03/11/18 食の安全に関する意見交換会(議事録) 食の安全に関する意見交換会(議事録) 厚生労働省医薬食品局食品保健部                        平成15年12月5日(金)                        午後1時から5時                        於:アクロス福岡 4F国際会議場 1.開会 2.食品の安全確保に向けた取組み(内閣府食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省) 3.食品添加物を考える(千葉大学名誉教授 山崎 幹夫) 4.環境と食のリスク 化学物質はどのぐらい危険か(国際連合大学副学長 安井 至) 5.意見交換・質疑応答   【パネリスト】     内閣府食品安全委員会委員                 見上  彪     厚生労働省大臣官房参事官                 外口  崇     農林水産省消費・安全局消費者情報官            姫田  尚     千葉大学名誉教授                     山崎 幹夫     国際連合大学副学長                    安井  至     (社)全国消費生活相談員協会九州支部前支部長        八木 美智子     明治乳業(株)取締役技術部長                馬場 良雄     日本食品添加物協会専務理事                福江 紀彦      独立行政法人 農林水産消費技術センター門司センター所長  坂本 健一 6.閉会 (議事録) 1.開会 ○司会  ただいまから食の安全に関する意見交換会を開催したいと思います。  私は本日司会を務めさせていただきます、独立行政法人農林水産消費技術センター門 司センターの大貝と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)  初めに、配付資料の確認をさせていただきたいと思います。議事次第が封筒の中に入 っておりますが、その中に「配付資料一覧」というものがあります。資料1から5まで 書いてありますけれども、あるかどうか確認してください。資料1から5以外に、「さ らなる食品の安全性の確保に向けて」という食品安全委員会のパンフレットが入ってお ります。それから、「12月5日意見交換会の事前意見・質問について」という表が入っ ております。それから、「意見交換会に参加いただいた皆様へ」というアンケート用紙 が入っています。それはお帰りの際に提出していただきたいと思います。それから、 「リスクコミュニケーションアンケート集計結果」、札幌市と仙台市の分を一まとめに つづってあると思います。それから、消費技術センターのホームページの宣伝用のオレ ンジ色のチラシが入っております。不足等がございましたら、事務局もしくは受付まで お申し出ください。  続きまして、簡単に本日の議事進行を紹介させていただきます。まず、「食品の安全 確保に向けた取組み」に関し、内閣府食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省から説 明をさせていただきます。所要時間は1時間程度を予定しております。ここで10分間の 休憩をいただき、4時10分を目途に、食品添加物とリスクコミュニケーションをテーマ とした講演に移らさせていただきます。初めに「食品添加物を考える」というタイトル で千葉大学名誉教授の山崎幹夫先生よりご講演いただき、続きまして、「環境と食のリ スク」というタイトルで国際連合大学副学長安井至先生よりご講演いただきます。また ここで10分間の休憩をいただき、3時20分を目途に、意見交換に移らさせていただきま す。なお、会場の都合上、午後5時ごろには終了させていただきたいと存じますので、 あらかじめご了承いただきたく存じます。  それでは、早速でございますが、食品安全委員会の見上彪委員より「食品安全委員会 の取り組み」というタイトルでご講演いただきたいと思います。  見上委員は、アメリカカリフォルニア大学大学院におきまして比較病理学で博士課程 を修了され、東京大学名誉教授、元日本大学獣医公衆衛生学教授でいらっしゃいます。 本年7月に内閣府食品安全委員会の常勤委員に就任されました。  見上先生、よろしくお願いいたします。 2.食品の安全確保に向けた取組み ○見上食品安全委員  ご紹介どうもありがとうございます。内閣府の食品安全委員会に勤めている見上と申 します。  きょうお話しすることは、我々食品安全委員会がどういう仕事をして、今までどうい う成果、結果を出したかというようなことを簡単に、30分時間をいただきましてご説明 させていただきます。  袋の中に入っている資料2と、先ほど司会の方からご説明があった「さらなる食品の 安全性の確保に向けて」というパンフレットを出していただきたいと思います。この2 つを使いながらご説明します。資料2に関しましては、きょう、パワーポイントで示し てありますけれども、これは資料の中に入っているものと全く同じものですから、随 時、パワーポイントを見るなり、資料を見るなり構いませんから、よろしくお願いしま す。  なぜ食品安全委員会ができたかといういきさつですけれど、実は、平成14年4月2日 に、いわゆる狂牛病と言われているBSE問題に関する調査検討委員会の報告がありま した。そのとき、日本国は危機意識の欠如と危機管理体制が欠落している、2番目は、 生産者優先・消費者保護軽視の行政をやっていたのではないか、3番目に、政策決定過 程の不透明な行政機構は何とかせんとあかん、4番目に、農林水産省と厚生労働省の連 携というか、いろんな話し合いが非常に不足しているのではないか、要するに、縦割り 行政ではないか。専門家の意見を適切に反映していない行政を行ったのではないか。そ れから、情報公開の不徹底と消費者の理解不足というものも間違いなくあるというよう なことで、「新たな食品安全行政」としまして、今年の5月23日に、消費者の保護を基 礎とした包括的な食品安全を確保するための法律として、食品安全基本法というものが 制定されました。それに伴いまして、我々の委員会が7月1日から発足しました。それ で、消費者の健康保護を最優先に、食品安全行政にリスク分析手法を導入して、食品の 安全に関するリスク評価を行う食品安全委員会を新たに設置したと、そういうものが歴 史でございます。ですから、まだできて6カ月もたっていないヒヨコでございますけれ ども、何とか国民の期待に沿うよう、我々食品安全委員会ももとより、農林水産省、厚 生労働省の方々と一緒になって、3官庁が一緒になって食品の安全のために寄与してい きたいと、そういうすごい意気込みです。  それで、パンフレットの1ページ目を見てください。食品安全基本法が制定されたそ のバックグラウンドなんですけども、なぜそんなものができたかというのは、先ほどち ょっと説明しましたが、これは別な観点からまとめてございます。国民の食生活を取り 巻く状況、このように3つありました。それから、これは本当に残念なことなのです が、食の安全を脅かす事件もありました。3番目に、食の安全に関する国際的な動向も 非常に早いものでございまして、それはここに書いてある、「生産から消費に至る各段 階での安全性の確保」、これが非常に重要なことで、フードチェーンアプローチと英語 では言っています。2番目に、食の安全には「絶対」はなく――この辺、皆様方、よく 理解していただきたいのです。もともと100 %の安全な食べ物はもともとないんだとい うことなのです。  私も小さいころ、戦後、小学校3年生ぐらいでしたけれども、食べ物がない時代に育 っています。そうすると、今だったら、お米を炊飯器でするのですが、昔は、火をおこ して、木をたいて、釜でご飯を炊きます。食べ残すと、もちろん冷蔵庫のない時代で す。数日たつと酸っぱくなるわけです。そうすると、おふくろがよく、お湯できれいに 洗って、それを食べさせてくれた。お湯で洗うというのは何かというと、それはそこで 増殖した細菌を取り除いているだけなのです。バクテリア、細菌というのはお米の中に 入るようなものじゃないです。表面にひっついているわけです。それを洗い流して、そ れで食べさせてもらう。そのとき、おふくろはどういうチェックシステムを使ったかと いう、まさに鼻なんです。においで、これはちょっと子供に食わせるのはまずい、だか ら洗って、そういうふうにやっていました。今だったら、とっくの昔に生ごみに捨てて しまうような、そういうことなのです。ですから、100 %の安全はない、だけれども、 65歳までこうやって生きてきたというのは、小さいころおふくろが教えてくれた、そう いう食育というか、いろんなことがあって成り立っているものです。今から100 年前、 200 年前は、もっとそういう状況だったと思います。それでも日本国民、世界の国民は 生き続けているわけです。それは何かという、与えられたものが100 %全部安全だとい う発想をどこかで切らない限り、要するに、自分で食べるものは自分で守るというよう な発想をぜひお持ちください。ちょっときつく言いましたけれども、これが今、すごく 欠けている点でございます。  だけども、今の時代は昔と違うんだよ――そのとおりでございます。ですけれども、 今の時代に合うために、どういうものが安全かということを調べるために、3番目に書 いた「リスク分析手法の導入」をした。これは決して日本だけの話ではございません。 ここに書いてある、フランスの食品衛生安全庁、欧州食品安全機構、ドイツ連邦のリス ク評価研究所だとか、全部1999年、2002年、2002年と、世界じゅう、一気に動き出した わけです。それも新しい動きでございます。  それで、我々の委員会と農水省、それから厚労省と大きな違う点は、まず我々の委員 会のことを説明させていただきますけれども、「食を摂取することにより人の健康に及 ぼす影響について科学的に評価すること」、要するに、評価をする委員会だということ です。例えば、農薬の安全性評価、1日摂取許容量はどのくらいだとか、そういうこと をやるのが我々の委員会で、一方、こういう評価をしますと、厚生労働省または農林水 産省が管理を徹底的にやって、国民の皆様に、そういう結果をもとに、正しく管理し て、安心した食べ物を供給できるようなシステムをつくっているわけです。これは昔か らあったのですが、先ほどの理由で、ちょっと国民の信頼を一時期失ったことは事実で す。それで、その出た結果を、リスクコミュニケーション(社会的合意形成)で、相互 に話し合い、なおかつ国民の皆様方と話し合い、意見を交換するというのが実は、きょ うの会議なのです。ですから、我々行政をやっている人間にとって、一生懸命やってい ます、ですからその辺を十分ご理解の上、これから後のお話を聞いていただきたいと思 います。  安全委員会というのは、全部で7人の委員から成っています。それで、専門調査会と いうのが16ありまして、そのうちの3つは、企画、リスクコミュニケーション、緊急時 対応というのは、横断的な会です。なおかつ、それぞれの食べ物に関して、全部で13の 専門調査会がつくられています。例えば、先ほど述べました食中毒絡みのことは、微生 物という調査会も入り込みますし、いろんな調査会もまた入り込む可能性もあります。 任務というのは、食品健康影響評価、意見の具申、勧告――この勧告というのは強烈な もので、実は、我々が、これはどうしてもまずいといったとき、総理大臣に勧告する、 そういうシステムです。総理大臣が厚生または農水省の大臣に言っていただく、そうい うシステムをとっていますので、我々の委員会が農林または厚生の言うことを一生懸命 やっていますから、ほとんど問題ないのですけれども、仮に、万が一そういうことがあ ったときは、総理大臣から所管の大臣を通じて意見が行くような、そういう法律的な体 系になってございます。それから、科学的な調査・研究、これもやります。先ほど述べ ました、リスクコミュニケーションの実施・調整、それから緊急時にいかに対応する か、こういうことをやっているわけでございます。  食品委員会というのは公開です。毎週木曜日、2時から、東京でやっています。それ で意見をまとめまして、農水または厚生に返しまして、管理をしっかりやってちょうだ いよというようなお願いをするというわけでございます。それと同時に、コミュニケー ションに関しましては、「食の安全ダイヤル」というものを設けまして、一般国民の方 からどんどん意見をいただきまして、それに対し、類似な質問をまとめまして、可能な 限りお答えするようなスタイルをとってございます。これ以外に、モニター制度で、全 国で450人ぐらいのモニターさんにお願いしまして、食の安全に関するいろんな情報を 集めて、なおかつその意見をよく精査しまして、またそれに向けて動いている。  実は、食の安全に関して、日本に限らず、世界じゅう動き出した大きな理由は、世界 の人口が2003年、大体63億人なのです。あと数十年たつと100 億人になるのではない か。なぜそうなったかというと、やはり食べ物がだんだん豊富になってきて、人口がふ えたというのは事実です。ところが、産業革命以来、食糧に関して分業化がどんどん進 んできました。第二次大戦以降、分業化が進んできますと、生産者から、いわゆるファ ーム、農場からテーブル、「ファーム・ツー・フォーク」という言葉も使いますし、 「ファーム・ツー・テーブル」という言葉も使っていますけれども、その各段階に、い ろんなファクターが入ってきている。そのそれぞれが危険なこともあるというようなこ とで、そのためにどうすればいいか。まず、食糧の分散は必要だ。ですから、例えば、 害虫に強い植物だとか、手間のかからない食べ物をつくるというのもあります。アフリ カの食糧危機を救うために、どうしてもそういうものが必要なのだということもありま すが、いずれにしても、食糧は増産、増産を続けない限り、この予測の数字まで到達し ないんじゃないか、そういう危機感も一方ではございます。  日本は、残念ながら、食糧の自給率は40%です。これはカロリーベースでやっている 計算ですから問題なんですけれども、日本という国は、トヨタにしても自動車を売った り、昔はトランジスタラジオと言いましたが、いろんな機器を売って、そのかわり世界 からいろんなものを買わなきゃいけない。それで、どんどん自給率が下がっちゃったん です。この数字は、政府は今、頑張っていますけれども、これ以上下がると、まさに日 本国民にとって危機的な状況になりかねないのです。自給率を一方で維持または上げよ うとする、そうすると、いろんな摩擦が起きる。一体どうしたらいいかというのは、我 々農水なり、厚生なり、食品安全委員会が真剣に考えていかないと――日本の農家の方 々、生産者に対しては厳しい決まり事をやらざるを得ないときがあります。そうする と、世界からどんどん来たとき、世界から送られてくる食べ物を、一体本当に日本と同 じような、農家の方にお願いしているようなチェックができるかというのは、できない 場合が多いのです。そうすると、日本の場所だけで、そういうポイントだけで言ってい ますと、全体像を失う可能性もあって、非常に重要な時期に来ているのです。ですか ら、国民の皆様方、または政府の関係する皆様方とよく話し合っていかないと、これは 20%の自給率になったら、日本国民が生きていけない可能性もあります。毎日食べるも のですから、それほど食糧というのは大変なものなのです。  食べ物は、健全な、いい食べ物から、悪い食べ物がある。いい食べ物は、生物学的変 質要因――これは微生物、寄生虫だとか、いろんなもので変わる。それから、化学的な 変質要因――酸化、褪色だとか、いろんなものがある。それから、物理的――温度だと か、乾燥、どんどん悪くなっていくというものです。これは1つの例で、リステリアの 菌の図です。それで、健康な食品から不健全な食品に変化していくということ、だから 食育が非常に重要なのです。先ほど話した、腐ったお米は、この段階で、物理的に洗う という行為によって、こういうバクテリアを除いたという話ですから、非常に重要なポ イントです。  では、世界はどういうふうに動いているか。これは CodexというWHOとFAOの合 同食品規格委員会というものがございます。重要な点は、ここで決められて、採択され た規格は、各国政府に守るように求められている。なぜかというと、先ほどお話しし た、食の流通です。中国からいろんなものが来ると、残留の問題でときどき新聞をにぎ わしていますけれども、中国政府もそれを守らなきゃならない。少なくとも、日本に送 るものは、日本の法律を守らなきゃいけないというのは、これは当たり前の話なので す。ですけれども、一方では、日本の国産が中国のものよりも倍高かったら、やっぱり 安い方に行ってしまう。そうすると、結局、国民がみずからの意思で買ったものに毒が ――急性毒ではないんですけれども、そういうものが入っている、そうしたら困る。だ から、この Codexで決められることは何とか守りましょうよということで、特に一番重 要な Codexの委員会の決め事は、消費者の健康を守りましょう、次が、公正な食品貿易 を確保して、食品貿易の促進を図る。これはしようがないことなのです。日本は、余り きれいでなさそうだから輸入するのはやめたと言ったら、あと60%、どうやって食べる んですか。100 %食べなきゃいけないんですよ。1日3食を1食だけ食べたら、単純計 算したら3分の1だから30数%。だから、日本国民全員、1日1食にしますか。覚悟は ないでしょう。私は絶対そういうのは嫌です。ですから、こういうふうにやらなきゃな らないということ。  欧州の食品安全白書というものが出てきまして、重要なのは、これから詳しく話すフ ードチェーンアプローチとリスクアナリシス体制の構築です。リスクアナリシス体制と いうのは、このパンフレットの3ページ目をよく見ておいてください。また説明しま す。これが重要で、そのほか、いろいろなことを欧州の安全白書では書いてございます けれども、これは資料を見てください。  それで、食品のリスクアナリシス(リスク分析)、3ページの重要なところだけ読ま せてください。『私たちは、一日たりとも食べ物を食べない日はありません。私たちが 口にする食べ物には、豊かな栄養や成分とともに、ごく微量ながら健康に悪影響を及ぼ す要因が含まれていることがあります。「リスク評価」とは、リスク(食品を食べるこ とによって有害な要因が健康に及ぼす悪影響の発生確率と程度)を科学的知見に基づい て客観的かつ中立公正に評価することです。――これは食品安全委員会の仕事です。評 価は、化学物質や微生物等の要因ごとに行われ、本委員会の第一義的な役割となってい ます』。このパンフレットの2ページを見てください。先ほどちょっとお話ししました ことです。評価チームというのは全部で13あるというのは、大きく分けて化学物質、生 物系評価、それから新食品等評価とグループに分けてありまして、この下に書いてある ものを全部合わせると13あります。その13をそれぞれ調査委員会に託しまして、厚生労 働省または農林水産省から上がってくるものを我々の委員会でチェックしているという システムです。ですから、リスクアセスメントする、要するに、評価するのは我々の委 員会で、科学的なベースでやって、リスクマネジメント、リスクを管理するのは厚労省 であり、農水省である。政策ベースでやって、お互いによく相談して、それをリスクコ ミュニケーションを介してやって、なおかつ、これを国民に返すというようなシステム をとらせていただいています。  これは1つの骨組みなんですけれども、ここで重要な点は、リスク評価、我々なんで すが、機能的分離と相互作用によって、管理機関に意見が行ったり来たりするというよ うなことです。  1つの例なのですが、例えば、食品添加物はどうするかというと、指定等申請者から いろいろな資料が上がると、申請を確認して、厚生労働省が資料を入手して、まずそれ を人に対する食の安全に関して、ぜひリスクを評価してくれと言ってくるわけです。そ して、我々の評価チームがやりまして、もし必要であったら、ADI、1日摂取量はど のくらいにしたらいいかというようなことを決めまして、またお返しする。お返ししま すと、厚生労働省の方で、まずWTOという国際機関に、日本はこういうことを決めま したよとやって、一般国民にパブリックコメントを求めまして、審議会ではこうこうこ ういう結果だったよと答申して、決めて、省令または告示を改正をして施行する、そう いうシステムです。ですから、食べ物に関しては――ほかもそうだと思うのですが、安 全性が二重三重にチェックされているというシステムを日本国政府は構築したというこ とです。  これは後で読んでください。リスクアセスメントは何をやるかというと、有害性の確 認。問題は何なのか、どんな有害物質があるのか。それから、有害性を特定する。一体 何なのか、それを食べて一体病気になる確率はどの程度だ。日本国民は、例のBSE で、肉を食べてクロイツフェルト・ヤコブ病になったイギリス人の130人ぐらいの例を よく挙げまして、日本の牛を食べたらあれになるんじゃないかということを言っていま す。その確率というのは、ラフな計算で、日本国民全員1億3,000 万おっても1人なる かならないかなのです。ですけども、国民は行政不信に陥って、またはいろんな不信が あって、1人でも許されないと。そのために何千億というお金を今、使っているわけで す。そのことをとやかく言うつもりはございません。過去の出来事ですから、2,000億、 3,000億使おうと、皆さん方の税金だし、しようがないと僕もあきらめます。ですけれ ども、これから次から次へとああいうものが出てきますと、日本国が破産してしまいま す。そういう状況に置かれている。食はそれほど重要であり、なお慎重にやらなきゃい けないということを言いたいわけです。それから、暴露評価、リスク判定、このような ことをやっている。  先ほど言った7人の委員がいて、横断的な3つの委員会、調査委員会があって、あと は評価チームが13分かれている。食べ物に関しては、これは全部関係します。全部それ ぞれの調査チームがやって、我々の委員会に上がってくる、そういうシステムでござい ます。  調査するものも、簡単な、単一で均一な化学物質の場合は、動物実験を使ったりいろ んなことをして、人への健康被害が起こらない許容濃度を求めることもできます。とこ ろが、難しいのは、丸ごとの食品のような複合不均一なものです。例えば、遺伝子組み かえ食品、あれはまさに丸ごとですよね。それから、有害微生物というのも面倒くさい です。フードチェーンのときにもっと詳しく話します。  簡単なもの、農薬なんかは、毒性試験、いろんな試験があります。それから、無毒性 量が一体どれくらいだ、こういう量だから、これを超さないようにすれば大丈夫だ、そ れは簡単です。  複雑なものがこういうことです。1つのケースが遺伝子組みかえ食品。我々は、評価 はもちろんサイエンティフィックにやると同時に、Codex 、FAD、WHOの合同専門 会合で決められた国際的な取り決めです。これは日本のサイエンスも行っていますけれ ども、サイエンスが集まって決めた決め事です。それを守るというのが我々のスタンス です。先ほどの食糧自給率でないですけども、日本だけ独特なことをやっちゃって、結 局、世界に相手にされなかったら、日本の60%の食糧は確保できなくなるのです。そこ は国際社会ですから、しようがないです。  そういうことで、複雑。1つの概念が、要するに、妥当性が許されて、食べ物として 許されれば、我々はそれを許可する、そういう考え方です。  有害微生物は、同じ種類の O157でもいろいろなタイプがあります。それから、大腸 菌とサルモネラはまた違います。