03/10/31 食の安全に関する意見交換会(議事録) 食の安全に関する意見交換会(議事録)                     厚生労働省医薬食品局食品安全部                       平成15年10月31日(金)                       午後1時から5時                       於:北海道経済センター8階Bホール 1.開会 2.食品の安全確保に向けた取組み   (内閣府食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省) 3.食品添加物を考える(実践女子大学教授 西島 基弘) 4.食品の安全性とリスクコミュニケーション   ((独)食品総合研究所国際食品研究官 山田 友紀子) 5.意見交換・質疑応答   【パネリスト】     内閣府食品安全委員会委員           坂本 元子     厚生労働省大臣官房参事官           外口  崇     厚生労働省医薬食品局食品安全部企画情報課長  高井 康行     厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課主査 岩間 勇気     農林水産省消費・安全局消費者情報官      姫田  尚     実践女子大学教授               西島 基弘     独立行政法人 食品総合研究所国際食品研究官  山田 友紀子     北海道保健福祉部食品衛生課長         米川 雅一     北海道農政部道産食品安全室主幹        吉田 恵子     釧路消費者協会副会長             畠山 京子     北海道食品安全協議会委員           服部  公     ホクレン農業協同組合連合会調査役       河野  正     日本食品添加物協会常務理事          鈴木 宏侑 6.閉会 (議事録) 1.開会 ○司会  それでは、ただいまから食の安全に関する意見交換会を開催したいと思います。  初めに、配付資料の確認をさせていただきたいと思います。  お手持ちの封筒の中をごらんになっていただきますと、資料1から5までご用意させ ていただいております。  資料1は、新食品衛生法の概要、カラー刷りのものでございます。資料2以降は右肩 に番号をおつけしておりますが、資料2が国民に信頼される食品安全行政に向けて及び さらなる食品の安全性の確保に向けてのパンフレットとなっております。資料3は、消 費・安全局設置から3カ月間の取り組みのポイントでございます。資料4は、食品添加 物を考える、資料5は、食品の安全性とリスクコミュニケーションとなっております。 それから、1枚の紙が2種類入ってございまして、皆様にご記入いただくアンケートと 事前にお寄せいただいたご質問、ご意見のリストとなっております。  不足等がございましたら、事務局もしくは受け付けまでお申し出くださいませ。  続きまして、簡単に本日の議事進行を紹介させていただきます。  本日は、3部構成とさせていただきたいと思います。  第1部は、食の安全確保に向けた取り組みに関する説明とさせていただきます。  所要時間は1時間20分程度を予定いたしております。  まず、厚生労働省におきまして、7月1日よりリスクコミュニケーションを担当する ことになりました外口大臣官房参事官よりごあいさつを申し上げた後、食品安全委員会 坂本委員より、食品安全委員会の活動などについてご説明をいただきます。続きまし て、食品安全部高井企画情報課長より改正食品衛生法等の概要についてご説明を申し上 げます。その次に、農林水産省消費・安全局姫田消費者情報官より、農林水産省におけ る食品安全行政に関してご説明をいただきます。  ここで10分間の休憩をいただき、2時30分をめどに第2部に移らせていただきま す。  第2部におきましては、初めに、食品添加物について実践女子大学生活科学部食品衛 生学西島教授よりご講演いただき、続きまして、食品の安全性とリスクコミュニケーシ ョンにつきまして独立行政法人食品総合研究所企画調整部の山田友紀子国際食品研究官 よりご講演いただきます。  また、ここで10分間のご休憩をいただき、3時40分をめどに第3部の意見交換に 移らせていただきます。  なお、会場の都合上、午後5時ころには終了させていただきたいと存じますので、あ らかじめご了承いただきたく存じます。  それでは、第1部の食の安全確保に向けた取り組みに関する説明に入りたいと思いま すが、念のため、議事進行に差しさわりのある行為は慎んでいただきますようお願い申 し上げます。 2.食の安全確保に向けた取り組みに関する説明 ○司会  それでは、外口参事官、お願いいたします。 ○外口参事官  厚生労働省の大臣官房参事官の外口でございます。よろしくお願いいたします。  皆様ももう既にご存じのように、ことし、食品の安全性を確保するための仕組みが大 きく変わりました。食品衛生法や健康増進法も変わりましたし、各省庁の食の安全に関 するいろいろな仕組みが変わったわけでございます。  これにつきましては、皆様も経緯はもうご存じだと思いますけれども、BSEの問 題、偽装表示の問題、無登録農薬の使用、あるいは、輸入食品の残留農薬基準違反、ダ イエット用食品による健康被害、大企業による大規模な食中毒といったことが立て続け に短期間のうちに起きたわけであります。そして、食品の安全に対する国民の不安や不 信というものが高まりました。そこで、食品の安全の確保のための施策の充実を通じて 国民の健康の保護を図ることを目的として、法律改正等が行われたわけでございます。 政府全体の食の安全への取り組みが変わったわけですけれども、その大きなポイントを 二つ挙げるとすれば、まず、食品安全基本法という包括的な法律ができたこと、そし て、リスク分析手法という考え方が導入されたことが挙げられるのではないかと思いま す。  リスク分析と申しますのは、基本的には、消費者の健康の保護を目的といたしまし て、国民やある集団が危害にさらされる可能性がある場合に、事後の後始末ではなく て、可能な範囲で事故を未然に防ぎ、リスクを最小限にするシステムとも言えるかと思 います。そして、このリスク分析の考え方に基づきまして、リスク評価を行う食品安全 委員会が設置されました。  この詳細につきましては、後ほど坂本先生からご講演いただく予定になっておりま す。  そして、リスクの管理を行う厚生労働省や農林水産省の法律や組織も整備されまし た。そして、リスクコミュニケーションが義務化されたわけでございます。  このリスクコミュニケーションにつきましては、従来のいわば一方通行とも言えるよ うな情報開示とか説明会と違いまして、生産者、消費者、事業者、行政、あるいは、専 門家の先生方等、それぞれのお立場の方が相互に情報と意見を出し合い交換し合うこと によって食の安全の確保についての理解を深めるものであります。  ただ、実際に、いわゆる従来の方法から意見交換の方式にして、そして、できればそ れを施策に反映させていこうという取り組みは、やってみると実はなかなか大変なもの でありまして、まさに、まだ試行錯誤の途中であります。  厚生労働省では、この7月に、従来、食品保健部と言っていた組織を食品安全部に変 えまして、リスクコミュニケーションなどを担当する参事官のポストを新しくつくりま した。私が担当しております。  今回、多くの法律改正が行われたわけですけれども、その中で、例えば食品衛生法と いうものがありますが、私どもが担当しております食の安全に最も身近な法律かと思い ますけれども、それにつきましても、三つの大きな視点によって見直しが行われまし た。  一つ目は、国民の健康の保護のための予防的観点に立ったより積極的な対応、すなわ ち被害が出る前の段階での施策の強化であります。  二つ目は、事業者の方です。きょうもたくさんご出席いただいておりますが、食品を 提供される事業者の方は食の安全についての第一義的な責任を持たれているわけでござ いますから、単に基準を守るということだけではなくて、自主管理を促進していただく ことが期待されております。  三つ目は、農畜水産物の生産段階の規制との連携であります。BSEの問題では、厚 生労働省と農林水産省の間のいわゆる縦割り行政について厳しく指摘されたところであ ります。しかしながら、農薬の問題、動物に与える飼料の問題、動物用医薬品などの問 題につきましては、農林水産業の生産段階の規制と、そして食品衛生の方の規制との連 携が大変重要であります。  食品衛生法等の見直しの全体像につきましては後ほど説明がありますけれども、食品 衛生法に関して言えば、法律の目的規定の見直し、国、地方公共団体及び食品等の事業 者の責務の明確化、リスクコミュニケーション、残留農薬などの規格基準の見直し、輸 入食品などの監視・検査体制の強化、食中毒などへの対応の強化、そして罰則の強化 と、大変幅広い範囲にわたっての見直しがなされました。  今後、食の安全性の確保をどのように進めていくか。これは、やはり、関連するすべ ての方々、すなわち生産者の方、消費者の方、行政、事業者の方、それぞれのお立場の 方からそれぞれのご意見を出していただき、そして意見を交換し、それをよりよい方向 へ向かっての施策へ反映させていくといったことが大変重要ではないかと考えておりま す。  どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。 ○司会  ありがとうございました。  それでは、食品安全委員会の坂本委員より、食品安全委員会の活動などについてお話 いただきたいと思います。  坂本委員は、米国コロンビア大学大学院をご卒業され、現在は和洋女子大学大学院教 授、総合生活研究科長としてご教鞭をおとりになられるとともに、内閣府食品安全委員 会の委員として食品健康影響評価などに携わっていらっしゃいます。  坂本先生、よろしくお願いいたします。 ○坂本委員  坂本でございます。こんにちは。  私は、現在、非常勤ながら、食品安全委員会の委員の一員として、この7月1日から 活動を始めさせております。きょうは、ただいまご説明がございましたように、大幅に 変わりました食品安全に関する行政の中の一部で、この委員会がどういう組織で、どう いう役割を持ち、どういう活動をしているかということをご紹介していきたいと思って います。  表題は「、国民に信頼される食品安全行政に向けて」という大きなタイトルがついて おりますけれども、これから少し消費者の話も入ってくるかと思います。  ちなみに、始める前にちょっとお尋ねしたいと思いますが、平成13年にBSEが一 頭見つかり、現在、8頭目が出てまいりました。この中で、今も牛肉を食べていらっし ゃらない方は何人ぐらいいらっしゃいますか。どなたもいらっしゃいませんか。  11年、12年というのは均等に同じような購入数量があるのですが、13年は10 月に極端に下がりました。通常250グラムが1人当たりの購入量でございましたが、 何と100までに下がりました。12月に少し回復しまして、3月にはやや2倍の 200グラムまで回復いたしました。その後、14年は、11年、12年とほぼ同じよ うなラインで購入量が進んでいくわけです。  ちなみに、牛肉の購入はどの月が一番高いかというと12月でございまして、恐ら く、皆さん冬の暖かい夜を牛肉で過ごし、あるいは、ボーナスをいただいたからいいお 肉を食べようかということなのかもしれません。  15年はどうかといいますと、14年とほぼ同じように順調な回復で、8月のデータ ですと1人当たり240グラムぐらいに回復しております。たった1年半の間に、あれ ほど騒いで、牛肉は学校給食にも使わないと言っていた感覚がだんだん薄れていったの か、あるいは、国の施策に対して大変信頼を持っていただいて、安心して牛肉が食べら れるという意識に変わっていただいたのかと思っております。  ちなみに、こういう数値を見ていきますと、安全に対する意識の改革、あるいは、信 頼をいただくということは国にとって非常に大事なことであると考えておりまして、こ れからも、ただいまもごあいさつにありましたように、事が起こってから処するのでは なくて、起こる前に私どもが安全を確保して皆様方に提供するというシステムができ上 がったわけでございます。  そこで、スライドを見ながら少しずつお話をしていきたいと思います。  次をお願いいたします。  ただいまのごあいさつの中でもございましたように、食生活の周辺が非常に大きく変 わってまいりました。ただいまの牛肉でも、BSEをきっかけにしていろいろなことが 起こってくるわけでございます。そのほかにも、「生活の利便性の追求に伴う危害の増 大」と大変難しい表現をしてありますが、つまり、新規の農薬を使ったり、添加物を使 ったり、あるいはバイオの技術を応用することで、危害の多様性とか複雑化が出てまい るわけです。ですから、一つの方法でこういうものに対応するのが非常に難しくなって きました。  それから、食のグローバル化です。今、私たちの自給率は40%しかありません。 60%の食料は、世界じゅうから、まさに地球の裏側からも食品が入ってきますので、 食料にシーズンと旬がなくなりました。  そういうグローバル化の中で、いろいろ心配になる残留農薬であるとか、あるいは、 添加物の問題が出てまいりまして、これも大変心配しておられます。それから、O−1 57はご承知のとおりでございます。これに関しては、あのときだけの事件ではなく て、その後もぽつりぽつりと集団給食で出てきているようですし、異常プリオンはBS Eの問題です。  一つ、これから認識していただきたいと思いますことは、分析の技術が向上してきた ことによって、残留農薬の場合に、どれくらい残っているかについて、今まではすりガ ラスを通して見ていたような検査の仕方が、透明ガラスで見てはっきり見えるように感 度が高くなったのです。したがって、今まで見えなかったものが、まだ残っているとい うような現状も起こってきます。そうすると、国際的には、残留がゼロということは非 現実的な話になってきます。つまり、国際的な言葉で言いますと、今、ゼロリスクはな いという言葉が出てまいりました。これは世界じゅうの一般的な考え方です。  次をお願いいたします。  では、消費者は一体どういうふうに感じているかといいますと、食品の安全性に対す る不安について、大いに感じている人が47%、多少感じている人が37%ですから、 約80%の一般の人々がまだ食品の安全性を心配をしているわけです。  次をお願いします。  そのほかに、安全性に関して特に不安に感じている方は何かと申しますと、食品の添 加物です。これは、東京都の生活モニターの方ですが、私どもはモニター制度をとって おりまして、そのモニターの意見でもやはり添加物というのは非常に不安だと感じてお られます。特に、これから遺伝子組みかえ食品が出てまいりますが、53.5%、内分 泌攪乱化学物質が47%、残留農薬44%と、ごらんになるだけで約50%以上の人々 がこういったものに不安を感じておられるのが現状でございます。  次をお願いいたします。  これは、がんの原因について、主婦とがんの疫学者の考え方の違いを示したもので す。1990年の黒木先生の原稿ですが、実は、1987年に国際栄養会議がオースト ラリアで開催されました。そのときに、栄養疫学をやっておられる世界じゅうの先生方 が、がんの予防のための14条というステートメントをおつくりになりました。その中 で、一つの資料として、一体、がんの原因はみんな何だと思っているのだろうというこ とを調査されました。上が主婦で、下が専門家の意見ですが、食品添加物というのが一 番高くて、大体40%ぐらいの回答は食品添加物ががんの原因だと思っておられます。 今でもそう思っておられる消費者の方はたくさんおります。その次が農薬、たばこ、そ れから大気汚染・公害、おこげというふうになります。  しかし、実は疫学者の考え方で1位に上がっているのは普通の食べ物なのです。皆さ ん方が食べておられる食べ物の食べ方によってがんが発生すると。脂肪であるとか食塩 であるとか、その他食べ方によっていろいろながんが出ています。たばこはご承知のと おりでございまして、新しくできた健康増進法では、たばこを吸わないように灰皿がな くった駅もございます。その次に、ウイルスとか性生活・出産というものありますが、 食品添加物、農薬というのは非常に比率が低いのです。がんになる確率は非常に少ない とお考えください。  次をお願いいたします。  BSEについては、ご承知のとおりですが、平成13年9月に発生し、13年11月 には厚生労働大臣及び農林水産大臣がこの問題に関する調査検討委員会を発足させて、 この報告が4月に出てまいりました。これはかなりシビアな報告書が出されています。  次をお願いいたします。  それを反省として、この報告書に出てきた内容の行政対応の問題点の指摘です。  まず、食品に対する危機意識が欠如していることと、その危機の管理体制が欠落して いるという報告でございます。それから、生産者優先になっているのではないか。むし ろ、消費者を保護しなければいけないのに、その保護が軽視されている行政が今までの 対応ではないか。政策決定過程が不透明なままに行政機構の中に存在するので、できる だけこの透明感を高めよう。さらに、農林水産省と厚生労働省の連携が不足しているの ではないかというようなことで、本日は1会と2省が一緒になってお話に伺いました。 また、専門官の意見を適切に反映していない行政があるのではないか。そして、情報公 開というのは、あったことを正直に科学的にはっきりと皆さんに知らせることが必要な のに、それが不徹底であることと、それに対して消費者の理解が非常に不足している、 つまり、お互いのコミュニケーションがうまくいっていないのではないかという指摘が ございました。  次をお願いいたします。  今後のあり方として、まず、消費者の健康保護を最優先にしましょうと。これは食品 衛生法でもおっしゃいましたが、食品安全基本法も、まずは消費者の健康保護を最優先 にということがトップに出ておりまして、食品安全の行政にリスク分析手法を導入し て、リスク評価を行う委員会を新たに設置しましょうと。そして、消費者の保護を基本 とした食品の安全を確保するための法律として食品安全基本法をつくりました。  次をお願いいたします。  これが施行されたのがこの7月1日でございました。  次をお願いいたします。  この経緯ですが、先ほどの報告書から、平成14年12月24日、15年度の予算で この原案を決定いたしまして、閣議で決定されましたのが5月16日、そして、現実に は7月1日にこれが施行されております。  次をお願いいたします。  ちょっと小さくてごらんになりにくいかと思いますが、お手元のレジュメの中にこの 表が出ております。ルーペなどを使いながらごらんいただければと思います。  次へいってくださいますか。  これを一つずつご紹介していきたいと思います。  最初にあります食品安全基本法の基本理念ですが、国民の健康の保護が最も重要であ るという基本的認識のもとに必要な措置が行われなければならない。  2番目は、食品の供給行程です。これは、いわゆる食品の流通過程ということです が、この各段階において安全性を確認してください。これは、後でトレーサビリティー などのお話がいろいろ出てくるかと思いますが、そこにお任せいたします。  3番目には、健康への悪影響が未然に防止されるようなことを旨として、国際的動向 及び国民の意見に十分に配慮しつつ、科学的知見に基づいて必要な措置を行う。この科 学的知見というのが、私どもリスク評価をする者たちの一番大きな任務であろうと思い ます。  次をお願いいたします。  施策の基本的な方針ですが、これは、健康への悪影響防止または抑制する科学的な手 法、日本ではこれをリスク分析と呼んでおりますが、これに基づいて実施しよう。食品 の安全性の確保に関する施策を充実させるというのが基本的方針でございます。  次をお願いいたします。  ちょっとごらんになりにくいかと思いますが、リスクということについて、国として は、健康への悪影響が生ずる確率とその程度というふうな定義をつけておりまして、リ スクの分析というのは、健康への悪影響の発生を予防、抑制する科学的手法で分析する ということになっております。  そこで、このリスク評価を内閣府食品安全委員会が実施するわけですが、これは、食 品を摂取することによって人の健康に及ぼす影響について科学的に評価しなさいと。例 えば、農薬の安全性評価というのは、1日当たり人の体重1キロ当たりに何ミリグラム が摂取の許容量であるかということを表示し、それを厚生省農林水産省の管理サイドへ 送って、全国民に対して十分にマネジメントしていただくという組織になっておりま す。  この中に、関係者相互間の情報及び意見の交換がございまして、例えば意見交換会を 開催するとかパブリックコメントの実施、つまり、こういう機会に皆様方からそれぞれ のお考えや意見を私どもがちょうだいして、それを一つのコミュニケーションにしまし ょうという考え方でございます。  次をお願いいたします。  リスク評価、つまり、食品が健康に影響を及ぼすのはどういうことかということを評 価するリスク評価というのは、人の健康に悪影響を及ぼすおそれがある生物学的、化学 的、もしくは物理的な要因、またはその状態であって、食品に含まれ、または食品が置 かれるおそれがあるものが、当該食品が摂取されることによって人の健康にいろいろな 影響が起こるだろうと。その時点において到達されている水準の科学的知見に基づいて 客観的かつ中立公正に実施しましょうと。つまり、私どもは独自の研究機関を持ってお りません。私どもがいただく食品は何万種類というものがあるわけで、生産の方法も何 万種類と違います。それを今から一々やるにはとても大変なことなので、世界的な水準 の科学的知見の情報を得て、現時点で最も正確であるという評価をして、客観的、中立 公正にそれを実施していこうというのが方針です。  次へ行きましょう。  リスクアセスメントの構成要素としては、有害性確認をどのように暴露しているかと いう評価と、どういうような有害性があるかという特定をしてリスク判定をしようとす るのですが、一つ一つご説明いたします。  次をお願いいたします。  有害性の確認というのはどういうことかと申しますと、どのような有害性があるの か。この薬、あるいは、添加物の問題は何なのか、証拠はあるのか、あるいは、有害性 というのはどのような障害なのか、どの程度あるのか、それから、どのくらいの確率で 起こっているか。例えば、人口1億2,700万人のうち、大体1万人があるのか2万 人があるのか5,000人があるのかという発生の確率です。それから、暴露評価とい うのは、人はその要因をどの程度摂取しているのか、どの程度含まれるようになるの か、どのくらいふえるのか、減るのか、どのくらいの量がどれくらいの確率で口に入っ ていくのか、こういうことが暴露評価としてアセスメントされます。  