03/11/18 食の安全に関する意見交換会(議事録) 食の安全に関する意見交換会(議事録)                     厚生労働省医薬食品局食品安全部                     平成15年11月18日(火)                      午後1時から5時                     於:仙台第3合同庁舎大会議室 別棟2F 1.開会 2.食品の安全確保に向けた取組み   (内閣府食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省) 3.食品添加物を考える(実践女子大学教授 西島 基弘) 4.わが国における食品の安全リスクコミュニケーションの課題とこれから   (徳島大学総合科学部教授 関澤 純) 5.意見交換・質疑応答   【パネリスト】     内閣府食品安全委員会委員           小泉 直子     厚生労働省大臣官房参事官           外口  崇     厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課係長 加藤 央子     農林水産省消費・安全局消費者情報官      姫田  尚     実践女子大学教授               西島 基弘     徳島大学総合科学部教授            関澤  純     仙台市消費者協会会長             小林 達子     日本食品添加物協会常務理事          竹本  平     福島県果樹経営者研究会長           佐藤 秀雄 6.閉会 (議事録)  1.開会 ○司会  食の安全に関する意見交換会を開催したいと思います。  私は、本日司会を務めさせていただきます、農林水産省消費技術センター、仙台セン ターの伊藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。  初めに、配付資料の確認をさせていただきたいと思います。  議事次第にも配付資料の一覧を載せてございますが、5種類の資料を配付しておりま す。  資料1といたしまして「新食品衛生法の概要」という横長の資料がございます。資料 2といたしまして「国民に信頼される食品安全行政に向けて」、資料3といたしまして 「消費・安全局設置から3カ月間のとりくみのポイント」、資料4といたしまして「食 品添加物を考える」、資料5といたしまして「わが国における食品の安全 リスクコミ ュニケーションの課題とこれから」。それから「意見交換会に参加いただいた皆様へ」 というアンケート用紙が1枚入っているかと思います。それと「リスクコミュニケーシ ョンアンケート集計結果」ということで札幌市の結果が入っているかと思います。  不足等ございましたら、事務局もしくは受け付けの方にお申し出ください。  続きまして、簡単に本日の議事進行を説明させていただきます。  記事次第に沿いまして、まず主催者よりごあいさつを申し上げた後、2の「食品の安 全確保に向けた取り組み」に関し、内閣府食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省か ら説明させていただきます。所要時間は1時間程度を予定いたしております。  ここで10分間の休憩をいただき、2時10分を目途に3と4の講演に移らせていた だきます。  初めに「食品添加物を考える」というタイトルで実践女子大学生活科学部食品衛生学 西島教授よりご講演いただき、続きまして「わが国における食品の安全 リスクコミュ ニケーションの課題とこれから」につきまして、徳島大学総合科学部関澤教授よりご講 演いただきます。  またここで10分間の休憩をいただき、3時20分を目途に意見交換に移らせていた だきます。  なお、会場の都合上、午後5時ごろには終了させていただきたいと思いますので、あ らかじめご了承いただきたく存じます。  それでは、主催者を代表いたしまして、東北農政局西村一徳次長よりごあいさつをお 願いいたします。 ○西村東北農政局次長  ご紹介をいただきました、農林水産省東北農政局次長の西村でございます。  この食の安全に関する意見交換会の開催に当たりまして、主催者といたしまして一言 ごあいさつを申し上げたいと思います。  本日は、大変お忙しい中を多くの皆様方にこの会にご出席をいただきまして、大変あ りがとうございました。心から感謝申し上げる次第でございます。  また、皆様方には日ごろから食品安全行政の推進につきまして大変なご理解、ご協力 を賜っておりますことを厚く御礼申し上げる次第でございます。  さて、ご案内のとおり、一昨年9月にBSE問題が発生いたしました。その後も食肉 の偽装事件でありますとか、あるいは食品の偽装表示など、食の安全と安心を揺るがす ような事件が相次いで起こったわけでございます。最近におきましても残留農薬、ある いは無登録農薬の使用の問題、さらには不適正な食品表示など新たな問題が発生してお ります。国民の食に対する信頼が大きく損なわれますとともに、食の安全・安心に関す る関心が大変高まってきていると思っております。  こういう状況に対応いたしまして、国におきましては食品安全基本法の制定など法制 度を整備いたしますとともに組織体制につきましても整備をいたしまして、新たな食品 安全行政に取り組んでいるところでございます。  具体には、内閣府の食品安全委員会が設置されまして、科学的なリスク評価などを行 うこととなっております。また、厚生労働省と農林水産省が連携をいたしまして、リス ク管理、あるいはリスクコミュニケーションを具体的に実施するということになってお ります。  農林水産省といたしましては、ことしの6月に消費者の視点に立って安全・安心な食 糧を安定的に供給する、そのための指針といたしまして「食の安全・安心のための政策 大綱」というものを作成いたしました。また、組織体制につきましても、ことしの1月 に食品の安全管理部門を生産振興部門と切り離しまして強化するような大規模な組織再 編が行われたところでございます。  本省には、新たに消費・安全局という新しい局が設置されております。また、当東北 農政局も含めまして各農政局におきましては、新たに消費・安全部というものを設置し ております。また同時に、従来の食糧事務所が農政局に合流をいたしまして、名称も農 政事務所というふうに変わりまして、従来の食糧業務に加えまして、新たに消費・安全 業務についても取り組むこととなっております。  今後は、こういった新しい体制のもとにおきまして、食品安全委員会、あるいは厚生 労働省と密接に連携をとりながら、例えば消費者等の関係者の皆様方とのコミュニケー ションの促進でありますとか、食に対する理解を促進するための食育の推進、あるいは 地産地消といっておりますが、地元でとれたものを地元でできるだけ消費する、こうい った取り組みによりまして消費者と生産者の顔が見える、あるいは距離が近づくような 関係の推進をしたいと思っております。さらには、食品表示の監視の強化でありますと か、あるいはトレーサビリティシステムの導入に対する支援、こういったことにつきま して積極的に取り組みながら、国民、あるいは消費者の皆様が安心と信頼を実感できる ような各般の施策を推進してまいりたいと考えております。  きょうは、先ほど司会の方からお話がございましたように、この後、新しい食品安全 行政の取り組み状況につきまして、内閣府食品安全委員会の小泉先生、厚生労働省の外 口参事官、農林水産省の姫田消費者情報官にご説明をいただくこととしております。  また、その後、実践女子大学の西島先生に食品添加物につきまして、また徳島大学の 関澤先生にはリスクコミュニケーションにつきまして、それぞれご講演をいただく予定 といたしております。  その後に、消費者、生産者、あるいは食品業界など会場の方々にもご参加をいただき ましてパネルディスカッション方式でこの意見交換会を進めていきたいというふうに考 えております。  非常に限られた時間ではございますけれども、この意見交換会を通じまして、食の安 全・安心に関する理解が一層深まりますように心から祈念申し上げまして、簡単でござ いますが開会のあいさつとさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。 2.食品の安全確保に向けた取り組み ○司会  続きまして、食品安全委員会小泉委員より「国民に信頼される食品安全行政に向けて 」というタイトルでお話しいただきたいと思います。  小泉委員は、神戸大学大学院医学研究科博士課程を修了され、長年、公衆衛生学に関 する研究に携わっておられます。  最近まで、兵庫医科大学公衆衛生学講座の教授としてご教鞭をとられていらっしゃい ましたが、本年7月に内閣府食品安全委員会の常勤委員に就任されました。  では、小泉先生、よろしくお願いいたします。 ○小泉食品安全委員  小泉でございます。ご紹介、どうもありがとうございました。  今、ご紹介いただきましたように、私は6月末まで兵庫医科大学で公衆衛生学。公衆 衛生学というのは、医学の分野ではいわゆる予防医学でして、健康障害が起こらないよ うにするにはどうすればいいか、いろいろな非常に広い分野がございます。産業保健あ り、食品保健あり、医療制度といったようなことを教えておりました。このたび、7月 1日から食品安全委員会として、地域レベルから国レベルで食品の安全ということに仕 事につくようになりました。今後ともよろしくお願い申し上げます。  次長様からお話がありまして、食に関して非常な意識の高まりがございます。そんな 中で資料についてはここにございますが、私はこの講演の中で食を取り巻く背景と消費 者の意識についてあらかたお話しした後に、食品安全委員会の組織と活動について述べ させていただこうと思います。  お配りしております資料につきましては、ここにいろいろな成り立ちですね、今まで の経緯、それから役割・組織、それから今どんなことをやっているか、活動状況です ね、あるいはリスクコミュニケーションの開催状況等についてパンフレットをお配りし ておりますので、それをごらんいただければと存じます。  それから、もう一つ、このかわいらしいパンフレットもつけておりますが、これはつ い最近できましたもので、いろいろ概略が載せられております。 〔スライド〕  食品の問題に入る前に、これは我が国における平均寿命、予防医学でしたので平均寿 命の推移というのをお示しいたしました。これは平成13年、我が国の平均寿命は、女 性が85歳、男性が78歳と世界一の長寿国になっております。昭和22年、戦後すぐ の統計学では男性50歳、女性54歳という、いわゆる人生50年の時代でございまし た。このように、世界一の長寿国になったその背景、その要因と申しますと、私どもは 自負するのですが、公衆衛生学の発展だと思っております。その大きな要因の一つは、 食生活の改善がございます。それから、その次が水道の普及であります。日本は非常に 水に恵まれた国でして、水道普及率が99%ぐらいになっておりまして、どこへ行って も水道の蛇口をひねれば水が出るということで、感染症がほとんどなくなったというこ と。それからもう一つ寿命を長くした理由は、いわゆる予防医学ですね。いわゆるワク チンとか感染症を起こさないようにする予防接種等が非常に普及したということでござ います。 〔スライド〕  今、2003年の世界人口は63億人おります。第2次大戦のころは25億人ぐらい でした。もう倍以上にふえているわけですね。そういった中で、さらに2050年には 89億人になるだろうと。その人口増加の問題点は、発展途上国が、恐らく2050年 には85%を占めるだろうということでございます。 〔スライド〕  しかし、こういった世界人口の爆発の中で栄養不足人口、35%以上がちょっと見え にくいですが、アフリカの中央部ですね、35%以上が栄養不足人口であります。その 他、20から30%、栄養不足人口を持っている国が、インドとかいろいろなところに まだまだございます。そんな中で日本の問題として、日本はどんどんと自給率がカロリ ーベースで40%になってまいりました。 〔スライド〕  これは農水省のデータだと思うのですが、平成13年度がブルーでして、昭和40年 度がグリーンが示しておりますが、いわゆるブルーの方が最近ですが、どんどんと食品 の自給率が減っていったと。特に畜産のところ、いかにも66%でいまだに自給率がい いように見えておりますが、実はほとんどが外国からの輸入飼料による自給率でして、 それをのけて自国産の穀物で飼育している畜産というのは17%と聞いております。そ んな中でどんどんと自給率が低下していったと。  その理由にはいろいろと我が国の農用地、一人当たりの用地面積が少ないとかいろい ろな問題がございます。 〔スライド〕  各国の自給率を見ますと、フランス、アメリカ、ドイツなどはほとんど100%です が、英国、スイス、韓国、隣の韓国でも50%ぐらい、我が国が40%と急激に減って おります。 〔スライド〕  こういった状況をちょっと見ておいていただいて、今、どういうふうになってきたか というと、食品に含まれる危害の多様化、複雑化ということで、利便性を追求すること によって非常に危害が増大してきました。あるいは、新規農薬の開発の問題とか、添加 物、バイオ技術、こういったものをすることによって、安価で他国の食品が入ってくる ようになってくるわけです。食のグローバル化による輸入食品の増加。それから、新た な危害要因は、さらに異常プリオンの発生による狂牛病の発生とか、あるいは大腸菌の 変異によるO−157中毒の発生というようなことが問題となってまいりました。  さらに、この3番目の分析技術の向上というのは、ちょっと毛色が違うのですが、私 が大学を出たころは100万円を1円玉に積んだときのその1円を探し出す、これは分 析能力で、いわゆるPPMです。100分の1のPPMオーダーで私が大学に入ったと きに分析しておりました。ところが、今はさらにその100万分の1、すなわち1兆円 の1円玉を積んだ中の1円を探すピコグラムオーダー、これが検出できるような検出感 度の上昇が起こってまいりました。ということは、逆にいえば、分析技術の上昇によっ て、探せばいろいろな有害物質はすぐに見つかるということが言われます。 〔スライド〕  消費者の意識感情を見ておりますと、この読売新聞の統計に見ますと、「最近食品の 安全性に不安を感じているか」と。こういう質問の仕方をすると「感じていません」と 言うのには勇気が要りますが、「大いに感じている」と「多少感じている」を加えます と8割は不安を感じているというように感じております。 〔スライド〕  では何かといいますと、ちょっと今と違うかもしれません。これは平成12年のデー タでございますが、トップが食品添加物、それから遺伝子組み換え食品、内分泌かく乱 化学物質、残留農薬、5番目に有害微生物による食中毒ということで、ここで食中毒が 入ってまいります。あとは輸入食品、残留医薬品、クローン牛というふうに出てまいり ますが、私ども科学者から見ますと、1から4とか、あるいは6、7、8、こういった ものについて健康障害が起こったという事例は、医学的に全くありませんが、今一番食 品の問題で起こっているのがこの微生物による、いわゆる食中毒で、死者が必ず毎年出 ております。しかし、それに対しては余り不安だと感じている人は少ないということで ございます。 〔スライド〕  内閣府でも食品安全モニターという方が470名おられまして、その方にアンケート 調査をとりました。これはことしの9月でございます。この方々はかなり食品に関して ある程度の意識の高い方でございます。何をしたかといいますと、安全確保の問題点、 対策とか危害要因とかコミュニケーションのあり方といったものについて調査いたしま した。 〔スライド〕  今申し上げましたように、どういった方々がおられるかというと、食品関係業務に以 前におられた方が164名、36%、研究職、医療、教育、その他と。その他がいわゆ る消費者ですが、やはり食品に非常に関心の深い方ということで、モニターを募集しま したら6倍近い方々が応募してくださいまして、今470名の方にモニターになってい ただいております。 〔スライド〕  この方々に食品の安全性確保について、「このたび国が新たな取り組みをしたことに 対して評価いたしますか」ということで、評価するという方が5割弱、ある程度評価す るということで足しますと、なぜか96%の方々が非常に評価を、一応してくださって いるということでございます。 〔スライド〕  しかし、年齢階級別に見てまいりますと、50歳以上と49歳以下で見ますと、やは り50歳以上の方が非常に評価しているという方が多くて、こちらの49歳以下の方、 ある程度評価しているという方の割合が多いということになっております。  では、どういうことをこの方々、年齢別に希望されているのかと見てまいりますと、 50歳以上の方は科学的にきっちりと評価してほしいという希望が多いのに比べまし て、49歳以下の方々は情報開示をしっかりやっていただきたいという希望が非常に多 うございました。 〔スライド〕  では、こういったモニターの方々が、いわゆる発がん性ですね。一つの目安としまし て発がん性について、そういった要因の知識というのでしょうか、それをどのように考 えておられるかといいますと、やはりトップはたばこでございます。これは我々科学者 も同じなんですね。たばこがトップでございます。その次が放射線、大気汚染、公害、 食品添加物、農薬、紫外線と。複数回答で求めていますが、ここにいわゆる放射線とか いろいろなものが出てまいりまして、これががんといいますと、科学者はいわゆる食品 を挙げております。食品って何かといいますと、そういった中に入っている添加物とい うのではなくて、例えば日本は特別に胃がんが多い国でございますが、その日本人がハ ワイに移りますと大腸がんがふえるということで、食生活がかなりがんの発生に影響し ているだろうと言われてますが、そういったことではなくて、たばこというのは意識が 非常に高い。  ただ、公害とか大気汚染とか添加物とか、こういったものでがんになるということ は、ほとんどあり得ないと思います。農薬ですね。  それから、放射線に関しましては、被爆は、いわゆる医者に行って医療被爆、これが 最も多いわけですが、医療被爆によってがんになったという方もおられないので、それ はやはり規制がされておりまして、それ以上照射しないということですが、昔は放射線 科の教授たち、スタッフはかなり発がんをしたことがありますが、今はちゃんとプロテ クトしておりますので、そういうことがあり得ない状況になっております。 〔スライド〕  そういった中で改善が必要と思われる食品生産過程は何か、上位4段階を挙げてみま すと、生産過程、いわゆる生産の第1段階のところを改善してほしい、すべきだという のが8割ですね。それから製造加工過程というのが59%、6割ぐらい。それから、自 然環境、何か水、土壌、大気などの改善が必要というのが3割。最後に流通が11%と いうような意識がございます。 〔スライド〕  先ほど申しましたように、食中毒が、いわゆる健康障害では今一番多うございまし て、2002年の食中毒を見ますと、事件数で1,500、患者数2万4,000とい うふうに健康障害が明らかに出ております。毎年、食中毒というのは1,000件前 後、患者数で3万人前後というのが普通でございます。  しかし、年を追って見てまいりますと、最近多いのがこのサルモネラとか腸管出血性 大腸菌。これは事件数は少ないですね。それから、腸炎ビブリオ。むしろカンピロバク ターとかいったようなもの。それから、小型ウイルス性の食中毒ですね。こういったも のがふえてまいっております。  しかし、昔は魚介類から感染する腸炎ビブリオが最も多かったのですが、少し毛色が 変わってまいりまして、サルモネラとか大腸菌による死者数の増加とか、あるいはウイ ルスによるものというのがふえてきております。  ですから、こういったカンピロバクターとかサルモネラという動物を介したものが非 常に問題だということだと思います。死者も16人と2002年は多かったように思い ます。 〔スライド〕  これがいわゆる狂牛病で、これは農林水産省の話でございますが、今は全頭検査をし ております。なぜかこのプリオンというタンパクは中枢神経、脳からずっと脊髄まで、 これは中枢神経と申しますが、ここを走っている神経に親和性が強くて、神経障害を起 こして起立不能、歩けなくなるという状況になります。  今、イギリスと日本を比較しますと、イギリスでは18万頭、そこからいわゆる変異 型のクロイツフェルトヤコブ病になった方が130人というようなことで、非常に人間 にも感染がふえているということでございますが、日本では今回9頭目ですか、出てお りますが、数の上では圧倒的に少なく、つい最近英国保健省が発表したのによります と、2003年の感染頭数、英国492頭ですね、ことしだけでですが。フランス 121頭、ドイツ44頭、イタリア28頭というふうに、日本は2頭ということから考 えますと非常に多いということでございます。 〔スライド〕  一番やっかいなのは、この有害微生物による食品の危害問題でして、そのものの病原 性がその種類によって非常に異なると。例えば、非常に少数の菌が入っていても食中毒 を起こすものもあれば、1億個以上ないと食中毒を起こさない菌もあります。それか ら、非常に環境抵抗性のあるものとか、そういったもの。それから、食品中で増殖した り、死滅したりとか数の変化が非常に起こりやすい。それから、宿主ですね。こういっ た発症に対して個人差が非常に多いです。同じような量をとっても、一緒に食べても発 病しない人もおりますということで感受性が違ってくると。お年寄りなんかはなりやす い。いわゆる抵抗性の弱い人に発症しやすいといったような有害微生物には、ちょっと 複雑な要因が絡んでおります。 〔スライド〕  今言っておりますようにいろいろなリスク、微生物も含めていろいろなリスクという のは、リスクが少なくなれば安全性が高くなるのは当然ですが、今言いましたように分 析技術の発展とかいろいろなもので、いわゆるリスクはゼロではないということです が、ここに「とるにならないリスク」とか、ある程度人間というのはかなり抵抗性を持 っておりますから、受け入れられるリスク、あるいは防御の方策をとればリスクは減ら せるといったようなものですが、許容できないリスクについては、ある程度これから問 題だと思っております。 〔スライド〕  食品安全委員会ができた発生の経緯として、BSE感染をした発生の経緯ですね。 13年9月に初めて感染牛を発見し、10月にはすぐに全頭検査が始まりました。それ から、13年11月には、そのBSE問題に関する調査検討委員会が発足しまして、そ の翌年の4月に報告が提出されております。  ここにつけ加えたのは、15年10月に8頭目の感染、これは23カ月齢。その後、 11月に21カ月齢の感染牛が出てきたということで、消費者の方々は非常に不安感を 起こしております。 