サルモネラなんて、1,000 匹から1万匹の群のめんど りの中から1匹だけがサルモネラ菌を出すものがあります。それを見つけても、その鶏 を殺せば済むというわけじゃないのです。もちろん、見つければ殺しますが、そうじゃ なくて、毎回、卵を産むたびに菌を出してくれれば調べる方法は簡単なのです。ところ が、1年間を通じて10回しか出さない。たまたまその卵がフードチェーンに入ってきて 中毒を起こす。そんなことのために何十億なんて使えないと思うのです。だから、別の 面で考えなきゃいけないということです。  農場から消費者まで。いろんなところで危険率がふえたり、減ったり。流通・保存で もそうだし、加工のやり方によってもそうだし、消費者の段階で冷蔵庫に長く置いてお いてもそうだし、食品の扱い方が下手な主婦なり男がいても、それでも起こる。それは 全部政府の責任ではないのです。みんな責任を持たなきゃいけない。政府が持たないな んて言っていません。みんなそれぞれ考えて、国民と連絡しながらやりましょうよとい う話なのです。  我々の委員会への必要的諮問事項。こういう法律によって決められた事項、今、しば しば出てくるのは食品衛生法なんですけれども、そういうことによって我々の委員会に 諮問されてくる。  我々の委員会で初めて、これはまだよくわからないけれども、とにかく閉塞性細気管 支炎、肺の病気なのですが、それで亡くなった方がいます。これはアマメシバという植 物を濃縮して、粉にして、それを大量に食べたご婦人が、結局、死ななくてよかったの ですが、今、酸素を背中にしょって生きなきゃいけないほど肺がやられた。これはやせ 薬です。そういうものを長く置いておいたら、また次、被害が出るんじゃないかという ことで、厚生労働省と一緒になってやりまして、安全性は、科学的なものはまだ蓄積さ れていないけれども、とにかくこういう粉末だとか錠剤にしたら危険の可能性があると いうようなことを厚生労働省に答申して、厚生労働省は、そうしたらもうやめましょう と。ただし、生のものはまだ許されています。生は、てんぷらに揚げたら、これは東南 アジアのある国のいわゆる食文化です。量が少ないから、生は問題ないのです。それを 濃縮して、粉にして大量にと、何kgやせたいのかわからないけども、やせ薬がそういう 事件を起こしたという話です。  これは最近の話なのですが、牛の脊柱に背根神経節というものがあって、そこにプリ オンがたまるらしいと。日本は世界で一番厳しいBSEの検査をしています。それがい い、悪いかはまた別の話なのですけれども、日本の食材には絶対回らないようなもの、 回っても安全だと思われるのですが、これも中止しました。  コミュニケーションの推進も一生懸命やります。遺伝子組みかえ食品の安全性評価の 基準を我々の委員会がつくって、12月19日、意見交換が東京で開催されます。これは非 常にタッチというか、非常に神経をとがらせる問題ですけれども、我々の委員会として は、科学的な根拠に基づき、中立性を保ちながら評価して、既にでき上がりました。そ れを皆さんにパブリックコメントをやっていただいているという状況です。  きょうの意見交換会、懇談会をこういうふうにやっている。食のダイヤルと、先ほど お話ししたモニター制度をやっている。  これは最後なのですが、先ほど使ったスライドと全く同じです。これをよく見てくだ さい。  これで私のお話はやめさせていただきます。どうもありがとうございました。 (拍手) ○司会  ありがとうございました。  続きまして、厚生労働省の外口参事官より、「新食品衛生法の概要」についてお話し いただきます。お願いいたします。  ○外口参事官  厚生労働省の外口でございます。ただいま見上先生からお話がありましたように、こ の5月に、食品の安全を確保するための政府全体の施策が大幅に強化されました。その 一環として、食品安全委員会の設置、食品安全基本法の成立などがあったわけでござい ますけども、厚生労働省の方の食品衛生法も大幅に変わりました。食品衛生法というの は昭和22年に公布された大変古い法律でありまして、改定もときどき行われておりまし たが、今回の50数年ぶりの改定は、大幅な改定であります。その内容について、食品の 安全性の確保がどのように強化されたかということについて、私から説明させていただ きます。お手元の「新食品衛生法の概要」という冊子をご参照いただきます。  今回の法律の改正でございますけども、1ページの真ん中、「3つの視点に基づく見 直し」と書いてあります。1番が「国民の健康の保護のための予防的観点に立ったより 積極的な対応」、2番が「事業者による自主管理の促進」、3番が「農畜水産物の生産 段階の規制との連携」。3番は、平たく言えば、縦割り行政はもうやめよう、そういう ことでございます。  「見直しの全体像」でございますけども、一番上の四角の真ん中に「国・地方公共団 体及び食品等事業者の責務の明確化」という記載がありますが、国も、自治体も、それ から事業者さんの方も、その責任を明確化いたしました。また、左側に「規格・基準の 見直し」というのがあります。その一番上の「農薬等の残留規制の強化(ポジティブリ スト制の導入)」というのは、後で細かく説明させていただきます。その次の、「安全 性に問題のある既存添加物の使用禁止」についても後で説明させていただきます。それ から、「特殊な方法により摂取する食品等の暫定的な流通禁止措置」というのは、今、 見上先生がお話になったアマメシバの件のことでございます。それから、健康増進法、 これは食品衛生法と関連した法律でございますけども、この中で「健康の保持増進の効 果等についての虚偽又は誇大な広告等の表示の禁止」、いわゆる健康食品が流通されて いる中で、いろいろ問題な表示がございます。例を挙げれば、「厚生労働省から輸入許 可を受けたダイエット用健康食品です」と。輸入許可というのは、安全性は関係ありま すが、効能効果とかと関係なく取れちゃうものなので、そういうような記載をすると、 非常に誤解を招きやすい表示なのです。ダイエット用健康食品そのものの効果が厚生労 働省から何か認可されたような誤解を招く。そういうような表示はだめだということで ありますし、今、いろいろ取り組んでおりまして、最近の例を申し上げれば、いわゆる 健康食品でバイブル本というものがありますよね。何とかはがんに効くとかいう本がい っぱい売っていますよね。あれとインターネットの販売を組み合わせて流通させている ような販売形態がありました。30件ぐらいありまして、この間、全部注意しましたとこ ろ、全部とまりました。というようなことで、これからもいろいろ取り組んでまいりま すし、現在、健康食品の制度のあり方の検討会を開催しております。もちろん公開でや っておりますし、結果等についてもホームページ等で公開しておりますけども、その中 で、制度のあり方を、より適切なものにしていきたいと考えております。  それから、真ん中の四角ですが、「監視・検査体制の強化」というものがあります。 監視・検査すべきものは、大きく分けて2通りあるのです。1つは輸入食品。これは検 疫所が中心になって監視・指導するわけでございます。もう1つは、国内で流通する、 いわゆる国内産の製品ですけども、それは都道府県が中心になって監視・指導するわけ でございます。それぞれ監視指導計画を、輸入食品の方は国が、それから国内で流通す るものについては都道府県が今、つくっております。これをつくるに当たっては、住民 の方とよく相談してつくるようになっておりますので、いろんな自治体がその政策過程 を公開し、意見を求めてくると思いますので、ぜひいろいろな意見をお出しになってい ただきたいと思います。それから、輸入食品監視指導計画については、後でもう少し補 足させていただきます。そして、「営業者による食品の安全性確保への取組みの推進」 として、ハサップ(総合衛生管理製造過程)というものがありますけども、これも今ま では、一たん承認すると、承認しっ放し。これを3年ごとの更新制にしました。それか ら、食品衛生管理者の責務の追加もいたしました。  右の方へ行きまして、食中毒などの事故への対応も強化しました。  それから、罰則も大幅に強化しました。  ということで、食品衛生法、健康増進法あわせて、食の安全の確保のために、今回、 大幅に施策の充実を図ったわけであります。  次に、10ページをお開きください。残留農薬のポジティブリストの導入について説明 させていただきます。  ポジティブリスト制というのは何かということですが、物を規制するとき、2つやり 方があるのです。ここに書いてあるものは使っちゃだめというやり方と、ここに書いて あるもの以外を使っちゃだめ、これは逆ですけども。それで、このポジティブリスト制 というのは、ここに書いてあるもの以外は使っちゃだめということなのです。例えば、 食品添加物はそういう制度になっているわけなのです。認可された食品添加物以外は使 っちゃいけません。農薬は今、どういう状況かというと、まだそこに至っていなくて、 残留基準が認められている農薬というのは、実は、今、229 あるのですけども、国内で 農薬取締法に基づいて使用できる農薬の数は350 あるのです。229 より多いわけです。 国際的に使用されている農薬が残留農薬として輸入食品で入ってくるかもしれません。 その数は約700 あるわけです。これじゃ困るので、今、何をしようとしているかという と、残留農薬を全部ポジティブリスト化制にしよう、ここに出ていないもの、それから 出ているものであっても、その基準以上のものは入ってきちゃいけません、そういう制 度をつくろうとしています。今でも、基準に出ていない外国の農薬でも、量が多けれ ば、もちろん規制はできますが、ボーダーラインのものはなかなか規制上難しいので、 それをポジティブリスト化にすれば、この基準を超えたらだめ、載っていなきゃだめと いうふうにきっちり規制ができるわけです。今、その作業をしておりまして、第1次案 をつくりまして、公開しております。これは少し時間がかかります。農薬の数は数百で も、これは作物の種類ごとにつくりますので、数千、1万を超えるかもしれません。そ のぐらいの基準をつくりますので、3年ぐらいかかりますけども、国際的にも整合性が とれたポジティブリスト化が間もなくできる予定です。  次は、11ページです。既存添加物については、今回、ご質問も事前にいただいており ます。既存添加物は何かというと、昔、「天然添加物」と言ったもので、化学合成品じ ゃない天然由来添加物で、それは平成7年の食品衛生法改正のときに、いわゆる指定添 加物として入れたのですが、そのとき、今まで使っていたもので、食経験のあるものに ついては安全だろうということで、いわば例外時に使用可として入れて、今日に至って いるわけです。これについても、もちろん安全性に問題があると判明したものは当然で すけども、既に使用実態のないものについて、これを削除を可能とする。それから、既 存添加物についても安全性をすべて網羅的にチェックしようという方針を出しておりま す。現在の進捗状況ですが、安全性評価の状況ですけども、既存添加物について、350 ぐらいは、国際的な評価だとか、いろいろな文献等から、まず大丈夫だろうと。残りに ついて、今、安全性の検討を順番に行っておるところでございます。  最後にもう1つ、15ページをあけてください。輸入食品の監視体制を大幅に強化しま したので、ここを説明させていただきたいと思います。赤と青の折れ線グラフがありま すね。赤が輸入の件数の伸び。最近だと、162 万件輸入されています。それから、青が 輸入重量です、3,300 万t。それから、件数の伸びがすごいのです。いろいろな種類の ものが輸入され、ふえ続けております。そういった中で、もちろん強化していく必要が あるのですけども、今回、右側に5点書いてあります、この5つのポイントについて大 幅に強化しました。1つは、「命令検査の対象食品等の政令指定の廃止」。これは何か というと、輸入食品が検疫所に来ると、モニタリング検査でサンプルを取って検査する んでけども、それで引っかかると、サンプルの数を上げます。なおかつ引っかかると、 これは命令検査というのをかけて、全ロットについて検査をして、それに合格しないと 流通しちゃだめよと、そういう命令をするのですが、その命令が、今までは、政令指定 という、すごく行政的に複雑な対応をしなきゃいけなかったものを、厚生労働大臣の判 断だけでできるようにしたというふうに機動的に行えるようにしたことが1つ。  それから、輸入食品の監視指導計画。さっき、監視指導計画の話を国内のものと輸入 のものとしましたけども、輸入食品の監視指導計画も今、作成しております。この中身 は、単に、こういう品目について、こういう検査を、このぐらいの数しようというだけ じゃなくて、大事なことを盛り込んでいます。それは1つは、輸出国への働きかけはこ うしよう、もう1つは、輸入者への自主管理の指導はこうしよう、こういったところに も踏み込んだ監視指導計画を今、つくっております。この原案ができましたので、これ は東京と大阪なんですけども、12月9日と12月15日に、これについての意見交換会も予 定しております。  それから3番目、「厚生労働大臣による輸入業者に対する営業禁停止処分規定の創設 」。これは今まで、事業者さんに対する営業禁停止処分というのは知事の権限だったの ですけども、輸入業者さんに限っては厚生労働大臣も処分できるようにしました。  それから、4番目と5番目、これは関連した話なのですが、こういうように件数がふ えてくると、今、検査は公益法人約80が行っているのですけども、それだけじゃ機関と して、とても対応できないのです。ということで、民間の検査機関で公正中立が保てる もの、これをしっかり押さえまして、そこについては命令検査だとか、それからモニタ リング検査のアウトソーシングも受けられるようにして、それでふえ続ける検査の需要 にこたえていこうと考えております。  以上でございますが、最後に、厚生労働省のホームページを皆さん、ごらんになった ことはありますでしょうか。厚生労働省のホームページというのはいろんなことが出て おりまして、食品安全はどこに書いてあるかというのを探すのが大変なんですけども、 厚生労働省のトップページを開いていただきますと、左側のところで求人情報の欄が一 番目立つので、その1つ上に「食品安全情報」というのがありますので、そこをクリッ クしていただきますと、「食品安全情報」という大きな食品安全だけのページに来ま す。そこに緊急情報、新着情報、情報検索画面、QA、いろいろ書いてありますし、そ れから皆様方にご意見をお寄せいただくメールアドレスも入っておりますので、ここは こうした方がいいとか、ここはわからないとか、そういったことがあれば、ぜひご意見 をお寄せいただきたいと思います。  私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。 ○司会  ありがとうございました。  続きまして、農林水産省消費・安全局姫田消費者情報官より、「消費・安全局設置か ら4ケ月のとりくみのポイント」についてお話しいただきます。お願いいたします。  ○姫田消費者情報官  ご紹介いただきました農林水産省消費・安全局の消費者情報官をしております姫田で ございます。どうぞよろしくお願いいたします。  お手元の資料3、「消費・安全局設置から4ケ月のとりくみのポイント」を4枚ほど めくっていただいて、2回目の1ページに「食の安全・安心のための政策大綱」という のがございます。そこを見ていただきたいのですが、まず、先ほどの食品安全委員会の 見上委員からもお話しありましたように、どうも生産者寄りになっているんじゃない か、消費者を軽視しているんじゃないかというようなご議論がございました。それで、 7月から食品安全委員会ができるとともに、私どもも心を入れかえて、農林水産省が変 わったということをきちっと示していこうということで、消費・安全局という新しい局 をつくりました。「消費・安全」と中ぽつがついております。これは安全行政をやって いくということだけじゃなくて、消費者に軸足を置いた農林水産行政をやっていこうと いうことで、こういう名前になっております。そして、私の職名も、きちっと消費者の 方々と情報交換していって、そして消費者の皆様方の意見を施策に反映していこうじゃ ないかということから、「消費者情報官」という名前がついてございます。  それで、4ページの、「食の安全・安心をめざし、次のような施策に重点的にとりく みます。」と書いてある下の方に「新しい組織」というのがございます。従来、お米の 管理をしてまいりました食糧庁を廃止いたしまして、新しい組織として消費・安全局を つくった。そして、それぞれのリスク管理をやっていく機関をつくったということでご ざいます。私ども消費者情報官というのは、リスク管理をするに当たってのリスクコミ ュニケーションをやっていこうじゃないかということで、私どもの組織がつくっており ます。  こういうことをやっていく中で、先ほど、厚生労働省の方から法の説明がございまし た。私どもも、飼料安全法、農薬取締法とか、数々の法律をあわせて改正したわけです が、その中で、もう1度、参考資料1の1ページに戻っていただきたいのですが、「食 の安全・安心のための政策大綱」ということで、皆様方に、これをこうやって取り組ん でいくんだという、政党じゃないんですけど、マニフェストをつくったということでご ざいます。これがマニフェストでございます。政党よりも先に私どもの方がマニフェス トをつくったのです。この1ページ目に、食品安全委員会なり、農林水産省、厚生労働 省という関係がございます。食品安全委員会にリスク評価をしていただいて、リスク管 理、厚生労働省では食品を、そして農林水産省は農林水産、食品に至るまでの部分の農 林水産物のリスク管理をやっていこう。そして、後ろにも書いてございますが、食品安 全委員会と厚生労働省と農林水産省は縦割りじゃなくて、横に共同しながらリスクコミ ュニケーションをやっていこう。もちろんリスクコミュニケーションは私どもだけでも やりますが、こういうような形でもどんどん連携を図ってやっていこう。私どもでやる 場合でも、厚生労働省や食品安全委員会と連携を図りながらやっていこうというような ことでリスクコミュニケーションを進めているところでございます。  次のページでございます。「国民が安心・信頼を実感できるように、とりくみます。 」というようなことで、2ページ目から3ページ目に書いてございます。ここで私ど も、消費者に安全をきちっとお届けするという中で、もちろん法律や制度の整備も大事 ですけれども、やはり生産者から事業者に至るまでのコンプライアンス、いわゆる法令 遵守の考え方が必要になってくると思います。これは安全についての法令をきちっと守 っていただくということ、これを農林水産省として指導していくというのはもちろんで ございます。そのために今回、お米を扱っていた食糧事務所の職員のうちの2,000 人が 食の安全、安心のための出先ということで、ここ福岡でも、福岡食糧事務所から福岡農 政事務所ということでかわっております。そして、表示、トレーサビリティですとか、 そういうようなことについて実際の窓口として、そして出先として、足として働いてお ります。ただ、一方で、そうは言いつつも、やはり法律というのは、それぞれ守る方々 の、前向きに法律を守るという気持ちがなかったらやっていけません。そういう意味で は、生産者、事業者の方々に法令遵守の気持ちを持っていただくということをお願いし ているところでございます。  ここ福岡のすぐそばですけれども、長崎のトラフグの件がございます。これはかなり 議論を呼んだところでございますが、私どもはやはり消費者に安全なものを届けるとい うことが原則です。トラフグが、ある一定時期にホルマリンに関与したからといって、 それが最終的にホルマリンが残留していなければ安全であるということは確かであろう と思っております。ただ、国が通達で出した、生産者団体みずからやめようと決めたこ と、それを守れないような生産者というのは、これは安心なものを出すような生産者じ ゃない。消費者の皆さん方に安心というものを届けられないということで、やはり我々 としては、こういうことはしていただきたくないというのが本当のところでございま す。  ですから、安全ということがまず大前提ではございますが、さらに安心ということ は、やはりそれぞれが皆きちっと法律を守るということ、そういうことをきちっと情報 公開していくということ、そして消費者の皆様方、あるいは生産者、流通、国、科学者 も含めて、意見交換をどう図っていくかということが大事になってくると考えておりま す。  それから、「食の安全・安心をめざし、次のような施策に重点的にとりくみます。」 の右側でございます。そういう意味で、今申し上げたように、「産地・港から食卓まで の段階で、監視を強め、生産者・事業者の自主的なとりくみを進めます。」ということ で、今申し上げたようなことを進めております。  それから、6ページ目でございます。今、外口参事官から農薬のお話がございまし た。外口参事官の方はいわゆる出口というか、食品の安全を守っていこうということで の農薬の取り締まりでございます。私どもは、厚生労働省がつくられた基準を守るため にはどうしたらいいかということで、生産段階でどういうふうに使ったらいいかという ことを指導しております。それで、それぞれ農薬の施用基準――花とかに使われるとき に、瓶の裏に、どういう作物に、何回まきましょうと書いてあります。あれはこういう 作物に何回まきましょうという例示じゃなくて、こういう作物に何回以下使いましょう ということで、書いていない作物には使っちゃいけないものでございます。そういうよ うことを施用基準と言うわけなのですが、そういうものをつくっております。今度、ポ ジティブリスト化になったので、多分、何万件になるような農薬のそれぞれに全部施用 基準をつくっていくという膨大な作業を今やっているところでございます。その施用基 準を守れば、自動的に、いわゆる農薬の残留基準が守れるようなシステムになっており ます。実際は最大限6割ぐらいでとどまるような基準にしておりますので、自動的に守 れるということになります。  ただ、それを守っていくために、今までは、いわゆる無登録農薬の販売を禁止という ことがありましたが、輸入あるいは生産者が使うということに対して、罰則規定が設け られていなかったです。それを今回は、無登録農薬を輸入することも禁止され、そして 罰則規定もできた、あるいは使用することも罰則規定をつくってきたということで、あ らゆる段階で罰則規定ができたということ、あるいは回収をすることができるようにし ております。  それから、その下のところでございますが、BSEの問題とかがございましたので、 家畜伝染病の蔓延の防止、これは家畜伝染病は人畜共通伝染病だけじゃないんですけれ ども、そういうものについての蔓延防止を図っていくためのマニュアルをつくっていこ う、家畜をきちっと衛生的に管理していくような基準をつくっていこうというようなこ とも始めております。  7ページが、「適正な食品表示」。最初に、「わかりやすい表示に向けたとりくみ」 ということで、食品の表示に関する共同会議というものがございます。これは厚生労働 省さんと私どもが一つになって、2つの委員会を一緒にやっちゃおうということで共同 会議ということで、表示については、いわゆる安全表示と、産地表示とか、原産地表示 というのはそれぞれ法律が違います。厚生労働省さんの分と農林水産省の分がございま す。