03/12/09 食の安全に関する意見交換会(議事録)           輸入食品の安全確保に関する意見交換会                         平成15年12月9日(火)                         於:三田共用会議所 ●司会(磯貝)  ただいまから「輸入食品の安全確保に関する意見交換会」を開催したいと思います。 私は本日、司会を務めさせていただきます厚生労働省の医薬食品局食品安全部監視安全 課輸入食品安全対策室の磯貝と申します。本日、終わりまでどうぞよろしくお願いいた します。  初めに、本日お配りしております資料の確認をさせていただきます。封筒の中に議事 次第の1枚紙がございます。それに沿って説明させていただきます。下の方に配付資料 一覧が書いてございます。資料1「輸入食品の監視」ということでポンチ絵がありま す。資料2−1「輸入食品監視指導計画(案)」というものでございます。それから、 資料の2−2「平成16年度輸入食品監視指導計画(案)」というものでございます。それ から資料3「農林水産省における輸入食品の安全対策について」、それから資料4「食 品の微生物学的衛生管理」、資料5「輸入食品の安全確保に関する考え方と今後の課題 」、資料6「輸入食品の安全確保に関する意見交換会〜事業者としての取り組み事例〜 」というものでございます。それから、資料番号は振ってございませんが、この会場に 御参加いただいている方から事前に御質問をいただいております。それに対する意見、 質問、要望ということで、その回答の横紙が入ってございます。それからあと、終了後 に、この会に関するアンケートをいただきたいということで、「意見交換会に御参加い ただいた皆様へ」という形でアンケート用紙を配付してございます。もし資料に不足等 がございましたら、事務局もしくは受付までお申し出くださいますようお願いいたしま す。  続きまして、簡単に本日の議事進行を紹介させていただきます。  まず、本日は2部構成とさせていただきます。第1部は、輸入食品の安全確保に関す る行政や研究者側の取組に関する説明とさせていただきます。所要時間は約80分程度を 予定いたしております。第1部終了後、約10分間の休憩をいただきまして、3時35分を めどに第2部の意見交換会に移らせていただきます。なお、会場の都合上、午後5時ご ろには終了させていただきたいと存じますので、あらかじめ御承知いただきたく存じま す。  それでは、第1部の輸入食品の安全確保につきまして説明に入りたいと思います。そ れでは東京検疫所の森田所長より輸入食品の監視について説明をお願いいたします。 ●森田東京検疫所長  御紹介いただきました東京検疫所の森田でございます。  初めに検疫所というのをちょっと御紹介させていただきたいと思います。なかなかな じみのない皆さん、保健所の方が知っている人が多いと思いますけれども、検疫所とい うのは、2つの大きな柱がありまして、1つは、昨年来騒ぎになっていますSARSの ような、ああいう海外での感染症が侵入してくるのを防止するための人の検疫ですとか そういうことをやっています。もう一つの大きな柱が輸入食品の安全確保ということ で、届出を受けて検査をし、そういうような輸入食品の安全確保のための仕事もしてい るということであります。 (スライド)  初めに、我々の食生活はどれぐらい海外に依存しているのかという、この表は農林水 産省の統計なのですけれども、平成13年、これを見てきますと、米はほぼ100%、これは WTOの関係で一部輸入があるけれども、ほぼ100%自給できる。小麦になると11%。大 体600万トンの消費のあるうちに、日本国内でつくれるのは70万トンぐらいしかない。そ れから豆類、これは7%になっていますけれども、大豆で見るならば5%ぐらいしかな い。500万トン近く消費しているうちの30万トンぐらいしか生産はないという状況です。 しかし、こう見てきますと、肉類は53とか卵は96、牛乳・乳製品68、魚介類が非常に減 ってきて、今、輸入が半分にかわる。大体900万トンの消費がありますけれども、そのう ちの半分の450万トンが輸入に変わってきている。しかし、こういう状況を見ていくと、 意外とこの辺は自給率が高いのじゃないかのかと思いますけれども、ここにある供給熱 量総合食料自給率が一般に言われてカロリーベース、我々が食べているもののカロリー 換算にしてその出はどこかと。ということは何を言っているかというと、ここの部分の 畜産物の餌を海外に依存している。この米の量より多く、この米は大体1,000万トン近く 生産しますけれども、トウモロコシは1,200万トン家畜の餌で輸入している。それがこの 肉になり牛乳になり卵になる。 (スライド)  それを計算していきますと、例えば乳・乳製品は、国内生産の68%、これは平成13年 ですけれども、餌の自給率は43%、そうすると実際の実力は29%しかない。海外から一 切穀物を遮断されたら29%しか自給率はない。それから牛肉でいくならば、実際に35% の自給率になっていますけれども、もうとっくに輸入の方が多いわけです。この餌の自 給率を見ていくと9%しか実力がない。それから、豚肉でいくならば6%、卵はこれだ け自給率が高いと思われていたものが10%、鶏肉は7%、これが実際の畜産物の日本に おける実力。ですから、餌を切られるとこういう状況になるということです。それで、 この乳・乳製品、あるいは牛乳の自給率が高いのは草を食べさせるからです。この自給 率を高めるということは、草をいかに有効に使っていくかということになります。 (スライド)  今のような畜産物のことを考えていくと、カロリーベースで60%は海外に依存してい るというのが、そういう餌を勘案した数値だということです。輸入届出は実際どのぐら いあるかといいますと、年々増えてきて162万件、重量でいきますと、お腹の大きさは変 わらないわけですから大体3,200万、3,000万のところを推移している。162万件の届出が あるということです。 (スライド)  これは輸入食品に対する消費者の方はどういう意識を持っているか。これは先般、食 品安全委員会が公表していましたけれども、これを見ますと、食品の安全性の観点から より不安を感じているのは何か。農薬とか添加物とか汚染物質、個々の物質の他に総称 的な輸入食品というのが出てきます。農薬に次いで輸入食品が66.4%、この傾向が非常 におもしろいのは、農薬、添加物、汚染物、化学物質が上位にきて微生物が下にきてい るというところが、これは消費者のアンケートをとると同じパターンが出てくるわけで す。 (スライド)  これは国民生活モニター、平成14年度調査ですけれども、生鮮食品には新鮮さ、新し さ、加工食品に安全性を求めているという状況がある。 (スライド)  食品を選ぶ際、重要と考えるのは日付なのですね。消費者の方は少しでも新しいもの を買いたい。それから原産国、これはどこの国から輸入しているか。この原産国の意味 も2つあって、フランスのワインならいいなというのと、東南アジアの野菜なら嫌だと いう意味もあって原産国、次いで添加物を含むかどうか。 (スライド)  これが国産品と輸入品の選択で、「多くの場合、国産品」、「どちらかというと、国 産品」というのは生鮮食品では95%、加工食品でいうなら84.2%、特にこだわらないと いう人は9.1%、多くの場合、輸入品という人はほとんどいなくて、この0.1%というの がチーズであればヨーロッパのチーズがいいとか、あるいはワインならイタリア、フラ ンスがいいとか、そういうことなのだと思います。それで、値段が倍になっても、輸入 食品を買いますかというと、生鮮食品であれば、倍になっても国産を買うという人が 50、ネギが2本で国産が200円、輸入品は100円、それでも半分の人は200円出しても国産 を買いたいと。加工食品でいくと45%、こういうふうに輸入食品に対する不安、あるい は国産品に皆さんがいかに安心しているかというのは、この表を見てわかると思いま す。 (スライド)  これは読売新聞が昨年8月に調査した国産の米、野菜、肉などに対する印象で、「お いしい」、「安全性が高い」、「値段が高い」、「新鮮だ」。外国から輸入された米、 野菜、肉など「安全性が低い」、「値段が安い」、「おいしくない」、こういうような 大体パターンは、消費者の認識は一致しているのです。 (スライド)  これはセゾン総合研究所が、これも昨年調査したのですけれども、「食品の安全、安 心に関する消費者意識の行動の変化」で現在の信頼の程度、「信頼している どちらか といえば信頼している」、「以前は信頼していたが今は信頼していない」、「もともと 信頼していない」、ここで非常に低いのは海外生産者、もともと信頼されていない。食 品輸入業者、これは信頼されていない、もともと信頼していない、こういうパターン。 これは昨年来いろいろ事件があったから、特に行政は、今まで信頼していたけれども信 頼できなくなったというのと、もともと信頼していないというのが高い。これはいろい ろなアンケートを見ていくと同じようなパターンが出てきます。そして、こういうふう に信頼していないけれども、実際、食品の安全確保にはどこに期待するかといったら、 行政に期待するというのが大体の、ここにはありませんけれども、そういう状況です。 (スライド)  輸入食品がなぜ不安を持たれるかということですけれども、これは消費者の方から離 れ過ぎているということです。輸出国で生産・加工・製造して、あるいはA国で生産し たものをB国で加工・製造する、それが輸入時にチェックされて、それは輸入者の責務 であると同時に、国も責務を持つ、そして国内の流通でも加工・製造、国内の安全確保 対策も必要。かつて輸入食品というのは、原料を輸入して国内で加工・製造が多かった のですけれども、あれだけ届出件数が伸びているということはどういうことかといいま すと、海外で加工する、海外で野菜をつくってもってくる、そういうことが増え出し た。そしてこういうパターンも、ノルウェーでとれたサバをタイへもっていって開きに しようと。塩蔵にして、そして入ってくる。消費者の皆さん方から見ると非常に見えな い。自分が参加することもできない、見えないものに対する漠然とした不安というのが 当然出てくるのだろうと思うのです。  それから、日本の今輸入される方というのは、輸出国では、どうしてそんなことをす るのかなというような加工までしてもってくるのがある。例えば、エビをむき身にし て、切り身を入れてのばしエビ。例えば、5センチのエビを10センチにのばす、そうす ると天ぷらが長くなる。えび天が長くなって見た目がいい。中国の人にしてみると、そ んなのどうしてするのかなと思うでしょうけれども、日本にいると、昔のえび天という のは5センチあって、あと小麦粉がずっとついていたのですけれども、今は万遍なくエ ビが入ってくるというのは、そういう手間をかけてもってくる。インドネシアなどでと れたものを中国にもっていって、そういう加工して冷凍でもってくるというのもあるわ けです。そういうことで、消費者の方々は、こういうふうに目にすることが出来ないこ とに伴う不安というのが多いのだと思います。 (スライド)  食品の検査手続を見てみますと、営業上使用しようとして輸入さる食品はすべて検疫 所に届けなきゃならないわけです。個人でお持ち帰りになるものは食品衛生法上は問題 ありませんけれども、営業上使用するものはすべて検疫所に届ける。検疫所に届出され た場合、食品衛生監視員、これは一定の資格のある人が食品の安全に詳しい人が書類を 審査して、試験検査成績の提出するよう求める。これは、あなたはこういう検査をし て、そのデータを持ってこなきゃ輸入は認めませんよ、あるいは食品衛生監視員の人が 保税倉庫に出向いて、現物を検査し、試験検査のためのサンプルをとって国が自ら検査 していくもの。そして書類審査だけで今までの経験からいって問題ないというもの、そ ういうのに分類していくわけです。そして、書類審査、現物の確認、試験検査の成績な どによって食品衛生法に適合していることが確認できたものは初めて輸入が認められ る。すべてこういうプロセスを経ているわけです。 (スライド)  これを模式化していくと、貨物が到着して、輸入届出が検疫所に出ます、書類審査し ます。全国に31か所の検疫所がありますけれども、そこで書類審査をして、これは命令 検査、命令検査というのは後でちょっと説明しますけれども、先ほど言った試験成績書 を持ってきなさいというようなものですね。荷物はここでとめられているわけです。検 査結果が出るまでこれは輸入が認められない。そして検査結果が出て合格であれば手続 ができる。不合格であれば積み戻し、廃棄ということになるわけです。このモニタリン グ検査というのは国の、命令検査は輸入者の経費、自分の責任で検査するわけですが、 これは国の費用で検査していくわけです。輸入手続は済むけれども、検査結果が出て、 違反であれば、不合格のものは回収等を指示して回収させるということで、この検査を する。あるいは書類審査だけで手続が終了していく。税関で通関して国内へ入ってい く。これはすべてここの関門を通っていくということになるわけです。 (スライド)  命令検査という、先ほど輸入者が費用負担して、厚生労働大臣あるいは厚生労働大臣 が指定した機関によって検査をする。ですから、どこでもやっていいというわけじゃな く、厚生労働大臣が指定した検査機関にいって、そしてサンプリング倉庫に入ってサン プリングすることからすべて決められているのです。検査機関の職員でなければできな くなっている。輸入者の方が都合よく持っていって検査するというわけではない。届出 された食品等が命令検査対象食品に該当する場合、これは国と対象食品と対象物質を厚 生労働大臣が決めて、そういうものについてはその検査を受けなければ日本に入らな い。例えば中国のケールのシベルメトリン、タイのケールのシベルメトリン、これは農 薬ですけれども、そういうようなものについては検査をして、データをもってきて、基 準に合致しているとわかって初めて輸入できるということなのです。 (スライド)  モニタリングというのは、大体リスクアセスメントをしていって、輸入数量とか輸入 件数、違反率、それから、そこの国はいろいろ問題がありそうだというものについて は、年間計画を立てて検査をしているわけです。これは国のお金でやっている。先ほど は輸入者責任ですけれども、これはまだ確実に違反が疑わしいということじゃないの で、違反のものを拾い上げるために幅広くモニターしていく。違反が発見された場合 は、次に命令検査にいくとか、モニタリングを強化していく、そういうようなことで検 査体制を構築する。これは命令検査と併せて非常に重要な対策でありまして、平成14年 5万2,000件やっていましたけれども、平成15年は7万3,000件と増えて、これは現場に とってみれば大変な仕事なのです。私どもの東京検疫所、日本で一番届出が多いのです けれども、課が2つあって、1つの課は、衛生・食品監視課というところがあるのです けれども、ここは職員24名で年間34万件、一日1,500から2,000件の届出がくる。書類審 査を全部した上で、何の命令検査にあたっているか、これはモニタリングにいくのか、 そういう判断をする。非常に、業務が増えてきていますけれども、私どもの職員は一生 懸命やってくれています。 (スライド)  これはちょっと細かい数字ですからテキストで見ていただくとわかりますけれども、 160万件の届出のうち、検査は13万6,000件、これは率にすると8.4%。国がやっているの は6万、それから、指定検査機関でやっていただいているのは7万8,000、これは外国公 的検査機関で日本政府が認めている検査機関、ここでやってきたデータを受け入れてい るのはこのぐらいあるということです。年々行政検査も増やしてきています。輸入者が 自らやる検査も増やしてきています。160万件届出がある。では違反はどのぐらいあるの か。大体ここのところ1,000件程度、率でいくと0.02%ぐらい。これは少ないのですよと いうのがいいのかどうかわかりませんけれども、いずれにしても、このぐらいの数の違 反ということです。 (スライド)  違反の内容を見てみますと、制度の違いによる違反が一番大きいのですね。日本と輸 出国の制度の違い。それは添加物の使用基準の違反だとか、農薬の基準の違反ですと か、抗菌性物質の違反、これが延べ1,000のうちの7割は日本国内の規格基準に合わな い。それからもう一つ多いのは6条、日本では使えない添加物を使っている。しかし、 ほとんどは国際的には安全性が評価されているが、日本では使用の必要性がないという ことで承認を受けていないのが多い、厚生労働大臣の指定を受けていないのが多いわけ です。この違反が多い。それから、4条違反というのは非常に問題ですから、例えばア フラトキシンの問題ですとか、毒魚の問題、こういうものは100件、こういうような状況 です。 (スライド)  食品衛生法の改正がこの5月に行われました。ここちょっと細かいことがありますけ れども、指定検査機関登録制度ですとか、輸入業者に対する営業禁止、全体的には食品 衛生法改正のフレームですけれども、輸入食品に関してはここら辺がある。あるいは監 視、検査体制の整備。 (スライド)  具体的に輸入食品でどういう強化をされてきているか。命令検査の対象食品の政令指 定の廃止、これは政令で対象食品を絞っているものですから、政令で定められていない 食品を命令検査にかけられなかったのです。今回はすべての食品に命令検査がかけられ るようになった。これは非常に大きな改正の意義があるところです。それから、今回説 明があると思いますが、輸入食品監視指導計画の策定、もう一つは厚生労働大臣によっ て輸入業者に対する営業の禁停止処分が新たにつくられた。今までは都道府県知事に任 せていたのですけれども、今回、大臣が直接できるように仕組みを変えたということで す。  それから指定検査機関の登録制、公益法人だけじゃなくて、あらゆるところが一定の 正しいデータを出せるということを保証されるところについては、登録試験検査機関と して認めていこうということです。それからモニタリング検査にアウトソーシングして いこうと。