〔スライド〕  従来、その検討報告書によりますと行政的対応の問題点が書かれておりまして、まず 危機意識が欠如していて、危機管理体制が欠落していたとか、生産者優先で消費者保護 軽視であったと。それから、政策決定過程の不透明な行政機構があったと。それから、 農水省と厚生労働省の連携が不足していたとか、専門家の意見を適切に反映しない行政 であったとか、情報公開が非常に不徹底であったとか、そういったことが問題点として 書かれております。 〔スライド〕  今後は、食品安全性と行政のあり方についてということで、消費者の健康保護を最優 先にしようと。そこに安全行政、リスク分析手法を導入しましょうということで、食品 の安全に関するリスク評価を行い、食品安全委員会を設置するということになりまし た。消費者保護を基本とした包括的な食品安全を確保するための法律として、食品安全 基本法が制定されました。 〔スライド〕  これが食品安全基本法でございます。 〔スライド〕  法の成立まで、ちょっと簡単に見てみますと、14年12月に15年度予算を政府原 案が決定されまして、15年2月、ことしの2月に関係法案が国会提出されました。そ れから5月16日に参議院本会議で可決成立したということでございます。それで5月 23日公布。平成15年7月1日から食品安全委員会が動き出しまして、施行されてお ります。 〔スライド〕  同じように繰り返しますが、基本理念としては国民の健康の保護が最も重要であると いう基本的認識のもとに措置をとること。それから、食品供給行程の各段階においても 安全性を確保すること。それから、国民の健康への悪影響を未然に防止されるようにす ること、国際的動向をしっかりと見つめながら国民の意見も十分配慮しつつ、科学的知 見に基づいて措置を行いましょうということでございます。 〔スライド〕  セイサヤクによる基本的方針としては、いわゆる科学的手法に基づいて実施しましょ うということです。食品の安全管理に関する施策をもっと充実していきましょうという ことでございます。 〔スライド〕  いわゆるリスク分析とは何かと申しますと、リスクアセスメント、いわゆるリスク評 価とリスクマネージメント、リスク管理と、それからリスクコミュニケーション、この 三つが総合的に動いて食品を安全にしていこうということでございます。  リスクとは、健康に悪影響を生ずる確率ですね。リスクゼロにはなかなかし得ないと いうことで、そういった確率を言っております。  それから、分析というのは、悪影響の発生を予防する、制御する科学的手法である。 例えばこういった食品安全委員会では、人の健康に及ぼす影響についていろいろな科学 的知見ですね、そういったものを総合して判断して評価すると。それを、今度は厚生労 働省、あるいは農林水産省に返しまして、国民生活の状況とか、あるいは食品健康影響 評価を行い、その結果に基づいて基準を設定したり、あるいは規制をやっていこうとい うのが厚生労働省、あるいは農林水産省の役目となっております。この間で、我々も当 然、厚生労働省、農林水産省もリスクコミュニケーション、情報開示して、パブリック コメントを必ず実施して、それを勘案しながら決定していこうということでございま す。 〔スライド〕  私どもがやっておりますリスクアセスメントの構成要素に、いわゆる有害性の確認と 有害性を特定して、その曝露評価をしてリスク判定をしましょうという四つから成り立 っております。 〔スライド〕  では、有害性とは何かといいますと、有害性があったからといって何かわからないの で、どのような有害性かとか、証拠はあるのかということが非常に大事でございまし て、その次有害性を特定する。どんな障害が起きていて、その程度はどのぐらいかと か、どのぐらいの確率で発生しているかというその有害性を特定し、評価していきま す。そのときに、人にはどの程度曝露しているのか、どの程度摂取しているのかという ようなこと。それから、どのぐらいの確率で口に入って、発症は、致命率、あるいは発 症率はどれぐらいかというような評価をしてまいります。  その結果、健康被害があるかどうか、あるいはどれくらいの頻度で起こっているか、 危険性はどれぐらいかといったようなことを総合的に、パラメーターはたくさんありま すから、そういったものを総合的に判断して健康被害の影響を検討いたします。 〔スライド〕  確保に対する施策は、今言ったようなリスク評価以外に、緊急事態に対する体制の整 備とか関係行政機関相互の密接な連携、あるいは試験研究体制を整備するとか、それか ら国の内外の情報収集。早く情報収集して未然に防ぐということ。整理して、活用とい うのは、未然に防ぐように早目に評価をするということですね。それから、表示への適 切な運用の確保とか、食品安全確保に関する教育・学習、それから環境に及ぼす影響に も配慮していこうということでございます。 〔スライド〕  今回、以前、最初の担当大臣は今の財務大臣、谷垣大臣でございました。今は小野清 子公安委員長、大臣が我々の特命大臣になっていただいております。これは第1回、交 代のときの食品安全委員会の風景でして、食品安全委員会は毎週木曜日2時から公開を して行われておりますので、自由に参加できるということでございます。 〔スライド〕  食品安全委員会の構成ですが、委員会7名、常勤4名、非常勤3名なので、その下に 専門調査委員会というのを延べ約200人で成り立っております。事務局54名おられ ますが、その中で約16部会みたいに分科会に分かれております。一つは企画専門調査 会、リスクコミュニケーションの専門調査。それから緊急時対応と、それからこの評価 グループですね。三つをまとめて評価グループ。この四つありまして、その評価グルー プの中では化学物質系、生物系、それから新食品系の評価グループということで、合計 16グループの専門調査委員会が立ち上がっております。 〔スライド〕  赤は10月末現在活動しております。もう既に企画とかリスクコミュニケーションと か緊急時対応といったものは何回か行われておりまして、そのほかに添加物、農薬、動 物医薬品グループとか汚染物質、微生物、ウイルス、遺伝子組み換え、それからプリオ ンですね。新開発食品、肥料・飼料、これは既に1回以上開催されているということ で、この黒字だけがまだ専門調査会が立ち上がっていない。今は人選の段階ということ でございます。 〔スライド〕  例えば農薬について、どのようにリスク評価するかといいますと、まず毒性試験をや ります。急性毒性とか慢性、発がん性とかいろいろな毒性試験をやりまして、どれぐら いの量であれば生体に影響が出ないかという量を決めます。これは最大無作用量です ね。全く毒性試験の結果、有害な作用を示さない最大量、これは最大無作用量といいま すが、これをまず決めます。 〔スライド〕  さらに、ここから1日摂取許容量というのはどういうことかといいますと、これは動 物実験結果から求められておりますので、やはりリスクがあります。人間にこれをこの まま応用することはできませんので、その無作用量をさらに10分の1に減らさなけれ ばならない。また、人間の中では年寄りもいる、子供もおるということで、人間による 差が10倍ぐらいあるだろうということで、トータル100分の1にいたします。  例えば100グラムまでが安全だといえば、その最大摂取許容量、1日摂取許容量は 1グラムということですね。例えば1グラムが最大無作用量であれば10ミリグラムと いったように100分の1にして、1日摂取許容量といたします。これを厚生労働省、 あるいは農林水産省に戻しますと、そこではさらに使用基準、あるいは農薬をまく規制 基準とか、そういったものがこれに基づいて行政的に対応しているということでござい ます。 〔スライド〕  ところで、我々は生体影響、いわゆる人体影響のことが基本になります。人間といい ますのは、やはり生体影響ということで、こういった抵抗性を持っておりますし、無毒 にする能力も持っておりますので、曝露量がどんどんふえましてもある一定の間は全く 生体影響を示さない、無作用レベルというのがここにございます。そして、それが次第 に量がふえるに従って影響が強くなりまして、最終的には致死量ということになりま す。我々が考えるリスク評価するのは、このレベルでございます。添加物にしても農薬 にしても人体に影響があっては困るレベルで基準を決定するというのが、このレベルで す。  逆に医薬品ですね、薬。薬は影響がないと考えるわけですね。作用がないと困るの で、ここで薬は科学的な影響量ですね。生体が影響を受けるところで使われているのが 医薬品でございます。さらに強い薬、抗がん剤とかになってまいりますと、なかなかも とへ戻りにくいとか、あるいは非常に副作用が強いという量がここら辺にまいります。  ということで、こういったゼロから急激に少しでも曝露されれば直線的に上がるので はなくて、人体というのは必ずそういった抵抗性を持っておりますし、免疫力を持って ますので無作用レベルがありまして、そのうちこういった立ち上がるというこのシグモ イドカーブを示すということが科学的に認識されております。 〔スライド〕  これはどういうことかといいますと、今の生体影響ですが、たくさんの人が曝露量が ふえるに従って、最初はだれも発症しませんが、だんだんと、100人おれば10人、 20人、30人というふうに、これも同じようなシグモイドカーブを示すということが 言われておりまして、ある程度の量を曝露しても全く何も発症しないというレベルがご ざいます。 〔スライド〕  ここからは新しい食品衛生法ということで厚生労働省の方でご説明になると思います が、食品安全委員会はこういったいろいろな法律が食品安全基本法によって改正になっ ております。その中で我々がやることといいますと、こういった規制とか基準を決める ときには、食品安全委員会でその諮問をいたしまして、それで安全かどうかを評価して からもう一回基準を決めるということになって、これの必要的諮問事項がこれだけ法律 がございます。 〔スライド〕  そこで、今いろいろなことでああいった諮問事項について処理しているというか評価 している段階ですが、少し食品安全委員会と厚生労働省の関係を私なりに書いてみまし た。  例えば添加物を指定する場合、まず指定要請者が厚生労働省に要請をいたします。そ うすると厚生労働省は食品安全委員会に評価してくださいということを諮問します。食 品安全委員会では添加物の健康影響を評価しまして、先ほど申しました最大無作用量を 設定いたしまして、それを厚生労働省に通知いたします。厚生労働省では薬事食品衛生 審議会にこれを指定する、あるいは使用基準をどうするか、あるいは成分規格をどうす るかということを設定し、あとは管理していくというのが厚生労働省の業務でございま す。 〔スライド〕  これは農林水産省、農薬の場合です。農薬の残留基準はどのように設定するかといい ますと、農林水産省の関係ですが、まず農薬の申請者が農林水産省に要請いたします。 資料を持ってまいります。そうすると、資料を受けつけましたと同時にいろいろと不手 際のところも修正した後、厚生労働省に連絡しまして資料を受理いたします。そうする と、厚生労働省から食品安全委員会で健康影響評価について評価してくださいと直接来 る場合もありますし、評価いたします。それでADIを設定しまして、これをさらにま た厚生労働省に通知してまいります。このADIを設定したことによって、この評価を 受けて食品中の残留基準はこれぐらいにしなければならないということを設定いたしま す。そうすると、これが農林水産省に行きまして、農林水産省で農薬の使用基準を設定 して、登録という段階。この中にはもちろんパブリックコメントとかリスクコミュニケ ーションが行われるわけですが、大体概略がこの流れでございます。 〔スライド〕  今後の課題として私なりに考えてみたのは、流れとしてリスク評価をする場合これか ら必要なことは、法律に定められた基準設定業務もあるでしょう、それから微生物、化 学物質の定量的リスク評価をしないと。あるなしの議論ではなくて、やはりこれぐらい なら大丈夫とか、こういったことについては、例えばBSEについては今後どれぐらい 発症があるのかとか、そういった定量的リスク評価と今後の推測ですね。食品による新 たな健康被害の発生予測ですね。こういったもの。遺伝子組み換え食品によって本当に 健康被害が起こるのか、そういった将来的予測はどうなるか、それからクローン牛の問 題。それから、新たに感染性の物質が起こる可能性がございます。  例えばリステリア菌による健康被害というのは、アメリカでは500人ぐらいが死ん でいるわけですね。ところが、日本にはまだ届け出がございません。リステリア菌によ る食中毒はまだ発生しておりませんが、今後日本に入ってくる可能性がございます。そ ういった新感染性の微生物ですね。  それから、重要な健康被害が発生した事例については今後も究明して、科学的に検討 しないといけないだろうと。  それから、この間起こりました、いわゆるアマメシバの問題ですが、規制のないもの ですね。いわゆる健康食品の摂取状況について、社会的背景も含めて、いろいろな要因 とか健康障害についても検討していかなければならないと思っております。 〔スライド〕  今後、具体的に申しますと、BSEの感染経路、感染能力の解明、今後の発生予測と か遺伝子組み換え食品、クローン牛の安全性とか、新たに発生あるいは大規模発生の懸 念のある食中毒、規格基準の国際化、これはもちろん厚生労働省ですとかこういった中 での安全性の評価ですね。農薬の残留基準と抗菌性医薬品使用による人への薬剤耐性で すね。これは最近非常に問題になってきておりまして、環境中の菌が強くなるのではな いかという懸念もございます。  それから、いわゆる健康食品の健康影響。こういったことがまだまだ山積みでござい ます。 〔スライド〕  最後にもっとも重要なものは、今後の課題、リスクコミュニケーション。これは関澤 先生の方が専門家ですのでお話しになると思いますが、要するに双方向による意見交換 と今後の手法、どういった対象者をして、その人たちの知識内容に応じた、いわゆる丁 寧なリスクコミュニケーションとか講演方式、パネル方式とか、わかりやすい言葉でし ゃべるべきとか、適切な資料を提示するとか、課題の選択、コーディネーターの方の能 力によって非常にリスクコミュニケーションも違ってくる。  それから、やりっ放しではなくて、やはりこの結果を評価して、今アンケート調査さ れておりますが、こういったことを次回に役立てていって、さらにいいリスクコミュニ ケーションを構築していくということが大切ではないかと思っております。以上です。  どうもありがとうございました。 ○司会  どうもありがとうございました。 ○司会   続きまして、厚生労働省の外口参事官より「新食品衛生法の概要」についてお話し いただきます。  では、お願いいたします。 ○外口参事官  厚生労働省の外口でございます。  私は資料の「新食品衛生法の概要」、これを参照していただいて説明したいと思いま す。  この「新食品衛生法の概要」の終わりから2枚目の紙をお開きください。23ページ です。 このたび、政府全体の食の安全に関する取り組みが大きく変わったわけですけ れども、その中で、もちろん食品安全委員会も新たに設立されましたし、厚生労働省、 農林水産省、それぞれの組織も整備されました。  厚生労働省で申し上げますと、23ページにありますように、食品保健部といってい たのが食品安全部と名前を変えました。それから、特にリスクコミュニケーション等を 担当する参事官のポストが7月に新たに設立されました。これを私が担当しておりま す。それから、7月より前に4月に前倒しで輸入食品安全対策室というのもできました し、それから食品衛生監視員等の増員もされております。  それでは、資料の1ページをお開き願います。  私は食品衛生法、それと関連する健康増進法がどう変わったかということを説明した いと思います。  食品衛生法というのは昭和22年にできた法律ですから、もう50年ぐらいになりま す。小さい改正は幾つもあったんですけれども、今回は全面的な大幅な改正でありま す。どういった改正が行われたかというと、この1ページの三つの視点に基づく見直し というのが2段目にありますけれども、(1)国民の健康の保護のための予防的観点に立 ったより積極的な対応、(2)事業者による自主管理の促進、(3)農畜水産物の生産段階の 規制との連携、この三つの視点に基づいて見直しが行われております。  どういう見直しが行われたかというと、その下の段にまとめてありますけれども、た くさんありますので、この後農薬等の残留規制の強化、一番左側にありますね。規格基 準の見直しのところの最初の○ですけれども、このポジティブリスト制の導入、これと その次の隣の監視・検査体制の強化のところの輸入食品の監視体制がどう変わったか。 この二つは、この後詳しく説明いたします。  ほかのところはどういうことかというと、例えば規格基準の見直しの農薬の残留規制 の下の段、「安全性に問題のある既存添加物の使用禁止」、これは何かというと、添加 物、これからご説明あると思いますけれども、添加物の中に化学合成でできた添加物 と、昔天然添加物といったものがあるんですけれども、その天然添加物が今既存添加物 と言われておりまして、489あります。これは平成7年に化学合成された添加物同様 に指定添加物というものになったんですけれども、従来の食経験などを踏まえて天然の 添加物がそのまま指定されたわけですね。それについて安全性に問題があったりとか、 それから今実態として使われていないものについては削除しようと、そういった仕組み を取り入れたものです。  それから、その下「特殊な方法により摂取する食品等の暫定的な流通禁止措置」は、 先ほど小泉先生からアマメシバの規制の話がありました。まさにその例であります。  それから、健康増進法、これは栄養関係のことが健康増進法の中で規定されておりま すけれども、健康の保持増進の効果等についての虚偽または誇大な広告等の表示の禁止 という規定を盛り込んであります。  それから、監視・検査体制の強化に行きまして、監視・検査体制。国内で流通してい る食品の中には国内で生産したものと輸入したものとあるんですけれども、国内で生産 して、それで国内で販売されているものについては、主に自治体がいろいろ監視・検査 体制を組んでいるわけであります。それは、今後監視・指導計画等をつくって整備して いくわけですけれども、輸入食品については、これは国が中心になって監視・検査体制 を強化いたします。これはまた後で説明いたします。  それから、営業者による食品の安全性確保への取り組みの推進として、例えばハサッ プ、総合衛生管理製造過程ですけれども、これは1度承認を取るとずっと有効だったん です、今までは。だけれども、今度は3年で更新にしようということにしています。  それから、食品衛生管理者の責務の追加も行われました。  それから、食中毒への対応といたしまして、大規模広範な食中毒の発生時は、これは 自治体だけではなくて厚生労働大臣による調査の要請とか、あるいは保健所長による調 査及び報告、こういった規定も盛り込まれました。罰則強化も行われております。  それでは、次に10ページ、食品中に残留する農薬等へのポジティブリスト制の導 入。これは食品衛生法改正の中の一つの大きな柱であります。これは何かというと、ま ず現行の規制はどうなっているかというと、食品の成分にかかわる規格、残留基準とい うのが農薬につくられているんですけれども、いわゆる残留農薬の基準ですね。これは 229の農薬について定められているわけであります。  ところが、では国内で登録されて使用できる農薬は幾つあるかというと、約350ぐ らいあります。もう229より多いわけですね。国際的に使用されている主な農薬は、 約700ぐらいあります。国内で使えなくても国際的に使っても、輸入食品として入っ てくるわけですから、ではその基準のない農薬はどうするかというと、今まではある程 度の残留農薬の濃度が濃くて、健康被害のおそれがある場合、これは規制できますけれ ども、うんと低い段階では、これはなかなか流通規制するのが難しかったわけです。こ ういうことではいけないということで、添加物などと同様にポジティブリスト制、すな わち基準規格のないもの、これは原則もう使ってはいけないと。それから、もちろん基 準規格を超えたものですね。基準以上の濃度のあるもの、これは使ってはいけない。こ ういう仕組みにしようということで、今、この約700ぐらいを前提に、国際的に使用 されているような農薬について基準をつくろうという作業をしております。  具体的にどうやるかということですけれども、これは欧米とかオーストラリアとかニ ュージーランドとか、そういったところの基準を参考にしながら、それの平均値とかい ろいろな考え方がありますけれども、そういうのを前提にしてポジティブリスト化しよ うということをやっています。  これが実際には、数百の基準をつくるのに大変時間がかかります。というのは、一つ の農薬についても作物ごとに数値をつくっていくわけなので、実際はかなりのボリュー ムになります。今、第1次の案ができて、今公開していますけれども、この後いろいろ な手続、例えばWTOに通報して国際的なチェックを受けるとか、いろいろな手続を踏 んで、3年以内には施行する予定であります。  それから、10ページの最も右側、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであ るものを告示(特定農薬等)、ポジティブリスト制の対象外となる特定農薬、これは何 だろうということですけれども、これは農薬の中で、例えば炭酸水素ナトリウム、重曹 とか、お酢、食酢ですね、こういったものはポジティブリスト制の対象外になります。  それから、次に輸入食品の検査体制、これも大幅に強化されましたので、そこを説明 したいと思います。  15ページをお開き願います。  15ページにグラフがあります。赤いグラフと青い折れ線グラフがありますけれど も、赤いグラフは届け出件数の伸び、青いグラフは輸入重量。  先ほど小泉先生からカロリーベースで6割が輸入されているというお話がありました けれども、このような伸びで、重量の伸びというのはある程度限界がありますけれど も、件数の伸びというのがかなりすごいです。これは13年までのデータですけれど も、例えば平成14年どうなっているかといいますと、輸入届け出件数が、今は161 万8,880件。重量で3,320万1,949トン。この輸入届け出に対しまして 13万6,087件の検査を行って972件、食品衛生法不的確として積み戻しまたは 廃棄の措置を行ったところであります。  これをさらに強化します。15ページの右側を見てください。  第1は検疫所でモニタリング検査というのをやっていますけれども、これで違反が出 ると検査の件数をふやします。それで違反率が高ければ、輸入の全数検査といって、輸 入される全ロットに対しての検査をしていただくことになります。