ただ、それを全く一つの共通パンフレットにして、問い合わせ窓口も、今、2種類 ありますが、それを一本化した、両方の職員が存在するような窓口を全国で2つつくり まして、そこで一元的にお問い合わせも受けようというようなこと、そして賞味期限と 品質保持期限という、ほとんど内容的に同じものを一つの名前で「賞味期限」に統一し ていこうというようなことで、今後も、食品の適正な表示については、両省全く一つに なって進めていこうということを行っております。  それから、「トレーサビリティ・システム」というのが8ページにございます。これ は牛肉のトレーサビリティ・システムは皆さん方、かなりご存じかと思います。12月1 日から、生産者の段階で10けたの個体識別番号が全部、日本の全国の450万頭の牛につ きました。それで、来年の12月からは、一部の輸入物とかひき肉は除かれますが、消費 者の皆さん方がお買いになられる牛肉のパッケージ、あるいは店頭販売ですと、店頭に 10けたの番号で、きょうは何番の牛肉を売っております、このパックは何番の牛肉です ということで、一部のスーパーでは始まっておりますが、これがインターネットで、あ るいはこれからやろうとしておりますが、携帯電話でその10けたの番号を入れることに よって、どこで生産されて、どこで肥育されて、どこでと畜されてという生産履歴がわ かるというようなシステムをつくっております。  農産物全体のトレーサビリティも始めております。ただ、農産物全体のトレーサビリ ティということは、そういうような10けたの番号を入れるということじゃなくて、カイ ワレダイコンのように、もし事故があったときに、それがどこから来たものかというこ とがわかるような記帳――それは生産者の方々、あるいは流通の方々がきちっと記帳し ていくということで、もし事故があったときに、さかのぼれる状態になっているという ことでございます。ですから、キャベツに番号がついていて、10けたの番号を入れれ ば、どこで、どうしたのかということ、これをやってしまいますと、かなりのコストが かかります。これは一部の量販店さんでそういうことをやろうということはあります。 それはあくまでも有機とかそういうような付加価値の問題だと思っておりますので、当 然、普通のものより値段が高くなります。値段が高くなって、そういう意味での簡単な トレースができるようなものがいいのか、それとも、きちっと安全性が確保されておっ て、もしものときは確実にさかのぼれるような状態で、安く国民に農産物をお届けでき るものがいいのかということで議論はあると思います。そういう意味では、それぞれ消 費者の方々が選べるようなやり方ということで考えております。ですから、牛肉以外の ものへのトレーサビリティということになると、消費者の負担になるということをご理 解いただきたいと思っております。本当の意味のトレーサビリティ、きちっとした記帳 というのは、これから義務づけてまいりますが、番号で追いかけるというのは消費者の 負担でやっていくということになるかと思います。  そういうことを踏まえて、これが今回のお約束事項ということで、こういうような大 綱をつくりました。これは「4ケ月間のとりくみ」ということで、先ほど司会は「3カ 月間のとりくみ」と言っておりましたが、それはついこの間まで「3ケ月間のとりくみ 」だったのですけれども、1月更新されたので「4ケ月間のとりくみ」と。今、12月に なりましたので、「5ケ月間のとりくみ」をつくっておりますが、どんどんとやってい ったことを皆さんにお伝えしようということでございます。  時間がないのではしょりますが、表紙の後ろの1ページを見ていただきたいと思いま す。安全委員会さんとの適切な関係を構築していくとか、あるいは農薬の適正使用の推 進と取り締まりということで、実は、先ほど言った、容器を点検すると、かなり誤表示 が多かったということで、これを全部一斉点検して、すべてについて是正と、それから プレスリリース、新聞での公表等を行いました。  2ページ目でございますが、「BSE対策の推進」ということで、来年の4月には死 亡牛を全頭検査できるような状況になります。  それから、3ページ目ですが、食品表示に関する監視の徹底を行っていこうというよ うなこと。特に、「不正表示に対する厳正な対処」ということで、これは先ほどもお話 しした、2,000 名の職員が調査を実施しております。それぞれ、場合によっては公表等 も含めて処分しているということ。それから、ウナギの加工品ですとか、今はお米とい うようなことで、消費者の皆さん方の関心の高いものについては特別調査を実施して、 さらに強化を図っていきます。  そして、「リスクコミュニケーションの推進」。こういう地方で、あるいは東京で は、残留農薬ですとか、抗菌性物質、今度の12日にはカドミウムと牛のトレーサビリ ティをやりますが、それぞれ個別について、非常に突っ込んだリスクコミュニケーショ ンを実施しているところでございます。  それから、最後のページになります、「消費者行政窓口一覧」ということで、それぞ れ全国に農政事務所が消費者のご相談を受けるようになっております。一番下が本省、 私どもの「消費者の部屋」でございます。もう1つ、消費技術センターもそれぞれ全国 に消費者窓口を設けております。厚生労働省さん、食品安全委員会、私どもの窓口で、 ひょっとしたら、どこの役所に聞いたらいいのかというようなことをご心配になるかと 思いますが、今、我々は、間違った役所にかけられても、お互い3省の間ではそれぞれ 情報交換して、答えられる役所からお答えするというシステムをつくり上げております ので、できれば正しいところの方が助かるのですが、ご心配なさらずにかけていただけ ればいいかと思っておりますので、よろしくお願いいたします。  それから、袋の中に「食生活指針」という小さなカードが入っております。先ほど見 上委員からお話があった、食育は大事というようなことで、食育を進めていく意味での 前段での、正しい食生活のあり方を書いているものでございます。これは文科省と厚生 労働省と私どもの3省共同でつくったものでございますので、お目通しいただきたいと 思います。  ご清聴どうもありがとうございました。 ○司会  ありがとうございました。  それでは、ここで休憩を設けさせていただきますが、ちょっと時間が押しております ので、8分間の休憩ということで、再開は午後2時20分を予定しておりますのでそれま でにお席にお戻りいただきますよう、よろしくお願いいたします。                  〔 休憩 〕 ○司会  それでは、時間となりましたので、再開させていただきます。  これより、消費者の関心の高い食品添加物と最近の取り組みでありますリスクコミュ ニケーションにつきまして、お2人の先生からご講演をいただきたいと思います。  最初は、千葉大学名誉教授の山崎幹夫先生でございます。  山崎先生は、東京大学大学院を修了後、放射線医学総合研究所を経て、千葉大学生物 活性研究所、それから大学の方に移られ、教授等をされ、現在は名誉教授でいらっしゃ います。厚生省の食品衛生調査会、厚生労働省の薬事食品衛生審議会では、添加物部会 長をされていらっしゃいました。  それでは、山崎先生、よろしくお願いします。 3.食品添加物を考える ○山崎先生  山崎でございます。ご紹介いただきましたように、薬事食品衛生審議会の方で何年間 か食品添加物の部会長をやらせていただいておりましたけれども、食品添加物というの は、食の安全ということを考える上で、いささか悪役の感じがございまして、いろんな 方から、何で余計なものを食品に入れるのか、そういうもののない、いわゆる無添加の 食品というのが安全のためには一番いいのではないかというお声をたくさんいただきま した。今までお3方の先生方から、政府が食の安全について、これだけ真剣に、一生懸 命取り組んでいるんだというお話がございましたので、私はちょっと視点を変えまし て、食品添加物というものが我々の生活にとってどういうような意義があるのか、歴史 的背景というと大げさですが、そのようなことを中心にお話をしてみたいと思います。 映しますスライドは資料としてお手元にございますので、わからないところは、また後 でごらんいただきたいと思います。  地球の歴史が45−46億年、大げさなところから話を始めますが、この辺で例えば、生 命の誕生があったと言っても、何億何千万年も前というのは我々にはわかりにくい。例 えば、今、我々が大晦日にいると考えまして、1年間、365 日と考えますと、大体12月 に入ってから地球上に生命が誕生している。我々のご先祖、ホモ・サピエンスは、何 と、1年の終わりから70秒前に誕生しているわけです。微生物、植物あるいは動物のた ぐいは夏のころ誕生しているわけです。我々の今の生活に入る入り口が、何と、除夜の 鐘が鳴り始めたころにやっと始まったということなのです。その前に既に地球上に生命 を受けてきているものから我々は食なり、薬なり、そういう恵みを受けてきているとい うことをまず最初にインプットしていただきます。  ここで人類の生活が始まるわけですが、最初は個の段階です。母親が子供を産むとい うところからつながりが出てきて、家族のつながりができて、食を求めてあちらこちら を流動する、遊牧ですね。それから、だんだんにそれが姻戚関係を集めて部落をつくる ようになってくると、次第に大きな集団を形成してくるわけです。そうしますと、食を 求めてさまよい歩いていたものが固定してきます。動物を飼うとか、あるいは農作物を そこで耕して収穫するというふうな生活に入ってまいります。さらに、だんだんに集団 の人口がふえていきます。同時に、このつながりが広がっていきますと、民族が集まる とか、あるいは利害関係で集まるということもありまして、都市のような集団生活の場 が形成されてくる。さらには、国家という集団もできてきます。そこで何が起きてくる かというと、大きな集団生活のところでの消費と、その消費を支える製造する場所が離 れてまいります。その間をつなげる流通という新しい機能が我々の生活にはかかわって くるわけなのです。そうしますと、この段階で、身近にあったものをとって食べるとい うところでの食の安全という考え方から、あるところで生産をされ、製造されたものが 流通という機能を通して消費する場所、例えば都市に運ばれてくるという仕組みの中で の食の安全を考えるというふうに、我々自身の考え方も、歴史的にこういうような展開 をしてきた。これを2番目にインプットしていただきたい。  そこで「食の始まり」ですが、人類が1万何千年か前にやっと生まれて、新石器時代 に始まった木の上で暮らすという生活から、やがて地上におりてくる。平地におりてき て何をやったかというと、狩猟、採集です。そして、小動物とか可食植物などを入手す るようになった。つまり、流動しながら食料を探す時代ですが、だんだんに食材を加工 するようになってきた。さっき石器時代と申し上げましたが、土器、石器あるいは骨 器、こういうようなものを利用して動物、植物を解体する、あるいは加工するという技 術を身につけるようになってきた。さらに農耕が始まってきますと、穀物が主食にな る。それまでは、動物を捕まえて食べる。肉にはナトリウム塩がありますが、植物はカ リウムですね。穀物を主食にするようになってから、我々の体内イオンのバランスをと るためにナトリウム塩が必要になってきて、塩を使い始めます。これは主として岩塩と か、あるいは海水から取るというようなことになってきて、だんだんに農耕が始まると 同時に加工も始まってくるのです。  調理には、まず火を利用する。焼く、温める、いぶす、乾燥する。あるいは塩を利用 する。塩漬けにする、あるいは味つけとして塩を使う。もう1つは、乾燥ですが、火を 使う前は天日で乾燥していたわけです。それが火を使う技術を使うようになって、乾燥 による保存という技術が我々の生活の中に入ってくる。ここで発酵も非常に大きな役割 を果たすわけです。例えば、魚を発酵させた魚醤、穀物を発酵させた穀醤――醤油です ね、あるいは酒、酢、あるいは牛乳とか馬乳、ヒツジの乳、そういうものを発酵させて つくるチーズとかヨーグルト、あるいはパンを焼くというようなことも入ってまいりま す。  酒に関しては、例えば、パンをさらに発酵させたビールがエジプト時代には既に飲ま れていたという事実がございます。アジアでは、穀類からお酒をつくる。地中海沿岸で は、ブドウからブドウ酒をつくるというような形で、おもしろいことに、世界のさまざ まなところで、さまざまな材料から酒をつくるという技術が民族に伝わっているという ことがございます。さらに、スパイスを利用するということもありまして、例えば、肉 を食べるときのにおいを消すとか、あるいは腐敗を防ぐというようなことで、スライド に書きましたような、コショウ、ニクズク、チョウジ、サンショウ、ショウガ、ミョウ ガ、こういうようなスパイスが生活の中に入ってまいります。このような形で、我々の 食生活という形が形成していますが、その素朴な形で始まっているわけです。  これは『魏志倭人伝』という2世紀から3世紀ごろの日本の生活、日本人の生活を記 した記録です。九州のあたりではなかったかといわれる辺りに邪馬台国という国があっ た、その国の風習が中国で記録された文献です。非常に古い文献ですけれども、そこで 倭の国、つまり日本、この辺のことだと思いますが、気候は温暖で、夏、冬でも生菜、 生の野菜を食べている。漁師はよく海に潜って魚介をとる。人々は稲、麻を栽培する― ―もう既に栽培の技術が入ってきているわけですね。クワを植え、蚕を飼うということ で、衣食の衣の方もここで賄ってきている。食べ物は高杯に盛って手づかみで食べる。 これははしで食べていた人もいたと思うのですが・・・この国では真珠、青玉を産し て、山にはクズとか、トチ、ボケ、スギ、カシ、タチバナ、あるいはクワやカツラがあ る。竹もある。それから、生姜、サンショウ、ミョウガ、これはスパイスですが、これ もあるけれども、倭人はこれらの滋味を知らないと、こう言っているのです。『魏志倭 人伝』は、日本人はせっかくこういうものが周りにあるのに、こういうスパイスを利用 する方法を知らないというふうに言っていますが、実は、我が国の文献では、これは知 っていたらしい、しかも、それをよく利用していたらしいということはあとでわかりま す。「情として酒を好む」とあります。酒を好むということは、我が国のこの時代、邪 馬台国の時代に既に発酵技術を倭人は手に入れていたということになるかと思います。  「日本の食品添加物」という大げさな題でございますけれども、まず狩猟時代です。 これは獣を追って、捕まえて、それを食べていた時代ですが、サンショウとかノビル、 ミツバ、香気野菜を利用したということがわかっているのです。つまり、わが国でも肉 を食べるときに、こういうような芳香性のあるようなスパイスを既に使っていたらし い。さらに奈良から平安時代になりますと、積極的に漁労をし、農耕をする。つまり、 だんだん定着した時代に入ってきているわけですが、この時代、だんだんに日本に仏教 が伝わってまいります。そうしますと、殺生を禁じるというような宗教的な束縛がきま して、獣を捕まえて食べる、その獣の種類が限られてまいります。絶対やらなかったと いうことはないのです。四つ足というのは食べられていた気配があるのですが、そうい うふうになってきますと、薬味として、サンショウ、生姜、ニンニク、カラシ、紫蘇と いうのはシソです、それからネギとかコショウ、ミョウガ、ワサビ、あるいは柑橘類、 こういったようなものが使われてきて、甘味としても、干し柿、飴とか甘葛煎ですね。 この甘葛煎というのは、今、珍しいかもしれませんが、ツタ科の植物で、夏のころに茎 を切って、そこから出てくる汁を集めるのです。それを煮詰めたものが甘葛煎で、例え ば、『枕草子』なんかには、甘葛煎で甘味をつけて、いろいろをものを食べた。例え ば、イモがゆに甘味をつけるというようなときに使われたということが記録されており ます。蜂蜜もよく使われていた。それから、色素として、クチナシで色をつけるという ことももう既にこの時代にはやっていたわけです。奈良、平安の時代は、食文化がもう 既にかなりのレベルにきていた。それから、豆腐をつくる。これは大豆をすりつぶし て、それに例えば、海水のようなものを使ったと思いますが、にがりを入れて豆腐を固 める。あるいはコンニャクの根をすりつぶして、消石灰を入れて、コンニャク玉をつく る、そういう生活が行われていたようなのです。それから、発酵食品、先ほど、邪馬台 国でもう既に酒を飲んでいたというお話をしましたが、ミソ、ショウユ、納豆、酒、 酢。塩辛、これは魚醤につながるわけですが、それから魚をしめて寿司にする、あるい は漬物をつくる、甘酒。蘇、酪、これはご存じだと思いますが、チーズとかヨーグル ト、乳製品ですね。こういうようなものが既に平安時代から日本人の食生活の中に上っ ていたということで、発酵の面でもかなりの技術があったということが知られます。  さらに、鎌倉から江戸時代にまいりますと、中国との交流、あるいはスペイン、ポル トガル、イギリス、オランダ、こういうところとの国交――鎖国がありましたから、正 式な国交じゃないんですよね。でも、鎖国があっても、長崎の出島は窓を開いておりま した。その前には、イギリスも平戸に向こうから来た外交官が住んだ、そういうことが あったと伝えられております。そういうような中国や西欧からの伝来による食生活の変 化にともなっていろいろな調理とか加工法、保存料、調味料というものもどんどん使わ れるようになってくるわけであります。  さらに、明治になりますと、ここで明治維新というものがありまして、いわゆる文明 開化ということによって生活は一変いたします。まずはちょんまげを切るのですが、か みしもを脱いで洋服に着がえるとか、そういった暮らしの変化と同時に、食生活が一変 します。いわゆる洋食文化というものが始まります。米の飯からパンにかわるというの は今始まったことじゃなくて、もう既にこの時代から始まってきているわけです。調理 法も変わってくる。つまり、肉を食べる、乳製品を食べる、洋野菜を利用する時代に入 ってきた。食肉の利用の方法もがらっと変わるわけです。それに従って、その周辺の技 術も変わってきた。保存の仕方も変わってくる。そういった意味で、加工食品というも のができてくるわけです。瓶詰とか缶詰なども出てくる。明治政府になって、食品衛生 に関する法規制というものが始まります。それまでは、各藩が地方文化の中で食生活に 関するコントロールをしていたものが、ここで初めて政府が日本全体を一元化して取り 締まりをすることになった。内務省――これは昔の警察機構ですね、その中に厚生省、 今の厚生労働省があって、体質的には主として取り締まりですね。「こういうことをや ると健康を害します」ということで、法規制のもとに取り締まりを行った。初めて食品 添加物に対する法的規制というものも始まったということでございます。  保存の歴史というものに触れていってみます。穀類に関しては、これは大麦、小麦、 米、トウモロコシ、これが主体ですけれども、まずは乾燥する。先ほど申し上げました ように、最初は天日乾燥から、火による加熱利用されるようになるということでござい ます。そのほかに粉をつくる。これはひき、砕き、あるいはひき割り、すりつぶしとい うような加工技術ができ上がってきますと、粉にして蓄えると、穀類そのもので蓄える のに比べると技術的に易しくなる。それから、調理加工して保存するという方法が始ま ります。これは焼く、ゆでる、ふかすというようなことで、主として殺菌効果を求める 技術がここで始まってまいります。それから、今までも出てきております発酵です。こ れは穀類に関しては、酵母とか乳酸菌というようなものを使って加工していく。先ほど 出てまいりました甘酒もそうですし、穀類を利用することによって酒や酢をつくるとい うようなことができてくる。酢がまた保存のために有用になるというようなことになり ます。  それから、魚介類、肉類に関しましては、天日乾燥、あるいは火の技術を使った加 熱、これも直火と蒸し焼き、いぶすというようなことができるようになってきます。特 に、いぶすという技術が非常に効果的でありまして、これは燻製をつくるというような ことがございます。いぶす技術というのは日本にもあったらしいのですが、特に外国か らハムのような形での肉類の加工品が入ってくるようになってからこれは広まったと考 えられるわけです。それから、油を使う。これは中華料理では油を使うというのは原則 のようになっておりますね。したがって、中国文化、食文化が入ってくることによっ て、揚げるとか、あるいはいためるというような食品加工に油を使うという技術がこれ も大変に有効に使われるようになります。それから、塩を利用する、これは塩蔵です ね。塩漬けにして加工する。これは日本の場合には、周りじゅう海に囲まれております から、かなり広く使われたと思いますが、先ほども出てまいりました魚醤、肉醤。それ から、亜硝酸を添加するということ、例えば、肉類をもたせるということで、ハム、ソ ーセージの加工にも亜硝酸の利用が行われるようになったわけでございます。それか ら、香辛料です。コショウ、ナツメグ、ウイキョウ、ショウガ、この辺は外国でよく使 われていたものですが、ショウガ、ニンニク、タマネギ、こういうようなものも使われ てきて、食味が豊かになると同時に、保存ということに関しても、だんだん高度な技術 が使われてくるということになったわけでございます。  当然のことながら、酒、酢あるいは発酵乳製品(チーズ、ヨーグルト)がつくられる ようになってきたのと同時に、「その他の技術」とここに書きましたけれども、冷蔵す る。昔は、例えば、高度の高いところでできた氷を氷蔵にしまって、それを大急ぎで江 戸に運んで将軍に献上した。ですから、今で言うと白バイ先導のような形で運んでいっ たというような氷が主でしたけれども、だんだんに電気を使った冷蔵、冷凍というよう な技術が入ってきますと、格段の進歩をするわけです。我々が子供のときには、ぽたぽ た氷の水が融けて滴の出る冷蔵庫でしたが、今はそういう冷蔵庫は、ごくマニアックな 料理の板前さんが「おれはこれじゃなきゃだめなんだ」というところにしか残っていな い。缶詰とか瓶詰、こういうものも出回ります。  食品添加物の始まりですが、1851年、このあたりは有機合成化学が非常に大きな進歩 を遂げた時代です。酢酸とアルコールを化合させますと酢酸エチルエステルが合成され ます。これが果実のにおいのする香料として第1回のロンドンの万国博覧会に出品され た。この辺から合成の香料が使われるようになったと言われております。ちょうど19世 紀の半ばですね。1859年になりますと、ベーキングパウダー、これはパンをつくるとき の膨張剤ですね、これが開発されて、クッキーとかケーキなどが非常においしくなった と同時に、工業化されていく。さらに有機化学が発達してくると、これは主としてドイ ツですが、タール色素が合成されて、大々的に、いろんな色のタール色素を合成して、 これを世界に広めた。そのために世界じゅうの食べ物が色とりどりになったわけです が、今、これは数えるほどしか使われていないと思います。それから、サッカリン、こ れは戦後の甘味としては貴重で、欠くべからざる甘味料だったわけですが、これは既に 1879年に合成された。20世紀になりますと、1912年にビタミンB1が発見され、A,C, D,Eというようなビタミン類が次々に発見された。それから、そういうものがさらに 有機合成化学で純粋なものが合成され、供給されるようになってきて、そういうものが 酸化防止とか、あるいは栄養強化というようなものに使われる時代が来たわけです。  これはちょっと余計な話なのですが、私が現役のとき、カビ毒を専門にやっておりま して、これは非常に興味のある話題だと思ったのですが、9世紀から14世紀、中世のこ ろ、ヨーロッパで、けいれんを伴う神経症状、それから手足指先が壊疽を起こして黒ず んで、やけどで黒こげになったような症状を起こすというものがはやり出した。