最終的には、リスクの判定として、これらを摂取することによってどのような健康被 害が起こるか、どのくらいの頻度で起こるのか、どんな人が危険なのか、どのパラメー ターが大きく健康被害に影響するのかということです。ただ、すべての人が同じ体型と 同じ健康状態であれば何の問題もありませんけれども、年齢は違う、性別は違う、体質 は違う、それに、高齢者と子供がいる、そして成人がいるわけですから、一様に平均に 考えるわけにはいきません。したがって、高齢者の場合にはどれくらい、幼若者の場合 にはどのようなということも考えて、どのような人が危険なのかというリスクのレベル も考える必要があろうかと思います。  次をお願いいたします。  リスクマネジメントというのは、これは次に厚生労働省でお話しいただけると思いま すが、アセスメントの結果に基づいて、どれだけリスクを受容するか、最小化して削減 のための政策を考えていただくと。それから、リスクコミュニケーションは、これは大 変その道に詳しいコミュニケーションの学者さんからお話しいただけると思いますの で、とりあえずその方に委託することにいたしましょう。  次をお願いいたします。  では、リスクコミュニケーションはということになりますと、ここにまた難しい定義 が翻訳のまま出ております。ちょっとわかりにくいかと思いますが、Codexのリス クコミュニケーションの定義とアメリカのNRCの定義の両方が出ております。Cod exでいけば、リスク分析の全課程を通じたリスク評価者、リスク管理者、消費者、事 業者、学会、その他の関心を有する人たちの間のリスクと、そのリスクに関する要因、 リスクのとらえ方について情報や意見の交換を双方向からやりましょうということで す。  次をお願いいたします。  施策を充実するためにどういう方法を考えなければいけないかというと、緊急事態に 対処する体制の整備を考えましょうと。例えば、BSEが起こったときに、牛肉の摂取 が危険だというので急激に減ったというような緊急時対策をどうするか。関係行政機関 の相互で密接な連携を図りましょう。それから、試験研究の体制の整備も必要で、国の 内外の最新の情報を集めて、それを整理及び活用する必要がある。それから、表示制度 の適切な運用の確保というのがあります。恐らく、皆さん方がこれはどういうものであ るかと知る唯一の手だては表示だろうと思うのです。その表示をどういうふうにしたら 一番正確かつ的確に日常の生活に役立つかということを考えなければいけないのです が、そういう運用を確保しましょうと。食品の安全性の確保に関する教育、学習は、小 学生から高齢者まですべての国民に学習していただきたい。さらに、環境へ及ぼす影響 に配慮しましょうと。これが今後の施策に対する充実策です。  次をお願いいたします。  現在、内閣総理大臣の任命を受けた担当大臣であります小野清子大臣でございます。  次をお願いいたします。  これは、私どものコマーシャルでございますが、どうぞ皆さん、これからは安心を食 べていただきたい、だから、私どもは食の安全を見守っていますというPRをいたして おります。これは委員会風景でございます。毎週木曜日2時から開催いたしますが、特 殊なプライバシーにかかわる件を除いては原則としてすべて公開です。ですから、もし 木曜日に東京の赤坂周辺にお出ましになりましたら、どうぞお立ち寄りください。  次をお願いいたします。  これが、食品安全委員会の構成で、現在7名の委員がおります。そのほか専門調査委 員会が延べ200名おります。この200名が、企画、リスクコミュニケーション、緊 急時対応をします。そして、評価グループとして、化学物質、生物系評価、それから新 食品等の評価グループに分けて、委員会で出てきた問題を受け、それぞれの専門委員会 にお願いして、そこで細かい検討をしていただき、また委員会へ戻ってくる、そこで認 められた評価がマネジメントへ回っていくという組織になっています。  次をお願いします。  例えば、農薬を一つ評価するのにどういうことをやっているかといいますと、実験動 物などを用いた毒性試験には急性毒性、亜急性もありますし、催奇形性というのは奇形 が生まれてこないだろうかというようなことですが、発がん性も含めて毒性実験をやり ます。そして、無毒性量と言いまして、NOAELという言葉が使われていますが、毒 性試験の結果に基づいて決められる有害な作用を示さない物質の最大量、ここまでなら そういう症状を示さないという最大量を決めるのが評価です。  次をお願いいたします。  その評価を、今度はADIと言いまして、私たちが毎日食べるのに認められる1日摂 取許容量が決められまして、大体1日摂取許容量であれば、無毒性量は、安全係数を掛 けて、これは個人差を公表するための数値ですが、1人当たり1日当たりキログラム当 たり体重のミリグラムで示されて、そして、想定される摂取量がADIを超えないよう な使用基準を設置いたします。  次をお願いいたします。  リスク管理というのは、それを科学的なリスク評価の結果に基づいてこれを受容し、 最小化し、削減のためにマネジメントの担当の部署でおやりになるわけです。これに は、農林水産省、厚生労働省がかかわっておられます。  次をお願いいたします。  今、厚生省との間のいろいろな交渉がありまして中断されていますが、9月29日現 在では、かび毒、添加物、農薬、動物用医薬品、それからアマメシバという新しく出て きた粉末の錠剤ですが、それとか特定保健用食品にかかわる物質について、これだけ評 価が終わりました。  次をお願いいたします。  アマメシバというのは、ヒマの種の草でございまして、きれいな緑色をしたやわらか いもので食べると非常にやわらかい感触です。これを凍結乾燥したのか、とにかく粉末 にしたものが市中に出回っているアマメシバです。これを大量・長期に摂取することに よっていろいろな健康障害が出てきます。長期摂取等をいたしますと、閉塞性細気管支 炎という疾患が出てまいりまして、今、既に日本に3例の患者さんが出てまいりまし て、厚生省を通じて私どもの方へ評価の依頼が参りました。  次をお願いいたします。  アマメシバを摂取しますと、摂取量がふえればふえるほど、摂取した人の中で病気を 発症した患者の割合がふえていきます。それから、症状発現までの期間も何カ月目に発 症したかというと、大体5カ月目ぐらいにどっと出てきます。そういう青い粉末でござ いました。これが、台湾では二、三百名の人が罹患し、90名の人が死亡したというデ ータがあって、それが海を越えて日本へ入ってきたわけです。それによって、既に鹿児 島とそれから名古屋で患者さんが出てまいりました。何と、そういう病気にかかった人 が60歳、70歳という女性なのです。食物繊維とかビタミンやカルシウムが含まれて いるということなのですが、どうも裏にはやせ薬だというような口コミの話が出てきて います。60歳、70歳になったらそんなにやせなくてもよろしいだろうと私は思うの ですけれども、やはり女性の業といいましょうか、やせたくてとうとう病気になったと いう人がおります。  次をお願いいたします。  現在、評価を準備しているのが清涼飲料水、食品からのカドミウム、遺伝子組みかえ 食品、飼料添加物、動物用医薬品、アルカリを処理した液状の肉骨粉等を肥料とするこ との利用、こういうことについてただいま準備中です。  次をお願いいたします。  それから、緊急時に一体どういうことを対応するかという基本指針をつくらねばなら ないというわけで、現在検討中でございますが、これは項目だけですので、どうぞ手元 のレジュメをごらんください。  次をお願いいたします。  委員会への必要的諮問事項というものにかかわる法律がこれだけございまして、この 法律にかかわるようなものが全部諮問として挙がってくるということです。  次をお願いします。  世界の動向ですが、食品の安全に絶対はなく、リスクの存在を前提に、これを制御す るという考え方が一般的になってまいりました。リスクのない食品はない、それをでき るだけ制御するというのが一般的な考え方です。WTOの衛生植物検疫措置の適用に関 する協定が95年にできておりまして、その加盟国ではリスク評価に基づく国際整合性 と透明性が確保された一定の手続に従った規制を確保することが必要であるということ です。  次をお願いいたします。  もう一つの世界の動向としては、私たちは今度新しくできたリスク分析の原則を採用 することを奨励する勧告をいただいておりまして、これに基づいて評価するわけです。 海外でも、評価機関として、欧州食品安全機関、ドイツ連邦リスク評価研究所、それか らフランス食品安全衛生庁ですが、つい先日、私が訪問いたしましたデンマークでも食 品安全庁ができておりまして、食品安全の評価がインディペンデントに行われていると いう傾向が見られます。  次をお願いいたします。  これで最後になると思いますが、全体の構造として、新たな食品安全の行政は、内閣 府の下に食品安全委員会があって、リスクの評価、コミュニケーションの実施を行いま す。そして、緊急の事態に対応して、必要があれば厚生労働省へ評価結果の通知をして 勧告します。同じように農林水産省にもそういう通知をいたしまして、そして、消費 者、事業者等の関係者ともどもにコミュニケーションをうまくとりながら、2省と1委 員会と皆さん方とで国民の食品の安全を築いていきましょうという組織でございます。  いただいた時間を少々延長してしまいまして、申しわけございません。これで失礼い たします。ありがとうございました。(拍手) ○司会  ありがとうございました。  続きまして、食品安全部企画情報課高井課長より、新食品衛生法の概要についてお話 しいただきます。  お願いいたします。 ○高井企画情報課長  厚生労働省の企画情報課長の高井でございます。  私の方からは、今年改正されました食品衛生法について、お手元の資料1「新食品衛 生法の概要」に沿いまして、食品衛生行政のどこが変わっていくのかというところを中 心にご説明をさせていただきます。  食品衛生行政につきましては、法律が変わったということと、実際はどうなっている のかということも大事だと思います。  例えば、食品添加物についてはこの後に西島先生からお話があるかと思いますが、こ の資料によりまして、どういう方向に変わっていくかということを中心にお話しさせて いただきたいと存じます。  1ページをお開きいただきたいと思います。  今年の5月に交付されました食品衛生法あるいは健康増進法の改正の大きな考え方で ございます。  目的、あるいは、次の三つの視点に基づく見直しは、冒頭に参事官から申し上げたよ うに、BSEの問題、偽装表示の問題等を契機といたしまして、食品の安全に対する国 民の不安、不信の高まりを受け、目的規定を改正し、食品衛生行政全般に見直しをかけ たという内容であります。  三つの視点については、先ほど参事官が申し上げましたが、1番目に、予防的視点に 立った対応ということで、例えば残留農薬の規制について大きく考え方を変えておりま す。2番目に、事業者による自主管理の促進ということで、事業者が第一義的な責任を 持つということを、法律を改正して改めてうたったということであります。3番目は、 農畜水産物の生産段階の規制との連携を図るということで、縦割りのいろいろな批判も いただいたわけでありますので、そのような視点で見直しをかけたということでありま す。下の方に全体像が書いてありますが、今般は食品衛生業者全般に見直しをかけたこ とで、後ろの方に資料に入っていきたいと思います。  2ページ目は、今回の食品衛生法の改正はどういう位置づけかということを違う視点 で見たものであります。  坂本先生のお話しにありましたように、食品安全基本法が制定されて政府全体で取り 組んでいこうと。そして、リスク評価を食品安全委員会が行い、リスク管理を厚生労働 省、農林水産省が行うという考え方で位置づけられているわけであります。そのリスク 管理の厚生労働省部分が左下にあります食品衛生法の一部改正ということであります。 後ほど、一つずつ説明させていただきたいと思います。  3ページ目でございますが、説明に入ります前に食品衛生行政はどういう仕組みで展 開しているかということについて少しおさらいをさせていただきたいと存じます。  輸入食品の監視指導につきましては、まず、厚生労働省にあります検疫所です。全国 に31カ所ございますが、そこで輸入の届け出を受け、モニタリング検査をし、違反が 多かったら検査命令をかけるという水際作戦をとっております。  それから、地方厚生局と書いてあって、その下にHACCP施設の承認・検査等とあ りますが、高度な衛生管理を行っている施設についての承認等を行っております。  食品衛生行政の大きなところは、その左側の大きな都道府県、保健所設置市、特別区 のそれぞれに設けられている保健所です。全国576カ所ありますが、保健所を中心 に、営業の許可であったり、立ち入り、収去検査をする。検査命令や食中毒に対応する というようないろいろな仕組みをとっております。  その左に、今回、リスクコミュニケーションということで、厚生労働省や都道府県、 保健所設置市、特別区それぞれが消費者あるいは食品事業者等々とリスクコミュニケー ションを行うことになっているという図でございます。  4ページは、まず法律の最初のところの資料が入っております。食品衛生法の目的の 改正ということであります。  改正前は、その上に書いてあるとおりでございますが、飲食に起因する衛生上の危害 の発生を防止し、公衆衛生の向上、増進に寄与するということでありましたが、やは り、食品の安全性を確保すること、そして、それによって国民の健康の保護を図るとい うことを明記すべきであるという強い要請を受けました。そこで、赤くぬっております が、まず第1条のところから、食品の安全性の確保、あるいは、国民の健康の保護を図 ることを明確にするということにいたしたわけであります。基本法であります食品安全 基本法にも同様の規定が設けられております。  このようなことを踏まえた上で、次の5ページからですが、国や地方自治体の責務を 新たに設けております。書いてあることは至極当然というところですが、やはり、再 度、こういう点を確認をして行政を進めなければいけないということであります。  見にくいかもわかりませんが、全体は国の責任、それとともに、地方自治体の責務と してもオーバーラップするものが上の方に書かれてありまして、国、地方とも、教育活 動を通じた正しい知識の普及とか情報の収集、研究の推進、検査能力の向上、人材の養 成、資質の向上というようなことであります。例えば検査能力ということでいきます と、やはり、保健所等の検査技術の向上が求められている、食中毒の対応もしていかな ければいけませんし、食品添加物や残留農薬の検査技術の向上もしていく必要があると いうことをうたっているわけであります。  真ん中の地方自治体の相互連携ということも、至極当然ではありますけれども、広域 的な食中毒への対応という点でも国と自治体との連携が必要だということをうたってい るわけであります。  そのほか、国の責務として、情報収集、研究、輸入食品の検査と書いてあります。や はり、輸入食品の安全性の確保という点から、先ほど触れました検疫所の体制の拡充、 あるいは、いろいろな情報の収集も怠りなくしていかなければいけないということがあ ります。二つ目の国際的な連携の確保も、先ほど出てきましたCodexといった国際 的な機関との連携も十分図っていく必要があるということでございます。また、地方的 自治体に対する技術的援助と書いてありますが、最近ではBSEの検査についていろい ろな技術的支援をしていることがございます。  6ページ目からは、今度は食品の事業者の責務ということでありまして、これも、今 回、新たに設けたわけであります。  1番目は、通常時の措置ということで、ごらんいただくとおりであります。基本的に は、食品の安全性は、まず事業者が第一義的に持ってくださいという考えに努めてくだ さいということが書いてあります。あわせて、今回は、2番でございますけれども、記 録の作成・保存ということをうたっております。食中毒の発生等の場合に迅速に対応で きるようにとのことで、各事業者に記録の作成・保存をお願いしたことが新しく入って おります。それによって、3番の被害発生時に迅速に対応できるようにとしたわけであ ります。  7ページをお開きいただきますと、イメージ図がかかれておりまして、普段は上の流 れでございます。  生産業者、輸入業者から仕入れ業者、加工業者、卸売業者、小売業者と食品が流れて いく中で、仕入れ元の名称や記録をしていただくことであります。いざ、問題が生じた 場合には、下の図でございますが、これを逆にたどっていくことによって、迅速な被害 拡大の防止に繋げていけるようにしようということであります。  仕入れ元のいろいろな記録をお願いするわけでありますが、どのぐらいの期間保存が 必要であるかとか、また、小売業者や加工業者によって書き方の違いがあるだろう、保 存の仕方も少し違うだろうとのことで、この8月にガイドラインを設けさせていただき ました。必要がありましたらごらんいただければと思いますが、努力義務ということ で、今回は記録保存をお願いしております。  8ページ目からは、少し変わりまして、今日のメインテーマでありますリスクコミュ ニケーションの関係でございます。  BSEの問題、あるいは食品安全行政の今後のあり方についての閣議決定等を受け、 食品衛生法を改正し、リスクコミュニケーションを進めていくということで二つ書いて ございます。  1番目は、基準設定等に際しての国民あるいは住民からの意見聴取ということです。 食品衛生法では食品の規格・基準を定めるというようなことがありますが、食品添加物 や残留農薬の規格・基準を定める際に国民、住民の意見を求めるということが法律に書 かれております。先ほどから何度も出ておりますように、こういう意見聴取について も、双方向の意見交換ということを頭に置いていかなければいけないということを言わ れているところであります。  2番目は、そういう規格・基準を定める場合以外にも、定期的に意見聴取をするとい うことも法律でうたわれたわけであります。  9ページをお開きいただくと、こちらは2番目の関係を中心にした資料でございま す。  本日もそうでありますが、意見交換会という形で、私たちも外に出ていって各地で意 見交換会を進めております。シンポジウムと書いてありますが、札幌市で行っておりま して、今後もこれを拡充していきたいというふうに思っています。その他の方法として は、右側にありますように、厚生労働省の方でホームページを設けております。これま でなかなか見にくいというお話がありましたが、改善を加えて、できるだけ食品安全情 報のページをすぐ見ていただけるような工夫をしたり、あるいは、最新のいろいろな情 報を載せるような努力をいたしております。そのほか、政府広報、あるいは食育の推進 というようなことで、いろいろなリスクコミュニケーションを推進しているところでご ざいます。  10ページは、いろいろな食品の規制の関係でございます。  食品に残留する農薬の関係でございますが、左側が現在の規制ということでございま す。ごらんいただきますと、農薬、飼料添加物、動物用医薬品については、上の方に、 食品の成分にかかわる規格が定められているもの、現在229農薬、26動物用医薬品 と書いてございますが、こういう残留基準を設定しております。  その中で、基準を超えた農薬については食品の流通を禁止することができるわけであ りますが、その下の箱にありますように、規格が定められていないものについては流通 規制はないというのが現状の規定でございました。そこで、今回、この考え方を大きく 変えました。諸外国の例も参考にいたしましたが、ポジティブリストということで、基 準を定められていないものについては基本的に流通が禁止されるというような考え方に 変えているわけであります。  その中にも三つありまして、左からごらんいただきますと、まず、残留基準を定めて いくということであります。大変多くの残留農薬基準が定められることになりますの で、当面は暫定的な基準を設定していく必要があるのではないかということでありま す。左側に229農薬と書いてありますが、国際的には700ぐらいの農薬が使われて いると言われております。また、日本国内では農薬取締法で350ぐらい登録されてい るということもありますので、こういった状況から、基準を決めているほかに、3年後 の法律施行までに、国際基準、欧米の基準等を踏まえて暫定的な基準をまずつくってい こうというのが第1次分類であります。  2番目は、真ん中辺でありますけれども、残留農薬の基準が定められていないものに ついては、人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が一定の量を告示し て、これを超えるものについては禁止していこうということであります。残留農薬基準 が定められないものについて、先ほどありましたように、ゼロというのはなかなか証明 が難しいので、ある一定の最低規準を決める必要があることから、こういう第2分類が あります。  三つ目が、人の健康を損なうおそれがないことが明らかなものであります。これは、 ポジティブリストの対象外で、例えばお酢のようなものを考えております。  このように、残留農薬に対する規制を大きく転換したわけであります。  11ページは、添加物の関係でございます。添加物は、先ほどの残留農薬と異なりま して、現在も指定制度をとっておりまして、指定されているものについてしか利用でき ないということであります。今まで、添加物の中でも、11ページの左の上にございま す化学合成品のほかに天然添加物という分類がありました。この天然添加物について は、平成7年の改正におきまして指定制度を導入したわけですが、当時の経緯から見ま して、489の既存添加物についてはそれまでと同じように引き続き利用できるという ようにしたわけであります。  しかし、今回、右側にありますように、安全性に問題があると判明した場合、あるい は、使用実態がないものについては名簿から消除をしていくことがあります。これも、 順次、研究をして、消除が必要なものはしていくことに転換をしております。  12ページは、また少し毛色が変わりまして、特殊な方法によって摂取する食品の暫 定流通禁止ということであります。濃縮等した成分を錠剤化、カプセル化することによ って、通常の食品の一般的な摂取法と著しく異なる方法により摂取される食品とありま す。先ほど坂本先生からアマメシバの例がご紹介されておりましたけれども、今回、8 月29日に施行された法律によりまして、人の健康を損なうおそれがない旨の確証を明 らかにはできないが、健康を損なうおそれがないとも言えないということで、食品衛生 上の被害の発生を防止するための必要な措置ができることになってまして、今回、第1 号ということでこれを発動し、暫定的な流通禁止の措置をとったわけであります。