国で全部やっていますけれども、一部条件をつけて、外部のこういう検査機 関にやっていただくように仕組みを変えていこうということに変えたわけです。非常に 監視の強化につながっていくのだろうと思っています。 (スライド)  これは今日説明されるでしょうが、国内も含めて全体的な食品衛生の監視で、こうい う計画も既につくっていますけれども、これを受けて今日説明がある輸入食品監視指導 計画がつくられるということです。 (スライド)  それから、これは昨年に議員立法で改正されて、違反の可能性が非常に高いというも の、これは数字を書いていますが、60件に一個、5%に違反があったものについては、 いろいろ手続を踏みますけれども、そこの国の例えば野菜なら野菜なら、ネギならネ ギ、これについては輸入禁止ですよということをとれるようになった。これは包括的な 輸入禁止という制度もできております。これはまだ適用されていませんけれども、これ も非常に強い、輸入国にとってもきつい仕組みができたわけです。 (スライド)  もう一つは、輸入者も含めた食品等事業者の責務で、輸入者の方も通常時の措置とし ては、知識、技術の習得に努め、原材料の安全性の確保をし、自主検査もしっかりやり なさい。それから記録をつくりなさいと。誰に、どこから仕入れて、どういう添加物を 使っていたのか記録を残すということが非常に重要になる。それは食中毒の発生時の原 因究明・被害拡大防止に活用できる。それから売った先も全部書いておきなさいよとい うことです。また、輸出国での危害発生時に、例えば輸入者の方があそこの国でこうい う事件が起きているよ、O157の食中毒が出ているよとかということがあったら、ぜひ行 政に情報提供してくださいよということです。廃棄等の措置も迅速に講ずるように、輸 入者の方に対する責務を強く出した。 (スライド)  監視員の数はどのぐらいなのかということですけれども、平成元年89名、現在では283 名、このところ毎年増やしている。現在、平成15年も増やしています。そういうことで マンパワーの充実を図ってきているということです。 (スライド)  全国こういうところで届出を受け付けている。31か所の窓口はここです。 (スライド)  最後になりますけれども、これは食品安全委員会の行った調査ですが、輸入食品の安 全性の確保のために行政に期待すること。安全モニター455名、厚生労働省の検疫所が行 う輸入食品監視業務の強化。これは今お話ししたとおり法律改正し強化してきた。この ことに期待している人が非常に多いということ。あとはもちろん輸入国の衛生管理です とか、日本からの技術協力をしっかりやったらいいじゃないかということで、検疫所に 期待されていることは非常に多いということで、今後も消費者の皆さん方に安全な輸入 食品を食べていただく。多くの食品が輸入食品なしには食生活が成り立たない。それが 不安だという食生活、そういうことをなくしていくためにも、こういうリスクコミュニ ケーションを一生懸命やって、そして検疫所が信頼されて、輸入食品の監視をしっかり やってくれているのだなと、この期待に応えていくために一生懸命やっていきたいと思 います。  御清聴ありがとうございました。 ●司会  ありがとうございました。第1部の質問等につきましては、第2部の方でまとめて会 場の方から質問いただきたいと思います。  続きまして、食品安全部輸入食品安全対策室の桑崎室長より、輸入食品監視指導計画 案について説明をいたします。よろしくお願いします。 ●桑崎輸入食品安全対策室長  御紹介をいただきました輸入食品安全対策室の桑崎でございます。  パワーポイントで説明をいたしますが、お手元の資料No.2−2、これが今回提案さ せていただいております計画の案でございます。これも見ながらお話を聞いていただけ ればと思います。 (スライド)  先ほど森田所長のお話にもありましたが、輸入食品監視指導計画は、この度の食品衛 生法の改正によって新たに厚生労働大臣が策定することになった計画です。法令上は先 ほどの説明にもありましたが、監視の実際に当たって基本的な方向を示しております監 視指導指針というものが既に8月に策定をされています。総論的なものです。これを受 けて各論ということで輸入食品に係る監視指導計画が今回提案されているということで す。  どういうことをこの監視指導計画に規定をするのかということで2つ法律に書いてあ ります。1番目は、重点的に監視指導を実施すべき項目、2番目として、輸入を行う営 業者、輸入者に対する自主的な衛生管理の実施に係る指導に関する事項、この2つを盛 り込んだ輸入食品監視指導計画を策定するということになるわけです。この計画は、毎 年度厚生労働大臣が定める、当然、公表する。2番目、これを策定する際には、この度 の説明会もそうですが、広く国民の方々から御意見を求める。現在パブコメ中です。さ らには監視の結果については、公表するということになっています。これが計画の全体 図でございます。結果の公表については、翌年度の6月ぐらいを目途に全体を公表した い。それから年度途中、半年に1回ぐらいは中間報告ということで公表していきたいと いうふうに思っております。今回参加いただいている消費者の方々から、計画をつくる のだったら公表してほしい、さらには結果を公表してほしいという御意見がございまし たが、既に法律上規定されているということを御理解いただきたいと思います。 (スライド)  輸入食品の監視指導に当たって基本的な考え方を実は最初にお示しをしています。非 常に重要なことが1番目に書いてありまして、食品安全基本法に食品の安全性の確保は 国の内外における農林水産物の生産から食品の販売に至る一連の食品供給行程の各段階 において、適切な措置を講じることによって安全性を確保するのだということが規定を されているわけであります。  これを踏まえて、輸入食品の安全確保というのはどういうふうに講じるのか、3つの ステージがあるのではないか。1番目は、川上対策ということで輸出国における対策が 重要だと。これは後ほど各論で御説明申し上げます。2番目としては、我々が今やって おり先ほど東京検疫所長から説明いただいた水際での監視強化ということも、当然これ は重要です。さらには、国内に流通するときの地方自治体によるチェック、この3つの ステージで安全性を確保していくというのが基本的な考え方です。 (スライド)  重点的に監視指導を実施すべき項目ということで3つ挙げています。重複の説明は省 きますが、1番目は届出を十分にチェックする。先ほど東京検疫所長から話がありまし た。証明書の添付を求めているものもありますし、それから、内容が不明であれば、報 告徴収をして報告を求めるということで、食品衛生法に適合していることを確認すると いう第1段階。2番目にモニタリング検査を実施する。これはいろいろな国からいろい ろな食品が入っている。網の目を細かくして違反のものが入っていないかどうかという ことをモニターする。14年度は5万2,000件、15年度におきましては7万3,000件、それ から16年度につきましては、7万6,000件程度のモニタリング検査を考えているところで す。当然ながら、このモニタリング検査で引っかかったものについては、以降、輸入時 の検査を強化するという体制をとることにしています。  資料の別表の1というのがパワーポイントに入りませんでしたので、こちらをちょっ とごらんいただきましょうか。この資料の2−2、計画案の別表の1です。ここに品 名、検査項目、それから延検査件数ということで、7万6,000件の内訳がここに書いてあ ります。16年度については、例えば真ん中あたりに農産食品ということで野菜などの欄 がございます。上から5つ目の欄です。農産食品については、残留農薬については 1万7,800件の検査を実施したい。それから、ナッツ類については、カビ毒が問題ですの で、カビ毒については4,800件の検査を実施したい。さらに遺伝子組換え食品について は、農産食品では1,600件の検査を実施したい。こういうふうに食品群毎に積み上げて 16年度は7万6,000件のモニタリング検査を予定しているところです。 (スライド)  検査を実施するに当たって、どういう食品群にどれぐらい検査を実施するのかという ことですが、モニタリング検査に必要な検体数というのは、コーデックスの分析サンプ リング部会において、統計学的に一定の信頼度で違反を検出することが可能な検査数が 示されています。例に挙げておりますけれども、95%の信頼度の場合、違反率の上下に よって検査件数が変わりますが、例えば、95%の信頼度で違反率が1%以下であること を確認しようと思うと、ある特定の食品群について299検体検査をする。仮にこれが1% ではなくて、もっと厳しい違反率が0.1%以下であることを確認しようとする場合2,995 件の検査を実施する。10%以下であることを確認しようとする場合は29件の検査が必要 となります。  アメリカ等においては、このコーデックスで示された考え方を踏まえて、大体95%の 信頼度で違反率1%以下であることが確認できる検査件数である299を基本として検査を 実施しています。我が国も、先ほど7万6,000件と申し上げましたが、基本的にはこれを ベースにしているわけですが、さらにその食品群がどういう違反の状況であるのか、違 反率が高いのか低いのか、届出の件数が多いのか少ないのか、重量はどうなのだ、違反 の内容で危害度が大きいものはないのかどうかということを勘案して、やはり問題のあ る食品は229検体ではなくて、例えば、違反率が0.5%以下であることが確認できる598件 の検査を実施する。さらに厳しく違反率が0.1以下であることが確認できる2,995検体を 当てはめて検査を実施しようと。また、ほとんど輸入実績がないというもの等について は、もう少し違反率を下げてもいいのじゃないかと、こういう考え方で個別食品群ごと に検査件数を割り当てて検査を実施するというのがモニタリング検査件数の考え方で す。 (スライド)  次に、モニタリング検査違反が発見された場合の対応について説明します。モニタリ ング検査を実施して、特定の国のある農産物で違反が見つかったという場合には、見つ かった時点以降、届出の半分についてモニタリング検査を実施する。検査率を50%に上 げてモニタリング検査を実施するということです。この段階で違反が発見されると2回 の違反ということになり、以降、違反の蓋然性が非常に高い食品が入ってくるのだとい うことで検査命令を実施しているわけであります。  上の欄の方について申し上げますと、そういうふうに1回、2回待つのではなくて、 外国で健康被害が発生している、そこでつくったものが日本に入ってきているのだと、 もしくはそういうおそれがあるのだというものについて直ちに検査命令を実施するとい うことで運用しているわけであります。検査命令の解除につきましては、ここに書いて ありますとおり、基本的には輸出国において再発防止対策が確立されたということを我 々が確認することが必要であるというふうにしているわけであります。 (スライド)  先ほども申し上げましたように、我々は様々な国からいろいろなものを輸入してい る。輸入食品による国民の健康被害を防止するというためには、海外における食品安全 情報もしくは危害情報が発生した場合に、その情報をいち早く入手し、輸入時の検査強 化をするということが極めて重要です。海外における食品安全情報を今どうやって収集 しているのかということでありますが、2つのツールがございます。1つは、昨年度に なりますが、これから講演いただきます山本部長所属の国立医薬品食品衛生研究所、こ こに安全情報部という組織をつくった。ここで食品のみならず医薬品もそうですが、微 生物、化学物質、それぞれについて海外の安全情報を収集している。収集先は、例えば 国際機関として、WHO、さらにはアメリカのFDA、USDA、カナダ、EU、そう いう国からの安全情報、さらには文献からの情報も収集しており、この情報を我々に提 供いただいているわけです。もう一つは、食品安全委員会の事務局が同じように食品安 全情報を収集している。これについても我々に提供いただいている。こういう情報を我 々が入手して、迅速な対応が必要な場合には、直ちに輸入時検査を強化する、もしくは 既に輸入されている場合には流通状況を調査し、問題があったら回収、さらにその結果 を輸入検査にフィードバックして検査を強化するということを緊急対応として行ってい るわけであります。 (スライド)  先ほど3段階のうちの最初の段階のことを申し上げました。輸出国における衛生体制 の推進というのは極めて重要です。今どういうことをやっているのか。  まず1番目に、輸出国に対して我が国はこういう規制で食品安全を守っているのだと いう情報提供を積極的にしている。例えば、厚生労働省のホームページをごらんいただ くと、英語版で違反の情報など載っております。そういう形で情報提供する、もしくは 在外公館の方にも情報を提供させていただいている。さらに、実際に輸出国で食品安全 業務に携わっている方々に来日をいただいて、その方々に日本の実情について勉強して いただくという、JICA等が実施する開発途上国の方々に対する研修の実施というこ ともやっているわけです。  2番目に、先ほど検査命令の話が出ました。今たしか126品目二十数か国について検査 命令を実施しているわけでありますが、検査命令が実施されている輸入食品について は、輸出国政府に対して、食品衛生法に違反することのないようぜひ再発防止策をとっ てほしいということを要請しているところであります。こういう要請を踏まえて、2国 間協議が始まり、現地調査その他諸々のことを行って、例えば農薬であれば農薬の使用 の管理をどうするか、監視体制はどうするのだ、それから、輸出前の検査をどうするの だということを2国間で協議をした上で、相手国の対策を推進していくということを今 一生懸命やっています。 (スライド)  具体的な例としてはこれぐらいあります。中国産の冷凍ほうれんそうにつきまして は、2回目の輸入自粛中であります。現在、中国政府で改善策を検討中だというふうに 理解をしています。それから、イラン産ピスタチオのカビ毒問題、これもイランがかな り改善を進めたというふうに考えておりますし、タイ産の香草、韓国産のパプリカ、キ ュウリ、これについても韓国側が優良農家登録という制度で農薬の管理ということを進 めています。さらには、中国産の鰻ということについても、これは養殖場の段階でどう やって動物用医薬品をコントロールするかということを中心に中国政府が対策を講じて いるということであります。こういうふうに、それぞれの国のそれぞれの品目につい て、先ほど申し上げましたように、2国間協議を申し入れ、対策を講じていただくとい う作業を実施しているわけであります。 (スライド)  次が輸入者への自主的な衛生管理の実施に関する指導です。輸入食品の安全確保とい うのは、我々行政だけというのはとても難しいわけでありまして、一義的にはここに書 いてありますとおり、輸入者が自らその食品の安全性を確保するということが極めて重 要であります。営業者は、食品安全基本法によりますと、食品の安全性の確保につい て、第一義的に有するというふうに明記されているわけであります。こういう認識をも って食品の輸入に当たることが必要であります。さらに食品衛生法におきましては、輸 入者の責務として、知識、技術の習得、さらには原材料の安全確保、さらには自主検査 の実施ということについて、努力をしていただきたいという規定がこの度の改正によっ て追加をされたわけであります。この2つをベースとして、輸入者に対して指導してい くことになるわけであります。 (スライド)  これもすべてパワーポイントに入りませんでしたので、先ほど同じように資料2−2 の別表2をごらんいただくと、食品群別にこういうことを確認すべきじゃないか、さら に定期的にはこういうことをやるべきじゃないかということの指導事項が入ってござい ます。その一例を紹介いたしますと、真ん中に農産物及び加工品というのがあります。 例えば、チェックポイントとしては、残留農薬が当然ながらある。先ほど言いましたよ うに、輸入者は原材料についての安全性確保を図る必要があるわけでありますので、ど ういう農薬が使用されているのだということについては事前に確認をしていただく必要 がある。さらには定期的に確認する事項として、これは自主検査も含めて安全性を確認 していただくというような、こういう事項をきめ細かく表にしてまとめています。今 後、輸入者に対しては、この表をベースとして指導をしていくことになるということで す。 (スライド)  今申し上げましたとおり、今後は基本的な指導事項を踏まえて、輸入前指導を検疫所 が実施していくことになるということでありますし、特に初めて我が国に輸入する食品 をもってくる場合、それから、過去に違反があったものについては、事前に検疫所に御 相談いただくように、これはぜひ周知していきたいなというふうに思っておりますし、 それから、輸入前の指導で違反が発見された場合には、法に適合するように改善をして いただく。改善ができるまでは輸入しないように指導も併せてさせていただくというふ うに考えております。  それから、自主検査の指導については、先ほど申し上げましたが、特に初回輸入時、 さらには継続して輸入する場合には、定期的に自主検査でその食品の安全性を確認して いただきたいということであります。  それから記録の保存についても、この度の法改正で努力規定が設けられました。これ については、既にガイドラインも出ております。必要な記録をしていただくということ ですし、それから、輸入者はもちろんのこと、実際に輸入手続に携わる通関業者の方、 さらには食品を保管している倉庫業者の方、この方々もやはり食品衛生に対する知識を 十分に持っていただく必要があるということから、ぜひ検疫所などが行う講習会に積極 的に参加をしてだき食品衛生知識のレベルアップを図っていきたいと考えているところ であります。 (スライド)  そういう状況の中で違反が出た場合、どういう対応になるのかということであります が、検疫所のモニタリング検査で発見をします。モニタリング検査は、検査結果が出る 前であっても貨物が流通してもいいという検査システムですから、場合によっては、国 内に流通しているかもしれません。