その際、命令検査と いうんですけれども、この命令検査が今までは政令指定という大変面倒な手続が必要だ ったんですけれども、これを厚生労働大臣が政令ではなくて、厚生労働大臣の判断で臨 機応変に指定できるようにいたしました。  2番目、輸入食品。これも国内で生産され流通する食品同様に、国の方で輸入食品監 視指導計画というものを策定し、公表いたします。今、準備しております。  それから、輸入業者に対する営業禁停止処分規定もつくりました。今まで食品等の輸 入業者は自治体が営業禁停止処分をすることになっておりましたけれども、これも国の 方で処分できるようにしました。  それから、指定検査機関。これは公的な検査機関、今80ぐらいあると思うんですけ れども、公益法人に限定された命令検査の実施機関、約80カ所、これが公平性、中立 性がしっかりと証明できて、もちろん検査の内容もしっかりしているということがわか れば、登録検査機関として民間会社であっても参入できるようにしました。  そして、その下のモニタリング検査のアウトソーシングですけれども、モニタリング 検査の試験事務を登録検査機関に委託できるようにして、増大する輸入食品の件数増に 対して必要な検査ができるようにしようというような改正を行っております。  それから、最後に24ページ。  厚生労働省のホームページも大幅に変えました。厚生労働省のホームページを開いて いただきますといろいろなものが出ているんですけれども、厚生労働省の一番のトップ ページの左側の求人情報などという欄がありますけれども、求人情報は食品衛生と全然 関係ないんですけれども、求人情報などという欄の一つ上のところに食品安全情報とい うバナーが張ってありますので、そこから入っていただくと食品安全情報を緊急情報と か、新着情報とか、Q&Aとか、法令検索とか、トピックスとか、いろいろなところへ 飛べるようなホームページを整備しております。  ここでメールアドレスも入っておりますので、そこへまたいろいろなご意見をいただ けましたら、ホームページ、リスクコミュニケーションのあり方等工夫して、改善して いきたいと思っております。よろしくお願いします。ありがとうございました。 ○司会  どうもありがとうございました。 ○司会  続きまして、農林水産省消費・安全局姫田消費者情報官より「消費・安全局設置から 3カ月間のとりくみのポイント」についてお話しいただきます。よろしくお願いいたし ます。 ○姫田消費者情報官  農林水産省の消費・安全局の消費者情報官をしております姫田でございます。どうぞ よろしくお願いいたします。  お手元の資料3に基づいてご説明いたします。  まず表紙のところでございます。下に「農林水産省消費・安全局」とございます。 「・」がついているというのは、消費と安全ということで、私ども安全はもちろん担当 いたしますが、もう一つは消費を担当していこうと。あるいは消費者の方々にどうお話 を伝えていこうかということを、消費者に軸足を置いた施策を行っていこうという目的 で「消費・安全局」といたしました。  資料の後ろから4枚目に参考資料2とございます。この表紙をごらんください。  「新たな農林水産行政の確立に向けて」ということで、消費者を重視した食品安全行 政の展開ということが書いてございます。  BSEの検討委員会などのご指摘にもありましたように、生産者寄りになっているの ではないかというようなご批判、あるいは縦割り行政になっているのではないかという ようなご批判もございました。  これでまず一つは、厚生労働省、食品安全委員会、それぞれ完全に共催でやっている ということで、今まで、ほかにもそうだと思いますが、本省の役所がまとめて一つの会 議を全く共催でやるというふうなことはなかったと思います。そういう意味では連携を 図っていこうということ。そして、消費者を重視してやっていこうということ。これ は、ここに「農林水産省は、新しく生まれ変わります」というようなことを書いてござ いますが、そういう意味で消費者を重視した活動をやっていこうと考えてございます。  それでそのページから少し戻っていただいて、ページが振ってあるところの4ページ をごらんいただきたいと思います。  組織については、先ほど次長の方からお話がございましたが、その中に、4ページの 右の下の方に「新しい組織 消費・安全局」とございます。ここで、いわゆる消費・安 全政策課から表示・規格課、農産安全管理課、衛生管理課、そして植物防疫課、こうい うところが厚生労働省と連携を図りながら安全の管理をやってまいります。そして、消 費者情報官というのが私どもの組織でございまして、消費情報官ではなくて消費者情報 官でございます。要するに、消費者に軸足を置いて活動をやっていくということで、名 前もそういうような形にさせていただきました。リスクコミュニケーションと食育を担 当させていただいております。  この後の施策についてお話しいたします。  参考資料1の1ページに戻っていただきたいと思います。  7月に食品安全委員会が設けられ、そして私どもの消費・安全局が、生産局や総合食 料局といった、生産振興部局から分かれて独立して新しい一つの局をつくりました。そ の中で、先ほどからお話しありますようにリスク分析手法に基づくリスク管理、そして リスクコミュニケーションを、それぞれ農林水産省、厚生労働省がやっていくというこ とでのシステムをつくりました。それにあわせまして、食の安全・安心のための政策大 綱ということで、これからの安全行政をどう進めていくかということについてとりまと めたものでございます。  1ページめくっていただきまして2ページでございますが、国民が安心・信頼を実感 できるように取り組みますということで、ここで今のリスクコミュニケーションの話が ございます。 その右側の3ページですが、「食卓に安全な食品を届けるための仕組み をつくり、生産者・事業者の取り組みを進めます」とあります。これは農林水産省だけ が頑張ってもしようがない。実際に生産者や事業者の方々にきちっとした、いわゆるコ ンプライアンス、要するに法令遵守の考え方、あるいはきちっと規制を守っていただく ということ、これを進めていかないといけないということでございます。  もちろん、これは直接安全ということではないのですが、今まで一部のハム会社にあ ったような、消費者の皆さん方の期待、国民の税金を勝手にだまし取っているようなこ と、そういうような消費者の皆さん方の安心という意味で任せられないような面もあっ たということです。  あるいは、長崎の養殖フグのように、ホルマリンが途中で与えられた、使われていた と。ただ、最終的に残留するホルマリンそのものはなかったわけなので安全ではありま すが、水産庁から通達が出て、ホルマリンは使わないようにしましょうと言っていた。 あるいは、生産者みずからが使わないと約束した内規を破ったと。そういうような生産 者が出すようなフグは、果たして消費者にとって安心でありましょうかと。我々は、そ ういう意味では生産者、あるいは事業者、そして流通の方々にもコンプライアンス、自 分たちで決めたことをきちっと守っていこうではないかと、そういうこと。そして、事 業者についてもリスクコミュニケーションを図っていただこうということで、食品の安 全だけでなくて安心をどうつくっていくかということを考えてまいりたいと思っており ます。  次のページでございます。  5ページ、「産地・港から食卓までの段階で監視を強め、生産者・事業者の自主的な 取り組みを進めます」と。厚生労働省が農薬の残留基準を決めて、あるいは農林水産省 が農薬の使用基準を決めたけれども、本当にちゃんとやっているのというご議論がある と思います。これについて、私どもだけではなくて、県、農協、市町村の指導の段階で どう法令を遵守をしているのかということを監視していくとともに、皆さん、生産者や 事業者の方々が自主的に取り組んでいくということを進めてまいりたいと思っておりま す。  次のページでございます。  「安全な農薬の使用に向けて」ということで、先ほど外口参事官からもお話がありま したが農薬に関してでございます。私どもも農薬については、今までは販売についてだ け規制をかけて、罰則規定を設けていたんですけれども、輸入、そして使用についても 使用基準の遵守とか、そういう罰則規定をつくっていくということ。それから、今お話 がございましたポジティブリスト化に対しての作業を進めている最中でございます。厚 生労働省の残留基準の設定というのは大変な作業なんですが、それ以上に使用基準をつ くっていくというのは、またこれが残留基準に合わせたような農薬の使用基準というも のをつくってまいらないといけないということで、これも今大変な作業をやっている最 中でございます。  それから、次のページでございます。  「適正な食品表示」ということで、これは厚生労働省と農林水産省が最初に共同で取 り組んだ仕事の一つで、「食品の表示に関する共同会議」というようなことをやってお ります。これは今まで賞味期限と品質保持期限という二つの表示の仕方がありましたけ れども、これを賞味期限に一本化していくというようなこと。それから、表示の相談窓 口を一つにしていこうというようなこと。そういうことで、消費者の皆さん方が表示に ついてわかりやすくするということをやっていきたいと思っております。  それから、次の「表示の監視体制の強化」ということについて、後でもう少し実際の ところをお話しいたします。  次のページでございます。  「トレーサビリティ・システム」、きょうは事業者の方々もかなりいらっしゃるので 少しお話しさせていただきます。  トレーサビリティ・システムというのは、基本的には生産、加工、流通などの各段階 で、仕入れ先や食品の製造元、販売先をきちっと記録して、それでトレースアビリティ ですから、追跡可能な状態に置くということです。一部のスーパーなんかでは、それよ りももっと進んだシステムとして、店頭でどういう生産者がつくったかわかるシステム をつくっております。これは私どもの補助事業で、先進的な取り組みということでやっ ておりますが、これは全部の食品にやっていくということではなくて、あくまでも一部 の食品にやっていくということです。これは相当なお金がかかります。ですから、当然 それは国民の税金で賄うというわけにはまいりませんので、そういうような食品を買っ た消費者の方々に負担していただかざるを得ないと思っております。  一般論としてすべての食品についてはどうすればいいかということですが、生産者 が、例えば、どんな種を買ってまいりました、どんな農薬をいつ使いました、そしてい つ収穫した、それをだれに売ったということ。買った流通の業者の方は、だれから仕入 れた、それをだれに売ったということ、そういうことがきちっとトレースできること。 あるいは、家畜でありますと、どういうようなえさをいつやったというようなことや、 どこから買ったえさをいつやったということ。えさの生産者の方は、どこから輸入した えさを、どう配合したかということがトレースできるようなシステムをつくるというこ とです。  ですから、万が一事故が起こったとき。例えばBSEの牛が発生したときに、どう逆 上れるか。今まではえさも2年間しか帳簿の保存期間がなかったのでトレースできませ んでしたが、8年間にしたというようなこと。それから、生産者は今一生懸命取り組ん でおりますが、かなりの生産者は、どういうことをやったかということを記帳していな かったと。そういうようなことをきちっと今後トレースできるようなことをやっていき たいということで取り組んでおります。  それから、下の牛ですが、牛についてはかなりの国の金を投入いたしまして、日本の 450万頭の牛全部に10けたの番号をつけます。そして、12月1日には全頭につく ことになっております。今でも10けたの番号を入れると、牛の生産、だれがつくった か、そしてだれに売って、だれが肥育したか、だれが買ったか、どこで屠畜されて、ど う消費者に届いたかということがわかるようになっておりますが、まだ今のところ、販 売段階での状況が整備できておりませんので、来年の12月になるとほとんどの窓口で ほとんどの牛肉がトレースできるというような取り組みを行っております。具体的に は、今、3カ月の取り組みということで、大綱に基づいて、いろいろな取り組みを行っ ております。  資料3の頭から2ページ目でございますが、「食品安全委員会との適切な関係の構築 」、これはもちろん厚生労働省とも適切な関係をつくっております。  それから、次のページでございますが、「農薬の適正使用の推進と取り締まりなどの 実施(その1)」ということで、どうも包装容器に書いてある表示が間違っていたと。 これは単なる印刷ミスだったりいろいろなことが重なっておりますが、これについて一 斉点検をやってみると23社について間違っていたというようなことで、こういうよう なものについて状況も全部公表いたしましたし、改善命令も出しました。無登録農薬に ついても立入検査を実施しているというようなこと。  それから、次のページでございますが、住宅地などに対する農薬の飛散防止というこ とで、都市部におきましては住宅地に関して、その周辺での飛散があるというようなこ とで、これをきちっと遵守していくようにというふうなこと。  それから、県によっては、いわゆる農薬の容器表示だけではなくて、県の防除基準も 間違っているものがかなりあったということで、防除基準も県の言うとおりにまくと法 令違反になるというものが出てきたというようなことがございまして、これについても 調査いたしまして指導したということで、これも改正いたしました。  それから、BSE対策の推進ということで、BSEの死亡牛の全頭検査を実施してい るところでございます。来年の4月に向けて完全実施ということで、もちろん今は食べ る方の、屠畜場の牛は全頭検査しておりますが、最初から食品には回らない死んだ牛に ついても、全頭検査をしていこうということ。それから、カナダでBSEが起こりまし たが、カナダ産牛肉、これがアメリカ経由で輸入されないような体制を確立するという ことを行ってきております。  それから、食品表示に関する監視の徹底ということで、表示110番など、表示につ いての相談窓口を設けております。  それから、不正表示に対する厳正な対処ということで、私どもの農政局、農政事務所 の職員2,000名で、厚生労働省の保健所等と連携を図りながら、食品の表示の適正 化に努めております。まだまだ調査を行っている最中で、十分な状況になっていると考 えておりませんから、今後も積極的に実施していきます。  それから、そのほかに特別調査ということで、土用のあたりにはウナギを、そして 今、皆さん方が一番関心があるだろうと思いますが、お米についての表示の調査を実施 しております。かなりいろいろな事例が上がってきて新聞をにぎわしていると思います が、こういう調査を今後も積極的に実施していきたいと考えております。  そして最後はリスクコミュニケーションの推進ということで、関澤先生にお譲りする ということにしたいと思います。  それから、最後にコマーシャルということで、お手元に「消費者の部屋」というのが 入ってございます。これは私どもの農林水産省「消費者の部屋」が出しているものでご ざいますが、いろいろなことについてご質問を受けることができます。  最後のページに、東北農政局消費生活課仙台センターの他、独立行政法人農林水産消 費技術センターの「消費者の部屋」の電話番号も書いてございますので、あらゆる相談 をお受けできます。それから、厚生労働省食品安全部との連携を図って、厚生労働省関 係のご質問についてもお受けできるということになっております。  それから、小さなものですが、「ポケット食生活指針」ということで食の正しい進め 方ということを入れておりますので、これはポケットにでも入れてお持ちいただきたい と思います。  ご清聴ありがとうございました。 ○司会  ありがとうございました。  それでは、ここで休憩を設けさせていただきたいと思いますけれども、時間が若干延 びておりますので、5分程度の休憩とさせていただきます。再開は2時22分ぐらいか ら再開させていただきたいと思いますので、それまでに席の方にお戻りいただきますよ うに、よろしくお願いいたします。                 〔  休憩  〕 ○司会  それでは、時間となりましたので再開させていただきたいと思います。  これからお二人の先生からご講演を賜りたいと思います。  最初は、実践女子大学西島教授より「食品添加物を考える」についてご講演いただき たいと思います。  西島先生は、東京薬科大学ご卒業後、東京都立衛生研究所に勤務され、理化学部統括 課長、生活科学部部長などを歴任されていらっしゃいます。  退職後、2001年4月より実践女子大学生活科学部食品衛生学の教授に着任され、 現在に至っております。また、2001年1月からは厚生労働省薬事食品衛生審議会の 添加物部会、器具容器包装部委員でいらっしゃいます。  それでは、西島先生、よろしくお願いいたします。 3.食品添加物を考える ○西島先生  ご紹介いただきました西島です。  私は、今、紹介をいただきましたが、東京都の衛生研究所で30数年間、ほとんど食 品畑で安全性に関する調査研究、それと行政試験と申しまして、都の食品衛生監視員が 搬入してきます食品について、違反がないか等の検査業務についても一緒にやっており ました。  きょうは、非常に知識の多い方が多いようですが、消費者の方に大体52分までお話 をさせていただきます。  まず「食品添加物を考える」ということですが、最近は食品添加物について誤解が非 常に多い。  私は、都の衛生研究所で常に安全性について、いろいろな調査研究結果を厚生労働省 にお知らせしたり、いろいろなところで協力をしてきました。しかし、大学に移って、 その成果をいろいろ見直してみると、自分が一体30数年間何をやっていたんだという ぐらい世の中が誤解に満ちています。食品添加物に限らずいろいろな安全性に関する誤 解が多いように感じております。 〔スライド〕  消費者対象の講演に行きますと、まずこういうスライドをお見せします。ここにはギ 酸であるとか、シュウ酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、非常にみんなの嫌が るものがずっと並んでおるのですが、「皆さん、こういうのを召し上がっている方が結 構いらっしゃる」と言うと、そんな悪いものが入っているのを食べているわけはないと いう顔をするのですが、これは一体何でしょうか。正解は清酒なんです。  要するに、食べ物というのは微量分析をしますと、体にいいものと悪いものが混在し ているというのが、食品の実態だと思います。神様が人間のために「これは食品だよ」 と言ってくれたものは何一つもない。ですから、精密分析すると、どんな食品にも体に 悪いものも入っているというのが現実です。 〔スライド〕  これは香料の成分について書いたスライドですが、最近香料についても問題があった ので書いたのですが、紅茶については香りの成分だけで135成分と書いてあるのです が、これは15年ぐらい前のロシアの論文の引用ですので、実際はもっと多くなってい ると思います。イチゴの香りでも250種類以上の成分がわかっております。コーヒー に至っては950以上。私は、ことしの春ぐらいまでは450と言っていたのですが、 香料会社の方が、「今は950以上わかっていますよ」というので直させていただきま した。  要するに、揮発成分だけでこれだけ以上の成分で成り立っている。いわんや香りでな いものはもっと多いわけですから、食品と全体としては、いかに多い成分で成り立って いるが分かります。  この香料成分の中でも、あるいはそうでないものでも、先ほどのスライドにありまし たように体にいいものと悪いものが食品には必ず混在している。そこで、食品の安全性 を考える上に最も大事なのは、そのものの「毒性の強さ」と「その量」、それをぐちゃ ぐちゃにしたら安全性は語れないということだと思います。  本当に、どんな食品を調べても微量の有害成分が出てきますね。最近の食品の安全性 について消費者が不安を持っている原因を考えると、私もその責任の一端を感じなけれ ばいけないのかなと思うところがあります。それはなぜかというと、ともかく、いかに 他機関よりも細かいところまで精密に、正確にはかるというような使命感に燃えてしま います。いつの間にか単位がppmからppb、pptというようなところまで来てお ります。それは技術の進歩というよりも、機械の進歩に負っているところが多いと思い ます。したがって食品中の食品添加物や化学物質の分析データも非常に細か過ぎる。人 間の健康には関係のない非常に微量なデータをどんどん出してしまっています。 〔スライド〕  このスライドは誤解をしていただきたくないのですが、食品中に加えられた化学物 質。食品添加物も少し入っているのですが、例えば「肉が腐ってもおいしそうにするに は」というのは、これはニコチン酸です。東京でも問題になったのですが、ひき肉を食 べたらジンマシンになったというので調べますと、ニコチン酸がかなり大量に入ってお りました。ニコチン酸をひき肉にまぜますと、いつまでたってもひき肉が挽きたてみた いに見える。ステーキを買ってきまして、上からぱらぱらとまぶしますと、いつまでた ってもおいしそう、切りたてに見えます。三、四日置いて、たまりかねて肉をぎゅーっ と触るとぐじゅぐじゅと中に入ってしまうというような、軟化しているんですね。自己 消化といって良いのでしょうか。考えてみればこれはビタミンなんですね。それを過剰 摂取すると中毒症状が出てしまう。お肉屋さんにすれば非常によかったので、少しはや っていたんです。もちろん今は厚生労働省が禁止の通達を出したので全国的に監視に入 り、今はそのようなことはないと信じております。  「野菜を元気にするには」というのは、これはリン酸のことです。リン酸の1%ぐら いの溶液に葉物の野菜を入れると、今までだらっとしていたものが、元気になります。 サツマイモはリン酸溶液の中に半分入れて出しますと、入れたところがちょっとピンク 色っぽくなっておいしそうに見えます。あるいはムキサトイモは、褐変しなくなると か、非常にリン酸はおもしろい作用があります。  でも、考えてみると、植物の育つ3要素の窒素、リン酸、カリの中のリン酸そのもの ですので、中身の方が圧倒的に多量。1%のリン酸に漬けた時の付着量は微量です。通 常の食品を検査する時のように、均一にまぜてサンプリングすると何が何だかわからな くなります。これもデータを整理して厚生労働省に相談したところ「消費者の目をごま かす」ので禁止なりました。  それから、「魚の鮮度をよくするには」というのは、これは少し古い話ですが、抗生 物質を使って雑菌を制御するんでしょうか、そのような事例もありました。  美人になる目薬というのは、魚を美人にするというのではなくて、アトロピンの入っ た目薬を、「美人になる目薬」といって売っていたということがあるらしいのですが、 魚の目にアトロピンを添加して新鮮に見せかけるようなこともありました。  COマグロとかワインに添加したジエチレングリコールなどというのは、皆さんの記 憶にあると思うのですが、このようなことが次から次と起こります。  