08/02/01 第3回周産期医療施設オープン病院化モデル事業関係者連絡会議      議事録 第3回周産期医療施設オープン病院化モデル事業関係者連絡会議 議事次第    ○ 日時: 平成20年2月1日(金)13:00 〜 16:00    ○ 場所: 厚生労働省共用第七会議室 【出席者】  谷川原 真吾(仙台赤十字病院産婦人科部長)  村田 寛子(宮城県保健福祉部医療整備課主任主査)  中林 正雄(愛育病院院長)  山川 博之(東京都福祉保健局少子社会対策部子ども医療課長)  安達 美和子(東京都福祉保健局少子社会対策部子ども医療課周産期医療担当係長)  茂庭 將彦(榛原総合病院院長)  尾上 景子(静岡県厚生部医療健康局医療室主幹)  遠藤 正(静岡県厚生部福祉こども局こども家庭室主査)  佐川 典正(三重大学医学部附属病院産科婦人科科長)  田中 友幸(三重県健康福祉部こども家庭室母子保健グループ副室長)  野田 洋一(滋賀医科大学産婦人科学講座教授)  喜多 伸幸(滋賀医科大学産婦人科学講座講師)  宇野 千賀子(滋賀県健康福祉部健康推進課副主幹)   平松 祐司(岡山大学医学部産科・婦人科学教室教授)  山野井 尚美(岡山県保健福祉部健康対策課総括副参事)  岡本 直樹(岡山県保健福祉部健康対策課主事)  上田 克憲(県立広島病院産科部長)  佐々木 貴美江(県立広島病院産科病棟看護師長)  佐々木 英穂(県立広島病院総務課経営企画係主任)  坂本 慰子広島県福祉保健部保健医療局医療対策室専門員) (厚生労働省)  医政局総務課医療安全推進室 佐原室長、久米主査  雇用均等・児童家庭局母子保健課 小林課長補佐、阿部主査 議 題 1. 周産期医療施設オープン病院化モデル事業の成果及び総括について 2. その他 【配布資料】  資料1  周産期医療施設オープン病院化モデル事業3年間の取組(案)<概要版>  資料2-1 周産期医療施設オープン病院化モデル事業3年間の取組(案)  資料2-2 周産期医療施設オープン病院化モデル事業3年間の取組(案)―資料編― ○佐原室長(医療安全推進室)   定刻になりましたので、第3回周産期医療施設オープン病院化モデル事業関係者連 絡会議を開催いたします。私、この事業の担当室の室長をしております医療安全推進 室の佐原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。  皆様方には大変お忙しい中、今年もこうしてお集まりいただきまして、ありがとうご ざいます。まず、厚くお礼を申し上げます。周産期医療施設オープン病院化モデル事 業は、今年で3年目を迎えます。本日、平成17年度、18年度から参加していただい ている地域の皆様方にご出席いただいております。また、各事業参加地域以外の、こ れからこういう事業をやろうかと考えていらっしゃる地域と思いますが、そういった 地域の自治体関係者、あるいは病院関係者の方にも傍聴いただいているところです。 オープン病院化モデル事業は、3年間の予定ということで厚労省として予算を組み、 各地域でやっていただき、それを「3年間のまとめ」ということでとりまとめのてい きたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。それでは、各地域の関係 者の方から順に自己紹介をお願いしたいと思います。まず宮城県さんからよろしくお 願いいたします。 ○谷川原部長(仙台赤十字病院)   仙台赤十字病院産婦人科の部長をしております谷川原です。よろしくお願いいたしま す。 ○村田主任主査(宮城県) 宮城県保健福祉部医療整備課地域医療班で主任をしております村田と申します。よろ しくお願いいたします。 ○中林院長(愛育病院)  東京・愛育病院の中林でございます。よろしくお願いします。 ○山川課長(東京都)  東京都福祉保健局の山川でございます。よろしくお願いします。 ○安達係長(東京都)  東京都の福祉保健局の安達と申します。よろしくお願いいたします。 ○茂庭院長(榛原総合病院)  榛原総合病院の病院長をしております茂庭と言います。もともとは産婦人科です。よ ろしくお願いします。 ○尾上主幹(静岡県)   静岡県・医療室、尾上と申します。よろしくお願いします。 ○遠藤主査(静岡県)   静岡県・子ども家庭室の遠藤と申します。よろしくお願いします。 ○佐川科長(三重大学医学部附属病院)  三重大学・産婦人科の佐川です。よろしくお願いします。 ○田中副室長(三重県)  三重県のこども家庭室の田中と申します。よろしくお願いします。 ○野田教授(滋賀医科大学)  滋賀医科大学の産婦人科、野田でございます。よろしくお願いします。 ○喜多講師(滋賀医科大学)   滋賀医科大学の産婦人科の喜多です。よろしくお願いします。 ○宇野副主幹(滋賀県)   滋賀県の健康推進課の宇野と申します。よろしくお願いします。 ○平松教授(岡山大学医学部)  岡山大学の産婦人科の平松です。よろしくお願いいたします。 ○山野井総括副参事(岡山県)   岡山県・健康対策課、山野井と申します。よろしくお願いいたします。 ○岡本主事(岡山県)  岡山県・健康対策課の岡本と申します。よろしくお願いいたします。 ○上田部長(県立広島病院)   県立広島病院で産科を担当しております上田と申します。よろしくお願いいたします。 ○佐々木看護師長(県立広島病院)   同じく県立広島病院の産科病棟、師長、佐々木と申します。よろしくお願いします。 ○佐々木主任(県立広島病院)   県立広島病院の総務課の佐々木です。よろしくお願いします。 ○坂本専門員(広島県)  広島県医療対策室の坂本と申します。よろしくお願いいたします。 ○佐原室長(医療安全推進室)   どうもありがとうございました。次に、厚労省からの出席者のご紹介をいたします。 雇用均等児童家庭局母子保健課の小林補佐です。 ○小林補佐(母子保健課)   小林でございます。よろしくお願いいたします。 ○佐原室長(医療安全推進室)   同じく阿部主査です。 ○阿部主査(母子保健課)  阿部でございます。よろしくお願いいたします。 ○佐原室長(医療安全推進室)  私の右側は医療安全推進室の久米主査でございます。 ○久米主査(医療安全推進室)   よろしくお願いいたします。 ○佐原室長(医療安全推進室)  それでは、お手元に資料がいろいろ配ってあると思いますので、その確認をさせてい ただきます。 ○久米主査(医療安全推進室)   資料の確認をさせていただきます。資料は、議事次第、座席表、出席者名簿に続き まして、資料1「周産期医療施設オープン病院化モデル事業3年間の取組(案)〈概要 版〉」、資料2-1「周産期医療施設オープン病院化モデル事業3年間の取組(案)」、資 料2-2「周産期医療施設オープン病院化モデル事業3年間の取組(案)資料編」。以上 です。資料の欠落等がございましたらご指摘いただければと思います。 ○ 佐原室長(医療安全推進室)   よろしいでしょうか。よろしければ、議事に入っていきたいと思います。議題は1つ で、「周産期医療施設オープン病院化モデル事業の成果及び総括について」ということで、 今   日は、各地域で取組をしていただいたその総括といった意味のご議論をいただ きたいと思っております。  先ほど久米から説明いたしました資料ですが、議論のベースとなる資料は資料2-1に なるかと思います。各地域の皆様方に事前に、埋めていただきたい一定の質問項目、あ るいは各地域における実施状況等を書いていただき、それを我々厚労省のほうで淡々と、 修飾せず、各地域のものをまとめさせていただいたというものです。まず、資料等の構 成について説明させていただきます。 ○ 久米主査(医療安全推進室)   資料の説明をさせていただきます。資料1は、モデル事業の3年間の取組(案)の 〈概要版〉となっています。資料2は、3年間の取組(案)ということで、目次をご覧 ください。  まず「はじめに」、第1章として「周産期医療施設のオープン病院化モデル事業の実 施状況」をまとめております。この中に、V.「モデル事業の成果と課題及び今後の方向 性」、VI.「オープン病院化推進のための国への提言」とありますが、この章に関しまし ては、各地域の方々からいただいた報告書のご意見を事務局でこちらに再掲させていた だいております。第2章は、「モデル事業実施地域からの報告」として各県からいただ いた報告書を掲載しております。最後に、VIIIとして「各地域の実施状況一覧」がござい ます。  続きまして、資料2-2です。こちらは、資料編として各地域からいただいた具体的な 参考資料等を掲載しております。Iにモデル事業の予算、IIに実施要綱、IIIにこのモデ ル事業の必要性が提言された厚生労働大臣医療事故対策緊急アピールを掲載しておりま す。以降、各モデル地域の参考資料を掲載しております。ご確認ください。それでは、 資料1に戻りまして、資料2-1、2-2を踏まえた取りまとめをさせていただきました概要 版を用いてご説明したいと思います。  まず、I.「事業の概要」です。1.目的としまして。本事業は、産科医師数の減少にと もない、地域で出産ができる医療機関数が減少するなど、産科医療を取り巻く状況に大 きな変化が起こっていることを踏まえ、ハイリスク分娩などを受け入れることが可能な 産科オープン病院を中心とした周産期医療のモデル事業を行い、安全で安心な周産期医 療体制の確保を図ることを目的としています。 2.実施主体は、都道府県、市町村及び厚生労働大臣の認める者です。 3.運営基準は、(1)オープン病院ではハイリスク分娩などを行うものとする。(2)診療 所の医師及び助産所の助産師は、オープン病院の登録者となり、自分が検診した妊婦の 出産に立ち会うことができるものとするとなっております。 4.事業内容につきましては、こちらに記載しているとおりです。 5.実施地域は、平成17年度より宮城県、東京都、岡山県、平成18年度より静岡県、三 重県、滋賀県、広島県の合計7カ所の地域において実施されました。  続きまして、II「モデル事業の成果と課題及び今後の方向性等」です。 まず、1のモデル事業における成果です。各地域におけるモデル事業の成果としまして は、医療機能に応じた役割分担の推進、医師の負担軽減、医療の質・安全の向上、地域 連携の強化、妊産婦の満足度や安心感の向上等が挙げられました。以下、各地域からの 主な意見を挙げております。  続きまして、2.主な課題としては、モデル事業の運営体制の明確化、診療方針・診療 情報の共有、事業の利用促進、他の地域への事業の拡大等が示されています。こちらも、 以下に各地域からの主なご意見を挙げさせていただきました。 続きまして、3頁です。3.セミオープンの地域における今後のオープン病院化に向けて の課題としてご意見をいただきました。課題については、事業に関する普及啓発の推進、 病診連携の強化、責任体制の明確化、地域の実情に即した工夫の必要性等が挙げられて います。 4.今後の方向性としては、他の地域への事業の拡大、周産期医療体制のネットワーク化 の推進、事業に関する普及啓発の推進、オープン化に対する補助金等のメリットの付加 等が示されています。  4頁目です。III.オープン病院化推進に当たり、国で取り組むべき事項としてご意見を いただきました。事業等に関する普及啓発の推進、オープン病院化・産科医に対する支 援、医師確保対策の推進等のご意見をいただきました。 ○ 佐原室長(医療安全推進室)   今日の会議の目的を改めてもう1回申し上げます。この事業はもともと3年間という ことでしたので今年度が最終年度ということになり、各地域でやっていただいたことを それぞれ報告として厚労省に寄せていただき、それをきちっとした形にして残していく ということがまず必要なのではないかと考えております。今日、この連絡会議として改 めて何か1つの見解をまとめるとかということではなくて、あくまでも、各地域でいろ いろな課題があった、こういう成果があったといったことを出していただき、そうした ものを1つにまとめることを、それをこの場で共有していく、というところに留まるの ではないかと思っております。ただ、課題や成果を共有することで各地域で来年度以降 の展開をする際の参考にしていただいたり、また、今日、傍聴に来ていただいている都 道府県がありますように、このオープン病院化のモデル事業については関心も大変高い ようですので、皆様がやっていただいたいろいろな苦労や成果をきちっと伝えるという 意味で、資料1、資料2、あるいは参考資料というものをきちっと残して、後に続く皆 さんにも参考にしていただきたい。また、国としても、この事業は3年間ということで 来年度はとりあえずもうありませんが、その後どうしていくのかということを考える際 の基礎的な資料としても、残しておきたいと考えております。  今日の進め方としては、資料2-1に沿って各地域から15分程度現状報告、あるいは 課題、こんな点がよかったといったことをご報告いただいて、そのあと、それぞれの皆 さんで、もう少しディスカッションをしていただいて、また、その議論の中で自分のと ころで直したいというところがあれば、また資料を直していただいて、最終的なものを 3月までに作って、次につなげたいと考えております。その進め方について何かご質問 はありますか。よろしいですか。それでは、各モデル地域から15分程度で、資料2-1 に沿ってご報告いただければありがたいと思います。また、順番で宮城県からでよろし いでしょうか。 ○ 村田主任主査(宮城県)   それでは、宮城県から発表させていただきます。私からは、行政の視点のことについ てのご説明を申し上げたいと思います。  本県のモデル事業実施前の状況につきまして、病院、診療所、助産所の施設数につい てはこちらの表に記載されたとおりです。モデル事業を実施いたしました地域は宮城県 の中心の都市であります仙台市、その地域の施設になります。それぞれ分娩件数も記載 してありますが、助産所につきましては、分娩数はその施設からいただいた数値ではな くて、統計資料から助産所ということで拾った数値です。その他の自宅等についても、 そういった数値です。  まず、本県の産科医療の状況と課題ということで、行政の視点です。お医者さんの状 況ですが、本県では、平成11年と18年に宮城県周産期医療アンケート調査というもの を実施いたしました。こちらの結果につきましては、分娩取扱医療機関の産科・産婦人 科のお医者さんの数は、平成11年の調査では160人だったものが平成18年では123 人と、37人の減少となっていました。分娩件数そのもの自体も、平成11年より平成18 年は減少しているわけですが、お医者さん1人当たりの分娩件数ということでもう一度 計算し直しますと、平成11年の調査では126.5件、平成18年の調査では146.6件とな り、1人当たりのお医者さんが分娩を取り扱っている件数が増加しているということで、 お医者さんの負担が大きくなっているというような状況が見られました。それから、本 県におきましては、地域による偏在も大きく見られるところです。  同じアンケート調査の結果ですが、分娩を取り扱っている医療機関の推移を見ました 場合に、平成11年では73の医療機関が分娩の取扱いを行っていましたが、平成18年 は55ということで、18機関の減少となっています。さらに、その分娩を取り扱ってい る病院に、何人の常勤のお医者さんがいらっしゃいますかと尋ねたところ、県全体では 1つの医療機関に2.2人が平均ではありましたが、特にいま医療資源不足が厳しい県北 の3医療圏におきましては、平均人数は1.0ということですので、すべての分娩取扱医 療機関が常勤医師1人の体制で行っているというような状況でした。  この中でもセミオープンを実施しています仙台地域の課題としましては、県全体と同 様に分娩取扱医療機関数、分娩件数も減少していましたが、お医者さん1人当たりの分 娩件数は増加ということで、お医者さんの負担も大きい状態ではありました。特に仙台 市につきましては、最も多い人口、県全体の半数ほどの人口を占めていますので、分娩 件数も本県全体の半数近くということですが、そこに仙台赤十字病院にお願いしており ます総合周産期母子医療センター、この三次医療機関、二次の医療機関につきましても、 仙台市に集中しているような状態がありまして、他の医療圏からの母体搬送、異常新生 児の搬送を多く受け入れているという地域です。私からは以上です。 ○ 谷川原部長(仙台赤十字病院)   いま説明がありましたが、仙台地区で分娩の施設が減少して、基幹病院の分娩数が非 常に増えてきました。