そういう場合には、すぐに本省を通じて自治体と連 携をとって回収等の措置をとる。逆に、都道府県内に流通している輸入食品について地 方自治体で検査をして違反を発見した場合には、現在でもそうですが、すぐに厚生労働 省に情報を上げていただいて、その情報に基づいて我々は輸入時の検査を強化するとい うことも行います。  さらには、違反のあった輸入者に対しては、なぜ違反が起きたのか、その原因を究明 してほしい。それからもう一つは、同じ製品を輸入する場合にはサンプルの輸入を含め て事前にチェックをしてくださいと。そういうことで改善が図られていることをぜひ確 認をいただきたい、こういうこともお願いしようかと思っているわけであります。  下から2番目に営業の禁停止の話があるわけですが、今回の改正によって、厚生労働 大臣が自ら輸入者に対して営業の禁停止を行う規定が創設されたわけであります。健康 危害発生防止のために、必要な場合には、輸入者の衛生管理体制が確保されていること を確認するまでの間、輸入に係る営業禁停止を行う場合があるということで、そういう ことがないように輸入者の方々の御努力をお願いするものであります。  最後に、御承知のとおり、違反情報につきましては、厚生労働省ホームページに、ど ういう食品で、誰が輸入して、どんな違反でしたということについて、今のところ2週 間おきぐらいに更新しておりまして情報提供しています。これをもうちょっと早くでき ないかと思っておりますけれども、こういう輸入食品の違反情報についても公表し、注 意を喚起していきたいなと思っています。  以上でございます。20分という短い時間で概略を説明いたしました。いずれにして も、計画案につきましては、いろいろな方々から御意見を伺い、よりよいものとしてこ の計画に基づいてしっかりした輸入時の検査、輸出国における対策ということをやって いきたいと考えています。 ●司会  ありがとうございました。続きまして、農林水産省消費・安全局の古畑補佐より農林 水産省におきます輸入食品の安全対策について説明をいたします。それではよろしくお 願いします。 ●古畑消費・安全政策課補佐  ただいま紹介いただきました農林水産省消費・安全局消費・安全政策課から参りまし た古畑といいます。よろしくお願いいたします。私の方からは、「農林水産省における 輸入食品の安全対策について」というテーマでお話をさせていただきたいと思います。  食品の安全対策ということで、本年7月に食品安全基本法ができまして、厚生労働 省、農水省ともリスク管理機関という位置づけで食品安全対策を担うということになり ました。厚生労働省はもちろん食品の安全性、つまり公衆衛生の向上、増進の見地とい うこともありまして、最終的な食品、これに関して衛生上の基準を設けて、基準に合致 しないものを排除するといったような取組を含めて食品衛生上の危害の発生の防止に努 めるということだと思います。  我々農林水産省は、食料の安定供給の確保というのが役割というふうに言えると思い ます。つまり、生産資材の安全性の確保、農薬、肥料等の確保でありますとか、農林水 産物の生産過程における安全確保対策、また情報提供というようなことを担うというこ とだと思います。食料の安定供給というのは、安全な食料であることが必ず求められる わけですので、そういう観点から農水省としての取組を紹介したいと思います。  また、水際対策ということでいきますと、厚生労働省が検疫所の業務として一義的に 行っているというのはもちろんでございます。蛇足になりますけれども、農水省の水際 対策というのは、動物検疫、これは動物の病気を国内に持ち込まないという目的です。 また植物検疫、これを植物防疫所が行っております。これも植物の病気が国内に蔓延し ないという目的でやっています。本日は輸入食品の人に対する安全性という観点での取 組について御紹介したいと思います。  それではスライドをお願いいたします。 (スライド)  まず、背景の説明を若干させていただきたいと思います。もちろん、皆さん御存じの ことばかりではありますけれども、幾つかの変化というものが近年見られている。まず 初めに危害要因の多様化、これはいろいろな問題、危害要因、O157といったような病原 菌でありますとか、ダイオキシンといった有害物質、またBSEといった家畜の病気が 人にも影響する可能性があるといった問題、こういうものが国内・国外問わず様々なと ころで問題になってきているということです。  また、これは特に輸入にも関係しますけれども、食サービスへの依存度への高まり、 流通の広域化・複雑化。つまり、我々が食品を供給する場面ですけれども、受ける消費 者との観点からいけば、食べる側で、昔みたいに家に持って帰って、もしくは家でつく って食べるということではなく、中食、外食といったものが普及しております。また、 そういう背景もあって、原材料の調達がグローバル化しています。これは流通の仕組み 自身もどんどんよくなっておりますし、海外にその原材料を求めるといったこともあり ますので、そういうグローバル化が見られるということです。また、ここに問題の要因 にもなろうかということがあります。また、供給プロセスの分業化というものも進んで おります。  3つ目ですけれども、社会全体の情報化の進展というのがございまして、新聞に限ら ず、インターネットを含めて様々な情報、これも国内だけの情報ではなくて、海外の情 報もいち早くどこにでも手に入るという状況になっております。  また、「科学の進歩と不確実性の増大」というふうに書いておりますけれども、科学 の発展によりまして、今までわからなかったことがだんだんわかるようになってきまし た。ただし、それがどこまで明らかになるかというと、必ずしも100%わかるというもの でもありません。例えば、環境ホルモンという言い方をしておりますけれども、そうい う微量な物質の影響でありますとか、もっと簡単に言うと、分析技術が向上いたしまし て、今までは計測できなかったような微量な物質についても分析技術が向上したことに よって、どうも有害物質が含有することがわかるといった場面とか、あとは遺伝子組換 え食品が新たに登場するといったようなことがあろうかと思います。  また最後に、「消費者の関心の高まり」というふうに書きましたけれども、これはす べてを通して言えるのでしょうけれども、消費者も知識をそれなりにきちんと把握でき るという状況が整っておりますので、そういう消費者と食品を供給する側の情報のやり とり、また安全な食品を供給するといった役割をきちんと果たすという必要がありま す。 (スライド)  先ほどの発表の中にもございましたけれども、食品安全基本法がこの7月から新たに 動き出しております。その第4条に、ここに書いてあるとおりですけれども、農林水産 物の生産から食品の販売に至る一連の食品供給の行程、ここに「国の内外における」と いうものが加わっております。これはまさに輸入食品対策の必要性というのがあらわれ ているのかなというふうに考えております。 (スライド)  同様に農林水産省も、食品の安全性確保に係る関係法律の見直しというものを行いま して、これは農薬でありますとか、肥料といった資材関係の法律の見直しですとか、牛 の個体識別番号を伝える制度の創設でありますとか幾つかの見直し、農林水産設置法の 改正ということで消費・安全局、まさに私が所属している部局を新たにつくったといっ たようなことが国会で議論されましたが、その議論の最後の出口のところで、こういう ことを行っていく必要があるということが決議されております。  そこに書いてあるのが国の内外における食品供給行程のあらゆる要素が安全性の確保 に影響を及ぼすおそれがあることに鑑み、輸入国におけるリスク分析の状況や食品事故 に関する情報収集等に努めるとともに、輸入農林水産物等については、国内産品と同等 の安全が確保されるよう、関係機関が連携して適切に対処することというふうに決めら れております。  ここでいう関係機関というのは、当然、農林水産省と厚生労働省というのが中心にな ります。また、そのほかにも関係する機関というのがあろうかと思いますけれども、連 携して情報収集や情報提供を行い国内と同等の安全性が確保されるよう努めるというこ とがポイントかと思います。 (スライド)  この7月に消費・安全局という新しい局が立ち上がって、食の安全・安心という取組 を進めているわけですけれども、その取組の一つとして、食の安全・安心のための政策 大綱というものを実は6月につくりまして公表しております。この食の安全・安心のた めの政策大綱というのは、昨年11月に農林水産省の省内に食の安全・安心のための政策 推進本部というものをつくりまして、副大臣が本部長だったのですけれども、そこで農 林水産省が食の安全・安心のための取組、こういう行政にどのように取り組んでいくの かという指針としてまとめました。それと新たな視点として、消費者の視点に立った安 全・安心な食料の安定供給が重要であるということをきちんと職員を含めてとらえて、 意識改革を進めるという観点でまとめたものでございます。この大綱についてはホーム ページ等でごらんいただけるものなのですけれども、11月に推進本部を立ち上げまし て、2月に中間取りまとめを行い、パブリックコメントでありますとか、地方の意見交 換会ということを行いまして、6月に最終取りまとめを行いました。その中にも、輸入 食品の安全の確保という章がありまして、その記述をそのままここに写しております。 前段は厚生労働省の取組について書いております。「農林水産省においても」というと ころで我々が今行っていること、また、今後行おうとしていることが書かれておりま す。  1つは、政府が輸入する米麦の残留農薬の検査があります。また市販の輸入農畜産水 産物の調査を厚生労働省と連携して実施しています。また、輸入国でのリスク管理の状 況や食品関連の事故に関する情報収集・提供を行います。さらに、専門家や消費者の意 見を踏まえた的確な検査を行うための体制を整えるほか、リスク管理対策などについ て、輸出国と情報や意見の交換を進め、厚生労働省と連携して輸入食品の安全の確保を 進めます。後段は今後行っていくということになろうかと思います。  ここにも書いてあることですが、現在行っている農水省の取組について、簡単に触れ ていきたいと思います。 (スライド)  政府が輸入する外国産米麦の安全性確保体制についてです。外国産米麦については、 政府が買い入れをしていますので、その部分について、そういう意味では事業者の取組 という位置づけが正しいのかもしれませんが、農林水産省が自主的に行っています。  大きく2つの検査に分かれております。1つは、船に積み込む前の検査です。米と麦 と分けておりますけれども、お米については買付け予定の産地にあります倉庫でありま すとか精米所、こうったところからサンプリングをします。麦については、最終的な輸 出港にあります麦を一時保管するための輸出エレベーターでサンプルを採取し、輸出国 にあります公的機関で検査を実施します。これは積地検査というものです。ここで検査 をして、残留農薬であれば、残留農薬の基準値が守られていることを確認して、その確 認が終わった後、船に積み込みます。さらに積み込み時にもサンプルを採取しまして、 日本に飛行機で船の到着前にサンプルを空輸しまして、届いたサンプルを厚生労働大臣 が指定しております検査機間等であらかじめ検査し、問題がないということを再度確認 します。ただ、最終的には、輸入食品でありますので、厚生労働省の検査も受けます。 これが(3)というふうになっておりますけれども、食品衛生法に基づいて到着貨物の検査 を行う、行政検査です。つまり、積地検査、着地検査、行政検査というこの3つの検査 を行うということになっております。 (スライド)  ちょっと小さくなってしまうので、お手元の資料を見ていただいた方がいいかもしれ ませんけれども、今の説明を図示したものです。お米、麦と分かれていますけれども、 いずれにしても、輸出国におきまして一度検査を受けます。その後、船積みをして、船 で輸送しますが、船の輸送期間は時間がかかりますので、その期間内にサンプルをまず 空輸して、サンプル検査を事前に済ませた上で、最終的にオーケーのものを荷揚げしま して、行政の検査、厚生労働省の検査を受けて政府の倉庫に入ります。そこから加工業 者でありますとか、政府、業者等に売られていくということで製品となって消費者の方 の手に届くということをやっております。  国産・輸入物、両方とも昨年の調査結果はホームページに載っておりますけれども、 こちらで検査しているのは、残留農薬については、すべての農薬というわけにはいきま せんので、食品衛生法の残留基準のある農薬プラス幾つかの農薬を農林水産省で選定い たしまして調べましたが、食品衛生法の残留基準をオーバーする事例はなかったという ことになっております。どういう農薬を調べたかというのは、農林水産省ホームページ に載っておりますので、興味のある方は改めて見ていただきたいというふうに思いま す。 (スライド)  これは輸入野菜の関係の残留調査です。これは水際の検査については厚生労働省が検 疫所で行っているもので、それに代わるものではありません。「○」の2つ目に書いて ありますけれども、食品事業者に対して安全な食品を供給するという観点で農薬の残留 状況を事業者に伝えて、その生産の改善に役立ててもらうというのが一番の目的です。 その内容というのは、事業者にだけ提供するというものでもないので、もちろん消費者 にもわかってもらうようにホームページに掲載するというやり方をしております。 (スライド)  調査のやり方ですけれども、実際分析等を行っているのは、全国8か所にあります独 立行政法人の農林水産消費技術センターというところで行っております。対象検体、こ れは毎年見直しをしていますけれども、平成15年度につきましては輸入野菜が約600検 体、これは冷凍物も含めてです。あと生鮮果実、あとキノコについて分析をしておりま す。それぞれ86農薬を選んで分析をしているということです。調査結果につきまして は、四半期ごとに調査結果をホームページに掲載しております。また、分析の結果、残 留農薬基準を超過するような違反事例があった場合には、直ちに厚生労働省に通報する とともに、その事案について公表するという予定にしております。 (スライド)  これはお手元の資料を見ていただきたいと思います。これは平成15年度の調査対象 品目です。調査対象品目、一覧表にするとこれだけ多数の品目になってまいります。 (スライド)  これは平成14年度の調査結果です。平成14年度は4件残留農薬基準値を超過した事例 がございました。1つは、生鮮野菜の区分にありますが、中国産のスナップエンドウ1 検体からシペルメトリンという殺虫剤が基準値0.05に対して0.07ppmという濃度で検出 されました。 (スライド)  加工食品、これは冷凍食品と、このときは水煮、塩蔵といった本当の加工食品も入っ ているのですが、分析の結果、中国産ほうれんそう2検体からクロルピリホスが、これ も話題になった殺虫剤が見つかったということと、あと、カリフラワー1検体からメタ ミドホスという殺虫剤が見つかっております。この合計4検体が平成14年度の調査で違 反事例として見つかっております。 (スライド)  これは15年度の調査結果のこれは途中経過、第2四半期分までということですので、 9月30日までの調査結果になります。生鮮野菜等については、今のところ違反事例がな いということです。 (スライド)  生鮮果実におきましても、今のところ、残留農薬基準をオーバーするようなものは出 ておりません。 (スライド)  同様にキノコ、冷凍食品についても違反事例はありません。また、12月までの調査結 果は1月上旬を目指して公表するという予定にしておりますので、ホームページを見て いただきたいと思います。 (スライド)  食品安全に関する国際化の対応について、先ほど最初の方のスライドにありました が、情報収集に努めるということを我々の立場でも行っております。また、そのために 組織の見直しも行いまして、黄色いところが消費・安全局内の組織ですけれども、消 費・安全政策課内に国際室というセクションを設けまして、国際情報の収集に努めてい るということです。その他表示でありますとか、植物防疫、衛生管理、あとGMOの関 係とか、国際情報の収集も各担当のセクションがあります。さらに、食品安全危機管理 対応チームというものを省内に設けまして、そこで情報をいち早く察知して、必要に応 じて対策を講じるという仕組みをつくっております。  見にくいですけれども、白い四角の中身が情報なり対応の個別具体的な中身で、周り に情報収集、情報提供の対象となるような機関ですとか、消費者団体も書いてあります けれども、業界、在外公館等々書いております。また、右側には厚生労働省、食品安全 委員会ということで情報の共有化を図るなど連携を図っていくということにしておりま す。また、平成16年度につきましても、こういう取組を進めてまいりたいというふうに 考えております。 (スライド)  以上のような情報について、農林水産省のホームページにも随時掲載してまいります のでごらんいただきたいと思います。また、独立行政法人農林水産消費技術センターに も「食の安全・安心情報交流ひろば」というホームページを新たにつくっておりますの で、そこでも、ここは農林水産省の取組に限らず、安全・安心に関する取組について随 時掲載しておりますので、参考までにごらんいただけたらというふうに思います。  以上、私の発表を終わらせていただきたいと思います。御清聴ありがとうございまし た。 ●司会  ありがとうございました。続きまして、国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部の 山本茂貴部長より、食品の微生物学的衛生管理についてお話をいただきたいと存じま す。それでは、山本先生よろしくお願いいたします。 ●山本食品衛生管理部長  皆さんこんにちは。ただいま御紹介いただきました国立医薬品食品衛生研究所の山本 でございます。本日、御紹介いたします資料なのですけれども、この資料は実は事前に 40分のを用意してということで用意しまして、本日20分ということでございますので、 これだけ全部を話すことはできません。