右側 の方は、例えばいろいろなダイエット食品で健康被害が生じたということも言われてお りますので、そのようなことに対応できるような、ある意味で予防的な措置を規定をし ております。  13ページは、また健康の保持・増進効果のあるいわゆる健康食品のようなもので、 虚偽・誇大広告等の表示を禁止するという規定を設けております。その上にありますよ うに、健康の保持・増進の効果に関して著しく事実に相違する、あるいは、著しく人を 誤認させるような広告の表示を禁止しようと。例えば、お医者さんのところに行かずと もガンが治るというようなことです。科学的な証拠をなしにこのような広告をして物を 売っていくようなことは、やはり人を誤認させるので、そういう対応ができるようにい たしました。  14ページからは、食品の監視の体制の強化でございます。  これまでも、輸入監視、あるいは、都道府県では先ほどご紹介した保健所を中心に各 地の食品衛生監視を進めてきたわけであります。それを、透明度を持って進めていこ う、あるいは、重点的なところを明示してくということで、8月29日に作成をしてお り、国が食品衛生監視指導指針をつくりました。これを受けて、来年度から国が輸入食 品の監視指導計画を作成する、あるいは、各都道府県等で食品衛生監視指導計画をつく って重点的に監視指導を進めていくことにいたしました。  15ページをお開きいただきますと、その中の輸入食品の問題について書いてござい ます。  時間の関係で詳しくは申し上げませんが、近年、輸入食品の件数、量とも増えてきて おります。これに対応しなければいけないということで、右側に太く書かれております が、まず、検疫所を中心に輸入食品の検査をしているものについて、より機動的に効果 的にできるように、例えば、1番目は、命令検査ということで、違反が多い食品につい て検疫所の方から命令検査をかけるという場合に機動的にできるようにする。2番目 は、先ほどの監視計画をつくって、重点的な監視をしていく、あるいは、3番にありま すように、これまでは都道府県知事等に限られていた輸入業者に対する営業停止につい て、厚生労働大臣も発動できるようにする。というような体制にいたしているわけであ ります。  次の16ページは、それを流れ図にしておりますけれども、青い部分が今回の改正の 部分であります。  いずれも、事業者が輸入の届け出をする場合に必要があれば厚生労働大臣が営業停止 できるということでありますとか、下の方のモニタリング検査、あるいは右側の命令検 査のところにも、輸入件数がふえていることがありますので、登録検査機関に委託でき るような体制をとって必要な検査をしていこうということであります。  16ページの下の方に数字が見えておりますけれども、今年度は、モニタリング検査 件数を大幅にふやし、検疫所の体制も拡充しつつあるという状況であります。  17ページに移りますけれども、これは簡単にさせていただきます。  昨年、中国産の冷凍ホウレン草から農薬が検出されたということで、この対応をどう するかということであります。EUの法律では、この上の箱に書いていますように、検 査の結果、違反が見つからなければ輸入販売を禁止できないというようなことではなく て、違反が相次いで見つかった場合には、特定の国の特定の食品について、検査を要せ ずに輸入販売を禁止できるというような制度があります。日本でもそれに倣いまして、 検査の個別の結果だけではなくて、違反食品が相当数見つかって人の健康を損なうおそ れが総合的に判断される場合には、特定の国の食品について包括的に禁止できる仕組み を導入いたしているところでございます。  18ページでございますが、また少し変わります。  HACCP、総合衛生管理製造過程ということで、高度な製造方式をとる場合には従 来のような規格基準によらなくてもいいということでありますとか、いろいろな新しい 方式を取り入れられるようにしていたわけであります。しかし、右側にありますよう に、HACCPで事故が起きたということもありますので、今回、そのHACCPに3 年間の更新制を導入するとか、食品衛生管理者の設置を義務づけるようなことにしてい るわけであります。  19ページでございますが、食品衛生管理者の責務の追加であります。乳製品とかハ ム、ソーセージを製造する工場長さんなどが食品衛生管理者として働いておりますが、 個別に食品衛生の管理を徹底する観点から、食品衛生管理者の責務を追加したというこ とであります。  はしょって恐縮でございますが、20ページは食中毒への対応の強化ということで す。上の箱の一つ目にありますように大規模化、広域化の食中毒に対応する必要がある ということで、500人以上の大規模な食中毒が発生した場合には、厚生労働大臣が都 道府県知事に対して調査を要請し、原因究明を迅速に行って、被害の拡大防止を図るよ うにするという規定を設けました。あるいは、保健所、都道府県、厚生労働省の流れに ついても、もう一段の情報の流れをよくするような対応の強化の規定を設けたところで ございます。  以上が規制の関係でございますけれども、21ページが全般に見直したというような ことで、食品衛生法の罰則の強化ということが今回は行われております。  特にごらんいただきたいのは、表示違反食品の販売等禁止というのがあって、6月以 下の懲役、30万円以下の罰金ということでありました。やはり、食品の表示というの は大変重要なものでございますので、右側にありますように、罰則の内容についても強 化をすることにいたしたところでございます。  22ページでございますけれども、平成15年度予算ということであります。  法改正を受けまして、農薬の残留の基準の策定の推進と書いてあります。3年後にポ ジティブリストに移行するということでございますけれども、残留農薬基準あるいは分 析方法をつくっていかなければならないということで、現在進めております。食品添加 物も、既存添加物について毒性などを再度検査して、不必要なものは消していくことを 進める予定にいたしております。あるいは、輸入食品の安全対策ということで、検疫所 の検査体制を拡充するということをいたしているわけであります。  最後になりますけれども、23ページでございます。  厚生労働省の方も、こういう考え方に沿って組織の強化をしているというご紹介でご ざいます。  24ページは、厚生労働省のホームページにいろいろな情報を載せさせていただいて いるというご紹介で、ご活用をいただければと思います。  大変急ぎまして恐縮でございますが、以上でございます。 ○司会  ありがとうございました。  続きまして、農林水産省消費・安全局の姫田消費者情報官より、農林水産省における 食品安全行政に関して、消費・安全局設置から3カ月間の取り組みのポイントについて お話いただきます。  お願いいたします。 ○姫田消費者情報官  ご紹介いただきました農林水産省の消費・安全局の消費者情報官の姫田でございま す。どうぞよろしくお願いいたします。  お手元の資料3ですが、あちこちめくっていただいて恐縮ですけれども、まず21ペ ージを見ていただきたいと思います。  新たな農林水産行政の確立に向けてということで、消費者を重視した食品安全行政の 展開というところでございます。  先ほどからそれぞれの皆様方からお話がありますように、BSEの問題、そしてO− 157を初めとする農畜水産物の安全性の問題が非常に大きくクローズアップされてま いりました。その中で、BSEのときのように、リスクの評価と管理を同じところがや っているのはおかしいのではないかとか、あるいは、農林水産省としては生産振興サイ ドとリスクの管理サイドが同じ局にあるのはおかしいのではないかと。決してそんなこ とはないわけですが、外から見ると生産者寄りで甘いリスクの管理をやっているのでは ないかというような疑念があったということでございます。そこで、7月から、農林水 産省としては、リスクの評価と管理の分類のほかに、農林水産省の中でリスク管理をや っていくところと生産振興をやっていくところを分けております。  もう一方で、農林水産省全体として消費者を重視した行政をやっていこうということ でありますが、我が国最大の食料生産基地の北海道でそれを言ってしまうと、先ほどか ら厚生労働省も厳しいことを言われている上に、農林水産省までも消費者の方を向いて やるのか、おれたちはどうするのだというような不安も生まれるかと思います。しか し、私どもの考えとしては、我が国の農林水産物、あるいは、流通加工の方々がつくら れた食品をきちんと安全に消費者に届けることこそ、我が国の農林水産物や加工食品を 消費者に受け入れてもらうために非常に重要なことだと思っております。当然、私ども 農林水産省では、産業振興の観点を決して捨てているわけではございません。輸入品の 安全は厚生労働省が原則的に全部やってくださいますので、我々は国内の農林水産物が どう消費者に受け入れていただけるかということに努めてまいりたいと思っておりま す。  1ページめくっていただきまして、今まで皆さん方に非常に親しみのあった食糧庁が 廃止されました。右側を見ていただきたいのですが、北海道には農林水産省の直接の出 先がなくて、北海道開発庁、あるいは、北海道庁に直接お仕事をしていただいたり、ま た、このように農政局のないところは今まで食糧事務所というのがありました。それ が、今度は地方農政事務所ということになりまして、そのうち、食糧部というのは昔の 食糧事務所の仕事を引き継ぎますが、それとともに消費・安全部というところができま した。札幌に地方農政事務所という形でできたわけですが、ここがいわゆる食をめぐる 私どもの仕事をやってくれる組織になっております。  もっとめくっていただきますと、消費者行政窓口一覧というところがございまして、 そこに一番左の上に、北海道農政事務所消費生活課とございます。もし、いろいろな疑 問があれば、そこにお問い合わせていただければお答えできるような消費者の窓口を札 幌につくりました。もちろん、右下に、私ども本省の消費者の部屋というのがございま して、ここは私の直接下で働いている者がやっておりますので、そこでも消費者の皆さ ん方のいろいろな質問について受けることになっておりますので、ぜひご利用いただけ ればと思っております。  それから、農林水産省の組織でございますが、23ページにこれからの姿というとこ ろがございます。今までは総合食料局で流通加工の話、そして生産局でいわゆる生産と 食の安全を守ってリスクの管理をやってきたわけです。その生産局なり総合食料局か ら、食の安全の部分については消費・安全局に全部移してしまいました。そして、消費 ・安全局でリスクの管理を一元的にやっていこうということで新しい局ができておりま す。以上が農林水産省の組織の変化でございます。  その中で、私の仕事ということで少し申しますと、私どもの消費・安全局では、消費 と安全の間に中ポツがついております。それはなぜかというと、先ほど生産も一生懸命 にやると言ったのですが、実は消費局と安全局の二つの意味があるということでござい ます。つまり、もう一つは消費者に軸足を置いたということで、私どもの局では消費全 体をやっていこう、そして、安全もやっていこうということで、二つの仕事を実施して いく組織になっているということでございます。  そういう新しい組織の中で、そして、新しく消費者に軸足を置いた行政の中で、食の 安全安心のためにこれからどういうことをやっていこうかということでございます。  3カ月過ぎたので、この後で3カ月の間にやったこともお話ししますが、9ページ に、7月に新しく組織ができたときにつくりました食の安全・安心のための政策大綱と いうものがございますので、これを少しお話しさせていただきたいと思います。  9ページのところは、私が説明すると3回目になるので特にいたしませんが、農林水 産省もほかの省庁と同じようにリスク管理とリスクコミュニケーションを実施している ということでございます。  次の10ページは、国民が安心・信頼を実感できるように取り組むということで、施 策を企画する段階から関係者との対話を大切にしてきました。きょうは、一般的な意見 交換会ということで、特に政策課題をどうということにはしておりませんが、いろいろ な食の安心・安全のための施策を行っていくときに、リスクコミュニケーションという ことで、関係者の意見がきちんと施策に反映できるようにやっていきたい。そうするた めには、まず徹底した情報の開示をしていくことと、徹底した情報の開示だけではなく て、何かの施策をする前に十分ご意見をいただき、それを施策に反映していこう、反映 した施策を実施していく中でまた意見交換をしていこう、こういうことを実施していき つつあるということでございます。具体的には、後でもう一度ご説明いたします。  それから、産地から食卓まで、すべての関係者が協力して取り組める施策をつくると いうことです。ここに細かく書いてございますが、生産者、流通・加工、小売、そして 消費に至るまで、今回、各地域に農政事務所ができておりますので、それぞれをつなぎ 一つの大きな輪をつくり、食の安全・安心のすべてのことについて話が進んでいくよう にと考えております。国だけがリスクコミュニケーションしたらいいということではな く、やはり関係者の皆様方がお互いに意見交換をして、どのようにしていい方向にやっ ていこうかということが必要になってくるかと思っております。  ややもすると、従来から消費者オリエンティドと言いながら、実際はマーケットオリ エンティドだったりします。要するに、消費者の意見ですと言いながら生産者やメーカ ーの方々は聞いていたのですけれども、実際に聞いてみると流通のお話だったというよ うな話がかなりございます。そういうふうにならないように、生産者、加工、流通、そ して消費者の皆さんがお互いに協力関係を保ちつつ、安全・安心で豊かな食生活を享受 する上での対話を進めてまいりたいと思っております。  それから、食卓に安全な食品を届けるための仕組みをつくり、生産者・事業者の取り 組みを進めるということです。これは、先ほどからもお話がありましたように、もちろ ん厚生労働省なり私どもなりが生産者、事業者に対して安全の管理を進めていきます が、その前に、今回の長崎の養殖フグの問題とか、その前のハムメーカーの不祥事とい うようなことで、仮に安全であったとしても、消費者あるいは国民の信頼を裏切るよう な行為があったのではないかと思っております。  おとといもこういうシンポジウムを開いたときに、ある乳業メーカーの人が、食品産 業をやっていると、事故が起こる可能性はあります、ただ、いかに減らすか、どう小さ くするか、どう理解していただくかということが非常に大事なことだと言っておりまし て、それがリスクコミュニケーションだと思います。  しかし、事件は絶対に起こしてはいけません。事件というのは、長崎のホルマリン問 題であり、ハムメーカーのいわゆる一連の不祥事だろうと思っております。そういうこ とがないように、やはり企業の中で、あるいは、生産者の皆さん方が、一つの約束事を きちんと守れるということも今後は必要になってくるのだろうと思っています。それ は、安全という問題ではなくて、そういうことがないようにきちんとやっていくことが 安心につながっていくのだろうと思っております。そういう自主的な取り組みも生産者 や事業者の方々にやっていただくように支援したいと思っております。  それから、内外から情報を広く収集し、危機の回避に努めますということで、私ども でそういうことをやっていくということでございます。  次の12ページでございますが、今こうやって3府省が集まってやっておりますが、 こういうようにそれぞれの府省と協力関係を結んでやっていこうと、これも、BSEの 検討会で縦割り行政ということが非難されましたけれども、これも、ここだけでなく、 全国各地で同じように、あるいは東京でも同じように、3者が共同でいろいろなことを 進めております。そして、それぞれのこういう会だけではなくて、担当同士の相互の連 絡、あるいはトップ同士の連絡ということも常々行われているところでございます。  13ページでございますが、産地・港から食卓までの段階で、監視を強め、生産者・ 事業者の自主的な取り組みを進めますということです。これは、それぞれの段階での規 制だけではなく、私どもは、生産者の皆さんや事業者の皆さん方を所管しているわけで ございますので、やはり情報を適切にどう流していくかということがあります。もう一 つは、こういうところへ来ると、消費者の方々等から本当に生産者の方々はやっている のかというようなこともよく聞かれます。そういうことについては、やはり指導を徹底 していくことを進めてまいりたいと思っております。  それから、次の14ページでございますが、安全な農薬の使用に向けてということで す。  一つは、厚生労働省の方で残留基準を設けました。しかし実際、残留基準を設けてい ただいても、農薬をどう使っていったらいいかというのはわからないので、農薬の使用 基準というものも私どもではつくっております。それについては、やはりポジティブリ ストということでございまして、それに合わせたことをやっていくということでありま す。  それから、今まで農薬は製造・販売だけが禁止できたということで、輸入とか使用に ついては特に禁止されていないというか、罰則規定もなかったということでございま す。今後は、無登録農薬を使うとか、使用基準を守らないということでも罰則規定がか かってまいりますので、農薬の流れ全部をきちんと規制できるようにさせていただいた ということでございます。  それから、家畜伝染病の発生予防・蔓延防止のためにということです。家畜につい て、今後きちんと使用できるようにということで衛生管理基準をつくっていこうという ことを今進めているところでございます。  それから、皆さん方の一番の関心事として、実際に毎日の食品に関して目に見えて行 われるものということで、食品表示の問題が非常に大きいのではないかと思っておりま す。それについては、常々、厚生労働省と共同会議というものを開いてきました。今ま で一番大きな問題は賞味期限と品質保持期限でしたが、今回、賞味期限一つに一本化さ せていただいたということ、それから、今後、見やすさとかわかりやすさというような ものを勉強しながらそれぞれ連携して取り組んでいこうとしております。それから、表 示の監視体制の強化ということで、表示ウオッチャーとか、あるいは、農政事務所も使 って表示の監視を図っていこう、それから、JAS規格も見直しを行っていこうとして いるところでございます。  次に、16ページでございます。  きょうは、事業者の方もかなり来られているということで、これは関心の高いところ ではないかと思います。下の方からご説明いたしますと、牛の個体識別情報の伝達制度 ということで、牛のトレーサビリティーでございます。これは、12月1日から生産者 に対して施行されます。生産段階で施行されるということで、今もう既に一部実行に移 っているところです。牛に10けたの番号をつけまして、これは今、日本じゅうの牛に ついております。農畜産業振興機構のインターネットのホームページをあけてその10 けたの番号を入れていただくと、生産履歴が全部出てくるシステムができています。今 はまだ途中段階ですので、牛によっては飼っているところからしかわからないというよ うなこともありますけれども、全部、牛の移動の履歴が出てくるようなシステムができ ておりまして、今後、来年以降には流通のところにも実施していくことになります。現 実には、一部の流通・販売業者のところでは、精肉売り場できょうの肉は何番の牛です よと既に個体番号が表示されてあるものも出始めております。まだ法律の施行段階です ので、売り場の方にはまだまだ普及が必要だと思っておりますが、そういうような形で 安心感をつくっていこうということでの、牛に対してのトレーサビリティーの義務づけ は実施していきます。  一方で、かなり誤解があるのではないかと思いますが、そのほかの食品のトレーサビ リティーでございます。一部の生産者や流通の方々から、そんなに牛みたいにできるわ けがないではないかと。例えば、牛乳は、バルク車で全部集めてタンクに入れるので、 タンクに入った段階でだれの牛乳なのかわかるわけがないというようなご議論がありま す。あるいは、お米でも、もともとカントリーエレベーターに入れた段階でだれのお米 かわかるわけがありません。そういう意味では、私どもは、全部の農産物について牛肉 と同じようなトレーサビリティーをしようと考えているわけではございません。実際 に、牛肉のトレーサビリティーの事業で費用が年間60億以上かかってしまうというこ とがあります。あるいは、牛肉は個体ということですのでかなりわかりやすいのです が、食品全体でやった場合にはもっと相当な額がかかることになります。  ですから、私どもがやっていこうというのは、もし事故が起きたときにさかのぼるこ とができるような体制をつくっていこうということであります。それは、どういうこと かというと、もちろん全部が全部そういう生産者ではないのですけれども、今までは、 いつ種を植えたか、農薬をまいたか、施肥をしたかということについて、記帳されてい る方々は必ずしも多くありませんでした。ほとんどの方は、多分、されていないのだろ うと思います。あるいは、途中の流通加工でも、このロッドはどこから買ってきたかと いうようなことが確実ではないわけです。そうすると、もし何か事故が起きたときに、 どこから仕入れたもので、どこの生産者から出たものかということがわかりませんでし た。  そういう意味では、JAさんが中心になって記帳運動ということを今やっていただい ておりますけれども、それぞれのレベルで、何かあったときにきちんとさかのぼれるよ うなシステムをつくっていこうと考えております。それは、消費者の方がスーパーの窓 口で、この野菜はだれがつくったのか、10けたの番号を入れたらばっとわかるという システムではないです。それは、要求されている以上のトレーサビリティーだろうと思 っています。我々は、事故が起こったときに、その事故を最小限に食いとめていくため にはきちんとした記帳が必要だろうということを考えております。  一方で、もちろん一部のスーパーさんでやっていただいている顔の見える関係をとい うことで、この野菜はどういう生産者がつくられたのか、どういう生産履歴があったの かということがスーパーの店頭でわかるようなシステムがあります。私どもは、全部に ついてこれをするつもりではなくて、ある一定の数量に関してやっていただくというこ とは応援しております。それは、有機農産物と同じで、すべての農産物でやるというこ とではなく、一部の農産物に付加価値をつけることです。やはり、消費者の中で、どう してもそういうものでなければ困る、少々高くてもいいと言われる方にはそういう対応 をします。一般国民全体で言えば、むしろ、原則的に安全ですが、もしも事故があった ときに、それを最小限に抑えられるようにトレーサビリティーができるようなものをつ くっていきたいと考えております。  