それで外来等の勤務が非常に激務になってきまして、その中で産 婦人科の医会等でセミオープン等のシステムを立ち上げたいと考えていたところにこの 事業がちょうど始まりまして、この事業を中心的な母体として仙台市の中でいろいろな 検討を行いました。  そこに「運営状況」とありますが、どのような契約をしてどのような体制でやるかと いうこと。今回は、市内の6つの病院を分娩施設として統一されたシステムで運用しよ うということで、「共通診療ノート」というものと「マニュアル」を作りました。資料 2-2にはたぶん写しで入っていると思うのですが、一応このようなマニュアルを作りま して、注意事項や検診のときのチェックポイントをきちんと決めて運用するようにしま した。あとは、「共通診療ノート」というものも作りました。これを妊婦さんに持たせて、 夜間等の救急には必ずこれを持って公示医療機関を受診するようにということを徹底い たしました。  今回のセミオープンのシステムに関しましては、仙台市の医師会と各病院が契約する という形で、仙台市医師会の会員の先生方にすべてこのセミオープンに参加していただ くという形をとっております。あとは、基本的にオープンシステムはとらずにセミオー プンという形で、分娩時のいろいろなリスク等に関しては、すべて病院側の責任で対応 するということを明文化いたしました。あとは、産婦人科医会の宮城県支部等とも協力 しながら説明会等を、何度か繰り返してシステムの徹底及びレベルアップを図りまして、 20頁にもありますが、今現在、大体6つの病院で4,000から5,000弱の分娩になってい ますが、大体3割から4割程度の方がこのシステムを利用されるようになりました。病 院によっては7、8割、外来の妊婦検診がほとんどなくなった病院もあります。我々の 施設はハイリスクをかなり扱っている関係でセミオープンの数が少ないのですが、それ でも少しずつ増えている状況で、現在は、約3割から4割の方がこのシステムを利用し てお産をされているというのが現状です。  今後の課題というか、仙台市内は、そういう形でシステムとして大体定着してきたよ うに感じております。市民の認知度もかなり上がってきたと思っていますので、これを さらに厳しい地域に広げられるかどうかということで、いま県北地域ですね。1つの病 院が産婦人科医の集約化に伴って医師がいなくなった地域がありまして、その地域の分 娩をどのようにしていくかということで、いま、このセミオープンをちょっと変えた形 で対応しようということで検討中で、いろいろな病院間での契約等が始まっている、そ ういう状況です。 ○佐原室長(医療安全推進室)   ありがとうございます。ご質問はまたあとでお願いすることとしまして、東京都から お願いいたします。 ○ 中林院長(愛育病院)   東京の愛育病院の中林でございます。資料の23頁にありますように、東京は、年間 約10万件の分娩があり6万6,000件が病院で、診療所が3万件ですので、3分の2は が病院で扱っています。これは大病院等が多いからです。私どもがいる港区では、診療 所の分娩はゼロになり、ほとんど全部が大病院になっています。ただ、千葉に近い地域 と多摩地区においては診療所での分娩がまだかなり多い状況で、東京都と言っても、中 心部と周辺部とでは状況はかなり違います。  愛育病院は中心部にありますので、その下のほうに書いてありますように、年間1,700 から1,800の分娩数を常勤医8名どの医師でやっております。連携している診療所は現 在15ですが、分娩をやっている所はほぼありません。その診療所に外来を主にしてい ただいて、愛育病院は、できるだけ外来をしないで、その先生方に患者さんはできるだ け診ていただくということにしております。全員がそうではなしに、どうしても愛育病 院で妊婦検診もしたいという方もいらして、なかなかさばききれないという状況ではあ ります。  東京都としては、この4月から7つぐらいのブロックに分けて中核病院とそれに関連 する病院という分け方をしていこうという計画を練っていますが、そのときにもこのオ ープンシステムに必要な「共通診療ノート」が情報の共有化として緊急時、または病院 を移る歳などのツールとしては是非必要であるということで、「共通診療ノート」を作る ことにいたしました。それから、まだ十分に進んでいないのですが、現在、ウェブ型の 「共通診療ノート」の作成を行っており、インターネットで連絡ができるということを 行いつつあります。  愛育病院では、分娩数はほかの地区で二次病院が分娩を止めているので、それが、ロ ーリスクも含めてこういった三次医療センターに来てしまうという問題点があります。 当院の特徴としては、完全なオープンシステムで外来はご自分のクリニックでやって、 分娩は全例当院に来るという1人の先生が年間100件以上の分娩をされています。この オープンドクターは、妊婦さんからドクターフィーを直接いただいているということで、 相互の信頼が非常に強いと。ただし、愛育病院にはそのドクターフィー以外のものは全 く同等に払っていただくということで、ドクターフィーが付く分だけ患者さんの負担は 少し増えますが、それでもそのほうがいいという患者さんも多くいらっしゃるというこ とです。  愛育病院自身は、分娩数がいま年間1,800件近いのですが、それを8人ぐらいのドク ターでやっています。それができる状況になっているのは、おそらく助産師外来とか、 分娩もほとんど院内助産院的に助産師がほぼ管理して、最後のときだけ医者が行ったり、 帝王切開その他は医師が行いますが、メインは90名ほどいる助産師にお願いしている ということで、まあまあ、産科医に大きな負担なしにやっていられるように思います。  課題としては、大体、先ほど久米主査さんがお話になったような総説的なことが言え て、妊婦さん方は、利用してみるとよかったという感想を言ってくださる方が多いよう に思いました。  今後の方向性としては、東京都をいくつかのブロックに分けて、その中で顔の「見え る連携」をやっていく必要があるだろうということで、行政のほうも、積極的にそれを 作っていただいています。この4月からは、実際に機能するようになりました。  今後はおそらくローリスクとハイリスクを分けるようなことができればいいのですが、 幸いなことに、多摩地区では日本医大の多摩永山病院がオープンシステムを開始してい ただいて、分娩をしている施設を含めて、30施設ぐらいとオープン、セミオープンをや っていらっしゃいますがほとんどはセミオープンのようです。そこでのやり方は、愛育 病院のような診療所だけではなしに、分娩を扱う所でハイリスクとローリスクを分けな がらやっているというようなことです。これのほうがむしろ地方型に近いのかなという ようなことで、東京でも中心部と周辺部では少し違ったオープンシステムができ上がり つつあるのかということを考えております。今後は東京都全体にそのシステム、今後、 7つに分けるそうですが、7つの中でそういったブロック化ができ、お互いにセミオー プン、オープンという関係ができれば大変ありがたいと思っております。  ただ、オープンシステムに関しては、東京都でも、なかなかご自分の診療所を空ける ことができないのでごく特殊な、今後、10年、20年後の若い方々がそういうシステム で開業するようなときには十分に考えられるかもしれませんが、その場合には、診療報 酬のみならずドクターフィー的な概念を持たないと、それはうまく進まないのではない かという感じがします。  セミオープンに関しても、現在、東京ではほとんどがビル診ですので、送ったほうは 送りっ放しという形で、診療報酬上のメリットは何もないわけです。受けるほうは受け るほうで分娩数が増えるというデメリットがありますので、私自身は、常勤医師1人に 関して年間150件以上にならないようにしています。そこで分娩数を切っていますので、 現在では7月の分娩までいっぱいになっているということです。分娩を月に150予約し ていますが、80はどなたでもできますが、その他、残りの70はハイリスクとご紹介と 母体搬送に限っておりますので、一般の人は、大体5、6カ月先までいっぱいになって しまいます。ですからこれは、今後、もう少し考えていかないと、市民の皆さんのニー ズに応えて医療をやっているとは言えないような感じがしております。 ○佐原室長(医療安全推進室)   ありがとうございます。では静岡県、お願いします。 ○ 茂庭院長(榛原総合病院)  静岡県の現状を報告させていただきます。私どもがオープン病院として行っている榛 原総合病院ですが、今いろいろな施設からご報告がありましたような都会型ではなく、 明らかに地方の医療崩壊が起きている側の場所でやっております。  資料2-2の62頁に私どもの医療圏が記載されていますが、私どもの榛原総合病院は 牧ノ原市という所にございます。この地域は、静岡県内でもいわゆる東海道線から外れ ている地域で、車が唯一の交通手段という地域で、だいぶ前から既に医療崩壊が進んで います。このため、この地域の安全なお産を確立するために我々の榛原総合病院という 所が核となり、産科オープンモデル事業を平成18年11月から開始しております。  その横の資料を見ていただくとおわかりになると思いますが、ご他聞にもれず、我々 の所でも、地域としては、3市町村で出生数が年々減っています。しかも、総合病院が 2つあるのですが、2003年にはその2つともお産を取りやめると、一時そういう状況に なりました。出生数約1,000に対して、分娩を取り扱う施設が1つという状況にまで陥 っています。そのために当院が再開したのを契機に産科オープン病院にしておりますが、 以前は、この地域内のお産を地域内の施設で賄えるという体制が整っていましたが、昨 年の2007年でも、まだ7割程度しかカバーできていません。  それが、実は7割に増えてきたということで安心していたのですが、今年の1月から 私どもの施設以外の唯一の診療所が分娩の取扱いを止める、このオープンシステムを全 面的に取り入れるので止めるのであとはお願いするという形で、急にそのオープンシス テムが普及したという何とも言えない状況になっています。そのことは66頁にグラフ を出してありますが、それまでの紹介患者数は約10件強、20件はいかなかったのです が、その診療所がお産を止めるということを発表した後、その施設からの紹介が一方的 に増えている。それから、それに啓発されるというか、それに伴い、我々の施設の許容 を超える分娩の予約が押し寄せてきており、12月の時点で1月より分娩制限をするとい うことを新聞上で報道させていただいた結果、さらに患者が集まってくるという状況で す。ですので我々の施設は、昨年度、約500件の分娩だったのですが、今年はおそらく 800から900を超える、それを4人の医者でやるという。このシステムがいいかどうか ということになると、やはり地方ではこれをうまくやっていこうとすると、やはり周辺 地域からのご理解がないと、そこの施設がやっているということで、正常のお産までが 大量に集まってくるという奇妙な現象に現時点ではぶつかっております。  さらに、静岡県の資料は資料2-1の29頁にありますが、我々のある浜松と静岡の中 間の地域の東寄りの地域を志太榛原地域と呼んでいまして、その中で病院が4となって いますが、平成18年度はお産が1,827件あったようです。そのうちの約3分の1を扱 っている施設が今年度中にお産の取扱いを止めると新聞報道がされました。この地域で 医師が総合病院で何とか医療ができる施設が今後は2つになってしまうということで、 今後、地域の産婦人科の仲間と協議しなければいけないのですが、このオープンシステ ムというものを取り入れて、是非、2つの病院が共倒れにならないような形を作ってい きたいと思っております。診療所も5つに減り、どこが1つ倒れても、この地域のお産 ができなくなるような状況に追い込まれている。しかも、その二次医療圏を越えた地域 も同じような状況ですので、どこか1カ所が崩れると、どうしようもない状況に陥って きていると思います。それで、分娩取扱を止めた施設の先生には当院の非常勤医師とい うことで入っていただきまして、定期的に手術や分娩、外来の一部、土・日の産直等に 積極的に関わっていただけることになりましたので、その先生を利用させていただきな がら、この地域のお産を何とか守っていきたいと思っております。  実際に我々も、共通ノート等を作らせていただいて、運用を、11月ころから急に大量 に患者さんがそれを持って来ていただけるようになりました。実際には1月からそうい った患者さんのお産が始まっていますが、やはり抜けている点がいくつかありまして、 実はいま、1カ月検診、乳児検診等も我々の施設ではなくて、オープンシステムの紹介 先に戻そうということを計画しております。そうすると、そのノートの中に分娩に関す る記録、新生児の退院時の記録等が抜けていますので、そういったものを書き加える形 で、当院では本当にお産だけを扱い、それ以外の管理はなるべく診療所に移すという形 で、できれば、セミオープンという形からオープンという形に振り分けることによって 我々の負担が軽減できるようになればいいのではないかと考えております。ですので、 なかなか難しいところはあると思いますが、地域で施設を選べない状況になったときの オープン病院は、なかなか難しい状況になるのではないかと。今後、二次医療圏を超え た総合病院、周産期センター等の連携がますます重要になると、我々は認識しておりま す。私どもの報告は以上です。 ○佐原室長(医療安全推進室)  ありがとうございます。それでは三重県、お願いいたします。 ○ 佐川科長(三重大学医学部附属病院)  三重大学の佐川です。三重県の2年間の、実際にどのようになったかということを報 告したいと思います。  事業開始日が、平成18年4月3日からとなっていますが、これは予算が4月3日か ら始まったということで、実際にスタートしたのは平成18年12月ということで、約1 年経過したというところです。これまで3つの地域から報告されたのは、例えば仙台は、 地方の中核都市で、人口は100万人ぐらいを対象にしていると思います。東京の場合は、 東京都という大都会で、しかも大学病院ではなくて民間、民間というかそういう病院で ある。静岡は、地方の中核病院ということです。私たちは最初、三重県で県立病院とか も考えたのですが、マンパワーの問題とかがあり、オープンシステムで外からの患者さ んとか医師を受け入れるのには体制がなかなか整わないということで、大学が始めたと いうことです。岡山などの場合もそうだと思いますが、日本の地方の1つの典型的な例 だと思います。先ほどの3つの場所の発表を聞いていて、私たちとはまた違う問題があ りますし、三重県の場合も違う問題があると思いました。  私たちが始めたのは、医師数の減少に対応するために産科施設の集約化を行っていま すが、その集約化を補うための機能分担ということで診療所と基幹病院とがどのような 形で協力できるかということで、オープンシステムを取り入れようということになった わけです。大学病院ですから、先ほどの東京や静岡のように、分娩や診療が中心という わけではなく、研究や教育といった部分もありますし、婦人科、あるいはそれ以外の診 療に関してもマンパワーが必要ということで、医師数当たりの分娩数はそれほど多くあ りません。実際、三重県の場合でも、この1年間でオープンシステム、あるいはセミオ ープンシステムで分娩した数は非常に限られています。  と言いますのは、三重県の場合は現在のところ、36頁にも書いてありますが、分娩は 約7割が診療所で行われています。こういう状況で診療所の開業医の先生たちが分娩を 多くしている所で、オープンシステムという形で登録してもらいます。例えば診療所に オープンシステムのポスターを張ると、その診療所はもうお産を止めたのではないかと いうような噂が飛び交う、そうするとその診療所は非常に困るということで、そのポス ターを剥がさざるを得ない、そういう所もあるわけです。ですから、一般の人たちに対 する啓発というか、システムの目的が安全な医療を提供する、ハイリスクをオープン病 院で、ローリスクを診療所で、そういう病院と診療所間の機能分担ということをもう少 しちゃんと広報していかないと成り立たないというようなことを感じました。  問題点としては、いま三重県では三重大学だけなのですが、結局、地方の場合は、少 ない医師で広い面積で分娩をカバーしないといけない。医師1人当たりの分娩も、全国 平均よりも医師が少ないですから、少し多いわけです。また、面積が広いので交通網が 十分機能しないということで、例えば三重県の母体死亡は、この10年間の平均で言う と、全国42位という非常に不名誉な10年間の平均なのです。  