それで、前半の食中毒予防のあたりまでのお話 にしたいと思いますので、残りの部分につきましては、どうぞ帰ってゆっくりとごらん になっていただきたいと思います。  本日の話は、食品の微生物学的な衛生管理ということで、皆様の関心からいきます と、輸入食品ということに関しては化学物質系ですね、農薬の問題、動物用医薬品の問 題、そういったものが中心になっているようですが、実は微生物というものも若干考え なきゃいけない。なぜ微生物がそんなに、皆さんの中で危ないというか、余り不安に思 わない要因になっているかといいますと、実は微生物は大体のものは火をかけて死ぬわ けですね。そういったことから、皆さんが実際食品を扱うときに火をかけてしまえば死 ぬのだという安心感、そういったものから自分がコントールできるリスクであるという 意識があるというところで少し関心が低くなっているのかなという気もいたします。 (スライド)  ただし、食中毒の原因を、日本の中で見てみますと、実は非常にたくさん微生物によ るものが起きております。原因としては細菌によるものというのがサルモネラとか腸炎 ビブリオ、それから腸管出血性大腸菌、これの中にはO-157といった血清型のものが含 まれていますけれども、それから、カンピロバクターというような名前の細菌、こうい ったのと、主に起こる食中毒の原因食品として、これらが結びついていることが多く報 告されています。それから、最近ではウイルス、このSRSVというウイルスですけれど も、これはカキの生食によって起こることが多いですが、今年度からノロウイルスとい うような言い方を変わりました。またA型肝炎といったもの。それから、たまに自然 毒、秋になりますと、キノコでこういった植物性の毒によって起こるとか、自家製のフ グの調理によって中毒を起こすというようなことも起こっております。化学物質や自然 毒による食中毒というのは、細菌によるものに比べれば随分少ないようです。 (スライド)  これはちょっと見にくいですけれども、ここ10年ぐらい、平成13年までのものしか示 してありませんが、発生数、患者を示したものです。赤いラインがサルモネラで、これ は日本でも1位、2位を争う原因のものです。ずっと増えてきましたが、ある程度また 減ってきました。これは日付を表示させるとか、卵の関係の対策をとったということも あります。ただ、10年前と比べてまだ数は完全に減っているわけでもないですし、二、 三年経過を見る必要があるかと思います。  それからもう一つの代表的なものとしては腸炎ビブリオです。日本人の生食文化とい うことで、こういった腸炎ビブリオによる食中毒が大変多く出ております。ただ、10年 以降、対策をとりまして若干減ってきております。しばらくこれが減り続けるかどうか ということに関しては観察を続ける必要があると思います。ただ、細菌によるものは、 こうやって熱をかければ防げるのだということがありますけれども、例えば、ここで黄 色ブドウ球菌による食中毒、これは加工乳に黄色ブドウ球菌の産生する毒素が入ったと いうことで食中毒が起きた事例です。これは1万4,000人を超える患者が出たというこ とで大変問題になりました。この場合にも、ブドウ球菌というものは熱で死ぬのです。 ただし、それがつくった毒、これが耐熱性を持っているということで、その毒が残った ことによって食中毒が起きる。そういうこともありますので、単純に熱をかければいい というだけのものでもございません。このように食中毒、微生物によって結構起きてお ります。 (スライド)  輸入食品においては、どんな食中毒が起きたかといいますと、これは古いのですけれ ども、コレラがエビによって起きております。これは25年ぐらい前に、ある結婚式場で 調理したエビ、加熱不足だったのでしょう、そういった原因によってコレラ菌が完全に は死滅していなかったということで、30名弱ぐらいの患者さんが出ております。  それから、これはノロウイルス下痢症と書いてありますけれども、これは先ほどの統 計といいますか、原因で申し上げましたように、SRSVと言われていたものです。今年度 からといいますか、この秋からノロウイルスという形に名前を呼び変えることになりま した。こういったものは貝類、二枚貝によって起こることが多いのですけれども、この 場合には輸入した大アサリ、こういったものを加熱して調理して食べたのですけれど も、やはり加熱不足によって食中毒が起きました。  この場合、大アサリが2つ書いてありますけれども、ここで特徴的なのは、この大ア サリは同じものです。同じところから輸入されまして、実は最初に、ノロウイルスとい うのは、大体潜伏期が24時間から48時間ぐらいで発症すると言われていますが、そこで ノロウイルスの下痢症を起こしたと。その人が1か月ほど経ちますとA型肝炎になった という例であります。ウイルスも加熱すれば死ぬのですが、やはり加熱が不十分になり ますと残ります。そういったことからウイルスの食中毒が起きたということです。  もう一つはカキがあるのですけれども、これも2年ほど前に起こった事件です。これ は患者さんが100人以上出ました。各県にわたって出ております。ある出荷業者さんから 出たカキなのですけれども、その方は、輸入のカキと国産のカキと両方扱っておられま すので、最終的にはどちらが本当の原因かということも難しいのですけれども、一応輸 入のカキが原因らしいということが疫学調査でわかっております。こういったものを生 で食べられた、そういった方から赤痢という状況が起こった。赤痢菌の汚染というのも 珍しいものなのですけれども、赤痢が起こったということで、この場合は生食ですけれ ども、菌に関して、それからウイルスに関して、こういった微生物の食中毒というの は、加熱して食べるものに対して十分な調理ということをすれば、ある程度は防げま す。しかし、それにしても、皆さんが実際に輸入食品として食材を買ってきて、それを 調理して食べるという上ではリスクをコントロールできますけれども、実際もう加工済 みの食品、そういったものに関してのリスクはどうやってコントロールしていくのだろ うということになります。そうなりますと、やはり衛生管理のシステム化というか、高 度化というものが求められてまいります。 (スライド)  世界中そうなのですけれども、高度な衛生管理手法を取り入れて加工食品を製造す る。そういったことに関心が高まっております。また、後半でお話ししようかと思って いたのですけれども、リスクアナリシスという考え方で、微生物、それから化学物質も そうなのですけれども、全体にその安全性を確保するための制御手段、それをとるため にいろいろな分析をする。その中にはリスクアセスメントといったものも入っておりま すけれども、そういったものを使っていくということの関心といいますか、国際的な取 組が進んでまいっております。  これは理由としてはいろいろあるのですけれども、やはり、世界じゅうで食中毒が増 加している傾向にある。これは微生物によるもの、それから、新しい病原体と申します か、病原体の中でも古くから知られている腸炎ビブリオですが、それの中の血清型が新 しくなってきている。同じ血清型のものが世界中に一気に広がっていくというような現 象があります。腸炎ビブリオの場合は、タイの近辺ではやっていた血清型のものがいき なりアメリカで発生する。それがまた日本に来るといったことが起こっております。こ れはどうしてかといいますと、1つの理由として仮説ですけれども、考えられているの は船のバラスト水ですね。そういったものが港で水を捨てるという行為によって菌を運 んでいるのではないかということなどが考えられております。  それから、食中毒に対する高感受性集団の増加,これは1つには、HIVの感染者が使 用するといったようなときに、免疫不全の状態が起きている感染者が食中毒菌を食べる と、非常に感受性が高まっていますし、防御の態勢が悪いということから、そういった 集団もしくはその栄養状態が悪化している状態、そういったものが起こるときに食中毒 が起こる。その様な現象が見られるということです。  それからさらに、食品は世界規模で流通が行われています。食品貿易の増加というこ とで、世界規模に流通することによって、ある原材料がいきなり日本の中に入ってくる といった状態が起こります。それと食品企業、産業の巨大化、こういったものは、ある 原材料の使える量というものが一気に増加します。それで、影響もその中で大きくなる ということです。そういったことから、こういった大きな企業、世界的に衛生管理に関 する監視の取組ということで、高度な衛生管理というものが必要となってきたというこ とであります。 (スライド)  日本でも平成7年の食品衛生法の改正のときに、総合衛生管理製造過程の考え方とい うのを取り入れるということで、平成10年からは厚生労働大臣の承認制度というものが スタートして、種々の製品に対して総合衛生管理製造過程で製造を認めております。こ の制度自体の説明は詳しくはいたしませんけれども、それの概念といいますか、考え方 をご紹介しておきたいと思います。こういったものが取り入れられる以前といいます か、現在でもそうなのですけれども、施設の基準や管理運営基準といったものが定めら れておりました。こういったものの上に、様々な衛生管理に必要な一般的な衛生管理事 項をきちんと文書化して、それを遵守する、守っていくということ。それが守られてい るかどうかについても記録をつけて、それから検証を行っていくと。そういうことが必 要となります。こういったものは施設設備のことであるとか、それから、ここでは原材 料のことについては触れておりませんけれども、コーデックスの方では原材料について も、それを衛生確保しろということも書いてあります。  それから、人の関係ですね、人がどういう取り扱いをしなきゃいけないか。その製品 に対して異常な製品ができたときには、それを回収しましょうというようなことも含め て、一般的にやらなきゃいけないこと、これは当たり前のことなのですけれども、それ が守られているかどうかを確かめるということをきちんとやることによって衛生管理を 支えていく。その中で最も重要な部分について、こういうCCPという考え方で、これ は衛生上重要な管理点であるということで管理するということになるわけです。 (スライド)  ちょっと薄くて見えないのですけれども、HACCPのもとはハザード・アナリシ ス・クリティカル・コントロール・ポイントということで、それの頭文字HACCPで すね。これを高度衛生管理として使っていこうということになります。 (スライド)  HACCPというのは7原則がありまして、このHAというのは、危害を分析すると いうことです。CCPというのは、その食品を製造する行程において最も重要な行程、 これを管理していく、それを決めるということです。その中でCCPの管理基準、これ は温度と時間であるとかそういったものを決めて、そこを常にモニタリングして見てい るということです。温度がうまくかかっていないというような状況が起こりますと、そ れの改善措置をすると。それも、あらかじめ決めた状態で、このような形でやりますよ ということを決めておいてやる。これはなぜ最初に決めておきますかといいますと、そ れがその場で起こったというときに対処を考えていますと、どんどん製品が流れていっ てしまいます。そうなりますと、異常な食品というものが流通に回ってしまう。そうい うことのないように、ある時点でその範囲を決めて、ロットを特定して、そこで廃棄す るとか、回収するとかという措置がすぐにとれるようにしておくということです。  もう一つ、あとの2つです。検証と記録、ここが新たにHACCPの中に導入されて いる重要なポイントです。新たにといいますか、HACCPというものが考えられたと きに導入された最も重要なものの考え方です。このシステムそのもの、HACCPがち ゃんと動いているのかどうか、これを確認することによって正しく製品ができていると いうことの証拠になります。これが内部でといいますのは、その食品の製造者が実際に やること、それから外部の検証というものもあります。内部でやっていることがちゃん と正しくやられているかということも保証するということです。さらに記録する、記録 が残っているということが大変重要なことになります。そういった記録を残すことによ って、いつ異常な製品ができたのか、そういうことがわかります。こういう高度な衛生 管理の手法を使うことによって、微生物等の危害というものが除去されて、それから化 学物質に関してもあらかじめ決められた方法で検査をして、その製造行程の中に入って こないような形でコントロールするということで、食品の製造に関しての安全性を確保 していく方法として取り入れられているわけです。 (スライド)  あと続きがありますけれども、12の手順、これはつくる人の側のお話ですので余り詳 しくは言いませんけれども、7原則が6番から以降で、これが1から5、スライドには ないようですけれども、資料の方にはありませんが、こういうような手順でつくってい くということです。このチームというものが製造会社の中にでき上がって、それらがす べてを管理していくということです。 (スライド)  順番がばらばらになってしまって申し訳ありません。先ほどからハザードアナリシス という言葉を言っておりますけれども、ハザードということの説明をしておきますと、 これは危害と日本語で訳しておりますけれども、健康に悪影響を及ぼすもの、人の病気 を起こすような原因になるものが食品の中にある場合、それを危害(ハザード)といい ます。これが生物学的なもの、化学的なもの、物理学的なものという物質のもの、そう いうものが入っておりますし、また食品がどういう状態であるか、その食品の状態も加 味して考えていくということです。例としては、食中毒菌というものは生物学的、残留 農薬とかカビ毒といったものは化学的なもの。金属片、放射能といったようなものは物 理学的なものですね。それから、生物学的な状態というのは腐敗しているとか、化学的 な状態というのはpHの状態であるとか、物理的な温度といったものがあります。こう いったものをいかに減らしていくかということになるわけです。 (スライド)  それをいろいろ分析して原材料、それから製造行程において中に入ってくるとき、そ れをどこで防ぐかということを考えるということです。 (スライド)  これは厚生労働省の方のホームページからごらんになれるのですけれども、今のよう な食品工場でHACCPの考え方でコントロールするというのは、家庭でもそのポイン トとなる考え方というのがあるということです。これは詳しくは御説明しませんけれど も、食品の購入から残った食品の処置まで、すべてそういった考え方も取り入れてでき ますよということで示してあります。  じゃ、ちょっとスライドを流していっていただきたいと思います。 (スライド)  こういったもの購入の際には消費期限などをよく見て、買ってきたら温度をよく管理 しましょうというようなことが書いてあります。 (スライド)  それから、家庭での保存では冷蔵庫、冷凍庫に入れましょう。ただし、詰めすぎては だめですよということとか、温度は10度以下とか、−15度と書いてありますけれども、 普段皆さん温度を測っておられないと思うのです。なるべく温度を測った上でそれをち ゃんと見ていく、保存するということをしてみましょう。それから、こういった温度で は、細菌は死んでいないということも忘れないでください。  それから、下準備といいますか、そういったところでは、周りの状態、ごみが散らか っていませんかとか、きれいに整頓されているかどうかを確認して、特に水の周り、そ れから手をよく洗うということです。基本中の基本ですけれども、手洗いに尽きる。そ れが始まりであり最初で最後です。これだけでも相当の部分が防げます。 (スライド)  これは解凍する場合のやり方ですね。電子レンジなどを使うということも必要です。 室温で解凍しないようにした方がいいということもあります。 (スライド)  ここでも調理のときはよく手を洗いましょう。当たり前です。それから75度で1分以 上で加熱することです。ただ、75度で1分以上の加熱というのはどういう状態をいうの でしょうことなのですけれども、例えば、ハンバーグであると、厚さが1センチぐらい のもので中が薄茶色になって肉汁が出ない状態、それぐらいまで加熱すると75度1分加 熱したような状態になるのですけれども、味の方が保証できるかどうかという問題もあ ります。その辺は適宜見ていただかなきゃいけないのですけれども、実際にはそれぐら いの加熱をしないと、やはり中の菌までは防げないということになります。 (スライド)  食事もよく手を洗って食べる。温かい料理は65度以上、冷やして食べる料理は10度以 下、と言われてもどんな状態かわからないのですけれども、温かい料理はフーフーと吹 いて冷ますぐらいの温かさというような感覚です。冷たいというのを10度以下という と、やはり冷蔵庫にパッと手を入れたときの感覚といいますか、そんな感じ。それか ら、氷まで冷やさなくても、ワインの冷えている状態ぐらいというか、お酒を飲まない 方には難しい。そういったことでやられています。 (スライド)  残った食品は変だなと思ったらなるべく捨てるということが基本です。でも、気をつ けていただきたいのは、口に入れて味を確かめてみるということですね。これは避ける ようにしていただきたいということです。 (スライド)  それで、結局は食中毒予防といいますか、細菌による食中毒とか、微生物による食中 毒を予防する3原則としましては、食中毒菌をつけない、増やさない、殺すと、この3 つです。これを守ってやっていただきたいと思います。  ちょっと長くなって申し訳ございません。食品の衛生管理として、これからの時代、 微生物も入ってくることが考えられております。最後ちょっとスライド、もう1枚あり ますか。 (スライド)  これは一応輸入食品に関してもコーデックスというものがありまして、食品の国際規 格基準、これを考えております。日本は食品の60%を海外に依存しておりますが、これ はカロリーベースですけれども、原材料の安全性確保ということが重要です。