最近は、食の安全が揺らいでいるということを言っておりますが、30数年間ずっと そういうようなことの連続だったような気がします。  ただ、最近は、報道関係が食品関連のニュースを大きく扱ったり、それに対して厚生 労働省、農林水産省等が真剣に取り組んでいるため、今のような状態になっていると思 います。 〔スライド〕  食品添加物って何だろうということを改めて考えた場合、非常に誤解が多い。  例えば中華めんって何だろう。これは小麦粉にかん水を添加し練り上げると中華めん ができるわけですが、そのかん水が食品添加物です。そうすると、食品添加物を使わな い中華めんというのは、定義からしてないはずです。でも、これは添加物だよというと 嫌だと。これで中華めんをつくるんだよというと、そうですかと、非常に矛盾がある。  食用油に至っては、大豆を絞れば大豆油が出てくるわけですが、そういうつくり方、 ただ絞るだけではコップ1杯が何万円するかわかりません。ヘキサンで抽出するわけで すが、そのヘキサンは絶対食品には残っておりません。理屈の上では残らないのがわか っていても、年に1回、市販品の油のヘキサン残留量を調べましたが検出したことはあ りません。  それから「砂糖はなぜ白い」というのは、キューバ等から原糖が日本に入ってくるわ けですが、なかなか原糖を見る機会はないのですが、たまたま見るとなかなかおもしろ い。植物のキビの繊維があるのは当たり前ですが、キューバ人の髪の毛かなとか、ゴキ ブリかバッタかわかりませんが、足とか羽とかが見出されます。ですから、原糖は体に いいなんていう人にそれを食べさせてみたいと思っています。そのような砂糖も水にさ っと溶けます。それをろ過すれば異物は全部取れるわけですが、まだまだ黒い液体。そ れを活性炭に通しますと、無色透明に近い液が出る。それを温度を徐々に下げると氷砂 糖、エタノール等にざっと入れると物すごく結晶が細かい。あとは自由自在です。  先ほどのヘキサンとか、今申し上げました活性炭などというのは、絶対製品には入っ ていない。しかし、それも食品添加物。ヘキサンにしろ活性炭にしろ、質が悪いもので すと食品の中に有害物が入る可能性があるため非常に厳しい規格をつくって、それに合 格したものでないと使えないという非常に安全性を高めるために食品添加物に指定して いるのですが、食品添加物は嫌だ嫌だという人は、どういう気持ちかよくわかりませ ん。  お料理上手の人が、「私、高野豆腐得意よ」と言っている人もいるけれども、やはり 添加物に負っているところが多い。最近はそうでないのもあると聞きますが、最終工程 でアンモニア蒸気の満ちたところで乾燥すると、高野豆腐が芯ができないため歯切れが いい。ところが、そうでないとみんな芯部が固くなって、歯切れの悪い高野豆腐ができ ると聞いております。  ここでは、あえて人間のために必要な添加物を申し上げたのですが、そういうものは 非常に数が多い。何か人のためになるものが添加物として使われているのですが、なぜ そのような誤解が多くなったのか。よくわかりません。 〔スライド〕  このスライドは違反状況です。東京都は年間食品添加物だけで4万件ぐらいを検査し ております。人数も多い研究所です。そこでの違反状況というのは、大まかにいいます と着色料ではキノリンイエロー、アゾルビンやパテントブルー等があります。これらの 大半は諸外国では許可していて、日本では許可していないものです。これが違反として は最も多い理由です。  今後、食品衛生法で諸外国で安全性が確保され、許可されているものを日本で許可し ていくことによって違反という言葉はなくなってくると思いますが。しかし諸外国で安 全性を確認して許可しているものが超微量入っていても、安全性とは特に関係ないと思 いますが、食品衛生法上では立派な違反食品となります。  TBHQも最近問題になったものの一つですが、これも酸化防止剤です。ポリフェノ ール等酸化防止作用のあるものが非常にもてはやされています。その毒性と言ったらど ちらが強いのか弱いのか、効果等を取材に来た報道関係の方に時間をかけて説明します と、大体の方が、「じゃ、このTBHQというものも許可して、どんどん使った方がい いよ」というふうに意見が変わってきます。  保存料については、過量使用による違反もありますが、国によって保存料の許可対象 食品が違います。特に中国とか台湾は安息香酸がどうも日本で許可しているよりも広い 範囲の食品に許可しているようなので違反は多いのですが、グァバは、500ppmも自然 のもので入っていたり、アンズや梅等バラ科の植物には、かなりの量が含有されていま す。  ソルビン酸は脂肪酸の一種ですので、余り量を控え過ぎますと微生物の餌になったり します。したがって、適切な量、安全性は世界中で許可しているし、日本でもいろいろ な食品に許可していますので、使うときには適切に使用した方が良いのではないかとい う気がしております。  二酸化硫黄。これは検疫所のデータを見ますとかなり、これによって積み戻しである とか、いろいろな違反が多いようです。市販のかんぴょうを買って封を切って臭いをか ぐと、あの刺激臭が二酸化硫黄です。濃いと毒性があるのですが、煮ている間に気散 し、あるいは水の中の酸素と反応して硫酸根に変わってしまいます。食品に残留しても すぐ酸化されて硫酸根になってしまいますので特に問題ではないと思います。でも、法 律は法律ですので、非常にこの違反が多いということは言っていいと思います。  輸入食品と国産製品ですが、国内製品は、年に一、二件、過量使用のものが検出され ます。今は非常に厳密で、1グラム許可しているものは、1.01グラム入っていても 基本的には違反ということになります。輸入品では、許可対象食品が違うため違反が多 いと思います。 〔スライド〕  このスライドは、香辛料や甘味料が食品を楽しむために、いろいろなことが考えられ ておりました。既にこんにゃくとか、豆腐のにがりはこんな古い時代から使われていた ようです。 〔スライド〕  明治時代ですとには、着色料の緑青による食中毒が毎年毎年起きていました。でも、 今から考えると緑青はそんな毒性はないので、あるいは昔の緑青は品質が悪くてヒ素だ ったのかなと勝手に思っているのですが、症状はヒ素の症状に非常に似ておりました。  このスライドは大正時代です。今高齢の方は非常に丈夫だと思うのですが、大正時代 の書物を見ますと、ホウ酸ですとか、βナフトールとか、今ではとんでもないような物 質が食品の中に入っていて、その人たちが今は平均寿命をどんどん押し上げているとい うことを見ると、非常に不思議な気がします。 〔スライド〕  このスライドは食品添加物によってどのような事故があったかということを、調べた ものです。ズルチンは今では許可していませんが、甘味料のズルチンを死ぬほど食べた のです。甘味料を中毒を起こすほど食べるというのは非常に不思議ですが、ズルチンは 一度に大量に食べますと甘味を感じなくなるということで、全部誤用です。これは千葉 の事件ですが、6人のうち1人死んだりしています。  過酸化水素、これは最終製品には残っておりません。毎年、検査をしておりましたの で、確信を持っております。ただ、数の子には使用しておりますが、数の子にも絶対残 っておりません。  このL−グルタミン酸は味の素といった方がわかると思うのですが、味の素の方はこ んなことはないと言っているのですが、実は私どもの新宿管内のラーメン屋さんで、そ こで食べると何かおかしくなるよというので2度ほど調査に行ってわかったのですが、 一口で言うと、このL−グルタミン酸を一遍に大量に食べると、科学的な表現ではない のですが、口の中の唾液が全部一遍に出て、ここのちょうつがいの油が切れる、そう言 うと非科学的ですが、それと非常に近い現象が起きます。ですから、1日に何グラム食 べてという問題というのではなくて、例えばラーメンのどんぶりに5グラムとか10グ ラム、大量に入れるとちょっとそのような症状が出るのではないかなと思っておりま す。これはそのときに1グラムから20グラム、段階的に昼休みにみそ汁に入れて飲ん で確認しておりますが摂取量というよりも一遍に濃厚なものを食べたときと考えており ます。  ニコチン酸は、これは先ほど申し上げた事件です。  昭和40年以後では、これしかありません。添加物の過量摂取による事件はこれだけ です。 〔スライド〕  これは食品添加物の1日摂取量調査で、私も厚生労働省のお手伝いをして20数年で しょうか、摂取量調査、非常に大変な仕事です。  それで、1日摂取量で一番多いのは、化学的合成品を中心に考えますとプロピレング リコール、これはうどんとかタコくんとかイカくんがしっとり感があっておいしそうな のは、このプロピレングリコールのおかげです。摂取量は毎年1番です。その次が保存 料のソルビン酸が20から25ミリぐらい。これがいつも2番です。  それでここの一番右の対ADI比を見てもらいますと、非常にこれは少ないことがわ かります。これが実態だと思います。 〔スライド〕  これがその続きです。  色について非常に嫌がる人がます。現在、酸性タール色素は12種類許可されており ますが、その中で摂取量の多いのをここに取り上げました。平均値ですが黄色4号や青 色1号が一番多くてこんなものです。摂取量は非常に少ないです。対ADI比も非常に 低い値を示しています。  特に着色料についてもその安全性は全く問題はありませんが、白いマシュマロはより 白く見せるためにほんの少し青色1号を入れてある製品もあります。  私どもは長い年月調査研究し、あるいは行政検査を行ない、違反を見つけることはあ りますが、特に人体に害を及ぼす可能性はないと考えております。  あえて言うならば、先ほど示したような誤用だけだと思っております。  α−トコフェロール、これはビタミンEと言っていいのでしょうか、この対ADI比 は比較的多いですね。  亜硝酸と硝酸。硝酸が100%以上超えております。ところが、亜硝酸や硝酸は、ハ ムやソーセージの発色剤として使われていますが、特に摂取量が100%を上回ってい ますが、植物が成長する上に硝酸根は絶対必須です。東京都は築地の入荷する野菜につ いては多数、硝酸、亜硝酸を中心に、調査をしております。その結果を見ると、大根は 5,000ppm、ホウレン草等青物の野菜からは多量に検出されます。  ハムとかソーセージに亜硝酸とか硝酸を発色剤として使用してますが、それから来る 率というのは、数パーセントあるかないかだと思いますね。  発色剤というと嫌がるのですが、ボツリヌス菌は通性嫌気性菌ですが、ハムの中心部 は嫌気状態ですので、心配になりますが  ボツリヌスの特効薬だということもありますので、あながち悪いとは言えないのでは ないかと考えております。 〔スライド〕  これは最後の2枚のスライドですが、私、大学に行きまして教職課程で学生が母校に 行って教えるのですが、そのときにみんな悩んでくる。それはなぜかというと、私の大 学の講義とその中学校に行ってこう教えなさいと言われることが余りにも違い過ぎると いうことです。  これは中学の家庭科の副読本をコピーしたのをいただいたのですが、清涼飲料水に入 っている添加物ということで、こんなにいっぱい入っていると書いてあるんですね。こ れは何なんでしょうか。缶詰の清涼飲料水で保存料を使う必要はないし、そんなことを けちつけていると、これ1枚で30分以上かかってしいます。  それで、これはちょっと見にくいのですが、高カロリー、添加物にカロリーがあるの はあるのかな。塩分、食塩なんていうのは食品添加物ではないでしょう。非常に矛盾し た内容で、間違っています。 〔スライド〕  これは高校の副読本だと思います。それもコピーしたのをいただきました。  これはダイエットコーラ+ハンバーガーだと精神障害。実際、こんな副読本があるん ですね。アメリカに挑戦しているのではないかと思います。  ここに書いてあるのも非常に古い、ちょっとそういうようなことが話題になったもの を、あたかも真実だというようなことで副読本にこういうのまで書いてあるというの は、学校教育のあり方が問われます。  要するに、消費者のうちで大学でちゃんとした食品に関する専門教育を受ける人とい うのは全体から見るとごくごくわずかです。ほとんどはこういう食品の安全性などいう のは、一般としては中学とか高校で、それも1時間とかさらっとやるだけですので、学 生は非常に真面目に先生の言うことを聞き、このような副読本で勉強するわけですが、 そこが間違えていれば、本当にぐちゃぐちゃになってしまいます。今、消費者が添加物 について誤解しているというのは、こういうことも根底にあるのではないかというよう な気がしております。  ですので、一見時間がかかるようですが、やはり学校教育というのは非常に重要では ないかと思います。学校の先生も、私が研究所にいるときに大学の先生は勉強しないと 批判していたのですが、2年前から自分が大学の先生になって、ちょっと弱ったなと思 っているのですが、いろいろな大学の先生とお話しすると、「えっ、この先生が」とい う先生が、食品の安全性についてかなり間違えた考えを自信を持っていらっしゃるなと いうのを感じております。   ○司会  どうもありがとうございました。 ○司会  それでは続きまして、徳島大学の関澤教授より、「わが国における食品の安全 リス クコミュニケーションの課題とこれから」についてご講演いただきたいと思います。  関澤先生は、東京大学大学院をご卒業後、東京都公害研究所、国立医薬品食品衛生研 究所などに勤務され、現在は徳島大学総合科学部教授をされていらっしゃいます。  薬事食品衛生審議会、中央環境審議会などの委員を務められ、最近では食品安全委員 会リスクコミュニケーション専門調査会の座長でもいらっしゃいます。  それでは、関澤先生、よろしくお願いいたします。 4.わが国における食品の安全   リスクコミュニケーションの課題とこれから ○関澤先生  関澤でございます。  私の与えられたタイトルは「わが国における食品の安全 リスクコミュニケーション の課題とこれから」というものです。  リスクコミュニケーションという言葉は、最近お聞きになる方も多いと思いますが、 何で片仮名なのとか、なかなかよくわからないわという方も多いと思います。私のスラ イドは、先ほどの西島先生のように身近な話とかより文字が多過ぎて、大体リスクコミ ュニケーションの話をするのに字が多過ぎて、わかりにくいというご批判もあるかもし れませんが、新しい概念ということで、皆さんと一緒にこれから考えていきたいと思い ます。 〔スライド〕  先ほど小泉先生からいろいろ詳しいお話がありましたので、私は余り詳しく話すつも りはありませんが、なぜ食品の安全に関心が高いのかということです。そもそも食品と いうのは、子供でも妊娠中の方でもお年寄りでもすべての人に必須で、欠くことができ ないものだということが前提だと思います。それから、先ほどお話があったように輸入 食材の増加とか加工技術の高度化などなどで、消費者から見ると生産現場や流通過程が 見えなくなっているということがあると思います。  戦後すぐはまず栄養要求を達成しようという量的な目標だったのですが、現在はむし ろ健康の維持という質的な目標に、安全に関係するわけですが、皆さんの関心が高まっ ています。  もう一つは、テレビなどで「あるある……」を別にやり玉に上げるわけではないので すが、みのもんたとかいろいろな番組で食品や健康関連の情報がはんらんしておりま す。これがいいというと皆さんがわっと飛びつかれるといったことがありますが、本当 に信頼できる情報がどこにあるのか。不安に対して答えてほしいんだけれどもというと ころがあると思います。 〔スライド〕  これは先ほど申しました。 〔スライド〕  これも食のファーストフード化とか、以前に使用されていなかったような技術もいろ いろ利用されていて、なかなかわかりにくいということです。 〔スライド〕  これも冒頭小泉先生のお話にもありましたが、いろいろな事件があって、わが国の食 品安全システムというのは世界でもかなり充実している方なんですが、それがまだ信用 できないのではないかと思われるような事件が幾つかございました。そして、食の安全 システムを見直して、もっと監視を強化したいという国民の要求が高まってきているの ではないかと思われます。 〔スライド〕  言葉の説明になりますが、リスクという考えは、何か事が起きてからそれを二度と繰 り返さないということが、これまでともすれば多かったのですが、事前に有害性や危険 性の種類とか起きる可能性を科学的に予測して、判断し、対策を立てましょうという考 え方です。つまり、何か起きてからやるのはだれでもできるのですが、科学的に予測す る、ここのところがちょっと難しい、なかなかわからないということが入ってくると思 います。と申しますのは、予測には、事件が起きていないわけですから不確実さがあり ます。どう判断するかというのはかなりいろいろ考え方がありえますので、判断基準が きちっと明確でないとなかなかわからないということがあると思います。  もう一つは、世の中でよしあしの判断も答えが一つではなくて幅があることがありま す。いろいろな回答が考えられまして、たった一つの答えには必ずしも収まらないとい うことです。  例えば、地震は科学的に予測して、対策を立てています。もちろん天気予報もそうで すが、これの発生時期や強度について、幾ら科学的に予測しようと思っても、まだまだ 情報が不十分ですが、不十分だから何も対策を立てないというわけにはいきません。で きる限り科学的に検討して、いつどのような対策が必要か、効果的かを判断していま す。食品のリスクについても同じ面があると思います。 〔スライド〕  リスクコミュニケーションについては、情報公開の先進国であるアメリカでリスクコ ミュニケーションというのは大事だという本が出されたのですが、そこで示された事例 の一部を私どもが翻訳した本から紹介しております。  従来、リスクコミュニケーションは専門家から非専門家の方へ一方的な情報伝達がさ れ、情報を発信する方の考えが受け入れられれば良いと思われていました。ところが、 アメリカでは情報を公開してもなかなかことが、うまくいかないのはなぜなんだろうと いうことで検討した結果、リスクのコミュニケーションについてコミュニケーションの プロセスそのものをもう一回見直してみる必要があると考えられました。集団や個人や 組織間で情報や意見を交換するのですけれども、関係者の間で理解と信頼が向上しなけ れば物事が達成しないのではないかという結論が、この本には書かれていました。 〔スライド〕  よくある誤解ですが、リスクコミュニケーションというと、今までなかった言葉なの で、いい訳語がないのかなということを私たちも考えておりますが、よく情報提供や情 報交換と誤解されている方もおられます。この点についてわかりやすく3段階仮説で解 説してみます。  例えば技術的な情報の紹介ということは、今いろいろなところで行われていると思い ます。  一つの例ですが、ダイオキシンについては、ダイオキシンというのはどんなものです よとか、どこにどれだけ見つかりましたよと。これは技術的な情報ですね。ところが、 その意味をわからなければいけません。ダイオキシンがそれだけ見つかったから、では どうなの、体にどれだけの影響があるのということが問題となると思います。そこで説 得と解説がなされます。しかし、その場合にも相手の方が十分理解されたかということ を考えなしに一方的に情報提供したり、啓蒙しようとすることが今までやられてきまし た。  さらに、第3段階、これが本当の意味でコミュニケーションですが、インフォメーシ ョンの提供ではなくてコミュニケーションを行います。わからないところをどこがわか らないのか聞いて、それに十分できる限り答えたり討論をする、ここがリスクコミュニ ケーションのポイントだということです。そこが Information≠Communication と書い たことなので、ご理解いただければと思います。 〔スライド〕  先ほど安全、安心ということが言われました。私は安全ということで、科学的な情報 だけ提供していれば十分かというと、安心もやはり大事だと思います。安全については 科学的な推測が必要です。いろいろな証拠に基づいて、いつ、だれにどのような危害が 起きそうか、その程度を推測するというのが安全に関してのリスクについての予測で す。  一方、安心はいろいろな人の考え方によります。その人の知識の程度や経験や立場や 信念によっていろいろな答えがあります。「私はこれは嫌だ」ということを、「おまえ はそんなことを言ったらあかん」ということは言えないと思います。安心については、 それぞれの考えがあるので、十分違いを尊重して、相互に理解を深めるということが必 要だと思います。  一方、違いだけ主張していても、いつまでもまとまりませんが、地震の問題でもそう ですけれども、科学的な予測というベースが必要です。そのベースに基づいて考えの違 いもいろいろな受け取り方もあるので、両方を総合してリスクの対応の意思決定、すな わち実際に対策に幾らでもお金を使っていいわけではありませんし、技術的あるいは経 済的な可能性も考えて、最終的に社会、あるいは個人として対応していく、これがリス クに対する対応の基礎的なやり方だと考えます。 〔スライド〕  これはアメリカの大統領諮問委員会の報告「環境リスク管理の新たな手法」という本 の中にこういった絵があったので、ご紹介いたします。  真ん中に利害関係者の関与というのがあります。実際にはいろいろな問題がころがっ ていますが、どこにどんな問題があるかということを発見する作業が必要です。何をみ んなが問題としているか。あるいは、どこに困ったことがあるか。それをまず明確化す る必要があります。これが出発点です。それから、その問題に科学的にリスクを分析、 次にどういった対応がとれるのか、使えるお金とか技術とか考え方によっていろいろな 対応があります。この選択肢を幾つか皆さんから出し合って、それらを検討して意思決 定して、実際の対策を実施します。しかし、実施しても、うまくいった、いかなかった ということもあると思いますので、それらを再評価して、次に対応すべき問題を新たに 考えていく。このサイクルを実際にやっていくのですが、この真ん中に利害関係者の関 与がある。  つまり、問題がどこにあるのかということを、食品の場合でしたら生産者、消費者、 それから流通関係、行政の方、専門家、みんなが一緒になって考えてやっていく。これ のすべてのステップに利害関係者が関与していくということが大事だというのがこの図 の核に描かれていることです。  食品の場合もこういったサイクルと利害関係者の関与が今後必要だと思います。 〔スライド〕  先ほどの話に戻りますけれども、「知らせればよいのか?」、情報提供があればそれ で足りたのかというと、「リスクコミュニケーションへの前進」という本では、それで は不十分ですということが書かれておりました。今ではインターネットで情報公開がさ れています。技術的な情報や役所からの一通りの解説があると思います。