そういうものを含めて安全で あるとしております。  これは、私たち生協も食品の問題でいろいろな問題を起こしまして非常に悩んだ末 に、私たち自身が再生するためにつくった商品政策の中で、そういう形にしてまいりま した。そのことによって非常に考えやすくなりました。安全ということはどういうこと なのか、安心ということはどういうことなのかが非常にわかりやすくなったのではない かと思っています。  もう一つは、私は栃木にある新聞の読者懇談会の委員として行っております。何人か の委員がいらっしゃるのですが、その中で弁護士の先生が、NHKのこどもニュースは 大人が聞いていてもとてもわかりやすい。あれぐらいわかりやすくすれば新聞もよくわ かるのではないかという話をなさっていました。私も時々こどもニュースを見るのです が、とても問題がはっきりわかりやすく説明されるわけです。難しくやるとどんどんわ からなくなるので、なるべくやさしくやさしく報道していくことがすごく大事ではない かと思っています。 ○コーディネーター  ありがとうございました。パネラーの方からも意見が尽きてきたかと思いますが、会 場の方で私も発言したいという方がいらっしゃれば、ぜひ手を挙げていただければと思 います。大分テーマも進んできていますので、これに限らなくても結構です。さっき言 いたかったけれども言いそびれてしまったとか、何でも結構ですので、食の安全に関す るテーマ全体についてご発言いただければと思います。 <質問3>  私は真岡市で結婚式場をやっている者ですが、食品をいろいろと使っておりますの で、その関係で発言をいたします。  先ほどお役所の審議官の方から「リスク」という話が出ましたが、リスクというのは 自分で背負わなければならないものだと思います。この会場の中にコンビニの経営者の 方がいらしたら、ごめんなさい。前にあるところで、「コンビニのおにぎりが一番怖 い。あれは添加物を食べているようなものだ」とおっしゃっる方がいました。  私思うんですけれども、マスメディアから情報が多量に流れてきますが、それを正確 に受け取ることは受け取る側の責任です。では正しく知らせる方はというと、これは批 判になってしまうのですが、日本のマスコミというのは確かに責任はとりませんよね。 それが日本のマスコミと世界のメディアとの違いではないかと感じたりします。  添加物の問題とかいろいろな問題が出てきます。これは行政の方には申し訳ないので すが、垣根を越えて取り組んでいただくのは非常にありがたいのですが、それを国民の 前に示していただきたい。例えば厚生労働省と農林水産省は別で、製品である食品と元 のものである食べ物とは違いますけれども、人間の口に入るのは一緒だと思います。そ のあたりは頭をやわらかくして一緒に取り組んで、一緒に記者会見などをやって、こう いう経過だとわかりやすく説明していただきたいと思います。  それと、私がこういう事業をやっておりますので申し上げるのではないのですが、こ の間カルビーさんの工場見学もさせていただきましたが、工場のものは安全だけれども ほかのものは違うんじゃないかと……。  今の話から離れてしまいますけれども、先ほど残留農薬の問題が出ました。日本もい ろいろな食料を外国から輸入しております。これも政治的な問題だと思いますけれど も、十何年か前に日本の食料自給率が非常に下がっているということをNHKがやりま した。この点について何かお考えがありましたらお聞かせいただければありがたいと思 います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。片桐補佐、お願いいたします。 ○片桐補佐  食品が最終的に消費者の食卓に上がってしまえば、それはすべて安全でかつ品質がい いものでなければならないということは、もちろんそのとおりだと思います。安全性に ついては、恥ずかしながら農林水産省は、これまで余りみずからの行政分野として十分 意識してこなかった面があります。平成11年に、昭和36年に制定された農業基本法を改 正して新しい農業基本法をつくりました。それでは「食料の安定的な供給」ということ を農林水産省の一つの使命とされています。その法津には、良質な食料を安定的に適切 な価格で供給するということが書いてあります。「良質な食料」という中に、食料なら ば安全が担保されているのは当たり前だろうということで、農林水産行政として特段、 安全ということを心をこめて基本法の中に書き込んでいないのです。表示や望ましい食 生活についてはありますが、食品の安全について特別仕立てをした法律構成にはなって いないわけです。  