最初は 原因がわからないのです。それで、聖アンソニー寺院という教会にお参りすると治ると いうことで、アンソニーの火で焼かれる病気とか、地獄の火とか、悪魔の火で焼かれる とか、手足が黒ずむことを表現したのですが、実は、後で考えますと、ライ麦に麦角菌 というカビがついて、バッカクアルカロイドをつくります。それを含んだライ麦の粉で つくったパンを食べることによってこういう病気が起きる。アンソニー寺院のあるとこ ろはライ麦にカビがつかないような地域だったのです。ですから、聖アンソニー寺院に お参りするということは、そこから逃れるというようなことで、原因がわかってみると 「なるほど」ということになるのですが、当時は非常に深刻な時代だった。特に、冷夏 といいますか、天候不順で穀物の収穫がなかった年は、この病気がはやったのです。  それから、黄変米事件、これは日本の話です。世界大戦の後で、非常な食糧難に見舞 われたわけです。諸外国から緊急にお米を輸入するということを当時の農林省が決め て、東南アジアあるいはカナダなどから大量の米を輸入したのです。ところが、そのカ ビの中に黄色く変色しているものがまざっているということが発見されました。明治時 代から米につくカビを研究していた角田広という非常にすぐれたカビの研究者の方がお られて、これは危ない、こういう色をしたカビが肝臓あるいは腎臓に毒性を持つという ような経歴があるから、よく調べた方がいいということで、調べたところが、確かにそ の中に、何種類かなのですが、そういう黄色の毒性を持つカビ米がまざってきたという のがわかって、数十万tが国民に配給される前に廃棄されたというような画期的な事件 だったのです。  それから、1960年代になりますと、これは七面鳥ですが、クリスマス前のイギリスの ロンドンの周辺で、10数万羽の七面鳥が一挙に死んでしまったという事件があったので す。原因が判らないです。流行病でもなことは七面鳥同士を一緒に飼っても感染するわ けじゃない。調べてみましたら、えさの中に入っていたピーナッツミールにカビが生え ていて、アフラトキシンという致死毒性あるいは強い発がん性を持つカビ毒をつくって いたということがわかった。  この3つの事件で何がわかるかというと、天候不順のときにカビがライ麦を侵す、あ るいは食糧を外国から運んでくる間にカビに汚染される。先ほど、生活体系が変わるこ とによって、間に流通という機能が入ると申し上げましたが、その特殊な例です。黄変 米事件の米も、七面鳥事件のピーナッツミールも、船底の熱気と湿気のあるところに積 まれて、長旅のの間にカビに汚染されて目的地に着いたということです。米というのは 毒じゃないです、それがこういうような形で肝臓とか腎臓に被害を与えることになる。 あるいはせっかく楽しみにしていたクリスマスの七面鳥が全滅してしまうというような 事件を起こしたというわけです。こういうような事件がこれから起きないとは限らない ということがこの3つの例でわかるのではないかと思って、スライドを用意してまいり ました。  「食品添加物の分類」というのは、指定添加物338品目、それから既存添加物、これは 先ほど参事官の方からお話がありました。それから、天然香料、一般飲食添加物、これ は食品として使われているけれども、時として添加物的に使うという、例えば、フルー ツジュースのようなものが入っております。天然香料というのは、これは非常に実態が つかみにくいのですが、基原物質として612品目あって、いずれも食品添加物として日 本ではポジティブリストに載っているものを我々は今、使っているということになるわ けです。  国として食品添加物として指定する条件というものがございまして、安全性を実証、 確認していること。それから、消費者に利益を与えるものでなければいけない。何にも ならないものを添加するというのは、これはむだなわけですよね。それから、既に指定 されているものと比較して同等以上あるいは別の効果を発揮するというものでなければ 添加物としては指定しない。つまり、添加物というのは、どんどんふやしていこうとい うのではなくて、ここで要らないものは添加物にしないようにしましょうという基本方 針があるわけです。それから、原則として化学分析によって添加を確認できる、つま り、「これを加えていますよ」ということがわかるゆおにしなければいけないという条 件もあります。  安全性を確認ための試験というのがございます。添加物として承認するときは、やは り安全性の確認が何よりも大切です。ですから、これについては一般毒性試験と特殊毒 性試験という2つに分かれた毒性試験をやります。短期と、中期と、それから1年以 上、長期にわたる毒性試験をやります。これは実験動物を使います。それから、特殊毒 性試験というのは、日常の生活の中ではなかなかなじみがないと思いますが、繁殖試験 とか、催奇形性試験、これは自分に対して被害を及ぼすだけではなくて、世代を越え て、妊娠中の母体に与えて、胎児に奇形が出てしまうという、薬で言いますと、サリド マイドという大変な例がございましたが、そういうことです。それから、発がん性、こ れも食べてすぐ被害が出るというのではなくて、非常に長い時間たってがんが出てくる というようなことでございます。抗原性、これはアレルギーの問題ですね。それから、 変異原性、これは発がん性の予備試験として行われておりますが、こういったような特 殊毒性試験にもたえたものが安全性を確保されるという形で添加物の候補に挙がってく るということでございます。  安全な食品添加物として、これは法規制とか、あるいは基準に決められているもので ございまして、これを私が一々詳しくお話しするよりも、きょうは行政関係の方々が来 ていらっしゃいます。定義というものが決まっております。それから、目的がない、消 費者に利点を与えないものは駄目だということです。それから、指定添加物というもの があります。これはきちっとした諮問機関である審議会が決めております。成分規格、 使用基準、これはどういう方法を使えばこれが入っているということがわかりますとい うことがわからない限りだめだということです。罰則もありまして、違反した場合は、 回収、営業停止というようなものもついているということが法基準の中身でございま す。  主な食品添加物はこれだけあるのです。今、何かの形で我々の身近な食品にはこうい うものが使われていると思うのですが、中には全然気づかないようなものも入っており ます。特に、発色、着色、甘味をつけるとか、膨張剤、こういうものは身近にすぐわか るのですが、そうでないようなもの、例えば、増粘安定とか、隠れて表に出てこないよ うな添加物も使われているということでございます。  例として、「アイスクリームを美味しく食べる」という変な題のお話をいたします。 私もときどき氷に塩をまぜて、その中で卵や牛乳をかきまぜてアイスクリームをつくっ て子供に食べさせたりしたことがございましたけれども、舌ざわりはざらざらして、非 常に素朴な味のアイスクリームです。必ずしもおいしくないけれども、我が家で楽しく つくるということで受けていたわけです。だけれども、プロは実際には、牛乳のほか に、こういういろんな原料を使いますね。乳化剤、安定剤、香料、着色料、このような ものを加えて、ホモジナイザーにかけて均質にした後に殺菌、低温下に熟成して、細か い空気を送り込みながらフリーザー内で高速攪拌する。こうして初めてアイスクリーム ができてくるわけで、そうすると大変に舌ざわりの柔らかい、いつまでも形が崩れな い、細かな気泡が入ることによって滑らかな食感ができるということで、商品としての アイスクリームになるわけです。ですから、こういうおいしさは要らない、そのかわり 何も入っていないものがいいといったら、私がつくったような、ざらざらした食感の素 朴な味のアイスクリームを食べていただければいいということでございます。  これはかなり大事なデータだと思うのですですが、食品添加物はがんの原因になると いうような説がございます。これについてアンケートをとった結果でございますが、日 本の主婦の意見では、がんになるというのは、要因として非常に大きい食品添加物、こ ういうデータがあるのです。農薬もそう、あるいはたばことか、大気汚染、お焦げ。特 にお焦げに関しては、国立がんセンターで、いろいろ研究の結果、お焦げに発がん物質 があるという研究結果が出ておりますけれども、こういうようなデータ。一方、黄色の 棒グラフの方は、アメリカの疫学者。疫学というのは、いろいろの事件が発生します と、その原因を、データを比べながら追求していくということを専門にする研究者の方 です。ですから、こちらの方はいろいろなデータを根拠にして、どういうところに発が んの原因があるかということをアンケートに答えている。そうしますと、一番目が普通 の食物なのです。日本でも、がんにならない10の条件というものがありましたけれど も、それから肺がんを主体としてたばこ、ウイルス、性生活とか出産、あるいは職業と か、アルコール、これは肝臓障害からくるところだと思うのですが、こういうような食 い違いがあるのです。例えば、主婦の方はどういうところから添加物ががんの原因にな るという情報を受けておられるかというと、これも別の調査なのですが、60%から70% はテレビなのです。少数がラジオ、それから雑誌のたぐいです。専門の、例えば、疫学 者がお話をして、そこからこういう情報を得られるということは、今の我々の生活の中 ではほとんどなくて、いわゆる口コミが多いのです。そういうところからこういう結果 が出てきていると思います。これはだから主婦はだめということじゃなくて、疫学者が どうしてこういうふうなお答えを出し、主婦の方たちがどうしてこういう答えを出した かという、このギャップの原因がどこにあるかということを考えて、このギャップを縮 めて、正しい理解をしていただくという、その働きがなかったということが私はこのデ ータが暗示する一番大事な点ではないかと思っております。  さて結論ですが、食品添加物というものを我々は使います。今までお話ししたよう に、我々が豊かな生活、食生活が中心になった生活を何不自由なくやる。便利な生活を するために都会を形成する。そのときに、今までと同じように自分の足元でつくった農 作物、あるいは身近なところでとってきた魚介類、そういうもので生活をしながら、そ の便利さを求めるということは無理なのです。したがって、近代的な生活を追ってい く、求めるときには、必ずそのための手続というものが必要なわけですから、その1つ として添加物を使うのだということを理解をしていただいたならば、まずは必要なとき に、必要な量だけ使うということを守っていただけばいいと思うのです。要らない色は つけなくてもいい。私も福岡へ来ますと、必ず辛子明太を買って帰るのですが、昔、真 っ赤っかだったものが、今は色がないものが売れるというふうに変わってきています ね。それだけやっぱり知恵がついてきた、自分の責任で、自分に害にならないものを食 べようという意識が出てきている。  もう1つは、品質が確かなものを使うということです。特に、これは添加物は法律の 中で決まっていますからよろしいのですが、いわゆる健康食品というのは品質が定まっ ておりません。例えば、これは薬も食品でも、健康にいいという機能を持っているとす ると、薬の方は薬事法というものの中に入っていて、製作過程が非常に厳しく取り締ま られているわけです。食品の方は、これも食品衛生法というものがあって、きちっとし た食品はハサップという製造過程についての縛りがあって、品質の悪いものは流通しな いようになっているわけなのですが、いわゆる健康食品、健康にいいという、その言葉 の裏で、例えば、中国からお土産にもらったやせ薬を、中国から来たから漢方薬だろう と考えて飲まれた。実は、漢方薬ではなくて、その辺の葉っぱを手当たり次第お茶の形 にして、しかもアメリカのFDAが既に禁止した合成の食欲減退薬がそこに入っていた ということで、4人も亡くなった方がおられるということは、品質の確かな情報という ものをきちっと手に入れてから使いましょう。それはどこかへ行くかというと、安全性 というものを確かめるということで、きょうのお話の中にも、日本でも安全委員会とい う7人の侍――女性も入っていますけれども、そういうものが安全性というものを中心 に評価する。それを受けて、農水省、厚労省が国民の生活に直結した食品安全政策とい うものをとっていこうという形ができたということは大変慶賀の至りでありまして、食 品添加物というのは、私の経験ですが、その中で一番標的されやすいものであったわけ なのですが、上手に使うことによって食生活から始まる我々の生活を豊かにしていきま しょうというのが私の提言でございます。 ご清聴どうもありがとうございました。 ○司会  ありがとうございました。  続きまして、国際連合大学副学長の安井至先生より「環境と食のリスク」についてご 講演いただきたいと思います。  安井先生は、東京大学大学院を修了後、東京大学生産技術研究所教授、東京大学国際 ・産学共同研究センター、センター長などを経て、現在は国際連合大学副学長をされて いらっしゃいます。ご専門は、環境材料科学です。  それでは、安井先生、よろしくお願いいたします。 4.環境と食のリスク 化学物質はどのぐらい危険か ○国際連合大学副学長  安井  至  安井でございます。皆さん、こんにちは。  きょう、私が使いますファイル、もし、どこかでご活用になりたいということでデジ タルデータが欲しいということでございましたら、メールをいただければお分けいたし ます。メールアドレスは、私、個人的なホームページを持っておりますので、ヤフーで もグーグルでも結構ですから、私の名前を入れていただくと一番てっぺんに出てきます ので、そこにあるメールをいただければと思います。  私はコミュニケーションということをお話をすることになるのですが、実をいいます と、この30分という時間は結構危険な時間なのです。かなり中途半端です。1時間ぐら いしゃべると余り誤解を受けないのですが、30分は結構危険です。どうなるかわかりま せんが、いってみたいと思います。  私は一応環境屋ということになっておりますので、いろんなところでお話をする機会 がございまして、最近は中学とか高校などでもお話をするのですが、そのときに高校生 にアンケートをとらせてもらったりいたしますと、7割から8割ぐらいの生徒さんたち は、自分たちが今生活している環境というのは親たちが生きた環境――30年ぐらい前で すか、それよりも大体悪いと思っています。確かに悪い部分もあります。30年前だった らカエルとかドジョウがいたところが、今はいないとか、あるいは地球温暖化なんてい う問題は30年前はなかったとか、そんな話はあるのですが、よくよく理由を聞いてみる と、環境ホルモン、ダイオキシン、狂牛病、ディーゼル排ガス何だかんだ――この辺が 問題かもしれませんが、原子炉に至るまで、こんなことがあって、自分たちの未来は非 常に暗いと思っているのです。それはかなり不幸だと思います。  環境屋にとりましては、キーワードは1970年です。この1970年の環境というのは、相 当悪いのです。それで、ありとあらゆるものが1970年あたりが悪くて、それから先は改 善されているのです。されていないものもあるのですが、このグラフは非常にいいかげ んではありますが、あと、ごみ問題の話もしておりませんが、大体こんな感じになって おります。この矢印は何かといいますと、ダイオキシン問題、POPS問題というの は、これは難分解性の汚染物質なのですが、一見片づいております。確かに発生はしな くなったのですが、実は、土壌汚染というところにそれが集まっておりまして、今、唯 一環境上悪そうなのは地下水です。地下水の品質はこれからまだ悪くなるんじゃないで すか。ミネラルウォーターは基本的に地下水ですよね――なんて言っちゃいけませんか ね。そういうことでありますから、地下水はお気をつけいただいた方がいいかかもしれ ません。  環境ホルモンの話が今、変な格好をしておりましたが、環境ホルモンの話もあそこで 終わったような格好になっております。昨年6月にこういう発表がございまして、今年 もあったのですが、昨年の6月に環境省はこういう報道資料をつくりまして、環境ホル モンのおそれのある物質から、いろいろ調査研究をやったんだけど、結果的に、フタル 酸エステルと呼ばれる物質の大部分は、通常の毒性物質でよいという発表をいたしまし た。これはどういう意味かといいますと、環境ホルモンではないということなのです。 じゃ、「環境ホルモンではない」と書けばいいじゃないかと思うのですが、役所もいろ いろ都合があるらしくて、先ほど、どのぐらいお金がかかるというお話がございました が、環境ホルモンで恐らく、数百億円日本という国も金を使っていまして、ネガティブ なデータを出していいと私は思っているんですけれど、なかなか言いにくいのかもしれ ないです。あと、オクチルフェノールというものが2番目の環境ホルモンとして認定さ れた。このような報道資料を出しました。  それで、実際、新聞に出たものはどんなものだったかといいますと、これが朝日でご ざいますが、朝日は割合と環境ホルモンが好きな新聞で、読売は余り好きじゃなくて、 短いのです。日経だとほとんど出ないのですけれど、682 文字も使いまして、すごく細 かいことが書いてあるのですが、どこにも先ほどのフタル酸エステルが環境ホルモンで はないということを報道してくれないのです。これはすごく不幸だと思いませんか。す ごく重要な情報ですよね。要するに、メディアというのは、基本的に一般市民を安心さ せるための情報は書かないのです。それは新聞社の編集の方に聞いても、皆さんそおっ しゃいます。それはそういうふうに記者が書いたとしても、デスクがそれを却下する。 しかも、デスクというのは、ある担当のところで、これをやろうか、やるまいか決める 人なのですが、デスクが集まって、土俵入りというものをやって、紙面の割り振りとい うか、奪い取りをやるのですが、そこで市民を安心させるような記事というのは通らな いのだそうです。そんなものなんですね。ですから、コミュニケーションで非常に難し いのは、要するに、メディアというものは商売である、しかも市民を脅かすのが商売で あるということはしっかり考えて――きょう、メディアの方がおられたら済みません、 そういうことでございます。  本年6月3日に、厚生労働省は、「キンメダイ・メカジキ通達」と私が呼んでおりま すような通達を出しました。有名ですね。今年、これは随分報道されました。メカジ キ、キンメダイに関しては妊婦の方はご注意ください、そんなに何遍も食べちゃいけま せん、週に2回ぐらいにしてください、そんなような話でございました。  これに関しまして、朝日は6月4日、翌日、かなり長い記事を書きました。  最後に厚生労働省は、今回呼びかけた以外の魚、妊婦でない人には悪影響はないか ら、しかも、よいから食べたらということをちゃんと書いていたのです。食べた方がよ い。ところが、風評被害が出ております。  銚子の漁協は出漁を半分ぐらいにしても、なおかつかなり落ちました。下田なんかの 漁協も――伊豆から銚子あたりでよくとれる魚のようでありますが、そんな状況でござ いました。  何で風評被害が出たのかといいますと、新聞はちゃんと書いたのです。そうなります と、やっぱりテレビかなという気がします。テレビというのは、実をいうと、新聞より さらに難しくて、私もしばしばテレビに登場する人間なのですが、番組を一緒につくっ てみるとわかるのですが、完璧に言い尽くせたなという感触を持ったことは一度もない です。ですから、本当に中途半端。それで、はっきり言って、本当のニュースは別とい たしまして、テレビというのはニュースの番組は、基本的にやっぱりエンターテインメ ントなんですね。ですから、エンターテインメントであるとしてごらんいただく。だか ら、誰かが、何かが体によいというようなことを言いますと、いろんなところのスーパ ーでやたら売れるそうでありますが、あれもエンターテインメント、本気だと思ってい なくて、楽しむつもりでやっていただくぐらいがいいところだと思います。  どんな報道をされたのかといいますと、例えば、岸井さんが言ったかどうかというの は証拠が残っているわけじゃないのですが、水銀汚染がまた見つかったのか、これはと んでもないとか、メチル水銀というものが水俣病の連想で、水俣病の患者の写真とかム ービーがかなり出たとか、要するに、かなり脅かしてくださるわけでございまして、見 る方もまた見る方で、多分、朝、忙しいとか、何かをしながら見ているものですから、 きちんと情報を取っていない。それから、もっと大きいかもしれない、一般市民は厚生 労働省――だけじゃありませんが、信用していない。今、私はどっちを信用するかと言 われたら、メディアの情報の方がよっぽど危ないと思うのです。ですから、先ほど厚生 労働省のホームページをご紹介いただきましたが、あれをしっかり読まれれば、かなり まとも、あるいは過剰反応に近い反応を今しているような気がしてならんのです。  メチル水銀の話ですが、水俣病と同じ原因物質ですから、そういう発想をするのも、 ある意味で当然なのですが、水俣病の最小発症量は250μg/日ぐらいなのです。これ 以上とっても発症しなかった方もおられるのですが、今、WHO・FAO――私のとこ ろも国連機関で、これも国連機関ですが、そこの基準値というのがあって、さらに厳し くなっちゃいましたが、その基準値というのは一体何で決まっているのかといいます と、実は、メチル水銀をとりますと、一番問題になるのは、胎児の脳に入るということ です。胎児というのはやっぱり人間の中でも非常に特殊でございまして、人になってい ません。あと乳児もひょっとすると特殊かもしれません。一たん子供になってしまう と、かなり頑丈なのですけれど、胎児と、場合によったら乳児も、かなり繊細です。例 えば、脳血液関門というようなものがまだ十分できていないゆえに、脳の中に入って神 経細胞の成長を妨害するとか、そんなことが言えて、WHOの規制値は、どうやら神経 の発達が十分でないゆえに、ちょっと反応速度が低下する。一般に、人間は音を聞いて から0.何秒かでもって反応するのですけれど、そういうものがちょっとおくれるとい うようなところが実際の問題で、これの規制値でございます。あと、メチル水銀とかそ ういう毒物は何でも蓄積すると思っておられますが、ダイオキシンは例外的に本当に蓄 積するのですが、メチル水銀は半減期は70日とか、30何日とか、いろんなデータがあり ますが、この程度でございますから、それだけ食べなきゃ半分には減ります。環境ホル モンで今、ちょっとグレーなビスフェノールAという物質がありますが、あれは数時 間、半日ぐらいで半分になります。ですから、まさに食べなきゃ、すぐ減ってきます。 化学物質というのは物によって本当にいろいろ違うものですから、厄介でございます。  先ほど、また水銀汚染が見つかったのか云々という話がございましたが、それじゃ、 チメル水銀は何で魚にあるのだろうかという話なのですが、原料は無機水銀です。無機 水銀が海の中に入って、そこにいる微生物によってメチル化という反応を受けて、それ でできてしまいます。無機水銀の地球全体での放出量は、海底火山とかいろんなものが あってよくわからないのですけれども、大体数万tから10万t、場合によっては15万t という量が出ていると言われております。データが古くてよくわからないのですが、火 力発電所なんていうのは相当量の水銀量を出しておりました。最近はかなり少なくなっ ています。日本の蛍光灯も、昔はかなり大量の水銀をばらまいておりましたが、最近は 随分減りました。