こういっ た国際基準は、一応、リスクアナリシスをもとに考えていこうという方針でやっている ということをお伝えして私の話を終わりたいと思います。ありがとうございました。 ●司会  ありがとうございました。それではここで10分ほど休憩をとらせていただきたいと思 います。第2部は午後3時45分から開始したいと考えております。それまでにお席の方 にお戻りいただきますよう、よろしくお願いいたします。                  (休憩) ●司会  それでは第2部の意見交換会をこれから開始したいと存じます。  これからは国立医薬品食品衛生研究所の山本部長に進行をお願いしたいと存じます。 山本部長よろしくお願いいたします。 ●座長(山本)  それでは、第2部の意見交換会を始めたいと思います。本日、意見交換会の座長を務 めさせていただきます厚生労働省国立医薬品食品衛生研究所の山本です。よろしくお願 いいたします。  意見交換会では、1部で御説明をしていただいた方々に加えまして、パネリストとし て消費者及び事業者から御参画いただいております。簡単に自己紹介をいただきます。 よろしくお願いいたします。 ●古畑  先ほど御説明いたしました農林水産省から参りました古畑です。よろしくお願いいた します。 ●加藤  内閣府食品安全委員会情報緊急時対応課というところで情報関係の担当しております 加藤でございます。よろしくお願いします。 ●中野  日本生活協同組合連合会の組合員活動部に所属しております中野と申します。よろし くお願いいたします。 ●山本  株式会社ニチレイで品質保証を担当しております山本でございます。よろしくお願い いたします。 ●森田  厚生労働省東京研究所の森田でございます。よろしくお願いいたします。 ●外口  厚生労働省大臣官房参事官の外口でございます。よろしくお願いいたします。 ●桑崎  食品安全部輸入食品安全対策室の桑崎でございます。よろしくお願いいたします。 ●滝本  検疫所業務管理室の滝本と申します。よろしくお願いいたします。 ●宮川  基準審査課の宮川と申します。よろしくお願いいたします。 ●道野  監視安全課の道野と申します。よろしくお願いいたします。 ●磯貝  輸入食品安全室の磯貝と申します。よろしくお願いいたします。 ●座長  どうもありがとうございました。  ここで、まず、中野様から輸入食品の安全性確保に関する考え方と、今後の課題につ いて5分程度でございますけれども、ご意見をお願いいたします。中野様よろしくお願 いいたします。 ●中野  日本生活協同組合連合会の組合員活動部の中野です。当初から10分程度でという依頼 だったので、資料は1枚、No.5というものだけ御提供させていただきました。5分程 度ということなので、その後の意見交換とかも含めて、私どもの考える輸入食品の安全 性確保に関する考え方ですとか、今後の課題というものを述べさせていただきたいと思 っております。  先ほどから御説明がありましたけど、背景のところの詳細は資料をお読み取りいただ きますが、ともかく、法制度としては徐々に前進が図られてきています。具体例として は、ここに書いていますけど、包括的輸入禁止規定ですとか、この度の食品衛生法の改 正などがあり、法制度としての前進はあるのですけれども、先ほどもご紹介がありまし たが食品安全モニターの調査、これは9月の実施ですが64.4%のモニターが「より不安 がある」という回答が出ています。ひとえに輸入食品の増加ということと関連して、海 外で生じた事故ですとか、食品汚染等が私たち国内での食品の安全性の確保の対策につ いて、直接影響を及ぼしてくるということの不安要因から、64.4%ものモニターがどう しても不安をぬぐいされないという回答をしてきたのではないかというふうに私どもは 見ております。  今後の課題ということでは、先ほどのご紹介にもありましたが、食品安全モニターの 場合には検疫所の監視業務の強化ですとか、輸出国の衛生管理状況の情報収集というこ とが高い値の回答でした。けれども、私どもが、そもそも輸入食品も国内で流通する食 品も含めてですが、食品の検査とか監視というものを、行政を含めて国がなぜやるのか ということを考えた場合、国内で流通・販売されている食品が、まず日本の法制度で規 格とか基準とか定められたものがありますけれども、果たして本当にそれが守られてい るのかどうかというのを確認する必要があるのではないかというのが1点目の側面とし てあります。もう一点は、資料の(2)に書いておりますけれども、食品の安全性確保に関 する実態はどうなっているのかということですとか、どういう動き、変化があるのかと いうことを科学的なデータをとることによって把握して得られたデータを次はどういう ふうに対策に活かそうとか、新しい基準を考えなければいけないのかということに使う ための基礎資料とする、この2つの側面が食品の検査と監視をするという2つの目的で はないかと私たちは考えています。  ですから、今回、輸入食品の安全性ということで監視計画の案が出ましたけれど、こ の案をここでは厚生労働省の皆様とかに回答を求めない、答えをくれということではな く、ここにいる皆様や今後のパブリックコメントの中で、こういう目的に沿った監視指 導計画の立案過程になっているのかということを生産者や消費者、事業者を含め、一緒 に考えていきたいと思っております。  では、実際に個別運用に関する事項ということでは、どういうような要望とか、課題 ということを考えているかといいますと、1つ目は、先ほどから出ていますが、海外の 状況とか、動向の把握ということを国内外に提供することが1点目の課題としてあるの ではないでしょうか。このことについては、先ほどの説明のところでも、そのようにし たいという所感が述べられておりましたが、まず、必要なことではないかと思っており ます。なぜかといいますと、資料に書いてありますが、結果として、事業者のコンプラ イアンスですとか、自主的な品質管理活動にも、このデータを活用できる、何のデータ もなく輸入をするということより国がある程度の基礎的な輸入食品に関するデータを提 供はするが、それを後は使うも使わないもその企業の自主的な判断にまかせる、そのよ うな公平な競争社会をつくっていくということが必要なのではないかというふうに思っ ています。それを使わなかった場合は、そういう情報があるにもかかわらず使わなかっ たのが悪いということになり、それが公平な企業間の競争を生み出すというふうに私た ちは考えております。  (2)の検査体制の充実強化ということは、何でもかんでもということではないですが、 こういうような見地から、輸入食品の監視計画を考えていった場合、どうしても予算や 人員体制が足らないことが現実面としてわかった場合には、やはり一定度の手当は必要 なのではないかと思っております。  3点目の検査機間の信頼性確保ということでは、消費者のところでは、民間の検査の 委託ということについて御意見とか御異議があるようなこともあります。私どもが調べ た限りでは、どなたが検査しようとも、検査の出たデータに信頼性がおかれなければ、 輸入食品の安全性というものは担保されないし、検査や監視そのものも、信頼されない のではないかと考えております。  日本リスク学会のセミナーで勉強してきたことですけれど、その中で、独立行政法人 食品総合研究所の安井先生が次の事を述べていました。欧州連合の場合ですと、検査機 関というものは第三者認証をとるべきだと、レギュレーション、いわゆる法規制で既に 決まっています。ですから、「きちんと各検査機関が分析しています」ということでは なくて、信頼性のある分析値を出すための必要な要件として第三者認証が必要ですと か、あとISO17025シリーズという検査の精度管理に関する要件があるのですけ れども、そういうことを積極的に取り入れるべきだということも、その規則の中では入 っております。そういうことによって、公益法人であろうが民間があろうが関係なく、 検査機関が信頼性のある分析値を出すにはどうしたらいいかということを欧州連合の方 では考えていますので、日本としても、そういう正しい分析値というものを考えていく というのは、一つ課題としてはあるのではないかと思っています。  次に、私たちもそれはそうだなというふうに思っているのが資料(4)の公定法の考え方 ということです。ここにも保健所の方とか、実際に国の検査、監視ということに関して 分析をしている方がいらっしゃると思いますが、規格とか基準に使う検査ということで は、分析の信頼性が最も必要でありますし、いつでも、どこでも、誰でも使える方法と いうことが求められるのではないでしょうか。それから、裁判ということでもないです けれども、先ほどから輸出国との2国間交渉ということが触れられていますが、2国間 交渉で通用するための検査、つまり、「こういう分析方法でやりました、だから、検査 の精度に落ち度がありません。」ということをきちんと主張するためにも、分析機関が 行う検査方法ということについても、きちんと考えていくことが必要なのではないのか なと思っております。  5分ほどということなので簡単に述べさせていただきます。この後、補足等は意見交 換の方で述べさせていただきたいと思います。御清聴ありがとうございました。 ●座長  中野様どうもありがとうございました。様々な御提言をいただきましたけれども、ま た後ほどパネラーの皆さん、それからフロアからも御意見をちょうだいしたいと思いま す。次にもう一方、山本様から事業者の立場から5分程度で御意見をお願いしたいと思 います。山本様お願いいたします。 ●山本  ニチレイの山本でございます。先ほど第1部のところで各省庁の方から輸入食品の安 全性確保のためには、事業者自身の責務が非常に重要だというお話をいただいたのです けれども、私どもまさにそういったことで考えておりまして、ここでは私どもが何を考 え、どういう形で安全確保をしているかということの事例を若干御紹介して、今日の意 見交換の参考にさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 (スライド)  そもそも今、世の中で「安全・安心」という言葉が非常にはやっているのですけれど も、私ども自身は安全と安心というのは基本的に違うのじゃないかなと考えておりま す。安全というのはあくまでも科学的な事実、これは現代の科学技術でいかにリスクを 最小限にとどめるかという科学だと思うのです。ところが残念ながら、その科学で証明 した安全性ということを消費者の方に十分御理解をいただけない、これはいろいろ行政 側にも、我々事業者側にも問題があるのだろうと思うのですけれども、少なくとも、な かなか安心を感じていただないという現状があるのだと思うのです。ここをどうするか ということが当面の課題だと思います。  私ども自身は、やはりキーワードとして、これからは科学的事実に裏付けられた信頼 性の回復という、ここがこれからの最大の基本だろうというふうに考えております。 (スライド)  これは外部要因、私ども食品事業者を取り巻く環境が大変大きく変化している中で、 外部要因と内部要因は私どもだけかもしれませんので、余り全部がそうですよと申し上 げるわけにはいきませんけれども、ここに特に内部要因の中で、真ん中で赤字で書いて おりますように食品技術が非常に国際化している。非常に多くの国、地域から日本国内 に食品が輸入されている。先ほどお話がありましたように、カロリーベースで60%以上 は輸入に頼っているのですよと、そういう現実があるということです。  それからもう一方は、この輸入国が非常に多岐にわたっている。先進国もあれば発展 途上国もあるしいろんな国がある、いろんな地域がありますよと。当然、そこにそれぞ れの国が食品関係の規制をしている、法律を決めている、それが必ずしも整合性がとれ ているわけではない。コーデックスもいろいろ議論されていますけれども、すべてのこ とに結論が出るというところまでは至っていないという現状があるのだろうと思いま す。 (スライド)  具体的に私ども事業の中で、どうやって安全性を確保していこうかということを考え るときに安全性、それからもう一つ、我々食品事業者として、当然おいしくて、健康で という要素も欠くべからざるものでございまして、もちろん安全性がベースなのですけ れども、そういった要素がないと事業として成り立たない。食品供給ができないという ことの中から、どういう要因が食品の安全性に影響し、品質に影響するかということを いろいろ整理をしております。先ほどから山本先生から出たように微生物問題もある し、いろんな要素がある。これは食品産業以外の他の産業からくるいろんなファクター も入ってくるわけです。ある意味では私どもこれは科学的な事実だと考えていますけれ ども、こういったものをどう事前に評価しておくか、どう考えておくか。これは輸入品 であろうが、国産であろうが同じなのですけれども、特に輸入品の場合、考えなきゃい けないことは、それぞれ輸出国がありまして、そこの国の文化、生活習慣、あるいは社 会的・政治的な要因は様々なわけです。特に先ほど申し上げましたように、法規制とい うことに関しては、国によっててんでばらばらでございます。こういったことも、最終 的には私どもが輸入してくる食品の安全性にかなり大きな影響を持っているということ を念頭に置いて、どうやって科学的な安全性をきちっと見ていくかということが必要だ ということが多分あるだろうと思います。 (スライド)  そういった中で私どもが常々やっている中で、これは我が社の当面の品質保証の課題 だと。保証というのは、もちろんベースは安全・安心でございます。そのほかにいろん な品質がありますよということなのですけれども、この中で最大の課題の一つは、海外 で生産される原材料、加工食品の安全性をどう確保していくか。輸入される食品という のは単純に加工された形だけで入ってくるわけではないわけです。原材料として日本国 内に持ち込んで日本国内で加工するということもある。いずれにしても、やはり私ども がつくっている食品の多くの原料は、先ほどから出ている農畜水産物、いわゆる一次産 業がつくり出すものなのです。そういったところの安全性をそれぞれの国の文化、風土 に根ざした形で、どうやって安全性を確保していくかということが極めて重要だろうと 考えております。そのことに対して、相当の努力をさせていただいているというふうに 理解をしております。 (スライド)  これがスライドとしては最後になるのですけれども、私どもが今、輸入食品の安全性 を確保するということで最も重要だと考えているのは、事前にきちっと先ほど申し上げ ました幾つのリスクをアセスメントしておく。ここが抜けると、とにかくでき上がった ものを持ってきて、それで検査をして安全性だということで確認していたら、とても安 全性というのは確保できませんよと。当然、現地に足を運び、我々自身の目で見て、そ れぞれどういう過程でつくられて、どういう安全性確保が行われているかということを 確かめた上で輸入をする。このことは、これから食品を輸入するという上で欠くべから ざる要素だと考えております。残念ながら、これがすべて行われればいいのでしょうけ れども、なかなかそこが100%行われていないという現実があるのかもしれません。  具体的にリスクアセスメントの中で事前の評価ですとか、一旦、輸入を始めていて も、いろんな地域、季節、それから政治的な変化、社会的な変化によってリスクが変わ ってくる要素がありますので、そういったものを定期的に見ていくのですと。最後に、 実際、日本でここはクレームという書き方をしましたけれども、このクレームという意 味は、広い意味で安全性も含めて、異物混入がないかとかいろんなことが起こるわけで すから、こういったものをきちっとリスクを評価しながら、そのことを逆に現場にフィ ードバックしていく。こういった取組はぜひ必要だということだと考えて努力をしてい るということだと思います。  いろいろ努力をしている中で、1つだけ考えなきゃいけないなと私どもが思っている のは、先ほど申し上げましたとおり、我が国は60%以上輸入に頼っているのだ。そうし ますと、我が国が今置かれている状況がどういうことなのかということを、単に行政や 企業だけで考えていても、安全性確保というのはなかなかできないのですね。それはあ る意味では、社会的な仕組みとして、どうやって安全で安定的な食料を我が国が調達す るのかということを、やはり市民社会全体、今日御出席の方には大変失礼な言い方かも しれませんけれども、メディアの方、それから消費者の方も含めて、どうすれば安全な 食品で、しかも必要量が我が国で調達できるのだろうかということで考えていかない と、なかなか今の状況についていけないだろうということを、最後に提言というほどで はありませんけれども、付け加えさせていただいて私の説明とさせていただきます。ど うもありがとうございました。 ●座長  山本様どうもありがとうございました。事業者の立場から安全性確保と今後の取組に ついての提言をいただきました。  お二方から発言をいただいたわけですけれども、フロアから発言をいただく前に、若 干パネラーの方々から各問題について御意見をいただいておきたいと思います。  まずは中野様から御提言がありました各項目ですね、これは資料の5番に書いてあり ますけれども、検査監視の目的と個別運用に関する事項と大きく2つ分けてあります が、その中でも食品の安全確保に関する事項の実態や動向、こういったものを科学的に 把握して得られた情報を施策に反映すること。こういったことと、それから検査の規格 基準、規格検査とか、規制分析に用いる分析法等に関して、まず、基準審査課の宮川さ んの方から何か御意見ございましたらお願いしたいと思います。 ●宮川  基準審査課の宮川でございます。後ろの方に顔が見えませんので、立ってお話を申し 上げたいと思います。  輸入食品の監視の目的の中で、確かに法律に遵守されているかどうかを見るというの は、これは大変大事なことでありますし、私ども基準をつくっていく際には、海外の規 制の状況でありますとか、そういうものも調べて規制をつくっていく。