しかし、これ だけで消費者が十分理解してくれないと嘆いていても始まらないと思います。現在の我 が国では、先ほど厚生労働省の方も言っておられましたが、事業者の自主管理と、それ から消費者の理解を高めていくということが必要だというお話でしたが、まさにそうだ と思います。特に食品については、それぞれの食品の選択、自分はどれを食べるかとい うことは消費者の選択に任されております。そうしたときに、やはり消費者の方がそれ なりの知識を持ち、また理解を深めて選択していく。また事業者としても、何も法規制 の中で法律だけを守るということではなくて、モラルの話のご紹介ありましたが、自主 的に問題を少なくしていくということが、これから必要になってくると思います。 〔スライド〕  先ほど小泉先生のご紹介にもありましたが、リスク分析、ここではリスクアナリシス と書いておりますが同じことです。リスクアナリシスというものは、科学的なリスク評 価と、それに基づくリスクマネージメント、それからそのすべてのところでリスクコミ ュニケーションが必要だということを、国連の食糧農業機関、FAOと、世界保健機 関、WHOが提案して、我が国でもおおむねこの考え方に沿ってこれから考えていきま しょうというようになってきております。 〔スライド〕  繰り返しになりますけれども、リスクを科学的に評価する専門家とかリスク管理に責 任ある行政や農家、メーカー、流通業者及び食品を摂取する消費者など関係者間で双方 向的にリスクに関する情報や意見を交換するプロセスをリスクコミュニケーションとい うのかFAOとWHOの報告に書かれている定義でございます。 〔スライド〕  これまで我が国では、安全性は、人任せにしてきたところがあるのではないでしょう か。専門家が何かを決めてくれる、行政が基準をつくってくれる、あるいはメーカーが きちんとやってくれる。もちろんこれらの方が責任ある立場であることは間違いありま せん。リスク管理に責任を持たれる方たちですが、リスクコミュニケーションの考え方 では、食品を毎日食べて、それによって生活、健康を維持している消費者自身も参加 し、社会全体として自分たちの健康とか自分たちの生活の健全さというものを守るため に、トータルとして食品安全を達成していきましょうという考え方でございます。 〔スライド〕  これは欧州連合でどういうことをやっているかということの紹介です。日本と同じよ うに食品安全庁ができ、向こうの食品安全基本法に当たるものには、リスクコミュニケ ーションの必要性について書かれているということでございます。 〔スライド〕  アメリカには食品医薬品庁、FDAというのがございます。少し私たちの参考になる ことを紹介します。  我が国でも政府が決める事柄について、パブリックコメントという方法があることが 先ほど紹介されました。これはどちらといえば一方向的に、何かこれから決めますの で、ご意見のある方はどうぞということになりますが、FDAでは、そのほかに常時各 界や個人からの質問や意見を聞くためのサイトというものがインターネットにあり、意 見を聞くためのサイトも消費者の方、患者さん、保健の専門家、自治体の行政官、業 界、マスメディア、女性、高齢者、子供などへの窓口のボタンが、それぞれ設けられて おります。  なぜかというと、子供が知りたいこと、先ほど教育の重要性ということが言われ、私 もそうだと思いますが、子供は素朴な疑問を持っています。あるいは、自治体の行政官 は、実際的なことがらに関していろいろ質問を持っておられると思います。業界の方も もちろん別な質問を持っています。それぞれの方が違った疑問や質問を持っているのに 対して、まず聞いて、それらに答えていこうという姿勢がインターネットのサイトから は伺えます。  さらに、サプリメントとか食品表示とかエイズ、その他20以上のテーマについてメ ーリングリストがあります。メーリングリストについては、おわかりの方とおわかりで ない方があると思いますが、自分のメールアドレスを登録しておくと、これらのことに ついてだれかが発信すれば、ほかの人が一斉にメールを受け取れる仕組です。こういっ た仕組を用意いたしまして、アドレスを登録しただけで関心ある事柄について日常的に 情報を受け取ったり、意見を述べられるようにしています。 〔スライド〕  これはそのサイトの実際の画面ですが、Consumer Advice とか連邦や州政府の方、業 界の方とか、国際的な規制ですとか、保健の専門家というようなボタンがあるという例 です。 〔スライド〕  もう一つは、これから我が国でどうしたらいいかということを考える上に参考になる かなと思ってご紹介しますが、例えば新たな規制の制定や既存の法令の改廃についても その申請手続を解説してあり、そのサイトにおいて自分の意見や、こういったことをや ってほしいという提案はだれでもできます。これら意見や提案については時間的余裕を もって慎重に検討されると書いてあります。それが「Let Us Hear From You !」という サイトですけれども、政府が何か決めるからご意見ありませんかということにプラスア ルファをFDAではやっているという紹介です。 〔スライド〕  これは古いんですが、今から40年以上前にケネディ大統領という方がアメリカにい たのですが、「消費者利益の保護に関する特別教書」というのを出し、民主社会の行政 府が消費者に保証すべき権利として、(1)安全を求める権利、(2)知らされる権 利、(3)選ぶ権利、(4)主張し傾聴される権利というものを掲げました。  これらの四つの権利というのは、日本が民主社会であるならば、やはり同じように保 証されていく基本的な権利で、すべての人に保証されるべきものであると思います。 〔スライド〕  では、私たちは日本で食品安全についてどういうふうにやっていくのか。アメリカと 日本が全部同じことをすればいいのでは、必ずしもありません。日本は、先ほどご紹介 ありましたように、輸入食品に相当頼っています。さらに、生産加工技術としては非常 に高度なものを持っています。そういったことを背景に、長距離輸送に伴い生産現場と 消費現場はほとんど隔絶してしまっています。ここで食品安全を実現していくにはどう いうことが必要か。これは一緒になって先ほどの関係者が共同して考えていかなければ ならないものです。専門家だけに任せるのではなくて、非専門家である消費者の方も含 めてリスクの考え方、どういうふうに予測して、どういうふうに対策を考えていくかに ついて理解していただく。自らの安全保障を考える。ただ安全であればいいだけではあ りません。食品は安くなければいけませんし、おいしくなければいけません。安定に供 給されなければいけません。  さらに、日本のことだけ考えていればいいのかというと、世界規模で、もし飢えてい る方がたくさんいて、他方、私たちはたくさんの食糧を輸入しておりますが相当量が食 べられないで捨てられているといいます。そういった状況も頭に入れながら、食品安全 と必要な食品供給というものも一緒になって考えていく必要があると思います。 〔スライド〕  結論ですが、リスクコミュニケーションは一方的な情報提供ではなくて、関係者が意 思決定に参加することで責任を持ち、正当な関心や不安に対して答えられ、意見を聞か れることが実現されるところにあると思います。  食品の「安全」と同様に「安心」についても、先ほど厚生労働省や農林水産省の方が いろいろなご努力をなさっていらっしゃる紹介がありましたが、それぞれに手間が必要 です。お金も必要です。それは「安全」についてもそうですし、「安心」についても必 要な範囲の手間と人手をかけることなしに安全と安心は保証できないだろうと思いま す。 〔スライド〕  食品安全基本法が成立し、食品安全委員会が設置されましたが、最も重要な当事者、 いろいろな関係者がおられますが、実際に食品を食べて、それから被害をこうむる可能 性のある消費者が「知る権利と意見を聞かれる権利」をきちんと行使する。そうするた めには、関係者が意見を述べ、尊重される枠組み、その場と機会が社会の中に確立され る必要が、あると思います。それから、一人一人が自分の命や生活を守る方法について 学び、自分の考えを持って相手に伝えることに習熟していくということが必要かと思い ます。コミュニケーションというのは、一方的に消費者としても「私はこれが嫌いだか ら嫌い」ではなくてそれなりに考えて、学びながら意見を言っていく。そして相手に理 解してもらうということをお互いに習熟していくということが、リスクコミュニケーシ ョンのために、必要なのではないかなと思います。以上です。 ○司会  どうもありがとうございました。  それではここで、また10分程度休憩を設けさせていただきたいと思います。  意見交換は3時25分から開始したいと思いますので、それまでにお席の方にお戻り いただきますようよろしくお願いいたします。 1.意見交換・質疑応答 ○司会  それでは、時間となりましたので、意見交換に移らせていただきたいと思います。  意見交換については、コーディネーターに進行を願いしたいと思います。 ○コーディネーター  本日、意見交換会のコーディネーターを務めさせていただきます、厚生労働省医薬食 品局食品安全部企画情報課の広瀬と申します。よろしくお願いいたします。  意見交換会では、先ほどご講演いただいた方々に加えまして、各種団体等の代表的な 方にご参画いただいております。  初めに、簡単に所属等の紹介をさせていただきたいと思います。  まず、こちら側の席からになりますが、内閣府食品安全委員会の小泉委員でございま す。  続きまして、厚生労働省外口大臣官房参事官でございます。  続きまして、農林水産省姫田消費者情報官でございます。  その後ろになりますが、食品安全部基準審査課で添加物の担当をしております加藤係 長でございます。  それから、実践女子大学の西島先生でございます。  徳島大学の関澤先生でございます。  続きまして、仙台市消費者協会会長の小林様でございます。  そのお隣が、日本食品添加物協会常務理事の竹本様でございます。  そのお隣が、福島県果樹経営者研究会長の佐藤様でございます。  ここで、小林様、竹本様、佐藤様には、今回の意見交換会に臨むに当たりまして、そ れぞれ簡単にご意見等をいただければと思います。お一人様、3分程度でお願いしたい と思います。  小林様からお願いいたします。 ○小林会長  仙台市消費者協会の小林でございます。  3分という短い時間ですので、ちょっと用意してまいりましたものをもとに述べさせ ていただきます。  私どもは、健康で安全な消費生活を守るために、自分たちで何とかしなければという 思いで集まりました任意団体です。会員の9割は主婦でございまして、ことしで設立2 7年目になります。活動の目的は、消費者の権利の確立と確かな判断力を身につけた、 自己責任を負えるような消費者になることです。  しかし、今や情報の受発信に必需品となっておりますパソコンを持っておりません。 情報弱者になりつつある団体でもございます。  活動の柱は四つあります。一つは、消費者の意見や主張を伝えること。二つ目は、主 張の根拠となる調査や研究をすること。三つ目は、会員とか市民に消費者の立場に立っ た情報を伝える講座とか研修会などを開催すること。四つ目は、子や孫の代まで生き延 びられるような環境をつくっていくこと。以上です。  私たちの活動には、消費者協会独自の活動とネットワークを組んだ活動とがございま す。まずネットワークを組んだ方の活動を紹介させていただきます。これは食の安全に 限ってやっておりますが、1997年にみやぎ生活協同組合さんが事務局になって、主 婦連合会の仙台支部、それから宮城県地域婦人団体連絡協議会、宮城県消費者団体連絡 協議会、宮城県生活協同組合連合会、生活協同組合仙台共同購入会、私たち仙台市消費 者協会の7団体で、食品の安全行政を進める懇談会というのをつくりました。県ですと か国、市町村、それぞれの議会に対して食品の安全行政を推進するという働きかけをし ております。  これまでにどういうことをやったかといいますと、ダイオキシン類の対策を求める意 見書の提出を求める請願。食品衛生法の改正。これは請願と同時に署名活動をいたしま して、宮城県内では23万7,306筆、全国では1,340万筆を集めて改正を実現 したというふうに考えております。  このほかに、狂牛病に関する要請ですとか、遺伝子組み換え作物とそれを使用した加 工食品の表示に関する要望書なども提出しております。  また、宮城県に対しては、宮城県における食品安全に係る基本方針の策定などを求め る要望書というのを提出いたしまして、既に基本方針ができました。また、アクション プランも決められまして、今、仮称ではありますけれども宮城食の安全・安心基本条例 の検討が始まっているところです。懇談会としましては、条例制定グループをつくって 条例の学習に取り組んでおります。  次に、協会独自の活動ですけれども、製造物責任法の制定ですとか、消費者契約法の 制定、それから加工食品とか水産食品の品質表示基準、それから遺伝子組み換え食品の 表示の改正案についての意見書を出しました。また、放射線照射食品に対しては、新た な基準の設定を求める意見書というのも出しております。遺伝子組み換え食品の安全性 審査の義務化についての意見書ですとか、今、加工食品の原料・原産地表示に対する意 見書の提出なども行っております。  私どもの食の安全に関する講座というのは、ここ数年大変にふえておりまして、年間 では3カ月弱のところで30講座というのをやっておりますけれども、3年間で60以 上の講座を、食だけに限ってやっております。それから、遺伝子組み換えについては、 試買調査をいたしまして表示を調べました。また、宮城県内の500人の消費者に対し て、食品表示に対する信頼度についてのアンケート調査をいたしました。きょうの発言 は、これらの調査をもとにしたものになると思います。  きょうの会ですけれども、食品衛生法が改正されて、その目的に食品の安全の確保と 同時に国民の健康の保護というのがうたわれました。その三つの視点の中に予防的観点 に立った対応が盛り込まれました。この「予防的観点に立った」というところを、私ど もは高く評価しております。また、農林水産省の食と農の再生プランの中にも「消費者 に軸足を移した」という言葉が出てきまして、予防原則という文言が明記されたことも 大変高く評価しております。  私どもは、長い間、日本の消費者というのは事業者を規制することによって得られる 反射的利益しか受けられなかったというふうに考えております。国は100%危険性が 証明されるまでは安全と見なすという考え方に立って食品の安全行政をしてきたと。こ れからは、ぜひ100%安全が証明されなければ、基本的に危険と見なすと。国民を未 知のリスクにさらすことはできない。あまねく、ひとしく守るために禁止するというよ うな予防的原則に立った食品の安全行政を進めていただきたいというふうに切望してま いりました。  今回の食品衛生法の改正や食と農の再生プランに明記された予防原則というのが、こ れから実効性を発揮して、ぜひそれが実現されるようにと期待しております。  また、もう一つ申し上げておきたいのですけれども、現在起きております食への不安 というのは、個人的にたばこを吸わないとか、酒をたくさん飲み過ぎないとか、油っこ いものだとか甘いものを食べ過ぎないといったような個人で選択できないというところ に不安が大変大きいのだというふうに考えております。  また、安全性の審査の基準になっております最新の科学的知見という言葉ですけれど も、科学の発達のいちじるしい今日では、科学的知見というのはすぐに過去のものとな ってしまうのではないかと思います。その科学的知見というのは、今現在についてだけ わかるものであって、これから50年、100年先の人類にとってどういうふうな影響 があるのかといったようなことを見通す力はないのではないかと思っております。それ は遺伝子組み換えですとか、環境ホルモンといったような大変消費者にとっては不安の 高いものについて如実にあらわれておりまして、最新の科学的知見という言葉の持つ不 確実性だというふうに私どもは考えております。これからも科学の力を過信せずに、慎 重の上にも慎重に予防原則を貫いていただいて、日本の国民から信頼を寄せられる行政 になっていただきたいと大きな期待を寄せております。以上です。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  続きまして、竹本様、お願いいたします。 ○竹本常務理事  日本食品添加物協会の竹本といいます。よろしくお願いします。  協会では広報関係を担当しております。  日本食品添加物協会といいますのは、日本国内で食品添加物の製造、輸入、販売。そ れから使用している企業、団体によって組織されておりまして、ことしで創立21年と いう長い歴史を重ねております。会員数は、この4月現在で1,000社強になってお ります。  私どもの活動ですけれども、会員は主に企業になりますけれども、会員に対しまして は食品添加物の製造、販売、使用についての正しい知識の普及を図り、一方消費者の方 には、食品添加物の有用性と安全性についての理解を求めることで、これら両方によっ て食品関連業界の健全な発展と消費者の食生活の向上、公衆衛生の向上に寄与すること を目的にして活動してきております。  ただ、残念なことに、去年、ことしと未指定添加物事件が起きまして、我々協会とし ては非常に遺憾に思っておりますし、会員に対しましては法の遵守をさらに徹底するよ うにお願いしております。  これに関係するかもしれませんですけれども、先ほど小泉先生が言われましたよう に、食品添加物に関する不信、不安というのですか、それが昔から強く、また最近の食 品安全モニターの結果でも、やはり食品添加物に発がん性があるのではないかというこ とが4番目ぐらいにランクされているということで、非常に遺憾に思っております。  詳しいデータの説明がありませんでしたが、モニターの方を四つのグループに分けま して、一般消費者の方、食品関連業界の方、食品研究職経験者、医療・教育職経験者と 四つのグループに分けて、それぞれの方たちが食品添加物の発がん性が高いと思うかど うかということのアンケート結果も出ておりまして、非常に残念なことに、教養レベル が高いと言われる人たちもかなり発がん性の原因ではないかというふうに見ておられま す。  一方、これもよく皆様方ご存じだと思うんですけれども、「暮らしの手帳1990」 の黒木先生の調査で、一般消費者の方は発がん性の原因として食品添加物をトップない しに上げられておられるけれども、米国のがんの疫学者はほとんどがんの原因とは見て ない。むしろ先ほどありましたように、普通の食べ物とかたばことかが非常に大きな原 因だというふうに見ておりますし、それから1997年に世界がん研究財団及び米国の がん研究財団という専門の研究財団が一緒に発表されております「がん予防のための食 生活14カ条」という中でもいろいろ書かれている中で「食品添加物に関しては、きち っとした規制のもとではがんの心配はない」ということがはっきり明記されております し、それが日本の北海道の医師会でもホームページで引用されています。  こういうことで、よく言われておりますように、専門家と一般の方たちのように意識 のずれが非常に大きい。これは何故なんだろうかなということで、もちろん協会としま しては、これまでもコミュニケーション不足だということでいろいろ活動をしてきてお りますが、ただ、一協会の活動には限界がありまして、やはり科学的なデータに基づく 行政及び学界からのリスクコミュニケーションというものが大切であり、これまで若干 不足していたのではないかなというふうに考えております。  今回、法律改正等ございまして、食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省がそろっ てリスクコミュニケーションをやっていただけるということ、それから、学界からも適 切なリスクコミュニケーションをやっていただくことによって、適切な学校教育を行わ れるようになり、一般消費者の食品添加物への過剰な不安が解消されることを願ってお ります。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  続きまして、佐藤様、お願いいたします。 ○佐藤会長  私は、福島県の果樹経営者研究会という組織がございますが、その会長を仰せつかっ ております佐藤と申します。  モモ、リンゴ、ナシ、ブドウ、サクランボの5品目の栽培者の集まりでございます。  今回、このような法改正によりまして、栽培されている農産物への農薬の散布履歴を きちんとわかるように、消費者の皆さんにお届けできるようにというような法改正があ りましたが、まさに我々はそういったものは従前から努力して、取り組んでいるもので ございました。当然、残留農薬の問題は避けて通れないことでありまして、私も農家と しては、この高温多湿の環境の中である日本農業では、最低限度の農薬は必要だという 見解に立っております。  しかし、農林水産省の補助事業で指定を受けまして、今、農薬を半分に減らすために はどうすればいいかというような手法の一つとしまして、害虫の雌のにおいを人工的に つくり出しまして、5種類の害虫の雌のにおいをチューブに詰め込んで、それで雄をお びき寄せて、殺虫剤を使わないで産卵も交尾もとめていくというような新しい、これが セイヒロモンザイ利用というような栽培があるわけでございます。  それらを平成6年から実証試験を行いまして、今現在、それが登録も取れまして全国 に普及しているという、そういった手法を取り入れながら、10年目の皇室献上モモの 里桑折町というような産地をつくっている現状でございます。  そういった取り組みが、現在、まさに野菜にも、その他柑橘類にも取り入れられまし て、農家もそれはただの農薬ではございませんで、まさにそれは我々の懐から出ていく わけでございますが、経営費の圧迫にはなるわけでありますが、殺虫剤よりはいいだろ うということで、経営費は高くついても消費者の皆さんには安全をお届けしたいという ことから、こういった取り組みをしております。  今現在、そういった取り組みの中でもある業者さんは、海外でつくったであろうダイ ホルタンというような特定の銘柄を申し上げますが、そういった過去の農薬、しかも発 がん性が非常に高いと指摘を受けて、もう登録除外された、抹消された農薬が、今現在 闇のルートで流れていたということは、皆さんもお聞き及びだと思います。そういった 風評被害にも我々は悩まされております。心ない一業者、一農家の取り組みが、我々、 今申し上げましたようなそういう取り組みを水の泡にしているという現実もございま す。  今現在、そういった産地をきちんと表示をして、私がつくりましたと言えるようなコ シヒカリをお届けしても、福島県でつい最近発覚したのでありますが、アメリカから輸 入したお米をそれにまぜ合わせて販売をした。この業者はつい最近倒産をしております が、そういった心ない業者の方々の仕打ちが、我々善良な、皆さんが求めるような栽培 形態にのっとってきちんとお届けしたものが途中でまぜ合わせられている。  