それから、17ページは、食育についてということでございます。  食の安全・安心ということ、あるいは、今の食だけではなくて、食生活自身がかなり 崩壊しております。朝ご飯にコーラとビスケットというようなことがあったり、朝食の 欠食率も3割に達しているという状況もありまして、一つは食習慣がおかしくなってい るということがあります。それからもう一つは、食生活自身が、昭和55年ぐらいにあ った我が国が理想的な栄養バランスと言われていたものから、現在は油脂の過剰摂取と いう問題が起こってきております。  もう一つは、食の安全・安心ということであれば、食品を見ても、よく私どもの相談 窓口に電話がかかってきて、賞味期限が切れている食べ物を食べてもいいでしょうかと 聞かれます。そこはご自分で判断していただかないと、我々は賞味期限が切れたものは 大丈夫だとは言えませんが、どうともなかったら大丈夫ですと言うのですが、それがな かなかわからない方々がいっぱいいらっしゃいます。やはり、自分で食の安全を見きわ められる力というものが個々の消費者、国民に与えられていくことが最終な目標だろう と思っております。それが、食の安全・安心の最後の安心を構築していくものだろうと 思っていますので、そういう食育を進めていこう、人間の生きる力というものをつくっ ていこうということでございます。  それから、環境の保全に取り組みますとか、研究開発に取り組みますというようなこ とが書いてございます。  こういうことを考えまして、ほぼ4カ月が終わろうとしておりますけれども、最初の 1ページから、実際にどういうことをやってきたかということでございます。  まず、最初は食品安全委員会との適切な関係の構築です。これは、下に厚生労働省と も書いてございまして、食品安全委員会だけではなく、厚生労働省とも適切な関係を構 築しております。そういうことでお互いに情報交換を進めており、また、それぞれの審 議会を運営してきているということでございます。  それから、次のページでございますが、具体的な話ですけれども、農薬の適正使用の 推進と取り締まりなどの実施ということです。実は、農薬の容器について一斉点検をし たところ誤表示がたくさんございました。そこで、製造者23社について、誤表示のも のをきちんと回収していただくなり、再発防止策をしていただくことにしました。悪意 があったということではなくて、農薬の使用基準が変わっているのに変えなかったと か、ちょっと欄がずれていたとか、いろいろな細かい話がございました。しかし、こう いうことについても全部徹底させていただきました。  それから、新聞でも報道されましたけれども、無登録農薬の立入検査を実施させてい ただきました。  それから、次の3ページでございますが、農薬に関するパブリックコメントを募集し たとか、ポジティブリスト化ではマイナー作物について農薬使用がなかなか図れないと いうことでございましたので、暫定的に使用を承認させていただいたということでござ います。  それから、4ページは、最近の新聞にも載りましたが、北海道では余り大きな問題で はないかと思いますけれども、住宅地などへの農薬の飛散防止について指導をしまし た。  それから、これも先ほどの農薬の包装容器の表示と同じようなものですが、都道府県 が決めておられる防除基準をそのとおりにやるとどうも、国の農薬の使用基準と合わな いというようなものがございましたので、これも一斉点検して都道府県を指導させてい ただいたということでございます。  5ページ目は、死亡牛の全頭検査を実施するということでございます。日本の死亡牛 の半分ぐらいが北海道で出ていますので、北海道の農政部は非常に苦労をされていると ころでございます。これは、来年の4月の完全実施ということで、北海道も4月には完 全実施できるような状況になってきていると聞いております。  それから、カナダでBSEが起こりましたが、アメリカを経由してこれが入ってこな いようにということで、アメリカ産であることをきちんと明らかにできるように、交渉 の結果、その体制を確立させていただきました。  それから、8頭目が出てまた難しくなりましたけれども、疫学検討チームでBSEの 感染源、感染経路をある程度の中で特定させていただいたということであります。  6ページ目は、表示110番とか食品ウオッチャーを活用して、いわゆる食品表示に ついての監視をさせていただいております。もう一つは、不正表示に対しても厳しく対 応しております。それから、例えば夏ですとウナギ、今ならお米の表示について、特別 調査と言って、集中した調査を行っているところでございます。  7ページは、私の担当でございますが、リスクコミュニケーションの推進ということ で、さまざまなリスクコミュニケーションを行っております。こういうような形の食の 安全・安心に関する意見交換会を、山梨、東京、大阪、石川、熊本、そして、きょうが 北海道の札幌ということでございます。  それから、食品に関するリスクコミュニケーションということで、これは、公募で消 費者団体に参加していただきまして、9月10日と9月30日に残留農薬での意見交換 を、この後、11月10日には抗菌性物質、いわゆる抗生物質についての意見交換会を 実施いたします。そういうことで、今後、我々はハザードと言っておりますが、農薬と かカドミウムとか、抗菌性物質とか、病原性の微生物とか、そういうものについて、順 次、意見交換を図っていくことを考えております。  我々は走り出してまだ三、四カ月ということで、全力疾走に至っていないのではない かというような点もあるかと思いますが、北海道農政事務所ともども、食の安全・安心 を守っていくとともに、日本の農業あるいは食品産業が国民に安心・安全なものを届け られるよう、そして。信頼感を増すように努力してまいりたいと思います。  よろしくお願いいたします。 ○司会  ありがとうございました。  それでは、ここで5分程度の休憩を設けさせていただきたいと思います。                 〔  休憩  〕 3.食品添加物を考える ○司会  それでは、第2部を開始いたします。  第2部におきましては、消費者の関心の高い食品添加物と最近の取り組みであります リスクコミュニケーションにつきまして、お2人の先生からご講演を賜りたいと思いま す。  最初は、実践女子大学生活科学部食品衛生学教授の西島基弘先生より、「食品添加物 を考える」と題してご講演をいただきたいと思います。  西島先生は、東京薬科大学をご卒業後、東京都立食品衛生研究所に勤務され、ご研究 を続けられるかたわら、博士号を取得され、理化学部医薬品研究科長、生活科学部長な どを歴任されていらっしゃいます。  退職後、2001年4月より実践女子大学生活科学部食品衛生学の教授に着任され、 現在に至っています。  また、2001年1月からは厚生労働省薬事・食品衛生審議会の添加物部会長、器具 ・容器包装部会長でいらっしゃいます。  それでは、西島先生、よろしくお願いいたします。 ○西島先生  ただいまご紹介いただきました実践女子大学の西島です。  時間がちょっと延びておりますので、私は時間を少なくして3時10分で終わりにし たいと思います。  私は、今、紹介をいただきましたように東京都の衛生研究所で長いこと調査・研究を しておりました。内容は、汚染物、残留農薬、食品添加物等かなり多岐にわたっており ます。東京都の衛生研究所といいますのは、研究員の人数が多くて、かつ最新の機械が そろっておりますので、新しい情報を常に提供しておりました。  最近、協和香料で許可されてにない香料原料を使用した香料を使った食品や、ドーナ ッツ屋でTBHQという許可されていない食品添加物が入っていたりして問題視されて ました。  しかし、そういう昔からありました。いわゆる垂れ込みです。  食品の安全というのは、例えば協和香料の香料について考えていただいても、消費者 は、「食品衛生法違反だ」とか「新聞やテレビで問題となっている。心配だ」となりま す。でも、専門家は、それで病気になるわけがないと考えます。TBHQ、酸化防止剤 についても、同じです。  そういう事件が起こると、よく新聞やテレビが取材に来ます。時間がなくて言われた 質問を簡単に答えると、かなりショッキングなニュースになります。それではいけない と思いまして、じっくり背景を話したりしますと非常に落ちついた報道になるというこ とを感じております。専門家から見ると何でも無いことでも、消費者は、何でもないこ とが重なりますと非常に心配になると思います。  きょうは、本当は皆さんのような専門家が多数お集まりとは思わず、消費者の方だけ と思っておりましたので、そういうものを用意してまいりました。ですから、私は、き ょうの皆さんは一消費者という感じでお話をさせていただきます。恐らく、失礼な、そ んなことは知っているよということが多いと思いますが、その点はお許しください。  まず、問題1です。  ギ酸、シュウ酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、ハル マン、ノンハルマン、これは発がん物質と呼ばれていますが、それに鉛、クロムなど 200種類以上の物質を含む飲食物は? 皆さん召し上がっているはずです。「こんな に怖いものが入っているものなんて、食べているわけがない」と思っていらっしゃる方 はいらっしゃるでしょうか。これは、清酒のことです。皆さんがお飲みになっている清 酒です。  どんなものを調べても、悪いものは絶対に入っています。私は、衛生研究所で精密分 析をかなりやっておりましたが、余り細かいことをやり過ぎるというのはあまり良くな いことかも知れません。しかし、そこにいたときは、よそに比べてより正確に、より微 量のものをどんどん調査し、公表してきました。  実は、自分は食品衛生学会のシンポジウムで、余り意味のない数字を出すのはいかが かというような講演をしてきました。非常に自分で矛盾しているのはわかりますが、要 するに、神様が人間のためにつくった食べ物なんかどれもありません。ということは、 人間が勝手に食品として食べているわけですから、調べれば微量の怖いものはその中に 必ず入っているということは別に不思議なことでもありません。  このスライドは、食品のにおい、香気成分について書いてあります。紅茶の香りだけ で135種類以上、コーヒーに至っては950種類以上の成分でコーヒーの香りとなっ ています。、どの香気成分も100種類のものでできているわけです。ですから、考え ようによっては、食品なんてというのは、化学構造式で書けるもの、要するに化学物質 の塊と考えていいわけです。  そういうことを基本に考えますと、いろいろのことがわかりやすくなると思います。 人間でも、どんな動物でも、何かを食べなくては生きていけません。食品はいっぱいの 成分でできているということをまず理解することが必要です。先ほどのスライドにしま しても同じですが、毒性の強さとその量の両方を考えることが必要です。それをまず頭 にしっかり置いておかないと、安全性なんていっても意味がありません。「毒性の強さ とその量」それが最も重要だと思っております。  このスライドは「食品中に添加された化学物質」と書きましたが、今まで、食品添加 物が怖いという消費者が非常に多くいました。先ほどの坂本先生のお話でもそれが明確 に出ておりました。私どもは、常にいろいろとおかしな食品を摘発していましたが、そ の中には、肉が腐ってもおいしそうに見えるものを添加した挽き肉がありました。  ニコチン酸です。ひき肉にちょっとニコチン酸を入れると、いつまでたっても挽いた 直後みたいに見えます。ステーキにぱらぱらとニコチン酸をかけますと、いつまでたっ ても切りたてに見えます。1週間ぐらい置いても切った直後のように見えますが、上か らさわってみるとじゅぶじゅぶと入ります。腐ってもおいしそうに見えるのです。この ニコチン酸というのはビタミン剤です。薬局で売られているドリング剤を見ると、ニコ チン酸やニコチン酸アミドというが添加してあるのがありますが、これはビタミン剤で す。  厚生労働省は「これは人の目をごまかす」ことが目的であるため禁止ということか ら、東京都が一斉検査を行ない各肉屋に調査と指導に入りました。  この、野菜を元気にするにはというのは、これはリン酸です。1%程度のリン酸に野 菜を入れますと、今までしなしなとしていたものがシャキっとします。野菜が成長する には窒素、リン酸、カリが必要だというのはどなたもご存じだと思います。リン酸溶液 に漬けると、野菜がピンとします。それを検査するのは大変です。通常のサンプリング をすると、中のリン酸分の方がはるかに多いわけですからデータになりません。そっと 水の中に入れて染み出したリン酸を調べ、多いと使っていると判断するわけです。、こ れは簡単にできます。  また、魚の鮮度を維持するために、抗生物質を使用した例があります。それから、美 人にする薬というのはアトロピンのことです。アトロピンを魚の目玉につけると、魚の 目が生き生きとするそうです。ちょうどそのころ、美人にする薬ということで、アトロ ピン入りの目薬が市販されていました。今は禁止になって売っておりません。マグロの 赤身を美味しそうに見せるために、一酸化炭素を使用したCOマグロの事例もありま す。  これは、安物のワインを高級ワインに変えるにはということで、ジエチレングリコー ルを少し入れると、貴腐ワインに非常に似てきます。私は、このニュースを夜の海外ニ ュースで最初に見ました。次の日、研究所で仲間と相談し、一週間ほどで分析法を作る ことにしました。ほぼ同時期に行政からの要請があり、市販品の調査を開始しました。 そこで、ジエチレングリコールの分析をできるようにし、学会にも分析法を発表しまし た。このような例はまだありますが、食品添加物ではないものを、違法添加物として報 道されるため、誤解されているということが多いような気がしております。  では、添加物を非常に嫌う人が多いのですが、例えば、中華めんは小麦粉にかん水を 入れて作ったものです。かん水を使わない中華めんは、中華めんではないと思うのです が、そのかん水は食品添加物です。使わざるを得ません。  それから、食用油はなぜ安いかというと、大豆を絞れば簡単に油が出てきますが、そ んな古法で油つくったらコップ1杯で恐らく何万もするかもしれません。実際にはヘキ サンで抽出します。ですから、市販されている油はすごく安く販売されます。そのヘキ サンが、油の中に残っているかどうか、行政がやれといいます。精密分析をやっても検 出されません。でも、ヘキサンは重要な食品添加物です。添加物といっても、絶対残ら ないということは確認してあります。  砂糖はなぜ白いか。よく原糖が身体に良い言う人がいます。しかし、輸入した砂糖を 見せてもらったときは驚きました。トウキビの繊維は当たり前ですが、キューバ人か何 人かわからない髪の毛とか、コオロギかゴキブリかわからない昆虫の足とか。それを溶 かして、ろ過して、それで活性炭で精製すると、我々が今見るようなああいうきれいな 砂糖になるわけです。その活性炭は、食品添加物です。食品添加物は、それがなければ いろいろな食品ができないか、非常に高価になってしまうものもあります。  高野豆腐はなぜおいしいか。下手くそな味つけだとおいしくありませんが、高野豆腐 というのはおいしいですね。なぜかというと、普通にかみ切れるからです。高野豆腐を つくる最終工程で、アンモニアガスで乾燥します。そうしませんと、中にしんができて しまいます。そのアンモニアガスも食品添加物です。  食品添加物は、つくる工程で使う物質を全て食品添加物に指定してありますので非常 に数が多い。しかし、食品添加物は、人が生活する上になくてはならないものなので す。その割に、評判が悪いのはかわいそうだと思っているのです。  このスライドは、食品添加物の違反状況です。東京都の衛生研究所におりましたとき に、私どもは多くの違反を挙げております。  許可外の食品添加物すがキノリンイエローとかアゾルビンとか他にもありますが、外 国で許可していて日本で許可されていないものが大半です。でも、日本人が外国へ行っ て、一々、これは日本の食品衛生法に合っているだろうか、心配で食べられないという 人はいないと思います。世界的に共通になると違反ではなくなりと思います。  酸化防止剤のTBHQもそうです。かなりいい酸化防止剤だと思ってますが、日本で は許可されていない。ですから、検出されると違反ということになります。  ともかく、こういうものについて違反だというと、新聞記者だとかテレビは好きでし て、すぐに飛んできます。そのときに、よく説明をすると、落ちついた記事になりま す。ところが、聞かれたことだけを答えた場合、何か毒物が出たような書き方する動き があります。本当に、報道関係が来たときは、忙しくても時間を使って丁寧に説明する と記事が非常に落ちつくということを身をもって体験しております。  それから、保存料の安息香酸というのは、違反のものもありますが、グァバの実で 500ppm、グァバジュースは150ppmと天然のものでも多量に入っているもの があり、二酸化硫黄は、検疫所でよく違反が見つかっています。例えば、市販のかん ぴょうは白色です。袋を開けて匂いを嗅ぐと、つんとした感じになりますが、あれは二 酸化硫黄の刺激です。  かんぴょうには1kg当たり3gと多量に許可しています。ところが、あの白いかん ぴょうをそのまま食べる人はいません、煮ますが、そのときに、完全に気散してしまう か、水の中の酸素と結合して硫酸になってしまうため、二酸化硫黄としては口にはいり ません。  あめなどは口に入りますけれども、残存量はごく少量でありまったく問題ありませ ん。  東京都は莫大な数の市販食品を検査しております。たしか添加物だけで4万件も検査 しています。輸入品の違反内容は、大半が外国で許可して日本で許可をしていないもの です。国産加工食品の添加物の違反は、ほとんどゼロに近いと思ってますが、消費者は 誤解している人が多いような気がしております。  また、添加物は昔から使われていたといました。明治時代には、緑青による中毒が毎 年、起こっていました。  ここでは、食品添加物による事故例を出してみました。ズルチンは、現在、許可され ていませんが事故を起こしています。  過酸化水素は、かずの子だけに使用しています。かずの子は、袋に数多くの毛細血管 がありますので、それが酸化すると汚くなります。そこで、最終製品に後が残らないこ とを条件に許可してくれました。血の色は過酸化水素を使わないと消えません。市販の かずの子は、カタラーゼ処理して完全に過酸化水素を壊していますので、検出されませ ん。  グルタミン酸は、一度に大量に口に入れると、このような症状が出ます。  ニコチン酸は、肉の色をきれいにします。ハンバーグを食べて痒くなったという苦情 があり、調べると、ニコチン酸を添加していたことがわかりました。でも、これはビタ ミンの一種です。このようなもので中毒が起きたりしています。  これは食品添加物の1日摂取量調査結果です。食品添加物を1日どのぐらい食べてい るかということを厚労省を調べていました。それを1日摂取許容量と比べると、どれも 少ない値であることがわかります。  これは、最後のスライドです。これもその続きですが、一つだけ気になるものがあり ます。硝酸ですが、これは発色剤です。しかし、野菜の中にたっぷり硝酸が入っており ます。それを1日摂取許容量と比較すると100%以上ですが、これは、国際機関で 100%を上回っていても問題ないとされてます。野菜はいっぱい食べた方がいいとい う正式なコメントまであります。  こうやってみますと、食品添加物というのは非常に1日摂取量が少ないといえないと 思います。科学的に見ると特に問題はないと考えられます。 4.食品の安全性とリスクコミュニケーション ○司会  ありがとうございました。  続きまして、独立行政法人食品総合研究所企画調整部国際食品研究官の山田友紀子先 生より、食品の安全性とリスクコミュニケーションについてご講演いただきたいと思い ます。  山田先生は、京都大学大学院をご卒業後、近畿大学食品科学研究所、1993年から は国連食糧農業機関、FAO/WHO合同食品企画計画グループ、2000年10月よ り農林水産省食品総合研究所、現在の独立行政法人食品総合研究所に勤務されていらっ しゃいます。  ご専門は、食品の安全性及びそれに関連する化学物質のリスクアナリシスです。  それでは、山田先生、よろしくお願いいたします。 ○山田先生  皆様、こんにちは。山田でございます。  私は、2000年10月に日本に帰ってまいりまして、そのときから食品の安全性に 関するリスクアナリシスの伝道師となろうとやり始めましたけれども、その当時は、何 やそれという感じで、全く反応がありませんでした。しかし、幸か不幸か、BSE問題 が起きまして、その当時は皆様の前でリスクコミュニケーションについてお話しする機 会が来るなどとは考えてもおりませんでしたが、私としては、これで食品安全行政がだ んだん先進国に近づいていくということでうれしく思っております。  リスクアナリシスを食品安全行政に使うということをどこが最初にやったかという と、実はアメリカで、1980年ぐらいからもう始まっております。今は、ヨーロッパ もどんどん使っておりますが、リスクコミュニケーションになりますと、アメリカのレ ベルに達する国は全然ないと思うくらい断トツでトップを走っております。  国際的な場におきましても、FAOとWHOと、それから当時のGATが共同で、 1991年に食品の化学物質について国際会議を開き、そこでCodexはリスクアナ リシスを活用すべきであるという勧告を出したのです。  Codexでは、1993年からリスクアナリシスについて、作業というか、考慮を 始めまして、1995年には既にリスクアナリシスに関する用語の定義というものをた くさん採択いたしております。ことし、幾つか追加の定義というものが採択されまし て、お配りしております資料の後ろに参考資料という形でその一部をつけてございま す。  リスクアナリシスについては、坂本先生がお話しになりましたので、時間が押してい るためにはしょりたいと思いますが、本日は、食品の安全性についての基本的な考え方 とリスクコミュニケーションについてお話したいと思います。  お願いします。  最初に、これは坂本先生もおっしゃったのですが、食品の安全性というものを、行政 の枠組みであろうと産業界であろうと、または消費する側から考えても、ベースになる 考え方がございます。それは、絶対に安全な食品はないということなのです。あったら うれしいのですけれども、そうではありません。どのような物質であっても、自然であ ろうと合成であろうと、それは全くかかわりなく、どんな物質や食品であっても毒にな る可能性があります。それはどういうことかというと、量の問題であるということなの です。  