ご案内のとおり、その後平成13年9月にBSEが発生し、農業生産の段階でもきちん と安全というところに施策としてビルトインしていかなければ、最終的な食品の安全性 も担保できないということから、食品安全基本法の中に、生産・圃場段階から加工、消 費に至るすべての行程できちんと安全管理がなされていなければならないという基本的 な考え方が示されているわけです。  そういった中で、農林水産省は第一次産業を所管する立場から、例えば農薬の一日当 たりの許容量に基づいて厚生労働省から残留基準を決めていただく。我々はその残留基 準をクリアできるように農薬の使用基準を決めるという分担関係の中で、トータルとし て農業生産から流通、加工、そして食卓までと。本来は家庭でもきちんと買ってきたも のを衛生的に保管をして調理していただかなければ、最終的な安全は確保できないわけ です。そういう意味では、行政と消費者も含めて、それぞれの役割の中できちんと機能 することで、安全そのものが確保されるであろうというのが、新しい基本法の理念なの だろうと思います。  したがいまして、農林水産省としては、すべてに手を出すわけにはいきませんので、 自分たちの行政分野は限られたフィールドしかないわけですが、そこでの役割をきちん と果たす。その上で、厚生労働省と連携し、場合によっては厚生労働省にきちんとバト ンを渡すことが役割なのだろうと思います。  端的な縦割り行政の例としてよく批判されていましたのは食品表示です。例えば品質 保持期限と消費期限がなぜ違うのか、これはよくご批判いただいた点だと思いますが、 こういう表示につきましても、これからは審議会についても厚生労働省と常に共同歩調 をとっていく。ここに食品表示のパンフレットがありますが、こういうものを同じもの で説明していく。問い合わせについても、厚生労働省所管の表示の問い合わせであって も、農林水産省所管の部分であっても、一元的に受け付ける窓口を設置するという取り 組みを始めているところであります。  先ほどご指摘いただいた縦割りということは、行政として役割があることは仕方がな いことですが、食品安全にとってマイナスが出てこないように、きちんと連携をしてい かなければいけないと考えております。  最後に、食料自給率の話が出ました。今、日本国の食料消費、つまり最終的な民間の 食料支出は金額ベースで80兆円ぐらいです。一方で、農業粗生産額は水産業も入れて10 兆円ぐらいです。その間70兆円を輸入しているわけではありませんで、食品加工や流通 のコストがかかります。流通は市場を通る等いろいろとコストがかかりますし、加工は 加工に対する手間や工場投資がかかります。また外食もふえています。外食の市場規模 は27兆円ぐらいありますので、80兆円から27兆円を引いた五十数兆円が一般の小売りで す。昔のように家庭の主婦の方が小売店で素材を買って家で調理するというよりは、加 工食品を買ってきて、家でご飯を炊いて食事を用意される、またはお惣菜を買ってく る、出来合いのコンビニのお弁当を買ってくる、または外食という形で、忙しいという こともありまして、調理の時間が減るかわりにサービス業に依存している状況にありま す。  そういったときに、食品産業なり流通・加工側としては、きちんと同じような品質の ものを、同じような価格で、常に安定的に手に入れたいという要望が当然あるわけで す。それに十分国内生産が対応できてこなかったこともありまして、食料自給率が、長 期的に昭和37年以降米の消費が落ちているのとあわせて低下しています。自給率の低下 は、国民の食生活が外部化、サービス化していることに国内生産が原料供給という面で 十分な役割ができてこなかったことと、もう少し長い目で見ますと、米の消費量が減っ ていることもあります。昭和36年には平均 120kgだったものが今は64kgぐらいですか ら、約半分です。そういった中で、畜産物と油の消費がふえています。畜産物の生産に は餌となるトウモロコシが必要ですが、トウモロコシはほぼ 100%輸入しています。植 物油は、大豆や菜種からできますが、これも99.9%輸入です。したがいまして、食生活 が大きく洋風化していることと、国内生産が食品産業の加工業に原料供給の面で十分役 に立っていなかったことの2つが大きな理由で、食料自給率が低下してきているわけで す。  こういった状況にありますので、食料自給率を向上させなければいけないというのは 農林水産省としての大きな行政課題になっておりますが、その一つは本日の田中理事長 の話で最後にご紹介いただきました「食生活指針」の中に10項目の食生活の留意事項が 書いてありまして、その中で我々農林水産省が特にお願いしたいのは、お米を中心とし た食生活をもう一度見直していだたきたいということです。