それをどうやったら改善できるかということで、オープンシステムというものをうま く利用して、診療所の先生たちをオープンシステムを中心とした、先ほど東京のほうで おっしゃっていた周産期のネットワークというような形ですが、それを各地域、人口30 万から50万人に1カ所のセンター的な病院を作って、そこはNICUもちゃんとあると いうような病院を核にして、その周りの診療所、一次あるいは二次の病院をグループ化 することによって全体をカバーするというようなことをしないと、このオープンシステ ムを1カ所だけに作っても全く機能しない。例えば、さっきの静岡県のように、周りの 分娩施設が閉鎖したらそこに受け入れる。それは本来のオープンシステムではない。単 に併合しただけであって、レベルが上がるといったことは全くないわけです。  私は、本来は診療所の先生たちが安心して分娩に携わることができるシステムが必要 だと考えています。患者さん側に安心できるような医療を提供するのはもちろん前提な のですが、それだけではなくて、医療側にとっても安心できるような体制がこのオープ ンシステムの目的だろうと思います。ですから、このモデル事業は3年間の事業として 今年で終わりということで、スタートはしたのですが、これを本当に最初の「目的」に あるように安全で安心な医療を全国に広めるためには、今後、同じ方向で各地方の事情 に合わせたシステムを作っていくということを事業として続けてやっていただきたいと 思います。それで三重県にもお願いして、三重県としては、周産期医療ネットワークの 充実にむけて地域で努力していきたいと考えています。詳細は、三重県から説明してい ただきます。 ○ 田中副室長(三重県)  佐川先生には非常にお骨折りをいただき、三重県にお越しになってからすぐに周産期 医療部会でオープン化病院のお話を出され、非常にご尽力をいただき、いま、何とかそ の手順と言いますか、そういうものの道筋ができつつあるわけです。いま先生からご発 言がございましたが、この補助金関係はこれで終わりになるということから三重県はど うするのかということで、せっかく蕾になったところを刈り取るようでは困るというお 話もありました。三重県としましても、第四次医療計画が医療政策室、私はこども家庭 室なので所管がちょっと違いますが、そこで策定中です。そこにオープン化病院の関係 も盛り込んでいくというお話を聞いております。  三重県は南北に非常に長いので、大まかに言えば、北勢、中西勢、南勢と。もう1つ は、東紀州と、和歌山と接するような、そこは医者不足も非常に大変な所ですが、そこ があるわけです。とりあえずその医療計画、5年間の医療計画ですが、全体のセンター をすべてというよりは、むしろ分散しているそのセンターがある所が北勢、中勢、南勢 にありますので、そこに1カ所、いまは中勢に三重大学病院がありますが、北勢と南勢 にもう1つずつ整備していきたい、という方向で盛り込んでいくというお話を聞いてお ります。  三重県では、医療審議会の周産期医療部会が2月20日前後に開催の予定です。この ときに、課題として1つは、周産期の制度と言いますか、いわゆるネットワークについ て、5年という歳月が流れましたので、見直し検討会というものを周産期母子医療セン ターの若手の先生方、現場の先生方を主体にやっていただいているわけです。そこでそ のような揉んでいただいている中に、いま医師不足ということがあります。やはり基本 は情報入力をするという人手時間、あるいは患者は待ってくれない、このような問題が 非常にありますので、とりあえず人から人へのヒューマンネットワークを基準にやって いく方向が当面はいいだろうと。今後はまた、来年度、再来年度、平成21年度に向け ては、夏場ぐらいまでにもう少し新たな制度の構築を目指していくというようなことで す。  これにつきまして、ハイリスクの方がいるがために、基幹病院の勤務医が非常に苦労 されます。また、訴訟問題も多い、たらい回しとかそういうことが社会現象です。それ につきましては、かかりつけ医のいない妊婦の搬送体制というものを各医療機関、並び に消防本部と連携をとり、何とか体制を作っているということです。この2月の周産期 医療部会にこれを一応案として掲げ、了解を得る方向にしております。  あとは、子どもたちの搬送の「新生児ドクターカー(すくすく号)」というものを稼動 しているのですが、やはり医師不足がいま非常に重篤な問題になっていますので件数も 少ないということから、これも医師の増員を課題にということに三重県はなっています。  そういうことで県としましては、産科オープンシステムにつきまして、平成20年度 も、引き続き支援をしていきたい、また、この整備を継続していきたいと思っておりま すので、国におかれましても、今後、また、ご指導、ご助力を賜りたいとお願いする次 第です。 ○佐原室長(医療安全推進室)   ありがとうございます。では滋賀県、お願いします。 ○ 野田教授(滋賀医科大学)   私から、平成18.19年、この2年間の仕事につきまして、取りまとめて滋賀県の状況 をお話したいと思います。事業開始日が平成18年1月1日となっています。この事業 には、初年度はほとんど参加していなかったというか、遅れて参加したのですが、その 理由は、おそらく予算が付かなかったということです。滋賀県は過疎地域で、130万人 という人口が琵琶湖の周りにパラパラッとドーナッツ状に住んでいる、そういう所です。 産婦人科医が129名おります。リタイアされた方から卒業したての数名を含めて、その ような者が働いている所です。分娩のソースが1万3,000ぐらいです。そのうちの70% 程度が診療所、いわゆる開業の先生が頑張ってやっている、30%を病院で取り扱ってい る、そういう状況下です。いわば広い地域に診療所が点在して分娩を取り扱っている、 そういうことになります。  このシステムに是非参加しようと考えたいちばんの基本は、この滋賀県が最近の5年 間は、周産期死亡率が全国でワーストスリーを低迷しているのです。昨年でしたか、ワ ーストワンになりました。昨年は2位だったか、ちっともうれしい数字ではないのです。 そんなこともありまして、何とかしろというようなこともありました。新生児科の先生 も足りないし、産科医としても考えることはあるだろうということで、特に滋賀県は、 先ほどから各地でお話になっているような県立病院の産婦人科はないのです。県立病院 は2カ所ぐらいあるのですが、小児専門とか精神科専門、産科以外の婦人科とほかの外 科と内科とをやっているという成人病センターというのがあります。  それで、どうしたものかと考えていたのですが、やはり滋賀医大の仕事はハイリスク を取り扱うことだろうということです。ちょうどそのころ中林先生の所で妊娠のリスク 評価のシステムをお作りいただいたので、しかもそれは日本版で、いままで諸外国でい ろいろ議論がありましたが、これだということで、中林先生のお許しを得て、そのシス テムを利用してハイリスクの妊娠を紹介してくださいと、それは滋賀医大で取り扱いま すよということで、滋賀医大にセミオープンシステムを開くような規定を作っていただ きました。  滋賀県の場合は、私がやいやいそういうふうに言いだしたのですが、やはり周囲への 働きかけや滋賀県産婦人科医会への説明がやや不十分であったと、あとから反省してい ます。そういうこともありまして、やや滋賀医科大学先行型みたいになってきました。 産婦人科の先生方は、一体それはどういうシステムであるか、特にリスク評価のシステ ム自体に対する疑問等を提する先生もいらっしゃいました。それで、滋賀県産婦人科医 会全体としてそういうことを考えてみよう、という気運にはなかなかなりませんでした。 どちらかと言うと、ローリスクの分娩をとらないように気をつけたまえ、といったご注 意をいただいたことがあります。  しかし、資料の43頁のいちばん下を見ていただきますと、「産科病床数42」と書いて ありますね。小さい病床数ですね。7対1看護が始まり、これがさらに削られ、36床で 回しています。もちろん子宮がん、卵巣がん等も来ますし、化学療法もやっております し、体外受精胚移植法も来ますし、切迫早産で長期入院もありますし、そういったもの を全部併せてやっているので大変煩雑な、看護スタッフももう大変だろうと思うような ところでやっております。ですから、ローリスクの分娩がもし間違って多数来ますと、 病棟が混乱してとても受けられないということで、ハイリスクでよかったのだろうと。 年間の分娩数は275と書いてありますが、これは平成18年です。平成19年、昨年は、 315辺りまで増えたかと思います。そのような状況でやっておりました。  説明会等を行いまして、資料2-2の93頁辺りの資料もちょっと見ながらお話を聞い ていただけたらわかりやすいのですが、登録産婦人科医師数は26名、結構多くの方が 興味を示されました。登録施設が24施設、登録助産師もおりまして、6名が登録してい ただいたという形で仕事がスタートしています。しかし、非常に広い地域にばらばらと その関係者が点在しているので、都会型ではありません。資料2-2の95頁辺りの上の 地図とその下の登録された登録症例の所を見ていただきますと、全部で、この2年間で 30例でした。  右側に妊娠リスクスコアが書いてありますが、中林班の論文等を読ませていただきま すと、当初、0〜1点はローリスクということですので、1点が一つひとつあるのですが、 それ以外は大体ハイリスクでした。ひどいのは19点というのもありましたが、平均ス コアが5.58ということで、登録は10施設36症例ですか、それなのにいっています。 幸いなことにそれぞれの症例が、数が少なかったこともあって、いろいろ議論しながら 今までに30症例が無事に生まれたのですが、すべてうまく、母子とも退院していただ くという結果になっています。その結果等に関しましては、そのシステムを利用された 患者さん等にアンケート調査をいたしました。概ね、こういうシステムも必要でしょう ということで、資料2-2の101頁の日本産婦人科医会の調査ですね、我々がやった調査 は102頁にありますが。「このようなオープンシステムそのものについてはどのように 思われますか」ということで、たぶん必要だろうと、便利さと緊急時の対応を併せ持っ たこのようなシステムがよいということで、76.9%の方が、少数例ではありますが、そ れなりに評価していただいていると思っております。  今後のことです。全体を見ていていちばん感じましたのは、遠い所の先生方がハイリ スクを紹介するというときは、ハイリスクの症例は当院へもっといっぱい紹介されてき ているのですが、オープンシステムに載せるということを関係者がみな忘れていまして、 あるいは、「もう邪魔くさいからもうそんなセミオープンシステムにしないで、お前の所 が取ってくれ」というような議論でした。そのセミオープンシステムをわざわざ作った 理由は、「是非、分娩にも立ち会ってください」「産褥期にも来てください」そして、「そ れなりにペイは出ますよ」ということで双方向的な情報交換ができる、あるいは、歴史 的に見ればたぶんこういうオープンシステムといった考え方が滋賀県で展開された第一 歩ぐらいになるのではないかと、私はそのように考えています。ですから、「できるだけ、 後追いの形ででも昨日紹介していただいたハイリスクのものをオープン症例に入れまし ょうよ」みたいなことで、紹介された先生はそれで忘れてしまいたいぐらい、ややこし い人がいなくなってよかったぐらい思われているのかもしれませんが、しかし、そうで はない、一緒にやりましょうよという形でそのほうがよかったのではないかと、実は内 面、そのように思っております。  資料2-1の45頁辺りですが、市民公開講座等をやりまして、私どものホームページ にもこの妊娠リスクの評価表のシステムを乗せまして、自分で評価していただけるよう なシステムを作りました。そうしますと、1年ぐらい経ちますと、「私はこのリスクが何 点なのですが、どこで分娩したほうがいいでしょうか」といった患者さんからの問合せ が来たりするようになりました。それこそ私たちが望んでいたところで、一般市民の間 にもリスク評価というのをしたらいいのだということがぼちぼち芽生えてきたかなと、 そのように考えます。  資料2-1の46頁の3)に「我々のような大学病院での完全なオープン病院化は困難で あり」とありますが、たぶん困難でしょうね。どこの先生がやってきて、全部自分で分 娩を取り扱ってしまうような、そういう意味でのオープン病院は無理でしょう。「中長期 的には基幹病院に本システムを移行させるべきであると考える」誰がこんな文章を書い たのか知らないのですが、私は、実は考えがちょっと違います。ごめんなさい、仲間割 れしていますが、大学でやったらいいと基本的には思っています。ローリスクの分娩も 将来的には増えてくるのではないかと。市民が分娩のリスクや安全を求めるという考え 方が市民に浸透すると、診療所の先生にも対立する。しかし、いざというときは、リス クの高いものは大学病院を利用する。おそらく滋賀県下では、将来においても少ないと は言え、大学病院の医師の数が多そうですから残るのではないか。  最近出てきた問題は、ハイリスクばかり強調しすぎて、実際のところ、ハイリスクば かり来ています。そうすると、正常なというかローリスクの経膣分娩の症例が極めて少 なくなっており、卒業して1年目、2年目の助産師が、これではしょうがないというの で、よその病院へ腕を磨きに出ていく人がだんだん出てきました。それは医師が腕を磨 きに他府県の高度な症例数の多い病院へ移動していくのと全く同じで、それを止めるこ とはできません。いくつか問題点を申しました。  最後に47頁に緊急的な医師確保対策が出てきますが、これはどうしたらいいか。言 葉としてはそのように申し上げておきますが、具体的にどうすればいいかはなかなか分 かりません。その1つとして、ハイリスク分娩加算が勤務医に還元される仕組みが必要 で、ハイリスク妊娠の管理料なども付いているわけですが、病院院長と話をして、「関係 者にそれを還元すべきだ」と直言したのですが、一笑に付され、「それは無理ですよ」の 一言で話が終わったのが実情です。ですから、もっと関係者にいろいろ働きかけて待遇 改善を言う必要があろうかと思います。長々とお話をしました。どうもありがとうござ いました。 ○佐原室長(医療安全推進室)   それでは、岡山県お願いします。 ○ 山野井総括副参事(岡山県)  先に行政側から簡単にご説明させていただきます。資料49頁です。岡山県の産科医 療の現状ですが、少し遡って平成10年6月に岡山県周産期医療体制整備検討委員会を 設置しました。そのときに総合地域周産期母子医療センターの設置について協議を行い、 平成12年度から、妊娠・出産から新生児に至るまで高度な周産期医療を効果的に提供 しようということで、県南の西部、東部の2カ所を指定しております。また、地域周産 期母子医療センターについては、岡山県の出生数の分布から岡山県内の医療圏等を勘案 して4カ所認定している状況です。  また、今年度からは医療対策協議会を設置して、地域医療や小児医療とともに、産科 医療についても、医療の連携、体制確保について協議を行っております。岡山県では第 五次保健医療計画策定が、平成18年3月にされており、その中にも周産期医療体制の 構築のために、オープンシステムも含めた岡山県ならではの周産期体制について掲載さ れております。  それから、産科医の減少、産科医療機関の分娩取扱いの中止については、当県も例外 ではありません。分娩を取り扱う産科医療機関の地域偏在、集中という現状があり、産 科医療機関においては、先生方と関係者の皆様の熱意と努力の下で、非常に厳しい運営 を強いられている現状があります。  オープン病院化モデル事業については、平成17年8月から岡山大学病院の協力を得 て実施しておりますが、現在15施設の登録があります。これは岡山県の特徴かと思い ますが、15施設のうち、3施設が無床診療所であり、その無床診療所からの紹介が多い のが特徴になっています。  事業を実施する上での工夫点としては、オープンシステム研修会、登録医とオープン 病院の医師との勉強会、意見交換会、先ほど顔の見える連携とありましたが、顔の見え る意見交換、交換の場を設けております。  今まで実施してきたモデル事業における成果としては、病診連携の強化、産科医師の ストレスなど負担の軽減、また分娩の取扱いをやめた診療所の医師、分娩施設のない医 師が事業に参加することで、産科医不足対策としても効果があるのではないかと考えて おります。  利用された方からの意見としは、妊婦健診は診療所で細やかに診てもらえて、お産は 大きな病院でできたということで、大変安心できて、利便性も損わない、という意見も 聞いております。