別に打ち合わせたわけではありませんが、先ほど西島先生がおっしゃったように、そ ういうものが食べる人にとって安全かどうかというのは、摂取した量、もっと正確に言 うと体に吸収される量と、それぞれの毒性によるものなのです。だから、毒性が高いも のであれば、ほんの少し食べても体の健康に悪影響を起こす可能性があります。でも、 毒性が低いからといって、幾ら食べても大丈夫ということはないのです。毒性が低いも のであっても、ある一定以上食べれば悪影響があるということであります。極端に言い ますと、生命の維持に必要な物質、例えば水とか酸素とか栄養素というようなもので も、あるレベル以上に食べてしまうと、健康に悪影響があったり、死に至ることすらあ ります。  今、日本とか先進国では、サプリメントというのは栄養素なのだからどんどんとりま しょうという感じで宣伝されておりますけれども、例えば鉄のサプリメントですが、ア メリカでは子供が間違えて食べて死んだという報告が毎年のようにあります。それか ら、セレンとかビタミンB6とか、栄養素としてとりなさいと勧められている最大の量 と、これ以上食べたら健康に悪影響が出る最小量が近いもの、では、普通の方が普通に 健康的な食生活をしていて、どんどん食べてしまうと毒性を発揮するレベルに入ってし まうという例もありえます。つまり、どんな量や濃度においても安全なものはないわけ です。  ただし、これは、何も安全なものをつくらなくていいということではなくて、我々 が、普通に食べるとか、ちょっと極端にたくさん食べるというぐらいのことであれば健 康に悪影響を与えないというかぎ括弧つきの安全な食品をつくるように、行政、学界、 もちろん産業界、生産者は努力をする必要があるということであります。  次をお願いいたします。  私がすごく気になっていることが一つありまして、安心と安全を一緒にしてしまうと いう兆候があります。安全というのは科学的な評価です。特に限定しますとリスク評価 になりますけれども、それで決まるものであって、客観的であることが望まれておりま す。ただ、科学者の解釈というのがあるので100%客観的かというと、それはちょっ と言えないかもしれません。けれども、でき得る限り客観的である。  それに引きかえ、安心というのは「心」という字があります。これは、心理的なもの であって、主観的なものなのです。つまり、私が安心できても皆さんは安心できないか もしれないし、逆に、皆さんが安心だといっても私は心配だということもありです。幸 か不幸か、日本語には安心というすごく便利ですぐれた言葉があるがために、いろいろ 情報の伝達が難しくなるということがあります。  私もそうたくさん知りませんが、英語とかスペイン語とかイタリア語では、一言で安 心と言えるような言葉はありません。だから、行政も学界も、安全だけ言っていればい いから随分と楽なのです。  ただ、問題は何かといいますと、安全だとだれかが言っても安心できない場合もある し、安全だとだれも証明してくれないのに安心できる場合もあります。そこにギャップ があるということなのです。厚労省の方がおられる前で申しわけありませんが、その不 幸な例の一つがGMOで、厚労省の方が安全性を評価しました。安全性評価の結果、大 丈夫というのはこれですとリストを出しておられます。しかし、消費者の方々は、でも やっぱり心配だと言っているわけです。それに引きかえ、例えばお隣さんがうちの日曜 菜園でつくった野菜です、召し上がれと持ってこられたら、どんな農薬を、どのぐらい 薄めて、何回、何時まいて、その何日後に収穫したかということを聞かずに、すっと受 け取って食べてしまいますね。それは、安全かどうかわからないけれども、でも安心で きるわけです。  もっと極端なものになりますと、フランスでに殺菌乳からつくったカマンベールがあ ります。ノルマンディーの特産品です。品質がいいと言われていて、値段も殺菌乳から つくったものより高いのです。ところが、過去にリステリアの中毒で死者が何人も出て いるし、リコールもかかっているし、それから、あちこちで輸入禁止もかかっているの です。それでも、フランス人は、これが伝統的な食品なのだから、私はやはりこれを食 べたいというふうに言うわけです。つまり、そういうふうにギャップがあります。  それから、便利さとか利益というのも安心をふやす要因になります。ここで、生産者 や行政は、安全な食品と安心できる食品がなるべく近くなるように、ギャップが小さく なるように努力しなければいけないということであります。それは、どうやったらでき るかというと、完全にはきっとイコールにはならないですけれども、信頼とか信用を高 めるという努力によってこのギャップが小さくなるというふうに考えております。  次をお願いいたします。  今、食品の安全性に関する市民の関心が非常に高いですが、それに反比例して信頼度 は非常に低いです。それはなぜかといいますと、もちろん事故が起きたら信頼性という のは低くなるのですけれども、それよりも、もっと大きな要因として、事故が起きた場 合の当事者とか行政の姿勢とかモラルに対して市民が疑念を抱くとき、それは信頼を損 なう要因になります。そして、不幸にして事故が起きてしまったら、そのときどう対応 するかということで、さらに信頼を損ねるか、またもとに戻るかが決まります。  これまでは、事故が起きたときに、社長が出てきて何か悲しそうな顔をして、私は知 りませんでしたと言って、昔は通っていました。ところが、今はコーポレートコンプラ イアンスということを言うようになってきましたから、社長たる者が何も知らないとい うのはマネジャーとして無能の証明なのです。つまり、責任があるときにはしっかり責 任を認めることから始まります。そして、事故があるということは、相手方があるわけ ですから、私がどうしてこの職についているときにこんなことが起きたのだろうという ので悲しいのではなくて、相手に被害を与えたということで悲しいということがわかる ようにと。とりあえず例として言っているのですが、相手の気持ちを酌んだ対応をしな ければいけないということがあります。そして、被害者なり一般消費者、つまり、それ を買って食べる人は、一体なぜこんなことが起きたのか、私はこれを買ってもいいのか しらと。そして、例えばこれが今発売禁止になっていたら、将来はこれを食べられるの かということを知りたいわけですから、なぜこうなったかということと将来どうすると いうことをはっきり打ち出す必要があるということになります。  これは、食品に関係なく真実ですけれども、信頼関係を築くには時間がかかります。 しかし、その信頼関係をぶち壊すのは下手なことを一言言うだけで済みます。一瞬で済 むわけです。もし信頼を失ってしまったら、それを取り返すのはものすごく難しいで す。ゼロから築くよりもずっと難しい。下手をしたら二度と信頼は戻らないということ になるわけですから、信頼はそのままちゃんと保つように努力する必要があります。  次をお願いいたします。  実は、リスクという言葉は難しいです。確かに、日本語になかった感覚なので、易し くないですけれども、皆さんも新聞をあけられたら、経済欄には本当に恐ろしいほどリ スクという言葉が出てきます。そのリスクと、私たちがきょう言っているリスクは同じ か違うかということです。私は、ありとあらゆるリスクアナリシスの入門書というたぐ いのものを見て、リスクアナリシスという学問における、または行動におけるリスクの 最大公約数というものを出してみました。そうすると、二つのものになります。将来起 きるかもしれない損失、でも、これは「かも」なのです、必ず起きるとは限らない。損 失そのもののことを言っているか、そうでなかったら、そういう損失とか危害が起きる 可能性のことを言っているか、このどちらかなのです。食品の場合は、どちらかという と、下の方、可能性についてお話しすることになります。  リスクは、あるかないかを言うのではない。これは、どれも全部共通していて、リス クは高いとか低いとか、大きいとか小さいということなのです。一つ厄介なことは、分 野、目的によって定義が違うのです。だから、本当はリスクアナリシスと言うだけでな くて、何に関するリスクアナリシスかということを言わなければいけません。そして、 日本語にはない概念であります。  次をお願いいたします。  今言ったように、リスクはあると考えます。リスクの大きさの数直線があって、ゼロ から無限大というふうに考えますと、絶対安全つまりゼロリスクはない、あり得ませ ん。状況に応じてどこかにリスクがあるということなのです。だから、これが食品安全 行政のもう一つの難しいところで、ゼロか、無限大かしかなければ、つまり、裁判みた いに有罪でなければ無罪、無罪でなければ有罪だったら食品安全行政は簡単なのですけ れども、俗な言葉で言うとずっとグレーゾーンの話をしなければいけないということに なります。  先ほどマスコミの話が出ましたけれども、彼らが聞きたいのは、安全か危険かどちら かなのです。しかし、その間のどこかにあるというのが食品のリスクなのです。  次をお願いいたします。  ここからは、リスクコミュニケーションをいう前に、定義なのですが、ハザードは危 害というふうにも訳します。これは、先ほど坂本先生が言われた中に入っていましたの で言いませんが、例えば目に見えたり、それから、温度計とかクロマトグラフとか機器 を使って測定することができるものであるわけです。これは、知っておいていただきた いことなのです。  次をお願いいたします。  メーンイベントのリスクとは何ぞや。本当に日本語で言えたらいいのですけれども、 食品とはかかわりなく全般的なリスクコミュニケーションをやっておられる社会心理学 者の京大名誉教授の木下先生という方がおられまして、これを無理に日本語にすると 「やばさ」なのですよねと。でも、やばいとかやばさというのは公文書に書けませんか ら、やはりリスクと書くしかないですねという話になりました。ただ、雰囲気としてど ういうものかというと、やばさです。起きるか起きないかわからないけれども、ひょっ として悪いことが起きるかもしれないということだと思ってください。  食品の安全性に関するリスクの場合には、これだけで出てくるのではなくて、食品中 というか、上についているときもありますけれども、さっき言ったハザードが存在する 結果として生じるものです。つまり、ハザードとリスクの関係には因果関係がありま す。健康への悪影響の確立とその程度の関数であると言われています。  しかし、これはすごくずるい定義なのです。どんな関数が言っておりません。人によ っては掛けると書かれる方もおられますが、単に掛けるというようなそんな簡単なもの ではございません。両方の因子があるという意味というように受け取ってください。  関数と言っているのだから、目に見えるものでもなければ、機械を使ってすっと差し 出したらはかれるものでもない。数学的な観念であるわけです。  そうしたら、どうやって出すのかとなりますと、例えば実際に問題が起きたときの統 計から1,000万人にどれだけというふうな数字が出てくることもあります。それか ら、今、特にアメリカなんかで盛んにやっているのは、数学モデルを使いまして、実験 動物だったらこう、人の疫学調査だったらこうだから、こういう摂取量のときにはこれ ぐらいになるでしょうというものを数学モデルで出すこともございます。ただ、それは どのモデルを使うかで、下手したら1,000倍ぐらいはリスクの違いが出てくること もあります。今、多くの場合には、先ほどの食品添加物の例でありましたが、ADIの ような毒性学的な指標と実際に摂取している量を比べて、十分低いから大丈夫でしょ う、または、非常に多く超えているから何かリスクマネジメントしなければいけないと いうようなレベルであります。  次をお願いいたします。  国際的合意と書いているのは、Codexでこういうふうにしましょうというものを 模式化したものであります。これは、Codexだけでなくて、先ほど言ったリスクア ナリシス先進国であるアメリカとか、それ以外にも西ヨーロッパの国やオーストラリ ア、ニュージーランドも同じような枠組みでやっております。それは、まず、リスクマ ネジメントという過程とリスクアセスメントという過程がありまして、それぞれに過程 があるわけですが、この両方を通じてリスクコミュニケーションというものがあるわけ です。でも、リスクコミュニケーションの方が大きいではないかとおっしゃると思うの ですが、そこは、例えば説明とか、教育啓蒙活動とか、トレーニングコースをするとい う部分もここに入ってくるわけです。  次をお願いいたします。  Codexで言われていることは、リスクアセスメントとリスクマネジメントの間は 機能的な分離が必要であるということです。ここでは、決して物理的分離とか組織的分 離とは言っておりません。そして、必須な行動として、この二つの間の相互作用という ことが言われております。実は、リスクアセスメントとリスクマネージメントの相互作 用というのもリスクコミュニケーションの一種になるわけです。ですから、リスクコミ ュニケーションというのは、何も行政と消費者とか、消費者と生産者だけではなくて、 リスクアセッサーとリスクマネジャーの間にも存在しなければならないということにな っています。  そして、恐らく、多くの行政の方は、これをごらんになると、これまでもリスクマネ ジメントをやってきたよとおっしゃるかもしれません。しかし、すごく大きな違いがあ ります。きょう、厚生労働省と農水省の説明を聞いてすごくうれしく思ったのですけれ ども、リスクマネジメントというからには、利害関係者の参画が必要であります。ただ 単にいるとか、説明したからとか、意見聞いたからというのではなく、参画であること が必要なのです。この参画をするためにも、リスクコミュニケーションという活動が重 要な役割を果たすことになります。  日本の食品安全基本法を読みますと、組織は二つに分かれておりますけれども、リス クアセスメントとリスクマネージメントの境界線がちょっとあいまいな感じで、これか らどうなるか、見ていく必要があると思います。  次をお願いいたします。  この定義も、先ほどおっしゃったので言いませんけれども、日本語にコミュニケーシ ョンという言葉はありませんでした。ここで言いたいのは、このCoというのは、一緒 にやろうねとか、お互いにと、そういう意味があります。だから、一方方向でやっては コミュニケーションではないということです。  次をお願いいたします。  リスクコミュニケーションは、リスクコミュニケーションそのもの、さっき言ったリ スクコミュニケーションだけしかない部分と、リスクマネジメントの不可欠の要素とし て存在するものとに分かれてきます。恐らく、我々納税者にとって重要なのは、リスク マネジメントのすべての段階における利害関係者の参画です。どうやるかというと、パ ブリックコメント、公聴会、委員会、いろいろな方法がいっぱいあります。恐らく、日 本型の、アメリカでやっているものよりももっと適したものを発明できるかもわかりま せん。  次をお願いいたします。  非常に重要であると言われておりまして、物の本には、リスクコミュニケーションが 一番大事と言われております。けれども、だからこれだけやっていたらいいわけではな く、なぜ大事かというと、実はリスクマネジメントするから大事であるということにな ります。同じようなことを何度も言うのもしょうがないので省略しますと、情報公開 も、透明性を確保するということで一つの要因として非常に大事です。これも社会心理 学の方ですけれども、必ずではないところがちょっと残念ですが、情報量と信頼度は比 例すると言われておりますので、一般に、情報量をふやすと信頼度もふえることになり ます。  次をお願いいたします。  これまで、ほかの分野のリスクコミュニケーションはいろいろあったのですが、私が 食品の安全性に関するリスクコミュニケーションを最初に言い始めたころに、情報の話 をしますと、出しています、読んでわからない人は勉強しなければいけませんというよ うな話でした。しかし、コミュニケーションは、さっき言いましたように一緒にすると かお互いに何かをするということなので、ただ出すだけではだめであります。しかも、 これまで余り言いたくなかったような困難さとか不確実性についても説明する必要があ ります。コ・ミュニケーションですから、意見の交換というのが必要です。また、ただ 交換するだけではなくて、ほかの利害関係者のニーズを反映させるためにするわけで す。これは、行政しかり、産業界しかりです。  そして、ここがすごく重要で、私たちも本当に努力しなければいけないのですが、受 け手が理解できない場合は受け手の責任ではない、出し手の責任であります。ここがす ごく重要です。そして、ただ情報を出すだけではなく、どういうメッセージを伝えたい かということをあらかじめ戦略的に考えなければいけないということがあります。  次をお願いいたします。  リスクコミュニケーションは、重要ですけれども、問題の解決法ではなくて、問題の 解決法を決定するリスクマネジメントの助けになるものであって、利害関係者が参画し て決定するわけですから、社会にその解決法が受け入れやすくなります。しかも、うま くやれば利害関係者の信頼、信用の確立に役立ちます。そして、これは説得でもありま せん。リスクを知らせるのがリスクコミュニケーションです。そうでなかったら、ただ のコミュニケーションなのです。そして、コミュニケーションだから交換が必要です。  次をお願いいたします。  お互いに納得するということが一番いい落としどころです。  次をお願いいたします。  信頼、信用ができたら、そこから安心が出てくることになります。  次をお願いいたします。  データの公表ですが、今は公表が原則ということがリスクアナリシスの枠組みでは当 然のことになっています。ただ、今までは数字がひとり歩きしていたのですね。大きな 数字、小さな数字と、それだけだったのですが、実は日本ではかなりおくれている食品 の安全性に関する分析の信頼性を客観的に保証するシステムも必要だし、そのデータが 何を意味しているのかということをつけて発表しなければ、全くの素人が聞いたら大き な数字ですねということで終わってしまうことになるわけです。だから、情報を出す場 合には非常に多大な努力をしなければいけないことになります。  次をお願いいたします。  ここで、これまでと違うこととして、消費者ないし納税者をパートナーとみなしま す。上下の関係ではなく、パートナーである、一緒になって政策をやっていくというこ とになります。それから、対象、つまり、相手によって理解しやすい用語とか適切な方 法を選ぶ必要があります。子供が相手だったら字をたくさん並べてもわからないですか ら、絵などでわかるようにするとか、漢字は使わないとか、そういうことをします。  それから、コミュニケーションでしなければならないこと、つまり、相手の立場を理 解するとか、正直、率直、オープン、かつ明瞭というようなことが必要です。それか ら、報道関係者へのさっきの話ではないですけれども、わかるように、しかし、科学的 な事実は曲げないようにして情報を提供する、それによって正しい情報を報道してもら って、そして、それが市民のところに行くことが必要です。  次をお願いいたします。  実は、残念ながら、リスクコミュニケーションは難しいのです。その理由の一つが、 これは専門用語にしていますが、この意味は、話を聞いた人がどのぐらいリスクがある と感じるかということと、科学的に証明されたリスクの間にもギャップがあるというこ となのです。こちら側に書いてあるのは、実際にリスクを大きく感じがちのものであり ます。例えば、自分がコントロールしているとか、便利だという場合にはリスクは小さ く感じがちです。例えば、食品と違いますが、自動車を考えますと、それでどれだけ人 が死んでいるかと考えると、自動車というのはその面から見るとすごいハザードなので す。ところが、利益は明らかだし、自分自身が運転してコントロールしていると思って いると、実際よりもリスクは小さく感じがちになっていることがあります。  食品の場合、特に問題なのは、合成物質は実際にも危ないと思われがちだし、自然由 来のものはリスクを小さく感じがちであります。例えば、農薬とか合成された食品添加 物は危ないと言う人がすごく多いのです。ところが、我々が知っている歴史上最も強い と言われる発がん物質の一つであるアフラトキシンというのは、かびがつくる自然物質 です。それから、女性だけではなく、男性も体の中でつくっている女性ホルモンも発が ん性があります。我々の体の中でそういうものをつくっているわけです。しかし、あし た、私はがんになるのかというと、そこがもとに戻っていただいて、量の問題であると いうところなのです。  次をお願いいたします。  事前に何を考えなければいけないのかということがここに書いてありまして、参考に していただきたいと思います。  次をお願いいたします。  ここで、反面教師のものだけを出して、こうしてはいけない、つまり、この反対がい いというものをちょっとお見せしたいと思います。食品安全基本法が大体固まったころ に、どういうふうに報道しているのかということを知りたくてインターネットで検索を かけました。さるところの情報をクリックして、一画面に出てきたのをそのままコピー アンドペーストをしたものですが、これをごらんになるとすごく漢字が多いと思われま せんか。数えてみると、全部の字の中の60%、6割が漢字です。実は、ウェブサイト のようなものは、確かに、文学博士でどんな漢字でも知っているような方もごらんにな りますが、子供も見ます。本を読むのが嫌いだという人も見るわけです。だから、これ を見たときには余りびっくりしませんでしたが、こんなにたくさん漢字があるのは非常 に不適なのです。  次をお願いいたします。  小さい字で、ここに「キッズルーム」と書いてあるのですよ。ここに、私がそのとき に叫んだ言葉を書いていますが、細かくて見えませんけれども、本当に漢字だらけなの です。これを読むキッズというのは、一体どのレベルの何歳のキッズかなと。私は50 歳をちょっと超えていますが、はっきり言ってこれは読みたくないです。しかも、クリ ック、クリックとしていかない限り最後までいかないというのもあります。  次をお願いいたします。  ところが、キッズ用のサイトということで、これはFDAがつくっている一つですけ れども、同じ一画面です。一部をとってきているわけではなく、一画面をとると、それ こそ食品衛生法ではないですけれども、どうやったら家庭で食品衛生を保てるかという ことを子供に教育するようにできています。質問は3行しかありません。正解を答える と、合っていますという答えが出て、その説明も6行しかないのです。そして、これを 読んだら次へ行ける。クリックすると同じようなものが出てくるのですが、コンピュー ターの特性であるインターラクティブということをしっかり使っているわけです。これ だけでもすごく差があって、アメリカ政府の方がずっと先進国だというのがおわかりに なるかと思います。  次へお願いします。  