これは4番目ぐらいに入っ ていたと思います。食料自給率は分母・分子の割り算ですから、これが分母の面での対 策です。分子の面は農業生産の方ですから、当然コスト的にやっていけるように、担い 手をつくっていくというもののほかに、今の食生活は外食や加工食品等にかなりの部分 で依存していますから、加工食品や外食分野にもきちんと農業生産、国内の農業生産が 対応できるような形にする。分母と分子両方の取り組みがなかと、なかなか自給率は上 がっていかないと考えております。  ちなみに、ここ4年間ほど食料自給率はカロリーベースで40%と横ばいになっており ます。一見、減少傾向に歯止めがかかっているように見えますが、その間、BSEの発 生を受けて牛肉需要の減少等もありますので、必ずしもトレンドとして自給率の低下傾 向に歯止めがかかったとは考えておりません。このまま米の消費が減少し続ければ、40 %を割る日も遠くないと考えておりますが、食料自給率の向上は行政だけではなかなか やり切れない面があり、消費者の方も含めて国民全体で考えていただかないと解決が難 しい問題だと思っています。 ○コーディネーター  ありがとうございました。オイシア倉持様、どうぞ。 ○倉持工場長  今の話とも連動する話で、安全の担保ということですが、これは非常に難しい課題だ とメーカー側としては感じております。ちょっと話はそれますが、今回のパネルディス カッションのアンケートを見ると話が非常に難しいということがありましたので、わか りやすい言葉で話をさせていただきます。  安全に関しては、メーカーとして、今ある法律もしくは法令・条例等を一生懸命守っ て製品をつくっていますが、後から、例えば学会でこういう物質が発見されて、これは ラットの実験で非常に発癌性があるとか病気になりやすいという話が出ると、今まで認 可されていたのものをつかって製造していた製品が突然販売禁止になることも考えられ ます。わかりやすい言葉で言えば、これは後出しジャンケンと同じような結果になりま す。。そうは言っても、学会で報告されると、インパクトのある情報となって消費者の 方に届き混乱するわけです。  先ほどの外口参事官の話の中に信頼を得るためのポイントということで「逃げるな、 隠すな、嘘をつくな」とありましたが、私どもがつくったものは安全ですと言ってきた けれども、結果的には嘘をついているではないか、という場面もなきにしもあらずとい うことになります。  また、それらの情報は、厚生労働省、農林水産省等が同じような見解で出していただ けたらいいのですが時としてニュアンスが異なって受けとれる場合があります。  JAS法、食品衛生法等いろいろな法律がありますが、もっと一本化してシンプルに ならないかと思います。 またお客様からは残留農薬をきちんと検査して欲しいと言われますが、1つの農薬を検 出するのに、約3万円ほどかかります。例えばここに置いてある水が安全かということ で 100項目検査をすれば、300万円かかってしまうわけです。 300万円かかって、仮に 1,000万円の売上高だったとしたら、商売としてとてもやっていけないわけです。  例えば今の話を輸入品に例えると、わずか1,000 万円しか輸入していない業者が毎年 100万円の検査費用をつかって安全を確かめる必要があるのなら、事業をやらない方が よくなってしまうといった現状が実際にあります。それらについては、例えばトウモロ コシならばコーン協会というものがあって、そこでノンGMO等の検査を一括して行え ばよいと思います。官民一体となって安全を確保する活動において、安全・安心・安価 の安価の部分にも貢献できるような行政の方にも協力いただいて、必要なものを効率よ く分析して情報が提供できる仕組みを、作っていただきたいと思っております。メーカ ーは、決して「逃げたり」「隠したり」「嘘をついたり」するわけではなくて、後出し ジャンケンのようなもので、悪者になっているように見えます。メーカー不真面目に対 応している訳はないということをお話ししておきたいと思います。 ○コーディネーター  大島補佐、どうぞ。 ○大島課長補佐  今、行政の方に、そういうシステムづくりをということでしたが、本県といたしまし ても、先ほど申しました「とちぎ食品安全確保指針」の中で、今年度は生産から消費の 各段階の関係者を集めて、これもリスクコミュニケーションの一種だと考えております が、本県の食品安全行政に関してご意見や提言等を出していただける組織づくりという ことで、食品推進安全懇話会を立ち上げる予定でございます。  