課題はまだたくさんありますが、まずあらゆる機会を通じてのオープ ンシステムの周知広報に尽きると考えています。もう1つは、モデル地域として事業を 実施していましたが、岡山県で岡山大学を中心に確立したオープンシステムを普及させ るために他地域へも拡大していきたい。そういった予算措置も考えているところです。 ○ 平松教授(岡山大学医学部)  医療側の観点から、少し追加させていただきます。岡山県の現状は、お産は1万7,000 ぐらいで、診療所と病院が半々ぐらいです。岡山県は、昔から未熟児を一生懸命やって くれる所があって、周産期医療のデータは、ずっと日本のトップレベルですが、それも 少しずつ崩れつつあります。  問題は、岡山県の患者は出していないはずですが、いま広島県東部、鳥取から、心臓 は我々の所で心臓外科があって全国、世界から来ますが、それは仕方がないのです。未 熟児や破水などで県外の周辺地域から受け入れ拒否なども昨年の秋ごろからだいぶ問題 になってきています。  いま言いましたように、産科の医療対策協議会、周産期医療協議会で、昔からネット ワークがありましたが、今まではこれを動かさなくてもうまくいっていたのですが、本 気できちんと動かさないとどうにもなっていますので、今年はそれを本格的に検討・協 力してやるつもりです。  オープンシステムのほうも県の理解で最初から予算を取ってくれましたので、最初の 年度からスタートして、15施設、22名の医師が行っています。いま話があった診療所 が3名、産科を辞めてもらった病院の医師が3名、お産はやめると言っていた高齢の先 生が1名で、少なくとも7名ぐらいはこのシステムによって妊婦の管理をする人が増え ています。  大体、県のほうからありましたが、よく利用してくれているのが診療所の人で、本来 はハイリスクそこはあまりリスクのないかなり増えています。ハイリスクを紹介してく れる先生はありますが、1人の所はお産にはなかなか立ち会えない。複数の所は岡山県 では1,000とか、1,000近い分娩を数人でやっているところなので、来たいのだが来ら れないという形になっています。  今後の方針としては、広報活動をする。先日来、県とも話をしたのですが、県もでき れば予算を取って続けたいというので、岡山県ではこのシステムを岡山大学でしたもの を岡山市内あるいは県北、倉敷市といったいろいろな地域に広げていくようにしますが、 そのために出てくるのがマンパワーの問題です。それが非常に大きな問題で、いかにし てするかということで、54頁に「国への提言」などを書いていますが、産婦人科医を増 加させる工夫です。  それから勤務医を辞めさせない工夫、ハイリスク妊婦管理料はなかなか聞いてもらえ ず、岡山大学では1年半病院、院長とやり合い、先日からやっと全額入るようになりま した。一生懸命言わないとなかなかと思います。  1番は国のほうで抜本的対策を考えていただくことです。とにかく学会、医会それか らここにおられる先生方も中心になっていろいろなことを考えています。岡山県のほう も行政でも予算を取って、このシステムは続けるということです。それから、今年は特 別で周産期医療関係者の研修会を県が出してくれて、総合周産期センター、地域周産期 センターの6カ所で勉強会をします。そのような知識の向上は県も協力してやってくだ さっています。  学会も産科医療の体制の協議会で、いまいろいろな案を作っており、近々学会案とし て出ると思います。とにかく早急に産科をする人数、いま後期研修医でするのが400名 弱ぐらいだろうと思いますが、それが毎年プラス200名、300名出るような案を国が考 えてくれない限り最後の「その他」でも書いていますが、いま特に周産期をやっている 全国の教授、ここに来られている先生方は、どうにかしないとそこの病院が、県が、地 方が、国が潰れるという思いでやっていると思います。  岡山県などで起こっているのは、定年前に辞める部長や、だんだん上に上がるといろ いろなことが増えるので、部長になる前に辞める中堅医師がどんどん増えてシステムの ことは理解してくれて、やろうと思っても、それが5年後、10年後に増えたのでは、そ れを指導する医師がいない。いま周産期などは世界のトップですが、あっという間に世 界の中間ぐらいまで落ちても不思議ではない状況にあると思いますので、その辺を国に 一生懸命、行政的な措置をしていただきたいと思います。それが第1番の要望です。以 上です。 ○佐原室長(医療安全推進室)   それでは、広島県お願いします。 ○ 上田部長(県立広島病院)   それでは広島県の現状をお話します。資料は57頁です。まず広島県の現在の産科医 療の問題点ですが、広島県内で後期研修を開始する産婦人科医師数は、例年3、4名で す。ゼロという都道府県もあるやに聞いておりますので、それに比べれば恵まれていま すが、それでも医師不足で、本年度いっぱいで総合病院の中で、従来分娩を扱っていた 産婦人科が診療科として廃止になり、年間分娩数は400あるいは300程度扱っておられ たのですが、産婦人科自体が廃止になるということで、俗にいう集約化がかなり起こっ ています。結局その受け皿としては地理的な問題があり、当院は総合周産期母子センタ ーですが、やはりそういう集約化によって受け皿がなくなったリスクのない妊婦が来ら れるということが起こっています。  もっとも我々も無制限で分娩の患者を引き受けるわけにはいかないので、非常に早く 分娩の予約がいっぱいになってしまいます。里帰り分娩の方はお引き受けできないとい うことで、いまは妊娠10週ぐらいでハイリスクだと搬送という以外はいっぱいになっ てしまっているのが現状です。  今回のオープンシステム、セミオープンシステムについては、資料の59頁になりま す。我々は当初、平成18年からセミオープンシステムで登録施設7施設ということで 開始しました。オープンシステムを行わなかった理由は、分娩を担当したいという診療 所の医師がいなかったので、セミオープンシステムとせざるを得なかったわけです。セ ミオープンシステムの7施設は、すべてビルの中のクリニックで、全く自分の所では分 娩を取り扱っておらず、妊婦健診は行えるが、医師も1人だけというところで始めまし た。  この7施設をどうやって選んだのかというと、当初は何が起こるかわからないので、 日常的に非常に綿密に連携がとれて、例えば、オープンシステムの患者で、最終的に紹 介していただいたが、妊娠の経過中、何か異常があった場合に、こちらから、「こういう 患者はもう少し早く紹介してほしいな」とか、そういう意見交換が率直にできる施設と いうことで7施設を選んで行いました。  結果的に、平成18年、19年ということで、登録診療所からの分娩数が10月までに 26例ということだったのです。当初、心配していたのはクリニックですから、患者が、 夜、急変があってそちらに電話をしても先生がいらっしゃらない、あるいは先生に連絡 がついても、夜間、看護師がいないクリニックで診察することができないわけです。で すから、当然セミオープンシステムの患者として登録している我々の病院が、そういう 患者を夜間の対応先になることが決まっています。  実際に始めてみると、オープンシステムで登録した妊婦が夜間や休日に急変して、我々 の施設を受診されることは思ったほどありませんでした。それは症例を選んでいるから ということもあるのかもしれません。それと母子手帳の記載やどうしてもわからない場 合には、普段から綿密に連絡のできる先生方ということで登録診療所を決めましたので、 こちらから電話をすると、手元にカルテがなくても、結構先生は覚えておられて、実は その人はこうだったのだという情報が得られます。先ほどから話に出ているような共通 診療ノートも、一応準備はしたのですが、こちらの出番がなかったので、最終的な形に せずに現在に至って、あまりそういうものがないための問題点は、少なくとも登録診療 所に限ってはなかったということです。もちろん、これは枠を広げればそうはいかない と思います。  もう1つ、ほかの所と違う話ですが、59頁に書いたのが、今回のモデル事業に沿った 登録診療所数分娩数です。当初、開始したときは想定していなかったのですが、我々の 病院でこういうシステムが始まったということがマスコミとか新聞などで報道されると、 それを見た産婦人科の先生が、自分も登録診療所に入れてくれということが、随時起こ り出したのです。  ただ、モデル事業という性質上、随時、の登録診療所が増えたり、その都度、その連 絡協議会を開催するのも合わないので、そういうご希望のあった先生やご連絡のあった 先生は、これに準じるという格好です。ですから、登録診療所には入っていないのです が、事実上、ほとんど同じようにして、セミオープンシステムとして当院で分娩をして いただく場合がだんだん増えてきました。いまこの登録診療所以外に実績のある診療所 として、13施設から同じようなシステムで患者を紹介していただいて分娩をしておりま す。したがって、59頁の(3)のセミオープンシステムを利用した分娩数も、平成19年度 10月まで26と書いてあるのですが、この登録診療所以外のクリニックからのご紹介の 分娩数は、これ以外に40例あって、結果的に当院で分娩している患者の1割強はセミ オープンシステムの妊婦ということになります。これは表面には出ていない数字ですが、 それが実情です。  実際にオープンシステムを利用して分娩した妊婦にアンケートをとり、「患者の視点か ら見た問題点はどうでしたか」とお聞きしたのですが、一言でいえば、非常に好評でし た。その好評だった最大の理由は、当院で健診すると、待ち時間が長いと。これは恥ず かしい話なのですが、それに比べて、非常に待ち時間も短いし、超音波もゆっくり見せ ていただいて、説明してくれると。当院の悪い所ばかり言われているようで、逆にそれ が当院では、どうしても手が回らないところが登録診療所やクリニックで健診を受ける ことによって非常に患者に満足していただいたということです。  もちろんセミオープンシステムであるがために、分娩時に患者に何か影響があったと か、悪いことが起こったというとはあまり聞いていません。ただ、どうしても広島とい う半分田舎の狭いエリアでのことですので、全国どこでもそうなるのか。我々はお互い に医師同士で顔が見える地域という性質がありますので、そういう所では、こういうシ ステムをどんどん広げていっても、きちんとリスクを評価したり、患者を選べば、あま り大きな問題はないのではないかと、個人的には考えました。あとは行政のほうからお 願いします。 ○坂本専門員(広島県)  先ほど上田先生から説明があったのですが、このモデル事業の成果を踏まえて、県と しては、県立広島病院で行っている方式で県内の他の地域で2カ所程度、来年度は実施 したいと考えております。広島県も他の県と同様に、非常に産科医師不足が進んでおり、 集約化・重点化などにより、地域周産期母子医療センターが、今年度末で分娩を1カ所 やめることもあって、病院と診療所の連携体制の構築が必要になってきます。セミオー プンシステムを使って、そのような連携体制を作っていきたいと考えています。 ○佐原室長(医療安全推進室)   ありがとうございました。それでは、残りの時間でご発表いただいたことについて、 ご質問、ご意見、もう少し言い足りないことがあれば、適宜意見交換をしていただきた いと思います。 ○佐川科長(三重大学医学部附属病院)   先ほど岡山の平松先生は、医師の手当をいろいろ付けて確保したとおっしゃっていま したが、オープンシステムで登録した妊婦が出産したときと、それ以外の人が出産した ときとでは違いますか。オープンシステムに載った人に対応したら、大学病院の医師に 1万円付くとか、そういうのもあるのですか。 ○平松教授(岡山大学医学部)  そこのところは岡山はまだ解決していません。野田先生がハイリスクの妊婦管理料が 滋賀では一笑に付されているというので、岡山大学で1年半も科長会議などで私が言い まくって、やっと確保しました。  いま佐川先生が言われたところもしたいのですが、それは次のステップで、まだ岡山 では確保できていません。 ○佐川科長(三重大学医学部附属病院)  いまのシステムというのは、外からの登録医に対して、いかに経営を安定化させるか にはわりと配慮しているのですが、受入れ側の医師に対しては、あまり配慮していなく て、増えれば増えるほどしんどいというのが、いちばんの医局員の感想だったのです。 それに対して、皆さんはどのように対応するか、お聞きしたいと思います。  ○佐原室長(医療安全推進室)   大学の先生、いかがでしょうか。 ○野田教授(滋賀医科大学)   我々の所は症例数が少ないせいもあって、何もありません。ただ働くのみです。三重 は分娩のときにすごい手当が付くのではありませんか。 ○ 佐川科長(三重大学医学部附属病院)   うちは1万円と5,000円です。外の診療所の医師が一緒にお産をした場合は1万円で、 登録医が来ないで、普通のお産と同じように自分だけというか、院内の人だけの場合に は、あまりストレスがかからないので5,000円と値段が半分です。 ○ 野田教授(滋賀医科大学)   いま給与というか待遇の話が出ましたので、私の意見を申し上げたいと思います。滋 賀県でも、いろいろな所に集まるたびに、どうしたら産科医が増えるかの議論をさんざ んやっています。とりあえずは滋賀県下のいろいろな医療施設の理事長や病院長が私の 部屋へ来られますので、給与の点やいろいろ言うのです。ところが、現場の諸君に話を すると、産婦人科だけたくさん給料をもらった場合に、どうも連携プレーがやりにくく なったという面もあるので、「いいですよ」という人もあります。  それはそれで1つの意見だろうと思いますが、今の若い、これから産婦人科をやろう かと思っている諸君の関心事は、去年、長野県でセミナーがあったときに、これから産 婦人科で後期研修をしようかと考えている若いローテーターが100人近く集って議論し たのですが、いちばんの関心事は医療訴訟でした。その議論になったときに、最もホッ トな意見がいっぱい出て、みんなでさんざん議論しました。  2番目は、労働と待遇改善です。いろいろ考えて、各病院の院長をつかまえて、給料 を高くしてと、いくら言ってもしない。なぜしないのだろうといろいろ考えましたら、 中小病院の場合は、理事長や院長が、自分より一産婦人科部長の給料が高くなるのを無 意識に嫌がって、自分以下にする。もし関係者がおられましたら許してください。そう いう意見もあるのです。  しかし、いろいろな方に聞きましたら、これは伝聞なので確かなことはわからないの ですが、アメリカでも一時、小児科医がうんと減って困った時期があったそうです。解 決をどうしたかというと、給料をうんと高くしたら、アッという間に小児科医が増えた という歴史的事実があります。  そこで私のこの場での提案ですが、給与の改善をしたほうがいい。それも1件分娩が あったら1万円あげる、必死で重労働に従事したら、少し収入が増える、そんなシステ ムではなくて、有り体に言えば、画期的に上げたほうがいい。それも病院の収入の中か ら産婦人科医にたくさんあげるのではなく、国辺りが「産科医の待遇を改善するのだ」 と宣言して一律ボンと給料を上げてしまう。そうしたら現場の人は「国がくれたのだか ら、僕は病院の中では関係ないのだけれども、国がくれちゃった」みたいなことで、そ ういうPR効果もあって、明らかに給料はいいのだという感じの目に見えるような形の 給料を上げるとか。もちろん産科医だけではなく、関係者全員ですが、そういうことを 考えないと増えないのではないかと思います。話ばかりで、いっぱい働かなければいけ ない。そして何かあったら、すぐ訴訟だとか、そんな気がしますが、画期的に上げると いう点はいかがでしょうか。しかも国が給与を出す、あるいは自治体と言っても、みん な疲弊していますから出るかどうか分からないので、格差ができてしまうのですが、平 松先生などはいかがですか。 ○ 平松教授(岡山大学医学部)  佐川先生が言われたように、我々も診療所の先生に対しては、だいぶ配慮してお金が 出るようにしたのですが、我々受入側のことは全然やっていません。岡山大学はそんな に増えていないのですが、そういうディスカッションをすれば、若いドクターや助産師 などは、あまり増えすぎたらしんどくなって、何のメリットもない。それを解消するた めにも地域の全部に広げるのも1つの案だと思い、そのようなことを県と一生懸命やろ うとしているわけです。  もう1つは、野田先生が言われるように、産婦人科、脳外科、外科などリスクの高い ことをやっている者に対しては、ポンと給料を上げてくれれば一番いいのです。