ですから、きちんとこうした原産地表示をしなさいよという法律ができることは、私 ども生産者と消費をしていただく皆さんとが手を携えて、これから新しい出発点に立っ たのだなというふうに私は踏まえておりますし、そういったことはもう当然のごとくの ように、今までもっと早い時期にそういったことの指摘を受けて、そういう法的な整備 をされることがしかるべきだっただろうというふうに申し上げておきたいと思います。  細部にわたっては、また後ほど時間があれば申し上げたいと思います。以上です。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  それでは、本日の意見交換の進め方ですが、テーマごとに進めさせていただきたいと 考えております。  例えば添加物についての話とリスクコミュニケーションについての話、それぞれ複数 のテーマについてご意見等ございます場合には、一度に両方とも発言いただくのではな くて、それぞれのテーマで1回ずつご発言いただきますようお願いいたします。  また、会場の皆様にもご意見等いただきたいと考えております。ご発言をいただく際 には、手を挙げていただきますようお願いいたしますので、手を挙げた方の中からコー ディネーターの方で発言される方を指名させていただきます。指名された方のところへ 係の者がマイクを持って順番に伺いますので、その際には、差し支えなければご職業な どとお名前をおっしゃられた上でご発言をいただけるようお願いいたします。  テーマについてですけれども、食の安全の確保の取り組みにつきましては、テーマ全 体が幅広く多岐にわたっておりますので、まず初めに食品添加物について、次にリスク コミュニケーションについての意見交換をさせていただきたいと思います。最後に食の 安全確保に向けた取り組みについてというふうに順番に進めさせていただきたいと思い ます。  また、その他一番最後にはどんなテーマでも構いませんので、全体を通じての意見交 換の時間を設けたいと考えております。  それでは、食品添加物の方から始めさせていただきたいと思います。  先ほども小泉先生のご講演とか、さまざまな方からのご意見の中で、いろいろ食品添 加物について関心が高いという結果が寄せられております。私どもが意見交換等の際に 行っておりますアンケートでも、食品添加物に関する関心が高いという結果が得られて いるところでございます。  まず、食品添加物につきましては、この意見交換会申し込みに当たりまして事前に寄 せられているご意見がございますので紹介をさせていただきます。  「食品添加物につきましては、食品安全モニターのアンケートにおいて添加物が消費 者、行政関係者と科学者との間で食品の安全性に関する認識のギャップが高いというこ とが回答されております。今後行政はどのような方向でギャップを埋める方針でしょう か」というようなご質問でございます。  それから、食品添加物の問題点につきましては、参考資料といたしまして、札幌での 意見交換会の際に実施したアンケート調査というのを皆様の資料の中に入れさせていた だいておりますが、4分の3ページのところの9の7というところで、食品添加物の何 が問題かということでお尋ねしたところでございます。  いろいろなご意見ございましたけれども、不必要なこととか、必要以上の量の添加物 を使っているのではないかとか、複合摂取に問題があるのではないかなどなど得られて いるところでございますが、やはり正しい知識を得るための情報提供が必要だというよ うな意見が多いというふうに感じております。  本件につきましては、行政あるいは専門家のお立場でコメントをいただきたいと思い ますが、行政の方、何かコメントを。参事官の方からお願いいたします。 ○外口参事官  ご質問は、食品の安全性に関する認識のギャップが高いことをどのようにして埋めて いくか。食品添加物が例に挙がっておりますけれども、これは情報の公開の仕方を工夫 するということが一つあると思います。  現在でもホームページには審議会の審議、あるいは議事録の公開等ホームページに載 せておりますけれども、もちろんホームページを見ない方もおられますので、中身につ いては私どもも広報誌に載せたり、新聞に挟み込んでくる冊子のようなものがあります ね。あるいは、テレビ番組でお願いしたり。例えばテレビ番組でも輸入食品の監視等 は、テレビの映像というのはすごく効果的なんですよね。どんな検査をしているのかよ くわかります。そういったことを組み合わせていくことが一つあるかなと思います。  それから、情報提供の媒体がわかりやすいのがいいんだといって、いわゆる消費者向 けとかいうパンフレットをつくりますけれども、それだけではなくて事業者さん向けの 説明ですね。業者さん向けのパンフレットとかマニュアルとか、これもあわせて公開し ております。それでご関心の高い消費者の方は、ぜひそれも見ていただくと、もっとよ くわかるときがあります。 例を挙げれば、アレルギーの表示等も、わかりやすさはこ のパンフレットがホームページでダウンロードできますけれども、わかるんですね。だ けれども、実際に本当に細かいところはどうなっているのかというのを考えると、アレ ルギー物質を含む加工食品の表示ハンドブック。これは製造販売業者の皆様へ、どうい う表示をどのようにすればいいか、こういうのを示している。これもあわせて見ていた だくと、例えばキャリーオーバーだとか、いわゆる細かいところがどうなっているかよ くわかると思います。  それから、同じようなことが、例えば遺伝子組み換え食品の場合であっても、一般向 けのこういうパンフレットもありますけれども、事業者さん向けの表示のマニュアルも ありますし、実際にバルク輸送で大豆とかトウモロコシを運ぶ業者さん向けの流通マニ ュアルとか、こういうのもですね。実はこれは厚生労働省ではなくて農林水産省のホー ムページから食品産業センターの方を探して拾ってくると出るんですけれども、この流 通マニュアルを読むと、アメリカからどういうふうに分別して、どんなチェックをしな がら来るか、こういうのがよくわかります。ということで、情報の出し方、提供の仕 方。  それからそれとあわせて、先ほど来、関澤先生からもお話を伺っておりますように意 見交換の仕組みですね。一方的な説明にならないようにということ、これを繰り返しな がらやっていくことがやはりギャップを埋めていくのに役に立つのではないかと考えて おります。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  添加物の関係で、例えば消費者の立場で小林様、何かご発言等ございますか。 ○小林会長  食品添加物は、自分が体験したことを言いますと、あれは本当にどれくらいの量が安 全だからと言えなくて、人によってとても差があって、子供たちが小さかったころにイ ンスタントラーメンを食べさせると必ずぐあいが悪くなったんですね。多分かん水も合 わないんでしょうし、最初に出てきたころは保存状態も、もしかすると店頭で悪かった かもしれないんです。日の当たるところで商品を並べていたりとか、そういった微妙な ところがあって、添加物についてはとても難しいというふうに思います。  実際にどういうものに使われているかという実験教室なんかも開催いたしましたけれ ども、先ほどお話を伺って、1990年のデータを例に出されたんですけれども、私も 初めてあのデータを見たときは、すごく差があるんだなということを感じました。感じ ましたけれども、そのころと比べて、もっともっと加工食品に食生活が依存しているの ではないかと。大人だけではなくて、子供たちもすごく加工食品に依存している現状を 考えますと、昔考えられていた、これだったら安全という1日許容摂取量ですか、それ が今もそのままでいいのだろうかという疑問を持っております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  何か行政の方からコメントとかございますか。特によろしいですか。 ○外口参事官  添加物については、よくあるご質問で、昔の基準と今の科学的知見のギャップをどの ように埋めていくか、それから承認した時期による科学的知見の違いについてどう考え るかという質問をよくいただいております。  そういったことを受けまして、私どもも一たん認めたからずっといいんだということ ではなくて、新しい科学的知見に基づいて、これは順次見直して、より適切な方向で考 えております。  それから、いろいろな添加物の組み合わせの影響とか、そういったこともいろいろご 質問をよく受けますけれども、それは科学的知見をどうやってやるかという系はなかな か難しいんですけれども、これもまたいろいろ私どもとしても研究課題ではないかと思 っております。 ○コーディネーター  ADIが今の理論の中で大丈夫かというご質問もあったかと思いますけれども、実 際、西島先生のスライドにもありましたように、ADI数%というのも結構多いという ようなこともございますので、そういった中で安全性も担保されているのかなというよ うなことはあるのかと思います。  それでは、日本食品添加物協会の方にも来ていただいておりますので、竹本常務理事 からも何かお一言いただければと思います。 ○竹本常務理事  今のお話ですけれども、年齢的なものにつきましては、厚生労働省の調査で年齢別に 添加物をどれだけ食べているかということを見ておられますし、ADIを決定するとき に、動物から人へ持っていく場合に10倍の安全率を掛けていること、人の場合、さら に大人と幼児の違いがあるということで10倍の安全率を掛けているという形になって おります。ということで、基本的にはそんなに問題ないでしょうし、それから時代とと もに安全性評価の技術というのは発達してきますし、それに応じて薬事・食品衛生審議 会でその時その時、問題があれば、再度いろいろ検討されているということですので、 問題はないかなと私どもは思っております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  ほかに、パネラーの方で添加物の関係でご発言。西島先生、どうぞ。 ○西島先生  ちょっと話がずれるかもしれませんが、まず企業、メーカーの方がいらっしゃったら ぜひ聞いていただきたいのですが、まず違反を絶対しないということが根本だと思いま す。  私ども食品添加物だけに限っても年間4万件という多数の検査を実際にやっていまし たが、違反の内容が健康障害を起こすかというと、まず起こさない。だけれども、新聞 とかテレビでは、それを大きくセンセーショナルに扱います。それを消費者が見て怖い と思われるのではないかなと。まず違反をしないというのが絶対的に必要だと思いま す。  それと添加物ではないのですが、平成8年だったでしょうか。米が不足になっていろ いろな国から輸入したときに、東京都では残留農薬の試験を多数検査しました。その結 果、ほとんど何も検出されませんでした。それを広報が毎月プレス発表したんです、と ころが、どこもの社も扱ってくれない。消費者は、私どもに向かって、「あなた方は税 金で給料をもらっているので何でやらないの」と責められる。再度、広報が各テレビ、 新聞各社を集めてお願いしたんですね。「輸入の農薬は大丈夫だから、ぜひ本当のこと を記事にしてほしい」と言ったのですが、次の日、私はすごく楽しみにしていたのです が、次の日出たのが赤旗1社、それもこんなに小さいものしか出ていない。それが現実 なんです。ですから、本当のことを流すといってもマスコミにどう対処するかというの が、非常に重要なところだと思うんです。ですから、そこら辺をぜひ厚生労働省も農水 省も、工夫して、消費者にいかに本当のことを伝達するかということを考えていただき たいと思います。  添加物に戻るのですが、許可をしている食品も使っていない、例えば保存料とか甘味 料等に許可をされている食品も使っていないものがすごく多いというのと、使っていて も基準値をオーバーするというのは年にほんの少しなんです。ほとんどは、大体4割か ら6割ぐらいの間の量で使っているます。メーカーの方もそこら辺は意識してちゃんと 使っている。ただし、余り少な過ぎて使ったという意識だけで取り扱いが散漫にならな いかなと、逆にそういうところもちょっと心配しておりますので、その点を留意して慎 重にやっていただきたいと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  ほかにパネラーの方でご意見等ございますか。特にないようでしたら、会場の方から も食品添加物につきましてご意見等あれば受けたいと思いますが、どなたかご発言され る方はいらっしゃいますでしょうか。特にはよろしいでしょうか。  それでは、食品添加物についてはこちらで終わりにさせていただいて、リスクコミュ ニケーションに移らせていただきたいと思います。  リスクコミュニケーションにつきましては、特に食品の安全の分野で比較的新しい取 り組みで、古くは、例えば原子力発電所の立地とか、そういったところで取り組まれて いるということを聞いております。今後どのように進めていくべきなのか、試行錯誤で 現在やっているというような状況であるかと思います。  最初に、事前にお寄せいただいた意見がございますので紹介させていただきます。  「リスクコミュニケーションについては、関係者相互間の情報及び意見の交換を促進 するためのそれぞれの役割と責務について教えてください」ということでございまし た。  これにつきまして、行政の方からコメントをお願いしたいと思います。外口参事官、 お願いいたします。 ○外口参事官  リスクコミュニケーションのそれぞれの役割と責務ですけれども、これは一番基本理 念が明確に書いてあるのは食品安全基本法なんですけれども、その中で、例えば「国や 地方公共団体は意見交換の機会を設けたり、施策についてわかりやすい情報を提供する 」「食品関連事業者は、正確かつ適切な情報提供に努めるとともに、意見交換などの国 の取り組みに協力する」「消費者は、食品の安全に関する知識と理解を深め、意見交換 の機会において意見を表明するよう努める」と、それぞれの役割というか基本理念が書 いてあるわけです。  それを受けまして、先ほど説明したこれの8ページに、食品衛生法の中ではいろいろ な基準設定等に際して国民・住民からの意見聴取、それから基準設定と関係なくしても 定期的な意見聴取を求めなければならないと、こういう義務が明確に規定されておりま す。これは厚生労働省だけではなくて農林水産省の方の法律も同じように規定されてお りますので、ことしからそういった役割に従ってリスクコミュニケーションが進んでい くのではないかと思っております。  ただ大事なことは、関澤先生のご講演の中にありましたように、これが意見交換を通 じて何か次のステップにつながるような方向へこれを発展させていくことではないかと 思います。あくまで一方的な説明とか説得ではないんだよということがどこまで実行で きるか、これがかぎになっているのではないかと思っております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  姫田消費者情報官、お願いいたします。 ○姫田消費者情報官  基本的な考え方は、今、外口参事官がおっしゃったとおりです。  具体的に申し上げますと、私どもの資料3の最初から4枚ぐらいめくっていただきま すと、リスクコミュニケーションの推進というのがございます。通常時においては、一 つはホームページを通じて設置して情報提供を開始する。これは情報提供していこうと いうことです。  それから、大臣との意見交換会に加え、それぞれ山梨とか熊本と書いてあります。こ の後、札幌とか名古屋とか沖縄とかでやっています。きょうが仙台でございますが、3 府省で連携して、通常の意見交換をやっていこうということを考えております。  もう一つは、食品に関するリスクコミュニケーションということで、今のところ東京 でやっておりますが、残留農薬の管理についてどうやっていこうということで、残留農 薬について集中的にやっています。この後、11月10日には抗菌性物質についてリス クコミュニケーションを行いました。これは、抗菌性物質について、食品安全委員会に どう諮問しようかということについて意見交換をやったということで、具体的に言いま すと、新しいリスクの管理をやるときは食品安全委員会に諮問します。その前にまず意 見交換会をやっていこうと。また、食品安全委員会のリスク評価が終った後に、我々が 具体的な管理のあり方を決めるので、その前にもやっていこうと。管理のやり方を決め た後、従来のパブリックコメントとか、そういうことをやっていこうということで、少 なくとも管理の各段階で具体的にやっていこうとしております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  ほかにリスクコミュニケーションの関係で、小泉先生、よろしくお願いいたします。 ○小泉食品安全委員  私どももこのパンフレットの中にございますように「食の安全ダイヤル」を設けてお ります。そこで自由に、03でお金がかかる、0120ではないのでお金がかかるので すが、そこにはリスク評価だけでなしに、むしろリスク管理に関する電話もかかってま いります。そこは厚生労働省、農林水産省とも連携しまして、これについてはそちらで お答えくださいというような連携のもとにご返事を申し上げております。  それからもう一つ、先ほど申しましたように食品安全委員会もその下部機関のような 分科会の食専門調査委員会もすべて公開でやっておりますので、それをお聞きくだされ ばいいのではないかと思っております。  それからもう一つ、パンフレットの最後のページ、9ページですが、いろいろな団体 との意見交換会をこのように毎月、多いときでは8回ぐらい行っております。今のとこ ろ、例えば消費者団体とか消費生活アドバイザーとの懇談とか、食品産業関係者と個々 にやっておりますが、今後はそういった消費者団体と生産者とかいったような意見交換 もあっていいのではないかという話も出ております。以上でございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  ほかにパネラーの方、特にございますでしょうか。よろしければ会場の方からもリス クコミュニケーションに関して、何かご質問、ご意見等あれば受けたいと思いますが。 そちらの方、どうぞ。 ○質問者  一つは、リスクコミュニケーションの概念についてなんですけれども、セミプロの世 界でテーマ別にものを扱っていくとか、一般論として食の安全を知ってもらおうとい う、あるいはその取り組みについて物事を知ってもらおうというのをコミュニケーショ ンと考えるのかどうかということで、その定義をどういうふうにしていくかというのに 非常に迷いがあると思うんですけれども、リスクコミュニケーションという概念という のは、一体どの範囲をどういう形で指しているんだということをひとつ教えてほしい と。  それから、2点目は、政策評価のパブリックコメントというのはやるわけですけれど も、セミプロの世界での意見がほとんどでして、このリスクコミュニケーションを続け ていくときにセミプロの世界でキャッチボールをしているという形というのが本来の姿 なのかどうかという話をいつも疑問に感じているんですけれども、その方向を多くの人 に参加してもらう形にするためにはどういうふうにしていったらいいのかということを 関澤先生にちょっとお伺いしたいなと思っていました。  それから、もう1点は、行政の効率性という点からいうと、地方と国が同じようなこ とをやっているという批判もあるわけですよ。そんなものは1カ所でいいじゃないかと いう批判もあるわけでして、その点からいくと前の意見と矛盾するわけですけれども、 多く繰り返した方がいいということはわかっているんですけれども、片方でそういうこ とをやっていていいのかという意見もないわけではないという点からいくと、その形も どういう形がいいのか。私は後者の方というかどんどん繰り返してやるべきだと思いま すけれども、その辺のところの効率性を上げるためにはどういう方法があるのかという ことを教えていただければと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  最初の二つの質問でリスクコミュニケーションの概念のところと、今はセミプロのキ ャッチボールのような形になっているけれども、多くの人に参加してもらうにはどうし たらいいのかという点について、関澤先生からコメントをいただければと思いますけれ ども。 ○関澤先生  ちょっとぴったりの答えになるかどうかですけれども、概念については、先ほど相当 詳しくお話ししたつもりです。  それでセミプロと言われるのが、例えば今日のような話がそういうふうに受け取られ ているのかどうかわからないのですけれども、私はFAOとWHOが食の安全のリスク コミュニケーション会議というのをやり、先ほど紹介したような概念をいろいろ出した ときに、私も専門家の一人として参加させてもらい、日本の例を引いてその最終的な勧 告に盛り込ませてもらったことがありました。その例をちょっとお話ししてみたいと思 います。  それは何かというと、O−157病原性大腸菌の事件での教訓です。いろいろな教訓 があったので様々なことを話したのですが、先ほど話した例に沿って言えば、例えば当 時、食品衛生の関係者と治療に当たる医療関係者の間のコミュニケーションが、最初は 余りうまくいかなかったんですね。それでどういうことが起こったかということなんで すが、例えばお医者さんは適切な時期に抗生物質を使わないと、かなり病原菌がふえて から使うと一遍に病原菌が死んで、毒素が一度に放出されるために、かえって患者さん が亡くなるという事態がありました。ということは、お医者さんにとって必要な情報 は、どういう症状があって、どういう時に抗生物質を使ったらいいのかという情報が大 変重要だったのですね。一方、お子さん、あるいはお母様方は、この菌は70度ぐらい で少ない時間で加熱して死ぬ菌だったのですけれども、食材をどうすれば安全に食べら れるのか、どんな食材をどういうふうに扱えば、水で洗うとかいろいろありますけれど も、比較的そういうことで防除しやすいものだったので、どうしたらいいのかという情 報が必要だと思われました。  ところが、当時の厚生省がインターネットで最初に出した情報はかなり専門的でもの で、病原菌の毒素がベロ毒素というものですとか、それからどこでどれだけ患者さんが 発生してますということは逐次報道していたんですけれども、必ずしもそれぞれの方の ニーズに合った情報が出ていたかというと、そうではなかったかもしれない。それらは 反省点として、つまりお子さんが必要な情報、高齢者の方が必要な情報。高齢者の方 は、自分の体についてわかってほしいと、これは大丈夫ですかと聞きたいときに答えて もらえるかどうか、それが大事だと思います。  