これが最後ですけれども、今後の課題はすごくたくさんあります。つまり、日本語に ないコミュニケーションということをやらなくてはいけないのですから、それだけでも 大変だというのがわかるかと思うのですけれども、それぞれに課題はあります。例え ば、政府は意識改革が必要である、公僕意識とかサービス感覚というものが必要になっ てくる、では、消費者は待っていたらいいのかというと、そうではない。リスクコミュ ニケーションは、お互いに意見を交わすわけですから、せっかく会によばれても、私た ち知りません、任せますというのであれば、そういうことをする意味がないわけです。 ですから、消費者の方も知識、経験の蓄積をして勉強をしていただく必要があります。 それには、我々が一生懸命に努力をしなければいけないと思うのですが、生産者、産業 界もわかりやすく説明することを知っていただくことと、必要な場合にはちゃんと責任 を認めなければいけないということがあります。  また、科学者は、もっと社会のニーズに敏感になってわかりやすく説明することが必 要です。報道の方も、センセーショナルな記事にならずに、正確に報道する。つまり、 お互いに勉強しながら意見を交わせるようにしていかない限り、食品安全行政の前進は ないというふうに考えております。  以上でございます。ありがとうございました。 ○司会  ありがとうございました。  ここで、また5分程度の休憩を設けさせていただきたいと思います。                 〔  休憩  〕 5.意見交換・質疑応答 ○司会  時間となりましたので、第3部の意見交換会を開始いたします。  意見交換会は、コーディネーターに進行をお願いしたいと思いますので、よろしくお 願いします。 ○コーディネーター  本日、意見交換会のコーディネーターをつとめさせていただきます、厚生労働省医薬 食品局食品安全部企画情報課の広瀬と申します。  よろしくお願いいたします。  意見交換会では、第1部、それから第2部でご講演をいただいた方々に加えまして、 各種団体等の代表的な方などにご参画をいただいているところでございます。  1部、2部の方も含め、簡単に所属等の紹介をさせていただきたいと思います。  こちらのテーブルの方から、内閣府食品安全委員会の坂本委員でございます。  そのお隣が厚生労働省大臣官房の外口参事官でございます。  厚生労働省医薬食品局食品安全部の高井企画情報課長でございます。  同じく食品安全部基準審査課の岩間主査でございます。  それから、農林水産省消費・安全局の姫田消費者情報官でございます。  そのお隣が実践女子大学の西島教授でございます。  そのお隣が独立行政法人食品総合研究所の山田国際食品研究官でございます。  それから、本日、北海道庁の方にもご参加をいただいておりまして、北海道保健福祉 部食品衛生課長の米川雅一様でございます。  それから、北海道農政部道産食品安全室主幹の吉田恵子様でございます。  今度は、こちら側のテーブルになりますが、釧路消費者協会副会長の畠山様でござい ます。  そのお隣になりますが、北海道食品安全協議会委員の服部様でございます。  ホクレン農業協同組合連合会調査役の河野様でございます。  そのお隣が日本食品添加物協会常務理事の鈴木様でございます。  ここで、畠山様、服部様、それから河野様に、今回の意見交換会に臨むに当たりまし て、団体等の主な活動状況につきまして、簡単にご紹介をいただきたいと思います。  それでは、畠山様、お願いいたします。 ○畠山副会長  皆さん、こんにちは。  釧路から参りました釧路消費者協会の畠山と申します。  私ども釧路消費者協会と申しますのは、道立センターも兼ねておりますけれども、札 幌に社団法人北海道消費者協会がありまして、そこを核に、たしか北海道地域に全部で 77ぐらいの消費者協会がございます。その中の一つが釧路消費者協会ということでご ざいます。  私どもは消費者活動をやっているわけですけれども、釧路の場合をちょっとお話しさ せていただきますと、安全委員会ですとか、環境委員会といった委員会活動をやってお ります。  それから、あとは部も設けておりまして、組織の基盤固めをする部の活動、会員拡大 とか広報活動ですけれども、そういったことをやっております。その中で、私は、安全 委員会というところの部署を担当しております。  最近やりました活動としましては、期限表示についての消費者の理解度について、製 造年月日表示がなくなったのは平成7年〜8年頃だったと思いますが、結構、時間の経 過がありますので、製造年月日に対する消費者の意識はどうであろうか、そういった調 査もしました。  そういったことがありまして、結構時間の経過があるものですから、消費者の意識は どうであろうか、そういったことを調査したこともあります。  調査結果としては、86%の方から製造年月日表示はあった方がいいという結果を得 ております。  それから次に、防かび剤の表示調査もいたしました。これは店頭で表示調査をするわ けですけれども、偽装表示など、表示に関する企業の意識が非常に低いということがず っとありました。  店頭を回っていて防かび剤の表示がないことはわかっていたのです。おこがましいよ うですけれども、啓発をしたいということと、釧路のスーパーの表示の意識を高めてい ただきたいということを目的にいたしまして調査をいたしました。  それから、釧路野菜の応援、これも地産地消ということでやっております。釧路は寒 い地域ですので、農薬の使用が少ないというメリットがあります。  それから、生産量は非常に少ないのですけれども、寒暖の差があるものですから、お いしい野菜ができます。それで、釧路野菜の振興ということを願いまして、行政、生産 者、流通業者、それから、私ども消費者の四者で連携を持ちましてPR活動をいたしま した。それが大変成功をおさめまして、釧路野菜のことを釧路の市民に知っていただく ことができたということがあります。そんなような活動をしております。  きょうは、どうぞよろしくお願いいたします。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  服部様、お願いいたします。 ○服部食品安全協議会委員  与えられた時間が3分ということでございますので、非常に短くて申しわけないので すが、私の方からは、本日、食品安全協議会の委員という形で、この場に参画をさせて いただいておりますけれども、本職の方は北海道水産物加工協同組合連合会ということ で、水産加工屋さんの集まりの団体に籍を置いております。  そういったことで、水産加工業者の状況ということにもちょっと触れさせていただき たいのですが、非常に需要の落ち込みということもありまして、販売に苦慮していると いうことが一つの課題になっておりますけれども、それ以上に、それぞれの加工場の衛 生管理の徹底、それから、それら施設の整備等について衛生環境の整備というのが課題 になってきております。  そのような衛生的な環境の整備ということになりますと、まず、HACCPに基づき ます衛生管理手法の導入ということを進めていかなければならないわけでございます。  北海道内におきましては、ホタテ地域を中心といたしまして、FDAによります対米 輸出水産物の認証制度、たしか、これは平成9年の12月だったと思いますけれども、 施行されまして、それにより、既に認証を受けている加工業者も結構いらっしゃるわけ でございます。  しかし、最終的にHACCPによる高品質生産体制というものを構築していくために は、先ほど加工業者の団体ということを言いましたけれども、中小企業者でございます ので、施設整備などには資金的な問題等が非常に残っております。広く普及するという ことには、まだまだ至っていないのが現実でございます。  まさに、このような状況でございますけれども、HACCPの考え方を取り入れなが ら、ノウハウの収集を目指しまして、衛生管理面の底上げをはかりたい道内企業にとり ましては、非常に有効な手段という形になっているのが、北海道庁を中心として行われ ておりますHACCPに基づく衛生管理導入評価事業でございます。  これについてちょっとご紹介をしたいと思うのですが、これは、平成11年に食品安 全協議会の中で、アンケート調査ですとかニーズの把握を行いまして、具体的な方策を 検討した結果として、いわゆるHACCPに基づく衛生管理というものを、初期のとこ ろから段階的に評価をしていくことによって、各企業の取り組み意欲の向上ですとか、 それから事業所の衛生水準の向上を図るとともに、道産食品の信頼性と付加価値の向上 を目指そうという形の中で結実をしたものでございます。  皆さん、ご存じの方もいらっしゃると思いますけれども、全国的にも画期的な手法と して高く評価をされているところでございます。  昨年の6月からは、従来の食品企業、製造業者、平成14年の6月からは製造業者を 対象にして実施をされてございまして、平成15年の7月から、スーパーマーケットな どの食品の調理・加工をする施設、いわゆるバックヤードといいますけれども、バック ヤード部門についても、この段階的評価事業の対象に加えられてきております。  この中身というのは、150項目近いさまざまな衛生管理の課題について、まずは自 己で評価をしてもらうというのが最初でございまして、その後、保健所の方々によりま す第三者の評価というものがあるわけでございますけれども、自分の事業所が衛生管理 の状況としてどのような段階にあるということをまずは知ってもらって、現状の段階を さらに一段、二段と上を目指して目標を持つことによって、自主衛生管理水準の向上に つなげていこうというものでございます。  非常に難しい中身になっておりますけれども、取り組み状況ですとか、項目をチェッ クしながら、評価基準点数を合計して総合的に判定を行うわけでございますけれども、 評価基準につきましては、段階を7段階に分けまして、それぞれ自分はどの程度の段階 にあるかということが客観的にわかるようなシステムになっております。  それで、現在いろいろとやられているわけでございますけれども、道のホームページ の方でも、事業の対象者ですとか、評価の実施方法、評価段階、評価結果等についても 紹介をされてきております。  それから、現在、段階的評価機関の検討分科会というものを設置いたしまして、民間 移行の方法等についても検討を進めているところでございます。  私どもの食品安全協議会の委員といたしましても、この事業を広く知っていただきな がら、衛生管理面の全体的な底上げを図って、安全で安心な北海道産食品の供給体制と いうものが構築されていくことを望んでいるところでございます。  以上、簡単でございますけれども、報告をさせていただきました。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  それでは、河野様、よろしくお願いいたします。 ○河野調査役  私どもホクレンでは農畜産物の取り扱いをしておりますが、私は青果の方の関係でご ざいまして、特に、トレーサビリティー等につきましては、昨年、牛肉が実施されまし たし、次には青果だというお話も非常に強いわけでございます。  今、青果物に関しましては、全道で生産履歴記帳運動というのを展開中でございま す。昨年の9月に、北海道のJAグループが食の安全・安心確保対策本部を設置いたし まして、農畜産物の生産履歴運動の早期実施を決定してございます。  その後、具体的な記帳運動を各地区で展開してきたわけでございますが、ことしの4 月から、いわゆる当該年の青果物栽培品につきましては、各地で設定する栽培基準表に 基づきまして、全道の農協の組合員、いわゆる生産者ですが、生産履歴の記帳を行うこ とで推進して現在実施中であります。  次に、青果物のトレーサビリティー・システムの構築へ向けまして具体的な検討に入 っているわけでございますが、本年の7月に青果物トレーサビリティー・システム導入 促進事業推進協議会というものを立ち上げさせていただいてございます。  北海道産青果物の生産履歴データのシステム化を図ることによりまして、食品トレー サビリティー・システムにおける情報の追跡遡及、これらの可能性について3カ年の事 業の中で試験的な取り組みを行ってございます。  現在の取り組みにつきましては、青果物の生産履歴システムの導入に関すること、こ れについては、モデル事業による栽培履歴データのデータベースの作成と実証検分を行 ってございます。  さらに、生産情報の開示方法に関することということで、これら栽培履歴のデータベ ース化に基づきます管理と開示方法、これらも現在検討中であります。  さらに、このトレーサビリティー・システムの導入に関することということで、これ らが、私どもの生産段階や生産工程から、最終的に小売店を通じて消費者の方々にまで 具体的にシステム上つなげられるのかどうか、こういった可能性も生産工程の部分から 探りを入れているところでございます。  実は、この後、これらの事業で行っております中身につきまして、11月18日に中 間の報告会を行いまして、16年3月になりますが、ここで一たん報告書的にまとめ上 げたいと考えてございます。  最終的に、17年度には、一定の方向で青果物のトレーサビリティー・システムに基 づく栽培履歴データの集約の一元化と、それに合わせました追跡遡及といったものが実 現できるような安全・安心システム化を目指すということで、現在検討中であります。  当然、これらを進めるに当たりましては、私どもだけででき得ないことも多々あるわ けでございまして、このトレーサビリティー・システムが私ども生産者側の一方的な負 担にならないように、できれば今後いろいろな関係の方々にご協力を願って安全・安心 フードシステムを構築できればという希望がございます。  もう一つは、先ほども講演の中でお話がありましたが、こういったいろいろな被害に まつわる情報が出てまいります。いわゆる風評被害といったものなどにつきまして、リ スク管理をする行政主体の客観的な情報提供を願えればという考えでございます。  以上です。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  それでは、本日の意見交換会の進め方ですが、テーマごとに進めさせていただきたい と考えております。例えば添加物についてのお話、それから、リスクコミュニケーショ ンのお話というように、複数のテーマにつきましてご意見等がございます場合には、一 度にご発言をいただくのではなくて、それぞれのテーマごとに1回ずつご発言をいただ きますようお願いをいたします。  また、本日ご来場の会場の皆様にもご意見等をいただきたいと考えております。  ご発言をいただく際には、手を挙げていただきますようお願いをいたします。手を挙 げられた方の中から、コーディネーターの方で発言される方を指名させていただきま す。そして指名された方のところへ係の者がマイクを持って伺いますので、差し支えな ければ、ご職業や、お名前をおっしゃった上でご発言いただければというふうに考えて おります。  テーマについてですが、本日、事前にお寄せいただいた質問や意見などということで 一枚紙をお配りしているかと思いますが、「食の安全確保に向けた取り組みについて」 というのは、内容が多岐にわたっていることもございますので、まず、2番目の「食品 添加物について」、次に「リスクコミュニケーションについて」ということを先にさせ ていただきまして、その後、「食の安全確保に向けた取り組みについて」という順番で 進めさせていただきたいと思います。  また、最後に、全体を通じての意見交換の時間を設けさせていただく予定です。  それでは、食品添加物の方から始めさせていただきたいと思います。  本日も行っておりますが、私どもで、このような意見交換の場では毎回アンケートを 行っているのですが、大体40%程度の方が食品添加物に関心をお持ちのようです。  いろいろとご意見等があると思いますが、どのようなことが問題と考えられるのか、 パネラーの方々にご意見をお伺いしていきたいと思います。  まず、事前にお寄せいただいた質問がございますので、これを紹介させていただきま す。  食品添加物につきましては、「今、46品目の食品添加物の指定が検討されているよ うですが、食品添加物は出来るだけ摂らないことが望まれますので、必要性を十分考慮 した上で、国際調整を図ってください。」というご意見でした。  この件につきましては、まず、厚生労働省の外口参事官にコメントをお願いしたいと 思います。 ○外口参事官  46品目の食品添加物の指定が検討されているということですが、会場におられる方 は、まず最初に、なぜ46品目なのだろうという疑問を持たれると思います。  それで、46品目ですが、こんなにたくさん添加物を認めて、どうしてなのというお 考えの方もおられましょうし、それから、46品目も使えるようになると便利になるな とお考えの方もおられるかもしれません。  46品目というのは、なぜこういうのをやることになったかというと、今までの日本 の制度では、食品添加物を指定するときには、企業が申請してこないと添加物申請の仕 組みが動かなかったわけです。  そうすると、国際的に使われているものであっても、例えば、企業がそういうものを 必要なのだということで国の方に申請してこないと、それはいつまでも指定されないで 残っていたわけです。  それで、先ほど西島先生からもお話があったように、諸外国では使われているけれど も、日本では使われていないものについては、いろいろな問題が起きてきたということ もあります。  そうは言いましても、私どもとしては、一番大事なのは安全性でありますので、それ で、どういうふうに46品目を選んだかというと、諸外国で使われている食品添加物の 中でも条件をつけました。  一つは、国際的な専門家会議でありますJECFAというのがあるのですけれども、 そういう国際的な組織で安全性の評価が終了して、安全性が確認されているものである こと、これが最初の条件です。  それから、アメリカやヨーロッパ、これはアメリカまたはヨーロッパではなくて、ア メリカかつヨーロッパです。だから、国際的に広く使われているということですけれど も、それで、国際的に広く認められていて、必要性が高いと予想されるもの、こういう 条件のもの、これだけで選んだわけではないのですが、それらの中から、審議会の中で 検討しまして、これは、企業が申請してこなくても、安全性審査の道に入れていって検 討してもいいのではないかということで選んだのが46です。  それについては、幾つかのグループに分けて、安全性に関する資料をしっかりと集め まして、今、順番に食品安全委員会の方に審査をお願いしています。  食品安全委員会の方では、専門調査会にかかって、本委員会にかけて、これの安全性 はどうだということで、具体的に言うと食品健康影響評価と言うわけですから、ADI の設定などをやるわけですけれども、そこで決まった後で、今度は厚生労働省の方の審 議会でさらにまた審査をして、それは安全性審査だけではなくて、指定基準だとか、指 定の可否だとか、規格の設定とか、そういったことを決めていくわけです。  もちろん、その途中途中でパブリックコメントもお聞きしますし、そういった過程で 進めていくといったことを今やっているわけです。  こういうふうに言いますと、何か食品添加物が次々とふえていくのではないかとお思 いの方もおられるかと思います。  添加物と言えば、従来は天然添加物と言われていたものが、今は既存添加物と言うの ですけれども、それについては、昔から使っているから大丈夫だろうということで、ほ かのものと違って、そのまま指定されていたものが結構あるのですが、それについて、 今改めて安全性の審査・確認をすることにしています。  489あるのですけれども、それを、まず安全であろうというものと、それから段階 的に分けて、そうではないものに近いものを一番先にやっていくのですが、そういった 検討をしています。  それから、指定添加物につきましても、去年、赤色2号の検討をしましたけれども、 既に指定されたものでも、いろいろ新たな知見が見つかってくれば安全性の審査等を行 うようにしています。  それから、既存の添加物は、今までは、一度指定されてしまうと、ずっと指定が続い ていたのですけれども、実態調査をして、現に使われていないようなものについては削 除してしまおうというようなことも行っておりますので、添加物につきましては、必要 なものについては認めていこう、そうでないものについては、それなりに削除なりをし ていこうということです。  それから、安全性については、新しい知見に応じて対応していこうといったことで今 行っております。  以上です。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  それでは、添加物につきまして、なぜ問題だというふうに考えられているのか、その 辺のコメントをいただければと思うのですが、坂本委員の方で特に何かございませんで しょうか。 ○坂本委員  スライドの中でご紹介をしましたように、これは1987年のことですから、かなり 昔ですが、その時期に、栄養疫学者が調査をした発がんの危険率はどれかといったとき に示しましたように、添加物であるとか、それから農薬であるとか、そういうのが非常 に高い率を挙げられたのが主婦の方です。  疫学者は、一番多いのは食物ですよ、それから、たばこですよというように、かなり 意識が違っておりました。  実は、安全委員会ではモニターを募集いたしまして、全国から、1県で約10名ぐら いの人を募集して470名のモニターをお願いしております。  その方々にも、食品の安全性の確保についてと同じようなアンケートをいたしまし た。  そのときに発がんの可能性が高いと感じる要因としてどういうものがあるかというこ とに対して、7割の人が食品添加物を挙げておりました。  それから、遺伝子組みかえ食品についても3割の人が挙げておられました。実は、こ のモニターの方々は、一般の人よりはちょっと学識的には高い人たちが選ばれていると 思いますけれども、それでも、そういう誤解と申しますか、意識の違いがありました。  それから、もう一つですが、今度は食品の安全性の観点から見たらどうかというアン ケートに関しましては、6割を超える人が、農薬であるとか、輸入食品であるとか、添 加物、汚染物質に不安があるというような、そういったものに対する不安の率はかなり 高いようです。  特に不安を持っている人たちは、今度の新しい食品安全の行政の取り組みに対してど ういうふうな評価を持っているかといいますと、評価しているという人が47.5%、 ある程度評価するという人が48%で、約90%近い人が行政のあり方に期待を持って おられるのです。  中でも、おもしろいことというか、当然かもしれませんが、安全性確保の取り組みに 対する評価を年代別に見てありますが、何と70歳以上の人は67.9%が期待してい る。50歳台で約60%の人が期待している。20歳から29歳は、たったの23.1 %しか期待しておられません。  