今まで 産婦人科医はボランティア活動で、オンコールをしようが、当直でお産をしようが何の 手当もない病院が非常に多いのが現状です。当直でお産するというのは、労働基準法で はいわゆる当直業務ではないわけです。そのようなことを言い出せば、どこの病院も全 部潰れるだろうと思うのです。厚生労働省などもそういうところを指導して欲しいです。 我々は分娩1件したらどうのこうのではなく、労働基準法に基づいて当直業務以外の労 働をしたときには、それの対価を払ってくださいということを、いま病院長に言ってい ます。夜間のお産などは普通の当直業務ではないのです。産婦人科だけ上げろと言って も、絶対反対しますので、よその科とは違うというスタンスで私はだいぶ交渉していま す。  ○ 佐川科長(三重大学医学部附属病院)  給料の問題で一遍に上げるのは全体が増えて、効果がすごくあると思うのですが、実 際にそれは難しいと思うのは、同じ産婦人科でもお産をしている産婦人科と、していな い産婦人科があるわけです。いま日本で問題になっているのは、お産をしないで多胎を 作っている人たちがいるのが周産期に問題を起こしているわけですから、そういうこと になると、どこからどこまで線を引くのかが難しいのです。  具体的に三重県の例でいうと、某病院で産婦人科の医師を雇うのに5,000万円出して、 1年で5,000万円という額ではやっていけなくなったのです。次はどうしたかというと、 みんなが納得する方法は基準の額を出して、あとは分娩1件いくらという働いた額に応 じて出す。働かない人は文句を言えないわけですから、実際の分娩をして、それだけの 収入があって、そのうちの何割かをその人がいただくというのは、こういう資本主義社 会では何も矛盾していないのです。これは極端な例ですが、それに近い方法でとりあえ ずは産婦人科の診療に対する適正評価と学会も言っていますが、そういうことを勧めて いるわけです。  それをするためには、分娩料をある程度上げなければいけません。そこがネックにな っていて、公立病院では分娩料は議会がオーケーをしないと上げられない。それで結局 地方の公立病院からどんどん産婦人科がなくなっているという現実があると思います。 その辺をどうやって改善していくかは、厚生行政で少しできるのではないかと思います。 ○ 谷川原部長(仙台赤十字病院)  日赤は給与規定というのがあるものですから、例えば、医師不足で当直の先生を大学 などに頼みますと、資本主義の需要と供給のバランスで、外から来る先生には病院の中 でもたくさんお金を払えます。ところが、院内で働く我々は、給与規定にがんじがらめ になっていて、いくら事務長などに言っても、給料は上がらないのです。例えば、日赤 とか、全社連とか、労災の病院は、国の給与規定に準じています。それがずっと行き渡 っているので、いくら我々が末端から言っても、上からそれは駄目だということになっ てしまい、それを破ってもらうのは行政側で、もっと国が動いてくれないと我々の給与 は根本的には上がらないと思います。そこを何とかしていただきたいのです。  ハイリスクの問題にしても、いろいろ院長とも事務長とも交渉はするのですが、日赤 の規定がある。産婦人科だけが闇給与になるとか、そのような話ばかりが出てきてしま うのです。その辺の認識をもっと変えていただけるような何らかの通達などが必要では ないかと思っています。 ○佐原室長(医療安全推進室)   給与のことでいかがですか。 ○ 中林院長(愛育病院)   たぶんこんな話になるのではないかと思って、私は1枚資料を配らせていただきまし た。それは産婦人科の医療提供体制委員長の海野先生が中心となってやっている日産婦 学会と厚労科研の班会議の内容を理解するため、舛添大臣が長野へ見学に行かれ、「産科 医療が思っていた以上にひどい、これは抜本的に改革をしなければいけない」というこ とで、我々のほうにどんな改革がいいかということの問い合わせがありました。  大臣が「これは是非やろう」と言ったのが上のほうに書いてあります。それは訴訟リ スクをノーフォルトの新生児だけではなく、妊産婦死亡にも拡大しようとか、院内での メディエーターの配置とか病院への勤務医のインセンティブは、今度はハイリスク分娩 管理料のほかに、ハイリスク妊娠管理料がかなりの期間増えますので、ハイリスク分娩 管理料も今までの2倍ぐらいになろうかと思いますが、そういうものを産科医の手当に 充てることを考えるとのことでした。  これに関しては、私どもの病院では、基本給はとても安いのですが、基本給の人たち が夜の当直は全く寝ないで勤務しています。そうすると、これは当直料の1日2万円で はなく、その人の基本給の準夜料と深夜料を加えますと、6万円ぐらいになります。と いうことで、若い人に1晩6万円支給する。これは認めないと、労働基準法違反になる のではないかと思っています。病院の理事長に認めてもらいました。  そうしたら、若い人はかなりたくさん当直をしますので、手取りで80万円とか、100 万円とか部長を越えるぐらいになり、今度は部長がオンコールで年中呼ばれているのに、 「私の給料がちっとも上がらないのはけしからん」と言うのです。拘束をしておきなが ら、お金を払わないのは、大変けしからん話だということで、現在の医療においても、 まず認められるべきものは認めなければいけないというのが1つです。  もう1つは、1つ分娩があったから云々より、勤務として認めるほうがよりいいので はないかと思います。もう1つは、先ほど野田先生のお話にもあったように、現在の市 場原理主義からいえば、ハイリスク妊婦を扱うドクターは、ハイリターンでなければや る人がいないわけですから、ハイリターンがどのぐらいがいいかは今後検討していただ きたい。東京都の石原知事に日産婦学会の理事長がお願いしました。都の病院ではどん どん産婦人科がやめています。これは都の病院が赤字だから産婦人科が自費で稼いで、 ほかの赤字を埋めろということで、同じ給料で少ない人数でどんどん稼がされているの です。これはほかの県立病院も同じだろうと思います。そうすると医師は立ち去り、辞 めていきました。都立病院の産科医が辞めていって都民の皆さんが困って、それでは都 立病院の医長、部長の給料を年間300万円とか、200万円とか基本的に上げましょうと いうことになりました。これに関しては全国の自治体が東京都に倣ってくれということ を、学会からつい数日前に出したはずです。全国の自治体病院や公立の病院はそういっ たことを考えないと、県立病院に医師がいなくなりかねないので、それを倣ってくれと いうのを出したわけです。そんなことをやっていかないと産科医の給料の問題は解決し ないし、若い人が夢を持って、「産婦人科の医師になって、きついけれどもリッチになろ う」という人が増えてこないだろうという気がします。  団塊の世代のように滅私奉公だけして、それを後輩にやれと言っても、誰も付いてこ ないというのが、現状だろうと思っています。責任は私の世代を含めてかなりあるので はないかと思っています。  女性医師の問題はこの通りです。また妊婦の病院へのアクセスの問題も全く医師がい ない所に医師を出すよりは、そこに助産師外来など設立して遠隔医療をやったほうが、 経費的にもよいのではいかと思っています。  下の1〜5に関しては、中核病院の値段が安いから患者が集まるというのはよろしく ないので、中核病院はインテンシブなケアをして人件費をかけているので、中核病院は ハイリスク、診療所はローリスクという役割分担をしないと、オールジャパンで今の日 本全国100万人の分娩をたかだか5,000人か6,000人の産科医でやるためには1人200 ぐらい分娩を見なければいけないので、それには手分けをしないと駄目だろうと思いま す。中核病院はハイリスク分娩にして、彼らはがんをやったり不妊症をやったり、すご く働いているのです。その上に年間150とか200の分娩を扱ったら、給料の何倍も働い ているわけで辞めたくなるのは当然で、過重労働を避けなければいけない、そのために 中核病院が赤字にならないようにするためには、ある程度分娩費を上げていかないと、 どうしても駄目なのです。  では、ハイリスクで、中核病院で分娩したがお金のない人はどうするのかというと、 そういう人たちには国が、いまの35万円以上を、領収証を持ってくれば50万円でも 60万円でも支払う。所得の少ない人はそういったことをしてあげないと不平等になるの ではないかと思います。  産科医がこれから増えるはずがありませんので、助産師を中心とした院内助産制度や バースセンターを立ち上げるのですが、これを言うと、産科医は「またレベルを下げる のか」と言いますので、私は助産師の方々にはサーティファイド・ミドワイフシステム というか、5年ぐらい産科の医師と周産期管理をしっかりと行った人が、それぞれの施 設や学会でサーティファイして、その方々が助産師外来やバースセンターで、ローリス クを主体的にやるということを立ち上げてくれと依頼しています。いまの時期だったら、 社会がそういうことを応援するのではないか。そうでないと彼女たちも我々と同じく絶 滅の品種なのです。。しかし、自分自身でサーティファイした質の良い助産師で、良い周 産期医療をやっていけば、必ず良くなります。  そのときに会陰の保護が上手か下手かより、必要なときに産科医に渡す技術のある人 が助産師に求められるのです。ですから、助産師実習でも10例の経膣分娩ということ を言っていますが、私は10例中、3例が帝王切開になっている最近では、3割は帝王切 開のために産科医に渡すことを実習していない助産師は、本来は適性ではないのではな いと思っています。  そのようなことを医師と助産師で協力すれば、いま2万5,000人ぐらいいる助産師も、 これからまた助産師教育を徹底すれば、医師よりは早く充足していきますので、そうい うことをオールジャパンでやって、厚生労働大臣がかなり力を入れてくれれば、いまの 産科危機は乗り切れるのではないかと思います。そこにオープンやセミオープンが病診 連携として「顔の見える周産期医療」をやることによって、棲み分けができていくだろ うと考えます。オープン、セミオープンに関係のない現在のいろいろなトラブルまで持 っていってもしょうがないので、全体のトラブルを解決しながら、その中でオープン、 セミオープンがどういう役割をしていくかということを進めていくのが基本ではないか と考えています。このようなものを配らせていただきました。  平松先生もご存じの通り、班会議と一緒に日産婦学会でのまとめとして、今そういう 方向になりつつあるということで、行政もたぶんそういう方向に進んでいるのだろうと 思っています。 ○喜多講師(滋賀医科大学)   中林先生に伺います。私は医師ですが、助産師を有効利用ということですが、そこで また問題が生じてくるのは、我々は医療訴訟のリスクです。そのような補償に関しても、 かなり考えて行かなければならないのではないかと思います。 ○中林院長(愛育病院)   日本助産師会でも既に1億円までの、ほぼ開業医と同じような保険を作って、皆さん 入っています。それには必ず入らないと医師とは一緒にできないのです。ですから、助 産師が保険に入っていないと我々が被らなければいけないので、契約を結ぶのであれば、 必ず助産師がその保険に入っていることということになっています。日本助産師会でも、 それを徹底していま進めています。 ○喜多講師(滋賀医科大学)  わかりました。 ○ 佐原室長(医療安全推進室)  いま中林先生に教えていただいたように、産科医療というのは非常に危機的な状況で、 いろいろな観点から検討していかなければいけないと思っています。先ほどからご指摘 いただいているような給与の問題も、従前の考え方ではなかなか難しいのではないかと、 私などは個人的に思ってしまいます。しかし、大臣も、そういう壁を破ってやっていけ ということですので、真剣に考えていきたいと思っています。  そんな中で、例えば訴訟のリスクということでも、無過失補償制度とか、いろいろな ことをやっています。そのうちの1つとしてオープン病院化が、どのぐらい全体の問題 に役に立つのかを、この連絡会議で是非ご議論いただきたいところかと思っています。 ですから、別に給与のことを話さないでくださいということではないのですが、折角の 機会ですので、幅広くご議論いただくのもいいと思います。あとは産科のオープン病院 化をどのようにしていったらいいのかをご発言いただければと思います。 ○ 中林院長(愛育病院)   オープン病院化に関しては、医療安全が基本だと思います。日本産婦人科医会の医療 事故対策委員長を実際にやってみますと、事故の多くが卒業してから30年以上前に教 育を受けて、その後、ずっと1人で開業している方に多いのです。リピーターと言われ る人は大抵そういう方だったので、医師、助産師、周産期医療にかかわる人は、周産期 医療がどんどん進んでいますので、1人でやっていると遅れてしまうのです。腕は非常 に皆さんいいのです。例えば、いま骨盤位は大抵の所は帝王切開をしていますが、骨盤 位を100例やって、2、3例死亡すると事故になってしまうので、医師は「このぐらい は俺はできよ」ということで事故になっているのです。  ところが、若い先生方は、最近はみんな帝王切開にしているということで、考え方が 違っているので、腕は勤務医よりずっといい人たちが開業しているのですが、安全医療 というと、今は1,000人に1人死んでもいけない時代に、100人に1人ぐらいはいいと いう医療をやっているから事故になっているわけです。必ず周産期センターと年中連携 しながら見学でも、当直でも、外来でも、患者を送るのでも、連携していくことが、長 期的に卒後研修、生涯研修がされることが、オープンシステムのメリットではないかと 私は考えています。  実は医療安全課の仕事として、このオープンシステムが始まったので、医師不足に対 してどうこうということでやったわけではなく、事故を起こす方々を、できるだけ生涯 研修しようということから始まったのです。たまたま医師が少なくなったときには、お 互いに助け合うと、よりいいですよという副効果が出てきたので、本来の効果は医療安 全で、それも数年で効果が上がるものではなくて、10年、20年続けることによって、 医療訴訟を起こす人を減らそうという効果だと思います。  オープンシステムに関しては、アメリカ型ですから、日本でどこまで進むかは別とし て、若い人が都会に出て、そういうことをやれば、かなりリッチになれて、軽装備で分 娩がやれるということで、将来、そういうことを夢見て産科医になってくれればいいな という提言なのです。世界的に見れば、多くの国でやられていることですから、日本の 特殊性はあっても、何らかの形で進んでいくだろうと思います。日本では、今はセミオ ープンシステムが主流になって、だんだんセミオープンシステムとオープンシステムと が混じった形で形成されていくのかと考えております。 ○佐原室長(医療安全推進室)   ほかに何かないでしょうか。 ○久米主査(医療安全推進室)  貴重なご意見、ご報告をありがとうございます。先ほど助産所との話も出ましたので、 滋賀県に伺いたいのですが、助産所との登録が5カ所あるという報告をいただいていま す。、実際に登録をして連携をされている中でのメリットとか、今後の方向性などについ て教えていただけないでしょうか。 ○ 野田教授(滋賀医科大学)  確かに助産師で、いわゆるオープン助産師として名前が挙がっている方がおられ、う まくこの施設を利用してくれるかなと期待していたのですが、実際には誰も症例を送っ てきません。病棟の助産師のスタッフなどと議論していますと、開業している助産師は それなりの経験と自信と患者との濃密な人間関係を持っておられ、そういうものがポン とうちの分娩室に来たときに、うちのスタッフの助産師がどう対応したらいいかわから なくて、当初から実際に来られたらどうしたら良いかみたいな話がありましたので、う ちのシステムでは最後の責任者は診療科長の私ということになっていますので、難しい 症例になったら、出ていって、ああしよう、こうしようときちんとやりますが、それま での経緯の中では、現場の話し合いになるかもしれないのです。しかし、幸か不幸か、 いまのところはゼロですので、そういう現実かなと考えています。今後は増えてくるか もしれません。  ついでに中林先生に伺いたいのですが、私はこの前、岡村先生にお手紙を差し上げて、 助産師外来をするとか、院内助産師をするという議論になったときに、当然助産師に対 するそれなりの再教育というか、我々と一緒に働くための共通の認識を増やそうという ことで、再教育あるいは技術修得が必要だろう。「そのコースを考えておられますか」と か、「先生方を中心に何か全国的にある程度の水準で、こんなのはどうですか、案はあり ますか」とお手紙を差し上げたのですが、どうですか。 ○ 中林院長(愛育病院)   岡村班に、分担研究者で山梨大学の遠藤班というのがあり、看護大学の教授で助産師 の遠藤トシ子先生がおられます。彼女は日本看護協会の職能理事でいらっしゃいます。 彼女を中心に私もサポート役で入っています。院内助産、助産師外来についてはこれと これとこれはやらなければいけない、そしてそれができているかどうかを自己評価する ようなシステムを作って、いまみんなで検討して、ほぼ3月中に完成して報告書にする 予定です。  これは助産師外来のための自己評価項目という名前で、それがある一定以上できるよ うになるかどうかだったのですが、実際にやってみますと、10いくつの病院の助産師外 来で、ほとんどの人が3年以上の経験でやっていました。やってから1年ぐらい経つと、 自己評価が非常に上がることがわかったのです。助産師にとっても3年以上経って、分 娩を200近くとっていましたが、ある程度分娩をとった人たちが、1人で助産師外来を やって、そこでいろいろ経験しながら、自己評価としても非常に上がってきます。平均 して1週間に1回ぐらいの単位を持っているようですが、そのぐらいで半年から1年経 つと、大変高い評価が出るのです。我々医師も、最初、外来というのは妊婦外来からや らされた覚えがあります。わからないと一生懸命本を読んだりして患者に答えていたと いうことから見ると、助産師外来もやっていく過程で一人前になっていくという感じは します。 ○ 佐川科長(三重大学医学部附属病院)  いまの助産師外来と助産師のオープンシステムとはちょっと違うと思います。助産師 外来というのができるのは、先生の所のように助産師が50人とか、100人とかいる所 で、都会はできますが、地方の施設ではそんなに助産師はおらず、多くても20人とか、 30人で、岡山などでも30人ぐらいしかいないと思います。ですから、そういう所では 助産師外来とか、院内助産所はやりにくいということで、先ず助産師の数を増やす必要 がありますので、助産師の教育をいま進めていただいています。  三重県の場合に問題になったのは、既に看護師になっている人を1年の教育で助産師 に養成すれば早くできるだろうと考えるのですが、養成コースの教官(教務主任)の資 格が非常に厳しくて、それに該当する人が、三重県の周産期教育がこの10年間非常に おざなりにしていたという付けがきていて、教官をできる人がいないのです。滋賀県も 始めますが、全国で助産師養成所をみんがつくり出すと、そういう人が引っ張りだこに なって、結局適当な資格があって、しかも働ける人がいないということが起こっていま す。  助産師の実習10例が枷になって、既にある助産師養成コースが5人とか、10人ぐら いしか養成できない。実習する場所がないからとれないというわけです。医師などの場 合だったら、医師免許を取ってから研修しているわけで、助産師だけが学生の間に10 例取らないと試験が受けられないということを改善していけば、例えば卒業してから1 年間研修して、誰かの指導でやるのでよければ、現在ある助産師養成コースでもっとた くさんできるわけです。厚生労働省としては、そういうことに関しては検討できないの でしょうか。10例でなければいけないという根拠はどうしてそうなのでしょうか。 ○野田教授(滋賀医科大学)   全く同じ意見で、そこがネックになっているのです。 ○佐原室長(医療安全推進室)  私はなぜ10例でなければいけないのかというのは存じ上げてないのですが、そうい うご指摘もあれば、是非報告書というか、各地域から国への提言の中に書いておいてい ただければ、我々が次のことを考えていく際に、リソースとして活用させていただきま す。 ○ 中林院長(愛育病院)   実はそれに関して、まさに先生のご指摘どおりで、海野班でこれ以上、産科医が増え ないから、助産師教育が大切だということになりました。ところが、我々はようやく定 時制の助産師ということで、看護科の許可を得たわけですが、野田先生、その他、石渡 先生とか、皆さんにご協力いただいているのですが、いちばん苦労するのは教官です。 教官も厚生労働省の1年間の研修を受けたかどうかとか、すごく厳しくてなかなかいま せん。  そしてまた看護大学を出て、資格のある人は大学へ取られてしまっているのです。と ころが、大学は10例の分娩介助を取ろうとすると、教官はいるのですが、実習場所が ないから駄目だということで、つい1週間ほど前に、海野班の中の中林グループで、助 産師会のオピニヨンリーダーの方々と私、海野先生、杉本先生など助産師教育に興味を 持った方々が会合をしたところ、10例に本当に意味があるのかどうかを理論的に検討し たのは山梨の遠藤先生が、大体5〜7例で、それ以降は学生の間でやっても、あまり伸 びない。むしろ現在、看護科がやっている卒後3カ月ぐらい、1人教員を派遣して、そ こでやったほうが助産師としての自覚を持ってやるせいか、非常に伸びが早いというこ とで、特に1年間を終わると、後輩が入っていることもあるのでしょうか。ようやく一 人前になる感じです。  ということから、医師もそのようにしていますが、助産師の免状は妊婦にあまり迷惑 をかけないでやるためには、バーチャルリアリティや模型とか、見学などなど、もう少 し教育の仕方があるのではないか。その努力をしないで、患者を10例ただ取れという のは50年前から決まっていたそうですけれども、それはいまの時代、患者のインフォ ームド・コンセント、その他のことからいっても取りづらいし、ニアミスも結構あるの だそうです。ニアミスがあったときに、助産師免状を持っていればまだ許されるけれど も、助産師の免状がない場合、大学の学生で、看護師免許も持っていなくて高校卒業の 免状だけなのです。  そうすると本人も非常に傷付いてしまうので、教官たちはできれば看護師免許を取る か、実施をする前に助産師の免状を取らせてほしい。そうすれば、大学ではいまの2倍 ぐらいの教育をできますと言うのです。それについてはいろいろな所から、急にはでき ない。それをすると開業の産婦人科医の所に助産師がいなくなるかもしれない。我々が 卒業必須化を2年間やったために、医師の世界が大混乱になったように、助産師の世界 も急にやると大混乱になる。そのために、先生方等で開業の助産師を養成するような所 をとにかく立ち上げてくれということでした。土台をしっかりしないで、いきなり大学 教育に全部行ってしまうと、開業の先生がなおさら困るのではないかということもあり ます。  急には行けないけれども、方向性としては佐川先生がおっしゃった方向に、この数年 間では行ったほうがいいのではないか、という会合をつい最近持ちました。この1年間 もう少し検討しましょうということになりました。  ただ、助産師も、いきなり10例を5例にしろとか、卒業後の実習に全部直せと言わ れても、バックグラウンドもそれぞれいろいろあるので、それはバックグラウンドによ って教育を変えるということも考えていいのかという意見も出ていたということです。 ○ 平松教授(岡山大学医学部)  視点を変えて質問させていただきます。これをするために、いま助産師のことが問題 になっていますけれども、医師を増やさないと地方ではこのオープンシステムをしよう と思ってもなかなか広げられないです。そのようなことで、医療安全推進室から、この 事業を終わって、どのような提言を国とかいろいろな所へしていただけるのかというこ と。まず、その点について何かお考えはありますか。 ○ 佐原室長(医療安全推進室)  我々としては、これまでもともと医療安全のことでやってきました。3年間やってい ただく中で、各地域では皆さんそれぞれ成果はあったと感じているのかどうかというこ とをまず確認したいと思っています。こういうことは良いということであって、もっと どんどん進めていくべきだということなのか、ある程度限界があるということなのか。  セミオープンとオープンとありますけれども、実際に皆さんがやられているのはセミ オープンで、アメリカのような完全オープンのシステムをやっている所はほとんどない と思います。いわゆるオープン病院化を進めていくのはあまり現実的な選択ではなくて、 むしろセミオープンを進めていくのがいいのかと我々としては考えています。  そういうところの認識はどうなのか、ということをもうちょっとお聞きした上でこの 資料をまとめていただきましたら、我々として次に何か提言をまとめるとか、具体的な ところはいまのところ考えていませんが、その次の年の予算要求とか、いろいろなこと の中でどうしていったらいいかと考えていきたいと思います。 ○ 平松教授(岡山大学医学部)   少なくともオープンシステムはいいことだという認識はあり、岡山県の行政も一緒に、 これから県独自でも予算をどうにかして取ることに努力し、広げていこうとしています。 我々の所でも、近隣では広島大学、徳島大学、島根県、山口大学といろいろな所。それ から、岡山はAMDAという組織があり国際貢献をやっていますけれども、そこではザ ンビアから来た医療関係者もおり、そういうふうな所ででもディスカッションしました し、いろいろな所でそういう流れはあります。  いま岡山県でこういう取り組みに参加させていただいて、やっと種を蒔いて、芽が出 てきたところです。あとは、そこの地域と県だけで独自にやりなさいというのではなく、 やはり国もずっと続けて推進していくようなメッセージを出してくれないと、なかなか 広がっていかないと思うのです。その辺についてお考えがあればお聞きしたいし、是非 ともやっていただきたいと思うのです。 ○佐原室長(医療安全推進室)   我々として、オープン病院化というのは重要なものではないかと思っています。ただ、 どのようにやっていったらいいのか、どういうところに問題があるのか、というのをき ちんと抽出した上で、ただ、いまの予算でポンと補助金があってお任せしますと言った ままでいいのか、もう少しいろいろな工夫をしながらやっていったほうがいいのかとい うことは考えていかないといけないと思います。そういうことを考える上でも、セミオ ープンというのはどうやっていったらいいのか、どういうところに課題があるのか、と いうことをここで十分ご議論いただかないと、我々としてはちょっとやりにくいかと思 っています。 ○ 佐川科長(三重大学医学部附属病院)   そのことについてですが、先ほどの中林先生のご発表で、中林先生の周りでは診療所 のお産がほとんどなくなったとおっしゃいました。そういう所はオープンシステムが可 能です。三重県の場合は、まだ7割が診療所でお産しています。ほかの所でも診療所の ほうが多い所が5割ぐらいあります。  いまから10年間で産婦人科の医師がどうなるか、20年後にどうなるかと考えた場合 に、各大学で医学部入学定員を10人とか5人とか増やしていますけれども、その人た ちのうち1割が産婦人科になったとしても、これから先、産婦人科の医師にはよほど給 料を上げるとかしない限り増えるということはないわけで、このままであればどんどん 減っていくと思います。10年ぐらいは減って、10年後には何割か減るということにな れば、いくら頑張っても診療所もやっていけなくなるし、高齢化します。  そうすると、オープンシステムのような形で、診療所の先生がハイリスクでも、病院 でお産するとか、診療所と診療所、あるいは病院と病院同士の医師が行き来できるよう なシステムを作っていかないと地域は成り立たないです。東京とか都会はある程度成り 立つかもしれませんけれども、地方では医療過疎は必ず起こってきます。  そのようになる前に対策をやろうと思えば、オープンシステムというのを、いまやっ ている岡山県とか滋賀県も、何箇所かにオープン病院をつくるということを計画されて いますし、自治体もそれを支援すると言っています。そういう所を核にして、例えばそ の地域のハイリスクを全部登録制にする、という形がカバーできるようなシステムを作 るということで、オープンシステムをいかに地方、地方で機能させるかということを、 単に1つのオープンシステム・モデル事業とするのではなくて、それをどのようにその 地域に広げるか、利用するかということを、医療安全という面ではプランとしてできる のではないかと思います。その辺りについて、中林先生から補足していただけますか。 ○ 中林院長(愛育病院)   これからの産科医療は、先生が言ったようにおそらく診療所で1人でやっている医師 のタイプは、10年後には高齢化していきます。いまは北海道、東北、関東ぐらいはそう いう方々が少なくなって、宮城県のように分娩をする施設はいくつかオープン病院に限 るということになってきています。  ところが、関西から四国、九州、それから日本海側はまだ開業医が多くて、開業医の お産をなにも県立病院が取らないでくれ、そうしないと自分たちの収入がなくなってし まうではないか、というぐらい医師の力はあります。  佐川先生の所の三重はとても少ないのですけれども、関西地区は、一般的には診療所 の産科医は多いものですから、全日本で声として東北のようなことをやらなければいけ ないという声を出してみると、意外と九州などから、そんなことを言ったら開業医が潰 れて困ってしまう、自分は1億円借金しているのにどうしてくれるのだ、という話が現 実には出てきています。あまり基幹病院が一生懸命正常分娩をやってくれるな、という 話になってしまうのです。  ところが、いまはそう言っていますけれども、東京の現実とか、北海道、東北の現実 を見れば、10年後はそういう方々はほとんど分娩の現場から引退して、新たに1人で開 業している所がなくなるので、そういうときに基幹病院に医師がいなかったら、その地 方の周産期医療は壊滅します。それをどうしたらいいのだ、というのが平松先生のご意 見や、野田先生のご意見だと思うのです。  そういうことを、いまからちゃんと考えてくださいというメッセージだと私は思って いるので、いま国であまり大きな声でバッと言うと、北は賛成だけれども、南は反対だ とか、そういう声が出ないかということを、行政官としては心配するのではないかと思 います。 ○ 谷川原部長(仙台赤十字病院)   仙台の現状ですが、一応仙台市内は6対4ぐらいで病院のほうがたくさんお産を扱 っています。仙台市以外の所では4対6か3対7ぐらいで開業の先生が多く取っていま す。ですから、地域によってかなり考え方が変わっています。  その仙台市内が、本来分娩施設が減ってきたことで集約された病院の過重労働を減ら そうということでセミオープンを始めたのですが、それ以上にさらに分娩施設が減って きてしまっていて、6つの病院の分娩室がここ3年間ぐらいで、各施設2割ぐらいお産 が増えていて、安全にお産ができる限界が近づいてきてしまっています。昨年も、年間 300近くお産をやっている施設の先生が、不幸にも病気で2人亡くなって、突然基幹病 院のお産が急に増えたりしています。  開業の先生も高齢化が進んでいますから、5年先、10年先に、いまの6つの施設だけ ではたぶんカバーできなくなってしまいます。中林先生がおっしゃったような、院内助 産院ですか、バースセンターみたいな発想の転換をしていかないと、セミオープンだけ ではたぶん守りきれないような状況になってしまうのではないかと思っています。 ○佐原室長(医療安全推進室)   その場合、セミオープンではなくて、オープンが進むということはあるのですか。つ まり、だんだん自分の所ではお産はやらない、婦人科はやっていく。だから、分娩のと きには病院へ行って一緒にお産をするというのは、いまはほとんどできていないと思う のですが、進んでいく可能性というのはあるのでしょうか。 ○谷川原部長(仙台赤十字病院)  開業されている先生、セミオープンに参加している先生方にアンケートとか話を伺い ますと、皆さんお産で起きたくない。夜突然起こされるのはもういやだ、と疲れ果てて 開業している方がほとんどなのです。そういう方をまた引っ張ってくるというのは非常 に大変ですし、5年、10年離れていると、急な帝王切開になったときに自分がどう対応 できるかどうかとか、そういう技術的な不安もあるということです。たまにオープンで パッと病院に来てお産を取る。何もなければそれでいいのでしょうけれども、何かなっ たときの緊急的にカイザをしなければいけないといったときの対応が自分でできるかど うかということに非常に不安を持っているというのが現状だと思います。 ○ 中林院長(愛育病院)   いまの日本の産科医の現状というのは人生すごろくではないですけれども、大体大学 に5、6年いて、それから大きな病院に10年ぐらいいて、それから50歳ぐらいになっ てから自分で開業し、力のある人は分娩を取り扱うけれども、さんざん苦労した人は、 そろそろここで外来だけやって楽をしたいというパターンで年齢ごとに働き方が違いま す。