当然のことなが らプライオリティを決めていく上では、実際に調査をした結果、例えば、農薬であれば 残留実態の調査でありますとか、マーケットバスケットによる皆さん方が一日当たりど のぐらいの添加物をおとりになられているか、農薬をおとりになられているのか、違反 の多い農薬はどんなものであるのか、そういうようなものも調べながら、それで基準を つくっているということになります。したがいまして、実際にはこのようなやり方を既 に始めているものも若干あろうかと思いますので、これは実際の監視の仕方とか、これ からの施策の中でもよく考えていって、いろんなやり方を模索できたらと思います。  それから、検査の公定法の話で、中野さんの方からの御指摘の中で、私、1つ抜けて いるなと思ったのは、誰でも、どこでも、正しくできるというのが多分ポイントなのだ と思います。私ども大体検査法をつくる際には、実際に分析がどうやってできるかとい う、それだけの単純なことではなくて、国内にある検査機関の方が正しく検査できるの かと、こういうこともちゃんと調べて検査法というものをつくっています。ですから、 正しくできる、それから当然のことながら、検査の種類によっては早くできないといけ ないものもあるでしょうから、正しく迅速にできる、こういうようなものをつくってい る。そういうような状況にあります。  いろいろ御意見も御指摘もあろうかと思いますが、このあたりで私の方からのお話を 終りたいと思います。 ●座長  どうもありがとうございました。続けて御意見をパネラーの方からいただいておいた 方がいいかとも思いますので、個別の問題について、次に海外の状況とか、動向把握の 提供といったものがあります。これは違反の情報や海外の規格、基準がどうやっている のかという情報なのですけれども、これは私の方からお答えしておきたいと思うのです けれども、国立医薬品食品衛生研究所に安全情報部というのが設立されました。そこで は海外を含め国内の情報も食品安全にかかわる情報について、政府発表いかんにかかわ らず、新聞から文献、科学的な論文、そういったものについても情報を現在収集してお ります。残念ながら、まだホームページが完全に立ち上がっておりませんので、それを 近々立ち上げて、皆様方にそういった情報が提供できるような体制というのをとりたい と思っております。これは恐らく安全情報部の方からも御意見があるかと思いますけれ ども、そういったことで違反情報とか、規格、基準等の情報についても、これからホー ムページの方で見ていけるかと思っております。  これに関しまして、安全情報部と、それからまた、事業者の立場でいろいろ取り組ん でおられる山本様からも御意見をいただきたいと思いますけれども、それではまず山本 様から。 ●山本  私どもで、先ほどお話ししましたように、海外の輸入者、生産者から輸出してもらう とき、輸入するときには、その食品ごとに絶えず厚生労働省から公開されている違反事 例、これをリストアップして過去何年間、まだそんなに公開されていませんので、少な くとも公開されている範囲でリストアップして、絶えず、それを相手国、私どもがつき 合っている生産者に示して、こういう事実があるんだよと、ここがクリアされないと輸 入はできませんよという話をしています。ここがある意味では非常に難しいところで、 1つは、あの情報自体が英語になっていたのかなっていないのか私は覚えていないので すけれども、一部ですか、英語になっていなきゃいけないということと、それからもう 一つは、それの基準が関連付けて示せないと、結果だけ出してアウトですよというと、 今度その説明が大変なのですね。その辺がやりやすいような形で私どもも努力をしてい るつもりなのですけれども、行政サイドとしても、より海外の生産者に対してわかりや すい形ということで出していただけると大変ありがたいなと思っております。 ●座長  貴重な御意見どうもありがとうございました。続きまして、検査体制の充実強化とい うことに関しまして、滝本補佐の方からお願いいたします。 ●滝本  検疫所業務管理室の滝本ですけれども、事前にいただいている意見の中でも、検疫所 の検査体制の充実という御意見もございますし、併せて答えさせていただきます。先ほ ど東京検疫所長の方からもありましたように、平成元年89名だった食品衛生監視員が、 今年度283名になっております。政府全体なかなか増員が認められない状況の中で、我々 としても精一杯頑張っております。また、単に人の増員だけではなくて、業務そのもの をいかに効率的・効果的に行うかという観点から、これまでも輸入監視の進め方につい て改善を加えておりまして、例えば、従前と申しましてももう随分前ですけれども、1 人の監視員が書類の審査をしたり現場検査をしたり、あるいは分析までやるというよう な、非常に非効率的な監視をしておったのですけれども、横浜や神戸に高度な検査を専 門にする検査センターをつくったりとか、あるいは届出をコンピュータ化するとか、あ るいは現在の検査体制である、検査命令とモニタリング検査との体系的な輸入時の検査 体制の確立など、単に人員の増だけではなくて、より網羅的・効率的に輸入時の監視が できるようにということで頑張ってきておるつもりでありますし、これからもそのよう な方向で取り組んでいきたいというふうに考えている次第でございます。 ●座長  どうもありがとうございました。それでは、パネラーの中に外口参事官がお見えにな っていますけれども、御意見をいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。 ●外口  私は食品安全部の中で、リスクコミュニケーションを主に担当しています。意見交換 会もそれの一部なのですけれども、意見交換会のあり方ということで、一言お話しした いなと思いました。7月に食の安全の確保についての意見交換会を厚生労働省分だけで 十何回かやっています。その意見交換会の持ち方なのですけれども、意見交換会をした 後で必ずアンケートをとるようにしました。そうするとアンケートの結果、最初のころ 得た結果というのが、どこが問題ですかというと、行政の一方的な説明に終始している と、こういう意見が非常に多かったのです。最近少しそれが改善してきまして、一方的 な説明という御批判は減ってきたのですけれども、単なる質疑応答に過ぎないと。本当 の意見交換会というのは、関係者が行政だけじゃないです。もちろん消費者の方、事業 者の方、あらゆる立場の方、メディアも含めてお互いにそのテーマについての意見を出 し合って、ギャップならギャップのあることをお互いにそれを認識して、その次にどう すればいいか。そういうような提言に近いところまで持っていければ、その意見交換会 というのは一歩前進したのではないかと思うわけです。まだ、我々も慣れないものです から、お聞きになっておわかりのように、まだ一方的な説明と質疑応答の間ぐらいのス テージにいると思いますので、これからフロアの方も含めて、いろんな意見のやり取り が始まると思いますので、ぜひ、そのところで真の意見交換会に近いものにしていただ ければと思いますので、よろしくお願いします。 ●座長  大変いい提言をしていただいたと思います。パネラーの方も意見を述べているわけで すけれども、皆様方からもこれらのテーマについて御意見を後ほどちょうだいしようか と思っております。もう一つ、検査体制の信頼性確保に関して、考え方を少し伺ってお きたいと思いますので、道野補佐の方からお願いします。 ●道野  監視安全課の道野と申します。よろしくお願いします。意見交換ということですので 意見も含めて話させていただきます。  全般的な話として、実は今回の法律改正と結びつけて若干意見を言わせていただきま すと、先ほど生協の中野さんからいろいろ御指摘をいただいたように、全般に輸入食品 に対して不安を皆さんお持ちになっているということがあって、これは法律改正の準備 をしていたときに、自民党の厚生労働部会の先生方と我々でいろいろとディスカッショ ンをした中で、やはり不安が多いということは何かというと、まず情報不足なのだろ う。保健所がどんな活動をしているか、それから検疫所がどんな活動をしているか、そ んなことを一般の人は余り知らない。ここに来ておられる方はきっと関心の高い方なの で、ある程度御存じだったという方もいらっしゃるでしょうけれども、例えば、読売新 聞のアンケートに答えにような人たち、別に読売新聞のアンケートに答える人がどうこ うということではないですけれども、そんなによく御存じなわけはないだろう。そうい った意味から言うと、行政活動というものをきちんと皆さんに知っていただいて、その 上で問題点を指摘していただくなり、不安なら本当に不安になっていただくなり、そう いうことをしていくということが大事なのだろう。  国内の監視指導に関しては、都道府県ごとに監視指導計画というものをつくってもら う。それから、輸入時の輸入食品の監視に関しては、輸入食品監視指導計画をつくりま しょうと。それを案の段階で公表して、国民の皆さんの意見をいただいて、最終的なも のにしていく。それから、結果についても必ず公開をしていく。そういった行政活動に ついて、きちんと皆さんに情報を出していく、ディスクロージャーを進めていこう、そ ういうことが一つあるわけです。そういった中から、恐らく中野さんがおっしゃったよ うな、日本の法制度をちゃんと遵守しているのかどうかということについても、そうい ったことを確認できているかどうかということも浮かび上がってくると思いますし、そ の間に出てきたいろんな科学的見地から把握された情報というものが施策に生かされて いるかどうかということも評価ができてくるというふうに考えています。  それから個別問題として、検査機関の信頼性確保ということで御指摘があったわけで す。欧州連合の事例について御紹介になりましたけれども、日本でもほぼ同じ考え方で 対応しています。検査機関が正しい検査をするかどうかということの考え方というのは 2つあります。  1つは何かというと、まず公正性が確保されているかどうかということです。要する に、事業者側に寄っていたり、逆の側に寄っていたり、中立性がちゃんと確保されてい るかどうか。それからもう一つは、実際の検査の実務が技術的にどうか。ハードの問題 もありますしソフトの問題もあるわけです。今回の法律改正で従来、指定検査機関制度 というものをとっていたんですけれども、今後は登録制度ということになって、もう一 つは今までは指定の対象が公益法人限定というような制度だったわけです。今度は登録 に関しては民間の法人はすべて対象になる。ただし、ここで公正要件というのを設けて いるわけです。今までは公益法人であることと、それから、その他やっている食品検査 以外の事業が食品の検査事業に影響を及ぼさないか、この2点で見ていたわけですけれ ども、今度は民間検査機関に対象を広げるということで、例えば食品関係会社の子会社 じゃないかとか、社長さんが同じじゃないかとか、そういった法人規制の観点からの要 件を設けています。それ以外の技術的要件については、今までとそんなに変わらないで す。昨日も技術的要件について、厚生労働省の方で検討会を開いたわけですけれども、 その中で、要は業務の管理がきちんとできるか、マニュアルがつくられているか、それ から記録ができているか、そういうような基準の内容を検討しました。  ところが、今年に入って、実は2、3件と検査機関でのいわゆる不正の検査というの があったわけです。それは何が原因かといいますと、本来技術的にはそんなに大きな問 題があったとは考えにくいですけれども、根っこにあるのは過剰受託なのです。たくさ んの検査を受ける。それはどうしてかというと、やはりたくさんお客さんを集めたいと いうことがあるわけです。どういうことかというと、早くて値段も安い。結果として は、そういうところが、やはり技術的に幾つかの問題を起こして処分の対象になったと いう経緯があります。輸入者の方はたくさん来ておられると思いますけれども、安いだ けとか、早いだけで検査機関を選んでいる方がいらっしゃると思いますけれども、やは り、技術的にどうかということをよく考えてもらって委託していただきたい。早いこと とか、安いことが直ちに問題にはつながらないです。けれども、それが遠因になるとい うことが実際の事例で証明されている。そんなところです。 ●座長  道野さん、どうもありがとうございました。今の検査に関して山本様の方から御意見 がございます。どうぞ。 ●山本  検査について、これを言うと厚生労働省の方には大変に失礼かもしれませんけれど も、実は私ども問題にしているのはもう一つありまして、必ずしも検査機関に委託した ら検査機関がおかしいだけじゃなくて、正直なことを言いますと、行政の中でも本当に 正しいのですかということは、これ、ある部分、全部ではないと思いますけれども、過 去にも行政の検査でミスがあったというようなことで大きなトラブルになった事例もあ りますし、もう一つは、最近起こっている事例の中で、やはり行政の内部でも検査の方 法が若干違っていたとか、基準の考え方が違っていたという事例もありますし、そこの ところはきちんとしていただきたい。少なくとも検査法を一つ決めたときに、その同等 でいいという、同等というのはどういう意味なのかということをある程度きちっと決め ていかないと、そういった問題が起こり得るのじゃないかということで、ちょっと余計 なことかもしれませんけれども、ひとつお願いをいたしたいと思います。 ●座長  精度管理に関して、かなり具体的で重要な提言があったと思いますけれども、中野様 の御提言された問題について、意見があったのですけれども、外口参事官何かございま すか。 ●外口  先ほどの行政の検査にもミスはあるじゃないか、こういうような意見を私は期待して いたのです。そういうことを言ってくれなければ進歩がないわけなのです。行政がおか しいと思ったら遠慮しないで言えばいいんですよ。そうすれば、もっと精度がよくなる のです。ということで、具体的にあったら遠慮しないでどんどん我々に言ってくださ い。そうすれば精度の改善に努めます。実際、精度管理もテストサンプルを配布すると かいろんなことを今やっています。それはもちろん行政でやっているところも一緒にや っていますので、いろんな仕組みがありますから、そういったことを充実させていきた いと思います。  それから、同等の決め方についても御意見がありましたけれども、いろいろな通知と かを読んで、ここがわからないというときには、それを具体的にぜひ御指摘をいただき たいと思います。それも我々が改善するための糧になると思っています。 ●座長  どうもありがとうございました。様々パネラーの方からも意見が出ましたけれども、 中野様も御意見をお願いいたします。 ●中野  リスクコミュニケーションというより、本来のリスク分析というのは、こういう問題 意識から始まって、では何をするという施策の案が立ち上がって、安全委員会に必要な ものが評価に行くというプラン・ドゥー・シーサイクルで回っていくのですけが、そう いう意味では、鉄は熱いうちに打てではないですけれども、直せるときに直しておいた 方がいいのではないかと聞いていて感じます。「やっている」と道野さんはおっしゃい ましたけれども、運用としてやっているのかもしれないですが、不正や外部精度管理に 対する不信感との関係でいくと、本当に正しい検査値が国の内外に示され、きちんと日 本は試験に対しても公明正大にやっていますという意味においては今の運用方法でいい のか、一つの考え方の方向として、外部の認証機関による一律的な外部精度管理みたい なやり方は本当に効果があるのではないかということは、やはり検討課題として考えて おいてもいいのではないのかと思います。 ●道野  外部精度管理という意味では、実は行政機関もすべての職員衛生法の検査をやってい る都道府県、それから森田所長のいらっしゃる東京検疫所の輸入食品の検査センター も、それから指定検査機関もすべて対象にして、実は外部精度管理というのをやってい ます。例えば、添加物、農薬、それから微生物ですね、病原微生物の検査、そういった ものについて年間計画を立ててやっているわけです。その中で正確に結果が出せなかっ たところというのは、それの改善をしていっていただくというようなことをやっていま す。ただ、確かに中野さんおっしゃるとおり、一応、枠組みとしてはできて、全国の検 査機関、大体400ぐらい今申し上げた検査機関があるわけですけれども、それを対象に年 計画を立てて動いてはいます。やはり、それが十分かどうかということになると、どこ までやるのかという問題が非常にあって、今のところは年に1回、各項目を一応、全国 に同じ検体を配って正しい検査結果が出せるかということを外部精度管理というのでや っています。でも、それはあくまで年に一遍のチャレンジであって、日々のそういう検 査機関の中でのコントロール、これは行政機関も、それから指定検査機関、公益法人も そうですけれども、QAEといいまして、そういう中でのチェックシステムと、それか らマニュアル化とか、記録の保存とか、そういったことを法律上義務付けでやっていま す。それをちゃんとやっているかどうかというのを、例えば、地方厚生局が立ち入りし て検査をする。そういうような仕組みになっていますけれども、もちろん、今度は立ち 入り頻度が十分なのかとか、そういういろんな問題点というのは引き続きあるのだろう というふうに考えています。 ●座長  どうもありがとうございました。検査制度に関しても、これからやはり精度管理とい う問題、これは避けて通れない重要な問題だと考えられます。そのほか監視体制とか、 検査全般に関してもそうなのですけれども、輸入食品の安全性という問題について、様 々な御意見が出ております。フロアの方からどなたか、今までの意見を踏まえて御意見 がある方、また、新たに御提言されることがあればおっしゃっていただければと思いま す。一番前の方どうぞ。 ●質問者1  私どもは乳製品のメーカーでございまして、製品特性上、果汁果肉とか、当然乳製品 も輸入業者さんから買っている立場の者です。現行の特に気にしているのが農薬関係で す。動物用薬品を含めて。現行の法律でも実際に果汁果肉等が規格基準に合致している のかというところを購入する際に確認させていただくが、輸入業者さん等々なかなか難 しい。非常に時間と費用がかかるということが問題になっています。