アメリカにマンスフィールドという上院議員がいて「日本の行政はどうもよくわから ない」と、マンスフィールド計画というのを立てて、日本の行政の中にアメリカの行政 官を送り込んで中から勉強してやろうというので来ました。環境保護庁の方が私の隣に 座って、しばらくおられたのでいろいろ話をしました。私は農薬安全のことをいろいろ 調べていたので、農薬の安全行政と情報についていろいろお尋ねしたんですけれども、 農薬の安全情報、農薬の安全を担当している係官はどのくらいおるのかと聞いたら、当 時の話ですけれども、800人位というんですね。次に、その情報をやっている方はど のぐらいおられるのかと言ったら、40人位と。ところが、日本で、今はちょっと変わ ってきておりますが、当時では農薬の安全とか情報に関してそれだけのスタッフは置け ていなかったと思います。いろいろな関係省庁が分担しておりましたが、そのことだけ でそれだけの人を割くというのは、人数の規模は別としましても向こうではいろいろな 方のいろいろな疑問に答えるための用意が、少なくともされているなという気がしたん ですね。  そういった体制があって、安全ももちろん確保できますし、安心も確保できているの かなということがあります。それは大腸菌の事件で安全をどう確保したか、またいろい ろな方がいろいろなことを聞いてきたときに答えてもらえるということが、まず信頼の 一歩ではないかなと思えます。自分の知りたいことについて答えてもらえなかったとき には、その人は相手は何も答えてれていないと思ってしまいますので、そういったこと がこれからは必要なのではないかと。それはかなり手間と暇のかかることであるとは思 います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  続きまして、行政の関係で地方と国の効率性の話がございましたので、外口参事官の 方からお答えいただきたいと思います。 ○外口参事官  二つご質問があったかと思います。  一つは、パブリックコメントがセミプロとのやりとりというご意見でした。確かにパ ブリックコメント、その結果も公表していますけれども、そのケースによっては、20 件とか30件とかしかコメントがない。それから、本当に関係者だけのご意見みたいな のもあります。  ただ、パブリックコメントの提供の仕方にも問題があったのかなと思うんですけれど も、だんだんいろいろな意見が入ってくるようになってきているようにも思いますの で、これは例えばホームページでパブリックコメントを求める、あるいはいろいろな通 知とかなにかでパブリックコメントを求めるだけではなくて、こういった意見交換会の 場とかいろいろなところでパブリックコメントについて説明していく中で、もう少しい ろいろな意見が受け入れられたらと思いますし、それからパブリックコメントの時期を 外しても、今回こういうことが決まったけれども、やはりここはちょっと私は意見を言 いたいとかいうのもメールとかでも受け付けながら、できるだけ機会を皆様方にご活用 していく方向にしていきたいと思っております。  それから、国と自治体の関係ですけれども、今度、リスクコミュニケーションについ て、もちろん国もやりますし、それから自治体もやるんですけれども、その関係をどう するかと。これはやはり両方で一生懸命やるしかないと思うんですよね。というのは、 やはり国がやると全部の都道府県、あるいは政令市、くまなくできるだけの物理的な余 裕もありませんし、やはり回数が多くないと意見交換をする時間もしっかりとれませ ん。それから、テーマも分けていかなければいけないわけなんですよね。  今まで、ことしでこの手の会が、厚生労働省関係だけで私がきょうは8回目ぐらいに なると思うんですけれども、やはり最後にアンケートをいただくと、意見交換の時間が すごく短いとか、やりとりになっていないとか、こういうご意見が最後は結構いただく んですね。そういうことを避けていくためには、やはり物理的な時間を確保しなければ いけないし、テーマを変えて繰り返して、その次のステップへ進めていかなければなら ないと思うんですね。だから、両方でやるんだと。  それから、そのやり方については、例えば国がやった結果、アンケートの結果を含め て全部公表していますので、それらをご参考にしていただいて、それらとうまく組み合 わせて、自治体の方はより詳細に、より現場に近いところで何をやるかというところで 工夫していただけたらなと思いますし、それから国と自治体の共催のやり方も、やって いくとお互いに進歩があるのかなと思っています。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  やはり国でやると、全国通り一遍の話になりますので、やはり地域特性とかを考えて いくと、自治体の役割というのも出てくるのかなということもあるのではないかと思い ます。  今、ご質問いただいた方。特に追加のコメント等ございますでしょうか。よろしいで すか、はい。  それでは、ほかにリスクコミュニケーションに関してご質問、ご意見等ございますで しょうか。特にないようであれば、次のテーマに移りたいと思います。どうもありがと うございました。  最後に、食の安全の確保の取り組みについてということで、かなり幅広のテーマにな りますが、まず最初に事前にお寄せいただいた意見を紹介させていただきます。  「食品安全に関する取り組み」ということでございますけれども、BSE問題を含め て業界の違反に対して業者名を公表していないということがあるのではないかと。公表 しても消費者には何ともすっきりしないものが残っているというようなご意見でござい ます。  これにつきまして、行政の方からまずコメントをいただきたいと思います。外口参事 官、お願いいたします。 ○外口参事官  業界の違反に対して業者名を公表していないのではないかというご意見だと思います けれども、実は公表する仕組みになっておりますし、公表もしているんです。これは、 食品衛生法でいえば第29条に「食品衛生上危害の発生を防止するため、違反者の名称 を公表すること」というのがあるんです。厚生労働省では、そういう事例があった場 合、記者発表をしています。問題は、発表したものがそのままメディアに載るときと載 らないときとあるわけですね。特に、メディアの発表する内容というのは割と相対的な ものですから、大きな事件があったときとか、公表する内容がよくある内容のときはな かなか出ないということがあります。それで、じゃどうするかということですけれども 、とりあえずホームページには記者発表したものは全部出ています。それが参照できる ようになっています。だから、そこから拾えるということが一つあります。  それから、国が発表するものと地方自治体の発表するものと2通りありますので、例 えば食中毒の案件などというのは国が発表するのではなくて自治体が発表しています。  ただ、自治体が発表しても、これも新聞に載るときと載らないときがあります。だか ら、自治体も国同様にホームページ等にも出していると思いますし、それから監視指導 計画の策定等の際に、公表の仕方等もしっかり住民の意見も聞いてまとめてくれるもの だと思っておりますので、その中でこの辺をよりわかりやすい形にしていきたいと思っ ています。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  姫田消費者情報官、お願いいたします。 ○姫田消費者情報官  厚生労働省と私どもの方とは事情が違いまして、むしろご不満はこちらの方にあるの かと思っていますけれども、一つはBSE問題のときというのは、食の安全の問題では なくて、いわゆる補助金の不正使用の話だと思っていますが、それにつきましては、一 つはまず恣意的なものについて、これについては新聞にも出ましたけれども、我々きち っと公表していたということが一つあります。  もう一つは、ミスのものについては、それぞれの会社に公表することを同意を得た上 で、公表させていただいたということで、いわゆる通常のミスについてまで公表するの はいかがかということがございました、ただ、一般の皆さん方の公表に対しての期待感 があったということも含めて同意を得て公表したと。  一方、ではBSEがどこの村の、だれそれの牛で起こったか。こういうことは食の安 全にとって必要かという問題がございます。BSEの8頭目が出た9頭目が出たと。そ してその牛がどうなったかということについてはきちっと公表していく必要があります が、どこの農家で起こったかということまで、公表する必要性があるのかと。その牛は 確実に屠畜場段階で焼却されたということが明確であれば、それは公表することという のは農家のプライバシーの問題だろうと。もし公表されなく、かなりの農家が、あるい は地域全体、その村全体の牛が売れなくなるとか、そういう風評被害が非常に起こりま す。農家はマスコミの方々で踏み荒らされて、BSE以上の大きな被害を受けるという ことがございます。  それで6頭目以降は、地域の農協さんなり、あるいは市町村が身代わりになって全部 プレスなんかも受けていただいたというようなこともございまして、基本的には、公共 の利益に反しないものについては、個人の利益を優先させないとで公表しなかったとい うことでございます。  ですから、起こったことについては、イライザ法のところはその後またどうせという こともありますので、ウエスタンブロットで出てきたやつとかいうのはそれぞれ県が公 表していますし、厚生労働省と我々も含めて公表しているわけなんですけれども、それ は具体的な話について、必要なものについては確実に公表させていただいているという ことです。  あと、農薬につきましては、農薬取締法の中で公表というのはかなり厳しい罰の一つ です。ですから、その意味では農家の方が多少軽微な、2回しかまいていけないところ を3回まいてしまったとか、あるいは間違えて売ったとかいうものについては、順番 に、指導、警告、そして氏名公表、最終的には罰則ということになると思います。公表 というのは伝家の宝刀に近いようなものですので、余り年中切ってきたらそこら中に出 てしまって効果がなくなるというものがございます。そういう面では、公表というのも 当然考えていますが、悪質なものについて公表するという原則的な姿勢があるというこ とをご理解いただきたいと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  続きまして遺伝子組換え食品の関係で幾つか意見をいただいておりますので、紹介さ せていただきます。  「種の壁を越えられるものにつきましては微生物だけだと聞いております。人の都合 で自然の摂理を無視してつくられている遺伝子組み換え作物と遺伝子食品を食べたくな い」というようなことでございます。「ところが、現行の表示制度では使われていても 表示がなく、選択に役立ちません。本当に役立つよう、使っているものにはすべて義務 表示にし、5%の混入や上位3位までの特例を外してください」という意見でございま す。  続きまして、同じようなことですので一緒に紹介させていただきます。  「モンサント社から種子と農薬を無料で提供していただき、除草剤耐性の大豆を国内 の一般の圃場で栽培していた農家があるという話を聞いております。宮崎、福岡、福 井、新潟、北海道、茨城、滋賀、島根などで栽培されているというふうに聞いておりま す。国土の狭い日本の中で組み換え作物が栽培されれば、周辺の畑など環境汚染は避け られないと思います。一定量の農薬使用だけでなく、効果が弱くなって農薬散布量がふ えるという情報もあります。日本の農業を危うくするのではないでしょうか。農の再生 とどう整合するのか教えてください」と。  最後になりますが、「日本の農業は作物の種子も輸入に頼っているそうですね。非組 み換えとして売られていたトウモロコシの種子から組み換えられた種子が多数検出され たという市民団体の発表があります。国内の作物の種子の自給対策はどのように立てら れているのでしょうか」ということでございます。  まず表示の関係を外口参事官の方からご説明いただければと思います。 ○外口参事官  遺伝子組み換え食品の表示のご質問でございます。  これは5%の混入まではいいというのではなくて、すべて義務表示にすべきだという ご意見だと思います。  それで、今はどういう制度かということですけれども、順番に言いますと、まずその ものが遺伝子組み換え食品であるというものがまず検出できないと、検出する方法がな いと義務表示にするということは規制の仕組みとしていないということが一つありま す。  例えば、それに引っかかるものでは、ご存じのように大豆油とかしょうゆとか、こう いうものは原料が遺伝子組み換えの大豆であっても遺伝子は拡散増幅検査とかで遺伝子 を増幅させて調べます。あるいは、タンパクを調べようとすると、組み換えた遺伝子に より発現する特定のタンパクを抗原抗体反応で引っかけてきて、それで特定するんです けれども、大豆油とかしょうゆなどの場合は、製造工程の中で分解されたり除去された りしてしまいますので、それで計測ができないということがあります。そういうことも ありまして、これは義務表示の規制のところには入っていません。  それから、5%のところでいいますと、では検査してわかるものについてはどうかと いうと、遺伝子組み換え食品の場合は、まず安全性の審査をして、許可されたものだけ が流通するわけですので、安全性の審査を通っていないものは、5%どころか、ちょっ とでも入っていたらそれは全くアウトです。  それから、意図的に入れたもの、これも5%と関係なくアウト、これは当たり前です ね。それから、分別管理をしたときに、意図に反して入ってしまったもの、この基準が 今いわゆる5%以内までがやむを得ない、そういう基準になっているわけです。分別管 理をしていないときは、これは5%以内、これは当然だめですね。分別管理をしていな いという表示をしてもらわなければいけません。  では、なぜ5%かという話になりますけれども、これは実際に、例えば大豆とかトウ モロコシだとアメリカの中西部あたりでつくっているものが多いと思うんですけれど も、そこの畑で分別管理をするということはどういうことかというと、実際につくって いる畑の位置をほかの畑は交じらないように、相当距離を離してやるわけですね。使う 農機具なども全くかえてしまうとか、それからそこに使うときとほかの畑で使うときと きれいに洗浄して使うとか、しっかり分けてやるわけです。それから、実際に収穫する ときに、収穫したときにその輸送手段で、まず一番最初に中西部の畑のそばにカントリ ーエレベーターというか倉庫みたいなやつですよね。そこに収穫して集めるんですけれ ども、そこでもしっかり分別をする。それから、今度はミシシッピ川をたどってニュー オリンズまで多分運んでくると思うんですけれども、そこの川のそばのリバーエレベー ター、これに積みかえる。そこでもきっちり分別管理をする。それから、ニューオリン ズあたりの港でもう一回積みかえをして、それから日本に運んでくる。日本に運んでく ると、これが日本の流通システムに載りますので、それがベルトコンベアーを使った り、トラックを使ったりとか、それも全部その段階で分別をきっちりやるわけです。そ れの積み重ねをして、その都度厳格に証明をして分別をしていくわけですけれども、そ れを積み重ねていくと、今の状況だと5%ぐらいが、やはりやむを得ない基準になるの かなというふうになっています。  それで分別管理の方法がうんと進歩していけば、これはまた実態に合わせていろいろ 変えることは可能と思いますけれども、そういう実態から考えて、今5%という基準に なっています。以上、現在の状況です。 ○コーディネーター  姫田消費者情報官、お願いいたします。 ○姫田消費者情報官  まず現在、国内での栽培ということでございますが、国内で商業的に栽培されている 遺伝子組み換え農作物はございません。  一方、ご指摘のように一部で試験的に栽培が行われているものがございます。それは 具体的には大豆なんですけれども、周辺の農家の理解を得るということ。それから地方 公共団体に情報提供を確実に行うということ。三つ目として、ここが大事なんですけれ ども、開花前に刈り取る。この三つの条件のもとで実施されております。ですから、そ の意味ではその植物の栽培によってほかの環境に影響を及ぼすということがないという 条件のもとで、現在栽培されているという状況になってございます。  それから、もう一つでございますが、いわゆる種子の問題でございますが、これは特 にトウモロコシについてです。今、外口参事官がおっしゃったように、トウモロコシは 風媒花でございまして、花粉が確認されているだけでも500メートルは確実に飛んで しまうということです。そうすると、我が国でトウモロコシを栽培するということにな ると、よほど隔離することができないと遺伝子組み換えとかそうじゃないということで はなくて、品種的にも十分しっかりしたものができないということになります。3%以 上ほかのものが入ってしまいますと、これは表示違反に近いような状態になってしまい ます。  だから、国内でコスト的にもそうなんですけれども、トウモロコシの種子をなかなか 国内で栽培することはできないと。もちろん遺伝的に国産でつくったものもございます が、最終的にコマーシャル用の種子ということになるとアメリカとか南アメリカとか中 国とかで採取しているのが現状でございます。  それで、組み換えが大分発見されたというようなお話がございます。一つはトウモロ コシで有名なスターリンクでございますが、これはアメリカで以前栽培許可申請が出さ れていて栽培許可がされていたものですけれども、アレルギーが一部の方に出たという ようなこともございまして、今、栽培申請を取り消して、アメリカでも栽培できなくな っているものでございます。  我が国では、栽培許可を出す過程で、いわゆる食品としてのそれとえさ用として、そ して環境、この三つの面から検査しておりますが、スターリンクは我が国では許可され ていないと。許可されていないものについては食べ物と同じでございまして、一切混入 はだめということにしております。  現在、スターリンクにつきましても、年々混入率というようなものは下がってきてい るという状況でございます。  ただ、アメリカの環境の中にもかなりまだ残っているので、0.3%ぐらいはスター リンクが入っているというような状況が残っているということでございます。これは年 々下がってきております。  それから、それ以外の栽培許可が与えられたものについては、今、1%、あるいは 0.3%とか1%とか、カルタヘナ条約、国際条約を批准した中でこれからどう国内の 基準をつくっていくかという状況でございます。これは関係者のご議論をいただく必要 があります。混入率をゼロにするということになりますと南極で栽培するぐらいのこと をやらないと、とてもじゃないけれども、今世界で栽培できないという状況になってい ます。風で飛ぶものですから。大豆なんかでも虫が相当運ぶということがございまし て、全くゼロというのは非常に難しいのでございますが、そういう意味ではどの程度少 なく、混入をどうするかというご議論をこれからもいただきたいという状況でございま す。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  小林様、何か追加のコメント等ございますでしょうか。 ○小林会長  消費者として心配するのは、実は10日、農林水産省のジーンバンクということを見 学させていただいてきたんですけれども、外国から種子を輸入して農業をするというこ とにとても疑問を感じるものですから、日本の農業を守っていくためには、その種子を 外国に頼るというのはよくないのではないかという素朴な疑問なんですね。その辺のと ころを、トウモロコシの場合なんか、私が受けた情報では、遺伝子組み換えの栽培面積 によって飛散量も違っていて、10キロも飛ぶというようなことも聞いています。それ がまた遺伝子組み換えは別にしても、農業全体が農家の方たちが種子を購入することに よって農業を成り立たせるという状況はよくないのではないかと思いますので、やはり 農林水産省としてその辺のところをどう考えておられるのかなと思いました。 ○コーディネーター  姫田消費者情報官、お願いいたします。 ○姫田消費者情報官  いわゆる種子、トウモロコシとか、野菜とか米と考えていただきたいのですが、米と か野菜については、ほとんどが国産で育種したものです。ただ、ものによっては種子の 増殖を海外でやって、それで国内にもう一度持ち込むと。国内の試験研究機関で育種し たものを海外で増殖して、また国内に持ってきているものがあります。  ただ、野菜とか果物について我々が恐れているのは、国内で育種した大切な野菜や果 物の育種資源が、中国やオーストラリア、ニュージーランド等に流出してしまう方、つ まり知的所有権が流出してしまうということについて非常に不安感を持っております。  ご指摘の点でございますが、トウモロコシにつきましては、先ほども申し上げました ように、種子をとるための栽培面積の確保というのは非常に難しゅうございます。国内 で育種したものはございますから、国内で遺伝資源としては持っておりますが、増殖と いうことが非常に難しいということで海外に依存しているということで、いざというこ とになれば、国内での遺伝資源を持っているので、国内で多少の混入があったとして も、遺伝子組み換えという意味ではなくて、ほかの品種との混入があったとしてもそれ は使えるという状況だということをご理解いただきたいと思います。  また、家畜なんかについても、できるだけ国内での育種というのを、国、県力を合わ せて進めている状況でございますので、できるだけ、むしろ我々の国内の育種品目をふ やしていきたいと思っておりますので、またそういうこともご関心があれば十分お話し することがあるかと思います。よろしくお願いいたします。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  何か追加のコメント等ございますか。特にはよろしいでしょうか。佐藤様、よろしく お願いします。 ○佐藤会長  時間もございませんので、農薬の登録問題でちょっとお願いを申し上げておきたいと 思います。  実は、メーカー任せなんですよ、我々農家サイドでは。こういった農薬をこういうふ うにという要望は申し上げますが、開発はすべてメーカー任せ。先ほどもスライドで伺 いましたが、農林水産省を窓口に厚生労働省がそれを調査して、また農林水産省に戻す というような、そういうややこしい登録の段階があるようなんですが、実はそれを失効 する場合があるわけですね。登録期限が切れて、そのままメーカーは余り売れない品目 については再登録をしないと。  ところが、その情報が県の方に下りてくるのがおくれて、次年度のサンプルを作成す るのは、来年のものは今始まっていますから。そうしますと、来年の春ごろにそれが情 報として入ってまいりましても、印刷物はもうでき上がっていると、そういった段階で 失効している農薬が若干入ってしまったというようなことが……。