大きな病院のごく一部の先生方はそのまま苦労しながら残っているというのが日本 の現状だろうと思うのです。  その発想に関しては、オープンということができたら、若いときから開業して、自分 で分娩をやろうという世代が出るまでは変わらないのではないかと思います。我々がい くら言っても、これまでさんざん分娩で苦労したのだから分娩から解き放たれたいとい う人が多いのです。たまにお手伝いするぐらいはいいけれどもというぐらいです。私ど もも、15の診療所の先生に、外来とか当直をやってもらっていますけれども、オープン で来る人は本当に1人だけしかいないというのが、いままでの現状からは常識的で、そ の発想を変えていくものを提案しないと変わっていかないのではないかと思います。い まのままでは、平松先生がおっしゃったように、どうやら絶滅に瀕してしまう危険があ ると思います。 ○ 上田部長(県立広島病院)   いまのお話なのですけれども、私たちの病院は外来も特に担当医、主治医というの は全く決めていなくて一般の場合には妊婦健診をしています。分娩は当直の医師が、外 来は誰が診ていたかに関わらず担当するというシステムになっています。  そのメリットとして、外来で主治医を決めてしまうと、自分が当直でないときでも、 その患者が分娩になると出ないといけない。それさえなければ、当直が多いと言っても、 5日に1日当直すれば、残りの4日はまずほとんど呼ばれないというメリットがあるわ けです。若い方はそちらのほうを選ばれるわけです。  もしオープンにすると、月に5人そういう患者がいても10人いても、いつ病院に駆 けつけなければいけないという意味での拘束感は同じなのです。だから、オープンを選 ぶ先生というのはなかなかいないだろうと思うのです。  先ほどおっしゃったように、産科を廃止し、婦人科だけの病院というのもいくつかあ りまして、卒業して10年、15年ぐらいの中堅の医師が婦人科だけやっています。分娩 から離れて3年、4年経つともう戻れない、もう怖いと言っています。日本でオープン というのは難しいと思うし、うまくいってもおそらくその病院に勤務していた医師が近 くで開業して、最初は患者も少ないしというのだけれども、5年ぐらいとか時間限定み たいになってしまうのではないか。本当の意味で根付くのは難しいのではないかと思っ ております。 ○ 中林院長(愛育病院)   これはお金の話に戻ってしまって恐縮なのですが、いま当院に来ているオープンド クターは、21万円をドクターフィーとして妊婦からいただいています。愛育病院では、 分娩料は60万円とか70万円ですから、それプラス20万円ぐらいです。  ところが、海外ではその保険は全額保険会社から出ます。そのオープンドクターの場 合は、特に大使館とかの外国人が多いのですけれども、外国人の間では、国へ帰ってお 産するよりは、こちらでお産をしてから国に帰ったほうがいいというのです。そのほう が安いからです、それから安全だからです。周産期医療のレベルとして日本は最高に安 全だし、ちゃんとした決まったドクターがいれば、マイドクターとして信頼関係も築け て、患者としては理想的なお産ができます。  しかし、それには先生が言われたように、5万円や10万円では来てもそんなにメリッ トがない。やはり1人20万円ぐらいいただかないと、それだけ拘束されるのですから やむを得ない。1年間にせいぜい100件ぐらいが、そういうことのできる限界だという ことです。そのようにやっているのが、海外では一般的だということなのです。そのよ うな経済的メリットなしに、数万円のドクターフィーでは若い人がやるはずはないと思 います。 ○ 野田教授(滋賀医科大学)  セミオープンのシステムが定着するか、今後発展していくかどうかの1つの要因は、 地域の方、一般的には患者がどれだけ分娩に対する安全を要求するかという意識の問題 でもあると思います。例えば、産婦人科領域では、大きな子宮筋腫があって、開腹手術 をして子宮を取りますよという話をするときは、根掘り葉掘り随分説明をします。こち らは、何も起こらないと内心は思っているのだけれども、傷の大きさから始まって、副 作用はどんなのがあるか、副損傷は術中にどんなことが起こるか、あなたは何例そうい う手術をしましたかから始まっていっぱい聞かれて、最後はとうとうそれでは手術を受 けますという決心をするわけです。  ところが妊娠に関しては、成育医療センターの久保先生がまとめて発表されたデータ がありますけれども、およそのことを言うと230〜250例の分娩のうち1例は、当然死 んでもおかしくないような事態が発生しているという事実があります。それを婦人科手 術に、例えば子宮筋腫を取るとか、子宮がんの手術をするのに250人に1人が当院では 死ぬか、あるいは死んでもおかしくないような事態が発生しておりますみたいなことを 患者に言ったら絶対に手術しないです、よそへ行こうとします。  ところが分娩に関しては、そういう事実があるにもかかわらず、妊娠したら、おめで とうございます、ここで産みますぐらいの言葉のやり取りで決まってしまいます。もし、 それが1人の先生がやっている所だったら、いまどきだったら明らかにリスクはあるの だから、私だったらこういう言い方になる。私はここで1人でやっています。助産師1 人で、夜中にやったら分娩に立ち合います。無事に生まれたらそれでいいけれども、と きには出血が止まらないみたいなことがあります。ジャージャー出血してきて、それは なんじゃいということになります。もちろん万全の処置を考えて、看護師も呼び出して いろいろしますけれども、出血が止まるか止まらないかわからない。裂けているところ がわかってうまく縫えば止まるけれども、とうとうこれは駄目だとなったら、ある瞬間 私はたぶん輸血と叫ぶか救急車と叫ぶかどっちかです。  輸血といった場合には、血液センターから血液でクロスマージしたらどうのこうの。 輸血を開始するまでに1時間ぐらいは十分かかってしまうので、たぶん救急車と叫んで 滋賀医大へ行くことになります。そのときに、着いたらもちろん万全の対応で素早くい ろいろやってくれるのだけれども、結果としてあなたが助かるかどうかわかりません。 そういうものなのです、ぐらいのことを私は言おうかと思っています。  いまどき、妊娠・分娩を引き受けるということはそういうことではないか。私の持っ ている医療機関は立派なもので、絨毯も敷いてあるし、ご飯もおいしいけれどもそんな ものと。つまり、医療の限界というのはあるのですよ、みたいなことを私はいつか言い たくなる、というようなことを周りの人に言っていたら、先生それでは誰も患者は来ま せんということになってしまうのです。  その辺のところが、いまの産科医療の抱えている重大な陰の暗い部分と、それが表に 出てこないでリスクを抱えたまま、その差に産科医が疲弊していく、危険なことをいっ ぱいしているから、いっぱい心配しながらやっているのだけれども患者はわからない。 それで10年もやったらガックリ疲れてしまう。そういうことをもっと表に出す。  もし滋賀県の住民が、分娩のときに安全なほうがいいとみんながある程度思い出した ら、そんな議論が開業の先生や患者の間で交わされるようになる。そうすると、人によ っては、リスクが4点、5点だから私は向こうへ行きます。お産のときだけでもいいか ら滋賀医大へ行きますみたいな人が増えてきたら、それが滋賀県に関しては過疎地域で 大変距離も遠いのだけれども、セミオープンがボチボチ生き長らえて、少数例でもいい から役に立てるような下地ができるのではないかと思っています。この辺はどうなので しょうか、開業の先生たちはそういうややっこしい話をおっしゃっているのでしょうか。  私どもの医師で子供を2人産んだ人がいて、私どもの関係している医局員が勤めてい た病院で開業医なのだけれどもお産したときに、そのときにあなたはどう思いましたか と言ったら、ここは素晴らしい病院で、目の前にいる先生が何でもしてくれて、絶対安 全だとはなからそう思っていましたと、彼女は見たところで信用していたと思うのです。 そういうややっこしい議論は一切しなかったということです。  私の隣の部屋の隣にいていろいろ議論していると、お産というのは大変なのですね、 ということを後々言うわけです。その辺のギャップがあるのですけれどもこの辺はどう なのでしょうか。リスク評価の表を私が掲げて、みんなそのうちに議論が高くなってく ることを期待しながら、市民講座でも決して安全ではないのですみたいな話を、久保先 生をお招きして講演してもらったりいろいろしているのですが、あまり怖いことは言わ ないほうがいいのであって、いまみたいな状況が今後も続くのでしょうか。 ○佐原室長(医療安全推進室)  宮城県で、セミオープンについて市民の理解の認識度がアップしてきたということを おっしゃっていたと思うのですが、いまのご発言との関連でどのような感じでしょうか。 どのように説明されているかとか。 ○ 平松教授(岡山大学医学部)   岡山での問題点としては、今度の課題のところに挙げますが両方が悪いのです。野 田先生とか、ここにいる先生がみんなで分担してお産は危ないということ、いままで我々 が怠って話してこなかったことを、我々も市民公開講座などでここ数年しょっちゅうし ゃべっています。  もう1つは、いま岡山県でも周産期死亡は全国でもいいのですけれども、その中でも 診療所で亡くなっているのか、周産期センターで亡くなっているのか、それを分析して います。開業の先生も患者のリスク評価というのはまだまだやっていないのです。その ようなことを一生懸命やって、1例、危ない目に遭った人はよく利用してくれます。だ から、一般市民、妊婦に対する啓発も大切ですし、参加するドクターに対しても、こん な時代になったのですからリスクということをもっともっと認識してもらわなければい けないのです。それが、これをうまく定着させていくために、岡山県においても1つの 大きな今度の課題だと思っています。 ○谷川原部長(仙台赤十字病院)  宮城県でも、セミオープンを始めたときに、開業の先生方のリスクの認識というのが 非常に甘かったです。例えばMD双胎ですとか、40歳初産で子宮筋腫合併とか、そう いうのをセミオープンにお願いしますという感じで送ってきます。そういう患者にはこ ちらで話をしてセミオープンから外れてもらっていました。やはりこれではまずいとい うことで、共通診療ノートを改定し、この中に中林先生のリスクスコアを入れるように しました。セミオープンは、市民の人もこれをちゃんと使ってくれているのですが、お 産をやってセミオープンに乗っていない先生の所の評価が非常に甘いものですから、こ のスコアだけを印刷し、各分娩施設に大量に配ろうということをいま考えています。こ の事業の中でやってもいいのだろうと思い、いま年度末ということで最後の予算を使っ てそれをやろうと思っています。 ○ 中林院長(愛育病院)  野田先生が言われた、250人に1人の重症管理妊婦の統計は、私の班で久保先生にや っていただいたものです。実際にショックとか、大量出血とか、ICUがあるから助かっ たという人があんなにいるのかというのは我々も想像していませんでした。4,000人の 重症管理妊婦ということは、まさに250人に1人ぐらいなのです。世界の平均を見ると、 10万人に400人の妊婦死亡です。つまり、250人に1人の妊婦が世界平均では死んでし まっていて、日本がたまたまそれらの人たちの99%を救っています。ただ、救ってい る場所はICUとか麻酔科その他の管理でようやく救っています。だから死なないけれど も、死にかかっている人は多いのです。  最近妊娠した、30何歳の女医に、あなたはこういうリスクを知っていますかと聞いた ら、私は妊娠した途端に棺桶に半分足を突っ込んだと思っていますと言っていたので、 それは認識がよくできていると言ったのですが、一般の人はそんなふうには思っていま せん。そんなに高いのだという認識がない。国もいまは10万人に6人の妊婦死亡では ないか、これだけ下げてくれればもう十分ですと言われてしまいます。ところが、その 73倍もの妊婦が死にかかっているということが忘れられているということは考え直さ なくてはいけないのかと感じています。 ○ 田中副室長(三重県)   本日は小林補佐もお見えですが、先日、NICU、GCUの長期入院時の関係から重身施 設、本来その子供がいちばんふさわしい環境に置くべきであって、NICUは入口のとこ ろなのだという話を講師の方がおっしゃいました。今後、こういうオープンとかセミオ ープンもそうですけれども、事前に情報をそれぞれ共有しながら、重症な患者を早くか らキャッチし、その親御さんにその後の処し方を早く説明していく。そのようなことを この会議でお聞きしたわけです。  厚生労働省も、いまおっしゃっているこのような問題について、今後患者に対する対 応の仕方とか、そのようなことにいずれこれにぶち当たらなければいけないのでしょう し、改善していくためにはそのような体制を組んでいかなければならないでしょう。そ ういうところも、既に厚生労働省では出てきているのだと思うのですがいかがでしょう か。 ○ 小林補佐(母子保健課)  答えになるかどうかわからないのですけれども、確かにオープン病院化モデル事業の この会議なのですけれども、医師確保をどうするか、安全性をどう評価するかとか非常 にファーセクテーは広い。法的な要因というか、法的な観点から周産期の問題というの は取り組んでいく課題だということしかいまは言えないです。確かにその中で、患者に 対する、市民に対する教育というのでしょうか、周産期の医療をめぐる安全性について の評価というのか、その認識というのか、そういうところも1つの課題です。  話は違うのですけれども、去年、奈良県で妊娠だった妊婦が最終的には死産になった というケースがありました。産む側の責任といったところも最近指摘されておりますし、 そういう母子保健の基本的な部分から、高度な周産期の医療に至るまでの国民的な認識 というのか議論というのはまた深めていく必要があるかということでは考えております。  私から先生方にご質問させていただきます。本日話を聞かせていただきまして、オー プンシステムといった場合にその意味する内容というのでしょうか、非常に多義的な意 味合いで使われていて、確定的な定義というのはなかなか難しいのかといった率直な印 象を受けました。1つには、病院と診療所役割分担的な意味合いで、例えばビルクリニ ック、無償診療所、あるいは高齢化して分娩をやめた開業の先生の施設では健診を行っ て、分娩は病院で行うといった、病診連携的な意味合いでオープン化、セミオープン、 あるいはそのシステムを使っているケース。 一方で、そういうやり方というよりは、 むしろ通常分娩は自分の所のクリニックで行って、ハイリスクの症例を早期に病院に送 るような意味合いでの早期の母体搬送といいますか、早期のシステムとしての意味合い で使っているようなところもあったりするのかという印象を受けたのです。  その場合に、受け皿となるオープンシステムをクリニックのほうは一般のいろいろな 形態があるでしょうけれども、受け皿となる病院というのはどういう所が果たして適切 なのかというところなのです。ハイリスク分娩、ハイリスクの症例を主として扱うとい う観点からすると、総合周産期センター、あるいは大学病院がありますが、本日のモデ ルの受け皿となる病院はほとんど地域の機関病院、総合周産期センターあり、大学病院 のケースが多いようです。  むしろ病診連携的な意味合いで、ハイリスクのみならずローリスク、あるいはミドル リスクというのでしょうか、そういう一般的なケースを扱うのであれば、必ずしも総合 周産期センターが全部受けるのではなくて、先ほど滋賀県のほうでは、別の機関病院と いう議論もあったようなのですけれども、その辺りの受け皿となる病院としてはどうい う所が考えられるのかというご意見をいただければと思います。 ○ 喜多講師(滋賀医科大学)  昨年3月に、長野県のオープン病院が地方のモデルとして厚労省の派遣記で出たと思 うのです。飯田市立病院でのオープンです。当時4施設ほど引き上げとか、開業とかで 850分娩が宙に浮きました。県とも議論したのですけれども、その際に広域連合といわ れる所から5億円の補助金を出して、飯田市立病院の3人の常勤を4人に増やしました。 そこで自然発生的にオープン病院となって、分娩数は月に40から、70とか80と倍ぐ らいになったのですけれども、比較的母体の救急搬送が減りました。  ハイリスクは自分の所で診る。それで、ローとかミドルを診療所で診て、最後に分娩 をするということで、医師を1人増員しただけにもかかわらず、分娩も倍近くなって、 それでも医師の負担は以前と変わらなかったということを信州大学の金井先生が発表さ れたと思います。