生産から消費者の段階の方20名程度に入っていただいて、本県の食の安全に関する施 策を協議していただこうということです。皆さんがどういうことに不安を感じているの か、また、製造者や事業者に関してどのようなことを一般消費者の方が不安に思ってい て、それに対応していかなければならないのかという問題等を協議していただくシステ ムづくりということです。ちょっと遅いのですが、おくればせながらでも県といたしま しては推進している状況でございます。  また、県庁内にも、今までは各部局で施策を進めていましたけれども、食品推進安全 本部を立ち上げ、知事に本部長になっていただく予定です。そのような形で、本県の食 の安全に関する施策を行います。  また、皆さん方が一番ほしいものは、食の安全に関する正確な情報、わかりやすい情 報ではないかと思います。確かに本県のホームページも見にくいのですが、なるべく食 の安全に関するホームページは皆さん方が利用しやすいようにつくって、皆さん方に食 の安全に関する情報を提供できればと考えております。皆さん方からご意見等をいただ きながら進めていきたいと考えております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。小泉委員からもご発言をお願いします。 ○小泉委員  先ほど、学会でいろいろなデータ報告をされると、それが非常に人に不安を与えると いうお話がございました。学者にも、人に不安を与えるようなデータを出して皆さんの 不安をあおるような学者もおれば、いろいろです。田中先生もそうですが、私どもは予 防医学ということで、健康に被害を与えないようにするにはどうしたらいかということ で、研究いたしますと、ここまでなら大丈夫という研究論文になります。ところが私ど も社会医学系以外のほとんどの学者は、いわゆるポジティブデータで、大量にやってこ ういう健康障害が出たということが論文になるわけです。これだけやってどうもなかっ たというのは論文にならないのです。大量投与してこれこれだったということがデータ として出てくると、肝障害が起こるんだ、腎障害が起こるんだということに結びついて しまうわけです。  例えばダイオキシンの論文をもし皆さんが見られる機会があると、私は投与量がどれ だけか調べたのですが、一番低いもので 2,000倍ぐらいでした。例えば食塩は一日10g と言われますが、これを 100倍しますと1kgです。1kg食べたら即死ですよね。そうい った実験でダイオキシンの免疫異常が起こっているという論文なのです。ポジティブデ ータを出そうと思うと、どうしても倍率を上げていかなければいけないわけです。  ということで、一番私どもが見るところは実験方法です。本当に人に危害が起こるレ ベルなのかということです。言い残していたのですが、健康食品も一緒ですが、どれだ けの量をとるかということは非常に大切です。例えば 10倍ぐらいとると危険が出てく るものは、非常に危険性が高いかもしれません。  少し話がずれますが、添加物と農薬については、どなたに聞いても、どこに行っても 一番危険だと思われます。だけれども、学者仲間は一番安全だと思っています。それは なぜかというと、安全性評価から生殖毒性、発癌性からすべてが 100倍量ぐらいで研究 されていて、無作用量を検討して、これだけなら動物実験でも人間でも健康被害がない という量を決めて、さらにそれを 100分の1で使いなさいということになっていますか ら、今まで添加物や農薬で死亡者が出た事例は全くないわけです。  もし出たとすれば、皆さんよくご存じのパラコートという農薬で、医療機関に運ばれ てくる人が結構いますが、事故とか自殺で起こることはあっても、通常量を使われてい れば何ら問題ないのです。こういったことを評価のところで説明しても、なかなかわか りにくい。  事実、私は神戸に50年住んでおりまして、地震にもきっちり遭いました。あのときは 街の中を皆さんマスクをして歩いていました。アスベスト(石綿)を使っている昔の建 物を壊すわけですから、シートを張ってはいますが街の中はもうもうとしています。そ こで、ある医者が、神戸市の住民は恐らく10年後に多くの人が肺癌になるだろうと言い ました。冗談じゃない、この濃度で起こるなら職場の人は全部肺癌になると思いまし た。科学を勉強した者であっても、そういった誤った結論を導き出すことがあると考え ると、消費者が不安に思うのは無理ないなと考えているわけです。