幾ら注意しても、こ れは出てくる問題なんですよ。県の方の段階でお詫びというような形を流しても、生産 者としてはもうそれを散布して種をまいておりますので、なかなかその問題がふっ切れ ないという事例があったものですから、そういった再登録、または一つのもうかる、使 用頻度の薬剤を、品目については登録をとるけれども、量の少ないものについてはメー カーの方では目をつぶっていくという姿勢、これでは混植されている我々農家サイドと しては、なかなか散布に困るわけなんです。広く、一つの農薬を開発するのに大変開発 費もかかっているわけですから、それを末永く大切に使っていくためには、広い作物に 使えるような、そういった努力をお願いしていかないと、我々の生産コストがどんどん かさんでいきますので、ぜひその辺の誘導的な取り扱いといいますか、考え方をお願い したいと思います。いかがでしょうか。 ○コーディネーター  同じような質問がありますので、あわせて姫田消費者情報官の方から答えていただき たいと思います。 登録農薬の失効の問題があって、失効理由も含めてメーカーが事業 者責任として国民に説明を義務づけるべきではないかというご意見がございます。公表 の方法としては、車のリコール情報のように新聞紙上に載せたらいいのではないかと。 生産者が自己責任を負えるだけの情報公開と、情報伝達の仕組みづくりが一つの方法と して有効だと思いますというご意見でございます。  ご回答をお願いいたします。 ○姫田消費者情報官  消費者情報官なので生産者に厳しい話をするかもしれません。  生産者というのは基本的にプロとしてお金をもらっている方なので、自給自足されて いる方は別ですけれども、どんな小さな農家だって、プロだと思っています。  農薬については私どもの方のホームページで確実に公表しております。ですから、当 然農薬の失効情報なんかについてはアクセスしていただいて、見ていただくのが原則だ と思います。  ただ、そうは言いつつも、当然生産者の方一人一人が一々私どものホームページに失 効農薬について確認されるというのはなかなか大変だと思っておりますから、そういう 面では県、あるいは県の普及センター、経済連・農協の普及員の方を通じてできるだけ 早く指導していただくようにということで常々ご指導申し上げているわけなので、そこ はまた今後とも県等に対してのご指導をお願いしてまいりたいと思っています。  それから、農薬のポジティブリストの中でかなり厳しくなってきているのはよくわか っておりまして、それを一つの同じような作物、アブラナ科だったらアブラナ科の中で どううまくやれるかということでグルーピング化というようなことも図って、できるだ け適用範囲を広めて、例えば一つの品種が3回まいてよくて、一つは2回であってとい うことであれば2回の方に合わせてしまって、全体をグルーピング化して1品目のよう な形にしていくとか、できるだけそういうことで、安全を守りながら運用を図っていき たいということは実施しておりますので、また非常にマイナーな作物については、かな り我々のメーカーだけに頼るわけにもいかないということで、我々の中でできるだけ情 報を得ながら再登録もできるようなことを推進してまいりたいと思っております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  何か追加のコメント等ございますか。小林様、お願いいたします。 ○小林会長  不思議に思ったのは、違反添加物のときは、外国で許可されているものだからという ことで日本でも許可するような動きになったと思うのですが、昨年起きた果物や野菜の 無登録農薬と登録農薬の失効の問題のときに感じたのは、生産者もかなり被害者だった ということですね。そのときに情報がとても生産者に届いていなかったということを消 費者として感じました。私は、メーカーがリコール情報のようにきちんと企業責任とし て公表するべきではないかと思ったんですね。生産者やなんかの責任は厳しく問われた のに、失効したことをきちんと情報提供していなかったメーカーさんたちに対してはど ういう企業責任を負わせたのか、とらせたのかというのが、その後の情報でははっきり しなかった。その辺から、やはりだれにもわかるような形で情報提供をするようなシス テムにしていくべきではないかと思います。  それから、現在の第1次産業と言われている農業、水産業、すべて65歳以上の方た ちによって担われているということを考えますと、ホームページ上に情報提供していま すという逃げは、とてもよくないのではないかと感じます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  姫田消費者情報官、お願いいたします。 ○姫田消費者情報官  農薬については、400万部以上のパンフレットをつくってお配りして情報提供して います。  それで、もちろんそれが末端に届いていなかったり、どこに行ってしまったんだろう ということもあるんですけれども、実は9月に残留農薬のリスクコミュニケーションを やったときに、3人の農家の方に来ていただいて、やはりそのうちのお一方には届いて いなかったということがありました。そういう面で先ほども申し上げたように、県、農 協さんを通じて、どう情報提供をしていくかということも含めてやっていく、今後とも 我々の方でやっていくということと、メーカー云々ということについては、メーカーが 直接農薬を販売しているというところはほとんどなくて、ほとんどのメーカーの代理店 を農協さんがやっていて、農協が生産者の方々に売っているというのがほとんどでござ いますので、そこはきちっとメーカー側から農協への情報提供と、農協がどうきちっと 指導していただくかということを考えております。ですから、そういう意味ではもう1 度そういう面での指導というのを強化してまいりたいということを考えてございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  ここで関澤先生ですが、明日の大学の授業のために徳島まで戻る都合がございますの で、大変申しわけありませんが、退席させていただきたいと思います。関澤先生、どう もありがとうございました。  続きまして、またほかの意見を紹介させていただきたいと思います。  家畜に使われている抗生物質についての意見でございます。  これらの医薬品については、2000年で727トン、飼料添加物として175ト ン、養殖魚などの医薬品が182トン、合わせて1,084トン。医薬品として人に使 われている抗生物質が517トンですので、人の2倍以上の抗生物質が動物用、水産用 として使われているというふうに聞いております。食品の安全の確保は、まず安全で安 心な原材料の生産から始まると考えます。不必要な使用を減らすための具体策というの を教えてくださいということでございます。  姫田消費者情報官、お願いいたします。 ○姫田消費者情報官  抗生物質の問題というのは、一つはその残留性というよりは耐性菌ができる問題だと とらえております。残留ということでいえば、抗生物質は基本的に医薬品でございます ので、人が口にしているものが畜産物の中に残るということですから、残留性というこ とについては、当然厚生労働省の基準は守らないといけないと思いますけれども、むし ろ問題になるのは耐性菌の問題だとご理解いただきたいと思います。  それで、この中でかなりの数字がございますが、その中で今現在、飼料添加物として 使われている抗生物質、抗菌性物質は29成分ございまして、そのうちの18成分が家 畜専用でございます。これは人の医療には使われないものです。そして、残りの11成 分が人の医療に使われているものと同じ、もしくはそれに近いものということで、この 11成分が耐性菌が起こる可能性があるものだと考えております。  もちろんこういうものも、畜産の生産にとって非常に重要です。というのは、子豚と か、幼いひなのときに使うものであるからです。  一部、EUなどで抗生物質の飼料添加剤としての使用を禁止したということですが、 ただEUの場合もいわゆる獣医師の指示のもとに動物薬としての使用はできるというこ とになっています。  ですから、そういう意味では抗生物質もかなり一定の基準の中で使われているという ことで、それなりに安全性は図られておりますが、ただ私どもとしても、さらにどうし ていくかということですが、特に耐性菌の問題についてはかなりわからない面があると 考えてます。  一つは、先ほど申し上げたうちの4品目、これも今度のメーカーがやりたくないと言 っているのでやめようということで、29品目のうちの4品目は今後認可を外していく と。あと25品目のうちの16品目は人は使っていないものですので、これは今後とも 現場で使っていくということ。そして9品目については、ベネフィットとデメリット、 リスクを今後とも考えながら、十分調査をして、データもそろえて、今後安全委員会の 方に諮っていくということを、今回、リスクコミュニケーションにおいてもお話をした ところでございますし、今後そういう方向でしていきたいと考えております。  ですから、残った9成分について、9品目を全部やめるとかやめないということでは なくて、それぞれの成分について具体的なリスクと、そして具体的なベネフィットをど う考えていくかということを含めて安全委員会に諮問していくことにしております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  何か追加のコメント等ございますでしょうか。  それでは、次に移らせていただきたいと思います。  BSEの発生について、草食性の牛に肉骨粉を食べさせたことも原因の一つであった と認識しています。ところが、牛のトレーサビリティシステムの中で飼料情報の開示が 義務づけられていないというふうに聞いております。畜産飼料の9割を輸入に頼ってい ると記憶しております。なぜトレーサビリティシステムから飼料情報が外れているので しょうか。根拠となった理由を教えてくださいというご意見でございます。 ○姫田消費者情報官  先ほどもトレーサビリティについてご説明申し上げたように、トレーサビリティとい う言葉には非常に誤解が多うございます。トレーサビリティは、今我々が言っているの で三つございます。一つは、その言葉のとおりでトレースアビリティで追跡が可能であ るということです。これは生産者がきちっと記帳し、どこから生まれて、どんなえさを やって、そしてどこに出荷したか。買った人はどこから買って、どこに売ったか。こう いうものについては、牛について言えば、牛のえさについては8年間の記帳義務を課し て、全体の流れをトレースできるようなシステムにしています。  ただ、これは牛だけではなくて、野菜もすべてについて、どんな農薬をやったかと か、どんな種を使った、いつ出荷した、こういうものを流通も含めてどんどんどんどん 記帳していこうということで追跡、何か事故が起こったときに追跡が可能なようなシス テムをつくろうということです。もし事故があったときにちゃんと追跡できる。  具体的にはどんな農薬をやったかとか、えさなんかでも200も300も成分があり まして、そして大体えさは15日に1回えさ屋さんが持ってきてくれますが、それは前 回のやつと今回のやつでは、トウモロコシがアルゼンチン産かもしれないし、アメリカ 産かもわからないし、それは毎回毎回変わります。それを200成分全部記帳して、す ぐ情報を農家が記帳して、情報をぱっと出すと、こういうことはできません。ですか ら、事故が起こったときにどこにどういうことが追跡できるかということを確保するも のです。ですから、えさについてもやります。  ただ、今世の中に広く言われているトレーサビリティのうちの牛のトレーサビリティ についていうと、来年の12月になりますとスーパーの店頭に10けたの番号が出ま す。その10けたの番号が出て、この番号をインターネットの畜産情報ネットワークの ホームページに入れると、どこで子牛が生まれて、だれに売られて、だれが肥育して、 最終的にどこの流通に乗って、だれが売っているかと、これが出るわけなので、これは 情報として出る。大体1日に6,500頭ぐらい牛が生まれますので、少なくとも一生 の間に6回ぐらい情報が入りますので、毎日3万件から4万件ぐらいの情報を処理して いるような状況です。これを皆様方に提供するというのが牛のトレーサビリティです。 これは税金でやりますけれども、60億円ぐらい毎年毎年運用にコストがかかります。  もう一つは一部のスーパーさんがやっておられるようなもので、野菜の生産者の履歴 をやろうと。これは全部の野菜についてやるのではなくて、一部の野菜について付加価 値をつけて売ろうということで、それは当然1割か2割高くなるはずです。これはそう いう新しいトレーサビリティを顔の見える関係ということでやっていこうということ。 この三つのトレーサビリティがあるので、それぞれご了解いただきたいと思います。  でも、原則は、確実な記帳というのは、すべての農畜産物にかけていくということで ご了解いただきたいと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  何か追加のコメント等ありますか。よろしいでしょうか。  それでは、もう一つ、食品の放射線照射の問題についてのご意見がございます。  日本は食糧輸入大国ということで、世界では数十カ国で食品への放射線照射が実用化 されているというふうに聞いております。米とか小麦、トウモロコシを初め野菜類、果 物、肉、魚介類、乳製品、家畜の飼料、香辛料と幅広い食物に照射されているそうで す。  輸入食品の中にそれらが混入したとき、照射したかしていないか、どのぐらいの量が 照射されているのかを見分けて、水際で食いとめる手だてはありますか。対策は考えて おられますでしょうかということでございます。  外口参事官の方からお願いしたいと思います。 ○外口参事官  放射線照射の検知法がどうなっているかというお尋ねかと思います。  大きく分けて、放射線照射をして照射によってその物質が変わったところを検知する わけですけれども、それを物理的方法とか化学的検知方法、それからDNAを見る、あ るいは生物学的に見るというふうに分けられるかと思います。もっと細かく言うと、大 体16種類くらい検知法が考えられてます。  例えば物理的な方法だと、電気インピーダンスだとか、ラジカルの検出だとか、発光 を見るとか、あるいは化学的な検知法だとガスクロで2アルキルシクロブタノンをはか るだとか、あるいはヨウ素テキテイ法で脂質過酸化物をはかるだとか。それから、DN A法だと、DNA塩基の損傷を免疫化学的にはかるとか、ゲル電気泳動法でミトコンド リアのDNAをはかるとか。それから、組織学的形態学的方法だと、細胞分裂の阻害を はかるとか、発芽能力をはかるとか。それから、放射線抵抗菌、抵抗性のある菌の残存 があるかどうか見るとか、そういったことが考えられています。  ただ、まだどれも本当に確実に精度がよくて、再現性がよくてというところまでは、 まだどうも行っていないようなんですね。  もちろん対象食品によって方法は変えていく必要があると思うんですけれども、それ らについてもう少しまだ研究検討が進む必要があるのではないかと思っています。  今どうなっているかというと、検疫所に届け出ている届け出が正しいかどうかという ことを、これを信じてやっているわけですけれども、いずれにしても検知法の研究とか は進めていきたいと考えております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  何か追加のコメントございますでしょうか。 ○小林会長  日本ではジャガイモの芽どめにしか使われていないというふうに返事が返ってきて、 でも実際には輸入されている可能性が高いですよね。そういうときにどうやって水際で 食いとめるのかなといつも思うのと、それから香辛料については香辛料の協会さんの方 で放射線照射を認めてくださいというような動きも平成8年ごろだったかと思いますけ れども、ありました。 一方で、海外では世界の中で唯一放射線照射した食べ物を認め ている国民だというふうに言われているというふうに聞いているんですね、ジャガイモ の芽どめがずっと許可されたままなので。国民は多分そういうことを考えていないと思 うんです。その辺もすごくギャップがあるかと思うのですが、世界の動きとしては放射 線の照射量そのものを、今まで上限があったのを上限を取り払っていいのではないかと いう議論がされているというふうに時折伝わってくるのですが、国民に対しては何の情 報も与えられていないというのが現状だと思いますので、もう少し国民に対して情報を 発信していただきたいなというふうに思います。 ○コーディネーター  外口参事官、お願いします。 ○外口参事官  確かにスパイス協会さんの方から、平成12年12月だったか、要望書をいただいて います。それで、同じ月に消費者団体の方からそれに反対する要請もいただいておりま す。  ということで、これについてはもちろん加工技術として放射線照射以外に代替法がな いという状況なのかどうかとか、それから必要性とか消費者のメリットとかいろいろな ことがあると思うんですけれども、やはりパブリックアクセプタンスというか、そうい ったものに相当ギャップがある段階では、やはりこれについてのリスクコミュニケーシ ョンというか、いろいろな意見交換等を通じて、お互いに理解を深めて、お互いに納得 の行く形で前に進めるというか、次のステップに行く必要があるのではないかなと思っ ています。  それから、各国の状況はというと、ざっと調べてみたところ、一番多く照射が使われ たのはスパイスです。もちろん欧米、それから中国だとか南米だとかでもスパイスにつ いてはかなり照射されています。31カ国調べたデータがあるんですけれども、スパイ スで見ると照射を認めていないのは、日本とキューバとバングラデシュ、あとはアルゼ ンチンとかベルギーとかブラジルとかカナダとか、かなりの国が照射しています。  いずれにしても消費者の方と実際に照射が必要だと思われる方の十分な意見交換が必 要だと考えております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  ちょっと時間を超過しておりますが、もう一つだけ紹介させていただきたいと思いま す。  魚介類による水銀やダイオキシン類に関する情報というものが出されております。  「一日三食魚でもいい私にとっては大変関心のある情報です。注意を呼びかけた魚種 については、バンドウイルカ、ツチクジラ、コビレゴンドウ、マッコウクジラ、サメ、 メカジキ、キンメダイなどでした。クジラ類は、スーパーでもデパートの地下の食品街 でも年に数回程度しか見かけません。日本全体でどの程度の量が流通しているのでしょ うか。もし特定の地域向けの情報であったのであれば、摂取量は60グラム、80グラ ムよりずっと多いと思われます。水銀とダイオキシンは脂肪に蓄積しやすいのではなか ったでしょうか。マグロや戻りガツオなども対象になりそうなものですが、カツオはデ ータに載っておらず、マグロは注意報の対象から外されております。回転ずしでは子供 からお年寄りまでたくさんの人でにぎわっておりますが、今後もこういった情報を出し ていただきたいのですけれども、画一的でない、食生活の実態に合った情報をわかりや すく発信していただきたいのと、体外に排泄できる食べ方があれば、それらの情報もあ わせて発信していただけるとありがたい」ということでございます。  外口参事官の方からコメントをお願いいたします。 ○外口参事官  最初に水銀の濃度の方ですけれども、キンメダイばかり有名になってしまったんです けれども、これは実際には約300種類、2,600検体の魚介類に含まれる水銀の量 の調査結果から、我が国における魚介類の摂食状況を踏まえてあのような発表をしたわ けであります。そのときに、ご質問のカツオは、これは濃度が低いデータでした。それ から、マグロについては、マグロを食べている人はもちろんかなり多いんですけれど も、1日の摂食量の平均値がかなり低かったので、それであのようなデータとして出し ております。  これらについては今後とも同じような調査をやって、それでまた実態に基づいて必要 な対応をしていきたいと考えております。  それから、ダイオキシンについてのご質問もありました。ダイオキシンについては、 今どういうことをやっているかというと、毎年、食品からのダイオキシン類の摂取類の 調査を行って、発表してます。これはどんな調査かというと、全国7地域、12機関、 約120品目の食品を購入して、それを国民栄養調査にあわせて実際の摂取量のデータ に基づいて計量し、あるいは調理した後一緒に集めて混合して、もちろん飲料水の方も 資料として使うんですけれども、実際の1日の分に近い摂取量の中のダイオキシンを測 定するということ、これを毎年やっております。  結果からいうと、実際の耐容1日摂取量、1日これだけとっても大丈夫という値が、 今1日体重1キログラム当たり4ピコグラムTEQという単位がありますけれども、そ このところが平成13年度の結果は1.63±0.71という感じで、まず大丈夫だろ うという値になっています。これは地域別にも出して公表していますし、毎年やってい るところであります。  それから、それとあわせて個別食品についても調査をしております。  ベビーフードとか特別な食品についても、これは順番にやっております。  迅速測定法の研究とか、排出させるにはどうすればいいかというご質問もありました けれども、ダイオキシンのリスクをどうやったら低くできるか。例えば植物性の食品の 抽出物の中にそういうバイオアッセイを阻害するような物質が含まれているのではない かという研究もありますし、その辺も今後進めていきたいと考えております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  ちょっとお時間がたってしまっているのですが、全体ということで、特に会場の方か ら何かご発言があれば受けたいと思いますが、何かございますでしょうか。特にはよろ しいでしょうか。  それでは、いろいろご意見をいただきましてありがとうございました。  意見交換の部を終了させていただきたいと思います。  司会の方に進行をお返しいたします。 ○司会  どうもありがとうございました。 6.閉会 ○司会  閉会に当たりまして、外口参事官よりごあいさつをお願いいたします。 ○外口参事官  きょうは本当にありがとうございました。  最後に一つだけお願いがあります。  アンケート、これを書いてください。○をつけるだけではなくて、何でも自由記載の ところに、よかったと思う点、改善すべきと思う点。特に改善すべきと思う点をしっか り書いていただくと、次の機会には多分もっといいやりとりができるのではないかと思 っております。  ありがとうございました。 ○司会  以上をもちまして、食の安全に関する意見交換会を終了させていただきたいと思いま す。  本日は、ご参集いただきましてありがとうございました。