これが年代によって本当にパラレルにいっているのです。ですから、高齢者になれば なるほど、食品の安全性に対する不安と、それを解決してくれることに対する期待が大 きいということがわかりました。  このようなことでよろしいでしょうか。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  それでは、消費者の意識ということで、釧路消費者協会の畠山副会長からも、なぜ問 題なのかということについて、何かご意見をいただければと思います。 ○畠山副会長  私の独断となるかもしれませんけれども、私は消費者活動を17年ぐらいやっていま すが、当初のころは、そういった食品添加物というのはイコール発がんのイメージが強 かったと思います。  そういう時代が結構長かったかなという気がいたしますけれども、その原因といいま すのは、1965年以降、約50品目の食品添加物の指定の取り消しがあったのです。 その中には、使われなくなったので削除になるというものもありますけれども、発がん の理由で削除になったものも少なくなかったわけです。  例えば、すごくわかりやすい例だと思うのですけれども、合成殺菌剤のAF2があり ました。名前を覚えていらっしゃる方もいらっしゃるかと思いますが、これは発がん性 の指摘をされて削除になるまでに9年かかったのです。  ということは、9年間、これが私どもの食卓に供されていたといったような経験なん かもありまして、食品添加物と発がんのイメージというのは強かったように思います。  ただ、近年になりますと、私どもにも発がんのメカニズムというものが情報として届 いてくるようになりまして、発がんのメカニズムというのが非常に複雑になってきてい るということです。  例えば、発がん物質だけとっただけではならないし、促進物質も作用しなければいけ ないとか、あるいは発がん物質をとっても、食品の中に抑制物質があれば防げるとか、 いろいろな情報が入ってきます。  そういったことで、ひところよりはイメージがずっと薄くなっているのではないかと いう気がするのです。  でも、今の食品安全委員会のモニター調査では、まだ相変わらず食品添加物に対する 不安が大きいということがあるのです。  食品添加物というのは、私ども主婦といたしましては一番身近な人為的な化学物質で す。三度三度の食事で加工食品を結構とります。1日50〜80種類摂っているといわ れています。その中に食品添加物が使われるわけですから、一番身近なので関心が強い のだろうと思います。  それから、安全性試験のことですけれども、平成8年に厚生労働省から安全性試験の ガイドラインが出されたと思います。これは、今の科学水準に基づいた安全性試験です けれども、1950年代ごろに食品添加物が大変ふえました。そのときは、今から見る とずっと古い実験方法でやられていまして、スクリーニングテストですか、見直しテス トをされてはおりますけれども、それがどこまでいっているのかということがわからな い、全部見直しをされたのかどうかわからないということがあります。  それから、先ほどから行政側で何回もおっしゃっていますけれども、既存添加物が 489品目、そのままそっくり許可されたわけですが、これは安全性の審査をされない でそのままリストに載ったのでけれども、安全性の審査が今まだ進行中であるというよ うな不安もあってかなと思います。  それから、ごく微量でも、長期にわたってとることの慢性毒性、ここら辺が消費者と して漠たる不安です。こういったものが大きいかと思います。  それから、最近、アトピーですとかアレルギーが非常にふえているわけですけれど も、こういったことも、食品添加物ですとか農薬ですとか、消費者の中には、そういっ たものと同時並行で出てきたような気がどうしてもするわけです。そこら辺のことも、 いまだに食品添加物に対する不安というのがぬぐい切れていない原因ではないかという ように私は思うのです。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  本日は、日本食品添加物協会からもご参加をいただいております。鈴木理事の方か ら、添加物協会としてのご意見等をいただければと思います。 ○鈴木常務理事  日本食品添加物協会の鈴木です。  きょう、この場に参加された方は、西島先生のお話やら、いろいろ話を聞かれて、食 品添加物というのはどういうものなのか、それから、今、消費者の立場からということ でいろいろ心配だという話が出てきておりますが、そういったところについて、我々は 日ごろ皆さんに紹介し、ご理解をいただくということで作業を進めてきております。講 演会やら、あるいは資料をつくって配布などをやっております。  そういう中で、我々がずっと作業を進めながら、また、坂本先生がおっしゃるよう に、いろいろ調査をしてみると不安だという結果が出てくる。その辺のところについ て、なぜなのだろうかといろいろと原因を究明し、それへの対応を今とっている最中で ございます。  例えば、そういう面で見たときに、一つは、西島先生の講演の中にもありましたが、 誤った報道によって、全く食品添加物ではないのに食品添加物と間違って、それが原因 で事故が起こっているというようなこともあります。  それから、例えば事業者の方が、みんなが食品添加物は悪者だと思っていることを売 りにつなげるということ、保存料は無添加だというようなことを商品の売りにつなげて いるというようなことも要因だと思います。  そういう中で、無添加表示についてはやめる方向でいろいろ指導をしたり活動をして いるわけですけれども、今、私がここでちょっと提案したいというか、皆様にご理解を いただきたいことは教科書です。  そういう意味で言うと、坂本先生も、教育が高い方ほど食品添加物を悪者に思うとい うふうにおっしゃっていましたが、なぜなのか。小学校はそこまでは書いていません が、中学校から高校、大学の教科書をすべて調べました。  そうしますと、中学校の家庭科の教科書は2冊が検定になっていますが、食品添加物 のことを書いているのです。  そこでは、どういう書き方をしているかといいますと、食品添加物は、こういう役割 があるのですよということですけれども、その文章の最後の締めというのは、できる限 り食品添加物を使用していないものを選びましょうとか、できるだけ添加物の少ないも のを選ぶようにしましょうというのが締めです。  そこまでしか書いてないからいいではないかというような言い方もあるのですけれど も、コミュニケーションということでいいますと、要するに食品添加物というのは体に よくないのだから、そういう少ないものを選ぶのだよということを言っている。これは 検定を受けた教科書です。  さらに、それの副読本には食品添加物についていろいろなことを書いてありますが、 これが発がんの原因であるというようなことまで書いてあるのです。こういうような現 状がある。それが中学・高校・大学とつながっていっている。  したがいまして、我々は、学校で教わっていることをそんなにしっかり頭に入れてい るわけではないのですけれども、成績のいい子ほど、そういうのがインプットされて、 結果として、どうも食品添加物というのは悪いのではないかというようなイメージを持 ってずっと育ってきている。  そして、毎年そういう人がふえてくるわけですし、今の教育というのは、そういう教 科書を使っている。そういうところが一番大きな問題ではないかということで、我々 は、今そういったところを、ちゃんとサイエンスをベースにしたコミュニケーションが できるような教科書にしてほしいということでアプローチをしているところです。  この辺のところが根本にあるのではないか。それがあるために、日本では何年たって も何十%ということで、食品の安全というものとサイエンスとを別にして、安心という ところで、何となく心の中にこういうものが残ってしまっているというところがありま して、今、食の安全・安心ということに取り組もうとしているときに最大の隘路になっ ているのではないか。  我々日本食品添加物協会としては、こういうことに取り組んでいるわけですけれど も、行政の方あるいは事業者の方、あるいは一家庭の父親、母親として、そういったと ころを見ていただいて、それでどうなのかということを考えていただければというふう に思っています。  以上です。 ○コーディネーター  どうもありがとうございました。  それでは、ほかのパネラーの方で、添加物の関係の問題につきまして何かご発言をさ れる方はいらっしゃいますでしょうか。  よろしいでしょうか。  それでは、ご意見、どうもありがとうございました。  それでは、続きまして、テーマの方を「リスクコミュニケーションについて」の方に 移していきたいと思います。  リスクコミュニケーションにつきましては、食品安全の分野では、割と新しい取り組 みで、どのように進めていくべきなのか、試行錯誤的な状況もあるかと思います。  リスクコミュニケーションにつきましては、事前に2件ほど意見が寄せられておりま すので、ご紹介をさせていただきます。  行政組織内において横のつながりとか連携を密にしてほしいというお話、また、情報 をホームページで知らせている形が主ですけれども、検索しずらいこともありますの で、食の安全に関して、全国食の安全自治ネットワークのような行政ネットワークのホ ームページがあるといいと思います。  また、食品安全委員会の議事録がホームページ上にありました。膨大な量のせいか、 6回目以降準備中なのが少し残念です。  ホームページを見ることができない人にも知らせていく工夫をしてほしいというよう なことでございました。  それから、同じような質問ですので、続けてさせていただきます。  リスクコミュニケーションという言葉が広まり、リスクコミュニケーションの場とし て意見交換の場が持たれるようになったと思いますが、リスクコミュニケーションをし て、その後どのようになっていくかがよくわかりません。これから検討しながら仕組み や運用をつくり上げていくのかもしれませんが、その際には、消費者代表に参加してほ しいし、その過程も含め、広報する方法にも工夫がほしい。  それから、ホームページは、まだ限定された人の媒体なので、新聞など、多くの人が 知ることができる媒体を利用してくださいというようなご意見でございます。  これらの意見に関しまして、行政側から説明などをいただければと思いますが、外口 参事官、お願いいたします。 ○外口参事官  引き続き、私から答えさせていただきます。  この間、金沢で意見交換会をやりましたときに、参事官がたくさん答えてよかったと いうのがアンケートに1行あったので、少し気をよくしております。できるだけ多く答 えようかなと思っています。  ご質問は、ホームページ、そのほかいろいろあります。厚生労働省のホームページ、 農林水産省のホームページ、食品安全委員会のホームページ、それから、最近は自治体 のホームページも随分充実してまいりましたし、私も生協さんのホームページをよく見 ていますけれども、わかりやすいのです。あとはFDAのホームページとかCodex のホームページとかいろいろあります。  何かを調べたいときに、それらが横につながっていないと、それはご指摘のとおりだ と思います。非常にわかりにくいのです。  それをどうやっていくか。ホームページをどこか一つに集中させるというよりも、ど こか一つから入っていけば、いろいろと専門的なところへ飛んでいけるというリンクの 張り方を工夫するとか、それから全体的にだれかが見ている仕組みとか、そういったこ とが多分必要なのではないかと思います。  実際に1カ所に固めてしまうと、情報の管理だとか調整とかでかえって扱いにくくな ってしまうので、それぞれの専門分野が責任を持ってやるところへうまく上手につなげ ていくような仕組みかなとも思います。  食品安全委員会の方でもリスクコミュニケーションの専門の方もおられますし、その 辺は我々も参加してやっていますので、よく相談をして、どこから入っていけばうまく つながるかなというのをいろいろ実践してみたいと思います。  ちなみに、私は、農林水産省のを見ていつも劣等感を感じているのですけれども、言 いわけだけさせていただくと、厚生労働省というのはやっている分野がすごく広くて、 1枚のところに厚生労働省を全部入れると大変な数になります。  今何が載っているかというと、SARSが載っているでしょう。年金が載っているで しょう。それから求人情報が載っているとか、いろいろ載っていて入りにくいのです。  だから、まず、厚生労働省のホームページをあけたときは、1枚目はちょっと置いて おいて、1枚目のところの求人情報の大きい欄の上に食品安全情報というのがあります ので、そこをクリックして入っていただくと、食品安全情報だけまとめたページがあっ て、ガイドラインだとかQ&Aだとか通知だとか、そういったところに入っていけるよ うになっていますので、見ていただけたらと思いますし、もちろん、メールでご意見を いただく欄もあります。  それから、おとといも横浜で表示の会議をやったときに、ホームページ、ホームペー ジと盛んに言ったら、ホームページを使わない方から、ホームページは嫌いだみたいな 意見があって困ったのですけれども、ホームページだけではなくて、いろいろなものと 組み合わせていこうと思います。  ただ、ほかのは情報量に限りがあるのです。それから、自由なときや好きなときに参 照できるということで、これからホームページは基本になっていくのかなと思っていま す。  ただ、それ以外のところにもうまくつなげるためにいろいろな取り組みをしていま す。政府広報など、新聞のチラシで入っていく形で食品衛生法の改正のお知らせをした のが9月でしたし、同じ月には、朝早かったのですけれども、テレビの「新日本探検隊 」という番組で15分ほど検疫所の様子を映してもらった。船が入ってきて、倉庫に入 っている食べ物をどうやって収去して、検疫所の検査センターに運んで、どんな検査を して、残留農薬などを調べていくかというのをやりましたが、活字で書くより映像がい いです。どういう検査をしているのかというのがすごくよくわかるのです。だから、そ ういったことを組み合わせてやっていきたいと思っています。  大体このぐらいですが、あと足りない分は、また、だれか補足してください。 ○コーディネーター  姫田情報官の方からお願いいたします。 ○姫田消費者情報官  3省共同では、そういうことでいいかと思います。  加えて、先ほどもご説明しましたけれども、私どもの資料3の7ページに「食品に関 するリスクコミュニケーション」というものがございまして、ここは、施策について意 見交換をしようということで、とりあえず9月10日と30日に残留農薬について実施 をいたしました。  その中で、ホームページと、あとプレスには一生懸命に出したのですけれども、残念 ながら載らなかったということもありますが、農政局とか農政事務所からも、それぞれ 団体の方に声をかけていただいて、消費者団体46団体に参加していただきました。こ れは、私どもから来てくださいということではなくて、PRした中で来ていただいたと いうことです。  それから、今度11月10日にやります抗菌性物質は、残念ながら、大きな新聞では ないですが、日本農業新聞に載せていただいたというようなこともございまして、私ど ももいろいろな手段でPRしていこうと思っています。  それから、特に本省でやっております食品に関するリスクコミュニケーションについ ては、どちらかというと、意見をいただく方を一般公募して、特に消費者の方々を中心 に一般公募して参加していただく。それを施策に反映していこうということを実施して おります。これからもっとどんどん進めていきたいと思っております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  坂本委員、お願いいたします。 ○坂本委員  ご質問の中に二つありますが、いずれも委員会に対するご意見のように承りましたの で、ちょっと申し上げておきたいと思います。  第6回目以降、ホームページが準備中であるというのが非常に残念ですという言葉で すが、委員会の仕事というのは4カ月目を終わりましただけで、今、飛行機で言えば上 昇中でございます。これが安定した空路に乗るには、もうちょっと時間がかかると思い ます。  議事録がそれぞれの委員の先生方に回ってくるのですが、例えば、私などは非常勤で すので、1週間に1、2回しか参りません。それでチェックをして戻して、それからま た整理をしてというような手間がかかることもあって、少しおくれ気味です。お許しく ださい。私も反省しますが、事務局にも申し上げておきます。  それから、下の方の欄に、仕組みや運用をつくり上げていく中で、消費者代表に参加 してほしいというようなご意見がございました。  実際に専門委員会というのがございまして、特に、この中の企画とリスコミには、公 募をした一般の方々が2名、それから消費者団体の方がそれぞれ2名ずつお入りになっ ていらっしゃるので、ご意見をおっしゃってくださる機会は十分にあるだろうと思うの です。ですから、これは確実に実現しております。  ちなみに、もしホームページがなくて、お尋ねになりたいことがあれば、食の安全ダ イヤルというのがございまして、これはお手元のレジュメの「安心を食べてほしいから 」というところの一番下に囲みで食の安全ダイヤルの番号が書いてございますので、ど うぞそちらへお電話でお尋ねください。的確にお答えする人たちがいます。  そのほかにパブリックヒアリングをやったり、あるいは消費者団体とのお話し合いも 月に1回は定期的にやりましょうというように、消費者の意見を聞く機会はかなり設け ておりますので、ご了承ください。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  それでは、ほかのパネラーの方で何かご意見等がありましたら、お願いいたします。  服部様、お願いいたします。 ○服部食品安全協議会委員  先ほどの山田先生のご講演等も聞きまして、私もリスクコミュニケーションという言 葉自体はわかるわけでございますけれども、食品企業として、それをどういう形で持っ ていったらいいのかというのがよくわからないところがございます。  今、ホームページということもございましたけれども、受ける側と送る側との双方向 性で、お互いに情報の共有をしながらリスクについて語り合いましょう、理解をしてい きましょうということなのだろうなというふうに理解しているところでございますが、 そのあたりを専門家の先生方の方から、かかわり方といいますか、事業者としてのかか わり方に対するアドバイスをいただけたらと思っております。  これで、今後取り組む企業が多くなり、また、リスクコミュニケーションに対する体 制というものが整ってきた場合には、先ほど私の方から報告をさせていただきましたけ れども、HACCPに基づく段階的な自主衛生管理導入事業といったものの中で、リス クコミュニケーションに対してどの程度取り組んでいるのかというふうなチェックリス トも加えていかなければならないのかなというふうに感じておりますが、その辺につい て、少しアドバイスをいただけたらと思っておりますので、よろしくお願いいたしま す。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  今、チェックリストなどのアドバイスということについてご意見があったのですけれ ども、どなたかお答えいただける方はいらっしゃいませんか。 ○山田先生  ほかにも言いたいことがあったのですけれども、今のご意見に対してちょっと反応を させていただきますが、すばらしいアイデアだと思います。  どういうふうにすれば好意を持って見られるかというか、信頼・信用が高まるかとい うことですが、やはりオープンでやるということだと思います。隠したりうそをついて いないというイメージというのがすごく大事だと思うのです。  これをやったから付加価値がついて高く買うだろうというのは、実は、すぐに見える のです。  リスクコミュニケーションは、どちらかというと科学というよりは心の問題でありま すので、いかに自分たちが一生懸命にやっているかというのをわかっていただき、か つ、クライアントなりバイヤーというか、消費者の意向というものを取り入れるかとい うことだと思います。  ただ、一般論としてはすごく難しくて、企業がするやり方、それから行政がするやり 方、それぞれ目的によって適したものがあると思います。  ですから、細かいことは、そのときに聞いていただいたらという感じでございますけ れども、原則としては、そもそも信頼・信用を高めることを目的としてやるということ があります。それで、お互いに意見を交換して、お互いのニーズを知る、それが実態で ございます。  そこで、文書に出ている質問に対してちょっと情報を提供したいのですけれども、先 ほどアメリカはすごく進んでいると申しました。  食品の安全性に関して、行政についてはフードセーフティというポータルサイトがあ ります。「www.food.safety.com」というのがありまして、そこに 行きますと、今、トピックになっているものがずらっと並んでいて、一番下の方にFD AとかUSDAとかCDCとか、食品の安全性にかかわる行政をしているところの食品 安全部門のところへ飛べるようになっております。そういうのが日本でもあると便利だ ろうというふうに思います。  例えば重要な問題があるときには、ファクスバックといいまして、この番号に電話を かけたらファクスで情報が戻ってくるというようなこともフメリカはやっております。  それと、FDAなんかだったら、「FDAコンシーマー」というすごくきれいな、本 当にプロ仕様の機関誌というか月刊誌を出しておりまして、その中に、市民がわかるよ うに優しく砕いていろいろな情報を書いているということもしています。  それから、たしか去年だったと思うのですけれども、ずっと前からやっているファイ ドバックという、微生物の汚染を防ぐということをFDAとUSDが共同でやっている のですけれども、それをインターネットだけではなくてテレビ番組にしています。それ はエミー賞まで取ったというぐらい力を入れてやっているということがあります。 ○コーディネーター  どうもありがとうございました。  お時間がちょっと少なくなってきましたが、会場の方で、このリスクコミュニケーシ ョンについて何かご意見のある方はございますでしょうか。手を挙げていただければと 思うのですが、よろしいですか。  それでは、次に「食の安全の確保に向けた取り組みについて」のところに入りたいと 思います。  まず、「食品安全行政システム等」の(1)、(2)と、それから「食品の監視等」につき まして、参事官の方から簡単にご回答をいただければと思います。 ○外口参事官  時間がなくなってまいりまして、また、今回もアンケート結果でも、結局、一方的な 説明ではないかというふうに書かれそうなので、ちょっとはしょります。  