以上です。 ○コーディネーター  ありがとうございました。話が広がってしまったようですが、ご意見をお寄せいただ いた方から追加とか、こういうことが聞きたかったということはございますか。 <質問2>  結構です。 <質問3>  大丈夫です。 ○コーディネーター  確かに量の問題では、田中先生の方に関係するのかもしれませんが、つい最近は、ポ リフェノールが身体にいいと言われて、ワインが飛ぶように売れたことも記憶しており ますが、あれも、あのポリフェノール量をとるためには、ワインを相当飲まなければい けないんじゃないかということも実は聞いております。とり過ぎるとよくないというこ ともあると思います。量によって危険性が出てくるので、そこは気をつけなければいけ ないということだと思いますが、健康食品の量に関して先生から何かございませんか。 ○田中理事長  今、小泉先生がおっしゃいましたように、健康食品による健康障害も、どれぐらいの 量を、どれぐらいの期間とったかの積に比例して起こっていくわけです。さて、ポリフ ェノールとは、フラボノイド、タンニンなどの総称で、5000以上もの化学物質から 成り立っていますので、ポリフェノールの安全性は、簡単には、お話しできません。例 えば、イソフラボン。これもいくつかの物質の総称ですが、イソフラボンは、経口的に 適切な量を摂っている限り、健康障害はないとされております。  例えばワラビを食べると癌になるという話がありましたが、それは主として動物実験 からきておりまして、人間にあてはめてみますと、毎日バケツ1杯ずつ食べるというレ ベルの話になってくるわけです。そんなに食べられるはずもないわけです。  ちょっと脱線気味になりますが、「リスク」という言葉は、中毒学以外に一般的にも 使われています。わかりやすい言い方をしますと、血圧が高くなるにつれて脳卒中にな りやすいということは、皆さん方もよく知っておられると思います。血圧正常値の人た ちは脳卒中の罹患率がゼロかというと、そうではない。120/70の正常値の人でも脳卒中 は起こってくるわけです。それに比べて、例えば180/100 以上になると何倍も脳卒中が 起こってくるという意味なのです。ですから、ゼロという話はすべてのことであり得な いと理解していただければいいと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。外口参事官、どうぞ。 ○外口参事官  先ほど小泉先生が、添加物とか残留農薬は安全性が確保されているという話をされて いるときに、会場の皆さんのお顔を拝見していたら、「えーっ?」という雰囲気が伝わ ったので、補足説明をしておきます。  添加物とか残留農薬は、そんなことをいってもたくさんの種類をとって大丈夫なのか ということがあると思います。添加物も昭和40年代ごろに次々に危ないと言って禁止し てきたではないか。残留農薬だって有機ということがもてはやされているのだから何か あるんじゃないか等、いろいろあるとは思いますけれども、ここも、単に一日摂取許容 量を調べているだけではなく、その後のフォローもしています。  例えば添加物では、「マーケットバスケット方式」といって、ある人が実際に食べる 量を計算して、それと同じものを買ってきて分析して、添加物がトータルでどんな種類 がどれだけ入っているか調査しています。それで見ると、今のところ一番多いのがソル ビン酸で、一日摂取許容量の 1.2%をとっています。プロピレングリコールがその次で 0.7%です。実際に調べてみると、一日摂取許容量より非常に少ない。もちろん個人差は ありますし、買い方も差があるのでいろいろあるでしょうけれども、そこそこのところ には入っています。こういうフォローはずっとしています。  例えば農薬でも、いろいろな種類を使ったら何か変な作用が出るんじゃないかという ご意見もあると思います。ここもいろいろと研究していまして、例えば生産高の多い40 種類の農薬を全部、許容量ぎりぎりまで動物に投与して何か起きるかどうか発癌性を調 べましたが、何も起きないのです。ただその 100倍ぐらい使えば、それは起きますけれ ども。  そういった試験もいろいろやっております。そういうことも踏まえての「安全だと思 われています」ということですので、補足説明をしておきます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。ほかにも何かございましたら、会場の方から意見を受けた いと思いますが、発言をされたい方はいらっしゃいませんか。 <質問4>  今もいろいろと議論になっております事柄は、日本も情報化時代と言われて久しいの ですが、まだまだ実際に情報を発信する側もその受け手側もかなり未熟なのです。です から、先ほど来出ているような風評公害とかいろいろな問題が出てきます。学会の単発 的な発表が、さも危険だというとらえ方もされてしまう。いろいろなことがありますの で、もっともっとわかりやすい情報を。特に行政は解説を付けてほしい。今の添加物の 問題もそうです。皆さん方は本当にわかっておりませんので、あらゆる機会に情報公開 をする。しかもそのときに、発信される側は受け手側がかなり未熟であるということを 十分考慮された内容で発表していただきたい。  例えば先ほど小泉先生からお話があった中でも、鳥インフルエンザウイルスは実際に は人に感染しません。なぜなら受容体がないので人にはうつりませんという発表と同時 に、マスコミから、しかしながら濃厚感染では感染しますという話が出てきますと、鍵 穴がないのにどうしてたくさん食べるとだめなのかということで、わからなくなってし まうわけです。その辺も含めて、わかりやすくきちんとした情報を提供していただきた いと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。小泉先生、お願いします。 ○小泉委員  私は獣医学の専門ではありませんが、非常にたくさん曝露されると誤って入ることが あるということです。私はこれを子供を産むことにかこつけて話をしようかと思いま す。  実は人間は子供を1人産みます。たまに2人の子供が出てきます。あれはどういうメ カニズムかというと、1つの精子が卵に入りますと、途端に周りに他の精子を入れない ような膜ができます。ところが誤って2つ入ると2人の子供ができます。そういうこと が鳥インフルエンザでも起こるのかなと思ったわけです。たまたまものすごくたくさん ウイルスが来たときに、誤って入ることがあるのかなと。適切な例かどうかはわかりま せんが……。  本来はそういうメカニズムであっても、違うことが起こることもあるのだということ を獣医さんはおっしゃっていました。 ○コーディネーター  ありがとうございました。ほかには何かございますか。今の方よろしいですか。 <質問4>  結局、先ほどさんから話がありましたように、食品のなかにゼロリスクはないんです ね。今のウイルスの話もそれと同じだと思います。一般には難しい話ですが、豚を通せ ば変異するからうつるというのはわかりやすい。ところが、実際には鳥からダイレクト にうつる。でも食品や卵、肉は安全だよという話は、なかなか一般にはわかりにくいも のですから、発信する側でわかりやすく解説して提供していただきたい。  今、安全性ということはかなり科学的な根拠で言えることですが、安心、不安を取り 除くことは大変難しいことですので、その辺の発信の仕方をよろしくお願いしたいと思 います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。小泉先生どうぞ。 ○小泉委員  追加で申し上げます。鳥インフルエンザのことなんですが、我々4府省の「国民の皆 様へ」という中では、口から入る食品は全く安全であるということです。ベトナムとか で人体影響が起こっているのは、呼吸器感染です。感染経路が全く違うのだということ を言い忘れました。本当に濃厚感染だと、肺は血液が本当に豊富ですから、入った場合 にすぐさま入りやすいという臓器的な問題もあります。恐らく、濃厚なウイルスが山の ようにやってきたときに、肺は直接入りやすいのではないかと思います。  経口的に食品としてとったものは、今までそういう事例もないので、安全性が高いと いうことをご理解いただければと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。鳥インフルエンザの場合は、たまたまその当時、海外で人 の感染事例も出ていたので余計混乱したのではないかと思いますが、ほかには何かござ いますでしょうか。どうぞ。 <質問5>  食品に戻ってしまうのですが、リスクコミュニケーションの個人的な感想ですが、私 は生協の立場で食の安全には関心を持っていたのですが、BSE問題発生以後、日本の 食品安全行政は本当に抜本的に変わってきたと感じております。先ほど農林水産省の方 が言われたように、生産振興一辺倒から、基盤としての安全性確保が担保されなければ いけないというところに立たれたことは、大きな前進かなと思っています。  