派遣記でもエスタブルされていると思うのです。そのときに、このオ ープンを目指してやったわけではなくて、結果的に自然発生的に、住民の方々、お母さ ん方がそれに納得してこういう形をとらざるを得ないというような認識になったと思う のです。  実際にこれでやっておられるようなときというのは、こっちからポジティブに働きか けている所があります。滋賀県にも、中長期的には機関病院にこういうシステムを移行 したほうが、本来のオープンの意味が出てくるのではないかと思い、こういうまとめ方 をさせてもらいました。疑問をちょっと投げかけるような形で書かせてもらいました。  本当に、地域のお母さん方がそれを納得し、自分のリスクも認識し、こういうシステ ムに乗っていって、安全に分娩を終了させるということをいちばん意識してもらわなけ れば、先ほど平松先生から、今後こういうシステムはどのようになっていくのですかと いうご質問がありましたが、実際にそうでなかったら、こちらからいくらやっていって も、今回3年間やって、これが満足のいく結果だと、概ね満足のいく結果だとは言えて も、将来に移行させなければあまり意味がないのではないかと思うのです。先ほどの内 容と合わせて質問させていただきました。 ○ 平松教授(岡山大学医学部)   いま小林さんが言われたとおりで、岡山県の場合はハイリスクもローリスクも両方入 っています。始めたときはハイリスクでやりたかったのですが、あまりハイリスクと言 ったら、ビル開業の人が参加できないし、あまり患者を増やしすぎたら野田先生のいう ように、助産師が外の病院に出ていく。大学病院は、学生とか助産師の教育病院であり ますので、そのバランスをとらないといけないと思います。そのようなことが定着した ら、岡山の場合はもっとリスクの少ないのは市中病院でやってもらうようにして、その 棲み分けをするためにもこのシステムを広げていきたいと思っています。  いま、周産期医療協議会で、もっと具体的なものを今年は作ろうと思うのですけれど も、何週までの破水だったらどこへ送れ、心臓はここへ送れというようなこと。いま岡 山の場合は、小林さんが指摘されたように両方を扱っているのですけれども、それを広 げていくことによって棲み分けしながら大学は、ハイリスクも扱いながら、みんなが負 担にならない程度に、医学部の学生とか助産師の卵の学生とかが教育できるようなもの を目指していかなければいけない。バランスをとらなければいけないので、もっともっ と多施設へ広げたい。そのためにはマンパワーが要るから、厚生労働省はどうにかして 動いてくださいというのが私の意見です。 ○ 茂庭院長(榛原総合病院)  いまの飯田市立病院の件を聞いていて非常に共感をしたのは、いま私どもの病院とい うのは地域で一本化されています。従来は、こういう言い方をすると失礼なのですが、 週末に爆弾といって、開業医がさんざんいろいろ手を出した後に、どうしようもなくな って週末に患者を送ってくる。これは、地域で周産期をやっている病院のほとんどが、 開業医に対する最大の不信感だったということがあると思うのです。休みの前になると 急に患者が紹介されてきます。  産科はオープン病院をやって何がよかったかというと、実はそれが減ったのです。要 するに夜間とか、緊急に帝王切開をせざるを得ないような、全然情報がないにもかかわ らず、電話一本で救急車で来て、そのまま手術をやらなければいけない。そのバックグ ラウンドは何か、ということがわからないままに緊急カイザをやらなければいけないと いう状況が激減しております。ここ1、2カ月で、週末の帝王切開の数はほとんどなく なるぐらい減ってきています。  そういう意味で、このオープンシステムというのは病院側にとっては非常にありがた い、セミオープンというのはありがたいシステムです。自分たちの考え方に基づいた管 理が、妊娠の34週とかそれ以降にはきちんとできるようになります。そういう意味で は非常に大きいと思っています。  それから、中林先生が作られたリスクスコアなのですが、我々は開業の先生にもそれ を勧めています。ただ、開業の先生が紹介状に書いてくるときには「リスクはない」と 書いてきます。ところが、リスクスコアを付けると、これは6点あるではないかという ようなのが結構あります。周産期をきちんとオープン病院でやっている施設と、診療所 側に意識的にかなり差があります。  最初のうちは非常に悩んだのですが、診療所がセミオープンなりオープンでやる場合 に、その患者は6点だから最初から当院で妊婦健診を受けましょう、という言い方がで きるかどうかということで最初は悩んだのですが、それは最終的にその先生方と話をす ることにより、明らかに点数が高くなった場合はうちでかけていただきます。それは申 し訳ないけれどもそうさせてください、という形にすることによって一応納得はしてい ただいています。  里帰りでお産をする方がいます。いま、この事業主体は国がやっています。このまま いくと来年からは県とか地域がやるようになってくる。これだけのシステムをやってい る所の間同士での連携というのは取れてくると思います。これが、国が外れて地域に任 せることになると、地域はこの情報を持っている所と持っていない所ではたぶん有意差 が出てきます。  先生方も経験があると思いますけれども、里帰りする患者に対してはあまりしつこく 管理しないのです。どうせ相手がやってくれるとか、これはちょっとUGRがあるかな とか、ちょっとおかしいぞと思っても、これは自分の所ではお産しないので、里帰り先 でやってもらえばいいから、というような軽いコメントで出してきます。ところが、受 ける側はとんでもないということになります。これでどういうアピールをしていただけ るかといったときに、国が主体者となって、これを全国的に広げるまでは、国がいろい ろなことでアピールしていただきたいのです。少なくとも、いま先生方がおっしゃって いるとおり、中林先生のスコアが全国的に広まって、それで分娩をどのレベルで扱える かということを定着するまでは、このシステムというのはもっとどんどんアピールして いかなければいけないだろうと思います。そうしないといちばん困るのは、診療所では なんともないと言われたのが、病院に行ったら何かあると。そうすると病院側のミスで はないかということになります。何かあったときには、最終的に手を出した所のミスで はないかという言い方をされて結構困るのです。  特に、地方の病院でやる場合には、開業の先生というか、診療所の先生は地域の名士 ですので、それは患者にとってはいつも診ていただける先生ですからとても偉い先生で す。地方病院の医師はしょっちゅう替わりますので、そこで診療ミスをやったのは診療 所側だと取られかねないところがあります。こういうものを提言に是非入れてほしいし、 厚生労働省が主体となって、リスクに対する妊婦の認識が高まるまではこのシステムを 推進して頑張っていただけないかと思います。 ○ 上田部長(県立広島病院)  当院も総合周産期母子医療センターです。いちばん最初のお尋ねですけれども、ハイ リスクを扱う総合周産期センターだから、オープンとかセミオープンを積極的に行うべ きとは必ずしも考えません。ただ、先ほどおっしゃっていましたように、総合センター だと母体搬送などをたくさん日常扱っておりますと、オープンでもセミオープンでもい いのですけれども、それまで外来で診察したことのない患者が急変して来る、という状 況に慣れていて何があっても驚かない。情報がなくても驚かないというノウハウを持っ ている、というところのメリットは多少ありますが、それは副次的なことです。基本的 にはそうではない、ローリスク、ミドルリスクの施設が、オープンとかセミオープンで は中核になっていただければと思います。  ただ、地域の実情というのがあります。周辺にクリニックがないといった事情で、当 院でも地域の方の病院という面もあります。たまたま当院の場合は、ずっと行くと海に 落ちてしまうぐらい広島市の南のほうにありまして、当院から南には数万人ぐらいおら れるはずなのですが、全くクリニックも何もないのです。そういう所の方にとっては、 当院がまさにかかりつけの病院という性格があります。そういう所が、セミオープンか 何かで受け皿ができて、クリニックができて、そういう所の我々の負担を減らしていた だければありがたいと思います。地域の実情としてはそういう状況があります。基本的 には、総合周産期センターだから、オープン、セミオープンを行うべきだとは思いませ ん。 ○ 山川課長(東京都)   東京都ですが、この事業を普及していく視点に立った場合に、1つは病診連携とい うキーワードがあります。これは、医療圏の中で病院と診療所の連携を進めていく、と いうのは全科に共通の考え方なのです。国が出している保健医療計画を作成する指針の 中でも、機能分担と役割連携、いわゆる病診連携を進めていきなさい、ということで言 っているわけです。  それと、このオープンシステムのモデル事業の内容等の使い分けをどうするのかとい う問題が、基本的に整理できていないような気がしています。いままでは、既存の診療 所と、産科の医療機関、あるいは周産期センターが、既に妊婦のやり取りをやっている 歴史は実際にあるわけです。そういう関係ができている所も都内にはあります。今後、 そういう関係がない所に対して、きちんとしたリスク評価をして、それぞれの医療機能 に合った患者を診ていく、あるいは妊婦を管理していく。  それは、病診連携とどう違うのかと言ったときに、このオープンシステムを広めてい く場合に、オープンシステムに特化した何かが必要になってくるのではないかという気 がしています。今回3年間愛育病院でやっていただく中では、契約に基づいて救急の際 はどうするとか、そういう契約を取り交わして登録をしていただいてやっています。  病診連携というのは、そういう基準がある所もあるし、ない所もあります。なんとな く関係があるというだけで、診療所側は連携している病院名を挙げてきたりもしている わけです。ところが、相手の病院からすると、その診療所の先生は聞いたことも見たこ ともないということがあったりします。この事業を普及していく上で、その辺のオープ ン病院、あるいはセミオープンというものを言葉として残していくのであれば、それに 特化した特徴、あるいはその特徴になった場合にどんなメリットがあるのか。これは診 療報酬の連動になってしまうかもしれないのですが、その辺を整理をする必要があるよ うな気がします。  東京は、取扱い医療機関が非常に多いものですから、そういう意味では方向性を出し ていくに当たり、病診連携とオープン病院、特に産科では特別オープンみたいなことと か、それが全体の医療の中での産科の位置づけと、病診連携とオープンの使い分けを、 モデル事業を3年やった上で整理をしていく必要があるような気がしています。 ○佐原室長(医療安全推進室)   東京都の場合は、周産期医療ネットワークの中にも、このモデル事業は位置づけてい るのですか。 ○ 山川課長(東京都)  東京都は、ネットワークは三次と二次と一次と、医療機関をグループ分けしていただ いて、そのグループの中で搬送あるいは紹介の基準を作り、妊婦にもリスクスコアでリ スクを管理し、早めに適切なところで患者のやり繰りをしていく、というのをいくつか のグループの中でやっていきます。  ただそのやり方の中で、当然健診だけをやるクリニックも都内には300以上あるよう なのです。そういう所は、健診と分娩の場所が当然違ってきますので、そのときにどう いう関係を作るか。あえて言えば、そのときに特別言うとなると、それをオープンない しセミオープンと言うのかもしれないです。ただ、病診連携といえば病診連携になって しまいますので、その違いは何かと聞かれたときに、説明はなかなか難しい場面がとき どきあります。 ○ 佐川科長(三重大学医学部附属病院)   いまのオープンシステムと病診連携の違いについてですが、病診連携というのは、い ままでのように1つの関連大学の中の関連病院と、診療所とか同門会の中の関係とか、 そういう関係の病診連携が主だったと思います。あるいはその地域の中での関係です。  このオープンシステムというのは、症例検討会とか、要するに情報の交換というかフ ィードバックをして、レベルアップをするということが1つの大きなメリットになって いるわけです。そのオープンシステムに登録するということは、そのグループの一員に なるという自覚を持つわけです。先ほど静岡県の方がおっしゃったように、あまり変な ものを送ることはなくなるというメリットがあるわけです。オープンシステムと病診連 携は、単に患者が行き来するだけではない、そういうところをきちんとやっていく。そ ういうシステムを、その地域全体をカバーできるようにしていけば、オープンシステム に入らないと取り残されるという状況が起こってくるように将来はなっていけば良くな っていくのではないかと思います。 ○ 佐原室長(医療安全推進室)   いろいろご議論いただきましてありがとうございます。あと10分ほどなのですけれ ども、本日は都道府県の関係者ということで、全部で10県ぐらいの都道府県が、いま はやっていないけれども今後考えていきたいという積極的な所からも来ていただいてお ります。傍聴の都道府県関係者の方で何かご質問等がありましたらどうぞ。 (特に発言なし) ○ 佐原室長(医療安全推進室)   ないようですのでまとめに入ります。本日、いろいろご議論、ご指摘いただきました ことを我々もきちんと受け止めて今後考えていきたいと思います。お話を聞いている中 で、本日の資料には書かれていないことがあるのではないかと思います。皆さん議論し ている中で思いが出てきたようなところもあると思いますので、再度これを見ていただ いて、成果で追加すべきこと、あるいは課題としてこんなことがあるのではないか、国 に対して特にこういうことをすべきだ、ということを再度精査していただいて、2月15 日までにまとめていただき、当方に送っていただければと思っております。この連絡協 議会として、1つのご意見をいただくというのはこの会の性質上できないと思います。 各地域からのご提言とをきちんとこの中にまとめていき、これを3年間の成果として出 していくことをしたいと思います。  その使い道としては、皆さんが来年度以降も事業を続けていく際の参考にしていただ くということが1つです。もう1つは、これからやっていこうという他県の皆さんがゼ ロから考えるのではなくて、皆さんがやったものの上に素速く新しい仕組みを導入でき るようにということでお役に立てるということ。3番目としては、いままでの政策の評 価と、今後どうしていくのかということを考える際の資料にしていきたいと考えており ます。  以上ですが、最後にもう一言言いたいという方はおられますか。 ○野田教授(滋賀医科大学)  各地方から出しました、それぞれの最終報告書をさらにまとめるという作業があるの ではないかと思います。そのときに1つ入れてほしいキーワードがあります。それは妊 娠のリスク評価のシステムがあるのだということ。それに準拠した妊婦管理、分娩の管 理が必要であると言った類の文言がどこかに入ってくるような形の最終報告書にまとめ ていただけましたら、やっと日の目を見るような気がするのです。この会としては、あ まり恣意的な表現はできないでしょうけれども、しかしその仕事はちゃんとした科学的 根拠に基づいた、統計処理をきちんとした仕事ですから、それなりに評価する意味があ ると思いますので、希望としてそういう言葉が1行でも入ってきたらいいかと思います のでよろしくお願いいたします。 ○佐原室長(医療安全推進室)  滋賀県から書いていただいて、出していただければそれは全部入ります。我々として 取捨選択するということは基本的にしません。そういう性格のものではないということ で、まず先生方の思いを書いていただきたいと思います。 ○野田教授(滋賀医科大学)   わかりました、ありがとうございます。 ○ 佐原室長(医療安全推進室)   ほかにないようでしたら本日の会議は終わりにしたいと思います。今後の予定といた しましては、3年間のモデル事業の取りまとめということで、再度修正していただきま して出していただきますものを、厚労省のホームページに掲載するとともに、全国の都 道府県にも周知をさせていただきたいと思っております。この修正については2月15 日までに事務局宛に再度ご連絡いただきますようお願いいたします。どうもありがとう ございました。 (以上) (照会先)   厚生労働省医政局総務課医療安全推進室    03−5253−1111(2580)