まず、(1)番の予防原則というのは、恐らく事故が起きないように、その前の段階を きっちりやってくださいということだと思いますけれども、食品衛生法をつくったとき の考え方でも言ったとおり、そういった考えを十分含んでやっていきたいと思っていま す。  それから、(2)番目の消費者の参画できる余地ですけれども、厚生労働省の方でも、 審議会の方の分科会で消費者の代表の方は今3名入っておられます。  それから、食品安全委員会の方も、専門調査会の方には消費者の方が企画部門とかリ スクコミュニケーション部門に何人か入っておられます。  それから、次に食品の監視ですけれども、検査体制とか輸入食品の監視体制の充実強 化、これは食品衛生法の説明のときに高井課長が説明したとおり、今年かなり充実いた しました。  それから、偽装表示の実態に対しての監視の強化、法の周知ですが、これも今回の食 品衛生法の改正、これも目的の一つでありますので、かなり充実しましたし、それか ら、一言つけ加えますと、監視とか罰則だけではなくて、その前のステップが大事で す。  そういう意味で、例えばアレルギーだって、表示のチェックをするのも大事ですけれ ども、「アレルギー物質の表示」というパンフレットはホームページでダウンロードで きます。  こういう一般向けのものに加えて、製造者、業者向けの詳細なもの、事業者さんがど う理解して、どういう表示をするのだろうというのを消費者も知りたいのです。  特に、家族にアレルギーの方がおられる場合、どういう仕組みで表示がされているの だろうというのもホームページでダウンロードができます。製造者、業者さん向けのと ころからクリックしていただくと出てきますし、Q&Aのところからも出てくるかもし れませんが、とにかく、監視とか罰則の前の段階も含めて充実強化していきたいと思っ ております。  それから、一括表示の食品添加物に違反添加物が使用されることのないよう監視をし てくださいという御指摘です。これも、一斉点検の機会だとか、一括名表示の話だと、 どちらかというと、内部からのご意見からスタートするときも多いのですけれども、十 分にやっていきたいと思いますし、これについては、最近、業界の方もいろいろ実質的 な取り組みを進められていると聞いております。  それから、(12)の「特定保健用食品の申請に関して」の申請資料の取り扱いについて ですが、非公開の資料をどこまで公開するのか、これは今ちょうど検討するところです ので、決まり次第、またお知らせしたいと思います。  以上です。 ○コーディネーター  どうもありがとうございました。  それから、「食品の監視等」につきましては、本日、北海道庁の方もお見えいただい ておりますので、簡単にコメントをいただければと思います。 ○米川北海道食品衛生課長  食品衛生課長の米川でございます。  今まで全国的な対応ということでお話をされておりましたけれども、北海道として も、特に、表示について行政がどのような対応をしていくのかというのは、消費者が食 品に対して信頼をしていただくための非常に大事な基礎的な行政の仕事であろうと思っ ておりまして、いろいろな対応をしております。  ただ、先ほど輸入食品のこともございましたし、北海道で生産される相当数―ちょっ と数は言えませんけれども、たしか、多様な食品に対していろいろな形での表示がなさ れますが、これらについては保健所で毎年調査をし、または監視をしながら、安全性、 それから正しい表示が行われているかどうかということで対応をしてございます。  ちなみに、平成14年度に道立の保健所で調べました表示に関して違反があったもの の件数としては、703件でございます。  これを多いと見るか少ないと見るかということですけれども、表示については適切に していただくということをきちっとやっていく。特に、スーパーマーケットであると か、それから製造施設に直接立ち入りをしてというようなことでやっております。  食品は全国広く流通しますので、特に生産県である北海道として、これからも政令市 なんかとも連携をし、表示については責任を持った対応をしてまいりたい、このように 考えて今事業も進めております。  特に、北海道では、北海道の食の安全ということを考える上で非常に大事な仕事とし て、平成10年に安全で健康的な食環境づくり推進方策というものを策定いたしまし た。  その中には、表示のこと、それから製造施設におけるHACCPの導入促進であると か、いろいろな課題を盛り込んでおりますけれども、この推進方策を今年度中に見直し をいたしまして、北海道として主体的な食の安全についての役割を果たしていきたい、 このように考えています。  今、ちょうどパブリックコメントをかけておりまして、11月5日までに道民の多く の方からご意見をいただいて、それを取り入れた形で、年内に今の推進方策を策定し、 道民にお知らせをしていきたい、このような流れになっております。 ○コーディネーター  どうもありがとうございました。  ただいままとめて説明をさせていただいたのですが、パネラーの方から何か追加のご 意見等はございますでしょうか。  それでは、畠山様にお願いいたします。 ○畠山副会長  まず、予防原則のことですけれども、BSEで経験したとおり、今、食品が大変国際 化しています。  こういった中で、海外で起きた食品事故は日本でも起こり得るというような意識をし っかり  坂本でございます。こんにちは。 持って、予防原則ということは大事だと思いますので、常に情報収集をして、よろしく お願いいたします。  それから、輸入食品の監視ですけれども、先ほど厚労省の説明を受けまして、かなり 具体的に動いておりまして安心している部分もあるのですが、ただ、食品検疫につきま して、衛生監視員もモニタリング検査もどちらもふやしたということですけれども、ふ やした数字がこれで十分かどうかということは私はちょっとわかりません。  動植物検疫、そちらの方の防疫官の数と比較しますと、今現在ふやした数字でもまだ 少ないですし、そういった比較の仕方が適当かどうかという問題もあるのですけれど も、そういったことがあります。  それから、食品検疫所ですけれども、分析機器を備えている食品検疫所が少ないので す。全国に31カ所の食品検疫所があるわけですけれども、そのうち、分析機器が全く ないというところが11カ所あります。  それから、放射能検査機器しかないというところが15カ所ということで、そういっ たところは、横浜ですとか大阪ですとか、そういったところに分析をお願いするという ことになっているわけですけれども、こういったことでは分析機器が少なすぎるのでは ないかと思います。  検査結果が出たときには、その食品は既に市場に流通していて、食品は私どもの胃の 中に入っているといったようなことがどうしても起こり得ると思いますので、もう一 声、輸入食品の方は検査体制をしっかりした方がよろしいのではないかという気がいた します。  それから、これだけの事件が次々に起こっていても、いまだに表示の違反がありま す。法や制度は整備されていますけれども、監視の制度がきっちりしていなければ、ざ る法になると思うのです。そういったことで、こちらの方もまたよろしくお願いしたい と思います。  本当は事業者の方が守ってくださると監視も要らないのですけれども、なかなかそう はいかないと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○コーディネーター  どうもありがとうございました。  外口参事官、補足をお願いいたします。 ○外口参事官  やっと双方向の意見交換になりました。  検疫所は31カ所あるのですけれども、その中で、分析機器がなくて細かい検査をや っていないところは確かにあるのです。  だけれども、これは、あえてそうしているのです。それは、どこも検査する食品の収 去はするのですけれども、検査する場所は、主に横浜と神戸に集中させています。そこ に大きな検査センターをつくって、残留農薬だとか、遺伝子組みかえ食品の検査だと か、添加物の検査だとか、どこのどんな検査機器でも、一つの機器にちょっと入れれば 全部答えが出るわけではないのです。極端にいえば、一つの品目ごとに機器が要るわけ です。  それから、熟練した検査の職員がいて制度管理をして、それをまた次々と研修をして 職員も育てていかなければなりませんので、あるところに集中させて、そのかわり、ほ かのところは収去だけして、それを送るのです。今、宅急便で送れば次の日には確実に 届きますので、まず、そこにあるのと同じように―収去という言葉はサンプリングとい う意味でもありますが、検査ができます。限られた人数と予算では、恐らく、その方法 が一番いいのかなと思ってやっていますので、機器がないからうまくいっていないと か、そういうことでないということは、とりあえずご理解をいただければと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  姫田消費者情報官、お願いいたします。 ○姫田消費者情報官  食品の表示の監視ということでございますが、先ほども農政事務所をご紹介させてい ただきましたけれども、私どもの食糧事務所が農政事務所に変わって、全国で食品の安 全にかかわる者が2,100人、新たにできております。  ここで、一つは特別検査ということですが、ウナギですとか、それから、今はお米で すけれども、特定の時期に特定のものについて食品表示の検査をしています。  物によっては仕入れ先までさかのぼって調べて、本当に正しい表示が行われているか ということも検査したりしております。  もう一つは、一般の検査でございますが、何分今までお米の検査を中心にやってきた ところなので、今、厚生労働省さんと一緒になって協力をしながら、特に厚生労働省さ んの出先ということではないのですけれども、ご関係の道の保健所と農政事務所が一緒 に回るというようなことも含めて、これからも、より表示の検査体制、監視体制を強め ていきたいと思っております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  それでは、「遺伝子組みかえ食品について」のお話に移らせていただきたいと思いま す。  お時間の関係もございますので、読み上げの方は割愛させていただきまして、(6)番 につきまして、坂本委員の方から、安全委員会でのご経験などをお話しいただければと 思います。 ○坂本委員  (6)番、(7)番、(8)番を一緒にして答えさせていただきます。  実は、食品安全委員会では、遺伝子組みかえ食品についての意見を聞く会ということ をやりまして、ご専門の先生をお迎えし、一般の方が10名と専門家が十数名集まりま して、公聴会みたいな意見を聞く会を開催いたしました。  その前に、10月6日から21日間、電子メールとかファクスその他でご意見を伺 い、それもお尋ねすることにしたのですが、24日に意見の聴取を行ったわけです。2 時間にわたって大変熱心なご意見がございました。  それで感じましたことは、これは議事録によるのですけれども、二つのパターンに分 かれます。  つまり、一般の人々の意見として、遺伝子組みかえ食品に関するものでは、まず、評 価に当たって厳しい審査をしていただきたいということと、遺伝子抗体交配種につい て、これまで以上に厳しい基準をつくってほしいということ。  それから、親が安全だからと言っても安全ではないし、危険性が増すのではないかと いうようなことであるとか、選択マーカーとしての抗生物質耐性遺伝子の存在が不安で あるというようなことで、消費者側では、その遺伝子組みかえ食品が実際にある食品を つくり出すということに対して非常に不安感を持っておられて、検査体制をきちんとし てほしい、チェック体制をきちんとしてほしいというご要望が非常に多くございまし た。  一方、それでは、専門家同士の意見はどうであったかといいますと、例えば,遺伝子 組みかえ食品について一番ご懸念があるのはアレルギーとの関係ではないかということ です。  それについて、アレルギーに係る考え方についてどうだろうというご意見があったと きに、食べ物というのは小腸で吸収されていくのですが、腸管へ移行した際に吸収され ないものが10%ぐらいある。そういうものが遺伝子組みかえ食品であった場合にアレ ルギーが発症することはないかというようなご質問でしたが、成人でも100%吸収さ れないし、アミノ酸に分解されなくて腸管で吸収されるものもあるけれども、食経験の あるものは免疫体制を有しているということです。  食経験のないものはアレルギーの発現の可能性があるということであるとか、そうい うような意見が交わされて、私どもの専門家の間では、アレルギーに対する懸念という のがあって、実際に遺伝子組みかえ食品のご専門の方に聞いたところ、吸収において は、アレルギーについては、食経験があるものについては危険はないというようなお話 があったりして、非常に活発な意見が見られました。  現在、私どものところで遺伝子組みかえ食品等の安全性評価基準策定というものに向 けて、コーデックス委員会が示しているガイドライン等を参照して、今後、国際的な整 合性を担保していくようなことがやられていくということでございまして、この専門委 員会で検討をされてガイドラインがつくられていくという経過になっておりますので、 もうしばらく時間がかかるかと思いますが、それまでご了承ください。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  それでは、(7)番と(8)番について外口参事官の方からコメントをいただけますでしょ うか。 ○外口参事官  すべて義務表示対象品目にしてくださいというのは、恐らく大豆油とかしょうゆのこ とだと思うのですが、実際、遺伝子が入っているかどうかというのは核酸増幅検査でや るわけですし、それから、特定のたんぱくというのは抗原抗体反応ではかるわけですけ れども、そういったものが製造工程の中で分解されたり除去されたりすると、それがう まくひっかからないのです。  ということで、検出する方法がないものについて義務表示にするというのは、仕組み としてつくるのにはなかなか難しさがあるということはご理解をいただきたいと思いま す。  それから、その次ですが、意図せざる混入の割合の話ですけれども、5%から1%、 恐らくヨーロッパでのいろいろのお話を参考にしてのご質問だと思います。  まず、許可されていないものについては少しでも入っていたらだめです。  それから、意図的に入れたものは許可の有無にかかわらず当然だめです。  それから,分別管理をしたときに意図しなくて入ってしまったもの、この基準が今5 %になっているわけです。  それは、分別管理をしたといっても、5%以上になったときは、我々は、それは分別 管理をしたと認めないということです。  それから、分別管理をしていないで、例えば1%とか2%であったらいいかという と、それはだめです。分別管理をしているというのが条件です。  そういうことで、基準を5%にしているのですけれども、例えばアメリカの中西部の 畑で分別管理をするということはどういうことかというと、まず畑の位置を離して、使 う農機具なども変えるか、きれいにするとかというのをやるし、それから、ばら積みの 場合であったら、例えば、ミシシッピ川のところを使って船で来るとすると、その前に リバーエレベーターという倉庫みたいなところに入れるでしょう。そこへ入れるときに ほかのとまじるかどうか。それがまじらないようにちゃんと分別するわけです。  それから、畑のそばにもカントリーエレベーターというのがあるわけです。今度はニ ューオーリンズとかの港ですが、その辺でもう一回積みかえをして、それから日本にや ってきて、今度は日本の流通システムに乗るわけです。  その間にいろいろな輸送器具が入ったりとか、それをきれいに分別する、あるいは種 類が違うごとにきれいにするというのを積み重ねていくと、かなり厳密に分別しても、 今の状況だと基準は5%ぐらいかなと思いますし、そういうのに基づいてつくっている のです。  ただ、分別管理の方法がうんと進歩をしていけば、それはまた実態に合わせていろい ろ変えていくことにはなると思います。そういうのが今の状況です。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  畠山様、どうぞ。 ○畠山副会長  今のお答えに2点意見を言わせて下さい。1点は消費者心理というのはどういうもの かということです。油ですとか、お醤油ですとか、そういったものについては検出する 方法がない。だから検出する方法のないものについて義務表示を課すのはどういったも のかというようなお話だったかと思います。  それはそれでそうなのかなと思いますけれども、ただ、消費者にしましたら、食品を 選ぶときは、今はただ安全性だけを選ぶのではなくて、その食品の背景にある環境問題 ですとか、社会問題ですとか、そういったところまで考えてGM食品を自分自身が受け 入れるかどうか、そういったような選択をする時代になってきていると思うのです。  ですから、そういった意味で、検出方法がないというのであれば難しいのかなとは思 いますけれども、こういった遺伝子組み換え食品を受け入れたくない消費者の選択を保 証する手だてを何か考えていただきたいと思います。  それから、もう1点ですが、5%の購入につきましては、一応、消費者の感覚からい うと、表示を見て不使用といったら、もう100%使っていないと思うのが消費者の認 識なわけで、それが、5%までは入っていてもいいんだよ、だけれども、100%不使 用という意味になるのだよという、ここら辺は消費者との間にすごいギャップがあると 思うのです。  ですから、これも、先ほど、将来的にはこの数値を縮めていけるかもしれないという お話がありましたけれども、そのようにお願いしたいと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  それでは、姫田消費者情報官、どうぞ。 ○姫田消費者情報官  それと、多分、その後のトレーサビリティーだと思いますけれども、まとめて答えま す。  今の話の補足ですが、意図せざる混入のところで,トウモロコシなんかの場合は、風 で花粉が飛びまして、例えば500メートル向こうで組み換えのものがあった。そし て、それから500メートル離れた圃場で組み換えでないものがあった場合に、風で飛 んでしまうわけです。  現実に、分別管理のところで最低500メートルは離すということにはしてあります けれども、どうしても花粉が飛ぶ。  ほかの植物ですと、花粉が飛んでそこで受粉しても、そのもの自体はならないのです けれども、トウモロコシは、受精した段階で新しい次の世代の表現型が出てしまうの で、自分がやっていなくても、飛んできたもので組み換え体になってしまうということ になります。ですから、そういう意味では、きちっと分別していても混入があるという ことです。  ご存じのように、スターリンクが栽培されなくなってからかなり長いのですけれど も、まだ大分残っているという状態になっていることはご理解をいただきたいと思いま す。  それから、表示については、消費者の選択という意味で、遺伝子組み換えでないとい う表示について任意でできることになっていますし、してはだめということにはなって おりません。そこはメーカーの方で、そういう消費者ニーズに合わせて表示することは できるということで、むしろ、そういう任意表示の方を活用していただければと思いま す。  それから、果物のトレーサビリティー・システムということですが、これは先ほどト レーサビリティーのときにもお話をしたように、まず一つは、生産者の方々が農薬をま いたとか、いつ使ったとか何とかとかという生産履歴について記帳するということは、 少なくとも生産者としての最低の義務だろうと私どもは考えております。  それから、流通段階の方々が、それをどこから仕入れて、どこに出したかということ も記帳することは最低の義務だろうと思っています。これは、生産者の負担という以前 に、本来すべきことだろうと思っております。  ただ、それは、いわゆる牛肉のように、一つのスーパーで、この果物はどこでとれ て、どういう生産履歴があったかというシステムというのは今補助事業でやっておりま すが、それは、あくまでも消費者負担の中で、高くてもいいよ、そういうものがほしい よという方々に対してのシステムであって、それは生産者の負担というものを求めてい るわけではありません。  ですから、勘違いしていただきたくないのですけれども、記帳義務とか、そういうこ とについては、幾ら零細な農業者だって、物を売っている以上、製造者としての最低の 義務は果たしていただかなければいけない。  ただ、牛肉のトレーサビリティーなどと誤解しない、あるいは今補助事業で始めてい る、いわゆる顔の見える関係のものについては、別途、それは高付加価値のものとして ご理解をいただきたいと思っています。  それから、製造年月日につきましては、例えば,昔、牛乳もゼロデイ牛乳などと言っ て、よく最終的な抗生物質検査も出ないで、製造年月日が若いことを競争してやったよ うな、非常によくない弊害がかなりあったことが一つです。  それから、同じ牛乳を処理するにしても、HACCP工場でやったのと、そうでない 工場で処理したものと、それが同じ賞味期限になることは考えられないわけですが、製 造年月日を表示するということが必ずしも消費者そのものの利益になるとは思っており ません。  製造年月日を入れると、どうしても製造年月日の若いものからどんどんどんどん売れ ていって、結果論として古いものが安売りになる。  古いものを安売りするということは、全体的に価格を上げなければいけないというこ とになるわけなので、これは必ずしも消費者のメリットになるわけではない。まして や、古いものが売れなくて廃棄ということになれば、国全体の損失になるというふうに 考えておりますので、製造年月日というよりは、正しく賞味期限の方を理解していただ くということが大切ではないのかなと考えております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  パネラーの方から、何かコメントございますか。  よろしいでしょうか。  それでは、大変恐縮ですが、会場の方で、どうしてもこれだけは言いたいというよう なご意見がございますれば、ご発言をしていただければと思いますけれども、どなたか いらっしゃいますでしょうか。  よろしいですか。  こちらの不手際等もございまして、パネルディスカッションの方が大分長引いてしま いました。  司会の方に戻したいと思います。 6.閉会 ○司会  以上をもちまして、食の安全に関する意見交換会を終了させていただきたいと思いま す。  本日は、ご参集をいただきまして、まことにありがとうございました。                                     以上