こういう場でリスクコミュニケーションの会議をやるということもあるでしょうし、 ホームページやいろいろな場で意見を出し、もらうということもあるでしょう。栃木県 の大島さんも言われましたが、県の安全確保指針が公表されて、パブリックコメントを 私どもも出したのですが、出された団体は非常に少ないという話を伺っています。双方 向で初めてコミュニケーションになると思いますので、生産者や消費者の団体から積極 的に出していく等、お互いの努力が非常に重要かなと思っています。  そういう意味では、竹内会長が言われたように、うちでは窓口を開けているよ、パブ リックコメントを受けているよというだけではなくて、実質的にそれをふやすような努 力を行政の方にはもっとしていただきたいと思っています。  私も質問を1つ出したのですが(質問11)、農薬のポジティブリスト制で、国際基準 ということで平均値度とりますという回答になっているのですが、平均値という回答は どうも主体性が感じられないという気がします。日本は安全性については高いレベルを 目指している国ではないかという期待値があります。そういう意味で、もっと積極的な 姿勢を国民に見せてほしいと思っています。この回答では会場の皆さんも納得性が弱い のではないかという気がいたします。 ○コーディネーター  ありがとうございました。外口参事官、お願いします。 ○外口参事官  残留農薬のポジティブリストのところのご質問ですけれども、生協さんには以前から ポジティブリストをつくるべきだというご意見をいただいております。やっとできるよ うになったのですが、そのつくり方は、今までないものを急につくるわけですから、国 際基準も含めて、ある程度科学的な評価がきちんとしている基準を実際につくっている アメリカやカナダ、EU、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国を参考にしてや っております。  どうやってつくるかですが、この5カ国でも物によって微妙に違うところがありま す。どうして違うかというと、農家の方はご存じのように、農薬の使い方は作物によっ て違うだけではなくて、その土地の気候によっても大分違うわけです。そういうことも あって、それぞれの国で違います。それから、それぞれの国でその作物が主要な作物で あるかないかによっても全然違います。トータルでその農薬をある一定基準以内に抑え るためには、その国の人たちがその農薬に絡んだ作物をどんな割合で消費するかによっ ても相当違いますので、科学的に安全だということは間違いないのですが、国によって ちょっとずつ違います。  ちょっとずつ違ったものを参考にしてどうつくるかというときに、意見が2つに分か れます。1つは、今ご意見があったように、科学的にどこかの国で守れているなら、一 番低い所に合わせた方がいいのではないかというご意見です。全く逆のご意見もありま す。科学的にしっかりしているなら、許容いっぱいまで使うわけではないのだから、上 の方でやっておいて、あとは自主努力でやればいいではないかという意見もあります。 実際にそういうご意見が寄せられています。もう一つあるのは、低い方にせよ高い方に せよ国際的な整合性は保たなければいけない。そうしないと輸出入ルールの話にぶつか ってしまうわけです。 もう一つあるのは、低い基準の中に、実際にはその作物は自分のところではメーンでは ないから、とりあえず最低限にしておこうかという感じで基準をつくっているものにぶ つかることもあります。いろいろなファクターがある中、どうしようかということで相 当議論してきました。その結論が、今のところ、平均値ということになりました。  納得がいかないというご意見でしたが、経緯は、そういうことで平均値になったわけ です。5カ国の中で高いところに合わせたわけでもないし、低いところに合わせたわけ でもない。日本的と言ったらあれですけれども、決めておいて、あとは問題があったり 新たな知見があれば、それはまたきっちり決めていく。この基準に合わせて農林水産省 や環境省で使い方を管理する、こういう仕組みを目指しております。 ○コーディネーター  補足させていただきますが、確かに平均値という数値がはまっていくわけですが、現 状は基準がないので、ないところから比べると、ある一定の基準が示せるという点で は、全く規制がないよりは大分進んでいるかなということは一つあると思います。  今のコメントでご不満等があればご発言いただきたいと思います。 <質問5>  国際的な問題ということについては、今はグローバル化の時代ですので、基準を設け なければいけない、またそれを参考にしなければいけないというのは、確かにそのとお りだと思います。