我々としては使う 側としてHACCPも持っておりますし、原料管理という立場から、やはりそこら辺は 非常に重要であるということで、やり取りが長期化することも間々あります。これがポ ジティブリスト制になったときに非常に懸念しております。事前の質問でも私がこれを 出したのですが、一斉検査というか、より効率的な検査方法、輸入業者さんも含めて私 どももそうですが、食品事業者が守れる制度、そういう整備環境にぜひしていただきた いと強く希望しております。  また、市場環境等で果汁果肉等もより差別化されたニッチな食材にだんだん移行して いる傾向もあります。その場合には、一般的な食材であれば、量も当然確保できている ということで、検査費用も収支的な観点からは生み出せる、しかしそれがニッチなもの になれはなるほど、そこら辺がだんだんネックになっているという実態があります。そ ういう観点からもより効率的な検査方法等というのは、これから絶対に必要になるとい うふうに考えておりますので、ぜひそこら辺を強く希望します。 ●座長  どうもありがとうございました。ただいまの御発言は、規格基準の設定において、検 査のしやすいようなもの、方法も含めて考慮していただきたいということで、また未知 の物質についても考えていく必要があるのかということで、宮川さん何か意見あります か。 ●宮川  お手元にあります資料の質疑応答で回答集をお示ししていますが、恐らく10番がそれ に当たるんだと思います。私ども暫定基準として1次案を10月末に公表いたしましてポ ジティブリスト制にいたしましたが、これには約650ぐらいの農薬等、動物用医薬品も含 めて入っておるのですが、今年度、来年度、それから再来年度、3か年ぐらいの予定で 一斉分析法も含めてやろうと思っています。実際に監視する側も個別の方法だとなかな か手間がかかるわけですので、一斉分析というのは俎上に乗せておりますので、今後そ ういう形を進めていけたらと思います。簡単ではありますが。 ●座長  先ほどの発言者(質問者1)の方よろしいですか。 ●質問者1  あとはそのタイミングだと思っているのですね。確立される時間が先延ばしという か、表現が悪いですが、長くなればなるほど、当然、我々としては非常に苦しくなると うこともありますので、今3か年というお話もありましたけれども、ぜひそこら辺の期 間は最大限短くしていただきたいなと思います。 ●座長  これは研究所の方からもお答えしておいた方がいいと思うのですけれども、検知法の 開発につきましては、国立医薬品食品衛生研究所の方で鋭意努力してやっております。 ですから、頑張ってなるべく早くということでやるのですけれども、なかなか難しいと ころもありまして、人員は少し強化していただきましたので、なるべくスームズに進め ていきたいと思っております。私の方からも関係者に伝えておきます。  そのほか、フロアの方からの御意見、真ん中の方、その次、後ろの方、それから左の 方にいって、前の方ということで。じゃ、真ん中の方どうぞ。 ●質問者2  私ども農産物の専門会社です。非常に困っているということで、今回、質問状の11番 のところで出させてもらいました。要するに国内の農薬取締法と国外との基準の整合性 がないというところで、いろいろと日常の事業のところで困っているのですけれども、 事業のところでは何とか仕組みはつくれると思うんですが、実は普段に農産物の生産者 及び消費者、生協の組合の方と話していると、どうもここのところの農薬取締法という のが輸入農産物の安全性を考える場合に避けて通れない大きな問題だと思っています。  今日の資料の2−2というところの別表2というのがありまして、ここで私も初めて 見たのですが、別表2の一番下の輸入者への指導要領という形に2がなっていると思う のですが、一番下、残留農薬という項目ですね。ここのところで定期的に確認してもら う事項として、収穫前、収穫後における農薬の適正な用法、要領の遵守ということが書 かれております。これは恐らく、「適正な」という言葉は国内の農薬取締法という意味 だと思うんですが、これのところが遵守事項に入っているという意味では非常に大きな 位置を、農薬の取り締まりを持つのではないかなと。  先ほど困っているという具合に言ったわけですけど、生産者の方からしてみれば、要 するに整合性がないという中で輸入が続けられている。その場合に一番問題になるの が、国内で使用が禁止されている農薬が輸入品に使われていたとしても、最終的にそれ が残留基準値を超えていなければ輸入はオーケー、流通はオーケーということにならざ るを得ないと。そういう意味では日本の生産者の場合には、今年3月に改定された農薬 取締法によって、例えば、キャベツに使う農薬とピーマンに使う農薬はそれぞれ別々の ものがありますとか、あるいは、それぞれの希釈倍率が決められているとか、これを守 らなきゃいけないという形が一方である。他方で、輸入農産物に関しては、基本的にそ の国の基準でもって判断していくという形で、日本ほど恐らく厳しいところはないのじ ゃないか。そういう意味では生産者の側は、我々は農水省でもないのに、いろいろと我 々の方に文句を言ってくるというような形があって非常に困っているというのが1つで す。  それからもう一つは、消費者の側から見ると店頭で、例えば輸入のパプリカが置いて ある、隣に国産のものが置いてある、どっちも、国産のものも農薬を使っていると。そ ういう意味では農水省の先ほど言われていました国内産品と同等の安全確保ということ が一見されているかに見えると思うんですが、先ほど言いましたように、農薬取締法の 観点から見ると、これは違うのじゃないかなと。要するに言いたいのは、いいとか悪い とかという話ではなくて、こういう現状がある、あるいは同等であるということである とすれば、国の方が一方的に同等の基準を定めて、だから、これは同等なのだというこ とではなくて、同等というのはやっぱりみんなで納得したレベルだということを、これ をリスクコミュニケーションとしてやっていく必要があるのじゃないかなと。その前の 段階として、同じパプリカが並んでいたとしても、そういう意味で違うのだということ も明らかにしていく必要があるのじゃないかなと思うのです。そういうリスクコミュニ ケーションという視点というのは、まだまだ非常に弱いのじゃないかというふうに感じ ました。  以上です。 ●座長  どうもありがとうございました。農薬の取締法については国内規制ということで、農 水省の方で決めているわけですけれども、これはちょっと論点のわからないところがあ りまして、輸入の農産物に使われている農薬が国内で規制されている場合の話なんです か、それとも、国内では規制されていなくて使われていて、それでも基準違反だという ことでアウトになるのか、それとも、それが堂々と流通していて問題だという話なのか と、その辺ちょっと、質問者の方お願いします。 ●質問者2  というよりも、とにかく輸入国ですから相手国は複数、数多くあるわけですね。それ ぞれに基準を持っていて生産しているわけですから、その基準と日本の農薬取締法で定 める基準が一致していないというのは、これは当然だと思うんですね。ですから、そう いう違いがあるということを前提にした場合にどうなのですかという話をしたわけで す。 ●座長  これは宮川さんの方から意見を聞きたいと思います。 ●宮川  回答集の方で私ども11番でお答えを書きましたが、どうも私どもの理解が不足してい たようで、お答えは余り適切ではなかったように思います。それは反省をしております が、恐らく今おっしゃられた農薬取締法で使用禁止になったというのは、要するに無登 録農薬みたいな、ああいう問題のことをおっしゃっているんだと思います。これはこの 答えの方の一番初めの行にもよるのだと思うのですけれども、私どもといいますか、私 の理解では、農薬に関していうと、当然、気候、風土、それから害虫の発生状況等々、 国によって、産地によって当然違ってくるわけですから、使われる農薬、適用される農 薬というのも、その土地でアベーラブルになっているもの、利用可能な農薬のものとい うのはそれぞれ違いがどうしても生じているということになろうと思います。ただ、私 どもの方で残留基準を使います際には、つくります際には、当然のことながら、皆さん 方のお口に入る段階で、それが最終的に毒性をあらわさない量というものを設定するわ けですので、残留基準としては国内も国外も同じ基準を適用するという形になります。  じゃ、国内でも例えばキャベツに使われていない農薬だけれども、海外で使われてい るのだったら、国内でも使えるようにしてほしいということになると、これは農水省さ んのお顔を見て、農水省さんが使ってもいいですよと言っていただけるかどうかとい う、これは環境の問題なんかもあるのかもしれないですけれども、そういうようなとこ ろがあると思うのです。使っていいかどうかというものと、残留の基準を決めるという のはやや分かれてやっているといいますか、別々の観点でやっていますので、そういう 意味で整合がとれていないという部分はあるのだと思います。 ●座長  どうもありがとうございました。使用の可否というか、答え方、意見の言い方が難し いかと思いますけれども、農水省の方からちょっとお願いいたします。 ●古畑  今の宮川補佐のお答えとほぼ同じなのですけれども、農水省の立場でお話しいたしま すと、確かに農薬の使用というのは、なるべく使わない方がもちろん望ましいのでしょ うけれども、その土地その土地、その国その国の病害虫の発生状況に見合って必要最低 限のものを使うというものが本来あるべき姿であります。つまり、どういう農薬を使う かというのは、基本的には環境なりその国の仕組みで決まるものですので、なかなか日 本から海外に仕組みを強制させるというのは困難です。その代わり、食品として入って きたものに関しては、今まで御説明のあったとおり、食品衛生法によりきちんと管理を する。つまり、農薬の場合には、食品としての安全性という観点での基準というのもあ りますし、その土地その土地の環境への配慮といった基準もあります。様々な角度で基 準が決まったものでできているということで、それは使用場面での影響を考慮して決め てくるものもありますので、一概に食品としてだけの観点では決まりません。そういう 意味では、国際的なルールで食品の残留基準はコーデックス等々でも話し合われていま すけれども、使用に関しては、その国ごとに決めているというのが現状です。食品の安 全性という観点でいうのであれば、厚生労働省の方で今まさに話し合われているような ことが国際的にも認められているわけですから、この基準を守るように、情報提供を行 うとか、検査をしていくということが安全性確保という意味では一番重要だろうという ふうに考えております。 ●座長  どうもありがとうございました。残留の問題と使用をするかしないかという問題につ いては、まだ議論があるかと思いますけれども、ほかにも御意見ある方が大勢おられま すので、後ろの方で最初に挙げられていた方、どうぞ。 ●質問者3  消費者としてお話を伺っていましたら、とても難しいことなのですね。普段これだけ のことを言われても一般消費者は多分わからないと思います。それと、先ほど情報の不 足ということをおっしゃっていましたけれども、確かにそうです。私たちにはほとんど 情報は伝わってきません。  2つお伺いしたいです。1つは、輸入された品物を水際で監視するというのが厚生労 働省だそうでして、その後、農林水産省の技術センターの方で検査されると言いました けれども、その違いがどういうものか、私にはわかりませんので教えていただきたいと いうこと。それと、生活協同組合も今年、冷凍野菜、ほうれん草に農薬が基準外入って いたということで大分問題になりました。それで、リスクコミュニケーションというこ とでお話をしていただいたときに、先ほど生協の関係の方がいらっしゃるとおっしゃっ ていましたけれども、生協も海外で生産してもらって、そのままものが入ってくると、 そういうことをしているということは、これは消費者という部分もありますし、流通と しての考え方もおありになるのだと思いますけれども、そういうところをどうお考えに なっているのかなということと、その関係で、私はある食品メーカー、総合食品メーカ ーの見学に行きました。そこでは、原材料のお肉から野菜までほとんど海外からの輸入 だそうです。それでなければ、こういった商品ができないと言われましたところが、原 料の原産地は書いておりません。農薬とかそういった基準はそちらの方で検査なさるの でしょうけれども、商品になってきたものは私どもには全然見えないのですね。できれ ば、原料の原産地も入れてほしいということと、それから、農水と厚生労働省との線引 きというのですか、そういうところを教えていただきたいと思います。 ●座長  どうもありがとうございました。輸入食品の水際の取り締まりと、それから検査の関 係につきましては、外口参事官の方から。 ●外口  最初の質問にコメントさせていただきたいと思います。厚生労働省の方では、輸入さ れる食品を検疫所を中心にして検査をしておりますし、それから、輸入される前の段階 から輸入国への働きかけ、あるいは輸入する事業さんへの指導をさせていただいておる ところです。それで品物がモニタリング検査ですから一部流通が始まるわけですけれど も、流通した段階で先ほどの農水省の説明にあったような検査もありますし、それから もっと数多く実際には各自治体でかなり検査をしております。そういったところで検査 をしているわけですけれども、一言で言えば、厚生労働省の方は、食品衛生法という か、口に入る前の段階のところ、それで農水省の方はその前の生産段階等のところでそ れぞれ役割分担をしておるところでございます。  最近、前と違って農水省の厚生労働省とのコミュニケーションがよくなってまいりま したので、いろいろなことが連携してできるようになってきました。例えば、表示の問 題一つとっても、一部の地域では保健所と農政事務所がかなり連携した取組を進めてお りますし、それからブロックごとに、ブロックというのは近畿ブロックとかそういう単 位ですけれども、連絡会議もできていますので、その辺は役割分担をしながらも、それ ぞれがうまく組み合わさってやっていけるようになっていくのじゃないかと思います。  以上です。 ●座長  どうもありがとうございました。農水省の方から。 ●古畑  農水省の方からも説明させていただきたいと思います。今お話にありましたけれど も、まさに関係省庁の連携の一環でこういう形で農水省として参加させていただいてお りますけれども、基本的に輸入食品の安全性の観点での調査というのは、先ほど来お話 があるように、水際では厚生労働省が検査しておりますし、流通しているものは自治体 の保健所が中心に調査をしています。これが本来の食品の安全の観点での調査でありま す。先ほど消費技術センターで行っている調査を説明させていただきましたが、これは 食品の安全性の観点だけではなくて、私の説明が悪かったのかもしれませんが、目的を 異にしておりまして安全な食品を供給する観点で事業者に対して注意喚起をするという のが目的です。安全性の判断は先程の調査もそうですが、残留基準をオーバーするおそ れがあるものに関しては厚生労働省に通報して、取り締まり等の手続きをお願いしてお り、あくまでもその点は厚生労働省が行うというものです。  我々が行っているのは、食品事業者を経由して、生産者により安全な農産物をつくっ ていただくように情報提供するというのが目的であります。あと、同じ時間、20分とい う時間をいただいて説明したものですから、同じようなスキームに見えていますけれど も、我々が行っているのは、説明資料にもありますけれども、年間600検体ということで すので、これですべてのものを網羅することは到底できないということです。そのため 違反なり、問題がありそうなものを選んだりということで工夫しながらやっております けれども、そういうボリュームの点でも全然違いますので、厚生労働省の行っている検 査と農水省の行っている検査、決してダブっているものではないというふうに御理解い ただきたいと思います。 ●座長  今ので、検査に関してはよろしいでしょうか、御質問者(質問者3)の方。 ●質問者3  すみません。自治体のお話があったのですけれども、自治体はどんなところで関与し ていらっしゃるのですか。 ●座長  道野さんお願いします。 ●道野  監視安全課の道野ですけれども、要は国内で製造されたり、それから輸入食品を含め て、国内で流通している食品に関しては、安全上、衛生上の取り締まりは都道府県知事 に基本的に権限があるわけです。これは食品衛生法に基づく検査ということですね。各 都道府県の職員に食品衛生監視員がいまして、通常、保健所にいらっしゃる。そういう 人たちが、例えば卸売市場とか、場合によって小売の店先であるとか、もちろん生産地 の市場であるとか、そういったところで収去検査と申しまして、抜き取り検査をするわ けです。抜き取ったものを都道府県の衛生研究所であるとか、そういった自らの分析機 関で検査をして、食品衛生法に違反する食品が出回っていないかどうかということの検 査を残留農薬などについて行っています。そのほかに営業許可だとか、食中毒の調査と か、そういったことも国内の都道府県にいる保健所の食品衛生監視員が対応している。 こういったことが食品衛生法に基づく都道府県サイドの行政活動ということになりま す。 ●座長  よろしいでしょうか。もう一点あったかと思うのですが、原材料の検査の有無に関し て表示をするかどうかというお話ですか。 ●質問者3  輸入食品の原産地です。 ●座長  それは今表示の方ではやられていると思いますので。 ●質問者3  変わっているそうですけれども、まだまだなかなか、どこまでやられているのかわか りませんので、なるべく多くのものをやってほしいということです。 ●座長  御意見どうもありがとうございました。時間も大分迫ってまいりましたけれども、あ とお二方ほどございましたので、左の方。 ●質問者4  食品メーカーのものです。よろしくお願いします。  今回の残留農薬基準値案が10月末に出たのですけれども、一般的にポティブリストと いうふうに呼んでいるわけですけれども、ポジティブリストという言葉から受ける解釈 としては、これ以外の農薬は使ってはいかんというふうに解釈できるわけです。