電球型の蛍光灯なんかだと1個4mgぐらいです。直管のものでも、長 いもので40wぐらいのもので今、10mgぐらいになっていまして、随分減りました。多 分、世界的にもこれは随分減っているんじゃないかという気がするのですが、いずれに しても、天然起源の方が多いと考えた方がいいかと思います。一たんメチル化されまし た水銀というのは、食物連鎖を経まして、大型の魚にどんどん移行していって、最終的 に、食物連鎖の最頂点にいる人が食べるわけであります。  これが魚からの摂取量でございまして、このぐらいですと余り変わっていないので す。ですから、多分、急に何かが起きたという話ではない。  しかし、100 年前と違うのかというと、これまた難しいお話なのですが、100 年前の データというのはなかなかないのです。ただ、海鳥の剥製の中の水銀を分析した方がお られて、それを見ますと、どうも余り変わっていないみたいです。ただ、変わったこと はあるのです。何か。人間側が変わっているのです。例えば、キンメダイみたいな半深 海魚は多分、伊豆では食えたかもしれないけれど、100年前に一般市民はこんなものは 食べられません。そのころ食べていたものというと、いいとこイワシです。ですから、 こういう魚とか、メカジキ、クロマグロみたいな遠洋漁業の魚なんて昔は食えません。 食物連鎖の上の方にいるものを一般に我々は高級魚と呼ぶのですが、その高級魚という ものは最近になって食べられるようになっています。ですから、この辺も人間側が変わ っているのですね。それから、人側の感受性というのも随分変わってきて、これも後で お話をできたらしたいと思いますが、人側がいろいろなことが変わってきております。  話題が変わりますが、こういうような化学物質というもので、どういう影響を受ける か。先ほどございましたが、このような影響を受けるのです。急性影響で、場合によっ ては死んでしまうとか、慢性で発がんとか、いろんな話がございまして、先ほどのメチ ル水銀ですと、発達阻害みたいな話ですか。ダイオキシンが催奇形性があるとか言われ ていたのですが、実際にはどうもないようだとか、いろいろなことがございます。最 近、環境ホルモンで話題になっているのは、行動異常と言われているものであって、な ぜか雄が雌に対して興味を持たなくなるとか、そのような行動異常がどうもあるかもし れないというようなことが言われております。  これは先ほど山崎先生のところにもあったものでございますが、実際には日本は1980 年代の調査で、その同じデータを使わせていただきながら、メディアの影響が大きいと 私、申しましておりまして、最近、我々もアンケートなんかをとったりしているのです けれど、食品添加物がこれほど悪いとは今、言われていないみたいですね。変わってき ています。そのときは多分、食品添加物が目のかたきにされていた時代だったと思われ ます。  先ほど、発がんの話もございまして、私も発がんの話をしばしばするのですけれど、 今、大量につくられている化学物質だけで、恐らく、3,000とも3万とも――10倍も違 うじゃないかと言われるとあれなんですが、それで存在が知られている物質が100万と も言われています。ですから、ものすごい種類があるのです。それがみんな毒性が違う のです。したがって、非常に厄介なのですが、事発がんということに関して、我々の知 識は非常に限られています。87種類の絶対的な発がん物質というものと、多分発がん物 質と、かもしれない――このくらいだと人に対しては安全かもしれないのですが、この くらいしか知らないのです。これを調べるのは結構大変ではあります。  本当に全部調べなきゃいけないのかという話があるのですが、先ほど出てまいりまし たアフラトキシンなんですが、まさに天然毒ですが、これは輸入食材とか、あるいはト ウモロコシなんかも、虫に食われて穴があいたところにはカビが生えて、アフラトキシ ンが出るんだという話がありまして、そうだとすると、むしろ遺伝子組みかえをやった 方が相対的リスクは下がるのか、やっぱり環境のためにやめた方がいいのか、遺伝子組 みかえに関しては私もいろいろ迷うところなのです。  発がん物質、いろいろあります。先ほどウイルスのご紹介はありましたが、例えば、 これはウイルスではございません、細菌ですが、ピロリ菌。これは最近有名ですね。胃 がんの原因はこれです。それから、B型肝炎ウイルス、子宮がんのパピロマとか、T細 胞白血球ウイルス。これはウイルスではございませんが、実をいうと、ご存じのよう に、女性ホルモンは発がん物質ですよね。それで、乳がんの発がん物質であります。も しも世の中に神様がいて、それが人間というものをつくったといたします。そのとき、 人に無限の命を与えようと思ったら、女性ホルモンに発がん性なんて与えるわけはない のです。したがって、人間というのは長く生きればがんができるように最初からつくら れているんですよね。人間というのは、自分の体の中でつくる物質そのものが発がん物 質だという非常に矛盾した存在なのです。そんなこともありますから、いろんなほかの 物質をどう見るか。  さらに、この辺になってきますと、冗談じゃないかと思うようなものが発がん物質の グループ1に入っておりまして、アルコール飲料。きょうは幸いにして、さっさと引き 上げて、懇親会はやらないようでありますが、こういう会合をやると関係者はその後、 ビール一杯ぐらいやるのですがそれとか、たばこ、木のダスト、製材所のダストとか、 太陽の光そのものが皮膚がんの原因です。私はしばしば土曜日なんかに、大体暗いとこ ろでこういう講演をしております。きょう、外はすごくいい天気ですが、皆さん、ゴル フなんかやらなくてよかったですよね。なぜといったら、ゴルフ場へ行って太陽の光を 浴びて、その後で打ち上げでアルコールを飲んで、たばこを吸って、ピザかなにかで塩 漬けの魚でも食えば、4点セットでパーフェクト。あなたは多分、私の話を聞いただけ で命が延びたでしょうというようなことを申し上げているような状況です。  そんなこんなで、がんだけではございませんが、化学物質のリスクというものを研究 している人たちは結構しまして、蒲生さんは、リスクの大きさをいろんなものについ て、損失余命、どのぐらいの命が失われているか、短くなっているかということで計算 しています。ダイオキシンが1.3日。要するに、世の中からダイオキシンを全部取り除 くと、皆さんはあと1.3日長く生きられます。喫煙、2,700日――どうしましょうという ようなことでございます。  そんないろいろなことがございまして、日本人の平均寿命はこんなふうに延びてきて います。女性は1947年に53歳ぐらいだったものが、50年後には83〜84歳ぐらいになっ て、30年間ぐらい延びています。50年間で30年間寿命を延ばすというのは大変なことで す。もし50年間で50年間平均寿命が延びるとしたら、その間はだれ一人死ねないので す。ですから、30年というのはかなりそれに近いです。日本というのは、そういうこと をやってきた国なのです。  これが乳児の死亡率。乳児というのは1年未満の子供をいいますが、100年前、死亡 率は1,000 分の200 という恐るべき値です。10分の2です。ですから、2割の赤ちゃん は1歳の誕生日を迎えることなく死んでいた。現在は1,000 分の3.1 です。だから、こ こは200とこっちは3、1,000 人いると、197人はとにかく何らかの形で生き長らえるこ とができている。幸せな状況ですね。これが起きたのは、感染症の克服と栄養状態の向 上です。そんな国でございますし、こちらは死産はふえているんじゃないかという方が おられるので載せておきますが、そんなに変わっていません。死産というのは、今現在 の世の中に許された唯一の自然淘汰ですから、これはどうすべきかというのは非常に重 要な問題です。赤ちゃんが生まれるのをどうするかというのは非常に重要な問題のよう な気がいたします。このグラフは本来、何のために用いるかといいますと、1970年ご ろ、環境のぐわいがよくなかったんだけれど、ここに何か悪いところはあるかというこ とをごらんいただくために見ていただくのですが、実をいうと、環境の問題というのは 非常にローカルな問題で、日本全体で見たときに統計に出るほどのものではありませ ん。このグラフを見て、ここにすごいノイズがあるじゃないですか。こんなものがあっ ちゃ、こんなデータから何のそんな議論もできないとお考えになれば統計学としては正 常です。ただ、常識としてはそうではなくて、このピークはここにもあるのです。間を はかると60年――何でしょう。ひのえうまです。要するに、環境が赤ちゃんを殺すかど うかわからないけれど、迷信は確実に殺します。  私は食は専門ではございませんが、平成14年、こんな状況でございます。死者18名で す。大分起きていますが、サルモネラ2名、珍しくO157 でかなりの方が亡くなりまし た。宇都宮の話だったと思うのですが、あと多いのはフグですね、自然毒。それから、 多くの場合キノコなのですが、この年はキノコでなかったみたいですね。化学物質はお りません。日本という国はこんな国なのですが、アメリカは、よくわからないのですけ ども、サルモネラでものすごい人が死んでいるようでありまして、やっぱり多分、相当 すぐれた国なのだと思います。  またWHOのデータですが、これは世界全体で見たときの年であらわしました損失余 命です。これはいわゆる日常のリスクと呼ばれているものでありますが、1番は低体 重、要するに、貧栄養、栄養失調です。それで20.7年。つらつらと見ていくと、北米、 体重オーバーで6.58年。こういうものが今の世界の現状なのです。日本は比較的健康で すよね。これは日本プラス、オーストラリアとニュージーランドのデータが入っている のですが、まあまあ割と健全。しかし、貧栄養で死んではいない。ビタミンA、鉄とか 亜鉛の欠乏で大分命を失っていますし、あと不衛生な水とか、室内の煙汚染、これは 薪、炊事用の煙ですね。そういったものもあって、日本はそういうところに比べると、 ちょっと大気汚染がヤバイかな、あとたばこ、生活習慣病、こういうところが大きいか という国であります。  いろんなリスクを確かにゼロにしていかなきゃいけないんですけれども、例えば、食 べ物の場合、化学物質の場合には、何か自然のリスクがあって、その上に人工のリスク が乗っかっているような状態で、場合によると、食べ物というのは、自然の食べ物のリ スクの上に、何か人工的なリスクがこんなふうに乗っかっているんじゃないかという気 がするのです。そうすると、これを取り除くということがどのぐらい意味があるかとい うのは、なかなか難しいですよね。この辺の実態をしっかりわかってから、いろんなこ とをしなきゃいけない。  これを取り除くのが、ただで行えるなら幾らでもやってもいいのですが、例えば、先 ほど言いましたダイオキシンというものを減らしますと1.3 日、皆さん、平均的に寿命 が延びます。それを取り除こうと思うと、その原因は何か、例えば、東京湾の海底の泥 の中に入っているダイオキシンです。それをゴカイが食べ、小さな魚が食べ、中ぐらい が食べて、それで例えば、アナゴを食うわけです。江戸前のアナゴはうまいんです。私 も大好きで、よく食べるんですけど、そういうものを食べると、ダイオキシンが入って いるわけです。それを取り除こうと思ったらば、例えば、市原湾、羽田沖とかの海底を 全部しゅんせつしなきゃいけないのです。全部しゅんせつするには、やっぱり莫大なエ ネルギーがかかります。エネルギー不足というのは、地球温暖化の原因ですから、これ またリスクなのです。要するに、あるリスクを下げようと思うと、この辺を下げるのは 簡単なのですが、小さくなってきたリスクを無理やり下げようと思うと、莫大に何かほ かのことが起きてしまって、これまた大変なのです。私は、限界最小リスクというもの があって、ここをいかに探して皆さんとともに幸せになるかというのをやるべきかなと 思っています。  これは時間の話もそうでして、今だけ考えているんじゃなくて、全地球を少し考えて ください、それから人だけ考えるんじゃなくて、全生物種を考えてください――きょう はこの話はできませんが、あと長期の持続性も考えてください。  そういうことを考えた上で、私はコミュニケーションのときに、かなり乱暴なことを 申し上げておりまして、まず人の死ぬ確率は100 %であるということを認めますか。必 ずすべての方は死ぬのです。ここからスタートしない限り、リスクコミュニケーション というのは成り立たないということから申し上げる。これは非常に強行な意見なのです けども、私はいろんな地域の話なんかを見ていると、日本の場合にはここから始めない といけないんじゃないか、これを忘れているんじゃないかと思うのです。ただ、いろん な問題があって、局在化するリスクとか、個人の感受性――これは先ほど言いました、 乳児の死亡率が下がっているおかげもあるのですが、アレルギーの方がふえるのです。 それはしようがない、どうしてもそういうことになっちゃうんです。例えば、100 年ぐ らい前でしたら、米アレルギーの赤ちゃんは生きられなかったです。多分、確実に亡く なる。しかし、今だったら何とか生きていかれますから、そういう意味では、個人の感 受性というのは広がるのです。生物というのは基本的に自然淘汰というのが行われて、 それで生物なのですが、はっきり言って人間は、特に先進国の人間は生物でないので す。生物の域を越しちゃった。そういう状況になると、こういうことは起きるのです。 それははっきり言えば、しようがないのです。そういう状況でありながら、これからい かに幸せを追求するかという話になっていくと、幾つか考えなきゃいけない。  その中の最大のものが局在化しているリスクという話であって、要するに、高感受性 の人たちがいて、こういう人たちが不幸にならないようにはいかにするか。一番まずい のは胎児です。胎児への化学物質の影響というのは、かなり注意をしなきゃいけない。 アレルギーもやはり注意を払うべきであって、それは「テーラード」と我々は呼んでお りますが、その人に応じたある環境の対応をとらなきゃいけないだろうということだと 思います。それから、人だけじゃなくて、生態系の保全が重要です。環境省は亜鉛の規 制を今やろうとしているのですが、その亜鉛の規制というのはものすごく厳しくて、こ れは環境基準ですから、排出規制ではないのですが、水道水をそのまま海にじゃぼじゃ ぼと流しますと100 倍の違反とか、そんなすごいのです。水道水がだめなのです。きょ うお見えの方の悪口になっちゃあれなんですが、今の日本の行政は、そのぐらいのこと を気にしているのです。はっきり言うと、要するに、人の命がどうのこうのなんていう レベルではないのです。それをはるかに超えたところを今、気にしているのです。そう いうことを今やっている行政をメディアは信用しないのです。したがって、大変なこと になっているというわけでございます。  これは結論でございます。まず、食は危険かと言われると、私は、今の日本の現状で 危険だとは思えないです。ただ、先ほどの山崎先生のお話にもあったと思いますが、も ともと地球上に準備されていたものを、食えそうなものを人間が選んで食っているにす ぎないのです。人間が生きるために食物があるんじゃないのです。食物が先にあって、 それに人間が適合している。したがって、基本的には異物なのです。その異物度が少な いものを食べているにすぎないのです。ですから、すべての食は完全に安全ではない。 要するに、地球というものが人間を中心につくられているのならば、世の中に生えてい る草やなにかも全部食えるはずです。だけど、現実には食えないわけです。ということ は、人間というのもやはり地球上で存在している生物種の1つにしかすぎないわけで す。そういうことを考えていくと、すべての食は完全に安全ではない。今申し上げたよ うな、ある意味の、地球上で一体人はどうやって暮らしているのかというようなことを 考えると、食い物に対する見方も少しは悟りのレベルに達するのじゃないかというよう なことを思いますし、あるいは世界全体の状況を知って、その中で今の日本の状況がど うなのかということを考えていただくことも極めて重要だと思いますが、ただ、企業の 方にだけは申し上げておきたいのは、企業の不正というものが今回の問題の大きな原因 です。要するに、責任はしっかり取っていただきたいと思います。  以上でございます。 ○司会  ありがとうございました。  それではここでまた休憩を設けさせていただきます。意見交換は3時45分をめどに開 始したいと思いますので、それまでにお席の方にお戻りいただけますよう、よろしくお 願いいたします。                  〔 休憩 〕 5.意見交換・質疑応答 ○司会  それでは、時間となりましたので、意見交換に移らさせていただきたいと思います。  意見交換につきましては、コーディネーターに進行をお願いいたしたいと思います。 よろしくお願いします。 ○コーディネーター  紹介ありがとうございました。  本日、意見交換会のコーディネーターを務めさせていただきます厚生労働省医薬食品 局食品安全部企画情報課の広瀬と申します。よろしくお願いいたします。  意見交換会では、先ほどご講演いただいた方々に加えまして、各種団体等の代表的な 方にご参画いただいております。  初めに、簡単に所属等の紹介をさせていただきたいと思います。  こちら側にお座りいただいている先生から紹介させていただきたいと思いますが、先 ほど講演いただきました、内閣府食品安全委員会の見上委員でございます。  そのお隣が、厚生労働省大臣官房参事官、外口参事官でございます。  そのお隣が、農林水産省消費・安全局の姫田消費者情報官でございます。  当初、パネリストには千葉大学名誉教授の山崎先生にご参画いただく予定でしたが、 所用がございまして、パネルには参加できなくなりました。よろしくお願いいたしま す。  そのお隣が、国連大学副学長の安井先生でございます。  それから、全国消費生活相談員協会の九州支部前支部長の八木様でございます。  そのお隣が、明治乳業株式会社取締役技術部長の馬場様でございます。  そのお隣が、日本食品添加物協会専務理事の福江様でございます。  最後になりますが、独立行政法人農林水産消費技術センター門司センター所長の坂本 様でございます。  以上このメンバーで本日のパネルをさせていただきたいと思います。  ここで八木様、馬場様、福江様、坂本様には、今回の意見交換会に臨むに当たりまし て、簡単なご紹介等をいただければと思います。お1人様3分程度でお願いしたいと思 います。八木様からお願いいたします。 ○八木前支部長  ご紹介いただきました八木でございます。私の所属しております社団法人全国消費生 活相談員協会と申しますのは、全国の消費生活センターの窓口で相談を受けている相談 員が中心に、有資格者、それから行政の窓口で消費者問題を扱っているお仲間が全国で 1,500名ぐらい参加している会で、事務所は、国民生活センターの1階のお部屋をお借 りしまして、そこに協会の本部を置いております。私自身は、消費生活相談員として、 各地で消費者苦情を受けているものでして、きょうは、そういう仕事では専門性がある かと思いますけれども、食品関係のことで深く知っているというよりは、ご専門の皆様 方の中にまじりますと、一消費者でしかないので、きょうは消費者らしい意見で皆様た ちご専門のある方たちに発言をさせていただこうと思っております。  きょう、参加させていただきまして1つ感じましたのは、行政のこういう場をおつく りになるご対応が非常に変わってきた。わかりやすく、端的に、しかも時間も非常にき ちきちっとご進行になる様子を見ますと、今度の法の改正が早かったことも考えまし て、非常に機敏なご対応で、消費者の方に顔をしっかり向けてくださっているという変 わり方を痛感しております。  私どもの協会としましては、東京の方で農水省や厚生労働省、食品安全委員会が主催 なさいます消費者団体との意見交換会なんかに消費者団体の1つとして参加させていた だいたり、最近でも、JAS法の施行に関する重要な事項を審議するという機関である 農林物資規格調査会に消費者団体として参加させていただいております。  きょうはその会員の1人として出させていただいておりますが、先ほど申し上げまし たように、知識としては全く一般消費者で、テレビやマスコミに左右されやすい行動を している1人ということでご理解いただきたいと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  続きまして、馬場様、お願いいたします。 ○馬場技術部長  明治乳業の馬場でございます。私自身は会社での業務は、製品の規格設定や製造方法 の設定等を行う部門を担当しています。  食品業界の中でも、乳業界はこの2〜3年、非常に厳しい環境にございました。中で も、業界に先駆けて導入いたしましたHACCPシステムによる衛生管理システムを導 入している施設で製品事故が起こったということは、非常に大きな反省点でございま す。弊社といたしましても、これらの事故を他人事とせずに、自社の管理体制を見直 し、強化を図ってきておりますけども、今後とも継続して改善していきたいと思ってお ります。  先ほどの安井先生の最後のご指摘のとおり、事故を起こした会社は誠実にあらねばな らないということを乳業界として、より一層誠実に対応していかなければいけないだろ うと思っています。  消費者の信頼を回復するという観点で見ますと、コミュニケーションが最も大事だろ うと思っております。会社においても、お客様相談室の充実を図って、お客様の声を大 切にするということに非常に努めてきております。年間10から15万件の申し出だとか相 談、質問を受けておりますが、これらの声に対して、専門の相談員が適切に答えるよう 努力しているところでございます。また、これらのお客様の声を具体的な商品の改良、 表示の改良に結びつけるように、社内体制も充実を図ってきているところでございま す。  食品メーカーが安全なものを消費者にお届けするということは基本中の基本でござい まして、議論の余地はないものですが、この20〜30年の食を取り巻く環境変化の中で、 メーカーが自社のところだけで安全を確保する努力をしていても、消費者の皆さんの要 求を完全に満たすことはできなくなってきていると思います。そのような中で、食品の 安全、安心を確保するために、本日のご講演にもありましたとおり、農場から食卓まで という考え方による食品システムづくりが最大の課題だろうと思います。そこにかかわ る事業者等がそれぞれ確実に自分の責任を全うするということが重要であると常々痛感 しているところでございます。  そのような観点から言いますと、今回の食品衛生法の改正において、事業者の責務と いうことが明記されたことは、非常に大きな意義があるだろうと思っております。事業 者の日常の責務として、従業員教育、安全な原材料の調達といったことも記されており ます。これは当然の責務でありますが、改めて力を入れなきゃいけない課題だというふ うに見直した次第であります。  教育について見ますと、製品をつくるときに設備的に不良品を出さないように努める ということも非常に重要なことでございますが、やはり基礎知識や衛生知識を繰り返し 教育し続けるということが安全な食品づくりにとって重要な課題であると再認識してい るところでございます。  また、安全な原材料の調達という観点でも、原材料規格書を充実するとか、定期的に 原材料メーカーを訪問してチェックするというようなこともやっているわけですけど も、信頼できる原材料メーカーを選択するということも事業者の責務として重要な課題 だろうと認識しております。  