私どもの要望としては、国民の健康確保ということで安全基本法や今 度の食品衛生法の視点から見て、どういうところを目指していくのかという国の姿勢が わかるような、大げさな言い方かもしれませんが、そういう視点からも私どもは見てい るということですので、意見として聞いていただければと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。倉持さん、どうぞ。 ○倉持工場長  つくり手側から、今のことにコメントさせていただきたいのですが、平均値というこ とで、いかにも日本的だというご意見がありましたけれども、我々メーカーとしては、 現状値はどうなのかということを踏まえていただきたいと考えております。例えば平均 値を基準としたときに、既に平均値を超えてしまったものを食べているかもしれないわ けです。 「私は十何年間食べてきてしまったけれども、私の健康はどうなるの?」「20年ぐらい 既に食べてしまっていますね」という話になっても非常に混乱するだろうと思います。  先ほど気候によって農薬の使い方が違うという話がありましたがある果物を現地まで 見に行った時のことですが、ある地方に行くと「ここは農薬なんか使わないよ」と言い ます。「どうしてですか」と聞くと、「土壌は酸性で地面の虫はいないし、周りは気候 的に虫が生息できない」と言うのです。でもそこの農薬使用を基準にしてしまうと、よ その地域では気候など条件が違うために農薬なしではつくれないわけです。今の例を極 端に表現すると、0(農薬を使わない)と100(農薬使用)平均して50と基準を決 めたとしても一方の地域では生産できないことになります。ということで、ばらつきに 着目する必要があると考えています。先ほどの後出しジャンケンではありませんが、 「特定物質は検出されないこと」と決めたとします。従来であれば、ppmオーダーで しか検出できなかったものが、検査技術の進歩の考慮する必要もありますが、今ではp pbという単位でさらに 1,000倍精度良く検出してしまう。そこで問題が発生します。 「実は特定物質が入っていたじゃないか」となる訳です。現状を踏まえて基準値を決め ていただけると我々生産側としては納得がいくのですが、いかがでしょうか。  私どもを見学なさった方とディスカッションをした時のことですが、健康に悪いと言 われている添加物が入った製品を、「私たちは既に食べちゃっているけど、どうなんで しょうね」という話という話になりました。  例えばチクロの入っているお菓子が私の子供のころにありました。甘くて安くておい しいのでたくさん食べました。後から「あれは発癌性があります」と言われても、「も う食べちゃったけれどもどうなるの。」混乱してしまうことが、現実的にはあります。 ○コーディネーター  ありがとうございました。1点だけ補足させていただきますが、ポジティブリスト は、リストにない農薬はゼロでなければならないということではなくて、多分 0.1とか 0.01とか、ある程度の許容量が環境からのコンタミネーション等も含めてあり得るの で、そういう数値以下の残留にするということだと思います。  追加のコメントがほかにございますか。  会場の方から、ほかにコメントはありますでしょうか。時間も4時半になっておりま すので、もしよろしければこれで終わりにしたいと思いますが、いいですか。  それでは、どうもありがとうございました。司会の方に進行をお返しいたします。 <司会>  パネラーの皆様大変ありがとうございました。  それでは、閉会に当たりまして、外口参事官よりご挨拶をお願いいたします。 ○外口参事官  本日はどうもありがとうございました。  私の方からは1つだけお願いがあります。このアンケート用紙をぜひ書いていただき たいと思います。特に自由記載のところは、空白のところも入れて結構ですから、ここ に言いたいことを何でも書いてください。我々は今までこういった意見交換会を繰り返 してきて、自由記載のところを見ながらだんだんやり方を変えてきました。宇都宮は今 回が初めてですけれども、来年もう一度来るときにもっとよくなっているかどうかは、 きょうどういうコメントを書いていただけたかにかかっています。匿名ですから、忌憚 のないご意見をお寄せいただければと思います。よろしくお願いいたします。  ありがとうございました。 <司会>  以上をもちまして、「食品に関するリスクコミュニケーション」を終了させていただ きたいと思います。  本日は、ご参集いただきまことにありがとうございました。