実際問 題、そのように御理解されているお客様もいっぱいいらっしゃるわけですね。ポジティ ブリストに載っていない農薬も、すごく低い値の一律基準値でなければいいということ になっているのですが、一般的に社会のお客様の理解としては、ポジティブリストに載 っていない農薬を使っているなんてとんでもないと、そういうことになっちゃっている のですね。ここら辺、ポジティブリストという言葉を使っていると誤解を招くのかなと いう気がしております。  実際問題、今回647発表されたのですが、私、文系の人間なのでわかりませんが、いろ いろ聞いたところによると、実際、欧米で許可されて広く使われている農薬のかなりの 部分がまだ抜け落ちているということで、ここら辺、私ども含めて食品メーカー、かな り海外から原材料が入っていますので、一生懸命チェックして、パブリックコメントを 出さなきゃいけないと思っていたのですが、1月の末ぐらいが締め切りということなの ですが、ちょっとこれだけたくさんの食品が輸入されてきていて、かつ抜けて落ちてい る農薬があるとなると、ちょっと申し訳ないのですけれども、1月の下旬だと時間的に 難しいというのが私の感じているところです。  あと、付け加えて申し上げますと、現行農林水産省の登録農薬リストに載っている農 薬の中でも、今回のポジティブリストに載っていないものもあるということで、よくわ からないと。日本国内の農家さんが使っていい農薬なのに、今回のリストに載っていな い、例えば私、よくわかりませんが、銅とか硫黄、農薬としてよく使われているものだ と思うのですが、今回の647に入っていない。ここら辺はどうなのだということでいろい ろな疑問が上がっております。いずれにせよ問題点が多いのですが、銅と硫黄の点も含 めて1月末までというのは非常に苦しいので、そこら辺ちょっとパブリックコメントの 締め切りを延長していただくとかできないものかなというふうに考えております。いか がでしょうか。 ●座長  御意見が出ましたけれども、宮川さん何かございますか。 ●宮川  今の御指摘、大変参考になりました。私ども、ポジティブリストというものを、こう 言ってはなんですけれども、小さな字で「いわゆるポジティブリスト」と申し上げてい たのですけれども、というのはなぜかというと、海外では登録をする際に、併せて残留 基準をつくったりするということから、添加物と同じように使っていい添加物と、それ と残留基準のようなものが併せて設定されている、使用基準も併せて設定されていると いう、そういう制度を見て、いわゆるポジティブリストまがいのものですよということ を申し上げていたのです。いつの間にかそれが全部とれちゃいまして、ポジティブリス トという説明になっているのかもしれませんけれども、そういう意味では注意をしてい きたいと思います。私どもの趣旨としては一律基準値、食品の中に一定の人の健康を損 なうおそれがない量として、厚生労働大臣が定める量を超えて農薬が残ってはいけませ んという、その大原則を打ち出して、それ以外のもので残留するようなものについて は、ちゃんと科学的な評価に基づいて基準を決めていこう。そういう制度のことをいわ ゆるポジティブリストというような形で呼んできたわけです。したがいまして、今回基 準を示したものの中には、御指摘のように基準にないものというのはあります。基準が 示されていないもの、基準の案が示されていないものがございます。それは何かという と、1つは、残留基準が設定されていない農薬、国内等の農薬で言えば、登録保留基準 の設定されていないもの、こういうものは載っていないわけです。ですから、海外でも そういうものがあります。じゃ、それはどうなるかというと、残留していると、残留基 準がない部分については残留していないとアウトという原則でやるということになりま す。ただ、使っていいか、使ってよくないかというのを私どもの法律では規制すること はできませんので、先ほどの御指摘のポジティブリスト制という言い方は少し注意をし て、私どもも使っていきたいというふうに思います。  それで、コメントの期間の話ですけれども、できるだけ早く、今までのようなことを 個別具体的でなくても構いませんので、問題意識はまず第1次案という段階で、私ども これを第1次案とわざわざ書いているのはなぜかというと、私ども自身が海外の制度、 それから海外で使用されている実態自身を100%理解をしているわけではありませんし、 そういう意味で海外の政府からのコメントをいただく、事業者さんからもいろいろコメ ントをいただく、消費者の方からもコメントをいただくために第1次案というのを示し て、とりあえずのコメント期間は1月の末になります。ただ、ポジティブリスト制の議 論は、まだ向こう1年、来年いっぱいぐらいはまだまだ続いていくことになると思いま すので、個別の意見というのは、それは随時受け付けていくということになるのだと思 います。ただ、問題意識は、ぜひ1月の27日というところまでぜひ出していただきたい というふうに考えていて、個別に調べたら、ここが違うじゃないかという意見は、私ど も2次案を出すかどうかはともかくといたしますけれども、この後、薬事食品衛生審議 会という審議会の場で議論をいたしますし、その後、案をつくったら、またパブリック コメントでありますとか、WTOの通報でありますとか、そういう手続も当然、来年以 降、正確にいいますと再来年以降行う予定になりますので、まだまだ意見を個別に言っ ていただける機会というのは設けていきたいというふうに思っていますので、そういう 理解の上でぜひいろんな意見を出していただければと思います。 ●座長  よろしいでしょうか。 ●質問者4  銅とか硫黄とかの点はどうなのでしょうか。日本の登録の農薬になっているのです が、今回の647に入っていないのですけれども。 ●宮川  先ほど申し上げたので、個別に私自身すぐにお答えできませんけれども、基本的には 登録のある農薬の中で登録保留基準が設けられているものを、私どもは今回の暫定基準 の設定の際に使いました。登録保留基準というのは、環境省が農薬の登録に当たって、 食品における残留の程度というか、その基準を定めているものがございまして、それに 載っているものは反映をしているということになります。だから、国内で登録があって も、登録保留基準というものが定められていないものについては、私どもは今回入れて いないということになります。 ●座長  よろしいですか、そういう説明で。 ●質問者4  647の中で確かに空白になっていて、基準が設定されていない作物があるものもたくさ んあるのはわかっているのですけれども、ただ、お客さんというか、社会的にこれはポ ジティブリストなのだと、「いわゆる」じゃなくて、これはポジティブリストそのもの なのだというふうに理解されている人がかなり増えた状況ですので、私の希望としては 銅とか硫黄とも載せていただいて、全部中身の基準値は空白でもいいから、とりあえず 載せていただいた方がいいというふうに思います。というのは、今、御説明いただいた こと、私は理解できるのですけれども、一般消費者がその説明をぱっと聞いて、ぱっと 理解できるかというとちょっと難しいと思うのですね。だとしたら、最初からリストに 載せていただいて、これは一応基準値は今のところないですよとか、そういうふうにし ていただいた方がいいのじゃないかなと、文系の人間の立場からするとそういうふうに 思います。よろしくお願いいたします。 ●座長  どうもありがとうございました。貴重な御意見と思います。これはまた包括的な御意 見としてパブリックコメントの方でも出していただければと思いますし、順次検討して いかなければいけない課題だと思います。余り時間がなくなりましたけれども、先に男 の方。 ●質問者5  輸入食品の検査は毎日大変だと思いますけれども、御苦労さまでございます。これか らもっともっとやっていただきたいと思っております。私、食品添加物をつくっている メーカーのもので、品質保証をやっている者です。今ずっと皆様、農薬、農薬と言って いたものですから、食品添加物のことについてもちょっとお聞きしたいということでお 話をお伺いします。時間もないということでちょっと急いで話します。  我が国では、食品添加物については公定書できちんと規格をつくっている。欧米でも 規格基準がきちんとつくられている。ある一部の国についてはその辺がラフなものがあ るだろうという想定はしてあります。一部のものなのですが、そういう日本の規格から 大幅に食い違っているものが出回っている事例が出ている。一つの事例としましては、 既存添加物リスト載っている紅麹色素なのですが、このうちのシトリニンというものな のです。これについては、日本の公定書の規格では0.2ppmという残留があるのですが、 実際にこれを海外の、例えば中国とかロシアとかのものを測りますと数ppmから1,000 ppmオーダーのものが検出されてくるということになっています。ですから、こういう ものを、まず一つは輸入するときにきちんと検査をしておいていただきたい。場合 によっては、カビ毒ということで、腎毒性があるということで非常に危ないということ で、検疫所の方では恐らく年に一度の継続検査とか、そういう形を添加物等については とられるかと思うのですが、そういうことではなくて、こういうカビ毒みたいな人体に 影響のあるものについては、検査頻度を少し上げていただくということをお願いできな いかということです。  それと、こういったものについては、日本の基準を海外の方に適用していただけない ものなのかなと。特に先ほどお話を聞いていますと、日本の食品の4割、6割、輸入だ よ、加工食品もいっぱい入っているよといった場合、それに使われている添加物の安全 性はどうかなということもありまして、そういう日本の基準、あるいはコーデックスの 基準等があれば、それをきちっと相手国に対して言って、そういう基準で添加物等をつ くって、それを使った食品等を輸入してもらうようにということをお願いできないかな ということが1つあります。  それから3つ目なのですが、そういったものを使われている加工食品中の残留カビ 毒、こういったものについても検査をする必要があるのではないか。濃度の低いものに ついては、検査しても出てこないかと思うのですが、かなり高いものについては、1,000 ppmとか、そういうオーダーのものについては、食品中からも検出され得るのではないか と思われます。それで、こういった検査も検査計画、そういったものに盛り込めないか なということです。急いでお話ししましたけれども、そういうことでございます。 ●座長  どうもありがとうございました。検査の頻度の話は桑崎室長から。 ●桑崎  まずは、私個人としては、先ほど説明しましたが、海外における食品安全情報は正し ければどんな情報も歓迎です。情報をいただければ、それについて必要な対策のスイッ チが入る。検査強化するということになります。今の話でいくと、ちょっとそもそもシ トリニンなるものの知識が十分ありませんが、カビ毒なのですね。公定書で基準が決ま っているということですから、その添加物を外国から輸入した場合に基準適用になると いうことです。 ●質問者5  恐らく検疫所で単体を輸入した場合には、検査をして規格基準に合わなければ輸入で きないと思うのですけれども、一定期間合格であれば、継続という形で検査を省略され るだろう。ですけれども、こういう事例があるので、こういう国とか……。 ●桑崎  ということで、そういう情報をいただきましたので、実情を把握した上でどういう対 応が可能なのかということについてはよく考えてみたいと思います。  それから、日本の基準を外国によく周知をしてほしいと、これは先ほども言いました けれども、これは輸入者に対しても周知をしていますし、それから在外公館にも周知し ています。今後とも情報を提供し、しっかりやっていく必要があるということだと思い ます。  それから、加工食品の話は、カビ毒の毒性の評価とつながってくるのだろうと思うの です。カビ毒ですから、大抵穀類にも出るのだろうと思うので、そこら辺は情報収集し た上で、どう判断すべきかについて検討してみたいと思います。 ●座長  どうもありがとうございました。それでよろしいですか。それでは最後に。 ●質問者6  時間がないところ恐縮です。消費者問題の専門家集団のものです。  今日は厚生労働省さんの主催の会議ということですので、これは伺っておきたいので すが、昨今、インターネットで外国の食品等、医薬品もあると思います。それからサプ リメント等が売られて、大変な事件が起こっていると思うのですが、インターネットを 見てみるといろいろなものが売られているのですね。厚生労働省さんとしては、そうい うものを定期的にどなたか担当の方がおいでになって監視をしていらっしゃるのかどう か。もし、しておられるのでしたらば、怪しいものは事前にできる限り早め早めにチェ ックを入れていただかないと、誰か人が死んでから慌てふためいて後追いの形で禁止と か、情報を流していただいたのでは間に合わないということが、今インターネットで安 易に売られているということも含めて、厚生労働省さんは現在どういう体制になってい るかをお聞かせください。  以上です。ありがとうございました。 ●座長  それに関連した質問が中野さんの方からあるそうですので。 ●中野  例えば、そういう情報というのは公的にも国民生活センターが持っているパイオネッ トなどからも出ております。このような情報を、厚生労働省さんがどういう被害情報が 出ているとかというのをチェックしているのかということも含めて、御質問に御回答を していただけたらと思います。 ●道野  十分にお答えできるかどうかわかりませんが、今年の5月の食品衛生法等の改正の中 で例の健康増進法の中でも、そういう健康食品対策の一つとして、虚偽誇大広告の禁止 をしました。主にインターネットで販売されているものの多くは、そういう健康食品な のか、医薬品まがいなのか、医薬品なのかという結構ぎりぎりのところのものが多いの で、まずは広告に着目をして、効かないものが効きますよ、要するにそういう科学的根 拠のない広告、それからバイブル商法みたいなものについてのチェックを実際に法律が 8月29日に施行しましたので、それ以降チェックを実際にしています。行政指導もやっ ていますし、ちょっと正確な数字はあれですけれども、たしか二、三十ぐらいの事業者 に対して広告の訂正を申し入れて、それについては、一応、最終的にはすべて改善をし てもらったというような経緯があります。多分、改善をしたものについては、一応、措 置済みの話なので公開していないのじゃないかと思いますけれども、そこはここではっ きりとお答えすることはできません。すみません。  それからあと、危害情報の問題ですね。これも昨年の7月以降、例の中国産ダイエッ ト食品の問題なんかがありまして、そういった健康被害、特に因果関係というのはあん まりはっきりしないんですね。一人、二人の方が例えば肝障害を起こしたと。そういう 中でそれまである健康食品を食べた、そういうことについては、基本的に危害情報の内 容をある程度確認をして、要するに医師の診断があるとか、ほかの感染性の肝炎が否定 できるとか、一定のルールをおいて公表するという形をとっています。  それともう一つは、今回の食品衛生法改正の中で、前回アマメシバという植物を粉末 にしたものに関して細気管支炎を起こす可能性がある。これは因果関係もまだ明確では いですけれども、そういったものに関しては薬事食品衛生審議会と、それから食品安全 委員会に御意見をいただいて販売禁止措置というものをとっています。一応そういうよ うな形で、情報の収集というのは、基本的にはある程度根拠があるもの、保健所なり医 療機関での危害情報というものを集めて、一定のものについて公開をするということ と、それから、そういう広告規制、それからもう一つはアマメシバのようなある程度の 蓋然性を疑われるものについて専門家の意見を聞いて販売禁止すると、そういったよう な対応をとっています。 ●座長  どうもありがとうございます。座長の不手際で時間が大分延びておりますけれども、 最後にお一方。 ●質問者7  輸入事業者さん向けに国内の輸入規制について相談したり、アドバイスしたりという ことをしているものです。今のことに続けて質問なのですけれど、  健康食品の輸入ということを、小口の輸入業者さんが大変今関心がございます。健康 食品ですので、やはり厚生労働省の検疫所に届出をするということになりますと、その ときに健康食品として輸入するというときのチェック、医薬品の成分が入っているかい ないかということのチェックになると思うのですが、これは薬事法になりますので、検 疫所の方でこの点について、薬事法のチェックをどうふうにされているのかということ と、それについて、輸入業者さんはどういうふうに対応していったらいいのかというこ とをよく聞かれるものですから教えてください。 ●座長  これはどなたか。滝本さん。 ●滝本  本来、成分として、医薬品にしか使えないという成分が幾つかありますけれども、そ ういった成分が食品中に入っていると、それは食品衛生法による食品には該当しません から、医薬品というジャンルに入るわけです。したがいまして、検疫所に届出が出てく るときに、そういった可能性のあるものについては、薬務部局の方で確認をとった上 で、そういった成分が入っていないものであれば食品に該当に該当しますので、食品の 手続に移るというような手続をとっておりますので、それが疑われるものについては、 薬務局での確認を窓口の方で求められるというような形になります。 ●座長  よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。  まだまだあるかと思うのですけれども、ちょっと会場の時間の都合もございまして、 公開の意見交換会はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。  なお、パネラーはまだ残っておりますので、個別に意見を受け付けますので、どうぞ 御自由に前の方に出てきていただいて、御意見をお願いいたします。本日はどうもあり がとうございました。                   閉会