信頼回復のために、まだまだやらなきゃいけないことは多いと思いますけども、きょ うはそういう観点で、乳業界で働いている者として参加させていただきました。よろし くお願いいたします。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  続きまして、福江様、お願いいたします。 ○福江専務理事  ただいまご紹介いただきました日本食品添加物協会の福江でございます。  初めに、協会についてちょっとご紹介いたしますけれども、私どもは、国内で食品添 加物の製造、輸入、販売あるいは食品添加物を使用する企業というところが集まりまし た団体でありまして、会員数は先月末現在で1,030を超えております。このうち85%が 食品添加物を事業としているもので、残りの15%が添加物を使っていただいている食品 会社さんということになります。私どもは21年前に現在の食品添加物協会という形で一 本化されましたが、それまでは各県にほとんど1つずつ協会がございました。それが一 本化されて今日に至っております。  協会の目的といたしましては、会員に対して、添加物の製造、輸入、販売、使用、そ の間についての正しい技術的な知識、あるいは行政的なルールを普及するということが ございます。もう1つは、一般消費者の皆様に対して、食品添加物を正しく理解をして いただく、理解を深めるという活動がございます。こういうことを通して添加物の業界 の健全な発展あるいは添加物を通した健全な食の確保というようなことを願っておりま す。  業界としてやっていることを簡単にご紹介いたしますけれども、先ほど山崎先生のお 話にありましたように、食品添加物を安全に食に利用するということに対しては、行政 上の規制でありますとか仕組みがございます。認可に相当するわけですけれども、添加 物を指定するとか、成分規格を決めた食品添加物公定書が発行される、あるいは製造基 準、使用基準などがございます。あるいは実際に使用れた後に、それがルールに合って いるかどうかということで、行政上の検査、あるいはサンプルを取って中の配合量が正 しいかどうかを見ることもございます。あるいは添加物の摂取量の調査なども厚生労働 省でやられております。  こういったことに加えて、協会としては、幾つかの自主的な取り組みをやっておりま す。我々の自主的な取り組みと行政との仕組みとが相乗して、トータルで食品添加物を 通した食品の健全性を確保しているのではないかと思っております。具体的には、先ほ どからご紹介ありましたように、天然添加物と従来言われておりました、いわゆる今の 行政用語で言いますと既存添加物でございますが、これの規格のできていないものがま だ随分ありますので、そういったものを業界の中で自主規格という形でつくって、全員 で守っていくというようなことをやるとか、あるいは添加物の製造あるいは品質管理の 自主基準――我々は食品添加物GMPと言っておりますけれども、そういった制度を提 唱して、同時に、これの実施しているところの認定をするというようなことをやってお ります。それから、一般消費者の方やあるいは学校の児童生徒に対して、食品添加物の 食品加工上の役割でありますとか、あるいは安全性確保の仕組みなどについてを紹介す る冊子などを配布したり、あるいは展示会を開催する、実際に各地の公共団体、消費者 の集まりなどにお伺いしてお話をするというようなことをやっております。  最終的には、食品添加物というのは、食品加工において重要で、ある面、不可欠だと いうような機能素材というふうに我々は認識しておりますので、これを通した食の安全 性というのが絶対に大事でありますので、そのことについての我々の事業者としての責 任というのは非常に痛感しているところでありまして、これも先ほど安井先生のご指摘 がありましたように、絶対に守らなければいけないということでありますけれども、残 念ながら、去年、今年と、5月ごろに未指定の添加物という事件がございました。これ は国際的な規制上のギャップということでもありますが、何よりも法律を守るという観 点においてはそごがあったということで、我々は非常に遺憾に思いまして、現在、その 再発防止ということで、会員に徹底しているところであります。  総じて、こういったことを通して安心、安全、そしておいしい食品を安定して消費者 に提供するというところで添加物はお役に立ちたいということで頑張っているところで ございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  続きまして、坂本所長、お願いいたします。 ○坂本所長  それでは、しんがりでございますが、独立行政法人農林水産消費技術センター門司セ ンターの坂本でございます。世の中に「センター」と名のつく組織、機関は非常に多い わけでございますけども、センターが2つもつくというのは珍しいのではないかと思っ ております。おかげで、電話等で説明するのが大変だというような苦労もしておりま す。  名称が長い割には中身がないんじゃないかと言われるのも困りますので、私どもの組 織と業務を簡単にご紹介をいたしたいと思います。  まず、組織でございますが、平成13年の4月に、それまで農水省の附属機関だったわ けですけども、独立いたしまして、独立行政法人として発足いたしました。本部がさい たまの副都心にございまして、そのほかに地域センターといたしまして、小樽、仙台、 横浜、名古屋、神戸、岡山、門司と7カ所にございます。私はそのうちの門司に属して おるということでございます。  それから、業務でございますが、大きく分けまして、消費者向けの業務と生産者ある いは企業向けの業務と両方がございます。消費者向けの業務といたしましては、消費者 相談でございますとか、情報提供あるいは啓発活動というものがございます。この業務 の中で、いわゆるリスクコミュニケーション関連の業務もやっていくということにいた しております。具体的には、従来の広報誌でございますとか、ホームページ、メールマ ガジンなどに加えまして、新しい試みといたしまして、電子フォーラムあるいはワーク ショップ、公開セミナーといったものをこれからやっていこうと考えております。それ から、生産者、企業向けの業務といたしましては、JAS制度の信頼性を確保するため の登録、認定機関等に対する指導、監督の業務、あるいはいわゆる食品の表示の指導、 監督の業務というようなことがございます。それからまた、不幸にしてJAS法に違反 する疑い等が生じた場合には、大臣から指示を受けまして、立入検査というようなもの も農政局、農政事務所さんあるいは県等と連携をしながらやらせていただいておるとい うことがございます。それから、最近特に力を入れているのが、残留農薬あるいは重金 属などの微量物質の分析調査でございます。さらには、消費者、企業向けの幅広い業務 を効果的に行うための調査研究の業務、あるいは新食品ですとか、地域に特色のある食 品などの特性を紹介するための食品特性調査といったようなものも行っております。  るる申し上げたような業務の結果をもとにいたしまして、消費者と生産者、企業―― 企業と申しますのは、いわゆる製造企業だけじゃなくて流通も含んでおりますけども、 この両方にかかわる仕事をやろうという、やや欲張ったところでございます。したがい まして、私どもの機関のセールスポイントは、消費者の皆さんと企業の皆さんとのかけ 橋となるというふうなところでございます。  資料の中にも簡単なチラシを入れさせていただいておりますが、これを機会に、どう ぞホームページあるいはメールマガジン等ものぞいていただきますように、よろしくお 願いいたしたいと思います。農水省のホームページにアクセスしていただきますと、セ ンターにもリンクできるというふうになっておりますので、よろしくお願いいたしま す。  本日は、いろんなご意見、情報がいただけるものだろうということで期待しておりま す。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。 ○コーディネーター  どうもありがとうございました。  本日の意見交換の進め方ですけれども、食品添加物、それからリスクコミュニケーシ ョン、最後に食品安全行政という形で、3つのテーマを中心に進めさせていただきたい と思います。こちらの意見交換会申し込みの際に、事前に意見等を記入いただいており まして、多数質問等をいただいておりますが、お時間の関係もございますので、「12月 5日意見交換会の事前意見・質問について」という横長の表がそれぞれ配付資料の中に 入っているかと思います。本日の意見交換会のテーマに取り上げられなかった質問等に つきましては、回答を作成させていただきましたので、後ほどごらんいただければと考 えております。  それでは、食品添加物の方から始めさせていただきたいと思います。  食品添加物につきましては、2−(1)、(2)ということで、2つのご意見、ご質問をい ただいているところでございます。まず1つは、食品添加物について、安全性に関し て、いわゆる消費者、行政関係者と科学者との間でギャップが高いというようなことが あって、このギャップをどうやって埋めていくのかというようなご質問でございます。 もう1つは、天然添加物について、今まで使用していたからということではなくて、き ちんと評価し直してくださいというお話と、輸入するものがふえているので、きちんと 日本の基準で規制できるのかどうかということでございます。  これにつきまして、まず行政側の方からコメントをお願いしたいと思います。外口参 事官、お願いいたします。 ○外口参事官  まず、食品添加物についての認識のギャップについてのお尋ねでございます。先ほど 講演された方の中でも、発がん性に関してのギャップ等を示す図があったのはおわかり のとおりだと思いますけども、どうしてそういう認識のギャップが出ているのかという こと、これをどっちかサイドで言いわけっぽい説明をするんじゃなくて、いろんな関係 者の中で、ギャップについての認識をまずお互いに共有する、それが大事じゃないかと 私は思っています。例えば、食品添加物、今はこんなに安全ですよ、生命への影響はこ れほど少ないですよという説明をしても、どうしてギャップがなくならないかという と、恐らく、その説明をするときにもう1つ補足すべきなのは、どうしてそういう添加 物は危ないというふうにお考えになっただろうかという、そこをまず考えなきゃいけな いんだろうと思っています。調べてみると、確かに安全性に疑いのある添加物が過去あ ったんです。例を挙げれば、特に、昭和39年度から添加物の再評価を開始しましたの で、そうすると40年に食用赤色1号と101号を肝臓障害の疑いで削除しているわけです。 41年になると、赤色4号、5号、だいだい色の1号、2号、ずらずらと出てきて、あと はズルチンだとか、サイクラミン酸ナトリウム、これは43年、44年に削除しています。 それから、49年は、有名なAF2を発がん性の疑いで削除している。46年には、安全を 確認する資料が十分でないという理由で、やっぱりクロラミンTだとか硫酸銅とかを削 除しているんです。そういうものが過去あれば、ほかは大丈夫かなと思うのはやっぱり これは当然じゃないかと思うので、だから、こういうものがあった、だけどほかもちゃ んと見ていて、そこはちゃんと押さえているから大丈夫ですよというところまでちゃん と説明し切れるかどうかということも含めた、こういったやりとりをしていくのがいい のかなと思っています。  それから、お話しした既存添加物、昔の天然添加物は、これは例外的に全部指定添加 物に入れちゃったので、それは今、丹念に安全性の確認をしているんですけども、そう いう作業で、どこのプロセスで、どこまでいったか、残っているのはどれだけだ――あ と残っているのは125ぐらいだったと思いますけども、そういうものも情報を共有して やっていくこと。  それから、添加物でよくご質問いただくのは、1つの安全性は証明できたかもしれな い。いろんな添加物をとっていて大丈夫か。こういうものについては、いろんな組み合 わせについての安全性の確認の実験系というのは非常に難しいんですけども、どういう ことをやっているかというと、1日の摂取量を決めるときには、安全率というものをも ちろん計算しているわけなんです。動物実験をやっているから、動物と人間が違うか ら、まず10倍はしなきゃいけない。それから、個人によって差があるから、さら10倍掛 けなきゃいけない。一般に何らかの影響が出る前の値の1/100の量を1日摂取許容量の 基準としてやっているんです。それにさらに加えて、今、トータルでどのぐらい添加物 をとっているだろう、これも調べています。そうすると、1日全部合わせると100 mgぐ らいになるんですが、それをやって、さらにそれを1日摂取許容量当たりにそれぞれの 添加物がどのぐらいとられているか、こういう分析もしています。それで見ると、一番 多いのが、保存料で使われているソルビン酸で、それは1日摂取許容量に占める割合が 1.2 %ぐらいなんです。ほかは0.幾つの世界です。そのようなことを今やっておりま すけども、そういういろいろな取り組みについて、我々もできるだけそれをわかりやす く提供し、そして一緒に考えていく、こういった取り組みをやっていく中で、また次の ステップが出てくるのかなと考えております。  それから、その次、天然添加物、ほったらかさないでというご意見で、それは先ほ ど、489 品目、今、こういうステップで安全性の確認をしておりますということを説明 しました。  それから、輸入品が増加してくるけども、ちゃんとできるのか。今、これをやるため に、検疫所の方を強化して、それから輸入食品の監視指導計画のお話をしましたけど も、そこで増大する検査に対応できるような仕組みをつくっていくと同時に、輸入国政 府への働きかけだとか、それから輸入する業者さんへの働きかけも含めてやっていく予 定です。  それから、国際間の整合性の話で、今起きている状況で1つ説明しておきたいのは、 例えば、アメリカでもヨーロッパでも使っていて、Codex 、国際基準でも安全性が確認 されたもので、日本ではまだ認められていないというものがあるんです。それはどうし てかというと、今までのやり方だと、業者さんが申請してこないと承認するステップに 入ってこないからそうなったんですけども、そういったものの中ででも、安全性にまず 問題はないだろうというものは、これは国の方で積極的にその安全性の確認のステップ をする、そういったことに取り組んで、今、トータルで46品目ぐらい、順番にやってい く予定になっています。そういったこともやりながら、ポジティブリストを確実につく って、検査の体制を確実につくって、それに当てはまらないものは、これは絶対に認め ない、そういったことで安全性の確保をしていきたいと思っております。  それで、このご質問をされた方はこの中におられますか。どうですか。 ○参加者  何となく納得はするんですけれど、検査をされる方の人数だとか、どれだけの輸入さ れるときの検査体制ができるのかどうかと思うんです。 ○外口参事官  今、検疫所が約30あって、主な検疫所が13で、その中で、特に、神戸と横浜にセンタ ーをつくって、そこで集中して添加物等を検査しています。よく、ほかのところでやら なくて大丈夫かと言われるんですけども、それはあるセンターをつくって、そこへ宅急 便で運んで、そこで集中的にやる方が精度管理も含めてきっちりできますので、そうい う方法をとっています。  それから、先ほど申し上げましたように、公的な機関だけでやる検査じゃなくて、公 正、中立性が保てて、後の精度管理とかを我々も指導できるようなところであれば、そ こも仲間に入れて必要な検査をしていこうという体制をとろうとしています。  どうですか。とりあえずよろしいですか。 ○参加者  とりあえずですね。 ○外口参事官  もう1人質問された方はおられますか。納得のいくまで意見交換をしたいんです。  それでは、時間の関係もあるので、コーディネーターにお願いします。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  それから、ギャップについて国の取り組みはということでご意見いただいているんで すけれども、業界の方にもご意見を伺ってみたいと思いますが、福江様、何かコメント ございませんでしょうか。 ○福江専務理事  ギャップの起きる前の段階ですけれど、いわゆる食の安全、安心に関するアンケート でとりますと、加工食品ですと、やはり食品添加物が一番心配とされ、それから生鮮食 品ですと残留農薬と、これが2つの柱になっております。今、外口さんがおっしゃるよ うなやりとりもこれからも必要だと思いますけども、皆さんの頭に入り込んだものを、 現状でどうなのかということを見直すことはなかなかできないんじゃないかというふう に思っておりますが、先ほど安井先生からのお話の中で、若干そのヒントがあったよう な気がしたんです。どこかで一たん入った情報が、それが現実にどうなのかということ についての見直しがなかなかできない。我々の方としても、情報をもっともっと出さな きゃいけないでしょうし、消費者の認識を掘り起こす必要があるかと思っております。  もう1点は、最近あちこちで言われておりますけども、いろんな出版物があります が、明らかに誹謗したといいますか、添加物を悪くするという本もあるわけですけど も、比較的中立な形ではなく科学的に正しくないという本もございます。例えば、学校 の家庭科で使われている副読本なんかがございますが、明らかに添加物を本当に悪者に したものがございます。そういうものがすべてとは思いませんけども、そういうことも ひとりひとりの基礎的な情報としてずっと入っていってしまうことがあるかと思いま す。もちろん、過去の添加物のいろいろな経過がございますけども、科学的な進歩の中 で、これは日本だけではなくて、先ほどから話がありますJACFAのようなところで 定期的に、あるいは何か問題があるとなれば再評価されるということはやられておりま す。そういうことと、今度の食品安全委員会あるいは厚生労働省の仕組みの中で、そう いうことも迅速に取り入れられるでしょうから、そういった面で、新しい科学的な情報 もどんどん入れた中で、必要であれば見直しもあるし、あるいは新しい情報が入ってく る。そういう仕組があることをいかにうまく伝えていくことができるのか、その辺が私 どもも大変関心があるところでございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  今、安井先生のお名前も挙がっでおります。安井先生からもコメントをいただければ と思います。 ○安井先生  コミュニケーションの問題なので、後で議論とも思ったんですけども、具体例があっ た方がわかりやすいかと思ってお願いをいたしましたが、こういうギャップを埋めると いうことなんですが、ギャップは埋めるんじゃなくて、構造的につくられているんで す。ですから、そのつくられている部分をとにかくやらない限り、埋めるのは無理なん です。どうしてつくられてしまうかというと、今のお話にもちょっとあったんですが、 要するに、無添加の食品が健康にいいということを世の中に思い込ませることによって 成立している商売というものが出す情報量の方がはるかに多いんです。ですから、それ が世の中でメジャーな情報になっているわけです。それに対して、それを否定するだけ の情報を出していかないと、情報量で絶対に負けるんです。しかし、それをやれるかと いうと、なかなかやれないのが現実でありまして、そのために一体何が必要かという と、2つのことが重要で、1つは、メディアというものは、先ほど申しましたように、 市民を脅かす情報しかもともと出さないし、それから無添加みたいなものが健康にいい よということも場合によると――場合によるとというのが難しいんですけども、何割か の場合には、とにかく自分と商売のためにやっているんだ、要するに、そういう広告が 出ているというのは、真実でない場合も結構あるんだということをちゃんと批判的に見 れるような市民をつくっていくしか多分手がないんです。  それをきっかけとしてやるには何をするか、それが2番目のポイントなんですが、や っぱりダイレクトな情報の伝達が重要で、昔だったらとても不可能なんですけども、今 の時代、インターネットというものがあって、私、厚生労働省のインターネットを完全 に見たことはないんですけども、そこの情報はまだ多分、難しいんです。ただ、それを 全部厚生労働省にやっていただくのは無理で、これからの消費者運動というのは、その 何段階かの中間の解釈をやっていく。私は、環境問題というものを、原報といいます か、本当のかなり固い情報から、一たん、ちょっと市民にわかりやすい、第1段階の解 説というのを自分自身でホームページでずっとやっているんですけども、それでもまだ 難しいんです。ですから、第1段階、第2段階、第3段階の情報伝達をやっていくとい う形の市民運動、消費者運動ができないと、うまく活動できない、うまくおさまらない ような気がします。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  添加物の関係で、当日お申し込みいただいた方もいらっしゃいますので、何かご意見 等あれば受け付けたいと思いますが、どなたか発言を希望される方はいらっしゃいます でしょうか。  特にはよろしいでしょうか。  それでは、続きまして、テーマをリスクコミュニケーションに移させていただきたい と思います。  リスクコミュニケーションにつきましては、食品安全の分野で比較的新しい取り組み で、どのように進めていくべきなのかということについては、現在、国としても試行錯 誤的な状況にあるわけでございます。  最初に、事前にお寄せいただいた意見ということで紹介させていただきたいと思いま す。3番の「リスクコミュニケーションについて」ということで、行政・事業者・消費 者がただ意見交換をするだけではなくて、「食品安全」について、協力して行動してい くような機会というのはないのでしょうか、またなければ、それが実現できないでしょ うかというようなご意見でございます。もう1つは、リスクコミュニケーションについ て、情報が不足していますので、具体的にお聞きしたいというようなことでございま す。  こちらもまず、行政側の方からコメントをいただきたいと思います。外口参事官、お 願いいたします。 ○外口参事官  リスクコミュニケーションについて、まずこれが片仮名で書いてあることからわかる ように、非常にわかりにくい概念だと思います。それで、私どもの方も、実際、試行錯 誤を今、繰り返しているところです。きょうで私、こういう意見交換会は11回目か12回 目だと思うんですけども、我々の方で何とかいい方向に持っていこうと思って、アンケ ートをいつもお願いしているんです。それは必ず、丸つけるだけじゃなくて、自由記載 欄に、今後こうしたらいいということをまず書いてほしいんですけども、今まで、最初 何回か行ったときは、これはリスクコミュニケーションじゃなくて一方的な説明だとい うご意見が非常に多かったんです。最近、「一方的な説明」が少し減って、「これは単 なる質疑応答で意見交換じゃない」と、少しレベルが上がりまして、じゃ、これをいか に施策の提言まで持っていけるような意見交換会に持っていけるかは、我々の勉強でも ありますし、それから皆様方の勉強でもあるんじゃないかと思いますので、いろいろや りとりを重ねて、皆様方にも教えていただきながら、いい方向に持っていきたいと思っ ています。  リスクコミュニケーションの情報が不足していますので具体的にというのは、これは 専門の先生がおられますので、補足していただければと思います。 ○コーディネーター  お願いいたします。 ○姫田消費者情報官  リスクコミュニケーション、外口参事官がおっしゃったように、今、私と参事官と2 人、全国を行脚してしている、そして食品安全委員会の方も一緒に来られているという ことです。1つ、私ども、そのほかに、いわゆる顔の見える関係というようなことを 今、考えておりまして、これはリスクコミュニケーションストレートの話じゃなくて、 食全体について考えていこうというようなことで、生産者、加工、流通、消費者の 方々、そして科学者の方々に入っていただいて、安全だけじゃなくて、産直、地産地消 のこととか、食育のこととか、こういうようなこともやっていけないだろうかというこ とで、今、新しいアクションを動かそうとしております。こういう中で、私どももお金 がなくて、全国でというわけにいかんので、今、東京で、そういうようなことで、いろ んな方々に集まっていただいてやっているということで、これからまたそういうことに ついてもインターネットのホームページ、あるいはいろんな中で状況をご報告していき たいと思っております。  それから、私ども、リスクコミュニケーションのときに、きょうはこういう形で地方 でやっておりますが、東京でやっているときに、例えば、カドミウムでやるときに、生 産者の方々、流通の方々、それぞれ意見をいただいて、それでどうやっていこうかと。 リスクコミュニケーションの考え方の中に、消費者の方々を中心にやっておりますけれ ども、行政と消費者の対話だけじゃなくて、最終的には、リスクコミュニケーションの 世界で「ステークホルダー」と言っておりますが、利害関係者みんなが話を横になって やっていけるというような意見交換会ができればいいかと思っています。ただ、まだ私 どももなれておりませんし、皆さん方もなれていらっしゃらないということで、これを 今後、どんな形をつくっていくかというのは、私どもでまた勉強してまいりたいと思い ますので、ぜひそういうときはご参加いただきたいと思います。よろしくお願いいたし ます。 ○コーディネーター  安井先生、お願いいたします。 ○安井先生  リスクコミュニケーションについて、情報が不足しておりますということなんですけ れども、確かにそうかもしれません。リスクコミュニケーションというのは、何を目的 とするかによってやり方が全部違うんです。ですから、いろんなケースについて、ケー ススタディーみたいなものがいろんなところで公表されていかないと、「こういうやり 方があるよ」というようなこともわかってこないように思います。しかし、これに関し て一般論で語ってもほとんど意味がないような気がいたしますので、やはり何か具体的 な経験というものを積んで、それが社会にこういうことをやったら、こういう反応が出 たとか、その情報も積み上げていくしかないんだろうと思っています。「リスク」とい う言葉そのものがなかなか理解されない点から始まって、なかなか難しいことは事実で す。余りポジティブな回答じゃなくて済みません。 ○コーディネーター  どうもありがとうございました。  ただいま、いただいた質問に対してコメントをいただいたわけですけれども、これを コメントされた方は、こんな感じのコメントでよろしいかどうか、もし補足の意見、追 加の意見等あれば発言いただければと思います。  それでは、そのほかの方でも結構ですので、リスクコミュニケーションにつきまして 何か発言されたい方はいらっしゃらないでしょうか。 ○参加者  質問させていただいた者なんですけれども、消費者といたしますと、毎日の食材を購 入するに当たって、最近は、とてもストレスが多くて、どれを買ったらいいかわからな いというか、生産地はどこかとか、加工食品については添加物はどうなっているかと一 々調べながら買っているような状況なんですけど、例えば、危険なものが出た場合に、 その後、こういう点は安全だとかいう広報を新聞の広告なんかに国として広報として出 していただけたらいいなと思っております。ホームページをあける人はいいんですけ ど、あけない人のためにお願いいたします。 ○コーディネーター  また行政側からもコメントをいただければと思います。 ○姫田消費者情報官  先ほども安井先生のお話があったように、私どもは、いわゆる行政から皆さん方にお 伝えする方法として、1つは、プレスリリースというやり方があります。これは記者会 見したり、あるいは新聞やマスコミに情報を出すというやり方、それからインターネッ トのホームページで出すということ、あるいはこうやって目の前で皆さん方にお出しす るというやり方、あるいは行政機関を通じて県や市町村、そして農政事務所とかでお出 しするというやり方がございます。  最初の、マスコミに出すやり方なんですが、危ないというときは出してくださるんで すけれども、安全ですというときは、ほとんど相手にしていただかない。例えば、きょ うもどれだけ載せていただけるかわかりませんが、リスクコミュニケーションというこ とで、我々は前向きに、積極的に、いいことをしているつもりなんですが、ほとんどマ スコミには取り上げていただかない、何か悪いことをやったら、すぐ取り上げていただ けるという状態なので、これからもいろんな機会を通じて、まずホームページは確実に 出していきたいと思っております。もう1つは、厚生労働省が保健所とか県の機関を使 っていただく、あるいは私どもの農政事務所なり、それから消費生活センターはそれぞ れの県、少なくとも1つ、あるいは保健所だともっと身近にありますから、使っていた だくということ。それで、先ほどもお話しいたしましたように、電話もいろんなものが あります。それから、お金がかかるということであれば、農林水産省は、食品表示です と「0120−481 −239 」というフリーダイヤルも持っておりまして、そういうところに かけていただくということも可能かと思いますので、できるだけ我々もさらに出してい きたいと思いますが、そういうことでご容赦いただきたいと思っております。 ○コーディネーター  安井先生、どうぞ。 ○安井先生  新聞広告をダイレクトに出すというのは私も賛成なんですが、実をいうと、かなり莫 大にお金がかかるんです。それで、先ほどの安全性というものをどこまで、例えば、検 疫所というものが13カ所あって、13カ所が完璧に輸入品をどれぐらいやるか、お金をか ければ幾らでもできるんです。要するに、どこまで皆さんの安全のためにお金をかける かという問題なんです。私は行政側じゃないですから、中間的な立場であって、でも、 私は、そんなお金があったら、むしろ、教育にかけるとか、そういう方がいいかなと既 に思い始めているんです。教育というのは、先ほど申しました、一般市民がどういうふ うに新聞を理解するかとか、そういうような教育です。そういう方がいいかと思ってお りまして、食で毎日ストレスが多くてお買い物をとおっしゃるんですが、そのストレス の方が多分、健康に悪いです。ですから、丸で全部信じてしまっても、それによる被害 より、ストレスを感じる方が多分、悪いです。そのぐらいの今の状況になっているとい うことをわかっていただいた方がいいような気がします。 ○コーディネーター  ありがとうございました。 ○姫田消費者情報官  教育というお話が出たので。実は、私、リスクコミュニケーションと、もう1つ、食 育の担当をしておりまして、新聞情報とかなんとかいうことだけじゃなくて、私どもの 相談窓口に、賞味期限が切れた食べ物があるんだけど、これは食べていいかという電話 がよくかかってきます。昔だと、それは大体みんななめたり、におったりして、くさけ れば、酸っぱければ食べないわけなんですが、わからない。「ちょっとなめていただけ ませんか」と言っても、だめだと。賞味期限が切れたものを行政が食べていいとは言え ないので、自分で判断してくださいと言うと、わからないということで、結局、これか ら人間が生きる力というか、そういうものを農産物の生産段階から流通、消費の段階ま であらゆること、そしてあとは我が国の食文化とかそういうことも含めて教育していく 場が必要じゃないかということで、私ども、これから食育というものに積極的に取り組 んでいきたいと思っております。そうすることによって、皆さん方がわかっていく力と いうのができるんじゃないかと思っております。 ○コーディネーター  外口参事官、どうぞ ○外口参事官  この冊子の8ページに「リスクコミュニケーションについて」という項目があるんで すけども、例えば、「基準設定等に際しての国民・住民からの意見聴取」という、規格 ・基準だとか、監視指導計画とかをつくるときの国民または住民の意見を求めなければ ならない。それだけじゃなくて、2番に書いてあるように、定期的に国あるいは県―― 自治体ですね、そこは食品衛生に関する施策について住民の意見を求めなければならな い、いわゆる意見交換をしなければならないと、こう義務化されたわけなんです。ここ を活用していただくと、少し何か展望が開けてこないかと思っています。それで、我々 の方は、記者発表した資料、Q&A、審議会の議事録、いろんな通知だとか、表へ出し たものはできるだけホームページに載せるようにしています。こういった意見交換会の やりとり、そのアンケート、それもいろいろ今、出していますけども、ありとあらゆる ものをできるだけ出しますので、それを直接見なくても、自治体レベルで意見交換会を やるときに、当然、行政の担当者というのはそのぐらい勉強していなきゃいけないわけ なので、そこを通じていろいろやりとりをする。そして、問題があれば、自治体で解決 できなければ、また国の方へ投げて、次のステップへ行くとか、そういったやりとりも 含めれば、ホームページの活用の仕方、あるいは意見交換会の活用の仕方として、いろ んなやり方に発展するんじゃないかと思っています。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  質問いただいた方、こんな感じでよろしいでしょうか。 ○参加者  どうもありがとうございました。私自身としては、人工的な添加物とか、そういうリ スクについては余り気にしていないんですけれど、一般にそうだものですからお尋ねし ました。どうもありがとうございました。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  リスコミの関係で、ほかに何かご意見等ございますでしょうか。 ○参加者  意見というよりも、きょうのいろいろな報告を聞いていて感じたことを一言申し添え ておきたいと思います。  リスク分析に基づいて食の安全ということ、これは進む方向としては間違っていない と理解しています。食のリスク評価についても、一定の科学的な基準でもって評価する ということも、これは方向性はそうだろう。リスク管理についても、そういうふうに考 えています。  リスクコミュニケーションのところの問題ですが、きょうの報告の中でも出てきてお りますけども、今まで、食に関しては、安全という神話でこの間、進んできたのではな いか。だから、何も疑問なしに食を欲するというところで進んできた。だけど、これに ついては、ある意味では危険だというふうな警告がきょう、なされてきた。私もそうい うふうに思うんです。危険というよりも、安全か、安心か、それについてはやはり食べ る方が一定の基準を持つ、一定の判断を持てるような材料を提供する、これが大切だと 思います。そういう意味で、こういうような形で意見交換会もされているかと思うんで すが、先ほどのご意見の中に戻るわけですが、リスクコミュニケーション、社会的合意 づくりのところの環境の分をどう強めていくかというところで、食育というのも、これ も方向性は間違っていないと思います。  そういう意味でお願いなんですが、やはりそれぞれが、それぞれ努力をしていくとい うことで、私どもは消費者団体なんですが、生産、流通、販売、消費者、こういうとこ ろがどう合意形成をつくっていくのか、これを崩したら、また同じことを繰り返すと思 うんです。最終的には、消費者団体と言っていますけども、やはり生活者ですから、生 産者も生活者、流通の部分も生活者ですから、そういう意味で、生活者のところがどう いうふうに合意形成をつくっていくのかというところを今後とも強めていかなければい けないというところで、きょう、発信されたのではないかと理解をしておるというとこ ろで、期待を込めて発言をしておきたいと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  パネラーの方から何かご発言、見上先生、どうぞ。 ○見上委員  貴重なご意見、どうもありがとうございました。我々の委員会ができた理由は先ほど 述べたわけなんですが、確かにフードチェーンのあらゆる関与する人、生産者から最終 的には消費者に行くわけなんですけども、それぞれがお互いにディスカッションしなが ら、よく話し合いながら、何とかして昔というか、ちょっとおかしくなった食の安全、 安心に対する国民の、要するに、ある面では、疑いの目を持って対応したということ は、先ほどもお話しましたが、それぞれ分担がありますので、厚生労働省、農林水産 省、それから我々の食品安全委員会の中で、それぞれがまたよく話し合って、一般の 方々の意見を十二分に考えて行動していきたいと、そのように思っております。どうぞ よろしくお願いします。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  ほかにパネラーの方でご意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。  それでは、会場の方から、まだほかに何かリスクコミュニケーションについてご発言 される方はいらっしゃいますか。  特にはよろしいでしょうか。  それでは、最後のテーマに移らせていただきたいと思います。食品安全行政について ということで事前にお寄せいただいた意見を紹介させていただきます。  生産から消費までの一貫した監視指導のあり方ということで、実際、食衛法では、衛 生監視員が農家等に立ち入り、現状を把握することは難しいというような状況にあると いうことなんですが、こういった衛生監視員が農林水産省の関係機関との合同監視によ る効果的な立入検査を実施するとか、監視強化月間を設けるとか、何か検討されている ことがあれば教えていただきたい、そういうご意見でございます。これにつきましてコ メントいただきたいと思います。 ○外口参事官  食品衛生法のいろんな法律が今回、改正されまして、その中で、生産面を担当する農 水省と、消費のところの食の衛生を担当する厚生労働省と、よく連携をするようにとい う趣旨のことは、このときつくったいろんな法律の、いろんなところに書き込まれてお ります。それから今、どういうことが起きているかというのを説明したらいいかと思う んですけども、まず、食品の表示については、JAS法と食品衛生法と、例えば、原産 地表示とかはJAS法ですけども、アレルギーの表示とかは食品衛生の方なんです。そ れが1つの欄にまじって書いてあるので、表示の指導をするときには両方協力しなきゃ 絶対無理なんです。実際、表示の指導では、衛生部局と農水の方と一緒にやるような取 り組みが一部の地域で始まっております。それから、近畿ブロックだったか、食品衛生 のサイドと農水省さんの生産絡みのサイドで連絡会議をつくろうと。連絡会議をして今 後の取り組みについてよく連携をとって、できれば一緒に行動していこうみたいな、そ ういった取り組みの方向が今、できつつあります。それから、現実に、例えば、牛のト レーサビリティは今度できたところなんですけども、それを本当に実行するには、農水 省サイドだけの情報だと、一番末端までの情報はたどれないというのがあるんです。例 えば、農政事務所は焼き肉屋さんがどこにあるかという情報は多分、持っていないで、 保健所が持っていると思うんです。だから、そういう例を1つとっても、これは連携し ないとうまく動かないので、そういったところでも連携は敷かれていくんじゃないかと 思います。  それから、もう既に行われていることなんですが、例えば、8月29日に厚生労働省の 方が農林水産省の方に、これは運用についてのお願いなんですけども、鶏舎内の衛生管 理について指導をよろしくとか、農林水産物の生産者の記録の作成等についてはこうい うふうに指導していただけませんか、そういうようなお願いの文書も今、出しつつあり ますので、そういった中で、あと1年ぐらいたつと、前と大分流れが変わってくると思 いますので、そういうものを見ながら、「やっぱりここはまずいよ」とか、「ここはも う少しこうした方がいいよ」というものがありましたら、またご指摘をいただければと 思います。 ○コーディネーター  姫田消費者情報官、お願いいたします。 ○姫田消費者情報官  今、外口参事官がおっしゃったとおりなので、私どもの方も、ほかの部局は毎週と か、私どもも外口参事官と食品安全委員会等で2週間に1回、きちっと毎回情報交換を やっています。その中で、それぞれ地域から上がってきた、ここはやっぱり厚生労働省 さんと一緒にやらないとやりづらいというような話についても、お願いして、「ここは やってもらえませんか」というような話。今の、牛肉のトレーサビリティの話は、そう いうところから出てきたものなんですけれども、そういうことでやっていただいている ということで、また逆に、川上に向かっての協力ということも必要であればそれぞれや ってまいりたいと思っておりますし、今後も、どちらかというと保健所、下方というよ りは、むしろ、今、農政事務所ができております。ここが今、2,000人の力を持ってお りますので、こういうところも積極的に活用していただければと思っておりますので、 よろしくお願いいたします。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  ただいまのコメントでございますが、ご質問いただいた方で何か追加のコメントとか されたいということがあれば、お手を挙げていただければと思うんです。 ○参加者  NPO法人の九州HACCP協会の理事長のハシモトと申します。この法律は予防の 方に傾斜していると。しかし、食の安全は、結局、消費者よりも、それをつくる業者に 安全が確保されておかないと、幾ら消費者が頑張っても、業者がいいかげんだと食品事 故がいつでも起こるんです。それで、行政が得意な結果処理になってしまう。これの反 省から、今回の改正で、予防の方に傾斜すると。ところが、業者については、自主管理 を重んじるというふうに法の精神はなっているんです。自主性というのは、ある意味で は、いいかげんでいいですよというふうになりがちなんです。ところが、これの監視体 制は、今おっしゃっていました、この法律の運用を監視する監視員があちこちにおるの が地方の保健所であったり、農林事務所ですよね。このあたりは私も接触しています が、非常に足腰が弱い。動けない、準備不足、予算不足。この法律は絵にかいたもちで すけども、実際にもちにしていくのは消費者じゃなくて、行政の指導と監視体制です。 そして、業者が本当にやる気になって食の安全をつくり出せるのか、そこのところが抜 けているんです。そこが自主管理でいいですよと。何かやらかしたら罰則しますよと。 これでは本当の食の安全は守れないんです。このあたりをどうするかということを、こ れもリスクマネジメントになるんですけど、ただ、リスクコミュニケーションというの は、本当は消費者と業者が直に話してリスクを監視するような、そういう受け皿あるい は環境を行政がつくっていく。それでも聞かない業者には罰則、ペナルティーを与え る。そういうことをはっきりしていかないと、今までのようないいかげんなことをやっ ていると、結局、これもざる法になってしまう可能性が十分にあるんです。私は現場で いろいろな方、行政とか業者の方と話しますけども、この14ページにところにも書いて ありますが、県の担当者は疲れていますよね。ハサップどころじゃないと。そこまでレ ベルに至っていない業者がいっぱいある。指導しても、指導倒れで終わっている。実際 に業者の方のレベルが低いんです。その実態を踏まえて、いかに上げるかということを 考える手法ですね。例えば、ハサップは6品目で、5年更新。これをやっているところ はハイレベルの会社ですから、行政は言わなくてもいいんです。問題は、それ以外の業 者の方々が、営業許可は取っていますけども、取りっ放し、全然これが規制がない。だ から、今回のは、罰則の強化というのはありますけども、ハサップを取っていないとこ ろの肝心な業者のところの監視規制がないんです。プロセスの監視がないんです。だか ら、いわば入り口論で、起こってからでは遅いわけですから、営業許可の段階で、もう ちょっとレベルを厳しくして、更新制にするとか、そういうところの改正が今回はなさ れていないんです。つまり、肝心な中小企業の業者のレベルアップ、ちょっとここが落 ちているんじゃないないか、NPO法人としてそう思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  姫田消費者情報官、お願いいたします。 ○姫田消費者情報官  業を扱う農林水産省としてお話しいたしますと、いろんな段階で生産者も、そして加 工業者の方々にも、まず我々国がリスクコミュニケーションしている、そのリスクコミ ュニケーションの中で徹底した情報の公開と意見交換、そしてその意見が施策に反映す るようになる、それは私たち国だけがやるんじゃなくて、生産者、加工業者の皆さん 方、あるいは流通の方々も、それぞれがみんなリスクコミュニケーションしないといけ ないんだというお話をしておりますし、かつ指導しているところでございます。そのそ れぞれのレベルできちっとした、徹底した情報公開が必要になってくると思っておりま す。それは多分、きょう来られている明治乳業の方も実行しておられると思うんですけ れども、ほかの乳業メーカーできちっとした情報公開ができていなかった、そういうこ とで問題が起こった以上に、さらに問題を泥沼化させてしまったというのは、情報公開 とその対応の悪さということだろうと思っております。そういう意味で、今後も私ど も、業界を積極的に指導してまいりたいということで、今、いろんなところで指導して いるところでございます。 ○コーディネーター  外口参事官、どうぞ。 ○外口参事官  自主管理とか、努力規定だけでは絵にかいたもちになるんじゃないかというような逆 説的なコメントも入っていたのかなと思ったんですけども、私どもとしては、食品衛生 の一番の責任というのは事業者さんが一義的に持ってもらわないと困るわけなので、そ このところは、これは繰り返し、繰り返しお願いしていこうと思っています。それで、 仮に、これだけいろいろな食に関する事件が起きてきて、消費者さんからいろんなこと を言われて、なおかつ自主管理だからやらなくていいんだとか、努力規定というのはや らなくていいんだとか、そういう考えでもし事業をお進めになるようなところがあると すれば、それはやっぱり私は世の中、許さないんじゃないかと思いますし、私どもも、 こういう規定でもしだめだったらば、それは次のステップに進むことになると思います けども、今はこれでぜひご理解いただいて、事業者さんの方に頑張っていただきたいと 思っています。ただ、よく注視していきたいと思っています。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  質問いただいた方からもコメントいただければと思うんですが。 ○参加者  どうしても行政は今まで業者寄りなんです。事故があって初めて消費者保護と。今の お話を聞いていますと、これは相当期待できるなと思いました。 ○コーディネーター  どうもありがとうございました。  馬場様、お願いいたします。 ○馬場技術部長  自主管理の問題についてお話しありましたですけども、最初に言いましたように、こ こ2〜3年、乳業界は非常に厳しいご指摘を受けてきました。その中で痛切に感じるの は、やはり事故を起こせば製品はなくなります。それは明らかでございますので、本当 に自主管理を徹底するということが企業としての存続の第一義的な課題であるなと痛切 に感じまして、これはすべての企業にとってかなり共通することではないかと、この2 〜3年は特にそれを意識するようになったという点だけ言わせていただきます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  八木様からもご発言をお願いいたします。 ○八木前支部長  私も消費者問題をいろいろ勉強させていただいた中で、この2年ぐらいの食品業界の トラブルというのは非常に消費者にショックを与えたというふうな思いが深いんですけ れども、その中で1つ考えましたのは、これはどうしても企業が悪いという場合と、そ れから香料の問題で、製菓のメーカーさんが食品添加物として許可されていない香料を 使ったというお菓子を全部廃棄して、そのことをずっと新聞広告にお載せになったとい う事例があります。あのときに私、思いましたのは、その香料についてのご意見は、 今、行政の方からもご説明がありましたように、海外では使われているけれども、申請 されていないから許可されていない食品添加物で、微量で、健康に害がない。そこの方 は非常に声が小さく消費者の耳に届きまして、業界の方はびっくりして、お菓子を全部 廃棄された。最初に先生がおっしゃいましたように、私の年でございますから、食品を 大事に、ちょっと古くなったらご飯にお湯を食べたという口でございますから、捨てら れたお菓子のもったいなさということを考えるわけです。そのときに例えば、これは安 全で食べられるもので、食品添加物の香料はきちんと申請してとか、またそれは許可す るとか、そういう流れの中がちゃんと消費者につながっていましたら、それは捨てられ なかったのではないかと思います。先日、このアクロスで食品業界の方たちの勉強会に 出させていただいたときに、農薬の使われた中国野菜について、現場に行って非常に厳 しく監督して、そういう食品は輸入されていないというふうな報告をこもごもにされて おられました。しかし、その情報は、さっき安井先生がおっしゃいましたように、ニュ ースでは出てこないんです。安全な方に努力しているという部分は出てこない。消費者 がその声を聞く場は非常にないということを痛感します。ぜひこれから、私ども消費者 も勉強して、そういうおかしいと思ったら確認をして、業者の方にもお尋ねするような 姿勢が必要ではないかと思っております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  安井先生、何かコメントございますか。 ○安井先生  私はもともと環境屋でございますので、環境における自主管理の経験をお話しさせて いただきます。行政手法として、自主管理というのが実は一番コストがかからないんで す。したがって、本当に厳しくやれば幾らでもできるんですが、行政コストの問題を考 え、日本みたいにお金がない国は、これ以上税金を上げられないとなると、本当に自主 管理をうまくやるしかないんです。環境も大分よくなってきておりまして、自主管理で いけるところまできたんですが、例えば、今、環境報告書というのを出してくださる企 業は大分ふえたんですが、それでもまだ650社ぐらいなんです。ですから、いよいよ報 告義務ぐらいはやはりやろうかというレベルに今、環境だときちゃっているんです。で すから、環境報告書をそろそろ義務化しようか。これは随分反対があって、できるかど うかわからないんですけど、とにかくどんな格好でもいいから社会的責任を果たす意味 で報告書を出してくれというようなことは、そのうち食品関係にも起きるかなと思って います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  もう1点、事前にご質問をいただいておりますので、こちらの方の回答を先に進めさ せていただきたいと思います。質問のテーマとして「有機及び特別栽培について」とい うことなんですが、食品の安全について、今後どういうふうに取り組んでいくんでしょ うかということでご意見いただいております。姫田消費者情報官の方からお願いいたし ます。 ○姫田消費者情報官  有機と特別栽培についてですが、まず有機については、ご存じのように、有機JAS ということで、原則として無農薬、無化学肥料ということで、その他いろいろとありま すけども、認定しております。特別栽培というのは新しい考え方ですが、従来、無農薬 とか減農薬だけで、減化学肥料、無化学肥料をやっていないものを無農薬と書いてあっ たと。それで、むしろ有機よりもいいものじゃないかというような印象があったとか、 その逆もあって、無化学肥料で、減農薬していないけれども、無化学肥料ということで 有機よりよさそうに見えたというようなことがございました。それで、今回、これは地 域によって農薬の量とかが大分変わらざるを得ないものですから、地域の標準よりも半 分よりも少ない農薬あるいは化学肥料を投与したものについて、両方をかけて特別栽培 というようなことでの表示をするということにしたところでございます。  それを全体の食の安全についての今後の取り組みということですが、ただこれはむし ろ、食の安全ということについては、先ほどもご説明いたしましたように、厚生労働省 の方で、ADIに基づいて残留農薬の残留基準を決めていただく。そして、私どもの方 で施用基準を決めて、残留基準を超えないような農産物をつくっていくということで、 最終的に、その段階で食の安全というのは図られていると考えていただきたいと思いま す。ただ、消費者の方々の、それだけでは私は嫌だ、どうしても無農薬、無化学肥料で ないと嫌なんだということについて、今後のそれぞれの個人の消費者の志向に、それを 選べないということでは困るということで、有機というようなもの、あるいは特別栽培 というものをつくって、推進しているところでございます。もちろん、そういうことで の支援とかということはやっておりますが、すべてを有機とか、すべてを特別栽培にす るということではないとご了解いただきたい。基本的には、現在の農薬の施用体系で安 全ということをやっていく。もちろん、それぞれの農薬について、今、ポジティブリス ト化で、さらに安全性を高めるというようなこと、登録についても、きちっと厳格にや っているということ、そして農薬の施用についても、農家に今回、罰則規定もつくって おりますので、そういうことでの指導を強めてまいりたいと考えております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  質問をお寄せいただいた方で、ただいまの回答に関しまして追加のご意見等あれば、 ご発言いただきたいと思います。 ○参加者  有機の生産をしている者なんですけど、特別栽培に対する基準がかなりあいまいなも ので、有機に対してはかなりの締めつけがあるのに、特別栽培の方は、NHKでこの前 あったんですけど、21回農薬で消毒をして、特別栽培野菜というふうな形で出してある んですが、21回もして特別栽培、減農薬と言って、それで通るというところがちょっと わからないのと、農薬にしても、化学物質にしても、大体「まぜるな、危険」と書いて あるじゃないですか。農薬は微量に残っているかもしれないんですけど、やっぱりまぜ たときに体にどういう害があるのかというのも出していただきたいと思って。 ○コーディネーター  ありがとうございました。 ○姫田消費者情報官  まず1つ、農薬をまぜるな、危険というのは、農薬が液体中で化学反応する可能性が あるのでまぜるな、危険ということで、農薬の残留によって危険ということでまぜるな と言っているわけじゃないということをご理解いただきたいと思います。化学反応を起 こして爆発するかもしれないから危険ですと言っているんで、一緒で両方で摂取したら 危ないからまぜるな、危険と言っていることじゃないということをご理解いただきたい と思います。これは食の安全じゃなくて、身の安全のためということでご理解いただき たい。  それから、農薬については、まず1つは、いろんなものの残留が少しずつ積み重なっ てということは、先ほどもご説明あったように、10倍の10倍ということで、100 倍のA DI、1日当たりの摂取量を決めるときに安全性を見ているということがございます。  それから、どういうものを見られたか私はわからないんですけれども、特別栽培農産 物というのは、その地域の農薬の施用の一般的な量、これは施用基準よりも下回ると思 います。我々が言っている施用基準というのは上限でございますので、それよりも地域 の実際の施用量というのは下回ると思います。それの半分よりも下げているもの。そし て、いわゆる化学肥料も同じように、地域の一般的な量よりも下げているものです。こ れを全国で決めてしまいますと、例えば、九州なんかは、どうしても害虫の発生量が多 いとかそういう地域でございますので、かなり不利になりまして、それを一律に決めて しまうというのはなかなか難しいかと思っておりますので、そこはご理解いただきたい と思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  特に質問された方、ただいまのコメントでよろしいでしょうか。 ○安井先生  ちょっといいですか。多分、気にされているのは、今の、農薬を混合した場合に人の 害がどうかという話なんですが、例えば、10、毒なものがあって、別のもので10、毒な ものを食べたときに、最悪10×10になるかということをご心配であるとしたらば、今の ところ、残念ながら、そういう例は余りないんです。なぜかといいますと、それを今、 毒物学者が一生懸命探していて、もしあるとノーベル賞物なんです。それで、10と10で 足して20ぐらいのものはあるかもしれないんですけれど、多くの場合には、10と10だと 10である場合が多いです。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  何か追加のコメント等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。 ○参加者  さっきの、その地域で基準が決められると言われた、その地域というのは、どのあた りまでを言いますか。 ○コーディネーター  お願いいたします。 ○姫田消費者情報官  原則的には県で大体決めております。官公レベルは、地方公共団体がつくったものと いうことですので、都道府県とか、市町村とかということになると思います。 ○参加者  市町村まで。 ○姫田消費者情報官  はい。市町村も可能です。 ○コーディネーター  ほかに何かご意見等ございますでしょうか。 ○参加者  生協の連合会の九州地連の大木と申します。消費者の立場から質問をさせてくださ い。今までのお話とちょっと違ったところの部分なんですけど、今回の法律との関係で 言うと、地方公共団体の責務がきちんと規定されていますよね。それで、安全基本法の 7条では、地方公共団体の責務について、食品安全の施策の策定とその実施、それと食 衛法の改正のところでは、住民の意見を求めて、あるいは踏まえて食品の監視指導計画 を策定し、公表するというのが地方公共団体の責務だということになっていますけど も、九州8県の状況を見てみますと、私たちの消費者の立場からいろんな形で働きかけ をこの間、進めてきたんですが、例えば、1つの指標で言うと、県の基本指針で言う と、今、でき上がっているところが3県ですよね。具体的に言うと、長崎と大分と熊本 です。ほかの5県は、私が認識している限りは、3県が年度内につくられる予定、あと の2県がまだよく見えないという状況です。固有名詞は避けます。それで、国の行政の 立場から現状をどんなふうに見られているのかということと、何か県に対する指導みた いな関係というのはないのかどうか、その辺をお聞きしたいと思っています。消費者と しても、先ほど来出ているように、リスクコミュニケーションという点では積極的に参 加したいと思っていますし、既にある3県では、生協とか消費者から委員もいっぱい参 加しています。そういう中で積極的に意見も反映し、生産者なり、行政の方とも意見交 換をしているところですので、そういう場を地方公共団体できちんとつくっていくとい うのは大変大事なことだと思うんです。そういう点でいかがでしょうか。 ○コーディネーター  外口参事官、お願いいたします。 ○外口参事官  各県で年度内にそういう体制をつくって、監視指導計画をしっかりつくってほしいと 思っています。それで、やり方がわからないということはないと思うんですけども、例 えば、我々でお手伝いできることがあれば、それはもちろんお手伝いしますし、皆様 方、結構それぞれ隣の地域とかを見ながら準備を進めているんじゃかと思います。周り を見てまねしようというところもあるかもしれませんし、周りを見て、もっといいもの をつくるんだというところもあるかもしれませんが、ただ、いずれにせよ、もし外から 見て動きが鈍いなというものがあれば、それはそれなりに問題ですので、またいろんな ルートで教えていただければ、いろんなルートでお返ししたいと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  かなり時間も超過しておりますので、何でも結構ですが、特に意見、どうしても発言 したいという方がいらっしゃれば、ご意見いただきたいと思います。 ○参加者  私、意見で、当初お出ししたものがこの中に入っていないものなんですが、先ほどか らのご意見にございましたように、大きく分けて、私の言いたいことは、自営業者だと か弱小企業というのは今、日本では切り捨てられつつある。大きなものなら大丈夫だろ うということで雪印の事件が起きたわけですけれども、そのことはさておき、それは当 然、対処はなされていくと思うんですが、昨年起きた無登録農薬の問題にいたしまして も、法律の体系、規制の関係も、余りにも微細に陥り過ぎた、守られない法律がどんど んできてきたというところにあるんじゃないかと思っております。というのが、守れな いというか、困っているところを先行して、大きなところが抜けてきていた。姫田さん は首をかしげておられますけれども、無登録農薬を生産、それから輸入する側にだけ責 任があって、実際に使う側には責任なかった。海外に行って、勝手に「私が使います」 ということでしこたま買ってきた人たちが売っていたとか、そういう問題が1つ。それ から、農家というのは末端の非常に零細企業でございますが、そちらへの指導というの が非常に手落ちであった。これが食品業界においても、販売店もそうだと思うんです。 そこらの八百屋さんが太刀打ちできない、それからお惣菜屋さんも太刀打ちできないん じゃないかと思うんですけど、そこらがずっと見落とされて、見過ごされてくるんじゃ ないか。そういう意味では、マイナーな部分の人たちがついていけない法律がどんどん できていて、そのついていけないマイナーな人たちが、ついていけなくてもいいんだよ みたいなところが非常にある。そこは取り締まらない傾向が非常に強い。  そういう意味で、私は法律というのは、本来、みんなが守られるだろう、守れる法律 だということで、ある程度、罰則をつくるときには、守れるんだな、そういう社会情勢 にきたときに初めて罰則の法律はできるべきであると、そういうふうに理解しているん ですが、守れないような法律ができていて、あるとき、だれかが気がついたとき、「あ らっ、守られていないじゃないか」と大騒ぎになって、過剰な法律がまたできる、こう いう傾向にあるんじゃないかと思うんです。  そういうこともありまして、ことに食品業界というものは非常にマイナーな部分であ る。そういう人たちを抱え込める法律体系であってほしいし、そのためには、それをど うやって施行していくかということで、そういうマイナーな人たちへの教育ですね、教 育体系にもお金を使ってほしいし、そういうシステムをつくっていただきたい。ただ、 マイナーな人たちがそれを守るために補助金制度をつくるということに大きな視点を、 そういうことへの目配りをした行政システムをつくっていただきたい、こういうことで ございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  姫田消費者情報官さん、お願いいたします。 ○姫田消費者情報官  冒頭にも申し上げましたように、農水省は変わったんだ、業界寄りじゃないんだ、消 費者に軸足を置いた行政をやるんだということで、今、変わりつつあると考えていただ きたいと思います。  それで、いわゆる今回の農薬については、おっしゃるように、農薬の取り締まり法に ついては、かなり欠陥があった。というのは、販売店だけに罰則があって、使う人に罰 則がなかったというようなこと、あるいは輸入にも罰則がなかったということで、これ については罰則をきちっとやるということで農薬取締法が実行できるように担保したと いうことです。  零細な方々はどうしようかという話はございます。それについてはまず1つは、農業 者について言えば、もっとしっかり農協やってくれよということを我々は思っておりま す。農協さんにしっかりそこは守っていただかないといけないし、無登録農薬だって農 協が引っかかっていたわけなので、そこは農協が心を入れかえてきちっとやっていただ く。これは我々は農協に対して厳しく指導していきたいと思っておりますし、県の方か らもお願いしたいと思いますし、そこは農協、やっていただくということが必要だろう と思います。それだけじゃなくて、普及員の方もいらっしゃるので、そういうことにご 相談いただくということもぜひお願いしたいと思っております。  それから、もう1つ、零細な加工業者の方ということで、ただ、その方々を守るため に食の安全をないがしろにするというわけにはまいりません。現状としては、私ども、 きょう来ていますが、かなり消費技術センターの方にご相談というのは、表示の相談 も、実は、消費者の方よりも、零細な加工業者が、どう表示したらいいかとか、どうい うふうにやったらいいかというようなご相談が非常に多うございます。それはむしろ、 私が答えるよりも、所長に答えてもらった方がいいかと思いますので、所長、お願いい たします。 ○コーディネーター  お願いいたします。 ○坂本所長  消費技術センターでございます。まさしく今、お述べになったような部分を主として 担当するというのが私どもの任務だと思っております。したがって、おっしゃる部分、 よくわかりまして、やはり中央で全体をとらえる目と地域でマイナーな部分を見る目と は多少違う部分も当然あるわけでございまして、我々の目につきまして、どうしても無 理があるというようものについては、中央の方へご意見として申し上げる、そういった ものを入れていただいて制度を設計していただくというようなことには実はいたしてお ります。  しかし、全体に目配りしてというのは、制度ですからなかなかいかないので、おっし ゃったような中小零細の、私どもは、農家というよりも製造企業の方でございますけど も、そちらからのご相談等に対しては、非常に丁寧にお答えをしておるつもりでござい ますし、講習会というようなものも設けまして、できるだけお手伝いをしようというふ うに思っております。ただ、大きな世の中の流れが、いわゆる企業の自助努力というよ うなことを言われている世の中でございますので、国なり、私ども独立行政法人です が、ここが個別の企業に余り深くかかわるのはけしからんというおしかりも受ける部分 もございますので、その辺の苦しさというのは、実態としては、お手伝いをしなきゃ、 人材一つとっても、中小零細、従業員が2〜3人というようなところでハサップに取り 組むというのが可能かどうかという部分については、非常に問題があると思っておりま すが、何せ大きな流れの中でどうしていくかということですから、能率が悪くても、講 習会等でできるだけお手伝いをするというようなことに心がけておりますので、私ど も、消費者相談のことを先ほど申し上げましたが、企業相談窓口というものも設けてお りまして、企業の方から、あるいは農家を含めて、ご相談があれば、可能な限りお答え をする、お手伝いをするということにしておりますので、またご利用いただければと思 います。  抽象的でございますけども、その程度にさせていただきます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。 ○参加者  ありがとうございます。ただ、私の最初のご質問が要領を得なかった部分もあろうか と思って反省はしているんですが、もう1点は、販売業です。やはり販売業者の責任と いうのも結構あると思うんです。私は食品安全委員会の方々にお願いしたいんですが、 この提言をお出しになるときに、やはりそういう中小企業、また自営業者についても、 教育と、それから補助金制度、そういうものについてもぜひよろしくというような形、 また、安井先生が首をかしげておられますけれども、食品安全委員会の仕事じゃないと おっしゃるのなら、行政の仕組みとして、もっとそういう形をとっていただかないと、 今の日本の社会が余りにも大きな官、大企業だけになって、地元がずっと寂れていく、 こういう現状を見ていますと、やはり小さな企業も、それからセンターの所長さんのご 努力というのはわかるんですけど、行政全体のシステムとして、そちらにも目の行くよ うなシステムをつくっていただかないと、一センターの所長さんの努力だけでは何とも しようがないというふうに私はつくづく最近考えております。  それから、もう1つは、リスクコミュニケーションの点ですけれども、やはり風評被 害、これに対しては、「何か言っている。そんなのほっとけ、ほっとけ」じゃなくて、 やはり毅然とした態度で対処する。場合によっては告訴も辞さないぐらいの態度でやっ ていただかないと、いろんな問題がひとり歩きしてしまって、過剰な法律をつくらざる を得なくて、その法律は守れないというような法律になってしまうんじゃないかという ことを非常に痛感しております。  出過ぎたまねでございましたけれども、失礼いたしました。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  かなり時間も超過していますので、簡単にコメントをお願いします。 ○姫田消費者情報官  補助金については、ご存じのように、今、農家に対する補助金は非常に厳しい批判に さらされておりまして、それを削減しようと。我々農水省としては、もともと企業に対 しては、零細企業も含めて、補助金制度は持っておりません。ただ、いわゆる資金的な ものに対して、経産省に願いしてやっていただくというようなことはやっております が、基本的には資金で対応していただくということが原則だと考えております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  議論も尽きないところですが、予定のある方等もございますので、この辺で意見交換 会の方を終了させていただきたいと思います。  司会の方に進行をお返しいたします。 ○司会  本日はご参集いただきまして、まことにありがとうございました。  以上をもちまして食の安全に関する意見交換会を終了したいと思います。  最初にお配りしておりましたアンケートですが、今後の意見交換会の参考とするため に、ぜひ提出していただきたいと思います。回収箱に入れていただくか、事務局にお渡 しいただきますよう、よろしくお願いします。  どうもありがとうございました。